タイトル: | 公開特許公報(A)_概日リズム改善剤 |
出願番号: | 2014228236 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 38/00,A61P 25/00,A61P 25/20,A61P 43/00,A23L 1/305 |
大石 勝隆 山本 幸織 椎名 康彦 小西 達也 JP 2015110564 公開特許公報(A) 20150618 2014228236 20141110 概日リズム改善剤 マルハニチロ株式会社 000003274 国立研究開発法人産業技術総合研究所 301021533 宮崎 昭夫 100123788 緒方 雅昭 100127454 大石 勝隆 山本 幸織 椎名 康彦 小西 達也 JP 2013232474 20131108 A61K 38/00 20060101AFI20150522BHJP A61P 25/00 20060101ALI20150522BHJP A61P 25/20 20060101ALI20150522BHJP A61P 43/00 20060101ALI20150522BHJP A23L 1/305 20060101ALI20150522BHJP JPA61K37/02A61P25/00A61P25/20A61P43/00 111A23L1/305 5 OL 12 4B018 4C084 4B018LB01 4B018LB02 4B018LB05 4B018LB06 4B018LB07 4B018LB08 4B018LB09 4B018LB10 4B018MD07 4B018MD20 4B018ME14 4B018MF02 4C084AA02 4C084AA03 4C084BA10 4C084BA14 4C084BA23 4C084BA44 4C084NA14 4C084ZA01 4C084ZA05 4C084ZC41 本発明は、睡眠障害の改善等に有用な概日リズム改善剤に関する。 高齢化や、社会活動の24時間化に伴う様々な形態の睡眠障害の発生が社会的問題となっている。現在、日本人の5人に1人は睡眠に関して何らかの問題を抱えているとされ、特に高齢者においては、3人に1人が睡眠について悩みを抱えているとされる。 睡眠障害は、睡眠時無呼吸症などの睡眠呼吸障害と、体内時計がその発症にかかわるとされる概日リズム睡眠障害(サーカディアンリズム睡眠障害)に分類される。概日リズム睡眠障害には、時差ぼけや夜勤・交代勤務(シフトワーク)などが原因の外因性急性症候群と、睡眠相後退症候群(DSPS)や、睡眠相前進症候群(ASPS)、非24時間睡眠覚醒障害、不規則型睡眠覚醒パターンなどの内因性慢性症候群に分類することができる。 概日リズム睡眠障害の原因としては、睡眠相前進症候群において、一部家族性の遺伝的原因が報告されているが、その多くは、夜勤や交代勤務、時差ぼけ、不規則な食生活、精神的ストレスなどの生活習慣が関与しているものと考えられる。これらの睡眠障害の発症には、時計遺伝子によって構成されている体内時計が関係しているものと考えられているが、その詳細なメカニズムに関しては不明である。 一方、加齢に伴い、睡眠覚醒リズムのみならず、深部体温や睡眠に関わるメラトニンなどのホルモンの分泌リズムなど、様々な生理的リズムが減少することが知られており、加齢に伴う睡眠障害には体内時計の減衰が関与しているものと考えられている(非特許文献1)。糖尿病や肥満、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病も、睡眠障害の発症要因となることが知られており、このような睡眠障害に対しても体内時計の減衰が関与しているものと考えられている(非特許文献2)。 睡眠障害の治療法としては、特別な装置を必要とする高照度光療法や、ビタミンB12(非特許文献1)やメラトニン製剤(特許文献1)の投与が一般的である。しかし、これらの治療方法は、いずれも体内時計の位相を調節することにより生体リズムを正常化させようとするものであり、体内時計の周期異常や振幅異常に起因する障害の根本的な治療法とはなりえない。 また、睡眠薬としては、ベンゾジアゼピン系の薬剤(非特許文献3)が一般に用いられており、長短時間型から、短時間型、中間型、長時間型まで様々な半減期の薬剤が開発されている。しかしながら、これらの睡眠薬による睡眠障害の治療法は、対処療法的なものであり、根本的に睡眠障害を治療することは困難である場合が多い。