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タイトル:公開特許公報(A)_アルキル化剤または抗CD20剤と組み合わせて、フォロデシンのようなPNP阻害剤を使用する、血液学的な癌を処置する方法
出願番号:2014009359
年次:2014
IPC分類:A61K 45/06,A61P 35/02,A61P 43/00,A61K 31/519,A61K 31/131,A61K 31/175,A61K 33/24,A61K 31/4164,A61K 31/4184,A61K 39/395


特許情報キャッシュ

シャンタ バンティア フィリップ ブレイトフェルド ヤーラガッダ エス. バブ JP 2014094962 公開特許公報(A) 20140522 2014009359 20140122 アルキル化剤または抗CD20剤と組み合わせて、フォロデシンのようなPNP阻害剤を使用する、血液学的な癌を処置する方法 バイオクライスト ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド 507141273 山本 秀策 100078282 森下 夏樹 100113413 シャンタ バンティア フィリップ ブレイトフェルド ヤーラガッダ エス. バブ US 61/012,762 20071210 A61K 45/06 20060101AFI20140425BHJP A61P 35/02 20060101ALI20140425BHJP A61P 43/00 20060101ALI20140425BHJP A61K 31/519 20060101ALI20140425BHJP A61K 31/131 20060101ALI20140425BHJP A61K 31/175 20060101ALI20140425BHJP A61K 33/24 20060101ALI20140425BHJP A61K 31/4164 20060101ALI20140425BHJP A61K 31/4184 20060101ALI20140425BHJP A61K 39/395 20060101ALI20140425BHJP JPA61K45/06A61P35/02A61P43/00 121A61K31/519A61K31/131A61K31/175A61K33/24A61K31/4164A61K31/4184A61K39/395 T 1 2010537159 20081210 OL 31 4C084 4C085 4C086 4C206 4C084AA20 4C084MA02 4C084NA05 4C084NA14 4C084ZC202 4C084ZC412 4C084ZC751 4C085AA14 4C085CC23 4C085EE03 4C086AA01 4C086AA02 4C086BC38 4C086BC39 4C086EA16 4C086HA12 4C086MA02 4C086MA04 4C086NA05 4C086NA14 4C086ZB27 4C206AA01 4C206EA01 4C206MA02 4C206MA04 4C206NA05 4C206NA14 4C206ZB27 この出願は、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)阻害剤の投与を含む方法による、血液学的な癌(例えば、血液の癌)の処置に関する。特に、慢性リンパ性白血病(CLL)および急性リンパ性白血病(ALL)を処置する方法が記載される。 関連出願 この出願は、2007年12月10日に出願された、米国出願第61/012,762号(この出願は、参考として本明細書に援用される)の優先権の利益を主張する。 現在、癌は、米国では2番目の死因であり、米国では8百万人超が癌と診断されている。1995年には、米国内の死者の23.3%が癌を死因としていた(例えば、U.S.Dept.of Health and Human Services,National Center for Health Statistics,Health United States 1996−97 and Injury Chartbook 117(1997)参照)。 現在、癌は、主として、外科手術、放射線療法、および化学療法の3種類の療法の1つまたはそれらの組み合わせにより処置される。外科手術には、病変組織の大量除去が含まれる。外科手術は、例えば、胸部、結腸、および皮膚等、特定の部位に位置する腫瘍の除去に効果的な場合があるが、骨格等の他の領域に位置する腫瘍の処置や、白血病等の播種性の腫瘍性病態の処置には使用できない。放射線療法には、生体組織を電離放射線に曝露して曝露細胞の死または損傷を生じることが含まれる。放射線療法の副作用は急性かつ一過性のものであり得るが、他のものに関しては不可逆性であり得る。化学療法には、細胞複製または細胞代謝の崩壊が含まれる。これは、胸部、肺、および精巣癌の処置において最もよく用いられる。この癌処置における失敗の主因の1つは、癌細胞が薬物耐性を生じることであり、これは、病気の再発または死にも繋がり得る重大な問題である。よって、より効果的な癌処置が必要とされる。 本明細書では、被験体の血液学的な癌(例えば、CLLおよびALL)を処置する方法を提供する。この方法は、(a)上記被験体に有効量のプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)阻害剤を投与する工程と、(b)上記被験体に有効量のアルキル化剤または抗CD20剤を投与する工程を含む。特定の実施形態では、上記PNP阻害剤はフォロデシンである。他の実施形態では、上記アルキル化剤は、マスタード誘導体、ニトロソ尿素誘導体、白金化合物、およびイミダゾールカルボキサミド化合物から選択される。いくつかの実施形態では、上記アルキル化剤はベンダムスチンである。特定の実施形態では、上記抗CD20剤はリツキシマブである。 いくつかの実施形態では、上記PNP阻害剤およびアルキル化剤もしくは抗CD20剤は同時投与されるが、他の実施形態では、上記PNP阻害剤およびアルキル化剤もしくは抗CD20剤は連続投与される。後者の実施形態では、上記アルキル化剤または抗CD20剤は、上記PNP阻害剤の投与前に1回以上投与することができる。 他の実施形態では、1つ以上の化学療法剤(例えば、ベンダムスチン等のアルキル化剤およびフルラダビン(Fluradabine)等のプリンヌクレオシド類似体)に耐性を持つ被験体の血液学的な癌を処置する方法は、(a)1つ以上の化学療法剤に耐性を持つ被験体を同定する工程と、(b)上記被験体にPNP阻害剤を投与する工程とを含むことができる。具体的な実施形態では、上記PNP阻害剤はフォロデシンである。 他の実施形態では、血液学的な癌を有する被験体を処置する方法は、(a)上記被験体由来の試料中の1つ以上の癌細胞においてp53欠失を検出する工程と、(b)上記被験体にPNP阻害剤を投与する工程とを含むことができる。特定の実施形態では、上記PNP阻害剤はフォロデシンである。いくつかの実施形態では、上記方法は、17p欠失の存在を検出する工程および/または上記試料中の1つ以上の癌細胞が1つ以上の化学療法剤(例えば、アルキル化剤およびプリンヌクレオシド類似体)に耐性を持つか否かを判定する工程をさらに含むことができる。 本明細書では、PNP阻害剤およびアルキル化剤もしくは抗CD20剤を含む医薬組成物をさらに提供する。 本明細書では、PNP阻害剤およびアルキル化剤もしくは抗CD20剤を含むキットも提供する。いくつかの実施形態では、上記キットは、上記PNP阻害剤、上記アルキル化剤、上記抗CD20剤、またはそれらの任意の組み合わせの送達システムをさらに含むことができる。他の実施形態では、上記キットはまた、被験体を処置するための使用説明書含むことができる。 他の実施形態では、キットはPNP阻害剤を含む。1つの実施形態では、上記キットは、その内容物がアルキル化剤に耐性を持つ被験体に投与されるべきものであることを示すラベルをさらに含む。いくつかの実施形態では、上記キットはまた、その内容物がp53欠失を有する被験体に投与されるべきものであることを示すラベルを含む。最後の実施形態では、上記キットは、その内容物がアルキル化剤または抗CD20剤とともに投与されるべきものであることを示すラベルを含むことができる。 特定の実施形態では、動物の血液学的な癌の処置に有用な薬剤を調製するためのプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)阻害剤およびアルキル化剤の使用を提供する。 特定の実施形態では、動物の血液学的な癌の処置に有用な薬剤を調製するためのプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)阻害剤および抗CD20剤の使用を提供する。 特定の実施形態では、血液学的な癌の処置のためのプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)阻害剤およびアルキル化剤の使用を提供する。 特定の実施形態では、血液学的な癌の処置のためのプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)阻害剤および抗CD20剤の使用を提供する。 本発明の1つ以上の実施形態を添付の図面および下記の説明において詳細に示す。他の特徴、目的、および利点は、それらの説明および図面、ならびに請求の範囲により明らかとなる。 したがって、本発明は、以下の項目を提供する:(項目1) 被験体の血液学的な癌を処置する方法であって、 (a)該被験体に有効量のプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)阻害剤を投与する工程と、 (b)該被験体に有効量のアルキル化剤または抗CD20剤を投与する工程と、 を包含する、方法。(項目2) 上記PNP阻害剤はフォロデシンである、項目1に記載の方法。(項目3) 上記アルキル化剤は、マスタード誘導体、ニトロソ尿素誘導体、白金化合物、およびイミダゾールカルボキサミド化合物から選択される、項目1または2に記載の方法。(項目4) 上記アルキル化剤はマスタード誘導体である、項目3に記載の方法。(項目5) 上記アルキル化剤はベンダムスチンである、項目4に記載の方法。(項目6) 上記抗CD20剤はリツキシマブである、項目1〜5のいずれか1つに記載の方法。(項目7) 上記PNP阻害剤およびアルキル化剤もしくは抗CD20剤は同時投与される、項目1〜6のいずれか1つに記載の方法。(項目8) 上記PNP阻害剤およびアルキル化剤もしくは抗CD20剤は連続投与される、項目1〜6のいずれか1つに記載の方法。(項目9) 上記アルキル化剤または抗CD20剤は、上記PNP阻害剤の投与前に1回以上投与される、項目8に記載の方法。(項目10) 上記血液学的な癌は、慢性リンパ性白血病および急性リンパ芽球性白血病から選択される、項目1〜9のいずれか1つに記載の方法。(項目11) 上記血液学的な癌は慢性リンパ性白血病である、項目10に記載の方法。(項目12) 上記血液学的な癌は急性リンパ芽球性白血病である、項目10に記載の方法。(項目13) 有効量のアルキル化剤が上記被験体に投与される、項目1〜12のいずれか1つに記載の方法。(項目14) 有効量の抗CD20剤が上記被験体に投与される、項目1〜12のいずれか1つに記載の方法。(項目15) 上記方法は、上記被験体に有効量のPNP阻害剤、有効量のアルキル化剤、および有効量の抗CD20剤を投与する工程を包含する、項目1〜12のいずれか1つに記載の方法。