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タイトル:公表特許公報(A)_L−ドーパ誘発性運動障害、運動異常、薬物嗜癖、疼痛および白内障の処置用薬剤の調製のためのキヌレニン−3−ヒドロキシラーゼ阻害剤の使用
出願番号:2006505367
年次:2006
IPC分類:A61K 45/00,A61P 25/00,A61P 25/36,A61P 25/04,A61P 27/12,A61P 43/00,A61K 31/426,A61K 31/19,C07D 277/20,C07D 277/50


特許情報キャッシュ

サルヴァティ,パトリシア イッツォ,エマニュエラ JP 2006525275 公表特許公報(A) 20061109 2006505367 20040504 L−ドーパ誘発性運動障害、運動異常、薬物嗜癖、疼痛および白内障の処置用薬剤の調製のためのキヌレニン−3−ヒドロキシラーゼ阻害剤の使用 ニューロン・ファーマシューティカルズ・ソチエタ・ペル・アチオニ 505196819 NEWRON PHARMACEUTICALS S.P.A. 津国 肇 100078662 篠田 文雄 100075225 サルヴァティ,パトリシア イッツォ,エマニュエラ EP 03010123.2 20030505 A61K 45/00 20060101AFI20061013BHJP A61P 25/00 20060101ALI20061013BHJP A61P 25/36 20060101ALI20061013BHJP A61P 25/04 20060101ALI20061013BHJP A61P 27/12 20060101ALI20061013BHJP A61P 43/00 20060101ALI20061013BHJP A61K 31/426 20060101ALI20061013BHJP A61K 31/19 20060101ALI20061013BHJP C07D 277/20 20060101ALN20061013BHJP C07D 277/50 20060101ALN20061013BHJP JPA61K45/00A61P25/00A61P25/36A61P25/04A61P27/12A61P43/00 111A61K31/426A61K31/19C07D277/50 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IT,LU,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NA,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW EP2004004719 20040504 WO2004098585 20041118 15 20051214 4C084 4C086 4C206 4C084AA17 4C084NA14 4C084ZA02 4C084ZA022 4C084ZA08 4C084ZA082 4C084ZA22 4C084ZA222 4C084ZA33 4C084ZA332 4C084ZC39 4C084ZC392 4C086AA01 4C086AA02 4C086BC82 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZA02 4C086ZA08 4C086ZA22 4C086ZA33 4C086ZC20 4C086ZC39 4C206AA01 4C206AA02 4C206DA13 4C206KA01 4C206MA01 4C206MA04 4C206MA14 4C206NA14 4C206ZA02 4C206ZA08 4C206ZA22 4C206ZA33 4C206ZC20 4C206ZC39 本発明は、L−ドーパ誘発性運動障害、運動異常、薬物嗜癖、疼痛および白内障の処置用薬剤の調製のためのキヌレニン−3−ヒドロキシラーゼ阻害剤の使用に関する。[発明の背景] キヌレニン経路は、L−トリプトファン代謝の主要ルートである。この経路は、神経毒性酸化活性を有する化合物およびグルタミン酸受容体での活性を調節できる化合物を生成する。この経路は末梢および脳の両方に存在する。この経路の主生成物はキノリン酸(QUIN)、キヌレン酸(KYNA)、およびフリーラジカルを生成する3−ヒドロキシキヌレニン(3OH−Kyn)である。