生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_慢性型成人ヒトT細胞白血病(ATL)から急性型ATLへの急性転化のし易さを試験する方法
出願番号:2013171836
年次:2014
IPC分類:G01N 33/68,G01N 33/574


特許情報キャッシュ

武本 重毅 鵜澤 耕治 守田 和樹 JP 2014059299 公開特許公報(A) 20140403 2013171836 20130822 慢性型成人ヒトT細胞白血病(ATL)から急性型ATLへの急性転化のし易さを試験する方法 独立行政法人国立病院機構 504136993 協和メデックス株式会社 000162478 廣田 雅紀 100107984 小澤 誠次 100102255 東海 裕作 100096482 松田 一弘 100188352 堀内 真 100131093 山内 正子 100150902 藤本 昌平 100177714 園元 修一 100141391 武本 重毅 鵜澤 耕治 守田 和樹 JP 2012185263 20120824 G01N 33/68 20060101AFI20140307BHJP G01N 33/574 20060101ALN20140307BHJP JPG01N33/68G01N33/574 A 2 OL 11 2G045 2G045AA26 2G045DA36 本発明は、慢性型の成人T細胞白血病(以下、ATLという)患者の急性転化のし易さを試験する方法、及び、当該方法のためのキットに関する。 ヒトTリンパ球向性ウィルス(以下、HTLVという)は、レトロウィルスの1種であり、1型と2型の2つの型が存在する。このうち、1型、すなわち、HTLV−1は、日沼らによって成人T細胞白血病/リンパ腫の原因ウィルスとして同定されている(非特許文献1、2、3参照)。 ヒトにおけるHTLV−1感染は、主に母から子への垂直感染ならびに夫から妻への水平感染であるが、輸血による医原性感染も知られている。輸血による医原性感染は、1986年から開始された抗HTLV−1(または2)抗体を検査することにより防止されてきた。輸血による医原性感染の疫学的研究から、HTLV−1感染は血球細胞成分が介在していることが知られている。HTLV−1に感染すると、生体中に抗HTLV−1抗体が生成してくるので、抗HTLV−1抗体を測定することにより、HTLV−1の感染を知ることができる。 抗HTLV−1抗体を測定する方法としては、免疫学的手法を用いた測定方法が知られており、ゼラチン粒子凝集法(PA法)、蛍光抗体法(FA法)、間接蛍光抗体法(IF法、化学発光酵素免疫測定法(CLEIA法)、ウェスタンブロット法(WB法)などが知られている。HTLV−1キャリア 指導の手引き(厚生労働省研究班「本邦におけるHTLV-1感染及び関連疾患の実態調査と総合対策」、2011年)によると、一般医療機関ではスクリーニング検査としてPA法やCLEIA法が用いられる。スクリーニング検査で陽性と判断された場合であっても、WB法による確認検査が実施される。さらに、WB法による確認検査で判定保留となった場合、HTLV−1プロウイルスを検出するPCR法(ポリメラーゼ連鎖反応法)による検査を実施することがある。 HTLV−1が引き起こす疾患としては、例えば血流内やリンパ器官内で発症する成人T細胞性白血病/リンパ腫、脊髄内で発症するHTLV−1関連脊髄症(HAM/TSP)、眼球内で発症したブドウ膜炎(HU)等が知られている。 ATLは、HTLV−1の感染が原因となって起こる独立した疾患である。HTLV−1キャリア(HTLV−1に感染した者で、上記のHTLV−1が引き起こす疾患を発症していない者)は、2008年の段階で、日本国内で約108万人と推定されている。年間HTLV−1キャリア1000人に1人の割合でATLを発症し、また、ATL生涯発症率はHTLV−1キャリアの約5%と言われている。発症率は非常に低いがひとたび発症するときわめて短期間で重篤な結果もたらすと言われている。 ATLは、急性型、リンパ腫型、慢性型、くすぶり型の4種類の臨床病型に分類され、この臨床病型は化学療法を含めた治療方針の決定に広く使用されている。1990〜1995年の本邦全国ATL実態調査によると、ATL2123例中、急性型は1328例(62.6%)、リンパ腫型は505例(23.8%)、慢性型は176例(8.3%)、くすぶり型は114例(5.4%)であった。 リンパ腫型や急性型は高悪性度ATLと定義され、予後(生存率)が悪く早急な治療が必要となる。