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タイトル:公表特許公報(A)_血管内皮増殖因子(VEGF)受容体のインヒビターおよびその使用方法
出願番号:2012547128
年次:2013
IPC分類:C07K 16/28,C12N 15/02,C12N 5/10,C12N 15/09,C07K 14/78,A61K 39/395,A61P 43/00,A61P 35/00,A61P 27/02,A61P 9/10,A61P 29/00,A61P 19/02,A61P 9/00,G01N 33/15,G01N 33/50


特許情報キャッシュ

シュルシンガー, ジョセフ ヤン, ヤン JP 2013515776 公表特許公報(A) 20130509 2012547128 20101220 血管内皮増殖因子(VEGF)受容体のインヒビターおよびその使用方法 イェール ユニバ−シティ− 593152720 Yale University 山本 秀策 100078282 安村 高明 100062409 森下 夏樹 100113413 シュルシンガー, ジョセフ ヤン, ヤン US 61/290,789 20091229 C07K 16/28 20060101AFI20130412BHJP C12N 15/02 20060101ALI20130412BHJP C12N 5/10 20060101ALI20130412BHJP C12N 15/09 20060101ALI20130412BHJP C07K 14/78 20060101ALI20130412BHJP A61K 39/395 20060101ALI20130412BHJP A61P 43/00 20060101ALI20130412BHJP A61P 35/00 20060101ALI20130412BHJP A61P 27/02 20060101ALI20130412BHJP A61P 9/10 20060101ALI20130412BHJP A61P 29/00 20060101ALI20130412BHJP A61P 19/02 20060101ALI20130412BHJP A61P 9/00 20060101ALI20130412BHJP G01N 33/15 20060101ALI20130412BHJP G01N 33/50 20060101ALI20130412BHJP JPC07K16/28C12N15/00 CC12N5/00 102C12N15/00 AC07K14/78A61K39/395 NA61P43/00 111A61P35/00A61P27/02A61P9/10 101A61P29/00 101A61P19/02A61P9/00A61K39/395 DG01N33/15 ZG01N33/50 Z AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW US2010061296 20101220 WO2011090648 20110728 200 20120807 2G045 4B024 4B065 4C085 4H045 2G045AA40 2G045BB03 2G045BB20 2G045CB01 2G045DA36 2G045FB03 4B024AA01 4B024BA53 4B024CA04 4B024DA02 4B024EA04 4B024GA03 4B024GA10 4B024GA13 4B024GA14 4B065AA92X 4B065AA93Y 4B065AB01 4B065AC14 4B065BA03 4B065BA04 4B065BA08 4B065BB23 4B065BB29 4B065BD14 4B065CA25 4B065CA44 4C085AA13 4C085AA14 4C085BB36 4C085CC02 4C085CC23 4C085DD62 4C085DD88 4C085EE01 4H045AA11 4H045DA76 4H045EA20 4H045FA74 4H045GA26 4H045GA40 関連出願への相互参照 本出願は、2009年12月29日に出願された米国仮出願番号61/290,789に関連し、この出願への優先権を主張する。上記出願の全容は、参考として本明細書に明確に援用される。 連邦政府によって支援された研究または開発についての陳述 本出願は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって与えられた、コントラクトR01−AR 051448、R01−AR 051886、およびP50 AR054086の下で、政府支援によってなされた。政府は本発明において一定の権利を有し得る。 血管内皮増殖因子(VEGF)は、受容体チロシンキナーゼ(RTK)のVEGF受容体(VEGFR)ファミリーの3つのメンバーと結合してそれを活性化することによって、血液およびリンパ管の発生および恒常性を調節する(非特許文献1)。VEGFR1(Flt1)、VEGFR2(KDR/Flk1)およびVEGFR3(Flt4)は、V型RTKのメンバーであり、これは、7個のIg様ドメイン(D1〜D7)から構成される大きな細胞外領域、1個の膜貫通(TM)ヘリックス、ならびにチロシンキナーゼ活性および追加の調節配列を有する細胞質領域を含有するファミリーである。VEGFR外部ドメインの第2および第3のIg様ドメイン、たとえばD2およびD3は、サイトカインのVEGFファミリーの5個のメンバー(すなわち、VEGF−A、B、C、Dおよび胎盤増殖因子(P1GF))の結合部位として機能する(非特許文献2、および非特許文献3)。これらの増殖因子は、共有結合されたホモ二量体である。それぞれのプロトマーは、4本のストランドのβ−シートから構成され、これは、逆平行の様式において構造に構成されており、システインノット増殖因子と命名されている(非特許文献4)。サイトカインのシステインノットファミリーの他のメンバーには、神経増殖因子(NGF)および血小板由来増殖因子(PDGF)が含まれる。しかし、RTKのPDGFRファミリー(III型)の外部ドメインは5個のIg様反復から構成されており、そのうちのD1、D2、およびD3は、PDGFRならびにファミリーの他のメンバー(すなわち、KIT、CSF1R、およびFlt3)のリガンド結合領域として機能する。構造的および生化学的実験により、細胞外領域へのSCF結合がKITの二量体化を誘導すること、このステップの後には、隣接するKIT分子の2つの膜近位Ig様ドメインD4とD5との間のホモタイプ接触が続くことが示されている(非特許文献5)。野生型および腫瘍発生性KIT変異体の生化学的研究により、ホモタイプのD4およびD5の接触が、KITの二量体の細胞質領域を、トランス自己リン酸化、キナーゼ活性化および細胞シグナル伝達を促進する距離および配向で配置することにおいて重要な役割を果たすことが示されている。しかし、VEGF受容体の構造をより良好に特徴づける必要性が存在する。そのような特徴づけにより、薬物、医薬品、または他の生物製剤(biologics)の標的となり得る領域の、情報に基づいた同定がもたらされるであろう。Olssonら、Nat. Rev. Mol. Cell. Biol.、(2006年)7巻(5号):359〜371頁Barleonら、J. Biol. Chem.、(1997年)272巻(16号):10382〜10388頁Shinkaiら、J. Biol. Chem.、(1998年)273巻(47号):31283〜31288頁Weismannら、Cell、(1997年)91巻(5号):695〜704頁Yuzawaら、Cell、(2007年)130巻(2号):323〜334頁 本発明は、血管内皮増殖因子受容体(VEGF受容体)、たとえば、VEGFR1(Flt1)、VEGFR2(KDR/Flk1)およびVEGFR3(Flt4)の外部ドメインと結合する部分、たとえば、抗体またはその抗原結合性一部分、小分子、ペプチド性分子、アプタマー、およびアドネクチンを提供する。本発明の部分は、VEGF受容体の外部ドメインを不活性状態に固定し、それによってVEGF受容体の活性を阻害し得る。本発明の一実施形態では、部分は、VEGF受容体の外部ドメインを単量体状態に固定する。本発明の別の実施形態では、部分は、VEGF受容体の外部ドメインが二量体化することを可能にするが、2つの単量体のIg様ドメイン(たとえばVEGF受容体のD7−D7ドメイン)間の配置、配向および/または距離に影響を与え、それによってVEGF受容体の活性を阻害する。言い換えれば、部分は、VEGF受容体の外部ドメインの、リガンド誘導性の二量体化を可能にするが、細胞表面境界領域での2つの外部ドメインの配置に影響を与えるか、またはVEGF受容体におけるコンフォメーション変化を変更もしくは妨げ、それによってVEGF受容体の活性を阻害する(たとえば、受容体の内在化を阻害する、および/または受容体のチロシン自己リン酸化を阻害する、および/または下流のシグナル伝達経路を活性化させる受容体の能力を阻害する)場合がある。本発明は、少なくとも部分的に、VEGF2受容体の外部ドメインの一部の結晶構造の解読に基づく。この結晶構造の解読により、本発明の部分が標的とし得るエピトープ、たとえばコンフォメーションエピトープの同定が可能となった。 また、本発明は、隣接する受容体間のホモタイプのD7の相互作用が、受容体の二量体化において役割を果たすのではなく、2つの受容体の細胞質ドメイン間の相互作用(これは、チロシンキナーゼの活性化をもたらす)を可能にする距離および配向における、それら2つの受容体の膜近位領域の正確な配置に必要であるという発見にも、少なくとも部分的に基づく。 したがって、一態様では、本発明は、ヒト血管内皮増殖因子受容体(VEGF受容体)の外部ドメインと結合する部分を提供し、部分は、VEGF受容体の外部ドメインを不活性状態に固定し、それによってVEGF受容体の活性に拮抗する。一実施形態では、部分は、ヒトVEGF受容体のIg様ドメインと結合する。一実施形態では、Ig様ドメインは、リガンドとVEGF受容体との結合に関与していない。別の実施形態では、Ig様ドメインは、リガンドとVEGF受容体との結合に関与する。一実施形態では、部分は、VEGF受容体とVEGF受容体のリガンドとの間の相互作用を遮断しない。別の実施形態では、部分は、VEGF受容体とVEGF受容体のリガンドとの間の相互作用を遮断する。一実施形態では、部分は、VEGF受容体の二量体化を妨げない。別の実施形態では、部分は、VEGF受容体の二量体化を妨げる。 一実施形態では、部分は、VEGF受容体のそれぞれのプロトマーからの外部ドメインの膜近位領域間の相互作用を妨げる。別の実施形態では、相互作用はホモタイプである。さらに別の実施形態では、相互作用はヘテロタイプである。 一実施形態では、外部ドメインの膜近位領域は、VEGF受容体の第7のIg様ドメイン(D7)である。別の実施形態では、部分は、VEGF受容体のD7ドメインの以下のコンセンサス配列と結合する:L/I X1 R Φ X2 X3 X4 D/E X5 G(配列番号158)[式中、Lはロイシンであり、Iはイソロイシンであり、Rはアルギニンであり、Φは疎水性アミノ酸であり、Dはアスパラギン酸であり、Eはグルタミン酸であり、Gはグリシンであり、X1、X2、X3、X4およびX5は任意のアミノ酸である]。具体的な実施形態では、Φはバリンであり、X1は、アルギニン、グルタミン、グルタミン酸およびアスパラギン酸からなる群より選択され、X2は、アルギニン、リシンおよびスレオニンからなる群より選択され、X3は、リシン、グルタミン酸、グルタミンおよびバリンからなる群より選択され、X4は、グルタミン酸およびバリンからなる群より選択され、X5は、グルタミン酸、グリシン、セリンおよびグルタミンからなる群より選択される。 別の実施形態では、部分は、VEGF受容体のそれぞれのプロトマーからの外部ドメインの膜近位領域が約16Å、17Å、18Å、19Åまたは20Åを超える距離によって隔てられることを引き起こす。一実施形態では、部分は、VEGF受容体の外部ドメインを不活性状態に固定する。 一実施形態では、VEGF受容体はVEGFR1(Flt1)である。別の実施形態では、VEGF受容体はVEGFR2(KDR/Flk1)である。別の実施形態では、VEGF受容体はVEGFR3(Flt4)である。 別の実施形態では、部分は、VEGFR2のアミノ酸残基Arg726と結合する。別の実施形態では、部分は、VEGFR2のアミノ酸残基Asp731と結合する。別の実施形態では、部分は、VEGFR2のアミノ酸残基Arg726およびAsp731と結合する。さらに別の実施形態では、部分は、VEGFR2のアミノ酸残基724、725、726、727、728、729、730、731、732および733からなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸残基と結合する。部分は、前述のアミノ酸残基のうちの任意のものの1Å、2Å、3Å、4Åまたは5Å以内で結合し得る。 一実施形態では、部分は、VEGFR1のアミノ酸残基Arg720と結合する。別の実施形態では、部分は、VEGFR1のアミノ酸残基Asp725と結合する。別の実施形態では、部分は、VEGFR1のアミノ酸残基Arg720およびAsp725と結合する。別の実施形態では、部分は、VEGFR1のアミノ酸残基718、719、720、721、722、723、724、725、726および727からなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸残基と結合する。部分は、前述のアミノ酸残基のうちの任意のものの1Å、2Å、3Å、4Åまたは5Å以内で結合し得る。 一実施形態では、部分は、VEGFR3のアミノ酸残基Arg737と結合する。別の実施形態では、部分は、VEGFR3のアミノ酸残基Asp742と結合する。別の実施形態では、部分は、VEGFR3のアミノ酸残基Arg737およびAsp742と結合する。さらに別の実施形態では、部分は、VEGFR3のアミノ酸残基735、736、737、738、739、740、741、742、743および744からなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸残基と結合する。部分は、前述のアミノ酸残基のうちの任意のものの1Å、2Å、3Å、4Åまたは5Å以内で結合し得る。 一実施形態では、部分は、VEGF受容体の外部ドメイン上のコンフォメーションエピトープと結合する。一実施形態では、コンフォメーションエピトープは、VEGF受容体のD7ドメイン中の2つ以上の残基から構成される。さらに別の実施形態では、コンフォメーションエピトープは、アミノ酸残基Arg726およびAsp731、Arg720およびAsp725、またはArg737およびAsp742を含むか、またはそれからなる。特定の実施形態では、部分は、前述のコンフォメーションエピトープの1Å、2Å、3Å、4Åまたは5Å以内で結合する。 別の実施形態では、部分は、VEGF受容体上の近接エピトープと結合する。一実施形態では、近接エピトープは、VEGF受容体のD7ドメイン中の2つ以上の残基から構成される。別の実施形態では、近接エピトープは、VEGFR1の672VAISSS677、VEGFR1の678TTLDCHA684、VEGFR1の685NGVPEPQ691、VEGFR1の700KIQQEPG706、VEGFR1の707IILG710、VEGFR1の711PGS713、VEGFR1の714STLFI718、VEGFR1の719ERVTEEDEGV728、VEGFR3の689VNVSDS694、VEGFR3の695LEMQCLV701、VEGFR3の702AGAHAPS708、VEGFR3の717LLEEKSG723、VEGFR3の724VDLA727、VEGFR3の728DSN730、VEGFR3の731QKLSI735、およびVEGFR3の736QRVREEDAGR745、VEGFR2の678TSIGES683、VEGFR2の684IEVSCTA690、VEGFR2の691SGNPPPQ697、VEGFR2の706TLVEDSG712、VEGFR2の713IVLK716、VEGFR2の717DGN719、VEGFR2の720RNLTI724およびVEGFR2の725RRVRKEDEGL734からなる群より選択されるエピトープである。一部の実施形態では、部分は、前述のエピトープのうちの任意のものの1Å、2Å、3Å、4Åまたは5Å以内で結合し得る。 一実施形態では、部分は、VEGF受容体のリガンド誘導性のチロシン自己リン酸化を遮断する。別の実施形態では、部分は、VEGF受容体のリガンド誘導性の内在化を遮断する。 一実施形態では、VEGF受容体の外部ドメインと結合する部分は、単離された抗体またはその抗原結合性一部分である。別の実施形態では、抗体またはその抗原結合性一部分は、ヒト抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体、およびキメラ抗体からなる群より選択される。別の実施形態では、抗体またはその抗原結合性一部分は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgAおよびIgE定常領域からなる群より選択される重鎖定常領域を含む。一実施形態では、抗体重鎖定常領域はIgG1である。別の実施形態では、抗体またはその抗原結合性一部分は、Fab断片、F(ab’)2断片、単鎖Fv断片、SMIP、アフィボディ(affibody)、アビマー(avimer)、ナノボディ、および単一ドメイン抗体からなる群より選択される。さらに別の実施形態では、抗体またはその抗原結合性一部分は、1×10−7M以下、より好ましくは5×10−8M以下、より好ましくは1×10−8M以下、より好ましくは5×10−9M以下からなる群より選択されるKDで受容体チロシンキナーゼのIg様ドメインと結合する。 一態様では、本発明は、本明細書中に記載のVEGF受容体の外部ドメインと結合する抗体またはその抗原結合性一部分を産生するハイブリドーマを提供する。 一実施形態では、VEGF受容体の外部ドメインと結合する部分は小分子である。別の実施形態では、小分子は、VEGFR2のアミノ酸残基Arg726またはAsp731のうちの少なくとも1つと結合する。別の実施形態では、小分子は、VEGFR1のアミノ酸残基Arg720またはAsp725のうちの少なくとも1つと結合する。別の実施形態では、小分子は、VEGFR3のアミノ酸残基Arg737またはAsp742のうちの少なくとも1つと結合する。 別の実施形態では、VEGF受容体の外部ドメインと結合する部分はペプチド性分子である。一実施形態では、ペプチド性分子は、VEGF受容体のIg様ドメインに基づいて設計されている。別の実施形態では、ペプチド性分子は、ヒトVEGF受容体のD7ドメインに基づいて設計されている。一実施形態では、ペプチド性分子は、構造:L/I X1 R Φ X2 X3 X4 D/E X5 G(配列番号158)[式中、Lはロイシンであり、Iはイソロイシンであり、Rはアルギニンであり、Φは疎水性アミノ酸であり、Dはアスパラギン酸であり、Eはグルタミン酸であり、Gはグリシンであり、X1、X2、X3、X4およびX5は任意のアミノ酸である]を含む。具体的な実施形態では、Φはバリンであり、X1は、アルギニン、グルタミン、グルタミン酸およびアスパラギン酸からなる群より選択され、X2は、アルギニン、リシンおよびスレオニンからなる群より選択され、X3は、リシン、グルタミン酸、グルタミンおよびバリンからなる群より選択され、X4は、グルタミン酸およびバリンからなる群より選択され、X5は、グルタミン酸、グリシン、セリンおよびグルタミンからなる群より選択される。 別の実施形態では、ペプチド性分子は、ヒトVEGFR2のアミノ酸残基724〜733、678〜683、684〜690、691〜697、706〜712、713〜716、717〜719、720〜724または725〜734と少なくとも80%、85%、90%または95%同一である構造を含む。別の実施形態では、ペプチド性分子は、ヒトVEGFR1のアミノ酸残基718〜727、672〜677、678〜684、685〜691、700〜706、707〜710、711〜713、714〜718または719〜728と少なくとも80%、85%、90%または95%同一である構造を含む。別の実施形態では、ペプチド性分子は、ヒトVEGFR3のアミノ酸残基735〜744、689〜694、695〜701、702〜708、717〜723、724〜727、728〜730、731〜735または736〜745と少なくとも80%、85%、90%または95%同一である構造を含む。別の実施形態では、ペプチド性分子は少なくとも1つのD−アミノ酸残基を含む。 一実施形態では、VEGF受容体の外部ドメインと結合する部分はアドネクチンである。 別の態様では、本発明は、ヒトVEGF受容体のD7ドメイン上のコンフォメーションエピトープと結合し、ヒトVEGF受容体の活性に拮抗する部分を提供し、コンフォメーションエピトープは、VEGFR2の残基Arg726およびAsp731、VEGFR1の残基Arg720およびAsp725、またはVEGFR3の残基Arg737およびAsp742を含む。 別の態様では、本発明は、VEGFR2のアミノ酸残基Arg726およびAsp731、VEGFR1のアミノ酸残基Arg720およびAsp725、またはVEGFR3のアミノ酸残基Arg737およびAsp742と結合し、それによってヒトVEGF受容体の活性に拮抗する部分を提供する。 別の態様では、本発明は、本明細書中に記載のVEGF受容体の外部ドメインと結合する部分と、薬学的に許容されるキャリアとを含む医薬組成物を提供する。 別の態様では、本発明は、被験体に有効量の本発明の部分を投与し、それによって疾患を処置または予防することを含む、被験体においてVEGF受容体に関連する疾患を処置または予防する方法を提供する。一実施形態では、VEGF受容体チロシンキナーゼに関連する疾患は、がん、加齢黄斑変性症(AMD)、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、糖尿病性網膜症、リンパ系の疾患および疼痛に関連する疾患からなる群より選択される。一実施形態では、がんは、GIST、AML、SCLC、腎臓がん、結腸がん、乳がん、リンパ性がんおよびその成長が間質によって支持される他のがんからなる群より選択される。 一態様では、本発明は、VEGF受容体を候補部分と接触させるステップと、同時にまたは順次、VEGF受容体をVEGF受容体のリガンドと接触させるステップと、部分が、リガンド誘導性の二量体VEGF受容体のIg様ドメイン間の配置、配向および/または距離に影響を与えるか否かを決定し、それによってVEGF受容体の外部ドメイン、たとえばIg様ドメインと結合する部分を同定するステップとを含む、VEGF受容体の外部ドメイン、たとえばIg様ドメインと結合する部分を同定する方法を提供する。一実施形態では、部分は、VEGF受容体の外部ドメインを不活性状態に固定する。別の実施形態では、部分は、VEGF受容体の第7のIg様ドメイン(D7)と結合する。 別の態様では、本発明は、ヒトVEGF受容体のD7ドメイン上のコンフォメーションエピトープと結合する、単離された抗体またはその抗原結合性一部分を提供し、抗体またはその抗原結合性一部分は、ヒトVEGF受容体の活性に拮抗し、コンフォメーションエピトープは、VEGFR2の残基Arg726およびAsp731を含む。別の態様では、本発明は、ヒトVEGF受容体のD7ドメイン上のコンフォメーションエピトープと結合する、単離された抗体またはその抗原結合性一部分を提供し、抗体またはその抗原結合性一部分は、ヒトVEGF受容体の活性に拮抗し、コンフォメーションエピトープは、VEGFR1の残基Arg720およびAsp725を含む。別の態様では、本発明は、ヒトVEGF受容体のD7ドメイン上のコンフォメーションエピトープと結合する、単離された抗体またはその抗原結合性一部分を提供し、抗体またはその抗原結合性一部分は、ヒトVEGF受容体の活性に拮抗し、コンフォメーションエピトープは、VEGFR3の残基Arg737およびAsp742を含む。 別の態様では、本発明は、VEGFR2のアミノ酸残基724〜733と結合し、それによってVEGFR2の活性に拮抗する、単離された抗体またはその抗原結合性一部分を提供する。一態様では、本発明は、VEGFR1のアミノ酸残基718〜727と結合し、それによってVEGFR1の活性に拮抗する、単離された抗体またはその抗原結合性一部分を提供する。別の態様では、本発明は、VEGFR3のアミノ酸残基735〜744と結合し、それによってVEGFR3の活性に拮抗する、単離された抗体またはその抗原結合性一部分を提供する。 一態様では、本発明は、ヒトVEGFR2のArg726およびAsp731からなる群より選択されるアミノ酸残基のうちの少なくとも1つと結合し、それによってヒトVEGFR2の活性に拮抗する、単離された抗体またはその抗原結合性一部分を提供する。別の態様では、本発明は、ヒトVEGFR1のArg720およびAsp725からなる群より選択されるアミノ酸残基のうちの少なくとも1つと結合し、それによってヒトVEGFR1の活性に拮抗する、単離された抗体またはその抗原結合性一部分を提供する。別の態様では、本発明は、ヒトVEGFR3のArg737およびAsp742からなる群より選択されるアミノ酸残基のうちの少なくとも1つと結合し、それによってヒトVEGFR3の活性に拮抗する、単離された抗体またはその抗原結合性一部分を提供する。 別の態様では、本発明は、ヒト受容体チロシンキナーゼの外部ドメイン、たとえばIg様ドメインまたはヒンジ領域と結合する部分を提供し、部分は、受容体チロシンキナーゼの外部ドメインを不活性状態に固定し、それによって受容体チロシンキナーゼの活性に拮抗する。一実施形態では、Ig様ドメインは、リガンドと受容体チロシンキナーゼとの結合に関与していても、していなくてもよい。別の実施形態では、部分は、受容体チロシンキナーゼと受容体チロシンキナーゼに対するリガンドとの間の相互作用を遮断しても、しなくてもよい。さらに別の実施形態では、本発明の部分は、受容体チロシンキナーゼの二量体化を妨げても、妨げなくてもよい。さらなる実施形態では、本発明の部分は、リガンド誘導性の受容体の二量体化を妨げないが、受容体チロシンキナーゼの活性化に必要な膜近位領域間のホモタイプまたはヘテロタイプの相互作用を妨げ得る。 一部の実施形態では、本発明の部分は、受容体チロシンキナーゼのそれぞれのプロトマーからの外部ドメインの膜近位領域間のホモタイプまたはヘテロタイプの相互作用を妨げる。たとえば、本発明の部分は、受容体チロシンキナーゼのそれぞれのプロトマーからの外部ドメインの末端(形質膜に最も近い外部ドメインの末端)が約15Å、約20Å、約25Å、約30Å、約35Åまたは約40Åを超える距離によって隔てられることを引き起こし得る。 好ましい実施形態では、受容体チロシンキナーゼは、III型受容体チロシンキナーゼ、たとえば、Kit、PDGFRα、PDGFRβ、CSF1R、Fms、Flt3またはFlk2である。 他の実施形態では、本発明の部分によって結合されるIg様ドメインは、III型受容体チロシンキナーゼのD4ドメインである。具体的な一実施形態では、部分は、以下のD4相互作用部位のコンセンサス配列と結合する:LX1RX2X3X4X5X6X7G[式中、Lはロイシンであり、Rはアルギニンであり、Gはグリシンであり、X1、X2、X3、X4、X5、X6およびX7は任意のアミノ酸である]。具体的な実施形態では、X1は、スレオニン、イソロイシン、バリン、プロリン、アスパラギン、またはリシンからなる群より選択され、X2は、ロイシン、バリン、アラニン、およびメチオニンからなる群より選択され、X3は、リシン、ヒスチジン、アスパラギン、およびアルギニンからなる群より選択され、X4は、グリシン、バリン、アラニン、グルタミン酸、プロリン、およびメチオニンからなる群より選択され、X5は、スレオニン、セリン、グルタミン酸、アラニン、グルタミン、およびアスパラギン酸からなる群より選択され、X6は、グルタミン酸、アスパラギン酸、およびグルタミンからなる群より選択され、X7は、グリシン、セリン、アラニン、リシン、アルギニン、グルタミンおよびスレオニンからなる群より選択される。 別の実施形態では、本発明の部分によって結合されるIg様ドメインは、III型受容体チロシンキナーゼのD5ドメイン、たとえばヒトKitのアミノ酸残基309〜413または410〜519である。具体的な実施形態では、本発明の部分は、D5相互作用部位からの保存されたアミノ酸のコンセンサス配列と結合し得る。 別の実施形態では、本発明の部分は、III型受容体チロシンキナーゼのD4もしくはD5ドメインの変異体またはV型受容体チロシンキナーゼのD7ドメインの変異体と結合する。具体的な実施形態では、部分は、ヒトKitの変異D5ドメイン中の点変異と結合し、変異は、Thr417、Tyr418、Asp419、Leu421、Arg420、Tyr503、およびAla502からなる群より選択される。 一部の実施形態では、III型受容体チロシンキナーゼはヒトKitであり、本発明の部分は、以下の表4中に示したアミノ酸残基からなる群より選択される、1つまたは複数のアミノ酸残基、たとえば、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、16個以上、17個以上、または18個以上のアミノ酸残基と結合する。たとえば、本発明の部分は、以下の残基のうちの1つまたは複数と結合し得る:Y125、G126、H180、R181、K203、V204、R205、P206、P206、F208、K127、A207、V238、S239、S240、S241、H263、G265、D266、F267、N268、Y269、T295、L222、L222、L223、E306、V308、R224、V308、K310、K218、A219、S220、K218、A220、Y221、A339、D327、D398、E338、E368、E386、F312、F324、F340、F355、G311、G384、G387、G388、I371、K342、K358、L382、L379、N326、N367、N370、N410、P341、S369、T385、V325、V407、V409、Y373、Y350、Y408、T380、T390、R381、R353、T411、K412、E414、K471、F433、G470、L472、V497、F469、A431、またはG432。具体的な実施形態では、本発明の部分は、K218、S220、Y221、L222、F340、P341、K342、N367、E368、S369、N370、I371、およびY373からなる群より選択されるKit受容体中のアミノ酸残基のうちの少なくとも1つ、またはY350、R353、F355、K358、L379、T380、R381、L382、E386、およびT390からなる群より選択されるKit受容体中のアミノ酸残基のうちの少なくとも1つと結合する。本発明の部分は、表4中に同定したポケットもしくは空洞を形成するすべての残基と結合し得るか、または、これらはポケットもしくは空洞を形成する残基のサブセットと結合し得る。当業者には、一部の実施形態では、本発明の部分は、他のIII型RTKにおける上記記載したものに対応する残基、たとえば、類似のポケットもしくは空洞を形成する残基または構造アラインメントもしくは配列アラインメントによって同じ位置にあるものに対して容易に標的化し得ることが理解されよう。 別の実施形態では、本発明の部分は、ヒトKitのアミノ酸残基381Argおよび386Gluと結合する。さらに別の実施形態では、本発明の部分は、ヒトKitのアミノ酸残基418Tyrおよび/または505Asnと結合する。 さらなる実施形態では、本発明の部分は、PDGFRαまたはPDGFRβ受容体と結合する。類似の実施形態では、本発明の部分は、ヒトPDGFRβのアミノ酸残基385Argおよび/もしくは390Glu、またはPDGFRα中の対応する残基と結合する。 さらに別の実施形態では、本発明の部分は、III型RTK上のコンフォメーションエピトープと結合する。具体的な実施形態では、コンフォメーションエピトープは、III型RTK、たとえばヒトKit受容体またはPDGF受容体からのD3、D4、もしくはD5ドメインまたはヒンジ領域からの2つ以上の残基から構成される。さらなる具体的な実施形態では、本発明の部分は、表4中に記載のアミノ酸残基からなる群より選択される、2個以上の残基、たとえば、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、16個以上、17個以上、または18個以上のアミノ酸残基から構成されるヒトKit受容体中のコンフォメーションエピトープと結合し得る。特定の実施形態では、本発明の部分は、Y125、H180、R181、K203、V204、R205、P206、V238、S239、S240、H263、G265、D266、F267、N268、およびY269からなる群より選択される2つ以上のアミノ酸からなるコンフォメーションエピトープと結合する。類似の実施形態では、本発明の部分は、以下のアミノ酸の群のうちの1つから選択される、2つ以上のアミノ酸から構成されるコンフォメーションエピトープと結合し得る:P206、F208、V238、およびS239;K127、A207、F208、およびT295;L222、A339、F340、K342、E368、S369、N370、I371、およびY373;L222、L223、E306、V308、F312、E338、F340、およびI371;R224、V308、K310、G311、F340、P341、およびD398;K218、A219、S220、N367、E368、およびS369;K218、A220、E368、およびS369;G384、T385、T411、K412、E414、およびK471;Y408、F433、G470、K471、およびL472;F324、V325、N326、およびN410;D327、N410、T411、K412、およびV497;G384、G387、V409、およびK471;L382、G387、V407、およびV409;Y125、G126、H180、R181、K203、V204、R205、P206、F208、V238、S239、S240、S241、H263、G265、D266、F267、N268、およびY269;P206、F208、V238、およびS239;K218、S220、Y221、L222、F340、P341、K342、N367、E368、S369、N370、I371、およびY373;G384、G387、G388、Y408、V409、T411、F433、F469、G470、およびK471;D327、T411、K412、E414、A431、G432、およびK471;Y350、F355、K358、L379、T380、R381、L382、E386、およびT390;Y350、R353、およびF355。上述のように、本発明の部分は、表4中に同定したポケットもしくは空洞を形成するすべてのアミノ酸残基と結合し得るか、または、これらはポケットもしくは空洞を形成する残基のサブセットと結合し得る。 さらなる実施形態では、本発明の部分は、表5中に記載のペプチドから選択される2つ以上のアミノ酸残基から構成されるコンフォメーションエピトープと結合する。具体的な実施形態では、コンフォメーションエピトープは、第1のペプチドから選択される1つまたは複数のアミノ酸残基および第2のペプチドから選択される1つまたは複数のアミノ酸残基から構成され、第1および第2のペプチドは、表5中に記載のペプチドの群から選択される。したがって、本発明の部分はコンフォメーションエピトープと結合してよく、第1および第2のペプチド群は以下のとおりである:Ala219−Leu222およびThr304−Val308;Asp309−Gly311およびArg224−Gly226;Thr303−Glu306およびAla219−Leu222;Asn367−Asn370およびSer217−Tyr221;Ala339−Pro343およびAsn396−Val399;Ala339−Pro343およびGlu368−Arg372;Lys358−Tyr362およびVal374−His378;Asp357−Glu360およびLeu377−Thr380;Met351−Glu360およびHis378−Thr389;His378−Thr389およびVal323−Asp332;Val409−Ile415およびAla493−Thr500;Val409−Ile415およびAla431−Thr437;Val409−Ile415およびPhe469−Val473;Val409−Ile415およびVal325−Asn330;Val409−Ile415およびArg381−Gly387;Gly466−Leu472およびGly384−Gly388;Val325−Glu329およびTyr494−Lys499;Thr411−leu416およびVal497−Ala502;Ile415−Leu421およびAla502−Ala507;Ala502−Ala507およびLys484−Thr488;およびAla502−Ala507およびGly445−Cys450。本発明の部分は、前述の第1および第2のペプチド群を形成するすべてのアミノ酸残基と結合し得るか、または、これらは第1および第2のペプチド群を形成する残基のサブセットと結合し得る。 他の実施形態では、本発明の部分は、VEGF受容体ファミリーのメンバーである受容体チロシンキナーゼ(V型受容体チロシンキナーゼ)、たとえば、VEGFR−1(Flt1)、VEGFR−2(Flk1)およびVEGFR−3(Flt4)と結合する。本発明の部分によって結合されたIg様ドメインは、一部の実施形態では、VEGF受容体ファミリーのメンバーのD7ドメインであり得る。具体的な実施形態では、部分は、VEGF受容体ファミリーのメンバーのD7ドメインの以下のコンセンサス配列と結合する:IX1RVX2X3EDX4G[式中、Iはイソロイシンであり、Rはアルギニンであり、Eはグルタミン酸であり、Dはアスパラギン酸であり、Gはグリシンであり、X1、X2、X3およびX4は任意のアミノ酸である]。具体的な実施形態では、X1は、グルタミン酸、アルギニン、およびグルタミンからなる群より選択され、X2は、アルギニンおよびスレオニンからなる群より選択され、X3は、グルタミン酸およびリシンからなる群より選択され、X4は、グルタミン酸およびアラニンからなる群より選択される(配列番号1)。 一部の実施形態では、本発明の部分は、単離された抗体またはその抗原結合性一部分である。抗体またはその抗原結合性一部分は、ヒト抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体、またはキメラ抗体であり得る。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性一部分は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgAおよびIgE定常領域からなる群より選択される重鎖定常領域を含む。好ましい実施形態では、抗体重鎖定常領域はIgG1である。さらに、本発明の部分は、Fab断片、F(ab’)2断片、単鎖Fv断片、SMIP、アフィボディ、アビマー、ナノボディ、および単一ドメイン抗体からなる群より選択される抗体またはその抗原結合性一部分であり得る。特定の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性一部分は、1×10−7M以下、より好ましくは5×10−8M以下、より好ましくは1×10−8M以下、より好ましくは5×10−9M以下のKDで受容体チロシンキナーゼのIg様ドメインと結合する。 一部の実施形態では、本発明の単離された抗体またはその抗原結合性一部分は、ヒトKitのアミノ酸残基309〜413および/または410〜519と結合し、それによってヒトKitの外部ドメインを不活性状態に固定してヒトKitの活性に拮抗する。 さらなる実施形態では、本発明には、本発明の抗体またはその抗原結合性一部分を産生するハイブリドーマが含まれる。 別の好ましい実施形態では、本発明の部分は小分子である。 一部の好ましい実施形態では、本発明の小分子は、表4中に示したアミノ酸残基からなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸残基と結合する。たとえば、本発明の小分子は、以下の残基のうちの1つまたは複数と結合し得る:Y125、G126、H180、R181、K203、V204、R205、P206、P206、F208、K127、A207、V238、S239、S240、S241、H263、G265、D266、F267、N268、Y269、T295、L222、L222、L223、E306、V308、R224、V308、K310、K218、A219、S220、K218、A220、Y221、A339、D327、D398、E338、E368、E386、F312、F324、F340、F355、G311、G384、G387、G388、I371、K342、K358、L382、L379、N326、N367、N370、N410、P341、S369、T385、V325、V407、V409、Y373、Y350、Y408、T380、T390、R381、R353、T411、K412、E414、K471、F433、G470、L472、V497、F469、A431、またはG432。具体的な実施形態では、本発明の小分子は、K218、S220、Y221、L222、F340、P341、K342、N367、E368、S369、N370、I371、およびY373からなる群より選択されるKit受容体中のアミノ酸残基のうちの少なくとも1つと結合する。関連する実施形態では、本発明の小分子は、Y350、R353、F355、K358、L379、T380、R381、L382、E386、およびT390からなる群より選択されるKit受容体中のアミノ酸残基のうちの少なくとも1つと結合する。当業者には、一部の実施形態では、本発明の小分子は、他のIII型RTKにおける上記記載したものに対応する残基、たとえば、類似のポケットもしくは空洞を形成する残基または構造アラインメントもしくは配列アラインメントによって同じ位置にあるものに対して容易に標的化し得ることが理解されよう。 