国立研究開発法人 科学技術振興機構

トーゴーの日シンポジウム2021 開催報告

2021年12月13日
木下 いづみ(NBDC)

こんにちは。NBDC広報担当の木下です。

NBDCは、10月5日に「トーゴーの日シンポジウム2021」をオンラインで開催しました。
NBDCは今年で発足10周年を迎えました。このため本シンポジウムでは記念講演やトークセッション、ポスター発表を企画し、さまざまな機関から多数の方にオンラインでご参加いただきました。
本ブログでは参加者からのアンケート結果を交えて、開催報告をいたします。

NBDCでは、ライフサイエンス分野のデータやデータベースに関する発表を行う場として、またデータ統合に関する課題をともに考え議論を深めるため、10月5日を「トーゴーの日」として毎年トーゴーの日シンポジウムを開催しています。
2011年から当名称で開催し、今年で11回目を迎えました(※1)。
昨年と今年はオンラインで開催、それ以前は都内の会場で、発表者、参加者が一堂に会して議論を繰り広げてきました。

記念講演

シンポジウムは、甲田 彰(JST理事)による開会挨拶の後、高木 利久(NBDCセンター長)による「記念講演」でスタートしました。
「NBDCの10年を振り返って- できたこと、できなかったこと-」と題して、NBDC発足の経緯や目的、得られた成果や残った課題について、報告がありました。
聴講者は200名(※2)あまり、アンケート結果から約8割の方から「とても満足」「満足」の回答があったほか、

  • これまでの成果とデータベースの活用がこれからの科学者のスキルに必要だと感じた。
  • データ統合の当初の目的や歴史についても包括的な話を聞くことができた。
  • 日本におけるライフサイエンスデータベースへの取り組みの流れを、あらためて振り返ることができた。

-アンケート結果より抜粋

といった感想が寄せられました。

ポスター発表

記念講演に続いて行われたポスター発表は、データベースの構築・運用・活用等に携わる研究者・技術者による51件の発表がありました。
開催1週間前から発表ポスターを公開し、参加者が事前にポスターを閲覧できるようにして、発表者と参加者がより活発に議論を重ねられる工夫をしました。また当日は、発表ポスターを一望できる専用ウェブページを公開し、各ポスターや要旨を掲載すると共に、ポスターごとのオンラインルームへのリンクを用意することで、参加者がスムーズにオンラインルームを行き来できるようになり、興味のある方がより多くのポスター発表に参加できるような仕掛けを取り入れました。
アンケートの中で「興味深かったポスター発表」を訪ねたところ、Top10は以下となりました。

ポスター番号 ポスタータイトル
1 NBDCの基盤サービス紹介
2 MEDALS:データベース再構築に向けて
3 TogoID: データベース統合の基盤となるID変換サービス
4 MetaStanza: 汎用型データ可視化ウェブアプリケーションの開発
8 微生物ゲノムアノテーションパイプラインDFAST - DDBJの登録システムとの統合による登録査定業務の効率化を目指して
13 GGGenome&CRISPRdirectアップデート:塩基配列検索およびゲノム編集のためのウェブツール
18 KEGG NETWORKによる疾患関連遺伝子バリアント、ウイルス、環境因子の統合
19 日本の難病に関する中心的基盤となる難病オントロジーNANDOと難病ポータルサイトNanbyoDataの正式リリース
22 日本人ヒトゲノムのバリアント情報統合サービス「TogoVar」
37 メタボローム統合データベースMetaboBankの開発
39 セマンティックウェブ技術を用いたバイオリソース横断検索システム
40 BRSO:Biological Rresource Schema Ontology の利用と現状
46 微生物統合データベースMicrobeDB.jpと微生物群集解析

