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タイトル:特許公報(B2)_チオプリンメチルトランスフェラーゼ活性を検出する方法
出願番号:2001587104
年次:2011
IPC分類:C12Q 1/48,G01N 21/64,G01N 21/78,G01N 30/88


特許情報キャッシュ

バースタッド ポール JP 4803942 特許公報(B2) 20110819 2001587104 20010516 チオプリンメチルトランスフェラーゼ活性を検出する方法 プロミシアス ラボラトリーズ, インコーポレイテッド 502007815 清水 初志 100102978 バースタッド ポール US 60/205,695 20000519 20111026 C12Q 1/48 20060101AFI20111006BHJP G01N 21/64 20060101ALI20111006BHJP G01N 21/78 20060101ALI20111006BHJP G01N 30/88 20060101ALI20111006BHJP JPC12Q1/48 ZG01N21/64 ZG01N21/78 CG01N30/88 E C12Q 1/48 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) PubMed Adv. Exp. Med. Biol.,1998年,Vol.431,P.741-745 Eur. J. Clin. Pharmacol.,1998年,Vol.54, No.3,P.265-271 Clin. Chem.,1998年,Vol.44, No.3,P.551-555 J. Chromatogr.,1993年,Vol.615,P.352-356 J. Chromatogr. Sci.,1984年,Vol.19, No.10,P.496-499 7 US2001040759 20010516 WO2001090308 20011129 2003534002 20031118 13 20080501 鈴木 崇之 【0001】発明の背景発明の分野本発明は概して、炎症性腸疾患、白血病、及び臓器移植の拒絶反応を治療するために用いられるチオプリン薬に関連し、より特定すると6-メルカプトプリン治療の投与量を個人に合わせる目的でチオプリンメチルトランスフェラーゼ活性を決定するための方法に関連する。【0002】背景情報 メルカプトプリン(6-MPまたは6-チオプリン)及びアザチオプリン[6-(1-メチル-4-ニトロ-5-イミダゾリルチオ)プリン]は、潰瘍性大腸炎及びクローン病の治療に有効な細胞毒性の薬物である(Presentら、Annals of Internal Medicine 111: 641-649 (1989))。どちらもプリン拮抗薬として作用し、それによってDNA、RNA及びタンパク質の合成を阻害する免疫抑制剤である(Lennard、European Journal of Clinical Pharmacology 43: 329-339 (1992))。6-MPは当初、子供の急性リンパ芽球性白血病を治療するため、また臓器移植手術の術後治療のために用いられ(Burchenalら、Blood 8: 965-999 (1953))、その利用はこれまでに、リウマチ性関節炎及び炎症性腸疾患にまで拡張されてきた(Kirschner、Gastroentelogy 115: 813-821 (1998))。【0003】 プロドラッグであるアザチオプリン(AZA)は、体循環においてスルフィドリル含有化合物によって非酵素的に求核攻撃されることで6-メルカプトプリンに素速く変換する。6-MP及びアザチオプリン(AZA)は同じ薬物の形態をしている活性成分の代謝性前駆体であり、それは少なくとも三つの競合する酵素経路によって作用する(Lennard、前記、1992)。これらの酵素の作用の全体像が図1に示されている。図2に示されているように数個の主要な酵素経路が関与する。キサンチンオキシダーゼ(XO)は6-メルカプトプリンを6-チオ尿酸に変換する。ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)は6-メルカプトプリンを、6-チオグアニンヌクレオチドの前駆体の6-チオイノシン-5'-一リン酸に変換する。チオプリンメチルトランスフェラーゼ(TPMT)は、6-メルカプトプリンがメチルメルカプトプリン(6-MMP)になるS-メチル化を触媒する。