さらなる実施形態では、本発明の部分はペプチド性分子である。一部の実施形態では、ペプチド性分子は、受容体チロシンキナーゼのIg様ドメインに基づいて設計されている。具体的な実施形態では、本発明のペプチド性分子は、KitのD4ドメインに基づいて設計されている。本発明のペプチド性分子は、保存されたD4相互作用部位、たとえば上述のD4コンセンサス配列(LX1RX2X3X4X5X6X7G)、またはIII型受容体チロシンキナーゼのD4ドメインとアラインメントもしくは比較することによって作製された他のものを含み得る。さらなる実施形態では、本発明のペプチド性分子は、ヒトKitのアミノ酸残基309〜413と少なくとも80%同一である構造またはヒトKitのアミノ酸残基410〜519と少なくとも80%同一である構造を含む。また、ペプチド性部分は、KitのD5ドメインに基づいて設計されていてよく、さらなる好ましい実施形態では、III型受容体チロシンキナーゼのD5ドメインとアラインメントまたは比較することによって作製されたコンセンサス配列を含み得る。代替実施形態では、ペプチド性分子は、変異D5ドメインの配列またはコンセンサス配列に基づいて設計されていてよい。 本発明のペプチド性部分は、本明細書中で同定したアミノ酸配列のうちの任意のもの(たとえば、配列番号1〜89、92、93、および105〜157)を含むか、またはそれからなるペプチドであり得る。 一部の実施形態では、本発明のペプチド性分子は少なくとも1つのD−アミノ酸残基を含む。 別の好ましい実施形態では、本発明の部分はアドネクチンである。 さらに、一部の実施形態では、本発明の小分子およびペプチド性分子は、標的RTK中のコンフォメーションエピトープと結合する。他の実施形態では、本発明の小分子およびペプチド性分子は、コンフォメーションエピトープではない標的RTK中のエピトープと結合する。 別の態様では、本発明は、本発明の部分のうちの任意のものと、薬学的に許容されるキャリアとを含む医薬組成物を提供する。 さらなる態様では、本発明は、被験体において受容体チロシンキナーゼに関連する疾患を処置または予防する方法を提供する。この方法には、被験体に有効量の本発明の部分(たとえば、III型受容体チロシンキナーゼのD4もしくはD5ドメインまたはV型受容体チロシンキナーゼのD7ドメインと結合する部分)を投与し、それによって疾患を処置または予防することが含まれる。好ましい実施形態では、受容体チロシンキナーゼに関連する疾患は、リンパ性疾患またはがん、たとえば、GIST、AML、SCLC、黒色腫、腎臓がん、結腸がん、乳がん、リンパ性がんおよび他のがんである。 別の態様では、本発明は、被験体にヒトIII型受容体チロシンキナーゼのD3−D4および/またはD4−D5ヒンジ領域と結合する部分を有効量で投与し、それによって疾患を処置または予防することによって、被験体において受容体チロシンキナーゼに関連する疾患を処置または予防する方法を提供する。具体的な実施形態では、受容体チロシンキナーゼに関連する疾患は、がん、たとえば、GIST、AML、SCLC、黒色腫、腎臓がん、結腸がん、乳がん、リンパ性がんまたは他のがんである。 別の態様では、本発明は、受容体チロシンキナーゼのIg様ドメインと結合して受容体チロシンキナーゼの外部ドメインを不活性状態に固定する部分を同定する方法を提供する。この方法は、受容体チロシンキナーゼを候補部分と接触させるステップと、同時にまたは順次、受容体チロシンキナーゼを受容体チロシンキナーゼに対するリガンドと接触させるステップと、部分が、リガンド誘導性の二量体の受容体チロシンキナーゼのIg様ドメイン間の配置、配向および/または距離に影響を与えるか否かを決定し、それによって受容体チロシンキナーゼのIg様ドメインと結合して受容体チロシンキナーゼの外部ドメインを不活性状態に固定する部分を決定するステップとを含む。 さらなる態様では、本発明は、III型受容体チロシンキナーゼの外部ドメインを不活性状態に固定する部分を同定する方法を提供する。この方法は、III型受容体チロシンキナーゼを候補部分と接触させるステップと、同時にまたは順次、受容体チロシンキナーゼを受容体チロシンキナーゼに対するリガンドと接触させるステップと、部分が、リガンド誘導性の二量体の受容体チロシンキナーゼのD4−D4またはD5−D5ドメイン間の配置、配向および/または距離に影響を与えるか否かを決定し、それによってIII型受容体チロシンキナーゼの外部ドメインを不活性状態に固定する部分を同定するステップとを含む。 本発明の他の特長および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。 本特許または出願のファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含有する。カラーの図面(複数可)を伴った本特許または特許出願公開のコピーは、請求および必要な手数料の支払いにより当該官庁から提供される。図1A〜Eは、Kit外部ドメインの結晶構造を示す図である。図1Aは、Kit外部ドメイン単量体のリボン図(左)および表面表示(右)を示す。右パネルは、左パネル中に示す図の垂直軸に沿った90°回転後の図を示す。D1は青色、D2は緑色、D3は黄色、D4はオレンジ色およびD5はピンク色に色づけされ、NおよびC末端が標識されている。D1およびD5中のジスルフィド結合はボールとスティックのレンダリングで示し、硫黄原子はオレンジ色に色づけされている。アスパラギン連結炭水化物はスティックモデルで示されている。図1B〜Eは、D1−D2(B)、D2−D3(C)、D3−D4(D)、およびD4−D5(E)の境界領域の詳細な図を提供する。色分けは図1Aと同じである。ドメイン−ドメイン相互作用に参加するアミノ酸が標識されており、水素結合は黄色い点線として描かれている。二次構造要素はIgSF命名法に従って命名されている。図1A〜Eは、Kit外部ドメインの結晶構造を示す図である。図1Aは、Kit外部ドメイン単量体のリボン図(左)および表面表示(右)を示す。右パネルは、左パネル中に示す図の垂直軸に沿った90°回転後の図を示す。D1は青色、D2は緑色、D3は黄色、D4はオレンジ色およびD5はピンク色に色づけされ、NおよびC末端が標識されている。D1およびD5中のジスルフィド結合はボールとスティックのレンダリングで示し、硫黄原子はオレンジ色に色づけされている。アスパラギン連結炭水化物はスティックモデルで示されている。図1B〜Eは、D1−D2(B)、D2−D3(C)、D3−D4(D)、およびD4−D5(E)の境界領域の詳細な図を提供する。色分けは図1Aと同じである。ドメイン−ドメイン相互作用に参加するアミノ酸が標識されており、水素結合は黄色い点線として描かれている。二次構造要素はIgSF命名法に従って命名されている。図1A〜Eは、Kit外部ドメインの結晶構造を示す図である。図1Aは、Kit外部ドメイン単量体のリボン図(左)および表面表示(右)を示す。右パネルは、左パネル中に示す図の垂直軸に沿った90°回転後の図を示す。D1は青色、D2は緑色、D3は黄色、D4はオレンジ色およびD5はピンク色に色づけされ、NおよびC末端が標識されている。D1およびD5中のジスルフィド結合はボールとスティックのレンダリングで示し、硫黄原子はオレンジ色に色づけされている。アスパラギン連結炭水化物はスティックモデルで示されている。図1B〜Eは、D1−D2(B)、D2−D3(C)、D3−D4(D)、およびD4−D5(E)の境界領域の詳細な図を提供する。色分けは図1Aと同じである。ドメイン−ドメイン相互作用に参加するアミノ酸が標識されており、水素結合は黄色い点線として描かれている。二次構造要素はIgSF命名法に従って命名されている。図1A〜Eは、Kit外部ドメインの結晶構造を示す図である。図1Aは、Kit外部ドメイン単量体のリボン図(左)および表面表示(右)を示す。右パネルは、左パネル中に示す図の垂直軸に沿った90°回転後の図を示す。D1は青色、D2は緑色、D3は黄色、D4はオレンジ色およびD5はピンク色に色づけされ、NおよびC末端が標識されている。D1およびD5中のジスルフィド結合はボールとスティックのレンダリングで示し、硫黄原子はオレンジ色に色づけされている。アスパラギン連結炭水化物はスティックモデルで示されている。図1B〜Eは、D1−D2(B)、D2−D3(C)、D3−D4(D)、およびD4−D5(E)の境界領域の詳細な図を提供する。色分けは図1Aと同じである。ドメイン−ドメイン相互作用に参加するアミノ酸が標識されており、水素結合は黄色い点線として描かれている。二次構造要素はIgSF命名法に従って命名されている。図1A〜Eは、Kit外部ドメインの結晶構造を示す図である。図1Aは、Kit外部ドメイン単量体のリボン図(左)および表面表示(右)を示す。右パネルは、左パネル中に示す図の垂直軸に沿った90°回転後の図を示す。D1は青色、D2は緑色、D3は黄色、D4はオレンジ色およびD5はピンク色に色づけされ、NおよびC末端が標識されている。D1およびD5中のジスルフィド結合はボールとスティックのレンダリングで示し、硫黄原子はオレンジ色に色づけされている。アスパラギン連結炭水化物はスティックモデルで示されている。図1B〜Eは、D1−D2(B)、D2−D3(C)、D3−D4(D)、およびD4−D5(E)の境界領域の詳細な図を提供する。色分けは図1Aと同じである。ドメイン−ドメイン相互作用に参加するアミノ酸が標識されており、水素結合は黄色い点線として描かれている。二次構造要素はIgSF命名法に従って命名されている。図2A〜Bは、SCF−Kit外部ドメインの2:2複合体の結晶構造を示す図である。図2Aは、SCF−Kitの2:2複合体のリボン図を示す。D1〜D5の色分けは図1と同じであり、SCFは赤紫色に色づけされている。KitおよびSCFのNおよびC末端が標識されている。D1およびD5中のジスルフィド結合はボールとスティックのレンダリングで示し、硫黄原子はオレンジ色に色づけされている。アスパラギン連結炭水化物はスティックモデルで表されている。矢印は、SCF−Kitの2:2複合体中の大きな空洞を示している。図2Bは、SCF−Kit外部ドメインの2:2複合体の表面表示を示す。図は、上面図(上)、正面図(中央左)、側面図(中央右)および底面図(下)を示す。色分けはAと同じである。これらの図は、SCF二量体が、2つの対応するKit外部ドメインのD1、D2およびD3と対称的に相互作用することを示す。さらに、Kit外部ドメインは、2つの隣接する受容体のD4間(オレンジ色)およびD5間(ピンク色)の側方接触を介して、同種形成性相互作用を形成する。図2A〜Bは、SCF−Kit外部ドメインの2:2複合体の結晶構造を示す図である。図2Aは、SCF−Kitの2:2複合体のリボン図を示す。D1〜D5の色分けは図1と同じであり、SCFは赤紫色に色づけされている。KitおよびSCFのNおよびC末端が標識されている。D1およびD5中のジスルフィド結合はボールとスティックのレンダリングで示し、硫黄原子はオレンジ色に色づけされている。アスパラギン連結炭水化物はスティックモデルで表されている。矢印は、SCF−Kitの2:2複合体中の大きな空洞を示している。図2Bは、SCF−Kit外部ドメインの2:2複合体の表面表示を示す。図は、上面図(上)、正面図(中央左)、側面図(中央右)および底面図(下)を示す。色分けはAと同じである。これらの図は、SCF二量体が、2つの対応するKit外部ドメインのD1、D2およびD3と対称的に相互作用することを示す。さらに、Kit外部ドメインは、2つの隣接する受容体のD4間(オレンジ色)およびD5間(ピンク色)の側方接触を介して、同種形成性相互作用を形成する。図3A〜Eは、KitによるSCF認識を示す図である。図3AはSCF−Kitの境界領域の図を示す。SCFおよびKitの外部ドメイン中の埋没表面中のアミノ酸は、2つの分子を引き離すことによって可視化されている。図は、KitのD1−D2−D3(左)およびSCF(右)の分子表面を示す。酸性アミノ酸は赤色、塩基性アミノ酸は青色、極性アミノ酸はオレンジ色および疎水性アミノ酸は黄色で示されている。Kit上のSCF結合部位−I、部位−IIおよび部位−IIIに丸印が付けられている。図3Bは、リガンド−受容体の境界領域中の静電電位の相補性を示す。右パネルは、左パネル中に提示した静電的表面の垂直軸に沿った180°の回転後の図を示す。D1−D2−D3の静電表面電位が分子表面上に重ね合わせられており、結合したSCFの画像のインプリントが緑色に色づけされている。右パネルは、青色(正)および赤色(負)に色づけされた、SCFと結合したKitの静電表面電位を示す。Kitは、シアン色に色づけされたリボン図の形態で示されている。図3C〜Eは、SCF−Kitの境界領域の部位−I(C)、部位−II(D)および部位−III(E)の近接図を示す。SCFは緑色およびKitはシアン色に色づけされている。相互作用するアミノ酸が標識されており、水素結合は黄色い点線として描かれており、二次構造要素がリボンおよびストランド上に示されている。図3A〜Eは、KitによるSCF認識を示す図である。図3AはSCF−Kitの境界領域の図を示す。SCFおよびKitの外部ドメイン中の埋没表面中のアミノ酸は、2つの分子を引き離すことによって可視化されている。図は、KitのD1−D2−D3(左)およびSCF(右)の分子表面を示す。酸性アミノ酸は赤色、塩基性アミノ酸は青色、極性アミノ酸はオレンジ色および疎水性アミノ酸は黄色で示されている。Kit上のSCF結合部位−I、部位−IIおよび部位−IIIに丸印が付けられている。図3Bは、リガンド−受容体の境界領域中の静電電位の相補性を示す。右パネルは、左パネル中に提示した静電的表面の垂直軸に沿った180°の回転後の図を示す。D1−D2−D3の静電表面電位が分子表面上に重ね合わせられており、結合したSCFの画像のインプリントが緑色に色づけされている。右パネルは、青色(正)および赤色(負)に色づけされた、SCFと結合したKitの静電表面電位を示す。Kitは、シアン色に色づけされたリボン図の形態で示されている。図3C〜Eは、SCF−Kitの境界領域の部位−I(C)、部位−II(D)および部位−III(E)の近接図を示す。SCFは緑色およびKitはシアン色に色づけされている。相互作用するアミノ酸が標識されており、水素結合は黄色い点線として描かれており、二次構造要素がリボンおよびストランド上に示されている。図3A〜Eは、KitによるSCF認識を示す図である。図3AはSCF−Kitの境界領域の図を示す。SCFおよびKitの外部ドメイン中の埋没表面中のアミノ酸は、2つの分子を引き離すことによって可視化されている。図は、KitのD1−D2−D3(左)およびSCF(右)の分子表面を示す。酸性アミノ酸は赤色、塩基性アミノ酸は青色、極性アミノ酸はオレンジ色および疎水性アミノ酸は黄色で示されている。Kit上のSCF結合部位−I、部位−IIおよび部位−IIIに丸印が付けられている。図3Bは、リガンド−受容体の境界領域中の静電電位の相補性を示す。右パネルは、左パネル中に提示した静電的表面の垂直軸に沿った180°の回転後の図を示す。D1−D2−D3の静電表面電位が分子表面上に重ね合わせられており、結合したSCFの画像のインプリントが緑色に色づけされている。右パネルは、青色(正)および赤色(負)に色づけされた、SCFと結合したKitの静電表面電位を示す。Kitは、シアン色に色づけされたリボン図の形態で示されている。図3C〜Eは、SCF−Kitの境界領域の部位−I(C)、部位−II(D)および部位−III(E)の近接図を示す。SCFは緑色およびKitはシアン色に色づけされている。相互作用するアミノ酸が標識されており、水素結合は黄色い点線として描かれており、二次構造要素がリボンおよびストランド上に示されている。図3A〜Eは、KitによるSCF認識を示す図である。図3AはSCF−Kitの境界領域の図を示す。SCFおよびKitの外部ドメイン中の埋没表面中のアミノ酸は、2つの分子を引き離すことによって可視化されている。図は、KitのD1−D2−D3(左)およびSCF(右)の分子表面を示す。酸性アミノ酸は赤色、塩基性アミノ酸は青色、極性アミノ酸はオレンジ色および疎水性アミノ酸は黄色で示されている。Kit上のSCF結合部位−I、部位−IIおよび部位−IIIに丸印が付けられている。図3Bは、リガンド−受容体の境界領域中の静電電位の相補性を示す。右パネルは、左パネル中に提示した静電的表面の垂直軸に沿った180°の回転後の図を示す。D1−D2−D3の静電表面電位が分子表面上に重ね合わせられており、結合したSCFの画像のインプリントが緑色に色づけされている。右パネルは、青色(正)および赤色(負)に色づけされた、SCFと結合したKitの静電表面電位を示す。Kitは、シアン色に色づけされたリボン図の形態で示されている。図3C〜Eは、SCF−Kitの境界領域の部位−I(C)、部位−II(D)および部位−III(E)の近接図を示す。SCFは緑色およびKitはシアン色に色づけされている。相互作用するアミノ酸が標識されており、水素結合は黄色い点線として描かれており、二次構造要素がリボンおよびストランド上に示されている。図3A〜Eは、KitによるSCF認識を示す図である。図3AはSCF−Kitの境界領域の図を示す。SCFおよびKitの外部ドメイン中の埋没表面中のアミノ酸は、2つの分子を引き離すことによって可視化されている。図は、KitのD1−D2−D3(左)およびSCF(右)の分子表面を示す。酸性アミノ酸は赤色、塩基性アミノ酸は青色、極性アミノ酸はオレンジ色および疎水性アミノ酸は黄色で示されている。Kit上のSCF結合部位−I、部位−IIおよび部位−IIIに丸印が付けられている。図3Bは、リガンド−受容体の境界領域中の静電電位の相補性を示す。右パネルは、左パネル中に提示した静電的表面の垂直軸に沿った180°の回転後の図を示す。D1−D2−D3の静電表面電位が分子表面上に重ね合わせられており、結合したSCFの画像のインプリントが緑色に色づけされている。右パネルは、青色(正)および赤色(負)に色づけされた、SCFと結合したKitの静電表面電位を示す。Kitは、シアン色に色づけされたリボン図の形態で示されている。図3C〜Eは、SCF−Kitの境界領域の部位−I(C)、部位−II(D)および部位−III(E)の近接図を示す。SCFは緑色およびKitはシアン色に色づけされている。相互作用するアミノ酸が標識されており、水素結合は黄色い点線として描かれており、二次構造要素がリボンおよびストランド上に示されている。図4A〜Cは、Kitと結合した際のSCF中のコンフォメーション変化を示す図である。図4Aは、2つのSCFプロトマー間の角度がKit結合の際に変更されることを示す。この図は、遊離SCF(緑色)およびKitと結合したSCF(赤紫色)の画像を示す。一方のSCFプロトマーの重ね合わせ(左)は、ヘリックスαCについて測定された、第2のプロトマーの約5°の角運動を明らかにする(右)。ヘリックスが標識され、円柱として示されている。図4Bは、Kit結合の際のSCFのN末端中のコンフォメーション変化を示す。Kitの部位−IIIは分子表面(灰色)として示され、遊離SCFのN末端は緑色およびKitと結合したSCFのN末端は赤紫色で示されている。Cys4’とCys89’との間ジスルフィド結合は、黄色い球として示されている。主要なアミノ酸が標識され、スティックモデルとして示されている。図4Cは、Kitの部位−Iと結合した際の、SCFのαC−β2ループ中のコンフォメーション変化を示す。色分けはBと同じである。図4A〜Cは、Kitと結合した際のSCF中のコンフォメーション変化を示す図である。図4Aは、2つのSCFプロトマー間の角度がKit結合の際に変更されることを示す。この図は、遊離SCF(緑色)およびKitと結合したSCF(赤紫色)の画像を示す。一方のSCFプロトマーの重ね合わせ(左)は、ヘリックスαCについて測定された、第2のプロトマーの約5°の角運動を明らかにする(右)。ヘリックスが標識され、円柱として示されている。図4Bは、Kit結合の際のSCFのN末端中のコンフォメーション変化を示す。Kitの部位−IIIは分子表面(灰色)として示され、遊離SCFのN末端は緑色およびKitと結合したSCFのN末端は赤紫色で示されている。Cys4’とCys89’との間ジスルフィド結合は、黄色い球として示されている。主要なアミノ酸が標識され、スティックモデルとして示されている。図4Cは、Kitの部位−Iと結合した際の、SCFのαC−β2ループ中のコンフォメーション変化を示す。色分けはBと同じである。図4A〜Cは、Kitと結合した際のSCF中のコンフォメーション変化を示す図である。図4Aは、2つのSCFプロトマー間の角度がKit結合の際に変更されることを示す。この図は、遊離SCF(緑色)およびKitと結合したSCF(赤紫色)の画像を示す。一方のSCFプロトマーの重ね合わせ(左)は、ヘリックスαCについて測定された、第2のプロトマーの約5°の角運動を明らかにする(右)。ヘリックスが標識され、円柱として示されている。図4Bは、Kit結合の際のSCFのN末端中のコンフォメーション変化を示す。Kitの部位−IIIは分子表面(灰色)として示され、遊離SCFのN末端は緑色およびKitと結合したSCFのN末端は赤紫色で示されている。Cys4’とCys89’との間ジスルフィド結合は、黄色い球として示されている。主要なアミノ酸が標識され、スティックモデルとして示されている。図4Cは、Kitの部位−Iと結合した際の、SCFのαC−β2ループ中のコンフォメーション変化を示す。色分けはBと同じである。図5A〜Bは、SCF結合の際のKitのD4およびD5の再配置を示す図である。図5Aは、SCF−Kit複合体中のD4およびD5の再配置を示す。Kit単量体からのD3およびSCFと結合したKitのD3(どちらも青色に色づけ)の重ね合わせは、結合した形態のD4(赤色)が遊離形態のD4(緑色)の位置に対して22°移動することを示している。2つの形態のD4(どちらも青色)の重ね合わせ(右パネル)は、SCFと結合した形態のD5(赤色)が遊離形態のD5(緑色)の位置に対して27°移動することを示している。2つの下のパネルは、単量体(緑色)形態およびホモ二量体(赤色)形態のD3−D4およびD4−D5の境界領域のヒンジ領域の近接図を示す。図5Bは、図2と同じ配向で見た、SCFで占有されたKitのD4およびD5の表面表示を示す(上パネル)。黒色の輪郭線は、リガンド結合領域へのSCF結合によって架橋されたKit外部ドメイン単量体のD4およびD5の位置を示す。D4およびD5の再配置は、2つの隣接する外部ドメインのC末端の、互いから75Å〜15Åの移動をもたらす。下のパネルは、SCF−Kit複合体の細胞膜からの図(底面図)を示す。x軸に沿った90°回転に留意されたい。D1〜D5の色分けは図1と同じである。図5A〜Bは、SCF結合の際のKitのD4およびD5の再配置を示す図である。図5Aは、SCF−Kit複合体中のD4およびD5の再配置を示す。Kit単量体からのD3およびSCFと結合したKitのD3(どちらも青色に色づけ)の重ね合わせは、結合した形態のD4(赤色)が遊離形態のD4(緑色)の位置に対して22°移動することを示している。2つの形態のD4(どちらも青色)の重ね合わせ(右パネル)は、SCFと結合した形態のD5(赤色)が遊離形態のD5(緑色)の位置に対して27°移動することを示している。2つの下のパネルは、単量体(緑色)形態およびホモ二量体(赤色)形態のD3−D4およびD4−D5の境界領域のヒンジ領域の近接図を示す。図5Bは、図2と同じ配向で見た、SCFで占有されたKitのD4およびD5の表面表示を示す(上パネル)。黒色の輪郭線は、リガンド結合領域へのSCF結合によって架橋されたKit外部ドメイン単量体のD4およびD5の位置を示す。D4およびD5の再配置は、2つの隣接する外部ドメインのC末端の、互いから75Å〜15Åの移動をもたらす。下のパネルは、SCF−Kit複合体の細胞膜からの図(底面図)を示す。x軸に沿った90°回転に留意されたい。D1〜D5の色分けは図1と同じである。図6A〜Dは、D4−D4およびD5−D5の境界領域を示す図である。図6A(上パネル)は、D4−D4境界領域の図を示す、1.1σレベルの等高線の2Fo−Fc電子密度マップを示す。Kitプロトマーの主鎖は、それぞれピンク色および黄色のチューブとして表されている。2つの隣接する外部ドメインのD4−D4境界領域の近接図(下パネル)。2つの隣接するD4のArg381とGlu386との間に形成された鎖間水素結合は、黄色に色づけされている。主要なアミノ酸が標識され、スティックモデルとして示されている。二次構造要素はIgSF命名法に従って標識されている。図6Bは、III型およびV型RTKファミリーのメンバーにわたるD4−D4二量体化モチーフの保存を示す。マウス(AAH75716.1)(配列番号95)、ニワトリ(NP_989692.1)(配列番号96)、xenopus laevis(AAH61947)(配列番号97)、サンショウウオ(AAS91161.1)(配列番号98)ならびにゼブラフィッシュ(A型(配列番号99)およびB型(配列番号100))(NP_571128、XP_691901)相同体の配列とアラインメントした、ヒトKit(AAC50969.1)(配列番号94)の残基370〜398。ヒト(P07333)(配列番号101)、マウス(P09581)(配列番号102)ならびにトラフグA型(配列番号103)およびB型(配列番号104)(P79750、Q8UVR8)からのCSF1Rのアミノ酸配列、ならびにヒト(それぞれ配列番号105および107)(P16234、P09619)およびマウス(それぞれ配列番号106および108)(NP_035188、P05622)からのPDGFRαおよびPDGFRβからの配列も示されている。また、ヒトVEGFR1〜3型のV型RTKのアミノ酸配列(出現順にそれぞれ配列番号109〜111)(第7のIg様ドメイン)(P17948、P35968およびP35916)も提示されている。Kit上の二次構造要素が配列アラインメントの上に示されている。Arg381およびLys383、Leu382およびLeu379、Glu386およびGly388の保存された残基は、それぞれ青色、黄色、赤色および緑色に色づけされている。図6Cは、D5−D5境界領域のリボン図を示す。2つの隣接するKitプロトマーのストランドAおよびGは、D5−D5境界領域の形成に参加する。D5−D5境界領域は、2つの隣接する受容体のTyr418とAsn505との間の側方相互作用によって、恐らくはイオン(複数可)または水分子(複数可)を介して維持されている。図6Dは、KitのD4およびD5の静電電位表面を示す。図は、D4−D4の相互作用表面の正面図(右)および垂直軸に沿った90°回転後の図(左)を示す。酸性パッチおよびD4−D4境界領域の位置に丸印が付けられており、相互作用する残基Arg381およびGlu386が標識されている。図6A〜Dは、D4−D4およびD5−D5の境界領域を示す図である。図6A(上パネル)は、D4−D4境界領域の図を示す、1.1σレベルの等高線の2Fo−Fc電子密度マップを示す。Kitプロトマーの主鎖は、それぞれピンク色および黄色のチューブとして表されている。2つの隣接する外部ドメインのD4−D4境界領域の近接図(下パネル)。2つの隣接するD4のArg381とGlu386との間に形成された鎖間水素結合は、黄色に色づけされている。主要なアミノ酸が標識され、スティックモデルとして示されている。二次構造要素はIgSF命名法に従って標識されている。図6Bは、III型およびV型RTKファミリーのメンバーにわたるD4−D4二量体化モチーフの保存を示す。マウス(AAH75716.1)(配列番号95)、ニワトリ(NP_989692.1)(配列番号96)、xenopus laevis(AAH61947)(配列番号97)、サンショウウオ(AAS91161.1)(配列番号98)ならびにゼブラフィッシュ(A型(配列番号99)およびB型(配列番号100))(NP_571128、XP_691901)相同体の配列とアラインメントした、ヒトKit(AAC50969.1)(配列番号94)の残基370〜398。ヒト(P07333)(配列番号101)、マウス(P09581)(配列番号102)ならびにトラフグA型(配列番号103)およびB型(配列番号104)(P79750、Q8UVR8)からのCSF1Rのアミノ酸配列、ならびにヒト(それぞれ配列番号105および107)(P16234、P09619)およびマウス(それぞれ配列番号106および108)(NP_035188、P05622)からのPDGFRαおよびPDGFRβからの配列も示されている。また、ヒトVEGFR1〜3型のV型RTKのアミノ酸配列(出現順にそれぞれ配列番号109〜111)(第7のIg様ドメイン)(P17948、P35968およびP35916)も提示されている。Kit上の二次構造要素が配列アラインメントの上に示されている。Arg381およびLys383、Leu382およびLeu379、Glu386およびGly388の保存された残基は、それぞれ青色、黄色、赤色および緑色に色づけされている。図6Cは、D5−D5境界領域のリボン図を示す。2つの隣接するKitプロトマーのストランドAおよびGは、D5−D5境界領域の形成に参加する。D5−D5境界領域は、2つの隣接する受容体のTyr418とAsn505との間の側方相互作用によって、恐らくはイオン(複数可)または水分子(複数可)を介して維持されている。図6Dは、KitのD4およびD5の静電電位表面を示す。図は、D4−D4の相互作用表面の正面図(右)および垂直軸に沿った90°回転後の図(左)を示す。酸性パッチおよびD4−D4境界領域の位置に丸印が付けられており、相互作用する残基Arg381およびGlu386が標識されている。図6A〜Dは、D4−D4およびD5−D5の境界領域を示す図である。図6A(上パネル)は、D4−D4境界領域の図を示す、1.1σレベルの等高線の2Fo−Fc電子密度マップを示す。Kitプロトマーの主鎖は、それぞれピンク色および黄色のチューブとして表されている。2つの隣接する外部ドメインのD4−D4境界領域の近接図(下パネル)。2つの隣接するD4のArg381とGlu386との間に形成された鎖間水素結合は、黄色に色づけされている。主要なアミノ酸が標識され、スティックモデルとして示されている。二次構造要素はIgSF命名法に従って標識されている。図6Bは、III型およびV型RTKファミリーのメンバーにわたるD4−D4二量体化モチーフの保存を示す。マウス(AAH75716.1)(配列番号95)、ニワトリ(NP_989692.1)(配列番号96)、xenopus laevis(AAH61947)(配列番号97)、サンショウウオ(AAS91161.1)(配列番号98)ならびにゼブラフィッシュ(A型(配列番号99)およびB型(配列番号100))(NP_571128、XP_691901)相同体の配列とアラインメントした、ヒトKit(AAC50969.1)(配列番号94)の残基370〜398。ヒト(P07333)(配列番号101)、マウス(P09581)(配列番号102)ならびにトラフグA型(配列番号103)およびB型(配列番号104)(P79750、Q8UVR8)からのCSF1Rのアミノ酸配列、ならびにヒト(それぞれ配列番号105および107)(P16234、P09619)およびマウス(それぞれ配列番号106および108)(NP_035188、P05622)からのPDGFRαおよびPDGFRβからの配列も示されている。また、ヒトVEGFR1〜3型のV型RTKのアミノ酸配列(出現順にそれぞれ配列番号109〜111)(第7のIg様ドメイン)(P17948、P35968およびP35916)も提示されている。Kit上の二次構造要素が配列アラインメントの上に示されている。Arg381およびLys383、Leu382およびLeu379、Glu386およびGly388の保存された残基は、それぞれ青色、黄色、赤色および緑色に色づけされている。図6Cは、D5−D5境界領域のリボン図を示す。2つの隣接するKitプロトマーのストランドAおよびGは、D5−D5境界領域の形成に参加する。D5−D5境界領域は、2つの隣接する受容体のTyr418とAsn505との間の側方相互作用によって、恐らくはイオン(複数可)または水分子(複数可)を介して維持されている。図6Dは、KitのD4およびD5の静電電位表面を示す。図は、D4−D4の相互作用表面の正面図(右)および垂直軸に沿った90°回転後の図(左)を示す。酸性パッチおよびD4−D4境界領域の位置に丸印が付けられており、相互作用する残基Arg381およびGlu386が標識されている。図6A〜Dは、D4−D4およびD5−D5の境界領域を示す図である。図6A(上パネル)は、D4−D4境界領域の図を示す、1.1σレベルの等高線の2Fo−Fc電子密度マップを示す。Kitプロトマーの主鎖は、それぞれピンク色および黄色のチューブとして表されている。2つの隣接する外部ドメインのD4−D4境界領域の近接図(下パネル)。2つの隣接するD4のArg381とGlu386との間に形成された鎖間水素結合は、黄色に色づけされている。主要なアミノ酸が標識され、スティックモデルとして示されている。二次構造要素はIgSF命名法に従って標識されている。図6Bは、III型およびV型RTKファミリーのメンバーにわたるD4−D4二量体化モチーフの保存を示す。マウス(AAH75716.1)(配列番号95)、ニワトリ(NP_989692.1)(配列番号96)、xenopus laevis(AAH61947)(配列番号97)、サンショウウオ(AAS91161.1)(配列番号98)ならびにゼブラフィッシュ(A型(配列番号99)およびB型(配列番号100))(NP_571128、XP_691901)相同体の配列とアラインメントした、ヒトKit(AAC50969.1)(配列番号94)の残基370〜398。ヒト(P07333)(配列番号101)、マウス(P09581)(配列番号102)ならびにトラフグA型(配列番号103)およびB型(配列番号104)(P79750、Q8UVR8)からのCSF1Rのアミノ酸配列、ならびにヒト(それぞれ配列番号105および107)(P16234、P09619)およびマウス(それぞれ配列番号106および108)(NP_035188、P05622)からのPDGFRαおよびPDGFRβからの配列も示されている。また、ヒトVEGFR1〜3型のV型RTKのアミノ酸配列(出現順にそれぞれ配列番号109〜111)(第7のIg様ドメイン)(P17948、P35968およびP35916)も提示されている。Kit上の二次構造要素が配列アラインメントの上に示されている。Arg381およびLys383、Leu382およびLeu379、Glu386およびGly388の保存された残基は、それぞれ青色、黄色、赤色および緑色に色づけされている。図6Cは、D5−D5境界領域のリボン図を示す。2つの隣接するKitプロトマーのストランドAおよびGは、D5−D5境界領域の形成に参加する。D5−D5境界領域は、2つの隣接する受容体のTyr418とAsn505との間の側方相互作用によって、恐らくはイオン(複数可)または水分子(複数可)を介して維持されている。図6Dは、KitのD4およびD5の静電電位表面を示す。図は、D4−D4の相互作用表面の正面図(右)および垂直軸に沿った90°回転後の図(左)を示す。酸性パッチおよびD4−D4境界領域の位置に丸印が付けられており、相互作用する残基Arg381およびGlu386が標識されている。図7A〜Cは、がんおよび他の疾患に関連づけられているKit外部ドメインの変異ならびにKitおよび他のRTKの活性化の機構を示す図である。図7Aは、まだら症体質に関与する機能喪失型変異を示し、左パネル中に示す。D1(青色)、D2(緑色)およびD3(黄色)のリボン図ならびにSCFの表面表示(灰色)。変異したアミノ酸は赤色に色づけされている。GIST、SCLCおよびAMLに関与する機能獲得型変異を右パネルに示す。ホモ二量体形態中のD4およびD5の表面表示は灰色に色づけされている。GIST中で重複しているAla502およびTyr503は青色で示されており、Asp419に近接した欠失および挿入の変異(AMLおよびNCLL)は緑色で示されている。活性化させるKit変異はD5−D5境界領域に限局されていることに留意されたい。図7Bは、Kitの活性化がD4−D4境界領域中の点変異体によって損なわれることを示す。野生型Kit(WT)、D4中のR381AまたはE386A点変異を一過的に発現するHEK293細胞を、示したように、10ng/mlのSCFを用いて6分間、37℃で刺激した(上側左パネル)。刺激していないかまたはSCFで刺激した細胞の溶解物を、抗Kit抗体を用いた免疫沈降(IP)、次いで、SDS−PAGEおよび抗Kitまたは抗ホスホチロシン(p−Tyr)抗体のどちらかを用いた免疫ブロッティング(IB)に供した。抗p−Tyr免疫ブロットからのKitのチロシン自己リン酸化の濃度測定定量(上側右パネル)。野生型Kit(WT)またはR381A変異体を安定に発現する3T3細胞を様々な濃度のSCFで処理した。刺激していないかまたはSCFで刺激した細胞からの溶解物を、抗Kit抗体を用いた免疫沈降、次いで、SDS−PAGEおよび抗Kitまたは抗p−Tyr抗体を用いた免疫ブロッティングに供した(下側左パネル)。ネイティブSCFを使用した、細胞結合125I−SCFの置換アッセイ。WT(黒い四角)、R381A(▼)、R381A/E386A(◆)、またはキナーゼ陰性Kit(▲)を発現する3T3細胞を、125I−SCFを用いて漸増濃度のネイティブSCFの存在下で処理した。WT Kitに対するSCFのEC50(c−Kitと結合した125I−SCFの50%を置換するリガンド濃度)(1.1nM)は、R381A(1.0nM)、R381A/E386A(0.8nM)またはキナーゼ陰性Kit変異体(1.4nM)に対するSCFのEC50に匹敵する。図7Cは、隣接する細胞の細胞表面上に発現された可溶性(左パネル)または膜係留(右パネル)SCF分子によって駆動される、Kitおよび他のRTKの活性化のモデルを示す。D1−D2−D3リガンド結合モジュールとのSCF結合は、2つの結合したKit外部ドメイン単量体のC末端を互いから75Å以内にする。D3−D4およびD4−D5のヒンジの柔軟性は、2つの隣接する外部ドメインのC末端を互いから15Å以内にする、側方のD4−D4およびD5−D5の相互作用を可能にする。その結果、Kit細胞質ドメインの近接性および局所濃度の増加がキナーゼドメイン中の調節性チロシン残基の自己リン酸化をもたらし、PTKの活性化がもたらされる。(PTKの活性化はモデル中に描かれていないことに留意されたい)。細胞質ドメイン中の主要なチロシンのリン酸化に続いて、細胞シグナル伝達分子の相補体のリクルートおよび活性化が進行する。このモデルは、遊離SCF構造、リガンドを有さないKit、SCF−Kit複合体およびKit PTK構造に基づく(PDBエントリー1QZJ、1R01および1T45)。その構造が決定されていない領域を、二次構造予測を使用してモデリングした(緑色のヘリックスおよび黒色のループ)。SCFは赤紫色、Kit外部ドメインは青色およびkit PTKは水色に色づけされている。図7A〜Cは、がんおよび他の疾患に関連づけられているKit外部ドメインの変異ならびにKitおよび他のRTKの活性化の機構を示す図である。図7Aは、まだら症体質に関与する機能喪失型変異を示し、左パネル中に示す。D1(青色)、D2(緑色)およびD3(黄色)のリボン図ならびにSCFの表面表示(灰色)。変異したアミノ酸は赤色に色づけされている。GIST、SCLCおよびAMLに関与する機能獲得型変異を右パネルに示す。ホモ二量体形態中のD4およびD5の表面表示は灰色に色づけされている。GIST中で重複しているAla502およびTyr503は青色で示されており、Asp419に近接した欠失および挿入の変異(AMLおよびNCLL)は緑色で示されている。活性化させるKit変異はD5−D5境界領域に限局されていることに留意されたい。図7Bは、Kitの活性化がD4−D4境界領域中の点変異体によって損なわれることを示す。野生型Kit(WT)、D4中のR381AまたはE386A点変異を一過的に発現するHEK293細胞を、示したように、10ng/mlのSCFを用いて6分間、37℃で刺激した(上側左パネル)。刺激していないかまたはSCFで刺激した細胞の溶解物を、抗Kit抗体を用いた免疫沈降(IP)、次いで、SDS−PAGEおよび抗Kitまたは抗ホスホチロシン(p−Tyr)抗体のどちらかを用いた免疫ブロッティング(IB)に供した。抗p−Tyr免疫ブロットからのKitのチロシン自己リン酸化の濃度測定定量(上側右パネル)。野生型Kit(WT)またはR381A変異体を安定に発現する3T3細胞を様々な濃度のSCFで処理した。刺激していないかまたはSCFで刺激した細胞からの溶解物を、抗Kit抗体を用いた免疫沈降、次いで、SDS−PAGEおよび抗Kitまたは抗p−Tyr抗体を用いた免疫ブロッティングに供した(下側左パネル)。ネイティブSCFを使用した、細胞結合125I−SCFの置換アッセイ。WT(黒い四角)、R381A(▼)、R381A/E386A(◆)、またはキナーゼ陰性Kit(▲)を発現する3T3細胞を、125I−SCFを用いて漸増濃度のネイティブSCFの存在下で処理した。WT Kitに対するSCFのEC50(c−Kitと結合した125I−SCFの50%を置換するリガンド濃度)(1.1nM)は、R381A(1.0nM)、R381A/E386A(0.8nM)またはキナーゼ陰性Kit変異体(1.4nM)に対するSCFのEC50に匹敵する。図7Cは、隣接する細胞の細胞表面上に発現された可溶性(左パネル)または膜係留(右パネル)SCF分子によって駆動される、Kitおよび他のRTKの活性化のモデルを示す。D1−D2−D3リガンド結合モジュールとのSCF結合は、2つの結合したKit外部ドメイン単量体のC末端を互いから75Å以内にする。D3−D4およびD4−D5のヒンジの柔軟性は、2つの隣接する外部ドメインのC末端を互いから15Å以内にする、側方のD4−D4およびD5−D5の相互作用を可能にする。その結果、Kit細胞質ドメインの近接性および局所濃度の増加がキナーゼドメイン中の調節性チロシン残基の自己リン酸化をもたらし、PTKの活性化がもたらされる。