国立研究開発法人 科学技術振興機構

統合化推進プログラムにおける3件の研究開発課題を新規決定

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2026年4月1日

2026年4月1日、ライフサイエンスデータベース統合推進事業の統合化推進プログラム (DICP) において3件の研究開発課題を新たに決定し、プレスリリースをおこないました。各課題は2026年4月1日から最長3年間にわたって実施されます。

今回の募集では、前回に引き続き、「育成型」の研究開発提案を対象としました。育成型は、(1) 新たなデータベースの構築、(2) 構築中のデータベースの一般公開、(3)公開済みデータベースの国際的な地位確立など、データベースを育て拡張する研究開発課題を支援するものです。

今回の募集期間は2025年12月15日から2026年1月27日までで、応募件数は25件にのぼりました。応募提案の選考は、研究総括が研究アドバイザーおよび外部評価者の協力の下で書類選考と面接選考がおこなわれました。

研究総括は、プレスリリースの総評のなかで、応募提案の研究分野のさらなる多様化が進み、例年にも増して水準の高い応募課題が多かったことから、選考が困難を極めたと振り返っています。今回、既に構築されているデータベースの発展課題が2件採択されました。芽吹いたばかりの有望なデータベースを枯らさずに育て上げることも本制度の大切な役割という判断がこれらの採択につながった一方で、もっとプリミティブな提案をもう少し小規模でもいいから支援してみたかったという思いも拭い切れず、苦渋の選択だったと述べています。育成段階から本格的な支援を経て維持継続中心のフェーズに至るまで、データベースにはそれぞれのライフステージに応じた適切な支援が必要で、その在り方や制度設計については、資金面のみならず技術面での支援体制なども含めて、より総合的な見地から検討を続けていく必要があると述べています。

採択課題は下表の通りです。

研究開発課題 対象とする主なデータベース 研究代表者 (所属機関・役職) 概要
JoGo-Next:国際標準に向けたヒトハプロタイプデータベース構築とAI活用 JoGo-Next

長﨑 正朗
(九州大学 教授)

ACTG階層命名法に基づくヒト遺伝子ハプロタイプ(型)のデータベース「JoGo」の更なる拡充を行う。具体的には、(1)非コード遺伝子および制御領域のハプロタイプ辞書の新規収載、(2)独自T2Tおよび海外T2T基盤による医療に関連する遺伝子に重点をおいた重複・CNVを含む複数遺伝子群の配列構造の新規収載、(3)参照人数の拡大による辞書の拡充、(4)短鎖WGSから型を推定する技術開発による国内外の型の統計情報公開、(5)AIエージェントの活用によるデータ更新・品質管理・注釈付与の半自動化、(6)国際連携強化を行う。ハプロタイプデータベースの国際的なデファクトスタンダードとして確立するとともに、ゲノムサイエンスや遺伝性疾患等の研究への貢献を目指す。
AI駆動型RNA 創薬を支援するマルチモーダルデータベースの構築 RNATDB

浜田 道昭
(早稲田大学 教授)

ヒト全トランスクリプトームを対象に、RNAの構造・修飾・相互作用・発現・疾患関連性など5階層17カテゴリのマルチモーダルデータを統合・標準化し、AI駆動型RNA創薬を支援する統合データベースを構築する。公開データを学習させた深層学習モデルを開発し、RNAと低分子化合物の結合親和性を予測する。事前計算アーキテクチャを実装し、標的部位の創薬可能性やオフターゲットリスクの高速検索・可視化を実現する。分散していたデータ資源を一元化し、標的探索から安全性評価までのプロセスを大幅に効率化することで、がんや難治性疾患に対する次世代医薬品開発の加速と国際競争力強化への貢献を目指す。
MDデータの共有と再利用を支えるデータ・モデル基盤の構築 MDDB-AI Hub

松永 康佑
(埼玉大学 准教授)

