生命科学関連特許情報

タイトル:再公表特許(A1)_遺伝子を用いた熱不安定性フェノタイプ症のリスク診断法
出願番号:2005021294
年次:2008
IPC分類:C12Q 1/68,C12N 15/09,C12Q 1/25,C12Q 1/26,C12Q 1/48


特許情報キャッシュ

木戸 博 木下 盛敏 水口 寛 高橋 則彦 JP WO2006054722 20060526 JP2005021294 20051118 遺伝子を用いた熱不安定性フェノタイプ症のリスク診断法 大塚製薬株式会社 000206956 国立大学法人徳島大学 304020292 三枝 英二 100065215 掛樋 悠路 100076510 斎藤 健治 100099988 木戸 博 木下 盛敏 水口 寛 高橋 則彦 JP 2004335958 20041119 JP 2004335966 20041119 C12Q 1/68 20060101AFI20080509BHJP C12N 15/09 20060101ALI20080509BHJP C12Q 1/25 20060101ALI20080509BHJP C12Q 1/26 20060101ALI20080509BHJP C12Q 1/48 20060101ALI20080509BHJP JPC12Q1/68 AC12N15/00 AC12N15/00 AC12Q1/25C12Q1/26C12Q1/48 Z AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,LY,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20080605 2006545182 45 4B024 4B063 4B024AA11 4B024CA02 4B024CA11 4B024HA14 4B063QA01 4B063QA05 4B063QA17 4B063QA18 4B063QQ08 4B063QQ21 4B063QQ22 4B063QQ26 4B063QQ43 4B063QQ52 4B063QR08 4B063QR32 4B063QR56 4B063QR57 4B063QR62 4B063QS25 4B063QS34 4B063QS36 4B063QX01 4B063QX02 本発明は、熱不安定性フェノタイプ症のリスク診断法に関する。熱不安定性フェノタイプ症とは、高熱によって誘発され得る致死的多臓器不全、或いは中枢神経障害に基づく後遺症が残る可能性が健常者と比較して有意に高い体質を意味し、本発明では、このような熱不安定性フェノタイプ症のリスクを診断することができる。 小児では39℃以上の発熱時にしばしば熱性痙攣を発症するが、中には持続的な高熱をきっかけとして重篤な中枢神経症状を発症し、肝臓、心臓、腎臓などの不全を伴って死に至る原因不明の疾患群があり、その予防法、診断法、治療法は明らかでなかった。 非特許文献1は、CPT IIの変異と生化学的機能について調べた文献であり、37℃と41℃でのパルミテート酸化率を調べているが、温度変化によるCPT IIの機能変化と具体的な疾患との関連について記載はなく、特に中枢神経症状を伴うインフルエンザ脳炎・脳症、ライ症候群などとの関連については示唆されていない。 非特許文献2は、ライ様症候群においてCPT IとCPT IIの活性低下の関与を示唆しているが、温度とこれら酵素の活性との関係については記載されていない。 非特許文献3は、インフルエンザ脳炎・脳症の重症化とCYP2C9多型との関連について記載しているが、温度と酵素活性の関連についての開示はない。S.E.Olpin, et al. J.Inherit.Metab.Dis. 26, 543-557頁, 2003阿部博紀、千葉医学 74:9〜16頁, 1998船渡忠男ら、臨床病理、50:2, 140-145頁、2002 本発明は、発熱をきっかけとして重篤な中枢神経症状を発症する熱不安定性フェノタイプ症のリスクを予め診断(予見)することを目的とする。 本発明者らの研究により、インフルエンザ感染をきっかけとして特に重篤な中枢神経症状、脳浮腫を伴うインフルエンザ脳炎・脳症患者群などの熱不安定性フェノタイプ症では、体内のエネルギー産生に不可欠なミトコンドリアでの脂肪酸代謝酵素が、高熱で急速に酵素の活性が失われてしまうタイプの遺伝子変異が高率に潜んでいることが明らかとなった。この遺伝子変異は、平熱ではほとんど酵素活性に異常がないか、酵素活性低下があっても軽度でこれによって何らかの病状を示すことは通常なく、高熱にならない限り症状が現れないことが多い。しかも多くの患者では遺伝子変異がへテロで、半分は正常で半分が変異した酵素が混在している患者が多い。そのため、日常生活では異常を認められること無く経過する事が多い。これとは別に、生まれながらにこれら脂肪酸代謝酵素群に遺伝子変異による酵素活性が著明に低下する先天性代謝障害疾患があるが、この場合生後数ヶ月の内にインフルエンザ感染無しにライ様症候群を示して脳の浮腫と多臓器不全で死に至るケースが報告されている(Tamaoki Y., Kimura M., Hasegawa Y., Iga M., Inoue M., Yamagishi S., Brain Dev. 2002;24;675-80)。インフルエンザ脳炎・脳症を含む熱不安定性フェノタイプ症では、このような重症な酵素欠損症ではなく、熱で不安定化する遺伝子変異が病気の根底に存在して、これが原因となって発症することが明らかになった。 この事は、インフルエンザ脳炎・脳症以外にも高熱時に全身のエネルギー産生系が障害されることによって多臓器不全が誘発される一群の疾患、例えばこれまで原因不明とされてきた乳幼児突然死症候群、インフルエンザ脳炎・脳症以外の様々な感染症、例えばRSウイルス感染症、アデノウイルス感染症、ライノウイルス感染症、風疹、日本脳炎、マラリア感染症などで重症化と多臓器不全を示す患者群、アスピリン、ボルタレン、メフェナム酸服用時に発症するライ症候群、川崎病等も同様な原因で発症する可能性が高いと推定される。そこで本発明は、これらの疾患を「熱不安定性フェノタイプ症」として、発症の原因となる熱不安定性遺伝子変異を的確に診断する新しい診断法の開発を行い、本発明に至った。 本発明は、以下のリスク診断方法および診断キットを提供するものである。1. インフルエンザ脳炎・脳症、ライ症候群、RSウイルス感染症、アデノウイルス感染症、ライノウイルス感染症、風疹、日本脳炎、マラリア感染症、川崎病、乳幼児突然死症候群を含むあるいはこれらに起因する熱不安定性フェノタイプ症のリスクを診断する方法であって、ミトコンドリアでのエネルギー代謝に関与する各種Transporter, カルニチン回路、長鎖β酸化回路、中鎖・短鎖β酸化回路、電子伝達、ケトン体合成およびATP産生のいずれかに関与する少なくとも1種の酵素の酵素活性が37℃を100%としたとき、39℃以上では健常者よりも有意に低下するか否かを調べることを特徴とする、方法。2. 前記熱不安定性フェノタイプ症が、インフルエンザ脳炎・脳症である、項1に記載の方法。3. 37℃での前記酵素活性と比べて39℃以上での前記酵素活性が低下する程度を前記酵素をコードする遺伝子のSNP、挿入および欠失からなる群から選ばれる多型を調べることにより予測することを特徴とする項1に記載の方法。4. ミトコンドリアでのエネルギー代謝に関与する各種Transporter, カルニチン回路、長鎖β酸化回路、中鎖・短鎖β酸化回路、電子伝達、ケトン体合成およびATP産生のいずれかに関与する酵素が下記の表に示される中の少なくとも1種の酵素である、項1に記載の方法。5. 