また、夢遊症状等の副作用を伴う場合も多く、その使用法には細心の注意が必要である。 最近、ノシセプチン受容体の作動薬としての作用を有する4−オキソイミダゾリジン−2−スピロピペリジン誘導体に概日リズム睡眠障害治療効果が期待されている(特許文献2)が、まだ研究開発途上であり副作用も懸念される。 各種飲食品の原料やそれらに含まれる天然成分を用いる睡眠改善剤の研究開発も盛んで、茶葉由来のテアニンを用いるもの(特許文献3)、内因性のメラトニン分泌効果を有する発酵ホエーなどのホエー類を添加するもの(特許文献4)の他、高麗人参エキス(非特許文献4)、イクラ油に含まれるフォスファチジルコリン(非特許文献5)などを用いた睡眠改善剤が提案されている。これらは、いずれも飲食品、嗜好品などに用いられている素材に由来しているため、安全性も高く、日常的に摂取可能であるといえるが、その詳細な睡眠改善効果や作用メカニズムの解明は十分ではなく、効果の個人差も大きい。 概日リズムは、体内時計によって制御されており、近年、時計遺伝子と呼ばれる一連の遺伝子群によって体内時計のリズムが刻まれていることが明らかとなってきた。体内時計は、概日リズムの位相調節と周期長の調節、振幅の調節という3つの機能を有しているが、特に振幅や周期長の調節機能が、睡眠障害を含む様々な生体リズム関連疾患の予防・改善や治療において最も重要であると考えられる。加齢や糖尿病・肥満症など代謝性疾患によって引き起こされる様々な概日リズムの減衰や周期、位相の乱れを改善することは、睡眠覚醒リズムを含む様々な生体リズムを正常化するための有効な手段となるものと期待されるが、安全性の確立している天然成分由来であって概日リズムの振幅、周期長や位相を調節する効果的な睡眠改善剤は未だ報告がない。 一方、近年の時計遺伝子を中心とした体内時計の分子生物学的研究では、Period1やPeriod2、Bmal1などの時計遺伝子のプロモーターにルシフェラーゼ遺伝子を繋いだレポータープラスミドをNIH3T3などの繊維芽細胞に導入し、ルシフェラーゼ活性の概日リズムをモニタリングすることによって、体内時計への作用を調べる実験が多く用いられている(非特許文献6、7)。また、これらのレポータープラスミドを安定的に発現する細胞株を樹立して同様の作用を調べる研究も報告されている(特許文献5)。しかしながらこれらの繊維芽細胞を用いた実験では、体内時計を制御している神経細胞の機能を反映させることは不可能であると考えられる。一方、2004年にYooらは、マウスのPeriod2遺伝子の下流にルシフェラーゼ遺伝子をノックインしたトランスジェニックマウス(PER2::LUCマウス)を作製し、採取した組織を培養してルシフェラーゼ活性の概日リズムをモニタリングすることによって、全身の細胞のPERIOD2タンパク質の発現リズムを調べることを可能とした(非特許文献8)。このマウスから哺乳類の体内時計中枢である視交叉上核の神経組織を採取し、組織培養系において神経細胞の体内時計機能を調べることは可能であるが、初代培養系においては、ドナーとなる個体の状態や、採取する条件等により、再現性の確保された安定的な状態の神経細胞を用いて体内時計機能を調べることは困難である。本発明者の1人である大石らは、ハルミンによる概日リズム周期の制御作用を検討するに際して、培養系において安定した状態で神経細胞の体内時計機能を再現することを目的として、PER2::LUCマウスより増殖可能な神経前駆細胞を採取・保存し、実験時に神経細胞への分化誘導を行い、神経細胞の体内時計機能を安定的に評価する試験系を確立することに成功した(非特許文献9)。特表平8-502259号公報WO2003/010168号WO2005/097101号WO2005/094849号特開2011-26270号公報「サーカディアンリズム睡眠障害の臨床」千葉茂、本間研一 編、新興医学出版社、2003Pannain S. et al., The connection between sleep loss, obesity, and type 2 diabetes, P.J. Shiromani et al. (eds.) Sleep Loss and Obesity: Intersecting Epidemics, Springer Science「睡眠障害の対応と治療ガイドライン」、内山真 編、じほう、2002Young