(項目16) 上記PNP阻害剤、アルキル化剤および抗CD20剤は同時投与される、項目15に記載の方法。(項目17) 上記PNP阻害剤、アルキル化剤および抗CD20剤は連続投与される、項目15に記載の方法。(項目18) 上記アルキル化剤および抗CD20剤は、上記PNP阻害剤の投与前に1回以上投与される、項目17に記載の方法。(項目19) 1つ以上の化学療法剤に耐性を持つ被験体の血液学的な癌を処置する方法であって、 (a)1つ以上の化学療法剤に耐性を持つ被験体を同定する工程と、 (b)該被験体にPNP阻害剤を投与する工程と、 を含む、方法。(項目20) 上記PNP阻害剤はフォロデシンである、項目19に記載の方法。(項目21) 上記被験体は、アルキル化剤およびプリンヌクレオシド類似体からなる群より選択される1つ以上の化学療法剤に耐性を持つ、項目19または20に記載の方法。(項目22) 上記アルキル化剤はベンダムスチンである、項目21に記載の方法。(項目23) 上記プリンヌクレオシド類似体はフルラダジン(Fluradadine)である、項目21に記載の方法。(項目24) 上記血液学的な癌は、慢性リンパ性白血病および急性リンパ芽球性白血病から選択される、項目21〜23のいずれか1つに記載の方法。(項目25) 上記血液学的な癌は慢性リンパ性白血病である、項目24に記載の方法。(項目26) 上記血液学的な癌は急性リンパ芽球性白血病である、項目24に記載の方法。(項目27) 血液学的な癌を有する被験体を処置する方法であって、 (a)該被験体由来の試料において1つ以上の癌細胞中のp53欠失を検出する工程と、 (b)該被験体にPNP阻害剤を投与する工程と、 を含む、方法。(項目28) 上記PNP阻害剤はフォロデシンである、項目27に記載の方法。(項目29) 17p欠失の存在を検出する工程をさらに包含する、項目27または28に記載の方法。(項目30) 上記試料中の1つ以上の癌細胞が1つ以上の化学療法剤に耐性を持つか否かを判定する工程をさらに包含する、項目27〜29のいずれか1つに記載の方法。(項目31) 1つまたは複数の上記癌細胞は、アルキル化剤およびプリンヌクレオシド類似体からなる群より選択される1つ以上の化学療法剤に耐性を持つ、項目30に記載の方法。(項目32) 上記血液学的な癌は、慢性リンパ性白血病および急性リンパ芽球性白血病から選択される、項目27〜31のいずれか1つに記載の方法。(項目33) 上記血液学的な癌は慢性リンパ性白血病である、項目32に記載の方法。(項目34) 上記血液学的な癌は急性リンパ芽球性白血病である、項目32に記載の方法。(項目35) PNP阻害剤およびアルキル化剤もしくは抗CD20剤を含む医薬組成物。(項目36) 上記PNP阻害剤はフォロデシンである、項目35に記載の組成物。(項目37) フォロデシンおよびベンダムスチンを含む、項目35に記載の組成物。(項目38) フォロデシンおよびリツキシマブを含む、項目35に記載の組成物。(項目39) PNP阻害剤、アルキル化剤、および抗CD20剤を含む、項目35〜38のいずれか1つに記載の組成物。(項目40) フォロデシン、ベンダムスチン、およびリツキシマブを含む、項目39に記載の組成物。(項目41) PNP阻害剤およびアルキル化剤もしくは抗CD20剤を含むキット。(項目42) 上記PNP阻害剤、上記アルキル化剤、上記抗CD20剤、またはそれらの任意の組み合わせの送達システムをさらに含む、項目41に記載のキット。(項目43) 被験体を処置するための使用説明書をさらに含む、項目41または42に記載のキット。(項目44) PNP阻害剤およびアルキル化剤を含む、項目41〜43のいずれか1つに記載のキット。(項目45) PNP阻害剤および抗CD20剤を含む、項目41〜43のいずれか1つに記載のキット。(項目46) 上記PNP阻害剤はフォロデシンである、項目41〜45のいずれか1つに記載のキット。(項目47) フォロデシンおよびベンダムスチンを含む、項目41〜46のいずれか1つに記載のキット。(項目48) フォロデシンおよびリツキシマブを含む、項目41〜47のいずれか1つに記載のキット。(項目49) PNP阻害剤、アルキル化剤、および抗CD20剤を含む、項目41〜48のいずれか1つに記載のキット。(項目50) フォロデシン、ベンダムスチン、およびリツキシマブを含む、項目49に記載のキット。(項目51) PNP阻害剤を含むキット。(項目52) その内容物がアルキル化剤に耐性を持つ被験体に投与されるべきものであることを示すラベルをさらに含む、項目51に記載のキット。(項目53) その内容物がp53欠失を有する被験体に投与されるべきものであることを示すラベルをさらに含む、項目51または52に記載のキット。(項目54) その内容物がアルキル化剤または抗CD20剤とともに投与されるべきものであることを示すラベルをさらに含む、項目51〜53のいずれか1つに記載のキット。高いZAP−70レベルおよび低いZAP−70レベルの両方を示すCLL細胞におけるフォロデシンの細胞毒性効果を詳細に示す。高いZAP−70レベルおよび低いZAP−70レベルの両方を示すCLL細胞におけるフォロデシンの細胞毒性効果を詳細に示す。フォロデシン処置後の細胞内のdGTPレベルの上昇と誘導された細胞死の量の相関性を示す。フォロデシンに対する反応が大きいp53欠失CLL症例を詳細に示す値を示す。ベンダムスチンまたはフルダラビン処置に対する感受性が低いかまたは感受性を有さないCLL症例のフォロデシンを用いた処置のデータを示す。フォロデシン/ベンダムスチンおよびフォロデシン/フルダラビンの結合指数データを示す。フォロデシン/ベンダムスチンおよびフォロデシン/フルダラビンの結合指数データを示す。フォロデシン/リツキシマブの結合指数データの詳細を示す。 詳細な説明 本明細書に記載するように、フォロデシンを用いた処置は、一次CLL細胞の時間および用量依存性細胞死を誘導した。2μMのフォロデシンおよび20μMのdGuoを用いた60%を超える細胞毒性反応が48%の症例において観察され、細胞毒性が40%未満であったのは9%の症例のみであった。17p13(TP53)および11q22−q23(ATM)の欠失等の遺伝学的異常、進行疾患による後天性かつ薬物耐性に関する遺伝学的異常、ならびにCLL患者の短期間生存率に関しては、反応に差異は観察されなかった。それらのp53または11q変異を有するCLL症例は、フォロデシンに対して高い感受性(平均細胞毒性60.1%、48時間)を示し、化学療法に耐性を有するCLL患者において良好な細胞毒性反応が得られた。フォロデシンと臨床的抗白血病レジメンの組み合わせにより、in vitro細胞毒性反応が促進され、フォロデシンと、低用量のベンダムスチン、モノクローナル抗体の抗CD20リツキシマブ、またはシクロホスファミドとの組み合わせにより強力な相乗効果が観察された。対照的に、フルダラビンには拮抗作用が見られた。それゆえ、フォロデシンは、ATM/p53経路を回避するCLL細胞のアポトーシスを誘導可能な新規な化学療法的アプローチの典型を示す。 従って、特定の実施形態では、被験体の血液学的な癌を処置する方法であって、上記被験体に有効量のプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)阻害剤を投与する工程と、上記被験体に有効量のアルキル化剤または抗CD20剤を投与する工程とを含む、方法を提供する。 特定の実施形態では、上記PNP阻害剤はフォロデシンである。 特定の実施形態では、上記アルキル化剤は、マスタード誘導体、ニトロソ尿素誘導体、白金化合物、およびイミダゾールカルボキサミド化合物から選択される。 特定の実施形態では、上記アルキル化剤はマスタード誘導体である。 特定の実施形態では、上記アルキル化剤はベンダムスチンである。 特定の実施形態では、上記抗CD20剤はリツキシマブである。 特定の実施形態では、上記PNP阻害剤およびアルキル化剤もしくは抗CD20剤は同時投与される。 特定の実施形態では、上記PNP阻害剤およびアルキル化剤もしくは抗CD20剤は連続投与される。 特定の実施形態では、上記アルキル化剤または抗CD20剤は、上記PNP阻害剤の投与前に1回以上投与される。 特定の実施形態では、上記血液学的な癌は、慢性リンパ性白血病および急性リンパ芽球性白血病から選択される。 特定の実施形態では、上記血液学的な癌は慢性リンパ性白血病である。 特定の実施形態では、上記血液学的な癌は急性リンパ芽球性白血病である。 特定の実施形態では、有効量のアルキル化剤が上記被験体に投与される。 特定の実施形態では、有効量の抗CD20剤が上記被験体に投与される。 上記方法の特定の実施形態では、上記方法は、上記被験体に有効量のPNP阻害剤、有効量のアルキル化剤、および有効量の抗CD20剤を投与する工程を含む。 特定の実施形態では、上記PNP阻害剤、アルキル化剤および抗CD20剤は同時投与される。 特定の実施形態では、上記PNP阻害剤、アルキル化剤および抗CD20剤は連続投与される。 特定の実施形態では、上記アルキル化剤および抗CD20剤は、上記PNP阻害剤の投与前に1回以上投与される。 特定の実施形態では、1つ以上の化学療法剤に耐性を持つ被験体の血液学的な癌を処置する方法であって、1つ以上の化学療法剤に耐性を持つ被験体を同定する工程と、上記被験体にPNP阻害剤を投与する工程を含む、方法を提供する。 特定の実施形態では、上記被験体は、アルキル化剤およびプリンヌクレオシド類似体からなる群より選択される1つ以上の化学療法剤に耐性を持つ。 特定の実施形態では、上記アルキル化剤はベンダムスチンである。 特定の実施形態では、上記プリンヌクレオシド類似体はフルラダジン(Fluradadine)である。 特定の実施形態では、血液学的な癌を有する被験体を処置する方法であって、上記被験体由来の試料において1つ以上の癌細胞中のp53欠失を検出する工程と、上記被験体にPNP阻害剤を投与する工程と、を含む、方法を提供する。 特定の実施形態では、上記方法は、17p欠失の存在を検出する工程をさらに含むことができる。 特定の実施形態では、上記方法は、上記試料中の1つ以上の癌細胞が1つ以上の化学療法剤に耐性を持つか否かを判定する工程をさらに含むことができる。 特定の実施形態では、1つまたは複数の上記癌細胞は、アルキル化剤およびプリンヌクレオシド類似体からなる群より選択される1つ以上の化学療法剤に耐性を持つ。 特定の実施形態では、PNP阻害剤およびアルキル化剤もしくは抗CD20剤を含む医薬組成物を提供する。 特定の実施形態では、上記組成物はフォロデシンおよびベンダムスチンを含む。 特定の実施形態では、上記組成物はフォロデシンおよびリツキシマブを含む。 特定の実施形態では、上記組成物はPNP阻害剤、アルキル化剤、および抗CD20剤を含む。 特定の実施形態では、上記組成物はフォロデシン、ベンダムスチン、およびリツキシマブを含む。 特定の実施形態では、PNP阻害剤およびアルキル化剤もしくは抗CD20剤を含むキットを提供する。 特定の実施形態では、上記キットは、上記PNP阻害剤、上記アルキル化剤、上記抗CD20剤、またはそれらの任意の組み合わせの送達システムをさらに含むことができる。 特定の実施形態では、上記キットは、被験体を処置するための使用説明書をさらに含むことができる。 特定の実施形態では、上記キットはPNP阻害剤およびアルキル化剤を含む。 特定の実施形態では、上記キットはPNP阻害剤および抗CD20剤を含む。 特定の実施形態では、上記キットはフォロデシンおよびベンダムスチンを含む。 