国立研究開発法人 科学技術振興機構

日本進化学会第21回大会に参加して

2019年12月18日
大波 純一(NBDC)

NBDCの大波です。

2019年8月に北海道大学で開催された「日本進化学会第21回大会」に参加しました。日本進化学会は、設立から約20年の比較的新しい学会ではありますが、昨年は612名の参加があるなど活発な交流が行われています。

今回も生物学だけでなく情報学や考古学など多様な背景を元に紡ぎ出される「進化」の研究について、自らも発信するとともに参加者の発表を聴講することができましたので報告します。

大会の看板

一日目

初日のプレナリー講演では、国立遺伝学研究所の北野潤教授と東京大学の吉田丈人准教授による発表がありました。

北野教授の発表では、主にトゲウオやメダカを対象としてゲノミクスによる集団解析や染色体解析を行い、進化機構の解明や、集団構造の変化について多様な分析結果を出していました。吉田准教授の発表では、捕食者と餌にあたるプランクトンを封じた集団動態サイクルを観察するためのシステムを開発し、Ecosystem(生態系)とEvolution(進化)がどのような作用で成り立つかを検討していました。それぞれの発表共に、大会のテーマである「遺伝学と表現型・生態をつなぐダイナミクス」にマッチした内容で、「進化」と関係する分野の広大さとその面白さについて再認識できました。

プレナリー講演の後は、2か所の一般口頭発表に参加しました。対象生物種もツバメ、コウモリ、チョウ、ウイルス、カタツムリ、ポプラ、コケ、ロリス、アブラムシ、テナガザルなど多岐に渡り、研究内容も採餌効率や食性転換、性選択、分類形質の提案、集団内の多様性の維持、野外行動の研究室内での再現、分布と地理情報の相関、共生、遺伝子編集手法の提案、遺伝暗号改変のシミュレーション、核型進化など、バラエティに富んでいました。それぞれの発表に対する質問も活発で、定型的な手法に固まった分野の研究者は見習うべき部分が多いと感じました。
また研究中にデータベースを作成してWebから公開する例もあり、研究データ共有の潮流も一部で確認できました。

初日と二日目の夕方にポスター発表のコアタイムがありました。今回私は哺乳類・ゲノム進化・データベースの3分野にまたがる内容の発表を行いましたが(下記写真参照)、それぞれの切り口から参加者に質問をいただき、とても有用な議論を展開することができました。
他の方の発表では、NBDCが関わる統合データベースプロジェクトで産出された「生物アイコン」を利用しているポスターもありました。

発表したポスター

二日目~三日目

二日目は2つのシンポジウムに参加しました。

「S06 データに隠れた進化を読み解くための新理論・新手法」の前半では、進化研究ではお馴染みの系統解析やアラインメントの新手法の提案がなされ、一部のソースコードはGitHubで公開されるなど、スピード感のある研究開発がなされていました。「S04 ゲノム情報に基づくヒトに帯同した野生動植物の自然史研究」の後半では、日本のイヌやダイコンなどの家畜化・栽培化された系統に関する分析結果が発表されていました。これらの研究ではより高度な解析が要求される古代DNAの解析や、広範な地域のサンプリングを実施して比較する必要がある他、考察や質問の場においては考古学的な見地や日本史の資料との突き合わせもおこなわれ、進化研究の学際的な一面も垣間見えました。

二日目の口頭発表も2か所で聴講しました。分子系統解析や繊維タンパクコード遺伝子の解析、内在性ウイルス配列の解析や翻訳効率の解析、正の選択圧の検出方法などのメソドロジーから解析結果の検討にいたるまで常識に囚われずに研究成果を出しているようでした。

二日目のプレナリー講演では、海外から招聘された2名の発表が行われました。McGill University(カナダ)のAndrew Hendry教授は、トゲウオやダーウィンフィンチを対象として生態系や集団構造の変化についての発表を、KU Leuven(ベルギー)のLuc De Meester教授は、環境の変化とプランクトンの動態を通じてどのような選択圧がかかる進化となるかについて発表を行いました。

二日目の夜は学会主催の懇親会があり、北海道の大自然の恵みに舌鼓を打ちつつ議論に花が咲きました。優秀な発表者への表彰もこの場で行われました。

三日目にはシンポジウムと一般口頭発表に1件ずつ参加し、それぞれの議論に加わりました。ウイルス進化から日本人集団の形成まで、まさにミクロからマクロまで網羅した研究発表の場でした。さらに高校生のポスター発表会があり、多くの高校生が現役の研究者との議論をはきはきとした語調で精力的に行っていました。

また、受賞式では首都大学東京の田村浩一郎教授による「分子進化・ゲノム進化の研究における高度データ解析の総合的方法論の開発およびその応用」を評して日本進化学会学会賞が授与されました。同教授は多数の進化研究の他、系統推定法の確立や、生命系研究で利用されている解析ソフトウェアMEGA (Molecular Evolutionary Genetics Analysis)の開発に携わるなど、幅広い分野の貢献に寄与されています。MEGAについては、統合TVでの使い方の紹介や、NBDCの講習会資料でも紹介させていただいています。

全体として

全体的には活発な議論が交わされていて、参加者としては広い視野を養う意味でも良い経験となりました。一方で英語での発表が推奨されていたものの、英語で議論をするには幅広い分野を跨いだ進化学ではテクニカルタームの認識合わせが必要で、困難な部分もあるように思いました。

個人的には以前から進化学会には参加していましたが、生物学だけではなく情報工学専門の参加者が増えていて、参加者の多様性が上昇しているようにも感じました。口頭発表においても、最後に研究員の募集案内があったり、研究のアウトリーチとして自身のツイッターアカウントを紹介してフォローを歓迎する方がいたりしたことが新しく、興味深く感じました。進化学において生物集団の(遺伝的)多様性は、集団サイズや環境への適応度に関係することが知られています。雄大な自然を育む北海道で開催されたこの学会は、進化学自体の広大さと奥深さを物語っていたように思いました。

北海道大学の学会会場(右の建物)
広い構内の移動のため、学内バスや自転車の利用者が多く見られた。

著者紹介

大波 純一(おおなみ じゅんいち)

NBDCの横断検索担当。ペットのロシアリクガメと共に堅実なデータアクセス基盤を目指しています。好きな動物:プロングホーン。染色体学会のカレンダーが毎年12月の楽しみです。

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©2019 大波 純一(国立研究開発法人科学技術振興機構バイオサイエンスデータベースセンター)

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