Ho Rhee, et al., Psychopharmacology, 1990, 101, 486-488日比野英彦、Food Style21, 2003, 7(3), 50-53Mariko Izumo, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2003, 100, 16089-16094Hiroki R. Ueda, et al., Nature, 2002, 418, 534-539Seung-Hee Yoo, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2004, 101, 5339-5346Daisuke Kondoh, et al., Biol. Pharm. Bull., 2014, 37(8), 1422-1427 本発明の目的は、これまで広く摂取されてきた天然成分由来であって、かつ効果的に概日リズム(時計遺伝子の発現リズム)の振幅及び/または周期長や位相を調節することができる成分を有効成分とする概日リズム改善剤、ならびにそれを含む飲食品もしくは医薬品を提供することにある。 本発明にかかる概日リズム改善剤の第1の態様は、イミダゾール骨格を有するジペプチド化合物及びその薬学的に許容される塩の少なくとも1種を有効成分として含むことを特徴とする。 本発明にかかる概日リズム改善剤の第2の態様は、体内でのイミダゾール骨格を有するジペプチド化合物の産生を誘導する成分を、有効成分として含むことを特徴とする。 本発明にかかる概日リズム改善剤はイミダゾール骨格を有するジペプチド化合物を有効成分として作用させることにより、体内時計の減衰や周期、位相の乱れに起因する睡眠覚醒リズム等の概日リズムの変調を調整し、生体のリズムを正常化するために有効である。本発明において用いられるイミダゾール骨格を有するジペプチド化合物は、生体体内に豊富に存在する物質であり、安全性が高く、副作用が無いので、本発明の概日リズム改善剤は、使用上の問題が無く有用である。アンセリンによる概日リズム振幅増強作用(リズム振幅のDay1-4平均)を示す図である。アンセリンによる概日リズム振幅増強作用の発光リズム(時計遺伝子Per2の発光リズム)を示す図である。カルノシンによる位相後退作用(+表示:位相後退)を示す図である。カルノシンによる位相後退作用の発光リズム(時計遺伝子Per2の発光リズム)を示す図である。概日リズム周期調節作用を示す図である。Aは、低濃度アンセリンによる概日リズム周期短縮作用(コントロールとの差:Δperiod)を示す図である。Bは、高濃度アンセリンによる概日リズム周期延長作用(コントロールとの差:Δperiod)を示す図である。 睡眠障害は、「概日リズム睡眠障害」と「睡眠呼吸障害」とに大別される。概日リズム睡眠障害には、外因性の急性症候群と内因性の慢性症候群とに区分され、睡眠相前進症候群や睡眠相後退症候群、非24時間睡眠覚醒障害、不規則型睡眠覚醒障害などは、内因性慢性症候群に含まれる。概日リズム睡眠障害には、体内時計の関与が考えられており、特に、内因性慢性症候群は、体内時計の振幅異常や周期異常が一因となっている。従来からの典型的な睡眠障害の治療法である光照射やメラトニン投与、あるいは様々な睡眠薬による治療法は、体内時計のリセットに作用する対処療法的なものであるのに対し、本発明が目指す睡眠障害の治療法は、体内時計の振幅異常及び/または周期異常や位相異常、すなわち「概日リズム障害」を改善することによる治療法である。 概日リズム障害に起因する疾患としては、睡眠相前進症候群(ASPS)、睡眠相後退症候群(DSPS)、非24時間睡眠相後退症候群、および季節性うつ病が典型的なものとして考えられる。その他、内因性躁鬱病、周期性緊張症、周期性高血圧症、周期性潰瘍、不規則排卵周期、およびインスリン分泌の周期性異常に起因する糖尿病などの周期性・反復性障害や、脳血管型痴呆やアルツハイマー型痴呆における夜間徘徊なども概日リズム障害が関与すると考えられている。また、様々な概日リズム振幅の減衰や周期、位相の乱れは、加齢や糖尿病・肥満症など代謝性疾患と関係がある。本発明は、概日リズム障害のうちの概日リズム振幅(時計遺伝子の発現リズムの振幅)を増強すること及び/または、概日リズム周期(時計遺伝子の発現リズムの周期)や周期の位相を調節することにより障害を改善しようとするものである。