生命科学関連特許情報

タイトル:公表特許公報(A)_胎児型ヘモグロビンの再誘導のためのBCL11A遠位調節エレメントの標的化
出願番号:2015536657
年次:2015
IPC分類:C12N 5/10,C12N 15/09,C12N 15/00,A61K 35/18,A61P 7/00,A61K 35/545,A61K 35/28


特許情報キャッシュ

オーキン スチュアート エイチ. バウアー ダニエル イー. シュウ ジエン JP 2015536657 公表特許公報(A) 20151224 2015544205 20131127 胎児型ヘモグロビンの再誘導のためのBCL11A遠位調節エレメントの標的化 チルドレンズ メディカル センター コーポレーション 596115687 清水 初志 100102978 春名 雅夫 100102118 山口 裕孝 100160923 刑部 俊 100119507 井上 隆一 100142929 佐藤 利光 100148699 新見 浩一 100128048 小林 智彦 100129506 大関 雅人 100114340 五十嵐 義弘 100114889 川本 和弥 100121072 オーキン スチュアート エイチ. バウアー ダニエル イー. シュウ ジエン US 61/730,323 20121127 US 61/730,369 20121127 US 61/776,144 20130311 US 61/889,174 20131010 C12N 5/10 20060101AFI20151201BHJP C12N 15/09 20060101ALI20151201BHJP C12N 15/00 20060101ALI20151201BHJP A61K 35/18 20150101ALI20151201BHJP A61P 7/00 20060101ALI20151201BHJP A61K 35/545 20150101ALN20151201BHJP A61K 35/28 20150101ALN20151201BHJP JPC12N5/00 102C12N15/00 AC12N15/00A61K35/18 ZA61P7/00A61K35/545A61K35/28 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US US2013072236 20131127 WO2014085593 20140605 93 20150717 4B024 4B065 4C087 4B024AA01 4B024CA01 4B024CA20 4B024DA02 4B024EA04 4B024GA11 4B024HA17 4B065AA90X 4B065AB01 4B065AC20 4B065BA01 4B065CA44 4C087AA01 4C087AA02 4C087AA03 4C087BB33 4C087BB36 4C087DA31 4C087NA14 4C087ZA51関連出願の相互参照 本出願は、2012年11月27日付で出願された米国仮特許出願第61/730,323号の、2012年11月27日付で出願された米国仮特許出願第61/730,369号の、2013年3月11日付で出願された米国仮特許出願第61/776,144号の、および2013年10月10日付で出願された米国仮特許出願第61/889,174号の米国特許法第119条(e)下での恩典を主張するものであり、その各々の内容の全体は、参照により本明細書に組み入れられる。政府支援 本発明は、国立衛生研究所により授与された助成金番号5RO1HL032259の下で政府支援によってなされた。政府は本発明において一定の権利を有している。背景 正常な成人型ヘモグロビンには、4つのグロビンタンパク質が含まれており、そのうちの2つは、アルファ(α)タンパク質であり、残りの2つは、ベータ(β)タンパク質である。哺乳類、特にヒトの胎児発達過程において、胎児は、胎児型ヘモグロビンを産生し、胎児型ヘモグロビンには、2つのβグロビンタンパク質の代わりに、2つのガンマ(γ)グロビンタンパク質が含まれている。新生児期には、胎児スイッチ(fetal switch)とも呼ばれるグロビンスイッチが起こり、この時、赤血球系前駆細胞は、主にγグロビンの産生から、主にβグロビンの産生へと切り替わる。主に胎児型ヘモグロビンすなわちHbF(α2γ2)の産生から成人型ヘモグロビンすなわちHbA(α2β2)の産生への発達期の切り替わりは、妊娠28から34週目頃に始まり、生後間もない時期まで続き、HbAが優勢となる。この切り替わりは、主に、γグロビン遺伝子の転写が低下し、βグロビン遺伝子の転写が活性化することによる。正常な成人の血液は、平均で1%未満のHbFを含むが、健康な成人に残存するHbFレベルには、20倍を超える変動幅が認められており、遺伝的に制御されている。 異常ヘモグロビン症には、赤血球(RBC)の産生が低下している、および/または、赤血球(RBC)の崩壊(溶血)が増加している、いくつかの遺伝性の貧血が含まれる。これらにはまた、異常ヘモグロビンの産生をもたらし、同時に酸素濃度を維持する能力の障害を伴う、遺伝的欠陥も含まれる。このような疾患には、十分な量の正常βグロビンを産生できないものや、正常なβグロビンが全く産生できないものがある。このようなβグロビンタンパク質が関与する疾患は、一般に、β異常ヘモグロビン症と呼ばれる。例えば、βサラセミアは、βグロビン遺伝子の発現が部分的にまたは完全に障害されることにより起こり、HbAの異常または欠損が生じる。鎌状赤血球貧血症は、βグロビン構造遺伝子の点突然変異に起因し、異常(鎌状)ヘモグロビン(HbS)の産生が起こる。HbSは、特に脱酸素化条件で、重合を起こす傾向がある。HbS型RBCは、正常なRBCよりも脆弱であり、溶血が起こりやすいために、最終的に貧血につながる。 近年、β異常ヘモグロビン症患者におけるグロビン鎖不均衡やヘモグロビン重合性を低減することを目指した治療に関する研究において、胎児型ヘモグロビン(α2γ2、HbF)の薬理的処置が注目されている。このようなアプローチに治療的将来性があることは、ホモ接合型βサラセミアおよび遺伝性高胎児ヘモグロビン症(HPFH)の両方を同時に受け継いだ患者における表現型を観察することにより示唆される。また、ホモ接合型βサラセミアを有し、成人型ヘモグロビンの合成が起こらない患者において、胎児型ヘモグロビン濃度が高い場合には、輸血の必要性が低いことからも示唆される。さらに、β鎖異常を有する成人患者の一部では、胎児型ヘモグロビン(HbF)濃度が正常値よりも高いことが知られており、HbFが成人正常値である患者よりも症状経過が軽いことが観察されている。例えば、サウジアラビア人の鎌状赤血球症患者であって、HbFを20〜30%発現する患者からなる群においては、臨床症状が軽い。現在では、鎌状赤血球貧血症やβサラセミアなどのヘモグロビン障害は、HbFの生成を高めることにより、改善することが知られている。 既に述べたように、胎児型ヘモグロビンから成人型ヘモグロビン(α2γ2、HbA)への切り替わりは、通常、産後6ヶ月以内に進行する。しかし、β異常ヘモグロビン症患者の大半においては、上流にあるγグロビン遺伝子は、インタクトであり、完全に機能的であることから、この遺伝子を再活性化すれば、成人期においても機能的なヘモグロビンの合成が維持され、疾患の重症度を軽減できると考えられる。残念ながら、グロビンスイッチの生体内分子機序について、十分な解明は行われていない。 胎児型ヘモグロビン産生の再活性化が実現可能であることを示す証左は、半固形培地において、クローン原性細胞を含む末梢血に対して、適当な成長因子を組み合わせて投与すると、赤血球系コロニーおよび赤血球系バーストの生成が示された実験により得られる。そのようなコロニーの各細胞は、胎児型ヘモグロビン(HbF)、成人型ヘモグロビン(HbA)またはその両方を蓄えることができる。成人血液培養により、有核赤血球は、HbAのみ(F-A+)、または、HbFとHbAとの組み合わせ(F+A+)のいずれかを蓄えることができる。重要なことは、各コロニーには、F+細胞およびF-細胞の両方が含まれていることであり、このことは、両方の細胞型が同じ循環幹細胞の後代であることを示している。このように、培養による発達の初期段階において、細胞は、現在のところ解明されていない機序により、HbFを発現するかしないかの選択を行う。培養において生成する成人F+細胞の割合は、生体内において事前にプログラミングが行われているのではなく、培養条件によって変わると考えられる。HbFとHbAとの両方を発現する経路へのシフトは、例えば、血清濃度を高くすることによりインビトロで実現可能であり、それは、活性炭に吸着する未同定物質の作用によるものである。 概して、グロビンスイッチに関与する分子を特定することは、成人型ヘモグロビン合成を阻害し、胎児型ヘモグロビン合成を誘導する新規治療方策の開発に重要である。そのような分子は、胎児型ヘモグロビン合成の再活性化により疾患の重症度や罹患率が大きく改善する、さまざまな異常ヘモグロビン症に対する治療法を開発する上で、新たな標的を提供する。概要 BCL11A発現をゲノムレベルで破壊することにより細胞中の胎児型β-グロビンレベルを増加させるための方法および組成物が本明細書において提供される。胎児型β-グロビンレベルの再誘導による異常ヘモグロビン症の処置に関する方法および組成物も本明細書において提供される。 本明細書において記述される1つの局面は、減少したBCL11A mRNAまたはタンパク質の発現を有する前駆細胞を産生するための方法であって、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上の細胞ゲノムDNAに結合する薬剤と、単離された前駆細胞を接触させ、それによってBCL11AのmRNAまたはタンパク質の発現を低減させる段階を含む、方法に関する。 本明細書において記述される別の局面は、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、単離された細胞を接触させる段階であって、それによってDNAを標的とするエンドヌクレアーゼが、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、段階を含む、少なくとも1つの遺伝的改変を有する遺伝子操作ヒト細胞を産生するための方法に関する。 本明細書で別の局面において同様に提供されるのは、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上に少なくとも1つの遺伝的改変を有する単離された遺伝子操作ヒト細胞である。1つの態様において、少なくとも1つの遺伝的改変は、特定の位置でのゲノムDNAにおける欠失である。1つの態様において、単離された遺伝子操作ヒト細胞は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上に1つの遺伝的改変も有しない対照細胞と比べて低減または減少されたBCL11AのmRNAまたはタンパク質の発現を有する。 本明細書において記述される別の局面は、哺乳類において胎児型ヘモグロビンレベルを増加させる目的のための、本明細書において記述される第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上に少なくとも1つの遺伝的改変を有する単離された遺伝子操作ヒト細胞の使用に関する。 本明細書において記述される別の局面は、哺乳類における異常ヘモグロビン症の処置のための、本明細書において記述される第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上に少なくとも1つの遺伝的改変を有する単離された遺伝子操作ヒト細胞の使用に関する。 本明細書において記述される別の局面は、それによって哺乳類における胎児型ヘモグロビンレベルが増加される、哺乳類において異常ヘモグロビン症を処置するための薬物の製造のための、本明細書において記述される第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上に少なくとも1つの遺伝的改変を有する単離された遺伝子操作ヒト細胞の使用に関する。 本明細書において記述される別の局面は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上に少なくとも1つの遺伝的改変を有する単離された遺伝子操作ヒト細胞を含む組成物である。1つの態様において、組成物は薬学的に許容される担体をさらに含む。 本明細書において記述される別の局面は、哺乳類において胎児型ヘモグロビンレベルを増加させる目的のための、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上に少なくとも1つの遺伝的改変を有する単離された遺伝子操作ヒト細胞を含む組成物の使用に関する。 本明細書において記述される別の局面は、哺乳類における異常ヘモグロビン症の処置のための、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上に少なくとも1つの遺伝的改変を有する単離された遺伝子操作ヒト細胞を含む組成物の使用に関する。 本明細書において記述される別の局面は、それによって哺乳類における胎児型ヘモグロビンレベルが増加される、哺乳類において異常ヘモグロビン症を処置するための薬物の製造のための、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上に少なくとも1つの遺伝的改変を有する単離された遺伝子操作ヒト細胞を含む組成物の使用に関する。 本明細書において記述される別の局面は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上のヒト細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物である。1つの態様において、組成物は薬学的に許容される担体をさらに含む。 本明細書において記述される別の局面は、哺乳類において胎児型ヘモグロビンレベルを増加させる目的のための、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上のヒト細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の使用に関する。 本明細書において記述される別の局面は、哺乳類における異常ヘモグロビン症の処置のための、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上のヒト細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の使用に関する。 本明細書において記述される別の局面は、それによって哺乳類における胎児型ヘモグロビンレベルが増加される、哺乳類において異常ヘモグロビン症を処置するための薬物の製造のための、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上のヒト細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の使用に関する。 1つの態様において、哺乳類において胎児型ヘモグロビンを増加させるための、または哺乳類において異常ヘモグロビン症を処置するための、またはBCL11AのmRNAもしくは発現を低減させるための、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上の細胞ゲノムDNAに結合する薬剤の使用であって、BCL11AのmRNAまたはタンパク質の発現が低減される、使用が本明細書において提供される。 1つの態様において、哺乳類において胎児型ヘモグロビンを増加させるための、または哺乳類において異常ヘモグロビン症を処置するための、またはBCL11AのmRNAもしくは発現を低減させるための、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量の使用であって、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼが第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、使用が本明細書において提供される。 1つの態様において、哺乳類において胎児型ヘモグロビンを増加させるための、または哺乳類において異常ヘモグロビン症を処置するための、またはBCL11AのmRNAもしくは発現を低減させるための、DNAを標的とする酵素またはDNAを標的とする酵素のコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量の使用であって、DNAを標的とする酵素が第2染色体上の細胞ゲノムDNAにおける少なくとも1つの後成的修飾をもたらし、それによってBCL11AのmRNAもしくは発現に影響を与える、使用が本明細書において提供される。1つの態様において、少なくとも1つの後成的修飾は、位置60,716,189〜60,728,612の位置である。別の態様において、1つの後成的修飾の効果は、BCL11AのmRNAもしくはタンパク質の発現を低減させることである。1つの態様において、第2染色体上での細胞ゲノムDNAにおける少なくとも1つの後成的修飾は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612に間接的または直接的に影響を与える。 1つの態様において、哺乳類において胎児型ヘモグロビンを増加させるための、または哺乳類において異常ヘモグロビン症を処置するための、本明細書において記述されるいずれかの単離された細胞の使用が本明細書において提供される。 1つの態様において、哺乳類において胎児型ヘモグロビンを増加させるための、または哺乳類において異常ヘモグロビン症を処置するための、単離された遺伝子操作ヒト細胞を含む組成物の使用であって、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上の細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、細胞を接触させるプロセスによって生成された第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上の少なくとも1つの遺伝的改変を細胞が有する、使用が本明細書において提供される。 1つの態様において、哺乳類において胎児型ヘモグロビンを増加させるための、または哺乳類において異常ヘモグロビン症を処置するための、単離された遺伝子操作ヒト細胞を含む組成物の使用であって、細胞が第2染色体上に少なくとも1つの後成的修飾を有する、使用が本明細書において提供される。1つの態様において、第2染色体上の少なくとも1つの後成的修飾は、位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)の位置である。別の態様において、第2染色体上の少なくとも1つの後成的修飾は、DNAを標的とする酵素またはDNAを標的とする酵素のコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、細胞を接触させるプロセスであって、それによってDNAを標的とする酵素が、位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)に影響を与える第2染色体上の細胞ゲノムDNAにおける少なくとも1つの後成的修飾をもたらし、その中に少なくとも1つの後成的修飾を引き起こすプロセスによって生成される。 1つの態様において、それを必要とする哺乳類において胎児型ヘモグロビンを増加させるための、または哺乳類において異常ヘモグロビン症を処置するための薬物の製造のための、本明細書において記述されるいずれかの単離された細胞または本明細書において記述されるいずれか1つの組成物の使用が本明細書において提供される。 本明細書において記述される別の局面は、以下の段階を含む、細胞における胎児型ヘモグロビンレベルを増加させる方法である:第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、単離された細胞を接触させる段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、該接触の前の該細胞と比べて、該細胞またはその後代において増加される、段階。 本明細書において記述される別の局面は、以下の段階を含む、それを必要とする哺乳類において胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法である:第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、該哺乳類において単離された造血前駆細胞を接触させる段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、該接触の前の発現と比べて、該哺乳類において増加される、段階。 本明細書において記述される別の局面は、それを必要とする哺乳類において胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法であって、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上に少なくとも1つの遺伝的改変を有する単離された遺伝子操作ヒト細胞を該哺乳類に移植する段階を含む、方法である。 1つの態様において、本開示は、以下の段階を含む、それを必要とする哺乳類において胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法を提供する:エクスビボで哺乳類から単離された造血前駆細胞または造血幹細胞の集団を提供する段階、および第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、造血前駆細胞または幹細胞の集団を接触させる段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、該接触の前の発現と比べて、該哺乳類において増加される、段階。 1つの態様において、本開示は、以下の段階を含む、それを必要とする哺乳類において胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法を提供する:哺乳類から造血前駆細胞または造血幹細胞の集団を単離する段階、および第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、造血前駆細胞または幹細胞の集団をエクスビボで接触させる段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、該接触の前の発現と比べて、該哺乳類において増加される、段階。 1つの態様において、本開示は、以下の段階を含む、それを必要とする哺乳類において胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法を提供する:哺乳類から造血前駆細胞または造血幹細胞の集団を提供・単離する段階、および第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAを欠失させ、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、該接触の前の発現と比べて、該哺乳類において増加される、段階。 1つの態様において、本開示は、以下の段階を含む、それを必要とする哺乳類において胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法を提供する:哺乳類から造血前駆細胞または造血幹細胞の集団を単離する段階、および第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAをエクスビボで欠失させ、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、該接触の前の発現と比べて、該哺乳類において増加される、段階。 1つの態様において、本開示は、(a) 造血前駆細胞もしくは造血幹細胞またはiPSCを提供する段階; (b) 第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、細胞をエクスビボまたはインビトロで接触させる段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、該接触の前の発現と比べて、該哺乳類において増加される、段階; および(c) 段階(b)の細胞を哺乳類へ投与する段階を含む、哺乳類における異常ヘモグロビン症の処置の方法を提供する。 1つの態様において、本開示は、(a) 哺乳類から造血前駆細胞もしくは造血幹細胞を単離する段階; (b) 第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、細胞をエクスビボまたはインビトロで接触させる段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、該接触の前の発現と比べて、該哺乳類において増加される、段階; および(c) 段階(b)の細胞を哺乳類へ投与する段階を含む、哺乳類における異常ヘモグロビン症の処置の方法を提供する。 1つの態様において、本開示は、(a) 造血前駆細胞もしくは造血幹細胞またはiPSCを提供する段階; (b) 第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAをエクスビボで欠失させ、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、該接触の前の発現と比べて、該哺乳類において増加される、段階; および(c) 段階(b)の細胞を哺乳類へ投与する段階を含む、哺乳類における異常ヘモグロビン症の処置の方法を提供する。 1つの態様において、本開示は、(a) 哺乳類から造血前駆細胞もしくは造血幹細胞を単離する段階; (b) 第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAをエクスビボで欠失させ、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、該接触の前の発現と比べて、哺乳類において増加される、段階; および(c) 段階(b)の細胞を哺乳類へ投与する段階を含む、哺乳類における異常ヘモグロビン症の処置の方法を提供する。 1つの態様において、本開示は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上に少なくとも1つの遺伝的改変を有する単離された遺伝子操作細胞を含む本明細書において記述される組成物を導入する段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が哺乳類において増加される、段階を含む、哺乳類(例えばヒト)における異常ヘモグロビン症の処置の方法を提供する。 1つの態様において、本開示は、本明細書において記述される方法により哺乳類における胎児型ヘモグロビンの発現を増加させる段階を含む、哺乳類(例えばヒト)における異常ヘモグロビン症の処置の方法を提供する。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、単離された細胞または単離された細胞集団は、ヒト細胞である。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、単離された細胞または単離された細胞集団は、前駆細胞である。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、ヒト細胞は、造血前駆細胞である。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、ヒト細胞は、人工多能性幹細胞である。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、人工多能性幹細胞は、造血前駆細胞である。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、造血前駆細胞は、赤血球系列の細胞である。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、造血前駆細胞または単離されたものは、エクスビボまたはインビトロまたはインビボで接触させる。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、少なくとも1つの遺伝的改変は、欠失である。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、欠失は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612の間の全領域を除去するか、または該領域の一部分を除去し、1つもしくは複数のDNAse 1高感受性部位(DHS)の破壊を引き起こす。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、欠失は、実施例の項のなかで本明細書において記述されるDNAse 1高感受性部位(DHS) +62、+58、および+55の1つまたは複数を含む。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、欠失は、表2に記述されているSNPマーカーの1つまたは複数を含む。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、欠失は、表7に記載されている断片の1つまたは複数を含む。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、欠失は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612の間の全領域を除去するか、または該領域の一部分を除去し、1つもしくは複数のDNAse 1高感受性部位(DHS)の破壊を引き起こす。1つの態様において、本明細書において用いられる場合、ゲノム欠失との関連で「一部分」という用語は、特定領域の少なくとも20%〜80%である。 いずれかの処置方法のさらなる態様において、本方法は、哺乳類における内在性の造血前駆細胞または幹細胞を除去または低減するために化学療法および/または放射線療法を含む。 いずれかの方法の1つの態様において、少なくとも1つの遺伝的改変を有する接触させた細胞は、哺乳類への投与に必要とされるまで凍結保存および貯蔵することができる。 記述されるいずれかの方法の1つの態様において、造血前駆細胞もしくは幹細胞または単離された細胞は、本明細書において記述されるiPSCと置き換えることができる。 記述されるいずれかの方法の1つの態様において、造血前駆細胞もしくは幹細胞またはiPSCまたは単離された細胞は、前記哺乳類にとって自家性であり、これは細胞が同じ哺乳類に由来することを意味する。記述される方法の別の態様において、造血前駆細胞もしくは幹細胞またはiPSCまたは単離された細胞は、前記哺乳類にとって非自家性であり、これは細胞が同じ哺乳類に由来するのではなく、同じ種の別の哺乳類に由来することを意味する。例えば、哺乳類はヒトである。 いずれかの処置方法の1つの態様において、本方法は、胎児型ヘモグロビン発現の増加を必要としている哺乳類を選択する段階をさらに含む。 いずれかの処置方法の1つの態様において、本方法は、異常ヘモグロビン症の処置を必要としている哺乳類を選択する段階をさらに含む。 記述されるいずれかの処置方法のいずれかの態様において、異常ヘモグロビン症はβ異常ヘモグロビン症である。 記述されるいずれかの処置方法のいずれかの態様において、異常ヘモグロビン症はβサラセミアである。 記述されるいずれかの処置方法のいずれかの態様において、異常ヘモグロビン症は鎌状赤血球貧血である。図1Aは、赤血球系の形質とP<5×10-8で関連することが以前に公表された、プロモーター、エクソン、イントロン、3'UTRおよび遺伝子間配列に対する636種類のSNPの分布を示す。比較用として、これらの領域の遺伝子分布を表示した。図1Bは、赤血球系の形質と関連する636種類のSNPと最も近傍に位置する赤血球系エンハンサーとの間の距離の累積分布をプロットしたグラフである。赤血球系エンハンサーとは、参照配列(Refseq)によりアノテーションされた遺伝子のTSSから2 kb超離れた配列であって、DNase I高感受性を有し、H3K4melに加え、H3K27acまたはH3K9acが存在し、かつ、H3K4me3およびH3K27me3が存在しない配列として定義した。636種類のランダムに並び替えた非赤血球系形質関連SNP(GWASデータベースより)、Affy6.0ジェノタイピングアレイによるSNP、またはランダムSNPの50セットに関しても、距離(平均±SD)を示した。図2Aは、CD34+細胞由来の赤血球系前駆細胞により行った、H3K27me3、H3K4me3、H3K4mel、H3K27ac、GATA1、TAL1およびPolIIに対する抗体を用いたChIP、続く超並列配列決定を示す。赤血球系前駆細胞、胎児脳ならびにBおよびTリンパ球から単離した核に対してDNase I処理を行い、切断部位を超並列配列決定により決定した。HbF関連SNPには、HbFレベルまたはF-細胞数とP<5×10-8で関連するSNP、および所与のGWASにおいてHbFまたはF-細胞数と最も強い関連性を有するセンチネルSNPが含まれる。隣接する3種類の赤血球系DHSは、BCL11AのTSSからの距離(kb)に基づいて、+62、+58および+55と表示する。図2Bは、初代ヒト赤血球系前駆細胞のBCL11Aイントロン2におけるChIP-qPCRを、1%インプットクロマチンに対して正規化して示す。図2Aに示したDHS+62、+58および+55について、灰色バーで示す。比較用として、陰性対照(GAPDH、OCT4)および陽性対照(βグロビンLCR HS3、αグロビンHS-40)の遺伝子座における濃縮度を示す。図2Cは、初代ヒト赤血球系前駆細胞においてBCL11Aプロモーターをアンカーとして用いてBCL11A遺伝子座にわたって行われた、染色体高次構造捕捉(chromosome conformation capture)を示す。相互作用頻度は、LCR-HBB相互作用に対して正規化してある。図3Aは、ヘテロ接合性の個体を特定するために、健康な匿名ドナーから得られた造血幹/前駆細胞について、rs1427407のジェノタイピングを行ったことを示す。5人のドナーを特定した。造血幹/前駆細胞に対して、赤血球系分化培養を行った。赤芽球からクロマチンを単離し、GATA1またはTAL1により免疫沈降を行った。ChIPのDNAまたはインプットDNAに対して、パイロ配列決定反応を行い、rs1427407のG対立遺伝子の相対量を定量した。図3Bは、rs1427407-rs7606173ハプロタイプおよびrs7569946がヘテロ接合性である個体を特定するために、健康な匿名ドナーから得られた造血幹/前駆細胞について、rs1427407、rs7606173およびrs7569946のジェノタイピングを行ったデータを示す。3人のドナーを特定した。ハプロタイピングにより、rs7569946のG対立遺伝子は、それぞれrs1427407のG対立遺伝子およびrs7606173のC対立遺伝子と同じ染色体上に存在することが示された。造血幹/前駆細胞に対して、赤血球系分化培養を行った。RNAおよびゲノムDNAを単離し、逆転写によりcDNAを生成した。ペアリングを行ったgDNAおよびcDNAサンプルに対して、パイロ配列決定反応を行い、7569946のG対立遺伝子の相対量を定量した。図3Cは、CSSCDコホートにおけるrs1427407-rs7606173ハプロタイプについての平均HbFレベルを示す。