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タイトル:公表特許公報(A)_質量分析による逆トリヨードサイロニンの検出法
出願番号:2014544931
年次:2015
IPC分類:G01N 27/62


特許情報キャッシュ

バンクス,ジェイ.フレッド チョウ,ピーター ピー. マット,ノリヤ エム. JP 2015500473 公表特許公報(A) 20150105 2014544931 20121130 質量分析による逆トリヨードサイロニンの検出法 クエスト ダイアグノスティックス インヴェストメンツ インコーポレイテッド 505063050 大野 聖二 230104019 田中 玲子 100105991 松任谷 優子 100119183 北野 健 100114465 伊藤 奈月 100156915 梅田 慎介 100149076 金本 恵子 230111590 バンクス,ジェイ.フレッド チョウ,ピーター ピー. マット,ノリヤ エム. US 13/311,412 20111205 G01N 27/62 20060101AFI20141202BHJP JPG01N27/62 VG01N27/62 X AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC US2012067338 20121130 WO2013085818 20130613 32 20140718 2G041 2G041CA01 2G041DA02 2G041DA04 2G041DA05 2G041DA09 2G041DA13 2G041DA14 2G041DA16 2G041DA18 2G041FA10 2G041GA03 2G041GA09 2G041HA01 2G041KA01 2G041LA08関連出願の相互参照 本出願は、2011年12月5日に出願された米国出願第13/311,412号の、35U.S.C.§120に基づく利益を主張するものであり、その内容の全体は、参照により本開示に組み込まれる。 本発明は、逆トリヨードサイロニンの検出に関する。特定の態様では、本発明は、質量分析により逆トリヨードサイロニンを検出する方法に関する。 本発明の背景に関する以下の説明は、単に本発明を理解する上での一助として提供されるものであって、本発明に対する先行技術を説明または構成することを認めるものではない。 逆トリヨードサイロニン((2S)−2−アミノ−3−[4−(4−ヒドロキシ−3,5−ジヨードフェノキシ)−3−ヨードフェニル]プロパン酸)(rT3)は、トリヨードサイロニン(T3)の非活性異性体である。T3およびrT3は共に、下記のような脱ヨード酵素の作用を経たサイオキシン(T4)に由来する: T3およびrT3は共に、甲状腺ホルモン受容体に結合する。T3が結合すると、受容体は刺激を受け、したがって代謝活性が増大する。結合によってrT3は、T3とは異なり甲状腺ホルモン受容体を刺激しない。したがってrT3は、標的細胞の代謝活性を刺激せず、実際に受容体部位をT3活性から遮断する。 過剰なrT3は、T3結合の広範囲にわたる中断、逆T3優位と呼ばれる状態をもたらし得る。逆T3優位は、体温の低下をもたらし、多くの酵素の活動を遅くし、臨床的な症候群、多酵素機能不全を引き起こし、甲状腺機能低下症に見られる作用を生み出す。 さらに、T4をT3に変換しかつrT3をジヨードサイロニン(DIT)に変換する5’モノ脱ヨード化のプロセスは、絶食、栄養不良、管理不十分の糖尿病、外傷、手術、および全身病を含めた広く様々な健康状態において、阻害される。その結果、血清T3レベルが典型的には減少し、これらの状況においてrT3レベルはしばしば増加する。したがってT3とrT3との比は、臨床化学における甲状腺ホルモンおよび関連ある化合物の代謝および機能に関する重要な診断マーカーである。 T4、T3、および関連ある化合物(rT3を含む。)のアッセイが開発されており、甲状腺状態を評価するためにまたは治療投薬量を最適化するために使用されている。アッセイフォーマットとしては、ラジオイムノアッセイおよび質量分析が挙げられる。例えば、Hantsonらは、GC−MSを介した誘導体化甲状腺ホルモンの定量化について報告し(Hansen et al., J. Chromatogr. B (2004), 807:185-192);Zhangらは、SPE−ESI−MS/MSを介したヒト血清中のT3およびrT3の定量化について報告し(Zhang et al., J. Am. Soc. Mass Spectrom. (2005), 16:1781-86);Taiらは、SPE−HPLC−MS/MSを介した血清中のT3の定量化について報告し(Tai et al., Anal. Chem. (2004), 76:5092:96);Couldwellらは、ESI−MS/MSによる標準有機溶媒中のrT3の、断片化スペクトルなどの質量分光分析について報告し(Couldwell et al., Rapid Comm. Mass Spectrom. (2005), 19:2295-2304);WangおよびStapletonは、SPE−LC−ESI−MS/MSを介した、混ぜたウシ血清試料中のrT3の定量化について報告する(Wang and Stapleton, Anal Bioanal Chem (2010), 397:1831-39)。 本発明は、タンデム質量分析などの質量分析により、試料中の逆T3(rT3)の量を検出する方法を提供する。 一態様では、質量分析により、体液試料中のrT3の量を決定する方法が提供される。この態様の方法は、(a)体液試料からrT3をイオン化し、質量分析で検出可能な1種または複数のrT3イオンを生成することと、(b)rT3イオンの量を質量分析により決定することとを含む。1つまたは複数のrT3イオンの量を測定したら、決定されたrT3イオンの量を、体液試料中のrT3の量に関係付ける。本発明の幾つかの方法では、体液試料からのrT3を、イオン化前に固相抽出に掛けない。 幾つかの実施形態では、体液試料からのrT3を、イオン化前に液体クロマトグラフィーに掛ける。幾つかの実施形態では、液体クロマトグラフィーは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含んでなる。 幾つかの実施形態では、体液試料からのrT3は、イオン化される前にタンパク質沈殿によって濃縮される。幾つかの実施形態では、タンパク質沈殿は、液体クロマトグラフィーの前に実施される。幾つかの実施形態では、タンパク質沈殿は、体液試料と、この体液試料中に存在し得るタンパク質の少なくとも一部を沈殿させるのに十分な量の有機溶媒とを接触させることによって、実施される。幾つかの関連ある種の実施形態では、有機溶媒がメタノールを含んでなる。 幾つかの実施形態では、質量分析により体液試料中の逆T3(rT3)の量を決定する方法であって、体液試料からのrT3を含んでなる処理済み試料が生成されるように、体液試料を処理することを含んでなる方法が提供される。関連ある方法において、前記処理することは:i)得られる上清が、有機溶媒、および体液試料からのrT3を含むように、有機溶媒を添加することによって体液試料からタンパク質を沈殿させることと;ii)上清を逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)カラムに掛けることによって、上清中のrT3を精製することと、ここで、精製は、好ましくは上清を導入する直前にカラムに水溶液を導入することを含んでなり;iii)RP−HPLCカラムからrT3を溶出して、rT3を含む処理済み試料を生成させることとを含んでなる。次いでこの処理済み試料を上述のように分析し;即ち、処理済み試料中のrT3をイオン化することによって、質量分析により検出可能な1種または複数の逆T3イオンを発生させ;質量分析によって1種または複数のrT3イオンの量を決定し;検出されたrT3イオンの量を使用して、体液試料中のrT3の量を決定することにより、分析する。幾つかの実施形態では、有機溶媒はメタノールを含んでなる。幾つかの関連ある種の実施形態では、ステップii)で発生した上清は、少なくとも10%のメタノールを含んでなる。幾つかの態様では、体液試料からのrT3を、イオン化前に固相抽出に掛けない。 rT3含有試料の導入前に、水性プラグがRP−HPLCカラムに導入される実施形態では、試料の体積と水性プラグの体積との比が、約10:1から約1:10の範囲内であってよく;例えば約5:1から約1:5の範囲内であってもよく;例えば約1:1である。 