生命科学関連特許情報

タイトル:再公表特許(A1)_間質性肺炎治療剤
出願番号:2007074400
年次:2010
IPC分類:A61K 38/45,A61K 47/48,A61K 9/08,A61P 11/00,A61P 29/00,A61K 47/24,A61K 45/00,A61K 31/573


特許情報キャッシュ

白井 厚治 川島 辰男 黒田 敏久 水島 裕 村上 雅弘 福崎 智美 JP WO2008075706 20080626 JP2007074400 20071219 間質性肺炎治療剤 株式会社LTTバイオファーマ 303010452 草間 攻 100083301 白井 厚治 川島 辰男 黒田 敏久 水島 裕 村上 雅弘 福崎 智美 JP 2006340845 20061219 JP 2007099201 20070405 A61K 38/45 20060101AFI20100319BHJP A61K 47/48 20060101ALI20100319BHJP A61K 9/08 20060101ALI20100319BHJP A61P 11/00 20060101ALI20100319BHJP A61P 29/00 20060101ALI20100319BHJP A61K 47/24 20060101ALI20100319BHJP A61K 45/00 20060101ALI20100319BHJP A61K 31/573 20060101ALI20100319BHJP JPA61K37/52A61K47/48A61K9/08A61P11/00A61P29/00A61K47/24A61K45/00A61K31/573 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MT,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20100415 2008550162 17 4C076 4C084 4C086 4C076AA11 4C076BB13 4C076BB17 4C076CC15 4C076DD63 4C076EE59 4C076FF67 4C084AA02 4C084AA19 4C084BA44 4C084DC24 4C084MA02 4C084NA14 4C084ZA591 4C084ZB111 4C084ZC751 4C086AA01 4C086AA02 4C086DA10 4C086MA02 4C086MA04 4C086NA05 4C086NA14 4C086ZA59 4C086ZB11 4C086ZC75 本発明は間質性肺炎治療剤に係わり、詳細には、レシチン化スーパーオキサイドジスムターゼ(以下、単にPC−SODと記載する場合もある)を有効成分として含有する間質性肺炎治療剤に関する。 スーパーオキサイドジスムターゼ(以下、単にSODと記載する場合もある)は、1965年Huberらによって牛の血液から抗炎症蛋白質として抽出され、活性酸素の一つであるスーパーオキサイドアニオン(O2−)を特異的に消去することが明らかにされた生理活性蛋白質である。生体内においては、活性酸素は主に好中球、マクロファージ等の食細胞から殺菌のために放出されるが、通常余剰の活性酸素に対してはSODをはじめとする種々の抗酸化物質が存在し、活性酸素による正常細胞への傷害を防御している。 しかしながら、SOD等の抗酸化物質による抗酸化能力を超えて活性酸素が過剰に存在すると、その近くに存在する物質、特に細胞膜が活性酸素により攻撃され、種々の病態が発現してくる。事実、活性酸素はその強力な組織障害性が証明されて以来、炎症、アレルギー、虚血再灌流による組織障害、抗癌剤による肺線維症など多くの病態の発生・増悪因子になることが明らかにされてきた。 このような状況の中、活性酸素を特異的に消去するSODが見出され、その臨床的応用の可能性について広く検討されている。本発明者らもSODの臨床的活用性について鋭意検討してきたなかで、SODの臨床的効果を高めるためには、腎臓からの排泄を抑えて血中濃度を維持すること、さらに細胞膜への親和性を高めて細胞膜上に存在する過剰の活性酸素を消去することが重要であると考え、種々の修飾型SODを検討し、レシチン化スーパーオキサイドジスムターゼ(PC−SOD)を提案してきている(特許文献1、特許文献9)。 