(PTKの活性化はモデル中に描かれていないことに留意されたい)。細胞質ドメイン中の主要なチロシンのリン酸化に続いて、細胞シグナル伝達分子の相補体のリクルートおよび活性化が進行する。このモデルは、遊離SCF構造、リガンドを有さないKit、SCF−Kit複合体およびKit PTK構造に基づく(PDBエントリー1QZJ、1R01および1T45)。その構造が決定されていない領域を、二次構造予測を使用してモデリングした(緑色のヘリックスおよび黒色のループ)。SCFは赤紫色、Kit外部ドメインは青色およびkit PTKは水色に色づけされている。図7A〜Cは、がんおよび他の疾患に関連づけられているKit外部ドメインの変異ならびにKitおよび他のRTKの活性化の機構を示す図である。図7Aは、まだら症体質に関与する機能喪失型変異を示し、左パネル中に示す。D1(青色)、D2(緑色)およびD3(黄色)のリボン図ならびにSCFの表面表示(灰色)。変異したアミノ酸は赤色に色づけされている。GIST、SCLCおよびAMLに関与する機能獲得型変異を右パネルに示す。ホモ二量体形態中のD4およびD5の表面表示は灰色に色づけされている。GIST中で重複しているAla502およびTyr503は青色で示されており、Asp419に近接した欠失および挿入の変異(AMLおよびNCLL)は緑色で示されている。活性化させるKit変異はD5−D5境界領域に限局されていることに留意されたい。図7Bは、Kitの活性化がD4−D4境界領域中の点変異体によって損なわれることを示す。野生型Kit(WT)、D4中のR381AまたはE386A点変異を一過的に発現するHEK293細胞を、示したように、10ng/mlのSCFを用いて6分間、37℃で刺激した(上側左パネル)。刺激していないかまたはSCFで刺激した細胞の溶解物を、抗Kit抗体を用いた免疫沈降(IP)、次いで、SDS−PAGEおよび抗Kitまたは抗ホスホチロシン(p−Tyr)抗体のどちらかを用いた免疫ブロッティング(IB)に供した。抗p−Tyr免疫ブロットからのKitのチロシン自己リン酸化の濃度測定定量(上側右パネル)。野生型Kit(WT)またはR381A変異体を安定に発現する3T3細胞を様々な濃度のSCFで処理した。刺激していないかまたはSCFで刺激した細胞からの溶解物を、抗Kit抗体を用いた免疫沈降、次いで、SDS−PAGEおよび抗Kitまたは抗p−Tyr抗体を用いた免疫ブロッティングに供した(下側左パネル)。ネイティブSCFを使用した、細胞結合125I−SCFの置換アッセイ。WT(黒い四角)、R381A(▼)、R381A/E386A(◆)、またはキナーゼ陰性Kit(▲)を発現する3T3細胞を、125I−SCFを用いて漸増濃度のネイティブSCFの存在下で処理した。WT Kitに対するSCFのEC50(c−Kitと結合した125I−SCFの50%を置換するリガンド濃度)(1.1nM)は、R381A(1.0nM)、R381A/E386A(0.8nM)またはキナーゼ陰性Kit変異体(1.4nM)に対するSCFのEC50に匹敵する。図7Cは、隣接する細胞の細胞表面上に発現された可溶性(左パネル)または膜係留(右パネル)SCF分子によって駆動される、Kitおよび他のRTKの活性化のモデルを示す。D1−D2−D3リガンド結合モジュールとのSCF結合は、2つの結合したKit外部ドメイン単量体のC末端を互いから75Å以内にする。D3−D4およびD4−D5のヒンジの柔軟性は、2つの隣接する外部ドメインのC末端を互いから15Å以内にする、側方のD4−D4およびD5−D5の相互作用を可能にする。その結果、Kit細胞質ドメインの近接性および局所濃度の増加がキナーゼドメイン中の調節性チロシン残基の自己リン酸化をもたらし、PTKの活性化がもたらされる。(PTKの活性化はモデル中に描かれていないことに留意されたい)。細胞質ドメイン中の主要なチロシンのリン酸化に続いて、細胞シグナル伝達分子の相補体のリクルートおよび活性化が進行する。このモデルは、遊離SCF構造、リガンドを有さないKit、SCF−Kit複合体およびKit PTK構造に基づく(PDBエントリー1QZJ、1R01および1T45)。その構造が決定されていない領域を、二次構造予測を使用してモデリングした(緑色のヘリックスおよび黒色のループ)。SCFは赤紫色、Kit外部ドメインは青色およびkit PTKは水色に色づけされている。図8は、Kit外部ドメインの構造に基づいた、III型RTKの構造に基づく配列アラインメント、およびIII型ファミリーのRTKのリガンドの構造に基づくアラインメントを示す図である。それぞれの列は、個々のIg様ドメインのアラインメントを示す。アミノ酸配列は、(Harpazら(1994年) J Mol Biol 238巻:528〜539頁)によって決定され、Jpred(Cuffら(1998年) Bioinformatics 14巻:892〜893頁)によって計算されたファミリーメンバーの二次構造予測と一致するように、IgSFの折り畳み特徴に基づいて手動でアラインメントした。赤色で示されたアミノ酸は、IgSFの折り畳みを決定するアミノ酸を表す。βストランドは矢印によって、およびα−ヘリックスは配列の上のスプリング(spring)によって、ヒトKitおよびヒトSCFの付番と共に標識されている。リガンド結合の際に低下した溶媒接近可能性を示すリガンド結合部位の残基は、星印によって示されている。部位−Iは黒色、部位−IIは赤色および部位−IIIは緑色に色づけされている。同じ色分けが、SCF中の相互作用するアミノ酸残基の標識に使用されている。D4−D4相互作用に関与するD4のEFループが、シアン色の四角で囲まれている。アラインメントに使用されている配列は、Kitヒト(AAC50969)、Kitマウス(AAH75716)、CSFR1ヒト(P07333)、PDGFRαヒト(P16234)、PDGFRβヒト(P09619)およびFlt3ヒト(P36888)である。リガンド構造のアラインメントには、SCF(1EXZ)、CSF(1HMC)、Flt3L(1ETE)のPDBエントリーを、Lsqman(KleywegtおよびJones、1995年)を使用して重ね合わせた一方で、SCFマウスの配列(NP_038626)を、ClustalWを使用してヒトSCFとアラインメントした。図は、それぞれ配列番号112〜147を出現順に開示する。図8は、Kit外部ドメインの構造に基づいた、III型RTKの構造に基づく配列アラインメント、およびIII型ファミリーのRTKのリガンドの構造に基づくアラインメントを示す図である。それぞれの列は、個々のIg様ドメインのアラインメントを示す。アミノ酸配列は、(Harpazら(1994年) J Mol Biol 238巻:528〜539頁)によって決定され、Jpred(Cuffら(1998年) Bioinformatics 14巻:892〜893頁)によって計算されたファミリーメンバーの二次構造予測と一致するように、IgSFの折り畳み特徴に基づいて手動でアラインメントした。赤色で示されたアミノ酸は、IgSFの折り畳みを決定するアミノ酸を表す。βストランドは矢印によって、およびα−ヘリックスは配列の上のスプリング(spring)によって、ヒトKitおよびヒトSCFの付番と共に標識されている。リガンド結合の際に低下した溶媒接近可能性を示すリガンド結合部位の残基は、星印によって示されている。部位−Iは黒色、部位−IIは赤色および部位−IIIは緑色に色づけされている。同じ色分けが、SCF中の相互作用するアミノ酸残基の標識に使用されている。D4−D4相互作用に関与するD4のEFループが、シアン色の四角で囲まれている。アラインメントに使用されている配列は、Kitヒト(AAC50969)、Kitマウス(AAH75716)、CSFR1ヒト(P07333)、PDGFRαヒト(P16234)、PDGFRβヒト(P09619)およびFlt3ヒト(P36888)である。リガンド構造のアラインメントには、SCF(1EXZ)、CSF(1HMC)、Flt3L(1ETE)のPDBエントリーを、Lsqman(KleywegtおよびJones、1995年)を使用して重ね合わせた一方で、SCFマウスの配列(NP_038626)を、ClustalWを使用してヒトSCFとアラインメントした。図は、それぞれ配列番号112〜147を出現順に開示する。図9は、2:2のSCF−Kit複合体の全体的な構造の立体図を提供する図である。2:2のSCF−Kit複合体のリボンモデルが立体表示で示されている。見え方および色分けは図2Aと同じである。図10A〜Bは、SCF−Kit複合体の表面でのアミノ酸の保存を示す図である。図10Aは、SCF−Kitの結晶構造複合体の色分けした保存パターンを示す。シアン色からえび茶色を使用して、可変的アミノ酸から保存されたアミノ酸を標識している。図10Bは、2つの分子を互いから引き離すことによる、SCFおよびKitの可視化を示す。部位I、部位II、および部位IIIならびにD4−D4相互作用領域(D4−D4境界領域)に丸印が付けられている。図11A〜Bは、SCF−Kitの境界領域の電子密度を示す図である。図11Aは、2:2のSCF−Kit複合体の部位−IIの部分図を示し、2Fo−Fc電子密度マップが2σレベルでKitの周辺に描かれている。Kitの主鎖は、標識されている側鎖以外は黄色のチューブで描かれている。図11Bは、SCF−Kitの境界領域の電子密度を示しており、1.5σレベルでKitの周辺に描かれた実験的なマップを用いて遊離Kitの部分図を示している。配向および色分けは図12Aと同じである。図11A〜Bは、SCF−Kitの境界領域の電子密度を示す図である。図11Aは、2:2のSCF−Kit複合体の部位−IIの部分図を示し、2Fo−Fc電子密度マップが2σレベルでKitの周辺に描かれている。Kitの主鎖は、標識されている側鎖以外は黄色のチューブで描かれている。図11Bは、SCF−Kitの境界領域の電子密度を示しており、1.5σレベルでKitの周辺に描かれた実験的なマップを用いて遊離Kitの部分図を示している。配向および色分けは図12Aと同じである。図12A〜Dは、遊離およびSCFと結合したKitからのIg様ドメインの重ね合わせた対を示す図である。遊離およびSCFと結合したKitからの個々のD1、D2、D3、およびD4を重ね合わせている。(A)D1およびD2、(B)D2およびD3、(C)D3およびD4ならびに(D)D4およびD5のIg様ドメインの対の構造が示されており、それぞれの対中の重ね合わされたIg様ドメインは青色に色づけされ、第2の(重ね合わせられていない)Ig様ドメインは、遊離外部ドメインでは緑色およびSCFと結合した外部ドメインでは赤色に色づけされている。これらの図は、SCF結合の際に5個の個々のKitのIg様ドメインのそれぞれの構造に事実上の変化が起こらず、D1−D2−D3はSCF結合への準備ができているリガンド結合単位として機能することを示している。対照的に、SCFと結合したKitでは、D3−D4およびD4−D5の境界領域中に大きな再構成が起こる。図12A〜Dは、遊離およびSCFと結合したKitからのIg様ドメインの重ね合わせた対を示す図である。遊離およびSCFと結合したKitからの個々のD1、D2、D3、およびD4を重ね合わせている。(A)D1およびD2、(B)D2およびD3、(C)D3およびD4ならびに(D)D4およびD5のIg様ドメインの対の構造が示されており、それぞれの対中の重ね合わされたIg様ドメインは青色に色づけされ、第2の(重ね合わせられていない)Ig様ドメインは、遊離外部ドメインでは緑色およびSCFと結合した外部ドメインでは赤色に色づけされている。これらの図は、SCF結合の際に5個の個々のKitのIg様ドメインのそれぞれの構造に事実上の変化が起こらず、D1−D2−D3はSCF結合への準備ができているリガンド結合単位として機能することを示している。対照的に、SCFと結合したKitでは、D3−D4およびD4−D5の境界領域中に大きな再構成が起こる。図12A〜Dは、遊離およびSCFと結合したKitからのIg様ドメインの重ね合わせた対を示す図である。遊離およびSCFと結合したKitからの個々のD1、D2、D3、およびD4を重ね合わせている。(A)D1およびD2、(B)D2およびD3、(C)D3およびD4ならびに(D)D4およびD5のIg様ドメインの対の構造が示されており、それぞれの対中の重ね合わされたIg様ドメインは青色に色づけされ、第2の(重ね合わせられていない)Ig様ドメインは、遊離外部ドメインでは緑色およびSCFと結合した外部ドメインでは赤色に色づけされている。これらの図は、SCF結合の際に5個の個々のKitのIg様ドメインのそれぞれの構造に事実上の変化が起こらず、D1−D2−D3はSCF結合への準備ができているリガンド結合単位として機能することを示している。対照的に、SCFと結合したKitでは、D3−D4およびD4−D5の境界領域中に大きな再構成が起こる。図12A〜Dは、遊離およびSCFと結合したKitからのIg様ドメインの重ね合わせた対を示す図である。遊離およびSCFと結合したKitからの個々のD1、D2、D3、およびD4を重ね合わせている。(A)D1およびD2、(B)D2およびD3、(C)D3およびD4ならびに(D)D4およびD5のIg様ドメインの対の構造が示されており、それぞれの対中の重ね合わされたIg様ドメインは青色に色づけされ、第2の(重ね合わせられていない)Ig様ドメインは、遊離外部ドメインでは緑色およびSCFと結合した外部ドメインでは赤色に色づけされている。これらの図は、SCF結合の際に5個の個々のKitのIg様ドメインのそれぞれの構造に事実上の変化が起こらず、D1−D2−D3はSCF結合への準備ができているリガンド結合単位として機能することを示している。対照的に、SCFと結合したKitでは、D3−D4およびD4−D5の境界領域中に大きな再構成が起こる。図13A〜Bは、SCF−Kit複合体の構造の静電表面電位を示す図である。図13Aは、SCF−Kitの2:2複合体を具体的に示す。図13Bは、SCF−Kit複合体の構造の静電表面電位、具体的には、SCFをSCF−Kitの2:2複合体から引き離した後のKitの静電表面電位の可視化を示す。正および負荷電の表面がそれぞれ青色および赤色に色づけされている。SCF結合領域およびD4−D4境界領域に丸印が付けられている。図14は、抗Kit−D5抗体によるSCF誘導性のKit活性化の阻害を示す図である。Kitを発現する3T3細胞を、漸増濃度の抗Kit D5(Kitの第5のIg様ドメインに向けられている)、対照として抗SCF(SCFリガンドに向けられている)、または抗Kit外部ドメイン(Kit外部ドメイン全体に向けられている)と共にインキュベーションした。図15は、組換えKit D4を使用したSCF誘導性のKit活性化の阻害を示す図である。Kitを発現する3T3細胞を漸増濃度の組換えKit−D4と共に10分間、室温でインキュベートし、次いで10分間のSCF刺激を行った。図16Aは、PDGF誘導性のPDGFR活性化がD4中の点変異によって妨げられることを示す図である。WT PDGFRまたはD4変異体(R385AおよびE390A)を発現するPDGFR−/−MEFを終夜血清欠乏させ、示した濃度のPDGF BBで5分間刺激した。細胞溶解物を、抗PDGFR抗体を用いて免疫沈降させ、次いでSDS−PAGEおよび抗ホスホチロシン抗体4G10を用いた免疫ブロッティングを行った。膜のストリッピング(stripped off)を行い、抗flagタグ抗体で再ブロッティングして、全PDGFRレベルを決定した。図16Bは、PDGFRを介したシグナル伝達がD4中の点変異によって妨げられることを示す図である。WT PDGFRならびにD4変異体(R385AおよびE390A)を発現するPDGFR−/−MEFを終夜血清欠乏させ、示した濃度のPDGF BBで、5分間23℃で刺激した。等量の全細胞溶解物(TCL)をSDS−PAGEに供し、それぞれ抗ホスホ−MAPK、MAPK、ホスホ−AktおよびAktを用いた免疫ブロッティングによって分析した。この実験は、MAPKの応答およびAktの活性化がどちらもD4中の点変異によって妨げられることを示している。図16Cは、PDGFRの活性化を妨げるD4中の点変異がPDGF誘導性のPDGFRの二量体化を妨害しないことを示す図である。WTまたはE390A変異体発現PDGFR−/−MEFを終夜血清欠乏させ、次いで、DMEM/50mMのHepes緩衝液(pH7.4)中の示した量のPDGFと共に4℃で90分間インキュベートした。非結合のリガンドを除去した後、細胞を、PBS中の0.5mMのスベリン酸ジスクシンイミジル(DSS)と共に30分間インキュベートした。刺激していない細胞または刺激した細胞の溶解物を、抗PDGFR抗体を用いた免疫沈降、次いで、SDS−PAGE分析および抗flag抗体(左パネル)または抗pTyr抗体(右パネル)を用いた免疫ブロッティングに供した。図17は、D3−D4ヒンジ領域中の空洞を示す図である。いくつかの空洞が外部ドメイン単量体の構造中のD3−D4境界領域上に点在している。空洞の画定に関与しているアミノ酸は、表4(以下)中に要約されている。2つのKit受容体間のホモタイプ相互作用の形成の際、D3−D4ヒンジ領域が変更され、D3からのK218、S220、Y221、L222、およびD4からのF340、P341、K342、N367、E368、S369、N370、I371、Y373の残基によって作製される浅い空洞の形成がもたらされる。図17は、占有されていない単量体(A)およびSCFと結合した二量体(B)のD3−D4ヒンジ領域のリボン図、およびD3−D4ポケットのメッシュ表示を示す。図17は、D3−D4ヒンジ領域中の空洞を示す図である。いくつかの空洞が外部ドメイン単量体の構造中のD3−D4境界領域上に点在している。空洞の画定に関与しているアミノ酸は、表4(以下)中に要約されている。2つのKit受容体間のホモタイプ相互作用の形成の際、D3−D4ヒンジ領域が変更され、D3からのK218、S220、Y221、L222、およびD4からのF340、P341、K342、N367、E368、S369、N370、I371、Y373の残基によって作製される浅い空洞の形成がもたらされる。図17は、占有されていない単量体(A)およびSCFと結合した二量体(B)のD3−D4ヒンジ領域のリボン図、およびD3−D4ポケットのメッシュ表示を示す。図18は、D4−D5ヒンジ領域中の空洞を示す図である。小さな空洞は、Kit単量体のD4のABループおよびEFループ、D4−D5接続リンカーならびにD5のDEループおよびFGループの一部によって形成される。空洞を画定する残基は表4(以下)中に要約されている。空洞の形状および大きさは、Kit外部ドメイン二量体構造中で変化している。D4のEFループおよびストランドG、D4−D5リンカーならびにD5のストランドBおよびDEループによって形成される主要な空洞は、D4ホモタイプ境界領域の形成に重要な領域であるD4のEFループの下に位置する。空洞の近くに位置するD5のDEループは、非結合および占有されたKit構造の両方の電子密度の低い品質によって明らかとなるように、高い柔軟性を有し得ることに留意されたい。図18は、占有されていない単量体(A)およびSCF−二量体(B)のリボン図、ならびにD4−D5ヒンジ領域の周辺の浅い空洞のメッシュ表示を示す。図18は、D4−D5ヒンジ領域中の空洞を示す図である。小さな空洞は、Kit単量体のD4のABループおよびEFループ、D4−D5接続リンカーならびにD5のDEループおよびFGループの一部によって形成される。空洞を画定する残基は表4(以下)中に要約されている。空洞の形状および大きさは、Kit外部ドメイン二量体構造中で変化している。D4のEFループおよびストランドG、D4−D5リンカーならびにD5のストランドBおよびDEループによって形成される主要な空洞は、D4ホモタイプ境界領域の形成に重要な領域であるD4のEFループの下に位置する。空洞の近くに位置するD5のDEループは、非結合および占有されたKit構造の両方の電子密度の低い品質によって明らかとなるように、高い柔軟性を有し得ることに留意されたい。図18は、占有されていない単量体(A)およびSCF−二量体(B)のリボン図、ならびにD4−D5ヒンジ領域の周辺の浅い空洞のメッシュ表示を示す。図19は、D4ホモタイプ相互作用を媒介する領域での空洞を示す図である。KitのD4のCDループおよびEFループによって形成される凹表面は、D4ホモタイプ境界領域の真上に位置する。D4からの残基Y350、R353、F355、K358、L379、T380、R381、L382、E386およびT390は、外部ドメイン二量体構造中の凹表面に約130A2の表面積を提供する。D4ホモタイプ境界領域中で重要な役割を果たすGlu386の側鎖は、表面の中心に向かって突出する。凹表面の特徴的な特長は、荷電残基(Glu386およびLys358)によって囲まれた小さな疎水性パッチである。表面の大きさおよび接近可能性は、ホモタイプのD4:D4相互作用の際に変更され、ドメインの上部に向かって折り畳まれるCDループのコンフォメーション中で変化が起こる。凹表面の形成に関与する残基は表4(以下)中に要約されている。以下の図中のパネルAは、リガンドで占有されたKitのD4(示さず)上に重ねたKitの占有されていないD4ドメイン(金色)のリボン図、ならびにリガンドで占有された(緑色)外部ドメインの構造と占有されていない外部ドメインの構造(赤色)との間のCDおよびEFループの異なるコンフォメーションを示す。D4:D4相互作用に重要な残基はスティックモデルの様式で示されている。パネルBおよびCは、占有されていないKit(図19B)およびSCFで占有されたKit構造(図19C)のリボン図、ならびにD4ホモタイプ境界領域の上の浅い空洞のメッシュ表示を示す。図19は、D4ホモタイプ相互作用を媒介する領域での空洞を示す図である。KitのD4のCDループおよびEFループによって形成される凹表面は、D4ホモタイプ境界領域の真上に位置する。D4からの残基Y350、R353、F355、K358、L379、T380、R381、L382、E386およびT390は、外部ドメイン二量体構造中の凹表面に約130A2の表面積を提供する。D4ホモタイプ境界領域中で重要な役割を果たすGlu386の側鎖は、表面の中心に向かって突出する。凹表面の特徴的な特長は、荷電残基(Glu386およびLys358)によって囲まれた小さな疎水性パッチである。表面の大きさおよび接近可能性は、ホモタイプのD4:D4相互作用の際に変更され、ドメインの上部に向かって折り畳まれるCDループのコンフォメーション中で変化が起こる。凹表面の形成に関与する残基は表4(以下)中に要約されている。以下の図中のパネルAは、リガンドで占有されたKitのD4(示さず)上に重ねたKitの占有されていないD4ドメイン(金色)のリボン図、ならびにリガンドで占有された(緑色)外部ドメインの構造と占有されていない外部ドメインの構造(赤色)との間のCDおよびEFループの異なるコンフォメーションを示す。D4:D4相互作用に重要な残基はスティックモデルの様式で示されている。パネルBおよびCは、占有されていないKit(図19B)およびSCFで占有されたKit構造(図19C)のリボン図、ならびにD4ホモタイプ境界領域の上の浅い空洞のメッシュ表示を示す。図19は、D4ホモタイプ相互作用を媒介する領域での空洞を示す図である。KitのD4のCDループおよびEFループによって形成される凹表面は、D4ホモタイプ境界領域の真上に位置する。D4からの残基Y350、R353、F355、K358、L379、T380、R381、L382、E386およびT390は、外部ドメイン二量体構造中の凹表面に約130A2の表面積を提供する。D4ホモタイプ境界領域中で重要な役割を果たすGlu386の側鎖は、表面の中心に向かって突出する。凹表面の特徴的な特長は、荷電残基(Glu386およびLys358)によって囲まれた小さな疎水性パッチである。表面の大きさおよび接近可能性は、ホモタイプのD4:D4相互作用の際に変更され、ドメインの上部に向かって折り畳まれるCDループのコンフォメーション中で変化が起こる。凹表面の形成に関与する残基は表4(以下)中に要約されている。以下の図中のパネルAは、リガンドで占有されたKitのD4(示さず)上に重ねたKitの占有されていないD4ドメイン(金色)のリボン図、ならびにリガンドで占有された(緑色)外部ドメインの構造と占有されていない外部ドメインの構造(赤色)との間のCDおよびEFループの異なるコンフォメーションを示す。D4:D4相互作用に重要な残基はスティックモデルの様式で示されている。パネルBおよびCは、占有されていないKit(図19B)およびSCFで占有されたKit構造(図19C)のリボン図、ならびにD4ホモタイプ境界領域の上の浅い空洞のメッシュ表示を示す。図20は、リガンド結合するD2およびD3領域での凹表面を示す図である。浅い凹表面が、D2およびD3のリガンド結合表面の一部の上に位置する。小さなポケットに関与する残基は、D2からのY125、G126、H180、R181、K203、V204、R205、P206およびF208ならびにD3からのV238、S239、S240、S241、H263、G265、D266、F267、N268およびY269である。ポケットは、親水性残基によって囲まれた小さな疎水性パッチによって形成される。占有されていないKit構造とSCFで占有されたKit構造との間で大きな変更はなく、全体的な埋没表面積は約500A2である。図AおよびBは、占有されていないKit(A)およびSCFと結合したKit(B)のリボン図、ならびにD2−D3ポケットのメッシュ表示を示す。図20は、リガンド結合するD2およびD3領域での凹表面を示す図である。浅い凹表面が、D2およびD3のリガンド結合表面の一部の上に位置する。小さなポケットに関与する残基は、D2からのY125、G126、H180、R181、K203、V204、R205、P206およびF208ならびにD3からのV238、S239、S240、S241、H263、G265、D266、F267、N268およびY269である。ポケットは、親水性残基によって囲まれた小さな疎水性パッチによって形成される。占有されていないKit構造とSCFで占有されたKit構造との間で大きな変更はなく、全体的な埋没表面積は約500A2である。図AおよびBは、占有されていないKit(A)およびSCFと結合したKit(B)のリボン図、ならびにD2−D3ポケットのメッシュ表示を示す。図21は、PDGF受容体の膜近位領域の、構造に基づく配列解析および相同性モデリングを示す図である。図21Aは、PDGFRα、PDGFRβ、およびKitのD4のアミノ酸配列(出現順にそれぞれ配列番号148から157)のアラインメントを示す。IgSFの折り畳みにおいて主要な残基およびヒトKit構造のD4のIgの折り畳みのコア残基のアミノ酸は、それぞれ赤色および緑色に色づけされている。D4ホモタイプ相互作用に関与する2つの主要な塩基性および酸性の残基は、それぞれ青色および赤色の四角で囲まれている。Ig様ドメイン上の保存されたジスルフィド結合形成システイン残基に対応する位置(B5およびF5)は、星印によって示されている。βストランドは、Kit配列の下の矢印によって標識されている。二次構造要素はIgSF命名法に従って示されている。図21Bは、PDGFRの細胞外ドメインの膜近位領域のモデルを示す。PDGFRβ外部ドメインの膜近位領域は白色に色づけされており、透明な分子表面を有するリボンとして示されている(D4はオレンジ色に色づけされており、D5はピンク色に色づけされている、左パネル)。2つの隣接するPDGFRβ分子のD4−D4境界領域の近接図(右パネル)は、D4間の相互作用が、2つの隣接するEFループから突出した残基Arg385およびGlu390によって媒介されることを示している。主要なアミノ酸が標識され、スティックモデルとして示されている。図21は、PDGF受容体の膜近位領域の、構造に基づく配列解析および相同性モデリングを示す図である。図21Aは、PDGFRα、PDGFRβ、およびKitのD4のアミノ酸配列(出現順にそれぞれ配列番号148から157)のアラインメントを示す。IgSFの折り畳みにおいて主要な残基およびヒトKit構造のD4のIgの折り畳みのコア残基のアミノ酸は、それぞれ赤色および緑色に色づけされている。D4ホモタイプ相互作用に関与する2つの主要な塩基性および酸性の残基は、それぞれ青色および赤色の四角で囲まれている。Ig様ドメイン上の保存されたジスルフィド結合形成システイン残基に対応する位置(B5およびF5)は、星印によって示されている。βストランドは、Kit配列の下の矢印によって標識されている。二次構造要素はIgSF命名法に従って示されている。図21Bは、PDGFRの細胞外ドメインの膜近位領域のモデルを示す。PDGFRβ外部ドメインの膜近位領域は白色に色づけされており、透明な分子表面を有するリボンとして示されている(D4はオレンジ色に色づけされており、D5はピンク色に色づけされている、左パネル)。2つの隣接するPDGFRβ分子のD4−D4境界領域の近接図(右パネル)は、D4間の相互作用が、2つの隣接するEFループから突出した残基Arg385およびGlu390によって媒介されることを示している。主要なアミノ酸が標識され、スティックモデルとして示されている。図22は、PDGF誘導性のPDGFR活性化がD4中の変異によって損なわれることを示す実験の結果を示す図である。図22Aは、PDGFRβのPDGF誘導性のチロシン自己リン酸化が、PDGFRβのE390A、R385A、RE/AA、およびRKE/AAA変異体を発現する細胞において強く損なわれていることを示す実験の結果を示す。図22Bは、野生型および変異体PDGFRβの置換曲線を示すグラフである。IC50値は、Prism4を用いた曲線への適合によって決定した。図22Cは、R385A、E390AまたはRE/AA変異がPDGFRの固有のチロシンキナーゼ活性に影響を与えないことを示す免疫ブロットからの結果を示す。図23は、PDGFで刺激した、D4ドメインが変異したPDGFRβが、不活性の二量体の形態で細胞表面上に発現されていることを示す、免疫沈降実験からの結果を示す図である。細胞溶解物を、抗PDGFR抗体を用いて免疫沈降させ、免疫ペレットをSDS−PAGEによって分析し、それぞれ抗flag抗体(左パネル)および抗ホスホチロシン抗体(右パネル)を用いて免疫ブロットした。図24は、PDGF誘導性の細胞応答がPDGFRβのD4変異体中の変異によって損なわれることを示す免疫沈降実験からの結果を示す図である。図25は、アクチン環形成のPDGF刺激がPDGFRのD4変異体を発現するMEF中で損なわれていることを示す実験からの結果を示す図である。50ng/mlのPDGFで2分間刺激した後に、WT PDGFRを発現するMEFの約83%が環状アクチン環形成を示した一方で、PDGFRのD4変異細胞の5%のみが同様の環状アクチン環形成を示した。さらに、WT PDGFRを発現するMEFにおいてPDGF刺激の2〜5分後にピークとなる一過性の環状アクチン環形成は、R385A、E390AまたはRE/AA PDGFR変異体を発現する細胞中で弱く検出された。図26は、PDGFRの内在化およびユビキチン媒介性のPDGFRの分解がPDGFRのD4中の変異によって損なわれることを示す実験の結果を示す図である。図26Aは、WT PDGFRを発現するMEFと結合した、125Iで標識したPDGFの内在化の動態が、E390A、R385AまたはRE/AA PDGFRを発現する細胞と結合した、125Iで標識したPDGFの内在化の動態よりもはるかに速いことを示すグラフである。図26Bは、R385A、E390AまたはRE/AA PDGFR変異体の分解の動態が強く減じられたことを示し、WT PDGFRの半分がPDGF刺激の1.5時間以内に分解された一方で、PDGFRのD4変異体の半減期は約4〜6時間まで伸びていた。図26Cは、E390A PDGFRのユビキチン化のPDGF誘導性の刺激も、同様の条件下でWT PDGFRと比較して強く低下したことを示す実験を示す。図26は、PDGFRの内在化およびユビキチン媒介性のPDGFRの分解がPDGFRのD4中の変異によって損なわれることを示す実験の結果を示す図である。図26Aは、WT PDGFRを発現するMEFと結合した、125Iで標識したPDGFの内在化の動態が、E390A、R385AまたはRE/AA PDGFRを発現する細胞と結合した、125Iで標識したPDGFの内在化の動態よりもはるかに速いことを示すグラフである。図26Bは、R385A、E390AまたはRE/AA PDGFR変異体の分解の動態が強く減じられたことを示し、WT PDGFRの半分がPDGF刺激の1.5時間以内に分解された一方で、PDGFRのD4変異体の半減期は約4〜6時間まで伸びていた。図26Cは、E390A PDGFRのユビキチン化のPDGF誘導性の刺激も、同様の条件下でWT PDGFRと比較して強く低下したことを示す実験を示す。図26は、PDGFRの内在化およびユビキチン媒介性のPDGFRの分解がPDGFRのD4中の変異によって損なわれることを示す実験の結果を示す図である。図26Aは、WT PDGFRを発現するMEFと結合した、125Iで標識したPDGFの内在化の動態が、E390A、R385AまたはRE/AA PDGFRを発現する細胞と結合した、125Iで標識したPDGFの内在化の動態よりもはるかに速いことを示すグラフである。図26Bは、R385A、E390AまたはRE/AA PDGFR変異体の分解の動態が強く減じられたことを示し、WT PDGFRの半分がPDGF刺激の1.5時間以内に分解された一方で、PDGFRのD4変異体の半減期は約4〜6時間まで伸びていた。図26Cは、E390A PDGFRのユビキチン化のPDGF誘導性の刺激も、同様の条件下でWT PDGFRと比較して強く低下したことを示す実験を示す。図27は、D4境界領域の破壊がKIT中の腫瘍発生性変異を遮断することを示す実験の結果を示す図である。野生型KITへのSCF刺激は、KITの増強されたチロシン自己リン酸化によって明らかとなるKITの活性化の増強をもたらす。この実験は、KITの腫瘍発生性のD5−反復変異体が構成的にチロシン自己リン酸化されていることをさらに示す。対照的に、D5−反復/E386A変異体は、腫瘍発生性のD5−反復変異によって媒介されるKITの構成的なチロシン自己リン酸化を遮断する。図28は、KIT−D4のホモタイプ相互作用モチーフに対応するペプチドに向けられた抗体が完全長のKIT受容体を認識することを示す免疫ブロット実験の結果を示す図である。図29Aは、様々な種からのVEGFR1およびVEGFR2のD7の予測されたEF−ループ領域の、構造に基づく複数配列アラインメントを示す図である。IセットIgフレーム中の主要なアミノ酸が緑色で強調されており、EFループ中の保存されたArg/Asp対が赤色で強調されている。図29Bは、VEGFRのD4とKIT、CSF1RおよびPDGFR(III型RTK)のD4との予測されたEF−ループ領域の比較を示す。IセットIgフレーム中の主要なアミノ酸が緑色で強調されており、EFループ中の保存されたArg/AspまたはGlu対が赤色で強調されている。EF−ループ中の逆の荷電を有する保存されていないアミノ酸が青色で強調されている。保存されたY−コーナー(conner)モチーフが*で示されている。図30は、VEGFR2のリガンド誘導性の活性化がD7のEFループ領域中の変異によって損なわれるが、D4のEFループ領域中の変異によっては影響を受けないことを示す図である。図30Aは、野生型VEGFR2、R726AまたはE731A VEGFR2変異体を一過的に発現するHEK293細胞を、示した量のVEGFで、5分間、37℃で刺激したことを示す。刺激していないかまたはVEGFで刺激した細胞からの溶解物を、抗VEGFR2抗体を用いた免疫沈降、次いで、抗pTyrまたは抗VEGFR2抗体を用いた免疫ブロッティング(IB)に供した。同じ実験からの全細胞溶解物をSDS−PAGEによって分析し、次いで、抗ホスホMAPK(pMAPK)または抗MAPK抗体を用いた免疫ブロッティングを行った。図30Bは、WT VEGFR2−PDGFRキメラ受容体またはD7領域中に変異(R726A、D731AもしくはR726/D731二重変異体RD/2A)を保有するキメラ受容体を安定に発現する血清欠乏させた3T3細胞を、VEGFで5分間、37℃で刺激したことを示す。刺激していないかまたはVEGFで刺激した細胞からの溶解物を、キメラ受容体の細胞質領域に対する抗体を用いた免疫沈降、次いで、それぞれ抗pTyrまたは抗タグ(FLAG)抗体のどちらかを用いた免疫ブロッティングに供した。図30Cは、WT VEGFR1−PDGFRキメラ受容体またはD7領域中に変異(R721A、D725AもしくはR721D725/2A二重変異)を保有するキメラ受容体を安定に発現する血清欠乏させた3T3細胞を、VEGFで5分間、37℃で刺激したことを示す。刺激していないかまたはVEGFで刺激した細胞からの溶解物を、キメラ受容体の細胞質領域に向けられた抗体を用いた免疫沈降、次いで、それぞれ抗pTyrまたは抗タグ(FLAG)抗体のどちらかを用いた免疫ブロッティングに供した。図30Dは、WT VEGFR2−PDGFRキメラ受容体またはD4領域中に変異(D392AもしくはD387/R391A二重変異)を保有するキメラ受容体を発現する3T3細胞を、図30Aに記載のように分析したことを示す。図31は、VEGFR2外部ドメインのD7の二量体の構造を示す図である。図31Aは、リボン図およびD7ホモ二量体の構造の透明な分子表面を示す(側面図)。Asp731およびArg726がスティックモデルとして示されている。図31Bは、2つの隣接する分子(ピンク色および緑色)のホモタイプのD7境界領域の近接図を示す。Asp731およびArg726によって形成された塩橋が破線として示されている。図31Cは、D7ホモ二量体(側面図)の荷電分布を表面電位モデルとして示す(左パネル)。ホモタイプ接触を媒介するD7の表面の図(右パネル)。図31Dは、D7−D7境界領域の図を示す、1.1σレベルの等高線の2Fo−Fc電子密度マップを示す。VEGFRのD7プロトマーの主鎖は、それぞれピンク色および黄色のチューブとして表されている。図32は、VEGFR2のD7の構造と二量体KIT−SCF複合体のD4の構造との重ね合わせを示す図である。VEGFRのD7の構造(PDB IDコード:3KVQ)およびSCFとの複合体中のKITの二量体(PDB IDコード:2E9W)の重ね合わせ(左パネル)。重ね合わせたD7およびD4領域のより近接した図が、ドメイン構成およびホモタイプ接触の高い類似度を明らかにする(右パネル)。VEGFRのD7は緑色で、およびEFループは黄色で例示されている。KITのD4は灰色で、およびそのEFループはオレンジ色で例示されている。図33は、VEGFR1およびVEGFR2の系統学的分析を示す図である。図33Aは、様々な種からのIII型およびV型RTK中の保存されたEF−ループの位置を示す。保存されたEF−ループモチーフを含有するIg様ドメインが青色で示されている。図33Bは、VEGFR2のD7領域の色分けした保存パターンを示す。ヒトVEGFRのアミノ酸配列を、PSI−BLASTを使用して非重複データベース(nr)を相同配列について検索するためのクエリとして使用した(Altschulら、J. Mol. Boiol.、215巻(3号):403〜410頁(1990年))。D7の配列アラインメントは、Clustal W2を使用して行い(Thompsonら、Nucleic Acids Res.、22巻(22号):4673〜4680頁(1994年))、20の主要な残基についてのIgSFの折り畳みの制約に基づいて手動で調節した。アミノ酸配列のアラインメントをConsurf3.0サーバーに供して(Landauら、Nucleic Acids Res.、33巻(ウェブサーバー号):W299〜302頁(2005年))、それぞれの位置の最大尤度の正規化された進化率を生成した。シアン色からえび茶色を使用して、可変的アミノ酸から保存されたアミノ酸を標識している。図33Cは、VEGFR1およびVEGFR2の系統樹が、Clustal W2の使用に基づいた隣接−連結(neighboring−joining)方法によって作成されたことを示す。分析に使用したアミノ酸配列には、VEGFR2_HUMAN(gi:11321597)、VEGFR2_DOG(gi:114158632)、VEGFR2_HORSE(gi:194209154)、VEGFR2_CATTLE(gi:158508551)、VEGFR2_RAT(gi:56269800)、VEGFR2_MOUSE(gi:27777648)、VEGFR2_CHICK(gi:52138639)、VEGFR2_QUAIL(gi:1718188)、VEGFR2_ZEBRAFISH(gi:46401444)、VEGFR1_HUMAN(gi:143811474)、VEGFR1_MOUSE(gi:148673892)、VEFGR1_RAT(gi:149034835)、VEFGR1_HORSE(gi:149730119)、VEGFR1_CHICK(gi:82105132)、VEGFR1_ZEBRAFISH(gi:72535148)、VEGFR_SEAURCHIN(gi:144226988)、VER1_C_ELEGANS(gi:6003694)、VER3_C_ELEGANS(gi:3877967)、VER4_C_ELEGANS(gi:3877968)、PVR_DROSOPHILA(gi:45552252)、VEGFR_SEASQUIRT(gi:198434052)が含まれる。 発明の詳細な説明 本発明は、ヒト受容体チロシンキナーゼ、たとえばVEGF受容体、たとえばヒトVEGFR1(Flt1)、VEGFR2(KDR/Flk1)およびVEGFR3(Flt4)の外部ドメイン、たとえばIg様ドメインまたはIg様ドメイン間のヒンジと結合する部分、たとえば、抗体またはその抗原結合性一部分、小分子、ペプチド性分子、アプタマー、およびアドネクチンを提供する。本発明の部分は、VEGF受容体の外部ドメインを不活性状態に固定し、それによってVEGF受容体の活性を阻害することができる。本発明の一実施形態では、部分は、VEGF受容体の外部ドメインを単量体状態に固定する。