幾つかの実施形態では、質量分析により検出可能な1種または複数のrT3イオンは、質量/電荷比が649.9±0.5、605.2±0.5、および127.1±0.5であるイオンからなる群から選択される。幾つかの実施形態では、イオンは、649.9±0.5および605.2±0.5の質量/電荷比であるイオンからなる群から選択される。 幾つかの実施形態では、質量分析は、タンデム質量分析を含んでなる。幾つかの関連ある種の実施形態では、質量分析により検出可能な1種または複数のrT3イオンは、質量/電荷比が649.9±0.5の前駆イオンと、質量/電荷比が605.2±0.5および127.1±0.5であるイオンの群から選択された断片イオンとを含んでなる。幾つかの実施形態では、断片イオンは、605.2±0.5の質量/電荷比を有する。 幾つかの実施形態では、体液試料は、ヒトから採取した血漿または血清などの、血漿または血清を含んでなる。幾つかの関連ある種の実施形態では、本明細書に記述される方法は、ヒトから採取した場合の血漿または血清試料中に存在するrT3の量を決定するのに使用されてもよい。 本明細書に開示される方法のある種の実施形態では、質量分析が負イオンモードで行われる。代替として、質量分析が正イオンモードで行われる。本発明の実施形態では、例えば大気圧化学イオン化(APCI)またはエレクトロスプレーイオン化(ESI)などの、各種のイオン化源を使用し得る。ある種の実施形態では、rT3が、負イオンモードのESIを用いて測定される。 幾つかの実施形態では、別々に検出可能な内部rT3標準を試料中に入れ、その量も試料中で決定する。これらの実施形態では、試料中に存在する内因性rT3、内部標準双方の全部または一部をイオン化して、質量分析計中に検出可能な複数のイオンを生成し、各々から生成した1種または複数のイオンを質量分析により検出する。 好ましい内部rT3標準は、13C6−rT3である。好ましい実施形態では、質量分析計で検出可能な内部rT3標準イオンは、m/z655.8±0.50、611.1±0.50、および127.1±0.50の負イオンからなる群から選択される。タンデム質量分析を利用する実施形態では、13C6−rT3イオンは、m/zが655.8±0.50である前駆イオンと、m/zが611.1±0.50である断片イオンとを含んでいてもよい。 好ましい実施形態では、rT3イオンの存在または量は、13C6−rT3などの基準物質との比較による、試験試料中のrT3の存在または量に関係する。 本明細書で使用する場合、別途明記しない限り、単数形「a」、「an」および「the」は、複数への言及を包含する。したがって、例えば「あるタンパク質」への言及は、複数のタンパク質分子を包含する。 本明細書で使用する場合、用語「精製」または「精製すること」とは、対象とする分析物(複数可)以外の物質を全て試料から除くことを指す訳ではない。代わりに、精製とは、対象とする分析物の検出を妨害する恐れのある試料中の他の成分に対して、対象とする1種または複数の分析物の量を濃縮する手順を指す。各種の手段による試料の精製により、1種または複数の妨害性物質、例えば、rT3の選定した親または娘イオンの質量分析による検出を妨害することも、しないこともある1種または複数の物質の相対的低減が可能になり得る。相対的低減は、この用語を使用する場合、精製すべき材料中に対象とする分析物と共に存在する任意の物質を、精製によって完全に除去することを要求してはいない。 本明細書で使用する場合、用語「試験試料」とは、rT3を含有し得る任意の試料を指す。本明細書で使用する場合、用語「体液」とは、個人の体から単離できる任意の液体を意味する。例えば、「体液」としては、血液、血漿、血清、胆汁、唾液、尿、涙、汗などが挙げられ得る。 本明細書で使用する場合、用語「クロマトグラフィー」とは、液体または固体の固定相の周りまたはその上を流れる際、各化学的構成要素が差動的に分布する結果、液体または気体に運ばれた化学的混合物をその各成分に分離する方法を指す。 本明細書で使用する場合、用語「液体クロマトグラフィー」または「LC」とは、流動性溶液が、微細物質のカラムまたはキャピラリー通路の中を均一に浸透する際、その液体の1種または複数の成分を選択的に遅延させる方法を意味する。その遅延は、この液体が固定相(複数可)に対して移動する際に起こる、1つまたは複数の固定相およびバルク液体(即ち移動相)間の混合物成分の分布から生じる。「液体クロマトグラフィー」の例としては、逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)、および高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)が挙げられる。 本明細書で使用する場合、用語「高速液体クロマトグラフィー」または「HPLC」とは、支持マトリックス上で、固定相、通常は高密度充填カラムの中を圧力下に移動相を強制的に通すことにより、分離度を高める液体クロマトグラフィーを指す。本明細書で使用される「超高速液体クロマトグラフィー」または「UPLC」または「UHPLC」(時々、「超高圧液体クロマトグラフィー」とも呼ばれる。)という用語は、伝統的なHPLC技法よりも高い圧力で(約>5000psi)実施されるHPLCを指し、より小さい粒径(約<5μm)のカラム充填材で実施してもよい。 本明細書で使用する場合、用語「高乱流液体クロマトグラフィー」または「HTLC」とは、分離を行う基礎として、アッセイ対象物質がカラム充填剤を通る際の乱流を利用する形態のクロマトグラフィーを指す。HTLCは、質量分析の前に、不特定の薬物2種を含有する試料を調製する際に適用されてきた。例えば、Zimmer et al., J Chromatogr A 854: 23-35 (1999)を参照されたい。HTLCがさらに説明されている米国特許第5,968,367号、第5,919,368号、第5,795,469号および第5,772,874号も参照されたい。当業者は、「乱流」を理解している。液体が徐々に滑らかに流れるとき、その流れは「層流」と呼ばれる。例えば、低流速でHPLCカラムの中を移動する液体は、層流である。層流では、液体粒子の運動は規則的であり、一般に粒子は、直線となって移動する。速度が増すと、水の慣性が液体摩擦力に打ち勝ち、乱流が生じる。不規則な境界に接していない液体は、摩擦で減速した、または凹凸表面により逸れた液体より「速く流れる」。液体が乱流となって流れているとき、渦および渦流(または渦巻)となって流れ、層流のときより「抵抗」が大きい。液流が、何時層流または乱流であるかを決定する際の補助に、多くの参考文献が利用できる(例えば、Turbulent Flow Analysis: Measurement and Prediction, P. S. Bernard & J. M. Wallace, John Wiley & Sons, Inc., (2000; An Introduction to Turbulent Flow, Jean Mathieu & Julian Scott, Cambridge University Press (2001))。 本明細書で使用する場合、用語「ガスクロマトグラフィー」または「GC」とは、試料混合物を蒸気化し、液体または粒子状固体からなる固定相を含んだカラムの中を移動するキャリアーガス(窒素またはヘリウムとして)の流れの中に注入し、固定相に対する各成分化合物の親和性に従って、その構成化合物に分離するクロマトグラフィーを指す。 本明細書で使用する場合、用語「大型粒子カラム」または「抽出カラム」とは、約35μmを超える平均粒子径を含んだクロマトグラフィーカラムを指す。これに関して使用する場合、用語「約」とは±10%を意味する。 本明細書で使用する場合、用語「分析用カラム」とは、分析物の有無または量の決定を可能とするのに十分である、カラムから溶離する試料の物質の分離が、行われるのに十分なクロマトグラフィー段数を有するクロマトグラフィーカラムを指す。このようなカラムは、さらなる分析用に精製試料を得るために、保持された物質を保持されていない物質から分離または抽出するという一般目的を有する「抽出カラム」とは、しばしば区別されている。これに関して使用する場合、用語「約」とは±10%を意味する。好ましい実施形態では、分析カラムは、直径が約1.5から約5μmの範囲内、例えば直径が約2.6μmの粒子を含有する。 