生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_プラスミン阻害剤
出願番号:1993275483
年次:2004
IPC分類:7,A61K31/715,A61K31/70,A61P7/02,A61P43/00,C12N9/99,C07H11/00,C08B37/00


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山本 順一郎 永松 陽子 岡田 芳男 平田 昭夫 伊藤 渡 JP 3559578 特許公報(B2) 20040528 1993275483 19931104 プラスミン阻害剤 台糖株式会社 000204354 中村 稔 100059959 大塚 文昭 100067013 宍戸 嘉一 100065189 竹内 英人 100096194 今城 俊夫 100074228 小川 信夫 100084009 村社 厚夫 100082821 箱田 篤 100084663 山本 順一郎 永松 陽子 岡田 芳男 平田 昭夫 伊藤 渡 20040902 7 A61K31/715 A61K31/70 A61P7/02 A61P43/00 C12N9/99 C07H11/00 C08B37/00 JP A61K31/715 A61K31/70 A61P7/02 A61P43/00 111 C12N9/99 C07H11/00 C08B37/00 C 7 CA(STN) BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) 特開平2−195880(JP,A) 特開平1−287031(JP,A) 5 1995126173 19950516 12 20001003 加藤 浩 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、プラスミンに対する阻害活性を有する硫酸化多糖及び硫酸化オリゴ糖に関するものである。【0002】【従来の技術】線維素溶解系に作用する数多くの薬物が知られている。このうち、線溶系抑制薬は、抗アクチベーター薬と抗プラスミン薬の2種類に分類できる。抗アクチベーター薬は、プラスミノーゲンをプラスミンにする活性を持つウロキナーゼ等のプラスミノーゲンアクチベーターを阻害する薬物で、トラネキサム酸やεーアミノカプロン酸が知られている。また、抗プラスミン薬は、プラスミンがフィブリンを分解するのを阻害する薬物で、ポリペプチドであるアプロチニンやプルミンが知られている。これらの抗プラスミン薬は、ショックや肝障害によって起こる線溶系阻害物質の減少を治療する目的で投与される。例えば、アプロチニンでは急性膵炎や出血性ショックがその適用範囲となる。また、プラスミン阻害剤として研究用に使用されているものにヒル由来の蛋白であるベデリンがあるが、その他の薬物は殆ど知られていない。セリンプロテアーゼのような蛋白分解酵素に対する阻害剤はプラスミンを阻害する他にトリプシン、キモトリプシン、トロンビン等にも阻害活性を有していることが多く、プラスミンに対する特異性がない。以上の薬物は比較的分子量が低く持続的には作用を発揮しない。又、上述したように、蛋白分解酵素阻害剤は一般に多種の酵素を非特異的に阻害する場合が多く、選択的に特定の酵素だけに作用するものは知られていない。【0003】【発明が解決しようとする課題】本発明は、プラスミンに対する特異性が高く、より効果があってしかも副作用の少ないプラスミン阻害剤を提供することを目的とする。【0004】【課題を解決するための手段】本発明は、各種多糖及びその誘導体のプラスミン阻害効果について検討した結果、β(1→3),β(1→6)グルカンから成る多糖の硫酸化物や該多糖かち誘導されるオリゴ糖の硫酸化物がプラスミン阻害剤として優れていること、さらに非常に毒性が低いとの知見にもとづいてなされたのである。すなわち、本発明は、グルコース残基がβ(1→6)グリコシド結合によって結合したβ(1→3)グルカン及び該グルカンから誘導されるオリゴ糖の硫酸化物からなる群から選ばれる硫酸化物を有効成分とすることを特徴とするプラスミン阻害剤を提供する。本発明で用いるグルコース残基がβ(1→6)グリコシド結合によって結合したβ(1→3)グルカンとしては、下記の構造(I)を有する多糖があげられる。【0005】【化3】【0006】(式中、nは2〜694である。)具体的には、シゾフィラン(SPG)、スクレログルカン、ペンジュラン、レンチナン等があげられる。又、該グルカンから誘導されるオリゴ糖としては、該グルカンを分解して生成する2〜6糖があげられる。