「トーゴーの日シンポジウム2018」を開催しました
NBDCでは2018年10月5日、「トーゴーの日シンポジウム2018~バイオデータベース:つないで使う~」を開催しました。生命科学分野におけるデータベースの統合と利活用について、様々な立場の参加者が共に考え議論を深めるために、毎年開催されているシンポジウムです。今年は日本科学未来館の未来館ホールほかを会場に、招待講演2件、口頭発表11件、ワークショップやポスター発表が行われ、大学や研究機関、企業などから約300名が参加しました。ご来場くださった方々、講演や発表をしてくださった皆さまに、改めて御礼申しあげます。事務局として開催までの準備と当日のご案内を担当した筆者から、シンポジウムの様子をご報告します。
様々な立場からデータベースの開発・利用について発表
白木澤佳子JST理事のあいさつで幕を開けたシンポジウム。冒頭の3件の口頭発表では、今年サービスを開始した日本人ゲノム多様性統合データベースTogoVarの紹介、希少疾患診断支援システムPubCaseFinderのさらなる活用に向けた取り組み、そして創薬研究においてデータベースをつないで使う際の課題について、それぞれ発表が行われました。
招待講演の位田隆一先生(滋賀大学学長)は、「ライフサイエンス研究における個人情報の取扱い等に関する専門委員会」などでのご経験を踏まえながら、ヒトゲノムの個人情報保護に関するこれまでの考え方や、今後のデータ利活用のための倫理的・法的課題などについて講演されました。同じく招待講演の松岡聡先生(理化学研究所 計算科学研究センター センター長)は、計算科学研究センターが開発を進めるスーパーコンピュータ「ポスト『京』」の性能や特徴を紹介し、そのライフサイエンス分野での利用の可能性をお話しされました。
今年の新しい企画として、医学に関する4つのデータベース(多階層オーミクスデータベースDBKERO、日本蛋白質構造データバンクPDBj、糖鎖科学ポータルGlyCosmos、疾患・医薬品の統合リソースKEGG MEDICUS)について、開発者と利用者がペアとなり、データベースを活用した創薬研究などの利用例と、将来への期待や展望を発表しました。作る側と使う側の両面からの発表を通じて、各データベースが実際の研究・開発の過程でどのように役立っているのか、役に立つデータベースであるためにどのような努力がなされているのか、具体的な姿が伝わったのではと思います。
写真上:招待講演の位田隆一先生 写真下:同じく招待講演の松岡聡先生
研究者・利用者が議論を交わす貴重な機会
もう一つの新企画「ワークショップ」では、日本科学未来館の7階ロビーに会場を移し、データベースの連携がもたらす効果や詳しい使い方について、利用者と開発者が直接意見を交わしました。ChIP-seqデータの統合データベースChIP-Atlasとプロテオーム統合データベースjPOST、およびTogoVarを題材に、他のデータベースとの連携可能性や今後の機能強化について議論が行われ、開発者側にとっても多くのフィードバックをもらう貴重な機会となりました。
ポスター発表では、生命科学データベースの開発・機能強化や基礎技術研究、活用事例など様々な切り口で63件の発表がありました。会場では各発表者に熱心に質問する来場者の姿が目立ちました。来場者の投票により「優秀ポスター賞」が選出され、今回は「ライフサイエンスデータベースを利活用したバイオインフォマティクス研究」が受賞しました。おめでとうございます。
写真:ワークショップで利用者の質問に答えるデータベース開発者チーム
来年のシンポジウムに向けて
参加者からは「バイオ関連のデータベースが一堂に会する貴重な機会だった」「初めての参加でしたが大変勉強になった」「密度の濃いシンポジウムだった」 などの声をいただきました。事務局としては準備の苦労もありましたが、参加していただいた方々の情報交換や議論が盛り上がり、生命科学分野のデータベースの今後の進展にこのシンポジウムが貢献できたならなによりです。企画や運営について皆さまからいただいた貴重なご意見は、来年以降のシンポジウムに活かしてまいります。
ポスター発表のPDFはウェブサイトでご覧いただけます。講演動画も近く公開します。来年もお楽しみに!
写真左:ライトニングトークではポスター発表者が1分ずつ自分の発表の概要を説明しました
写真右:63件のポスター発表が行われ、熱心に質問する参加者の姿が見られました
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©2018 杉澤芳隆(国立研究開発法人科学技術振興機構バイオサイエンスデータベースセンター)