本明細書で使用する場合、用語「オンライン」または「インライン」とは、例えば「オンライン自動化方式」または「オンライン抽出」において使用する場合、操作者の介入を必要とせずに行われる手順を指す。対照的に、本明細書で使用する場合の用語「オフライン」とは、操作者の手操作の介入を必要とする手順を指す。したがって、試料が沈殿してしまった後、上清をオートサンプラー中に手操作で添加した場合、沈殿および添加のステップは、その後のステップからオフラインである。本法の各種実施形態では、1つまたは複数のステップは、オンライン自動化方式で行い得る。 本明細書で使用する場合、用語「質量分析」または「MS」とは、質量により化合物を同定する分析法を指す。MSとは、質量電荷比または「m/z」に基づいてイオンを選別し、検出し、測定する方法を指す。MS技術は、一般に、(1)化合物をイオン化して、荷電化合物を形成することと、(2)荷電化合物の分子量を検出し、質量電荷比を計算することとを含む。該化合物は、適切な任意の手段によりイオン化し、検出し得る。「質量分析計」は、一般に、イオン化装置およびイオン検出器を備えている。一般に、対象とする1種または複数の分子はイオン化され、続いてそのイオンは、質量分析装置の中に導入され、そこで磁界および電界が相俟って、イオンは、質量(「m」)および電荷(「z」)に依存した空間経路を辿る。例えば、「表面からの質量分析(Mass Spectrometry From Surfaces)」と題する米国特許第6,204,500号、「タンデム質量分析用の方法および装置(Methods and Apparatus for Tandem Mass Spectrometry)」と題する同第6,107,623号、「質量分析に基づくDNA診断(DNA Diagnostics Based On Mass Spectrometry)」と題する同第6,268,144号、「分析物を脱離および検出するための表面強化した光不安定な結合および放出(Surface-Enhanced Photolabile Attachment And Release For Desorption And Detection Of Analytes)」と題する同第6,124,137号、Wright et al., Prostate Cancer and Prostatic Diseases 2: 264-76 (1999)およびMerchant and Weinberger, Electrophoresis 21: 1164-67 (2000)を参照されたい。 本明細書で使用する場合、用語「負イオンモードで操作する」とは、負イオンを生成し、検出する質量分析法を指す。本明細書で使用する場合の用語「正イオンモードで操作する」とは、正イオンを生成し、検出する質量分析法を指す。 本明細書で使用する場合、用語「イオン化」または「イオン化する」とは、1つまたは複数の電子単位に等しい正味電荷を有する、分析物イオンを生成するプロセスを指す。負イオンは、1つまたは複数の電子単位の正味負電荷を有するものであるが、正イオンは、1つまたは複数の電子単位の正味正電荷を有するものである。 本明細書で使用する場合、用語「電子イオン化」または「EI」とは、ガス相または気相の対象分析物を、電子流と相互作用させる方法を指す。電子の分析物との衝突で、分析物イオンが生成し、次いでそれを質量分析法に掛け得る。 本明細書で使用する場合、用語「化学イオン化」または「CI」とは、試薬ガス(例えばアンモニア)に電子衝撃を加え、試薬ガスイオンと分析物分子との相互作用により、分析物イオンを形成する方法を指す。 本明細書で使用する場合、用語「高速原子衝撃」または「FAB」とは、高エネルギー原子(しばしばXeまたはAr)のビームを不揮発性試料に衝突させ、試料中に含まれる分子を脱離させ、イオン化する方法を指す。試験試料は、グリセロール、チオグリセロール、m−ニトロベンジルアルコール、18−クラウン−6クラウンエーテル、2−ニトロフェニルオクチルエーテル、スルホラン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンなどの粘性液体マトリックス中に溶解している。化合物または試料に適当なマトリックスの選定は、経験的な処置である。 本明細書で使用する場合、用語「マトリックス支援レーザー脱離イオン化」または「MALDI」とは、不揮発性試料をレーザー照射に曝すことにより、試料中の分析物を、光イオン化、プロトン化、脱プロトン化およびクラスター分解などの各種イオン化経路によって、脱離させ、イオン化する方法を指す。MALDIの場合、試料は、分析物分子の脱離を促進するエネルギー吸収性マトリックスと混合する。 本明細書で使用する場合、用語「表面増強レーザー脱離イオン化」または「SELDI」とは、不揮発性試料をレーザー照射に曝すことにより、試料中の分析物を、光イオン化、プロトン化、脱プロトン化およびクラスター分解などの各種イオン化経路によって、脱離させ、イオン化する別の方法を指す。SELDIの場合、試料は、1種または複数の対象分析物を優先的に保持する表面に、通常結合している。MALDIと同様に、このプロセスでも、エネルギー吸収性材料を用いてイオン化を促進し得る。 本明細書で使用する場合、用語「エレクトロスプレーイオン化」または「ESI」とは、溶液を長さの短いキャピラリー管に沿って通過させ、管の末端に正または負の高い電位を印加する方法を指す。管の末端に到達する溶液は、溶媒蒸気中の微小液滴溶液のジェットまたはスプレーとなって蒸発する(霧化する)。この液滴ミストは、蒸発室の中を流れる。液滴が小さくなるにつれ、表面電荷密度は増加し、遂には、類似の電荷同士間の自然反発のために、イオンならびに中性分子も放出される。 本明細書で使用する場合、用語「大気圧化学イオン化」または「APCI」とは、ESIに類似の質量分析法を指すが、APCIでは、大気圧のプラズマ内で起こるイオン−分子間反応によりイオンを生成する。プラズマは、スプレーキャピラリーおよび対電極間の放電により維持される。次いで、イオンは、通常、差動排気された1組のスキマーステージの使用により、質量分析器の中へ抜き取られる。乾燥した予備加熱N2ガスの逆流を用いて、溶媒の除去を改善してもよい。APCIにおける気相イオン化は、極性のより低い種の分析にとって、ESIより有効になり得る。 本明細書で使用する場合の用語「大気圧光イオン化」または「APPI」とは、分子Mの光イオン化機構が、分子イオンM+を形成する光吸収および電子放射である質量分析の形態を指す。光子エネルギーは、通常イオン化ポテンシャルより僅かに高いので、分子イオンの解離が、よりし難くなる。多くの場合、クロマトグラフィーの必要性なしに試料の分析が可能になり得るので、相当程度に時間および経費が節約される。水蒸気またはプロトン性溶媒の存在下で、分子イオンは、Hを引き抜いてMH+を形成することができる。これは、Mが高いプロトン親和性を有する場合に、起こる傾向がある。M+およびMH+の和が一定であるので、これが定量正確度に影響することはない。プロトン性溶媒中の薬物化合物は、普通MH+として観察されるが、ナフタレンまたはテストステロンなどの非極性化合物は、普通M+を形成する。Robb, D.B., Covey, T.R. and Bruins, A.P. (2000):例えば、Robb et al.,「大気圧光イオン化:液体クロマトグラフィー−質量分析のためのイオン化法。(Atmospheric pressure photoionization: An ionization method for liquid chromatography-mass spectrometry)」Anal. Chem. 2000, 72(15): 3653-3659を参照されたい。 本明細書で使用する場合、用語「誘導結合プラズマ」または「ICP」とは、大部分の要素が原子化され、イオン化されるほどに十分高い温度で、試料が、部分イオン化ガスと相互作用する方法を指す。 本明細書で使用する場合、用語「電界脱離」とは、不揮発性の試験試料をイオン化表面上に配置し、強力な電界を用いて、分析物イオンを生成する方法を指す。 本明細書で使用する場合、用語「脱離」とは、表面からの分析物の除去および/または気相中への分析物の進入を指す。 本明細書で使用する場合、用語「選択的イオンモニタリング」とは、比較的狭い質量範囲内、通常は約1質量単位のイオンだけを検出する、質量分析装置の検出モードである。 本明細書で使用する場合、用語「多重反応モード」とは、時々「選択反応モニタリング」としても知られているが、前駆イオンおよび1つまたは複数の断片イオンを選択的に検出する、質量分析装置の検出モードである。 