概日リズム周期の乱れに対しては、例えば、周期を短縮させることで周期延長による睡眠相後退や非24時間睡眠覚醒症候群を改善、逆に周期を延長させることで周期短縮による睡眠相前進を改善することができる。また、概日リズム周期の位相の乱れに対しても、例えば、位相を後退させることで睡眠相前進を改善することができる。 本発明の概日リズム改善剤によれば、時計遺伝子の発現リズムの振幅、周期長及び/または位相を、すなわち、発現リズムの振幅、周期長及び位相の少なくとも1つを調節することができる。例えば、後述する実施例に示される通り、アンセリン及びカルノシンを組み合わせて、発現リズムの振幅、周期長及び位相を調節することが可能となる。時計遺伝子とは、生体リズム、中でもサーカディアンリズムをつかさどる遺伝子であり、概日リズム制御遺伝子とも呼ばれる。時計遺伝子としては、Cry遺伝子(Cry、Cryptochrome)〔Cry1、Cry2など〕、Clock遺伝子(CLOCK)、Dec遺伝子(Dec)、Rev-erb遺伝子(Rev-erb)〔Rev-erbα遺伝子など〕、CK1遺伝子(CK1、Casein Kinase 1)〔CK1ε、CK1δなど〕、Bmal遺伝子(Bmal)、Per遺伝子(Per、Period)〔Per1、Per2など〕、が挙げられる。これらの遺伝子は、ヒト、マウスなど様々な動物が有していることが知られている。 本発明の概日リズム改善剤は、イミダゾール骨格を有するジペプチド化合物及びその薬学的に許容される塩の少なくとも1種を有効成分とする。また、体内でのイミダゾール骨格を有するジペプチド化合物の産生を誘導する成分を有効成分として用いることもできる。 イミダゾール骨格を有するジペプチド化合物としては、安全性が高く、副作用が無いこことが期待できる生体体内に豊富に存在するジペプチド(L体)及びその誘導体を挙げることができる。このジペプチド及びその誘導体としては、例えば、カルノシン(Carnosine、別名:β−アラニル−ヒスチジン)、アンセリン(Anserine、別名:β−アラニル−1−メチルヒスチジン)、バレニン(Balenine、別名:β−アラニル−3−メチルヒスチジン)、ホモカルノシン(Homocarnosine、別名:γ−アミノ酪酸−ヒスチジン)、及びそのN−アセチル誘導体である、N−アセチル−L−カルノシン、N−アセチル−L−アンセリン、N−アセチル−L−バレニン、N−アセチル−L−ホモカルノシンなどが挙げられ、これらの1種または2種以上の組合せを有効成分として用いることができる。カルノシンおよびアンセリンの少なくとも1種を有効成分として用いることが好ましい。ただし、生体体内では合成されない、例えば、アンセリンを構成しているアミノ酸の順序を逆にした、リバースペプチドは活性がみられないため除く。 イミダゾール骨格を有するジペプチド化合物は、概日リズム障害、特に概日リズムの振幅や周期の乱れが加齢などによって引き起こされる概日リズム障害を改善するための飲食品もしくは医薬品として使用することができる。 ここで、イミダゾール骨格を有するジペプチド化合物はそれらの薬学的に許容される塩であっても良い。分子内に含有するカルボン酸基とアミノ基の単独もしくは両方に基づく塩が可能である。カルボン酸基に基づく塩としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅およびセレンなどの金属塩、更にはアンモニウム塩などが挙げられる。アミノ基に基づく塩としては、塩酸、硫酸、燐酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸およびマレイン酸などの無機塩と有機塩が挙げられる。これらの塩は公知の方法で、遊離のカルノシン、アンセリンなどのイミダゾール骨格を有するジペプチドと、選択された酸もしくは塩基とを反応させることで製造することができる。これらは単独でも組み合わせでも使用できる。 本発明の概日リズム改善剤は、イミダゾール骨格を有するジペプチド化合物及びその薬理学的に許容される塩の少なくとも1種を有効成分として含有していればよい。その配合量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限は無く、また適応される被投与生体の年齢、状態などの種々の要因により適宜変えることができる。目的の効果を得る投与量としては、一例として1日当たり体重1 kg につき0.001 mg〜500 mgを摂取するのが好ましい。 