このように6-メルカプトプリンは、アザチオプリン/6-メルカプトプリンの薬物治療の作用を仲介する活性な推定代謝産物である6-チオグアニン(6-TG)及び6-チオグアニンヌクレオチドを含むさまざまな代謝産物に酵素的に変換する。【0004】上述した経路の相互作用は遺伝子的に検出され、アザチオプリン/6-メルカプトプリン薬物治療に対してかなり個別化された反応を形成する。TPMT酵素の集団発生頻度分布は三つの形態があって高い活性を持つ主要な個体(89%)が存在しており、11%は中程度の活性を持っていて、また300個のうちの約1個(0.33%)は検出レベル以下の活性しか持っていない(Weinshilboum及びSladek、Amer. J. Human Genetics 32: 651-662 (1980))。このような三形態の関係は、クレップリン(Kroplin)HPLCアッセイ法によってTPMT酵素活性を直接的に測定することによって確認された(Kroplinら、Eur. J. Clin. Pharmacol.、54 265-271 (1998))。TPMT活性に違いがあるのとは対照的に、XO活性での個々の間の違いは非常に小さく、HPRT活性について限られたデータがあるにすぎない(Lennard、Eur. J. Clin. Pharm.、43: 329-339 (1992))。【0005】TPMT活性によって6-メルカプトプリンが6-メチル-メルカプトプリンを生成するようにわきにそらされることで、6-チオグアニンの濃度が効果的に調節されることを有効な証拠は示している。これらのチオプリン類をあまり効率的にメチル化できない患者は6-チオグアニンヌクレオチドへの変換がずっと多くなり、それは場合によると致命的な造血毒性に至らせる可能性がある。このように、TPMTの活性が中程度であるか低い患者は、アザチオプリン/6-メルカプトプリン治療の持つ毒性の副作用がいっそう起きやすくなる可能性がある(Presentら、Annals of Internal Medicine 111: 641-649 (1989))。このような毒性の副作用にはアレルギー反応、新形成、日和見感染症、肝炎、骨髄抑制、及び膵炎が含まれ、それは300人の患者うち約一人に起こるのであるがこの治療は耐えられない。結果として多くの医者にとってアザチオプリン/6-メルカプトプリン治療で患者を治療することは、特に感染症及び新形成の危険性があるために抵抗がある。【0006】したがって、患者におけるチオプリンメチルトランスフェラーゼ活性のレベルを決定することによって6-メルカプトプリンの投与量を最適化する方法が必要である。このような方法は、望ましくない副作用を最小にしつつアザチオプリン/6-メルカプトプリン治療の治療効率を最適化することに有用であると思われる。本発明の方法はこの必要性を満足するとともに、さらに関連する利点も提供する。【0007】発明の概要 本発明は、被験者におけるチオプリンメチルトランスフェラーゼ(TPMT)活性を測定する方法を提供する。この方法は、メチル化プリン生成物を生成させるために該被験者から得られた試料を6-メルカプトプリンでないチオプリン誘導体と反応させる工程、この反応させた試料を酸と接触させ、それによって該反応させた試料からタンパク様の物質を沈殿させる工程、この沈殿させたタンパク様の物質から上清を分離する工程、及びメチル化プリン生成物をこの上清中で検出する工程を含み、この場合メチル化プリン生成物の量が被験者におけるチオプリンメチルトランスフェラーゼ活性のレベルを示す。本発明の方法では該被験者は、例えば炎症性腸疾患の患者であることができる。一態様ではタンパク様の物質を沈殿させるために用いた酸は過塩素酸、例えば70%の過塩素酸である。別の態様においては基質として用いたチオプリン誘導体は6-チオグアニンである。さらに別の態様ではメチル化プリン生成物は蛍光によって検出され、必要に応じて高速液体クロマトグラフィー(HPLC)と組み合わせてもよい。【0008】発明の詳細な説明6-メルカプトプリン及びそれに関連するプロ-ドラッグ、アザチオプリン(AZA)が用いられるクローン病や潰瘍性大腸炎のような炎症性腸疾患の有効な治療法は、TPMT酵素活性が低かったり中程度であったりする患者ではこの治療法の毒性の副作用によって悪化する。このような毒性の副作用には、アレルギー反応、新形成、日和見感染症、肝炎、骨髄抑制、及び膵炎が含まれる。したがって、活性レベルが中程度である患者に適当な投与量で投与するため、及びTMPT活性が極めて低い患者では治療を行わないようにするため、6-メルカプトプリン治療を行う候補においてTPMTの活性を測定することが重要である。