本明細書で使用する場合、用語「定量化下限」、「定量下限」または「LLOQ」とは、測定値が定量的に意味をもってくる点を指す。このLLOQにおける分析物の応答は、標準偏差(SD)が全許容誤差(TEa;LLOQの30%としてrT3に関して任意に設定された。)の3分の1未満である濃度で、識別可能で、個別的であり、再現性がある。 本明細書で使用する場合、用語「検出限界」または「LOD」とは、測定値が、それに伴う不確実性より大きい点である。LODは、ある値が、その測定に伴う不確実性を超えている点であり、ブランクの平均に、ブランクの標準偏差の4倍を加えた値として定義される。 本明細書で使用する場合、体液試料中のrT3の「量」とは、体液容量中に検出可能なrT3の質量を反映した絶対値を一般に指す。しかし、量とは、別のrT3量と比較した際の相対量も想定している。例えば、体液中のrT3の量は、対照、または正常に存在するrT3の正常レベルより大きい量の場合もある。 イオンの質量測定値は含めない定量的測定値に関して、本明細書で使用する場合の用語「約」とは、表示値プラスまたはマイナス10%を指す。質量分析装置は、所与の分析物の質量を決定する際、少し変動することがある。イオンの質量またはイオンの質量/電荷比に関する用語「約」とは、±0.50原子質量単位を指す。 上記した本発明の概要は限定的なものではなく、本発明の他の特徴および利点は、本発明の以下の詳細な説明、および特許請求の範囲から明らかとなろう。図1AおよびBは、試料導入の直前に水性プラグの導入をもたらす、HPLCポンプ構成の概略図である。水性溶媒を黒で示し、高有機溶媒含量の試料をグレーで示す。図1Aは、添加相(即ち、試料ループの添加)を示す。図1Bは、HPLCへの流体プラグの、順次導入を示す。図2AおよびBは、HPLC−MS/MSにより収集された、メタノールをベースにした試料中のT3およびrT3に関する例示的なクロマトグラムを示す図である。クロマトグラムは、試料100μLを導入する直前にHPLCに水性プラグを導入して(図2A)、および導入せずに(図2B)収集した。詳細を、実施例3で論じる。図3は、HPLC−MS/MSにより収集された、アセトンをベースにした試料中のT3およびrT3に関する例示的なクロマトグラムを示す図である。クロマトグラムは、試料100μLを導入する直前にHPLCに水性プラグを導入せずに収集した。詳細を、実施例3で論じる。図4AおよびBは、それぞれ、rT3および13C6−rT3(内部標準)の例示的なクロマトグラムを示す図である。詳細を、実施例5で論じる。図5は、25pg/mLから2000pg/mLのrT3を有する較正試料を分析することによって生成した、典型的な較正曲線を示す図である。詳細を、実施例6に記述する。図6は、定量下限(LLOQ)、検出限界(LOD)、およびブランク限界(LOB)の実験で生成したデータをプロットした図である。詳細を、実施例9に記述する。図7は、少なくとも約200ng/dLに対するrT3検出の線形性を示す図である。詳細を実施例10に記述する。図8AおよびBは、それぞれ、EDTA血漿および血清中のrT3定量の比較および差分プロットを示す図である。詳細を実施例11に記述する。図9AおよびBは、それぞれ、ヘパリン血漿および血清中のrT3定量の比較および差分値をプロットした図である。詳細を実施例11に記述する。図10AおよびBは、それぞれ、SST血清および血清中のrT3の定量の比較および差分プロットを示す図である。詳細を実施例11に記述する。発明の具体的な説明 本発明の方法は、試料中のrT3量を測定するために記載している。より具体的には、試料中のrT3を検出し、定量するために、質量分析法を記載している。本方法は、液体クロマトグラフィー(LC)、最も好ましくはHPLCまたはUPLCを利用して、選定した分析物の精製を行い、この精製を特有の質量分析(MS)法と組み合わせることにより、検査試料中のrT3を検出し、定量するハイスループットアッセイシステムを提供し得る。好ましい実施形態は、自動化rT3アッセイ用の大型臨床検査室における応用に特に良く適合している。提示される方法は、液体クロマトグラフィーの前に固相抽出を介した試料精製を必要とすることなく、実現される。 本発明の方法に使用する適切な試料としては、対象とする分析物を含有し得る任意の試料が挙げられる。幾つかの好ましい実施形態では、試料は、生物試料であり、即ち動物、細胞培養物、器官培養物などの任意の生物源から得られる試料である。ある種の好ましい実施形態では、試料は、イヌ、ネコ、ウマなどの哺乳動物から得られる。特に好ましい哺乳動物は、霊長類、最も好ましくはヒトの男性または女性である。特に好ましい試料としては、血液、血漿、血清、唾液、脳脊髄液または組織試料などの体液が挙げられる。このような試料は、例えば患者、即ち疾患または状態の診断、予後診断または治療のために臨床環境に現れる生きた人間、男性または女性から取得し得る。試料は、好ましくは患者から得られ、例えば血清または血漿である。 本発明は、rT3定量アッセイ用のキットを想定している。本発明のrT3定量アッセイ用のキットとしては、少なくとも1回のアッセイに十分な量の内部標準を含んだキットが挙げられ得る。通常、このキットには、rT3量を決定する測定アッセイに使用する包装試薬を用いるために、有形形態となって記録された(例えば、紙または電子媒体上に収められた)使用説明書も含まれよう。 本発明の実施形態に使用する較正およびQCのプールは、「除去処理済み」血漿または血清(rT3が除去処理された)、例えば、分析物除去処理、脱繊維質、および脱脂質を施した血漿/血清を用いて調製することができる。ヒトまたは非ヒトからの血漿または除去処理済み血清の供給源は全て、測定可能量の内因性rT3を含有していないことを確かめるために、チェックすべきである。質量分析のための試料調製 各種の方法、例えば液体クロマトグラフィー、ろ過、遠心分離、薄層クロマトグラフィー(TLC)、キャピラリー電気泳動などの電気泳動、イムノアフィニティー分離などのアフィニティー分離、酢酸エチル抽出およびメタノール抽出などの抽出法、およびカオトロピック剤の使用、または上記方法などの組合せなどの方法を使用して、質量分析の前に、試料中の他の成分(例えば、タンパク質)に対してrT3を濃縮し得る。 タンパク質沈殿は、試料、特に、血清または血漿などの生物試料を調製する好ましい一つの方法である。タンパク質沈殿を使用して、試料中の少なくとも一部のタンパク質を除き、上清中にrT3を残し得る。沈殿した試料を遠心分離することによって、沈殿したタンパク質から液体上清を分離してもよく;あるいは試料を、例えばガラス繊維フィルタに通してろ過することにより、沈殿したタンパク質を除去してもよい。次いで、生成した上清またはろ液は、直接質量分光分析に適用してもよいし、あるいは、液体クロマトグラフィーの後、質量分光分析に適用してもよい。 アセトン、メタノールなどのアルコール、または様々な酸性化剤など、様々な沈殿剤が当技術分野で公知である。ある種の実施形態では、例えばメタノールタンパク質沈殿などのタンパク質沈殿の使用は、高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)または他のオンライン抽出などの固相抽出(SPE)を、質量分析の前またはHPLCもしくはUPLCおよび質量分析の前にする必要性を除外し得る。 したがって幾つかの実施形態では、該方法は、(1)対象試料のタンパク質沈殿を行うことと、(2)SPEを使用せずに、LC−質量分析計上に直接上清を添加することとを含み得る。 その他の実施形態では、HTLCを単独でまたは1つもしくは複数の精製法と組み合わせて使用して、質量分析前にrT3を精製してもよい。そのような実施形態では、試料は、分析物を捕獲するHTLC抽出カートリッジを使用して抽出され、次いで、イオン化前に、第2のHTLCカラム上でまたは分析HPLCもしくはUPLCカラム上に溶出されクロマトグラフィー分析され得る。これらのクロマトグラフィー手順に関与するステップは自動化の流儀で連結され得るので、分析物の精製中に操作者が関与する必要を最小限に抑えることができる。この特徴は、時間および費用の節約をもたらし、操作者が誤る機会をなくすことができる。 幾つかの実施形態によれば、方法は、血清または血漿試料からのタンパク質沈殿を含む。これらの実施形態では、メタノール、アセトニトリル、イソプロパノール、アセトン、または硫酸亜鉛溶液など、血清または血漿からタンパク質を析出させる試薬を、内部標準と共に、試料からタンパク質を沈殿させるのに充分な量で試料に添加してもよい。