QUINは、NMDAレセプターを活性化し、発作を誘発し、かつ興奮毒性病変を作ることが示されている。KYNAは、高濃度(μM域)でNMDAレセプター複合体のグリシン部位と拮抗し、mM濃度でAMPAおよびカイニン酸レセプターを拮抗し、かつ神経保護作用を有する(Schwarcz and Pellicciari, 2002, JPET 303:1-10)。 例えば、Gomez-Mancilla B.ら: Clinical Pharmacol. 16(5), 1999-10, 1999は、NMDAアンタゴニスト(MK−801)がMTPPで処置されたサルにおいて、L−ドーパ誘発性運動異常を軽減したことを開示している。しかし、KYNAが、高用量(μMおよびmM範囲)でのみNMDAおよびAMPAレセプターの拮抗剤として作用することに注目すべきである。他方、さらに低濃度(30〜100nM)のKYNAは、Carpenedoら(Eur. J. Neurosci. 2001)によって示されたようにイオンチャネル型または代謝型のどちらのGLUレセプターの機能も調節せずにグルタミン酸の放出を強く阻害する。したがって、Kyn−3−OHアーゼ阻害剤の治療作用の原因を、異なる新規な抗グルタミン酸作動メカニズムとすることができる。KYNAがNMDA拮抗剤として作用するだけでなく、新規で予想外のメカニズムが関与している薬物嗜癖についても同じことがあてはまる。Rasmussen K他、Psychopharmacology他、105 (4), 1991, 508-512およびTruyllo K.A., ibidem, 2000, 51(2-3), 121-141は、モルヒネ離脱または疼痛の処置におけるKYNAの使用を単に示唆しているが、Kyn−3−OHアーゼの可能性のある処置的使用を支持する説得力のある実験データはこの論文のどこにも示されていない。 キヌレニン3−ヒドロキシラーゼ(Kyn−3−OHアーゼ)はキヌレニン経路の主要酵素であり、その阻害はQUINおよび3OH−Kynレベルの減少ならびにKYNAレベルの増加を引き起こす。 キヌレニン3−ヒドロキシラーゼ阻害剤は、ハンチントン舞踏病、アルツハイマー病、後天性免疫不全症候群(AIDS)によって起こる痴呆、梗塞性痴呆、脳虚血、脳低酸素症、パーキンソン病、てんかん、頭および脊髄の傷害、筋萎縮性側索硬化症、緑内障網膜症、脳の感染症または脳の炎症のような神経変性疾患の処置のための処置剤として提案されてきた。 キヌレン酸の可能性のある役割は、Kekesi G.ら、Eur. J. Pharmacol., 2002, 445 (1-2) 93−96およびHeyliger S.O.ら、Pharmacol. Res. 1998, 38(4) 243-250によっても示唆されたが、これら2つの論文のいずれもKyn−3−OHアーゼ阻害剤が動物モデルにおいて有効であるという実際の根拠を提供していない。 RO−618048化合物は、Kyn−3OHアーゼの阻害剤である(Roverら、1997, J. Med. Chem 40:4378-4385)。他のキヌレニン3−ヒドロキシラーゼ阻害剤がとりわけUS6323240、WO98/40344、WO98/09938、EP819681、WO99/6375、WO99/28309、WO99/28316、WO99/6375、WO98/3469、WO95/3271に開示されている。[発明の説明] キヌレニン3−ヒドロキシラーゼ阻害剤が、長期L−ドーパ処置、薬物嗜癖、疼痛に関連する運動不全および白内障の処置のための処置剤として有用であることが発見された。 キヌレニン3−ヒドロキシラーゼ阻害剤の活性は、以下に報告するように適切な動物モデルおよび実験証拠によって示された。長期L−ドーパ処置に関連する運動障害 PDにおける運動障害の最も広く使用されている処置は、ドーパミン前駆体であるレボドーパ(L−ドーパ)を用いた代替療法である。しかし、L−ドーパを用いた長期処置は、L−ドーパの作用の脱感作(ウェアリングオフ現象(wearing-off phenomenon))ならびに運動応答合併症(遅発性運動合併症LMC)および運動異常の発生を伴う。 一般に使用されるPDのモデルである6−OHDA病変ラットにおいて、L−ドーパに対する運動応答は、長期処置後に減少する。この作用は、L−ドーパで長期処置中のパーキンソン病患者において観察される「ウェアリングオフ」現象を模倣している(Boldryら、Brain Res 1995 Sep 18; 692: 259-64)。 