一方、くすぶり型や慢性型は低悪性度ATLと定義され、無治療で経過を観察することが一般的に行われている。このように、急性型、リンパ腫型に比べると、慢性型やくすぶり型は生存率が高いと言われている。 しかしながら、慢性型やくすぶり型から、急性型やリンパ腫型の病状へと急性転化する場合があると言われている。くすぶり型ATL、慢性型ATL患者の長期追跡結果によるとくすぶり型ATLの3割は急性転化し、慢性型ATLの8割が経過中に急性転化していたと報告されている。急性転化した場合は、急性型やリンパ腫型と同様に、早急に治療を開始する必要がある。現在、血清中の乳酸デヒドロゲナーゼ活性(以下、LDH活性と記す)や可溶型インターロイキン−2受容体(以下、sIL−2Rと記す)濃度、白血球数、末梢血ATL細胞数、カルシウム濃度などを検査し、異常がみられた場合には、リンパ節腫脹の有無と数、皮膚病変の有無、肺病変の有無、肝脾腫の有無、その他の病変の有無、画像診断としてのCT(Computed Tomography)検査ならびにガリウムシンチグラフィ検査あるいはPET(陽電子放射断層撮影)検査を行い、急性型やリンパ腫型への急性転化の確定診断を行っているが、急性転化を早期に予知することは困難である。 また、慢性型からの急性転化を判定する方法として、慢性型ATL患者より採取した試料中sCD30濃度を測定する方法が知られている(特許文献1)。 ATLの予後は極めて不良と言われている。現在のところ、mLSG15と呼ばれる多剤併用療法で最も良好な生存率が得られているが、生存期間の中央値は約13ヵ月、3年生存割合は約24%と依然極めて不良である。最近、CCR4(ケモカイン受容体4)をターゲットとした抗体医薬であるポテリジオ(登録商標)が承認され、第2相試験で再発高悪性度ATLに対する奏功率が50%であった事が報告されている。化学療法で十分な効果が期待できない場合は、骨髄移植(同種造血幹細胞移植)が積極的に行われるようになり、一部の患者では治癒も期待できるようになってきた(非特許文献4参照)。 インターロイキン−2受容体(以下、IL−2Rという)はα鎖(CD25)、β鎖(CD122)、γ鎖(CD132)の3つの細胞膜表面タンパク質から構成され、α鎖はプロテアーゼによって切断され、sIL−2Rとして血中に遊離することが報告されている(一般的に、sIL−2Rとはプロテアーゼにより切断されたα鎖のことを指す)。ATL細胞は制御性T細胞の表面形質を有しており、表面にCD25(IL−2Rα鎖)を発現しているため、sIL−2RはATLの病態モニタリングや予後予測の有用な指標として活用されている。 CD30は、TNFRスーパーファミリーに属する受容体で、ホジキン病細胞、ステルンベルグ−リード(Sternberg-Reed)細胞、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)細胞、ATL細胞で発現していることが報告されている(非特許文献5、6参照)。その後、CD30の細胞外部分が切断された可溶型CD30(以下、sCD30と記す)が血中に存在すること事が報告されている。ATL患者とsCD30との関連については、健常人と比べATL患者血液中のsCD30量が多いこと、すでに増悪化した急性型ATLおよびリンパ腫型ATLにおいて、化学療法により寛解となるとsCD30量が低下すること、寛解した後に再発した際にsCD30量が増加することが報告されている(非特許文献7参照)。特開2008−292474号公報Proceeding of the National Academy of Sciences of the United States of America, Vol.78(10), pp.6476-6480. 1981Proceeding of the National Academy of Sciences of the UnitedStates of America, Vol.79, 2031-2035. 1982Sciences, Vol.219, pp.856-859. 1983International Journal of Hematology, Vol.69(3), pp.203-205. 1999Nature, Vol.299(5878), pp.65-67, 1982Histopathology, Vol.26(6), pp.539-546, 1995Cancer science, Vol.96(11), pp.810-815, 2005 本発明の課題は、慢性型ATL患者における急性転化の早期診断による慢性型ATL患者のQOL向上を指向し、慢性型のATL患者における急性転化し易さを試験する方法、及び、当該方法のためのキットを提供することにある。 