平均HbFレベルは、rs1427407-rs7606173 G-Cを有する213例の個体においては4.05%(SD3.10)であり、rs1427407-rs7606173 T-G/G-Tのヘテロ接合性を示す254例の個体においては7.08%(SD4.50)、rs1427407-rs7606173 T-Gを有する60例の個体では11.21%(SD4.37)であった。P値は、片側スチューデントt検定によるものである。CSSCDコホートにおけるハプロタイプ頻度は、TGが24.5%、TCが0.085%、GCが42.3%、GGが33.1%であった。H19インシュレーターエレメントに隣接する最小Hsp68プロモーターとlacZレポーター遺伝子の上流にクローニングした、DHS+62、+58および+55を含むBCL11Aイントロン2の12.4 kb断片(TSSから+52.0〜64.4 kbを含む)のデータを示す。一細胞の段階で核注入を行い、一過性のトランスジェニックマウス胚を作製した。図4Aは、X-galで染色したE12.5の一過性のトランスジェニック胚を示す。図4Bは、E12.5の安定なトランスジェニック胚から採取した末梢血および肝臓から単離した細胞懸濁液を示す。サイトスピンの染色には、X-galを用い、Nuclear Redにより対比染色を行った。図4Cは、若く安定したトランスジェニック成体から単離および選別した、骨髄赤芽球(CD71陽性/Ter119陽性)および脾臓リンパ球(Bリンパ球はCD19陽性、Tリンパ球はCD3陽性)のデータを示す。細胞に対してX-gal染色を行った、または、RNA単離の後RT-qPCRを行った。遺伝子発現は、GAPDHに対して正規化し、Tリンパ球との比較により表示した。Tリンパ球は、BCL11AもlacZも発現しない。+50.4〜+60.4 kbの10 kbのオルソロガスBCL11Aイントロン2赤血球系エンハンサーの一端にDSBを作製するよう各々デザインされた二組のTALENを用いてトランスフェクションを行ったマウス赤白血病(MEL)細胞およびプロBリンパ球細胞を示す。両対立遺伝子において当該10kb断片を欠失したクローン(Δ50.4〜60.4と称す)を単離した。図5Aは、イントロン2の上流の、イントロン2にまたがる、およびイントロン2の下流の配列を認識するプライマーペアを用いて行った、Bcl11aのRT-qPCRを示す。図5Bは、抗BCL11A抗体によるΔ50.4〜60.4の免疫ブロットを示す。図5Cは、Δ50.4〜60.4MELクローンにおけるグロビン遺伝子発現を示す。共通のプライマーペアでは、成人型βグロビンであるβ2およびβ1を認識し、個別のプライマーにより、胚性βグロビンであるεyおよびβH1を認識した。lacZレポーター構築物を注入したマウス接合体前核を示す。E12.5にトランスジェニック胚を単離した。胚に対し、lacZを用いたPCRによりジェノタイピングを行った。胎肝臓のX-gal染色を有するトランスジェニック胚の割合を記録した。最小TKプロモーターおよびGFPを有するエンハンサー構築物の中にクローニングした1〜2 kb配列断片を示す。エンハンサーレポーター構築物は、レンチウイルスベクターにより、初代ヒト赤血球系前駆細胞に送達した。形質導入した細胞は、ピューロマイシン抵抗性により選別した。GFP蛍光強度の平均値を測定した。Bcl11aのイントロン2においてオルソロガスなエンハンサーシグナチャーを有するマウス赤血球系細胞のクロマチンプロファイリングに関するデータを示す。マウスのトラックは、以前に公表された包括的マウス赤血球系クロマチンプロファイリングから取得し、ヒストン修飾およびDNase I切断ならびにGATA1およびTAL1を用いたChIP-seqデータも同様である。点線で示した長方形部分は、TALENによる欠失の対象となるΔ50.4〜60.4エレメントを規定するオルソロガスなエンハンサーシグナチャーの境界を示す。図9Aは、本発明において用いたTALENによるゲノム工学方略の図である。TALENは、配列特異的なヌクレアーゼである。一つはBcl11aの+50.4に、およびもう一つは+60.4に、二重鎖の切れ目が生じるように、二組のTALENを作製した。介在する10 kb断片が切り取られるとともにNHEJによる修復が行われた2つのDSBを有するクローンを単離した。10 kbの欠失の内部および欠失をまたがる5'プライマーおよび3'プライマーを用いて、PCRによるクローンのスクリーニングを行った。図9Bは、HindIIIにより消化されたΔ50.4〜60.4クローンのゲノムDNAについてのサザンブロッティングを示す。これらのクローンには、想定したとおり対立遺伝子が除去されており、除去されていない対立遺伝子はなかったことが確認された。Δ50.4〜60.4クローンからのPCR産物のサンガー法による配列決定を示す。TALENの左右の5'(+50.4)および3'(+60.4)側認識配列ならびに介在するスペーサーを示す。一部の対立遺伝子は、それぞれの消化されたスペーサー配列の末端が直接結合した証左を示していたが、他の対立遺伝子では、さらに数百のヌクレオチドが欠失していたことが示された。MELクローン番号1およびプロBクローン番号2からは、それぞれ1個の対立遺伝子が単離されたのみであった。CSSCDからの個体1,178例から得られた、BCL11AのDHS +62、+58および+55内の38種類の変種に関する遺伝子型データを示す。一般的な(MAF>1%) SNP (n=10)のうち、HbFレベルと最も強い関連性を示したものは、rs1427407に基づく条件付け解析を行う前では、(rs1427407)であり、行った後では、(rs7606173)であった。SNP座標は、第2染色体、ビルド番号19。BCL11AにおけるHbF関連解析を示す。CSSCDからの個体1,178例から得られた、BCL11AのDHS +62、+58および+55内の38種類の変種に関する遺伝子型データを示す。センチネルSNPとは、過去のGWAS(7〜12)において、HbFレベルまたはF-細胞と最も強い関連性を有するものである。これらのSNPは、3つのDHS +62、+58および+55の表示とあわせてBCL11Aのイントロン2に対して示される。詳細な説明 本明細書において記述される方法および組成物は、一部は、BCL11Aタンパク質の発現を調節できるBCL11A遺伝子上流の遠位調節領域の発見に関する。BCL11Aタンパク質は、γ-グロビン誘導を抑制することにより胎児型ヘモグロビン発現の発生段階特異的な調節因子として働く。したがって、本明細書において提供される方法および組成物は、赤血球系細胞におけるγ-グロビン発現の調節のための新規の方法である。より具体的には、BCL11A遺伝子産物の阻害を介したγ-グロビンの誘導によるβ異常ヘモグロビン症の処置のための方法において、これらの活性を利用することができる。 1つの態様において、減少したBCL11A mRNAまたはタンパク質の発現を有する単離された前駆細胞を産生するための方法であって、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上の細胞ゲノムDNAに結合する薬剤と、単離された前駆細胞を接触させ、それによってBCL11AのmRNAまたはタンパク質の発現を低減させる段階を含む、方法が本明細書において提供される。 1つの態様において、減少したBCL11A mRNAまたはタンパク質の発現を有する単離された前駆細胞を産生するための方法であって、単離された前駆細胞を提供する段階、および第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上の細胞ゲノムDNAに結合する薬剤と、単離された前駆細胞を接触させ、それによってBCL11AのmRNAまたはタンパク質の発現を低減させる段階を含む、方法が本明細書において提供される。 1つの態様において、減少したBCL11A mRNAまたはタンパク質の発現を有する単離された前駆細胞を産生するための方法であって、第2染色体上の細胞ゲノムDNAに結合する/第2染色体上の細胞ゲノムDNAにおける後成的修飾をもたらす薬剤と、単離された前駆細胞を接触させ、それによってBCL11AのmRNAまたはタンパク質の発現を低減させる段階を含む、方法が本明細書において提供される。1つの態様において、ゲノムDNAにおける後成的修飾は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)の位置である。 1つの態様において、減少したBCL11A mRNAまたはタンパク質の発現を有する単離された前駆細胞を産生するための方法であって、単離された前駆細胞を提供する段階、および第2染色体上の細胞ゲノムDNAにおける後成的修飾をもたらす薬剤と、単離された前駆細胞を接触させ、それによってBCL11AのmRNAまたはタンパク質の発現を低減させる段階を含む、方法が本明細書において提供される。1つの態様において、ゲノムDNAにおける後成的修飾は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)の位置である。 本明細書において記述される開示は、好ましい態様において、ヒトをクローニングするためのプロセス、ヒトの生殖系列の遺伝的同一性を改変するためのプロセス、ヒトまたは動物に対する実質的な医学的利益もなしに動物に苦痛をもたらす可能性が高い動物の遺伝的同一性を改変するための工業的または商業的な目的またはプロセスのための、ヒト胚の使用、および同様にそのようなプロセスから生じる動物に関係しない。 本明細書において記述される1つの局面は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上の細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、細胞を接触させる段階を含む、少なくとも1つの遺伝的改変を有する単離された遺伝子操作ヒト細胞を産生するための方法に関する。 本明細書において提供される別の局面は、単離された細胞における胎児型ヘモグロビンレベルを増加させる方法であって、該細胞におけるBCL11A mRNAまたはタンパク質の発現を減少させる段階を含む、方法に関する。1つの局面において、BCL11A mRNAまたはタンパク質の発現の減少は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上の細胞ゲノムDNAにおいて少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こすことによって達成される。別の局面において、BCL11A mRNAまたはタンパク質の発現の減少は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612における遺伝子機能の後成的修飾をもたらす、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAにおける少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こすことによって達成される。この局面において、この第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612内にあるBCL11Aエンハンサー活性が低減される。この局面における減少とは、細胞におけるBCL11A mRNAまたはタンパク質の発現を増強させる際のエンハンサー活性が、本明細書において開示されるいかなる方法においても処理されていない対照細胞と比べて、少なくとも5%低い、少なくとも10%低い、少なくとも20%低い、少なくとも30%低い、少なくとも40%低い、少なくとも50%低い、少なくとも60%低い、少なくとも70%低い、少なくとも80%低い、少なくとも90%低い、少なくとも1倍低い、少なくとも2倍低い、少なくとも5倍低い、少なくとも10倍低い、少なくとも100倍低い、少なくとも1000倍低いか、またはそれ以上低い。細胞におけるBCL11A mRNAまたはタンパク質の発現の減少とは、タンパク質の発現が、本明細書において開示されるいかなる方法においても処理されていない対照細胞と比べて、少なくとも5%低い、少なくとも10%低い、少なくとも20%低い、少なくとも30%低い、少なくとも40%低い、少なくとも50%低い、少なくとも60%低い、少なくとも70%低い、少なくとも80%低い、少なくとも90%低い、少なくとも1倍低い、少なくとも2倍低い、少なくとも5倍低い、少なくとも10倍低い、少なくとも100倍低い、少なくとも1000倍低いか、またはそれ以上低いことを意味する。 本明細書において提供される別の局面は、単離された細胞における胎児型ヘモグロビンレベルを増加させる方法であって、単離されたヒト細胞または前駆細胞を提供する段階および該細胞におけるBCL11A mRNAまたはタンパク質の発現を減少させる段階を含む、方法に関する。 本明細書において提供される別の局面は、以下の段階を含む、細胞における胎児型ヘモグロビンレベルを増加させる方法に関する:第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上の細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、単離されたヒト細胞を接触させる段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、接触させる前の該細胞と比べて、該細胞またはその後代において増加される、段階。 本明細書において提供される別の局面は、以下の段階を含む、細胞における胎児型ヘモグロビンレベルを増加させる方法に関する:単離されたヒト細胞または前駆細胞を提供する段階、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上の細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、単離されたヒト細胞または前駆細胞を接触させる段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、接触させる前の該細胞と比べて、該細胞またはその後代において増加される、段階。 本明細書において記述される別の局面は、それを必要とする哺乳類において胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法であって、該哺乳類における造血前駆細胞中のBCL11A mRNAまたはタンパク質の発現を減少させる段階を含む、方法に関する。1つの局面において、BCL11A mRNAまたはタンパク質の発現の減少は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上の細胞ゲノムDNAにおいて少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こすことによって達成される。別の局面において、BCL11A mRNAまたはタンパク質の発現の減少は、第2染色体の細胞ゲノムDNAにおいて少なくとも1つの後成的修飾を引き起こすことによって達成される。別の局面において、BCL11A mRNAまたはタンパク質の発現の減少は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAにおいて少なくとも1つの後成的修飾を引き起こすことによって達成される。 本明細書において記述される別の局面は、それを必要とする哺乳類において胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法であって、哺乳類由来の単離されたヒト細胞または前駆細胞を提供する段階および該細胞におけるBCL11A mRNAまたはタンパク質の発現を減少させる段階を含む、方法に関する。1つの局面において、本方法は、その胎児型ヘモグロビンレベルを増加させる必要のある哺乳類を選択する段階をさらに含む。 本明細書において記述される別の局面は、以下の段階を含む、それを必要とする哺乳類において胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法に関する:第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上の細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、該哺乳類における造血前駆細胞を接触させる段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、接触させる前の発現と比べて、該哺乳類において増加される、段階。 本明細書において記述される別の局面は、以下の段階を含む、それを必要とする哺乳類において胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法に関する:哺乳類由来の単離されたヒト細胞もしくは前駆細胞または単離された造血前駆細胞集団を提供する段階、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上の細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、ヒト細胞もしくは前駆細胞または造血前駆細胞を接触させる段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、接触させる前の発現と比べて、該哺乳類において増加される、段階。 本明細書において提供される別の局面は、それを必要とする哺乳類において胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法であって、本明細書において記述される遺伝子操作ヒト細胞を該哺乳類に移植する段階を含む、方法に関する。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、本方法は、単離された細胞もしくは単離された前駆細胞、または前駆細胞もしくは造血前駆細胞でありうる単離された細胞集団を提供する段階をさらに含む。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、単離された細胞は、単離された前駆細胞である。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、単離された前駆細胞は、単離されたヒト細胞である。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、単離されたヒト細胞は、造血前駆細胞である。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、造血細胞は赤血球系列の細胞である。造血前駆細胞を単離する方法は、当技術分野において周知であり、例えば、CD34+またはCD133+細胞のフローサイトメトリー精製、CD34またはCD133に対する抗体を結合させたマイクロビーズ、造血前駆細胞のマーカーによるものである。市販のキット、例えば、MACS(登録商標) Technology CD34 MicroBead Kit, ヒト、およびCD34 MultiSort Kit, ヒト、およびSTEMCELL(商標) Technology EasySep(商標) Mouse Hematopoietic Progenitor Cell Enrichment Kitも利用可能である。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、ヒト細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)である。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、本明細書において記述されるいずれかの細胞の接触は、エクスビボまたはインビトロまたはインビボでありうる。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、本明細書において記述されるいずれかの細胞の接触は、第2染色体上の細胞ゲノムDNAに結合し、かつ第2染色体上での細胞ゲノムにおける後成的修飾をもたらし、それによってBCL11AのmRNAまたはタンパク質の発現を低減させる薬剤との接触を含む。1つの態様において、後成的修飾は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上である。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、第2染色体上での細胞ゲノムDNAにおける少なくとも1つの後成的修飾は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612に間接的または直接的に影響を与える。 本明細書において用いられる場合、「第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612に間接的に影響を与える」とは、第2染色体のうち第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAにおける後成的修飾の長距離効果をいう。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、本明細書において記述されるいずれかの細胞の接触は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上の細胞ゲノムDNAに結合し、かつ第2染色体上での後成的修飾をもたらし、それによってBCL11AのmRNAまたはタンパク質の発現を低減させる薬剤との接触を含む。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、本明細書において記述されるいずれかの細胞の接触は、第2染色体上での後成的修飾をもたらす、DNAを標的とする酵素またはDNAを標的とする酵素のコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量との接触を含み、それによってBCL11AのmRNAまたはタンパク質の発現を低減させる。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、本明細書において記述されるいずれかの細胞の接触は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上での後成的修飾をもたらす、DNAを標的とする酵素またはDNAを標的とする酵素のコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量との接触を含み、それによってBCL11AのmRNAまたはタンパク質の発現を低減させる。1つの局面において、胎児型ヘモグロビンの発現は、接触させる前の発現と比べて、哺乳類において増加される。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、造血前駆細胞、単離されたヒト細胞、または単離された細胞は、エクスビボまたはインビトロで接触させる。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、少なくとも1つの遺伝的改変は欠失である。本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、少なくとも1つの後成的修飾。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、欠失は、実施例の項のなかで本明細書において記述されるDNAse 1高感受性部位(DHS) +62、+58、および+55の1つまたは複数を含む。本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、欠失は、実施例の項のなかで本明細書において記述されるDNAse 1高感受性部位(DHS) +62、+58、および+55の1つまたは複数から本質的になる。別の態様において、欠失は、実施例の項のなかで本明細書において記述されるDNAse 1高感受性部位(DHS) +62、+58、および+55の1つまたは複数からなる。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、後成的修飾は、実施例の項のなかで本明細書において記述されるDNAse 1高感受性部位(DHS) +62、+58、および+55の1つもしくは複数を含むか、またはそれらに影響を与える。本明細書において用いられる場合、「DNAse 1高感受性部位の1つまたは複数に影響を与える」という語句は、これらのDNAse 1高感受性部位(DHS) +62、+58、および+55の天然の機能、例えば、転写因子またはDNA分解酵素、例えばDNase Iへのアクセスが低減されることを意味する。一般に、DNAse I高感受性部位(DHS)は、DNase I酵素による切断に感受性であるクロマチンの領域である。ゲノムのこれらの特定領域において、クロマチンはその凝縮構造を喪失して、DNAを曝露し、それをアクセス可能にする。これによって、DNAがDNase Iのような、酵素による分解を受けられるようになる。これらのアクセス可能なクロマチン域は、転写活性に機能的に関連している。というのは、この再構築された状態が転写因子のようなタンパク質の結合に必要だからである。したがって、本明細書において企図される後成的修飾は、本明細書において開示されるいかなる方法においても処理されていない対照細胞と比べて、少なくとも5%低い、少なくとも10%低い、少なくとも20%低い、少なくとも30%低い、少なくとも40%低い、少なくとも50%低い、少なくとも60%低い、少なくとも70%低い、少なくとも80%低い、少なくとも90%低い、少なくとも1倍低い、少なくとも2倍低い、少なくとも5倍低い、少なくとも10倍低い、少なくとも100倍低い、少なくとも1000倍低いか、またはそれ以上低い、DNA分解酵素へのアクセスの低減を引き起こす。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、欠失は、表2に記述されているSNPマーカーの1つまたは複数を含む。本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、欠失は、表2に記述されているSNPマーカーの1つまたは複数から本質的になる。本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、欠失は、表2に記述されているSNPマーカーの1つまたは複数からなる。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、後成的修飾は、表2に記述されているSNPマーカーの1つもしくは複数を含むか、またはそれらに影響を与える。本明細書において用いられる場合、「SNPマーカーの1つまたは複数に影響を与える」という語句は、これらのSNPの天然の機能、例えば、転写因子へのアクセスが低減されることを意味する。例えば、これらのSNPのメチル化は、転写因子の結合を低減し、BCL11AのmRNAまたはタンパク質の発現の低減につながるであろう。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、欠失は、表7に記載されている断片の1つまたは複数を含む。本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、欠失は、表7に記載されている断片の1つまたは複数から本質的になる。本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、欠失は、表7に記載されている断片の1つまたは複数からなる。本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、欠失は、60,716,189〜60,728,612、60,716,189〜60,723,870、60,722,992〜60,728,612、60,717,236〜60,719,036、60,722,006〜60,723,058、60,724,917〜60,726,282、60,616,396〜60,618,032、60,623,536〜60,624,989、60,626,565〜60,628,177、60,717,236〜60,719,036、60,721,212〜60,722,958、60,724,780〜60,726,471、60,739,075〜60,740,154、60,748,003〜60,749,009、60,826,438〜60,827,601、または60,831,589〜60,833,556である。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、後成的修飾は、表7に記載されている断片の1つもしくは複数を含むか、またはそれらに影響を与える。本明細書において用いられる場合、「表7に記載されている断片の1つまたは複数に影響を与える」という語句は、これらの断片の天然の機能、例えば、転写因子へのアクセスが低減されることを意味する。例えば、これらの断片のメチル化は、転写因子の結合を低減し、BCL11AのmRNAまたはタンパク質の発現の低減につながるであろう。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、後成的修飾は、60,716,189〜60,728,612、60,716,189〜60,723,870、60,722,992〜60,728,612、60,717,236〜60,719,036、60,722,006〜60,723,058、60,724,917〜60,726,282、60,616,396〜60,618,032、60,623,536〜60,624,989、60,626,565〜60,628,177、60,717,236〜60,719,036、60,721,212〜60,722,958、60,724,780〜60,726,471、60,739,075〜60,740,154、60,748,003〜60,749,009、60,826,438〜60,827,601、または60,831,589〜60,833,556である。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、欠失は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612の間の全領域を除去するか、または該領域の一部分を除去し、1つもしくは複数のDNAse 1高感受性部位(DHS)の破壊を引き起こす。本明細書において用いられる場合、「破壊」という用語は、そのような破壊を有しない細胞と比べて少なくとも10% (例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%またはさらに100% (すなわち、検出可能な赤血球系転写なし))の、1つまたは複数のDNAse 1高感受性部位の破壊を含む細胞におけるBCL11Aの赤血球系転写の減少をいう。1つの態様において、破壊は、改変されたDNAse-1高感受性部位がその天然の転写因子(例えば、GATA1およびTAL1)に結合できないことを含む。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上のエンハンサー領域での後成的シグナチャーの確立および/または維持を妨害する後成的修飾は、それによってBCL11AのmRNAまたはタンパク質の発現の低減をもたらし、哺乳類における胎児型ヘモグロビンの発現を増加させる。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上のエンハンサー領域での後成的シグナチャーの確立および/または維持を妨害する後成的修飾は、DNase I感受性に影響を与える後成的修飾、ヒストン修飾に影響を与える後成的修飾、GATA1/TAL1結合に影響を与える後成的修飾、およびBCL11Aのプロモーターの長距離のプロモーター相互作用に影響を与える後成的修飾を含むが、これらに限定されることはない。 例えば、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上のエンハンサー領域での後成的シグナチャーの確立および/または維持を妨害する後成的修飾は、この領域の全体的な機能が影響を受け、それによってBCL11AのmRNAおよび発現が低減または減少されるような、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612内の少なくとも1つの欠失を含むが、これに限定されることはない。例えば、欠失は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612のDNaseI感受性領域、例えば、+62、+58、および+55である。欠失は、+62もしくは+58もしくは+55の位置またはその組み合わせでありうる。例えば、+62および+58、+58および+55、+62および+55の位置、または全3つの+62、+58、および+55の位置。 別の例として、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上のエンハンサー領域での後成的シグナチャーの確立および/または維持を妨害する後成的修飾は、この領域の全体的な機能が影響を受け、それによってBCL11AのmRNAおよび発現が低減または減少されるような、位置60,716,189〜60,728,612の位置ではない第2染色体上でのヒストン修飾の変化、位置60,716,189〜60,728,612の位置での第2染色体上でのヒストン修飾の変化、または位置60,716,189〜60,728,612の位置ではない第2染色体上および位置60,716,189〜60,728,612の位置での第2染色体上の両方のヒストン修飾の変化を含むが、これらに限定されることはない。 別の態様において、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上のエンハンサー領域での後成的シグナチャーの確立および/または維持を妨害する後成的修飾は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612における非コードエレメントの後成的特徴を変化させ、かくして標的遺伝子発現の抑制を引き起こす少なくとも1つの操作された特異的リプレッサー配列の挿入を含むが、これに限定されることはない。第1は、個々のエンハンサーを後成的に抑制することに特に焦点を当てている。言い換えれば、第2染色体への操作された特異的リプレッサー配列の挿入は、BCL11A赤血球系エンハンサーにおける後成的修飾を予め妨害するものと考えられ、これによって最終的にはBCL11A遺伝子発現の低減に至る。 当技術分野において公知の任意の方法を用いて、企図される後成的修飾をもたらすことができる。例えば、Mendenhall E. M. et al., Nat. Biotechnol. 08 September 2013、およびMaeder ML et al., Nat Biotechnol. 09 October 2013 2013に記述の通り。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、第2染色体の任意の位置上での少なくとも1つの操作された特異的リプレッサー配列の挿入は、限定されるものではないが、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612における低減されたDNaseI感受性領域、例えば、+62、+58、および+55; 第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上での増大されたヒストン修飾; 第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上でのエンハンサー領域のGATA1/TAL1への低減された転写因子の結合; ならびにBCL11Aプロモーターと第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612の間の低減されたまたは弱められた相互作用を引き起こす。