植物共発現データベース「ATTED-II」に解析・考察を支援する新たな解析ツールが実装されました
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2024年9月27日、東北大学 大学院情報科学研究科の大林 武 教授らは、植物の遺伝子共発現データベース「ATTED-II」に、遺伝子の共発現関係を容易に閲覧・解析するための新たな機能を追加しました。
近年、次世代シークエンサーを用いてさまざまな植物の研究が進められています。ところが、穀物や野菜などの実用植物を含む「非モデル植物」は、シロイヌナズナなどのように実験室内でよく研究されてきた「モデル植物」とは異なり、多くの遺伝子の機能がまだわかっていません。研究者によって様々な研究のアプローチが採られていますが、特定の条件下や環境下で発現量が相関して変動する遺伝子(共発現関係にある遺伝子、共発現遺伝子)のグループを調べることも有用な手段のひとつです。共発現遺伝子は一連の生理的機能をともに担っていることが多く、機能のまとまりや遺伝子の複雑な制御関係の理解に役立つものと期待されるからです。ただ、ひとつの遺伝子が2つ以上の生理的機能を関わっていることも珍しくなく、それを正しく理解するには専門家による複雑な解析が必要でした。
ATTED-IIは2004年11月から開発されています。シロイヌナズナなどのモデル植物を中心に、公開されている主な植物種のトランスクリプトームデータを大規模に解析して収載しており、共発現遺伝子を探索できるデータベースとして広く使われてきました。ところが、遺伝子間の発現プロファイルの類似性を明らかにしても、これまでのATTED-IIに搭載されていた機能だけで、その共発現に関わる条件や環境要因を明らかにすることは、簡単なことではありませんでした。
今回の更新では、共発現関係の主成分(Principal component、以下PC)を分析するツール、「PC View」が新たに実装されました。PC Viewを用いると、着目する2つの遺伝子が共発現する条件や環境を調べることができます。また同じく新たに実装された「CoexViewer」では、着目する2つの遺伝子の発現パターンの相関図を閲覧できます。これら2つのツールによって、共発現遺伝子が担う生理的機能やその制御関係の考察が容易になりました。
上記の新規機能のほか、新たなコムギ、オオムギの情報が追加され、全11植物種の共発現情報を閲覧できるようになりました。また共発現遺伝子の相関関係をネットワークとして表示するNetworkDrawerでは、新たにパラログ情報(KO, KEGG Orthologyが同じ遺伝子)を表示できるようになりました。さらに、遺伝子情報からは、様々な植物種のゲノムやマーカー情報をキュレーションしたポータルサイトのPlant GARDEN (Genome And Resource Database Entry)へのリンクが追加されました。
今回のATTED-IIへの新規機能実装については、2024年10月22日(火)から25日(金)にかけて那覇で開催される1st Asia & Pacific Bioinformatics Joint Conferenceでも発表が予定されています。
ATTED-IIは、JST統合化推進プログラムの研究開発課題「非モデル植物のための遺伝子ネットワーク情報活用基盤(研究代表者 大林 武 東北大学 大学院情報科学研究科 教授)」の一環で開発・提供しています。
<ATTED-IIに収載している植物種(11種)>
- シロイヌナズナ(Arabidopsis)
- アブラナ(Field mustard)
- ダイズ(Soybean)
- ウマゴヤシ(Medicago)
- コメ(Rice)
- ポプラ(Poplar)
- トマト(Tomato)
- ブドウ(Grape)
- トウモロコシ(Maize)
- コムギ(Wheat)(今回新たに収載された植物種)
- オオムギ(Barley)(今回新たに収載された植物種)
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