さらにTPMTの活性は、適当な酵素レベルが投与された薬物の投与量に対して示されることを確認するためにアザチオプリン/6-メルカプトプリン治療を始めた患者においてもアッセイすることができる。【0009】 本発明は、被験者におけるチオプリンメチルトランスフェラーゼ(TPMT)活性を測定するための迅速で信頼性のある方法を発見することに向けられており、被験者がすでに6-メルカプトプリンまたはアザチオプリンを用いて医薬品投与されている場合でもこの酵素活性を測定できる点で特に都合がよい。被験者におけるTPMT活性を決定するための本発明の方法には、メチル化プリン生成物を生成させるためにこの被験者から得られた試料を6-メルカプトプリンでないチオプリン誘導体と反応させる工程、この反応させた試料を酸と接触させ、それによって該反応させた試料からタンパク様の物質を沈殿させる工程、この沈殿させたタンパク様の物質から上清を分離する工程、及びメチル化プリン生成物をこの上清中で検出する工程が含まれ、この場合メチル化プリン生成物の量が被験者におけるチオプリンメチルトランスフェラーゼ活性のレベルを示している。本発明の方法ではこの被験者は、例えば炎症性腸疾患の患者であることができる。一態様ではタンパク様の物質を沈殿させるために用いた酸は過塩素酸、例えば70%の過塩素酸である。別の態様においては基質として用いたチオプリン誘導体は6-チオグアニンである。さらに別の態様ではメチル化プリン生成物は蛍光によって検出され、必要に応じて高速液体クロマトグラフィー(HPLC)と組み合わせて検出してもよい。【0010】 したがって本発明は、ヒトの末梢血に含まれるTPMTの活性を定量的に測定するおよびモニターするための方法に向けられる。実施例Iに開示されているように、チオプリン(6-チオグアニン)の直接の酵素代謝回転により蛍光産物の6-メチルチオグアニンが得られた。酵素代謝回転によって得られる特異的な6-メチルチオグアニン産物のレベルは、過塩素酸沈殿によって他のアッセイ成分から分離され、続いて高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を行い、かつ高感度の蛍光測定用検出器によって定量的に検出された。この新規のアッセイ法によって、患者が6-MPまたはAZA治療を行った場合であってもTPMT酵素活性の検出が可能になり、迅速定量法のための試料の抽出が簡単化される。【0011】この方法を用いて患者を三つのグループに容易に分離した。即ち、遺伝子的に野生型である患者は酵素レベルが23.60ナノモルを超える6-mTGN/g Hb/時間であり、以前に特徴づけられた三つのTPMT突然変異のうちの一つがヘテロ接合型である患者はTMPT活性レベルが6.76から23.6ナノモルまでの6-mTGN/g Hb/時間であり、TPMTの遺伝子座でのホモ接合性が低い患者は、TPMTの活性レベルが6.76未満の6-mTGN/g Hb/時間(1.1の6-mTGN/g Hb/時間)であった。このように蛍光性のメチル化6-チオグアニン生成物(6-mTG)のレベルはTMPT活性を用いて補正され、TPMTの活性レベルが低かったり中程度であったりする患者における毒性の副作用を抑制するために用いることが可能である。【0012】本発明の方法は、クローン病及び潰瘍性大腸炎の広域カテゴリーに分類されたIBD、またはIBDのサブタイプを治療するのに特に有用である。クローン病(局所性腸炎)は、胃腸管の任意の部分が関連する慢性の炎症性疾患である。一般に、小腸の遠位部分(回腸)と盲腸が影響を受ける。他の場合ではこの疾患は、小腸、大腸または肛門直腸領域に限定される。クローン病には時に十二指腸や胃が関連し、食道や口腔が関与することはずっとまれである。クローン病の最もよく起こる症状は腹痛、下痢及び再発性の発熱であり、この疾患にはまた、腸閉塞や腸フィステルが関与することもあって、これは腸の病気にかかっているループ間の異常な経路である。クローン病はさらに、目、関節及び皮膚の炎症、肝臓疾患、腎臓結石、またはアミロイド症のような合併症と関連する場合もある。【0013】クローン病の病状には、腸壁のすべての層が関与する経壁の炎症が含まれる。例えば肥厚及び浮腫は腸壁を通り抜けて現れることが典型的であって、長期にわたる疾患では繊維症も伴う。さらにクローン病の炎症性の特徴はまた、「スキップ状の病変」として知られているのであるが、炎症を起こした組織の部分が明らかに正常の腸で隔てられている点で不連続性である。