前記酵素が、CPT II, ETFA, ETFB, ETFDH, HADHB, HMGCS, VLCAD, LCADおよびHADHAからなる群から選ばれる少なくとも1種である項4に記載の方法。6. CPT II、ETFA, ETFB, HADHA, HADHB, HMGCS, VLCAD, LCADおよびETFDHについて、以下の22種の1または2以上の位置、あるいはこれらと連鎖不平衡の関係にある遺伝子のSNPを検査し、2以上の遺伝子多型の組み合わせまたはハプロタイプの組み合わせを利用することを特徴とする、項1に記載の方法:7. 以下の(1)〜(8)のいずれかのSNPの組み合わせを有するか否かを基準として、熱不安定性フェノタイプ症のリスクを診断する項1に記載の方法:8. 遺伝子多型(SNP)の検出が、ヌクレオチド直接塩基配列決定法、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)-ドットブロット分析、一塩基プライマー伸長法、PCR-単鎖高次構造多型(SSCP)分析、PCR-制限酵素断片長多型(RFLP)分析、インベーダー法、定量的リアルタイムPCR検出法および質量分析計を用いた遺伝子多型検出法(mass array)からなる群から選ばれる少なくとも1つの方法により行われる項1〜7のいずれかに記載の方法。9. 前記酵素をコードする遺伝子のSNP、挿入および欠失からなる群から選ばれる多型を、対応する少なくとも1種のプローブを固定化した固相支持体を用いて測定することを特徴とする、項3に記載の方法。10. ミトコンドリアβ酸化脂肪酸代謝系に関係する酵素の特定の多型の1種または2種以上の組み合わせを検出可能なプライマー、プローブ、dNTPミックス、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、緩衝液を含む熱不安定性フェノタイプ症のリスクを診断するための診断キット。 本発明によれば、熱不安定性フェノタイプ症のリスクを診断し、そのリスクが高いとされた者、特に乳幼児を含む子供の場合、高熱になる疾患の予防あるいは疾患に罹患した場合の早期治療により熱不安定性フェノタイプ症を発症しないように管理することが可能になる。高熱/痙攣時および正常体温条件におけるIAE患者のアシルカルニチン(C16:0 + C18:1)/C2比の分布IAE患者と患者番号21の家族、およびインフルエンザに感染していない1人のボランティア家族のアシルカルニチン比を分析した。最大カットオフ範囲= 0.048 そして高リスク患者範囲= 0.09以上、これらは各々細字の破線および太字の破線で示される。+: 致死的; ▲: 後遺症; ×: 患者番号21の姉コントロールおよび患者番号21の肝ホモジネートからのCPT II活性の変化の37℃と41℃における経時変化を示す。 データは平均± SD (n = 6)として示される。COS-7細胞中に過剰発現されたWTと変異型CPT IIの37℃および41℃における活性の比較 WT (FVM-CPT II), F352C (CVM- CPT II), V368I (FIM- CPT II)およびF352C + V368I (CIM-CPT II)のCPT II活性は37℃および41℃で測定された。データは、平均± SD (n = 5)として示される。リスク診断に使用可能な酵素をコードする遺伝子とそのSNPあるいは挿入/欠失並びにその領域と位置、ジェノタイプ、フェノタイプおよび近傍の配列を示す。有意に患者に高頻度に見られた遺伝子多型 エネルギー代謝障害酵素群の遺伝子変異にはこれまでに人種差が報告されており、日本ではβ酸化回路の長鎖脂肪酸代謝酵素群と電子伝達系の酵素群が、欧米のコーカサス人種では中鎖脂肪酸代謝酵素群に遺伝子変異の多い事が知られている。高熱によって誘発される熱不安定性遺伝子変異も、同様な遺伝子変異の発症頻度を背景としていると考えられる。 熱不安定性フェノタイプ症の対象となり得る酵素群としては、以下のものが例示される。 1)トランスポーター:カルニチントランスポーター(OCTN2, OCTN),脂肪酸トランスポーター(CD36);電位依存アニオンチャンネル(voltage-dependent anion channel;VDAC),カルニチン/アシルカルニチントランスフェラーゼ(CACT1),トリカルボン酸輸送蛋白(TCT)、アデニンヌクレオチドトランスポーター(ANT) 2)カルニチン回路と関連酵素:アシル−CoAシンテターゼ(ACS),カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1肝臓型(CPT1A;CPT1), カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1筋肉型(CPT1b;CPT1B), カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ2(CPT2), カルニチン/アシルカルニチントランスロカーゼ(CACT1; SLC25A20) 3)長鎖β酸化回路:超長鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ(VLCAD),TFPミトコンドリアルトリファンクショナルプロテインα-サブユニット(TFPα;HADHA),TFPミトコンドリアルトリファンクショナルプロテインβ-サブユニット(TFPβ;HADHA), 4)中鎖・短鎖β酸化回路:長鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ(LCAD),中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ(MCAD),中鎖アシルCoAチオラーゼ(LCKAT),短鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ(SCAD),短鎖エノイルCoAヒドラターゼ(SCEH),短鎖ヒデオキシ−アシルCoAデヒドロゲナーゼ(SCHAD),短鎖アシルCoAチオラーゼ(SCKAT), 5)電子伝達:電子伝達フラボプロテインα-サブユニット(ETFA),電子伝達フラボプロテインβ-サブユニット(ETFB),電子伝達フラボプロテインデヒドロゲナーゼ(ETFDH),NADH-ユビキノンリダクターゼ複合体(Complex I)、スクシネート−ユビキノンリダクターゼ(Complex II)、ユビキノール-チトクローム-c リダクターゼ(Complex III)、チトクローム-c オキシダーゼ(Complex IV)、 6) ATP産生;ATP synthase、アンカップリングプロテイン (UCP)、 7)ケトン体合成:ヒドロキシメチルグルタリル-CoAシンテターゼ1 or 2(HMGCS1 or 2;HMGS1 or 2),ヒドロキシメチルグルタリル-CoAリガーゼ(HMGCL;HMGL), 本明細書において、「リスクを診断する方法」とは、インフルエンザ脳炎・脳症、ライ症候群、RSウイルス感染症、アデノウイルス感染症、ライノウイルス感染症、風疹、日本脳炎、マラリア感染症、川崎病、乳幼児突然死症候群を含むあるいはこれらに起因する熱不安定性フェノタイプ症に罹患して高熱(体温として通常39℃以上、さらに40℃以上、特に41℃以上)となった場合に、致死的又は後遺症の残る多臓器不全又は中枢神経症状を発症する可能性(リスク)を予見することを意味する。 従って、このリスク診断又は予見は、熱不安定性フェノタイプ症に罹患する前に行うのが重要である。熱不安定性フェノタイプ症は、高齢者を含む大人も罹患するが、特に乳幼児又は子供が罹患した場合に致死的又は後遺症の残る多臓器不全又は中枢神経症状を発症しやすい。