生理活性脂質を対象とした構造リピドミクス手法に関する論文が掲載されました

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2025年4月9日

東京農工大学 グローバルイノベーション研究院の津川裕司教授らの研究グループは、2025年4月4日、電子誘起解離法 (EAD) で生理活性脂質の1種である「脂肪酸ヒドロキシル化脂肪酸(FAHFA: fatty acid ester of hydroxy fatty acid)」の脂肪酸側鎖・水酸基位置・二重結合位置を網羅的に決定できる新しい構造リピドミクス手法を開発したことを、科学雑誌Analytical Chemistryに発表しました。東京農工大学、理化学研究所およびJSTは同日付でプレスリリースをおこない、その中で本研究の内容を紹介しています。

FAHFAは抗炎症作用や抗糖尿病作用が知られている脂質代謝物群の1種で、その構造の違いにより生理活性が異なっています。本研究ではその分析法を検討し、数十種類を超えると推定されるFAHFA代謝物を一度に検出し、かつ脂肪酸組成・水酸基位置・二重結合位置の定性・定量の網羅的解析を可能にしました。今回開発した新たな分析手法では、質量分析データ解析プログラム「MS-DIAL5」がFAHFAのEAD-MS/MSスペクトルを同定するプロセスで重要なポイントとなりました。様々な生命科学研究に本手法を適用することで新しいFAHFA構造と機能解明に貢献し、代謝疾患や炎症性疾患の背後に潜む分子メカニズムの解明への貢献が期待されるとプレスリリースでは述べています。

本研究の詳細は、プレスリリース「複雑な脂肪酸構造を解析する新技術を開発~脂肪酸代謝の多様性を捉えるリピドミクス~」および論文「Data-independent acquisition coupled with electron-activated dissociation for in-depth structure elucidation of fatty acid ester of hydroxy fatty acids」をご覧ください。

本研究で用いられたプログラムMS-DIALの開発は、統合化推進プログラムの研究開発課題「次世代低分子マススペクトルデータベース シン・マスバンクの構築」(研究代表者 大阪大学 松田史生 教授)の一環として、津川裕司教授により実施されました。

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