本発明の概日リズム改善剤に含まれ得る、イミダゾール骨格を有するジペプチド化合物及びその薬理学的に許容される塩以外の成分(薬理学的に許容される基剤)は、本発明の目的を損なわない限り、特に限定されない。例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、着色剤、発色剤、矯味剤、着香剤、酸化防止剤、防腐剤、呈味剤、酸味剤、甘味剤、強化剤、ビタミン剤、膨張剤、増粘剤、界面活性剤などの中から、製剤に必要な諸特性(例えば保存安定剤など)を損なわないものであって、最終製品(例えば、飲食品、医薬品、医薬部外品など)の剤形に応じたものを1種または2種以上選択することができる。また、イミダゾール骨格を有するジペプチドまたはその薬理学的に許容される塩以外の成分は、概日リズム改善効果を有する他の成分であってもよい。 本発明の概日リズム改善剤は、そのままの形態で、最終製品として用いることもできる。また、飲食品用の添加剤、医薬品用のリズム添加剤、医薬部外品の添加剤として用いることができる。これにより、飲食品、医薬品として概日リズム改善効果を付与することができる。 本発明の概日リズム改善剤の投与形態は特に限定されない。例えば、経口投与(例えば、口腔内投与、舌下投与など)、非経口投与(静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、経皮投与、経鼻投与、経肺投与など)などが挙げられる。これらの中でも侵襲性の少ない投与形態が好ましく、経口投与であることがより好ましい。本発明の概日リズム改善剤を飲食品として用いる場合には、経口投与されることがさらに好ましい。 本発明の概日リズム改善剤の剤形は、飲食品、医薬品および医薬部外品のいずれとするかによって適宜決定することができ、特に限定されない。経口投与される際の剤形の例としては、液状(液剤)、シロップ状(シロップ剤)、錠剤(錠剤)、カプセル状(カプセル剤)、粉末状(顆粒、細粒)、ソフトカプセル状(ソフトカプセル剤)、固形状、半液体状、クリーム状、ペースト状が挙げられる。これらのうち、粒状、カプセル状、粉末状、ソフトカプセル状、固形状が好ましく、粒状(錠剤)がより好ましい。 本発明の概日リズム改善剤の投与時期は特に限定されない。 本発明によれば、時計遺伝子の発現調節が可能であり、さらに概日リズムの調節、睡眠改善が可能である。よって、睡眠障害、不眠症、自律神経失調症、躁うつ病などを、予防または緩和できる。 本発明の概日リズム改善剤は、各種飲食品として利用することができる。飲食品の形態としては、例えば、飲料(清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、粉末飲料、果実飲料、乳飲料、ゼリー飲料など)、菓子類(クッキー、ケーキ、ガム、キャンディー、タブレット、グミ、饅頭、羊羹、プリン、ゼリー、アイスクリーム、シャーベットなど)、水産加工品(魚肉ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、はんぺんなど)、畜産加工品(ハンバーグ、ハム、ソーセージ、ウィンナー、チーズ、バター、ヨーグルト、生クリーム、チーズ、マーガリン、発酵乳など)、スープ(粉末状スープ、液状スープなど)、主食類(ご飯類、麺(乾麺、生麺)、パン、シリアルなど)、調味料(マヨネーズ、ショートニング、ドレッシング、ソース、たれ、しょうゆなど)が挙げられる。 本発明において、概日リズムの改善作用は、Per2などの時計遺伝子の発現で表される体内時計の振幅を増強させたり、周期長を短縮させる作用であり、例えば、非特許文献9に開示される方法のように、細胞内でPer2プロモーターにより発現制御されたレポーター遺伝子(ルシフェラーゼ遺伝子など)の発現振幅を調べることによって確認することができる。(実施例1)アンセリンによる概日リズムの振幅増強 胎生14日齢のPER2::LUC C57BL/6jマウス(ジャクソンラボ)から脳を取り出し、0.05%トリプシン(シグマ)とDNase I(1 mg/L、ギブコ)を含むPBS溶液で37℃、10分間加温した。