従って、本発明のリスク診断を行う対象者は、ヒトであれば特に限定されないが、例えば18歳以下、さらに15歳以下、特に12歳以下の子供が好ましく、乳幼児(特に乳児)が熱不安定性フェノタイプ症の罹患を抑制する観点から好ましい。 子供(特に乳幼児)を含むヒトのリスク診断の結果、熱不安定性フェノタイプ症に罹患する可能性が高いと診断された場合には、熱不安定性フェノタイプ症に関連する高熱を伴う疾患にかからないようにするのが重要であり、ウイルスないし細菌感染症の場合には、うがい、手洗い、マスクの使用、ワクチンなどの予防薬の投与が挙げられる。熱不安定性フェノタイプ症の原因となり得る、高熱を伴う疾患に罹患した場合には速やかに治療薬や安全な解熱剤を投与する等により体温を41℃未満、さらに40℃未満、特に39℃未満、より好ましくは38.5℃未満に体温をコントロールすることが重要である。 本明細書において、熱不安定性フェノタイプ症に関連する疾患群としては、インフルエンザ脳炎・脳症、ライ症候群、RSウイルス感染症、アデノウイルス感染症、ライノウイルス感染症、風疹、日本脳炎、マラリア感染症、乳幼児突然死症候群、川崎病が挙げられる。 本発明は、高熱時においてミトコンドリアβ酸化脂肪酸代謝系の酵素活性が急速に低下することにより致死的または後遺症を残すような重篤な多臓器不全/中枢神経症状を引き起こすことを見出したことに基づく。 このような多臓器不全/中枢神経症状を生じる場合、酵素活性は平熱(例えば37℃)の活性を100%とすると、健常者では例えば41℃で5〜10%程度の低下である。この酵素活性の低下率が50%を超えると高熱時に多臓器不全/中枢神経症状が現れる可能性がある、さらに低下率が60%以上、70%以上、80%以上、90%以上と高くなって行くにつれて、多臓器不全/中枢神経症状の発症の確率は高まっていく。39℃以上の温度において、酵素活性の低下率が80%を超える場合には、多臓器不全/中枢神経症状を生じる可能性が極めて高い。 酵素活性の低下は、本発明の診断対象となる被験者の酵素遺伝子配列を調べ、該遺伝子配列に基づき遺伝子工学的手法により酵素を製造し、37℃と39℃以上の温度(例えば39℃、40℃、41℃)で一定時間処理した後の酵素活性を比較することにより評価することができる。このようにして、39℃以上(例えば39℃、40℃、41℃)で酵素活性が健常者に比較して有意に低下した酵素の遺伝子配列を調べることで、この配列を基準にして熱不安定性フェノタイプ症のリスクの大きさを診断ないし評価することができる。例えば、酵素がCTP II の場合、F352CとV368Iの両方の多型を有する場合には、発熱時に重篤な中枢神経症状を引き起こす可能性が高く、熱不安定性フェノタイプ症と診断することができる。 37℃での前記酵素活性と比べて39℃以上での前記酵素活性が低下する程度は、前記酵素をコードする遺伝子のSNPを調べることにより予測することができる。 リスク診断に特に有用な酵素としては、CPT II, ETFA, ETFB, ETFDH, HADHB, HMGCS, VLCAD, LCAD, HADHA等が挙げられる。 リスク診断に使用可能な酵素をコードする遺伝子とそのSNPあるいは挿入/欠失並びにその領域と位置、ジェノタイプ、フェノタイプを以下の表4にまとめ、さらにSNP近傍の配列を含めて図4に示す。 本発明のリスク診断はHADHA、HADHBの以下の表5の位置の多型を使用して、単独の遺伝子多型により実施可能である:また、2種以上の多型を組み合わせて診断する場合には、以下の表6に示される組合せが好ましい。またはこれらの各遺伝子多型のアレルと連鎖不平衡の関係にある別のアレルを用いてリスクを判定することができる。 なお、これらそれぞれの遺伝子多型は隣接する遺伝子多型とともに親から子へ受け継がれることがしばしばあり、それらのアレルの関係は連鎖不平衡の関係にあると呼ばれる。連鎖不平衡はアレル間の距離が長くなるほど弱くなる傾向にある。従って近傍の遺伝子の場合は、強い連鎖不平衡が見られることが多い。本明細書に示された遺伝子と近隣の遺伝子との間に強い連鎖不平衡の関係にある場合、遺伝子多型の頻度や遺伝子多型の出現パターンが同じになることがあり、本実施例の遺伝子多型を予測することができる。一方で、本明細書に記した遺伝子に限らず、他の隣接する遺伝子を解析することで、本リスク診断に利用することが可能になる。たとえ弱い連鎖不平衡にあったとしても、リスク診断をおこないうることがある。例示するならば、HADHA HADHBは連鎖不平衡の関係にあるものが多い。従って、この遺伝子に隣接する遺伝子の多型を利用したリスク診断も実施することが可能である。 連鎖不平衡にある遺伝子多型は制約を受け、限られた遺伝子多型の並びを形成する。この遺伝子多型のひとつの染色体上にある並びの組み合わせをハプロタイプとよぶ。本発明のリスク診断は、ミトコンドリアβ酸化脂肪酸代謝系に関係する酵素の特定の多型の1種または2種以上の組み合わせを検出可能なプライマー、プローブ、dNTPミックス、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、緩衝液等を含む診断キットを用いて行うことができる。 本発明はこのような診断キットにも関する。 また、本発明のリスク診断法は、他の方法を用いて実施することもできる。 遺伝子多型の検出は本方法に限らず、ダイレクトシーケンシング法、一塩基プライマー伸長法、PCR-単鎖高次構造多型(SCPS)分析、PCR-制限酵素断片長多型(RFLP)分析、インベーダー法、および質量分析計を用いて実施することができる。リスク診断方法に関しては、DNAに限らず、RNAを材料にした遺伝子多型解析も可能であり、定量的リアルタイムPCR検出法による遺伝子発現定量法が実施できる。また、アミノ酸置換を伴う遺伝子多型に関しては、を用いたラジオイム抗体ノアッセイ、酵素免疫測定法(ELISA)、なども可能である。以上の方法は、効率的に実施するうえでは、ビーズ、チップ、膜等の固相支持体に固定化し、多型を測定する方法が挙げられる。 以下、本発明について実施例を用いてより詳細に説明する。実施例1 本発明者の行った具体的な実験方法と結果を以下に示す。材料 インフルエンザ脳症患者31検体、インフルエンザ脳症が疑われる患者1検体(各施設の倫理委員会承認済み、インフォームドコンセントの取得済み)、健常検体100検体方法 インフルエンザ脳症患者31検体、インフルエンザ脳症が疑われる患者1検体、健常人コントロール100検体から抽出された、ゲノムDNA用いて各遺伝子の増幅を、表Aに示すPCR用プライマー(PCR-F, PCR-R)を用いて行った。それぞれの増幅した遺伝子を用いて、表Aに示すプライマー(Seq-F, Seq-R)を用いて、ダイレクトシーケンス法により塩基配列を解析した。遺伝子多型の参照には、NCBIのデータベース(http://www.nlm.nih.ncbi.gov, http://www.ncbi.nlm.nih.gov/projects/SNP/)、HGMD(http://www.hgmd.cf.ac.uk/hgmd0.html)等のデータベースを用いた。表4中のrsで始まる番号はデータベースの参照番号で、unknownと記載されている遺伝子多型については、NCBIに登録されていない遺伝子多型を示している。CPT2,ETFA,ETFB,ETFDH、VLCAD、LCAD,HADHA,HADHBに関しては患者31検体の遺伝子解析が可能であった。その他の遺伝子に関しては、27検体の遺伝子解析が可能であった。一方、健常人検体はCPT2,ETFA,ETFB,ETFDHに関しては、100検体で遺伝子解析が可能であったが、それ以外の遺伝子は健常人99検体から遺伝子解析が可能であった。健常人コントロールで多く見られたアレルホモで持つものをW、少ない方のアレルをホモで持つものをM、それぞれのアレルをヘテロで持つものHと定義した。