発明者らは、本課題の解決のために鋭意検討し、慢性型のATL患者の試料中sCD30およびsIL−2Rを測定し、sIL−2R濃度が2500U/mL以上となり、sIL−2R濃度/sCD30濃度が時間経過とともに減少しながら10に近づく場合、又は、sIL−2R濃度が2500U/mL以上となり、sIL−2R濃度/sCD30濃度が10以下である場合、急性転化しやすいという、という知見を見いだし、本発明を完成させた。 すなわち、本発明は、[1]慢性型のATL患者より採取された試料中のsCD30とsIL−2Rとを測定し、sIL−2R濃度が2500U/mL以上となり、sIL−2R濃度/sCD30濃度が(A)時間経過とともに減少しながら10に近づく場合、又は、(B)10以下である場合には、急性転化しやすいという基準と比較することにより、慢性型のATL患者の急性転化のし易さを試験する方法に関する。この発明の他の態様としては、慢性型のATL患者より採取された試料中のsCD30とsIL−2Rとを測定し、sIL−2R濃度が2500U/mL以上となり、sIL−2R濃度/sCD30濃度が(A)時間経過とともに減少しながら10に近づく場合、又は(B)10以下である場合には、急性転化しやすいという基準と比較することにより、慢性型のATL患者の急性転化のし易さを試験するためのデータの収集方法等を挙げることができる。 また本発明は、[2]sIL−2R測定用試薬とsCD30測定用試薬を含有することを特徴とする、慢性型のATL患者の急性転化のし易さを試験するキットに関する。この発明の他の態様としては、sIL−2R測定用試薬とsCD30測定用試薬に加えて、試料中のsCD30とsIL−2Rとの測定の結果、sIL−2R濃度が2500U/mL以上となり、sIL−2R濃度/sCD30濃度が(A)時間経過とともに減少しながら10に近づく場合、又は(B)10以下である場合には、急性転化しやすい、という慢性型のATL患者の急性転化のし易さについての記載を含む添付文書を含有することを特徴とする、慢性型のATL患者の急性転化のし易さを試験するためのキットを挙げることができる。 本発明により、慢性型のATL患者の急性転化のし易さを試験する方法、及び当該方法のためのキットが提供され、慢性型のATL患者の急性転化の早期診断が可能となり、慢性型ATL患者のQOLが向上し得る。 本発明において、慢性型のATLとは、ATLの分類基準によって4種類の臨床病型に分類されるATLのうちの1つであり、早急な治療を必要とせず、主として経過観察が行われる状態のATLである。本発明において、急性転化とは、慢性型のATLより急性型のATLへ移行することを意味する。急性転化により慢性型のATLより急性型のATLへ移行すると、早急な治療が必要となる。 本発明において、慢性型のATL患者より採取された試料としては、当該患者から採取された試料であって、sIL−2R及びsCD30が測定され得る試料であれば特に制限はなく、例えば血漿、血清等が挙げられる。 本発明において、慢性型のATL患者の急性転化のし易さの試験は、例えば以下の工程(1)〜(8)を含有する方法により行うことができる。(1)慢性型のATL患者より試料を採取する工程;(2)工程(1)で採取された試料を用いて、当該試料中のsIL−2Rを測定する工程;(3)予め作成したsIL−2R濃度とsIL−2Rの測定値との関係を表す検量線と、工程(2)でのsIL−2Rの測定値とから、当該試料中のsIL−2R濃度を決定する工程;(4)工程(1)で採取された試料を用いて、当該試料中のsCD30を測定する工程;(5)予め作成したsCD30濃度とsCD30の測定値との関係を表す検量線と、工程(4)でのsCD30の測定値とから、当該試料中のsCD30濃度を決定する工程;(6)工程(3)で決定されたsIL−2R濃度と、工程(5)で決定されたsCD30濃度とから、sCD30濃度に対するsIL−2R濃度の比、すなわち、sIL−2R濃度/sCD30濃度(以下、sIL−2R/sCD30と記す)を決定する工程;(7)工程(1)〜工程(6)を複数の時点で行い、それぞれの時点でのsIL−2R濃度、及び、sIL−2R/sCD30を比較し、sIL−2R濃度が2500U/mL以上であり、sIL−2R/sCD30が時間経過とともに減少しながら10に近づく場合に、当該患者は急性転化し易い、という基準と比較する工程;(8)工程(7)における基準との比較から、当該患者の急性転化のし易さを判定する工程。 