特定の実施形態では、上記キットはフォロデシンおよびリツキシマブを含む。 特定の実施形態では、上記キットはPNP阻害剤、アルキル化剤、および抗CD20剤を含む。 特定の実施形態では、上記キットはフォロデシン、ベンダムスチン、およびリツキシマブを含む。 特定の実施形態では、PNP阻害剤を含むキットを提供する。 特定の実施形態では、上記キットは、その内容物がアルキル化剤に耐性を持つ被験体に投与されるべきものであることを示すラベルを含む。 特定の実施形態では、上記キットは、その内容物がp53欠失を有する被験体に投与されるべきものであることを示すラベルをさらに含む。 特定の実施形態では、上記キットは、その内容物がアルキル化剤または抗CD20剤とともに投与されるべきものであることを示すラベルをさらに含む。 他のヌクレオシド類似体とは異なり、フォロデシンはDNAに取り込まれない。フォロデシン処置により、CLL細胞中のdGTPが増加し、この細胞毒性と相関性を有する増加は、フォロデシン処置後にdGTPレベルが達したことを示し、細胞毒性反応を示す代理マーカーとなる。フォロデシンに対するCLLの感受性は、この細胞で観察される高いdCK活性によるものである可能性があり、この活性は、dCKのSer−74に対するリン酸化反応により正に調節される。リン酸−dCK/dCK比(phospho−dCK/dCK ratio)とフォロデシン誘導アポトーシスの間には有意な正の相関性が観察された。dCKはまた、フルダラビン、ゲムシタビン、またはクラドリビン等のいくつかの抗白血病ヌクレオシド類似体の活性化に必要なリン酸化反応を触媒する。フォロデシンとフルダラビン間で観察された拮抗作用は、フルダラビンとフォロデシンを組み合わせた後に観察されたdGTPレベルの低減により説明することができる。これらの結果は、dCKリン酸化反応およびその後のdGTPの増加がCLL細胞中のフォロデシンによるアポトーシスの誘導の第一段階として重要な役割を果たすことを示す。 dGTP媒介細胞死のいくつかの機序が提案されている。例えば、蓄積されたデオキシヌクレオシドは、デオキシグアノシンキナーゼおよびチミジンキナーゼによりミトコンドリア中でリン酸化され、ミトコンドリアDNA合成および修復と干渉し得るdNTPが異常に蓄積され、ミトコンドリア損傷、p53活性化およびアポトーシスに対する感受性を増感させ得る。ミトコンドリアdGTPの不均衡はまた、ミトコンドリアATP合成および/またはミトコンドリア電子伝達鎖の抗酸化酵素の不活性化に影響を及ぼし、ROS産生を生じ得る。ミトコンドリアゲノムは、アポトーシスを迅速に開始し得る酸化ストレス損傷に対する感受性が高い。本明細書に記載するように、フォロデシンは、ROSの産生およびΔΨm損失によりミトコンドリアアポトーシス経路を活性化させ、カスパーゼ依存性および非依存性アポトーシスを生じた。ROSは、ミトコンドリア電子伝達により生成され、強い酸化ストレスの下で、O2−、OH−またはH2O2レベルの上昇によりΔΨmの損失および細胞死が引き起こされる。フォロデシンにより誘導されるこれらの事象は、ミトコンドリアアポトーシス経路の活性化に先行する酸化ストレスの役割を担うO2−の特定の捕捉剤であるTironおよびNACを用いたCLL細胞のプレインキュベーションにより回復した。p53のリン酸化反応および活性化は、DNA損傷反応により誘導されるが、いくつかのストレス信号によっても誘導される。超酸化物過剰産生およびその後のDNA損傷の誘導により、ROS媒介ミトコンドリア経路の活性化およびp53活性化によりアポトーシスが誘導され得る。この意味で、フォロデシンにより誘導されるROS生成は、p53活性化の上流調節因子として作用し得る。野生型p53CLL症例におけるp53安定化を示すとともに、フォロデシンがp53変異の症例においてミトコンドリアアポトーシス経路を活性化させたことを示す結果を本明細書に記載するが、これらの結果は、フォロデシンがp53に依存しない異なる機序および/またはさらなる機序により作用することを示す。酸化ストレスおよびROS産生はまた、異なる経路によりp53依存性および非依存性アポトーシスの両方を調節する転写因子E2F−1の活性化を引き起こす。E2F−1は、DNA損傷に応じてリン酸化される残基においてp53リン酸化反応を増加させるが、p53非依存性アポトーシス経路を介したp53同属体p73の活性化により細胞死を誘導することもできる。ROS生成がどのようにE2F−1、p53および/またはp73活性化および細胞死を調節することができるかについては、依然として十分に解明されていない。 ミトコンドリアアポトーシス経路の初期事象は、アポトソームの形成およびカスパーゼ−9の活性化であり、これにより、カスパーゼ−3およびカスパーゼ−8が切断および活性化される。フォロデシンは、カスパーゼ−9および−3の時間に関連した活性化を誘導するとともに、カスパーゼ−9の活性化と同時にプロカスパーゼ−8の活性化も誘導した。同様に、カスパーゼ−8は、BIDタンパク質の切断を誘導し、ミトコンドリアアポトーシス経路を活性化するプロアポトーシス切断型にした。カスパーゼ−8の選択的阻害により、フォロデシンにより誘導されるΔΨm損失が低減するが、その後における細胞死に対する効果は抑えられており、これは、カスパーゼ−8/BIDがミトコンドリアアポトーシス経路の増幅ループを引き起こしたことを示唆する。カスパーゼ−9の活性化はそれ自体ではアポトーシスの誘導に十分ではない可能性があり、カスパーゼ−8/BIDを活性化させるとともに、アポトーシス抑制因子XIAPおよびスルビビンを減少させることにより、カスパーゼ−9および−3活性が増大するため、フォロデシンにより誘導されるアポトーシスが促進される。 BCL−2ファミリーのタンパク質は、アポトーシス細胞死への関与を制御する。BCL−2およびMCL−1等の生存促進メンバーとアポトーシス促進BCL−2メンバー(BAX、BAKおよびBH3オンリータンパク質BIM、PUMA、NOXA、BAD、BID、BMF、BIKおよびHRK)間の均衡により、多数の死シグナル伝達経路の結果が制御される。CLL患者では、高レベルのBCL−2およびMCL−1は、疾患進行、低生存率およびアルキル化剤、ヌクレオシド類似体、およびリツキシマブを用いた療法に対する完全な反応の失敗と相関性を有する。フォロデシンは、BCL−2レベルを変化させることなく、BIMタンパク質の蓄積およびMCL−1レベルの低下を誘導した。CLL細胞では、BIMはMCL−1と関連するため、MCL−1レベルの低下により、このBH3オンリータンパク質に対するCLL細胞の反応を容易にする。BIMおよび切断Bidは、抗アポトーシスBCL−2メンバーの阻害剤ならびにアポトーシス促進BAXおよびBAKの直接活性剤の両方として二重に機能する。この意味では、BIMレベルの上昇は、Bidの活性化とともに、BAXおよびBAKを活性化させるとともに、MCL−1を減少させ、BCL−2の残りの抗アポトーシス能力が押さえ込まれる。本明細書で提供する結果は、アポトーシス誘導と有意な相関性を有するフォロデシンによるBIMの増加とともにMCL−1の度合いが減少すること、およびフォロデシンに対するCLL細胞の感受性がMCL−1およびBIM基礎レベルにより決定され得ることを示す。 p53の状態に依存しないミトコンドリアアポトーシス経路の活性化が示されている。p53の転写標的であるp73誘導は機能的なp53を有さないCLL細胞のアポトーシス耐性を克服可能なことが報告されている。いくつかの化学療法薬に応じて、p73のアポトーシス促進型であるTAp73は、ある意味ではp53の状態に依存するが、非依存的でもある細胞周期停止およびアポトーシスを制御するいくつかのp53標的遺伝子を転写活性化する。フォロデシンが機能的なp53を有するCLL細胞中のp53を誘導し、さらにTAp73も誘導するが、興味深いことに、p53が欠失したCLL細胞中のp73mRNAおよびタンパク質レベルも上昇することが分かった。酸化ストレスおよびROS産生によりTAp73およびE2F1が活性化するが、これらはともにp53依存性および非依存性機序を介したミトコンドリアアポトーシス経路の活性化に関係するタンパク質である。それゆえ、ROSにより誘導されるフォロデシンの上昇により、E2F−1を活性化するおよび/またはTAp73を上方調節するシグナルを提供することができる。FOXOファミリーの転写因子は、アポトーシスに関与する多数の遺伝子の発現を調節し、酸化ストレスの増大により活性化することが可能である。FOXO1およびFOXO3aは、E2F−1の転写標的であり、ROS誘導アポトーシスに不可欠であることが示されているとともに、造血細胞におけるBIM発現の転写因子でもある。さらに、個々のアポトーシス刺激時に、ROS捕捉剤は、FOXO3aおよびBIMの誘導を阻止する。FOXO1aとBIM両方の発現ならびにその後のアポトーシスはp53が欠損した腫瘍性細胞中のp73により調節されると言われている。フォロデシンによる処置の後、タンパク質およびmRNAは、p53状態に依存しないp73およびBIMの上方調節を示すとともに、FOXO1およびFOXO3aレベルの上昇が初期において検出された。FOXO調節された標的遺伝子の発現は、いずれかのFOXOメンバーにより制御可能であるが、これは、FOXO1AおよびFOXO3Aにより行われるBIMの転写調節により示されるように、作用機序が重複していることを示唆している。 よって、本明細書に記載の結果は、p53状態に依存しないCLL細胞においてフォロデシンにより誘導される細胞死に関与する機序を証明し、異なるプログラム細胞死経路が同じ細胞内で共存し、様々な刺激により選択的に誘導され得ることを明らかにする。 これらの結果は、フォロデシンが単剤でまたはベンダムスチンもしくはリツキシマブと組み合わせることによりCLLの処置において非常に効果的となることを示す。それゆえ、例えば、低毒性プロフィールの経口および静注製剤で利用可能なフォロデシンは、不良予後(poop prognosis)(例えば、17p−)の患者、難病患者の処置選択肢および/または高齢患者の処置選択肢である。再発性CLL患者におけるフォロデシンの多施設非盲検第1相臨床試験が開始されている。 A.血液学的な癌を処置する方法 本明細書では、被験体の血液学的な癌、例えば、血液癌を処置する方法を提供する。この種の癌の例としては、例えば、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、および骨髄異形成症候群、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(悪性リンパ腫)およびヴァルデンストレームマクログロブリン血症が挙げられる。いくつかの実施形態では、上記血液学的な癌はCLLである。他の実施形態では、上記血液学的な癌はALLである。 被験体としては、哺乳動物および非哺乳動物の両方を挙げることができる。哺乳動物には、例えば、ヒト;非ヒト霊長類、例えば、類人猿およびサル;ウシ;ウマ;ヒツジ;ラット;マウス;ブタ;およびヤギが含まれる。非哺乳動物には、例えば、魚類および鳥類が含まれる。 1つの実施形態では、上記方法は、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)阻害剤およびアルキル化剤もしくは抗CD20剤を上記被験体に投与する工程を含む。特定の実施形態では、PNP阻害剤およびアルキル化剤を投与する。他の実施形態では、PNP阻害剤および抗CD20剤を投与する。