線形の潰瘍、浮腫、及び介在する組織の炎症が起こると腸粘膜の「丸石(cobblestone)」を出現させ、これはCDとは識別できる。クローン病の証明は、一般的には粘膜下に見られ、肉芽腫として知られた炎症細胞の不連続の凝集が存在することである(Rubin及びFaber、「病理学(Pathology)」(第2版) Philadelphia: J. B. Lippincott Company (1994))。【0014】炎症性腸疾患である潰瘍性大腸炎(UC)は、痙攣性の腹部痛、直腸からの出血、並びに血液、膿及び粘液のだらだらとした放出に特徴のある大腸の疾患である。潰瘍性大腸炎の症状の発現は非常に異なる。悪化と緩解のパターンは最も多くのUC患者(70%)の臨床的な経過の典型となるが、緩解のない持続性の症状も潰瘍性大腸炎の何人かの患者で現れる。UCの局所性と全身性の合併症は関節炎、ブドウ膜炎のような目の炎症、皮膚の潰瘍及び肝臓疾患である。さらに潰瘍性大腸炎、特に長期にわたる拡張型の疾患は、大腸癌の危険性の増加と関連する。【0015】潰瘍性大腸炎は一般に広汎性の疾患であり、これは通常、直腸の最も遠位の部分からさまざまな距離で近位に広がる。直腸が残されていたり、大腸の右側(近位部分)のみにしか進行していないのは潰瘍性大腸炎では珍しい。潰瘍性大腸炎の炎症の経過は大腸に限定されており、一般的に腸壁の深い層を残す粘膜の表在性の炎症によって識別される。(Rubin及びFarber、前記、1994)。【0016】本発明の方法は、炎症性腸疾患または白血病にかかっている患者を含む種々の被験者、及び臓器または同種移植片を移植した受容者においてTPMTの活性を測定するのに有用である。本明細書で用いた場合の「被験者」という用語は酵素であるチオプリンメチルトランスフェラーゼを発現する任意の動物を意味しており、ヒト、ヒト以外の霊長類、ウサギ、ラットまたはマウスが含まれ、特にヒトが挙げられる。被験者は炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎またはクローン病)、白血病を持つ患者、または移植受容者であることができる。被験者は、6-メルカプトプリンまたはアザチオプリン治療法で治療が行われていてもよいし、行われていなくてもよい。【0017】本明細書で用いた場合の「試料」という用語は被験者から得られた生物学的材料を意味し、細胞質の酵素であるチオプリンメチルトランスフェラーゼを含む任意の材料を包含する。試料は例えば、全血、血漿、唾液もしくは他の体液、または細胞を含む組織であることができる。好ましい試料は全血であり、そこから赤血球が実施例Iに記載されたように得ることができる。【0018】 本発明の方法には、6-メルカプトプリン以外のチオプリン誘導体と試料を反応させる工程が関与する。本明細書で用いたように「チオプリン誘導体」という用語は、チオプリンメチルトランスフェラーゼによって作用させた場合にメチル受容体として作用するチオキソプリン、チオプリンまたはそれらの誘導体もしくは類似体を示す。本発明において有用なチオプリン誘導体はチオプリンメチルトランスフェラーゼに対する天然型の基質であってもよいし、または非天然型の基質であってもよく、それは例えば6-チオグアニンのようなチオプリンまたはチオオキソプリンに類似の構造を持っていて、還元型で存在してもよいし酸化型で存在してもよい。その他のチオプリン誘導体も当技術分野で既知であり、それにはチオイノシン、チオアデニン、チオグアノシン及びチオアデノシンが含まれる。6-メルカプトプリン以外の任意のチオプリン誘導体が本発明の方法において有用でありうることを理解すべきである。このようなチオプリン誘導体は次の構造、【化1】を持っていて、それは6員環の6位にチオキソ、またはチオ基があり、6員環の1位と3位に環内窒素があり、5員環の7位と9位に環内窒素がある、6員環と5員環の融合した誘導体である。例えば6員環の2位にあるRがアミノの場合はこのチオプリン誘導体はチオグアニンである。1位、2位、3位、7位、8位、9位にあるR基は独立していて、例えば糖、ハロゲン化物、Cl-C6アルキル、OH、アミノ、モノ置換もしくはジ置換のアミノ(この場合の置換基はC1-C6アルキルまたは置換型アルキルである)、または置換型のC1-C6アルキル(この場合の置換基は一個もしくはそれ以上のOH、ハロゲン化物、アミノ、またはモノ置換型もしくはジ置換型のアミノである)であるが、ただしこの場合のR基はチオプリンメチルトランスフェラーゼの活性を阻害しない。