本発明の別の実施形態では、部分は、VEGF受容体の外部ドメインが二量体化することを可能にするが、2つの単量体のIg様ドメイン(たとえばVEGF受容体のD7−D7ドメイン)間の配置、配向および/または距離に影響を与え、それによってVEGF受容体の活性を阻害する。言い換えれば、部分は、VEGF受容体の外部ドメインの、リガンド誘導性の二量体化を可能にするが、細胞表面境界領域での2つの外部ドメインの配置に影響を与えるか、またはVEGF受容体中のコンフォメーション変化を変更もしくは妨げ、それによってVEGF受容体の活性を阻害する(たとえば、受容体の内在化を阻害する、および/または受容体のチロシン自己リン酸化を阻害する、および/または下流のシグナル伝達経路を活性化させる受容体の能力を阻害する)場合がある。本発明は、少なくとも部分的に、VEGF受容体VEGFR2の外部ドメイン全体の結晶構造の解読に基づく。この結晶構造の解読により、本発明の部分が標的とし得るエピトープ、たとえばコンフォメーションエピトープの同定が可能となった。 本明細書中で使用する用語「部分」には、外部ドメイン、たとえば受容体チロシンキナーゼのIg様ドメインと結合する任意の部分が含まれることを意図し、部分は、受容体チロシンキナーゼの外部ドメインを不活性状態、たとえば単量体状態に固定し、それによって受容体チロシンキナーゼの活性に拮抗する。部分は、単離された抗体もしくはその抗原結合性一部分、小分子、ペプチド性分子(たとえば、受容体チロシンキナーゼのIg様ドメインの構造に基づいて設計されているペプチド性分子)、アプタマーまたはアドネクチンであることができる。一部の態様では、部分は、受容体チロシンキナーゼのIg様ドメインを接続するヒンジ領域(たとえば、III型RTKのD3−D4またはD4−D5ヒンジ領域)と結合する。 一部の実施形態では、部分は、ヒトVEGF受容体の特定の配列、たとえば、VEGFR1の残基718〜727、VEGFR1のArg720およびAsp725、VEGFR2の残基724〜733、VEGFR2のArg726およびAsp731、VEGFR3の残基735〜744、またはVEGFR3の残基Arg737およびAsp742と結合する。あるいは、部分は、ヒトKit受容体の特定の配列、たとえば、ヒトKitの残基309〜413、残基410〜519、381Argおよび386Glu、または418Tyrおよび505Asnと結合する。残基309〜413がヒトKitのD4ドメインを含み、残基410〜519がD5ドメインを含み、本明細書においてKit受容体の二量体化に重要であると示されている。残基381Argおよび386Gluは、本明細書中においてD4ドメインの非共有結合性会合、したがって受容体の二量体化に重要であると示されている、KitのD4ドメイン中の残基である。同様に、残基418Tyrおよび505Asnは、本明細書中において受容体の二量体化に重要であると示されている、KitのD5ドメイン中の残基である。当業者には、前述の残基と特異的に結合する部分が、たとえば2つの単量体KitまたはVEGF受容体分子の二量体化を妨げることによって、受容体の活性に拮抗できることが理解されよう。 さらなる実施形態では、部分は、ヒトVEGF受容体中の変異したアミノ酸残基と結合し、上記アミノ酸残基は、VEGFR1のArg720もしくはAsp725、VEGFR2のArg726もしくはAsp731、またはVEGFR3のArg737もしくはAsp742のうちの少なくとも1つである。さらなる実施形態では、部分は、ヒトKit中の変異したアミノ酸残基と結合し、上記アミノ酸残基は、417Thr、418Tyr、419Asp、421Leu、420Arg、503Tyr、または502Alaのうちの少なくとも1つである。 好ましい実施形態では、本発明の部分は、表4(以下)中に記載の小さな空洞またはポケットを構成するKit受容体中の1つまたは複数の残基と結合する。たとえば、本発明の部分は、Kit受容体のD3−D4ヒンジ領域中の以下の残基のうちの1つまたは複数と結合し得る:D3ドメインからのK218、S220、Y221、L222およびD4ドメインからのF340、P341、K342、N367、E368、S369、N370、I371、Y373。また、本発明の部分は、Kit受容体のD4ドメイン中で凹表面を構成する以下の残基のうちの1つまたは複数とも結合し得る:Y350、R353、F355、K358、L379、T380、R381、L382、E386およびT390。別の実施形態では、本発明の部分は、Kit受容体のD2−D3ヒンジ領域中でポケットを形成する以下の残基のうちの1つまたは複数と結合する:D2ドメインからのY125、G126、H180、R181、K203、V204、R205、P206およびF208ならびにD3ドメインからのV238、S239、S240、S241、H263、G265、D266、F267、N268およびY269。 したがって、一部の実施形態では、本発明の部分は、近接したアミノ酸残基または近接していないアミノ酸残基と結合し、チロシンキナーゼの活性化を可能にする距離および配向でのRTKの膜近位領域の配置に必要な挙動を妨げる分子ウェッジとして機能し得る。また、本発明の部分は、ホモタイプもしくはヘテロタイプのD4もしくはD5受容体の相互作用を妨げるかまたはリガンド−受容体の相互作用部位を不安定化するようにも作用し得る。一部の好ましい実施形態では、本発明の部分は、Kit受容体上の以下の残基のうちの1つまたは複数と結合する:Y125、G126、H180、R181、K203、V204、R205、P206、P206、F208、K127、A207、V238、S239、S240、S241、H263、G265、D266、F267、N268、Y269、T295、L222、L222、L223、E306、V308、R224、V308、K310、K218、A219、S220、K218、A220、Y221、A339、D327、D398、E338、E368、E386、F312、F324、F340、F355、G311、G384、G387、G388、I371、K342、K358、L382、L379、N326、N367、N370、N410、P341、S369、T385、V325、V407、V409、Y373、Y350、Y408、T380、T390、R381、R353、T411、K412、E414、K471、F433、G470、L472、V497、F469、A431、またはG432。当業者には、一部の実施形態では、本発明の部分は、他のIII型RTK中の対応する残基、たとえば、類似のポケットもしくは空洞を形成する残基または構造アラインメントもしくは配列アラインメントによって同じ位置にあるものに対して容易に標的化し得ることが理解されよう。 具体的な実施形態では、本発明の部分は、III型RTK上のコンフォメーションエピトープまたは不連続エピトープと結合する。コンフォメーションまたは不連続エピトープは、III型RTK、たとえばヒトKit受容体またはPDGF受容体からのD3、D4、および/もしくはD5ドメインまたはD4−D5もしくはD3−D4ヒンジ領域からの2つ以上の残基から構成され得る。たとえば、コンフォメーションまたは不連続エピトープは、表4中に記載した残基のうちの2つ以上から構成され得る。 特定の実施形態では、本発明の部分は、Y125、H180、R181、K203、V204、R205、P206、V238、S239、S240、H263、G265、D266、F267、N268、およびY269からなる群より選択される2つ以上のアミノ酸からなるコンフォメーションエピトープと結合する。類似の実施形態では、本発明の部分は、以下のアミノ酸の群のうちの1つから選択される、2つ以上のアミノ酸から構成されるコンフォメーションエピトープと結合し得る:P206、F208、V238、およびS239;K127、A207、F208、およびT295;L222、A339、F340、K342、E368、S369、N370、I371、およびY373;L222、L223、E306、V308、F312、E338、F340、およびI371;R224、V308、K310、G311、F340、P341、およびD398;K218、A219、S220、N367、E368、およびS369;K218、A220、E368、およびS369;G384、T385、T411、K412、E414、およびK471;Y408、F433、G470、K471、およびL472;F324、V325、N326、およびN410;D327、N410、T411、K412、およびV497;G384、G387、V409、およびK471;L382、G387、V407、およびV409;Y125、G126、H180、R181、K203、V204、R205、P206、F208、V238、S239、S240、S241、H263、G265、D266、F267、N268、およびY269;P206、F208、V238、およびS239;K218、S220、Y221、L222、F340、P341、K342、N367、E368、S369、N370、I371、およびY373;G384、G387、G388、Y408、V409、T411、F433、F469、G470、およびK471;D327、T411、K412、E414、A431、G432、およびK471;Y350、F355、K358、L379、T380、R381、L382、E386、およびT390;Y350、R353、およびF355。上述のように、本発明の部分は、表4中に同定したポケットもしくは空洞を形成するすべてのアミノ酸残基と結合し得るか、または、これらはポケットもしくは空洞を形成する残基のサブセットと結合し得る。特定の実施形態では、エピトープ、たとえばコンフォメーションエピトープと結合する本発明の部分に言及した場合、その意図は、部分がエピトープ(たとえば表4中に同定したポケットまたは空洞)を構成する具体的な残基のみと結合し、受容体の直鎖状アミノ酸配列中の他の残基とは結合しないことであることを理解されたい。 さらなる実施形態では、本発明の部分は、表5中に記載のペプチドから選択される2つ以上のアミノ酸残基から構成されるコンフォメーションエピトープと結合する。具体的な実施形態では、コンフォメーションエピトープは、第1のペプチドから選択される1つまたは複数のアミノ酸残基および第2のペプチドから選択される1つまたは複数のアミノ酸残基から構成され、第1および第2のペプチドは、表5中に記載のペプチドの群から選択される。したがって、本発明の部分はコンフォメーションエピトープと結合してよく、表5からの前記第1および第2のペプチド群は以下のとおりである:Ala219−Leu222およびThr304−Val308;Asp309−Gly311およびArg224−Gly226;Thr303−Glu306およびAla219−Leu222;Asn367−Asn370およびSer217−Tyr221;Ala339−Pro343およびAsn396−Val399;Ala339−Pro343およびGlu368−Arg372;Lys358−Tyr362およびVal374−His378;Asp357−Glu360およびLeu377−Thr380;Met351−Glu360およびHis378−Thr389;His378−Thr389およびVal323−Asp332;Val409−Ile415およびAla493−Thr500;Val409−Ile415およびAla431−Thr437;Val409−Ile415およびPhe469−Val473;Val409−Ile415およびVal325−Asn330;Val409−Ile415およびArg381−Gly387;Gly466−Leu472およびGly384−Gly388;Val325−Glu329およびTyr494−Lys499;Thr411−leu416およびVal497−Ala502;Ile415−Leu421およびAla502−Ala507;Ala502−Ala507およびLys484−Thr488;およびAla502−Ala507およびGly445−Cys450。本発明の部分は、前述の第1および第2のペプチド群を形成するすべてのアミノ酸残基と結合し得るか、または、これらは第1および第2のペプチド群を形成する残基のサブセットと結合し得る。特定の実施形態では、エピトープ、たとえばコンフォメーションエピトープと結合する本発明の部分に言及した場合、その意図は、部分がエピトープを構成する具体的な残基(たとえば表5中に同定した具体的なペプチド)のみと結合し、受容体の直鎖状アミノ酸配列中の他の残基とは結合しないことであることを理解されたい。 別の実施形態では、本発明の部分は、E33、P34、D72、E76、N77、K78、Q79、K158、D159、N250、S251、Q252、T253、K254、L255、N260、W262、H264、G265、E344、N352、R353、F355、T356、D357、Y362、S365、E366、N367、N370、およびG466からなる群より選択される2つ以上のアミノ酸から構成されるコンフォメーションまたは不連続エピトープと結合する。 別の実施形態では、本発明の部分は、VEGF受容体上の近接エピトープと結合する。一実施形態では、近接エピトープは、VEGF受容体のD7ドメイン中の2つ以上の残基から構成される。別の実施形態では、近接エピトープは、VEGFR1の672VAISSS677、VEGFR1の678TTLDCHA684、VEGFR1の685NGVPEPQ691、VEGFR1の700KIQQEPG706、VEGFR1の707IILG710、VEGFR1の711PGS713、VEGFR1の714STLFI718、VEGFR1の719ERVTEEDEGV728、VEGFR3の689VNVSDS694、VEGFR3の695LEMQCLV701、VEGFR3の702AGAHAPS708、VEGFR3の717LLEEKSG723、VEGFR3の724VDLA727、VEGFR3の728DSN730、VEGFR3の731QKLSI735、およびVEGFR3の736QRVREEDAGR745、VEGFR2の678TSIGES683、VEGFR2の684IEVSCTA690、VEGFR2の691SGNPPPQ697、VEGFR2の706TLVEDSG712、VEGFR2の713IVLK716、VEGFR2の717DGN719、VEGFR2の720RNLTI724およびVEGFR2の725RRVRKEDEGL734からなる群より選択されるエピトープである。 別の実施形態では、本発明の部分は、ヒトPDGFRβのアミノ酸残基385Argおよび390Glu、またはPDGFRα中の対応する残基と結合する。ヒトPDGFRβの残基385Argおよび390Gluは、Kit受容体の残基381Argおよび386Gluに類似しており、PDGFRβのホモタイプのD4−D4相互作用を媒介する。本発明の部分は、チロシンキナーゼの活性化に必須の距離および配向での細胞質ドメインの配置に必須の、III型RTKの膜近位領域間の重要なホモタイプ相互作用(ヒトPDGFRβの385Argと390Gluとの間に形成された塩橋など)を妨げることによって、受容体の活性化に対するその阻害効果を発揮し得る。本明細書中に記述した実験は、ホモタイプのD4−D4相互作用はPDGFRβの二量体化に必要ではなく、PDGFRβの二量体化は受容体の活性化に必要であるが十分ではないことを示している。したがって、本発明の部分は、PDGFRβの二量体化を可能にする一方で、活性化を妨げ得る。構造に基づく配列アラインメントにより、EFループの大きさ、ならびにD4−D4境界領域を含む重要なアミノ酸は、Kit、PDGFRα、PDGFRβ、およびCSF1R中で保存されていることが示されている。したがって、一部の実施形態では、本発明の部分は、III型RTKのD4またはD5ドメインの保存された領域に対して標的化し得る。本発明の部分が、RTKのグリコシル化形態上に現れてもよい糖残基に結合してもよいこともまた、当業者によって十分に理解されるであろう。本発明の部分が、アミノ酸残基および糖残基の両方から構成されるエピトープに結合するであろうということがさらに考えられる。 用語「受容体チロシンキナーゼ」および「RTK」は、チロシン残基をリン酸化する膜受容体の周知のファミリーを指すために互換性があるように本明細書において使用される。多数が、発生または細胞分裂において重要な役割を果たす。受容体チロシンキナーゼは、細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内触媒ドメインを有する。細胞外ドメインは、サイトカイン、増殖因子、または他のリガンドに結合し、システインリッチ領域、フィブロネクチンIII様ドメイン、免疫グロブリン様ドメイン、EGF様ドメイン、カドヘリン様ドメイン、クリングル様ドメイン、第VIII因子様ドメイン、グリシンリッチ領域、ロイシンリッチ領域、酸性領域、およびジスコイジン様ドメインを含む、1つまたは複数の同定可能な構造モチーフから一般に構成される。細胞内キナーゼドメインの活性化は、細胞外ドメインへのリガンド結合によって達成され、これは、受容体の二量体化を誘発する。このように活性化された受容体は、触媒ドメインの外側のチロシン残基を自己リン酸化し、活性な受容体のコンフォメーションの安定化を促進することができる。リン酸化された残基はまた、タンパク質(これは、次いで細胞内でのシグナルへと変換する)に対する結合部位としても働く。RTKの例は、Kit受容体(幹細胞因子受容体またはSCF受容体としても公知)、線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体、肝細胞増殖因子(HGF)受容体、インスリン受容体、インスリン様増殖因子−1(IGF−1)受容体、神経増殖因子(NGF)受容体、血管内皮増殖因子(VEGF)受容体、PDGF受容体−α、PDGF受容体−β、CSF−1受容体(M−CSF受容体またはFmsとしても公知)、およびFlt3受容体(Flk2としても公知)を含むが、これらに限定されない。 本発明の好ましい実施形態では、RTKは、III型RTKである。本発明の別の実施形態では、RTKは、V型RTK、つまりVEGF受容体ファミリーのメンバーである。 本明細書において使用されるように、用語「受容体チロシンキナーゼのIII型ファミリー」または「III型RTK」は、それらの外部ドメインにおいて5つの免疫グロブリン様ドメインまたはIg様ドメインを典型的に含有する受容体チロシンキナーゼを含むように意図される。III型RTKの例は、PDGF受容体、M−CSF受容体、FGF受容体、Flt3受容体(Flk2としても公知)、およびKit受容体を含むが、これらに限定されない。本発明の好ましい実施形態では、III型RTKは、Kit(SCF受容体としても当技術分野において公知である)である。Kitは、他のIII型RTKと同様に、1回膜貫通(TM)ドメインの手段によって細胞質領域に接続されるグリコシル化細胞外リガンド結合ドメイン(外部ドメイン)から構成される(Schlessinger(2000年)Cell 103巻:211〜225頁において概説される)。III型RTK、たとえばKitまたはPDGFRの他の特徴は、大きなキナーゼ挿入領域を有する細胞質タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)ドメインである。Kit受容体の少なくとも2つのスプライスアイソフォームが存在することが公知であり、短い方は、インフレームスプライス部位を利用する。Kitのすべてのアイソフォームおよび他の上記に記載されるRTKは、本発明によって包含される。 本明細書において使用されるように、受容体チロシンキナーゼ(RTK)の「Ig様ドメイン」は、RTKの外部ドメイン中に存在することが当技術分野において周知であるドメインを含むように意図される。III型受容体チロシンキナーゼ(III型RTK)、たとえばKitのファミリーの外部ドメインでは、D1、D2、D3、D4、およびD5として公知である、5つのそのようなドメインがある。III型RTKのD1、D2、およびD3ドメインは、RTKのリガンドへの結合に関与する(UllrichおよびSchlessinger(1990年)Cell 61巻:203〜212頁において概説される)。したがって、本発明の一実施形態では、用語「Ig様ドメイン」は、リガンド結合に関与するRTKのドメインを含むようには意図されない。本発明の好ましい実施形態では、Ig様ドメインは、III型RTKのD4および/またはD5ドメインである。VEGF受容体ファミリーの外部ドメインでは、D1、D2、D3、D4、D5、D6、およびD7として公知の、7つのIg様ドメインがある。本発明の好ましい一実施形態では、Ig様ドメインは、VEGF受容体ファミリーのD7ドメインである。 本明細書において使用されるように、V型RTKとしても公知である、用語「血管内皮増殖因子受容体」、「VEGF受容体」、または「VEGF受容体ファミリー」は、血管内皮増殖因子に対するRTK受容体を含む。上記に記載されるように、これらのRTKは、それらの外部ドメインにおいて7つのIg様ドメインを有する。VEGFファミリー受容体の例は、VEGFR1(Flt−1としても公知である)、VEGFR2(KDRまたはFlk−1としても公知である)、およびVEGFR3(Flt−4としても公知である)である。 用語、受容体チロシンキナーゼ(RTK)の「外部ドメイン」は、当技術分野で周知であり、RTKの細胞外部分(part)、すなわち、形質膜の外側にあるRTKの部分(part)をいう。 用語、受容体チロシンキナーゼの外部ドメインの「膜近位領域」とは、形質膜に対して近接しており、好ましくは、リガンドとRTKとの結合に直接関与していない、RTKの細胞外部分(part)をいう。膜近位領域の例には、それだけには限定されないが、III型受容体チロシンキナーゼのD4ドメイン、III型受容体チロシンキナーゼのD5ドメイン、III型受容体チロシンキナーゼのD3−D4ヒンジ領域、III型受容体チロシンキナーゼのD4−D5ヒンジ領域、およびV型受容体チロシンキナーゼのD7ドメインが含まれる。 本明細書中で使用する用語「ホモタイプ相互作用」とは、2つの単量体受容体からの2つの同一の膜近位領域間の相互作用をいう。 本明細書中で使用する用語「ヘテロタイプ相互作用」とは、2つの単量体受容体からの2つの異なる膜近位領域間の相互作用をいう。ヘテロタイプ相互作用は、2つの異なる種類の単量体受容体の二量体化の結果、または同じ単量体受容体の野生型および変異体形態の二量体化の結果であり得る。たとえば、がん患者は、特定の受容体の野生型対立遺伝子および変異対立遺伝子を保有し得ることが当技術分野で周知である。 本明細書中で使用する用語「単量体状態」とは、RTK分子が、同じかまたは異なる種類の第2のRTKポリペプチドと会合していない単一のポリペプチド鎖から構成されている、RTKの状態をいう。RTKの二量体化は自己リン酸化および受容体の活性化をもたらす。したがって、単量体状態のRTKは不活性状態にある。また、単量体状態は、単一のRTKのD4、D5、またはD7ドメインが、それぞれ第2のRTKのD4、D5、またはD7ドメインと会合していない状態でもある。 本明細書中で使用する「プロトマー」とは、RTKなどのオリゴマータンパク質の構造単位である。プロトマーは、定義された化学量論でアセンブルしてオリゴマーを形成し得るタンパク質サブユニットである。VEGFR受容体チロシンキナーゼファミリーは、共有結合されたホモ二量体であり、それぞれのVEGFRプロトマーは、4本のストランドのβ−シートから構成され、これは、逆平行の様式において構造に構成されており、「システインノット増殖因子」と命名されている。 語句「受容体チロシンキナーゼの外部ドメインを不活性状態に固定する」とは、受容体チロシンキナーゼの活性を阻害する本発明の部分の能力をいう。言い換えれば、この語句には、不活性または阻害された受容体立体配置の形成に向かって平衡をシフトさせる、本発明の部分の能力が含まれる。たとえば、本発明の部分は、部分の非存在下での受容体の活性と比較して、受容体チロシンキナーゼの活性を少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%阻害し得る。 本明細書中で使用する用語「不活性状態」とは、RTK分子が下流のシグナル伝達を活性化させることができない、RTKの状態をいう。不活性状態とは、受容体チロシンキナーゼの外部ドメインが二量体化することは可能であるが、2つの単量体のIg様ドメイン(たとえば、III型受容体チロシンキナーゼのD4−D4もしくはD5−D5ドメインまたはV型受容体チロシンキナーゼのD7−D7ドメイン)間の配置、配向、コンフォメーション、および/または距離が、受容体チロシンキナーゼの活性が阻害される(たとえば、受容体の内在化が阻害される、および/または受容体のチロシン自己リン酸化が阻害される、および/または下流のシグナル伝達経路を活性化させる受容体の能力が阻害される)ように変更されている状態であり得る。また、不活性状態には、上述の単量体状態も含まれる。また、不活性状態とは、受容体チロシンキナーゼの外部ドメインが受容体リガンドと結合しており、二量体化されているが、受容体の活性化を可能にするコンフォメーション変化を未だ受けていない状態でもあり得る。実施例22〜25は、RTKの活性化に重要であるが(たとえば、D4またはD5のホモタイプ相互作用を媒介することによって)、受容体の二量体化に必要ではない特定の保存されたアミノ酸残基が存在することを示す実験をさらに記述する。用語「不活性状態」には、本発明の部分が、部分の非存在下での受容体の活性と比較して、受容体チロシンキナーゼの活性を少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%低下または阻害し得る状態が含まれる。本明細書中に記述した機能的アッセイのうちの任意のものを使用して、受容体チロシンキナーゼの活性を阻害する本発明の部分の能力を決定し得る。一部の実施形態では、本発明の部分は、たとえば、ほとんどまたはすべての標的RTKが不活性化されている場合に、幅広い効果を示し得る。他の実施形態では、本発明の部分は、たとえば、標的RTKの一部分が不活性化されている場合に、より狭い効果を示し得る。そのような実施形態では、前記部分の非存在下での受容体と比較して、受容体のうちの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%が不活性状態に固定されている。 本明細書中で使用する用語「コンフォメーションエピトープ」または「非直鎖状エピトープ」または「不連続エピトープ」は、互換性があるように使用され、単一のタンパク質鎖中の連続していないアミノ酸である少なくとも2つのアミノ酸から構成されるエピトープをいう。たとえば、コンフォメーションエピトープは、介在アミノ酸のストレッチによって隔てられているが、本発明の部分によって単一のエピトープとして認識されるために十分に近い、2つ以上のアミノ酸から構成されていてもよい。さらなる例として、単一のタンパク質鎖上の介在アミノ酸によって隔てられているアミノ酸、または別々のタンパク質鎖上に存在するアミノ酸は、タンパク質の構造または複合体のコンフォメーション形状が原因で近接させられて、本発明の部分によって結合され得るコンフォメーションエピトープとなり得る。特定の不連続およびコンフォメーションエピトープが本明細書中に記載されている(たとえば表4および5を参照)。 当業者には、一般に、本発明の部分によって結合される直鎖状エピトープは、RTKの二次、三次、または四次構造に依存していても、していなくてもよいことが理解されよう。たとえば、一部の実施形態では、本発明の部分は、天然の三次元タンパク質構造に折り畳まれているか否かにかかわらず、アミノ酸の群と結合し得る。他の実施形態では、本発明の部分は、エピトープを構成する個々のアミノ酸残基を認識しない場合があり、エピトープを認識および結合するために特定のコンフォメーション(ベンド、ツイスト、ターンまたは折り畳み)を必要とする場合がある。 本明細書中で使用する用語「近接エピトープ」または「連続エピトープ」は、互換性があるように使用され、単一のタンパク質鎖中の連続したアミノ酸である少なくとも2つのアミノ酸から構成されるエピトープをいう。特定の近接エピトープは本明細書中に記載されている(たとえば表8を参照)。一実施形態では、本発明の部分は、VEGF受容体上の近接エピトープと結合する。別の実施形態では、近接エピトープは、VEGF受容体のD7ドメイン中の2つ以上の残基から構成される。別の実施形態では、近接エピトープは、VEGFR1の672VAISSS677、VEGFR1の678TTLDCHA684、VEGFR1の685NGVPEPQ691、VEGFR1の700KIQQEPG706、VEGFR1の707IILG710、VEGFR1の711PGS713、VEGFR1の714STLFI718、VEGFR1の719ERVTEEDEGV728、VEGFR3の689VNVSDS694、VEGFR3の695LEMQCLV701、VEGFR3の702AGAHAPS708、VEGFR3の717LLEEKSG723、VEGFR3の724VDLA727、VEGFR3の728DSN730、VEGFR3の731QKLSI735、およびVEGFR3の736QRVREEDAGR745、VEGFR2の678TSIGES683、VEGFR2の684IEVSCTA690、VEGFR2の691SGNPPPQ697、VEGFR2の706TLVEDSG712、VEGFR2の713IVLK716、VEGFR2の717DGN719、VEGFR2の720RNLTI724およびVEGFR2の725RRVRKEDEGL734からなる群より選択されるエピトープである。 本明細書中で使用する語句「疎水性アミノ酸」とは、疎水性特性を含むアミノ酸、たとえば、アラニン、システイン、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、ロイシン、メチオニン、アルギニン、スレオニン、バリン、トリプトファン、チロシン、セリン、プロリンおよび本明細書中に記載の他のものをいう。 本発明の様々な態様は、以下のサブセクション中にさらに詳述されている。 I.ヒト受容体チロシンキナーゼの外部ドメインと結合する抗体 本発明の一態様では、ヒト受容体チロシンキナーゼの外部ドメイン、たとえばIg様ドメインまたはヒンジ領域と結合する部分は、抗体またはその抗原結合断片である。 本明細書中で言及する用語「抗体」には、完全抗体およびその任意の抗原結合断片(すなわち「抗原結合性一部分」)または単鎖が含まれる。「抗体」とは、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖を含む糖タンパク質、またはその抗原結合性一部分をいう。それぞれの重鎖は、重鎖可変領域(本明細書中でVHと略記する)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3を含む。それぞれの軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書中でVLと略記する)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLを含む。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域に散在する相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域へとさらに分けることができる。それぞれのVHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順序で構成された、3つのCDRおよび4つのFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(たとえばエフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(Clq)を含めた、免疫グロブリンと宿主の組織または因子との結合を媒介し得る。 本明細書中で使用する用語、抗体の「抗原結合性一部分」(または単に「抗体の一部分」)とは、抗原(たとえば、KitのD4もしくはD5ドメインまたはVEGF受容体のD7ドメイン)と特異的に結合する能力を保持している、抗体の1つまたは複数の断片をいう。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって果たされ得ることが示されている。用語、抗体の「抗原結合性一部分」内に包含される結合断片の例には、(i)Fab断片、VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片、(ii)F(ab’)2断片、ジスルフィド架橋によってヒンジ領域で連結された2つのFab断片を含む二価断片、(iii)本質的には、ヒンジ領域の一部を有するFabであるFab’断片(FUNDAMENTAL IMMUNOLOGY (Paul編、第3版、1993年)を参照)、(iv)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片、(v)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片、(vi)VHドメインからなるdAb断片(Wardら、(1989年) Nature 341巻:544〜546頁)、(vii)単離された相補性決定領域(CDR)、ならびに(viii)ナノボディ、単一の可変ドメインおよび2つの定常ドメインを含有する重鎖可変領域が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VLおよびVHは別々の遺伝子によってコードされているが、これらは、組換え方法を使用して、これらが単一のタンパク質鎖として作製されることを可能にする合成リンカーによって一緒にすることができ、ここではVLおよびVH領域が対合して一価分子を形成する(単鎖Fv(scFv)として公知、たとえば、Birdら(1988年) Science 242巻:423〜426頁、およびHustonら(1988年) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85巻:5879〜5883頁を参照)。そのような単鎖抗体も、用語、抗体の「抗原結合性一部分」内に包含されることを意図する。これらの抗体断片は、当業者に公知の慣用技術を使用して得られ、断片は、インタクトな抗体と同じ様式で、有用性についてスクリーニングする。 本明細書中で使用する「単離された抗体」とは、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体をいうことを意図する(たとえば、RTKのIg様ドメインと特異的に結合する単離された抗体は、RTKのIg様ドメイン以外の抗原と特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。さらに、単離された抗体は、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まない場合がある。しかし、「単離された抗体」には、そのすべてがたとえばRTKのIg様ドメインと特異的に結合するポリクローナル抗体が含まれ得る。 本明細書中で使用する用語「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」とは、単一の分子組成の抗体分子の調製物をいう。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性および親和性を示す。 本明細書中で使用する用語「ヒト抗体」には、フレームワークおよびCDR領域がどちらもヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体が含まれることを意図する。さらに、抗体が定常領域を含有する場合は、定常領域もヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する。本発明のヒト抗体には、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(たとえば、in vitroのランダムもしくは部位特異的変異誘発、またはin vivoの体細胞変異によって導入された変異)が含まれ得る。しかし、本明細書中で使用する用語「ヒト抗体」には、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上に移植された抗体が含まれることを意図しない。 用語「ヒトモノクローナル抗体」とは、フレームワークおよびCDR領域がどちらもヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する、単一の結合特異性を示す抗体をいう。一実施形態では、ヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞と融合させたヒト重鎖導入遺伝子および軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物、たとえばトランスジェニックマウスから得られたB細胞を含むハイブリドーマによって産生される。 本明細書中で使用する用語「組換えヒト抗体」には、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックもしくはトランス染色体(transchromosomal)である動物(たとえばマウス)またはそれから調製したハイブリドーマ(以下にさらに記載)から単離された抗体、(b)ヒト抗体を発現するように形質転換させた宿主細胞、たとえばトランスフェクトーマから単離された抗体、(c)組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離された抗体、および(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列を他のDNA配列にスプライシングすることを含む任意の他の手段によって調製、発現、作製または単離された抗体などの、組換え手段によって調製、発現、作製または単離されたすべてのヒト抗体が含まれる。そのような組換えヒト抗体は、フレームワークおよびCDR領域がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する。しかし、特定の実施形態では、そのような組換えヒト抗体をin vitro変異誘発(または、ヒトIg配列についてトランスジェニックな動物を使用する場合はin vivoの体細胞性変異誘発)に供することができ、したがって、組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列のVHおよびVL配列に由来し、それに関連する一方で、in vivoのヒト抗体の生殖系列のレパートリー中に天然では存在しないであろう配列である。 本明細書中で使用する「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子によってコードされている抗体クラス(たとえばIgMまたはIgG1)をいう。 語句「抗原を認識する抗体」および「抗原に特異的な抗体」は、本明細書中で用語「抗原と特異的に結合する抗体」と互換性があるように使用される。 用語「ヒト抗体誘導体」とは、ヒト抗体の任意の改変された形態、たとえば、抗体と別の薬剤または抗体とのコンジュゲートをいう。 用語「ヒト化抗体」とは、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上に移植された抗体をいうことを意図する。さらなるフレームワーク領域の改変をヒトフレームワーク配列内に行い得る。当業者には、配列が特定の種に「由来する」場合、前記配列は、可変領域アミノ酸がマウス抗体からとられる場合などのように、タンパク質配列であり得るか、または、前記配列は、可変領域をコードしている核酸がマウスDNAからとられる場合などのように、DNA配列であり得ることが理解されよう。また、ヒト化抗体は、ヒトおよび非ヒト(たとえばマウスまたはウサギ)の抗体の公知の配列に基づいて設計してもよい。設計した抗体(ヒトおよび非ヒト残基をどちらも組み込む可能性がある)を、化学合成できる。また、配列をDNAレベルで合成し、in vitroまたはin vivoで発現させて、ヒト化抗体を作製してもよい。 用語「キメラ抗体」とは、可変領域の配列がマウス抗体に由来し、定常領域の配列がヒト抗体に由来する抗体などの、可変領域の配列が1つの種に由来し、定常領域の配列が別の種に由来する抗体をいうことを意図する。 用語「抗体模倣体」または「抗体擬態物」とは、抗原と結合する抗体の能力を模倣することができる分子をいうことを意図し、これらは、ネイティブの抗体構造に限定されない。そのような抗体模倣体の例には、それだけには限定されないが、アドネクチン(すなわち、フィブロネクチンに基づいた結合分子)、アフィボディ、DARPin、アンチカリン(Anticalin)、アビマー、およびバーサボディ(Versabody)が含まれ、これらのすべては、伝統的な抗体結合を模倣する一方で、明白に異なる機構を介して産生されて機能する結合構造を用いる。本発明の実施形態は、抗体またはその抗原結合性一部分に向けられているため、上述の抗体模倣体にも適用される。 本明細書中で使用する、RTKのIg様ドメイン「と特異的に結合する」抗体とは、1×10−7M以下、より好ましくは5×10−8M以下、より好ましくは1×10−8M以下、より好ましくは5×10−9M以下のKDでRTKのIg様ドメインと結合する抗体をいうことを意図する。 本明細書中で使用する用語、タンパク質または細胞「と実質的に結合しない」とは、タンパク質または細胞と結合しないか、または高い親和性で結合しない、すなわち、タンパク質または細胞と1×10−6M以上、より好ましくは1×10−5M以上、より好ましくは1×10−4M以上、より好ましくは1×10−3M以上、さらにより好ましくは1×10−2M以上のKDで結合することを意味する。 本明細書中で使用する用語「K会合」または「Ka」とは、特定の抗体−抗原の相互作用の会合速度をいうことを意図する一方で、本明細書中で使用する用語「K解離」または「Kd」とは、特定の抗体−抗原の相互作用の解離速度をいうことを意図する。