さらに他の実施形態では、PNP阻害剤は、1つ以上の化学療法剤(例えば、ベンダムスチンまたはフルアラビン(Fluarabine))に耐性を持つ被験体を同定した後に投与する。さらなる実施形態では、PNP阻害剤は、被験体のp53欠失を検出した後に投与する。 理論に束縛されるものではないが、PNP阻害剤は、血漿2’−デオキシグアノシン(dGuo)の上昇および細胞内デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)の蓄積を誘導し、細胞死を誘導することができる。PNP阻害剤の非限定的な例としては、BioCryst Pharmaceuticals,Inc.に譲渡された米国特許第4,985,433号;同第4,985,434号、同第5,008,265号;同第5,008,270号;同第5,565,463号および同第5,721,240号に開示されるものが挙げられるが、こけらの開示内容を本明細書において参考として援用する。特定の実施形態では、上記PNP阻害剤は、フォロデシンまたはその塩であり、下記のHCl塩を含む。 理論に束縛されるものではないが、アルキル化剤は、DNAを化学修飾するとともに、その機能を妨げる化学療法化合物を指す。アルキル化剤には、二本鎖DNA分子の同じ鎖または相補鎖上のヌクレオチド間に架橋形成をさせるものがある一方で、他には、DNA鎖間に塩基対ミスマッチを生じさせるものもある。アルキル化剤は、マスタード誘導体、ニトロソ尿素誘導体、白金化合物、またはイミダゾールカルボキサミド化合物とすることができる。アルキル化剤の例としては、ベンダムスチン、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、ダカルバジン、ヘキサメチルメラミン、イホスファミド、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、ミトタン、マイトマイシン、ピポブロマン、プロカルバジン、ストレプトゾシン、チオテパ、およびトリエチレンメラミンが挙げられる。場合によっては、上記アルキル化剤は、ベンダムスチンまたはその塩とすることができ、下記のHCl塩を含む。 抗CD20剤は、Bリンパ球細胞表面タンパク質CD20を標的とする(例えば、選択的に結合する)任意の薬剤とすることができる。いくつかの実施形態では、上記抗CD20剤はCD20に特異的な抗体である。理論に束縛されるものではないが、これらの薬剤は、以下の3つの機序のうちの1つにより作用することができると考えられる:(1)補体媒介細胞毒性;(2)抗体依存性細胞媒介細胞毒性;および(3)アポトーシスの誘導。抗CD20剤の例としては、リツキシマブ、イブリツモマブ、トラスツズマブ、ゲムツズマブ、およびアレムツズマブが挙げられる。いくつかの実施形態では、上記抗CD20剤はリツキシマブである。 上記PNP阻害剤、アルキル化剤、および/または抗CD20剤は、任意の経路(例えば、術中、くも膜下、椎間板内、椎間板周囲(peridiskal)、硬膜外(歯周(periradicular)および大後頭孔(transforaminal)を含む)、椎間板内、硬膜外、および硬膜周の任意の組み合わせ、脊髄周(perispinal)、IV、筋内、SC、経口、鼻腔内、吸入、経皮、および非経口)より投与することができる。 上記PNP阻害剤、アルキル化剤、および/または抗CD20剤は、選択投与経路および標準的な薬務に基づいて選択される薬剤として許容される担体を用いて調合することができる。上記PNP阻害剤、アルキル化剤、および/または抗CD20剤は、医薬品分野の標準的技法に応じた投与剤型に調合してもよい。Alphonso Gennaro,ed.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition(1990),Mack Publishing Co.,Easton,PAを参照されたい。適切な投与剤型には、例えば、錠剤、カプセル、液剤、非経口液剤、トローチ、座薬、または懸濁剤が含まれ得る。 非経口投与については、上記PNP阻害剤、アルキル化剤、および/または抗CD20剤は、水、油(特に、植物油)、エタノール、生理食塩溶液、水性デキストロース(グルコース)および関連糖溶液、グリセロール、またはプロピレングリコールもしくはポリエチレングリコール等のグリコール等の適切な担体または希釈剤と混合してもよい。非経口投与液剤は、上記PNP阻害剤、アルキル化剤、および/または抗CD20剤の水溶性塩を含有することが好ましい。また、安定剤、抗酸化剤および防腐剤を添加してもよい。適切な抗酸化剤としては、亜硫酸塩、アスコルビン酸、クエン酸およびその塩、ならびにEDTAナトリウムが挙げられる。適切な防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム、メチルもしくはプロピルパラベン、およびクロルブタノール(chlorbutanol)が挙げられる。上記非経口投与組成物は、水溶液または非水溶液、分散液、懸濁液、または乳剤の形態であってもよい。 経口投与については、上記PNP阻害剤、アルキル化剤、および/または抗CD20剤は、錠剤、カプセル、丸薬、粉末、顆粒、または他の適切な経口与剤型(oral age forms)の調製のための1つ以上の固体非活性成分と組み合わせてもよい。例えば、上記PNP阻害剤、アルキル化剤、および/または抗CD20剤は、充填剤、結合剤、保湿剤、崩壊剤、溶解遅延剤、吸収促進剤、湿潤剤吸収剤(wetting agents absorbents)または潤滑剤等、少なくとも1つの賦形剤と組み合わせてもよい。 PNP阻害剤、アルキル化剤、および/または抗CD20剤の具体的な用量は、当然ながら、個々の患者の体格、体重、年齢および性別を含む当該患者の特定の状況、処置する疾患の性質および段階、疾患障害の悪性度、ならびに上記化合物の投与経路により決定される。化合物、例えば、フォロデシン、ベンダムスチン、およびリツキシマブの用量および投与期間については、例えば、FDAに認可されたラベルに示される用量および投与期間に従って、単独投与または併用投与を行うようにしてもよい。 いくつかの実施形態では、上記PNP阻害剤およびアルキル化剤もしくは抗CD20剤は同時投与されるが、他の実施形態では、上記PNP阻害剤およびアルキル化剤もしくは抗CD20剤は連続投与される。1つの実施形態では、上記アルキル化剤または抗CD20剤は、PNP阻害剤の投与前(例えば、2時間、3時間、4時間、5時間、10時間、または20時間)に1回以上投与することができる。さらなる実施形態では、上記PNP阻害剤は、アルキル化剤または抗CD20剤の投与前(例えば、2時間、3時間、4時間、5時間、10時間、または20時間)に1回以上投与してもよい。 いくつかの実施形態では、被験体の血液学的な癌の処置は、1つ以上の化学療法剤に耐性を持つ被験体を同定する工程を含む。癌処置における失敗の主因の1つは、癌細胞による薬物耐性の発現である。これは疾患の再発、さらには死に繋がり得る非常に深刻な問題である。1つの実施形態では、上記1つ以上の化学療法剤に耐性を持つ被験体は、当該分野で公知の手段により同定することができる。上記被験体は、任意の公知の化学療法剤に耐性を持つものであってもよい。特定の実施形態では、上記被験体は、アルキル化剤(例えば、ベンダムスチン)および/またはプリンヌクレオシド類似体(例えば、フルラダジン(Fluradadine))に耐性を持つものとすることができる。 化学療法に耐性を持つ被験体の同定に続いて、上記被験体にPNP阻害剤の投与を行うようにすることができる。いくつかの実施形態では、上記PNP阻害剤はフォロデシンHClである。 他の実施形態では、被験体の血液学的な癌の処置は、当該被験体由来の試料中の1つ以上の癌細胞におけるp53欠失、例えば、17p欠失の存在の検出を含むことができる。17p欠失は、異なる生物学的および臨床的挙動を示し得る血液学的な癌被験体を同定可能なマーカーである。例えば、p53変異は、薬物耐性および短い生存期間を伝えることができる。 1つの実施形態では、p53欠失を示す被験体は、PNP阻害剤の投与が行われるようにすることができる。選択される実施形態では、上記PNP阻害剤はフォロデシンHClである。 上述した処置法は、単剤療法および併用療法の両方を伴う。併用療法の文脈では、上記開示は、2つ以上の化学療法剤、特に、PNP阻害剤およびアルキル化剤またはPNP阻害剤および抗CD20剤の投与を想定している。これらの化合物のいくつかは、1つ以上の癌兆候の処置における使用についてすでに認可されている。他のものは前臨床および臨床開発の様々な段階にある。 いくつかの実施形態では、PNP阻害剤およびアルキル化剤もしくは抗CD20剤の投与により相乗効果を生み出すことができる。この効果は、併用指数(CI)の展開により示すことができる。特定の実施形態では、当該指数は、Chouら、Advance Enz.Regul.,22、27−55(1985)の手順に従って、病的細胞部分の関数として算出することができる。これは、様々な細胞死の割合に対する係数相互作用を評価する周知の検定である。例えば、薬物Aを用いた処置の結果、細胞死が30%であり、薬物Bを用いた処置の結果、細胞死が50%であった場合、それら2つの薬物を併用した結果、細胞死は65%となることが予想される。従って、予想細胞死と薬物併用時に実際に測定したものとの比率が1未満であれば、相乗効果が観察される。しかしながら、その比率が1を超える場合には、拮抗作用が観察される。1つの実施形態では、フォロデシンおよびベンダムスチンの併用は相乗効果を示すが、フォロデシンおよびフルダラビンの併用は拮抗作用を示す(実施例5参照)。 B.医薬組成物 本明細書では、PNP阻害剤およびアルキル化剤またはPNP阻害剤および抗CD20剤を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、PNP阻害剤は、フォロデシン(BCX−1777)を含むことができる。特定の実施形態では、アルキル化剤は、ベンダムスチンを含むことができる。他の実施形態では、抗CD20剤はリツキシマブである。 本明細書で提供する医薬組成物は、血液学的な癌の処置に有効な量のPNP阻害剤およびアルキル化剤またはPNP阻害剤および抗CD20剤ならびに薬剤として許容される担体を含有する。本明細書で提供する化合物の投与に適した医薬担体は、特定の投与方式に適した、当業者に公知の任意の担体を含む。 それらの組成物は、1つの実施形態では、経口投与用の液剤、懸濁剤、錠剤、分散性錠剤、丸薬、カプセル、粉末、徐放性製剤もしくはエリキシル剤または非経口投与用の滅菌液もしくは懸濁剤等の医薬品、ならびに経皮貼布製剤および乾燥粉末吸入剤に調合することができる(例えば、Ansel Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms,Fourth Edition 1985,126参照)。 上記医薬組成物中のPNP阻害剤およびアルキル化剤またはPNP阻害剤および抗CD20剤の濃度は、上記化合物の吸収、不活性化および排泄速度、上記化合物の物理化学的特性、投与計画、および投与量、ならびに当業者に公知の他の要因に依存する。例えば、送達量は、本明細書に記載するように、慢性リンパ性白血病を処置するのに十分な量である。 上記医薬組成物は一度に投与してもよく、あるいは、より少量の用量にわけて時間をあけて投与してもよい。正確な投与量および処置期間は処置する疾患に応じ、公知の試験プロトコルを用いるかまたはin vivoまたはin vitro試験データからの外挿により経験的に決定してもよいことは言うまでもない。