fanta.bioで解析されたヒトおよびマウスのシスエレメント・データがFANTOM6のリソースとして公開されました

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2024年12月3日

理化学研究所 生命医科学研究センターの粕川雄也チームリーダーらが開発・提供するシスエレメント・データベース「fanta.bio」に関する論文が、2024年11月27日、科学雑誌「Nucleic Acids Research」のDatabase Issue (データベース特集号) に掲載されました。本論文は、国際プロジェクト「FANTOM6」におけるノンコーディングRNAの機能情報の拡張とシスエレメント・データの整備を報告するもので、fanta.bio では、このうちシスエレメント・データを他の公共データベース由来のデータと統合して公開しています。

シスエレメントとは、遺伝子の転写制御に関わる、ゲノム上の領域のことを指します。「fanta.bio」には、シスエレメントのゲノム上の位置情報、発現レベルに基づく活性情報、近傍遺伝子や一塩基多型(SNP)などの情報が収録されています。これらの情報は、FANTOM6データセットの再解析によって同定したヒトおよびマウスのシスエレメント領域を核に、他の公共データベース由来のデータを統合したものです。FANTOM6データセットの再解析には、東京都医学総合研究所の川路 英哉副センター長らが新たに開発した、CAGE(※)データからプロモーターとエンハンサーを同定する手法が用いられ、ヒト、マウスでそれぞれ447,315個と288,877個が同定されました。統合されているデータとしては、「ChIP-Atlas」由来のシスエレメントに結合する転写因子の情報、「TogoVar」および「MOG+」由来のゲノム変異情報などがあります。こうした情報はUCSCゲノムブラウザを用いて並べて閲覧することができます。

今回掲載された論文では、fanta.bioにおける上述のようなデータ処理の手法、収録データセット、可視化手法、提供機能および外部データベースとの連携などを述べています。理化学研究所と東京都医学総合研究所、JSTは本論文の公開とあわせてプレスリリースをおこない、遺伝子発現制御機構などの基礎研究、疾患研究、創薬研究などにおける活用への期待を述べています。

詳細は、掲載論文「Update of the FANTOM web resource: enhancement for studying noncoding genomes 」およびプレスリリース「FANTOMウェブリソースの最新アップデート -ノンコーディングRNA・シスエレメントの新データ公開- 」をご覧ください。

fanta.bio ChIP-Atlas は統合的転写解析基盤データベースINTRARED を構成するデータベースとして、「統合化推進プログラム」の研究開発課題「統合的な転写制御データ基盤の構築 」の一環として開発・運営されています。

(図)遺伝子発現の制御因子:fanta.bioにはゲノム上で遺伝子の発現を制御するシスエレメント(プロモーター・エンハンサー)の情報が収載されており、ChIP-Atlasにはこれらに結合する転写因子の情報や遺伝子発現のON/OFFを制御しているゲノム配列のメチル化やヌクレオソームの状態(ヒストン修飾・オープンクロマチン)の情報が収載されている。これらの情報を統合して解析することで、遺伝子の発現制御のメカニズムを解析することができる。

用語説明
FANTOM6:理化学研究所が主導する国際共同研究「FANTOM(Functional ANnoTation of Mammalian Genome)プロジェクト」の第6期として実施された。FANTOMプロジェクトでは20年以上にわたり、新しい技術を取り入れながら、ヒトやマウスを中心とした哺乳動物の大規模転写解析を行うことで、転写に関するさまざまなデータを提供している。 CAGE法:理化学研究所が開発した転写開始点を明らかにする実験手法。エンハンサー領域で転写されるエンハンサーRNA(enhancer RNA:eRNA)を検出することにより、エンハンサー領域を同定することができる。

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