生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_脂肪萎縮症のモデル動物
出願番号:2013004008
年次:2014
IPC分類:G01N 33/15,A61P 3/10,A61K 45/00,A01K 67/027


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佐藤 荘 審良 静男 JP 2014134522 公開特許公報(A) 20140724 2013004008 20130111 脂肪萎縮症のモデル動物 国立大学法人大阪大学 504176911 特許業務法人三枝国際特許事務所 110000796 佐藤 荘 審良 静男 G01N 33/15 20060101AFI20140627BHJP A61P 3/10 20060101ALI20140627BHJP A61K 45/00 20060101ALI20140627BHJP A01K 67/027 20060101ALN20140627BHJP JPG01N33/15 ZA61P3/10A61K45/00A01K67/027 5 1 OL 6 特許法第30条第2項適用申請有り 主催者 公益財団法人大阪バイオサイエンス研究所及び大阪市 集会名 大阪バイオサイエンス研究所 創立25周年記念シンポジウム 開催日 平成24年12月18日 4C084 4C084AA17 4C084ZC35 本発明は、脂肪萎縮症のモデル動物及びその利用に関する。 脂肪萎縮症(リポジストロフィー)は、脂肪組織が病的に萎縮又は欠如する疾患である。脂肪萎縮症は、高率に糖尿病を発症するため、脂肪萎縮性糖尿病とも呼ばれる。脂肪萎縮症は、その成因によって先天性脂肪萎縮症と後天性脂肪萎縮症に分類され、更に萎縮が生じる部位により全身性脂肪萎縮症と部分性脂肪萎縮症に分類される。 脂肪萎縮症の発症メカニズムは、未だ十分には解明されていないが、先天性脂肪萎縮症の場合、AGPAT2遺伝子、BSCL2遺伝子、LMNA遺伝子、及びPPARγ遺伝子等における変異が関与していると考えられている。一方、後天性脂肪萎縮症については、脂肪組織の破壊をもたらす自己抗体及びウイルス感染等が報告されている。さらにHIV治療薬の副作用による発症の増加が報告されている。例えば、サニルブジン製剤を用いたHIV感染症の治療においては、5%以上の頻度で脂肪萎縮症の発症が報告されている(非特許文献1)。また、マラビロク製剤及びラルテグラビルカリウム製剤を用いたHIV感染症の治療においても脂肪萎縮症の発症が報告されており、益々その数は増加すると考えられるため、その解決は重要な課題の一つである。 脂肪萎縮症が発症すると、エネルギー貯蔵庫である脂肪組織の減少又は消失により、血管、骨格筋、肝臓、及び膵臓等の非脂肪組織に脂肪は再分配される。そして、血中の遊離脂肪酸及び中性脂肪の濃度が上昇するだけでなく、非脂肪組織内の脂質濃度も上昇し、脂肪毒性、糖毒性、細胞内中性脂肪蓄積、インスリン抵抗性等が惹起される。その結果、高血糖、インスリン血症、高中性脂肪血症、脂肪肝等を伴う糖尿病が高頻度で発症する。現時点で脂肪萎縮症を効果的に予防又は治療する手段は無く、効果的な予防薬又は治療薬の出現が望まれている。糖尿病カレントライブラリー 7 脂肪細胞と脂肪組織,門脇孝等,株式会社文光堂,2007,5,15,p.220〜223 上記のような現状の下、本発明は、脂肪萎縮症の予防及び/又は治療に有効な手段の開発に有用なスクリーニングシステム、及びそれを用いた脂肪萎縮症の予防及び/又は治療に有効な薬剤のスクリーニング方法を提供することを主な目的とする。 本発明者等は、自然免疫機構、特に炎症性サイトカインであるIL12の発現の解析用に開発されたTrib1遺伝子欠損マウスについて、組織学的観点から更なる解析を行ったところ、驚くべきことに、該マウスが典型的な脂肪萎縮症を発症していることを見出し、該マウスが脂肪萎縮症のモデル動物となることを突き止め、本発明を完成するに至った。 代表的な本発明は、以下の通りである。項1.Trib1機能欠損非ヒト動物を含む、脂肪萎縮症の予防及び/又は治療に有効な物質をスクリーニングシステム。項2.Trib1機能欠損非ヒト動物を用いて脂肪萎縮症の予防及び/又は治療に有効な物質をスクリーニングする方法。項3.Trib1機能欠損非ヒト動物に被験物質を投与する工程、及びTrib1機能欠損動物の脂肪組織を解析する工程、を含む、項2に記載の方法。