AI駆動型生命科学研究を加速するための分子動力学(MD)シミュレーションデータベースを構築する。このデータベースでは、実験系の生命科学研究者にはWebブラウザからタンパク質動態を閲覧できる環境を、計算科学者にはシミュレーションデータを標準的に登録・共有できる基盤を、AI/機械学習研究者にはML-Ready形式の訓練データセットと学習済みサロゲートモデルを提供する。欧州MDDBと連携して日本・アジア地域のデータハブとして機能しつつ、拡張サンプリングや粗視化MDによるマルチスケールデータの体系的整備、ベンチマーク・リーダーボード機能など、AI訓練に特化した独自の付加価値を実装する。誰もがタンパク質の動態情報にアクセスできるMDデータ利活用環境を実現し、構造生物学や創薬研究への貢献を目指す。

※データベース名は変更の可能性があります。

(研究代表者氏名の五十音順)

(所属機関、役職は2026年3月時点)

研究総括による今回の公募の総評は以下の通り。

研究総括:伊藤 隆司 (九州大学 生体防御医学研究所 特任教授)

統合化推進プログラムは、公共データの利活用によるバイオデータサイエンスの健全な発展のため、その基盤となるデータベースの統合化に取り組んできました。2011年に始まった本プログラムは、2022年から4期目に入り、2023年からは従来規模の「本格型」に加えて「育成型」の支援も開始しました。

「育成型」は、斬新なデータベース構築を目指す萌芽的な研究開発を対象としています。その最大の特徴は、応募時点ではデータベースの実績を問わず、構想の独自性・挑戦性と将来的な波及効果の観点を中心に選考を行う点にあります。既存データベースの場合、機能拡張や新しい展開を目指す構想に上記の特徴が認められれば、支援の対象となります。

今回で4回目となる「育成型」の課題募集には、25件の応募がありました。前回の公募では対象分野の広がりが顕著であったことを踏まえて、新たに3名の専門家を加えた10名の研究アドバイザーと共に、厳正かつ公平に選考を行いました。書面審査に基づく合議で選出した7課題について、対面で面接審査を行い、最終的に3課題を採択しました。

一件目は、ヒト遺伝子のハプロタイプを独自の階層命名法に基づいて体系化した世界初の辞書として、非常に高く評価されたデータベースに関する提案です。それをさらに国際標準へと飛躍させようとする野心的な取り組みが評価されました。二件目は、RNAの統合データベースに関する提案です。コンテンツの一層の拡充を図るのみならず、独自に開発するツール群による各種予測結果の提供によってRNA創薬への貢献を目指そうとする挑戦に特徴があります。三件目は、分子動力学シミュレーションのデータベースを国際連携の下に新規に構築しようとする提案です。世界に先駆けて、タンパク質の動態情報にアクセスしやすい環境を幅広い層のユーザーに提供することが期待されています。これら3課題が今後3年間でどのような活躍を見せてくれるのか、非常に楽しみにしています。

今回の選考で最も印象的だったのは、例年にも増して水準の高い応募課題が多かったことです。そのため、書面選考も面接選考も困難を極めました。対象分野が多岐に亘るためにデータベースの選考にはもともと難しい面がありますが、今年はそこにさらに拍車がかかりました。面接選考会でプレゼンを聞いてみたかった課題が他にいくつもありましたし、採択課題数が3件であることを今年ほど残念に思った面接選考会もありませんでした。

今回、既存データベースの発展課題が2件採択されました。これらは既に育成型の水準を越えているのではないか、というご意見もありました。一方、この段階のデータベースを支援する仕組みが本事業の他にはないという現実もあります。せっかく芽吹いた有望なデータベースを枯らさずに育て上げることも本制度の大切な役割という判断が、これらの採択につながったと思います。とは言え、もっとプリミティブな提案をもう少し小規模でもいいから支援してみたかったという思いも拭い切れず、苦渋の選択となりました。

今回の公募でも明らかなように、我が国にはユニークなデータベースの種がまだまだ眠っています。それらの発掘・育成を含めて、限られたデータベース予算を最も効果的に活かすにはどうするべきなのでしょうか。育成段階から本格的な支援を経て維持継続中心のフェーズに至るまで、データベースにはライフステージに応じた適切な支援が必要です。その在り方や制度設計については、資金面のみならず技術面での支援体制なども含め、より総合的な見地から今後も検討を続けていく必要があると改めて思いました。

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