【0019】一態様において本発明において有用であるチオプリン誘導体は、メチル化された場合に蛍光を発する化合物である。例えば6-チオグアニンはチオプリンメチルトランスフェラーゼによってメチル化されて蛍光性の産物である6-メチルチオグアニンになる。当業者は、チオプリンメチルトランスフェラーゼに対するこれら及び他の非6-MP基質が本発明で用いられるチオプリン誘導体となりうることを理解できる。【0020】本明細書で用いた場合の「メチル化されたプリン生成物」という用語は、チオプリン誘導体に対するチオプリンメチルトランスフェラーゼ活性の結果として生成した化学的な生成物のことを言う。メチル化されたプリン生成物には、6-チオグアニンのメチル化によって生成する6-メチルチオグアニン、及びその類似体が含まれる。【0021】本発明の方法では、タンパク様の物質はメチル化プリン生成物から沈殿させて除去される。本明細書で用いた場合の「酸」という用語は、6-メチルチオグアニンのようなメチル化されたプリン生成物は沈殿しない状態で、タンパク様の物質が溶液から優先的に沈殿させる能力のある試薬のことを言う。当業者は、本発明で有用な酸は実質的に分解したり、崩壊したり、または他の方法でメチル化プリン生成物の検出に影響を及ぼさないことを理解する。本発明で有用な例示的な酸は、過塩素酸、硫酸、リン酸及び氷酢酸として本明細書で開示されている(実施例III参照)。本発明で有用な別の酸は、特定の試料が、70%の過塩素酸と接触させた試料と比較して実質的に同じTPMT活性レベルを得ることのできる能力があることによって同定されうる。【0022】 本明細書で用いたように「検出」という用語は、メチル化されたプリン生成物の量が測定される工程のことを言う。6-mTGのようなメチル化されたプリン生成物は、メチル化されたプリン生成物をチオプリン誘導体及び他の化合物と識別するのに適したさまざまな定量的な技術によって検出できる。メチル化されたプリン生成物は、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて簡便に検出できる。メチル化されたプリン生成物を検出するための別の方法としては、キャピラリー型電気泳動、ガスクロマトグラフィー(GC)、ガスクロマトグラフィー−質量分析(GC-MS)、及び薄層クロマトグラフィー(TLC)が挙げられる。当業者は、メチル化されたプリン生成物の量を定量するためのこれら及び他の方法が本発明で有用でありうることを理解する。【0023】以下の実施例は、本発明を限定するわけでなく例示を意図するためのものである。【0024】実施例Iヒトの赤血球に含まれるチオプリンメチルトランスフェラーゼ酵素活性の定量的測定この実施例は、基質として6-チオグアニンを用いるチオプリンメチルトランスフェラーゼ(TPMT)活性の定量的な測定法を記載している。【0025】A. 血液試料の調製全血試料を通常の塩水で洗浄し、ヘモグロビン数を凍結する前に測定した。簡単に述べると血液試料をエチレンジアミン四酢酸(EDTA)で収集し、このEDTA処理した全血を卓上遠心分離器(Beckman、Fullerton、CA、型番TJ-6R)内で3分間、10℃にして3500rpmで遠心分離した。溶血性について血漿を調べ、溶血が検出された場合に試料を拒絶した。血漿を除去した後、圧縮された細胞を等量の0.9%の塩水で一度洗浄し、上述したように遠心分離した。ヘモグロビン数をコールターONYX細胞カウンター(Coulter ONYX cell counter)を用いて測定した。計数後に洗浄した圧縮赤血球(RBC)を0.02Mのリン酸緩衝液(pH 7.4)を用いて1:5に希釈し、分析を行うまで-70℃で保存した。【0026】B. 酵素反応及びタンパク質沈殿法赤血球可溶化物を6-チオグアニンとともにインキュベートし、続いてタンパク様の物質を下記のように過塩素酸を用いて沈殿させた。【0027】「未知」とは、患者の試料を用いて行った酵素反応のことを言う。「ベースライン」とは、メチル供与体であるS-アデノシルメチオニン(SAM)を含まない患者の試料で行った酵素反応のことを言う。「ブランク」とは、SAMを含まない正常なプールされた細胞で行った酵素反応のことを言う。「対照」とは、以前に活性が「低い」、活性が「中程度」、または活性が「高い」と測定した可溶化物を用いて行った酵素反応のことを言う。較正の標準は、SAMを含まないが可溶化物を含む6-メチルチオグアニン標準物質のことを言う。【0028】以下の成分を合わせた。