例えばメタノールは、約1:1から約10:1の範囲内の比で;例えば約2:1から約5:1;例えば約3:1の比で、血清試料に添加してもよい。タンパク質が沈殿した後、次いで混合物を遠心分離してもよく、上清にはrT3が残される。次いで上清を収集し、さらに精製して、または精製せずに質量分光分析に掛けてもよい。 質量分析前に使用し得る試料精製の1つの追加の手段は、液体クロマトグラフィー(LC)である。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの液体クロマトグラフィーは、比較的遅い層流技術を利用する。従来のHPLC分析は、カラムを通る試料の層流を試料から対象分析物を分離する基礎とするカラム充填に依拠している。当業者であれば、このようなカラムにおける分離は拡散過程であり、それには、rT3との使用に適したHPLCの装置およびカラムを選択し得ることが理解されよう。クロマトグラフィー用カラムは、通常、化学成分の分離(即ち分画)を促進するために、媒体(即ち充填材料)を含んでいる。媒体は、微小な粒子を含み得る。粒子は、化学成分の分離を促進するために、多様な化学成分と相互作用する結合表面を含んでいる。一つの適切な結合表面は、アルキル結合表面などの疎水性結合表面である。アルキル結合表面としては、C−4、C−8、C−12またはC−18結合アルキル基が挙げられ、好ましくはC−18結合基が挙げられる。クロマトグラフィー用カラムは、(例えば、カップルSPEカラムから)直接または間接に試料を受入れる入口ポート、および分画試料を含んだ排出液を放出する出口ポートを備えている。 一実施形態では、試料は、カラムの入口ポートに添加され、溶媒または溶媒混合物で溶離され、出口ポートで放出され得る。対象分析物(複数可)を溶離するために、様々な溶媒モードを選択し得る。例えば、液体クロマトグラフィーは、勾配モード、定組成モードまたは多種(即ち混合)モードを用いて行い得る。クロマトグラフィーの間に、物質の分離は、溶離液(「移動相」の名でも知られている)の選定、溶離モード、勾配条件、温度などの変量により起こる。 ある種の実施形態では、ある分析物は、その対象分析物がカラム充填材により可逆的に保持される一方、他の1種または複数の物質は保持されない条件の下で、カラムに試料を適用することにより精製し得る。こうした実施形態では、対象分析物がカラムに保持される第1の移動相条件を採用し、続いて、非保持物質を洗い出した後、第2の移動相条件を採用して、カラムから保持物質を除くことができる。代替として、ある分析物は、その対象分析物が、他の1種または複数の物質と比較して差動的速度で溶離する移動相条件の下で、カラムに試料を適用することによっても精製し得る。このような手順により、他の1種または複数の試料成分に比して、1種または複数の対象分析物の量を濃縮し得る。 幾つかの実施形態では、HPLCまたはUPLCは、疎水性カラムクロマトグラフィーシステムで実施される。ある種の実施形態では、C18分析カラム(例えば、Phenomenex製のTMSエンドキャッピング分析カラムを備えたKinetex C18(粒径2.6μm、50×4.6mm)または均等物)を使用する。ある種の実施形態では、HTLCおよび/またはHPLCおよび/またはUPLCを、HPLCグレード0.1%ギ酸水溶液および100%メタノールを移動層として使用して、行う。 逆相HPLCは一般に、無極性固定相および水性の中程度に極性を帯びた移動相とで実施される。これらの条件下、大量の有機物またはアルコール溶媒含量を含有する、分析のために注入される試料は、有意な相互作用なしにカラムの固定相を通過し、カラム性能が不十分になる(即ち、分析物の保持が少なくかつピーク形状が不十分である。)。2つの戦略の一方を典型的には用いて、この作用を打ち消す。第1に、高含量の有機物またはアルコールを含む試料(アルコールタンパク質沈殿により発生したものなど)を乾燥し、主に水性の溶媒で再溶解してもよい。第2に、高含量の有機物またはアルコールを含んだ試料を非常に少容量使用して、有機物またはアルコールのそのような小さな絶対体積の作用が、試料体積に対する移動相の相対的体積によって大いに圧倒されることを期待してもよい。両アプローチとも、臨床実験室アッセイにとって著しい欠点がある。試料の乾燥および再溶解は、それがなければ自動化し得る手順に著しく時間および費用をかけるのに対し、非常に少容量の試料の使用は、カラムに導入される分析物の量が限られることによってアッセイ感度を低減させる恐れがある。 本発明は、上述の難点を克服する方法を提供する。高含量の有機物またはアルコールを有する試料の導入直前に逆相HPLCカラムに導入された水性またはほぼ水性の溶媒の「プラグ」は、そのような試料に関連した問題を回避することがわかった。本発明の方法は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%(v/v)の有機物もしくはアルコール、またはこれらの混合物を有する試料に適用することができる。幾つかの実施形態では、試料溶媒がメタノールである。典型的な市販の逆相HPLCカラムの場合、約10μLから1000μLの水性プラグの体積を、試料約10μLから1000μLの直前に導入してもよい。好ましくは、プラグの体積と試料の体積との比は、約5:1から約1:5の範囲であり;例えば約2:1から約1:2の範囲内;例えば約1:1である。各溶液の、適切な絶対的および相対的な体積は、試料の有機溶媒含量、試料中の分析物の濃度、カラム充填材、およびカラム体積などの変数と共に変わることになる。しかし、各溶液の適切な絶対的および相対的体積を決定することは、当業者の範囲内である。 当業者なら、様々な構成の配管およびポンプを使用して、HPLCカラムへの多数の溶液の順序立った導入を実現する、非常に数多くの方法があることが理解されよう。幾つかの実施形態では、所定の体積の試料ループを使用して、高含量の有機物またはアルコールを含む試料の導入前に、実質的に有機溶媒成分を持たないプラグ(即ち、純粋に水性溶媒成分を有するプラグ)など、水性プラグの順序立った導入を実現する。本明細書で使用される、「実質的に有機溶媒成分を含まない」という用語は、約20%(v/v)未満、あるいは約15%、10%、5%、1%、0.5%、または0.1%(v/v)未満の有機溶媒を含有する水溶液(水性プラグ)を指す。これらの実施形態において、試料ループは、当初は水性流体で容量まで充填される。次いで有機物またはアルコール含有試料の体積は、ループが有機物またはアルコール含有試料によって部分的にのみ占有されるように、一方で少なくともいくらかの水性流体がループ内に残るように、試料ループに導入される。次いで一連の弁およびポンプ、またはその他の配管構成要素を使用して、水性プラグの後に有機物またはアルコール含有試料を、試料ループからHPLCカラムへと向ける。図1Aおよび1Bは、動作中のそのようなシステムの概略図を示す。 分析物が第1のクロマトグラフィーカラムから溶出された後、1つまたは複数の追加のカラムでさらなるクロマトグラフィーに掛けてもよい。バルブおよびコネクター配管系を注意深く選定することにより、必要であれば2本以上のカラムを接続することによって、物質が、何ら手操作ステップを必要とせずにカラム間を通過するようにしてもよい。好ましい実施形態では、バルブおよび配管系の選定は、必要なステップを行うように予めプログラムされたコンピュータにより制御される。最も好ましくは、クロマトグラフィーシステムは、検出システム、例えばMSシステムにもこのようなオンライン方式で接続される。したがって、操作者は、オートサンプラー中に試料トレーを配置でき、残りの操作は、コンピュータ制御の下で行って、選定した全試料の精製および分析が実現される。質量分析による検出および定量 各種の実施形態では、試料中に存在するrT3は、当業者に公知の任意の方法によりイオン化し得る。質量分析は、質量分析計を用いて行われ、その中には分画試料をイオン化し、さらなる分析のために荷電分子を創出するためのイオン源が含まれる。例えば、試料のイオン化は、電子イオン化、化学イオン化、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、光子イオン化、大気圧化学イオン化(APCI)、光イオン化、大気圧光イオン化(APPI)、高速原子衝撃(FAB)、液体二次イオン化(LSI)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)、電界イオン化、電界脱離、サーモスプレー/プラズマスプレーイオン化、表面増強レーザー脱離イオン化(SELDI)、誘導結合プラズマ(ICP)および粒子ビームイオン化によって行い得る。