このPC−SODは、遺伝子組み換え技術によりCu/Zn−ヒトスーパーオキサイドジスムターゼ(SOD)を調製した後、化学的にレシチン誘導体(フォスファチジルコリン誘導体:PC)をSOD1分子(2量体)あたり平均4分子結合させたレシチン化SODである。PC−SODは、細胞膜に対して高い親和性を有し、病変部位において発症因子である虚血・再灌流障害やアントラサイクリン系抗癌剤誘発心筋症等の活性酸素が関与する疾患に対する高い治療効果が認められており、既にこのPC−SODを有効成分とする急性心不全治療剤(特許文献2)、抗ウイルス剤(特許文献3)、ループス腎炎治療剤(特許文献4)、脳血管障害に伴う機能障害改善剤(特許文献5)、抗線維化剤(特許文献6)あるいは抗アレルギー疾患処置剤(特許文献7)、熱傷治療剤(特許文献8)等を種々提案してきている。 ところで、肺炎とは病原体が肺胞領域に侵入し、増殖して、生体反応を引き起こした感染症であり、一方、間質性肺炎は肺胞隔壁を主な病変部位(肥厚、細胞浸潤、線維化を主体)とし、炎症・線維化が遷延化する疾患である。この間質性肺炎には、原因がはっきりしているものと、原因のわからないものに分けられており、炎症により細胞やコラーゲンなどが増加し、肺胞の壁が厚くなり、酸素の取り込み量が低下し、息苦しい状態(呼吸困難)に陥る、難治性の疾患である。 間質性肺炎には一過性のものもあるが、多くは肺の硬化が徐々に進行し、更に不可逆性に増悪して、肺が硬くなり、呼吸が維持できない肺線維症に進行する。 その間質性肺炎の中でも特発性間質性肺炎(idiopathic interstitial pueumonias:IIP)は一つの疾患ではなく、原因不明の間質性肺炎の総称であり、アメリカでの特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)とほぼ同義語である。日本においては、1981年に間質性肺疾患調査研究班によって提唱された病名であり、その症状は、多くは緩徐に進行するが、急性増悪を来すことがあり、いずれも予後不良で、死の転帰をとることが多い。 現在、日本においては、臨床病理学的疾患単位として、特発性肺線維症、非特異性間質性肺炎、急性間質性肺炎、特発性器質化肺炎、呼吸細気管支炎関連性間質性肺疾患、剥離性間質性肺炎、リンパ球性間質性肺炎などに分類されている。 特発性間質性肺炎は、その原因は不明であり、肺の線維化は、多様な遺伝子背景に加え、炎症・免疫の関与が想定されている。 近年、制癌剤の副作用として間質性肺炎が発症することが知られており、特にゲフィチニブの重篤な副作用として間質性肺炎が問題となっている。 また、制癌剤のみならず、例えば漢方薬、抗リウマチ薬、抗生物質、インターフェロン製剤の投与により、あるいは膠原病に伴い間質性肺炎が発症することが知られている。さらに、SARS(Severe Acute Respiratory Syndrome)及び新型インフルエンザと間質性肺炎との関連性も考えられている。 いずれにしても、間質性肺炎の発症に伴う細胞障害作用の誘導、或いはアレルギー反応の誘発には、スーパーオキシサイドアニオンなどの活性酸素や鉄錯体が関与していることから、SOD等によりかかる活性酸素を消去させることでこれらの誘導を抑制させ、結果的に間質性肺炎の治療を行うことができるものと考えられる。 そこで本発明者等は、かかる考え方に立脚して、先に提案している細胞親和性の高いレシチン化スーパーオキサイドジスムターゼ(PC−SOD)を用いて、間質性肺炎患者、更には特発性間質性肺炎患者に対する治療効果を検討した結果、このPC−SODが極めて効果的な治療効果を発揮するものであることを確認し、さらにPC−SODと安定化剤、特にシュークロースの両者を含有させたものがPC−SODの安定性に優れるものであることを確認し、本発明を完成させるに至った。 これまで、PC−SOD自体を用いた間質性肺炎、特に特発性間質性肺炎治療の考え方は具体的には存在しなかった。その点で本発明は極めて特異的なものであるといえる。