このようなオリゴ糖としては、構造(II)〜(IV)を有するものが好ましい。【0007】【化4】【0008】本発明では、上記グルカン及び/又はオリゴ糖の硫酸化物を使用することを特徴とする。ここで、グルカン及び/又はオリゴ糖の硫酸化の方法としては、クロルスルホン酸法、無水硫酸ーピリジンコンプレックス法、ピペリジン硫酸法などが知られており、いずれの方法でも目的とする硫酸化物を得ることが出来る。硫酸化の程度は任意とすることができるが、得られた硫酸化物の硫酸化度がイオウ含量として0.5重量%(以下、%と略称する)〜25%、好ましくは1〜18%となるように硫酸化するのがよい。このうち、高硫酸化度(10〜25%)のものは競合的に阻害作用を発現するが、低硫酸化度(0.5〜10%)のものでは非競合的に阻害作用を発現する。本発明では、上記硫酸化物自体を用いることもできるが、その塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩のようなアルカリ金属塩やアンモニウム塩を使用することができ、特に塩は安定に優れるので好ましい。本発明のプラスミン阻害剤は、アプロチニンを有効成分とする場合と同様に点滴静注するのが適当であるが、経口あるいは注射でも有効である。経口では、成人1日あたり0.1〜20mg/kgを1〜6回に分けて服用するのがよい。本発明で使用する硫酸化物は、製剤に用いられる賦形剤、安定剤、保存剤、緩衝剤などの適当な添加剤を使用して、製剤製造の常法に従って液剤、カプセル剤、顆粒剤、乳剤、坐剤、散剤、錠剤、シロップ剤、注射剤、トローチ剤などの製剤をつくることができる。【0009】【発明の効果】本発明のプラスミン阻害剤は、構成単糖がグルコースのみからなるオリゴ糖及びホモ多糖の硫酸化物を有効成分して使用するので、強力な抗プラスミン阻害活性を有する。しかもプラスミンに特異的であることから、従来の蛋白分解酵素阻害剤と比較して研究用試薬としての利用価値が高い。また、これら硫酸化物は低毒性であるという特徴を持っており、本発明のプラスミン阻害剤は医薬品としての利用価値が高い。次に実施例により本発明を説明する。【0010】【実施例】製造例1 硫酸化多糖の調製法ピリジン25mlを入れたフラスコを−10℃に保ち、攪拌下クロルスルホン酸5mlを徐々に滴下した。白煙が消えた後、フラスコを60〜70℃の油浴に移し攪拌した。シゾフィラン(SPG:分子量45万)1gを加えて15分反応を行った。フラスコを冷却後、冷水を添加した。次に過飽和炭酸ナトリウム水溶液でpH8に調整した。イオン交換水に対して一晩透析を行い、メンブランフィルターで吸引濾過した。濾液を減圧濃縮した後、アセトンを添加して沈澱物を得た。エタノールを添加して遠心分離を行い、洗浄し、沈査を一晩真空乾燥して目的とする硫酸化SPG(ナトリウム塩)2.01gを得た。そのイオウ含量は17.7%であった。結果を表−1に示す。【0011】製造例2 硫酸化オリゴ糖の調製法SPGを酵素処理し、活性炭カラムで精製して得たβ(1→6)の分岐を持ったβ(1→3)オリゴ糖(3糖、4糖、5糖、6糖、7糖)を無水硫酸−ピリジンコンプレックスを用いて硫酸化を行った。オリゴ糖(4糖)0.2gとコンプレックス1gをピリジン20ml中で60〜70℃で30分反応させた。反応溶液を冷却し、冷水を加えた後中和した。減圧濃縮でピリジンを除去し、活性炭カラムで精製を行った。最終的にナトリウム塩として目的とする硫酸化オリゴ糖(4糖)を得た。そのイオウ含量は12.8%であった。また、同様の調製法にて得られた硫酸化3糖及び硫酸化5糖のイオウ含量は、それぞれ12.5%、14.3%であった(表1参照)。なお、調製したオリゴ糖及び多糖の硫酸化物の元素分析を行ったところ、理論値と近い測定値が得られた。【0012】【表1】調製した主な硫酸化物【0013】実施例1 フィブリン分解及びアミド分解における硫酸化SPG及び硫酸化オリゴ糖の阻害効果の測定阻害活性の測定にはヒトプラスミン(KABI社)、α−キモトリプシン(シグマ社)、岡田らの方法(Chem. Pharm. Bull., 30, 1528−1530 (1982))により調製したヒト白血球エラスターゼ、及び永松らの方法(Chem. Pharm. Bull., 40, 1634−1636 (1992))により調製したカテプシンGを用いた。また、フィブリン分解活性は試料の存在下あるいは非存在下で永松らの方法に従い、プラスミノーゲンフリーのフィブリン平板を用いて測定を行った。白血球エラスターゼとカテプシンGのアミド化分解活性及びα−キモトリプシンのアミド化分解活性は、それぞれSuc−Ala−Tyr−Leu−Val−pNA及びSuc−Ile−Pro−Phe−pNAを基質として用いて測定を行った。