また、上記工程(7)において、「sIL−2R/sCD30が時間経過とともに減少しながら10に近づく」とは、具体的には、複数の異なる時点で算出したsIL−2R/sCD30のうち、遅い(晩い)時点で算出したsIL−2R/sCD30の値の方が早い時点で算出したsIL−2R/sCD30の値よりも10に近いことをいう。なお、3つ以上の異なる時点でsIL−2R/sCD30を算出した場合、近似曲線を作成するなどしてsIL−2R/sCD30が時間の経過とともに、減少しながら10に近づくことを確認してもよい。 また、本発明において、慢性型のATL患者の急性転化のし易さの試験は、例えば以下の工程(1)〜(8)を含有する方法により行うこともできる。(1)慢性型のATL患者より試料を採取する工程;(2)工程(1)で採取された試料を用いて、当該試料中のsIL−2Rを測定する工程;(3)予め作成したsIL−2R濃度とsIL−2Rの測定値との関係を表す検量線と、工程(2)でのsIL−2Rの測定値とから、当該試料中のsIL−2R濃度を決定する工程;(4)工程(1)で採取された試料を用いて、当該試料中のsCD30を測定する工程;(5)予め作成したsCD30濃度とsCD30の測定値との関係を表す検量線と、工程(4)でのsCD30の測定値とから、当該試料中のsCD30濃度を決定する工程;(6)工程(3)で決定されたsIL−2R濃度と、工程(5)で決定されたsCD30濃度とから、sIL−2R/sCD30を決定する工程;(7)sIL−2R濃度が2500U/mL以上であり、sIL−2R/sCD30が10以下である場合に、当該患者は急性転化し易い、という基準と比較する工程;(8)工程(7)における基準との比較から、当該患者の急性転化のし易さを判定する工程。 また、上記工程(7)において、「sIL−2R/sCD30が10以下である場合」のsIL−2R/sCD30の値としては、10以下であれば特に制限されず、例えば8.5以下、8.0以下、7.5以下、7.0以下、6.5以下、6.0以下、5.5以下、5.0以下、4.5以下、4.0以下、3.5以下、3.0以下、2.5以下、2.0以下、1.7以下等を挙げることができる。 本発明において、慢性型のATL患者より採取された試料中のsIL−2Rの測定は、公知の生体試料中のsIL−2R濃度の測定方法及びキットを用いることにより行うことができる。当該方法としては、生体試料中のsIL−2Rを測定可能とする方法であれば特に制限はないが、例えば免疫学的測定法が挙げられる。 本発明において、慢性型のATL患者より採取された試料中のsCD30の測定は、公知の生体試料中のsCD30濃度の測定方法及びキットを用いることにより行うことができる。当該方法としては、生体試料中のsCD30を測定可能とする方法であれば特に制限はないが、例えば免疫学的測定法が挙げられる。 免疫学的測定法としては、任意の公知の免疫学的測定方法があげられ、例えば放射免疫測定法(RIA)、酵素免疫測定法(EIAまたはELISA)、蛍光免疫測定法(FIA)、間接蛍光抗体法(Indirect Fluorescence assay)、発光免疫測定法(Luminescentimmunoassay)、物理化学的測定法[比濁免疫測定法(TIA)、ラテックス凝集法(LAPIA)、微粒子計数免疫凝集測定法(PCIA)]、ウェスタンブロッティング法等が挙げられるが、ELISA法が好ましく用いられる[単クローン抗体実験マニュアル(講談社サイエンティフィック、1987)、続生化学実験講座5免疫生化学研究法(東京化学同人、1986)]。 免疫学的測定法においては、サンドイッチ法、競合法等を用いることができ、また、ホモジアニス法、ヘテロジニアス法等も用いることができる。 本発明において、試料中のsIL−2Rは、sIL−2R測定用試薬を用いて測定することができる。sIL−2R測定用試薬としては、例えばsIL−2Rに特異的に結合する第1の抗体が結合した固相、及びsIL−2Rに特異的に結合する第2の抗体に標識が結合した標識化第2抗体を含む試薬を例示することができる。第1の抗体におけるsIL−2Rの抗原決定部位と、第2の抗体におけるsIL−2Rの抗原決定部位とは同じであっても異なっていてもよい。 標識化第2抗体における標識としては、例えば酵素や放射性物質等が挙げられる。酵素としては、例えばペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ等が挙げられる。放射性物質としては、例えば125I等が挙げられる。 