当業者であれば、イオン化法の選定は、測定すべき分析物、試料の種類、検出器の種類、正対負モードの選定などに基づいて決定し得ることを理解されよう。 好ましい実施形態では、rT3は、負のモードの加熱エレクトロスプレーイオン化(ESI)によってイオン化される。 質量分析技法では、一般に、試料をイオン化した後、その結果創出された正荷電または負荷電イオンを分析することにより、質量電荷比を決定し得る。質量電荷比を決定する適切な分析計としては、四重極分析計、イオントラップ分析計、磁気および電気セクタ分析計、および飛行時間分析計が挙げられる。イオンは、幾つかの検出モードを用いて検出し得る。例えば、選択イオンは、即ち選択的イオンモニタリングモード(SIM)を用いて検出し得る、あるいはイオンは、スキャンモード、例えば多重反応モニタリング(MRM)または選択反応モニタリング(SRM)を用いて検出し得る。好ましくは、質量電荷比は、四重極分析計を用いて決定される。例えば、「四重極」または「四重極イオントラップ」装置では、高周波振動電界中のイオンは、電極間に印加されたDC電位、RFシグナルの振幅、および質量/電荷比に比例した力を受ける。電圧および振幅は、特定の質量/電荷比を有するイオンだけが、四重極の長さを進行するが、他の全てのイオンは偏向するように、選択し得る。したがって、四重極装置は、装置中に入射されたイオンにとって、「質量フィルタ」としても「質量検出器」としても作用し得る。 MS技法の分解能は、「タンデム質量分析」即ち「MS/MS」を採用することにより、増強し得る。この技法では、対象分子から生成した前駆イオン(親イオンとも呼ばれる)を、MS装置中でフィルタ処理することができ、その前駆イオンは、続いて断片化されて、1種または複数の断片イオン(娘イオンまたは生成物イオンとも呼ばれる)を産生し、次いでそれを第2のMS手順で分析する。前駆イオンの注意深い選択により、ある種の分析物により生成されるイオンだけが、断片化チャンバーへと通過し、そこで不活性ガスの原子と衝突して、断片イオンを生成する。前駆および断片の両イオンは、所与の1組のイオン化/断片化条件下で、再現性良く生成するので、MS/MS技法は、極めて強力な分析ツールを提供し得る。例えば、フィルタ処理/断片化の組合せは、妨害物質の除去に使用でき、生物試料などの複雑な試料において特に有用になり得る。 質量分析計は、通常、ユーザーにイオンスキャン、即ち所与の範囲(例えば、100〜1000amu)にわたる特定の質量/電荷を有する各イオンの相対存在量を与える。分析物アッセイの結果、即ちマススペクトルは、当技術分野で公知の多くの方法によって、元の試料中の分析物量と関連付けることができる。例えば、サンプリングおよび分析パラメータが注意深く制御されていることを前提とすれば、所与のイオンの相対存在量は、その相対存在量を元の分子の絶対量に換算する表と比較し得る。あるいは、標準品を試料と共に流し、そうした標準品から生成したイオンに基づいて、標準曲線を構築してもよい。このような標準曲線を用いて、所与のイオンの相対存在量は、元の分子の絶対量に換算し得る。ある種の好ましい実施形態では、rT3量を計算するための標準曲線を生成するために、内部標準が使用される。このような標準曲線を生成し、使用する方法は、当技術分野で周知のことであり、当業者は、適当な内部標準を選択することができる。例えば、同位体標識したrT3を内部標準として使用してもよく、ある種の好ましい実施形態では、その標準は、13C6−rT3である。イオン量を元の分子の量に関連付ける他の多くの方法は、当業者に周知のことであろう。 該方法の1つまたは複数のステップは、自動機械を用いて行い得る。ある種の実施形態では、1つまたは複数の精製ステップを、オンラインで行い得る。 さらなるフラグメンテーションのために前駆イオンを単離する、MS/MSなどのある種の実施形態では、衝突活性化解離が、さらなる検出用の断片イオンを生成するために、しばしば使用される。CADでは、前駆イオンは、不活性ガスとの衝突によりエネルギーを獲得し、続いて「単分子分解」と称する過程により断片になる。前駆イオン内の特定の結合を、振動エネルギーの増加により破壊できるように、十分なエネルギーをその前駆イオン中に付加しなければならない。 特定の好ましい実施形態では、rT3は、MS/MSを用いて以下のように検出および/または定量される。試料は、タンパク質沈殿に続いて、液体クロマトグラフィー、好ましくはHPLCまたはUPLCに掛けられる。液体クロマトグラフィーカラムからの液体溶媒の流れは、MS/MS分析計のESIネブライザーインターフェースに入り、溶媒/分析物混合物は、そのインターフェースの加熱管において蒸気に変換される。霧化した溶媒中に含有される分析物(例えば、rT3)は、霧化した液滴中に存在する溶媒が気化するときにイオン化される。そのイオン、例えば前駆イオンは、装置の開口部を通過して第一の四重極に入る。四重極1および3(Q1およびQ3)は、質量フィルタであり、質量電荷比(m/z)に基づいてイオンの選択(即ち、Q1およびQ3においてそれぞれ「前駆」および「断片」イオンの選択)を可能にする。四重極2(Q2)は、衝突セルであり、そこでイオンが断片化される。質量分析計の第一の四重極(Q1)は、rT3の質量電荷比を有する分子を選択する。正しい質量/電荷比を有する前駆イオンは、衝突室(Q2)中に通過するのを許容されるが、他の任意の質量/電荷比を有する不要イオンは、その四重極の側面と衝突し、除去される。 Q2に入ってくる前駆イオンは、中性の衝突ガス分子と衝突し、断片になる。この過程は、衝突活性化解離(CAD)と呼ばれる。生成した断片イオンは、四重極3(Q3)の中へ通過し、そこでrT3の断片イオンは選択されるが、他のイオンは除去される。幾つかの実施形態では、rT3前駆イオンは、アルゴンまたは窒素などの不活性衝突ガス、好ましくは窒素との衝突を介して断片化される。 該方法は、正イオンまたは負イオンいずれかのモード、好ましくは負イオンモードで行われるMS/MSを伴い得る。当技術分野で周知の標準法を用いて、当業者は、四重極3(Q3)での選択に使用し得る、特定のrT3前駆イオンの1種または複数の断片イオンを同定することができる。 イオンが検出器と衝突する際、電子のパルスが生成し、デジタル信号に変換される。取得データは、コンピュータにリレーされ、収集イオンの数対時間がプロットされる。得られた質量クロマトグラムは、従来のHPLC法で生成したクロマトグラムに類似している。特定のイオンに対応するピーク下の面積、またはこのようなピークの振幅が測定され、その面積または振幅は、対象分析物の量と相関付けされる。ある種の実施形態では、断片イオンおよび/または前駆イオンの曲線下面積またはピークの振幅を測定して、rT3量を決定する。上述したように、所与のイオンの相対存在量は、13C6−rT3などの内部分子標準の1つまたは複数のイオンピークに基づく較正標準曲線を用いて、元の分析物、例えばrT3の絶対量に換算し得る。 以下の実施例は、本発明の例示に役立つ。こうした実施例は、本方法の範囲を制限することを全く意図していない。実施例1:試料(血清)および試薬の調製 血清試料は、標準の赤色栓の血清Vacutainer(商標)チューブに血液を収集し、室温で30分間凝血させることによって調製した。次いで試料を遠心分離し、すぐに細胞から血清を分離した。あるいは血液を二重ゲル隔壁チューブに収集し、室温で凝血させた。次いで試料を遠心分離し、24時間以内に細胞から血清を分離した。 EDTA血漿Vacutainer(商標)チューブおよびヘパリンナトリウムVacutainer(商標)チューブに収集された血清試料も、分析用に調製した。 3つのrT3ストック溶液を調製した。メタノール/塩基性溶液中1mg/mLの初期rT3ストック溶液は、rT3を40mLの濃NaOHに溶解してメタノールで100mLに希釈することにより調製した。1,000,000pg/mLのrT3の中間ストック溶液は、初期ストック溶液の一部をメタノールでさらに希釈することによって調製した。最後に、rT3が10,000pg/mLの希釈標準ストック溶液は、中間ストック溶液の一部を二重に除去処理済みの活性炭血清でさらに希釈することによって調製した。 13C6−rT3内部標準溶液は、最終希釈13C6−rT3内部標準を、除去処理済み血清ではなくメタノールで希釈することにより500pg/mLの最終濃度に調製したこと以外、上述のrT3溶液と同様に調製した。