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、第2染色体の任意の位置上での少なくとも1つの操作された特異的リプレッサー配列の挿入の全体的効果は、BCL11AのmRNAおよび発現の低減または減少である。 いくつかの態様において、BCL11AのmRNAおよび発現、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612またはBCL11AエンハンサーとBCL11Aプロモーターとの間の相互作用、ならびにエンハンサー領域のGATA1/TAL1への転写因子の結合との関連で用いられる場合、「低減された」または「減少された」という用語は、本明細書において開示される後成的修飾または操作された配列の挿入が存在しない対照の状況と比べて、少なくとも5%低い、少なくとも10%低い、少なくとも20%低い、少なくとも30%低い、少なくとも40%低い、少なくとも50%低い、少なくとも60%低い、少なくとも70%低い、少なくとも80%低い、少なくとも90%低い、少なくとも1倍低い、少なくとも2倍低い、少なくとも5倍低い、少なくとも10倍低い、少なくとも100倍低い、少なくとも1000倍低いか、またはそれ以上低いことをいう。細胞におけるBCL11A mRNAまたはタンパク質の発現の減少とは、タンパク質発現が、本明細書において開示される後成的修飾または操作された配列の挿入を有さない対照細胞と比べて、少なくとも5%低い、少なくとも10%低い、少なくとも20%低い、少なくとも30%低い、少なくとも40%低い、少なくとも50%低い、少なくとも60%低い、少なくとも70%低い、少なくとも80%低い、少なくとも90%低い、少なくとも1倍低い、少なくとも2倍低い、少なくとも5倍低い、少なくとも10倍低い、少なくとも100倍低い、少なくとも1000倍低いか、またはそれ以上低いことを意味する。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、少なくとも1つの操作された特異的リプレッサー配列の挿入は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612のDNaseI感受性領域内、例えば+62、+58、および+55のなかで行われる。挿入は、+62もしくは+58もしくは+55の5'末端の位置または+62もしくは+58もしくは+55の3'末端の位置、または+62〜+58の間、または+58〜+55の間、または+55〜+62の間でありうる。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、少なくとも1つの操作された特異的リプレッサー配列の挿入は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612のDNaseI感受性領域を変化させる。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、後成的修飾は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612のDNaseI感受性領域を変化させる。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、後成的修飾は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上でのヒストン修飾を変化させる。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、少なくとも1つの操作された特異的リプレッサー配列の挿入は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上でのヒストン修飾を変化させる。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、後成的修飾は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上のエンハンサー領域のGATA1/TAL1結合を変化させ、その結果、この領域の全体的な機能が影響を受け、それによってBCL11AのmRNAおよび発現が低減または減少される。例えば、GATA1/TAL1への転写因子の結合。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、少なくとも1つの操作された特異的リプレッサー配列の挿入は、本明細書において記述されるようにGATA1/TAL1のなかで行われる。挿入は、GATA1またはTAL1の5'末端または3'末端の位置でありうる。挿入は、GATA1とTAL1との間でありうる。挿入は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上のエンハンサー領域のGATA1/TAL1結合を変化させ、その結果、この領域の全体的な機能が影響を受け、それによってBCL11AのmRNAおよび発現が低減または減少される。例えば、GATA1/TAL1への転写因子の結合。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、後成的修飾は、BCL11AエンハンサーとBCL11Aプロモーターとの間の相互作用を変化させる。1つの態様において、この領域の全体的な機能が影響を受け、それによってBCL11AのmRNAおよび発現が低減または減少されるように、相互作用が低減されるかまたは弱められる。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、後成的修飾は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612とBCL11Aプロモーターとの間の相互作用を変化させる。1つの態様において、この領域の全体的な機能が影響を受け、それによってBCL11AのmRNAおよび発現が低減または減少されるように、相互作用が低減されるかまたは弱められる。 本明細書で別の局面において同様に提供されるのは、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、細胞を接触させるプロセスによって生成された第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上での少なくとも1つの遺伝的改変を有する単離された遺伝子操作ヒト細胞である。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様においては、第2染色体上の細胞ゲノムDNAにおいて少なくとも1つの後成的修飾を有する単離された遺伝子操作ヒト細胞。本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様においては、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAにおいて少なくとも1つの後成的修飾を有する単離された遺伝子操作ヒト細胞。 少なくとも1つの後成的修飾を有するこれらの単離された遺伝子操作ヒト細胞のいずれかのいくつかの局面において、細胞は、哺乳類において胎児型ヘモグロビンを増加させることに用いるために哺乳類に移植される。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAにおいて少なくとも1つの遺伝的改変を有する単離された遺伝子操作ヒト細胞は、哺乳類において胎児型ヘモグロビンを増加させることに用いるために哺乳類に移植される。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAにおいて少なくとも1つの遺伝的改変を有する単離された遺伝子操作ヒト細胞は、後で用いるために凍結保存によって貯蔵される。 少なくとも1つの後成的修飾を有するそれらの単離された遺伝子操作ヒト細胞のいずれかのいくつかの局面において、細胞は、後で用いるために凍結保存によって貯蔵される。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAにおいて少なくとも1つの遺伝的改変を有する単離された遺伝子操作ヒト細胞は、哺乳類において胎児型ヘモグロビンを増加させることに用いるために凍結保存され、融解され、哺乳類に移植される。 少なくとも1つの後成的修飾を有するそれらの単離された遺伝子操作ヒト細胞のいずれかのいくつかの局面において、哺乳類において胎児型ヘモグロビンを増加させることに用いるために凍結保存され、融解され、哺乳類に移植される。 本明細書において提供される別の局面は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上の細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、細胞を接触させるプロセスによって生成された第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上での少なくとも1つの遺伝的改変を有する単離された遺伝子操作ヒト細胞を含む組成物に関する。 本明細書において提供される別の局面は、第2染色体上での少なくとも1つの後成的修飾を有する単離された遺伝子操作ヒト細胞を含む組成物に関する。1つの態様において、第2染色体上での少なくとも1つの後成的修飾は、位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)の位置である。別の態様において、第2染色体上での少なくとも1つの後成的修飾は、DNAを標的とする酵素またはDNAを標的とする酵素のコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、細胞を接触させるプロセスであって、それによってDNAを標的とする酵素が、位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)に影響を与える第2染色体上の細胞ゲノムDNAにおける少なくとも1つの後成的修飾をもたらし、その中に少なくとも1つの後成的修飾を引き起こすプロセスによって生成される。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、組成物は、接触細胞において胎児型ヘモグロビンmRNAまたはタンパク質の発現の増加を引き起こす。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、記述されるいずれかの組成物の細胞は、移植手順における細胞のレシピエントである哺乳類にとって、自家性であり、すなわち、組成物の細胞は、記述されるいずれかの改変・修飾の前に哺乳類から得られまたは集められる。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、記述されるいずれかの組成物の細胞は、移植手順における細胞のレシピエントである哺乳類にとって、非自家性であり、すなわち、組成物の細胞は、記述されるいずれかの改変・修飾の前に哺乳類から得られることも集められることもない。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、記述されるいずれかの組成物の細胞は、最低でも、移植手順における細胞のレシピエントである哺乳類に適合したHLA型である。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、記述されるいずれかの組成物の細胞は、記述されるいずれかの改変・修飾の前の単離された前駆細胞である。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、記述されるいずれかの組成物の細胞は、記述されるいずれかの改変・修飾の前の単離された造血前駆細胞である。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、記述されるいずれかの組成物の細胞は、記述されるいずれかの改変・修飾の前の単離された人工多能性幹細胞である。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、欠失は、実施例の項のなかで本明細書において記述されるDNAse 1高感受性部位(DHS) +62、+58、および+55の1つまたは複数を含む。本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、欠失は、実施例の項のなかで本明細書において記述されるDNAse 1高感受性部位(DHS) +62、+58、および+55の1つまたは複数から本質的になる。別の態様において、欠失は、実施例の項のなかで本明細書において記述されるDNAse 1高感受性部位(DHS) +62、+58、および+55の1つまたは複数からなる。1つの態様において、本明細書において用いられる場合、ゲノム欠失との関連で「一部分」という用語は、特定領域の少なくとも10%〜約100%である。別の態様において、欠失される一部分は、特定領域の少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%またはさらに100%である。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、欠失は、表2に記述されているSNPマーカーの1つまたは複数を含む。本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、欠失は、表2に記述されているSNPマーカーの1つまたは複数から本質的になる。本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、欠失は、表2に記述されているSNPマーカーの1つまたは複数からなる。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、欠失は、表7に記載されている断片の1つまたは複数を含む。本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、欠失は、表7に記載されている断片の1つまたは複数から本質的になる。本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、欠失は、表7に記載されている断片の1つまたは複数からなる。本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、欠失は、60,716,189〜60,728,612、60,716,189〜60,723,870、60,722,992〜60,728,612、60,717,236〜60,719,036、60,722,006〜60,723,058、60,724,917〜60,726,282、60,616,396〜60,618,032、60,623,536〜60,624,989、60,626,565〜60,628,177、60,717,236〜60,719,036、60,721,212〜60,722,958、60,724,780〜60,726,471、60,739,075〜60,740,154、60,748,003〜60,749,009、60,826,438〜60,827,601、または60,831,589〜60,833,556である。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、欠失は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)間の全領域を除去するか、または該領域の一部分を除去し、1つもしくは複数のDNAse 1高感受性部位(DHS)の破壊を引き起こす。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、本方法は、胎児型ヘモグロビンを増加させることを必要としている哺乳類を選択する段階をさらに含む。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、哺乳類は、異常ヘモグロビン症と診断されている。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、胎児型ヘモグロビンを増加させることを必要としている哺乳類は、異常ヘモグロビン症と診断されている。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、異常ヘモグロビン症はβ異常ヘモグロビン症である。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、異常ヘモグロビン症は鎌状赤血球疾患である。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、異常ヘモグロビン症はβサラセミアである。 本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、接触させた細胞、ヒト細胞、造血前駆細胞またはその後代が哺乳類に投与される。 1つの態様において、本開示は、以下の段階を含む、それを必要とする哺乳類において胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法を提供する:エクスビボで哺乳類から単離された造血前駆細胞または造血幹細胞の集団を提供する段階、および第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、造血前駆細胞または幹細胞の集団を接触させる段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、接触させる前の発現と比べて、該哺乳類において増加される、段階。この方法のさらなる態様において、胎児型ヘモグロビン発現の増加を有する接触させた造血前駆細胞または幹細胞の集団は、凍結保存され、貯蔵されるかまたは哺乳類へ再導入される。別の態様において、胎児型ヘモグロビン発現の増加を有する凍結保存された造血前駆細胞または幹細胞の集団は、融解され、その後に哺乳類へ再導入される。この方法のさらなる態様において、本方法は、哺乳類における内在性の造血前駆細胞または幹細胞を除去または低減するために化学療法および/または放射線療法を含む。記述される方法のいずれかの態様において、造血前駆細胞または幹細胞は、本明細書において記述されるiPSCと置き換えることができる。 1つの態様において、本開示は、以下の段階を含む、それを必要とする哺乳類において胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法を提供する:哺乳類から造血前駆細胞または造血幹細胞の集団を単離する段階、および第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、造血前駆細胞または幹細胞の集団をエクスビボで接触させる段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、接触させる前の発現と比べて、該哺乳類において増加される、段階。この方法のさらなる態様において、胎児型ヘモグロビン発現の増加を有するエクスビボで接触させた造血前駆細胞または幹細胞の集団は、凍結保存され、貯蔵されるかまたは哺乳類へ再導入される。別の態様において、胎児型ヘモグロビン発現の増加を有する凍結保存された造血前駆細胞または幹細胞の集団は、融解され、その後に哺乳類へ再導入される。この方法のさらなる態様において、本方法は、哺乳類における内在性の造血前駆細胞または幹細胞を除去または低減するために化学療法および/または放射線療法を含む。記述される方法のいずれかの態様において、造血前駆細胞または幹細胞は、哺乳類に由来するiPSCと置き換えることができる。この方法のいずれかの態様において、本方法は、胎児型ヘモグロビン発現の増加を必要としている哺乳類を選択する段階をさらに含む。 1つの態様において、本開示は、以下の段階を含む、それを必要とする哺乳類において胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法を提供する:哺乳類から造血前駆細胞または造血幹細胞の集団を提供・単離する段階、および第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAを欠失させ、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、該接触させる前の発現と比べて、該哺乳類において増加される、段階。この方法のさらなる態様において、欠失されたゲノムDNAを有し、かつ胎児型ヘモグロビン発現の増加を有している造血前駆細胞または幹細胞の集団は、凍結保存され、貯蔵されるかまたは哺乳類へ再導入される。別の態様において、欠失されたゲノムDNAを有し、かつ胎児型ヘモグロビン発現の増加を有している造血前駆細胞または幹細胞の集団は、融解され、その後に哺乳類へ再導入される。この方法のさらなる態様において、本方法は、哺乳類における内在性の造血前駆細胞または幹細胞を除去または低減するために化学療法および/または放射線療法を含む。記述される方法のいずれかの態様において、造血前駆細胞または幹細胞は、本明細書において記述されるiPSCと置き換えることができる。記述される方法のいずれかの態様において、造血前駆細胞もしくは幹細胞またはiPSCは、哺乳類にとって類似性であり、これは細胞が同じ哺乳類に由来することを意味する。記述される方法の別の態様において、造血前駆細胞もしくは幹細胞またはiPSCは、哺乳類にとって非類似性であり、これは細胞が同じ哺乳類に由来するのではなく、同じ種の別の哺乳類に由来することを意味する。例えば、哺乳類はヒトである。この方法のいずれかの態様において、本方法は、胎児型ヘモグロビン発現の増加を必要としている哺乳類を選択する段階をさらに含む。 1つの態様において、本開示は、以下の段階を含む、それを必要とする哺乳類において胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法を提供する:哺乳類から造血前駆細胞または造血幹細胞の集団を単離する段階、および第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAをエクスビボで欠失させ、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、該接触させる前の発現と比べて、該哺乳類において増加される、段階。この方法のさらなる態様において、欠失されたゲノムDNAを有し、かつ胎児型ヘモグロビン発現の増加を有している造血前駆細胞または幹細胞の集団は、凍結保存され、貯蔵されるかまたは哺乳類へ再導入される。別の態様において、胎児型ヘモグロビン発現の増加を有している凍結保存された造血前駆細胞または幹細胞の集団は、融解され、その後に哺乳類へ再導入される。この方法のさらなる態様において、本方法は、哺乳類における内在性の造血前駆細胞または幹細胞を除去または低減するために化学療法および/または放射線療法を含む。記述される方法のいずれかの態様において、造血前駆細胞または幹細胞は、哺乳類に由来するiPSCと置き換えることができる。この方法のいずれかの態様において、本方法は、胎児型ヘモグロビン発現の増加を必要としている哺乳類を選択する段階をさらに含む。 記述されるいずれかの方法の1つの態様において、本方法は、胎児型ヘモグロビン発現の増加を必要としている哺乳類を選択する段階をさらに含む。胎児型ヘモグロビン発現の増加を必要としている例示的な哺乳類は、異常ヘモグロビン症と診断されたものである。 1つの態様において、本開示は、(a) 造血前駆細胞もしくは造血幹細胞またはiPSCを提供する段階; (b) 第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、細胞をエクスビボまたはインビトロで接触させる段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、該接触させる前の発現と比べて、該哺乳類において増加される、段階; および(c) 段階(b)の細胞を哺乳類へ投与する段階を含む、哺乳類における異常ヘモグロビン症の処置の方法を提供する。 いずれかの方法の1つの態様において、段階(b)後の細胞は、哺乳類への投与に必要とされるまで凍結保存することができる。この方法のさらなる態様において、本方法は、哺乳類における内在性の造血前駆細胞または幹細胞を除去または低減するために化学療法および/または放射線療法を含む。記述される方法のいずれかの態様において、造血前駆細胞もしくは幹細胞またはiPSCは、哺乳類にとって自家性であり、これは細胞が同じ哺乳類に由来することを意味する。記述される方法の別の態様において、造血前駆細胞もしくは幹細胞またはiPSCは、哺乳類にとって非自家性であり、これは細胞が同じ哺乳類に由来するのではなく、同じ種の別の哺乳類に由来することを意味する。例えば、哺乳類はヒトである。 記述されるいずれかの方法の1つの態様において、本方法は、異常ヘモグロビン症の処置を必要としている哺乳類を選択する段階をさらに含む。 1つの態様において、本開示は、(a) 哺乳類から造血前駆細胞もしくは造血幹細胞を単離する段階; (b) 第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、細胞をエクスビボまたはインビトロで接触させる段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、該接触させる前の発現と比べて、該哺乳類において増加される、段階; および(c) 段階(b)の細胞を哺乳類へ投与する段階を含む、哺乳類における異常ヘモグロビン症の処置の方法を提供する。 1つの態様において、段階(b)後の細胞は、哺乳類への投与に必要とされるまで凍結保存することができる。この方法のいずれかの態様において、本方法は、異常ヘモグロビン症の処置を必要としている哺乳類を選択する段階をさらに含む。 1つの態様において、本開示は、(a) 造血前駆細胞もしくは造血幹細胞またはiPSCを提供する段階; (b) 第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAをエクスビボで欠失させ、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、該接触させる前の発現と比べて、該哺乳類において増加される、段階; および(c) 段階(b)の細胞を哺乳類へ投与する段階を含む、哺乳類における異常ヘモグロビン症の処置の方法を提供する。 1つの態様において、段階(b)後の細胞は、哺乳類への投与に必要とされるまで凍結保存することができる。この方法のさらなる態様において、本方法は、哺乳類における内在性の造血前駆細胞または幹細胞を除去または低減するために化学療法および/または放射線療法を含む。記述される方法のいずれかの態様において、造血前駆細胞もしくは幹細胞またはiPSCは、哺乳類にとって類似性であり、これは細胞が同じ哺乳類に由来することを意味する。記述される方法の別の態様において、造血前駆細胞もしくは幹細胞またはiPSCは、哺乳類にとって非類似性であり、これは細胞が同じ哺乳類に由来するのではなく、同じ種の別の哺乳類に由来することを意味する。例えば、哺乳類はヒトである。この方法のいずれかの態様において、本方法は、異常ヘモグロビン症の処置を必要としている哺乳類を選択する段階をさらに含む。 1つの態様において、本開示は、(a) 哺乳類から造血前駆細胞もしくは造血幹細胞を単離する段階; (b) 第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAをエクスビボで欠失させ、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、該接触させる前の発現と比べて、哺乳類において増加される、段階; および(c) 段階(b)の細胞を哺乳類へ投与する段階を含む、哺乳類における異常ヘモグロビン症の処置の方法を提供する。 1つの態様において、段階(b)後の細胞は、哺乳類への投与に必要とされるまで凍結保存することができる。この方法のさらなる態様において、本方法は、哺乳類における内在性の造血前駆細胞または幹細胞を除去または低減するために化学療法および/または放射線療法を含む。この方法のいずれかの態様において、本方法は、異常ヘモグロビン症の処置を必要としている哺乳類を選択する段階をさらに含む。 1つの態様において、本開示は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上に少なくとも1つの遺伝的改変を有する単離された遺伝子操作細胞を含む本明細書において記述される組成物を導入する段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が哺乳類において増加される、段階を含む、哺乳類(例えばヒト)における異常ヘモグロビン症の処置の方法を提供する。この方法のさらなる態様において、本方法は、哺乳類における内在性の造血前駆細胞または幹細胞を除去または低減するために化学療法および/または放射線療法を含む。この方法のいずれかの態様において、本方法は、異常ヘモグロビン症の処置を必要としている哺乳類を選択する段階をさらに含む。 1つの態様において、本開示は、本明細書において記述される方法により哺乳類における胎児型ヘモグロビンの発現を増加させる段階を含む、哺乳類(例えばヒト)における異常ヘモグロビン症の処置の方法を提供する。 記述されるいずれかの処置方法のいずれかの態様において、異常ヘモグロビン症はβ異常ヘモグロビン症である。 記述されるいずれかの処置方法のいずれかの態様において、異常ヘモグロビン症はβサラセミアである。 記述されるいずれかの処置方法のいずれかの態様において、異常ヘモグロビン症は鎌状赤血球貧血である。 記述されるいずれかの方法の1つの態様において、造血前駆細胞もしくは幹細胞またはiPSCは、哺乳類にとって自家性であり、これは細胞が同じ哺乳類に由来することを意味する。記述されるいずれかの方法の別の態様において、造血前駆細胞もしくは幹細胞またはiPSCは、哺乳類にとって非自家性であり、これは細胞が同じ哺乳類に由来するのではなく、同じ種の別の哺乳類に由来することを意味する。例えば、哺乳類はヒトである。 記述されるいずれかの方法の1つの態様において、本明細書において記述されるいずれかの細胞の接触は、エクスビボまたはインビトロまたはインビボでありうる。 記述されるいずれかの方法の別の態様において、本明細書において記述されるいずれかの細胞の接触は、第2染色体上の細胞ゲノムDNAに結合し、かつ第2染色体上での細胞ゲノムにおける後成的修飾をもたらし、それによってBCL11AのmRNAまたはタンパク質の発現を低減させる薬剤との接触を含む。1つの態様において、後成的修飾は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上である。 記述されるいずれかの方法の別の態様において、本明細書において記述されるいずれかの細胞の接触は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上の細胞ゲノムDNAに結合し、かつ第2染色体上での後成的修飾をもたらし、それによってBCL11AのmRNAまたはタンパク質の発現を低減させる薬剤との接触を含む。 記述されるいずれかの方法の別の態様において、本明細書において記述されるいずれかの細胞の接触は、第2染色体上での後成的修飾をもたらす、DNAを標的とする酵素またはDNAを標的とする酵素のコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量との接触を含み、それによってBCL11AのmRNAまたはタンパク質の発現を低減させる。 記述されるいずれかの方法の別の態様において、本明細書において記述されるいずれかの細胞の接触は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上での後成的修飾をもたらす、DNAを標的とする酵素またはDNAを標的とする酵素のコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量との接触を含み、それによってBCL11AのmRNAまたはタンパク質の発現を低減させる。1つの局面において、胎児型ヘモグロビンの発現は、接触させる前の発現と比べて、哺乳類において増加される。 記述されるいずれかの方法の別の態様において、造血前駆細胞、単離されたヒト細胞、または単離された細胞は、エクスビボまたはインビトロで接触させる。 記述されるいずれかの方法の別の態様において、少なくとも1つの遺伝的改変は欠失である。本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、少なくとも1つの後成的修飾。 1つの態様において、哺乳類において胎児型ヘモグロビンを増加させるための、または哺乳類において異常ヘモグロビン症を処置するための、またはBCL11AのmRNAもしくは発現を低減させるための、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上の細胞ゲノムDNAに結合する薬剤の使用であって、BCL11AのmRNAまたはタンパク質の発現が低減される、使用が本明細書において提供される。 1つの態様において、哺乳類において胎児型ヘモグロビンを増加させるための、または哺乳類において異常ヘモグロビン症を処置するための、またはBCL11AのmRNAもしくは発現を低減させるための、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量の使用であって、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼが第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、使用が本明細書において提供される。 1つの態様において、哺乳類において胎児型ヘモグロビンを増加させるための、または哺乳類において異常ヘモグロビン症を処置するための、またはBCL11AのmRNAもしくは発現を低減させるための、DNAを標的とする酵素またはDNAを標的とする酵素のコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量の使用であって、DNAを標的とする酵素が第2染色体上の細胞ゲノムDNAにおける少なくとも1つの後成的修飾をもたらし、それによってBCL11AのmRNAもしくは発現に影響を与える、使用が本明細書において提供される。1つの態様において、少なくとも1つの後成的修飾は、位置60,716,189〜60,728,612の位置である。別の態様において、1つの後成的修飾の効果は、BCL11AのmRNAもしくはタンパク質の発現を低減させることである。 1つの態様において、哺乳類において胎児型ヘモグロビンを増加させるための、または哺乳類において異常ヘモグロビン症を処置するための、本明細書において記述されるいずれかの単離された細胞の使用が本明細書において提供される。 1つの態様において、哺乳類において胎児型ヘモグロビンを増加させるための、または哺乳類において異常ヘモグロビン症を処置するための、単離された遺伝子操作ヒト細胞を含む組成物の使用であって、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上の細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、細胞を接触させるプロセスによって生成された第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上での少なくとも1つの遺伝的改変を細胞が有する、使用が本明細書において提供される。 