特開平9−117279号公報特開平9−52843号公報特開平9−59178号公報特開平9−110717号公報特開平10−338645号公報特開2001−2585号公報特開2001−151695号公報特開2006−169128号公報特開2001−64199号公報 したがって本発明は、上記の現状に鑑み、PC−SODを有効成分とする間質性肺炎治療剤を提供し、特に、有効成分であるPC−SODに対する安定化剤として、シュークロースを含有させた間質性肺炎治療剤、特に特発性間質性肺炎治療剤を提供することを課題とする。 かかる課題を解決するための本発明は、その基本的態様として、一般式(I): SOD’(Q−B)m (I)(式中、SOD’はスーパーオキサイドジスムターゼの残基を表し、Qは化学的架橋を表し、Bはグリセロールの2位に水酸基を有するリゾレシチンにおけるその水酸基の水素原子を除いた残基を表し、mはスーパーオキサイドジスムターゼ1分子に対するリゾレシチンの平均結合数であって、1以上の整数を表す)で表されるレシチン化スーパーオキサイドジスムターゼを10〜100mg含有し、シュークロースを添加することにより安定化された静脈内投与の形態にあることを特徴とする間質性肺炎治療剤である。 より好ましくは、本発明は、式(I)で示されたレシチン化スーパーオキサイドジスムターゼを40〜80mg含有するものであり、また注射剤或いは点滴静注の形態にあることを特徴とする間質性肺炎治療剤である。 更に好ましくは、本発明は、ステロイド剤と併用投与されることを特徴とする間質性肺炎治療剤であり、かかる併用されるステロイド剤が、プレドニゾロン又はメチルプレドニゾロンである間質性肺炎治療剤である。 また本発明は、具体的には、本発明で使用する式(I)で示されるレシチン化スーパーオキサイドジスムターゼにおいて、Qが−C(O)−(CH2)n−C(O)−(式中、nは2以上の整数を表す)であることを特徴とする間質性肺炎治療剤である。 さらに本発明は、より具体的には、SOD’がヒトのスーパーオキサイドジスムターゼの残基であり、具体的には、SOD’がヒトのスーパーオキサイドジスムターゼのアミノ酸配列における111位のアミノ酸がS−(2−ヒドロキシエチルチオ)システインとなったスーパーオキサイドジスムターゼ修飾体の残基であることを特徴とする間質性肺炎治療剤である。 最も具体的には、本発明はスーパーオキサイドジスムターゼが、活性中心に銅と亜鉛を含むスーパーオキサイドジスムターゼであることを特徴とする間質性肺炎治療剤である。 なお、本発明における間質性肺炎とは特発性間質性肺炎を含み、臨床病理学的疾患単位として、特発性肺線維症、非特異性間質性肺炎、急性間質性肺炎、特発性器質化肺炎、呼吸細気管支炎関連性間質性肺疾患、剥離性間質性肺炎、リンパ球性間質性肺炎などに分類される疾患をも含むものである。 これらの間質性肺炎は、その発症原因として薬剤の投与により発症するもの、または膠原病、SARS(Severe Acute Respiratory Syndrome)及び新型インフルエンザに伴い発症する間質性肺炎が具体的に挙げられる。 本発明は、間質性肺炎の発症として膠原病、SARS(Severe Acute Respiratory Syndrome)及び新型インフルエンザに伴うもの、或いは薬剤、例えば制癌剤、漢方薬、抗アレルギー剤、抗生物質、インターフェロン等の薬剤投与、或いはその代謝物による細胞障害作用の誘導、或いはアレルギー反応の誘発がなされ、その誘発には、スーパーオキシドアニオンなどの活性酸素や鉄錯体が関与していることから、SOD等によりかかる活性酸素を消去させることでこれらの誘導を効果的に抑制させ、その結果、間質性肺炎の有効な治療を行えるものである。また、制癌剤の副作用のひとつである間質性肺炎の有効な治療剤としても使用することができる。 これまで効果的な間質性肺炎治療剤が存在しなかった状況下において、特異的なPC−SODを投与することにより、その治療を行える点で、その医療上の効果は極めて特異的なものである。 また、本発明に使用するPC−SODは、従来のSODに比較して細胞膜への親和性に優れたものであり、病変部位におけるスーパーオキサイドアニオンを消去する能力が高いものである。