実施例2:タンパク質沈殿による血清中のrT3の濃縮 標品100μLを、まず96ウェルプレートのウェルに添加した。次いで500pg/mLの13C6−rT3のメタノール溶液(内部標準)300μLを各ウェルに添加し、各ウェルを沈殿物形成についてチェックした。沈殿を視覚的に確認した後、ウェルプレートを約1分間、約1500rpmで混合し、静止させ、再び混合し、約30分間冷蔵し、最後に混合した。最後に混合した後、プレートを最低でも3000×gで少なくとも30分間遠心分離した。実施例3:先行する水性プラグを用いたおよび用いない、メタノール溶液中のrT3のHPLC−MS/MSの比較 rT3を含有する試料を、メタノール沈殿を介しておよびアセトン沈殿と同様の手順を介して、実施例2で示したように調製した。得られた試料は、比較的高いパーセントのメタノールまたはアセトンを溶媒として含有していた。 メタノール溶媒をベースにした試料100μLを、この試料を導入する直前に約100μLの水性プラグをHPLC分析カラム(TMSエンドキャッピングを有するPhenomenex Kinetex C18、100×4.6mm、2.6μm粒径カラム)に導入して、および導入せずに、分析した。両方の条件で収集した質量クロマトグラム2を、図2A〜Bに示す。比較のため、アセトン溶媒をベースにした試料100μLも、水性プラグを導入せずに分析した。アセトンをベースにした試料に関する例示的な質量クロマトグラムを、図3に示す。 図2A〜Bおよび図3に見られるように、T3とrT3との両方のイオンシグナル強度は、水性プラグ導入後にHPLCを介して精製された試料に関して大幅に高められた。実施例4:rT3液体クロマトグラフィーの濃縮 実施例2で遠心分離から得られた上清を高速液体クロマトグラフィーに掛けて、rT3をさらに濃縮し、その後、質量分光分析に掛けた。試料注入を、Aria OS V 1.5以降のソフトウェアを使用して層流モードで動作させたCohesive Technologies Aria TLX−1 HTLCシステムで行った。 HTLCシステムは、上記にて調製した上清100μLを、分析カラム(TMSエンドキャッピングを有するPhenomenex Kinetex C18、100×4.6mm、2.6μm粒径カラム)に自動的に注入した。バイナリHPLC勾配を分析カラムに適用して、試料中に含有されるその他の分析物からrT3を分離した。移動相Aは0.1%ギ酸水溶液であり、移動相Bは100%メタノールであった。HPLC勾配は、70%の移動相Aと30%の移動相Bとの混合物から始まって、300秒かけて5%の移動相Aと95%の移動相Bに上昇した。次いでこの比をさらに60秒間保ち、その後、60秒で当初の混合物に戻した。これらの条件下、rT3(および13C6−rT3)を約235秒でHPLCカラムから溶出した。次いで溶出された分析物を、定量のためMS/MSに掛けた。実施例5:MS/MSによるrT3の検出および定量 MS/MSは、ABSciex 5500 MS/MSシステム(ABSciex)を用いて行った。全てABSciex製の以下のソフトウェアプログラム:Analyst V1.4以降を、本明細書に記載の実施例で使用した。分析HPLCカラムを出ていく液体溶媒/分析物は、MS/MS分析計のESIインターフェースまで流れた。溶媒/分析物の混合物は、インターフェースの管材から出ると蒸気に変換された。霧化した溶媒中の分析物は、負イオンモードでESIによりイオン化した。例示的な質量分析計パラメータを、表1に示す。 イオンは、第一の四重極(Q1)まで通過し、そこで質量電荷比649.9±0.50のrT3イオンおよび655.8±0.50の13C6−rT3イオンが選択された。四重極2(Q2)に入るイオンは、窒素ガスと衝突して、イオン断片を生成し、それらがさらなる選択のために四重極3(Q3)まで通過した。同時に、同位体希釈質量分析を用いる同じプロセスを、内部標準の13C6−rT3で実施した。負極性での検証中に検出および定量に使用される質量遷移を、表2に示す。追加の質量遷移649.9±0.50→127.1±0.50および655.8±0.50→127.1±0.50が、rT3および13C6−rT3でそれぞれ観察された。 表2に示される遷移をモニタすることによって生成したrT3および13C6−rT3(内部標準)に関する例示的なクロマトグラムを、それぞれ図4AおよびBに示す。実施例6:MSによるrT3の例示的な較正曲線の決定 除去処理済み血清中の濃度25pg/mL、50pg/mL、100pg/mL、250pg/mL、500pg/mL、1000pg/mL、および2000pg/mLのrT3の7つの較正標準を調製し、上記にて概説したように分析して、例示的な較正曲線を生成した。1つのそのような較正曲線を、図5に示す。図示される較正曲線を線形回帰により分析し、その結果、下記の係数:y=0.0117x+−0.00213、およびr=0.9988が得られた。実施例7:干渉物質の試験 トリグリセリド(約2000mg/dLまで)、ビリルビン(約50mg/dLまで)、および/またはヘモグロビン(約500mg/dLまで)を含有する試料を、可能性ある干渉に関して試験した。これらの物質から、干渉は検出されなかった。実施例8:rT3アッセイの精密度および正確度 3つの品質管理(QC)プールを、10ng/dL、25ng/dL、および100ng/dLの除去処理済み血清にrT3を混ぜることにより調製した。 3つのQCプールのそれぞれからの5つの一定分量を、5つのアッセイのそれぞれで分析して、アッセイ内の試料の正確度および変動係数(CV(%))を決定した。これらの実験のデータおよび結果を表3に示す。 表3に示されるように、各QCレベルでの正確度および変動係数(CV(%))は、臨床アッセイで使用するのに許容可能なものであった。実施例9:分析感度:ブランク限界(LOB)、検出限界(LOD)、および定量下限(LLOQ) LLOQは、測定値が定量的に意味のあるものになる濃度を指す。LLOQにおける分析物応答は、標準偏差(SD)が全許容誤差(TEa;LLOQの30%としてrT3に関して任意に設定されたもの)の3分の1未満である濃度で、識別可能であり、個別的であり、再現性がある。LODは、測定値がそれに伴う不確実性よりも大きい濃度である。LODは、値がその測定に伴う不確実性を超えている点であり、ブランクの平均にこのブランクの標準偏差の4倍を加えたものと定義される。LOBは、ゼロ較正標準に関する平均測定値よりも上の2つの標準偏差として設定される。 LLOQ、LOD、およびLOBは、予測されるLLOQに近い濃度の試料をアッセイし、再現性を決定し(それぞれ0、2、4、および8ng/dLのrT3に対し、5回の実験で5回繰り返しアッセイした。)、次いで標準偏差(SD)を決定することによって、決定した。結果をrT3に関してプロットした(図6に示す。)。LOB、LOD、およびLLOQは、曲線から決定され、それぞれ0.309ng/dL、0.392ng/dL、および2.050ng/dLであった。これらの実験からのデータを表4に示す。実施例10:線形性およびアッセイ基準範囲 rT3検出の線形性を確立するために、5つの試料を異なる割合のブランクの除去処理済み血清と200ng/dLを混ぜた除去処理済み血清とから調製した。混ぜた血清が0%から100%に及ぶ各試料を2つずつ調製したものを分析し、その結果をプロットした。得られた曲線の線形性を示すグラフを図7に示す。 年齢18〜86才の間の女性61名および男性54名を含む115名の成人からの試料を分析することにより、基準範囲の調査を実施した。包含基準は:明らかに健康で、歩行することができ、コミュニティ内で生活することができ、投薬がなされていない成人であった。除外基準は、正常なTSH、FT4、FT3、抗TPO、および抗TGであり、慢性疾患の病歴、投薬、または最近の医学的問題がないことであった。得られたデータを分析して、正常な基準範囲を開発した。結果を表5に示す。実施例11:試料タイプの調査 30名の患者からの試料を、様々なVacutainer(商標)チューブに収集して、血清、EDTA血漿、ヘパリン血漿、およびゲル隔壁を有する血清分離チューブ(即ち、SST試料チューブ)からの血清にした。得られた試料を分析し、結果を比較した。全ての試料は、臨床分析に許容可能であると決定された。EDTA血漿、ヘパリン血漿、およびSST血清試料の、血清に対する比較プロットを、それぞれ図8A、9A、および10Aに示し;異なるプロットを図8B、9B、および10Bにそれぞれ示す。 