このラットモデルにおいて、本発明者らは、Ro−618048(40mg/kg、ip)および2−(3,4−ジクロロベンゾイル)シクロプロパンカルボン酸(UPF−648、50mg/kg、ip)が長期L−ドーパ(28日間の処置、25mg/kg/日、ip)に対する回転応答に及ぼす作用をMK−801(0.1mg/kg、ip)と比較して評価した。方法6−ヒドロキシドーパミンにより誘発される病変 左内側前脳束(MFB)に6−ヒドロキシドーパミン(6−OHDA−HBr)を注射することによって黒質線条体経路の片側病変を作製した。ペントバルビタールナトリウム(45mg/kg ip)麻酔下の雄性ウィスターラット(250〜275g)を定位フレーム(David Kopf inst.)に配置した。頭蓋に穴を空け、以下の座標で注射用カニューレを留置できるようにした:ラムダの4.0mm前方、正中線の1.3mm左、および頭蓋表面から8.4mm下側。6−OHDA−HBrを0.02%アスコルビン酸生理食塩水(8g/4l)に溶かし、ハミルトンシリンジで0.5μl/分の流速で8分間(総体積4.0μl)注入した。この処置の後に動物をホームケージに3週間戻し、その後行動試験を行った。回転行動の測定 回転行動を測定するために、ラットを円筒型ケージに入れ、自動回転数計につないだ。それぞれ5分間に全回転した回数をコンピュータで記録した。6−OHDAの注射の3週間後にアポモルヒネ(0.05mg/kg sc)に対する動物の応答を測定することによって回転行動についてスクリーニングした。100回以上の回転応答を示した動物のみを使用した。処理 L−ドーパメチルエステル(50mg/kg)および末梢デカルボキシラーゼ阻害剤であるベンセラジド(12.5mg/kg)の組み合わせまたは生理食塩水のいずれかを1日2回、8:00および16:00に、28日間連続してラットに腹腔内注射した。処理の開始時(L−ドーパ第1日)および処理の終了時(L−ドーパ第28日)、ならびにラットに薬物(Ro−618048、MK801)も投与した翌日に回転をスクリーニングした。各群8匹のラットを使用した。回転速度がその最終的な平均値の半分に達した最初の5分間の区間と、速度が減少し再びその平均値の半分に達した最初の区間との間の時間まで応答の持続時間を測定した。統計解析 分散分析の後に事後比較についてのダンカンの新しい多重検定を行ってデータを解析した。結果 4週間の処理の過程でL−ドーパに対する回転応答は徐々に短くなり、1日目に測定した回転に比べてL−ドーパ処理の28日目には20%(p<0.05)減少した。 L−ドーパに対するこの応答の減少は、Ro−618048の急性同時投与(40mg/kg ip)によって29日目に逆転した。この作用は図1に示すように、MK801(0.1mg/kg ip)で得られた作用と類似している。図1で棒線は平均値±SEM、n=ラットの数。*および$はそれぞれ1日目および28日目でのL−ドーパ処理に比べてP<0.05で有意であることを示す。化合物UPF−648(50mg/kg ip)を用いて同様の結果を得た。 これらの結果は、キヌレニン−3−ヒドロキシラーゼ阻害剤RO−618048およびUPF−648が、長期L−ドーパに対する応答の減少を逆転できることを示している。これらのデータは、キヌレニン−3−ヒドロキシラーゼ阻害剤を、PD患者および運動異常における長期L−ドーパに関連する運動障害の処置に使用しうることを示している。パーキンソン病サルにおいてL−ドーパ誘発性運動異常モデルに及ぼすKyn−3OHアーゼ阻害剤の作用実験プロトコール動物 MPTPで処理され、安定したパーキンソン症候群およびL−ドーパに対する再現性運動異常を有する雌性カニクイザル(macaca fascicularis)(体重2.9〜5.0kg)5〜6匹を用いて実験を行った。国立衛生研究所による実験動物のケアおよび使用に関する指針(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)に従って動物を取り扱い、すべての処置は、ラバル大学の研究所内動物実験委員会で承認されたものであった。動物を観察ケージに別々に入れ、23±1℃に温度調節した室内で12時間の明暗サイクル(午前6時〜午後6時に点灯)に曝した。1日1回午後、動物にペレットおよび果物を給餌し、水を自由に飲ませた。