1つの態様において、哺乳類において胎児型ヘモグロビンを増加させるための、または哺乳類において異常ヘモグロビン症を処置するための、単離された遺伝子操作ヒト細胞を含む組成物の使用であって、細胞が第2染色体上に少なくとも1つの後成的修飾を有する、使用が本明細書において提供される。1つの態様において、第2染色体上の少なくとも1つの後成的修飾は、位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)の位置である。別の態様において、第2染色体上の少なくとも1つの後成的修飾は、DNAを標的とする酵素またはDNAを標的とする酵素のコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、細胞を接触させるプロセスであって、それによってDNAを標的とする酵素が、位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)に影響を与える第2染色体上での細胞ゲノムDNAにおける少なくとも1つの後成的修飾をもたらし、その中に少なくとも1つの後成的修飾を引き起こすプロセスによって生成される。 1つの態様において、哺乳類において胎児型ヘモグロビンを増加させるための、または哺乳類において異常ヘモグロビン症を処置するための薬物の製造のための、本明細書において記述されるいずれかの単離された細胞または本明細書において記述されるいずれか1つの組成物の使用が本明細書において提供される。 本明細書において記述される組成物の使用の1つの態様において、組成物は、接触細胞における胎児型ヘモグロビンmRNAまたはタンパク質の発現の増加を引き起こす。 本明細書において記述される組成物の使用の1つの態様において、記述されるいずれかの組成物の細胞は、移植手順における細胞のレシピエントである哺乳類にとって、自家性であり、すなわち、組成物の細胞は、記述されるいずれかの改変・修飾の前に哺乳類から得られまたは集められる。 本明細書において記述される組成物の使用の1つの態様において、記述されるいずれかの組成物の細胞は、移植手順における細胞のレシピエントである哺乳類にとって、非自家性であり、すなわち、組成物の細胞は、記述されるいずれかの改変・修飾の前に哺乳類から得られることも集められることもない。 本明細書において記述される組成物の使用の1つの態様において、記述されるいずれかの組成物の細胞は、最低でも、移植手順における細胞のレシピエントである哺乳類に適合したHLA型である。 本明細書において記述される組成物の使用の1つの態様において、記述されるいずれかの組成物の細胞は、記述されるいずれかの改変・修飾の前の単離された前駆細胞である。 本明細書において記述される組成物の使用の1つの態様において、記述されるいずれかの組成物の細胞は、記述されるいずれかの改変・修飾の前の単離された造血前駆細胞である。 本明細書において記述される組成物の使用の1つの態様において、記述されるいずれかの組成物の細胞は、記述されるいずれかの改変・修飾の前の単離された人工多能性幹細胞である。 本明細書において記述される組成物の使用の1つの態様において、記述されるいずれかの組成物の細胞は、使用前に凍結保存される。 BCL11AにはHbFと関連した差異が存在することが知られている。HbFレベル(または高度に相関した形質であるF-細胞数)に関する6つのGWASがヨーロッパ人、アフリカ人およびアジア人の子孫の個体において行われており、それぞれがBCL11A内の、形質に関連した変種を特定している(7〜12)。同じ変種がSCDおよびβサラセミアの臨床的重症度に関連付けられており(9, 10, 50)、これらの障害の主要な修飾因子としてのHbFと矛盾しない。BCL11Aでの変種は、HbFレベルの形質の変動のおよそ15%を説明するものと推定される(7, 12, 43)。異なる4つのSNPが、形質と最も高度に相関していると特定されており(rs1427407 (7)、rs11886868 (8)、rs4671393 (9)およびrs766432 (10〜12)); これらのセンチネルSNPはBCL11Aイントロン2中で互いに3 kb内に集まっている(図2Aおよび11B)。センチネルSNPを含むハプロタイプは、いずれかの個々のSNPよりもHbF関連性をうまく説明するように思われる(12, 43)。BCL11A遺伝子座の50種のSNPおよびイントロン2内の27種のSNPは、ゲノム規模の有意性でHbFレベルと関連付けられている(P < 5×10-8)。大規模な再配列決定の取り組みにもかかわらず、BCL11Aのコード変種は記述されていない(43)。 以前に、本発明者らはCSSCDを用いて、BCL11A遺伝子座のHbFとの関連シグナルを精細マッピングし、rs4671393との強い関連性を報告した(43)。その研究においては、rs1427407がインピュテーションされた。2つのさらなるSNP、rs766432およびrs11886868も、以前の研究において最も高度に形質に関連したセンチネルSNPと特定されている(8, 10, 11, 51)。全4つのセンチネルSNPの位置の遺伝子型が利用可能であった個体のサブセット(n = 728)において、関連性の結果はrs1427407の位置での遺伝子型に基づく条件付けの後にrs4671393、rs766432またはrs11886868の位置では有意ではなかった; 逆に、関連性は、rs4671393、rs766432またはrs11886868に基づく条件付けによりrs1427407に対して高度に有意なままであった(表4)。それゆえ、rs1427407は、赤血球系DHS内の、HbFレベルと最も強く関連したSNPであり、既述された他のセンチネルSNPよりも形質関連性をよりよく説明する。 条件付け解析から、rs1427407に基づく条件付けの後に依然として有意なままであった関連性が実証された。残った最も有意な関連性は、DHS +55でのrs7606173に対してであった(P = 9.66×10-11); 本発明者らが以前に報告したDHS +62でのrs7599488 (43)は、ほんのわずかに低く有意であった(P = 2.43×10-10) (表1)。3つのDHS内でのまれなDNA配列変種の解析から、独立したさらなるHbF関連のシグナルは得られなかった(表5)。 本発明者らは、対立遺伝子特異的な転写因子(TF)の結合がBCL11Aの発現に関わっていることを見出した。ペアgDNAにおける対立遺伝子の等しい提示によって実証される、両対立遺伝子の等しい存在量を確実とするためにおよびサンプル間のトランス作用性の差異を制御するために、情報価値のあるヘテロ接合体を用いて、対立遺伝子特異的な生化学的研究を行った(図2Bおよび2C)。rs1427407はDHS +62の位置でGATA1およびTAL1結合のピークの中心に直接見出される(図2B)。行われたChIPアッセイ法において、クロマチンはおよそ500 bpの断片に超音波処理された。ChIP-qPCRに用いられたrs1427407についてヘテロ接合性の5つの初代ヒト赤血球系前駆細胞サンプルの赤血球系DHSの位置でのサンガー配列決定を行った。これらのサンプルのいずれかにおけるrs1427407の500 bp内の唯一他のヘテロ接合性SNPは、rs7599488 (rs1427407の304 bp 3'側)であったが、これは5つのサンプルのうち2つだけでヘテロ接合性であった。このSNPはGATA1またはTAL1結合モチーフの範囲内にない。それゆえ、DHS +62内の別のSNPが、観察された対立遺伝子特異的なTF結合の主因となりうる可能性は低いように思われる。 さらに、本発明者らは、BCL11A発現とHbFレベルとの間には関連性が存在することを見出した。本発明者らの研究は、臨床的に意義のあるHbFレベルの増加をもたらしうるBCL11A発現の変化の推定を提供する。ヒトリンパ芽球様細胞株の限定されたセットのなかでは、高いHbFに関連したrs4671393のA対立遺伝子とBCL11A発現の低減との相関関係が過去に報告されていた(13)。これらの実験を、ジェノタイピングが行われた株のもっと大きな集まりに広げることでは、この所見を確認することができなかった。ゆえに、本発明者らは、HbFに関連したrs1427407-rs7606173ハプロタイプが赤血球系特異的な状況においてBCL11A発現に影響を与えること、つまりDNase I感受性の知見と一致している可能性を見出した。初代赤血球系前駆細胞におけるBCL11A mRNA発現は、高HbF rs1427407-rs7606173 T-Gと低HbF G-Cハプロタイプとの間で1.7倍だけ違っていた(図3B); それに応じて、中央値HbFレベルはT-GおよびG-Cヘテロ接合体において、それぞれ10.6%および3.1%であった(図3C)。注目すべきことに、初代ヒト赤血球系細胞における対立遺伝子特異的なBCL11A発現を実証する結果が、rs1427407-rs7606173ハプロタイプについてヘテロ接合性の細胞において認められ、かくして、BCL11A発現に対する適度な効果は、ハプロタイプ内の全ての機能的SNPの複合効果を反映している。保護性のBCL11Aハプロタイプの遺伝は人口当たりで臨床的に有益であるが(9, 10, 50)、T-Gホモ接合体におけるHbFの平均レベルは、SCDによる発病を防ぐのに必要とされたものを依然として下回る。しかしながら、BCL11A発現に対するHbFレベルの感受性から、疾患重症度の緩和にはBCL11A発現のさらにわずかの低減しか必要とされえないものと予測される。 本発明者らは、グロビン遺伝子およびBCL11Aの発生的調節についてさらに調べた。ヒト発生中に、卵黄嚢由来ε-グロビンが胎児肝臓由来γ-グロビンによって妊娠初期のうちに取って代わられる。出生後、赤血球生成は肝臓から骨髄に移行するので、γ-グロビンは徐々に沈黙化され、β-グロビンが優位を占める。マウス個体発生においてはグロビン遺伝子発現の1回のスイッチしか起こらない。妊娠中期に起こるこの移行中に、循環血中の卵黄嚢由来の原始赤血球は、胎芽期グロビンεyおよびβH1を発現するが、胎児肝臓の成体型赤芽球は成体期グロビンβ1およびβ2を発現する。この発生スイッチと調和して、BCL11Aは原始期ではなく成体期の赤血球系列において発現され、グロビン遺伝子発現の変化に必要とされる(16, 52)。 10.5 dpcの安定なトランスジェニックBCL11A +52.0-64.4レポーター株では、lacZ発現が胎児肝臓原基においてのみ認められ、胚、胎盤または卵黄嚢内の循環血中においては認められなかった(図6A)。これらの結果は、卵黄嚢由来の原始循環赤血球ではなく成体型胎児肝臓赤芽球12.5 dpcにおけるlacZ発現の知見と相まって(図4B)、BCL11A複合エンハンサー配列が内在性グロビン遺伝子のスイッチングと調和して発生上特異的なパターンで発現を推進することを実証する。 赤血球系エンハンサー活性に必要とされる最小エレメントを精緻化するために、一連の欠失変異体を作製した。中央の+58 DHSを含んだ配列は、赤血球系エンハンサー活性には十分であった。隣接する+62または+55エレメントだけを含んだそれらの配列は、赤血球系遺伝子の発現を指令することができなかった(図6B)。初代ヒト赤血球系前駆細胞における遺伝子発現を増強するDHSの能力を試験するため、本発明者らは、既述のようにGFPレポーターシステムのレンチウイルス送達を用いた(39)。同様に、+58 DHSはこのレポーターアッセイにおいて遺伝子発現を増強した(図7)。 本発明者らは、Bcl11aエンハンサーの欠失を有する細胞株を作製して、BCL11A発現のためのエンハンサーの要件について調べることにした。エンハンサーの破壊を有する安定な赤血球系細胞を作製した。適当な成体期ヒト赤血球系細胞株は存在しないので、原理の証明として、本発明者らはマウス系を調べた。マウス赤白血病(MEL)細胞は、グロビン遺伝子発現の成体期パターンのためにはBCL11Aに依る(14)。本発明者らは、マウスBcl11aイントロン2の位置にオルソロガスな赤血球系複合エンハンサーを特定した。ヒトGWASで特徴付けられたイントロン2 BCL11Aエンハンサーのように、これらの配列は一連の赤血球系特異的DHSを保有していた。さらに、これらの配列は、H3K4me1およびH3K27acにより装飾され、H3K4me3およびH3K27me3を欠き、マウス赤血球系クロマチンにおいてGATA1およびTAL1の両方により占められていた(図8)。一連の隣接DHSを含む複合調節エレメントは、とりわけβ-グロビン遺伝子座制御領域、α-グロビン多種保存配列、およびIgH調節領域を含む、多数の遺伝子座での遺伝子発現に不可欠であることが示された(53〜55)。本発明者らは、複合エンハンサーの種特異的な独自の特徴を認めた。例えば、本発明者らは、3つのヒトDHS +62、+58および+55の各々に対して保存されたマウス配列を特定し、+62および+55保存配列の位置で赤血球系DNase I高感受性を見出したが、しかし+58保存配列はDNase I高感受性を欠いていた。 PCRおよびサザンブロッティングにより、3つの独自のMELクローンおよび2つの独自のプレBリンパ球クローンにおいてBcl11aの+50.4〜60.4 kbのイントロンセグメントの切り出しが立証された(図9)。サンガー配列決定を行った切断点は、後続のNHEJ修復を伴うTALEN媒介性の切断に特有であった(図10)。イントロンセグメントの欠失により、本発明者らは、欠失の上流の、欠失にまたがるまたは欠失の下流のエクソン接合部を検出するプライマーペアを用い、RT-qPCRによってMEL細胞クローンにおけるBCL11A転写産物の劇的な低減を認めた(図5A)。定義 便宜上、本出願全体(明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲を含む)で利用される特定の用語を、ここにまとめる。特に記載がなければ、本明細書において用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。 本明細書において用いられる場合、「第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAに結合する薬剤」という語句は、ゲノムDNA内の位置(例えば、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612)に結合でき、かつそのような薬剤で処理されていない細胞におけるBCL11AのmRNAまたはタンパク質レベルと比べて少なくとも20%だけ細胞におけるBCL11AのmRNAまたはタンパク質の発現を抑止する小分子、核酸、タンパク質、ペプチドまたはオリゴヌクレオチドをいう。1つの態様において、薬剤は、その語句が本明細書において用いられる場合「BCL11A結合パートナーとのBCL11Aの相互作用を妨げる」。 本明細書において用いられる場合、「小分子」という用語は、ペプチド、ペプチド模倣体、アミノ酸、アミノ酸類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドアナログ、アプタマー、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、約10,000グラム/モル未満の分子量を有する有機または無機化合物(すなわち、ヘテロ有機化合物および有機金属化合物を含む)、約5,000グラム/モル未満の分子量を有する有機または無機化合物、約1,000グラム/モル未満の分子量を有する有機または無機化合物、約500グラム/モル未満の分子量を有する有機または無機化合物、ならびにそのような化合物の塩、エステルおよびその他の薬学的に許容される形態を含むがこれらに限定されない、化学物質をいう。 本明細書において用いられる「核酸」は、RNAまたはDNAであってよく、一本鎖または二本鎖であってよく、例えば、関心対象のタンパク質をコードする核酸、オリゴヌクレオチド、核酸類似体、例えばペプチド核酸(PNA)、偽相補性PNA (pc-PNA)、ロックド核酸(LNA)などを含む群から選択することができる。そのような核酸配列には、例えば、以下に限定されるものではないが、例えば転写リプレッサーとして作用するタンパク質をコードする核酸配列、アンチセンス分子、リボザイム、低分子阻害性核酸配列、例えば以下に限定されるものではないがRNAi、shRNAi、siRNA、マイクロRNAi (mRNAi)、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどが含まれる。 「BCL11A結合パートナーとのBCL11Aの相互作用を妨げる」とは、BCL11A結合パートナーとのBCL11Aの相互作用の量が、BCL11A阻害剤が存在しない比較可能な対照集団よりも、BCL11A阻害剤で処理された集団では少なくとも5%低いことを意味する。BCL11A阻害剤で処理された集団におけるBCL11A結合パートナーとのBCL11Aの相互作用の量は、BCL11A阻害剤が加えられていない比較可能な対照処理集団よりも少なくとも10%低い、少なくとも20%低い、少なくとも30%低い、少なくとも40%低い、少なくとも50%低い、少なくとも60%低い、少なくとも70%低い、少なくとも80%低い、少なくとも90%低い、少なくとも1倍低い、少なくとも2倍低い、少なくとも5倍低い、少なくとも10倍低い、少なくとも100倍低い、少なくとも1000倍低いか、またはそれ以上低いことが好ましい。最低でも、BCL11A相互作用は、質量分析、免疫沈降、またはゲルろ過アッセイ法を含むが、これらに限定されない、当技術分野において標準的な技法を用いてBCL11A結合パートナーへのBCL11Aの結合の量を判定することによりアッセイすることができる。あるいは、またはさらに、BCL11A活性は、候補BCL11A阻害剤による処理後にmRNAまたはタンパク質のレベルで胎児型ヘモグロビン発現を測定することによりアッセイすることができる。 1つの態様において、BCL11A活性はBCL11Aとその結合パートナー: GATA-1、FOG-1、NuRD複合体の構成要素、マトリン-3、MTA2およびRBBP7との相互作用である。したがって、この相互作用を遮断しうる任意の抗体もしくはその断片、小分子、化学物質または化合物は、BCL11A活性の阻害剤と考えられる。 本明細書において用いられる「遺伝子操作細胞」という用語は、その用語が本明細書において用いられる場合、少なくとも1つの遺伝的改変を含む細胞をいう。 本明細書において用いられる場合、「遺伝的改変」という用語は、細胞におけるBCL11Aの発現または活性の減少を引き起こすゲノムレベルでの破壊をいう。例示的な遺伝的改変としては、欠失、フレームシフト変異、点突然変異、エクソン除去、1つもしくは複数のDNAse 1高感受性部位(DHS) (例えば、2つ、3つ、4つもしくはそれ以上のDHS領域)の除去などを挙げることができる。 「BCL11A発現を阻害する」とは、BCL11Aの発現の量が、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼが存在しない比較可能な対照の細胞または細胞集団よりも、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼで処理された細胞または細胞集団では少なくとも5%低いことを意味する。処理された集団におけるBCL11A発現の割合は、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼが加えられていない比較可能な対照処理集団よりも少なくとも10%低い、少なくとも20%低い、少なくとも30%低い、少なくとも40%低い、少なくとも50%低い、少なくとも60%低い、少なくとも70%低い、少なくとも80%低い、少なくとも90%低い、少なくとも1倍低い、少なくとも2倍低い、少なくとも5倍低い、少なくとも10倍低い、少なくとも100倍低い、少なくとも1000倍低いか、またはそれ以上低いことが好ましい。 「BCL11A活性を阻害する」とは、BCL11Aの機能的活性の量が、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼが存在しない比較可能な対照の細胞または集団よりも、本明細書において記述される方法で処理された細胞または細胞集団では少なくとも5%低いことを意味する。BCL11A阻害剤で処理された集団におけるBCL11A活性の割合は、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼが加えられていない比較可能な対照処理集団よりも少なくとも10%低い、少なくとも20%低い、少なくとも30%低い、少なくとも40%低い、少なくとも50%低い、少なくとも60%低い、少なくとも70%低い、少なくとも80%低い、少なくとも90%低い、少なくとも1倍低い、少なくとも2倍低い、少なくとも5倍低い、少なくとも10倍低い、少なくとも100倍低い、少なくとも1000倍低いか、またはそれ以上低いことが好ましい。最低でも、BCL11A活性は、当技術分野において標準的な技法を用いて、タンパク質またはmRNAレベルでBCL11A発現の量を判定することによりアッセイすることができる。あるいは、またはさらに、BCL11A活性は、BCL11A活性に感受性であるレポーター構築物を用いて判定することができる。γ-グロビン遺伝子座の配列は、BCL11A構築物の核酸結合モチーフによって認識可能である。 1つの態様において、本明細書において用いられる場合、「DNAを標的とするエンドヌクレアーゼ」という用語は、望ましくない非特異的な二本鎖切断を生ずることなくゲノム中の所望の位置(例えば、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612)で二本鎖切断を生じるエンドヌクレアーゼをいう。DNAを標的とするエンドヌクレアーゼは、天然に存在するエンドヌクレアーゼ(例えば、細菌メガヌクレアーゼ)であってよく、または人工的に作製されてもよい(例えば、とりわけ、遺伝子操作されたメガヌクレアーゼ、TALEN、またはZFN)。 別の態様において、本明細書において用いられる場合、「DNAを標的とするエンドヌクレアーゼ」という用語は、望ましくない非特異的なDNA鎖切断を生ずることなくゲノム中の所望の位置(例えば、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612)で一本鎖切断またはDNAリン酸糖骨格の一本の鎖上に「ニック」もしくは切断を生じるエンドヌクレアーゼをいう。 本明細書において用いられる場合、「ベクター」という用語は、これに連結された別の核酸を輸送できる核酸分子をいう。1つのタイプのベクターは「プラスミド」であり、これは、その中にさらなる核酸セグメントがライゲーションされうる環状二本鎖DNAループをいう。別のタイプのベクターは、さらなる核酸セグメントをウイルスゲノムの中にライゲーションできるウイルスベクターである。ある種のベクターは、それらが導入された宿主細胞において自律的に複製することができる(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞に導入されると宿主細胞のゲノムに組み入れられ、それによって宿主ゲノムとともに複製される。さらに、ある種のベクターは、それらと機能的に連結される遺伝子の発現を指令することができる。そのようなベクターは、本明細書において「組み換え発現ベクター」、またはより簡単に「発現ベクター」といわれる。一般に、組み換えDNA技法において有益な発現ベクターは、プラスミドの形態であることが多い。プラスミドは最もよく用いられる形態のベクターであるため、本明細書において、「プラスミド」および「ベクター」は互換的に用いることができる。しかしながら、本明細書において記述される方法および組成物は、同等の機能を果たすウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)のような、発現ベクターのそのような他の形態を含むことができる。 発現ベクターの範囲内で、「機能的に連結された」とは、関心対象のヌクレオチド配列が、(例えば、インビトロ転写/翻訳系において、またはベクターが標的細胞へ導入される場合には標的細胞において)ヌクレオチド配列の発現を可能にする形で調節配列に連結されていることを意味するよう意図される。「調節配列」という用語は、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むよう意図される。そのような調節配列は、例えば、Goeddel; Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990)に記述されている。調節配列には、多くのタイプの宿主細胞においてヌクレオチド配列の構成的発現を指令するもの、およびある種の宿主細胞においてのみヌクレオチド配列の発現を指令するもの(例えば、組織特異的な調節配列)が含まれる。さらに、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼは、特定の間隔で、または特定の期間にわたってDNAを標的とするエンドヌクレアーゼの合成を指令する調節配列を含むベクターによって送達することができる。発現ベクターのデザインは、標的細胞の選択、所望とされる発現のレベルなどのような要因に依存しうることが当業者には理解されるであろう。 本明細書において用いられる場合、「切断する」という用語は一般に、所望の位置でのDNAゲノムにおける二本鎖切断の生成をいう。 本明細書において用いられる場合、「DNAを標的とするエンドヌクレアーゼを少なくとも含む組成物の有効量」という用語は、ゲノムの所望の位置において二本鎖切断を生成するのに十分なエンドヌクレアーゼ活性をもたらす、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼの量をいう。1つの態様において、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼの有効量は、組成物と接触させた集団中の細胞の少なくとも20%において所望の遺伝子座で二本鎖切断を生ずる(例えば、集団中の細胞の少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、またはさらに100%が、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼ組成物によってもたらされた遺伝的改変を含む)。 本明細書において用いられる場合、細胞における「胎児型ヘモグロビンレベルを増加させる」という用語は、胎児型ヘモグロビンが、薬剤が存在しない比較可能な対照の集団よりも、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612においてゲノムDNAに結合することによりBCL11AのmRNAまたはタンパク質の発現を破壊する薬剤(例えば、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼ)で処理された集団では少なくとも5%高いことを示す。第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612においてゲノムDNAに結合するそのような薬剤で処理された集団における胎児型ヘモグロビン発現の割合は、比較可能なサイズおよび培養条件の対照処理集団よりも少なくとも10%高い、少なくとも20%高い、少なくとも30%高い、少なくとも40%高い、少なくとも50%高い、少なくとも60%高い、少なくとも70%高い、少なくとも80%高い、少なくとも90%高い、少なくとも1倍高い、少なくとも2倍高い、少なくとも5倍高い、少なくとも10倍高い、少なくとも100倍高い、少なくとも1000倍高いか、またはそれ以上高いことが好ましい。「対照処理集団」という用語は、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612においてゲノムDNAに結合する薬剤の添加を除いて、同一の培地、ウイルス誘導、核酸配列、温度、集密度、フラスコサイズ、pHなどで処理された細胞の集団を記述するために本明細書において用いられる。1つの態様において、当技術分野において公知の任意の方法、例えば胎児型γ-グロビンタンパク質のウエスタンブロット分析および胎児型γ-グロビンのmRNAの定量化を用いて、胎児型ヘモグロビン発現の増加を測定することができる。 本明細書において用いられる「単離された細胞」という用語は、それが本来見出される生物から取り出された細胞またはそのような細胞の子孫をいう。任意で、細胞は、インビトロで、例えば他の細胞の存在下で培養されたものである。任意で、細胞は、後に、第2の生物へ導入されるまたは該細胞(もしくはその子孫である細胞)を単離した生物へ再導入される。 本明細書において用いられる単離された細胞集団に関する「単離された集団」という用語は、細胞の混在集団または不均質集団から取り出され分離された細胞の集団をいう。いくつかの態様において、単離された集団は、細胞を単離または濃縮する元となった不均質集団と比べて実質的に純粋な細胞集団である。いくつかの態様において、単離された集団は、単離されたヒト造血前駆細胞集団、例えば、ヒト造血前駆細胞およびヒト造血前駆細胞を得る元となった細胞を含む細胞の不均質集団と比べて実質的に純粋なヒト造血前駆細胞集団である。 特定の細胞集団に関する「実質的に純粋」という用語は、細胞集団全体を構成する細胞に対して少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%純粋である細胞の集団をいう。換言すると、造血前駆細胞の集団に関する「実質的に純粋」または「本質的に精製された」という用語は、本明細書においてこの用語により定義される造血前駆細胞でない細胞を約20%未満、より好ましくは約15%、10%、8%、7%未満、最も好ましくは約5%、4%、3%、2%、1%未満または1%未満含む細胞の集団をいう。 本明細書において用いられる場合、「処置する」という用語は、状態、疾患または障害の少なくとも1つの有害作用または症状を低減することまたは軽減することを含む。例えば、「処置する」および「処置」という用語は、対象が疾患の少なくとも1つの症状の低減または疾患の改善、例えば、有益なまたは所望の臨床結果を有するように、対象に組成物の有効量、例えば、造血前駆細胞の集団を含む組成物の有効量を投与することをいう。本開示の目的上、有益なまたは所望の臨床結果は、検出可能か検出不能かを問わず、1つまたは複数の症状の軽減、疾患の程度の減退、疾患の安定化(例えば、悪化していない)、疾患の進行の遅延または緩徐化、疾患状態の改善または緩和、および寛解(部分的か全体的かを問わず)を含むが、これらに限定されることはない。いくつかの態様において、処置することは、処置を受けない場合に予想される生存と比べて生存を引き延ばすことをいうことができる。したがって、当業者は、処置が疾患状態を改善しうるが、しかし疾患の完全な治癒ではないかもしれないことを理解している。いくつかの態様において、処置は予防を含むことができる。しかしながら、代替的な態様において、処置は予防を含まない。 「薬学的に許容される」という語句は、妥当な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応または他の問題もしくは合併症を伴わずに、合理的な利益/危険比が保たれる、ヒトおよび動物の組織と接触させて用いるのに適した、化合物、材料、組成物および/または剤形をいうように本明細書において利用される。 組成物、担体、希釈剤および試薬をいう場合の、本明細書において用いられる「薬学的に許容される」、「生理学的に認容される」という用語、およびその文法上の変化形は、互換的に用いられ、その材料が、悪心、めまい感、胃のむかつきなどのような望ましくない生理学的作用を生じることなく、哺乳類にまたは哺乳類に対して投与できることを表す。薬学的に許容される担体は、免疫原性であることが望ましい場合を除き、混合される物質に対して免疫応答の発生を促進しないと考えられる。その中に溶解または分散される活性成分を含有する薬理学的組成物の調製は、当技術分野において十分に理解されており、剤形に基づいて限定される必要はない。典型的に、そのような組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとしての注射剤として調製されるが、使用直前に液体中で、溶液または懸濁液とするのに適した固体形態も同様に調製することができる。調製物はまた、乳化することができ、またはリポソーム組成物として提示することができる。活性成分を、薬学的に許容され、活性成分と適合性である賦形剤と、本明細書において記述される治療法で用いるのに適した量で混合することができる。適当な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびそれらの組み合わせである。さらに、望ましいなら、組成物は、活性成分の有効性を増強する湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤などのような補助物質を微量含有することができる。本発明の治療用組成物は、その中に成分の薬学的に許容される塩を含むことができる。薬学的に許容される塩には、例えば、塩酸もしくはリン酸のような無機酸、または酢酸、酒石酸、マンデル酸などのような有機酸によって形成される酸付加塩(ポリペプチドの遊離アミノ基によって形成される)が含まれる。遊離カルボキシル基によって形成される塩も同様に、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは水酸化第二鉄のような無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどのような有機塩基に由来することができる。生理的に認容される担体は、当技術分野において周知である。例示的な液体担体は、活性成分および水の他に材料を含有しない、または生理的pH値のリン酸ナトリウムのような緩衝液、生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水のような、その両方を含有する滅菌水溶液である。なおさらに、水溶性担体は、2つ以上の緩衝塩も、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムのような塩、デキストロース、ポリエチレングリコール、ならびに他の溶質も含有することができる。液体組成物はまた、水に加えておよび水を除く液相を含有することができる。そのようなさらなる液相の例は、グリセリン、綿実油のような植物油、および水-油乳剤である。特定の障害または状態の処置において有効である本発明において記述される方法で用いられる活性薬剤の量は、障害または状態の性質に依るものと考えられ、標準的な臨床技法によって判定することができる。 本明細書において用いられる、疾患、障害、またはその症状に関連して用いる場合の「予防」または「予防する」とは、個体が疾患または障害、例えば、異常ヘモグロビン症を発症する可能性の低減をいう。疾患または障害を発症する可能性は、例えば、疾患または障害に関する1つまたは複数の危険因子を有する個体が、同じ危険因子を有するが、本明細書において記述される処置を受けていない集団と比べて、統計学的に言って、障害を発症しない、またはそのような疾患もしくは障害を後になってもしくはより低い重症度で発症する場合に、低減される。疾患の症状を発症しない、または症状の発症が減少(例えば、その疾患または障害に関する臨床的に許容される尺度で少なくとも10%)もしくは遅延(例えば、数日、数週間、数ヶ月または数年)することは、有効な予防と見なされる。 BCL11A発現を減少させるためにDNAを標的とするエンドヌクレアーゼと細胞を接触させることに関連して、「細胞における胎児型ヘモグロビンレベルを増加させる」という語句は、細胞または細胞の集団中の胎児型ヘモグロビンが、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼが存在しない比較可能な対照集団よりも、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼで処理された細胞または細胞の集団では少なくとも5%高いことを示す。