ピペッティングにより組織を分散させ、遠心分離後、幹細胞用培地〔20 ng/ml basic fibroblast growth factor (bFGF) (R&D Systems)、 20 ng/ml epidermal growth factor (EGF) (R&D Systems)、B27 supplements(ギブコ)を含むDMEM/F12培地(ギブコ)〕に懸濁し、poly-HEMA(シグマ)コートしたプレートに、5 × 105cells/ml の濃度で播種した。神経幹細胞塊の形成により、神経前駆細胞とし、使用時まで凍結保存した。 神経前駆細胞は、幹細胞用培地にて24時間培養後、分化用培地 〔2%牛胎仔血清、B27 supplementsを含むDMEM/F12培地〕 に培地交換し7日間の分化誘導を行った。 分化した神経細胞を用いて、候補物質の探索を行った。神経細胞を、HEPES(10 mM)と発光基質ルシフェリン(0.1 mM、和光純薬)を含む分化用培地に、体内時計を同調させるためのフォルスコリン(10 μM、シグマ)とともに候補物質を加えた培地にて培養し、LM2400(浜松ホトニクス)にて経時的にルシフェラーゼによる化学発光を計測した。 イミダゾール骨格を有するジペプチド化合物であるアンセリンを2.5 mM添加した場合、発光リズムの振幅が増大することが判明した。アンセリンを構成しているアミノ酸の順序を逆にした、リバースペプチドである1-methyl-L-His-β-Ala(以下、Anserine R)を2.5 mMを添加した場合、発光リズムの振幅増大は見られなかった。その結果を図1、2に示す。 (実施例2)カルノシンによる概日リズムの位相後退作用 実施例1で分化した神経細胞を、HEPES(10 mM)と発光基質ルシフェリン(0.1 mM、和光純薬)を含む分化用培地に、体内時計を同調させるためのフォルスコリン(10 μM、シグマ)とともにカルノシン及びカルノシンを構成しているアミノ酸の順序を逆にした、リバースペプチドであるL-His-β-Ala(以下、Carnosine R)を15 mMを加えた培地にて培養し、LM2400(浜松ホトニクス)にて経時的にルシフェラーゼによる化学発光を計測した。 図3、4に示されるように、概日リズムの位相が後退することが判明した。Carnosine Rを15 mMを添加した場合、概日リズムの位相後退は見られなかった。 (実施例3)アンセリンによる概日リズムの周期調節 実施例1で分化した神経細胞を、HEPES(10 mM)と発光基質ルシフェリン(0.1 mM、和光純薬)を含む分化用培地に、体内時計を同調させるためのフォルスコリン(10 μM、シグマ)とともにアンセリン0.01 mM, 0.1 mM, 1 mM, 2.5 mM及びAnserine R 2.5 mMを加えた培地にて培養し、LM2400(浜松ホトニクス)にて経時的にルシフェラーゼによる化学発光を計測した。 コントロールとの概日リズム周期の差をΔperiodとしたところ、図5に示されるように、低濃度ではアンセリンを添加することにより、アンセリン濃度依存的に概日リズムの周期が短縮することが判明した。一方、高濃度ではアンセリンを添加することにより、概日リズムの周期が延長することが判明した。Anserine R を2.5 mM添加した場合、概日リズムの周期に変化は見られなかった。 イミダゾール骨格を有するジペプチド化合物及びその薬学的に許容される塩の少なくとも1種を有効成分として含むことを特徴とする概日リズム改善剤。 前記有効成分がカルノシン、アンセリン及びこれらの薬学的に許容される塩の少なくとも1種である請求項1に記載の概日リズム改善剤。 体内でのイミダゾール骨格を有するジペプチド化合物の産生を誘導する成分を、有効成分として含むことを特徴とする概日リズム改善剤。 前記イミダゾール骨格を有するジペプチド化合物が、カルノシン及びアンセリンの少なくとも1種である請求項3に記載の概日リズム改善剤。 請求項1〜4のいずれか1項に記載の概日リズム改善剤を含む飲食品もしくは医薬品。 【課題】本発明は、概日リズム(時計遺伝子の発現リズム)の振幅、周期長や位相を調節することで概日リズムの乱れに起因する障害の症状または疾患を予防または改善・抑制することができる、概日リズム改善剤およびそれを含む飲食品もしくは医薬品を提供することを目的とする。【解決手段】本発明は、カルノシンやアンセリンなどのイミダゾール骨格を有するジペプチド化合物及びその薬学的に許容される塩の少なくとも1種を有効成分として含む、概日リズム改善剤およびそれを含む飲食品もしくは医薬品を提供する。【選択図】なし