濃度および投与量の値はまた、緩和すべき病状の重篤度によって変更してもよいことに留意されたい。さらに、いずれの特定の被験体についても、具体的な投与量レジメンは、個々の必要性および上記組成物を投与するかまたは投与を監督する人の専門的判断に従って時間の経過とともに調整する必要があり、本明細書で示す濃度範囲は例示のみであり、請求の範囲に記載の組成物の範囲または実施を制限するものではないことは言うまでもない。 上記医薬組成物は、錠剤、カプセル、丸薬、粉末、顆粒、滅菌非経口液剤もしくは懸濁剤、および経口液剤もしくは懸濁剤、ならびに上記化合物もしくはその薬剤として許容される誘導体を適量含有する油−水乳剤等の単回投与剤型でヒトおよび動物に投与するために提供される。薬学的に治療効果がある化合物およびその誘導体は、1つの実施形態では、単回投与剤型または複数回投与剤型で調合および投与される。本明細書で用いる単位用量形態とは、ヒトおよび動物被験体に適した物理的に個別の単位であり、当該分野で公知のように個別に包装されるものを指す。各単位用量は、上記治療効果がある化合物を、必要な医薬担体、ビヒクル、または希釈剤とともに所望の治療効果を生じるのに十分な所定量含有する。単位用量形態の例としては。アンプルおよび注射器ならびに個別に包装した錠剤もしくはカプセルが挙げられる。単位用量形態は、分割するかまたはその何倍かの量で投与してもよい。複数回投与剤型は、分離した単位用量形態で投与するための単一の容器に、同一の単回投与剤型複数回分を包装したものである。複数回投与剤型の例としては、バイアル、数ボトルの錠剤もしくはカプセル、または数パイントもしくはガロンのボトルが挙げられる。よって、複数回投与剤型は、分離することなく包装された複数回の単位用量である。 液剤として投与可能な組成物は、例えば、上記で定義したような活性化合物および任意の医薬アジュバントを、例えば、水、生理食塩水、水性デキストロース、グリセロール、グリコール、エタノール等の担体中で溶解、分散、または他の方法で混合することにより、溶液または懸濁液を生成して調製することができる。所望であれば、上記の投与すべき医薬組成物はまた、例えば、アセテート、クエン酸ナトリウム、シクロデキストリン誘導体、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミン酢酸ナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミン、および他のそのような薬剤等、湿潤剤、乳化剤、可溶化剤、pH緩衝剤等の非毒性補助物質を少量含有してもよい。 そのような投与剤型を実際に調製する方法は当業者には公知であるか明白である;例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,15th Edition,1975を参照されたい。 0.005%〜100%の範囲のPNP阻害剤およびアルキル化剤またはPNP阻害剤および抗CD20剤を含有し、残部が非毒性担体からなる投与剤型または組成物を調製してもよい。これらの組成物の調製方法は、当業者には公知である。企図される組成物は、0.001%〜100%の活性成分を含有し、1つの実施形態では、0.1〜95%、他の実施形態では、75〜85%であってもよい。 C.キット 本明細書ではまた、キットも提供する。典型的には、キットは、PNP阻害剤およびアルキル化剤またはPNP阻害剤および抗CD20剤を含む。特定の実施形態では、キットは、例えば、PNP阻害剤、アルキル化剤、抗CD20、またはそれらの任意の組み合わせに対する1つ以上の送達システム、および当該キットの使用説明書(例えば、被験体を処置するための使用説明書)を含むことができる。特定の実施形態では、キットは、上記PNP阻害剤および/または上記アルキル化剤を含むことができる。他の実施形態では、キットは、上記PNP阻害剤および/または上記抗CD20剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、上記キットは、PNP阻害剤と、内容物がベンダムスチン等のアルキル化剤に耐性を持つ被験体に投与されるべきものであることを示すラベルとを含むことができる。他の実施形態では、上記キットは、PNP阻害剤と、内容物がp53欠失(例えば、17p欠失)を有する被験体に投与されるべきものであることを示すラベルとを含むことができる。さらなる実施形態では、キットは、PNP阻害剤と、内容物がアルキル化剤または抗CD20剤とともに投与されるべきものであることを示すラベルとを含むことができる。 D.定義 本明細書で用いる単数形「a」、「an」および「the」は、文脈により明示されない限り、複数のものも対象とする。 「有効量」という表現は、方法において化合物の量を説明するために用いた場合、所望の薬理効果または他の効果を達成する化合物の量、例えば、癌細胞の異常成長もしくは増殖を阻害するかまたは癌細胞のアポトーシスを誘導し、有用な効果をもたらす量を指す。 「処置する」および「処置」という用語は、症状の改善、さらなる症状の予防、症状の根本的な代謝に関する原因の改善もしくは予防、障害のさらなる発現の遅延もしくは予防ならびに/または進行するかもしくは進行が予想される症状の重篤度の低減等、治療に有益な効果を生じることを意味する。 実施例1:CLL中のフォロデシン細胞毒性 − ZAP−70高対ZAP−70低 ZAP−70が高レベル(>20%)の16人のCLL患者由来の細胞およびZAP−70が低レベル(<20%)の13人のCLL患者由来の細胞を、2μMのフォロデシンと20μMのdGuoを用いて48時間かけて処理した。細胞毒性をAnnexinV−FITC染色により分析した(コントロールである未処理細胞のパーセンテージで表現)。その結果、平均細胞毒性が、高レベルおよび低レベルのZAP−70の両方について50%を超えることが示された(図1Aおよび図1B参照)。 実施例2:細胞内におけるdGTPレベルの上昇 26人のCLL患者由来の細胞をフォロデシンを用いて20時間かけて処理した。全ヌクレオチドを抽出し(60%メタノール)、dGTPレベルをDNAポリメラーゼアッセイにより定量化した。コントロール(未処理細胞)と比較した細胞の生存をAnnexinV−FITC染色により48時間かけて分析した。フォロデシン処置後の細胞内におけるdGTPレベルの上昇は、誘導された細胞死と良好な相関性を有する(図2参照)。 実施例3:フォロデシンに対するp53欠失CLL症例の反応 17p欠失を有する11人のCLL患者由来の細胞(g≧細胞の85%、FISH分析)を2μMのフォロデシンおよび20μMのdGuoと、25μMのベンダムスチンまたは1μg/mLのフルダラビンを用いて48時間かけて処理した。その結果、p53欠失CLL症例がフォロデシンに対して高い反応を示すことが分かった(図3参照)。 実施例4:化学療法耐性を有するCLL症例に対するフォロデシンの効果 ベンダムスチンまたはフルダラビンに対する感受性が低いか全くないことが分かっているCLL患者由来の細胞を2μMのフォロデシンと20μMのdGuo10を用いて処理した。その結果、これらの細胞はフォロデシン処置に対して良好な反応を示すことが分かった(図4参照)。 実施例5:フォロデシン/ベンダムスチンおよびフォロデシン/フルダラビンの併用効果 CLL患者由来の細胞を、2μMのフォロデシンおよび10〜20μMのdGuoと、10〜25μMのベンダムスチンまたは3.75〜7.5μMのフルダラビンとを用いて48時間かけて処理した。併用指数(CI)を48時間後に分析した。1未満のCI値は相乗効果を示し(ChourとTalalayのアルゴリズム)、1を超えるCI値は拮抗作用を示す。その結果、フォロデシン/ベンダムスチンは相乗効果を有し、フォロデシン/フルダラビンは拮抗作用を有することが分かった(図5Aおよび図5B参照)。 実施例6:フォロデシン/リツキシマブの併用効果 7人のCLL患者(ZAP−70レベル高(>35%)3人およびp53欠失4人)由来の細胞を、2μMのフォロデシンHClおよび10〜20μMのdGuoと、25〜50μMのリツキシマブとを用いて24〜48時間かけて処理した。併用指数(CI)を48時間後に分析した。それらの細胞を、Annexin V−FITC染色およびPI透過性アッセイを用いてフローサイトメトリーにより分析した。1未満のCI値は相乗効果を示し(ChourとTalalayのアルゴリズム)、1を超えるCI値は拮抗作用を示す。その結果、フォロデシン/リツキシマブの併用は相乗効果を有することが分かった(図6参照)。 実施例7:フォロデシンはp53非依存性ミトコンドリアアポトーシスを誘導する 本明細書に記載するように、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤であるフォロデシンは、慢性リンパ性白血病細胞において、Mcl−1の下方調節ならびにp73およびBimの誘導により、p53非依存性ミトコンドリアアポトーシスを誘導する。 慢性リンパ性白血病(CLL)は、アポトーシスが異常調節され、増殖速度が低い長寿命CD5+Bリンパ球のモノクローナル増殖由来の臨床不均質体(clinical heterogeneous entity)である。近年において進歩は見られるが、この新規なCLL処置法では、患者の全生存率は依然として改善されておらず、多数の患者は最終的には薬物耐性を生じる。免疫グロブリン遺伝子の突然変異がないプロフィール、ZAP−70タンパク質の高度発現、高度CD38発現、および特定の細胞遺伝学的異常の存在(特に、17p13(TP53)および11q22−q23(ATM)の欠失)は、CLL患者の全生存率の低さおよび疾患進行までの時間の短さと関係がある。化学療法抗癌剤は、通常、DNA損傷反応とp53活性化を介して、および/またはミトコンドリア機能の摂動を直接介してアポトーシスを誘導する。DNA損傷反応経路は、CLL薬物誘導アポトーシスにおいて重要な役割を果たしていると考えられるが、これは、TP53異常を有するCLL患者由来の細胞は、従来の化学療法に耐性を示すとともに生存期間が短いためである。p53の欠失および残りの対立遺伝子の突然変異によるp53機能の喪失は、化学療法が効果がないCLL患者を増加させ、p53の転写およびミトコンドリアアポトーシス活性を無効にする薬物耐性獲得中に「二重の打撃」を与えている。それゆえ、新規な効果的アプローチにより、DNA損傷非依存性経路および/またはp53に依存しないアポトーシス経路の直接的活性化によりアポトーシスを誘導する必要がある。 CLL細胞の特徴は、それらのアポトーシス誘導に対する耐性であり、CLL細胞におけるBcl−2ファミリータンパク質の重要なアポトーシスおよび生存調節因子である。高レベルの抗アポトーシスBcl−2およびMcl−1タンパク質は、CLLにおける侵攻性疾患および化学療法に対する耐性と関係がある。MCL−1はまた、CLL細胞の生存期間の延長において重要な役割を有するが、これは、MCL−1レベルがいくつかの薬物に対するin vitroおよび臨床反応と逆相関するためである。 プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)は、プリン類似体をそれぞれ塩基およびデオキシリボースリン酸にリン酸化するプリンサルベージ経路中の酵素である。