即ち、0.1Mのリン酸緩衝液、pH7.4(Sigma Chemical、カタログ番号A-4882)に溶解した3mMの6-チオグアニンを150μL、「ブランク」もしくは「ベースライン」の試料のための50μLの蒸留したH2Oまたは「未知」の試料のための0.16mMのSAM溶液(Sigma Chemical、St. Louis、MO、カタログ番号A-7007)、50μlの解凍した赤血球の可溶化物(「未知」または「ベースライン」のための患者の細胞の可溶化物、較正用標準物質及び「ブランク」の試料のための正常なプールされた細胞の可溶化物、「対照」試料のための対照試料の可溶化物)、及び50μlの較正用標準試料のための6-メチルチオグアニン標準物質である。【0029】混合物を37℃の振とうさせながら水浴中で1時間インキュベートし、続いて5分から60分間、氷上で冷却した。70%の過塩素酸(Fisher、Pittsburgh、PA、カタログ番号MK2766-500)、50μLのうち一容量を添加して最終濃度を11.67%にし、この酸性化された試料を5分間遠心分離してタンパク様の物質を沈殿させた。上清(280μL)を、インサート(Hewlett-Packard、カタログ番号5181-3377)を充填したHPLC自動試料採取器用バイアル(HPLC autosampler vial)(Hewlett-Packard、Palo Alto、CA、カタログ番号5183-4504)に移した。【0030】C. 6-メチルチオグアニンのHPLC検出蛍光検出法によるHPLCを行うことによって、以下のように本質的に患者の試料に含まれる6-メチルチオグアニンの濃度を測定できた。【0031】直列型蛍光検出器(シリーズ1100)を備えたヒューレットパッカード(Hewlett Packard)HPLCシステム(型番1100)を分析に用いた。直列型フィルター(Hewlett-Packard、カタログ番号01090-68072)を備えたC18逆相カラム(Waters、Milford、MA、パート番号186000494)を、直前に調製した移動相(0.1MのH3PO4、蒸留したH2O/アセトニトリル、95/5%、v/v中の1mMのDTT)に入れて平衡化した。プライマー溶液の注入液を較正用標準物質、対照及び患者の試料と共に入れ、マトリックスブランクを研究用試料または対照試料の直前及び直後にランした。【0032】それぞれの試料(100μL)を1.2mL/分の流速でカラムに注入して、アイソクラティック(isocratic)な条件でランさせた。蛍光は、励起波長を315nmに、また放出波長を390nmに設定することでモニターした。6-メチルチオグアニンのための保持時間は5.2分±20%であった。【0033】D. TPMT活性の測定酵素活性は、50μLの可溶化物/時間において、1グラムのヘモグロビンあたりの6-メチルチオグアニンのナノモルとして表した。6.76ナノモル未満の6-メチルチオグアニン/g Hb/時間の患者の試料は、TPMT活性が低い被験者を示している。6.76ナノモルから23.60ナノモルの6-メチルチオグアニン/g Hb/時間の患者の試料は、TPMT活性が中程度(ヘテロ接合型)である被験者を示している。23.60ナノモルを超える6-メチルチオグアニン/g Hb/時間の患者の試料は、TPMT活性が高い(野生型)被験者を示している。【0034】実施例IITPMT活性とTPMT遺伝子型との相関関係この実施例は、TPMT活性を測定するための本発明の方法によってTPMTの遺伝子型分類と相関関係のある結果が得られることを証明している。【0035】さまざまな人種集団についての以前の研究から、大まかに89%の個体が野生型の(高い)TPMT活性を示し、これに対して約11%が中程度の活性を示し、1%未満(約.3%)が非常に低い、または検出できないほどのTPMT活性を示すことが明らかにされた。過塩素酸沈殿を行い、続いて実施例1に記載されたようにHPLCと蛍光検出法によりアッセイされたTPMT活性レベルは、いくつかのTPMT遺伝子型クラス、即ちエキソン5に含まれるTPMT*2-G238C、エキソン7に含まれるTPMT*3A-G460A、及びエキソン10に含まれるTPMT*3-A719Gに相関していた。大部分は、これらの3つの変異体によりヒトにおけるTPMT酵素活性を測定する。【0036】TPMT酵素ユニット及びTPMT遺伝子型を、野生型の遺伝子型を持つ44個体、ヘテロ接合型の6個体、及びホモ接合体が少ない1個体に対し、複製物においてコードされていて、アッセイ済みの赤血球可溶化物を用いて測定した。