国立研究開発法人 科学技術振興機構

Japan Open Science Summit 2018発表報告

2018年8月6日
八塚 茂(NBDC)

NBDCの八塚です。

さる6月18・19日、東京都千代田区の学術総合センターで、Japan Open Science Summit (JOSS)2018 が開催されました。そこで行われたNBDCのセッション「ライフサイエンス分野におけるデータの共有」については、NBDCポータルサイトの新着情報ですでに報告されていますが、筆者もそれとは別の2つのセッションで発表しました。

今回のブログでは筆者自身がJOSS2018で行った発表について、簡単に報告したいと思います。JOSS2018全体の概要につきましては、イベント公式サイトをご覧ください。

図1

1.セッション B2「次世代リポジトリシステム

2017年11月に、オープンアクセスリポジトリ連合による次世代リポジトリ(NGR)についての機能要件および技術勧告が公開されました。本セッションはNGRについての説明や議論を主な目的としてはいましたが、研究データのリポジトリ全般について幅広く考える場であったと思います。

本セッションのオーガナイザーは、国立情報学研究所の林正治さん。登壇者は発表順に、林さん(全体の趣旨説明、NGRの機能要件および技術勧告の説明)、筆者、物質・材料研究機構(NIMS)の石井真史さん(NIMSで構築中のマテリアルズ・インフォマティクスのためのデータ駆動型リポジトリの説明)でした。

筆者からは、FAIR原則およびCore Trust Seal(CTS)の概要の説明を行いました。
FAIR原則については、NBDCから日本語訳と解説記事が出ていますし、前回のブログでも取り上げていますので、そちらもご覧ください。

CTSはリポジトリの新しい認証団体で、既にあった2つの認証団体Data Seal of Approvalと国際科学会議世界科学データシステムが合同して2017年9月に設立したものです。各リポジトリを16項目の評価基準で評価し、第3者(レフェリー)によって認証がなされます。

FAIR原則・CTSいずれについても、詳しくは発表資料をご覧ください。

会場からは、NGRを実装するため、あるいはCTSに適合させるためのリポジトリの予算や実施リソースの増加に関して、懸念の声も上がりました。

長期間にわたるデータの維持やセキュリティ対策なども含めた、日々のリポジトリ運用にかかる現実的なコストが意識されてきたということで、日本でも「とりあえずデータをネットワーク上に公開しておけば良い」というフェーズから、新しいフェーズに移行しつつあるという実感がわきました。

2.セッション C5
 「研究データ管理を考える~データリポジトリのサービスとCoreTrustSeal認証~

本セッションは、筆者も参加する研究データ利活用協議会(RDUF) の小委員会「国内の分野リポジトリ関係者のネットワーク構築」によって開催されました。

RDUFは、分野を横断した実務レベルの研究データ担当者が集うコミュニティとして、2016年に設立されました。現在は科学技術振興機構などの機関会員と研究データに関心を持つ個人会員が多数参加して、シンポジウムの開催や各種議論を行っています。

「国内の分野リポジトリ関係者のネットワーク構築」小委員会は、RDUF会員の中でも分野別リポジトリの運営者・関係者が集まり情報交換を行う場です。主にCTS認証で要求されるリポジトリの条件の調査や議論を行っており、現時点の調査・議論の内容を発表するのが本セッションの主な趣旨です。

本セッションのオーガナイザーは、小委員会の共同委員長である東京大学の絹谷弘子さんと国立情報学研究所の北本朝展さん。登壇者は、絹谷さん・北本さん(全体の趣旨説明)、情報通信研究機構の村山泰啓さん(データリポジトリの信頼性に関する最新の国際動向)、筆者、科学技術・学術政策研究所の林和弘さん(日本におけるデータリポジトリ関連の政策動向)でした。

このほかにもライトニングトークとして、東京大学社会科学研究所と宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所が運営するリポジトリの現状について、それぞれ実際に運営を担当されている方からの報告が行われました。

筆者からは、リポジトリの信頼性を高めるために必要なアイテムについて発表を行いました。具体的にはCTSを念頭に置きつつ、単に認証を得るための「自己評価の書き方」ではなく、リポジトリの信頼性を高めるために真に必要なものは何かについて検討した試案(現在小委員会内で検討中)です。

アイテムはCTSの評価基準とは独立したものであり、これにはポリシーやマニュアル類などのドキュメントだけでなく、組織体制やスタッフ教育などソフト面に関する事項も数多く含まれます。詳しい発表内容は資料をご覧ください。

会場には、アンケートで確認できただけで20以上のリポジトリの運営者が来場されていました。リポジトリの運営者がこのように一堂に会する機会は大変貴重であり、今後もこのような意見交換の場が増えることを期待しています。

著者紹介

八塚 茂(やつづか しげる)

システムエンジニア等を経て現在NBDC研究員。
生命科学系データベースアーカイブを担当。
研究データの流通促進に情熱を燃やす。
趣味は乗り鉄。

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©2018 八塚茂(国立研究開発法人科学技術振興機構バイオサイエンスデータベースセンター)

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