実験処理 RO−618048を単独およびL−ドーパと同時に投与した。特に、A)3日間連続して、増加する用量10、30、100mg/kgでRO−618048単独を投与し、処理前後に投与された賦形剤と比較した。B)3日間連続して、増加する用量10、30、100mg/kgでRO−618048をL−ドーパ/ベンセラジドと同時に与え、同じく3日間連続して与えられたL−ドーパと比較した。処理の合間に準備刺激を維持するために動物にL−ドーパ/ベンセラジド(100/25mg、Prolopa)の経口処理を受けさせた。化合物 増加する用量10、30、100mg/kgのRO−618048を0.1%(v/v)トウィーン80/滅菌水に懸濁し、ガラス製ホモジナイザで均質化し、均質懸濁液として投与されるまで一晩混合した。増加する各用量で経口強制投与(p.o)によって投与される薬物懸濁液の最大体積はそれぞれ10、20および40mlであった。対照として、0.1%(v/v)トウィーン80/滅菌水懸濁液をp.o.(2ml/kg)投与した。L−ドーパメチルエステル(シグマ、セントルイス、ミズーリ州)を常にベンセラジド50mg(ホフマンラロシュ、モントリオール、ケベック州)と共に(各動物についての閾値濃度に基づいて)25から30mg/kgの範囲の用量で0.9%滅菌生理食塩水1mlに溶かし、単独またはRO−618048と組み合わせてs.c.投与した。運動異常のレーティング いくつかの発表済みの研究で我々が使用した尺度によって、振幅、正常な運動活動の妨害および異常運動の頻度の評価に基いて、顔面、頚部、体幹、腕および脚について運動異常の重症度を以下のようにレーティングした:異常なし=O、軽度=1、中度=2、重度=3。得られた運動異常スコアは、身体部分のすべてについてのスコアの合計であり、最大スコアは21点であった。3時間または薬物作用の総持続時間に得られたすべてのスコアの平均として各動物についての平均運動異常スコアを計算した。統計解析 3時間または所与の薬物の作用の総持続時間に各サルについて得られた平均パーキンソンスコアおよび平均運動異常スコアをノンパラメトリックのフリードマン検定後にフリードマン順位和(Friedman rank sum)に基づく多重比較を用いて解析した。すべてのサルについてのこれらのデータを、繰り返し測定のある分散分析(ANOVA)の後にフィッシャーの最小有意差確率(PLSD)を用いて比較した。結果 結果を図2に示す。A)増加する用量10、30、100mg/kgでRO−618048を単独投与しても賦形剤投与に比べてパーキンソンスコアおよび歩行活動は全く作用を受けなかった(RO−618048で処理前後)。B)増加する用量のRO−618048をL−ドーパ/ベンセラジド(25〜30mg/kg)と共に3日間連続して同時投与すると、L−ドーパに対する運動異常応答が30および100mg/kgのRO−618048について約20%有意に減少した(図2)。結論 L−ドーパによって誘発される運動異常に及ぼすRO−618048の即時作用に関する本研究の結果は、L−ドーパによって誘発されるパーキンソン症候群の改善に何らマイナス作用を有さずに運動異常が低減することを表している。薬物嗜癖 薬物嗜癖は、強迫的な薬物探求と摂取を特徴とする病的行動である(Koobら、1998, Neuron 21, 467-476)。連続する薬物使用は、動機づけに関与する神経回路に遅延性の機能変化を引き起こし、それによって依存、薬物切望、および再発に至りうると考えられている(Koobら、1998, Neuron 21, 467-476)。これらの行動変化の一動物モデルは、げっ歯動物における精神刺激薬の繰り返し投与によって誘発される歩行活動の長期持続性の増加であり、これは薬物誘発性行動感作として知られている(Robinson and Berridge, 1993, Brain Res Rev 18, 247〜91 1993)。 本発明者らは、ラットにおけるコカイン誘発性行動感作のモデルを使ってRo−618048(40mg/kg、ip)および2−(3,4−ジクロロベンゾイル)−シクロプロパンカルボン酸(UPF−648、50mg/kg、ip)の作用を評価した。結果から、Ro−618048およびUPF−648が、コカインに対する行動感作の誘発を防止することが実証された。方法歩行活動用装置 到着時に体重200〜250gの雄性ウィスターラット(Charles River, Kingston, NY)を使用した。