その上安定化剤として糖成分、特にシュークロースを一緒に含有させることにより、PC−SOD自体の安定性に優れたものとなり、半減期の短いSODの効果を持続的に発揮し、間質性肺炎の治療を行い得る点で、特に優れたものである。 本発明が提供する間質性肺炎治療剤において使用されるレシチン化スーパーオキサイドジスムターゼ(PC−SOD)において、「レシチン」とはフォスファチジルコリンを意味する通常のレシチンをいい、「リゾレシチン」とはレシチンのグリセロールの2位に結合している脂肪酸1分子がとれて、2位の炭素原子に水酸基が結合した化合物をいう。 本発明で使用するPC−SODは、通常リゾレシチンの2位の水酸基に化学的架橋剤を結合させたレシチン誘導体を、SODに1個以上結合させて得ることができる。このPC−SODは、次式(I): SOD’(Q−B)m (I)(式中、SOD’はスーパーオキサイドジスムターゼの残基を表し、Qは化学的架橋を表し、Bはグリセロールの2位に水酸基を有するリゾレシチンにおけるその水酸基の水素原子を除いた残基を表し、mはスーパーオキサイドジスムターゼ1分子に対するリゾレシチンの平均結合数であって、1以上の整数を表す)で表すことができる。 ここで使用するSOD’は、生体内の活性酸素(O2−)の分解というその本来の機能を発揮し得る限りにおいて、その起源は特に限定されるものではなく、各種の動植物または微生物に由来するSOD残基を広く用いることができる。しかしながら、医薬品としての用途を考慮した場合には生体内での抗原性を可能な限り減らすことが好ましい。したがって、使用するSOD’としては、本発明の間質性肺炎治療剤を投与する対象に応じて適宜適切なSOD残基を選択することが好ましい。 例えば、現実の間質性肺炎患者を対象に投与しようとするものであるから、投与による生体内における抗原性をできるだけ減らすために、ヒト由来のSOD残基を用いることが好ましい。したがって、本発明の間質性肺炎治療剤としては、抗原性を考慮し、ヒト由来のSODを使用するのがよい。 ヒト由来のSODとしては、ヒト由来のCu/Zn SOD(活性中心に銅と亜鉛を含むヒト由来のSOD;以下、ヒトCu/Zn SODと略記する場合もある)が、細胞内における発現量が多く、また遺伝子工学的手法による生産技術が既に確立しており、大量に調製することが可能であるために、特に好ましく使用される。 このヒトCu/Zn SODには、ヒト組織または培養細胞から製造される天然のヒトCu/Zn SOD;遺伝子工学的手法により製造されるヒトCu/Zn SOD;天然のヒトCu/Zn SODと実質上同一のアミノ酸配列を有する組み換えヒトCu/Zn SOD;これらのヒトCu/Zn SODにおけるアミノ酸配列式中の一部のアミノ酸を欠失、付加、置換、あるいは化学的に修飾若しくは改変したSOD等があり、いずれのヒトCu/Zn SODであってもよい。 そのなかでも、天然のヒトCu/Zn SODのアミノ酸配列式における111位のアミノ酸(システイン:Cys)がS−(2−ヒドロキシエチルチオ)システインとなったヒトCu/Zn SODが好ましい。かかるヒトCu/Zn SODは、例えば特開平9−117279号公報にその詳細が記載されており、その方法に従って得ることができる。 したがって、特開平9−117279号公報に記載されるヒトCu/Zn SODの調製は、本明細書の一部を構成し、本発明で使用するPC−SODは、これらのヒトCu/Zn SODを素材として得ることができる。 本発明で使用する式(I)で表されるPC−SODにおいて、Bで示される「グリセロールの2位に水酸基を有するリゾレシチンにおけるその水酸基の水素原子を除いた残基」は、具体的には次式(II): −O−CH(CH2OR)[CH2OP(O)(O−)(OCH2CH2N+(CH3)3)] (II)(式中、Rは脂肪酸残基(アシル基)である)で表される。 Rで示される脂肪酸残基(アシル基)としては、炭素数10〜28の飽和または不飽和脂肪酸残基が好ましく、より好ましくは、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、イコサノイル基、ドコサノイル基、その他の炭素数14〜22の飽和脂肪酸残基であり、特に好ましくは炭素数16を有する飽和脂肪酸残基であるパルミトイル基である。 