(表4,図4中W,H,M)結果1.遺伝子多型の検出インフルエンザ脳症、CPTII欠損疑いでインフルエンザ脳症が疑われる患者から図4の45箇所の遺伝子多型(一塩基多型:SNP、あるいは挿入、欠失)が検出された。1.1単一遺伝子多型で患者と健常人コントロールにおいて、フィッシャーの両側検定において有意に患者に高頻度に見られた(P<0.05)遺伝子多型HADHA第6エキソン領域(EXON6)、HADHA第6イントロン領域(INTRON6)、HADHA第18エキソン領域(EXON18)、HADHB第2エキソン領域(EXON2)、HADHB第12イントロン領域(INTRON12)、HADHB第14イントロン領域(INTRON14)、HADHB第17エキソン領域(INTRON17)から患者に高頻度にみられる遺伝子多型を検出した。それらを図5に列挙した。 開始コドンATGのAの位置を塩基番号1として、エキソン領域に相当する遺伝子多型の位置は記載する。イントロン領域に相当する塩基番号はエキソン領域に相当する位置の終点から上流側(―で示す)、下流側(+で示す)の位置ならびに、NCBIゲノムデータベースの核酸番号を記載した。HADHA塩基番号474番目のジェノタイプがC/C、C/TならびにT/Tのジェノタイプを持つSNPを検出した。SNPは、フェノタイプには影響を与えないcSNPであったが、 マイナーアレルTをもつ人(健常人11+2名=13名、患者10+0=10名)は、マイナーアレルTをもたない人(健常人86名、患者21名)より、有意(P=0.028)に患者に高頻度に存在し、オッズ比は3.15倍であった。従来までHGMDデータベースやdbSNPsに報告例が無い新規SNPであった。HADHAエキソン6の下流+26番目(NT_022184.14 番号5270935)の第6イントロン内のジェノタイプがG/G、G/CならびにC/Cのジェノタイプを持つSNPを検出した。SNPは、イントロンSNPであったが、 マイナーアレルCをもつ人(健常人11+2名=13名、患者10+0=10名)は、マイナーアレルCをもたない人(健常人86名、患者21名)より、有意(P=0.0280)に患者に高頻度に存在し、オッズ比は3.15倍であった。従来までHGMDデータベースやdbSNPsに報告例が無い新規SNPであった。HADHAエキソン6の下流+32番目(NT_022184.14 番号5270929)の第6イントロン内のジェノタイプがT/T、T/CならびにC/Cのジェノタイプを持つSNPを検出した。SNPは、イントロンSNPであったが、 マイナーアレルCをもつ人(健常人5+1名=6名、患者7+0=7名)は、マイナーアレルCをもたない人(健常人82名、患者25名)より、有意であるとはいえないが(P=0.0958)、患者に高頻度にみられ、オッズ比は2.81倍であった。HADHA塩基番号2519番目のジェノタイプがA/A、A/GならびにG/Gのジェノタイプを持つSNPを検出した。SNPは、フェノタイプには影響を与えないcSNPであったが、 マイナーアレルGをもつ人(健常人11+2名=13名、患者10+0=10名)は、マイナーアレルGをもたない人(健常人86名、患者21名)より、有意(P=0.0280)に患者に高頻度に存在し、オッズ比は3.15倍であった。HADHA塩基番号2619番目のジェノタイプがG/G、G/AならびにA/Aのジェノタイプを持つSNPを検出した。SNPは、フェノタイプには影響を与えないcSNPであったが、 マイナーアレルAをもつ人(健常人8+3名=11名、患者9+0=9名)は、マイナーアレルAをもたない人(健常人89名、患者22名)より、有意(P=0.0171)に患者に高頻度に存在し、オッズ比は3.64倍であった。HADHB塩基番号4番目のジェノタイプがACT/ACTまたは−/ACT(挿入)のジェノタイプを持つ遺伝子多型を検出した。この多型により、ACTをもつアレルの場合はアミノ酸番号2番目にスレオニン(T)、が挿入されるフェノタイプを生じる。ACT挿入型のアレルをもつ人(健常人16+0名=16名、患者10+0=10名)は、ACT挿入型アレルをもたない人(健常人83名、患者16名)より、有意(P=0.0005)に患者に高頻度に存在し、オッズ比は4.86倍であった。HADHBエキソン13の上流−14番目第12イントロン内(NT_022184.14 番号5321791)のジェノタイプがA/A、A/GならびにG/Gのジェノタイプを持つSNPを検出した。SNPは、イントロンSNPであったが、 マイナーアレルGをもつ人(健常人11+2名=13名、患者10+0=10名)は、マイナーアレルGをもたない人(健常人86名、患者21名)より、有意(P=0.0280)に患者に高頻度に存在し、オッズ比は3.15倍であった。従来までHGMDデータベースやdbSNPsに報告例が無い新規SNPであった。HADHBエキソン14の下流4番目の第14イントロン内(NT_022184.14 番号5323009)のジェノタイプがT/T、T/CならびにC/Cのジェノタイプを持つSNPを検出した。SNPは、イントロンSNPであったが、 マイナーアレルCをもつ人(健常人11+2名=13名、患者10+0=10名)は、マイナーアレルCをもたない人(健常人86名、患者21名)より、有意(P=0.0280)に患者に高頻度に存在し、オッズ比は3.15倍であった。HADHBエキソン15の上流26番目の第14イントロン内(NT_022184.14 番号5323658)のジェノタイプがT/T、T/AならびにA/Aのジェノタイプを持つSNPを検出した。SNPは、イントロンSNPであったが、 マイナーアレルAをもつ人(健常人23+3名=26名、患者15+0=15名)は、マイナーアレルAをもたない人(健常人73名、患者16名)より、有意(P=0.0271)に多く存在し、オッズ比は2.63倍であった。HADHB塩基番号1607番目のジェノタイプがG/G、G/CならびにC/Cのジェノタイプを持つSNPを検出した。SNPは、フェノタイプには影響を与えないcSNPであったが、 マイナーアレルCをもつ人(健常人16+3名=19名、患者13+1=14名)は、マイナーアレルCをもたない人(健常人86名、患者21名)より、有意(P=0.0280)に患者に高頻度に存在し、オッズ比は3.47倍であった。1.2 2以上の遺伝子の組み合わせ解析に用いられた遺伝子多型以下に検出した遺伝子多型の代表例のみを列挙し、すべての記載は図4におこなわれている。(コーディング領域に見られた遺伝子多型) CPT II第4エキソン領域(EXON 4)ならびに第5エキソン領域(EXON 5)に、複数のcSNPを検出した。 塩基番号1055番目のジェノタイプがT/T、T/GならびにG/Gのジェノタイプを持つSNPを検出した。このSNPにより、Tをもつアレルの場合はアミノ酸番号352番がフェニルアラニン(F)、Gをもつアレルの場合はシステイン(C)をコードすることから、アミノ酸レベルでも(F/F)、(F/C)ならびに(C/C)のフェノタイプを生じる。 一方、塩基番号1102番目のジェノタイプがG/G、G/AならびにA/Aのジェノタイプを持つSNPを検出した。このSNPにより、Gをもつアレルの場合は、アミノ酸番号368番がバリン(V)、Aをもつアレルの場合はイソロイシン(I)をコードすることから、アミノ酸レベルでも(V/V)、(V/I)ならびに(I/I)のフェノタイプを生じる。 塩基番号1939番目のジェノタイプがA/A、A/GならびにG/Gのジェノタイプを持つSNPを検出した。このSNPにより、Aをもつアレルの場合は、アミノ酸番号647番がメチオニン(M)、Gをもつアレルの場合はバリン(V)をコードすることから、アミノ酸レベルでも(M/M)、(M/V)ならびに(V/V)のフェノタイプを生じる。 