本明細書で言及または引用した論文、特許および特許出願、ならびに他の全ての文書および電子的に利用可能な情報は、個々の各刊行物が、参照により組み込まれていることが具体的に個別に示されている場合と同程度に、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。出願者らは、このような任意の論文、特許、特許出願、または他の物理的および電子的文書から、ありとあらゆる資料および情報を本出願の中に物理的に組み込む権利を留保する。 本明細書に例示的に記載した方法は、本明細書に具体的に開示していない任意の1つまたは複数の要素、1つまたは複数の制限のない状態で、適切に実施し得る。したがって、例えば、「含んでなる」、「含む」、「含有する」などの用語は、拡張的に限定されることなく解釈されるべきである。その上、本明細書で用いた用語および表現は、限定するものではなく、説明するための用語として用いており、このような用語および表現の使用において、示し、記述した特徴と同等のものまたはその部分を除外する意図はない。特許請求された本発明の範囲内で多様な改変をなし得ることが認識される。したがって、本発明を好ましい実施形態および任意選択の特徴により具体的に開示してきたが、その中で具体化され、本明細書で開示した本発明の改変および変さらは、当業者が採用し得るものであり、このような改変および変更は、本発明の範囲内にあると見なされることを理解されたい。 本発明を、広範に、属レベルで本明細書で説明してきた。属レベルの開示内に入るより狭い種および亜属のグループの各々も、本方法の一部をなす。これには、その属から任意の主題を削除する条件または否定的制限を付けた本方法の属レベルの記述も、削除される事項が本明細書に具体的に記載されているか否かに関わらず、含まれる。 他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に入る。それに加え、本方法の特徴または態様がマーカッシュ群によって記載されている場合、本発明が、当該マーカッシュ群の任意個別の構成事項または構成事項亜群によってもその結果記載されることは、当業者であれば認識されよう。 質量分析によって体液試料中の逆T3(rT3)の量を決定する方法であって、a.体液試料からのrT3をイオン化して、質量分析により検出可能な1種または複数の逆T3イオンを発生させることと、b.質量分析によって1種または複数のrT3イオンの量を決定することと、c.前記rT3イオンの量を使用して、体液試料中のrT3の量を決定することとを含んでなり、体液試料からのrT3を、イオン化前に固相抽出に掛けない、方法。 体液試料からのrT3を、イオン化前に液体クロマトグラフィーに掛けることをさらに含んでなり、請求項1に記載の方法。 前記液体クロマトグラフィーが高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含んでなる、請求項2に記載の方法。 液体クロマトグラフィーの前に、タンパク質沈殿によって、前記体液試料中のrT3を濃縮することをさらに含んでなる、請求項2に記載の方法。 前記タンパク質沈殿が、前記体液試料と、前記試料中に存在し得るタンパク質の少なくとも一部を沈殿させるのに十分な量のメタノールとを接触させることを含んでなる、請求項4に記載の方法。 イオン化前のタンパク質沈殿によって、前記体液試料中のrT3を濃縮することをさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。 前記タンパク質沈殿が、前記体液試料と、前記試料中に存在し得るタンパク質の少なくとも一部を沈殿させるのに十分な量のメタノールとを接触させることを含んでなる、請求項6に記載の方法。 質量分析により検出可能な1種または複数のrT3イオンが、質量/電荷比649.9±0.5、605.2±0.5、および127.1±0.5を有するイオンからなる群から選択された1種または複数を含んでなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。 質量分析により検出可能な1種または複数のrT3イオンが、質量/電荷比649.9±0.5および605.2±0.5を有するイオンからなる群から選択された1種または複数を含んでなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。 前記質量分析がタンデム質量分析である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。 質量分析により検出可能な1種または複数のrT3イオンが、質量/電荷比649.9±0.5を有する前駆イオンと、質量/電荷比605.2±0.5および127.1±0.5を有するイオンの群から選択された断片イオンとを含む、請求項10に記載の方法。 断片イオンが、質量/電荷比605.2±0.5を有するイオンである、請求項11に記載の方法。 前記体液試料が血漿または血清を含んでなる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。 質量分析により体液試料中の逆T3(rT3)の量を決定する方法であって、a.体液試料を処理して、前記体液試料からのrT3を含んでなる処理済み試料を生成させることと、ここで、前記処理は、 i.得られる上清が、前記有機溶媒と前記体液試料からのrT3とを含むように、有機溶媒で前記体液試料からタンパク質を沈殿させることと、 ii.前記上清を逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)カラムに掛けることにより前記上清中のrT3を精製することと、ここで、精製は、前記上清を導入する前に前記カラムに水溶液を導入することを含んでなり、 iii.前記RP−HPLCカラムからrT3を溶出して、rT3を含んでなる処理済み試料を生成させることとを含んでなり、b.前記処理済み試料中のrT3をイオン化して、質量分析により検出可能な1種または複数の逆T3イオンを発生させることと、c.質量分析によって、1種または複数のrT3イオンの量を決定することと、d.前記rT3イオンの量を使用して、体液試料中のrT3の量を決定することとを含んでなる、方法。 前記カラムに掛けられる上清の体積と、先にカラムに導入される水溶液との比が、約10:1〜1:10の範囲内にある、請求項14に記載の方法。 前記カラムに掛けられる上清の体積と、先にカラムに導入される水溶液との比が、約5:1から1:5の範囲内にある、請求項14に記載の方法。 前記カラムに掛けられる上清の体積と、直前にカラムに導入される水溶液との比が、約1:1である、請求項14に記載の方法。 水溶液が、有機溶媒を実質的に含有しない、請求項14〜17のいずれか一項に記載の方法。 体液試料からのrT3が、イオン化前に固相抽出に掛けられない、請求項14〜18のいずれか一項に記載の方法。 前記有機溶媒がメタノールを含んでなる、請求項14〜19のいずれか一項に記載の方法。 前記上清が少なくとも10%のメタノールを含んでなる、請求項20に記載の方法。 質量分析により検出可能な1種または複数のrT3イオンが、質量/電荷比649.9±0.5、605.2±0.5、および127.1±0.5を有するイオンからなる群から選択された1種または複数を含んでなる、請求項14〜21のいずれか一項に記載の方法。 質量分析により検出可能な1種または複数のrT3イオンが、質量/電荷比649.9±0.5および605.2±0.5を有するイオンからなる群から選択された1種または複数を含んでなる、請求項14〜21のいずれか一項に記載の方法。 前記質量分析がタンデム質量分析である、請求項14〜23のいずれか一項に記載の方法。 質量分析により検出可能な1種または複数のrT3イオンが、質量/電荷比649.9±0.5を有する前駆イオンと、質量/電荷比605.2±0.5および127.1±0.5を有するイオンの群から選択された断片イオンとを含んでなる、請求項24に記載の方法。 断片イオンが、質量/電荷比605.2±0.5を有するイオンである、請求項25に記載の方法。 前記体液試料が血漿または血清を含んでなる、請求項14〜26のいずれか一項に記載の方法。 質量分析を用いて試料中の逆T3の量を決定する方法が提供される。その方法は、一般に、試料中の逆T3をイオン化し、イオン量を決定することにより、試料中の逆T3量を決定することを伴う。


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