フォロデシン、すなわち、イムシリンH(BCX−1777)は、in vitroおよびin vivoにおけるT細胞増殖の阻害を示した強力な遷移状態類似体PNP阻害剤である(Bantiaら、Int Immunopharmacol,1(6),1199−210(2001);Kicskaら、PNAS,98(8),4593−4598(2001);Bantiaら、Int Immunopharmacol,3(6),879−887(2003);およびGandhiら、Semin Oncol,34(6 Suppl 5),S8−12(2007))。フォロデシンは、低い毒性プロフィールを示しており(Gandhiら、Blood,106(13),4253−4260(2005);およびKoryckaら、Mini Rev Med Chem,7(9),976−983(2007))、T細胞前リンパ性白血病、皮膚T細胞性リンパ腫およびB細胞急性リンパ芽球性白血病患者の臨床試験において研究されている(Galmariniら、IDrugs,9(10),712−722(2006))。また、フォロデシンは、CLL細胞においてin vitro細胞毒性効果を発揮すると考えられる(Balakrishnanら、Blood,108(7),2392−2398(2006))。PNP阻害の結果、血漿2’デオキシグアノシン(dGuo)レベルが上昇した後、デオキシヌクレオシドキナーゼ活性が高レベルの細胞においてデオキシグアノシン三リン酸(dGTP)が細胞内蓄積し、Tリンパ球においてアポトーシスが誘導される。CLL細胞は、dGuoをdGMPに転換する主要酵素である高い(dCK)活性を有し、PNP阻害を受け易いCLL細胞であるdGMPはその後dGTPに転換される。フルダラビンまたはベンダムスチン等の他のプリンヌクレオシド類似体と異なり、フォロデシンはDNA内に取り込まれることはなく、新規で、十分には解明されていない作用機序を有する典型的な新種の選択的抗腫瘍剤である。 本明細書に記載するように、43人のCLL患者由来の一次白血病細胞におけるフォロデシンの細胞毒性効果を、フォロデシンと、臨床診療で用いるフルダラビン、ベンダムスチン、およびリツキシマブ等の薬物のin vitroでの併用とともに評価した。これらの結果に基づいて、フォロデシンは、ZAP−70、CD38、p53の状態または細胞遺伝学的異常に依存しないCLL患者の処置において非常に効果的な療法であると考えられる。さらに、フォロデシンは、Mcl−1タンパク質のレベルならびにp73およびアポトーシス促進Bimタンパク質の誘導を低下させることによりミトコンドリアアポトーシス経路の活性化を誘導すると考えられる。興味深いことに、これらのアポトーシスマーカーにはp53の状態に基づく有意な差は観察されなかったが、これは、アポトーシス経路が共通してp53媒介細胞死に依存しないことを示唆している。 ZAP−70、CD38および細胞遺伝学的状態に依存しないCLL患者由来の一次細胞におけるフォロデシン誘導アポトーシス 用量漸増研究を行ってCLL患者由来の一次白血病リンパ球におけるin vitroフォロデシン細胞毒性を評価した。in vitro細胞毒性効果を得るために、外部dGuo源をフォロデシンとともに加えた。dGuoの用量を増加させながら(10〜20または30μM)、薬理学的に達成可能なレベルのフォロデシン(2−5−10μM)を用いて48時間かけてCLL細胞のインキュベーションを行うことにより細胞死を誘導したが(Annexin−V+染色により分析)、フォロデシンまたはdGuo単独では細胞毒性効果は誘導されなかった。より高い用量のフォロデシン(最大で15μMまで)を用いても細胞死に関しては差は観察されなかった。逆に、dGuoの用量を増加することにより細胞死がより多く誘導されたため、その後の研究は単一用量のフォロデシン(2μM)を10または20μMのdGuoとともに用いて行った。 次に、フォロデシンおよびdGuoの細胞毒性効果を43人のCLL患者由来の一次白血病細胞において分析した。44.2%±11.4および57.4%±13.1のコントロールに対する平均細胞毒性をそれぞれ24時間、および48時間観察した。細胞毒性効果は、21の症例(全体の48.8%)において60%よりも高く、18の症例(全体の41.8%)において40〜60%の間であり、40%よりも低かったのは僅か4つの症例(全体の9.4%)のみであった。細胞死に関しては、凍結保存一次CLL試料(n=32、58.3%±11、48時間)とCLL生試料(n=10、56.6%±6.4、48時間)の使用での差は観察されなかった。健康なドナー由来のPBMC中における2μMのフォロデシンとdGuo(10〜20μM)の細胞毒性は、CLL細胞と比較して、Tリンパ球(CD3+細胞)とBリンパ球(CD19+細胞)の両方において相対的に低かった。 CLL患者では、ZAP−70および/またはCD38タンパク質の発現レベルは、全生存率の低さおよび疾患進行までの時間の短縮と関係がある(Husら、Ann Oncol,17(4),683−690(2006))。ZAP−70レベルが低いCLL細胞においてフォロデシンにより誘導される細胞死(17人のCLL患者;コントロールに対する平均細胞毒性58.1%±11)と高レベルのZAP−70を発現するCLL細胞(22人のCLL患者;平均細胞毒性57.9%±12)との間には有意な差は観察されず、また、CD38発現レベルに関しても同様であった(平均細胞毒性:CD38(低)、52.3%±12対CD38(高)、62.1%±12)。さらに、in vitroおよびin vivo薬物耐性およびCLL患者の短期間生存と関係がある13q欠失、11q欠失および17p欠失等のCLL細胞における最も一般的な細胞遺伝学的変異は、フォロデシン誘導細胞毒性とは相関性を有さなかったが、これらの症例では良好な反応が見られた。 CLLで用いられる2つの主要な化学療法剤であるフォロデシンとフルダラビンまたはベンダムスチンの細胞毒性を用いて処置したCLL細胞の細胞毒性反応についても比較した(Aivadoら、Semin Oncol,29,(4 Suppl 13),19−22(2002);およびMontserrat,Hematol J,5,Suppl 1,S2−S9(2004))。32人のCLL患者(そのうち11人がp53欠失を有する)由来の一次CLL細胞を、2μMのフォロデシン、20μMのdGuo、10〜25μMのベンダムスチンおよび1μg/mlのフルダラビンを単独でまたは組み合わせて用いて48時間かけてインキュベートした。単剤としては、17p欠失を有さないCLLにおける平均細胞毒性は、フォロデシン、フルダラビンおよびベンダムスチンについてそれぞれ55.3±8、50.6±11および49.2±18であった。p53変異を生じる17p欠失の獲得は、CLL患者のin vitroおよびin vivoフルダラビン耐性と関係がある(Dohnerら、Blood,85(6),1580−1589(1995);およびTurgutら、Leuk Lymphoma,48(2),311−320(2007))。注目すべきは、17p欠失を有する大半のCLL患者は、フォロデシンに対して高い反応を示したことであり、48時間における平均細胞毒性は60.1%±21であった(2μMのフォロデシンおよび20μMのdGuo)。対照的に、これらの症例は、フルダラビン(平均細胞毒性25.1±13)およびベンダムスチン(平均細胞毒性36.2%±17)に対して低い反応を示した。さらに、分析した32人のCLL患者試料のうち12人については、25μMのベンダムスチンおよび/または1μg/mlのフルダラビンに対するin vitro反応が観察されなかったかまたはin vitro反応が低かったが(コントロールに対して35%未満の細胞毒性)、フォロデシンに対しては高い反応を示した。ベンダムスチンまたはフルダラビンに対する反応が低いまたは非常に低い17p欠失を有する3つの症例は、フォロデシンに対して高い反応を示し(平均細胞毒性67%±20)、フォロデシンに対して低い反応を示したのはわずかに2人のCLL患者のみであった。 フォロデシンとフルダラビン、ベンダムスチン、およびリツキシマブの併用 処置のためのフルダラビンとフォロデシンの併用を評価した。フォロデシンとベンダムスチン、アルキル化剤およびプリン様類似体の併用についても評価した。2μMのフォロデシンおよびdGuo(10〜20μM)とフルダラビン(0.5〜1μg/ml)の併用は、いずれの単剤薬物の細胞毒性効果も増大することなく、細胞死誘導に悪影響が観察された。両方の薬物の併用効果を評価するために、ChouとTalalayのアルゴリズム(Chouら、Adv Enzyme Regul,22,27−55(1984))を2つの異なる薬物の併用についての拮抗作用または相乗効果の指示マーカーとして用いて、併用指数、すなわち、CI値を算出した。簡潔に言えば、1を超えるCI値は拮抗作用を示し、1未満のCI値は相乗効果を示す。フルダラビンおよびフォロデシンを用いた併用に関する研究は、分析(48時間)した全てのCLL症例において1を超えるCI値を示したが、これは、両方の薬物間の拮抗作用を示す。フォロデシンおよびフルダラビンを併用して得られた平均細胞毒性は、両方の薬物によるものよりも低かった。フォロデシンはまた、ベンダムスチンに対する反応が低いCLL症例においても効果的であったが、対照的に、フルダラビンに対しては、ベンダムスチンとフォロデシンの併用において細胞死の著しい増加が観察され、強力な相乗効果(CI<1)が観察された。フロデシン(Frodesine)は、低用量のベンダムスチン(10μM、平均細胞毒性32.95%)の細胞毒性反応を明確に向上させ、両方の薬物の併用について70.5%の平均細胞毒性効果を達成する。 フォロデシンとリツキシマブ(CD20に対するヒト化モノクローナル抗体)の併用についても評価した。24時間では、リツキシマブ単剤(25〜50μg/ml)で観察された細胞死は少なく、フォロデシンとの併用では、両方の薬物の細胞毒性効果は明確に改善された。リツキシマブとフォロデシンの強力な相乗効果も示され、CI値は0.5付近であった。 細胞内dGTPレベルの上昇およびSer−74におけるdCKリン酸化反応とフォロデシン誘導細胞死との相関性 2μMのフォロデシンおよび10μMのdGuoで処置した26人のCLL患者由来の一次細胞におけるdGTPの細胞内レベルを分析した。18時間で分析したdGTPレベルの倍増と48時間におけるフォロデシン細胞毒性の有意な直接的相関性(p<0.05)を観察した。フォロデシンは、細胞内dGTPレベルの高い上昇を誘導した(コントロールの基準レベルに対して最大で96倍まで上昇し、細胞1兆個につきdGTPが6〜129pmoleの間の値に達した)。4つのCLL症例では、dGTPレベルの上昇がないかまたは低く、これらの症例で観察されたフォロデシンに対する細胞毒性反応は低かった。フォロデシン処置後のdGTPレベルの上昇がdCKによるdGuoのリン酸化反応により媒介されることを確認するために、デオキシシチジンの存在下における細胞死誘導を分析した。デオキシシチジンはdCKの一次基質であるため、dCKによるdGuoのリン酸化反応を阻害し、細胞内におけるdGTPの上昇およびフォロデシンにより誘導されるその後のアポトーシスに影響を与える。デオキシシチジン(5〜10μM)を用いた細胞のプレインキュベーションによりフォロデシン誘導細胞死が阻害された。抗癌化学療法に用いたヌクレオシド類似体、特に、プリン類似体のフルダラビンおよびデオキシシチジン類似体のゲムシタビンは、活性化のためにdCKによりリン酸化されるものがある。デオキシシチジンまたは、フルダラビンにより誘導される細胞生存の損失は回復するが、ベンダムスチン(dCKに依存せずに作用し得る薬物)により誘導される細胞死については不可逆的であった。 