ETF遺伝子群においてもcSNPが観察された。ETFAにおいては、塩基番号512番目のジェノタイプがC/Cならびに、C/Tのジェノタイプを持つSNPを検出した。このSNPにより、Cをもつアレルの場合はアミノ酸番号171番が、Tをもつアレルの場合はイソロイシン(I)をコードすることから、アミノ酸レベルでも(T/T)ならびに、(T/I)のフェノタイプを生じる。 ETFBにおいては、塩基番号461番目のジェノタイプがC/C、C/TならびにT/Tのジェノタイプを持つSNPを検出した。このSNPにより、Cをもつアレルの場合は、アミノ酸番号154番がスレオニン(T)、Tをもつアレルの場合はメチオニン(M)をコードすることから、アミノ酸レベルでも(T/T)、(T/M)ならびに(M/M)のフェノタイプを生じる。 また、ETFBからは、塩基番号447番目のジェノタイプがC/C、C/TならびにT/Tのジェノタイプを持つSNPを検出した。このSNPは、フェノタイプには影響を与えないSNPであった。 ETFDHからは、塩基番号92番目のジェノタイプがC/C、C/TならびにT/Tのジェノタイプを持つSNPを検出した。このSNPにより、Cをもつアレルの場合は、アミノ酸番号31番がスレオニン(T)、Gをもつアレルの場合はイソロイシン(I)をコードすることから、アミノ酸レベルでも(T/T)、(T/I)ならびに(I/I)のフェノタイプを生じる。 ETFBにおいては、塩基番号 -320番目のジェノタイプがC/C、C/TならびにT/Tのジェノタイプを持つSNPを検出した。さらに 塩基番号-113番目のジェノタイプがG/GならびにG/Tのジェノタイプを持つSNPを検出した。 ETFDH においては、塩基番号1989番目のジェノタイプがA/A、A/CならびにC/Cのジェノタイプを持つSNPを検出した。これらのSNPは、従来までHGMDデータベースやdbSNPsに報告例が無い新規SNPであった。 ETFAイントロン領域からSNPを検出した。コンティグ配列 NT_024654.13を用いて2548228番目(コンティグ配列NT_024654.13中では第10エキソン開始位置から642塩基に相当するが、対応するアミノ酸が存在しないため、イントロン配列であると考えられる)のジェノタイプがC/C、C/TならびT/Tを持つジェノタイプを検出した。これらのSNPは、従来までHGMDデータベースやdbSNPsに報告例が無い新規SNPであった。 なお、これらそれぞれの遺伝子多型は隣接する遺伝子多型とともに親から子へ受け継がれることがしばしばあり、それらのアレルの関係は連鎖不平衡の関係にあると呼ばれる。連鎖不平衡はアレル間の距離が長くなるほど弱くなる傾向にある。従って近傍の遺伝子の場合は、強い連鎖不平衡が見られることが多い。本明細書に示された遺伝子と近隣の遺伝子との間に強い連鎖不平衡の関係にある場合、遺伝子多型の頻度や遺伝子多型の出現パターンが同じになることがあり、本実施例の遺伝子多型を予測することができる。一方で、本明細書に記した遺伝子に限らず、他の隣接する遺伝子を解析することで、本リスク診断に利用することが可能になる。たとえ弱い連鎖不平衡にあったとしても、リスク診断をおこないうることがある。例示するならば、HADHA HADHB近傍の遺伝子多型は連鎖不平衡の関係にあるものが多い。従って、この遺伝子に隣接する遺伝子の多型を利用したリスク診断も実施することが可能である。3.SNPの組み合わせによるインフルエンザ脳症患者リスク診断(表B) 3.1患者マーカー候補の探索 次に、以上で得られた遺伝子多型を利用して、リスク診断に利用するために、患者にのみ、観察される遺伝子多型の組み合わせ、ならびに、患者の多くを占める遺伝子多型の組み合わせを見つけ出すことを試みた。2つのあるいはそれ以上の遺伝子多型を利用することで、患者群から高いオッズ比を示す遺伝子多型をえた。以下にその遺伝子多型の代表例を列挙した。 HADHB第2エキソン内の塩基番号4番目のジェノタイプがACT/ACT あるいは −/ACT(スレオニンの挿入型)を多型に持ち、かつ、HMGCS2の第9イントロンの−37番目(NT_019273.17 番号16279498)のジェノタイプがC/TあるいはT/Tである組み合わせは、遺伝子解析が可能であった患者27例中5例見られるのに対し、健常人では99例中1例にのみ観察された。HMGCS2の第9イントロンの−37番目のアレルTとHMGCS2の第9イントロンの+68番目(NT_019273.17 番号16279714)のアレルGは、強い連鎖不平衡の関係にある。従って、G/GあるいはA/GのジェノタイプとHADHB第2エキソンのACT/ACT あるいは −/ACTのジェノタイプを組み合わせて用いた場合、同一の結果が得られた(患者27例中5例見られるのに対し、健常人99例中1例)。このいずれの場合もオッズ比は22.4倍となる。 ETFB第8エキソン内の塩基番号447番目のジェノタイプがC/Tかつ、CPT2の第4エキソンの塩基番号1102番目のジェノタイプがG/Aである組み合わせは、遺伝子解析が可能であった患者31例中2例見られるのに対し、健常人では100例からは見られなかった。 ETFA第10イントロン内+642番目のジェノタイプがC/Cかつ、ETFBの第3イントロンの塩基番号−113番目のジェノタイプがG/Tである組み合わせは、遺伝子解析が可能であった患者31例中1例見られるのに対し、健常人では100例からはみられなかった。 VLCADエキソン8の下流+33番目の第8イントロン内(NT_010718.15 番号6722966)のジェノタイプがT/G あるいはG/Gのジェノタイプを持ち、かつ、LCADの第9エキソンの塩基番号997番のジェノタイプがA/A(グルタミンのフェノタイプ)である組み合わせは、遺伝子解析が可能であった患者27例中4例見られるのに対し、健常人では99例中からは見られなかった。 CPT2の第4エキソン内の塩基番号1055番のジェノタイプがC/C(システインのフェノタイプ)を持ちち、かつETFA第10イントロン内の+642番目の遺伝子多型がG/G あるいはG/Tである組み合わせは、遺伝子解析が可能であった患者31例中9例見られるのに対し、健常人では99例中4例観察された。この場合のオッズ比は9.72倍であった。 HADHB第2エキソン内の塩基番号4番目のジェノタイプがACT/ACT あるいは −/ACT(スレオニンの挿入型)を多型を持ち、かつ、ETFDHの第13エキソン内の塩基番号1989番のG/Tである組み合わせは、解析可能であった患者27例中10例に見られる一方で、健常人から99例中12例に見られた。 またこれら上記の組み合わせをさらにまとめることで、患者のリスク診断のカバー率を上げることができる。たとえば、ETFB 447C/T、 CPT2 1102G/A、ETFA+642C/C、ETFB-113 G/T、VLCAD+33 T/G or G/G、LCAD 997 A/A、HADHB 4 -/ACT or ACT/ACT、HMGCS2 -37 C/T or T/Tの計8種を用いた場合、これらの条件を満たすものは、31検体中11例(1例の組み合わせの重複)から見られ、一方で健常人からは、99例中1例のみ見られる組み合わせとなり、患者35.5%をカバーするのに対し、健常人では1%しか見られないという結果となった(表B(a))。 あるいは、HADHB 4 -/ACT or ACT/ACT、HMGCS2 -37 C/T or T/T、VLCAD+33 T/G or G/G、LCAD 997 A/A、ETFA642 C/C、CPT2 1055 G/G or G/Tの計6種を用いた場合、患者31例中16例となり(2例の組み合わせの重複)、患者51.6%をカバーするのに対し、健常人99例中5例、5.1%から検出された(表B(b) ) 。 