IDW2018/RDA 12th Plenary Meeting参加報告
NBDCの八塚です。ご無沙汰しております。
今回は、さる2018年11月、アフリカにあるボツワナ共和国の首都・ハボローネで開催されたIDW2018およびRDA 12th Plenary Meetingに筆者が参加しましたので、その報告をさせていただきます。
IDW、RDAとは?
まず、IDWやRDAをご存知ない方のために簡単に説明をしたいと思います。
RDA(Research Data Alliance)は、研究データ共有の促進を目的として2013年に米国や欧州が中心となって立ち上げた組織で、研究者・ライブラリアン・研究助成機関・政策関係者などから構成されます。現在では日本を含むアジアやアフリカからの参加者も増えており、2018年11月時点で世界137か国・7600名以上の会員が活動しています。
RDAは年2回のPlenary Meeting(総会)を開催しています。その開催地の多くは米国や欧州ですが、まれにそれ以外の地域でも開催されます。その一つが東京(7th: 2016年3月)であり、そしてもう一つが今回のハボローネなのです。
一方、IDW(International Data Week)は、RDA Plenary MeetingとSciDataConの合同開催会議で、2016年以降2年に一度開催されています。そもそもSciDataCon自体が、ISC(国際学術会議)の下にあるWDS(World Data System)とCODATA(Committee on Data for Science and Technology)の合同開催会議なので話は少々複雑になるのですが、要するにRDA・WDS・CODATAの3団体が合同で開催する会議と言ってよいと思います。
ボツワナへの道
話が脇道にそれたついでに、多くの日本人が行ったことがない(筆者にとっても初めてでした)ボツワナへの行き方について少しご紹介しましょう。
2018年時点で、日本からハボローネへの直行便はありません。ハボローネへのフライトのほとんどが隣国・南アフリカのヨハネスブルグから出ています。そのため筆者はまずヨハネスブルグを目指したわけですが、2010年の南アフリカでのサッカーワールドカップ開催時以外は、2018年時点で日本からヨハネスブルグへの直行便はなく、飛行機を乗り継ぐしかありません。日本からは香港あるいはドバイで乗り継ぐケースが多いようです。ところが、筆者は諸事情により、何とフランスのパリでヨハネスブルグ行の便に乗り継ぐことになりました。
日本を出発してから30時間以上で、ようやくヨハネスブルグに到着です。しかし、まだゴールではありません・・・
ヨハネスブルグ空港
ヨハネスブルグからハボローネは比較的近く、フライト時間は1時間程度です。ハボローネ空港は新しく立派な建物ですが、飛行機のタラップを降りてから地面を歩くというなかなか貴重な経験をしました。
ハボローネ空港
会議全体を振り返って
さて、ようやく本題です。
11月と言えば日本ではもう冬ですが、南半球にあるボツワナは夏。会場を一歩出れば日差しが容赦なく照り付けます。筆者は虫に刺されるのを避けるため、ずっと長袖で通しましたので、暑さが余計にこたえました。
会場となったハボローネ国際会議場は、宮殿と見まがうほど立派な建物でしたが、ポスター会場では土産物が売られるなど、牧歌的な雰囲気もありました。
ハボローネ国際会議場
筆者が発表したNBDCのポスター
ポスター会場なのに、なぜか土産物が売られている...
IDW/RDAを初めてホストする(もちろんアフリカ全体でも初めて)ボツワナは国内のデータインフラを整備することを国家目標に掲げており、その熱意はマシシ大統領の基調講演にもよく表れていました。また、会議の参加者は870名以上に上りましたが(筆者の記憶ではRDA史上最大と思われる)、このうちボツワナからの参加者は270名以上を占め、国全体が研究データ整備への熱意を共有していることを強く感じました。
基調講演を行うボツワナ・マシシ大統領
個別セッションについて
IDW/RDAでは扱うテーマ・トピックが多いため、複数のセッションが並行で開催されます。特にRDAでは、各会員は通常Working Group(WG)、Interest Group(IG)などに分かれて活動しており、Plenary Meetingでは各グループが単独あるいは他のグループと合同でセッションを開催します。各セッションでは各会員やグループの活動成果の発表や議論が行われます。全体で数十を超えるセッションのうち、筆者が聞いたすべてのセッションをここで紹介することはできませんが、IDW/RDAの雰囲気が伝わるものをいくつかご紹介します。
IG PID, WG PID Kernel Information, IG Physical Samples and Collections in the Research Data Ecosystem: Persistent Identifiers in Action
PID(Persistent ID:永続的な識別子)はRDAでも長く議論されているテーマで、FAIR原則の実現のためには欠かせないアイテムの一つです。PIDとして有名なものには、文献情報・研究データ等に付与されるDOI(Digital Object Identifier)、データベースエントリに付与されるIdentifiers.org、研究者に付与されるORCID(Open Researcher and Contributor ID)などがあります。RDAなどの研究データ共有の活動においてはデータへのPID付与は当然のこととされ、さらに実験・計測機器、標本などの物理的なサンプル、研究機関などの組織にもPIDを付与する取り組みが行われています。
今回のセッションでは、既存のPID同士をリンクさせることを目的とした欧州のFREYAプロジェクトの活動報告もありました。
WG FAIRsharing Registry and Data Policy Standardisation and Implementation IG: Journal Data Policy Standardization for FAIRer Data - Where We Are, What is Next
NBDCと連携するFAIRsharing(旧:BioSharing)プロジェクトなどが主催したセッションです。近年、学術ジャーナルでは、関連するデータの公開を論文掲載の条件とするデータポリシーを制定することが増えています。
今回のセッションでは、既にそのようなデータポリシーを制定したSpringer Nature社からも発表があり、データポリシー制定による論文著者や読者へのポジティブな影響について報告がありました。
論文の関連データを公開するには、どこかのデータリポジトリにデータをアップロードする必要があります。論文の著者がデータのアップロード先として、ジャーナルのデータポリシーに適合したリポジトリを探すための情報源としてFAIRsharingが紹介されていました。
なお、NBDCの生命科学系データベースアーカイブも、Springer Nature社のジャーナルであるScientific Dataの推奨リポジトリになっています。これは、当該ジャーナルに投稿する論文関連データのアップロード先として適合していることが認定されたものです。
CODATA and WDS Plenary Session - featuring presentation from Google Dataset Search
上記2つはRDAのセッションでしたが、最後にSciDataConのセッションとしてCODATAとWDSの合同セッションを取り上げます。こちらは非常にタイムリーといいますか、2018年9月にリリースされ、現在研究データに関心のある方々の間で話題沸騰(?)のGoogle Dataset Searchについて、Google社のエンジニアの方が講演されました。
Google Dataset Searchの開発の背景やコンセプトの説明が中心で、「経験則に頼らず、誰もが自分の欲しいデータセットを簡単に検索できるようにする」というそのコンセプトは非常に明快で印象に残りました。
以上、IDW/RDAについてごく簡単にご紹介しました。今回ご紹介できなかったテーマ・トピックも含めてRDAでは研究データに関する最先端でエキサイティングな議論が数多く行われています。筆者は今後もこれらの動向をウォッチして、皆様にご報告したいと思います。
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©2019 八塚 茂(国立研究開発法人科学技術振興機構バイオサイエンスデータベースセンター)