またプラスミンのアミド化分解活性の測定には、D−Val−Leu−Lys−pNA(sー2251)を基質として使用した。コントロールは0.1Mトリスー塩酸緩衝液(pH7.5〜8.0)を使用した。その結果、硫酸化SPGや硫酸化オリゴ糖は白血球エラスターゼ、カテプシンG、α−キモトリプシンに対しては阻害効果を示さなかった。しかし、表−2に示したように、硫酸化SPGや硫酸化オリゴ糖はフィブリン分解やアミド化分解において低値を示し、プラスミンに対してのみ強い阻害効果を示した。またヘパリンにはプラスミンに対する阻害効果は認められなかった。これら実験結果から計算により阻害定数(Ki値)を算出し、表−3に示した。Ki値は阻害剤の酵素や阻害剤結合部位への親和性の強さを表すもので、分子量が大きいものほど値が小さく、酵素への親和性が強い傾向を示した。【0014】【表2】表−2 硫酸化SPG及び硫酸化オリゴ糖のフィブリン分解及びアミド化分解におけるプラスミンに対する阻害活性【0015】【表3】表−3 硫酸化SPG及び硫酸化オリゴ糖のKi値【0016】実施例2 フィブリン分解及びアミド分解における硫酸化SPG及びその他の多糖硫酸化物の阻害効果の測定製造例1と同様の方法により、スクレログルカン、レンチナンの硫酸化を行い、製造例1で得られた硫酸化SPG(S4 イオウ含量17.7%)とプラスミン活性の比較を行った。その結果、表−4に示すようにいずれも同程度の活性が得られた。【表4】表−4 硫酸化SPG及びSPG以外の多糖の硫酸化物のフィブリン分解及びアミド化分解におけるプラスミンに対する阻害活性【0017】一方、デキストラン硫酸ナトリウム(分子量25000)、λーカラギーナン(イオウ含量30%以上)、コンドロイチン硫酸ナトリウム(イオウ含量5〜7%)、硫酸化カードランナトリウム(分子量50万,イオウ含量14.1%)、硫酸化キサンタンナトリウム(イオウ含量3.77%)、ヒアルロン酸ナトリウムなどの構造はSPGと異なるが硫酸基を有する多糖についてもプラスミンに対する作用を調べた。その結果、デキストラン硫酸ナトリウム、λ−カラギーナン、硫酸化カードランナトリウム及び硫酸化キサンタンナトリウムはフィブリン分解を阻害したが、硫酸化SPGよりは弱かった。また、アミド化分解に対してはいずれの試料も阻害活性を示さなかったが、デキストラン硫酸ナトリウムは基質濃度を0.2mM以上に上げた時にのみ阻害傾向を示した。【0018】実施例3 13CーNMR製造例1および製造例2で調製した硫酸化物あるいは出発物質であるオリゴ糖や多糖をD2 Oに溶解し、13C−NMRの測定を行い、ケミカルシフトを比較した。この結果を表5に示す。【表5】表−5 13CーNMR測定結果【0019】この結果より、硫酸化多糖ではグルコース残基の6位の炭素(C−6位)に相当するケミカルシフトが低磁場側に移動していることから、C−6位が最初に硫酸化され、次いでCー4位あるいはCー2位が硫酸化されることがわかった。一方、硫酸化オリゴ糖においてもCー6位の炭素が優先的に硫酸化されるのを確認した。【0020】参考例 急性毒性試験ICRマウス(5週令、雌)を用いて当該多糖硫酸化物の急性毒性試験を行った。投与方法は経口及び静脈注射にて行い表−6に示す結果を得た。この結果から、当該多糖の硫酸化物は特に注目すべき毒性はみとめられなかった。また、当該オリゴ糖硫酸化物に関しても同様に毒性は認められなかった。【表6】表−6 急性毒性試験結果【0021】実施例5 注射剤の製剤例本発明で使用する硫酸化物100mgをNaCl9g、ベンジルアルコール9gとともに注射用蒸留水に溶解して全量1lとした。これを0.2μmのメンブランフィルターで無菌的に濾過し、バイアルに充填してゴム施栓を行い、アルミキャップで巻締めをして注射剤を作製した。 グルコース残基がβ(1→6)グリコシド結合によって結合したβ(1→3)グルカン及び該グルカンから誘導されるオリゴ糖の硫酸化物からなる群から選ばれる硫酸化物を有効成分とすることを特徴とするプラスミン阻害剤。 該グルカンが下記の構造(I)を有する請求項1記載のプラスミン阻害剤。(式中、nは2〜694である。) 該オリゴ糖が下記の構造(II)〜(IV)を有する請求項1記載のプラスミン阻害剤。 該硫酸化物のイオウ含量が0.5重量%から25重量%の範囲である請求項1記載のプラスミン阻害剤。 該グルカン及びオリゴ糖の平均分子量が500から50万の範囲にある請求項1記載のプラスミン阻害剤。


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