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セマンティック・ウェブ技術関係の研究会議に参加して ~JIST2018&第46回SWO研究会参加報告~

櫛田達矢
バイオサイエンスデータベースセンター(NBDC)

NBDCの櫛田です。

2018年11月に、セマンティック・ウェブ技術関係の研究会議2件に参加しました。セマンティック・ウェブ技術とは、ウェブページの意味をコンピューターが理解し、処理できるようにするための技術のことです。コンピューターによる自動的な情報収集や分析、推論を可能にすることで、様々な応用が期待されています。

本記事では、それぞれの研究会議について概要を紹介するとともに、筆者が行った研究発表についても簡単に紹介します。

 

セマンティック・ウェブ技術に関する国際会議が淡路島で開催

2018年11月26日~28日、兵庫県淡路市で「8th Joint International Semantic Technology Conference (JIST2018)」が開催されました。JISTは、セマンティック・ウェブ、オントロジー(ある分野における概念およびその関係を定義したもの)、推論、知識グラフ(ある分野における知識を、概念やデータ間の関係として記述し、グラフで表現したもの)等について、世界中から研究者が集まって議論する国際会議です。(参考文献1
開催国である日本からの参加者が約半数を占めましたが、韓国、中国、タイなどのアジア各国をはじめ、UK、ドイツ、ノルウェー、カナダ、コロンビア、イランなどからも、合わせて約100名が参加する国際色豊かな研究会議です。

JIST2018では、従来のResearch Trackに加え、新たな試みとしてSpecial Session Trackが設けられ、「Government Open Data」と「Semantic Web for Life Sciences」の2つの分野で論文の募集がありました。両トラック合わせて75件の論文投稿があり、3名のレビュアーによって審査、採択された23件がレギュラーペーパーとして、6件がショートペーパーとして発表されました。

筆者らは、「Semantic Web for Life Sciences」分野で、オントロジー階層や知識グラフを活用した化合物の機能推論に関する論文がレギュラーペーパーとして採択され、会場で発表を行いました。

論文では、日本最大級の化合物データベースである日本化学物質辞書(日化辞)をNBDCがRDF化した「日化辞RDF」と、疾患や薬剤、遺伝子産物などの生物学上の概念をオントロジー化した「Interlinking Ontology for Biological Concepts (IOBC)」を用いることで、化合物の新たな機能や疾患への関与を推定しました。

今回のJISTは、筆者を含めライフサイエンス系の研究者にとって、セマンティック・ウェブ技術を接点に他の分野の先行研究や研究動向を知り、その分野の研究者と議論する機会となり、有意義であったと思います。論文発表のほか、ポスター&デモの発表が14件、チュートリアル、関連研究会議もそれぞれ2件開催されるなど、充実した内容の3日間のプログラムでした。

次回JIST2019は中国の杭州で開催されることが決定し、時期は2019年8月が検討されているようです。このスケジュールだと論文投稿の締め切りは5月頃(?)になるかもしれません。JIST2019のホームページはまだ開設されていないようですが、ご興味のある方は、時期を気にしながら、論文投稿の準備や参加を検討されてはいかがでしょうか。

 

シャーロック・ホームズに挑む人工知能

順序は前後しますが、JIST2018の前日に人工知能学会の「第46回セマンティックウェブとオントロジー(SWO)研究会」が、JIST2018と同じ会場で開催され、こちらにも参加しました。

SWO研究会では、約1年間「ナレッジグラフ推論チャレンジ2018」と呼ばれるイベントを実施してきました。簡単に紹介すると、シャーロック・ホームズの推理小説を題材にして、犯人捜しの推論の技術やアイディアを競うコンテストです。

今回の研究会では、応募作品の紹介と審査結果の発表、表彰式が行われました。「推論する手法は問わない」との条件だったため、述語論理式の充足可能問題としてのアプローチや、合意形成プロセスの構造化手法であるIBIS(Issue-Based Information System)を利用するアイディアなど、多くの興味深い作品が応募されていました。詳細はオリジナルサイトをご参照ください。

提案された人工知能の技術やアイディアは、様々な分野での応用が期待されます。また、これらの研究成果は今後、論文として公表される予定とのことです。「ナレッジグラフ推論チャレンジ」は2019年も開催が準備されていますので、関心のある方はこちらもご注目ください。

 

参考文献

1. 古崎晃司. “The 8th Joint International Semantic Technology Conference(JIST 2018)”. 人工知能. 2019年, 34巻, 1号. http://id.nii.ac.jp/1004/00009590/

 

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©2019 櫛田達矢(国立研究開発法人科学技術振興機構バイオサイエンスデータベースセンター)