dCKのリン酸化反応状態をフォロデシン処置時にウエスタンブロット法により分析したが、最近では、CLL細胞においては、dCK活性がSer−74においてリン酸化反応により正に調節されると言われている(Smalら、J Biol Chem,281(8),4887−4893(2006);Smalら、Nucleosides Nucleosides Nucleic Acids,25(9−11),1141−1146(2006);Smalら、Cancer Lett,253(1),68−73(2007))。CLL細胞中のdCKの(Ser−74における)リン酸化体の増加を観察したところ、増加はベンダムスチンによるものではなかった。フォロデシン処置後にホスホ−dCK/dCK比の濃度分析を行い、細胞毒性との相関性を24時間(p=0.05、補足データ)および48時間(p=0.05)の両方において観察した。 フルダラビンとフォロデシン間で観察された拮抗作用を調べるために、CLL細胞をフルダラビン(1μg/ml)およびフォロデシン(2μMおよびdGuo、10μM)でインキュベートした後の細胞内dGTPの上昇を観察した。フルダラビン単独ではdGTPレベルの上昇を誘導しなかったが、フルダラビンとフォロデシンとを併用した場合(灰色の棒)、フォロデシン単独(黒色の棒)でもたらされたdGTPの倍増が低減した。それゆえ、フルダラビンとフォロデシンの併用について観察されたdGTP上昇の低下は、両方の薬物間で観察された拮抗作用を説明する。フルダラビンは、活性化のためにdCKによるリン酸化を必要とし、dGuoもこの酵素によりリン酸化されるため、両方の薬物は同じ酵素を奪い合うことがあり、そのため、dGTPの生成またはフルダラビンの活性型が低減する。 p53に依存しないミトコンドリアアポトーシス経路のフォロデシン誘導による活性化 CLL細胞においてフォロデシンがアポトーシスを誘導する作用機序を解明するために、ミトコンドリアアポトーシス経路のいくつかの特徴を分析した。フォロデシンは、早期において、ミトコンドリア膜電位(ΔΨm)の損失を誘導した。活性酸素種(ROS)は、ミトコンドリア損傷の後に産生することができるとともに、引き続いてアポトーシスを媒介し得る(Villamorら、Curr Pharm Des,10(8),841−853(2004))。フォロデシンはまた、CLL一次細胞におけるROSの産生を誘導する。ミトコンドリア脱分極およびROS産生が初期事象として観察されたが、それらはフォロデシンを用いた処置の10時間後に顕著であった。酸化ストレスは、プログラム細胞死を調節する役割を果たすため、いくつかのROS捕捉剤の効果を分析した。グルタチオン還元エチルエステル(GSH)、N−アセチルシステイン(NAC)またはタイロンを用いたCLL細胞のプレインキュベーションにより、フォロデシンにより誘導されるΔΨm損失およびROS産生が低減した。NACおよびタイロン(O2に特異的な捕捉剤)は、ROS産生を事実上元に戻し、H2O2に選択的な捕捉剤であるGSHの効果を抑えた。 CLL細胞に関する過去のin vitro研究では、フォロデシンがp53の安定化およびアポトーシス誘導を生じることが報告されており(Balakrishnanら、Blood,108(7),2392−2398(2006))、結果は、DNA損傷およびp53媒介アポトーシスを誘導する他の抗癌剤と一致している。しかし、他のプリンヌクレオシド類似体と異なり、フォロデシンはDNA内に取り込まれない。興味深いことに、分析したミトコンドリアアポトーシス経路の初期の特徴は、17p(p53)欠失または11q(ATM)欠失を有するCLL患者でも観察されており、アポトーシス開始機序がDNA損傷p53媒介反応に依存しないことが示される。 カスパーゼ−8により媒介されるミトコンドリアアポトーシス経路の増幅ループの役割を示唆するフォロデシンにより誘発される連続的なカスパーゼ−9および−8活性化ならびにBIDの処理 ミトコンドリアアポトーシスを導く下流側シグナル伝達経路を調べるために、フォロデシン曝露後のカスパーゼ活性化パターンを調べた。カスパーゼ−9、−8および−3の用量および時間依存的な活性化を、それらの不活性型の処理により観察および分析した。プロカスパーゼ−9および−8の分解産物は、フォロデシン処置後10時間程度の早期にほぼ同時に存在し、最初は、プロカスパーゼ−9のp37切断型となり、その後に、カスパーゼ−8のp43/41切断型が増加した。プロカスパーゼ−3の分解およびその活性型の存在はその後に検出された。カスパーゼ−8の活性化との相関性において、フォロデシンはまた、カスパーゼ−8の主要基質であるBH3オンリータンパク質BIDの減少を誘導し、分解アポトーシス促進型にして、ミトコンドリアアポトーシス経路を活性化する。アポトーシス誘導との相関性において、アポトーシス阻害剤XIAPおよびスルビビンならびにカスパーゼ−3基質であるPARPのタンパク質分解切断の減少も観察された。次に、ミトコンドリアアポトーシス経路の活性化がカスパーゼ依存性だけでなく非依存性細胞死にも繋がるため、フォロデシン誘導アポトーシスのカスパーゼ活性化の役割を調べた。効能範囲が広いカスパーゼ阻害剤z−VAD.fmkを用いた細胞の処置では、フォロデシン処置後のホスパチジルセリン曝露(phospatidylserine exposure)が24時間かけて部分的に低減されたが、これは、カスパーゼ依存性および非依存性作用機序の両方の関連を示唆する。 カスパーゼ−8/BIDの活性化は、フォロデシンが引き起こすアポトーシス誘導中に重要な役割を果たすか、またはカスパーゼ−9活性化による、すなわち、ミトコンドリアの下流側での二次的な事象となる場合がある。興味深いことに、AnnexinV染色で分析したアポトーシス誘導は、特定のカスパーゼ−8阻害剤z−IETD.fmkにより部分的に阻止されたが、観察されたΔΨm損失の復帰はより顕著であった。これらの結果をまとめると、カスパーゼ−8活性化およびBIDはフォロデシンにより誘導されるミトコンドリアアポトーシス経路において初期増幅の役割を果たすことが示唆される。 ミトコンドリア媒介細胞死のアポトーシス促進および抗アポトーシス調節因子の分析 ミトコンドリアアポトーシス経路は、特に、抗アポトーシスBCL−2およびMCL−1タンパク質ならびにアポトーシス促進BAX、BAK、BIDおよびBIMタンパク質等のBCL−2ファミリータンパク質に属するアポトーシス促進メンバーおよび抗アポトーシスメンバー間の厳格な均衡により調節される。CLL細胞は、化学療法に対するin vitroおよび臨床反応と逆相関する高レベルの抗アポトーシスタンパク質MCL−1およびBCL−2を発現する。これらの抗アポトーシスタンパク質のレベルでのフォロデシンインキュベーションの効果を調べた。フォロデシン処置時に、抗アポトーシスMCL−1タンパク質のレベルは大幅に減少したが、BCL−2タンパク質レベルには影響はなかった。BH3オンリータンパク質BIMは、BCL−2および他の抗アポトーシスBCL−2ファミリーメンバーと相互に作用し、アポトーシスを誘発する。フォロデシンは、アポトーシス促進BIMタンパク質レベルでのタンパク質レベルの上昇を誘導する。フォロデシンで処置した7つのCLL症例において、濃度分析によりBIMおよびMCL−1タンパク質レベルの変化が確認された。アポトーシス促進BIM ELタンパク質レベルの上昇またはMCL−1レベルの低下と、MCL−1の減少にとって有意(p=0.04)なフォロデシンに対する細胞毒性反応の直接的相関性が観察された。さらに、フォロデシン処置後に観察された細胞毒性に対するMCL−1およびBIM EL誘導の減少の比を(コントロールに対して)プロットすると、有意な相関性(p=0.04)が見られた。 BCL−2およびMCL−1は、ミトコンドリア膜を保護し、BAXおよびBAK等のエフェクターアポトーシス促進タンパク質の作用からその完全性を保持する作用をする。BIMおよび分解BIDは、BAXおよびBAKの直接活性剤として作用する能力を有する唯一のBH3オンリータンパク質であり、BAXおよびBAKの活性化を、フォロデシンを用いたCLL細胞のインキュベーション後にフローサイトメトリーにより分析した。フォロデシンは、これらのタンパク質をミトコンドリア外膜内に挿入することを可能にするBAXおよびBAKの構造変化、そのオリゴマー化、その後のミトコンドリア膜透過化の誘導、および細胞死機構の活性化を誘導した。 フォロデシン処置により誘発されるmRNAのp73およびタンパク質レベルの上昇ならびにFOXO1およびFOXO3Aの誘導 フォロデシンはp53の状態に関係なく全てのCLL症例において細胞毒性効果を発揮したが、フォロデシンは、17p欠失がないCLL症例においてp53タンパク質の安定化を誘導することができた。p53媒介アポトーシスに必要なp53関連タンパク質であるTAp73タンパク質の誘導により、機能的なp53を有さないCLL細胞のアポトーシス耐性を克服できた(Dickerら、Blood,108(10),3450−3457(2006))。フォロデシン処置は、分析した全てのCLL症例においてp73mRNAおよびTAp73タンパク質レベルの明確な上方調節を誘導する。p73は、ある意味においてp53依存性であるが腫瘍性細胞においてはp53非依存性である転写因子FOXO1およびFOXO3aの上方調節を介して、アポトーシス促進タンパク質BIMの誘導を調節するが(Aminら、Cancer Res,67(12),5617−5621(2007))、FOXO誘導の機序は不明である。フォロデシンで処置したCLL細胞におけるFOXO1およびFOXO3aのレベルを調べた。フォロデシンは、観察したp73およびBIMタンパク質レベルの上昇と相関して、FOXO1およびFOXO3aの両方の上昇を誘導した。 材料および方法 薬物および化学物質 実験用フォロデシン(BCX−1777/イムシリンH)はBioCryst Pharmaceuticals Inc.(Birmingham,USA)により提供されたものであり、デオキシグアノシン(dGuo)はSigmaから購入した。デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)の定量化のために、Amersham BiosciencesからdNTPおよび[3H]dATPを入手した。フルダラビン(Shering,Berlin,Germany)、ベンダムスチン塩酸塩(Treanda(登録商標)、Cephalon,Inc.,Frazer,PAにより提供された)、リツキシマブ(Roche,Basel,Switzerland)および2’−デオキシシチジン(Sigma)を細胞毒性アッセイに用いた。 健康なドナー由来のCLL一次細胞および末梢血単核細胞の分離および培養 本in vitro研究は、世界保健機関の分類に従ってCLLと診断された43人の患者由来の一次白血病リンパ球において実施した。インフォームドコンセントは各患者から得た。 末梢血単核細胞(PBMC)細胞をフィコール/ハイパーク沈降(Seromed,Berlin,Germany)により分離した。細胞は直接使用するかまたは10%ジメチルスルホキシドおよび90%加熱不活性化したウシ胎仔血清(FBS,Gibco Paisley,Scotland,UK)の存在下で液体窒素中において凍結保存した。解凍後、CLL患者由来の単核細胞(2×106細胞/mL)を、5%二酸化炭素を含有する37℃の加湿雰囲気下で、10%FBS、2mMグルタミンおよび50μg/mLペニシリン−ストレプトマイシンを加えたRPMI1640培養培地(Gibco)で培養した。