それぞれ寸法36cm(L)×25cm(W)×20cm(H)の同型の金属線製つり下げ型ケージ16個で歩行活動を測定した。格子状の床の上部1cmに長軸に沿って位置し、ケージの前部および後部から8cm離れて位置する2セットの赤外投光受光光電池を各ケージは有していた。バックグラウンド雑音を白色雑音発生器によって供給した。ケージ内の運動によって光電池への割り込みが生じ、これをIBM互換性コンピュータで自動記録した。感作法および処理 実験前に2〜3日間連続して歩行活動用チャンバーに動物を慣れさせた。コカイン(15mg/kg)または生理食塩水と、Kyn−3OHアーゼ阻害剤であるRo−618048(40mg/kg ip)またはその賦形剤のいずれかとのIP注射をラットに5日間行い、歩行活動を3時間記録した。コカインまたは生理食塩水を最後に注射した10日後(15日目)に、Ro−618048が存在しない状態でコカイン15mg/kgで動物を攻撃誘発し、歩行活動をもう一度3時間監視した。統計解析 4つの実験群(すなわち生理食塩水/賦形剤、生理食塩水/Ro−618048、コカイン/賦形剤およびコカイン/Ro−618048)および2つの時点(1日目および5日目)を含む一因子について反復測定のある二元配置ANOVAを用い、その後に単純効果分析を用いてデータ(3時間に生じた光の遮断の総数)を分析した。1日目および攻撃誘発日を比較するために一因子について繰り返し測定のある2番目の二元配置ANOVAを使用し、その後にニューマン・クールスのポストホック検定を行った。結果 コカインでの5日目の処理までに、賦形剤をIP前処理された動物は、歩行反応の増加を示した(1日目に比べ20%の増加、p<0.05)、逆にRo−618048(40mg/kg IP)で前処理されたラットは有意な増加を全く示さなかった。コカインまたは生理食塩水の最終注射の10日後に、Ro−618048が存在しない状態で15mg/kgのコカインで動物を攻撃誘発し、歩行活動をもう一度3時間監視した。予想どおり、コカインで予め処理され、Ro−618048を投与されていなかったラットは、コカインに応答して歩行活動の増加を示した(1日目に比べ30%の増加、p<0.05)が、5日間のコカイン処理の間にRo−618048で前処理されたラットは増加を示さなかった。UPF−648(50mg/kg ip)でも同様の結果を得た。 これらのデータは、Ro−618048およびUPF−648がコカインに対する歩行感作の進展を防止することを示している。したがって、キヌレニン−3−ヒドロキシラーゼ阻害剤は、薬物乱用による嗜癖および依存の処置に使用されうる。疼痛 急性および慢性疼痛は、有害刺激による侵害受容経路の活性化と共に始まり、その活性化を開始する。両方のタイプの疼痛は、傷害を受けた組織を行動および反射の面から防御するように誘導することによって生存機能の役目を果たす。しかし、慢性疼痛は傷害を受けた組織から自立し身体を無能にする場合がある。実際に、末梢または中枢神経系(CNS)に対する長期組織損傷または傷害に関連する慢性の神経障害性疼痛は、侵害受容経路で様々なレベルで起こる多数の複雑な変化の結果である。特に、傷害を受けた組織の炎症または神経傷害後に、C侵害受容線維からの持続性入力が中枢侵害受容経路に過興奮状態を作り出し、結果として痛覚過敏、異痛、および自発痛をもたらす(Price, 1996 Pain; 68: 1-3)。 トリプトファンおよびその代謝物のいくつかが動物モデルにおいて鎮痛性を有することが示された(Heyligerら、1998 Pharmacol Res 38: 243-50)。 本発明者らは、炎症および神経障害痛の動物モデル(マウスにおけるホルマリン試験)ならびに急性疼痛試験(ラットにおけるテールフリック法)を用いてRo−618048(40mg/kg、ip)および2−(3,4−ジクロロベンゾイル)シクロプロパンカルボン酸(UPF−648、50mg/kg、ip)の鎮痛活性を評価した。方法動物 試験時に体重175〜200gの成雄性ウィスターラットおよび体重22〜25gのCr1:CD−1マウスを使用した(Harlan-Nossan, Italy)。マウスホルマリン試験 マウスを用いたホルマリン試験は、ヒトにおける神経原性炎症および持続痛(Shibataら、1989, Pain 38: 347-352)ならびに傷害後の疼痛のいくつかの特徴(Dallelら、1995, Pain. 61:11-16)をモデル化するために使用されている方法である。 