さらに、別の組み合わせとして、VLCAD+33 T/G or G/G、LCAD 997 A/A、HADHB1989 G/T、ETFDH1989 G/T、ETFA642 C/C、CPT2 1055 G/G or G/Tの計6種を用いた場合、患者31例中22例となり(3例の組み合わせの重複)、患者の71%をカバーするのに対し、健常人99例中14例(1例の組み合わせの重複)、13.1%から検出された(表B(c)) 。 以上に示した結果に代表される方法で、インフルエンザ脳症をはじめとする、熱不安定性フェノタイプ症のリスク診断マーカーとして使用し得る。 3.2健常人マーカー候補の探索 健常人に特徴的に見られる遺伝子多型マーカーを探索することで、罹患リスクが低いかどうか、あるいはそれらの遺伝子マーカーを持たない場合は、罹患リスクが高いと考えられる。 LCADの第9エキソンの塩基番号997番目のジェノタイプがA/CあるいはC/Cのジェノタイプをもち、かつ、HADHA遺伝子の第18エキソンの塩基番号2619番目の多型のジェノタイプがG/Gかつ、HMGCS2のイントロン領域+53(NCBI)ジェノタイプがT/Tである組み合わせは、遺伝子解析が可能であった健常人では99例中30例(30.3%)から観察される一方で患者からはまったく見られなかった(表B(d))。以上のことから、この組み合わせは、罹患リスクが小さいリスク診断マーカーとして使用しうる。実施例2材料と方法患者 この研究は、徳島大学のヒトゲノム解析の倫理審査委員会により承認された。全ての参加者は、書面でのインフォームドコンセントを与えられた。インフルエンザ脳症(Influenza-associated encephalopathy; IAE)についてのサーベイランスは、2000-2003 年のインフルエンザシーズンにおいて、日本の南西地域で行われた。IAEの診断は、臨床的症状に従い行った。34人の全ての患者はウイルス抗原を有し、突然の発作の開始と高熱開始後12時間から48時間内に生じた昏睡を有していた。1人の死亡例(患者番号21)では、熱の開始時にジクロフェナクナトリウムを摂取したが、肝における脂肪変性とライ症候群の典型的な病理学的発見は観察されなかった。患者番号21を含むIAEと診断された13人のIAE患者と79人の健常なボランティアは、ゲノム分析を受けることに同意した。臨床データ解析 EDTA-処理した末梢血、尿および、咽喉の綿棒からの標本を患者から得た。尿中の有機酸プロフィールと血清中のアシルカルニチンをガスクロマトグラフィー−マススペクトル(Shimazu Model Qp5000, Shimazu, Kyoto, Japan) 、 エレクトロスプレータンデムマススペクトル(Model TSQ7000, Thermo-Quest, Tokyo, Japan), により各々分析した。インフルエンザウイルス抗原は、咽喉の綿棒からの標本について酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA) (Becton Dickinson)により検出した。CPT II活性のアッセイ CPT II活性は、反応混合物中1% Tween 20の存在下にCPT II cDNA変異体でトランスフェクトしたCOS-7細胞と肝生検材料において、L-[メチル-3H]カルニチンとパルミトイル-CoAから形成されるパルミトイル-L-[メチル-3H]カルニチンの検出により測定した。野生型(WT)と変異型のCPT IIの熱安定性の分析のために、肝と細胞ホモジネートの活性を37℃と41℃で測定した。CPT II突然変異解析 IAE患者、79人のインフルエンザに罹患していない日本人の全血からのゲノムDNAを記載されるように精製した(Fukao T, Mitchell GA, Song X-Q, Nakamura H, Kassovska-Bratinova S, et al. Genomics 2000; 68: 144-51.)。CPT II 遺伝子の5つのエクソンのPCRをイントロンベースのプライマー(表C)を使用して解析した。PCR産物の配列は、ABI-PRISM 3100 Genetic Analyzer (PE-Applied Biosystems)上で、ABI DyeDeoxy Terminator Cycle Sequencing Kit を使用して直接分析した。各PCR産物は、両ストランドについて配列決定し、分析は少なくとも2回独立して行った。突然変異誘発およびCOS-7 細胞におけるミュータントCPT IIおよびWTの発現 ヒトCPT II の全コーディング領域を含む全長WT cDNAクローン(pCMV6-WT) は、V. Esser, PhD, the University of Texasから贈呈された。プラスミドpCNV6-WTは、3つの全長ミュータントCPT II cDNA クローン, pCMV6-MA (F352C), pCMV6-MB (V362I)およびpCMV6-MA+B (F352C/V362I)をQuickChange(登録商標)部位指定突然変異誘発キット(site-directed mutagenesis Kit) (Stratagene)により生成するための親ベクターとして使用した。ミュータント誘発に使用するプライマーは、表Cに列挙される。CPT II cDNAの突然変異と完全性は、配列分析により確認した。pSVb-ガラクトシダーゼコントロールベクター(Promega)は、酵素活性を測定することによりトランスフェクション効率をモニタリングするための内部標準として種々のpCMV-6-CPT II プラスミドと同時トランクフェクトした。偽の(Mock)トランスフェクションをコントロールとして行った。トランスフェクションの72時間後、COS-7細胞を生理食塩水で2回洗浄し、WTとミュータントのCPT II活性分析した。結果患者とアシルカルニチン比 0〜16才で、潜在的な疾患を持たない34人の患者(22人の男子と12人の女子) がIAEを有した。22人の患者(64.7%)は4歳未満であり、平均年齢は2才であった。インフルエンザA, BおよびA+B ウイルス抗原を鼻咽頭綿棒で91.2%, 5.9% および2.9%で各々検出した。2.9%の患者は既にワクチン接種を行っていた。患者は1人の致死的な症例(患者番号21)を除き、インフルエンザの経過中にアスピリンまたはジクロフェナクを使用していなかった。 患者血清の実験室試験は、41.2%のIAE患者がカットオフ値の上限である0.048 を超える血清アシルカルニチン比(C16:0 + C18:1)/C2の特徴的な上昇を示すことが明らかになった (図1)。特に、重篤なIAE群(7人の患者)、即ち該比が0.09を超える患者の半分以上が致死的(3名の女子)および後遺症(1名の男子)の結果となった。これらのデータは、高リスク群の患者はミトコンドリア長鎖脂肪酸代謝の著明な障害を有するが、これらの患者は発症前の診断では異常を示す症状は観察されていなかった。日本人におけるミトコンドリア脂肪酸β酸化代謝の最も通常の先天異常は2型あり、その1つはCPT II欠乏症であり、長鎖アシルカルニチンの血清中での蓄積を示す。他の型はグルタル酸酸性尿タイプ2(GA2)で、それぞれ26.6%および21.9%の頻度を示すが、その頻度は白人では11%および5.5%と比較的低く、白人の最も通常の欠乏症は、中鎖アシル-CoAデヒドロゲナーゼ(MCAD)の欠乏であり、これは27.5%.で最も高頻度である。しかしながら、全てのIAE患者での(C16:0 + C18:1)/C2比は、体温が正常に戻るとともに0.048〜0.06のボーダーライン比に正常化または減少される。