腫瘍性細胞(CD19+、CD5+)のパーセンテージ、ZAP−70およびCD38発現レベルをフローサイトメトリーにより分析し、上述したように定量化した(Crespoら、N Engl J Med,348(18),1764−1775(2003))。ZAP−70の高発現レベルのカットオフポイントは≧20%とし、CD38については≧30%とした(Husら、Ann Oncol,17(4),683−690(2006))。この研究に用いた全てのCLL試料には、95%を超える腫瘍性細胞があった。Vysis(Downers Grove,IL)から販売される17p13.1(p53)、11q22.3(ATM)および13q14.3(D13S319)の欠失を判定する遺伝子座特異的プローブおよび12トリソミーを検出する動原体プローブを含む市販の多検出キットを用いて蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)により細胞遺伝学的変異を評価した。p53遺伝子の突然変異は、通常、ミスセンス突然変異であり、変異タンパク質は半減期が延長され、ウエスタンブロットによる検出が可能となる。さらに、p53突然変異がIARC TP53コンソーシアムに従った直接配列決定により確認された。 アポトーシス誘導 10−20−30μMのデオキシグアノシン(dGuo)の存在する場合と存在しない場合において異なる時点でフォロデシンを1〜12μMの用量範囲で用いて細胞をインキュベートした。必要な場合には、80μMの汎カスパーゼ阻害剤z−VAD.fmk(ベンジルオキシ−カルボニル−Val−Ala−Asp−フルオロ−メチルケトン;Bachem,Bubendorf,Switzerland)、50μMのカスパーゼ−8阻害剤z−IETD.fink(Z−Ile−Glu(OMe)Thr−DL−Asp(OMe)−フルオロメチルケトン、Bachem)、2’−デオキシシチジン(5−10−20μM、Sigma)、N−アセチル−L−システイン(NAC、25mM)、タイロン(5mM、4,5−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼン−ジスルホン酸、Sigma)またはGSH(2mM;Sigma)を用いて1時間かけて細胞をプレインキュベートした。薬物併用研究については、フルダラビンまたはベンダムスチンを用いて4時間、12時間、もしくは24時間かけて、またはフォロデシン(2μM)とdGuo(10〜20μM)を加える前にモノクローナル抗体抗CD20リツキシマブを用いて1時間かけて細胞を前処理した。Annexin−Vをフルオレセインイソチオシアネート(FITC)およびヨウ化プロピジウム(PI)に接合させた二重染色によるホスファチジルセリン(PS)曝露の定量化であるFSC/SSC(BenderMedsystems,Vienna,Austria)を用いて、細胞生存およびアポトーシス誘導を細胞の複雑さの変化により分析した。CD3+およびCD19+母集団におけるアポトーシスの分析については、抗CD3−FITC(Immunotech,Marseille,France)、抗CD19−PE(Becton Dickinson)およびAnnexin−V−APCと同時にPBMCを標識した。細胞生存および細胞毒性をコントロール細胞に対するパーセンテージでプロットした。20nMのDiOC6(3,3−ジエキシルオキサカルボシアニンヨージド(3,3−diexyloxacarbocyanine iodide)、Molecular Probes)で細胞を染色してミトコンドリア膜電位(ΔΨm)の損失を評価し、2μMジヒドロエチジン(DHE;Molecular Probes)で細胞を染色してフローサイトメトリー分析により活性酸素種(ROS)産生を判定した。上述のとおりBAXまたはBAKタンパク質のNH2末端に向けられた抗体で細胞をイムノサイトメトリー標識(immunocytometry labelling)して、構造変化によるアポトーシス促進BAXおよびBAKタンパク質の活性化を分析した(Bellosilloら、Blood,100(5),1810−1816(2002))。この領域は基本的に閉塞され、NH2末端エピトープ特異的抗体による結合には利用できない。アポトーシス刺激の後、これらのタンパク質の構造変化により、NH2末端と、ミトコンドリアを標的とし、ミトコンドリアにより媒介される細胞死機構の誘導において重要な役割を果たす疎水性COOH末端とが露出される。端的には、細胞をPBS中で一旦洗浄し、パラホルムアルデヒド4%中に固定し、0.1%サポニンおよび0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)で透過処理した。立体構造活性BAK(Oncogene Research)に対する1μg/mlの一次抗体またはBAX(クローン6A7、BD Pharmingen)抗体を用いて室温で細胞を染色した。透過化緩衝液中で数回洗浄した後、細胞を、二次ヤギ抗マウスFITC(DAKO)またはヤギ抗ウサギFITC(Supertechs)抗体でインキュベートし、透過化緩衝液で再度洗浄した。次いで、1つの試料につき1万個の染色細胞をフローサイトメトリーにより分析した。 細胞内dGTPレベルの測定 フォロデシン(2μM)およびdGuo(10μM)もしくはフルダラビン(1μg/ml)を用いてまたは用いずに、15×106個のCLL一次細胞を18時間かけてインキュベートし、60%メタノールを用いてヌクレオチドを抽出し、ShermanおよびFyfeにより改変されたDNAポリメラーゼアッセイによって細胞内dGTPレベルを定量化した(Shermanら、Anal Biochem,180(2),222−226(1989))。データは、コントロール細胞に対する細胞内dGTPレベルの誘導倍率で示した。並行して、24時間および48時間における細胞生存も評価した。 免疫ブロット法 プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤(ロイペプチン10μg/ml、アポプロチニン10μg/ml、1μM PMSF、1μMオルトバナジウム酸ナトリウム、1μM NaF、2μMピロリン酸ナトリウム十水和物(Sigma)を加えたRIPA緩衝液において細胞を15分間かけて溶解した。細胞内全タンパク質を還元条件下においてSDS−PAGEにより分離し、Immobilon−P(Millipore)膜に移した。タンパク質検出のために、以下の一次抗体を用いて膜を調べた:抗BIM、抗BAK(Ab1)抗カスパーゼ−8(Ab−3)、抗p53(Ab−2)(Calbiochem);抗BID、抗カスパーゼ−9、抗FoxO1および抗XIAP(Cell Signaling Technologies);抗Bcl−2、抗dCK、抗Mcl−1(S−19)および抗p73(クローン5B429)(Santa Cruz Biotechnology);抗PARP(Roche);抗カスパーゼ−3および抗BAX(クローン6A7)(BD−Pharmingen);抗スルビビン(Abeam);抗β−アクチンおよび抗α−チューブリン(Sigma)および抗FoxO3A(Upstate)。ウサギ抗ホスホdCK(Ser79)およびウサギ抗dCKは、Caroline Smal氏およびFrancoise Bontemps氏(Universite Catholique de Louvain,Belgium)の厚意により提供された。適切な一次抗体でインキュベーションを行った後、増強化学発光(ECL)試薬(Pierce)を用いて、西洋ワサビペルオキシターゼ(HRP)標識抗マウス(Sigma)、抗ウサギ(Sigma)もしくは抗ヤギ(Dako)抗体でブロットを現像した。均等なタンパク質負荷がβ−アクチンもしくはα−チューブリン発現で確認され、Image Gauge Fujifilmソフトウェア(Fuji)を用いて相対的タンパク質定量を行った。 リアルタイムRT−PCRによるmRNA定量化 製造者の使用説明書に従ってTRIZOL試薬(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いて107個の細胞から全RNAを抽出した。次いで、ランダムプライマーおよびM−MLV逆転写酵素(Invitrogen)を用いて、1マイクログラムの全RNAをcDNAに逆転写した。デザイン済のAssay−on−demand(Applied Biosystems)を用いたABI Prism 7900HT Sequence Detection System(Applied Biosystems、Foster City、CA)でp73およびMcl−1の発現レベルを判定した。GUSを内在性コントロールとして用いて、比較サイクル閾値(Ct)法(ΔΔCt)により各遺伝子の相対的発現を定量化した。mRNA発現レベルを任意の定量PCR単位とし、各症例のコントロール試料(未処理)を較正物質ととした。 統計分析 データは3つの独立した実験の平均値±標準偏差(SD)として表される。全ての統計分析は、Graphpad Prism 3.0ソフトウェア(GraphPad Software Inc.,San Diego,CA)を用いて行った。2つの試料群間の比較をノンパラメトリックマン−ホイットニー検定により評価し、スピアマン検定を用いて相関係数を評価した。p値≦0.05(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.0001)である場合、結果を統計的に有意であると見なした。2つの異なる薬物の併用効果を評価するために、ChouおよびTalalayに記載のアルゴリズム(Calcusyn software v2.0,Biosoft,Cambridge,UK)を用いて併用指数またはCI値を分析した(Chouら、Adv Enzyme Regul,22,27−55(1984))。このCI値は、2つの異なる薬物の併用効果に関する拮抗作用または相乗効果の指示マーカーである。2つの薬物間の相互作用については、CI値が1未満である場合に相乗的と見なし、1である場合に付加的と見なし、CIが1を超える場合に拮抗的と見なした。 本発明を多数の実施形態について説明した。しかしながら、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、各種の改変を行うことが可能であることは言うまでもない。従って、他の実施形態も添付する請求の範囲内とする。本明細書中で引用した全ての文献、特許および特許出願を本明細書中において参考として援用する。本願明細書に記載された発明。 【課題】アルキル化剤または抗CD20剤と組み合わせて、フォロデシンのようなPNP阻害剤を使用する、血液学的な癌を処置する方法の提供。【解決手段】この出願は、例えば、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)阻害剤、アルキル化剤、および/または抗CD20剤の投与を含むことができる血液学的な癌の処置に関し、さらには関連組成物およびキットに関する。具体的には、本発明の方法は、(a)上記被験体に有効量の(PNP)阻害剤を投与する工程と、(b)上記被験体に有効量のアルキル化剤または抗CD20剤を投与する工程を含む。【選択図】なし


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