講演・パネル
招待講演
AI駆動型生命科学研究の実現に向けて
生命科学研究は、膨大な文献・データ・実験条件を扱う複雑な探索プロセスであり、人間の経験や手作業だけでは限界が見えつつある。近年、AIエージェントの進展により、仮説生成から計算・実験、解析、論文化までをAIが支援するAI駆動型生命科学研究が現実味を帯びつつある。本講演では、創薬DXプラットフォームを例に、AIエージェントによる研究支援の最新動向を紹介するとともに、創薬・医療・生命科学への応用例を通じ、AI-readyデータベースに求められる要件と、AIが研究する時代におけるデータベースの果たすべき役割について今後の展望を述べる。
登壇者
- 奥野 恭史
- 京都大学 大学院医学研究科 ビッグデータ医科学分野 教授
- 1993年 京都大学薬学部卒業、同大学院薬学研究科にて博士(薬学)取得。
同大学院医学研究科・特定教授を経て、2016年 京都大学大学院医学研究科 ビッグデータ医科学分野・教授、現在に至る。
理化学研究所計算科学研究センター・部門長、一般社団法人ライフインテリジェンスコンソーシアム・代表理事、ならびに日本学術会議・第二部会員を併任。 
口頭発表
AI時代における生命科学データベースの価値と未来
講演概要
統合化推進プログラムは、2011年の発足以来、多くの生命科学データベースの構築を支援し、それらの中には国際的な基幹データベースとして確固たる地位を築いたものも少なくない。さらに2023年度からは、次世代データベースの創出を目指す育成型支援も開始し、新たな成果が着実に生まれつつある。本講演では、AIの急速な進展により生命科学の研究環境が大きく変わる中、基幹データベースの維持・発展と、新たなデータベースの継続的な創出・育成の重要性について改めて考えたい。
登壇者
- 伊藤 隆司
- NBDC「統合化推進プログラム」 研究総括 / 九州大学 生体防御医学研究所 特任教授

JoGo-Next: 国際標準に向けたヒトハプロタイプデータベース構築と AI 活用
講演概要
ヒトゲノム医療では、単一変異だけでなく、連鎖した変異の組合せを表すハプロタイプを共通の尺度で記述・比較できる基盤が不可欠である。JoGo1.0では、ACTG階層ハプロタイプ命名法を提案し、高精度HiFi長鎖シークエンスに基づき、5大陸258人、約2万遺伝子、約470万型からなる辞書を構築・公開した。本講演では、これを発展させる「JoGo-Next」の構想を紹介する。対象を非コード遺伝子・制御領域、重複・CNVを含む医療関連遺伝子群へ拡張し、参照集団の拡大、AIエージェントによる更新・品質管理・注釈付与の半自動化、国際連携を通じ、国際的デファクトスタンダードの確立を目指す。
登壇者
- 長﨑 正朗
- 九州大学 生体防御医学研究所 教授

RNA標的創薬に資する基盤情報技術の構築
講演概要
近年、難標的タンパク質に代わる新たな創薬標的としてRNAが注目され、RNAを標的とする低分子化合物や核酸医薬の開発が世界的に活発化している。こうした合理的なRNA標的創薬を推進するには、RNAの配列・構造・機能、ならびにRNA-リガンド相互作用に関する膨大な情報を体系的に統合・利活用するためのデータベース基盤と、それを支える情報解析技術の確立が不可欠となっている。本講演では、RNA標的創薬の加速を目指して構築を進めているデータベースについて紹介する。多様なデータソースに分散する発現・修飾・構造・局在・RNA-RNA相互作用・RNA-タンパク質相互作用・RNA-リガンド相互作用等に関する情報を統合し、創薬研究に資する形で提供する取り組みを概説するとともに、その構築を支える情報解析技術や今後の展望について議論する。
登壇者
- 浜田 道昭
- 早稲田大学 理工学術院 教授

MDデータの共有と再利用を支えるデータ・モデル基盤の構築
講演概要
本課題では、AI駆動型生命科学研究を加速するための分子動力学(MD)シミュレーションデータベースを構築する。このデータベースでは、実験系の生命科学研究者にはWebブラウザからタンパク質動態を閲覧できる環境を、計算科学者にはシミュレーションデータを標準的に登録・共有できる基盤を、AI/機械学習研究者にはML-Ready形式の訓練データセットと学習済みMDサロゲートモデルを提供する。講演では研究構想の背景と課題意識を紹介する。
登壇者
- 松永 康佑
- 埼玉大学 大学院理工学研究科 准教授

パネルディスカッション
AI が研究する時代のデータベース
本パネルディスカッションでは、まず、これまでのNBDCおよびDBCLSの活動について振り返りを実施する。その後、AIの開発および活用が加速する中での「データベースの在り方」について話題提供をいただき、今後のあるべき姿について議論を行う。それらの議論を踏まえデータシェアリングポリシーや施策への期待、人材育成などをはじめ、AI時代に向けて何が必要かについて幅広く議論を行い、将来像を展望する。
オーガナイザー
- 高木 利久
- NBDC ライフサイエンスデータベース 特別主監 / 富山国際大学 学長

パネリスト
- 伊藤 隆司
- NBDC「統合化推進プログラム」 研究総括 / 九州大学 生体防御医学研究所 特任教授

- 奥野 恭史
- 京都大学 大学院医学研究科 教授

- 片山 俊明
- 国立遺伝学研究所 ライフサイエンス統合データベース部門 部門長・特任教授

- 木下 聖子
- 創価大学 糖鎖生命システム融合研究所 副所長・教授

- 鈴木 穣
- 東京大学 大学院新領域創成科学研究科附属 生命データサイエンスセンター 教授