これらの結果は、該比は40℃以上の発熱を伴う痙攣の際に一時的に上昇したことを示唆する。組み合わせの熱不安定性CPTII多型を有する番号21の患者の母を除く全てのファミリーメンバーは、非感染状態で以下に記載するように0.042〜0.054のボーダーライン比を示し、患者番号21と同一の組み合わせCPTII多型を有する姉は通常の体温で0.042の比を示した。該比が0.09よりも大きいハイリスク群の2人の患者であっても後遺症なしに3〜4週間の感染後に回復した例もある。 該比が0.004の1名の致死的IAE患者が存在し(図1)、この患者は異常な尿中グルタル酸の増加を示し(データは示さない)、即ちミトコンドリアにおける電子伝達障害に基づきGA2と診断された死亡例である。該比が0.09以下の全ての他のIAE患者は重篤な後遺症なしに回復した。MCAD欠損症の診断マーカーであるオクタノイルカルニチンは、日本のIAE患者の全てにおいて上昇していなかった。熱不安定性CPT II多型 0.168の最高のアシルカルニチン比を有する患者番号21の肝生検のホモジネートにおけるCPT IIの比活性は0.4 ± 0.06 nmol/min/mgタンパク質であり、これは37℃での正常コントロール(1.1 ± 0.3 nmol/min/mgタンパク質, n=6)の約36%であった。 この患者のCPT IIは非常に熱不安定であり、41℃、120分のインキュベーション後に比活性は約50%に低下したが、コントロールCPT IIは同じアッセイ条件下で91.4%にわずかに低下しただけであることは注目に値する(図2)。患者のCPT IIの熱不安定性の病因を分析するために、本発明者は患者番号21とその家族関係のジェノタイプを分析した。CPT II遺伝子の配列分析は、患者が2つのヘテロ接合性の多型、即ちF352C置換 とV368I置換を有し、他の報告されているCPT II突然変異は検出されないことを明らかにした。F352C多型変異型は、日本人についてのみ報告され、今日までコーカサス人種については報告されていない。そして、V368I変異型は両方の人種で見出されるが、CPT II欠損症については比較的穏やかな有害作用の可能性が議論されているに過ぎない。患者番号21とその姉は、F352C置換 とV368I置換について同一のヘテロ接合性を有し、その父はF352C置換 とV368I置換についてホモ接合性を有し、その母はV368I置換についてのみヘテロ接合性であり、その兄はF352C置換についてヘテロ接合性であり、V368I置換についてホモ接合性であった。家族・親類において、CPT IIの他の置換は同定されなかった。報告されているM647V置換もまた幾人かのIAE患者において見出されているが、IAE患者と健常なボランティアの間の頻度において有意差は観察されなかった。IAE患者と健常なボランティアの間のCPT II のハプロタイプの頻度の比較において(表3のタイプ1−9)、F352C, V368IおよびM647Mの組み合わせのマッチする頻度(タイプ9)は、患者番号21の遺伝子と同一であり、健常なボランティアのそれよりも有意に高い (p < 0.025).分析された患者の限られた数のために、今のところ他にIEA患者において健常なボランティアよりも有意に高い頻度で見出されたハプロタイプはなかった(表D)。 WTと変異型CPT II cDNAsのin vitro発現について、4つのcDNAsをCOS-7細胞で過剰発現した(図3):pCMV6-WTはWT CPT II (FVM-CPT II)を含む; pCMV6-MAはF352C多型を含む(CVM-CPT II); pCMV6-MBはV362I多型を含む(FIM-CPT II); そしてpCMV6-MA+BはF352C + V368I多型を含む(CIM-CPT II)。 ベクター単独のCPT II活性は0.27 ± 0.03 nmol/min/mg蛋白(n=6)であり、内因性酵素活性と一致し、以下に示される全てのデータは、ベクター単独のCPT II活性の値を差し引いたものである。pCMV6-WT で過剰発現されたCOS-7細胞のCPT II活性は0.46 ± 0.07 nmol/min/mg 蛋白(n=5)であった。CVM-CPT II、FIM-CPT IIおよびCIM-CPT II のCPT II活性は、各々37℃でWT FVM-CPT II活性の62.8 ± 7.2, 102.5 ± 19.6および34.7 ± 1.3% であった(図3)。アミノ酸置換はタンパク質のコンフォーメーション変化並びに熱安定性に影響する可能性があるので、本発明者は39℃以上の温度の代表例として41℃の熱ストレス条件下にCPT-II活性を分析した。WT FVM-CPT II の活性は41℃で120分間のインキュベーション後に91%にわずかに減少したが、FIM-, CVM-およびCIM-CPT IIの活性は37℃の活性と比較して、41℃で91%, 48%および72%に各々減少した。これらの変異体中において、CIM-とCVM-CPT IIの両方の酵素活性は、37℃でのWT FVM-CPT II活性の約25-30%に顕著に低下した。 この実験例では、41℃における酵素活性の低下について検討したが、39℃以上の任意の温度(例えば39℃、40℃、42℃等)における酵素活性の有意な低下を同様に検討することで、熱不安定性フェノタイプ症を診断することができる。 これらの結果は、CPT IIのホモ接合性置換に由来するが、これらのデータは、図2において41℃で患者番号21で見られるCPT II活性の低下を支持する。 考察 脳炎/脳症は様々な小児疾患で現れる1つの症状である。これらのうちで、IAEはインフルエンザの合併症として報告され、特に日本人の子供において高頻度に見られると報告された。本発明では、本発明者は41.2%のIAE患者が熱性痙攣の間に血清アシルカルニチン比の((C16:0 + C18:1)/C2が0.048のカットオフ値上限を超える)増加を示し、0.09を超える高リスク患者の57%が死または重篤な後遺症などの臨床的な結果を示すことを明らかにした。この比は、長鎖脂肪酸代謝障害のマーカーであり、日本におけるこの種の表現型を示す最も一般的な疾患は先天性代謝異常症のCPT II 欠損症により、その頻度は人口10万人に数人といった極めて稀な疾患である。IAEと診断された患者群でアシルカルニチンの異常な値が41.2%検出されたことは特筆すべきことである。研究されたグループにおいて、CPT II以外に致死的原因疾患を示すものにGA2があるが、この疾患ではミトコンドリアの電子伝達障害があり、該患者のアシルカルニチン比は0.048未満の値を有していた。これらの結果は、致死性(4人の患者)と重篤な後遺症(1人の患者)の臨床結果となる全ての重篤なIAE患者はCPT IIの異常とGA2といったミトコンドリアエネルギー代謝の障害を有していた。高熱時の増加したアシルカルニチン比が全ての追跡調査した患者において正常な体温に戻ると有意に減少したことは熱不安定性フェノタイプが可逆的であることを示唆しており注目に値する。これらの知見は、連続する高熱はしばしば嘔吐と絶食を伴い、特にエネルギー代謝酵素欠損または熱不安定性多型を有する患者では全身性のエネルギー危機を引き起こす。 日本人におけるCPT II欠損症およびGA2、さらにコーカサス人種におけるMCAD欠損症のようなミトコンドリア脂肪酸β酸化の先天異常を有する子供は、重篤な急性脳症および多臓器不全(ライ様症候群)に感染なしに罹る。もちろんこれらの先天異常を示す子供がインフルエンザに感染すれば、特に重症となって死に至る可能性は高い。本出願のデータはこれまでに調べたIAE患者において高いアシルカルニチン比を示した患者であってもこれらの酵素欠損症ではなく、熱不安定性多型または複数のCPT II熱不安定性多型が重なったケースであった。