国立研究開発法人 科学技術振興機構

ワークショップ

ワークショップ①

つないで使って役に立てようProtein Data Bank

オーガナイザー:栗栖源嗣(大阪大)
登壇者:清水浩(大阪大)、亀田倫史(産総研)

要旨

蛋白質構造データバンク(Protein Data Bank:PDB)は、蛋白質、核酸、糖鎖など生体高分子の立体構造情報を集めたデータベースである。放射光施設の高度化、超高磁場NMR装置の普及や革新的な電子顕微鏡装置の開発により、PDBの登録件数は増加の一途をたどっている。2019年7月末時点でのPDB登録件数は15万件を優に超えている。PDBj(PDB Japan;https://pdbj.org/)は、国際組織であるworldwide PDB(wwPDB;https://wwpdb.org)の一員として、共通した品質管理によりアジア地区からのデータ登録を行ってきた。また、全PDBデータに関するダウンロード・サイトの運営や、横断的な検索サービス・ツール類を独自に開発するとともに、ライフサイエンス・データベースの統合的な利用を可能にするため、wwPDBでPDB関連データのRDF化を実施している。

PDB利用研究のうち、機能分子である蛋白質の理解を立体構造に基づいて加速させようとする研究の割合が、年々大きくなっている。本ワークショップでは、有用物質生産を目指して行われているPDBの活用例をご講演いただく予定である。代謝工学をベースにしたPDBの活用例を大阪大学の清水先生に、分子工学をベースにした活用例を産総研の亀田先生にお願いしている。併せて、関連するPDBjの検索サービスのデモンストレーションを行い、エンドユーザーだけでなくDB開発者からもご意見をいただきたい。デモンストレーションでは、簡易検索、詳細検索、SQL検索やSPARQL検索などの実演を予定している。

発表資料

ワークショップ②

微生物―植物相互作用を解明して育種に繋げるには?

オーガナイザー:黒川顕(遺伝研)
登壇者:市橋泰範(理研)、平川英樹(かずさDNA研)

要旨

海洋、河川、水田、土壌、住宅内、人間や家畜の体内など、様々な環境に適応して棲息する微生物群集(マイクロバイオーム)は残された最後の生物多様性の宝庫である。このマイクロバイオームを対象とする研究は新規融合研究領域として世界的に急速に発展しており、微生物が関与する多様な場において、微生物のゲノム・メタゲノム情報を基盤とした「ゲノム情報立脚型社会」が実現しつつある。ゲノム情報の利活用を強く推進するためには、解析-蓄積-活用のサイクルを循環させる、マイクロバイオーム研究の基盤を構築することが肝要となる。この基盤として、我々は、微生物に関する多様な知識やデータをセマンティックウェブ技術により整理・統合したデータベース「MicrobeDB.jp」を開発している。MicrobeDB.jpでは、菌株情報、ゲノム・遺伝子情報、オーソログ情報やメタゲノム情報等を完全に統合する事で、種名や遺伝子名のみならず環境を表す単語をクエリとした検索により、多様な情報を提供する事が実現できている。2017年度にスタートした統合化推進プログラムにおいては、「統合化されたデータをどのように渡り歩き、どのように新規知見を得るか」、というMicrobeDB.jpの実用化に向けた、データサイエンスを加速する統合DBの利活用方法の開発に重点を置き、①徹底したユーザビリティの向上、②データ品質の向上、③キラーアプリケーションの開発、④さらなるデータの統合、⑤基盤データ解析技術の高度化、⑥効率的運用、⑦ホロゲノム対応、の7項目を中心に研究開発を実施している。本研究開発を通して、統合DB活用による新たな科学的手法、すなわちデータサイエンス研究手法を提案するとともに、MicrobeDB.jpの実用化に向けて様々な研究課題に取り組んでいる。

本ワークショップでは、オミックス解析技術の普及により急速に発展している微生物―植物相互作用に関する研究課題を取り上げ、同じく統合化推進プログラムにて開発が進められている植物ゲノムデータベース「PGDBj」とMicrobeDB.jpのさらなる連携の可能性や、植物育種研究におけるこれら統合DB活用の可能性を、利用者と開発者との議論を通して探っていきたい。

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