空間トランスクリプトミクスデータベース「DeepSpaceDB」が公開されました
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2024年9月4日、京都大学医生物学研究所のVANDENBON Alexis准教授らは、空間トランスクリプトミクスデータベース 「DeepSpaceDB」を公開したことを発表しました。
空間トランスクリプトミクスとは、組織サンプルのどの場所でどのような遺伝子がどの程度発現しているかということを網羅的に調べる研究手法をさします。近年、分析技術の進歩とともに大量のデータが蓄積し、公開データベースを通じて利用できるようになっています。これらのデータを使うと、組織のどこにどのような細胞がどれだけ存在し、それらの細胞がどのように機能しているのか、そして、それらの機能の変化が疾患とどのように関係しているかといったことが、分子レベルで理解できるようになります。しかし、空間トランスクリプトミクスのデータは容量が大きくとても複雑なため、バイオインフォマティクスの専門家でない人が分析することがむずかしいという問題がありました。
DeepSpaceDBでは、さまざまな組織の空間トランスクリプトミクスデータを簡単に閲覧し、バイオインフォマティクスの専門家でなくても、容易にかつインタラクティブに解析できます。NCBI GEOなどから公開されている空間トランスクリプトミクスデータのうち、主なプラットフォームである10x Visiumで取得されたデータのほぼ全てを収載しており、サンプルの由来組織や疾患状態などのメタデータを精査して、表記やオントロジーを統一しています。またさまざまな解析ツール、例えば、発現プロファイルに基づく各スポットのクラスタリング、任意の遺伝子の空間的発現分布の表示、空間的に発現が変動しているパスウエイの表示、発現している遺伝子から予測された細胞の種類の空間的分布の表示、任意に選択したエリア間での遺伝子発現比較などのツールを利用することができます。
DeepSpaceDBを他の解析ツールとともに活用することで、例えば、脳組織切片のどの領域にどのような種類の神経細胞が存在するのかを明らかにしたり、複雑な内部構造を有する腎臓組織のどの細胞が腎疾患で異常を起こしているのかを同定したり、あるいは乳がんの腫瘍サンプルでどの辺りにどのような免疫細胞が浸潤してきているのかを見出したりといったことが可能になります。
<DeepSpaceDBの収載データ数>(2024年9月4日現在)
- ヒト 626サンプル
- マウス 412サンプル
DeepSpaceDBの公開は、2024年9月4日(水)、NGS EXPO 2024 におけるVANDENBON Alexis准教授の口頭発表のなかで正式に発表されました。今後、2024年10月5日(土) 開催のトーゴーの日シンポジウム2024「AI + ロボティクス + データベースが変える生命科学」と10月22日(火)から25日(金)にかけて那覇文化芸術劇場なはーとで開催される1st Asia & Pacific Bioinformatics Joint Conferenceでの発表も予定されています。
DeepSpaceDBは、JST統合化推進プログラムの研究開発課題「空間オミックスデータ解析用データベースの開発(研究代表者 VANDENBON Alexis 京都大学 医生物学研究所 准教授)」の一環で開発・提供しています。
DeepSpaceDBに収載されているサンプルの生物種と由来組織
組織サンプルメタデータの一例(DSID001012)
発現プロファイルに基づく各スポットのクラスタリング
任意の遺伝子の空間的発現分布の表示
空間的に発現が変動しているパスウエイの表示
任意に選択したエリア間での遺伝子発現比較
腫瘍周囲の組織でHMOX1の高発現を確認