第1の抗体が結合した固相における該抗体と固相との結合としては、例えば非共有結合、共有結合等が挙げられる。非共有結合としては、例えば物理吸着等が挙げられる。共有結合としては、例えば該抗体と固相との直接的な結合や、リンカー等を介した該抗体と固相との間接的な結合等が挙げられる。 固相としては、第1の抗体を固定化し、sIL−2Rの免疫学的測定法を可能にする固相であれば特に制限はなく、例えばマイクロタイタープレートなどのポリスチレンプレート、ガラス製または合成樹脂製の粒子物(ビーズ)、ガラス製または合成樹脂製の球状物(ボール)、ラテックス、磁性粒子、ニトロセルロース膜などの各種メンブレン、合成樹脂製の試験管等が挙げられる。 第1の抗体が結合した固相を用いることにより、検体中のsIL−2Rと、該固相上の該抗体との反応後、固相を洗浄することにより、未反応の物質を固相から除去することができるので好ましい。このsIL−2R測定用試薬を用いることにより、試料中のsIL−2Rを測定することができる。試料中のsIL−2R濃度は、例えば以下の工程[1]〜[5]を含む方法により決定することが出来る。[1]固相上に結合した第1の抗体と試料中のsIL−2Rとを反応させて、固相上に第1の抗体とsIL−2Rの複合体を形成させる工程;[2]工程[1]で生成した複合体と標識化第2抗体とを反応させて、固相上に第1の抗体、sIL−2R及び標識化第2抗体の複合体を形成させる工程;[3]工程[2]での固相を洗浄し、未反応の物質を固相上から除去する工程;[4]工程[3]の後、固相上に生成した第1の抗体、sIL−2R及び標識化第2抗体の複合体中の標識量を測定する工程;[5]工程[4]での測定値と、予め作成したsIL−2R濃度と標識量との関係を表す検量線とから、該試料中のsIL−2R濃度を決定する工程。 尚、上記[1]工程と[2]工程との間に洗浄工程を挿入してもよい。 試料中のsIL−2R濃度を決定する際に使用する検量線は、既知濃度のsIL−2Rを用いて作成することができる。すなわち、既知濃度のsIL−2Rを含む試料を、例えば上記の測定法に供し、得られる情報量とsIL−2R濃度とを関係付けることにより検量線を作成することができる。ここで、情報量としては、例えば吸光度、蛍光強度、発光強度、放射活性、濁度等が挙げられる。作成した検量線と測定値とから、測定に使用した試料中のsIL−2R濃度を決定することができる。 検量線作成および試料中のsIL−2Rの測定においては、市販のsIL−2R測定用キットを用いることもできる。市販のsIL−2R測定用キットとしては、例えばセルフリーN IL−2R(協和メデックス社製)、デタミナーCL IL−2R(協和メデックス社製)、シーメンス・イムライズ IL−2R II(シーメンス社製)やシーメンス・イムライズIL−2R II 2000(シーメンス社製)、IL−2Rテスト・BML(ビー・エム・エル社製)等が挙げられる。 本発明において、試料中のsCD30は、sCD30測定用試薬を用いて測定することができる。sCD30測定用試薬としては、sCD30に特異的に結合する第1の抗体が結合した固相、及びsCD30に特異的に結合する第2の抗体に標識が結合した標識化第2抗体を含む試薬を例示することができる。第1の抗体におけるsCD30の抗原決定部位と、第2の抗体におけるsCD30の抗原決定部位とは同じであっても異なっていてもよい。標識化第2抗体における標識としては、例えば前述の標識等が挙げられる。 第1の抗体が結合した固相における該抗体と固相との結合としては、例えば前述の結合等が挙げられる。 固相としては、第1の抗体を固定化し、sCD30の免疫学的測定法を可能にする固相であれば特に制限はなく、例えば前述の固相等が挙げられる。 第1の抗体が結合した固相を用いることにより、検体中のsCD30と、該固相上の該抗体との反応後、固相を洗浄することにより、未反応の物質を固相から除去することができるので好ましい。このsCD30測定用試薬を用いることにより、試料中のsCD30を測定することができる。試料中のsCD30濃度は、例えば上記のsIL−2R濃度測定方法と同様の方法で決定することができる。 試料中のsCD30濃度を決定するに際して使用する検量線は、既知濃度のsCD30を用いて作成することができる。すなわち、既知濃度のsCD30を含む試料を、例えば上記の測定法に供し、得られる情報量とsCD30濃度とを関係付けることにより検量線を作成することができる。ここで、情報量としては、例えば吸光度、蛍光強度、発光強度、放射活性、濁度等が挙げられる。