空間トランスクリプトミクスデータベースDeepSpaceDBの論文が掲載されました
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2025年10月29日、京都大学医生物学研究所のVANDENBON Alexis准教授らが開発した空間トランスクリプトミクスデータベース 「 DeepSpaceDB」の論文が、科学雑誌「Nucleic Acids Research」のDatabase Issue (データベース特集号) に掲載されました。
空間トランスクリプトミクスとは、組織サンプルのどの場所でどのような遺伝子がどの程度発現しているかということを網羅的に調べる研究手法です。近年、分析技術の進歩とともに大量のデータが蓄積され、公開データベースを通じて入手できるようになっています。DeepSpaceDB は、現在最も広く使用されているプラットフォームである10X Genomics Visiumで調べられたほとんどの空間トランスクリプトミクスデータを収載し、研究者が高度な解析をウェブサイト上でインタラクティブにできるように提供しています。2024年9月4日に公開された後、データの拡充とともにさまざまな改良が施され、非常に多くの研究者に利用されています。
現在、空間トランスクリプトミクスのデータを提供するデータベースはいくつかありますが、DeepSpaceDBの最大の特徴は、特別なバイオインフォマティクスのスキルがなくてもインタラクティブに高度な解析ができる点にあります。特定の組織や状態のサンプルを検索したり、組織切片における遺伝子発現パターンを視覚化したりといった基本的な機能に加えて、マウスカーソルを使って組織切片内の複数の領域を自由に選択し、それらの領域間の遺伝子発現を比較することができます。こうした比較は同一切片内の領域間だけでなく、異なる組織切片の領域間でも行うこともでき、例えば、アルツハイマー病モデルマウスと健常対照マウスの脳の海馬領域間での比較することなどができます。すべてのグラフはズームイン・ズームアウトができ、カーソルをスポットの上に重ねることで遺伝子の発現レベルやパスウェイ活性などを表示することができます。
公開後、新たに追加された機能の一つに、DeepSpaceDBの多様な機能を使ってユーザーが自分のデータを解析できる点があります。データ処理には、正規化、品質指標の計算、次元削減、クラスタリング、SVGの予測などが含まれ、自分のデータをDeepSpaceDB内のサンプルデータと比較することもできます。アップロードしたデータはDeepSpaceDBサーバーに一定期間保存された後、自動的に削除されますが、ユーザーがいつでもサーバーから自分のデータを削除することも可能です。アップロードされた各サンプルには固有のURLが割り当てられ、共同研究者と共有できますが、ユーザーがアップロードしたデータはDeepSpaceDBのデータには組み込まれず、他のユーザーに公開されることもありません。
本論文では、DeepSpaceDBの様々な機能の詳細のほか、乳がんサンプルでの解析事例なども紹介されています。詳細は、論文「DeepSpaceDB: a spatial transcriptomics atlas for interactive in-depth analysis of tissues and tissue microenvironments」をご覧ください。
<DeepSpaceDBの収載データ数>(2025年10月29日現在)
- ヒト:1,361サンプル
- マウス:783サンプル
DeepSpaceDBは、統合化推進プログラムの研究開発課題「空間オミックスデータ解析用データベースの開発」(研究代表者 VANDENBON Alexis 京都大学 医生物学研究所 准教授)の一環で開発・提供しています。