対応するDNAもコードされており、遺伝子型は、プロメテウスラボラトリーズ(Prometheus Laboratories)(San Diego、CA)でのプロプレディクトRx TRMT遺伝子解析(ProPredictRx TPMT Genetic Analysis)によって決定した。簡単に述べると遺伝子型を、全血からDNAを単離して精製し、続いて蛍光標識したプライマーの存在下でポリメラーゼ連鎖反応を行うことで関心対象の領域を増幅させることによって決定した。第6染色体にある3つの増幅した領域は次のとおりであった。即ち、エキソン5に含まれるTPMT*2-G238C、エキソン7に含まれるTPMT*3A-G460A、及びエキソン10に含まれるTPMT*3-A719Gである。その後で標識されたPCR産物を特定の制限酵素で切断し、切断して標識されたPCR断片産物をキャピラリー電気泳動を用いてABIプリズム310遺伝子分析器(ABI Prism 310 Genetic Analyzer)で分析した。平均値、標準偏差、結果の範囲、及び95%信頼区間をそれぞれの遺伝子型グループに対して計算した。ANOVAを3つの遺伝子型グループに対して行うことによって、グループ間の平均のp値(有意性)を決定できた。【0037】この解析の結果は、ホモ接合体が少ない患者が、ヘテロ接合性及び野生型の患者と比較して非常に良好な識別性であることを示した(表1参照)。TPMTに対してホモ接合性が低い患者間の識別性は、すべてのホモ接合体が少ない患者が、TPMT値が2ナノモルを下回る6-mTGN/グラム Hb/時間であるという発表された報告書と一致していた。ヘテロ接合体グループは、6-mTGN/グラム Hb/時間が9.7ナノモルという低い値から19.8ナノモルという高い値までの範囲のTPMT値を持っており、これはヘテロ接合体が6-mTGN/グラム Hb/時間が約10ナノモルという低い値から23.5ナノモルという指定された高い値までの範囲のTPMT活性を持つという発表された報告書とよく一致していた。一野生型の持つTPMTの活性レベル(19.6)は、6-mTGN/グラム Hb/時間が9.7−19.8ナノモルであるヘテロ接合体の範囲と重なり合っていた。この特定の患者はまたメイヨクリニック(Mayo Clinic)放射化学アッセイ法によっても測定され、それは幾分低い野生型の表現型を持つことがわかった(メイヨは、正常範囲が13.8−25.1U/mlのRBCであることと比較して、16.7U/mlのRBCという値であると報告した)。【0038】ホモ接合体が少ない集団とヘテロ接合性の集団との間でTPMT活性の平均に違いがあることで[XL-L=1.1対XH-L=15.18]、ホモ接合体が少ない個体が、野生型のTPMTに対してヘテロ接合性の個体と、およびアッセイを行った3つのTPMT多型部位でホモ接合性の野生型である個体と容易に識別できることを示している(表1参照)。さらに独立t検定は、野生型の集団とヘテロ接合型の集団が有意に異なっていることを示している(p<0.0001、両側型)。まれな遺伝子型を表すホモ接合体が少ないグループでは試料のサイズが小さいことに起因して、同様の分析を野生型とホモ接合体との間で行うこと、またはヘテロ接合体とホモ接合体が少ないグループとの間で行うことはできない。【0039】【表1】TPMTに対する遺伝子型と表現型の相関関係の結果【0040】遺伝子型の3つのカテゴリーに対してカットオフ値を設定する際の推奨が表2に示されている。【0041】【表2】過塩素酸沈殿法及びHPLC/蛍光検出法を用いるアッセイ法を行ってTPMTレベルについて測定された三重モード分布に対するカットオフは、メイヨクリニックの放射化学法に基づいて推奨されたホモ接合体が少ない、ヘテロ接合体及び野生型の遺伝子型についてのカットオフと比較して示されている。これらの二つの方法はTPMT基質の違い、即ち結果的に酵素速度論の違い及び酵素の代謝回転速度の違いを生じる可能性のある違いに依存している。どちらの方法も結果的に、三重モード分布があるTPMT活性を生じた。表3は、両方の方法に対する推奨された範囲の相関関係を記載している。【0042】【表3】【0043】実施例IIIタンパク質を沈殿させるための酸の調査この実施例は、6-メチルチオグアニンを含む試料からタンパク様の物質を沈殿させるために数個の異なる酸を使用することについて記載している。【0044】較正用の標準曲線と高い対照を実施例1に記載されたように調製した。