DNAを標的とするエンドヌクレアーゼで処理された細胞における胎児型ヘモグロビン発現が、比較可能な対照処理集団よりも少なくとも10%高い、少なくとも20%高い、少なくとも30%高い、少なくとも40%高い、少なくとも50%高い、少なくとも60%高い、少なくとも70%高い、少なくとも80%高い、少なくとも90%高い、少なくとも1倍高い、少なくとも2倍高い、少なくとも5倍高い、少なくとも10倍高い、少なくとも100倍高い、少なくとも1000倍高いか、またはそれ以上高いことが好ましい。「対照処理集団」という用語は、BCL11A阻害剤の添加を除いて、同一の培地、ウイルス誘導、核酸配列、温度、集密度、フラスコサイズ、pHなどで処理された細胞の集団を記述するために本明細書において用いられる。 「哺乳類」という用語は、単数の「哺乳類」および複数の「哺乳類」を包含するように意図され、ヒト; 霊長類、例えば類人猿、サル、オランウータンおよびチンパンジー; イヌ科、例えばイヌおよびオオカミ; ネコ科、例えばネコ、ライオンおよびトラ; ウマ科、例えばウマ、ロバおよびシマウマ; 食用動物、例えばウシ、ブタおよびヒツジ; 有蹄動物、例えばシカおよびキリン; げっ歯類、例えばマウス、ラット、ハムスターおよびモルモット; ならびにクマを含むが、これらに限定されることはない。いくつかの好ましい態様において、哺乳類はヒトである。 したがって、1つの態様において、哺乳類は、異常ヘモグロビン症と診断されている。さらなる態様において、異常ヘモグロビン症はβ異常ヘモグロビン症である。1つの好ましい態様において、異常ヘモグロビン症は鎌状赤血球疾患である。本明細書において用いられる場合、「鎌状赤血球疾患」は、鎌状赤血球貧血、鎌状ヘモグロビンC症(HbSC)、鎌状β-プラス-サラセミア(HbS/β+)、または鎌状β-ゼロ-サラセミア(HbS/β0)でありうる。別の好ましい態様において、異常ヘモグロビン症はβサラセミアである。 本明細書において用いられる場合、「異常ヘモグロビン症」という用語は、個体の任意のヘモグロビンの構造または機能の任意の欠陥を意味し、β-グロビン遺伝子のコード領域の欠失変異もしくは置換変異、または正常もしくは標準的な状態と比べて、産生されるヘモグロビンの量の低減を引き起こすそのような遺伝子のプロモーターもしくはエンハンサーの変異もしくは欠失のような、任意の変異によって引き起こされるヘモグロビンの一次、二次、三次または四次構造の欠陥を含む。この用語は、疾患、化学療法、毒素、毒などのような外部要因によって引き起こされる、正常か異常かを問わない、ヘモグロビンの量または有効性の任意の減少をさらに含む。 1つの態様において、本明細書において用いられる「有効量」という用語は、異常ヘモグロビン症の発症を処置するのに、異常ヘモグロビン症の発症の可能性を低下させるのに、または異常ヘモグロビン症の発症を遅延させるのに安全かつ十分な細胞組成物の量をいう。その量はかくして、異常ヘモグロビン症の症状を治癒し、もしくは異常ヘモグロビン症の症状の改善をもたらし、異常ヘモグロビン症の疾患進行の経過を緩徐化し、異常ヘモグロビン症の症状を緩徐化もしくは抑止し、異常ヘモグロビン症の二次的症状の確立を緩徐化もしくは抑止し、または異常ヘモグロビン症の二次的症状の発症を抑止しうる。異常ヘモグロビン症の処置のための有効量は、処置される異常ヘモグロビン症のタイプ、症状の重症度、処置されている対象、対象の年齢および全身状態、投与の方法などに依る。したがって、正確な「有効量」を特定することは可能ではない、または賢明ではない。しかしながら、所与のどの場合にも、当業者は日常的な実験だけを用いて適切な「有効量」を判定することができる。 本明細書において用いられる「含む(comprising)」または「含む(comprises)」という用語は、必須であるか否かによらず、明記されていない要素を含むことを受け入れる、本発明にとって必須である組成物、方法、およびその各成分に関連して用いられる。 本明細書において用いられる「から本質的になる」という用語は、所与の態様にとって必要な要素をいう。この用語は、本発明のその態様の基本的および新規または機能的特徴に実質的に影響を及ぼさない追加の要素の存在を許容する。 「からなる」という用語は、態様のその記述において引用されていないいかなる要素も排除する、本明細書において記述される組成物、方法、およびその各成分をいう。 本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、本文がそれ以外であることを明らかに示している場合を除き、複数の参照を含む。したがって例えば、「方法(the method)」という言及は、本開示を読むことによって当業者に明らかとなるであろう、1つもしくは複数の方法、および/または本明細書において記述されるタイプの段階などを含む。前述の詳細な説明および以下の実施例は、単なる例示であって、本発明の範囲に対する限定と解釈されるべきではないことを理解されたい。当業者には明らかであると考えられる、開示されている態様に対するさまざまな変更および修正は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなくなされうる。さらに、特定される全ての特許、特許出願、および刊行物は、例えば、本発明に関連して用いられうるこのような刊行物において記述されている方法を説明かつ開示することを目的として明確に参照により本明細書に組み入れられる。これらの刊行物は、単にこれらの開示が本出願の出願日以前であるために提供されるものである。これに関していかなる内容も、先行発明であるとの理由でまたは何らかの他の理由で本発明者らがそのような開示に先行する権利を有しないことの承認と解釈されるべきではない。これらの文献の内容に関する日付または表現についての全ての言明は、本出願人らに入手可能な情報に基づいており、これらの文献の日付または内容の正確さに関する承認をなすものではない。異常ヘモグロビン症 胎児型ヘモグロビン(HbF)は、2本の成人型α-グロビンポリペプチドおよび2本の胎児型β-様γ-グロビンポリペプチドの四量体である。妊娠中、複製されたγ-グロビン遺伝子は、β-グロビン遺伝子座から転写される主要な遺伝子を構成する。出生後、γ-グロビンは成人型β-グロビンに次第に取って代わられるようになる。「胎児スイッチ」といわれるプロセスである(3)。このスイッチの根底にある分子機構は、主として不明確なままであり、集中的な研究の主題であった。主に胎児型ヘモグロビンすなわちHbF(α2γ2)の産生から成人型ヘモグロビンすなわちHbA(α2β2)の産生への発達期の切り替わりは、妊娠28から34週目頃に始まり、生後間もない時期まで続き、この時HbAが優勢となる。この切り替わりは、主に、γグロビン遺伝子の転写が低下し、βグロビン遺伝子の転写が活性化することによる。正常な成人の血液は、平均で約2%のHbFしか含まないが、健康な成人に残存するHbFレベルには、20倍を超える変動幅が認められている(Atweh, Semin. Hematol. 38(4):367-73 (2001))。 異常ヘモグロビン症には、赤血球(RBC)の産生が低下している、および/または、赤血球(RBC)の崩壊(溶血)が増加している、いくつかの遺伝性の貧血が含まれる。これらの疾患にはまた、異常ヘモグロビンの産生をもたらし、同時に酸素濃度を維持する能力の障害を伴う、遺伝的欠陥も含まれる。このような疾患には、十分な量の正常βグロビンを産生できないものや、正常なβグロビンが全く産生できないものがある。このような特にβグロビンタンパク質が関与する疾患は、一般に、β異常ヘモグロビン症と呼ばれる。例えば、βサラセミアは、βグロビン遺伝子の発現が部分的にまたは完全に障害されることにより起こり、HbAの異常または欠損が生じる。鎌状赤血球貧血症は、βグロビン構造遺伝子の点突然変異に起因し、異常(鎌状)ヘモグロビン(HbS)の産生が起こる。HbS型RBCは、正常なRBCよりも脆弱であり、溶血が起こりやすいために、最終的に貧血につながる(Atweh, Semin. Hematol. 38(4):367-73 (2001))。さらに、BCL11Aの遺伝的変種であるHBS1L-MYB変異の存在によって、βサラセミアの臨床的重症度が改善される。この変種は、HbFレベルに関連することが示されている。高HbF変種に伴って重症度の低い臨床型のβサラセミアを有する場合のオッズ比が5であることが示されている(Galanello S. et al., 2009, Blood, 印刷中)。 β異常ヘモグロビン症患者におけるグロビン鎖不均衡を低減することを目指した治療に関する研究において、胎児型ヘモグロビン(α2γ2、HbF)の薬理的処置が注目されている。このようなアプローチに重要な治療的将来性があることは、ホモ接合型βサラセミアおよび遺伝性高胎児ヘモグロビン症(HPFH)の両方を同時に受け継いだ患者における表現型を観察することにより示唆される。また、ホモ接合型βサラセミアを有し、成人型ヘモグロビンの合成が起こらない患者において、胎児型ヘモグロビン濃度が高い場合には、輸血の必要性が低いことからも示唆される。さらに、β鎖異常を有する成人患者の一部では、胎児型ヘモグロビン(HbF)濃度が正常値よりも高いことが知られており、HbFが成人正常値である患者よりも症状経過が軽いことが観察されている。例えば、サウジアラビア人の鎌状赤血球疾患患者であって、HbFを20〜30%発現する患者からなる群においては、臨床症状が軽い(Pembrey, et al., Br. J. Haematol. 40: 415-429 (1978))。現在では、鎌状赤血球貧血症やβサラセミアなどのβ異常ヘモグロビン症は、HbFの生成を高めることにより、改善することが知られている(Jane and Cunningham Br. J. Haematol. 102: 415-422 (1998)およびBunn, N. Engl. J. Med. 328: 129-131 (1993)において概説されている)。 γグロビンからβグロビンへの遺伝子発現の発達性のインビボスイッチを制御する分子機構は、現在不明であるが、外部要因がγグロビンの遺伝子発現に影響を与える可能性があるという証左が蓄積している。HbF再活性化活性を有することが発見された第一群の化合物は、細胞毒性薬であった。薬理的処置によってHbFのデノボ合成を引き起こせることが、実験動物で5-アザシチジンを用いて最初に示された(DeSimone, Proc Natl Acad Sci U S A. 79(14):4428-31 (1982))。その後の研究から、βサラセミアおよび鎌状赤血球疾患を有する患者において5-アザシチジンがHbFを増加させられることが確認された(Ley, et al., N. Engl. J. Medicine, 307: 1469-1475 (1982)、およびLey, et al., Blood 62: 370-380 (1983))。追加実験によって、細胞毒性用量のアラビノシルシトシン(アラC)で処置されたヒヒが、F-網状赤血球の著しい上昇を伴って応答すること(Papayannopoulou et al., Science. 224(4649):617-9 (1984))、およびヒドロキシウレアによる処置がサルまたはヒトにおいてγグロビンの誘導につながること(Letvin et. al., N Engl J Med. 310(14):869-73 (1984))が実証された。 HbF再活性化活性を引き起こす能力について調べた第二群の化合物は、短鎖脂肪酸であった。胎児臍帯血前駆細胞における初期の知見は、γアミノ酪酸が胎児型ヘモグロビン誘導因子となりうるという発見につながった(Perrine et al., Biochem Biophys Res Commun. 148(2):694-700 (1987))。その後の研究から、酪酸塩が成体ヒヒにおいてグロビン生成を刺激すること(Constantoulakis et al., Blood. Dec; 72(6): 1961-7 (1988))や、それが、鎌状赤血球貧血症を有する成体動物または患者の赤血球系細胞系列においてγグロビンを誘導すること(Perrine et al., Blood. 74(1):454-9 (1989))が示された。酪酸フェニル(Dover et al., Br J Haematol. 88(3):555-61 (1994))およびバルプロ酸(Liakopoulou et al., 1 : Blood. 186(8):3227-35 (1995))のような短鎖脂肪酸の誘導体も、インビボでHbFを誘導することが示されている。このファミリーの多数の短鎖脂肪酸類似体または誘導体のことを考慮すれば、酪酸塩よりも強力な、このファミリーのいくつかの潜在的化合物が存在している。その後の研究中に発見されたフェニル酢酸およびフェニルアルキル酸(Torkelson et al., Blood Cells Mol Dis. 22(2): 150-8. (1996))は、このファミリーの化合物に属していたので、潜在的なHbF誘導因子と考えられた。しかしながら、現在、鎌状赤血球貧血症およびβサラセミアにおける酪酸塩またはその類似体の使用は、まだ実験段階にあり、臨床試験外の処置のために推奨することができない。 鎌状赤血球貧血症およびβサラセミアにおいて胎児型ヘモグロビンの合成を再活性化することを目指した臨床試験には、5-アザシチジン、ヒドロキシウレア、組み換えヒトエリスロポエチン、および酪酸類似体のような化合物、ならびにこれらの薬剤の組み合わせの短期および長期投与が含まれていた。これらの研究後、ヒドロキシウレアがヒトでのHbFの誘導に用いられ、後に異常ヘモグロビン症の処置で食品医薬品局(FDA)によって承認された最初で最後の薬物になった。しかしながら、望ましくない副作用および患者応答のばらつきを含めて、さまざまな欠点から、そのような薬剤または治療法の長期使用が禁忌であることが示された。例えば、ヒドロキシウレアはHbF生成を刺激し、鎌状化発作を臨床的に軽減させることが示されたが、骨髄毒性および発がんのリスクによって潜在的に制限がある。潜在的な長期にわたる発がん性は、5-アザシチジンに基づく治療法でも存在するであろう。エリスロポエチンに基づく治療法は、患者集団の範囲のなかで一貫性があると証明されなかった。インビボでの酪酸の短い半減期は、治療的介入で用いるためにこれらの化合物を適合する際の潜在的障害と見なされた。さらに、γグロビン遺伝子の発現を誘導するには非常に高い投与量の酪酸が必要であり、化合物の持続注入のためにカテーテル処置を要する。さらに、これらの高い投与量の酪酸は、神経毒性および多臓器障害に関連しうる(Blau, et al., Blood 81: 529-537 (1993))。HbFレベルの最低限の増加でさえも鎌状赤血球疾患では有益であるが、βサラセミアでは、現在用いられている薬剤のいずれによっても確実に、または安全に、達成されないはるかに高い増加を要する(Olivieri, Seminars in Hematology 33: 24-42 (1996))。 HbF誘導および生成の天然の調節因子を特定することで、上記の化合物のさまざまな欠点を克服する治療的介入を考案する手段を提供することができるだろう。近年のゲノムワイド関連研究によって、多数の複雑な疾患および形質の遺伝的基盤への洞察が得られた(McCarthy et al., Nat Rev Genet 9, 356 (2008)およびManolio et. al. J Clin Invest 118, 1590 (2008))。しかしながら、圧倒的多数の場合には、遺伝的関連と根本的な病態生理との間の機能的結び付きは、まだ明らかにされていない。胎児型ヘモグロビン(HbF)のレベルは、量的形質として遺伝子し、主要なβ異常ヘモグロビン症、鎌状赤血球疾患およびβサラセミアの重症度を改善する際の上述のおよび十分特徴付けされたその役割を考慮すれば、臨床的に重要である(Nathan et. al., Nathan and Oski's hematology of infancy and childhood ed. 6th, pp. 2 v. (xiv, 1864, xli p.) 2003))。二つのゲノムワイド関連研究によって、HbFレベルの変動のおよそ20%を説明する5つの一般的な一塩基多型(SNP)のセットを含む3つの主要な遺伝子座が特定された(Lettre et al., Proc Natl Acad Sci U S A (2008); Uda et al., Proc Natl Acad Sci U S A 105, 1620 (2008); Menzel et al., Nat Genet 39, 1197 (2007))。さらに、これらの変種のいくつかは、鎌状赤血球疾患の臨床的重症度を予測するものと思われ(Lettre et al., Proc Natl Acad Sci U S A (2008))、これらのSNPの少なくとも1つはまた、βサラセミアの臨床転帰に影響を及ぼしうる(Uda et al., Proc Natl Acad Sci U S A 105, 1620 (2008))。HbFの変動の10%超を説明する、最大のエフェクトサイズ有するSNPは、第2染色体上の遺伝子BCL11Aの第二イントロンに位置している。C2H2型の亜鉛フィンガー転写因子BCL11Aは、リンパ球発生でのその役割について調べられている(Liu et al., Nat Immunol 4, 525 (2003)およびLiu et al., Mol Cancer 5, 18 (2006))が、赤血球生成またはグロビン遺伝子調節でのその役割は、これまでに評価されていない。 組み換えDNAの時代の開始時に、グロビン遺伝子構造の研究から、胎児型グロビンスイッチについて調べるための強力な分子的根拠が得られた。β様グロビンクラスタ内の遺伝子の適切な調節に必要なβグロビン遺伝子座のなかのシスエレメントを描写することに、かなりの努力が注がれた。これらの研究は、成人のHbFレベルに劇的に影響を与える天然の変異および欠失に依存し、そのクラスタの部分を担持するトランスジェニックマウスの作製によって補完された(Nathan et. al., Nathan and Oski's hematology of infancy and childhood ed. 6th, pp. 2 v. (xiv, 1864, xli p.) 2003)およびG. Stamatoyannopoulos, Exp Hematol 33, 259 (2005))。グロビンのスイッチングに必要とされる正確なシスエレメントは、まだ明確に定義されていないが、トランスジェニックマウスにおける所見から、γグロビン遺伝子が成体期には自律的にサイレンシングされること、つまり胎児期特異的なアクチベーターが存在しないことまたは発生段階特異的なリプレッサーが存在することに最も適合する所見が強く示唆された。近年の遺伝的関連の研究結果から、BCL11Aのような、γグロビン遺伝子の制御でのその関与について調べるための候補遺伝子が得られている。造血前駆細胞 1つの態様において、造血前駆細胞はエクスビボまたはインビトロで接触させる。具体的な態様において、接触させる細胞は、赤血球系列の細胞である。1つの態様において、細胞組成物は、減少したBCL11A発現を有する細胞を含む。 「造血前駆細胞」とは、この用語が本明細書において用いられる場合、骨髄系細胞系統(単球およびマクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、巨核球/血小板、樹状細胞)、ならびにリンパ系細胞系統(T細胞、B細胞、NK細胞)を含む血球型の全てを生ずる幹細胞系列の細胞をいう。「赤血球系列の細胞」は、接触させる細胞が、最終分化によって赤血球(erythrocyte)または赤血球(red blood cell; RBC)を形成するような、赤血球生成を起こす細胞であることを示す。そのような細胞は、骨髄造血幹細胞由来の3つの細胞系列、つまり赤血球系、リンパ系、および骨髄系のうちの1つに属する。特異的な増殖因子および造血微小環境の他の成分への曝露によって、造血前駆細胞は、一連の中間分化細胞型、赤血球系列の全ての中間体を通じて、RBCへ成熟しうる。したがって、「赤血球系列」の細胞は、この用語が本明細書において用いられる場合、造血前駆細胞、前赤芽球、塩基好性赤芽球、赤芽球、後赤血球、網状赤血球、および赤血球を含む。 いくつかの態様において、造血前駆細胞は、造血前駆細胞に特有の細胞表面マーカー: CD34+、CD59+、Thy1/CD90+、CD381o/-、およびC-kit/CD117+の少なくとも1つを有する。好ましくは、造血前駆細胞は、これらのマーカーのいくつかを有する。 いくつかの態様において、赤血球系列の造血前駆細胞は、赤血球系列に特有の細胞表面マーカー: CD71およびTer119を有する。 造血前駆細胞のような、幹細胞は、増殖することができ、かつ、分化したまたは分化可能な娘細胞を次に生じさせうる多数の母細胞を作製する能力を有するより多くの前駆細胞を生じさせることができる。娘細胞自体は、増殖し、かつ、親の発生能を有する1つまたは複数の細胞を保持しつつ、1つまたは複数の成熟細胞型へ続いて分化する後代を産生するように誘導されうる。「幹細胞」という用語はそして、特定の状況下で、より特殊化したまたは分化した表現型へ分化する能力または可能性を有し、かつ、ある状況下で、実質的に分化することなく増殖する能力を保持する、細胞をいう。1つの態様において、前駆細胞または幹細胞という用語は、胚細胞および組織の漸進的多様化において生じるように、その子孫(後代)が、分化によって、例えば完全に個々の特徴を獲得することによって、しばしば異なる方向に、特殊化する、一般化された母細胞をいう。細胞分化は、多くの細胞分裂によって典型的に生じる複雑なプロセスである。分化細胞は、それ自体が多能性細胞などから誘導される多能性細胞に由来しうる。これらの多能性細胞の各々は幹細胞と考えられうる一方、各々が生じさせうる細胞型の範囲は、かなり異なりうる。ある分化細胞はまた、より大きな発生能の細胞を生じさせる能力を有する。そのような能力は、天然のものでありえ、またはさまざまな因子での処理時に人工的に誘導されうる。多くの生物学的な事例において、幹細胞はまた「多能性」であり、何故ならば、それらは2つ以上の別個の細胞型の後代を産生しうるためであり、しかしこれは「幹性(stem-ness)」について必要とされない。自己再生は、幹細胞定義の他の古典的な部分であり、それは、本書において用いられる場合、必須である。理論的には、自己再生は、2つの主要な機構のいずれかによって生じうる。幹細胞は、非対称的に分裂しえ、一方の娘細胞は幹細胞状態を保持し、他方の娘細胞は、ある別個の他の特定の機能および表現型を発現する。あるいは、集団中の幹細胞のいくつかは、2つの幹細胞へ対称的に分裂しえ、したがって、全体として集団中にいくつかの幹細胞が維持され、一方、集団中の他の細胞は分化された後代のみを生じさせる。一般的に、「前駆細胞」は、より原始的である(すなわち、完全に分化した細胞であるよりも発生経路または進行に沿って初期の段階である)細胞表現型を有する。多くの場合、前駆細胞はまた、顕著なまたは非常に高い増殖能を有する。前駆細胞は、発生経路に依り、および細胞が発生かつ分化する環境に依り、複数の異なる分化細胞型を生じ、または単一の分化細胞型を生じうる。 細胞個体発生の文脈において、形容詞「分化した」または「分化している」は、相対的な用語である。「分化細胞」は、それが比較されている細胞よりも発生経路のさらに先へ進んだ細胞である。したがって、幹細胞は、細胞系列が拘束された前駆細胞(造血幹細胞のような)へ分化することができ、これは次に、該経路のさらに先の他の前駆細胞型(赤血球前駆細胞のような)へ、その後、最終段階の分化細胞へ分化することができ、これはある種の組織型において特徴的な役割を果たし、さらに増殖する能力を保持しえるかまたは保持しえない。人工多能性幹細胞 いくつかの態様において、本明細書において記述される遺伝子操作ヒト細胞は、単離された多能性幹細胞から誘導される。iPSCを用いる利点は、前駆細胞が投与される対象と同じ対象から細胞を誘導できる点である。すなわち、体細胞を対象から得て、人工多能性幹細胞へとリプログラムした後、造血前駆細胞(例えば、自家細胞)へと再分化させて対象に投与することができる。前駆細胞が、本質的に自家起源から誘導されることから、生着の拒絶またはアレルギー反応のリスクは、別の対象または対象群からの細胞を用いる場合と比較して減少する。いくつかの態様において、造血前駆細胞は、非自家起源から誘導される。加えて、iPSCを用いることにより、胚起源から細胞を得る必要がなくなる。このように1つの態様において、開示される方法において用いられる幹細胞は、胚幹細胞ではない。 分化は一般的に、生理的状況下で非可逆的であるが、近年、体細胞を人工多能性幹細胞へとリプログラムするためのいくつかの方法が開発されている。例示的な方法は、当技術分野において公知であり、本明細書において以下に簡単に説明する。 本明細書において用いられる「リプログラミング」という用語は、分化した細胞(例えば、体細胞)の分化状態を変化または逆転させるプロセスを意味する。別の言い方をすれば、リプログラミングは、細胞の分化をより未分化なまたはより原始的なタイプの細胞へと逆向きに駆動するプロセスを意味する。多くの初代培養細胞を培養すると、完全に分化した特徴の一部が失われうることに注意すべきである。このように、分化した細胞という用語に含まれるそのような細胞の単純な培養によって、これらの細胞が、非分化細胞(例えば、未分化細胞)または多能性細胞となるわけではない。分化細胞の多能性への移行は、培養において分化特徴の部分的喪失に至る刺激を超えるリプログラミング刺激を必要とする。リプログラムされた細胞はまた、一般的に培養において有限回数の分裂能を有する初代培養の親細胞と比較して、成長能を失うことなく長期間継代できるという特徴を有する。 リプログラムされる細胞を、リプログラミングの前に部分的に分化させるかまたは最終分化させることができる。いくつかの態様において、リプログラミングは、分化細胞(例えば、体細胞)の分化状態の、多能性状態または複能性状態への完全な逆転を包含する。いくつかの態様において、リプログラミングは、分化細胞(例えば、体細胞)の分化状態の、未分化細胞(例えば、胚様細胞)への完全または部分的逆転を包含する。リプログラミングによって、細胞による特定の遺伝子の発現が起こりえて、その発現がさらなるリプログラミングに寄与する。本明細書において記述されるある態様において、分化細胞(例えば、体細胞)のリプログラミングによって、分化細胞に、未分化状態のふりをさせることができる(例えば、未分化細胞である)。得られた細胞は、「リプログラム細胞」または「人工多能性幹細胞(iPSCまたはiPS細胞)」といわれる。 リプログラミングは、細胞分化の際に起こる、核酸修飾(例えば、メチル化)の遺伝的パターン、染色質凝縮、後成的変化、ゲノムインプリンティングなどの少なくともいくつかの変化、例えば逆転を伴いうる。リプログラミングは、既に多能性である細胞の既存の未分化状態を単に維持することとは異なり、または既に複能性細胞である細胞(例えば、造血幹細胞)の既存の完全ではない分化状態を維持することとも異なる。リプログラミングはまた、既に多能性または複能性である細胞の自己再生または増殖を促進することとも異なるが、本明細書において記述される組成物および方法はまた、いくつかの態様において、そのような目的にとっても有用でありうる。 体細胞から多能性幹細胞を作製するために用いられる特異的アプローチまたは方法(広く「リプログラミング」といわれる)は、主張される本発明にとって重要ではない。このように、体細胞を多能性表現型へとリプログラムするいかなる方法も、本明細書において記述される方法において用いるために適切であろう。 転写因子の既定の組み合わせを用いて多能性細胞を作製するためのリプログラミング方法論は、人工多能性幹細胞において記述されている。Yamanaka and Takahashiは、Oct4、Sox2、Klf4、およびc-Mycの直接形質導入によって、マウス体細胞を発達能が増大したES細胞様細胞へと変換させた(Takahashi and Yamanaka, 2006)。iPSCは、それらが多能性関連転写回路および後成的背景の多くを回復することからES細胞と類似する。加えて、マウスiPSCは、多能性に関する全ての標準アッセイ、具体的に、3胚葉の細胞タイプへのインビトロ分化、テラトーマ形成、キメラへの関与、生殖系列伝播(Maherali and Hochedlinger, 2008)、および四倍体胚盤胞補完(Woltjen et al., 2009)を満たす。 その後の実験から、類似の形質導入法(Lowry et al., 2008; Park et al., 2008; Takahashi et al., 2007; Yu et al., 2007b)を用いてヒトiPS細胞を得ることができることが示され、および転写因子トリオ、OCT4、SOX2、およびNANOGが、多能性を支配する転写因子のコアセットとして確立されている(Jaenisch and Young, 2008)。iPS細胞の産生は、歴史的にはウイルスベクターを用いて、幹細胞関連遺伝子をコードする核酸配列を成体の体細胞に導入することによって得ることができる。 iPS細胞は、最終分化体細胞から作製または誘導することができるとともに、成体体細胞または体幹細胞からも作製または誘導することができる。すなわち、非多能性の前駆細胞を、リプログラミングによって多能性または複能性にすることができる。そのような例では、最終分化細胞をリプログラムするために必要な場合ほど多くのリプログラム因子を含める必要はない。さらに、リプログラミングは、非ウイルス性のリプログラミング因子の導入によって、例えばタンパク質そのものを導入することによって、またはリプログラミング因子をコードする核酸を導入することによって、または翻訳時にリプログラミング因子を産生するメッセンジャーRNAを導入することによって誘導することができる(例えば、Warren et al., Cell Stem Cell, 2010 Nov 5;7(5):618-30を参照されたい)。リプログラミングは、例えば、Oct-4(Oct-3/4またはPouf51としても知られる)、Sox1、Sox2、Sox3、Sox15、Sox 18、NANOG、Klf1、Klf2、Klf4、Klf5、NR5A2、c-Myc、l-Myc、n-Myc、Rem2、Tert、およびLIN28を含む、幹細胞関連遺伝子をコードする核酸の組み合わせを導入することによって行うことができる。1つの態様において、本明細書において記述される方法および組成物を用いるリプログラミングは、Oct-3/4、Soxファミリーメンバー、Klfファミリーメンバー、およびMycファミリーメンバーの1つまたは複数を体細胞に導入する段階をさらに含みうる。1つの態様において、本明細書において記述される方法および組成物は、さらに、リプログラミングのためにOct4、Sox2、Nanog、c-MYC、およびKlf4の各々の1つまたは複数を導入する段階を含む。先に注目したように、リプログラミングのために用いられる方法そのものは、必ずしも本明細書において記述される方法および組成物にとって重要ではない。しかし、リプログラムした細胞から分化した細胞を、例えばヒトの治療に用いる場合、1つの態様において、リプログラミングは、ゲノムを変化させる方法によって行われない。このように、そのような態様において、リプログラミングは、例えばウイルスまたはプラスミドベクターを用いないで行われる。 開始細胞集団から誘導されるリプログラミングの効率(すなわち、リプログラムされた細胞の数)を、Shi, Y., et al (2008) Cell-Stem Cell 2:525-528、Huangfu, D., et al (2008) Nature Biotechnology 26(7):795-797、およびMarson, A., et al (2008) Cell-Stem Cell 3: 132-135によって示されるように、さまざまな低分子の添加によって増強させることができる。このように、人工多能性幹細胞産生の効率または割合を増強する物質または物質の組み合わせを、患者特異的または疾患特異的iPSCの産生に用いることができる。リプログラミング効率を増強する物質のいくつかの非限定的な例としては、とりわけ可溶性Wnt、Wnt条件培地、BIX-01294(G9aヒストンメチルトランスフェラーゼ)、PD0325901(MEK阻害剤)、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、バルプロ酸、5'-アザシチジン、デキサメタゾン、スベロイルアニリド、ヒドロキサム酸(SAHA)、ビタミンC、およびトリコスタチン(TSA)が挙げられる。 リプログラミング増強物質の他の非限定的な例としては、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA(例えば、MK0683、ボリノスタット)および他のヒドロキサム酸)、BML-210、デプデシン(例えば、(-)-デプデシン)、HC毒素、ヌルスクリプト(Nullscript、4-(1,3-ジオキソ-1H,3H-ベンゾ[デ]イソキノリン-2-イル)-N-ヒドロキシブタナミド)、フェニルブチレート(例えば、フェニル酪酸ナトリウム)およびバルプロ酸((VPA)および他の短鎖脂肪酸)、スクリプタイド、スラミンナトリウム、トリコスタチンA(TSA)、APHAコンパウンド8、アピシジン、酪酸ナトリウム、ピバロイルオキシメチルブチレート(ピバネクス(Pivanex)、AN-9)、トラポキシンB、クラミドシン、デプシペプチド(FR901228またはFK228としても知られる)、ベンズアミド(例えば、CI-994(例えば、N-アセチルジナリン)およびMS-27-275)、MGCD0103、NVP- LAQ-824、CBHA(m-カルボキシ桂皮酸ビスヒドロキサム酸)、JNJ16241199、ツバシン(Tubacin)、A-161906、プロキサミド、オキサムフラチン、3-Cl-UCHA(例えば、6-(3-クロロフェニルウレイド)カプロイックヒドロキサム酸)、AOE(2-アミノ-8-オキソ-9,10-エポキシデカン酸)、CHAP31およびCHAP 50が挙げられる。他のリプログラミング増強物質としては、例えば、HDACのドミナントネガティブ型(例えば、触媒的に不活性な型)、HDACのsiRNA阻害剤、およびHDACに特異的に結合する抗体が挙げられる。そのような阻害剤は、例えば、BIOMOL International、Fukasawa、Merck Biosciences、Novartis、Gloucester Pharmaceuticals、Aton Pharma、Titan Pharmaceuticals、Schering AG、Pharmion、MethylGene、およびSigma Aldrichから入手することができる。 本明細書において記述される方法とともに用いるための多能性幹細胞の誘導を確認するために、単離クローンを、幹細胞マーカーの発現に関して試験することができる。体細胞から誘導された細胞に幹細胞マーカーが発現されれば、細胞は、人工多能性幹細胞であると同定される。幹細胞マーカーは、SSEA3、SSEA4、CD9、Nanog、Fbx15、Ecat1、Esg1、Eras、Gdf3、Fgf4、Cripto、Dax1、Zpf296、Slc2a3、Rex1、Utf1、およびNat1を含む非限定的な群から選択されうる。1つの態様において、Oct4またはNanogを発現する細胞は、多能性であると同定される。そのようなマーカーの発現を検出する方法は、例えばRT-PCR、およびウエスタンブロットまたはフローサイトメトリー分析などのコードされるポリペプチドの存在を検出する免疫学的方法を含みうる。いくつかの態様において、検出は、RT-PCRを伴うのみならず、タンパク質マーカーの検出を含む。