本明細書中で使用する用語「KD」とは、Kd対Kaの比(すなわちKd/Ka)から得られ、モル濃度(M)として表される、解離定数をいうことを意図する。抗体のKD値は、当分野の十分に確立された方法を使用して決定することができる。抗体のKDを決定するための好ましい方法は、表面プラズモン共鳴を使用すること、好ましくはBiacore(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを使用することによるものである。 本明細書中で使用する、IgG型抗体に言及する場合の用語「高親和性」とは、RTKのIg様ドメインに対して10−8M以下、より好ましくは10−9M以下、さらにより好ましくは10−10M以下のKDを有する抗体をいう。しかし、「高親和性」結合は、他の抗体アイソタイプでは変動する場合がある。たとえば、IgMアイソタイプの「高親和性」結合とは、10−7M以下、より好ましくは10−8M以下、さらにより好ましくは10−9M以下のKDを有する抗体をいう。 抗体 本発明の抗体は、RTK、たとえばヒトIII型受容体チロシンキナーゼファミリーのメンバーのIg様ドメインと特異的に結合する。好ましい実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性一部分とRTK単量体のIg様ドメインとの結合は、外部ドメインを不活性状態、たとえば単量体状態に固定し、したがって、二量体化して下流のシグナル伝達経路を活性化させるRTKの能力に拮抗する。たとえば、抗体は、受容体チロシンキナーゼのリガンド誘導性のチロシン自己リン酸化および/または受容体の内在化を遮断し得る。 本発明の抗体は、RTKの特定のIg様ドメイン、たとえば、ヒトKitのD4ドメインもしくはD5ドメインまたはVEGF受容体のD7ドメインと結合するように選択または設計されている。他の実施形態では、抗体またはその抗原結合性一部分は、RTK、たとえばKit受容体またはVEGF受容体のドメインと相同性を共有するタンパク質と結合するように選択または設計されている。たとえば、抗体は、ドメイン、たとえば、Kit受容体のD4もしくはD5ドメインまたはVEGF受容体のD7ドメインと少なくとも50%同一、少なくとも60%同一、少なくとも70%同一、少なくとも80%同一、少なくとも90%同一、または少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%同一であるドメインと結合するように選択または設計され得る。そのような抗体またはその抗原結合性一部分は、場合によってはKit、VEGF受容体、および他のRTK中の、KitのD4もしくはD5ドメインまたはVEGF受容体のD7ドメインと機能的に類似のタンパク質ドメインと結合することができるであろう。 また、本発明の抗体またはその抗原結合性一部分は、RTK、たとえばヒトIII型RTKのIg様ドメインに由来する特定のモチーフまたはコンセンサス配列と結合するようにも選択または設計され得、このことは、抗体またはその抗原結合性一部分が、ヒトIII型RTKファミリーのメンバー間およびIII型RTKと他のRTK、たとえばV型RTKとの間で共有されているエピトープまたはドメインと特異的に結合することを可能にし得る。そのような直鎖状コンセンサス配列は、たとえば、配列アラインメントアルゴリズムを使用して、様々なRTKのドメイン、たとえばD4ドメインのドメインを、RTKの種類にわたってまたは種にわたってアラインメントすることによって見つけ得る(図6Bを参照)。当業者は、たとえば様々な種(たとえば、ヒト、マウス、ラット)からのKitのD4ドメインのタンパク質配列をアラインメントして、どのタンパク質残基が、アラインメントした配列のうちの少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも100%で保存されているかを決定し得る。その後、そのようなコンセンサス配列を使用して、コンセンサス配列と特異的に結合し、したがってKit RTKの最も保存された残基と結合する抗体または他の部分を作製し得る。同様に、V型RTKのD7ドメインのタンパク質配列をアラインメントして(図6を参照)、本発明の部分を作製するためのコンセンサス配列を得ることもできる。当業者には、最も高度に保存された残基は、進化を通して保存されており、タンパク質の機能に重要である可能性が最も高いものであることが理解されよう。あるいは、RTKの様々なクラスにわたってアラインメントを行う場合、そのようなコンセンサス配列に対して作製された抗体は、抗体が複数のRTKの種類における類似のIg様ドメインと結合することを可能にするであろう。 具体的な一実施形態では、本発明の部分(たとえば、抗体またはその抗原結合性一部分)は、以下のD4相互作用部位のコンセンサス配列と結合する:LX1RX2X3X4X5X6X7G[式中、Lはロイシンであり、Rはアルギニンであり、Gはグリシンであり、X1、X2、X3、X4、X5、X6およびX7は任意のアミノ酸である]。具体的な実施形態では、X1は、スレオニン、イソロイシン、バリン、プロリン、アスパラギン、またはリシンからなる群より選択され、X2は、ロイシン、バリン、アラニン、およびメチオニンからなる群より選択され、X3は、リシン、ヒスチジン、アスパラギン、およびアルギニンからなる群より選択され、X4は、グリシン、バリン、アラニン、グルタミン酸、プロリン、およびメチオニンからなる群より選択され、X5は、スレオニン、セリン、グルタミン酸、アラニン、グルタミン、およびアスパラギン酸からなる群より選択され、X6は、グルタミン酸、アスパラギン酸、およびグルタミンからなる群より選択され、X7は、グリシン、セリン、アラニン、リシン、アルギニン、グルタミンおよびスレオニンからなる群より選択される。 別の実施形態では、本発明の部分(たとえば、抗体またはその抗原結合性一部分)は、VEGF受容体ファミリーのメンバーのD7ドメインの以下のコンセンサス配列と結合する:IX1RVX2X3EDX4G[式中、Iはイソロイシンであり、Rはアルギニンであり、Eはグルタミン酸であり、Dはアスパラギン酸であり、Gはグリシンであり、X1、X2、X3およびX4は任意のアミノ酸である]。具体的な実施形態では、X1は、グルタミン酸、アルギニン、およびグルタミンからなる群より選択され、X2は、アルギニンおよびスレオニンからなる群より選択され、X3は、グルタミン酸およびリシンからなる群より選択され、X4は、グルタミン酸およびアラニンからなる群より選択される(配列番号1)。 別の実施形態では、本発明の部分(たとえば、抗体またはその抗原結合性一部分)は、VEGF受容体のD7ドメインの以下のコンセンサス配列と結合する:L/I X1 R Φ X2 X3 X4 D/E X5 G(配列番号158)[式中、Lはロイシンであり、Iはイソロイシンであり、Rはアルギニンであり、Φは疎水性アミノ酸であり、Dはアスパラギン酸であり、Eはグルタミン酸であり、Gはグリシンであり、X1、X2、X3、X4およびX5は任意のアミノ酸である]。具体的な実施形態では、Φはバリンであり、X1は、アルギニン、グルタミン、グルタミン酸およびアスパラギン酸からなる群より選択され、X2は、アルギニン、リシンおよびスレオニンからなる群より選択され、X3は、リシン、グルタミン酸、グルタミンおよびバリンからなる群より選択され、X4は、グルタミン酸およびバリンからなる群より選択され、X5は、グルタミン酸、グリシン、セリンおよびグルタミンからなる群より選択される。 本発明の抗体は、RTKのリガンド結合部位、たとえばKit受容体のSCF結合部位と結合しない。したがって、本明細書中に記載の抗体は、その標的リガンドと結合する受容体の能力に拮抗しない。 一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性一部分は、ヒトKit受容体の特定の配列、たとえば、ヒトKit受容体の残基309〜413、残基410〜519、381Argおよび386Glu、または418Tyrおよび505Asnと結合する。 他の実施形態では、抗体またはその抗原結合性一部分は、タンパク質における三次元構造を示すタンパク質モチーフまたはコンセンサス配列と結合する。そのようなモチーフまたはコンセンサス配列は、近接した一連のアミノ酸ではなく、RTKの三次元の折り畳みから生じる近接していないアミノ酸の構成を示す(すなわち「構造モチーフ」または「非直鎖状エピトープ」)。そのようなモチーフの例は、Kit受容体のD4−D4もしくはD5−D5結合境界領域またはVEGF受容体のD7−D7結合境界領域である。一実施形態では、本発明の抗体は、たとえばD4−D4、D5−D5またはD7−D7境界領域中の非直鎖状エピトープと結合して、RTKの活性化を妨げる。 好ましい実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性一部分は、表4(以下)中に記載の小さな空洞またはポケットを構成するKit受容体中の1つまたは複数の残基と結合し得る。たとえば、本発明の抗体またはその抗原結合性一部分は、Kit受容体のD3−D4ヒンジ領域中の以下の残基のうちの1つまたは複数と結合し得る:D3ドメインからのK218、S220、Y221、L222およびD4ドメインからのF340、P341、K342、N367、E368、S369、N370、I371、Y373。また、本発明の抗体またはその抗原結合性一部分は、Kit受容体のD4ドメイン中で凹表面を構成する以下の残基のうちの1つまたは複数とも結合し得る:Y350、R353、F355、K358、L379、T380、R381、L382、E386およびT390。別の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性一部分は、Kit受容体のD2−D3ヒンジ領域中でポケットを形成する以下の残基のうちの1つまたは複数と結合し得る:D2ドメインからのY125、G126、H180、R181、K203、V204、R205、P206およびF208ならびにD3ドメインからのV238、S239、S240、S241、H263、G265、D266、F267、N268およびY269。 したがって、一部の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性一部分は、近接したアミノ酸残基または近接していないアミノ酸残基と結合し、チロシンキナーゼの活性化を可能にする距離および配向でのRTKの膜近位領域の配置に必要な挙動を妨げる分子ウェッジとして機能し得る。また、本発明の抗体またはその抗原結合性一部分は、ホモタイプのD4もしくはD5受容体の相互作用を妨げるかまたはリガンド−受容体の相互作用部位を不安定化するようにも作用し得る。一部の好ましい実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性一部分は、Kit受容体上の以下の残基のうちの1つまたは複数と結合し得る:Y125、G126、H180、R181、K203、V204、R205、P206、P206、F208、K127、A207、V238、S239、S240、S241、H263、G265、D266、F267、N268、Y269、T295、L222、L222、L223、E306、V308、R224、V308、K310、K218、A219、S220、K218、A220、Y221、A339、D327、D398、E338、E368、E386、F312、F324、F340、F355、G311、G384、G387、G388、I371、K342、K358、L382、L379、N326、N367、N370、N410、P341、S369、T385、V325、V407、V409、Y373、Y350、Y408、T380、T390、R381、R353、T411、K412、E414、K471、F433、G470、L472、V497、F469、A431、またはG432。 当業者には、一部の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性一部分は、他のIII型RTK中の対応する残基、たとえば、類似のポケットもしくは空洞を形成する残基または構造アラインメントもしくは配列アラインメントによって同じ位置にあるものに対して容易に標的化し得ることが理解されよう。 具体的な実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性一部分は、III型RTK上のコンフォメーションエピトープまたは不連続エピトープと結合する。コンフォメーションまたは不連続エピトープは、III型RTK、たとえばヒトKit受容体またはPDGF受容体からのD3、D4、もしくはD5ドメインまたはD4−D5もしくはD3−D4ヒンジ領域からの2つ以上の残基から構成され得る。たとえば、コンフォメーションまたは不連続エピトープは、以下の表4中に記載の残基のうちの2つ以上から構成され得る。 特定の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性一部分は、Y125、H180、R181、K203、V204、R205、P206、V238、S239、S240、H263、G265、D266、F267、N268、およびY269からなる群より選択される2つ以上のアミノ酸からなるコンフォメーションエピトープと結合する。類似の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性一部分は、以下のアミノ酸の群のうちの1つから選択される、2つ以上のアミノ酸から構成されるコンフォメーションエピトープと結合し得る:P206、F208、V238、およびS239;K127、A207、F208、およびT295;L222、A339、F340、K342、E368、S369、N370、I371、およびY373;L222、L223、E306、V308、F312、E338、F340、およびI371;R224、V308、K310、G311、F340、P341、およびD398;K218、A219、S220、N367、E368、およびS369;K218、A220、E368、およびS369;G384、T385、T411、K412、E414、およびK471;Y408、F433、G470、K471、およびL472;F324、V325、N326、およびN410;D327、N410、T411、K412、およびV497;G384、G387、V409、およびK471;L382、G387、V407、およびV409;Y125、G126、H180、R181、K203、V204、R205、P206、F208、V238、S239、S240、S241、H263、G265、D266、F267、N268、およびY269;P206、F208、V238、およびS239;K218、S220、Y221、L222、F340、P341、K342、N367、E368、S369、N370、I371、およびY373;G384、G387、G388、Y408、V409、T411、F433、F469、G470、およびK471;D327、T411、K412、E414、A431、G432、およびK471;Y350、F355、K358、L379、T380、R381、L382、E386、およびT390;Y350、R353、およびF355。上述のように、本発明の抗体は、表4中に同定したポケットもしくは空洞を形成するすべてのアミノ酸残基と結合し得るか、または、これらはポケットもしくは空洞を形成する残基のサブセットと結合し得る。特定の実施形態では、エピトープ、たとえばコンフォメーションエピトープと結合する本発明の抗体に言及した場合、その意図は、抗体がエピトープ(たとえば表4中に同定したポケットまたは空洞)を構成する具体的な残基のみと結合し、受容体の直鎖状アミノ酸配列中の他の残基とは結合しないことであることを理解されたい。 さらなる実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性一部分は、表5中に記載のペプチドから選択される2つ以上のアミノ酸残基から構成されるコンフォメーションエピトープと結合する。具体的な実施形態では、コンフォメーションエピトープは、第1のペプチドから選択される1つまたは複数のアミノ酸残基および第2のペプチドから選択される1つまたは複数のアミノ酸残基から構成され、第1および第2のペプチドは、表5中に記載のペプチドの群から選択される。したがって、本発明の抗体またはその抗原結合性一部分はコンフォメーションエピトープと結合し、第1および第2のペプチド群は以下のとおりである:Ala219−Leu222およびThr304−Val308;Asp309−Gly311およびArg224−Gly226;Thr303−Glu306およびAla219−Leu222;Asn367−Asn370およびSer217−Tyr221;Ala339−Pro343およびAsn396−Val399;Ala339−Pro343およびGlu368−Arg372;Lys358−Tyr362およびVal374−His378;Asp357−Glu360およびLeu377−Thr380;Met351−Glu360およびHis378−Thr389;His378−Thr389およびVal323−Asp332;Val409−Ile415およびAla493−Thr500;Val409−Ile415およびAla431−Thr437;Val409−Ile415およびPhe469−Val473;Val409−Ile415およびVal325−Asn330;Val409−Ile415およびArg381−Gly387;Gly466−Leu472およびGly384−Gly388;Val325−Glu329およびTyr494−Lys499;Thr411−leu416およびVal497−Ala502;Ile415−Leu421およびAla502−Ala507;Ala502−Ala507およびLys484−Thr488;およびAla502−Ala507およびGly445−Cys450。 本発明の抗体は、前述の第1および第2のペプチド群を形成するすべてのアミノ酸残基と結合し得るか、または、これらは第1および第2のペプチド群を形成する残基のサブセットと結合し得る。特定の実施形態では、エピトープ、たとえばコンフォメーションエピトープと結合する本発明の抗体に言及した場合、その意図は、抗体がエピトープを構成する具体的な残基(たとえば表5中に同定した具体的なペプチド)のみと結合し、受容体の直鎖状アミノ酸配列中の他の残基とは結合しないことであることを理解されたい。 別の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性一部分は、E33、P34、D72、E76、N77、K78、Q79、K158、D159、N250、S251、Q252、T253、K254、L255、N260、W262、H264、G265、E344、N352、R353、F355、T356、D357、Y362、S365、E366、N367、N370、およびG466からなる群より選択される2つ以上のアミノ酸から構成されるコンフォメーションまたは不連続エピトープと結合する。 別の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性一部分は、ヒトPDGFRβのアミノ酸残基385Argおよび390Glu、またはPDGFRα中の対応する残基と結合する。ヒトPDGFRβの残基385Argおよび390Gluは、Kit受容体の残基381Argおよび386Gluに類似しており、PDGFRβのホモタイプのD4−D4相互作用を媒介する。本発明の抗体またはその抗原結合性一部分は、チロシンキナーゼの活性化に必須の距離および配向での細胞質ドメインの配置に必須の、III型RTKの膜近位領域間の重要なホモタイプ相互作用(ヒトPDGFRβの385Argと390Gluとの間に形成された塩橋など)を妨げることによって、受容体の活性化に対するその阻害効果を発揮し得る。本明細書中に記述した実験は、ホモタイプのD4−D4相互作用がPDGFRβの二量体化に必要ではなく、PDGFRβの二量体化は受容体の活性化に必要であるが十分ではないことを示している。したがって、本発明の抗体またはその抗原結合性一部分は、PDGFRβの二量体化を可能にする一方で、活性化を妨げ得る。構造に基づく配列アラインメントにより、EFループの大きさ、ならびにD4−D4境界領域を含む重要なアミノ酸は、Kit、PDGFRα、PDGFRβ、およびCSF1R中で保存されていることが示されている。したがって、一部の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性一部分は、III型RTKのD4またはD5ドメインの保存された領域に対して標的化し得る。 一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性一部分は、ヒトVEGF受容体の特定の配列、たとえば、VEGFR1の残基718〜727、VEGFR1のArg720およびAsp725、VEGFR2の残基724〜733、VEGFR2のArg726およびAsp731、VEGFR3の残基735〜744、またはVEGFR3の残基Arg737およびAsp742と結合する。 別の実施形態では、抗体またはその抗原結合性一部分は、VEGF受容体上の近接エピトープと結合する。一実施形態では、近接エピトープは、VEGF受容体のD7ドメイン中の2つ以上の残基から構成される。別の実施形態では、近接エピトープは、VEGFR1の672VAISSS677、VEGFR1の678TTLDCHA684、VEGFR1の685NGVPEPQ691、VEGFR1の700KIQQEPG706、VEGFR1の707IILG710、VEGFR1の711PGS713、VEGFR1の714STLFI718、VEGFR1の719ERVTEEDEGV728、VEGFR3の689VNVSDS694、VEGFR3の695LEMQCLV701、VEGFR3の702AGAHAPS708、VEGFR3の717LLEEKSG723、VEGFR3の724VDLA727、VEGFR3の728DSN730、VEGFR3の731QKLSI735、およびVEGFR3の736QRVREEDAGR745、VEGFR2の678TSIGES683、VEGFR2の684IEVSCTA690、VEGFR2の691SGNPPPQ697、VEGFR2の706TLVEDSG712、VEGFR2の713IVLK716、VEGFR2の717DGN719、VEGFR2の720RNLTI724およびVEGFR2の725RRVRKEDEGL734からなる群より選択されるエピトープである。 さらなる実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性一部分は、変異RTKと特異的に結合するように選択または設計されている。好ましい実施形態では、変異RTKは腫瘍形成性または腫瘍発生性の変異体である。具体的な一実施形態では、抗体またはその抗原結合性一部分は、腫瘍発生性Kit受容体変異体と結合するように選択または設計されている。本発明の抗体によって標的化され得るいくつかのKit受容体変異体は、以下のアミノ酸のうちの1つまたは複数中に変異を有するKit受容体である:Thr417、Tyr418、Asp419、Leu421、Arg420、Tyr503、またはAla502。当業者には、本発明の方法がKit中の他の変異または他のRTK中の変異に適用可能であることが理解されよう。変異RTKを標的化することの1つの利点は、治療用抗体が、変異を含有する細胞上のRTKのみと結合して、健康な細胞にはほとんどまたは完全に影響を与えない可能性があることである。したがって、変異が腫瘍形成性である事例では、腫瘍細胞のみが治療のために標的化され、副作用および必要用量が潜在的に低下する。 好ましくは、抗体は、5×10−8M以下のKD、1×10−8M以下のKD、5×10−9M以下のKD、または1×10−8M〜1×10−10M以下のKDでヒトRTKのIg様ドメインと結合する。RTKのIg様ドメイン、たとえばKitまたはVEGF受容体に対する抗体の結合能力を評価するための標準のアッセイは、たとえば、ELISA、ウエスタンブロットおよびRIAを含めて、当技術分野で公知である。また、抗体の結合動態(たとえば結合親和性)も、ELISA、ScatchardおよびBiacore分析によるものなどの当技術分野で公知の標準のアッセイによって評価することができる。 操作および改変した抗体 抗体のVHおよび/またはVL配列を本発明の方法に従って調製し、改変した抗体を操作設計するための出発物質として使用してよく、改変した抗体は、開始抗体から変更された特性を有し得る。抗体は、元の可変領域の一方または両方(すなわちVHおよび/またはVL)内、たとえば、1つもしくは複数のCDR領域内および/または1つもしくは複数のフレームワーク領域内の1つまたは複数の残基を改変することによって、操作することができる。それに加えてまたは代わって、抗体は、たとえば抗体のエフェクター機能(複数可)を変更するために、定常領域(複数可)内の残基を改変することによって操作することができる。 行うことができる1つの種類の可変領域の操作は、CDR移植である。抗体は、主に6個の重鎖および軽鎖の相補性決定領域(CDR)中に位置するアミノ酸残基を介して、標的抗原と相互作用する。そのため、CDR内のアミノ酸配列は、CDRの外の配列よりも、個々の抗体間の多様性が高い。CDR配列はほとんどの抗体−抗原の相互作用に関与するため、異なる特性を有する異なる抗体からのフレームワーク配列上に移植した、特定の天然に存在する抗体からのCDR配列が含まれる発現ベクターを構築することによって、特定の天然に存在する抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることが可能である(たとえば、Riechmann, L.ら(1998年) Nature 332巻:323〜327頁、Jones, P.ら(1986年) Nature 321巻:522〜525頁、Queen, C.ら(1989年) Proc. Natl. Acad. See. U.S.A. 86巻:10029〜10033頁、Winterの米国特許第5,225,539号、ならびにQueenらの米国特許第5,530,101号、第5,585,089号、第5,693,762号および第6,180,370号を参照)。 抗体のフレームワーク配列は、生殖系列抗体遺伝子配列が含まれる公的DNAデータベースまたは公開された参考資料から得ることができる。たとえば、ヒト重鎖および軽鎖の可変領域遺伝子の生殖系列DNA配列は、そのそれぞれの内容が明確に本明細書中に参考として組み込まれている、「VBase」ヒト生殖系列配列データベース(インターネット上でmrc−cpe.cam.ac.uk/vbaseから利用可能)、ならびにKabat, E. A.ら(1991年) Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S. Department of Health and Human Services、NIH Publication第91−3242号、Tomlinson, I. M.ら(1992年)「The Repertoire of Human Germline VH Sequences Reveals about Fifty Groups of VH Segments with Different Hypervariable Loops」 J. Mol. Biol. 227巻:776〜798頁、およびCox, J. P. L.ら(1994年)「A Directory of Human Germ−line VH Segments Reveals a Strong Bias in their Usage」 Eur. J. Immunol. 24巻:827〜836頁中に見つけることができる。別の例として、ヒト重鎖および軽鎖の可変領域遺伝子の生殖系列DNA配列は、Genbankデータベース中に見つけることができる。 抗体タンパク質配列は、当業者に周知のGapped BLAST(Altschulら(1997年) Nucleic Acids Research 25巻:3389〜3402頁)と呼ばれる配列類似度の検索方法のうちの1つを使用して、コンパイルされたタンパク質配列データベースに対して比較する。BLASTは、抗体配列とデータベース配列との間の統計的に有意なアラインメントが、アラインメントした単語の高スコアのセグメント対(HSP)を含有する可能性が高いという点で、発見的なアルゴリズムである。そのスコアを伸長またはトリミングによって改善させることができないセグメント対は、ヒットと呼ばれる。手短に述べると、VBASE起源のヌクレオチド配列(vbase.mrc−cpe.cam.ac.uk/vbase1/list2.php)を翻訳し、FR1からFR3のフレームワーク領域(両端を含む)を保持する。データベース配列は、平均して98個の残基の長さを有する。タンパク質の全長にわたって正確に一致する重複配列を除去する。オフにした低複雑度フィルター以外はデフォルトの標準のパラメータを用いたプログラムblastp、およびBLOSUM62の置換マトリックスを使用したタンパク質のBLAST検索により、上位5件のヒットがフィルタリングされて、配列一致が得られる。ヌクレオチド配列を6個すべてのフレームにおいて翻訳し、データベース配列の一致セグメント中にストップコドンを有さないフレームが潜在的なヒットとみなされる。これを、次に、6個すべてのフレームにおいて抗体配列を翻訳し、これらの翻訳物を、6個すべてのフレームにおいて動的に翻訳されたVBASEヌクレオチド配列と比較する、BLASTプログラムtblastxを使用して確認する。IMGT(http://imgt.cines.fr)から利用可能なものなどの他のヒト生殖系列配列データベースは、上述のようにVBASEと同様に検索することができる。 同一性は、配列の全長にわたる抗体配列とタンパク質データベースとの間の正確なアミノ酸一致である。陽性(同一性+置換の一致)は、同一ではないが、BLOSUM62置換マトリックスによって導かれるアミノ酸置換である。抗体配列がデータベース配列のうちの2つと同じ同一性で一致する場合は、最大の陽性を有するヒットが、一致する配列ヒットであると決定される。 同定されたVHのCDR1、CDR2、およびCDR3配列、ならびにVKのCDR1、CDR2、およびCDR3配列は、フレームワーク配列が由来する生殖系列免疫グロブリン遺伝子中に見つかるものと同一の配列を有するフレームワーク領域上に移植することができるか、または、CDR配列は、生殖系列配列と比較して1つもしくは複数の変異を含有するフレームワーク領域上に移植することができる。たとえば、特定の事例では、抗体の抗原結合能力を維持または増強させるために、フレームワーク領域内の残基を変異させることが有益であることが判明している(たとえば、Queenらの米国特許第5,530,101号、第5,585,089号、第5,693,762号および第6,180,370号を参照)。 別の種類の可変領域の改変は、VHおよび/またはVKのCDR1、CDR2および/またはCDR3領域内のアミノ酸残基を変異させ、それによって目的の抗体の1つまたは複数の結合特性(たとえば親和性)を改善させることである。部位特異的変異誘発またはPCR媒介性の変異誘発を行って変異(複数可)を導入することができ、抗体結合または目的の他の機能的特性に対する効果を、当技術分野で公知のin vitroまたはin vivoアッセイで評価することができる。たとえば、本発明の抗体を変異させてライブラリを作製してよく、その後、これを、RTKのIg様ドメイン、たとえば、ヒトKit RTKのD4もしくはD5ドメインまたはVEGF受容体のD7ドメインとの結合についてスクリーニングし得る。好ましくは、保存された改変(上述)が導入される。変異は、アミノ酸の置換、付加または欠失であり得るが、好ましくは置換である。さらに、典型的には、CDR領域内の1個、2個、3個、4個または5個を超えない残基が変更される。 別の種類のフレームワークの改変は、フレームワーク領域内、またはさらには1つもしくは複数のCDR領域内の1つまたは複数の残基を変異させて、T細胞エピトープを除去し、それによって抗体の潜在的な免疫原性を低下させることを含む。この手法は「脱免疫化(deimmunization)」とも呼ばれ、Carrらの米国特許公開第20030153043号中にさらに詳述されている。 フレームワークまたはCDR領域内で行われる改変に加えて、またはそれに代わって、本発明の抗体を、典型的には、血清半減期、補体固定、Fc受容体結合、および/または抗原依存性細胞毒性などの、抗体の1つまたは複数の機能的特性を変更させるために、Fc領域内に改変が含まれるように操作し得る。さらに、本発明の抗体を、やはり抗体の1つまたは複数の機能的特性を変更させるために、化学修飾(たとえば、1つもしくは複数の化学部分を抗体に付着させることができる)またはそのグリコシル化を変更させるために改変し得る。これらの実施形態のそれぞれは、以下にさらに詳述されている。Fc領域中の残基の付番はKabatのEUインデックスのものである。 一実施形態では、CH1のヒンジ領域を、ヒンジ領域中のシステイン残基の数が変更されるように、たとえば増加または減少するように改変する。この手法は、Bodmerらの米国特許第5,677,425号中にさらに記載されている。CH1のヒンジ領域中のシステイン残基の数は、たとえば、軽鎖および重鎖のアセンブリを促進するために、または抗体の安定性を増加もしくは減少させるために変更されている。 別の実施形態では、抗体のFcヒンジ領域を、抗体の生物学的半減期を減少させるために変異させる。より詳細には、抗体が、ネイティブFc−ヒンジドメインのStaphylococcylプロテインA(SpA)結合と比較して損なわれたSpA結合を有するように、1つまたは複数のアミノ酸の変異をFc−ヒンジ断片のCH2−CH3ドメインの境界領域内に導入する。この手法は、Wardらの米国特許第6,165,745号中にさらに詳述されている。 別の実施形態では、抗体を、その生物学的半減期を増加させるために改変する。様々な手法が可能である。たとえば、Wardの米国特許第6,277,375号に記載のように、T252L、T254S、T256Fの変異のうちの1つまたは複数を導入することができる。あるいは、生物学的半減期を増加させるために、Prestaらの米国特許第5,869,046号および第6,121,022号に記載のように、抗体を、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループからとったサルベージ受容体結合エピトープを含有するように、CH1またはCL領域内で変更することができる。これらの戦略は、抗体とRTKのIg様ドメインとの結合が損なわれない限りは有効である。 さらに他の実施形態では、抗体のエフェクター機能(複数可)を変更するために、少なくとも1つのアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基で置き換えることによってFc領域を変更する。たとえば、抗体が、エフェクターリガンドに対して変更された親和性を有するが、親抗体の抗原結合能力を保持するように、アミノ酸残基234、235、236、237、297、318、320および322から選択される1つまたは複数のアミノ酸を異なるアミノ酸残基で置き換えることができる。親和性が変更させられるエフェクターリガンドは、たとえば、Fc受容体または補体のC1成分であることができる。この手法は、どちらもWinterらの米国特許第5,624,821号および第5,648,260号中にさらに詳述されている。 別の例では、抗体が変更されたC1q結合および/または低下もしくは消滅した(abolish)補体依存性細胞毒(CDC)を有するように、アミノ酸残基329、331および322から選択される1つまたは複数のアミノ酸を異なるアミノ酸残基で置き換えることができる。この手法は、Idusogieらの米国特許第6,194,551号中にさらに詳述されている。 別の例では、アミノ酸位置231および239における1つまたは複数のアミノ酸残基を変更し、それによって補体を固定する抗体の能力を変更させる。この手法は、BodmerらのPCT公開WO94/29351号中にさらに記載されている。 さらに別の例では、抗体依存性細胞毒(ADCC)を媒介する抗体の能力を増加させるかおよび/またはFcγ受容体に対する抗体の親和性を増加させるために、以下の位置のうちの1つまたは複数のアミノ酸を改変することによってFc領域を改変する:238、239、248、249、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、301、303、305、307、309、312、315、320、322、324、326、327、329、330、331、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438または439。この手法は、PrestaのPCT公開WO00/42072号中にさらに記載されている。さらに、FcγR1、FcγRII、FcγRIIIおよびFcRnに対するヒトIgG1上の結合部位がマッピングされており、改善された結合を有するバリアントが記載されている(Shields, R.L.ら(2001年) J. Biol. Chem. 276巻:6591〜6604頁を参照)。位置256、290、298、333、334および339での特定の変異は、FcγRIIIに対する結合を改善させることが示された。さらに、以下の組合せの変異体が、FcγRIII結合を改善させることが示された:T256A/S298A、S298A/E333A、S298A/K224AおよびS298A/E333A/K334A。 さらに別の実施形態では、本発明の抗体のC末端を、その全体が本明細書中に参考として組み込まれている米国仮出願第60/957,271号に記載のように、システイン残基の導入によって改変する。そのような改変には、それだけには限定されないが、完全長重鎖配列のC末端でまたはその付近での既存のアミノ酸残基の置き換え、および完全長重鎖配列のC末端へのシステイン含有伸長の導入が含まれる。好ましい実施形態では、システイン含有伸長は、配列アラニン−アラニン−システインを含む(N末端からC末端)。 好ましい実施形態では、そのようなC末端のシステイン改変の存在は、治療剤またはマーカー分子などのパートナー分子をコンジュゲートする位置を提供する。具体的には、C末端のシステイン改変による反応性チオール基の存在を使用して、以下に詳述するジスルフィドリンカーを用いてパートナー分子をコンジュゲートさせることができる。この様式での抗体とパートナー分子とのコンジュゲーションは、特定の付着部位についての制御の増加を可能にする。さらに、付着部位をC末端にまたはその付近に導入することによって、コンジュゲーションが最適化されて、抗体の機能的特性への妨害が低下または排除され、コンジュゲート調製物の単純分析および品質管理が可能となる。 さらに別の実施形態では、抗体のグリコシル化を改変する。たとえば、グリコシル化されていない(aglycoslated)抗体を作製することができる(すなわち抗体がグリコシル化を欠く)。グリコシル化は、たとえば、抗原に対する抗体の親和性を増加させるために変更することができる。そのような炭水化物の改変は、たとえば、抗体配列内の1つまたは複数のグリコシル化部位を変更することによって達成することができる。たとえば、1つまたは複数の可変領域フレームワークのグリコシル化部位の排除をもたらし、それによってその部位でのグリコシル化の排除をもたらす、1つまたは複数のアミノ酸の置換を行うことができる。上記のような、グリコシル化されていないことは、抗原に対する抗体の親和性を増加させ得る。そのような手法は、Coらの米国特許第5,714,350号および第6,350,861号中にさらに詳述されている。グリコシル化を変更するためのさらなる手法は、そのそれぞれがその全体で本明細書中に参考として組み込まれている、Hanaiらの米国特許第7,214,775号、Prestaの米国特許第6,737,056号、Prestaの米国公開第20070020260号、DickeyらのPCT公開WO/2007/084926号、ZhuらのPCT公開WO/2006/089294号、およびRavetchらのPCT公開WO/2007/055916号中にさらに詳述されている。 それに加えてまたは代わって、低下した量のフコシル残基を有する低フコシル化抗体または増加した二分GlcNac構造を有する抗体などの、グリコシル化の種類の変更を有する抗体を作製することができる。そのような変更されたグリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を増加させることが示されている。そのような炭水化物の改変は、たとえば、変更されたグリコシル化機構を有する宿主細胞中で抗体を発現させることによって達成することができる。変更されたグリコシル化機構を有する細胞は当技術分野で記載されており、本発明の組換え抗体を発現させることによって変更されたグリコシル化を有する抗体を産生する宿主細胞として使用することができる。たとえば、細胞系Ms704、Ms705、およびMs709は、Ms704、Ms705、およびMs709細胞系中で発現される抗体がその炭水化物上にフコースを欠くように、フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8(アルファ(1,6)フコシルトランスフェラーゼ)を欠いている。Ms704、Ms705、およびMs709 FUT8−/−細胞系は、2つの置換ベクターを使用してCHO/DG44細胞中のFUT8遺伝子を標的破壊することによって作製した(Yamaneらの米国特許公開第20040110704号およびYamane−Ohnukiら(2004年) Biotechnol Bioeng 87巻:614〜22頁を参照)。