標準曲線と6-メチルチオグアニン(6-mTG)を含む対照のどちらでも、反応生成物はプロトコールの反応の一部を不必要にするTPMTによって触媒された。標準曲線及び1組のチューブに11Mの過塩素酸(PCA)を添加した。過塩素酸に代えて次の酸のうちの一つをそれぞれの組の試料に添加した。即ち、最終濃度が2.83Mになる17Mの酢酸(氷酢酸)、最終濃度が2.67Mになる16Mの硝酸(HNO3)、最終濃度が2.5Mになる15Mのリン酸(H3PO4)、最終濃度が3Mになる18Mの硫酸(H2SO4)、または最終濃度が1Mになる6Mのトリクロロ酢酸(TCA)である。続いて試料を、実施例1に記載されたように処理して分析した。【0045】表4に示したように、RBC可溶化物を硫酸、リン酸及び酢酸で処理すると、過塩素酸沈殿の後で得られたTPMT活性測定値と同様の測定値が得られた。しかしながら、トリクロロ酢酸または硝酸で続いて処理を行った可溶化物では、6-メチルチオグアニンを検出することはできなかった。これらの結果は、硫酸、リン酸または氷酢酸を過塩素酸に代えて用いて、上清に含まれる6-mTGのようなメチル化プリン生成物を崩壊させることなく可溶化物からタンパク様の物質を優先的に沈殿させることができることを示している。【0046】【表4】【0047】括弧に入れたりその他の方法で上記に記載されたすべての雑誌記事、参照文献、及び特許の引用は、以前に述べられていようといまいと参照文献として本明細書に組み入れられる。【0048】本発明は上記の実施例を参照して記載されているが、種々の変形を本発明の精神から逸脱することなく行えることを理解すべきである。したがって本発明は特許請求の範囲によってのみ制限される。【図面の簡単な説明】【図1】 アザチオプリンと6-メルカプトプリンの代謝についての概略的な略図である。経口のアザチオプリンは非酵素的な工程で6-メルカプトプリンに素速く変換する。当初の6-MPの形質転換は、異化作用の酵素経路(XO、キサンチンオキシダーゼ、TPMT)と同化作用の酵素経路(HPRT、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ)とが競合して起こる。HPRTによって一旦形成されると6-TIMPは、律速段階酵素であるイノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ(IMPDH)によって6-TGNに形質転換されるか、または6-MMPRにメチル化される可能性がある(Dubinskyら、Gastroenterology 118: 705-713 (2000))。【図2】 アザチオプリンと6-メルカプトプリンの代謝を示している。6-メルカプトプリンの代謝経路は実線矢印で示されており、破線の矢印は、ヌクレオチドに対する脱リン酸化、さらに核酸塩基に対する異化が行われた推定の産物を示している。HPRTはヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ、TMPTはチオプリンメチルトランスフェラーゼ、XOはキサンチンオキシダーゼ、IMPDはイノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ、GMPSはグアノシン一リン酸シンセターゼである。 被験者におけるチオプリンメチルトランスフェラーゼ(TPMT)活性を測定する方法であって、 (a)該被験者から得られた試料をチオプリン誘導体と反応させ、メチル化プリン誘導体を生成する工程であって、該チオプリン誘導体が6-メルカプトプリンではない工程、 (b)該反応させた試料を酸と接触させ、それによって該反応させた試料からタンパク様の物質を沈殿させる工程、 (c)該沈殿させたタンパク様の物質から上清を分離する工程、及び (d)該メチル化プリン生成物を該上清中で検出する工程、を含み、 該メチル化プリン生成物の量が該被験者におけるチオプリンメチルトランスフェラーゼ活性のレベルを示すことを特徴とする方法。 被験者が炎症性腸疾患の患者である、請求項1の方法。 酸が過塩素酸である、請求項1の方法。 過塩素酸が70%の過塩素酸である、請求項3の方法。 チオプリン誘導体が6-チオグアニンである、請求項1の方法。 メチル化プリン生成物が蛍光によって検出される、請求項5の方法。 メチル化プリン生成物が高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって検出される、請求項1の方法。


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