また、一般式(I)においてQで示される化学的架橋は、SODとレシチンとを架橋して化学的に結合(共有結合)させ得るものであれば特に限定されない。そのような化学的架橋としては、残基:−C(O)−(CH2)n−C(O)−(式中、nは2以上の整数を表す)が特に好ましい。この残基は、式:HO−C(O)−(CH2)n−C(O)−OHで表される直鎖状のジカルボン酸、その無水物、エステル、ハロゲン化物等の両端に存在する水酸基(但し、無水物、エステル、ハロゲン化物の場合には、両端に存在する水酸基に該当する部分)を除いた残基である。 一般式(I)においてQが上記の直鎖状のジカルボン酸残基である場合には、Qはその一端において前記した式(II)のリゾレシチン残基の水酸基由来の酸素とエステル結合により結合している。また、エステル結合をしたQの他端は、SODのアミノ基とアミド結合などにより直接結合している。 なお、上記化学的架橋の残基においてnとしては2以上の整数であり、好ましくは2〜10の整数である。 また、式(I)においてmとしてはSOD1分子に対するリゾレシチンの平均結合数を表している。したがって、mは1以上の整数であり、1〜12、特に4であることが好ましい。 本発明で使用するPC−SODの製造方法、すなわちレシチン誘導体とSOD、好ましくはヒトCu/Zn SODの結合方法は、例えば、特開平9−117279号公報に記載の方法により行うことができる。 その好ましいPC−SODの化学構造を模式的に示すと、以下のPC−SODが特に好ましい。(mは、結合したレシチン誘導体数) すなわち、E. coliを宿主として遺伝子組み換えにより製造したヒトCu/Zn SODの遊離アミノ基に、レシチン誘導体を平均4分子共有結合させたものである。 本発明の間質性肺炎治療剤において用いるPC−SODは、医薬として使用できる程度に精製され、かつ、医薬として混入が許されない物質を実質的に含まないものであることが好ましい。例えば、PC−SODは、2,500U/mg以上の比SOD活性を有する精製されたものを用いるのが好ましく、3,000U/mg以上の比SOD活性を有する精製されたものがより好ましい。 なお、本発明において1U(ユニット)とは、pH7.8/30℃の条件下でNBT(ニトロブルーテトラゾリウム)を用いてJ. Biol. Chem., vol.244, No.22 6049-6055 (1969) に記載の方法に準じて測定し、NBTの還元速度を50%阻害するPC−SODの酵素量を表す。 本発明が提供する間質性肺炎治療剤は、かくして調製されたPC−SODを有効成分とする間質性肺炎治療剤であるが、好ましくはPC−SODと共に安定化剤を含有するものがよい。そのような安定化剤としては、例えば糖成分をあげることができる。糖成分としては医薬的に使用される糖成分であれば特に限定されないが、なかでもシュークロースが好ましい。したがって、本発明が提供する最も好ましい間質性肺炎治療剤は、PC−SODと共にシュークロースを含有する組成物である。シュークロースとしては医薬品として使用できる程度に精製されたものが好ましく、特に活性炭で処理されたシュークロースを用いるのがよい。かかるシュークロースをPC−SODと共に使用することにより、長期間保存によるPC−SODの活性低下を防ぐことができ、安定性が高く、凍結乾燥した場合であっても、その性状が特に良好な組成物として調製することができる。 本発明の間質性肺炎治療剤におけるPC−SODとシュークロースの配合比率は、投与量、製剤の形態等に応じて適宜決定することができ、特に限定されるものではない。しかしながら、PC−SODとシュークロースの重量比として、0.1/100〜80/100程度の範囲内にあることが好ましく、0.4/100〜60/100程度がより好ましい。 本発明の間質性肺炎治療剤には、PC−SODの活性に影響を与えず、且つ製剤の効果に影響を与えない限り、他の医薬活性成分や、慣用されている製剤成分、例えば、賦形剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、崩壊剤、緩衝剤、等張化剤、保存剤、無痛化剤等を添加することができる。 