別の例として、HanaiらのEP1,176,195号は、フコシルトランスフェラーゼをコードしているFUT8遺伝子が機能的に破壊された細胞系を記載しており、これにより、アルファ1,6結合関連の酵素の低下または排除によって、そのような細胞系中で発現された抗体は低フコシル化を示す。Hanaiらはまた、抗体のFc領域と結合するN−アセチルグルコサミンにフコースを付加する酵素活性が低いか、または酵素活性を有さない細胞系、たとえばラット骨髄腫細胞系YB2/0(ATCC CRL1662)を記載している。PrestaのPCT公開WO03/035835号は、フコースをAsn(297)連結炭水化物に付着させる能力が低下しており、やはりその宿主細胞中で発現された抗体の低フコシル化をもたらす、バリアントCHO細胞系、Lec13細胞を記載している(Shields, R.L.ら(2002年) J. Biol. Chem. 277巻:26733〜26740頁も参照)。UmanaらのPCT公開WO99/54342号は、操作した細胞系中で発現された抗体が抗体のADCC活性の増加をもたらす増加した二分GlcNac構造を示すように、糖タンパク質改変グリコシルトランスフェラーゼ(たとえばベータ(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現するように操作した細胞系を記載している(Umanaら(1999年) Nat. Biotech. 17巻:176〜180頁も参照)。あるいは、フコシダーゼ酵素を使用して抗体のフコース残基を切断して除去し得る。たとえば、フコシダーゼアルファ−L−フコシダーゼがフコシル残基を抗体から除去する(Tarentino, A.L.ら(1975年) Biochem. 14巻:5516〜23頁)。 それに加えてまたは代わって、グリコシル化の種類の変更を有する抗体を作製することができ、その変更は、抗体のシアリル化(sialyation)のレベルに関する。そのような変更は、どちらもその全体が参考として組み込まれているDickeyらのPCT公開WO/2007/084926号およびRavetchらのPCT公開WO/2007/055916号に記載されている。たとえば、たとえばArthrobacter ureafacensのシアリダーゼなどのシアリダーゼを用いた酵素反応を用い得る。そのような反応の条件は、一般に、その全体が本明細書中に参考として組み込まれている米国特許第5,831,077号に記載されている。適切な酵素の他の非限定的な例は、それぞれSchloemerら、J. Virology、15巻(4号)、882〜893頁(1975年)およびLeibigerら、Biochem J.、338巻、529〜538頁(1999年)に記載されているノイラミニダーゼおよびN−グリコシダーゼFである。脱シアリル化された抗体を、アフィニティークロマトグラフィーを使用することによってさらに精製し得る。あるいは、シアリルトランスフェラーゼ(sialytransferase)酵素を用いることなどによる、シアリル化のレベルを増加させる方法を用い得る。そのような反応の条件は、一般に、Bassetら、Scandinavian Journal of Immunology、51巻(3号)、307〜311頁(2000年)に記載されている。 本発明によって企図される本明細書中の抗体の別の改変はペグ化である。抗体は、たとえば抗体の生物学的(たとえば血清)半減期を増加させるためにペグ化することができる。抗体をペグ化するためには、抗体またはその断片を、典型的には、ポリエチレングリコール(PEG)(PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体など)と、1つまたは複数のPEG基が抗体または抗体断片と付着される条件下で反応させる。好ましくは、ペグ化は、反応性PEG分子(または類似の反応性の水溶性ポリマー)を用いたアシル化反応またはアルキル化反応を介して実施する。本明細書中で使用する用語「ポリエチレングリコール」には、モノ(C1〜C10)アルコキシ−またはアリールオキシ−ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール−マレイミドなどの、他のタンパク質を誘導体化するために使用されているPEGの形態のうちの任意のものが包含されることを意図する。特定の実施形態では、ペグ化する抗体はグリコシル化されていない抗体である。タンパク質をペグ化する方法は当技術分野で公知であり、本発明の抗体に適用することができる。たとえば、NishimuraらのEP0 154 316号およびIshikawaらのEP0 401 384号を参照されたい。したがって、ここに記載されているペグ化方法は、以下に記載の本発明のペプチド性分子にも適用される。 抗体断片および抗体模倣体 本発明は伝統的な抗体に限定されず、抗体断片および抗体模倣体を使用することによって実施し得る。以下に詳述するように、多種多様な抗体断片および抗体模倣体の技術が現在では開発されており、当技術分野で広く公知である。これらの技術のうちのいくつかでは(ドメイン抗体、ナノボディ、およびUniBodyなど)、伝統的な抗体構造の断片または他の改変を使用するが、伝統的な抗体結合を模倣する一方で明白に異なる機構を介して産生されて機能する結合構造を用いる、アドネクチン、アフィボディ、DARPin、アンチカリン、アビマー、およびバーサボディなどの代替技術も存在する。これらの代替構造の一部はGillおよびDamle (2006年) 17巻:653〜658頁中に総説されている。 ドメイン抗体(dAb)とは、抗体の最も小さな機能的結合単位であり、ヒト抗体重鎖(VH)または軽鎖(VL)のどちらかの可変領域に対応する。ドメイン抗体は約13kDaの分子量を有する。Domantisは、完全にヒトのVHおよびVL dAbの一連の大きく高度に機能的なライブラリ(それぞれのライブラリ中に100億個を超える異なる配列)、ならびに治療標的に特異的なdAbを選択するためのこれらのライブラリの使用を開発している。多くの慣用の抗体と対照的に、ドメイン抗体は、細菌、酵母、および哺乳動物の細胞系中で良好に発現される。ドメイン抗体およびその産生方法のさらなる詳細は、そのそれぞれがその全体で本明細書中に参考として組み込まれている、米国特許第6,291,158号、第6,582,915号、第6,593,081号、第6,172,197号、第6,696,245号、米国出願第2004/0110941号、欧州特許出願第1433846号、欧州特許第0368684号および第0616640号、WO05/035572号、WO04/101790号、WO04/081026号、WO04/058821号、WO04/003019号およびWO03/002609号を参照することによって得ることができる。 ナノボディとは、天然に存在する重鎖抗体のユニークな構造的および機能的特性を含有する抗体由来の治療タンパク質である。これらの重鎖抗体は、1個の可変ドメイン(VHH)ならびに2個の定常ドメイン(CH2およびCH3)を含有する。重要なことに、クローニングおよび単離されたVHHドメインは、元の重鎖抗体の完全な抗原結合能力を保有する完全に安定なポリペプチドである。ナノボディはヒト抗体のVHドメインと高い相同性を有しており、活性を全く失わずにさらにヒト化することができる。重要なことに、ナノボディは低い免疫原性の可能性を有しており、これはナノボディリード化合物を用いた霊長類の研究で確認されている。 ナノボディは、慣用の抗体の利点を小分子薬の重要な特長と組み合わせる。慣用の抗体と同様、ナノボディは、高い標的特異性、その標的に対する高い親和性および低い固有の毒性を示す。しかし、小分子薬と同様、これらは酵素を阻害し、受容体のくぼみ(cleft)に容易に接近することができる。さらに、ナノボディは非常に安定であり、注射以外の手段によって投与することができ(たとえば、その全体が本明細書中に参考として組み込まれているWO04/041867号を参照)、製造が容易である。ナノボディの他の利点には、その大きさが小さいことの結果として、一般的ではないかまたは隠れたエピトープを認識すること、そのユニークな三次元の薬物様式の柔軟性によって高い親和性および選択性でタンパク質標的の空洞または活性部位内に結合すること、半減期の調整(tailor)、ならびに創薬の容易性および速度が含まれる。 ナノボディは単一の遺伝子によってコードされており、ほとんどすべての原核生物および真核生物の宿主、たとえば、E.coli(たとえば、その全体が本明細書中に参考として組み込まれているUS6,765,087号を参照)、カビ(たとえば、AspergillusまたはTrichoderma)および酵母(たとえば、Saccharomyces、Kluyveromyces、HansenulaまたはPichia)(たとえば、その全体が本明細書中に参考として組み込まれているUS6,838,254号を参照)中で効率的に産生される。産生プロセスは拡張性があり、複数キログラム量のナノボディが産生されている。ナノボディは慣用の抗体と比較して優れた安定性を示すため、これらは、長い貯蔵寿命のすぐに使用できる溶液として処方することができる。 Nanoclone方法(たとえば、その全体が本明細書中に参考として組み込まれているWO06/079372号を参照)とは、B細胞の自動の高スルーアウト(throughout)の選択に基づいており、本発明との関係において使用することができる、所望の標的に対するナノボディを生じるための正当な方法である。 UniBodyは別の抗体断片技術であるが、これはIgG4抗体のヒンジ領域の除去に基づいている。ヒンジ領域の欠失は、伝統的なIgG4抗体の本質的に半分の大きさであり、IgG4抗体の二価の結合領域の代わりに一価の結合領域を有する分子をもたらす。また、IgG4抗体は不活性であり、したがって免疫系と相互作用しないことが周知であり、これは、免疫応答が所望されない疾患の処置に有利な場合があり、この利点はUniBodyに伝えられる。たとえば、UniBodyは、結合している細胞を阻害またはサイレンシングするように機能し得るが、死滅はさせない。さらに、がん細胞と結合するUniBodyは、それが増殖するように刺激しない。さらに、UniBodyは伝統的なIgG4抗体の約半分の大きさであるため、潜在的に有利な有効性を伴って、より大きな固形腫瘍にわたってより良好な分布を示し得る。UniBodyは、完全IgG4抗体と同様の速度で身体からクリアランスされ、その抗原に対して完全抗体と同様の親和性で結合することができる。UniBodyのさらなる詳細は、その全体が本明細書中に参考として組み込まれている特許出願WO2007/059782を参照することによって得ることができる。 アドネクチン分子とは、フィブロネクチンタンパク質の1つまたは複数のドメインに由来する操作した結合タンパク質である。フィブロネクチンは、人体中に天然に存在する。これは細胞外基質中に不溶性の糖タンパク質二量体として存在し、リンカータンパク質としても役割を果たす。また、これは血漿中でジスルフィド連結二量体として可溶性形態でも存在する。フィブロネクチンの血漿形態は肝臓細胞(肝細胞)によって合成され、ECM形態は軟骨細胞、マクロファージ、内皮細胞、線維芽細胞、および上皮の一部の細胞によって産生される(Ward M.およびMarcey, D.、callutheran.edu/Academic_Programs/Departments/BioDev/omm/fibro/fibro.htmを参照)。既に言及したように、フィブロネクチンは、細胞接着分子として天然で機能し得るか、または細胞外基質中で接触させることによって細胞の相互作用を媒介し得る。典型的には、フィブロネクチンは3つの異なるタンパク質モジュール、すなわちI型、II型、およびIII型モジュールからできている。フィブロネクチンの機能の構造の総説には、PankovおよびYamada (2002年) J Cell Sci.、115巻(パート20):3861〜3頁、HohenesterおよびEngel (2002年) 21巻:115〜128頁、ならびにLucenaら(2007年) Invest Clin.48巻:249〜262頁を参照されたい。 好ましい実施形態では、アドネクチン分子は、フィブロネクチンIII型ドメインから、2つのベータシートの間に分布した複数のベータストランドから構成されるネイティブタンパク質を変更することによって誘導する。起源の組織に応じて、フィブロネクチン(fibronecting)は、たとえば1Fn3、2Fn3、3Fn3などを表示し得る複数のIII型ドメインを含有し得る。10Fn3ドメインは、インテグリン結合モチーフを含有し、ベータストランドを接続する3つのループをさらに含有する。これらのループは、IgG重鎖の抗原結合ループに対応するものと考えてよく、目的の標的、たとえばRTKのIg様ドメイン、たとえばヒトKit RTKのD4もしくはD5ドメインまたはVEGF受容体のD7ドメインと特異的に結合させるために、以下に記述した方法によって変更し得る。好ましくは、本発明の目的に有用なフィブロネクチンIII型ドメインは、タンパク質データバンク(Protein Data Bank)(PDB、rcsb.org/pdb/home/home.do)から受託コード:1ttgで入手することができるフィブロネクチンIII型分子の構造をコードしている配列と少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の配列同一性を示す配列である。また、アドネクチン分子は、単純な単量体の10Fn3構造ではなく10Fn3関連分子のポリマーから誘導してもよい。 ネイティブ10Fn3ドメインは典型的にはインテグリンと結合するが、アドネクチン分子となるように適応させられた10Fn3タンパク質は、目的の抗原、たとえばRTKのIg様ドメイン、たとえばヒトKitのD4またはD5ドメインと結合するように変更されている。一実施形態では、10Fn3分子への変更は、ベータストランドへの少なくとも1つの変異を含む。好ましい実施形態では、10Fn3分子のベータストランドを接続するループ領域は、ヒト受容体チロシンキナーゼ、たとえばVEGF受容体またはIII型受容体チロシンキナーゼ、たとえばヒトKitのIg様ドメインと結合するように変更されている。 10Fn3中の変更は、それだけには限定されないが、誤りがちなPCR、部位特異的変異誘発、DNAシャフリング、または本明細書中で参照した他の種類の組換え変異誘発を含めた、当技術分野で公知の任意の方法によって行い得る。一例では、10Fn3配列をコードしているDNAのバリアントin vitroで直接合成し、後にin vitroまたはin vivoで転写および翻訳し得る。あるいは、標準の方法を使用して天然の10Fn3配列をゲノムから単離またはクローニングし(たとえば米国特許出願第20070082365号に記載のように行う)、その後、当技術分野で公知の変異誘発方法を使用して変異させてもよい。 一実施形態では、標的タンパク質、たとえばRTKのIg様ドメイン、たとえばKit RTKのD4もしくはD5ドメインまたはVEGF受容体のD7ドメインを、カラムのレジンまたはマイクロタイタープレート中のウェルなどの固体支持体上に固定し得る。その後、標的を潜在的な結合タンパク質のライブラリと接触させる。ライブラリは、10Fn3配列の変異誘発/ランダム化または10Fn3ループ領域(ベータストランドではない)の変異誘発/ランダム化によって野生型10Fn3から誘導した、10Fn3クローンまたはアドネクチン分子を含み得る。好ましい実施形態では、ライブラリは、Szostakら、米国出願第09/007,005号および第09/247,190号、Szostakら、WO989/31700、ならびにRobertsおよびSzostak (1997年) 94巻:12297〜12302頁に記載の技法によって作製したRNA−タンパク質融合ライブラリであり得る。また、ライブラリは、DNA−タンパク質ライブラリであってもよい(たとえば、Lohse、米国出願第60/110,549号、米国出願第09/459,190号、およびWO00/32823号に記載)。その後、融合ライブラリを固定した標的(たとえばヒトKit RTKのD4もしくはD5ドメインまたはヒトVEGF受容体のD7ドメイン)と共にインキュベートし、固体支持体を洗浄して非特異的結合部分を除去する。その後、緊密に結合したものをストリンジェントな条件下で溶出させ、PCRを使用して、遺伝情報を増幅するか、または結合分子の新しいライブラリを作製してプロセスを繰り返す(さらなる変異誘発を用いてまたは用いずに)。選択/変異誘発のプロセスは、十分な親和性で標的と結合したものが得られるまで繰り返し得る。本発明で使用するためのアドネクチン分子を、Briston−Myers Squibb企業であるAdnexusによって用いられるPROfusion(商標)技術を使用して操作し得る。PROfusion技術を、上記で参照した技法に基づいて開発した(たとえばRobertsおよびSzostak (1997年) 94巻:12297〜12302頁)。変更された10Fn3ドメインのライブラリを作製し、本発明で使用し得る適切に結合するもの(binder)を選択する方法は、以下の米国特許および特許出願の文書中に完全に記載されており、本明細書中に参考として組み込まれている:米国特許第7,115,396号、第6,818,418号、第6,537,749号、第6,660,473号、第7,195,880号、第6,416,950号、第6,214,553号、第6623926号、第6,312,927号、第6,602,685号、第6,518,018号、第6,207,446号、第6,258,558号、第6,436,665号、第6,281,344号、第7,270,950号、第6,951,725号、第6,846,655号、第7,078,197号、第6,429,300号、第7,125,669号、第6,537,749号、第6,660,473号、ならびに米国特許出願第20070082365号、第20050255548号、第20050038229号、第20030143616号、第20020182597号、第20020177158号、第20040086980号、第20040253612号、第20030022236号、第20030013160号、第20030027194号、第20030013110号、第20040259155号、第20020182687号、第20060270604号、第20060246059号、第20030100004号、第20030143616号、および第20020182597号。10Fn3などのフィブロネクチンIII型ドメイン中に多様性を生じさせ、次いで選択ステップを行うことは、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、または酵母表面ディスプレイ、たとえば、Lipovsekら(2007年) Journal of Molecular Biology 368巻:1024〜1041頁、Sergeevaら(2006年) Adv Drug Deliv Rev. 58巻:1622〜1654頁、Pettyら(2007年) Trends Biotechnol. 25巻:7〜15頁、Rotheら(2006年) Expert Opin Biol Ther. 6巻:177〜187頁、およびHoogenboom (2005年) Nat Biotechnol. 23巻:1105〜1116頁などの当技術分野で公知の他の方法を使用して達成し得る。 当業者には、上記言及した参考文献中の方法を使用して、好ましい10Fn3ドメイン以外のタンパク質から抗体擬態物を誘導し得ることが理解されよう。上記参照した方法によって抗体擬態物を作製するために使用することができるさらなる分子には、それだけには限定されないが、ヒトフィブロネクチンモジュール1Fn3〜9Fn3および11Fn3〜17Fn3ならびに非ヒト動物および原核生物からの関連するFn3モジュールが含まれる。さらに、テネイシンおよびウンデュリン(undulin)などの、10Fn3と配列相同性を有する他のタンパク質からのFn3モジュールも使用し得る。免疫グロブリン様の折り畳みを有する(が、VHドメインと非関連の配列を有する)他の例示的なタンパク質には、N−カドヘリン、ICAM−2、タイチン、GCSF受容体、サイトカイン受容体、グリコシダーゼインヒビター、E−カドヘリン、および抗生物質色素タンパク質が含まれる。関連構造を有するさらなるドメインは、ミエリン膜接着分子P0、CD8、CD4、CD2、クラスI MHC、T細胞抗原受容体、CD1、VCAM−1のC2およびIセットドメイン、ミオシン結合タンパク質CのIセット免疫グロブリンの折り畳み、ミオシン結合タンパク質HのIセット免疫グロブリンの折り畳み、テロキンのIセット免疫グロブリンの折り畳み、テリキン、NCAM、トゥイッチン、ニューログリアン、成長ホルモン受容体、エリスロポエチン受容体、プロラクチン受容体、GC−SF受容体、インターフェロン−ガンマ受容体、ベータ−ガラクトシダーゼ/グルクロニダーゼ、ベータ−グルクロニダーゼ、ならびにトランスグルタミナーゼに由来し得る。あるいは、1つまたは複数の免疫グロブリン様の折り畳みが含まれる任意の他のタンパク質を利用して、アドネクチン(adnecting)様結合部分を作製し得る。そのようなタンパク質は、たとえばプログラムSCOPを使用して同定し得る(Murzinら、J. Mol. Biol. 247巻:536頁(1995年)、Lo Conteら、Nucleic Acids Res. 25巻:257頁(2000年))。 アプタマーは、本発明によって包含される別の種類の抗体模倣体である。アプタマーとは、典型的には、特定の分子標的と結合する小さなヌクレオチドポリマーである。アプタマーは一本鎖または二本鎖の核酸分子(DNAまたはRNA)であり得るが、DNAに基づくアプタマーは、最も一般的には二本鎖である。アプタマー核酸には定義された長さは存在しない。しかし、アプタマー分子は、最も一般的には15〜40個のヌクレオチドの長さである。 アプタマーはしばしば複雑な三次元構造を形成し、これが標的分子に対するその親和性を決定する。アプタマーは、ほぼ完全にin vitroで操作および増幅できることが主な理由で、単純な抗体を超える多くの利点を提供することができる。さらに、アプタマーは、多くの場合に免疫応答をわずかにしか誘導しないか、または誘導しない。 アプタマーは様々な技法を使用して作製し得るが、その内容が本明細書中に参考として組み込まれているin vitro選択(EllingtonおよびSzostak. (1990年) Nature. 346巻(6287号):818〜22頁)およびSELEX方法(指数関数的な富化によるリガンドの系統的進化(systematic evolution of ligands by exponential enrichment))(Schneiderら、1992年. J Mol Biol. 228巻(3号):862〜9頁)を使用して、もともとは開発された。すべて本明細書中に参考として組み込まれている、Klussmann. The Aptamer Handbook: Functional Oligonucleotides and Their Applications. ISBN:978−3−527−31059−3、Ulrichら、2006年. Comb Chem High Throughput Screen 9巻(8号):619〜32頁、Cerchiaおよびde Franciscis. 2007年. Methods Mol Biol. 361巻:187〜200頁、IresonおよびKelland. 2006年. Mol Cancer Ther. 2006年 5巻(12号):2957〜62頁、米国特許第5582981号、第5840867号、第5756291号、第6261783号、第6458559号、第5792613号、第6111095号、ならびに米国特許出願第11/482,671号、第11/102,428号、第11/291,610号、および第10/627,543号を含めた、アプタマーを作製する他の方法およびその使用が公開されている。 SELEX方法が明らかに最も一般的であり、3つの基本的なステップで実施する。第1に、候補核酸分子のライブラリを特定の分子標的との結合に関して選択する。第2に、標的に対して十分な親和性を有する核酸を、結合しないものから分離する。第3に、結合した核酸を増幅し、第2のライブラリを形成し、このプロセスを繰り返す。それぞれの反復に際して、標的分子に対してより高い親和性を有するアプタマーが選択される。SELEX方法は、本明細書中に参考として組み込まれている以下の出版物中により完全に記載されている:Bugautら、2006年. 4巻(22号):4082〜8頁、Stoltenburgら、2007年 Biomol Eng. 2007年 24巻(4号):381〜403頁、およびGopinath. 2007年. Anal Bioanal Chem. 2007年. 387巻(1号):171〜82頁。 また、本発明の「アプタマー」には、ヌクレオチドの代わりにペプチドから作製されたアプタマー分子も含まれる。ペプチドアプタマーはヌクレオチドアプタマーと多くの特性を共有し(たとえば、大きさが小さいこと、および高い親和性で標的分子と結合する能力)、ヌクレオチドアプタマーを作製するために使用したものと同様の原理を有する選択方法によって作製し得る。たとえば、本明細書中に参考として組み込まれているBainesおよびColas. 2006年. Drug Discov Today. 11巻(7〜8号):334〜41頁ならびにBickleら、2006年. Nat Protoc. 1巻(3号):1066〜91頁。 アフィボディ分子とは、ブドウ球菌プロテインAのIgG結合ドメインのうちの1つに由来する、58個のアミノ酸残基のタンパク質ドメインに基づく新しいクラスの親和性タンパク質を表す。この3つのヘリックスバンドルのドメインは、コンビナトリアルファージミドライブラリを構築するための骨格として使用されており、これから、ファージディスプレイ技術を使用して、所望の分子を標的とするアフィボディバリアントを選択することができる(Nord K、Gunneriusson E、Ringdahl J、Stahl S、Uhlen M、Nygren PA、Binding proteins selected from combinatorial libraries of an α−helical bacterial receptor domain、Nat Biotechnol 1997年、15巻:772〜7頁。Ronmark J、Gronlund H、Uhlen M、Nygren PA、Human immunoglobulin A (IgA)−specific ligands from combinatorial engineering of protein A、Eur J Biochem 2002年、269巻:2647〜55頁)。アフィボディ分子の単純かつ堅調な構造とその低分子量(6kDa)とが組み合わされることで、これらは多種多様な応用、たとえば、検出試薬として(Ronmark J、Hansson M、Nguyen Tら、Construction and characterization of affibody−Fc chimeras produced in Escherichia coli、J Immunol Methods 2002年、261巻:199〜211頁)および受容体の相互作用の阻害(Sandstorm K、Xu Z、Forsberg G、Nygren PA、Inhibition of the CD28−CD80 co−stimulation signal by a CD28−binding Affibody ligand developed by combinatorial protein engineering、Protein Eng 2003年、16巻:691〜7頁)に適切となる。アフィボディおよびその産生方法のさらなる詳細は、その全体が本明細書中に参考として組み込まれている米国特許第5,831,012号を参照することによって得ることができる。 DARPin(設計アンキリン反復タンパク質(Designed Ankyrin Repeat Proteins))は、非抗体ポリペプチドの結合能力を活用するために開発された抗体模倣体DRP(設計反復タンパク質(Designed Repeat Protein))技術の一例である。アンキリンなどの反復タンパク質またはロイシンリッチな反復タンパク質は遍在性の結合分子であり、これらは、抗体とは異なり、細胞内および細胞外に存在する。そのユニークなモジュール構造は反復する構造単位(反復)を特長とし、これらは一緒に積み重なって、可変性かつモジュール式の標的結合表面を示す細長い反復ドメインを形成する。このモジュラリティに基づいて、高度に多様化した結合特異性を有するポリペプチドのコンビナトリアルライブラリを作製することができる。この戦略には、可変性の表面残基を示す自己適合性反復のコンセンサス設計および反復ドメインへのそのランダムアセンブリが含まれる。 DARPinは細菌発現系中で非常に高い収率で産生させることができ、これらは公知の最も安定なタンパク質に属する。ヒト受容体、サイトカイン、キナーゼ、ヒトプロテアーゼ、ウイルスおよび膜タンパク質を含めた幅広い範囲の標的タンパク質に対する、特異性の高い高親和性のDARPinが選択されている。1桁のナノモルからピコモルの範囲の親和性を有するDARPinを得ることができる。 DARPinは、ELISA、サンドイッチELISA、フローサイトメトリー分析(FACS)、免疫組織化学(IHC)、チップの応用、親和性精製またはウエスタンブロッティングを含めた、広い範囲の応用で使用されている。また、DARPinは、たとえば緑色蛍光タンパク質(GFP)と融合した細胞内マーカータンパク質として、細胞内区画中で活性が高いことも証明された。さらに、DARPinはpM範囲のIC50でウイルス進入を阻害するために使用された。DARPinは、タンパク質−タンパク質の相互作用を遮断するためだけでなく、酵素を阻害するためにも理想的である。プロテアーゼ、キナーゼおよびトランスポーターの、ほとんどの場合はアロステリックな様式での阻害が成功している。非常に速く特異的な腫瘍上の富化および非常に好ましい腫瘍対血液の比により、DARPinはin vivo診断または治療手法に非常に適したものとなっている。 DARPinおよび他のDRP技術に関するさらなる情報は、どちらもその全体が本明細書中に参考として組み込まれている米国特許出願第2004/0132028号および国際特許出願公開WO02/20565号中に見つけることができる。 アンチカリンはさらなる抗体模倣体の技術であるが、この場合、結合特異性は、ヒトの組織および体液中で天然かつ豊富に発現される低分子量タンパク質のファミリーであるリポカリンに由来する。リポカリンは、化学的感受性化合物または不溶性化合物の生理的輸送および貯蔵に関連する様々な機能をin vivoで行うように進化している。リポカリンは、タンパク質の一方の末端で、4つのループを支持する高度に保存されたβ−バレルを含む堅調な固有の構造を有する。これらのループは、結合ポケットへの入り口を形成し、分子のこの部分中のコンフォメーションの相違が、個々のリポカリン間の結合特異性の変動の原因となっている。 保存されたβ−シートフレームワークによって支持される超可変ループの全体的な構造は免疫グロブリンを連想させるが、リポカリンは、大きさに関して抗体とは相当に異なり、単一の免疫グロブリンドメインよりもわずかに大きい160〜180個のアミノ酸の単一のポリペプチド鎖から構成されている。 リポカリンをクローニングし、そのループを操作に供して、アンチカリンを作製する。構造的に多様なアンチカリンのライブラリが作製されており、アンチカリンディスプレイにより、結合機能の選択およびスクリーニング、次いで原核生物または真核生物系におけるさらなる分析のための可溶性タンパク質の発現および産生が可能となる。研究により、事実上任意のヒト標的タンパク質に特異的なアンチカリンを開発することができ、単離することができ、ナノモル以上の範囲の結合親和性を得ることができることを示すことに成功している。 また、アンチカリンは、二重標的化タンパク質、いわゆるDuocalinとしての形式とすることもできる。Duocalinは、標準の製造プロセスを使用して容易に生成される1つの単量体タンパク質において2つの別々の治療標的と結合し、その一方で、その2つの結合ドメインの構造配向にかかわらず、標的特異性および親和性を保持する。 単一の分子による複数の標的の調節(modulation)は、複数の原因因子の関与が公知である疾患において特に有利である。さらに、Duocalinなどの二価または多価の結合様式は、疾患における細胞表面分子の標的化、シグナル伝達経路におけるアゴニスト効果の媒介、または細胞表面受容体の結合およびクラスタリングを介した増強された内在化効果の誘導において顕著な潜在性を有する。さらに、Duocalinの高い固有の安定性は単量体のアンチカリンに匹敵し、Duocalinに柔軟な処方および送達潜在性を提供する。 アンチカリンに関するさらなる情報は、どちらもその全体が本明細書中に参考として組み込まれている米国特許第7,250,297号および国際特許出願公開WO99/16873号中に見つけることができる。 本発明との関係において有用な別の抗体模倣体の技術はアビマーである。アビマーは、in vitroのエクソンシャフリングおよびファージディスプレイによってヒト細胞外受容体ドメインの大きなファミリーから進化しており、結合および阻害の特性を有する複数ドメインのタンパク質を生じる。複数の独立した結合ドメインの連結によりアビディティが生じることが示されており、慣用の単一エピトープの結合タンパク質と比較して改善された親和性および特異性がもたらされる。他の潜在的な利点には、Escherichia coliにおける複数標的に特異的な分子の単純かつ効率的な産生、改善された熱安定性およびプロテアーゼに対する耐性が含まれる。ナノモル以下の親和性を有するアビマーが様々な標的に対して得られている。 アビマーに関するさらなる情報は、すべてその全体が本明細書中に参考として組み込まれている、米国特許出願第2006/0286603号、第2006/0234299号、第2006/0223114号、第2006/0177831号、第2006/0008844号、第2005/0221384号、第2005/0164301号、第2005/0089932号、第2005/0053973号、第2005/0048512号、第2004/0175756号中に見つけることができる。 バーサボディは、本発明との関係において使用できる別の抗体模倣体の技術である。バーサボディとは、>15%のシステインを有する3〜5kDaの小さなタンパク質であり、高いジスルフィド密度の骨格を形成し、典型的なタンパク質が有する疎水性コアを置き換えている。疎水性コアを含む多数の疎水性アミノ酸を少数のジスルフィドで置き換えることで、より小さく、より親水性であり(凝集および非特異的結合がより少ない)、プロテアーゼおよび熱に対してより耐性であり、より低い密度のT細胞エピトープを有するタンパク質がもたらされる。なぜならば、MHC提示に最も寄与する残基は疎水性残基であるからである。これらの4つの特性はすべて、免疫原性に影響を与えることが周知であり、これらが一緒になって免疫原性の大きな減少を引き起こすと予想される。 バーサボディのインスピレーションは、ヒル、ヘビ、クモ、サソリ、カタツムリ、およびイソギンチャク(anemone)によって産生される天然の注射用生物製薬(biopharmaceutical)から得られており、これは、予想外に低い免疫原性を示すことが公知である。選択された天然タンパク質ファミリーから開始して、設計およびスクリーニングによって、大きさ、疎水性、タンパク質分解性抗原プロセッシング、およびエピトープ密度を天然の注射用タンパク質の平均よりもはるかに低いレベルまで最小化する。 バーサボディの構造を考慮すると、これらの抗体模倣体は、多結合価、多特異性、半減期機構の多様性、組織標的化モジュールおよび抗体Fc領域の非存在を含めた多用途の様式を提供する。さらに、バーサボディはE.coli中で高い収率で製造され、また、その親水性および小さな大きさのため、バーサボディは可溶性が高く、高濃度で処方することができる。バーサボディは並外れて熱安定性であり(煮沸することができる)、長い貯蔵寿命を提供する。 バーサボディに関するさらなる情報は、その全体が本明細書中に参考として組み込まれている米国特許出願第2007/0191272号中に見つけることができる。 SMIP(商標)(小モジュール免疫製薬(Small Modular ImmunoPharmaceuticals)−Trubion Pharmaceuticals)は、標的結合、エフェクター機能、in vivo半減期、および発現レベルが維持および最適化されるように操作されている。SMIPは、3つの明白に異なるモジュールドメインからなる。第1に、これらは、特異性を与える任意のタンパク質(たとえば、細胞表面受容体、単鎖抗体、可溶性タンパク質など)からなり得る結合ドメインを含有する。第2に、これらは、結合ドメインとエフェクタードメインとの間の柔軟なリンカーとして機能するヒンジドメインを含有し、SMIP薬物の多量体化の制御も助ける。最後に、SMIPは、Fcドメインまたは他の特別に設計したタンパク質を含めた様々な分子から由来し得るエフェクタードメインを含有する。様々な異なる結合、ヒンジ、およびエフェクタードメインを有するSMIPの単純な構築を可能にする設計のモジュラリティは、迅速かつカスタマイズ可能な薬物設計を提供する。 どのようにして設計するかの例を含めた、SMIPに関するさらなる情報は、Zhaoら(2007年) Blood 110巻:2569〜77頁ならびに米国特許出願第20050238646号、第20050202534号、第20050202028号、第20050202023号、第20050202012号、第20050186216号、第20050180970号、および第20050175614号中に見つけ得る。 上記に提供した抗体断片および抗体模倣体の技術の詳細な説明は、本明細書との関係において使用できるすべての技術の包括的なリストであることを意図しない。たとえば、やはり限定するものではないが、ポリペプチドに基づく代替技術を含めた様々な追加の技術、たとえば、その全体が本明細書中に参考として組み込まれているQuiら、Nature Biotechnology、25巻(8号) 921〜929頁(2007年)中に概要が示されている相補性決定領域の融合、ならびにすべて本明細書中に参考として組み込まれている、米国特許第5,789,157号、第5,864,026号、第5,712,375号、第5,763,566号、第6,013,443号、第6,376,474号、第6,613,526号、第6,114,120号、第6,261,774号、および第6,387,620号に記載されているRNAアプタマー技術などの核酸に基づく技術を、本発明との関係において使用することができる。 抗体の物理特性 RTKのIg様ドメインと結合する本発明の抗体は、様々な物理特性によってさらに特徴づけされ得る。様々なアッセイを使用して、これらの物理特性に基づいて様々な抗体のクラスを検出および/または区別し得る。 一部の実施形態では、本発明の抗体は、軽鎖または重鎖可変領域のどちらかの中に1つまたは複数のグリコシル化部位を含有し得る。可変領域中の1つまたは複数のグリコシル化部位の存在は、変更された抗原結合による、抗体の免疫原性の増加または抗体のpKの変更をもたらし得る(Marshallら(1972年) Annu Rev Biochem 41巻:673〜702頁、Gala FAおよびMorrison SL (2004年) J Immunol 172巻:5489〜94頁、Wallickら(1988年) J Exp Med 168巻:1099〜109頁、Spiro RG (2002年) Glycobiology 12巻:43R〜56R頁、Parekhら(1985年) Nature 316巻:452〜7頁、Mimuraら(2000年) Mol Immunol 37巻:697〜706頁)。グリコシル化は、N−X−S/T配列を含有するモチーフで起こることが公知である。可変領域のグリコシル化を、Glycoblotアッセイを使用して試験でき、これは、抗体を切断してFabを生成し、その後、過ヨウ素酸塩の酸化およびシッフ塩基の形成を測定するアッセイを使用してグリコシル化について試験し得る。あるいは、可変領域のグリコシル化は、Dionexライトクロマトグラフィー(Dionex−LC)を使用して試験され得、これは、Fabからの糖類を単糖へと切断し、個々の糖類含有量を分析する。一部の例では、可変領域のグリコシル化を含有しない抗体を有することが好ましい場合がある。これは、可変領域中にグリコシル化モチーフを含有しない抗体を選択することによって、または当技術分野で周知の標準の技法を使用してグリコシル化モチーフ内の残基を変異させることによって達成することができる。 それぞれの抗体は特有の等電点(pI)を有するが、一般に、抗体は6〜9.5のpH範囲となる。IgG1抗体のpIは典型的には7〜9.5のpH範囲となり、IgG4抗体のpIは典型的には6〜8のpH範囲となる。抗体は、この範囲の外のpIを有し得る。効果は一般に知られていないが、正常な範囲外のpIを有する抗体は、in vivo条件下でいくらかの折り畳みの崩れ(unfolding)および不安定性を有し得ると推測されている。等電点は、pH勾配を生じるキャピラリー等電点電気泳動アッセイを使用して試験してよく、正確さを増すためにレーザー集束を利用し得る(Janiniら(2002年) Electrophoresis 23巻:1605〜11頁、Maら(2001年) Chromatographia 53巻:S75〜89頁、Huntら(1998年) J Chromatogr A 800巻:355〜67頁)。一部の例では、正常な範囲内となるpI値を含有する抗体を有することが好ましい。これは、正常な範囲内のpIを有する抗体を選択することによって、または当技術分野で周知の標準の技法を使用して荷電表面残基を変異させることによって達成することができる。 それぞれの抗体は、熱安定性の指標である融解温度を有する(Krishnamurthy RおよびManning MC (2002年) Curr Pharm Biotechnol 3巻:361〜71頁)。