項4.項2又は3に記載の方法によって得られる脂肪萎縮症の予防及び/又は治療剤。項5.チアゾリジン誘導体である項4に記載の脂肪委縮症の予防及び/又は治療剤。 本発明において、Trib1機能欠損非ヒト動物は、脂肪萎縮症に関する理解を更に深めるために有用であり、それを用いたスクリーニングシステム又は方法によって、脂肪萎縮症の予防又は治療に有効な物質の効率的なスクリーニングを可能とする。本発明のスクリーニング方法で得られる脂肪萎縮症の予防及び/又は治療に有効な物質は、脂肪萎縮症に伴う糖尿病やメタボリックシンドローム等の予防及び/又は治療にも有効である。Trib1遺伝子欠損マウス及び野生型のマウスの脂肪組織を示すMRI画像である。Trib1遺伝子欠損マウス及び野生型のマウスの精巣周囲の脂肪組織の写真である。 「Trib1」とは、トリブルタンパク質ファミリーの一つとして同定され、タンパク質の分解に関わる機能を有するタンパク質である。 「Trib1機能欠損」とは、Trib1遺伝子がコードしているTrib1タンパク質の機能が欠損していることを意味し、Trib1タンパク質の生産量が正常な場合と比較して低下している場合、及び生産されたTrib1タンパク質の機能が低下している場合が含まれる。ここで、Trib1タンパク質の機能としては、それが低下することによって、動物個体において脂肪萎縮症が発症する機能であれば特に制限されず、Trib1の任意の機能が含まれる。 Trib1の機能を欠損させる手段は、特に制限されず、公知の又は今後開発される任意の手段を適宜選択して実施することができる。例えば、Trib1をコードする遺伝子のコーディング領域、又はプロモーター、エンハンサー、若しくはサプレッサー等の発現制御領域に人為的に変異を加え、当該遺伝子の機能を破壊又は発現を抑制する方法等を挙げることができる。人為的な変異としては、塩基配列の置換、挿入、及び/又は欠失等を挙げることができる。また、Trib1機能の欠損は、正常なTrib1タンパク質又はそのmRNAを分解若しくは阻害する物質を生産するように非ヒト動物に改変を加えることによっても行うこともできる。 Trib1遺伝子に変異を加えることにより非ヒト動物のTrib1の機能を欠損させる場合、染色体上の両アレルに同じ変異を導入することが、より確実にTrib1の機能を欠損させるという観点で好ましい。しかし、変異した遺伝子がコードするタンパク質がドミナントネガティブである場合は、染色体上の一方のアレルのみの変異であっても十分にTrib1の機能が欠損し得るため、必ずしも両アレルに同じ変異を導入する必要はない。 上記のような手段を用いたTrib1の機能が欠損した非ヒト動物の作製方法は、特に制限されず、常法のトランスジェニック動物又はノックアウト動物の作成方法から適宜選択して実施することができる。公知のTrib1遺伝子を利用する場合は、相同組換え法を利用することが好ましい。 Trib1遺伝子の塩基配列は、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウマ、ニワトリ、及びブタ等に由来するものが既に報告されており、公共のデータベースを通じて容易に入手することができる(例えば、www.uniprot.org/uniprot/)。公共のデータベースに未登録の動物のTrib1遺伝子については、常法に従ってクローニングし、取得することができる。「非ヒト動物」としては、本来的にTrib1遺伝子を有するヒト以外の動物であれば特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、マウス、ラット、モルモット、及びハムスター等のげっ歯類、イヌ、ネコ、ウサギ、ウシ、サル、ブタ等の哺乳類を挙げることが出来る。取り扱いの容易性等の観点からマウスが好ましい。 Trib1の機能が欠損した非ヒト動物は、脂肪組織の縮小、脂肪細胞の縮小、及び高脂肪食を与えるとメタボリックシンドロームを呈するという脂肪萎縮症に特有の特徴を有する。 Trib1の機能が欠損した非ヒトモデル動物を含む脂肪萎縮症の予防及び/又は治療に有効な物質のスクリーニングシステム、並びに当該ヒトモデル動物を用いたスクリーニング方法は、該非ヒトモデル動物を脂肪萎縮症のモデル動物として用いる限り、その態様は特に制限されず、任意の態様により実施することができる。