作成した検量線と測定値とから、測定に使用した試料中のsCD30濃度を決定することができる。 検量線作成および試料中のsCD30の測定においては、市販のsCD30測定用キットを用いることもできる。市販のsCD30測定用キットとしては、例えばHuman sCD30 Platinum ELISA (eBioscience社製)等を挙げることができる。 本発明におけるsIL−2R濃度の2500U/mLは、セルフリーN IL−2R(協和メデックス社製)の添付文書に記載された方法、すなわち、10%(W/V)インターロイキン2(IL−2)で4日間刺激した正常ヒトIL−2依存性T細胞の無細胞培養上清(無希釈)中に含まれるsIL−2R濃度を1000U/mLとする方法により決定される濃度、又は、セルフリーN IL−2Rでの測定と相関関係が認められる、他の測定により決定される濃度である。かかる他の測定により決定される濃度としては、セルフリーN IL−2Rを用いた測定により決定されるsIL−2R濃度に換算したときに、当該sIL−2R濃度と、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは100%同一を示す濃度を挙げることができる。 本発明におけるsCD30濃度は、Human sCD30 Platinum ELISA(eBioscience社製)の添付文書に記載された方法により決定される濃度、又は、Human sCD30 Platinum ELISAでの測定と相関関係が認められる、他の測定により決定される濃度である。かかる他の測定により決定される濃度としては、Human sCD30 Platinum ELISA(eBioscience社製)を用いた測定により決定されるsCD30濃度に換算したときに、当該sCD30濃度と、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは100%同一を示す濃度を挙げることができる。なお、Human sCD30 Platinum ELISA(eBioscience社製)の添付文書に記載された濃度単位「ng/mL」と本発明における濃度単位「U/mL」とは同一である。 本発明は、また、sIL−2R測定用試薬とsCD30測定用試薬を含有することを特徴とする、慢性型のATL患者の急性転化のし易さを試験するキットに関する。本発明のキットに用いられるsIL−2R測定用試薬としては、例えば前述のsIL−2R測定用試薬等が挙げることができ、sCD30測定用試薬としては、例えば前述のsCD30測定用試薬等が挙げることができる。上記キットには、sIL−2R測定用試薬やsCD30測定用試薬の他、慢性型のATL患者の急性転化のし易さ(リスク)を判断するための指標、例えば、慢性型のATL患者より採取された試料中のsCD30とsIL−2Rとを測定し、sIL−2R濃度が2500U/mL以上となり、sIL−2R濃度/sCD30濃度が(A)時間経過とともに減少しながら10に近づく場合、又は(B)10以下である場合には、急性転化しやすいという基準と比較する旨が記載された添付文書を含むものが好ましい。 以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。 急性転化した6症例のsCD30濃度とsIL-2R濃度 慢性型から急性型へ急性転化した6症例(インフォームドコンセントを取得)のそれぞれの症例について、sIL−2R濃度、sCD30濃度、及び、sIL−2R/sCD30を決定した。その結果を表1に示す。sCD30濃度はsCD30測定用キット[Human sCD30 Platinum ELISA (eBioscience社製)]を用いて、sIL−2R濃度はsIL−2R測定キット[セルフリーN IL−2Rメデックス(協和メデックス社製)]を用いて測定した。 尚、表1中の急性転化前観察期間とは、慢性型のATL症例として観察を開始した日、すなわち、慢性型のATL患者より採取した血液から得られた血清を用いて、当該血清中のsIL−2R濃度とsCD30濃度を測定した日を基準とし、急性転化と診断されるまでの期間(日)を示している。 症例1は、胸水に腫瘍病変が確認されたため急性型(急性転化)と診断された。症例2、症例3、症例5、症例6は、LDH活性が正常値上限の2倍を超えたため急性型(急性転化)と診断された。症例4は、高カルシウム血症となったため急性型(急性転化)と診断された。 症例1は、慢性型として観察を開始した時点で、sIL−2R濃度が2691U/mL、sIL−2R/sCD30は8.6であった。