本発明が提供する間質性肺炎治療剤の調製は、PC−SODおよびシュークロースを用いて、製剤学的に公知の慣用されている方法により行うことができる。なお、本発明の製剤組成物に使用するPC−SODは、溶液状、凍結状、または凍結乾燥状の形態が好ましい。 したがって、本発明が提供する間質性肺炎治療剤は、PC−SODを含有し、シュークロースにより安定化された静脈内投与の形態、好ましくは注射剤或いは点滴静注の形態で投与することができる。注射剤或いは点滴静注としては、点滴用剤、溶液、懸濁液、乳濁液、用時溶解型固形製剤等の形態であることが好ましく、これらの製剤は、日本薬局方の製剤総則に記載の方法に準じ調製することができる。 本発明の間質性肺炎治療剤中における有効成分であるPC−SODの量および製剤の投与量は、製剤調製の方法、剤形、対象疾患の程度、患者の年齢、体重によって異なり、一概に限定できないが、例えば臨床量として成人1人1日当たり10〜100mg(3〜30万U)、好ましくは40〜80mg(12〜24万U)を挙げることができる。また投与回数についても一概に限定できないが、1日1回ないし1日数回の投与を行うことも可能である。 本発明が提供する間質性肺炎治療剤は、その治療対象として、原因不明の特発性間質性肺炎のみならず、薬剤、例えば、制癌剤、漢方薬、抗リウマチ剤、抗生剤、インターフェロン等の投与に起因する間質性肺炎、更には、膠原病、SARS(Severe Acute Respiratory Syndrome)及び新型インフルエンザに伴う間質性肺炎の治療と、幅広く適用することができ、またこれらの間質性肺炎に限定されるものではない。 以下に本発明を、安定性試験、並びに実際の間質性肺炎患者に投与した試験例(臨床試験例)によりさらに詳細に説明する。 なお、投与に当たっては、本発明のPC−SODについては、その安全性は動物実験により充分確認されているものであり、また、以下に記載する臨床試験例は、患者に対するインフォームドコンセントを実施し、十分な説明の上、臨床試験対象患者から同意を得た上で行った試験である。試験例1:安定性試験 特開平9−117279号公報に記載の方法により調製したPC−SODを用いて、以下の安定性試験を行った。 PC−SOD(0.4mg/バイアル)に、安定化剤として下記表1に記載の化合物を添加し、注射用蒸留水により溶解した後、この溶液を凍結乾燥した。 得られた凍結乾燥物について、その性状試験、ガスクロマトグラフィー(GC)による類縁物質ピークの出現を検討した。 その結果を、下記表1にまとめて示した。 なお、評価項目中の評価基準は、以下のとおりである。1.性状試験の評価 ○:性状に変化を無く、変質を認めない ×:性状が変化し、変質を認める2.GCによる類縁物質の評価 ○:GCによる分析の際、類縁物質のピークが出現しない ×:GCによる分析の際、類縁物質のピークが出現する3.総合判定の評価 上記の性状試験及びGCによる評価の結果、一つでも×があったものは「不良」とし、全く×がなかったものを「良好」と判定した。 表中の結果からも判明するように、PC−SODは、安定化剤としてシュークロースと共に配合することにより、凍結乾燥組成物の性状が良好なものであり、また、ガスクロマトグラフィー(GC)による分析にあっても類縁物質ピークの出現が抑制されていることが判明した。 同じ糖成分であるマンニトール或いはソルビトールを安定化剤として用いても、その安定性が好ましいものでない点を考慮すると、本発明のPC−SODを含有し、シュークロースにより安定化された製剤は特に優れたものであることが判明する。試験例2:保存安定性試験 以下の表2に記載の処方量により、試験例1と同様に凍結乾燥組成物を調製し、それぞれの条件で保存した後の性状試験、SOD活性値及びガスクロマトグラフィー(GC)による類縁物質ピークの出現を検討した。 その結果を、表中にまとめて示した。なお、評価は、性状試験及びGCによる類縁物質ピークの出現試験においては試験例1と同様である。 また、SOD活性値は、製造直後の凍結乾燥組成物のSOD活性値を100とし、保存後の凍結乾燥組成物のSOD活性値を示した。 