これらの多型は、酵素活性を相乗的に低下させる。ほとんど全てのIAE患者は明確なエピソードを示しておらず、従って、新生児期には無症状のために検出を逃れる。感染とともにアスピリンの服用により引き起こされるライ症候群患者は、ミトコンドリア脂肪酸β酸化に関与する酵素の類似の遺伝的背景を有する患者で発症する可能性もあるが、肝臓での病理学的所見はIAEにおいて見られるものよりもより強い脂肪変性を伴う。 本発明者は、CPT II の熱不安定性F352C多型と特定のマイルドに有害なV368I多型が組み合わされることで高熱時に相乗的にCPT II の機能欠損を誘発することを明らかにしており、そしてこれらの多型をIAEになりやすい変異型であると提案した。F352C変異体は今まで日本人でのみ報告されており、V368IおよびM647Vは日本人およびコーカサス人種の両方でCPT II 欠損症患者の持つ遺伝子多型、並びに無症状小児において報告されている。しかしながら、CPT IIはβ酸化の代謝経路の律速酵素ではなく、CPT II活性がコントロールの30% 超の場合、脂肪酸β酸化は、正常範囲で異常な症状としては現れない。しかし39℃以上、例えば41℃の熱ストレス条件下において、患者番号21のCPT II活性とトランスフェクトされたCIM-およびCVM-CPT IIは、37℃でのWT CPT IIの30%未満を示し、脂肪酸β酸化障害を示すと推定される。F352C, V368IおよびM647VのようなCPT IIの3つの多型に関し、27個の予期されるハプロタイプの中で9個の ハプロタイプが表3に示すようにIAE患者と健常ボランティアにおいて観察された。これらのうちで、IAE患者でのタイプ9 (F/C-V/I-M/M) の頻度の相違は、健常者グループに比較して有意に高い発現頻度を示した。CIM-CPT II (タイプ7, C/C-I/I-M/M)は図3において最も低い酵素活性を示したが、IAE患者と健常ボランティアの間のタイプ7の頻度の相違は、今のところ有意ではなく、おそらく分析されたIAE患者の限られた数のためであると考えられた。さらに、これらの知見は熱不安定性多型および/または熱不安定性フェノタイプ症の病因において、エネルギー代謝に関与する他の酵素欠損、或いはマイルドな変異形態の潜在的な関与を否定するものではない。ミトコンドリアβ酸化の障害を有するIAE患者に見られる脳症および急性脳浮腫の分子メカニズムは明らかにされていないが、ミトコンドリアβ酸化の先天性または後天性の異常を有するマウスの脳毛細血管でのミニプラスミンの蓄積と、インフルエンザウイルス感染後の血液脳関門のミニプラスミンなどのタンパク質分解酵素による破壊は、1つの関連する病因であると証明される可能性がある。 熱不安定性多型を有するIAE患者のエネルギー代謝異常を考慮すると、クエン酸サイクルの速度を増加させるために、長鎖脂肪酸酸化を活性化させるためのL-カルニチン投与およびグルコースの投与、さらに高熱によって誘発される酵素の失活を防ぐ低体温療法は、熱不安定性フェノタイプ症の症例に取り組み場合に治療的に有効であると証明されるかもしれない。 1・これまで高熱時に脳浮腫や多臓器不全を伴って死に至る原因不明とされていた疾患を、その発症素因となる疾患感受性遺伝子を同定して、確実な診断ができるようになる。 2・発症素因となる疾患感受性遺伝子の同定を基盤に、治療法の開発が可能となる。 さらに、SNPを持つかどうかを検査することで、将来熱不安定性フェノタイプ症になるリスクが高いかどうかを判定することが可能となる技術と考えられる。インフルエンザ脳炎・脳症、ライ症候群、RSウイルス感染症、アデノウイルス感染症、ライノウイルス感染症、風疹、日本脳炎、マラリア感染症、川崎病、乳幼児突然死症候群を含むあるいはこれらに起因する熱不安定性フェノタイプ症のリスクを診断する方法であって、ミトコンドリアでのエネルギー代謝に関与する各種Transporter, カルニチン回路、長鎖β酸化回路、中鎖・短鎖β酸化回路、電子伝達、ケトン体合成およびATP産生のいずれかに関与する少なくとも1種の酵素の酵素活性が37℃を100%としたとき、39℃以上では健常者よりも有意に低下するか否かを調べることを特徴とする、方法。前記熱不安定性フェノタイプ症が、インフルエンザ脳炎・脳症である、請求項1に記載の方法。37℃での前記酵素活性と比べて39℃以上での前記酵素活性が低下する程度を前記酵素をコードする遺伝子のSNP、挿入および欠失からなる群から選ばれる多型を調べることにより予測することを特徴とする請求項1に記載の方法。ミトコンドリアでのエネルギー代謝に関与する各種Transporter, カルニチン回路、長鎖β酸化回路、中鎖・短鎖β酸化回路、電子伝達およびケトン体合成のいずれかに関与する酵素が下記の表に示される中の少なくとも1種の酵素である、請求項1に記載の方法。前記酵素が、CPT II, ETFA, ETFB, ETFDH, HADHB, HMGCS, VLCAD, LCADおよびHADHAからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項4に記載の方法。CPT II、ETFA, ETFB, HADHA, HADHB, HMGCS, VLCAD, LCADおよびETFDHについて、以下の22種の1または2以上の位置、あるいはこれらと連鎖不平衡の関係にある遺伝子のSNPを検査し、2以上の遺伝子多型の組み合わせまたはハプロタイプの組み合わせを利用することを特徴とする、請求項1に記載の方法:以下の(1)〜(8)のいずれかのSNPの組み合わせを有するか否かを基準として、熱不安定性フェノタイプ症のリスクを診断する請求項1に記載の方法:遺伝子多型(SNP)の検出が、ヌクレオチド直接塩基配列決定法、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)-ドットブロット分析、一塩基プライマー伸長法、PCR-単鎖高次構造多型(SSCP)分析、PCR-制限酵素断片長多型(RFLP)分析、インベーダー法、定量的リアルタイムPCR検出法および質量分析計を用いた遺伝子多型検出法(mass array)からなる群から選ばれる少なくとも1つの方法により行われる請求項1〜7のいずれかに記載の方法。前記酵素をコードする遺伝子のSNP、挿入および欠失からなる群から選ばれる多型を、対応する少なくとも1種のプローブを固定化した固相支持体を用いて測定することを特徴とする、請求項3に記載の方法。ミトコンドリアβ酸化脂肪酸代謝系に関係する酵素の特定の多型の1種または2種以上の組み合わせを検出可能なプライマー、プローブ、dNTPミックス、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、緩衝液を含む熱不安定性フェノタイプ症のリスクを診断するための診断キット。 本発明は、高熱時に致死的または後遺症の残る中枢神経症状、あるいは多臓器不全を発症する可能性の高い、インフルエンザ脳症、ライ症候群、RSウイルス感染症、アデノウイルス感染症、ライノウイルス感染症、風疹、日本脳炎、マラリア感染症、乳幼児突然死症候群、川崎病を含む熱不安定性フェノタイプ症の診断方法であって、Transporter, カルニチン回路、長鎖β酸化回路、中鎖・短鎖β酸化回路、電子伝達, ケトン体合成およびATP産生のいずれかに関与する少なくとも1種の酵素の酵素活性が37℃を100%としたとき39℃以上、特に41℃では健常者よりも有意に低下するか否かを調べることを特徴とする、診断方法に関する。配列表


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る