メタボロームデータレポジトリMB-POSTの論文が公開
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2026年7月27日、新潟大学医学部メディカルAIセンター奥田修二郎教授らの研究グループは、メタボローム解析で得られる質量分析データを効率的に蓄積・共有するための新しいデータリポジトリMB-POSTを開発し、論文を米国化学会の学術誌「Analytical Chemistry」に掲載しました。同日、新潟大学、大阪大学、慶應義塾大学、京都大学、科学技術振興機構は、共同プレスリリースを行いました。
生体内や環境中の多様な化学物質を質量分析計によって網羅的に測定するメタボローム解析では、実験条件などの詳細な情報がなければそのデータの二次利用が困難です。ところがこれまでこの分野ではデータシェアリングのための最小情報基準が確立されていませんでした。そのため、既存のメタボロームデータリポジトリでは、登録時に多くの項目の入力を求めることが多く、データ登録が研究者にとって大きな負担となっていました。そこで、本研究グループでは、これまでのメタボロームデータを網羅的に調べ、データ再解析を想定して必要十分にして簡潔なメタデータのみを収集するメタボロミクス研究に最適化した新たな質量分析データリポジトリMB-POSTを構築しました。MB-POSTは、独自の大容量ファイル転送技術PRESTOシステムにより質量分析計から得られる巨大なデータを高速かつ効率よく登録できるほか、生物種や測定条件などを標準化された語彙で管理することでメタデータを機械可読な形式で標準化し、異なる研究間のデータ比較や統合解析を容易にするという優れた特徴を備えています。
MB-POSTは、質量分析データ処理パイプライン「Shin-MassBank計画」の一部として開発が進められてきました。Shin-MassBank計画の研究チームはMassBankコンソーシアムのメンバーで、日本質量分析学会スペクトルデータ部会と連携して活動しています。MassBankはメタボロミクス分野で主に代謝産物の同定に用いられ、国際的にも広く利用されているマススペクトルデータベースですが、これまで標品の高品質スペクトルを中心に収集してきたことから、収録スペクトル数が限られていることが課題とされていました。そこで、Shin-MassBank計画では、データの高品質再解析プロトコルを確立して、一般の研究において生体サンプルで測定されたマススペクトルを幅広く収集し、それらの再解析によって得られる最高品質の解析結果をMassBankに収載していくことで、MassBankの収録スペクトル数を飛躍的に増加させることを目指しています。MB-POSTは、そのShin-MassBank計画の最初のステップである質量分析データの収集の役割を果たしています。
MB-POSTは2024年12月にベータ版が試験公開された後、2025年10月に正式公開されました。2026年7月時点で180プロジェクト、総計2.8TBのデータが登録されており、新規に開発されたばかりで論文などを通した周知が不充分なメタボロームデータリポジトリとしては、極めて高い利用実績を示しています。今後は、国際的なメタボロームデータ共有の枠組みとの連携を強化し、世界規模でのメタボロームデータの流通と再利用を促進することで、日本ひいては世界のメタボロミクス研究者にとって有益なデータと情報の提供を目指していくと、著者らは述べています。
MB-POSTの開発は、統合化推進プログラムの研究開発課題「次世代低分子マススペクトルデータベース シン・マスバンクの構築」(研究代表者 松田 史生 大阪大学 教授)の中で実施されています。
<MB-POSTの収載データ数>(2026年7月27日現在)
- 登録データ:185プロジェクト(うち102プロジェクトが公開済み)
- ファイル数:42,795(2.8 TB)
図 Shin-MassBank計画におけるMB-POSTの位置づけ
「Shin-MassBank計画」では、生体試料から得られたプロダクトイオン(MS2)スペクトルを蓄積するための新しいデータ処理パイプラインの開発を目指しています。このパイプラインは3つのデータベースで構成されています。「MB-POST」は、使いやすい生データリポジトリ、「MassBank Human」は、ヒトメタボロームデータセットから得られたMS2スペクトルのライブラリ、「MassBank in silico」はインシリコデータを用いた代謝物アノテーション機能を提供します。