Roslandら(1990, Pain 42: 235-242)の修正プロトコールによれば、マウス左後足底表面から2.7%ホルマリン溶液20μlを皮下(s.c.)注射し、すぐに透明なPVC観察チャンバー(23×12×13cm)に入れた。注射を受けた足の累積リッキング時間(秒)を測定することによって疼痛行動を定量した。ホルマリン注射後の初期(0〜5分)および後期(30〜40分)に測定を行った(Tjolsenら、1992, Pain 51: 5-17)。ホルマリン注射の15分前に、各用量あたりマウス10匹の群に2ml/kg体重の体積で40mg/kgのRo−618048をip投与した。対照群を賦形剤で処置した。テールフリック試験 テールフリック試験は、熱に対する尾の反応を誘発するのに必要な潜時として定義される熱侵害受容の閾値を測定するものである。この試験は、D'AmourおよびSmith(1941, J. Pharmacol. Exp. Ther. 72:74-79)によって記載された方法にしたがって鎮痛効果測定装置(U. Basile, Italy)を用いて実施した。薬物(Ro−618048 40mg/kg)または賦形剤でラットをip処理し、その90分後に各動物を台に乗せ、尾の先端から約3cmの場所にビームの焦点を合わせて放射熱に曝した。対照ラットに3〜5秒の反応潜時をもたらすようにビーム光強度を調整した。熱侵害受容の閾値を尾の反応を誘発するのに必要な潜時として定義した。20秒のカットオフを採用して組織の損傷を防止した。データ解析と統計 マウスホルマリン試験。各用量群あたり8〜10匹の動物の平均±SEMとしてデータを表す。分散分析後にダンネットのt検定を行ってデータを評価した。 ホルマリン注射後の初期(0〜5分)および後期(30〜40分)に注射を受けた足の累積リッキング時間(秒)を記録した。 テールフリック試験。熱刺激の開始と尾のフリックとの間の時間(秒)として潜時を定義した。分散分析後にダンネットのt検定を行ってデータを評価した。結果 マウスホルマリン試験における作用:Ro−618048は、用量40mg/kgで初期の累積リッキング時間を有意に低減した。累積リッキング時間は106±4.39秒(対照群)から75±5.5秒(p<0.05)に減少した。 後期において、Ro−618048は累積リッキング時間の用量依存的な有意な減少を引き起こした(p<0.05)。累積リッキング時間は、対照群の123±12.8秒から68±14.3秒に減少した。UPF−648(50mg/kg ip)でも同様の結果を得た。 テールフリック試験における作用:2つの群のラットに賦形剤またはRo−618048(40mg/kg)をip投与した。対照群では熱侵害刺激に対するテールフリック応答の潜時は3.9±0.4秒であった。処置群では潜時は投与後90分で有意に異なった(6.1±0.4秒)。UPF−648(50mg/kg ip)でも同様の結果を得た。 本発明者らの結果は、使用したモデルにおいて、Ro−618048およびUPF−648が、抗侵害受容作用を有することを示している。これらのデータは、Kyn 3OHアーゼ阻害剤の使用が、ヒトにおける急性痛、炎症痛、神経障害痛および慢性痛の処置に有益でありうることを示している。白内障 哺乳動物のレンズは、「キヌレニン代謝経路」に沿って形成されるトリプトファン(TRP)代謝物の1つである高濃度の3−ヒドロキシキヌレニン(3OH−Kyn)を含む。TRPから3OH−Kynへの合成には2つの酵素が必要である。第1の酵素は、TRPをキヌレニンに代謝できるインドールアミン−2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)である。第2の酵素は、キヌレニンを3OH−Kynに代謝するキヌレニン−3−ヒドロキシラーゼ(Kyn−3−OHアーゼ)である。これらの両方が虹彩/毛様体に高度に発現し、虹彩/毛様体では有意な量の3OH−Kynが合成されている(Chiarugiら、1999)。しかし、この論文は、白内障発生性ではない眼から抽出された酵素を用いて実施された試験が開示され、治療的処理の実際の活性を予測すると現実にみなすことができる唯一のモデルである白内障発生レンズではインビボ実験もインビトロ実験のどちらも全く実施されていないと記載している。 