細胞内マーカーは、RT-PCRによって最もよく同定されうるが、細胞表面マーカーは、例えば免疫細胞化学によって容易に同定される。 単離細胞の多能性幹細胞特徴は、3胚葉の各々の細胞へのiPSCの分化能を評価する試験によって確認することができる。一例として、ヌードマウスにおけるテラトーマ形成を用いて、単離クローンの多能性特徴を評価することができる。細胞をヌードマウスに導入して、細胞から生じた腫瘍に関して組織学および/または免疫組織化学を行う。3胚葉全てからの細胞を含む腫瘍が成長すれば、例えば細胞が多能性幹細胞であることをさらに示している。リプログラミングのための体細胞 体細胞は、この用語が本明細書において用いられる場合、生殖系列細胞を除く、生物の体を形成する任意の細胞をいう。精子および卵子、精子および卵子が作製される元となる細胞(生殖母細胞)、ならびに未分化幹細胞を除く、哺乳類の体におけるあらゆる細胞タイプが、分化体細胞である。例えば、内部臓器、皮膚、骨、血液、および結合組織は全て、分化体細胞で構成される。 本明細書において記述される組成物および方法とともに用いられるさらなる体細胞タイプは、線維芽細胞(例えば、初代培養線維芽細胞)、筋肉細胞(例えば、筋細胞)、丘細胞、神経細胞、乳腺細胞、肝細胞および膵島細胞を含む。いくつかの態様において、体細胞は、初代培養細胞株または初代培養もしくは二次培養細胞株の後代である。いくつかの態様において、体細胞は、ヒトサンプルから、例えば、毛包、血液サンプル、生検材料(例えば、皮膚生検材料、または脂肪組織生検材料)、スワブサンプル(例えば、口腔スワブサンプル)から得られ、このため、ヒト体細胞である。 分化体細胞のいくつかの非限定的な例としては、上皮細胞、内皮細胞、神経細胞、脂肪細胞、心細胞、骨格筋細胞、免疫細胞、肝細胞、脾細胞、肺細胞、循環中の血球、消化管細胞、腎細胞、骨髄細胞、および膵細胞が挙げられるが、これらに限定されることはない。いくつかの態様において、体細胞は、脳、肝臓、消化管、胃、腸管、脂肪、筋肉、子宮、皮膚、脾臓、内分泌器官、骨などを含むが、これらに限定されない、任意の体組織から単離された初代培養細胞でありうる。さらに、体細胞は、任意の哺乳類種から得ることができ、その非限定的な例としては、マウス、ウシ、サル、ブタ、ウマ、ヒツジ、またはヒト細胞が挙げられる。いくつかの態様において、体細胞はヒト体細胞である。 リプログラム細胞を、疾患の治療的処置のために用いられる造血前駆細胞の作製に用いる場合、処置される患者から単離された体細胞を用いることが望ましいが、必ずしもその必要はない。例えば、疾患に関係する体細胞、疾患の治療的処置に関与する体細胞などを用いることができる。いくつかの態様において、リプログラム細胞とそれらが誘導されるまたは作製される元となる体細胞を含む不均質な集団からリプログラム細胞を選択する方法は、任意の公知の手段によって行うことができる。例えば、選択マーカー遺伝子のような薬物耐性遺伝子などを用いて、指標として選択マーカーを用いてリプログラム細胞を単離することができる。 本明細書において開示されるリプログラム体細胞は、アルカリホスファターゼ(AP); ABCG2; ステージ特異的胚抗原-1(SSEA-1); SSEA-3; SSEA-4; TRA-1-60; TRA-1-81; Tra-2-49/6E; ERas/ECAT5、E-カドヘリン; β-III-チューブリン; α-平滑筋アクチン(α-SMA); 線維芽細胞増殖因子4(Fgf4)、Cripto、Dax1; ジンクフィンガータンパク質296(Zfp296); N-アセチルトランスフェラーゼ-1(Nat1); ES細胞関連転写物1(ECAT1); ESG1/DPPA5/ECAT2; ECAT3; ECAT6; ECAT7; ECAT 8; ECAT9; ECAT10; ECAT15-1; ECAT15-2; Fthl17; Sal14; 未分化胚細胞転写因子(Utf1); Rex1; p53; G3PDH; TERTを含むテロメラーゼ; サイレントX染色体遺伝子; Dnmt3a; Dnmt3b; TRIM28; F-ボックス含有タンパク質15(Fbx15); Nanog/ECAT4; Oct3/4; Sox2; Klf4; c-Myc; Esrrb; TDGF1; GABRB3; Zfp42、FoxD3; GDF3; CYP25A1; 発生多能性関連2 (DPPA2); T細胞リンパ腫切断点1 (Tcl1); DPPA3/Stella; DPPA4; 多能性に関する他の一般的マーカーなどを含む、任意の数の多能性細胞マーカーを発現することができる。他のマーカーは、Dnmt3L; Sox15; Stat3; Grb2; β-カテニン、およびBmi1を含みうる。そのような細胞はまた、人工多能性幹細胞が誘導される体細胞の特徴であるマーカーの下方制御を特徴としうる。ゲノム編集およびDNAを標的とするエンドヌクレアーゼ 本明細書において用いられる場合、「ゲノム編集」という用語は、人為的に操作されたヌクレアーゼを用いて、ゲノム中の所望の位置で切断しかつ特定の二本鎖切断を生成し、これをその後、相同組み換え(HR)、相同組み換え修復(HDR)および非相同末端再結合(NHEJ)のような、細胞の内因性プロセスによって修復する、逆遺伝学的方法をいう。NHEJは二本鎖切断におけるDNA末端を直接連結するが、HDRは、切断点の、失われた配列を再生するための鋳型として相同配列を利用する。 ゲノム編集は、従来の制限エンドヌクレアーゼを用いて行うことができない。というのは、大部分の制限酵素はその標的としてDNA上の数個の塩基対を認識するため、認識される塩基対の組み合わせは、ゲノム全体の多くの位置において見出され、結果的に複数の切断をもたらす(すなわち、所望の位置に限定されない)可能性が非常に高いからである。この難題を克服し、部位特異的な二本鎖切断を生成するために、いくつかの異なるクラスのヌクレアーゼが今日までに発見され、生物工学で加工されている。これらがメガヌクレアーゼ、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、Cas9/CRISPRシステム、および転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)である。 メガヌクレアーゼは、4つのファミリー: LAGLIDADGファミリー、GIY-YIGファミリー、His-CysボックスファミリーおよびHNHファミリーに一般に分類される。これらのファミリーは、触媒活性および認識配列に影響を及ぼす構造モチーフによって特徴付けられる。例えば、LAGLIDADGファミリーのメンバーは、保存されたLAGLIDADGモチーフの1つまたは2つのコピーのいずれかを有することによって特徴付けられる(Chevalier et al. (2001), Nucleic Acids Res. 29(18): 3757-3774を参照のこと)。単一コピーのLAGLIDADGモチーフを有するLAGLIDADGメガヌクレアーゼは、ホモ二量体を形成するが、2コピーのLAGLIDADGを有するメンバーは単量体として見出される。同様に、GIY-YIGファミリーメンバーはGIY-YIGモジュールを有し、これは70〜100残基長であり、4つの不変残基を有する4つまたは5つの保存配列モチーフを含み、このうちの2つが活性に必要とされる(Van Roey et al. (2002), Nature Struct. Biol. 9: 806-811を参照のこと)。His-Cysボックスメガヌクレアーゼは、数百個のアミノ酸残基を包含する領域にわたって高度に保存された一連のヒスチジンおよびシステインにより特徴付けられる(Chevalier et al. (2001), Nucleic Acids Res. 29(18): 3757-3774を参照のこと)。NHNファミリーの場合、そのメンバーは、アスパラギン残基によって取り囲まれた二組の保存ヒスチジンを含んだモチーフにより定義される(Chevalier et al. (2001), Nucleic Acids Res. 29(18): 3757-3774を参照のこと)。メガヌクレアーゼの4つのファミリーは、保存された構造エレメントそして、結果的に、DNA認識配列特異性および触媒活性に関してお互いに広く異なっている。 メガヌクレアーゼは、微生物種においてよく見られ、非常に長い認識配列(>14 bp)を有し、かくしてそれらは、所望の位置での切断に対して生来非常に特異的であるという独特な性質を有する。これを利用して、ゲノム編集において部位特異的な二本鎖切断を作製することができる。当業者は、これらの天然のメガヌクレアーゼを利用することができるが、しかしそのような天然のメガヌクレアーゼの数は限られている。この難題を克服するため、突然変異生成および高速大量処理スクリーニング法を用いて、独特な配列を認識するメガヌクレアーゼ変種を生成した。例えば、さまざまなメガヌクレアーゼを融合させて、新しい配列を認識するハイブリッド酵素を生成した。あるいは、メガヌクレアーゼのDNA相互作用性のアミノ酸を変化させて、配列特異的なメガヌクレアーゼをデザインすることができる(例えば、米国特許第8,021,867号を参照のこと)。例えば、Certo, MT et al. Nature Methods (2012) 9:073-975; 米国特許第8,304,222号; 同第8,021,867号; 同第8,119,381号; 同第8,124,369号; 同第8,129,134号; 同第8,133,697号; 同第8,143,015号; 同第8,143,016号; 同第8,148,098号; または同第8,163,514号において記述されている方法を用いてメガヌクレアーゼをデザインすることができ、それぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。あるいは、部位特異的な切断特性を有するメガヌクレアーゼを市販の技術、例えば、Precision BioScienceのDirected Nuclease Editor (商標)ゲノム編集技術を用いて得ることができる。 ZFNおよびTALEN制限エンドヌクレアーゼ技術では、亜鉛フィンガーおよび転写アクチベーター様エフェクター(TALE)のような特異的DNA配列認識ペプチドに連結されている非特異的DNA切断酵素を利用する。典型的には、DNA認識部位および切断性部位が互いに分離しているエンドヌクレアーゼを選択し、その切断性の部分を分離し、その後、配列認識性のペプチドに連結し、それによって所望の配列に対して非常に高い特異性を有するエンドヌクレアーゼを得る。そのような特性を有する例示的な制限酵素は、FokIである。さらに、FokIは、ヌクレアーゼ活性を有するには二量体化を要するという利点を有し、これは、各ヌクレアーゼパートナーが独特なDNA配列を認識するにつれて特異性が劇的に増すことを意味している。この効果を増強するため、ヘテロ二量体として機能し、増大した触媒活性を有しうるだけであるようにFokIヌクレアーゼが操作された。ヘテロ二量体機能性のヌクレアーゼは、望ましくないホモ二量体活性の可能性を回避し、かくして、二本鎖切断の特異性を増加させる。 ZFNおよびTALENの両方のヌクレアーゼ部分は類似の特性を有するが、これらの操作されたヌクレアーゼ間の差異は、そのDNA認識ペプチド内にある。ZFNはCys2-His2亜鉛フィンガーに依り、TALENはTALEに依る。これらのDNA認識性のペプチドドメインの両方とも、そのタンパク質中に組み合わせて天然に見出されるという特徴を有する。Cys2-His2亜鉛フィンガーは、典型的には、3 bp離れた繰り返し単位で生じ、転写因子のような種々の核酸相互作用性のタンパク質において多様な組み合わせで見出される。TALEは、他方、アミノ酸と、認識されるヌクレオチド対との間の認識比1対1で繰り返し単位で見出される。亜鉛フィンガーおよびTALEの両方が、繰り返されたパターンで生じるので、多種多様の配列特異性をもたらすように異なる組み合わせを試みることができる。部位特異的な亜鉛フィンガーエンドヌクレアーゼを作製するためのアプローチには、例えば、とりわけ、モジュールアセンブリ(この場合には必要とされる配列を網羅するように、トリプレット配列と関連付けられる亜鉛フィンガーが一列に付着される)、OPEN (ペプチドドメイン vs. トリプレットヌクレオチドの低ストリンジェンシー選択、その後に細菌系でのペプチドの組み合わせ vs. 最終標的の高ストリンジェンシー選択)、および亜鉛フィンガーライブラリの細菌ワン・ハイブリッドスクリーニングが含まれる。本明細書において記述される方法および組成物で用いるためのZFNは、例えば、Sangamo Biosciences (商標) (Richmond, CA)から商業的に入手することができる。 ゲノム編集のCas9/CRISPRシステムが、本明細書において記述される方法および組成物で利用されることが本明細書において企図される。クラスタ化規則的スペース間短鎖パリンドローム反復(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)システムは、RNAプログラム可能なゲノム編集のために有用である(例えば、Jinek, M. et al. Science (2012) 337(6096):816-821を参照のこと)。 あるいは、ゲノム編集は組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)に基づくゲノム工学を用いて行うことができるが、それは、生きている哺乳類細胞のゲノムへのDNA配列の挿入、欠失または置換を可能にするrAAVベクターの使用を中心としたゲノム編集プラットフォームである。rAAVゲノムは、プラスまたはマイナス・センスのいずれかの、一本鎖デオキシリボ核酸(ssDNA)分子であり、これは約4.7キロベース長である。これらの一本鎖DNAウイルスベクターは、高い形質導入率を有し、ゲノム中での二本鎖DNA切断を引き起こさずに内因性の相同組み換えを刺激するという独特な性質を有する。当業者は、所望のゲノム遺伝子座を標的化し、欠失のような、細胞中での全体のおよび/または微細の両方の内因性遺伝子変化を行うようにrAAVベクターをデザインすることができる。rAAVゲノム編集は、それが単一の対立遺伝子を標的とし、いかなる非特異的なゲノム変化も引き起こさないという点で利点を有する。rAAVゲノム編集技術は、商業的に利用可能である、例えば、Horizon (商標) (Cambridge, UK)のrAAV GENESIS (商標)システム。薬学的に許容される担体 本明細書において記述される、対象にヒト造血前駆細胞を投与する方法は、造血前駆細胞を含む治療用組成物を用いることを伴う。治療用組成物は、細胞組成物とともに生理的に許容される担体を含み、および任意で、活性成分としてその中に溶解または分散される、本明細書において記述される少なくとも1つのさらなる生物活性剤を含む。好ましい態様において、治療用組成物は、治療目的で哺乳類またはヒト患者に投与した場合に、それが望ましい場合を除き、実質的に免疫原性ではない。 一般的に、本明細書において記述される造血前駆細胞は、薬学的に許容される担体とともに懸濁液として投与される。当業者は、細胞組成物において用いられる薬学的に許容される担体が、対象に送達される細胞の生存率を実質的に妨害する量の緩衝液、化合物、凍結保護剤、保存剤、または他の作用物質を含まないことを認識するであろう。細胞を含む製剤は、例えば細胞膜の完全性を維持することができる浸透圧緩衝剤、および任意で投与時の細胞の生存率を維持するまたは生着を増強するための栄養を含みうる。そのような製剤および懸濁剤は、当業者に公知であるか、および/または日常的な実験を用いて本明細書において記述される造血前駆細胞とともに用いるために適合させることができる。 細胞組成物はまた、乳化技法が細胞の生存率に有害に影響を及ぼさない限り、乳化されうる、またはリポソーム組成物として提示されうる。細胞および他の任意の活性成分を、薬学的に許容されて活性成分と適合性である賦形剤と、本明細書において記述される治療法において用いるために適した量で混合することができる。 本明細書において記述される細胞組成物に含まれるさらなる作用物質は、その中に成分の薬学的に許容される塩を含みうる。薬学的に許容される塩には、例えば、塩酸もしくはリン酸のような無機酸、または酢酸、酒石酸、マンデル酸などのような有機酸によって形成される酸付加塩(ポリペプチドの遊離アミノ基によって形成される)が含まれる。遊離カルボキシル基によって形成される塩も同様に、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは水酸化第二鉄のような無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどのような有機塩基に由来することができる。生理的に認容される担体は、当技術分野において周知である。例示的な液体担体は、活性成分および水の他に材料を含有しない、または生理的pH値のリン酸ナトリウムのような緩衝液、生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水のような、その両方を含有する滅菌水溶液である。なおさらに、水溶性担体は、2つ以上の緩衝塩も、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムのような塩、デキストロース、ポリエチレングリコール、ならびに他の溶質も含有することができる。液体組成物はまた、水に加えておよび水を除く液相を含有することができる。そのようなさらなる液相の例は、グリセリン、綿実油のような植物油、および水-油乳剤である。特定の障害または状態の処置において有効である本発明において記述される細胞組成物において用いられる活性化合物の量は、障害または状態の性質に依るものと考えられ、標準的な臨床技法によって判定することができる。投与および効能 本明細書において用いられる場合、「投与する」、「導入する」および「移植する」という用語は、細胞、例えば本明細書において記述される造血前駆細胞を、所望の効果が得られるように、損傷部位または修復部位などの所望の部位で、導入した細胞の少なくとも部分的局在が得られる方法または経路によって対象に留置するという文脈において互換的に用いられる。細胞、例えば造血前駆細胞、またはその分化後代は、植え込まれた細胞もしくは細胞成分の少なくとも一部が生存したままである対象における所望の位置への送達が得られる任意の適切な経路によって投与されうる。対象に投与後の細胞の生存期間は、数時間、例えば24時間もの短時間から数日、数年もの長期間、すなわち長期間の生着でありうる。例えば、本明細書において記述される局面のいくつかの態様において、造血前駆細胞の有効量は、腹腔内または静脈内経路のような、全身投与経路によって投与される。 予防的に提供される場合、本明細書において記述される造血前駆細胞を、異常ヘモグロビン症の任意の症状に先立って、例えば、胎児型γ-グロビンから主にβ-グロビンへの切り替えの前に、対象に投与することができる。したがって、造血前駆細胞集団の予防的投与は、本明細書において開示される異常ヘモグロビン症を予防するために役立つ。 治療的に提供される場合、造血前駆細胞は、異常ヘモグロビン症の症状または兆候の発生時(または発生後)に、例えば、鎌状赤血球疾患の発症時に提供される。 本明細書において記述される局面のいくつかの態様において、本明細書において記述される方法にしたがって投与される造血前駆細胞集団は、1例または複数例のドナーから得た同種異系造血前駆細胞を含む。本明細書において用いられる場合、「同種異系」とは、1つまたは複数の座の遺伝子が同一ではない、同じ種の1例または複数例の異なるドナーから得られた造血前駆細胞または造血前駆細胞を含む生物サンプルをいう。例えば、対象に投与される造血前駆細胞集団は、1例もしくは複数例の無関係なドナー対象から得られた、または1例もしくは複数例の非同一兄弟から得られた臍帯血から誘導することができる。いくつかの態様において、遺伝的に同一の動物から得られた細胞または遺伝的に同一の双子から得られた細胞などの、同系の造血前駆細胞集団を用いることができる。この局面の他の態様において、造血前駆細胞は自家細胞である。すなわち、造血前駆細胞は対象から得られまたは単離され、同じ対象に投与され、すなわち、ドナーとレシピエントは同一である。 本明細書において記述されるさまざまな局面において用いるために、造血前駆細胞の有効量は、造血前駆細胞少なくとも102個、造血前駆細胞少なくとも5×102個、造血前駆細胞少なくとも103個、造血前駆細胞少なくとも5×103個、造血前駆細胞少なくとも104個、造血前駆細胞少なくとも5×104個、造血前駆細胞少なくとも105個、造血前駆細胞少なくとも2×105個、造血前駆細胞少なくとも3×105個、造血前駆細胞少なくとも4×105個、造血前駆細胞少なくとも5×105個、造血前駆細胞少なくとも6×105個、造血前駆細胞少なくとも7×105個、造血前駆細胞少なくとも8×105個、造血前駆細胞少なくとも9×105個、造血前駆細胞少なくとも1×106個、造血前駆細胞少なくとも2×106個、造血前駆細胞少なくとも3×106個、造血前駆細胞少なくとも4×106個、造血前駆細胞少なくとも5×106個、造血前駆細胞少なくとも6×106個、造血前駆細胞少なくとも7×106個、造血前駆細胞少なくとも8×106個、造血前駆細胞少なくとも9×106個、またはその倍数を含む。造血前駆細胞は、1例もしくは複数例のドナーから誘導されうるか、または自家起源から得られうる。本明細書において記述される局面のいくつかの態様において、造血前駆細胞を、それを必要としている対象に投与する前に、培養において増殖させる。 1つの態様において、本明細書において用いられる「有効量」という用語は、異常ヘモグロビン症の少なくとも1つまたは複数の症状を軽減するために必要なヒト造血前駆細胞集団またはその後代の量をいい、所望の効果を提供するための、例えば、異常ヘモグロビン症を有する対象を処置するための組成物の十分量に関連する。それゆえ「治療的有効量」という用語は、異常ヘモグロビン症を有する、または異常ヘモグロビン症のリスクがある対象のような、典型的な対象に投与した場合に、特定の効果を促進するために十分である造血前駆細胞または造血前駆細胞を含む組成物の量をいう。本明細書において用いられる有効量はまた、疾患の症状の発生を防止するもしくは遅延させる、疾患の症状の経過を変化させる(例えば以下に限定されるものではないが、疾患の症状の進行を緩徐化する)、または疾患の症状を反転させるために十分な量を含むであろう。いかなる所与の場合も、当業者は日常的な実験を用いて適切な「有効量」を判定できるものと理解される。 本明細書において用いられる場合、「投与される」とは、所望の部位での細胞組成物の少なくとも部分的な局在化を引き起こす方法または経路による対象中への本明細書において記述される造血幹細胞組成物の送達をいう。細胞組成物は、対象において有効な処置をもたらす任意の適切な経路によって投与することができ、すなわち、投与は、対象における所望の位置への送達をもたらし、その場所には組成物の少なくとも一部が送達され、すなわち、少なくとも細胞1×104個が一定時間の間に所望の部位へ送達される。投与の方法は、注射、注入、点滴注入、または摂取を含む。「注射」は、非限定的に、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、脳室内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、骨髄内、脳脊髄内、および胸骨内への注射および注入を含む。細胞の送達の場合、注射または注入による投与が一般に好ましい。 1つの態様において、本明細書において記述される細胞は、全身に投与される。本明細書において用いられる「全身投与」、「全身に投与される」、「末梢投与」および「末梢に投与される」という語句は、細胞が代わりに、対象の循環系に入り、かくして、代謝および他の類似のプロセスを受けるように、造血前駆細胞の集団を標的部位、組織、または器官への直接投与以外で投与することをいう。 熟練した臨床医は、異常ヘモグロビン症の処置のための本明細書において記述される組成物を含む処置の効能を判定することができる。しかしながら、疾患の徴候または症状、一例として、胎児型β-グロビンのレベルのいずれか1つまたは全てが有益な形で変えられ、疾患の他の臨床的に認められる症状またはマーカーが、例えば、阻害剤による処置後に少なくとも10%だけ、向上または改善されるなら、処置は、この用語が本明細書において用いられる「有効な処置」であると見なされる。効能は、入院によって評価する場合には個体が悪化しなかったこと、または医学的介入の必要性(すなわち、疾患の進行が停止または少なくとも緩徐化される)によって測定することもできる。これらの指標を測定する方法は、当業者に公知であり、および/または本明細書において記述される。処置は、個体または動物(いくつかの非限定的な例としては、ヒト、または哺乳類が挙げられる)における疾患のいかなる処置も含み、(1) 疾患を阻害すること、例えば、敗血症の進行を食い止めること、もしくは緩徐化すること; または(2) 疾患を軽減すること、例えば、症状の退縮を引き起こすこと; および(3) 感染症または敗血症の発症の可能性を抑えることまたは減らすことを含む。 本発明による処置は、個体における胎児型ヘモグロビンの量を増加させることによってβ-グロビン障害に関連した1つまたは複数の症状を改善する。異常ヘモグロビン症に伴う典型的な症状には、例えば、貧血、組織低酸素、臓器機能不全、異常なヘマトクリット値、無効造血、異常な網状赤血球(赤血球)数、異常な鉄負荷、環状鉄芽球の存在、脾腫、肝腫大、末梢血流の障害、呼吸困難、溶血の増大、黄疸、貧血痛発作(anemic pain crises)、急性胸部症候群、脾臓血球貯留、持続勃起症、脳卒中、手足症候群、および疼痛、例えば狭心症が含まれる。 1つの態様において、造血前駆細胞はエクスビボまたはインビトロでDNAを標的とするエンドヌクレアーゼと接触させ、この細胞またはその後代が哺乳類(例えば、ヒト)に投与される。さらなる態様において、造血前駆細胞は赤血球系列の細胞である。1つの態様において、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼと予め接触させた造血前駆細胞および薬学的に許容される担体を含む組成物が哺乳類に投与される。 1つの態様において、当技術分野において公知の任意の方法、例えば、胎児型ヘモグロビンタンパク質のウエスタンブロット分析および胎児型γ-グロビンのmRNAの定量化を用いて、胎児型ヘモグロビン発現の増加を測定することができる。 1つの態様において、造血前駆細胞はインビトロで、またはエクスビボでDNAを標的とするエンドヌクレアーゼと接触させる。1つの態様において、細胞はヒト由来のもの(例えば、自家細胞または異種細胞)である。1つの態様において、組成物は胎児型ヘモグロビン発現の増加を引き起こす。 本発明は、アルファベットを付した以下の項目のいずれかにおいて定義され得る。[A] 減少したBCL11A mRNAまたはタンパク質の発現を有する前駆細胞を産生するための方法であって、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上の細胞ゲノムDNAに結合する薬剤と、単離された前駆細胞を接触させ、それによってBCL11AのmRNAまたはタンパク質の発現を低減させる段階を含む、方法。[B] DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、単離された細胞を接触させる段階であって、それによって該DNAを標的とするエンドヌクレアーゼが、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、段階を含む、少なくとも1つの遺伝的改変を有する単離された遺伝子操作ヒト細胞を産生するための方法。[C] 前記単離された前駆細胞または単離された細胞が、造血前駆細胞である、第[A]項または第[B]項に記載の方法。[D] 造血前駆細胞が、赤血球系列の細胞である、第[C]項に記載の方法。[E] 前記単離された前駆細胞または単離された細胞が、人工多能性幹細胞である、第[A]項または第[B]項に記載の方法。[F] 造血前駆細胞を、エクスビボまたはインビトロで接触させる、第[C]項に記載の方法。[G] 少なくとも1つの遺伝的改変が、欠失である、第[A]〜[F]項のいずれか一項に記載の方法。[H] 欠失が、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612の間の全領域を除去するか、または該領域の一部分を除去し、1つもしくは複数のDNAse 1高感受性部位(DHS)の破壊を引き起こす、第[G]項に記載の方法。[I] 第[B]〜[H]項に記載の第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上に少なくとも1つの遺伝的改変を有する単離された遺伝子操作ヒト細胞。[J] 第[I]項に記載の単離された遺伝子操作ヒト細胞を含む組成物。[K] 以下の段階を含む、細胞における胎児型ヘモグロビンレベルを増加させる方法:第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、単離された細胞を接触させる段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、該接触の前の該細胞と比べて、該細胞またはその後代において増加される、段階。[L] 前記単離された細胞が、造血前駆細胞である、第[K]項に記載の方法。[M] 造血前駆細胞が、赤血球系列の細胞である、第[K]項または第[L]項に記載の方法。[N] 前記単離された細胞が、人工多能性幹細胞である、第[K]項に記載の方法。[O] 造血前駆細胞を、エクスビボまたはインビトロで接触させる、第[L]項または第[M]項に記載の方法。[P] 少なくとも1つの遺伝的改変が、欠失である、第[K]〜[O]項のいずれか一項に記載の方法。[Q] 欠失が、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612の間の全領域を除去するか、または該領域の一部分を除去し、1つもしくは複数のDNAse 1高感受性部位(DHS)の破壊を引き起こす、第[P]項に記載の方法。[R] 以下の段階を含む、それを必要とする哺乳類において胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法:第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、該哺乳類において単離された造血前駆細胞を接触させる段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、該接触の前の発現と比べて、該哺乳類において増加される、段階。 本発明は、限定するものと解釈されるべきではない以下の実施例によってさらに説明される。本出願の全体を通じて引用される全ての参考文献の内容、ならびに図面および表は、参照により本明細書に組み入れられる。 本発明者らは、赤血球系列の細胞におけるBCL11A遺伝子の発現に不可欠であるBCL11A遺伝子の調節エレメントを発見し特徴付けた。これらの配列内でよく見られる遺伝的変種は、胎児型ヘモグロビンレベルおよびβ-グロビン障害の重症度と関連している。これらの配列は、エンハンサークロマチンシグナチャーを有する遠位調節エレメントを含み、アクセス可能なクロマチン、活性なヒストンマーク、および赤血球系転写因子による占有を有する。これらのエレメントは、BCL11Aプロモーターと相互作用し、赤血球系細胞において遺伝子発現を促進するが、Bリンパ球のような、BCL11Aを発現する他の細胞系列ではそうでない。治療目的でBCL11Aの阻害および胎児型ヘモグロビンの再誘導を達成するために、これらの調節エレメントを標的化することができる。これは、ゲノム編集、核酸またはタンパク質結合、および後成的修飾に限定されない機構によって達成することができる。この方法の利点には、γ-グロビン産生の増大およびβ-グロビン産生の低減を引き起こす、胎児型ヘモグロビンレベルの生理的な調節因子の破壊; 全体的なグロビン生産に及ぼすまたは赤血球の生成もしくは機能に及ぼす最小の効果; 赤血球系列以外の細胞に及ぼす影響の限定、したがって潜在的毒性の低減が含まれる。材料および方法細胞培養 健常ドナーの動員末梢血由来のヒトCD34+細胞を、Centers of Excellence in Molecular Hematology at Yale University, New Haven, ConnecticutおよびFred Hutchinson Cancer Research Center, Seattle, Washingtonから入手した。細胞を既述のように、二相無血清液体培養プロトコルによるエクスビボでの赤血球系の成熟に供した(39)。末梢血単核細胞(PBMC)をボストン小児病院の健常ドナーから得た。PBMCからの赤血球系分化は、既述のように行った(40)。マウス赤白血病(MEL)細胞および293T細胞は、既述のように培養した(39)。安定的にv-Ablを形質転換されたプレBリンパ球マウス細胞(記述(41)のように得られた)を、2%ペニシリン-ストレプトマイシン、15% FCS、2% HEPES、1%非必須アミノ酸、1%ピルビン酸ナトリウム、1% L-グルタミンおよび100 μM β-メルカプトエタノールを加えたRPMI中で培養した。ChIPおよびDNase I感受性 クロマチン免疫沈降および超並列配列決定を、記述のように行った(39)。以下の抗体を用いた: H3K27me3 (Millipore, 07-449)、H3K4me3 (Millipore, 04-745)、H3K4mel (Abcam, ab8895)、H3K27ac (Abcam, ab4729)、RNAポリメラーゼII (PolII, Santa Cruz, sc-899)、GATA1 (Abcam, ab11852)およびTAL1 (Santa Cruz, sc-12984)。DNase I切断密度を、既述のように実施し解析した(42)。ChIP-qPCRについては、ΔCt法で1%インプットクロマチンとChIP材料の増幅を比較することにより相対的濃縮度を決定した。GATA1およびTAL1によって占有されること、および占有されないことがこれまでに報じられた遺伝子座を、それぞれ陽性および陰性対照として用いた(39)。染色体高次構造捕捉(3C) 下記を除き3C法を既述(39)のように行った。ホルムアルデヒド架橋された初代ヒト赤血球系前駆細胞の核を、ライゲーションおよび架橋の反転の前にHindIIIで消化した。iQ SYBR Green Supermix (Bio-Rad, 170-8880)を用いて定量的リアルタイムPCRを行った。BCL11Aプロモーターを含んだ断片を、アンカー領域として用いた。異なるプライマーの増幅効率を補正するため、完全ヒトBCL11A遺伝子座(RP11-606L8およびRP11-139C22)ならびに1つのヒトβ-グロビンクラスタ(CTD-3055E11)を含む2つの細菌人工染色体(BAC)の等モル混合物を消化およびライゲーションすることにより、対照の鋳型を調製した。ヒト13-グロビン遺伝子座対照領域(LCR)のHS1/HS2およびHS3における断片間の相互作用を、陽性対照とした。相互作用頻度は、公知のLCR相互作用に対しての増幅として表し、BACの対照鋳型に対して正規化した。BCL11A遺伝子座の精細マッピング 3つのBCL11Aイントロン2 DHS +62 (chr2:60,717,492〜60,718,860)、+58 (chr2:60,721,411〜60,722,674)および+55 (chr2:60,724,802〜60,726,084)の中からマーカー(座標は全てhg19)を選択した。北ヨーロッパ系アメリカ人(CEU)、ナイジェリア系アメリカ人(YRI)およびアフリカ系アメリカ人(ASW)の参照集団を用いて1000人ゲノムプロジェクトデータベースから21個のマーカーを特定した(表S1)。