表中の結果からも判明するように、PC−SODは、シュークロースと共に配合することにより、凍結乾燥組成物の保存安定性が良好なものであり、SOD活性の低下も認められておらず、本発明のPC−SODを含有し、シュークロースにより安定化された製剤の特異性が理解される。臨床試験例1:間質性肺炎に対する試験例1女性:69歳 原因不明の間質性肺炎と診断され、大量のステロイドホルモンであるプレドソロンを大量投与するステロイドパルス療法を行ってきたが、その効果が次第に低下して、プレドニソロン30mg+シクロスポリン50mg併用投与を継続してきた。 酸素の取り込み量の低下が進行し、酸素吸入は本治療開始時には、5L/分の量に達し、特に労作時の時の息切れが激しく(労作時呼吸困難)、労作時の酸素吸入は8L/分にも及ぶものであった。その段階で、本発明のPC−SODを、静注40mg/日の持続投与を開始した。 その結果、酸素取り込み量の低下が改善され、細胞障害の目安となる乳酸脱水酵素(LDH)、間質性肺炎の診断の指標となる血清マーカー:KL−6、炎症の程度を示すC−反応性蛋白(CRP)についても、変動しながらも改善されてきている。 本発明のPC−SODを投与開始後、ほぼ1ヶ月後において、通常時の酸素吸入は3L/分、労作時の酸素吸入は6L/分まで改善され、その後更に改善されている。臨床試験例2:間質性肺炎に対する試験例2女性:67歳 特発性間質性肺炎と診断され、胃癌・虚血性心疾患が基礎疾患。 在宅酸素療法により、酸素2L/分が導入されており、労作時の息切れと乾性咳嗽を強く訴えていた。 その段階で、本発明のPC−SODを、静注40mg/日での持続投与を開始した。 投与開始後2日目より、労作時の息切れが軽快し、2週間後には時折乾性咳嗽の残存があるものの、酸素吸入を外していることに気が付かないで休んでいることがあるなど、明らかなADL(Activities of Daily Living、日常生活動作)の改善を認めた。 2週間後におけるBorgスケールは、8(とても強い+)から2(弱い)となる。 肺拡散機能障害(%DLco)は、投与前32.5から投与9日後61.1に改善された。 なお、Borgスケールとは、運動負荷試験時、運動訓練時の呼吸困難感の尺度として、1〜10の分類尺度を用いて、呼吸困難感の程度を患者に評価してもらうものであり、以下のスケールの評価となっている。Med. Sci. Sports Exerc., 1982:14:377-381臨床試験例3:間質性肺炎に対する試験例3男性:68歳 特発性間質性肺炎と診断され、胆嚢炎・縦隔気腫が基礎疾患。 2年ほど前に間質性肺炎と診断され、在宅酸素療法により、酸素5L/分が導入されており、プレドニゾロン(PSL)30mg及びサンディミュン(シクロスポリン)100mgを併用投与し、加療を継続していたが改善されず、入院治療を開始した。入院後、胆嚢炎から敗血症を併発し、ADLの著明な低下を認め、本発明のPC−SODを40mg/日の持続投与を開始した。 投与開始後より、ADLの明らかな改善が認められて、車椅子での自力病棟内移動が可能となった。PC−SODの静注40mg/日の投与当初には、労作時呼吸苦の改善がみられなかったが、PC−SODを静注80mg/日に増量後3日より、リハビリ後の呼吸苦の軽快が観察された。臨床試験例4:間質性肺炎に対する試験例4男性:62歳 特発性間質性肺炎と診断され、乾性咳嗽を主訴で、本発明のPC−SODを静注40mg/日の持続投与を開始した。 投与開始後約1週間で歩行時の息切れが明らかに改善され、駐車場まで歩くのが息絶え絶えであったのが、息切れがしなくなり、入浴時の息切れも消失した。 呼吸機能である肺活量の拘束性障害(%VC)は、51.0(投与前)→58.9(投与13日後)に上昇した。 以上記載のように、本発明の間質性肺炎治療剤を、実際の間質性肺炎患者に投与した結果、極めて顕著な治療効果を示すものであった。 また、実際の投与期間中において重篤な副作用が認められるものではなく、現実の医薬品として、安全なものであることが確認された。 