【統合化推進プログラム】トランスクリプトームとプロテオームの統合解析を通じた、がん細胞株における新規転写産物の発見
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東京大学 鈴木 穣 教授らと京都大学 石濱 泰 教授らの研究グループは、トランスクリプトームとプロテオームのデータを統合的に解析することで、肺がん細胞株の新規転写産物を発見し、これらのアイソフォームのいくつかについて実際にタンパク質としても存在することを見いだしました。
本研究の成果は、2021年1月4日(英国時間)、「Genome Biology」に論文掲載されました。
がんにおいては、ナンセンス変異依存mRNA分解因子UPF1とスプライシング因子SF3B1を欠損することで、異常な転写産物の割合が増加することが知られています。これらを標的にした創薬研究も行われています。
今回、長鎖解析が可能なナノポアシーケンサーを用いて22種類の肺がん細胞株の転写物を解析し、2021種類の新規スプライシングアイソフォームを同定しました。同定したアイソフォームの一部は、潜在的に新抗原候補を生成すると推定されました。非小細胞肺がんの臨床検体においても、これらの異常なスプライシングアイソフォームが検出されました。ペプチド候補の約半分は、HLA分子との相互作用を通じ、T細胞応答を活性化する可能性が示されました。
本研究で解析された肺がん細胞株のデータは「DBKERO」 に収載予定です。また、プロテオームデータは「jPOST」から公開されています(PXD019915)。
これらのデータベースは、NBDC「統合化推進プログラム」の研究開発課題「疾患ヒトゲノム変異の生物学的機能注釈を目指した多階層オーミクスデータの統合」(研究代表者:菅野純夫)、「プロテオームデータベースの機能深化と連携基盤強化」(研究代表者:石濱泰)の一環として開発されています。
また、臨床検体のトランスクリプトームデータは、NBDCヒトデータベースに登録されています(JGAS000245)。
詳細は、原著論文および東京大学が発表したプレスリリースをご覧ください。