38種類のさらなる変種がdbSNP135において存在していた(表2)。本発明者らはサンガー法による化学反応で、それぞれ、高い(8%超)および低い(2%未満) HbFレベルを有するCSSCDコホート由来の鎌状赤血球疾患(SCD)患者52名および36名のDNAにおける三種類のDHS範囲を配列決定した。この配列決定の努力から、7種の新規の配列変種が特定された(表3)。大部分のマーカーは小さなゲノム範囲に密集しているので、それらのいくつかのジェノタイピングアッセイをデザインすることは可能ではなかった。三種類のDHSにおいて特定された66個の非冗長変種のうち、ゲノムDNA (gDNA)が利用可能であり、かつHbFレベルが分かっているアフリカ系アメリカ人のSCDコホートであるCSSCD参加者1,263名において40個のマーカーのジェノタイピングアッセイを実施した(21)。Sequenom iPLEXプラットフォームを用いて、マーカーをジェノタイピングした。ジェノタイピング成功率が90%未満の個体およびDNA配列変種を除外した。三つ組から推定される全体的な遺伝子型一致は、100%であった。品質管理(QC; n = 38)を通過したSNPは、表2および3に記載されており、図11Aおよび11Bにおいて三種類のDHSの下に図式的に示されている。ジェノタイピングされたSNPのかなりの割合のものが参照集団において稀有であり、そのため驚くことではないが、CSSCD (n = 18)においては単型である。QC後、個体1,178名および20個の多型SNPが解析のために残った。HbFレベルを既述のようにモデル化した(9, 43)。単一の変種(MAF > 1%)の関連および条件付け解析を、相加的遺伝モデルの下で直線回帰を用いPLINK (44)で行った。一般的な変種(MAF > 1%)の解析から、DHS +62におけるrs1427407はHbFレベルと最も強い関連性を有することが明らかにされた(P = 7.23×10-50; 図11Aおよび3B)。条件付け解析から、rs1427407およびrs7606173に基づく条件付けの後、もはやSNPは有意でないことが実証された(図3B)。混合および他の交絡要因を考慮するためにゲノム規模のジェノタイピングデータが利用可能であった個体855名に関する主成分(PC)の調整から、類似の結果が得られた。 頻度が低いまれな変種(MAF<5%)について、本発明者らは、三種類のDHS +62、+58および+55のそれぞれを被験単位として用い、セットに基づく解析を行った。これらの解析について、本発明者らは配列カーネル関連試験(SKAT-O)プログラム(45)をデフォルトパラメータで用いた。本発明者らは、本発明者らの限られたサンプルサイズを考慮して統計的検出力を最大化するためにMAFについて5%の閾値を選択したが、MAF 1%〜5%を伴うマーカーも、上述した単一の変種解析において解析されたことに留意されたい。この変種の重複は、HbFレベルと独立的に関連した一般的な変種で条件付け解析を用いるために説明付けされる。二組のセット、すなわち、DHS+62およびDHS+55は、有意性を示したものの、rs1427407およびrs7606173で条件付けすると、有意性は消失し、低頻度/まれな変種と一般的なSNPとのLDは低いことが示された(表5)。本発明者らは、極度のHbF表現型を有する個体88例においてこれらのDHSのサンガー法による再配列決定を行うことによっても、BCL11AのDHSにおける低頻度でまれな配列変種がSCD対象のHbFレベルに影響を及ぼしていることを示す証左をつかめなかった。 CSSCDにおけるrs1427407-rs7606173ハプロタイプ頻度は、T-G 24.5%、T-C 0.085%、G-C 42.3%、G-G 33.1%である。平均HbFレベルは、rs1427407-rs7606173 G-Cを有する213例の個体においては4.05%(SD3.10)であり、rs1427407-rs7606173 T-G/G-Tのヘテロ接合性を示す254例の個体においては7.08%(SD4.50)、rs1427407-rs7606173 T-Gを有する60例の個体では11.21%(SD4.37)である(図3C)。遺伝子型間のHbFレベルの比較のため、片側スチューデントt検定によりP値を決定した。分子ハプロタイピング 同じ染色体上の2つのヘテロ接合性SNPの場合には、可能な二相: A-B/a-b (モデル1)およびA-b/a-B (モデル2)が存在する。12 kbのBCL11Aイントロン2断片+52.0〜64.4 kb内のSNPについて、SNP対立遺伝子のPCR産物をクローニングし、SNP対立遺伝子の共分布を決定することにより、相の決定を行った。rs7569946およびrs1427407対立遺伝子(第2染色体上で30.1 kbだけ隔てられた)の相を決定するため、エマルジョンフュージョンPCRを、多少修正を加えて既述(24, 25)のように行った。フュージョンPCRは、同じ染色体の別々の部分から、関心対象の2つの領域を、単一の産物へ寄せ集める。油で囲まれた水性の微液滴を有するエマルジョン中で反応を行うことにより、圧倒的多数のアンプリコンが単一の鋳型分子に由来する。rs7569946およびrs1427407の両方についてヘテロ接合性であることが分かっている個体由来のゲノムDNAを、以下の100 i&l反応(終濃度を記載した)における鋳型とした: KODホットスタートDNAポリメラーゼ(14 U, Novagen, 71086)、KOD緩衝液(1X)、MgSO4 (1.5 mM)、dNTP (各0.2 mM)、rs7569946-Fおよびrs1427407-Rプライマー(各1 i&M)、rs7569946-Rプライマー(30 nM)、rs7569946-R-revcomp-rs1427407-F架橋内側プライマー(30 nM)、gDNA (200 ng)。100 i&l水性反応液を撹拌しながら200 i&l油相に滴下して、エマルジョンを作製した。2つの125 i&lエマルジョンアリコットを以下の条件の下で増幅させた: 95℃で2分; 95℃で20秒、60℃で10秒、70℃で30秒を45サイクル; 70℃で2分。ヘキサン抽出されたフュージョンPCR産物を、次のように25 i&lでのネステッドPCRに供した: KODホットスタートDNAポリメラーゼ(0.5 U)、KOD緩衝液(1X)、MgSO4 (1.5 mM)、dNTP (各0.2 mM)、rs7569946-ネステッド-Fおよびrs1427407-ネステッド-Rプライマー(各300 nM)、抽出されたフュージョンPCR産物(75 nl); 95℃で2分; 95℃で20秒、60℃で10秒、70℃で30秒を35サイクル; 70℃で2分。ネステッド産物はアガロースゲル電気泳動により、予想されたサイズの単一のバンドを構成することが確認された。精製された産物をZero Blunt PCR Cloningキット(Life Technologies, K2700-20)でクローニングした。フュージョンアンプリコンのサンガー法による配列決定により、可能な4配列: A-B、a-b、A-bおよびa-Bのクローンを数え上げた。各相の可能性を多項分布仮定に基づいて算出した(表6)。2つの配置の尤度比を、(モデル2と比べて)ハプロタイプモデル1に適合するデータの統計的有意性の指標として算出した。無限に迫る比率はモデル1を示唆し、1の比率は均衡を示唆し、ゼロに迫る比率はモデル2を示唆する。パイロ配列決定 健常CD34+細胞ドナーをスクリーニングし、rs1427407についてヘテロ接合性のドナー5名を特定した。これらのCD34+細胞をエクスビボでの赤血球系の分化に供した。クロマチンを単離し、ChIPをGATA1およびTAL1抗体で行った。GATA1またはTAL1沈降材料と比べてインプットクロマチンをパイロ配列決定に供して、rs1427407の対立遺伝子バランスを決定した。健常CD34+ドナーをスクリーニングし、rs1427407-rs7606173 G-C/T-Gハプロタイプについてヘテロ接合性のドナー3名を特定した。これらのCD34+細胞をエクスビボでの赤血球系の分化に供した。相補性DNA (cDNA)およびgDNAをパイロ配列決定に供して、rs7569946の対立遺伝子バランスを決定した。 PCR条件は次の通り: 2×HotStarTaq master mix (QIAGEN, 203443)、MgCl2 (終濃度3 mM)、鋳型DNA (0.1〜1 ng)およびSNP特異的なフォワードおよびリバースビオチン化プライマー(各200 nM)。PCRサイクリング条件は以下であった: 941/4C 15分; 45サイクルの94℃で30秒; 60℃で30秒; 72℃で30秒; 72℃で5分。各ペアの1つのプライマーをビオチン化した。ビオチン化プライマーを含んだPCR産物鎖を、ストレプトアビジンビーズに結合させ、特異的な配列決定プライマーと混ぜ合わせた。プライミングされた一本鎖DNAを配列決定し、Pyrosequencing PSQ96 HS System (QIAGEN Pyrosequencing)を製造元の使用説明書にしたがって用い遺伝子型を解析した。トランスジェニックマウス エンハンサーレポーター構築物pWHERE-Destは、William Pu博士から入手した。既述(46)のようにpWHERE (Invitrogen, pwhere)から改変され、この構築物は、上流MCSの位置にGatewayデスティネーションカセットを有する最小のHsp68最小プロモーターによって駆動されるCpGを含まないlacZ変種に隣接するマウスH19インシュレーターを有する。エンハンサー断片は、マウスgDNAから増幅され、BPクロナーゼ(Invitrogen, 11789020)によりpDONR221ベクター(Invitrogen, 12536-017)へ組み入れられ、LRクロナーゼ(Invitrogen, 11791020)でpWHERE-Destへ組み入れられた。プラスミドをPacIで消化して、ベクター骨格を除去した。lacZエンハンサーレポーター断片をゲル電気泳動によって精製し、その後、Wizard DNA Clean-Up System (Promega, A7280)を用いて濃縮した。トランスジェニックマウスをFVB受精卵への前核注射により作製した。およそ10 ng/μlのDNA溶液を一連の注射に用いた。CD-1の雌を注射胚のレシピエントとして用いた。10.5〜14.5 dpcの胚を代理母から解剖し、既述のようにホールマウントおよび組織X-gal染色を行った(47)。X-gal染色されたサイトスピンをNuclear Fast Red (Vector Laboratories, H-3403)で対比染色した。尾部をPCRジェノタイピングに用いた。動物手順は、小児病院の動物実験委員会(Children's Hospital Instititutional Animal Care and Use Committee)によって承認された。ヒト赤血球系前駆細胞エンハンサーアッセイ法 推定上のエンハンサーエレメントを含んだゲノムDNA断片を、記述のように、pLVX-Puro (Clontech, 632164)へ最小TKプロモーターおよびGFPレポーター遺伝子の上流にクローニングした(39)。FuGene 6試薬(Promega, E2691)を製造元のプロトコルにしたがって用い、293T細胞にトランスフェクションを行った。培地を24時間後に、2%ペニシリン-ストレプトマイシンを補充したSFEM培地に交換し、36時間後に、上清を回収し、ろ過した。CD34+細胞由来の赤血球系培養物に、既述のようにスピン感染法によって増殖4および5日目にレンチウイルスを形質導入した(39)。細胞を2回目の感染から24時間後に赤血球系分化培地に再懸濁した。ピューロマイシン1 μg/mlによる選択を感染から48時間後に始めた。形質導入された細胞を、GFP平均蛍光強度についてフローサイトメトリーにより分化培地中で5日後に解析した。フローサイトメトリー 生細胞を7-アミノアクチノマイシンD (7-AAD, BD Pharmingen, 559925)の排除によってゲーティングした。骨髄(赤芽球の場合)および脾臓(リンパ球の場合)懸濁物を若年成体トランスジェニックマウスから単離した。成熟赤血球の低張溶解後、生細胞(7-AAD-)をCD71-ビオチン(BD, 557416)、ストレプトアビジン-APC (BD, 554067)、Ter-119-PE (BD, 553673)、CD19-APC (BD, 550992)またはCD3-PE (BD, 100308)による染色に基づき選別した。CD71+Ter119+、CD19+およびCD3+選別集団をサイトスピンおよびRNA単離に用いた。TALENを介した染色体欠失 転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)は、TSSに対して+50.4 kb (5'部位と名付けた)および+60.4 kb (3'部位)の部位でマウスBcl11aイントロン2に切断を生じるようにデザインされた。TALENは以下の配列を認識する。Gを認識するようにNN RVDを用いGolden GateクローニングでTALENを合成した(48)。合成されたDNA結合ドメインを、既述されたFokIヌクレアーゼドメイン、A152 N末端ドメインおよび+63 C末端ドメインとともにpcDNA3.1 (Invitrogen, V790-20)へクローニングした(49)。pmaxGFP (Lonza) 0.5 &gとともに4つのTALENプラスミドのそれぞれ2.5 &gを、エレクトロポレーションにより製造元のプロトコル(Lonza, VCA-1005)にしたがって2×106個のMELまたはプレB細胞に送達した。GFP陽性細胞を48時間後にフローサイトメトリーによって選別した。細胞を96ウェルプレート中に限界希釈によって播種し、個々のクローンを単離した。クローンをgDNAのPCRによりスクリーニングして、5'部位の上流および3'部位の下流からの短い産物の増幅を検出し、介在セグメントの欠失を示した。単一対立遺伝子性の欠失クローンを第2ラウンドのTALEN媒介性の欠失に供して、両対立遺伝子が欠失したクローンを得た。両対立遺伝子に欠失を有するクローンを、欠失された断片の中からの増幅がないことを検出することによって特定した。欠失頻度は対立遺伝子およそ50個につき1個であった。欠失をサザンブロッティングで確証した。ゲノムDNAをBmtIで消化した; 561 bpのプローブ(5'部位の上流のgDNAから増幅された)は野生型対立遺伝子由来の3.6 kbの断片およびA50.4-60.4欠失対立遺伝子由来の8.9 kbの断片とハイブリダイズする。RT-qPCRおよび免疫ブロッティング RNeasyカラム(Qiagen, 74106)を用いたRNA単離、iScript cDNA合成キット(Bio-Rad, 170-8890)を用いた逆転写、iQ SYBR Green Supermix (Bio-Rad, 170-8880)を用いたqPCRおよび免疫ブロッティングを記述(39)のように行った。マウス13-グロビンクラスタ遺伝子の場合、共通のプライマーペアは生体13-グロビン132および131を認識するが、独立のプライマーは胎児型13-グロビンεyおよび13H1を認識する。以下の抗体を免疫ブロッティングに用いた: BCL11A (Abcam, ab19487)、GAPDH (Santa Cruz, sc-25778)。結果 ゲノムワイド関連解析(GWAS)により、形質に共通して関連する種々の遺伝子変異が特定されてきた。そのような遺伝子変異は、多くの場合、調節DNA配列に局在している。調節配列の変異により実質的な遺伝性が説明可能であるとする仮説については、実験に基づく評価が殆ど行われてこなかった。本発明により、本発明者らは、胎児型ヘモグロビン(HbF)レベルと関連する一般的なBCL11A遺伝子変種が赤血球系エンハンサークロマチンシグナチャーを有する非コード配列であることを示す。この推定調節DNA配列に対して精細マッピングを行うと、モチーフを破壊する共通の変種が確認され、この変種により、転写因子結合能が低下し、BCL11A遺伝子発現が低下し、HbFレベルが上昇する。周囲の配列は、インビボにおいて、発達段階に特異的な、かつ、細胞系列に制限的なエンハンサーとして作用する。ゲノム工学により、このエンハンサーは、赤血球系BCL11Aの発現には必要であるが、赤血球系列以外では不要であることが示されている。このような結果から示されることは、GWASにより、適切な遺伝子発現に必須な原因エレメントに対し適度な影響を及ぼす機能的変種が明らかになることである。GWASにより特定したBCL11Aエンハンサーは、βグロビン障害に対して、有望な治療標的となる。 GWASは、ヒトの形質や疾患に関連する数千もの一塩基多型(SNP)を特定する上で多大な貢献を果たしてきた。しかし、遺伝的関連性から生物学的因果プロセスへと発展する際には、しばしば困難が伴う。課題として、個々の形質と関連する可能性がある相関性のある変種は(連鎖不均衡(LD)のために)数多く存在すること、変種と形質との関連は、多くの場合、エフェクトサイズが大きくないこと、多くの関連変種が非コード遺伝子に位置することなどが挙げられる。近年の全ゲノムクロマチンマッピング研究によって、GWASにより特定される変種の多くが調節DNAエレメントに存在することが明らかになり、多くの原因変種によって遺伝子調節が影響を受けている可能性が示唆されている。しかし、原因変種や原因エレメントの重要性を示す実験例は、これまでのところほとんど行われてこなかった。 HbFレベルに関するGWASの結果は、特筆に値するものである。HbFレベルに関与する遺伝性変種の50%は、3箇所の遺伝子座(HBB、HBS1L-MYBおよびBCL11A)における遺伝子変種により説明可能である。同じ遺伝子変種は、主要なβ異常グロブリン症である鎌状赤血球疾患およびβサラセミアの臨床的重症度とも関連性があるが、HbFがこれらの疾患の主要な疾患修飾因子であることから、この結果は驚くことではない。本発明者の研究室やその他の研究室で行われた研究により、BCL11AがHbFレベルの直接的な調節因子であることが明らかになっている。BCL11Aは、転写リプレッサーであって、βグロビン遺伝子クラスタに結合する多タンパク質複合体内に存在する。BCL11Aが構成的に欠失した場合には、胎児死亡やリンパ球産生障害が起こるが、BCL11Aの欠失が赤血球系細胞に特異的である場合には、胚および胎児の発達期におけるグロビン遺伝子のサイレンシングを阻害し、鎌状赤血球疾患のマウスモデルにおいて疾患による血液学的および病理的特徴を十分に抑制することができる。そのため、BCL11Aは、βグロビン障害の新規治療標的と考えられるようになった。BCL11Aの障害により生じる結果を理解することは、重要である。大規模な再配列決定の取り組みにも関わらず、ヒトBCL11Aコード配列の変種については、報告が行われていない。HbFレベルに関連するBCL11A変異は、BCL11Aの非コード領域に存在する。一般的な遺伝子変種により、BCL11A、HbFレベルおよびβグロビン障害の重症度がどのように影響を受けるかをさらに理解するために、HbF関連変異の役割について、詳細な検討を行った。赤血球系エンハンサー近傍にある形質関連変種 さまざまなGWASや精細マッピングによるフォローアップ研究が赤血球系細胞の形質(赤血球数や赤血球体積、ヘモグロビン濃度およびHbFレベルなどの表現型を含む)について行われた結果、ゲノムワイドな有意水準(p<5e-8)を満たす636種類の形質関連SNPが特定されている。これらのSNPは、ランダムSNPと比較して、プロモーター領域およびコード領域に多く認められたものの(図1)、SNPの大部分は、それ以外のゲノム領域に存在した。初代ヒト赤血球系前駆細胞に対して、包括的クロマチンプロファイリングを行った結果、特徴的なヒストン修飾およびDNaseI高感受性によって定義される遠位赤血球系エンハンサーの大規模なセットが特定された。非赤血球系形質関連SNP、一般的なジェノタイピングアレイにより見つかったSNPやランダムに並び替えを行ったSNPと比較して、GWASによる赤血球系SNPでは、エンハンサーとの共局在が認められた。赤血球系形質関連SNPの13.5%は、赤血球系エンハンサー内に直接入っており、これはランダムに並び替えを行ったエンハンサーの11.4倍(P<1×10-4)であり、それに対して非赤血球系形質関連SNPでは1.4%であり、1.4倍(P=0.0013)の頻度(enrichment)となっている。赤血球系形質関連SNPの多くは、赤血球系エンハンサーの近傍で発見されている(図1B)。赤血球系形質関連SNPの場合、赤血球系エンハンサーとの距離の中央値は、16.0キロ塩基(kb)であったのに対して、非赤血球系形質関連SNP、ジェノタイピングアレイSNPおよびランダムに並び替えを行ったSNPでは、それぞれ、238.0、392.6および482.4 kbであった。これらの結果からは、赤血球系形質に一般的に見られる変種は、かなりの割合で、赤血球系エンハンサー内またはその近傍に存在していることが示され、原因変種がコンテクストに依存した遺伝子調節に影響を及ぼすという仮説に合致した結果となっている。HbFのGWASによる赤血球系エンハンサーシグナチャーのマーク ヨーロッパ、アフリカおよびアジア人の血統を含め、6件のGWAS研究がHbFレベル(あるいは、相関性が高い形質であるF-細胞数)に関して行われた。それぞれの研究により、BCL11A形質関連変種が特定された。BCL11Aの変種により、形質の変動の約15%が説明可能と推定されている。形質と最も関連性が強い四種類のSNP(rs1427407、rs11886868、rs4671393およびrs766432)が特定された。これらのいわゆる「センチネル」SNPは、BCL11Aイントロン2内に、お互いから3 kbの範囲内に集合していた(図2A)。このセンチネルSNPを含むハプロタイプは、個々のSNPよりも、HbFとの関連性を詳しく説明できると考えられる。BCL11A遺伝子座の50種類のSNPおよびイントロン2の27種類のSNPは、HbFレベルとの関連性において、ゲノムワイド有意性(P<5×10-8)を満たしていた。 BCL11AのHbF関連SNPの分布とDNaseI感受性とを比較した。DNaseI感受性は、遺伝子発現調節能を有するクロマチン状態の指標である。ヒト赤血球系前駆細胞では、DNaseI高感受性を示す3つのピークが、HbF関連変種に隣接し、重なり合う形で、イントロン2に認められた(図2A)。これらのピークは、BCL11AのTSSからのkb距離に基づいて、DNaseI高感受性部位(DHS) +62、+58および+55と名付けられた。脳組織およびBリンパ球は、BCL11Aを高レベルで発現する2つの組織であり、Tリンパ球は、BCL11Aをほとんど発現しないが、これらの組織では、BCL11A遺伝子座に関して、特有のDNaseI感受性パターンが認められた。すなわち、形質関連SNPと重なり合うDNaseI高感受性領域は、ほとんど見られなかった(図2A)。 BCL11A遺伝子座周辺のクロマチンシグナチャーについて、さらに、クロマチン免疫沈降と超並列配列決定とを組み合わせた方法(ChIP-seq)により調べた。初代ヒト赤血球系前駆細胞のChIP-seq解析により、BCL11Aイントロン2の形質関連SNPと重なり合うエンハンサーシグナチャーを有するヒストン修飾が確認された。このシグナチャーには、H3K4melおよびH3K27acのマークは含まれていたが、H3K4me3およびH3K27me3のマークは認められなかった(図2A)。このエンハンサー領域には、マスター型赤血球系転写因子であるGATA1およびTAL1が結合する(図2A)。ChIP-qPCR実験により、BCL11Aイントロン2と結合するGATA1およびTAL1の明瞭な3ピークが確認され、それぞれのピークは赤血球系DHS内に含まれた(図2B)。 遠位調節エレメントに共通した特徴の一つは、発現を調節するプロモーターと長距離相互作用を示すことである。BCL11AプロモーターとBCL11A遺伝子座を含む250 kb断片(上流、下流および遺伝子間の配列を含む)との相互作用について調べた。最も強いプロモーターの相互作用は、赤血球系DHSおよび形質関連SNPを含むイントロン2の領域で観察された(図2C)。これらの結果により、この配列には調節能のあることが示される。調節性変種 重要な調節エレメントの調節を行うことにより、形質に関連する原因SNPが作用を及ぼしているとの仮説を立てた。そこで、三種類の赤血球系DHS +62、+58および+55について、鎌状赤血球疾患共同調査(CSSCD)から得られた1263件のDNAサンプルについて、詳細なSNPジェノタイピングを行った。この調査は、ゲノムDNAが利用可能であり、HbFレベルが既知であるアフリカ系アメリカ人鎌状赤血球疾患のコホートを対象としたものである。1000人ゲノムプロジェクトの参照集団であるCEU、YRIおよびASWから、および極度のHbF表現型を有するCSSCD個体88例のサンガー配列決定により、三種類のDHS内に位置する66個のDNA配列変種をdbSNPから特定した。26個のマーカーはジェノタイピングアッセイのデザインに適合せず、18個のマーカーは単型であった(表1および表2)。品質管理を行った後に残った1178例および20個の多型SNPについて、関連性試験を行った。一般的な変種(マイナー対立遺伝子頻度(MAF)>1%)の解析により、DHS+62のrs1427407がHbFレベルと最も強い関連性を示した(P=7.23×10-50、表1)。 本発明者らは、過去に、CSSCDに基づいて、BCL11A遺伝子座におけるHbF関連シグナルの精細マッピングを行い、rs4671393が強い関連性を示すことを示した。この研究において、rs1427407がインピュテーションされた。また、別の2種類のSNPであるrs766432およびrs11886868も、過去の研究において、HbFレベル(またはF-細胞数)と最も強い関連性を示すセンチネルSNPであることが判明していた。これらの四種類のセンチネルSNPの遺伝子型が判明している個体サブグループ(N=728)において、rs1427407の遺伝子型で条件付けすると、rs4671393、rs766432またはrs11886868による関連性は、有意差を示さなかった。その逆に、rs4671393、rs766432またはrs11886868で条件付けした場合、rs1427407は、有意に高い相関性を示した(表3)。それゆえ、rs1427407は、赤血球系DHSの中で、HbFと最も関連性が強いSNPであって、その他の既に記載したセンチネルSNPよりも、形質関連性をより良く説明する。 rs1427407に基づいて条件付けした場合、三種類のDHSに関し、HbFレベルとの有意な関連性は、完全に消失したわけではなかった(表1)。残っていた最も有意な関連性は、DHS+55のrs7606173に対してのものであった(P=5.11×10-10)。DHS+58のrs7599488は、以前に関連性が報告されていたが、この条件付け解析では、ほんの僅かに低く有意であった(P=1.71×10-9)。rs1427407およびrs7606173に基づいて条件付けした場合、有意性を示すSNPは認められなかった(表1)。全ゲノムジェノタイピングデータが利用可能な855例の個体に対して、交雑その他の交絡因子に関する主成分(PC)の調整を行ったところ、結果は同様であった(データ示さず)。rs1427407-rs7606173 T-Gハプロタイプは、HbFレベルと最も関連性が強いことが判明した。 頻度が低いまれな変種(MAF<5%)についても、DHS +62、+58および+55のそれぞれを被験セットとして用いて、HbFレベルとの関連性を調べた。二組のセット、すなわち、DHS+62およびDHS+55は、有意性を示したものの、rs1427407およびrs7606173に基づいて条件付けすると、有意性は消失し、低頻度/まれな変種と一般的なSNPとのLDは低いことが示された(表4)。以上のように、極度のHbF表現型を有するCSSCD個体88例にサンガー法による再配列決定を行うことによっても、BCL11AのDHSにおける低頻度でまれな配列変種がSCD患者のHbFレベルに影響を及ぼしていることを示す証左を得ることはできなかった。 rs1427407のSNPは、ChIP-seqおよびChIP-qPCRにより決定されたように、GATA1およびTAL1の結合ピーク内に入っている(図2Aおよび図2B)。このマイナーなT対立遺伝子は、half-E-box/GATA複合モチーフ[CTG(n9)GATA]に極めて類似した配列エレメントのGヌクレオチドを破壊する。このモチーフは、赤血球系細胞中でGATA1およびTAL1複合体により、高度な濃縮が行われることが、ChIP-seq実験により明らかにされている。rs1427407がメジャーなG対立遺伝子およびマイナーなT対立遺伝子のヘテロ接合型である個体から初代赤血球系細胞サンプルを採取し、ChIPに続いてパイロ配列決定を行った。本発明者らは、インプットDNAにおける対立遺伝子バランスは、同じであることを明らかにしたが、GATA1およびTAL1による両免疫沈殿クロマチンサンプルにおいて、G対立遺伝子への結合が、T対立遺伝子と比較して、約60:40とより頻繁であることが認められた(図3A)。 過去の研究により、高HbFと関連性が認められるrs4671393のA対立遺伝子は、ヒトリンパ芽球細胞系列におけるBCL11A発現との関連性が報告されている。本発明者らは、さらに規模が大きいリンパ芽球細胞系セットを解析したが、BCL11A遺伝子型と発現レベルとの間に、有意な関連性を再現することができなかった(データ示さず)。そのため、高HbFと関連性を示すrs1427407-rs7606173ハプロタイプは、赤血球系細胞に特有なコンテクストにおいて、BCL11Aの発現に影響を及ぼしていることが考えられた。一般的な同義SNPであるrs7569946は、BCL11Aのエクソン4内にあり、対立遺伝子発現マーカーとして利用することができる。rs1427407-rs7606173ハプロタイプおよびrs7569946の両方についてヘテロ接合型を示す三種類の初代ヒト赤血球系細胞サンプルを採取した。これらのサンプルに対して、エマルジョンフュージョンPCRによる分子ハプロタイピングを行った。ハプロタイピングにより、各サンプルにおいて、rs7569946のメジャーなG対立遺伝子は、低HbFと関連性を示すrs1427407-rs7606173 G-Cハプロタイプと相が同じであったことが示された。ゲノムDNAおよびcDNAについて、rs7569946のパイロ配列決定を行い、対立遺伝子バランスを決定した。ゲノムDNAでは、対立遺伝子は均衡していたが、cDNAでは、顕著な不均衡が認められ、低HbFと関連性を示すrs7569946のG対立遺伝子の発現が上昇していた(図3B)。高HbFに関連するrs1427407のT対立遺伝子は、half-E-box/GATAモチーフを破壊するが、この対立遺伝子は、赤血球系前駆細胞において、GATA1およびTAL1の結合能低下ならびにBCL11Aの発現低下と関連していることが、これらの結果から示された。高HbFと関連するrs1427407-rs7606173 T-Gハプロタイプがホモ接合型である60例の個体におけるHbFレベルの平均値は、11.21%であり、これに対して、低HbFと関連するrs1427407-rs7606173 G-Cハプロタイプがホモ接合型である213例の個体においては、4.05%であった(P=2.5×10-19)(図3C)。要約すると、以下の証左により、rs1427407はHbFの原因SNPであることが示される。すなわち、既知の変種の表現型と最も強い関連性を示すこと、これまでに報告されているセンチネルSNPで認められている関連性を説明できること、GATA1およびTAL1による結合に必要なモチーフに影響を及ぼすこと、そして、GATA1およびTAL1による結合ならびにBCL11Aの発現に関連することによる。しかし、この位置における変種は、通常のハプロタイプに関しては、BCL11A発現を強くかく乱するものではない。赤血球系発現に関するエンハンサーの充分性 調節形質に関連すると考えられるこれらのSNPが作用するコンテクストを理解する上で、シス調節エレメントが有する機能について研究を行った。本発明者らは、赤血球系DHSを含む約12 kbの領域(TSSから+52.0〜64.4 kb)のクローニングを行い、トランスジェニックレポーターアッセイによりエンハンサー能を調べた。このアッセイでは、インシュレーター配列で隔てた最小プロモーター(Hsp68)とレポーター遺伝子(lacZ)の上流に推定エンハンサー配列を配置した。構築物をマウス接合体に導入し、レポーター遺伝子の発現を発達期間中追跡した。内因性マウスBCL11Aは、発達段階にある中枢神経系において大量に発現したが、胎児肝臓における発現レベルは、これと比べてはるかに低かった。対照的に、トランスジェニック胚では、レポーター遺伝子の発現は、決定造血器官である胎児肝臓にほぼ限定され、中枢神経系においては、発現レベルは低かった(図4A)。 グロビン遺伝子の特徴的な特色は、発達段階におけるその調節である。ヒトの発達に際し、卵黄嚢由来のεグロビンは、妊娠初期に、胎児肝臓由来のγグロビンと切り替わる。出生後には、γグロビンが徐々に低下し、βグロビンが活性化する。マウスの個体発生の場合、遺伝子発現スイッチは、ただ一つである。妊娠中期に起こるこの移行期間中に、卵黄嚢由来の循環原始赤血球は、胚性グロビンεyおよびβH1を発現するが、胎児肝臓由来の決定赤芽球は、成体型グロビンβ1およびβ2を発現する。この発達スイッチと時期を同じくして、BCL11Aの発現が決定赤血球系列で起こるが、原始赤血球系列では、起こらない。BCL11A+52.0〜64.4レポーターマウスからは、安定したトランスジェニック系統が得られた。このようなマウスでは、E12.5において、循環赤血球はX-galで染色しないが、肝臓由来の赤芽球は明確に染色する(図4B)。E10.5に、lacZの発現は、胎児肝臓原基において僅かに認められたものの、胚の循環血液、胎盤または卵黄嚢には、認められなかった(図6A)。これらの結果により、GWASによりマーキングを行ったBCL11Aイントロン2の調節配列は、発達に必要な遺伝子の発現を十分に調節できることが示される。 造血コンパートメント内では、BCL11Aの発現は、赤血球系前駆細胞およびBリンパ球に認められる。若いトランスジェニック成体動物から赤血球系前駆細胞およびBリンパ球を単離し、lacZレポーター遺伝子の発現を調べた。脾臓Bリンパ球における内因性BCL11Aの発現レベルは、骨髄赤血球系前駆細胞と比較して、10.4倍高かった。しかし、lacZ発現は、赤血球系前駆細胞に限られており、Bリンパ球では認められなかった(図4C)。以上の結果により、これらの調節配列が赤血球系細胞に特異的であることが示される。 一連の欠失変異体を作成し、赤血球系エンハンサー活性に最低限必要となるエレメントについて精査した。中央のDHS+58を含む配列は、赤血球系エンハンサー活性を十分に示した。隣接する+62または+55エレメントのみを含む配列では、赤血球系遺伝子発現を誘導できなかった(図6B)。さらに、これらのDHSについて、初代ヒト赤血球系前駆細胞における遺伝子発現誘発能試験を行った。本発明者らは、前述のように最小TKプロモーターにGFPレポーターシステムを組み合わせて、レンチウイルスによる送達を行った。このレポーターアッセイにおいても同様に、DHS +58のみによって遺伝子発現が亢進したが、DHS +55あるいはDHS +62では亢進しなかった(図7)。赤血球系発現に関するエンハンサー要件 次いで、本発明者らは、BCL11Aおよびグロビン遺伝子が適切に発現する上で、これらの調節配列に必要となる要件を調べることとした。過去に発表されたマウス赤血球系細胞の包括的クロマチンプロファイリング結果に基づいて、Bcl11a遺伝子座を調べると、このイントロン2領域には、オルソロガスエンハンサーのシグナチャーであって、H3K4melおよびH3K27acが存在し、H3K4me3およびH3K27me3が存在せず、かつ、GATA1およびTAL1によって占められるシグナチャーがあることが確認された(図8)。