新たに形成した3OH−Kynが、次に房水に連続的に放出されレンズに能動的に取り込まれ、そのレンズでUVフィルター化合物の合成に使用されうると提案されている。3OH−Kyn自体、そのグリコシド誘導体、および3OH−Kyn代謝物の1つである4−(2−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)−4−オキソブタン酸のグリコシド誘導体は有効な太陽光フィルターであり、昼行動物のレンズにそれらが存在すると太陽光に存在するUV線から虹彩を保護するのに有用でありうることが今や広く受け入れられている(Truscottら、1994; Taylorら 2001)。 UV光から虹彩を保護する他にも、レンズに3OH−Kynおよびその代謝物のいくつかが蓄積するとレンズの混濁および老人性白内障の形成に至る過程が促進される。実際に、3OH−Kynは、レンズのタンパク質と反応し白内障物質にみられるものに類似した褐色生成物を形成する。さらに、3OH−Kynおよび関連化合物のo−アミノフェノール部分は、結晶と反応できてタンパク質四次構造を修飾することでレンズタンパク質の酸化的損傷および老人性白内障の形成に寄与するラジカル種の形成を担う複雑な自己酸化過程をたどる(Goldsteinら、2000)。Kyn−3OHアーゼの阻害剤は、虹彩−毛様体およびレンズにおける3OH−Kyn合成を低減し、レンズタンパク質に及ぼす3HKの作用を減少させ、老人性白内障の発生を防止しうる。 本発明者らは、白内障のインビボモデル(長期ナフタレン処置)およびインビトロモデル(種々の傷害の原因にさらされた培養レンズ)においてKyn−3OHアーゼ阻害剤(Ro−618048)および2−(3,4−ジクロロベンゾイル)シクロプロパンカルボン酸(UPF−648、50mg/kg、ip)による処置の作用を評価した。得られた結果は、Kyn−3OHアーゼ阻害剤による処置が、これらのモデルにおいてレンズの混濁度を低減することを示している。 想定される治療的使用のために、キヌレニン−3−ヒドロキシラーゼ阻害剤は薬学的組成物に適切に製剤されて経口、非経口または局所経路によって投与されるであろう。投薬方式は、選択された化合物の薬物動態的および毒性学的性質、患者の状態、および処置されるべき病状の種類に基づいて当業者によって調整されうる。それでも用量範囲はすでに開示された、例えば上に引用した先行技術の特許文献における用量範囲と実質的に異ならないであろう。それらの特許文献は、神経変性疾患の処置における公知の使用について参照により本明細書に組み入れられる。図1は、Ro−618048およびUPF−648が長期L−ドーパに対する回転応答に及ぼす作用をMK−801と比較して評価した結果を示す。図2は、L−ドーパによって誘発される運動異常に及ぼすRO−618048の即時作用に関する研究の結果を示す。 L−ドーパ誘発性運動障害、運動異常、薬物嗜癖、疼痛および白内障の処置用薬剤の調製のためのキヌレニン−3−ヒドロキシラーゼ阻害剤の使用。 L−ドーパ誘発性運動障害の処置用薬剤の調製のための、請求項1記載の使用。 運動異常の処置用薬剤の調製のための、請求項1記載の使用。 薬物嗜癖の処置用薬剤の調製のための、請求項1記載の使用。 疼痛の処置用薬剤の調製のための、請求項1記載の使用。 白内障の処置用薬剤の調製のための、請求項1記載の使用。 キヌレニン−3−ヒドロキシラーゼ阻害剤が、RO−618048またはUPF−648である、請求項1〜6に記載の使用。 L−ドーパ誘発性運動障害に冒された患者の処置法であって、該患者に有効量のキヌレニン−3−ヒドロキシラーゼ阻害剤を投与することを含む処置法。 運動異常に冒された患者の処置法であって、該患者に有効量のキヌレニン−3−ヒドロキシラーゼ阻害剤を投与することを含む処置法。 薬物嗜癖に冒された患者の処置法であって、該患者に有効量のキヌレニン−3−ヒドロキシラーゼ阻害剤を投与することを含む処置法。 疼痛に冒された患者の処置法であって、該患者に有効量のキヌレニン−3−ヒドロキシラーゼ阻害剤を投与することを含む処置法。 白内障に冒された患者の処置法であって、該患者に有効量のキヌレニン−3−ヒドロキシラーゼ阻害剤を投与することを含む処置法。 L−ドーパ誘発性運動障害、運動異常、薬物嗜癖、疼痛および白内障の処置用薬剤の調製のためのキヌレニン−3−ヒドロキシラーゼ阻害剤の使用。


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