より高い熱安定性は、in vivoでのより高い全体的な抗体の安定性を示す。抗体の融点は、示差走査熱量測定などの技法を使用して測定し得る(Chenら(2003年) Pharm Res 20巻:1952〜60頁、Ghirlandoら(1999年) Immunol Lett 68巻:47〜52頁)。TM1は、抗体の最初の折り畳みの崩れの温度を示す。TM2は、抗体の完全な折り畳みの崩れの温度を示す。一般に、本発明の抗体のTM1は60℃より高いことが好ましく、好ましくは65℃より高く、さらにより好ましくは70℃より高い。あるいは、抗体の熱安定性は円二色性を使用して測定し得る(Murrayら(2002年) J. Chromatogr Sci 40巻:343〜9頁)。 好ましい実施形態では、迅速に分解されない抗体が所望され得る。抗体の断片化は、当技術分野で十分に理解されているように、キャピラリー電気泳動(CE)およびMALDI−MSを使用して測定し得る(Alexander AJおよびHughes DE (1995年) Anal Chem 67巻:3626〜32頁)。 別の好ましい実施形態では、最小限の凝集効果を有する抗体を選択する。凝集は、望まない免疫応答の惹起および/または変更されたかもしくは望ましくない薬物動態学的特性をもたらし得る。一般に、抗体は、25%以下、好ましくは20%以下、さらにより好ましくは15%以下、さらにより好ましくは10%以下、さらにより好ましくは5%以下の凝集が許容される。凝集を、サイズ排除カラム(SEC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、および光散乱を含めた当技術分野で周知のいくつかの技法によって測定し、単量体、二量体、三量体または多量体を同定し得る。 本発明のポリクローナル抗体の産生 本発明のポリクローナル抗体は、当技術分野で周知の様々な技法によって産生させることができる。ポリクローナル抗体は様々なB細胞系に由来し、したがって、同じ抗原上の複数のエピトープを認識し得る。ポリクローナル抗体は、典型的には、適切な哺乳動物を、目的の抗原、たとえばRTKのIg様ドメイン、たとえばヒトKitのD4もしくはD5ドメインまたはヒトVEGFのD7ドメインで免疫化することによって産生させる。ポリクローナル抗体の産生にしばしば使用される動物は、ニワトリ、ヤギ、モルモット、ハムスター、ウマ、マウス、ラット、ヒツジ、および最も一般的にはウサギである。以下の実施例14では、ウサギをKitの第4(D4)もしくは第5の(D5)Ig様ドメインまたはKitの外部ドメイン全体で免疫化することによって、ポリクローナル抗Kit抗体を作製した。ポリクローナル抗体を産生させる標準の方法は当技術分野で広く公知であり、本発明の方法と組み合わせることができる(たとえば、その内容全体が本明細書中に参考として組み込まれている、research.cm.utexas.edu/bkitto/Kittolabpage/Protocols/Immunology/PAb.html、米国特許第4,719,290号、第6,335,163号、第5,789,208号、第2,520,076号、第2,543,215号、および第3,597,409号)。 本発明のモノクローナル抗体の産生 本発明のモノクローナル抗体(mAb)は、慣用のモノクローナル抗体方法、たとえば、KohlerおよびMilstein (1975年) Nature 256巻:495頁の標準の体細胞ハイブリダイゼーション技法を含めた、様々な技法によって産生させることができる。体細胞ハイブリダイゼーション手順が好ましいが、原理上は、モノクローナル抗体を産生させる他の技法、たとえば、Bリンパ球のウイルスまたは腫瘍発生性形質転換を用いることができる。抗体(モノクローナルもしくはポリクローナル)またはその抗原結合性一部分は、RTKのIg様ドメイン、より好ましくはヒトKit RTKのD4もしくはD5ドメインまたはVEGF受容体のD7ドメイン上の任意のエピトープ、本明細書中に記述したコンセンサス(concensus)配列、あるいは本明細書中に記載の任意のコンフォメーション、不連続、または直鎖状エピトープに対して産生させ得ることに留意されたい。 当技術分野で公知のいくつかの方法が、目的の不連続エピトープと特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片の特異的な選択に有用である。たとえば、その内容全体が本明細書中に参考として組み込まれている米国公開第2005/0169925号に開示されている技法は、タンパク質配列内の2つの異なるペプチドと結合する抗体の選択を可能にする。そのような方法は、本明細書中に開示したコンフォメーションおよび不連続エピトープを特異的に標的とするために、本発明に従って使用し得る。コンフォメーションエピトープがタンパク質の二次的構造である場合、そのような構造は、しばしば、より小さなペプチド(たとえば<50個のアミノ酸)中でより容易に形成される。したがって、動物をより小さなペプチドで免疫化することで、一部のコンフォメーションエピトープを捕らえることができる。あるいは、コンフォメーションエピトープを含む2つの小さなペプチド(たとえば表5中に同定したペプチド)を柔軟なリンカー(たとえば、ポリグリコール、または極性の非荷電のアミノ酸のストレッチ)で接続させ得る。リンカーは、ペプチドが様々な相互作用の配向を探索することを可能にする。この構築体を用いた免疫化、次いで適切なスクリーニングにより、コンフォメーションエピトープに向けられた抗体の同定が可能となる場合がある。好ましい実施形態では、RTKの特定のドメイン(たとえば、Kit外部ドメインのドメイン4もしくはドメイン5またはVEGF受容体のD7)で動物を免疫化し、続いて目的のエピトープと結合する抗体についてスクリーニングすることによって、特定のコンフォメーションまたは直鎖状エピトープに対するペプチドを作製し得る。一実施形態では、低温電子顕微鏡観察(Jiangら(2008年) Nature 451巻、1130〜1134頁、Joachim (2006年) Oxford University Press_ISBN:0195182189)を使用して、本発明の抗体または抗原結合断片によって結合されたエピトープを同定し得る。別の実施形態では、RTKまたはそのドメインを、結合した抗体またはその抗原結合断片と共に結晶化し、X線結晶構造解析によって分析して、結合した正確なエピトープを決定し得る。さらに、エピトープを、RTK配列の一部分をマウスまたは別の種からの対応する配列で置き換えることによってマッピングし得る。目的のエピトープに向けられた抗体はヒト配列領域と選択的に結合し、したがって、標的エピトープを順次マッピングすることが可能である。このキメラに基づいたエピトープマッピングの技法は、様々な設定でのエピトープの同定における使用で成功している(その内容全体が本明細書中に参考として組み込まれているHenrikssonおよびPettersson (1997年) Journal of Autoimmunity. 10巻(6号):559〜568頁、Netzerら(1999年) J Biol Chem. 1999年4月16日、274巻(16号):11267〜74頁、Hsiaら(1996年) Mol. Microbiol. 19巻、53〜63頁を参照)。 標的RTK(たとえばKit RTKまたはVEGF受容体)中の目的のエピトープはグリコシル化されていないと考えられている。しかし、目的のRTKがグリコシル化されている場合、抗体またはその抗原結合性一部分(および本発明の他の部分)を、関連するアミノ酸および/または糖残基と結合するように産生させ得る。たとえば、Kitタンパク質は少なくとも10箇所の潜在的なN連結グリコシル化の部位を有することが当技術分野で公知である(Morstyn、Foote、Lieschke (2004年) Hematopoietic Growth Factors in Oncology: Basic Science and Clinical Therapeutics. Humana Press. ISBN:1588293025)。さらに、KitはO連結グリコシル化およびシアル酸残基との付着を示し得ると考えられている(Wypych Jら(1995年) Blood、85巻(1号):66〜73頁)。したがって、抗体またはその抗原結合性一部分(および本発明の他の部分)を、本明細書中で同定した任意のエピトープに付着していてもよい糖残基と結合するようにも産生させ得ることが企図される。この目的のために、目的の抗原性ペプチドを、正しくグリコシル化されるように動物細胞中で産生させてよく、その後、グリコシル化された抗原性ペプチドを使用して動物を免疫化し得る。グリコシル化されたペプチドを産生させるための適切な細胞および技法は当技術分野で公知であり、以下にさらに記載されている(たとえば、GlycoFi,Inc.、ニューハンプシャー州LebanonおよびBioWa、ニュージャージー州Princetonから利用可能な技術を参照)。ペプチドの正しいグリコシル化を、等電点電気泳動(IEF)、酸加水分解(単糖の組成を決定するため)、化学的または酵素的切断、および質量分析(MS)などの任意の標準の方法を使用して試験して、グリカンを同定し得る。また、グリカン分析を加速させるためにレクチンに基づくアレイを使用するProcognia(procognia.com)によって提供される技術も使用し得る。還元性アルカリ性切断もしくは「ベータ排除」、ペプチドマッピング、液体クロマトグラフィー、および質量分析またはこれらの技法のうちの任意の組合せなどの技法を使用して、O−グリコシル化を具体的に検出し得る。 ハイブリドーマを調製するための好ましい動物系はマウス系である。マウスにおけるハイブリドーマの産生は非常に良好に確立された手順である。免疫化プロトコルおよび融合のために免疫化した脾細胞を単離する技法は当技術分野で公知である。また、融合パートナー(たとえばマウス骨髄腫細胞)および融合手順も公知である。 本発明のキメラまたはヒト化抗体は、上述のように調製したマウスモノクローナル抗体の配列に基づいて調製することができる。重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードしているDNAを、目的のマウスハイブリドーマから得て、標準の分子生物学的技法を使用して非マウス(たとえばヒト)免疫グロブリン配列を含有するように操作することができる。たとえば、キメラ抗体を作製するためには、当技術分野で公知の方法を使用してマウス可変領域をヒト定常領域に連結させることができる(たとえばCabillyらの米国特許第4,816,567号を参照)。ヒト化抗体を作製するためには、当技術分野で公知の方法を使用してマウスCDR領域をヒトフレームワーク内に挿入することができる(たとえば、Winterの米国特許第5,225,539号、ならびにQueenらの米国特許第5,530,101号、第5,585,089号、第5,693,762号および第6,180,370号を参照)。あるいは、ヒトおよび非ヒト配列の知識が与えられた場合は、ヒト化抗体をDNAまたはタンパク質レベルで設計し得る。そのような抗体を、直接化学合成し得るか、または、DNAを合成し、in vitroもしくはin vivoで発現させて、ヒト化抗体を産生させ得る。 好ましい実施形態では、本発明の抗体はヒトモノクローナル抗体である。RTKのIg様ドメイン、たとえばKitのD4もしくはD5ドメインまたはVEGF受容体のD7ドメインに向けられたそのようなヒトモノクローナル抗体は、ヒト免疫系の一部をマウス系の代わりに保有するトランスジェニックまたはトランス染色体マウスを使用して作製することができる。これらのトランスジェニックおよびトランス染色体マウスには、本明細書中でそれぞれHuMAbマウスおよびKM mice(商標)と呼ぶマウスが含まれ、これらは本明細書中で「ヒトIgマウス」と総称する。 HuMAbマウス(登録商標)(Medarex,Inc.)は、内在性のμおよびκ鎖の遺伝子座を不活性化させる標的化変異と一緒に、再構成されていないヒト重鎖(μおよびγ)ならびにκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードしているヒト免疫グロブリン遺伝子のミニ遺伝子座を含有する(たとえばLonbergら(1994年) Nature 368巻(6474号):856〜859頁を参照)。したがって、マウスは、マウスIgMまたはκの発現の低下を示し、免疫化に応答して、導入されたヒト重鎖および軽鎖の導入遺伝子はクラススイッチおよび体細胞変異を受けて、高親和性のヒトIgGκモノクローナルを生じる(Lonberg, N.ら(1994年)、上記;Lonberg, N. (1994年) Handbook of Experimental Pharmacology 113巻:49〜101頁、Lonberg, N.およびHuszar, D. (1995年) Intern. Rev. Immunol. 13巻:65〜93頁、ならびにHarding, F.およびLonberg, N. (1995年) Ann. N.Y. Acad. Sci. 764巻:536〜546頁中に総説)。HuMAbマウスの調製および使用、ならびにそのようなマウスによって保有されるゲノム改変は、そのすべての内容がその全体で本明細書中に具体的に参考として組み込まれている、Taylor, L.ら(1992年) Nucleic Acids Research 20巻:6287〜6295頁、Chen, J.ら(1993年) International Immunology 5巻:647〜656頁、Tuaillonら(1993年) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90巻:3720〜3724頁、Choiら(1993年) Nature Genetics 4巻:117〜123頁、Chen, J.ら(1993年) EMBO J. 12巻:821〜830頁、Tuaillonら(1994年) J. Immunol. 152巻:2912〜2920頁、Taylor, L.ら(1994年) International Immunology 6巻:579〜591頁、およびFishwild, D.ら(1996年) Nature Biotechnology 14巻:845〜851頁中にさらに記載されている。すべてLonbergおよびKayの米国特許第5,545,806号、第5,569,825号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,789,650号、第5,877,397号、第5,661,016号、第5,814,318号、第5,874,299号、および第5,770,429号、Suraniらの米国特許第5,545,807号、すべてLonbergおよびKayのPCT公開WO92/03918号、WO93/12227号、WO94/25585号、WO97/13852号、WO98/24884号およびWO99/45962号、ならびにKormanらのPCT公開WO01/14424号をさらに参照されたい。 別の実施形態では、本発明のヒト抗体を、ヒト重鎖の導入遺伝子およびヒト軽鎖のトランス染色体を保有するマウスなどの、導入遺伝子およびトランス染色体のヒト免疫グロブリン配列を保有するマウスを使用して産生させることができる。本明細書中で「KM mice(商標)」と呼ぶそのようなマウスは、IshidaらのPCT公開WO02/43478号中に詳述されている。 さらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する代替トランスジェニック動物系が当技術分野で利用可能であり、本発明の抗体を産生させるために使用することができる。たとえば、Xenomouse(Abgenix,Inc.)と呼ばれる代替トランスジェニック系を使用することができ、そのようなマウスは、たとえば、Kucherlapatiらの米国特許第5,939,598号、第6,075,181号、第6,114,598号、第6,150,584号および第6,162,963号に記載されている。 さらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する代替トランス染色体動物系が当後術分野で利用可能であり、本発明の抗体を産生させるために使用することができる。たとえば、「TCマウス」と呼ばれる、ヒト重鎖のトランス染色体およびヒト軽鎖のトランス染色体をどちらも保有するマウスを使用することができ、そのようなマウスはTomizukaら(2000年) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97巻:722〜727頁に記載されている。さらに、ヒト重鎖および軽鎖トランス染色体を保有するウシが当技術分野で記載されており(Kuroiwaら(2002年) Nature Biotechnology 20巻:889〜894頁)、本発明の抗体を産生させるために使用することができる。 また、本発明のヒトモノクローナル抗体を、ヒト免疫グロブリン遺伝子のライブラリをスクリーニングするためのファージディスプレイ方法を使用して調製することもできる。ヒト抗体を単離するためのそのようなファージディスプレイ方法は、当技術分野で確立されている。たとえば、Ladnerらの米国特許第5,223,409号、第5,403,484号、および第5,571,698号、Dowerらの米国特許第5,427,908号および第5,580,717号、McCaffertyらの米国特許第5,969,108号および第6,172,197号、ならびにGriffithsらの米国特許第5,885,793号、第6,521,404号、第6,544,731号、第6,555,313号、第6,582,915号および第6,593,081号を参照されたい。 また、本発明のヒトモノクローナル抗体を、免疫化の際にヒト抗体の応答を生じることができるようにヒト免疫細胞が再構成されたSCIDマウスを使用して調製することもできる。そのようなマウスは、たとえば、Wilsonらの米国特許第5,476,996号および第5,698,767号に記載されている。 別の実施形態では、本発明の抗体を、Marks, J.D.ら((1991年). J. Mol. Biol. 222巻、581頁)、Nissim, A.ら((1994年). EMBO J. 13巻、692頁)ならびに米国特許第6,794,132号、第6562341号、第6057098号、第5821047号、および第6512097号に記載のように、周知のファージディスプレイ技法を使用して産生させ得る。 さらなる実施形態では、本発明の抗体を、たとえば、米国特許第6,423,538号、第6,300,065号、第6,696,251号、第6,699,658号に記載のように、酵母細胞表面ディスプレイ技術を使用して見つけ得る。 本発明のヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの作製 本発明のヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを作製するために、免疫化したマウスから脾細胞および/またはリンパ節細胞を単離し、マウス骨髄腫細胞系などの適切な不死化細胞系と融合させることができる。生じるハイブリドーマを、抗原に特異的な抗体の産生についてスクリーニングすることができる。たとえば、免疫化したマウスからの脾臓リンパ球の単一細胞懸濁液を、50%のPEGを用いて1/6の数のP3X63−Ag8.653非分泌マウス骨髄腫細胞(ATCC、CRL1580)と融合させることができる。あるいは、免疫化したマウスからの脾臓リンパ球の単一細胞懸濁液を、CytoPulse大チャンバ細胞融合エレクトロポレーター(CytoPulse Sciences,Inc.、メリーランド州Glen Burnie)を使用した電界に基づく電気融合方法を使用して融合させることができる。細胞を平底マイクロタイタープレート中に約2×10−5個でプレートに入れ、次いで、20%の胎児クローン血清、18%の「653」馴化培地、5%のオリゲン(origen)(IGEN)、4mMのL−グルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、5mMのHEPES、0.055mMの2−メルカプトエタノール、50単位/mlのペニシリン、50mg/mlのストレプトマイシン、50mg/mlのゲンタマイシンおよび1×HAT(Sigma、HATは融合の24時間後に加える)を含有する選択培地中で2週間インキュベートする。約2週間後、HATをHTで置き換えた培地中で細胞を培養することができる。その後、個々のウェルをELISAによってヒトモノクローナルIgMおよびIgG抗体についてスクリーニングすることができる。大規模なハイブリドーマ成長が起こった後、通常は10〜14日後に培地を観察することができる。抗体分泌ハイブリドーマを再度プレートに入れ、再度スクリーニングすることができ、まだヒトIgGについて陽性である場合は、モノクローナル抗体を限界希釈によって少なくとも2倍でサブクローニングすることができる。その後、安定なサブクローンをin vitroで培養して、特徴づけのために少量の抗体を組織培養培地中で産生させることができる。 ヒトモノクローナル抗体を精製するために、選択されたハイブリドーマを、モノクローナル抗体の精製用の2リットルのスピナーフラスコ中で増殖させることができる。上清を濾過および濃縮した後に、プロテインA−セファロース(Pharmacia、ニュージャージー州Piscataway)を用いたアフィニティークロマトグラフィーを行うことができる。溶出されたIgGをゲル電気泳動および高速液体クロマトグラフィーによって確認して、純度を保証することができる。緩衝溶液をPBSに交換することができ、1.43の消光係数を使用したOD280によって濃度を決定することができる。モノクローナル抗体をアリコート分割し、−80℃で保管することができる。 本発明のモノクローナル抗体を産生するトランスフェクトーマの作製 また、本発明の抗体を、たとえば、当技術分野で周知のように組換えDNA技法および遺伝子トランスフェクション方法の組合せを使用して、宿主細胞のトランスフェクトーマ(ハイブリドーマの一種)中で産生させることもできる(たとえばMorrison, S. (1985年) Science 229巻:1202頁)。 たとえば、抗体またはその抗体断片を発現させるために、部分的または完全長の軽鎖および重鎖をコードしているDNAを標準の分子生物学的技法(たとえば、目的の抗体を発現するハイブリドーマを使用したPCR増幅またはcDNAクローニング)によって得ることができ、DNAを、遺伝子が転写および翻訳制御配列と作動可能に連結されるように発現ベクター内に挿入することができる。この文脈では、用語「作動可能に連結されている」とは、ベクター内の転写および翻訳制御配列が抗体遺伝子の転写および翻訳を調節するというその意図する機能を果たすように、抗体遺伝子がベクター内にライゲーションされていることを意味することを意図する。発現ベクターおよび発現制御配列は、使用する発現宿主細胞に適合性があるように選択される。抗体軽鎖遺伝子および抗体重鎖遺伝子を、別々のベクター内に挿入することができ、またはより典型的には、両方の遺伝子が同じ発現ベクター内に挿入される。抗体遺伝子は、標準の方法(たとえば、抗体遺伝子断片およびベクター上の相補的制限部位のライゲーション、または制限部位が存在しない場合は平滑末端ライゲーション)によって発現ベクター内に挿入される。記載した抗体の軽鎖および重鎖可変領域を使用して、任意の抗体アイソタイプの完全長抗体の遺伝子を作製することができ、これは、ベクター内でVHセグメントがCHセグメント(複数可)と作動可能に連結されており、ベクター内でVKセグメントがCLセグメントと作動可能に連結されているように、所望のアイソタイプの重鎖定常および軽鎖定常領域を既にコードしている発現ベクター内に挿入することによる。それに加えてまたは代わって、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることができる。シグナルペプチドがインフレームで抗体鎖遺伝子のアミノ末端と連結されるように、抗体鎖遺伝子をベクター内にクローニングすることができる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種シグナルペプチド(すなわち非免疫グロブリンタンパク質からのシグナルペプチド)であることができる。 抗体鎖遺伝子に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞中での抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を保有する。用語「調節配列」には、抗体鎖遺伝子の転写または翻訳を制御するプロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御要素(たとえばポリアデニル化シグナル)が含まれることを意図する。そのような調節配列は、たとえばGoeddel (Gene Expression Technology. Methods in Enzymology 185巻、Academic Press、カリフォルニア州San Diego(1990年))に記載されている。当業者には、調節配列の選択を含めた発現ベクターの設計は、形質転換させる宿主細胞の選択、所望するタンパク質の発現レベルなどの要因に依存し得ることが理解されよう。哺乳動物宿主細胞発現に好ましい調節配列には、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス(たとえばアデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))およびポリオーマに由来するプロモーターおよび/またはエンハンサーなどの、哺乳動物細胞中で高レベルのタンパク質発現を指示するウイルス要素が含まれる。あるいは、ユビキチンプロモーターまたはβ−グロビンプロモーターなどの非ウイルス調節配列を使用し得る。さらに、調節要素は、SRプロモーター系などの異なる供給源からの配列から構成され、これは、SV40初期プロモーターからの配列およびヒトT細胞白血病ウイルス1型の長末端反復からの配列を含有する(Takebe, Y.ら(1988年) Mol. Cell. Biol. 8巻:466〜472頁)。 抗体鎖遺伝子および調節配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞中でのベクターの複製を調節する配列(たとえば複製起点)および選択マーカー遺伝子などの付加配列を保有し得る。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする(たとえば、すべてAxelらの米国特許第4,399,216号、第4,634,665号および第5,179,017号を参照)。たとえば、典型的には、選択マーカー遺伝子は、G418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を、ベクターが導入された宿主細胞に与える。好ましい選択マーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(dhfr−宿主細胞中でメトトレキサート選択/増幅と共に使用するため)およびneo遺伝子(G418選択のため)が含まれる。 軽鎖および重鎖の発現のために、重鎖および軽鎖をコードしている発現ベクター(複数可)を標準の技法によって宿主細胞内にトランスフェクトする。用語「トランスフェクション」の様々な形態には、外因性DNAを原核生物または真核生物の宿主細胞内に導入するために一般的に使用されている多種多様な技法、たとえば、電気穿孔、カルシウム−リン酸沈降、DEAE−デキストラントランスフェクションなどが包含されることを意図する。理論的には、本発明の抗体を原核生物または真核生物のどちらの宿主細胞中でも発現させることが可能であるが、真核生物細胞、具体的には哺乳動物細胞は、正しく折り畳まれた免疫学的に活性のある抗体をアセンブルおよび分泌する可能性が原核生物細胞よりも高いため、真核生物細胞、最も好ましくは哺乳動物宿主細胞中での抗体の発現が最も好ましい。抗体遺伝子の原核生物発現は、活性抗体を高収率で産生させることに対して効果がないことが報告されている(Boss, M. A.およびWood, C. R. (1985年) Immunology Today 6巻:12〜13頁)。 本発明の組換え抗体を発現させるために好ましい哺乳動物宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(UrlaubおよびChasin、(1980年) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77巻:4216〜4220頁に記載のdhfr−CHO細胞を、たとえばR. J. KaufmanおよびP. A. Sharp (1982年) Mol. Biol. 159巻:601〜621頁に記載のようにDHFR選択マーカーと共に使用することが含まれる)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2細胞が含まれる。具体的には、NSO骨髄腫細胞を用いた使用に関して、別の好ましい発現系は、WO87/04462、WO89/01036号およびEP338,841号に開示されているGS遺伝子発現系である。抗体遺伝子をコードしている組換え発現ベクターを哺乳動物宿主細胞内に導入する場合、抗体は、宿主細胞中での抗体の発現、より好ましくは宿主細胞を増殖させている培養培地内への抗体の分泌を可能にするために十分な一定期間の間、宿主細胞を培養することによって産生される。抗体は、標準のタンパク質精製方法を使用して培養培地から収集することができる。 RTKのIg様ドメインと結合する抗体の特徴づけ 本発明の抗体を、外部ドメイン、たとえばRTKのIg様ドメイン(または本明細書中に記述したコンセンサス配列などの任意の選択された領域)との結合について、たとえば標準のELISAによって試験することができる。手短に述べると、マイクロタイタープレートを、PBS中0.25μg/mlの精製したIg様ドメイン(または好ましい受容体ドメイン)でコーティングし、その後、PBS中の5%のウシ血清アルブミンでブロッキングする。抗体の希釈液(たとえば、免疫化したマウス、たとえば、ヒトKitのD4またはD5ドメインで免疫化したマウスからの血漿の希釈液)をそれぞれのウェルに加え、1〜2時間、37℃でインキュベートする。プレートをPBS/Tweenで洗浄し、その後、アルカリホスファターゼとコンジュゲートさせた二次試薬(たとえば、ヒト抗体には、ヤギ抗ヒトIgGのFcに特異的なポリクローナル試薬)と共に1時間、37℃でインキュベートする。洗浄後、プレートをpNPP基質(1mg/ml)で発色(develop)させ、405〜650のODで分析する。好ましくは、最も高い力価を示す(develop)マウスを融合に使用する。 また、上述のELISAアッセイを使用して、免疫原と陽性の反応性を示すハイブリドーマをスクリーニングすることができる。高いアビディティでたとえばRTKのIg様ドメインと結合するハイブリドーマをサブクローニングし、さらに特徴づける。−140℃で保管する5〜10本のバイアル細胞バンクを作製するため、および抗体を精製するために、親細胞の反応性を保持している(ELISAによる)それぞれのハイブリドーマからの1つのクローンを選択することができる。 抗RTK抗体を精製するために、選択されたハイブリドーマを、モノクローナル抗体の精製用の2リットルのスピナーフラスコ中で増殖させることができる。上清を濾過および濃縮した後に、プロテインA−セファロース(Pharmacia、ニュージャージー州Piscataway)を用いたアフィニティークロマトグラフィーを行うことができる。溶出されたIgGをゲル電気泳動および高速液体クロマトグラフィーによって確認して、純度を保証することができる。緩衝溶液をPBSに交換することができ、1.43の消光係数を使用したOD280によって濃度を決定することができる。モノクローナル抗体をアリコート分割し、−80℃で保管することができる。 選択されたモノクローナル抗体が特有なエピトープと結合するか否かを決定するために、市販の試薬(Pierce、イリノイ州Rockford)を使用してそれぞれの抗体をビオチン化することができる。上述のように、非標識のモノクローナル抗体およびビオチン化したモノクローナル抗体を使用した競合研究を、RTKのIg様ドメイン(たとえば、Kit−D4ドメイン、Kit−D5ドメイン、またはVEGF受容体のD7ドメイン)でコーティングした、RTKでコーティングしたELISAプレートを使用して行うことができる。ビオチン化したmAbの結合は、ストレプトアビジン(strepavidin)−アルカリホスファターゼプローブを用いて検出することができる。 精製した抗体のアイソタイプを決定するために、特定のアイソタイプの抗体に特異的な試薬を使用して、アイソタイプELISAを行うことができる。たとえば、ヒトモノクローナル抗体のアイソタイプを決定するために、マイクロタイタープレートのウェルを、1μg/mlの抗ヒト免疫グロブリンを用いて終夜、4℃でコーティングすることができる。1%のBSAでブロッキングした後、プレートを、1μg/ml以下の試験モノクローナル抗体または精製したアイソタイプ対照と、周囲温度で1〜2時間反応させる。その後、ウェルを、ヒトIgG1またはヒトIgMのどちらかに特異的なアルカリホスファターゼとコンジュゲートさせたプローブと反応させることができる。プレートを上述のように発色させて分析する。 ウエスタンブロッティングによって、抗RTKヒトIgGをRTKのIg様ドメインまたは本明細書中に提示したコンセンサス配列との反応性についてさらに試験することができる。手短に述べると、RTKのIg様ドメイン、たとえばKit RTKのD4もしくはD5ドメインまたはVEGF受容体のD7ドメインを調製し、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動に供することができる。電気泳動後、分離された抗原をニトロセルロース膜に移し、10%のウシ胎仔血清でブロッキングし、試験するモノクローナル抗体でプロービングする。ヒトIgGの結合を、抗ヒトIgGアルカリホスファターゼを使用して検出し、BCIP/NBT基質錠剤(Sigma Chem.Co.、モンタナ州St.Louis)を用いて発色させることができる。 エピトープマッピングを用いて、本発明の抗体またはその抗原結合断片の結合部位を決定し得る。コンフォメーションエピトープのマッピングをさらに可能にするいくつかの方法が利用可能である。たとえば、Timmermanら(Mol Divers. 2004年、8巻(2号):61〜77頁)に開示されている方法を使用し得る。Timmermanらは、2つの新規技法であるDomain ScanおよびMatrix Scanを使用して不連続/コンフォメーションエピトープのマッピングに成功することができた。Ansongら(J Thromb Haemost. 2006年. 4巻(4号):842〜7頁)に開示されている技法も使用し得る。Ansongらは、親和性指向質量分析(affinity directed mass spectrometry)を使用して、抗体R8B12によって認識される不連続エピトープをマッピングした。さらに、タンパク質断層撮影(Protein Tomography)などのイメージング技法を使用して、標的RTKと結合する抗体またはペプチドを可視化し得る。タンパク質断層撮影は、以前に、分子相互作用についての識見を得るため、および、阻害性抗体が、EGFRのドメインIIIと結合し、それによってEGFRを柔軟性のない不活性のコンフォメーションに固定することによって作用したことを示すために、使用されている(Lammertsら、Proc Natl Acad Sci U S A. 2008年.105巻(16号):6109〜14頁)。また、部位特異的変異誘発などのより伝統的な方法も、不連続エピトープをマッピングするために適用し得る。不連続エピトープに参加すると考えられているアミノ酸領域を選択的に変異させ、本発明の抗体またはその抗原結合断片との結合についてアッセイし得る。どちらかの領域が変異している場合に抗体が結合できないことは、結合が両方のアミノ酸セグメントに依存していることを示している場合がある。上述のように、一部の直鎖状エピトープは、本発明の部分と結合するために存在していなければならない特定の三次元構造によって特徴づけられている。そのようなエピトープを、RTKがそのネイティブまたは折り畳まれた状態にある場合での抗体(または別の部分)の結合をアッセイし、RTKが変性されている場合での結合を再度アッセイすることによって、発見し得る。結合が折り畳まれた状態でのみ起こるという観察は、エピトープが、特定の折り畳まれた構造によって特徴づけられる直鎖状エピトープ、または折り畳まれたタンパク質中でのみ存在する不連続エピトープのどちらかであることを示す。 本明細書中に記載の活性アッセイに加えて、タンパク質断層撮影を使用して、本発明の抗体またはその抗原結合断片が受容体チロシンキナーゼと結合して不活性化させることができるか否かを決定し得る。結合の相互作用の可視化は、抗体の結合が、細胞表面境界領域での2つの外部ドメインの配置に影響を与え得ること、または受容体チロシンキナーゼ中のコンフォメーション変化を変更もしくは妨げ得ることを示し得る。 II.ヒト受容体チロシンキナーゼのIg様ドメインまたはヒンジ領域と結合する小分子 本発明の別の態様では、ヒト受容体チロシンキナーゼの外部ドメイン、たとえばIg様ドメインまたはヒンジ領域と結合する部分は、小分子である。 本発明の小分子は、特定の機能的特長または特性によって特徴づけられている。たとえば、小分子は、RTKのIg様ドメイン、たとえば、Kit RTKのD4もしくはD5ドメインまたはVEGF受容体のD7ドメイン、あるいはRTKのヒンジ領域、たとえば、Kit RTKのD3−D4またはD4−D5ヒンジ領域と結合する。好ましい実施形態では、小分子インヒビターとD3−D4またはD4−D5ヒンジ領域との結合は、膜近位のD4およびD5ドメインがトランス自己リン酸化およびチロシンキナーゼドメインの活性化、次いで下流のシグナル伝達経路のリクルートおよび活性化を可能にする距離および配向(位置)になることを可能にする移動を妨げる。一部の実施形態では、小分子の結合は、受容体チロシンキナーゼの外部ドメインが二量体化することを可能にするが、2つの単量体のIg様ドメイン(たとえば、III型受容体チロシンキナーゼのD4−D4もしくはD5−D5ドメインまたはV型受容体チロシンキナーゼのD7−D7ドメイン)間の配置、配向および/または距離に影響を与え、それによって受容体チロシンキナーゼの活性を阻害する場合がある。言い換えれば、部分または小分子は、受容体チロシンキナーゼの外部ドメインの、リガンド誘導性の二量体化を可能にするが、細胞表面境界領域での2つの外部ドメインの配置に影響を与え、それによって受容体チロシンキナーゼの活性を阻害する(たとえば、受容体の内在化を阻害する、および/または受容体のチロシン自己リン酸化を阻害する、および/または下流のシグナル伝達経路を活性化させる受容体の能力を阻害する)場合がある。 用語「小分子化合物」、「小分子薬」、「小分子」、または「小分子インヒビター」は、本明細書中で互換性があるように使用され、RTKに対する効果、およびRTK、たとえばKit RTKまたはVEGF受容体の二量体化または活性を阻害するその能力についてスクリーニングした本発明の化合物をいう。これらの化合物は、PubChemデータベース(pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/)、Molecular Libraries Screening Center Network(MLSCN)データベースにおける化合物、関連するデータベースにおける化合物、またはその誘導体および/もしくは機能的類似体を含んでいてもよい。 本明細書において使用されるように、「類似体」または「機能的類似体」は、親化合物に構造的に類似しているが、組成がわずかに異なる(たとえば、1つまたは複数の原子または官能基が追加されている、除去されている、または修飾されている)化学化合物または小分子インヒビターを指す。類似体は、もとの化合物と異なる化学的または物理的特性を有していても、または有していなくてもよく、改善された生物学的および/または化学的活性を有していても、または有していなくてもよい。たとえば、類似体は、より疎水性であってもよく、またはそれは、親化合物と比較して、改変された活性(増加した、減少した、もしくは親化合物と同一の)を有していてもよい。類似体は、もとの化合物の、天然に存在するかまたは天然に存在しない(たとえば組換え)バリアントであってもよい。他のタイプの類似体は、異性体(鏡像異性体、ジアステレオマー、およびその他同種のもの)および化合物の他のタイプのキラルバリアント、ならびに構造異性体を含む。類似体は、直線状化合物の分岐バリアントまたは環状バリアントであってもよい。たとえば、直線状化合物は、ある種の望ましい特性を与える(たとえば、親水性または生物学的利用能を改善する)ように分岐されたかまたは他の場合には置換された類似体を有していてもよい。 本明細書において使用されるように、「誘導体」は、親化合物に構造的に類似しており(実際にまたは理論上)、その親化合物から誘導可能である、化学化合物または小分子インヒビターの化学的または生物学的修飾バージョンを指す。親化合物は、「誘導体」を生成するための出発物質であり得、それに対して、親化合物が、「類似体」または「機能的類似体」を生成するための出発物質として必ずしも使用されなくてもよいという点で、「誘導体」は、「類似体」または「機能的類似体」と異なる。誘導体は、親化合物と異なる化学的または物理的特性を有していても、または有していなくてもよい。