例えば、被験物質をTrib1の機能が欠損した非ヒト動物に投与し、その前後の該非ヒト動物の脂肪組織、血中脂肪酸濃度、血中中性脂肪濃度、インスリン抵抗性等を解析又は測定することにより実施することが出来る。 被験物質の投与前と比較して、被験物質の投与後に脂肪組織が増大している場合、血中脂肪酸濃度が低下している場合、及び/又は血中中性脂肪濃度が低下している場合に、該被験物質は脂肪萎縮症の予防及び/又は治療に有効であると判断できる。脂肪組織の解析、並びに血中脂肪酸濃度及び血中中性脂肪濃度の測定は、任意の手法で行うことが出る。例えば、脂肪組織の解析は、MRIを用いて実施することができる。 Trib1の機能が欠損した非ヒト動物への被験物質の投与経路は特に制限されず、その物質の性質等に応じて適宜選択することができる。例えば、経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、及び経皮投与等から適宜選択することができる。被験物質の投与量、濃度、及び投与期間も適宜選択することが出来る。 被験物質として用いる物質は特に制限されず、有機化合物、無機化合物、核酸、ペプチド等から適宜選択することが出来る。例えば、被験物質としては、脂肪組織を肥大する作用等を有する既存の医薬物質又はその誘導体を挙げることができる。さらに具体的にはチアゾリン誘導体を挙げることができる。 実施例1 Trib1遺伝子欠損マウスを公知の方法(J.E.M. Vol. 204, p. 2233-2239, 2009)に従って作製した。11.7 T MRIスキャナー(AVANCE-II 500 WB; Bruker BioSpin, Ettlingen, Germany)を用い、Trib1遺伝子欠損マウス及び野生型マウス(コントロール)について、常法に従いin vivoイメージを取得した。マウスは1.0〜1.5重量%のイソフルランで麻酔し、MRIを用いて胴回りの画像取得に供した。MRIイメージングには、次のパラメータを使用した:視野,2.5 cm x 2.5 cm;マトリックスサイズ, 256 x 256; スライス厚, 0.5 mm; 繰り返し時間 5000ms; エコー時間, 25.2ms; 平均, 4; 走査時間, 5min。得られたマウスの胴回りの画像を図1(左側が野生型であり、右側がTrib1遺伝子欠損マウスである)に示す。 図1に示されるように、Trib1遺伝子欠損マウスでは野生型のマウスと比較して明らかな脂肪組織の萎縮が確認された。そして、病理学的観点からもTrib1遺伝子欠損マウスは脂肪萎縮症を発症していることが確認された。これにより、Trib1遺伝子欠損動物を脂肪萎縮症のモデル動物とすることが可能であることが判明した。 実施例2 実施例1と同様に公知の方法に従って作製したTrib1遺伝子欠損マウス及び野生型マウスから80mlのPBSを用いて潅流した後、精巣周囲の脂肪組織を回収し、デジタルカメラで撮影した。その写真を図2に示す。 図2に示す通り、Trib1遺伝子欠損マウスから回収した脂肪組織は野生型と比較して、明らかに萎縮していた。脂肪細胞には殆どTrib1が発現しておらず、一方で、マクロファージといった血球系の細胞にはTrib1は強く発現している。Trib1欠損させた血球系の細胞を野生型のマウスに移植したマウスにおいても同様の病態を示すことから、血球系でのTrib1の欠損が脂肪萎縮症を発症させている原因と考えられる。Trib1機能欠損非ヒトモデル動物を含む、脂肪萎縮症の予防及び/又は治療に有効な物質のスクリーニングシステム。Trib1機能欠損非ヒトモデル動物を用いて脂肪萎縮症の予防及び/又は治療に有効な物質をスクリーニングする方法。Trib1機能欠損非ヒトモデル動物に被験物質を投与する工程、及びTrib1機能欠損動物の脂肪組織を解析する工程、を含む、請求項2に記載の方法。請求項2又は3に記載の方法によって得られる脂肪萎縮症の予防及び/又は治療剤。チアゾリジン誘導体である請求項4に記載の脂肪委縮症の予防及び/又は治療剤。 【課題】脂肪萎縮症の予防又は治療に有効な手段の開発に有用なモデル動物、並びにそれを用いた脂肪萎縮症の予防又は治療に有効な薬剤のスクリーニングシステム及び方法を提供する。【解決手段】Trib1機能欠損非ヒトモデル動物を含む、脂肪萎縮症の予防及び/又は治療に有効な物質のスクリーニングシステム。【選択図】図1


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