以上記載したように、本発明が提供する間質性肺炎治療剤は、特異的なPC−SODを有効成分とする静脈内投与の形態にあることを特徴とする間質性肺炎治療剤であり、従来のSODに比較して細胞膜等への親和性に優れたものであり、病変部位におけるスーパーオキサイドアニオンを消去する能力が高いものである。その上シュークロースと共に含有させることによりその安定性に優れたものであり、半減期の短いSODの効果を持続的に発揮する。このSODの効果により、細胞障害を誘導するスーパーオキシドアニオンなどの活性酸素を消去することにより、これらの誘導を効果的に抑制させ、その結果、間質性肺炎の有効な治療を行えるものであり、医療上の価値は多大なものである。 一般式(I): SOD’(Q−B)m (I)(式中、SOD’はスーパーオキサイドジスムターゼの残基を表し、Qは化学的架橋を表し、Bはグリセロールの2位に水酸基を有するリゾレシチンにおけるその水酸基の水素原子を除いた残基を表し、mはスーパーオキサイドジスムターゼ1分子に対するリゾレシチンの平均結合数であって、1以上の整数を表す)で表されるレシチン化スーパーオキサイドジスムターゼを10〜100mg含有し、シュークロースを添加することにより安定化された静脈内投与の形態にあることを特徴とする間質性肺炎治療剤。 式(I)で示されたレシチン化スーパーオキサイドジスムターゼを40〜80mg含有するものである請求項1に記載の間質性肺炎治療剤。 注射剤或いは点滴静注の形態にあることを特徴とする請求項1に記載の間質性肺炎治療剤。 ステロイド剤と併用投与されることを特徴とする請求項1に記載の間質性肺炎治療剤。 ステロイド剤がプレドニゾロン又はメチルプレドニゾロンである請求項4に記載の間質性肺炎治療剤。 mが1〜12の整数である請求項1に記載の間質性肺炎治療剤。 式(I)において、Qが−C(O)−(CH2)n−C(O)−(式中、nは2以上の整数を表す)であることを特徴とする請求項1に記載の間質性肺炎治療剤。 nが2〜10の整数である請求6に記載の間質性肺炎治療剤。 SOD’がヒトのスーパーオキサイドジスムターゼの残基であることを特徴とする請求項1に記載の間質性肺炎治療剤。 SOD’がヒトのスーパーオキサイドジスムターゼのアミノ酸配列における111位のアミノ酸がS−(2−ヒドロキシエチルチオ)システインとなったスーパーオキサイドジスムターゼ修飾体の残基であることを特徴とする請求項1に記載の間質性肺炎治療剤。 スーパーオキサイドジスムターゼが、活性中心に銅と亜鉛を含むスーパーオキサイドジスムターゼであることを特徴とする請求項1に記載の間質性肺炎治療剤。 間質性肺炎が、特発性間質性肺炎を含み、特発性肺線維症、非特異性間質性肺炎、急性間質性肺炎、特発性器質化肺炎、呼吸細気管支炎関連性間質性肺疾患、剥離性間質性肺炎、リンパ球性間質性肺炎に分類される疾患である請求項1に記載の間質性肺炎治療剤。 間質性肺炎が膠原病又は薬剤投与により発症することを特徴とする請求項1に記載の間質性肺炎治療剤。 薬剤が、制癌剤、漢方薬、抗リウマチ剤、抗生剤、インターフェロン等の薬剤である請求項12に記載の間質性肺炎治療剤。 間質性肺炎がSARS(Severe Acute Respiratory Syndrome)又は新型インフルエンザに伴うものであることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の間質性肺炎治療剤。 スーパーオキサイドジスムターゼ(SOD)の効果を的確に発揮させる間質性肺炎治療剤を提供することであり、下記一般式(I): SOD’(Q−B)m (I)(式中、SOD’はスーパーオキサイドジスムターゼの残基を表し、Qは化学的架橋を表し、Bはグリセロールの2位に水酸基を有するリゾレシチンにおけるその水酸基の水素原子を除いた残基を表し、mはスーパーオキサイドジスムターゼ1分子に対するリゾレシチンの平均結合数であって、1以上の整数を表す)で表されるレシチン化スーパーオキサイドジスムターゼを10〜100mg含有し、更にシュークロースを添加することにより安定化された静脈内投与の形態にあることを特徴とする間質性肺炎治療剤である。


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