DOI とその活用方法
NBDCの八塚です。ご無沙汰しております。
今回はDOIについてお話したいと思います。DOIとは何か? 研究分野でどのように活用できるのかについて簡単にご説明します。
DOIについて
DOIとは?
後述するジャパンリンクセンター(JaLC)の資料では、DOIについて以下のように説明されています。
DOI (Digital Object Identifier) はインターネット上のデジタル・オブジェクトに持続的にアクセスする仕組みとして、1990 年代に考案されたものである。
(中略)
DOIの機能はシンプルで、個別のコンテンツに割り振られたID (DOI) とその所在URL情報をペアで保管し、DOIの問い合わせに対して所在URLを返すというものである。もし、コンテンツの所在URLが変わった場合、ペアの情報を更新する。そうすることで、持続的なアクセスが保証される。
出典:ジャパンリンクセンターとは何か ~ その成り立ちと基本方針 ~
doi: 10.11502/jalc_policy
いかがでしょうか・・・もう少し嚙み砕いて説明しましょう。
現在では様々な文章・映像・データがインターネット上で公開されています。研究分野に限っても、論文やデータベース、解説動画などがンターネット上で公開されています。これらを総称して「デジタル・オブジェクト」と呼んでいます。
これらのデジタル・オブジェクトにアクセスするためにはURLが必要です。ところが、Webサイトが変更された、そもそも管理する個人・組織が変わってしまうなどの理由により、URLも変更されることがあります。いわゆるリンク切れはこうして発生します。
DOIは、そうした事態を防ぐため、個々のデジタル・オブジェクトに一意のIDを付与すると共に、そのIDをURLと関連づける仕組みなのです。
上記で引用したJaLCの資料を例にご説明しましょう。同資料には、 https://japanlinkcenter.org/top/doc/JaLC_policy.pdf というURLでアクセスできます(2020年6月26日時点)。
一方で同資料には「10.11502/jalc_policy」というIDすなわちDOIが付与されています。DOIが付与されたデジタル・オブジェクトに対しては、https://doi.org/{DOI} というURLでもアクセスできるようになるのです。
この例の場合、 https://doi.org/10.11502/jalc_policy にアクセスすると本来のURL https://japanlinkcenter.org/top/doc/JaLC_policy.pdf に転送されます。
一度付与されたDOIが変更されることはありません。このため、将来JaLCのURLが別のものに変更されたとしても、 https://doi.org/10.11502/jalc_policy というURLで今後もアクセスすることが保証されるのです。
DOIはどのように登録・管理されるのか?
それでは、DOIはどのように登録され、管理されているのでしょうか? 一般の利用者には直接関係ないかもしれませんが、普段使っているDOIの背後の仕組みを少しばかり知っていただければと思います。
すべてのDOIを管理し、URLの転送を行っているのは国際 DOI 財団(International DOI Foundation: IDF)です。しかし、IDFはDOIの登録を直接行ってはいません。実際のDOI登録はDOI 登録機関(Registration Agency: RA)を通して行われます。
RAは現時点(2020年6月26日)では世界で10機関のみです。日本では前述の JaLC が唯一のRAです。各RAには多数の会員機関があり、この会員機関がRAの提供するシステムを利用してDOIの登録作業を行っています。
私たちNBDCもJaLCの会員機関であり、主にNBDCが提供するデータや、毎年開催される「トーゴーの日シンポジウム」で発表されたポスターなどのDOI登録を行っています。
データにもDOI
研究分野において、DOIは主に論文などの文献に付与されてきました。現在でもそれは変わりませんが、最近ではデータにも付与され始めています。それはなぜなのでしょうか? データにDOIを付与するメリットはいくつか考えられます (参考:研究データ利活用協議会リサーチデータサイテーション小委員会リーフレット「研究データにDOIを付与するには?5分でわかる研究データDOI付与」)が、その最大のものは論文等におけるデータの引用にあると筆者は考えます。
例えば、論文等の中で「このデータ・データベースを利用した/参照した」とURLと共に記載されていることはよくあります。しかしながら、時間の経過と共にそのURLがリンク切れとなってしまい、結局どんなデータ・データベースを利用した/参照したのか読み手にはわからなくなり、検証することも困難になります。
DOIを利用することによって、そうした事態を回避できるのです。
ただし、これには一つ大きな条件があります。それはDOIの登録者が管理を継続的に行い、DOIと最新のURLを関連づける必要があるということです。たとえ当該データ・データベースの公開を終了してしまったとしても、かつてそのようなデータ・データベースが存在したこと、それがどのようなものであったか(メタデータ)、そして現在は閉鎖したことを示すページは残さなければなりません。
筆者もDOI登録者の一人として、維持管理の責任の大きさを痛感しています。
続いて、研究活動におけるDOIの活用方法を2つご紹介します。
研究活動におけるDOIの活用方法
ORCIDへの登録
自身のプロフィールや業績管理のために ORCID を利用されている方も多いと思います。もしご自身の論文・データ・ポスターなどにDOIが付与されていれば、これを簡単にORCIDに登録することができます。
まず、ORCIDにログインしてマイページを開きます。
「著作・業績」欄の右側で「著作・業績を追加」をクリックすると、追加方法がリストアップされますので、DOIを選択します。
ダイアログが表示されますので、DOIを入力します。
より詳細なメタデータを入力できます。タイトルやURLなど、赤枠で囲った部分は自動的に入力されています。
DOIの引用
より身近なケースとして、論文を執筆する際に DOI の付与された論文やデータを引用することがあるかと思います。しかしながら、DOI の歴史はまだ浅く、実際に参照文献リストの中に DOI やそのメタデータをどのように記載すればよいかわからない方も多いのではないでしょうか。そのような時に使えるのが以下にご紹介するDOI Citation Formatter です。
DOI Citation Formatter は、RAの一つで多くの学術出版社を会員として抱える Crossref が提供するオンラインツールです。引用したい文献・データの DOI を入力し、掲載予定のジャーナルと言語を選択するだけで、参照文献リストに記載する文言が生成されます。ここで入力できる DOI は Crossref 経由で発行されるものだけでなく、JaLC 発行の DOI も入力可能です。
では、さっそく使ってみましょう。
最後にFormatボタンを押せば、参考文献リストに記載する文言が表示されます。クリップボードにもコピーできます。
とても簡単ですね。
いかがでしたでしょうか。今やDOIは研究活動に不可欠なインフラの一部です。皆様にとってDOIが少しでも身近なものになれば幸いです。
著者紹介
八塚 茂(やつづか しげる)
システムエンジニア等を経て現在NBDC研究員。生命科学系データベースアーカイブ・横断検索等を担当。研究データの流通促進に情熱を燃やす。鉄道旅行ができない今、妄想は膨らむ一方・・・
Licensed under a Creative Commons 表示4.0国際 license
©2020 八塚 茂(国立研究開発法人科学技術振興機構バイオサイエンスデータベースセンター)