さらに、これらの配列には、赤血球系細胞に特異的なDNaseI高感受性が認められた。ヒト赤血球系細胞のDHS +62、+58および+55のそれぞれについて、特に、DHS +62および+55には、進化に伴う配列保存を示す証左が認められた。これらのオルソロガスな調節配列に関し、BCL11Aの発現に必要とされる要件を定めるため、マウス赤白血病細胞系列(MEL)を用いた。これらの細胞は、適切な成体期グロビン遺伝子発現パターンのためにBCL11A発現に依存する。配列特異的なヌクレアーゼにより、染色体に小さな欠失を生じさせることができる。赤血球系エンハンサーのクロマチンシグナチャーを有する10 kbのオルソロガスBcl11aイントロン2配列を切断して、二重鎖の切れ目を作るために、TALENを合成した。クローンに対して、NHEJ修復のスクリーニングを行い、両対立遺伝子に切断が生じた三種類のクローンを分離した。PCRおよびサザンブロッティングにより、クローン内のイントロン断片に切断が生じたことが確認された(図9)。サンガー法による配列決定によって特定した切断点は、TALENによる切断の後にNHEJ修復が行われたことを表す特徴を示していた(図10)。 両対立遺伝子に10 kbイントロン欠失を起こしたMEL細胞におけるBCL11Aの発現について、解析を行ったところ、BCL11A発現がベースラインレベルの約3%にまで劇的に低下することが確認された(図5A)。該欠失の上流、該欠失にまたがるまたは該欠失の下流のエクソン接合部を検出するプライマーペアも同様の低下を示した。10 kbエンハンサー欠失クローンにおいて、BCL11Aの発現は、ウエスタンブロッティングで検出されなかった(図5B)。MEL細胞は、通常、高レベルの成体型グロビン遺伝子β1およびβ2ならびに低レベルの胎性グロビン遺伝子εyおよびβH1を発現する。BCL11Aの10 kbエンハンサーが欠失した状態では、成体型グロビン遺伝子の発現は、約2〜5倍程度低減したが、胚性グロビン遺伝子に対しては、かなりの脱抑制が認められた。赤血球系オルソロガスBCL11Aエンハンサーが欠失した三種類のクローンにおいては、胎性εyと成体型β1/2の比は、平均で364倍増加した(図5C)。 BCL11Aの発現には、+50.4〜60.4 kbのイントロン配列が恒常的に必要であるか否かを明らかにするために、当該イントロン配列の欠失について、非赤血球系のコンテクストにおいて評価を行った。二組のTALENを導入して、NHEJによるΔ50.4〜60.4欠失が生じたクローンを作成するという同じ手法を、プロBリンパ球細胞系列に用いた。二種類のΔ50.4〜60.4クローンを分離し、PCR、サザンブロッティングおよびサンガー法による配列決定により確認した(図9および図10)。赤血球系細胞とは対照的に、Δ50.4〜60.4kbエンハンサー欠失プロB細胞クローンでは、RNAおよびタンパク質レベルにおいて、BCL11Aの発現が保持された(図5Aおよび図5B)。これらの結果により、オルソロガス赤血球系エンハンサー配列は、Bcl11a遺伝子座の転写が完全に行われるために必要ではないものの、赤血球系遺伝子発現に関しては必須であることが示される。 BCL11Aのイントロン2内のHbF関連SNPに重なる部分に、エンハンサークロマチンシグナチャーが発見された。この領域は、エンハンサーであることを示す種々の生化学的特徴を示しており、例えば、ヒストンマークであるH3K4melおよびH3K27acが存在すること、H3K4me3およびH3K27me3が存在しないこと、赤血球系TFであるGATA1およびTAL1による結合、赤血球系特異的なDNaseI高感受性部位があること、ならびに、3C法による長距離プロモーター相互作用が認められることが特徴として挙げられる。また、本発明者らは、DHSを指標として、この遺伝子座の精細マッピングを行い、SNPであるrs1424707が形質と最も関連性が強く、かつ、既に報告されている関連性が強いセンチネルSNPの形質関連性を十分に説明するものであることを明らかにした。さらに、本発明により、rs1427407は、赤血球系前駆細胞において、転写因子GATA1およびTAL1が結合するhalf-E-box/GATAモチーフに影響を及ぼすことが示された。しかし、rs1427407に基づいて条件付けした後でも、隣接するDHSに発生する他のいくつかのSNPについては、関連性が消失しないことから、ハプロタイプによる作用が示唆される。隣接するエレメントのSNP遺伝子型であって、調節機能を調節するSNP遺伝子型の組み合わせからなるハプロタイプは、協働作用により、BCL11A発現の最終的な表現型を示すことが明らかにされた。ヘテロ接合型ドナーを用いることによって、高HbF関連ハプロタイプがTF結合およびBCL11A発現の両方に、適度な影響を及ぼすことが示された。 これらの研究は、βグロビン症患者において、臨床的意義が認められる程度にHbFレベルを上昇するために必要となるBCL11A発現の変化を推定する上での助けとなる。高HbFのrs1427407-rs7606173 T-Gハプロタイプと低HbFのG-Cハプロタイプとで、BCL11A発現レベルの差は、1.7倍であり、T-Gホモ接合型とG-Cホモ接合型とで、HbFレベルは、それぞれ11.2%と4.1%であった(図3Bおよび図3C)。HbFレベルが20%を超える場合には、SCDによる有害な結果を防止できると推定されている。BCL11A発現レベルを数倍低下することによって、このHbF目標値に近づくことができると考えられる。 本研究においては、赤血球系エンハンサーに影響を及ぼすBCL11Aの調節性変種を明らかにした。形質関連SNPの多くは、非コード領域にあり、エフェクトサイズは、比較的小さい。このような特徴のゆえに、これらのSNPは臨床的価値に乏しいとみなされることもまれにある。本研究においては、個々の非コード変種により生じるエフェクトサイズが小さい場合であっても、その背景にある調節エレメントによるエフェクトサイズが大きい可能性が排除されないことを実証している。一例を挙げるならば、機能的SNPがその背後にある標的遺伝子BCL11Aの発現に対して及ぼす影響は比較的緩やかなものであるにもかかわらず、原因調節エレメントは、成人赤血球系前駆細胞におけるBCL11Aおよびグロビン遺伝子の発現に必須である。同じ調節エレメントは、非赤血球系列におけるBCL11Aの発現に際しては、必須ではない。保護的対立遺伝子について研究を行う目的は、その背後にある分子的機序を理解することにより、危険な状態にある人々において、この生物学的作用を再現することである。このように、今後多くの形質関連遺伝子多型が重要なコンテクスト特異的調節エレメントに見出されると考えられるが、その機能を解明することによって、単に調節を受ける遺伝子を特定するに留まらず、形質の背景にある生物学的機序に光を当てることとなる。例えば、BCL11Aの欠失は、ヘモグロビンスイッチの障害につながるのみでなく、神経形成およびリンパ球産生を障害する結果、胚死を招く。形質の原因調節エレメントおよび関連する調節ネットワークについて、さらに理解することによって、究極的には、新規治療標的を特定することができる。赤血球系前駆細胞において遺伝子破壊を行うことにより、BCL11Aの発現を阻害することができるとともに、その結果HbFの脱抑制が起こる一方で、非赤血球系列においてはBCL11Aの発現が保持されることに鑑みるならば、BCL11Aの赤血球系エンハンサーそれ自体が、ゲノム編集治療の有望な標的であるといえよう。参考文献 (表1)BCL11A DHS +62、+58または+55における一般的なSNPの関連解析解析に利用可能なCSSCDからの個体1178人からのBCL11A DHS +62、+58または+55における一般的な(MAF > 1%)SNPの関連解析。DHS, DNase I高感受性部位。MAF, マイナー対立遺伝子頻度。 (表2)BCL11A DHS +62、+58または+55内のSNPBCL11A DHS +62、+58または+55の範囲に入り、かつYRI、CEUおよびASW参照集団に対するdbSNPまたは1000 Genomesデータのいずれかに存在するSNP。ジェノタイピングを行ったSNPが特定されており、CSSCD内のMAFが記載されている。ゲノム座標hg19。 (表3)サンガー法による再配列決定によって見出されたさらなるマーカー極度のHbF表現型を有するCSSCDからの個体88人は、BCL11A内の3つのDHSのサンガー法による再配列決定を受けた。特定された新規のマーカーが記載されている。ジェノタイピングを行ったSNPが特定されており、CSSCD内のMAFが記載されている。ゲノム座標hg19。 (表4)4つのセンチネルSNPの条件付け解析HbFレベルと以前に関連付けられた4つの一般的なセンチネルSNPの条件付け解析{{44;20;19;36;37;515}}。CSSCDからの個体728名において全4つのジェノタイピングを行った。rs4671393に基づく条件付けの場合にはrs766432のPを算出することは不可能であった(逆の場合も同じ)。というのは、これらの2つのマーカーが、かなり強い相関を有するからである(r2=0.997)。rs1427407とrs766432との間のr2=0.848; rs1427407とrs11886868との間のr2=0.709; rs1427407とrs4671393との間のr2=0.850; rs766432とrs11886868との間のr2=0.761; rs11886868とrs4671393との間のr2=0.758。 (表5)頻度が低いまれな変種の解析頻度が低いまれな変種の解析結果(MAF<5%)。解析は3つの異なるセットとして個々のDHS +62、+58および+55を用いたセットに基づくSKAT-Oアルゴリズムによって行った。最終行の「全部」は、3つの領域をともに壊した場合の試験の結果を示す。 (表6)エマルジョンフュージョン・ハプロタイピングPCR配列決定rs7569946-rs1427407ハプロタイプのエマルジョンフュージョンPCR解析。フュージョンPCRを、rs7569946およびrs1427407の両方ともヘテロ接合性の3人の個々のドナー由来のエマルジョン中で行い、両方のSNPを包含するフュージョンアンプリコンを作製した。フュージョンアンプリコンをクローニングし、個々のクローンのサンガー法による配列決定を行った。各遺伝子型のクローンの数を記載してある。G-T/A-G相と比べてG-G/A-Tの尤度比を算出した。 (表7)レポーターアッセイ用の断片の座標エンハンサーレポーターアッセイにおけるクローニングされた推定上のエンハンサー断片の座標。第2染色体の座標をhg19およびBCL11A TSSに関連して記載してある。 (表8)オリゴヌクレオチド配列表示の実験において用いたオリゴヌクレオチド。 減少したBCL11A mRNAまたはタンパク質の発現を有する前駆細胞を産生するための方法であって、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上の細胞ゲノムDNAに結合する薬剤と、単離された前駆細胞を接触させ、それによってBCL11AのmRNAまたはタンパク質の発現を低減させる段階を含む、方法。 DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、単離された細胞を接触させる段階であって、それによって該DNAを標的とするエンドヌクレアーゼが、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、段階を含む、少なくとも1つの遺伝的改変を有する単離された遺伝子操作ヒト細胞を産生するための方法。 前記単離された前駆細胞または単離された細胞が、造血前駆細胞である、請求項1または2に記載の方法。 造血前駆細胞が、赤血球系列の細胞である、請求項3に記載の方法。 前記単離された前駆細胞または単離された細胞が、人工多能性幹細胞である、請求項1または2に記載の方法。 造血前駆細胞を、エクスビボまたはインビトロで接触させる、請求項3に記載の方法。 少なくとも1つの遺伝的改変が、欠失である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。 欠失が、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612の間の全領域を除去するか、または該領域の一部分を除去し、1つもしくは複数のDNAse 1高感受性部位(DHS)の破壊を引き起こす、請求項7に記載の方法。 請求項2〜8に記載の第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上に少なくとも1つの遺伝的改変を有する単離された遺伝子操作ヒト細胞。 請求項9に記載の単離された遺伝子操作ヒト細胞を含む組成物。 以下の段階を含む、細胞における胎児型ヘモグロビンレベルを増加させる方法:第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、単離された細胞を接触させる段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、該接触の前の該細胞と比べて、該細胞またはその後代において増加される、段階。 前記単離された細胞が、造血前駆細胞である、請求項11に記載の方法。 造血前駆細胞が、赤血球系列の細胞である、請求項11または12に記載の方法。 前記単離された細胞が、人工多能性幹細胞である、請求項11に記載の方法。 造血前駆細胞を、エクスビボまたはインビトロで接触させる、請求項12または13に記載の方法。 少なくとも1つの遺伝的改変が、欠失である、請求項11〜15のいずれか一項に記載の方法。 欠失が、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612の間の全領域を除去するか、または該領域の一部分を除去し、1つもしくは複数のDNAse 1高感受性部位(DHS)の破壊を引き起こす、請求項16に記載の方法。 以下の段階を含む、それを必要とする哺乳類において胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法:第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、該哺乳類において単離された造血前駆細胞を接触させる段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、該接触の前の発現と比べて、該哺乳類において増加される、段階。 それを必要とする哺乳類において胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法であって、請求項9に記載の単離された遺伝子操作ヒト細胞または請求項10に記載の組成物を該哺乳類に移植する段階を含む、方法。 BCL11A発現をゲノムレベルで破壊することにより細胞中の胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法および組成物が本明細書において提供される。胎児型ヘモグロビンレベルの再誘導による異常ヘモグロビン症の処置に関する方法および組成物も本明細書において提供される。 20150901A1633000663図1Aは、赤血球系の形質とP<5×10-8で関連することが以前に公表された、プロモーター、エクソン、イントロン、3'UTRおよび遺伝子間配列に対する636種類のSNPの分布を示す。比較用として、これらの領域の遺伝子分布を表示した。図1Bは、赤血球系の形質と関連する636種類のSNPと最も近傍に位置する赤血球系エンハンサーとの間の距離の累積分布をプロットしたグラフである。赤血球系エンハンサーとは、参照配列(Refseq)によりアノテーションされた遺伝子のTSSから2 kb超離れた配列であって、DNase I高感受性を有し、H3K4melに加え、H3K27acまたはH3K9acが存在し、かつ、H3K4me3およびH3K27me3が存在しない配列として定義した。636種類のランダムに並び替えた非赤血球系形質関連SNP(GWASデータベースより)、Affy6.0ジェノタイピングアレイによるSNP、またはランダムSNPの50セットに関しても、距離(平均±SD)を示した。図2Aは、CD34+細胞由来の赤血球系前駆細胞により行った、H3K27me3、H3K4me3、H3K4mel、H3K27ac、GATA1、TAL1およびPolIIに対する抗体を用いたChIP、続く超並列配列決定を示す。赤血球系前駆細胞、胎児脳ならびにBおよびTリンパ球から単離した核に対してDNase I処理を行い、切断部位を超並列配列決定により決定した。HbF関連SNPには、HbFレベルまたはF-細胞数とP<5×10-8で関連するSNP、および所与のGWASにおいてHbFまたはF-細胞数と最も強い関連性を有するセンチネルSNPが含まれる。隣接する3種類の赤血球系DHSは、BCL11AのTSSからの距離(kb)に基づいて、+62、+58および+55と表示する。図2Bは、初代ヒト赤血球系前駆細胞のBCL11Aイントロン2におけるChIP-qPCRを、1%インプットクロマチンに対して正規化して示す。図2Aに示したDHS+62、+58および+55について、灰色バーで示す。比較用として、陰性対照(GAPDH、OCT4)および陽性対照(βグロビンLCR HS3、αグロビンHS-40)の遺伝子座における濃縮度を示す。図2Cは、初代ヒト赤血球系前駆細胞においてBCL11Aプロモーターをアンカーとして用いてBCL11A遺伝子座にわたって行われた、染色体高次構造捕捉(chromosome conformation capture)を示す。相互作用頻度は、LCR-HBB相互作用に対して正規化してある。図3Aは、ヘテロ接合性の個体を特定するために、健康な匿名ドナーから得られた造血幹/前駆細胞について、rs1427407のジェノタイピングを行ったことを示す。5人のドナーを特定した。造血幹/前駆細胞に対して、赤血球系分化培養を行った。赤芽球からクロマチンを単離し、GATA1またはTAL1により免疫沈降を行った。ChIPのDNAまたはインプットDNAに対して、パイロ配列決定反応を行い、rs1427407のG対立遺伝子の相対量を定量した。図は、それぞれ出現順に、SEQ ID NO: 197および198を開示する。図3Bは、rs1427407-rs7606173ハプロタイプおよびrs7569946がヘテロ接合性である個体を特定するために、健康な匿名ドナーから得られた造血幹/前駆細胞について、rs1427407、rs7606173およびrs7569946のジェノタイピングを行ったデータを示す。3人のドナーを特定した。ハプロタイピングにより、rs7569946のG対立遺伝子は、それぞれrs1427407のG対立遺伝子およびrs7606173のC対立遺伝子と同じ染色体上に存在することが示された。造血幹/前駆細胞に対して、赤血球系分化培養を行った。RNAおよびゲノムDNAを単離し、逆転写によりcDNAを生成した。ペアリングを行ったgDNAおよびcDNAサンプルに対して、パイロ配列決定反応を行い、7569946のG対立遺伝子の相対量を定量した。図3Cは、CSSCDコホートにおけるrs1427407-rs7606173ハプロタイプについての平均HbFレベルを示す。平均HbFレベルは、rs1427407-rs7606173 G-Cを有する213例の個体においては4.05%(SD3.10)であり、rs1427407-rs7606173 T-G/G-Tのヘテロ接合性を示す254例の個体においては7.08%(SD4.50)、rs1427407-rs7606173 T-Gを有する60例の個体では11.21%(SD4.37)であった。P値は、片側スチューデントt検定によるものである。CSSCDコホートにおけるハプロタイプ頻度は、TGが24.5%、TCが0.085%、GCが42.3%、GGが33.1%であった。H19インシュレーターエレメントに隣接する最小Hsp68プロモーターとlacZレポーター遺伝子の上流にクローニングした、DHS+62、+58および+55を含むBCL11Aイントロン2の12.4 kb断片(TSSから+52.0〜64.4 kbを含む)のデータを示す。一細胞の段階で核注入を行い、一過性のトランスジェニックマウス胚を作製した。図4Aは、X-galで染色したE12.5の一過性のトランスジェニック胚を示す。図4Bは、E12.5の安定なトランスジェニック胚から採取した末梢血および肝臓から単離した細胞懸濁液を示す。サイトスピンの染色には、X-galを用い、Nuclear Redにより対比染色を行った。図4Cは、若く安定したトランスジェニック成体から単離および選別した、骨髄赤芽球(CD71陽性/Ter119陽性)および脾臓リンパ球(Bリンパ球はCD19陽性、Tリンパ球はCD3陽性)のデータを示す。細胞に対してX-gal染色を行った、または、RNA単離の後RT-qPCRを行った。遺伝子発現は、GAPDHに対して正規化し、Tリンパ球との比較により表示した。Tリンパ球は、BCL11AもlacZも発現しない。+50.4〜+60.4 kbの10 kbのオルソロガスBCL11Aイントロン2赤血球系エンハンサーの一端にDSBを作製するよう各々デザインされた二組のTALENを用いてトランスフェクションを行ったマウス赤白血病(MEL)細胞およびプロBリンパ球細胞を示す。両対立遺伝子において当該10kb断片を欠失したクローン(Δ50.4〜60.4と称す)を単離した。図5Aは、イントロン2の上流の、イントロン2にまたがる、およびイントロン2の下流の配列を認識するプライマーペアを用いて行った、Bcl11aのRT-qPCRを示す。図5Bは、抗BCL11A抗体によるΔ50.4〜60.4の免疫ブロットを示す。図5Cは、Δ50.4〜60.4MELクローンにおけるグロビン遺伝子発現を示す。共通のプライマーペアでは、成人型βグロビンであるβ2およびβ1を認識し、個別のプライマーにより、胚性βグロビンであるεyおよびβH1を認識した。lacZレポーター構築物を注入したマウス接合体前核を示す。E12.5にトランスジェニック胚を単離した。胚に対し、lacZを用いたPCRによりジェノタイピングを行った。胎肝臓のX-gal染色を有するトランスジェニック胚の割合を記録した。最小TKプロモーターおよびGFPを有するエンハンサー構築物の中にクローニングした1〜2 kb配列断片を示す。エンハンサーレポーター構築物は、レンチウイルスベクターにより、初代ヒト赤血球系前駆細胞に送達した。形質導入した細胞は、ピューロマイシン抵抗性により選別した。GFP蛍光強度の平均値を測定した。Bcl11aのイントロン2においてオルソロガスなエンハンサーシグナチャーを有するマウス赤血球系細胞のクロマチンプロファイリングに関するデータを示す。マウスのトラックは、以前に公表された包括的マウス赤血球系クロマチンプロファイリングから取得し、ヒストン修飾およびDNase I切断ならびにGATA1およびTAL1を用いたChIP-seqデータも同様である。点線で示した長方形部分は、TALENによる欠失の対象となるΔ50.4〜60.4エレメントを規定するオルソロガスなエンハンサーシグナチャーの境界を示す。図9Aは、本発明において用いたTALENによるゲノム工学方略の図である。TALENは、配列特異的なヌクレアーゼである。一つはBcl11aの+50.4に、およびもう一つは+60.4に、二重鎖の切れ目が生じるように、二組のTALENを作製した。介在する10 kb断片が切り取られるとともにNHEJによる修復が行われた2つのDSBを有するクローンを単離した。10 kbの欠失の内部および欠失をまたがる5'プライマーおよび3'プライマーを用いて、PCRによるクローンのスクリーニングを行った。図9Bは、HindIIIにより消化されたΔ50.4〜60.4クローンのゲノムDNAについてのサザンブロッティングを示す。これらのクローンには、想定したとおり対立遺伝子が除去されており、除去されていない対立遺伝子はなかったことが確認された。Δ50.4〜60.4クローンからのPCR産物のサンガー法による配列決定を示す。TALENの左右の5'(+50.4)および3'(+60.4)側認識配列ならびに介在するスペーサーを示す。一部の対立遺伝子は、それぞれの消化されたスペーサー配列の末端が直接結合した証左を示していたが、他の対立遺伝子では、さらに数百のヌクレオチドが欠失していたことが示された。MELクローン番号1およびプロBクローン番号2からは、それぞれ1個の対立遺伝子が単離されたのみであった。図は、上から下へそれぞれ出現順に、SEQ ID NO: 199〜215を開示する。CSSCDからの個体1,178例から得られた、BCL11AのDHS +62、+58および+55内の38種類の変種に関する遺伝子型データを示す。一般的な(MAF>1%) SNP (n=10)のうち、HbFレベルと最も強い関連性を示したものは、rs1427407に基づく条件付け解析を行う前では、(rs1427407)であり、行った後では、(rs7606173)であった。SNP座標は、第2染色体、ビルド番号19。BCL11AにおけるHbF関連解析を示す。CSSCDからの個体1,178例から得られた、BCL11AのDHS +62、+58および+55内の38種類の変種に関する遺伝子型データを示す。センチネルSNPとは、過去のGWAS(7〜12)において、HbFレベルまたはF-細胞と最も強い関連性を有するものである。これらのSNPは、3つのDHS +62、+58および+55の表示とあわせてBCL11Aのイントロン2に対して示される。A1633002713 メガヌクレアーゼは、4つのファミリー: LAGLIDADG(SEQ ID NO: 1)ファミリー、GIY-YIGファミリー、His-CysボックスファミリーおよびHNHファミリーに一般に分類される。これらのファミリーは、触媒活性および認識配列に影響を及ぼす構造モチーフによって特徴付けられる。例えば、LAGLIDADG(SEQ ID NO: 1)ファミリーのメンバーは、保存されたLAGLIDADG(SEQ ID NO: 1)モチーフの1つまたは2つのコピーのいずれかを有することによって特徴付けられる(Chevalier et al. (2001), Nucleic Acids Res. 29(18): 3757-3774を参照のこと)。単一コピーのLAGLIDADG(SEQ ID NO: 1)モチーフを有するLAGLIDADG(SEQ ID NO: 1)メガヌクレアーゼは、ホモ二量体を形成するが、2コピーのLAGLIDADG(SEQ ID NO: 1)を有するメンバーは単量体として見出される。同様に、GIY-YIGファミリーメンバーはGIY-YIGモジュールを有し、これは70〜100残基長であり、4つの不変残基を有する4つまたは5つの保存配列モチーフを含み、このうちの2つが活性に必要とされる(Van Roey et al. (2002), Nature Struct. Biol. 9: 806-811を参照のこと)。His-Cysボックスメガヌクレアーゼは、数百個のアミノ酸残基を包含する領域にわたって高度に保存された一連のヒスチジンおよびシステインにより特徴付けられる(Chevalier et al. (2001), Nucleic Acids Res. 29(18): 3757-3774を参照のこと)。NHNファミリーの場合、そのメンバーは、アスパラギン残基によって取り囲まれた二組の保存ヒスチジンを含んだモチーフにより定義される(Chevalier et al. (2001), Nucleic Acids Res. 29(18): 3757-3774を参照のこと)。メガヌクレアーゼの4つのファミリーは、保存された構造エレメントそして、結果的に、DNA認識配列特異性および触媒活性に関してお互いに広く異なっている。A1633003093TALENを介した染色体欠失 転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)は、TSSに対して+50.4 kb (5'部位と名付けた)および+60.4 kb (3'部位)の部位でマウスBcl11aイントロン2に切断を生じるようにデザインされた。TALENは以下の配列を認識する。Gを認識するようにNN RVDを用いGolden GateクローニングでTALENを合成した(48)。合成されたDNA結合ドメインを、既述されたFokIヌクレアーゼドメイン、A152 N末端ドメインおよび+63 C末端ドメインとともにpcDNA3.1 (Invitrogen, V790-20)へクローニングした(49)。pmaxGFP (Lonza) 0.5 &gとともに4つのTALENプラスミドのそれぞれ2.5 &gを、エレクトロポレーションにより製造元のプロトコル(Lonza, VCA-1005)にしたがって2×106個のMELまたはプレB細胞に送達した。GFP陽性細胞を48時間後にフローサイトメトリーによって選別した。細胞を96ウェルプレート中に限界希釈によって播種し、個々のクローンを単離した。クローンをgDNAのPCRによりスクリーニングして、5'部位の上流および3'部位の下流からの短い産物の増幅を検出し、介在セグメントの欠失を示した。単一対立遺伝子性の欠失クローンを第2ラウンドのTALEN媒介性の欠失に供して、両対立遺伝子が欠失したクローンを得た。両対立遺伝子に欠失を有するクローンを、欠失された断片の中からの増幅がないことを検出することによって特定した。欠失頻度は対立遺伝子およそ50個につき1個であった。欠失をサザンブロッティングで確証した。ゲノムDNAをBmtIで消化した; 561 bpのプローブ(5'部位の上流のgDNAから増幅された)は野生型対立遺伝子由来の3.6 kbの断片およびA50.4-60.4欠失対立遺伝子由来の8.9 kbの断片とハイブリダイズする。A1633003233 rs1427407のSNPは、ChIP-seqおよびChIP-qPCRにより決定されたように、GATA1およびTAL1の結合ピーク内に入っている(図2Aおよび図2B)。このマイナーなT対立遺伝子は、half-E-box/GATA複合モチーフ[CTG(n9)GATA(SEQ ID NO: 6)]に極めて類似した配列エレメントのGヌクレオチドを破壊する。このモチーフは、赤血球系細胞中でGATA1およびTAL1複合体により、高度な濃縮が行われることが、ChIP-seq実験により明らかにされている。rs1427407がメジャーなG対立遺伝子およびマイナーなT対立遺伝子のヘテロ接合型である個体から初代赤血球系細胞サンプルを採取し、ChIPに続いてパイロ配列決定を行った。本発明者らは、インプットDNAにおける対立遺伝子バランスは、同じであることを明らかにしたが、GATA1およびTAL1による両免疫沈殿クロマチンサンプルにおいて、G対立遺伝子への結合が、T対立遺伝子と比較して、約60:40とより頻繁であることが認められた(図3A)。A1633003433 (表8)オリゴヌクレオチド配列表示の実験において用いたオリゴヌクレオチド。A1633000653 記述されるいずれかの処置方法のいずれかの態様において、異常ヘモグロビン症は鎌状赤血球貧血である。[本発明1001] 減少したBCL11A mRNAまたはタンパク質の発現を有する前駆細胞を産生するための方法であって、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612 (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上の細胞ゲノムDNAに結合する薬剤と、単離された前駆細胞を接触させ、それによってBCL11AのmRNAまたはタンパク質の発現を低減させる段階を含む、方法。[本発明1002] DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、単離された細胞を接触させる段階であって、それによって該DNAを標的とするエンドヌクレアーゼが、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、段階を含む、少なくとも1つの遺伝的改変を有する単離された遺伝子操作ヒト細胞を産生するための方法。[本発明1003] 前記単離された前駆細胞または単離された細胞が、造血前駆細胞である、本発明1001または1002の方法。[本発明1004] 造血前駆細胞が、赤血球系列の細胞である、本発明1003の方法。[本発明1005] 前記単離された前駆細胞または単離された細胞が、人工多能性幹細胞である、本発明1001または1002の方法。[本発明1006] 造血前駆細胞を、エクスビボまたはインビトロで接触させる、本発明1003の方法。[本発明1007] 少なくとも1つの遺伝的改変が、欠失である、本発明1001〜1006のいずれかの方法。[本発明1008] 欠失が、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612の間の全領域を除去するか、または該領域の一部分を除去し、1つもしくは複数のDNAse 1高感受性部位(DHS)の破壊を引き起こす、本発明1007の方法。[本発明1009] 本発明1002〜1008の第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上に少なくとも1つの遺伝的改変を有する単離された遺伝子操作ヒト細胞。[本発明1010] 本発明1009の単離された遺伝子操作ヒト細胞を含む組成物。[本発明1011] 以下の段階を含む、細胞における胎児型ヘモグロビンレベルを増加させる方法:第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、単離された細胞を接触させる段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、該接触の前の該細胞と比べて、該細胞またはその後代において増加される、段階。[本発明1012] 前記単離された細胞が、造血前駆細胞である、本発明1011の方法。[本発明1013] 造血前駆細胞が、赤血球系列の細胞である、本発明1011または1012の方法。[本発明1014] 前記単離された細胞が、人工多能性幹細胞である、本発明1011の方法。[本発明1015] 造血前駆細胞を、エクスビボまたはインビトロで接触させる、本発明1012または1013の方法。[本発明1016] 少なくとも1つの遺伝的改変が、欠失である、本発明1011〜1015のいずれかの方法。[本発明1017] 欠失が、第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612の間の全領域を除去するか、または該領域の一部分を除去し、1つもしくは複数のDNAse 1高感受性部位(DHS)の破壊を引き起こす、本発明1016の方法。[本発明1018] 以下の段階を含む、それを必要とする哺乳類において胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法:第2染色体の位置60,716,189〜60,728,612上の細胞ゲノムDNAを切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、DNAを標的とするエンドヌクレアーゼまたはDNAを標的とするエンドヌクレアーゼのコード配列を保有するベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、該哺乳類において単離された造血前駆細胞を接触させる段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、該接触の前の発現と比べて、該哺乳類において増加される、段階。[本発明1019] それを必要とする哺乳類において胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法であって、本発明1009の単離された遺伝子操作ヒト細胞または本発明1010の組成物を該哺乳類に移植する段階を含む、方法。A16330配列表1配列表


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