この時点で急性転化しやすい状態であり、観察開始から168日目で急性転化と診断された。急性転化と診断された時点で、sIL−2Rは3126U/mLにまで上昇し、sIL−2R/sCD30比は1.6まで低下していた。 症例2は、慢性型として観察を開始した時のsIL−2R濃度が2929U/mL、sIL−2R/sCD30比は11.4であった。観察開始から51日目に急性転化と診断されたが、この時点でのsIL−2R濃度は11750U/mLにまで上昇し、sIL−2R/sCD30は7.6まで低下していた。 症例3は、慢性型として観察を開始した時のsIL−2R濃度が2330U/mL、sIL−2R/sCD30は14.5であった。観察開始から244日目に急性転化と診断されたが、この時点でのsIL−2Rは5959U/mLにまで上昇し、sIL−2R/sCD30は11.1まで低下していた。 症例4は、慢性型として観察を開始した時のsIL−2R濃度が3478U/mL、sIL−2R/sCD30は18.3であった。観察開始から922日目に急性転化と診断されたが、この時点でのsIL−2R濃度は20912U/mLにまで上昇し、sIL−2R/sCD30は9.1まで低下していた。 症例5は、慢性型として観察を開始した時のsIL−2R濃度が9000U/mL、sIL−2R/sCD30は23.9であった。観察開始から202日目に急性転化と診断されたが、この時点でのsIL−2R濃度は39916U/mLにまで上昇し、sIL−2R/sCD30は11.5まで低下していた。 症例6は、慢性型として観察を開始した時のsIL−2R濃度が10842U/mL、sIL−2R/sCD30比は13.0であった。観察開始から31日目に急性転化と診断されたが、この時点でのsIL−2R濃度は16228U/mLにまで上昇し、sIL−2R/sCD30は7.3まで低下していた。 これからの結果より、急性転化した6症例では、急性転化前でsIL−2R濃度が2500U/mL以上で、急性転化した時点でのsIL−2R/sCD30が急性転化前に比べて減少しながら10に近づいている(症例2〜6)か、又は、急性転化前でsIL−2R濃度が2500U/mL以上で、かつ、sIL−2R/sCD30が10以下であり、急性転化した時点でのsIL−2R/sCD30が急性転化前に比べてさらに低い値に変化している(症例1)ことがわかる。従って、慢性型のATL患者由来の試料中のsIL−2R濃度が2500U/mL以上で、かつ、sIL−2R/sCD30が時間経過とともに減少し10に近づく場合、及び、慢性型のATL患者由来の試料中のsIL−2R濃度が2500U/mL以上で、かつ、sIL−2R/sCD30が10以下の場合は、当該患者は急性転化し易い、ということが分かった。 このように、慢性型のATL患者由来の試料中のsIL−2R濃度とsCD30濃度をモニターすることで、急性転化のし易さを事前に予測することでき、早期に適切な治療を開始することができる。 本発明により、慢性型のATL患者における急性転化を試験する方法、及び、当該方法のためのキットが提供される。 慢性型の成人T細胞白血病患者より採取された試料中の可溶性CD30(sCD30)と可溶性インターロイキン−2受容体(sIL−2R)とを測定し、sIL−2R濃度が2500U/mL以上となり、sIL−2R濃度/sCD30濃度が(A)時間経過とともに減少しながら10に近づく場合、又は、(B)10以下である場合には、急性転化しやすいという基準と比較することにより、慢性型の成人T細胞白血病患者の急性転化のし易さを試験する方法。 可溶性インターロイキン−2受容体測定用試薬と可溶性CD30測定用試薬を含有することを特徴とする、慢性型の成人T細胞白血病患者の急性転化のし易さを試験するキット。 【課題】 慢性型成人T細胞白血病(ATL)患者における急性転化の早期診断による慢性型のATL患者のQOL向上を指向し、慢性型のATL患者における急性転化を試験する方法を提供する。【解決手段】 慢性型のATL患者より採取された試料中の可溶性CD30(sCD30)と可溶性インターロイキン−2受容体(sIL−2R)とを測定し、sIL−2R濃度が2500U/mL以上となり、sIL−2R濃度/sCD30濃度が(A)時間経過とともに減少しながら10に近づく場合、又は、(B)10以下である場合には、急性転化しやすいという基準と比較することにより、慢性型のATL患者の急性転化のし易さを試験する方法。【選択図】 なし


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る