※ポスター番号順

ポスターは以下でご覧いただけます。
https://biosciencedbc.jp/event/symposium/togo2021/poster/

トークセッション

本シンポジウムのトリは、NBDCの事業に深く携われてこられた先生方にご登壇いただいたトークセッションでした。
トークセッションでは、前半に伊藤 隆司氏(NBDC統合化推進プログラム 研究総括/九州大学 大学院医学研究院 医化学分野 教授)と五斗 進氏(ライフサイエンス統合データベースセンター 副センター長)による講演を、後半では高木センター長を交え、岩島 真理(NBDC企画運営室長)をファシリテーターとして3氏によるパネルディスカッションを行いました。

伊藤氏からはJSTのバイオインフォマティクス関連事業の歴史から事業のサステナビリティや新しいタイプのデータへの対応等の課題について報告いただき、また五斗氏からはデータベース統合化のための仕組み作りやデータセットに関する成果および機械学習応用との連携等の課題について講演いただきました。パネルディスカッションでは、各講演を深掘りしつつデータベース開発の現状や将来展望について活発な議論が展開されました。
聴講者は180名(※2)あまり、アンケート結果では約7割の方から「とても満足」「満足」の回答があったほか、

  • 20年を振り返った話を拝聴し、これまで先生方が進められてこられた成果を活用することの重要性を認識することができた。また、人材育成などのこれからの課題を知ることができた。
  • 「夢」をもって研究することが大切だと再認識した。
  • これまで試行錯誤した結果、現状の課題が明確になった。

-アンケート結果より抜粋

といった感想が寄せられました。

以上のようなイベント企画や取り組みにより本シンポジウムには約280名(※2)の参加があり盛況の後に閉会しました。NBDCでは今後もデジタル政策の基盤となる生命科学分野のデータ統合について積極的なイベント企画や情報発信を行っていきたいと考えています。

運営後記

トークセッション等にご登壇いただく先生方には、基本的にはJST東京本部に設営したスタジオにお集まりいただき、Zoomウェビナーを通したリアルタイムでの配信を行いました。
ポスター発表は、ポスターごとにZoomミーティングルームを設定したオンラインで開催しました。

「オンライン開催の参加のしやすさ」のアンケートを取ったところ、9割近くの方から「参加しやすい」と回答がありました。
理由としては「移動時間がないため」「都合の良い時間だけ参加できる」等、時間を有効に活用できるという観点でのメリットが最も多く挙げられました。

一方で、「現場の活気を感じにくい」「オーディエンスの状況がZoom上からはわからないため、少し寂しい印象があった」等、リアル開催と比較すると臨場感に欠けるという意見も寄せられました。
また、ポスター発表では「参加者が一人だったら気まずいので入室を躊躇した」「参加者が一人になってしまい退出しにくかった」等の感想も寄せられました。

これらのご意見を踏まえ、主催者側のシンポジウム運営の今後の課題は、

  • 発表者、参加者に臨場感を持ってもらうための演出をする
  • コミュニケーションの場としての活用の活性化を図るための仕掛けをする
  • ポスター発表については、参加者が入室した際のポスター発表者の対応方法(きっかけ作りの方法)を提案する

といったものが考えられます。

また、アンケートの回収率ですが、今年は5割程度と昨年のオンライン開催(3割程度)より多くの方にご回答いただきました。
これは、参加者がZoomウェビナーを退室すると参加のお礼とアンケートご協力のお願いのメッセージが表示される機能を使った効果といえます。

最後になりましたが、ご登壇いただいた先生方、ポスター発表していただいた研究者のみなさん、そしてご参加いただいたみなさまに感謝申し上げます。

トーゴーの日シンポジウム2021に関する情報は以下のサイトで公開しています。https://biosciencedbc.jp/event/symposium/togo2021/

リハーサルの風景

    ※1:2009年、2010年は別名称でシンポジウムを開催
    ※2:Zoomウェビナーに視聴者としてアクセスしたアカウント数

    著者紹介

    木下 いづみ(きのした いづみ)

    最近、和太鼓(演奏)にはまっています。リズム感には多少の自信があったはずですが、リズムで音楽を表現することの難しさを実感しています。
    今は8名のチームで「エール」というチアリーダーと応援団が出てきそうな曲を練習しています。ご興味のある方は是非ご一報を♪

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