たとえば、誘導体は、より親水性であってもよく、またはそれは、親化合物と比較して、改変された反応性を有していてもよい。誘導体化(つまり化学的または他の手段による修飾)は、分子内での1つまたは複数の部分の置換(たとえば官能基における変化)を含んでいてもよい。たとえば、水素は、フッ素もしくは塩素などのようなハロゲンと置換されてもよく、またはヒドロキシル基(−−OH)は、カルボン酸部分(−−COOH)と交換されてもよい。用語「誘導体」はまた、コンジュゲートおよび親化合物のプロドラッグ(つまり、生理学的条件下でもとの化合物に変換することができる化学的に修飾された誘導体)をも含む。たとえば、プロドラッグは、活性剤の不活性な形態であってもよい。生理学的条件下で、プロドラッグは、化合物の活性形態に変換されてもよい。プロドラッグは、たとえば、窒素原子上の1つまたは2つの水素原子を、アシル基(アシルプロドラッグ)またはカルバメート基(カルバメートプロドラッグ)と交換することによって形成されてもよい。プロドラッグに関するより詳細な情報は、たとえば、Fleisherら、Advanced Drug Delivery Reviews 19巻(1996年)115頁;Design of Prodrugs、H. Bundgaard(編)、Elsevier、1985年;およびH. Bundgaard、Drugs of the Future 16巻(1991年)443頁において見つけられる。用語「誘導体」はまた、すべての溶媒化合物、たとえば水和物または付加物(たとえばアルコールを用いた付加物)、活性代謝物、および親化合物の塩を記載するために使用される。調製されてもよい塩のタイプは、化合物内の部分の性質に依存する。たとえば、カルボン酸基などのような酸性基は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩(たとえばナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、および生理学的に許容できる4級アンモニウムイオンとの塩、およびアンモニアおよび生理学的に許容できる有機アミン(トリエチルアミン、エタノールアミン、またはトリス−(2−ヒドロキシエチル)アミンなど)との酸付加塩)を形成することができる。塩基性基は、たとえば、塩酸(「HCl」)、硫酸、もしくはリン酸などのような無機酸と、または酢酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、メタンスルホン酸、もしくはp−トルエンスルホン酸などのような有機カルボン酸およびスルホン酸と酸付加塩を形成することができる。塩基性窒素原子に加えてのカルボキシル基などのような、塩基性基および酸性基を同時に含有する化合物は、両性イオンとして存在することができる。塩は、たとえば、陽イオン交換または陰イオン交換によって、溶媒もしくは希釈剤中のまたは他の塩由来の無機または有機酸または塩基と化合物を組み合わせることによって、当業者らに公知の通常の方法によって得ることができる。 小分子は、1200以下または1000以下または900以下または800以下または700以下または600以下または500以下または400以下または300以下または200以下または100以下または50以下または25以下または10以下の分子量を有することが公知である。 本発明の小分子インヒビターは、RTKの外部ドメイン、たとえばIg様ドメインまたはヒンジ領域と結合するように選択または設計される。一部の実施形態では、小分子インヒビターは、ヒトKit、ヒトVEGF受容体またはPDGFRのIg様ドメインまたはヒンジ領域、たとえば、ヒトKit受容体のD4もしくはD5ドメインまたはD3−D4および/もしくはD4−D5ヒンジ領域と結合し、それによって二量体化して活性となる、たとえば、自己リン酸化して細胞内シグナル伝達経路を活性化する、受容体の能力に拮抗するように選択または設計される。他の実施形態では、小分子インヒビターは、Kit受容体またはVEGF受容体のドメインと相同性を共有するドメインと結合するように選択される。たとえば、本発明の小分子は、RTKのIg様ドメイン、たとえばKitのD4もしくはD5ドメインまたはVEGF受容体のD7ドメイン、あるいはKitまたはPDGFR受容体のRTKのヒンジ領域、たとえばD3−D4またはD4−D5ヒンジ領域と少なくとも50%同一、少なくとも60%同一、少なくとも70%同一、少なくとも80%同一、少なくとも90%同一、または少なくとも95%もしくは99%同一であるドメインに向けられていてよい。そのような小分子は、たとえばKitまたはPDGF受容体のD4、D5もしくはD7ドメインまたはD3−D4および/もしくはD4−D5ヒンジ領域と機能的に類似のタンパク質ドメイン(場合によってはKit、VEGF受容体および他のRTK中の)と結合することができるであろう。 また、本発明の小分子インヒビターは、RTK、たとえばヒトVEGF受容体またはヒトIII型RTKのIg様ドメインまたはヒンジ領域に由来する特定のモチーフまたはコンセンサス配列とも結合して、小分子インヒビターがRTKファミリーのメンバー、たとえばヒトIII型RTKファミリーのメンバー間で共有されているドメインと特異的に結合することを可能にし得る。 具体的な一実施形態では、本発明の小分子は、以下のD4相互作用部位のコンセンサス配列と結合する:LX1RX2X3X4X5X6X7G[式中、Lはロイシンであり、Rはアルギニンであり、Gはグリシンであり、X1、X2、X3、X4、X5、X6およびX7は任意のアミノ酸である]。具体的な実施形態では、X1は、スレオニン、イソロイシン、バリン、プロリン、アスパラギン、またはリシンからなる群より選択され、X2は、ロイシン、バリン、アラニン、およびメチオニンからなる群より選択され、X3は、リシン、ヒスチジン、アスパラギン、およびアルギニンからなる群より選択され、X4は、グリシン、バリン、アラニン、グルタミン酸、プロリン、およびメチオニンからなる群より選択され、X5は、スレオニン、セリン、グルタミン酸、アラニン、グルタミン、およびアスパラギン酸からなる群より選択され、X6は、グルタミン酸、アスパラギン酸、およびグルタミンからなる群より選択され、X7は、グリシン、セリン、アラニン、リシン、アルギニン、グルタミンおよびスレオニンからなる群より選択される。 別の実施形態では、本発明の小分子は、VEGF受容体ファミリーのメンバーのD7ドメインの以下のコンセンサス配列と結合する:IX1RVX2X3EDX4G[式中、Iはイソロイシンであり、Rはアルギニンであり、Eはグルタミン酸であり、Dはアスパラギン酸であり、Gはグリシンであり、X1、X2、X3およびX4は任意のアミノ酸である]。具体的な実施形態では、X1は、グルタミン酸、アルギニン、およびグルタミンからなる群より選択され、X2は、アルギニンおよびスレオニンからなる群より選択され、X3は、グルタミン酸およびリシンからなる群より選択され、X4は、グルタミン酸およびアラニンからなる群より選択される(配列番号1)。 別の実施形態では、本発明の部分(たとえば、小分子)は、VEGF受容体のD7ドメインの以下のコンセンサス配列と結合する:L/I X1 R Φ X2 X3 X4 D/E X5 G(配列番号158)[式中、Lはロイシンであり、Iはイソロイシンであり、Rはアルギニンであり、Φは疎水性アミノ酸であり、Dはアスパラギン酸であり、Eはグルタミン酸であり、Gはグリシンであり、X1、X2、X3、X4およびX5は任意のアミノ酸である]。具体的な実施形態では、Φはバリンであり、X1は、アルギニン、グルタミン、グルタミン酸およびアスパラギン酸からなる群より選択され、X2は、アルギニン、リシンおよびスレオニンからなる群より選択され、X3は、リシン、グルタミン酸、グルタミンおよびバリンからなる群より選択され、X4は、グルタミン酸およびバリンからなる群より選択され、X5は、グルタミン酸、グリシン、セリンおよびグルタミンからなる群より選択される。 他の実施形態では、小分子インヒビターは、タンパク質の三次元構造を表すタンパク質モチーフまたはコンセンサス配列と結合する。そのようなモチーフまたはコンセンサス配列は、近接した一連のアミノ酸ではなく、RTKの三次元の折り畳み(すなわち構造モチーフ)から生じる非直鎖状アミノ酸の構成を表す。そのようなモチーフの例は、Kit受容体のD3−D4および/またはD4−D5ヒンジ領域に基づいて設計されているモチーフである。そのようなモチーフおよびコンセンサス配列は、抗体に関してセクションIに記述した方法に従って設計し得る。 重要なことに、本発明の小分子インヒビターは、RTKのリガンド結合部位、たとえばKit受容体のSCF結合部位と結合しない。言い換えれば、小分子インヒビターは、リガンド結合に関与するRTKのIg様ドメインと結合しない。 別の実施形態では、本発明の小分子インヒビターはVEGF受容体上の近接エピトープと結合する。一実施形態では、近接エピトープは、VEGF受容体のD7ドメイン中の2つ以上の残基から構成される。別の実施形態では、近接エピトープは、VEGFR1の672VAISSS677、VEGFR1の678TTLDCHA684、VEGFR1の685NGVPEPQ691、VEGFR1の700KIQQEPG706、VEGFR1の707IILG710、VEGFR1の711PGS713、VEGFR1の714STLFI718、VEGFR1の719ERVTEEDEGV728、VEGFR3の689VNVSDS694、VEGFR3の695LEMQCLV701、VEGFR3の702AGAHAPS708、VEGFR3の717LLEEKSG723、VEGFR3の724VDLA727、VEGFR3の728DSN730、VEGFR3の731QKLSI735、およびVEGFR3の736QRVREEDAGR745、VEGFR2の678TSIGES683、VEGFR2の684IEVSCTA690、VEGFR2の691SGNPPPQ697、VEGFR2の706TLVEDSG712、VEGFR2の713IVLK716、VEGFR2の717DGN719、VEGFR2の720RNLTI724およびVEGFR2の725RRVRKEDEGL734からなる群より選択されるエピトープである。 さらなる実施形態では、本発明の小分子インヒビターは、RTKの変異体の外部ドメイン、たとえば変異体のIg様ドメインまたは変異体のヒンジ領域と特異的に結合するように選択または設計されている。好ましい実施形態では、変異RTKは腫瘍形成性または腫瘍発生性の変異体である。具体的な一実施形態では、小分子インヒビターは、腫瘍発生性Kit受容体変異体と結合するように選択または設計される。本発明の小分子によって標的化され得るKit受容体変異体は、以下のアミノ酸のうちの1つまたは複数中に変異を有するKit受容体である:Thr417、Tyr418、Asp419、Leu421、Arg420、Tyr503、またはAla502。当業者には、本発明の方法がKit中の他の変異または他のRTK中の変異に適用可能であることが理解されよう。変異RTKを標的化することの1つの利点は、治療的小分子が、変異を含有する細胞上のRTKのみと結合して、健康な細胞にはほとんどまたは完全に影響を与えない可能性があることである。したがって、変異が腫瘍形成性である事例では、腫瘍細胞のみが治療のために標的化され、副作用および必要用量が潜在的に低下する。 一部の実施形態では、小分子は、ヒトKit受容体の特定の配列、たとえば、ヒトKit受容体の残基309〜413、残基410〜519、381Argおよび386Glu、または418Tyrおよび505Asnと結合する。一部の実施形態では、小分子は、ヒトVEGF受容体の特定の配列、たとえば、VEGFR1の残基718〜727、VEGFR1のArg720およびAsp725、VEGFR2の残基724〜733、VEGFR2のArg726およびAsp731、VEGFR3の残基735〜744、またはVEGFR3の残基Arg737およびAsp742と結合する。 好ましい実施形態では、本発明の小分子は、表4(以下)中に記載の小さな空洞またはポケットを構成するKit受容体中の1つまたは複数の残基と結合し得る。たとえば、本発明の小分子は、Kit受容体のD3−D4ヒンジ領域中の以下の残基のうちの1つまたは複数と結合し得る:D3ドメインからのK218、S220、Y221、L222およびD4ドメインからのF340、P341、K342、N367、E368、S369、N370、I371、Y373。また、本発明の小分子は、Kit受容体のD4ドメイン中で凹表面を構成する以下の残基のうちの1つまたは複数とも結合し得る:Y350、R353、F355、K358、L379、T380、R381、L382、E386およびT390。別の実施形態では、本発明の小分子は、Kit受容体のD2−D3ヒンジ領域中でポケットを形成する以下の残基のうちの1つまたは複数と結合し得る:D2ドメインからのY125、G126、H180、R181、K203、V204、R205、P206およびF208ならびにD3ドメインからのV238、S239、S240、S241、H263、G265、D266、F267、N268およびY269。 したがって、一部の実施形態では、本発明の小分子は、近接したアミノ酸残基または近接していないアミノ酸残基と結合して、チロシンキナーゼの活性化を可能にする距離および配向でのRTKの膜近位領域の配置に必要な挙動を妨げる分子ウェッジとして機能し得る。また、本発明の小分子は、ホモタイプのD4もしくはD5受容体の相互作用を妨げるか、またはリガンド−受容体の相互作用部位を不安定化するようにも作用し得る。一部の好ましい実施形態では、本発明の小分子は、Kit受容体上の以下の残基のうちの1つまたは複数と結合し得る:Y125、G126、H180、R181、K203、V204、R205、P206、P206、F208、K127、A207、V238、S239、S240、S241、H263、G265、D266、F267、N268、Y269、T295、L222、L222、L223、E306、V308、R224、V308、K310、K218、A219、S220、K218、A220、Y221、A339、D327、D398、E338、E368、E386、F312、F324、F340、F355、G311、G384、G387、G388、I371、K342、K358、L382、L379、N326、N367、N370、N410、P341、S369、T385、V325、V407、V409、Y373、Y350、Y408、T380、T390、R381、R353、T411、K412、E414、K471、F433、G470、L472、V497、F469、A431、またはG432。当業者には、一部の実施形態では、本発明の小分子は、他のIII型RTK中の対応する残基、たとえば、類似のポケットもしくは空洞を形成する残基または構造アラインメントもしくは配列アラインメントによって同じ位置にあるものに対して容易に標的化し得ることが理解されよう。 具体的な実施形態では、本発明の小分子は、III型RTKまたはV型RTK上のコンフォメーションエピトープまたは不連続エピトープと結合する。コンフォメーションまたは不連続エピトープは、III型RTK、たとえばヒトKit受容体またはPDGF受容体からのD3、D4、もしくはD5ドメインまたはD4−D5もしくはD3−D4ヒンジ領域からの2つ以上の残基、あるいはVEGF受容体のD7ドメインからの2つ以上の残基から構成され得る。たとえば、コンフォメーションまたは不連続エピトープは、以下の表4中に記載の残基のうちの2つ以上から構成され得る。特定の実施形態では、本発明の小分子は、Y125、H180、R181、K203、V204、R205、P206、V238、S239、S240、H263、G265、D266、F267、N268、およびY269からなる群より選択される2つ以上のアミノ酸から構成されるコンフォメーションエピトープと結合する。類似の実施形態では、本発明の小分子は、以下のアミノ酸の群のうちの1つから選択される、2つ以上のアミノ酸から構成されるコンフォメーションエピトープと結合し得る:P206、F208、V238、およびS239;K127、A207、F208、およびT295;L222、A339、F340、K342、E368、S369、N370、I371、およびY373;L222、L223、E306、V308、F312、E338、F340、およびI371;R224、V308、K310、G311、F340、P341、およびD398;K218、A219、S220、N367、E368、およびS369;K218、A220、E368、およびS369;G384、T385、T411、K412、E414、およびK471;Y408、F433、G470、K471、およびL472;F324、V325、N326、およびN410;D327、N410、T411、K412、およびV497;G384、G387、V409、およびK471;L382、G387、V407、およびV409;Y125、G126、H180、R181、K203、V204、R205、P206、F208、V238、S239、S240、S241、H263、G265、D266、F267、N268、およびY269;P206、F208、V238、およびS239;K218、S220、Y221、L222、F340、P341、K342、N367、E368、S369、N370、I371、およびY373;G384、G387、G388、Y408、V409、T411、F433、F469、G470、およびK471;D327、T411、K412、E414、A431、G432、およびK471;Y350、F355、K358、L379、T380、R381、L382、E386、およびT390;Y350、R353、およびF355。上述のように、本発明の小分子は、表4中に同定したポケットもしくは空洞を形成するすべてのアミノ酸残基と結合し得るか、または、これらはポケットもしくは空洞を形成する残基のサブセットと結合し得る。特定の実施形態では、エピトープ、たとえばコンフォメーションエピトープと結合する本発明の小分子に言及した場合、その意図は、小分子がエピトープを構成する具体的な残基(たとえば表4中に同定したポケットまたは空洞)のみと結合し、受容体の直鎖状アミノ酸配列中の他の残基とは結合しないことであることを理解されたい。 さらなる実施形態では、本発明の小分子は、表5中に記載のペプチドから選択される2つ以上のアミノ酸残基から構成されるコンフォメーションエピトープと結合する。具体的な実施形態では、コンフォメーションエピトープは、第1のペプチドから選択される1つまたは複数のアミノ酸残基および第2のペプチドから選択される1つまたは複数のアミノ酸残基から構成され、第1および第2のペプチドは、表5中に記載のペプチドの群から選択される。したがって、本発明の小分子はコンフォメーションエピトープと結合し、第1および第2のペプチド群は以下のとおりである:Ala219−Leu222およびThr304−Val308;Asp309−Gly311およびArg224−Gly226;Thr303−Glu306およびAla219−Leu222;Asn367−Asn370およびSer217−Tyr221;Ala339−Pro343およびAsn396−Val399;Ala339−Pro343およびGlu368−Arg372;Lys358−Tyr362およびVal374−His378;Asp357−Glu360およびLeu377−Thr380;Met351−Glu360およびHis378−Thr389;His378−Thr389およびVal323−Asp332;Val409−Ile415およびAla493−Thr500;Val409−Ile415およびAla431−Thr437;Val409−Ile415およびPhe469−Val473;Val409−Ile415およびVal325−Asn330;Val409−Ile415およびArg381−Gly387;Gly466−Leu472およびGly384−Gly388;Val325−Glu329およびTyr494−Lys499;Thr411−leu416およびVal497−Ala502;Ile415−Leu421およびAla502−Ala507;Ala502−Ala507およびLys484−Thr488;およびAla502−Ala507およびGly445−Cys450。本発明の小分子は、前述の第1および第2のペプチド群を形成するすべてのアミノ酸残基と結合し得るか、または、これらは第1および第2のペプチド群を形成する残基のサブセットと結合し得る。特定の実施形態では、エピトープ、たとえばコンフォメーションエピトープと結合する本発明の小分子に言及した場合、その意図は、小分子がエピトープを構成する具体的な残基(たとえば表5中に同定した具体的なペプチド)のみと結合し、受容体の直鎖状アミノ酸配列中の他の残基とは結合しないことであることを理解されたい。 別の実施形態では、本発明の小分子は、E33、P34、D72、E76、N77、K78、Q79、K158、D159、N250、S251、Q252、T253、K254、L255、N260、W262、H264、G265、E344、N352、R353、F355、T356、D357、Y362、S365、E366、N367、N370、およびG466からなる群より選択される2つ以上のアミノ酸から構成されるコンフォメーションまたは不連続エピトープと結合する。 別の実施形態では、本発明の小分子は、ヒトPDGFRβのアミノ酸残基385Argおよび390Glu、またはPDGFRα中の対応する残基と結合する。ヒトPDGFRβの残基385Argおよび390Gluは、Kit受容体の残基381Argおよび386Gluに類似しており、PDGFRβのホモタイプのD4−D4相互作用を媒介する。本発明の小分子は、チロシンキナーゼの活性化に必須の距離および配向での細胞質ドメインの配置に必須の、III型RTKの膜近位領域間の重要なホモタイプ相互作用(ヒトPDGFRβの385Argと390Gluとの間に形成された塩橋など)を妨げることによって、受容体の活性化に対するその阻害効果を発揮し得る。本明細書中に記述した実験は、ホモタイプのD4−D4相互作用はPDGFRβの二量体化に必要ではなく、PDGFRβの二量体化は受容体の活性化に必要であるが十分ではないことを示している。したがって、本発明の小分子は、PDGFRβの二量体化を可能にする一方で、活性化を妨げ得る。構造に基づく配列アラインメントにより、EFループの大きさ、ならびにD4−D4境界領域を含む重要なアミノ酸は、Kit、PDGFRα、PDGFRβ、およびCSF1R中で保存されていることが示されている。したがって、一部の実施形態では、本発明の小分子は、III型RTKのD4またはD5ドメインの保存された領域に対して標的化し得る。 好ましい実施形態では、本発明の小分子は、KitのIg様ドメインまたはヒンジ領域(たとえば、Kit受容体のD3−D4および/もしくはD4−D5ヒンジ領域またはD4−D4および/もしくはD5−D5境界領域結合部位)と、高い親和性、たとえば、1×10−7M以下のKD、5×10−8M以下のKD、1×10−8M以下のKD、5×10−9M以下のKD、または1×10−8M〜1×10−10M以下のKDの親和性で結合する。 本発明の小分子インヒビターは、当技術分野で公知のいくつかの方法によって作製または選択し得る。スクリーニング手順を使用して、RTKの所望のIg様ドメインまたはヒンジ領域、たとえばヒトKit RTKのD4もしくはD5ドメインと結合するライブラリからの小分子を同定することができる。1つの方法であるChemetics(登録商標)(Nuevolutions)では、ライブラリ中のそれぞれの分子に対するDNAタグを使用して選択を容易にする。Chemetics(登録商標)システムは、数百万個の化合物を標的結合についてスクリーニングすることを可能にする。小分子ライブラリおよびタグに基づくスクリーニングに関連する特許は、その全体が本明細書中に参考として組み込まれている米国特許出願第20070026397号、第20060292603号、第20060269920号、第20060246450号、第20060234231号、第20060099592号、第20040049008号、第20030143561号である。 RTKの所望のIg様ドメインまたはヒンジ領域、たとえば、ヒトKit RTKのD4もしくはD5ドメインまたはVEGF受容体のD7ドメインと結合するライブラリからの小分子を同定するために使用し得る他の周知の方法には、ライブラリメンバーが同定用標識でタグ付けされているライブラリを利用する方法、すなわち、標識の同定からタグ付けされた分子の構造が示されるように、ライブラリ中に存在するそれぞれの標識がライブラリ中に存在する個々の化合物構造と関連している方法が含まれる。タグを付けられたライブラリーに対する1つのアプローチは、たとえば、それぞれの全内容が、それらの全体が参照によって本明細書において組み込まれるPCT公開WO 2005/058479 A2(Direct Select(商標)技術)ならびに米国特許第5,573,905号;第5,708,153号;第5,723,598号、第6,060,596号、PCT出願公開WO 93/06121;WO 93/20242;WO 94/13623;WO 00/23458;WO 02/074929、およびWO 02/103008ならびにBrennerおよびLerner(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89巻、5381〜5383頁(1992年));NielsenおよびJanda(Methods: A Companion to Methods in Enzymology 6巻、361〜371頁(1994年));およびNielsen、Brenner、およびJanda(J. Am. Chem. Soc. 115巻、9812〜9813頁(1993年))において記載されるように、オリゴヌクレオチドタグを利用する。そのようなタグは、たとえば、タグの多くのコピーを産生し、配列決定によってタグを同定するために、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して増幅することができる。次いで、タグの配列は、結合分子の構造を同定する(これを、純粋な形態で合成し、活性について試験することができる)。 コンビナトリアルケミカルライブラリーの調製およびスクリーニングは、当業者らに周知である。本発明の部分を同定するために使用されてもよいこのようなコンビナトリアルケミカルライブラリーは、ペプチドライブラリーを含むが、これらに限定されない(たとえば、米国特許第5,010,175号、Furka、Int. J. Pept. Prot. Res. 37巻:487 493頁(1991年)、およびHoughtonら、Nature 354巻:84 88頁(1991年)を参照されたい)。化学的多様性ライブラリーを生成するための他の化学的物質は、当技術分野において周知であり、使用することができる。そのような化学的物質は、ペプトイド(たとえばPCT公開WO 91/19735)、コードペプチド(たとえばPCT公開WO 93/20242)、ランダムバイオオリゴマー(たとえばPCT公開WO 92/00091)、ベンゾジアゼピン(たとえば米国特許第5,288,514号)、ヒダントイン、ベンゾジアゼピン、およびジペプチドなどのようなダイバーソマー(diversomer)(Hobbsら、Proc. Nat. Acad. Sci. USA 90巻:6909 6913頁(1993年))、ビニローグポリペプチド(Hagiharaら、J. Amer. Chem. Soc. 114巻:6568頁(1992年))、グルコース骨格を有する非ペプチド性(nonpeptidal)ペプチド模倣体(Hirschmannら、J. Amer. Chem. Soc. 114巻:9217 9218頁(1992年))、類似有機合成の小さな化合物のライブラリー(Chenら、J. Amer. Chem. Soc. 116巻:2661頁(1994年))、オリゴカルバメート(Choら、Science 261巻:1303頁(1993年))、ならびに/またはペプチジルホスホネート(Campbellら、J. Org. Chem. 59巻:658頁(1994年))、核酸ライブラリー(Ausubel、Berger、およびRussell & Sambrookを参照されたい、すべて前掲)、ペプチド核酸ライブラリー(たとえば米国特許第5,539,083号を参照されたい)、炭水化物ライブラリー(たとえばLiangら、Science 274巻:1520 1522頁(1996年)および米国特許第5,593,853号を参照されたい)、小さな有機分子のライブラリー(たとえば、ベンゾジアゼピン、Baum C&EN、1月18日、33頁(1993年);イソプレノイド、米国特許第5,569,588号;チアゾリジノンおよびメタチアザノン(metathiazanone)、米国特許第5,549,974号;ピロリジン、米国特許第5,525,735号および同第5,519,134号;モルホリノ化合物、米国特許第5,506,337号;ベンゾジアゼピン、米国特許第5,288,514号、ならびにその他同種のものを参照されたい)を含むが、これらに限定されない。先の刊行物はそれぞれ、参照によって本明細書に組み込まれる。公的なデータベース、たとえばPubChem(pubchem.ncbi.nlm.nih.gov)、Zinc(IrwinおよびShoichet(2005年)J. Chem. Inf. Model. 45巻(1号):177〜82頁)、ならびにChemBank(Seilerら(2008年)Nucleic Acids Res. 36巻(Database issue):D351−D359)もまた、利用可能であり、一般に、小分子スクリーニングのために使用される。 コンビナトリアルライブラリーの調製のためのデバイスは、市販で入手可能である(たとえば357 MPS、390 MPS、Advanced Chem Tech、Louisville Ky.、Symphony、Rainin、Woburn、Mass.、433A Applied Biosystems、Foster City、Calif.、9050 Plus、Millipore、Bedford、Mass.を参照されたい)。さらに、多数のコンビナトリアルライブラリーが、それら自体、市販で入手可能である(たとえばComGenex、Princeton、N.J.、Tripos,Inc.、St.Louis、Mo.、3D Pharmaceuticals、Exton、Pa.、Martek Biosciences、Columbia、Md.、などを参照されたい)。さらに、スクリーニング方法は、非常に十分に定義されているので、目的の標的に対する特定の化合物を同定するために専門の会社と契約することは一般的である(たとえばBioFocus DPI(biofocus.com)およびQuantum Lead(q−lead.com))。 当技術分野において周知であり、本発明の方法に適用されてもよい小分子を選択するための他の方法は、それらの全体が全て参照によって本明細書に組み込まれるHuangおよびStuart L. Schreiber(1997年)Proc Natl Acad Sci U S A. 94巻(25号):13396〜13401頁;Hungら(2005年)Science 310巻:670〜674頁;Zhangら(2007年)Proc Natl Acad Sci 104巻:4606〜4611頁;またはGordon(2007年)ACS Chem. Biol. 2巻:9〜16頁において概説される方法のいずれかである。 実験的なスクリーニング方法に加えて、本発明の小分子は、仮想スクリーニング方法を使用して選択されてもよい。仮想スクリーニング技術は、統計分析およびタンパク質ドッキングシミュレーションを使用して、ライブラリー由来のどの小分子が、タンパク質またはその中の特異的なエピトープに結合するかを予測する。最も一般には、仮想スクリーニング方法は、タンパク質の三次元構造をライブラリーにおける小分子の三次元構造と比較する。水素結合、静電力、およびファンデルワールス相互作用を含む、原子の間の結合エネルギーをシミュレートするアルゴリズムを用いることが一般的であるが、タンパク質−分子相互作用をモデル化するための異なる戦略が、使用される。典型的に、仮想スクリーニング方法は、100万を超える化合物のライブラリーをスキャンし、おそらく強力な結合物であろう小分子の短いリストを返すことができる。本発明の小分子を同定するために使用されてもよい技術を詳述する、仮想スクリーニング方法のいくつかの概説が、入手可能である(Engelら(2008年)J. Am. Chem. Soc., 130巻(15号)、5115〜5123頁;McInnes(2007年). Curr Opin Chem Biol. Oct;11巻(5号):494〜502頁;Reddyら(2007年)Curr Protein Pept Sci. 8月;8巻(4号):329〜51頁;MueggeおよびOloff(2006年)Drug Discovery Today, 3巻(4号):405〜411頁;Kitchenら(2004年)Nature Reviews Drug Discovery 3巻、935〜949頁)。小分子スクリーニングのさらなる例は、参照によって本明細書に組み込まれるU.S.2005/0124678において見つけることができる。 本発明の小分子は、下記の表において示される骨格構造のうちの1つを含有してもよい。表中に引用される参考文献は、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。基R1、R2、R3およびR4は、それらが、示される反応に干渉したり、有意に阻害したりするべきでないという点でのみ制限され、水素、アルキル、置換アルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換シクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、置換アリールアルキル、置換ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ハロゲン、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、置換アミノ、および当技術分野において公知の他のものを含むことができる。適した置換基は、アルキル、アルコキシ、チオアルコキシ、ニトロ、ヒドロキシル、スルフヒドリル、アリールオキシ、アリール−S−、ハロゲン、カルボキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、シアノ、シアネート、ニトリル、イソシアネート、チオシアネート、カルバミル、および置換カルバミルを含むが、これらに限定されない。 III.ヒト受容体チロシンキナーゼのIg様ドメインと結合するペプチド性分子 本発明の別の態様では、ヒト受容体チロシンキナーゼの外部ドメイン、たとえばIg様ドメインまたはヒンジ領域と結合する部分は、ペプチド性分子である。 ペプチド性分子は、RTKのIg様ドメインまたはそのようなドメインに由来するコンセンサス配列に基づいて設計されていてよい。 具体的な実施形態では、ペプチド性分子は、以下のD4相互作用部位のコンセンサス配列と結合する:LX1RX2X3X4X5X6X7G[式中、Lはロイシンであり、Rはアルギニンであり、Gはグリシンであり、X1、X2、X3、X4、X5、X6およびX7は任意のアミノ酸である]。具体的な実施形態では、X1は、スレオニン、イソロイシン、バリン、プロリン、アスパラギン、またはリシンからなる群より選択され、X2は、ロイシン、バリン、アラニン、およびメチオニンからなる群より選択され、X3は、リシン、ヒスチジン、アスパラギン、およびアルギニンからなる群より選択され、X4は、グリシン、バリン、アラニン、グルタミン酸、プロリン、およびメチオニンからなる群より選択され、X5は、スレオニン、セリン、グルタミン酸、アラニン、グルタミン、およびアスパラギン酸からなる群より選択され、X6は、グルタミン酸、アスパラギン酸、およびグルタミンからなる群より選択され、X7は、グリシン、セリン、アラニン、リシン、アルギニン、グルタミンおよびスレオニンからなる群より選択される。 したがって、一実施形態では、本発明のペプチド性分子は、前述のコンセンサス配列(LX1RX2X3X4X5X6X7G)[式中、Lはロイシンであり、Rはアルギニンであり、Gはグリシンであり、X1、X2、X3、X4、X5、X6およびX7は任意のアミノ酸である]と適合する配列を含むかまたはそれからなる。具体的な実施形態では、X1は、スレオニン、イソロイシン、バリン、プロリン、アスパラギン、またはリシンからなる群より選択され、X2は、ロイシン、バリン、アラニン、およびメチオニンからなる群より選択され、X3は、リシン、ヒスチジン、アスパラギン、およびアルギニンからなる群より選択され、X4は、グリシン、バリン、アラニン、グルタミン酸、プロリン、およびメチオニンからなる群より選択され、X5は、スレオニン、セリン、グルタミン酸、アラニン、グルタミン、およびアスパラギン酸からなる群より選択され、X6は、グルタミン酸、アスパラギン酸、およびグルタミンからなる群より選択され、X7は、グリシン、セリン、アラニン、リシン、アルギニン、グルタミンおよびスレオニンからなる群より選択される。 別の実施形態では、本発明のペプチド性分子は、VEGF受容体のD7ドメインのコンセンサス配列を含むかまたはそれからなる:L/I X1 R Φ X2 X3 X4 D/E X5 G(配列番号158)[式中、Lはロイシンであり、Iはイソロイシンであり、Rはアルギニンであり、Φは疎水性アミノ酸であり、Dはアスパラギン酸であり、Eはグルタミン酸であり、Gはグリシンであり、X1、X2、X3、X4およびX5は任意のアミノ酸である]。具体的な実施形態では、Φはバリンであり、X1は、アルギニン、グルタミン、グルタミン酸およびアスパラギン酸からなる群より選択され、X2は、アルギニン、リシンおよびスレオニンからなる群より選択され、X3は、リシン、グルタミン酸、グルタミンおよびバリンからなる群より選択され、X4は、グルタミン酸およびバリンからなる群より選択され、X5は、グルタミン酸、グリシン、セリンおよびグルタミンからなる群より選択される。 別の実施形態では、ペプチド性分子は、VEGF受容体ファミリーのメンバーのD7ドメインの以下のコンセンサス配列と結合する:IX1RVX2X3EDX4G[式中、Iはイソロイシンであり、Rはアルギニンであり、Eはグルタミン酸であり、Dはアスパラギン酸であり、Gはグリシンであり、X1、X2、X3およびX4は任意のアミノ酸である]。具体的な実施形態では、X1は、グルタミン酸、アルギニン、およびグルタミンからなる群より選択され、X2は、アルギニンおよびスレオニンからなる群より選択され、X3は、グルタミン酸およびリシンからなる群より選択され、X4は、グルタミン酸およびアラニンからなる群より選択される(配列番号1)。 したがって、一実施形態では、本発明のペプチド性分子は、コンセンサス配列IX1RVX2X3EDX4G[式中、Iはイソロイシンであり、Rはアルギニンであり、Eはグルタミン酸であり、Dはアスパラギン酸であり、Gはグリシンであり、X1、X2、X3およびX4は任意のアミノ酸である]と適合する配列を含むかまたはそれからなる。具体的な実施形態では、X1は、グルタミン酸、アルギニン、およびグルタミンからなる群より選択され、X2は、アルギニンおよびスレオニンからなる群より選択され、X3は、グルタミン酸およびリシンからなる群より選択され、X4は、グルタミン酸およびアラニンからなる群より選択される(配列番号1)。 一実施形態では、本発明のペプチド性部分は、タンパク質ドメイン全体、たとえばD4またはD5ドメイン、たとえばヒトKitのD4ドメイン(残基309〜413)またはD5ドメイン(残基410〜519)を含み得る。さらなる例として、本発明のペプチド性部分は、V型RTKのD7ドメイン(またはその断片)、たとえば、VEGFRのD7ドメイン(VEGFR1の残基718〜727、VEGFR2の残基724〜733またはVEGFR3の残基735〜744)を含み得る。そのようなペプチド性分子は、RTKと結合し、RTKの活性化を妨げることによって拮抗剤として作用する(以下の実施例16を参照)。一部の実施形態では、本発明のペプチド性部分は、III型RTKなどのRTKのドメインとわずか50%の同一性を有していればよく、たとえば、本発明のペプチド性部分は、RTKのD4、D5またはD7ドメインと少なくとも50%同一、少なくとも60%同一、少なくとも70%同一、少なくとも80%同一、少なくとも90%同一、または少なくとも95%、96%、97%、もしくは98%同一であり得る。具体的な実施形態では、本発明のペプチド性部分は、ヒトKit RTKのアミノ酸残基309〜413、VEGFR1のアミノ酸残基718〜727、VEGFR2のアミノ酸残基724〜733、またはVEGFR3のアミノ酸残基735〜744と少なくとも80%同一、少なくとも90%同一、または少なくとも95%、96%、97%、もしくは98%同一である。類似の実施形態では、本発明のペプチド性部分は、ヒトKit RTKのアミノ酸残基410〜519、VEGFR1のアミノ酸残基718〜727、VEGFR2のアミノ酸残基724〜733、またはVEGFR3のアミノ酸残基735〜744と少なくとも80%同一、少なくとも90%同一、または少なくとも95%、96%、97%、もしくは98%同一である。 一部の実施形態では、本発明のペプチド性部分は、ヒトKit受容体の特定の配列、たとえば、ヒトKit受容体の残基309〜413、残基410〜519、381Argおよび386Glu、または418Tyrおよび505Asnと結合するかまたはそれを含む。他の実施形態では、本発明のペプチド性部分は、VEGF受容体の特定の配列、たとえば、VEGFR1の残基718〜727、VEGFR1のArg720およびAsp725、VEGFR2の残基724〜733、VEGFR2のArg726およびAsp731、VEGFR3の残基735〜744、またはVEGFR3のArg737およびAsp742と結合するかまたはそれを含む。 好ましい実施形態では、本発明のペプチド性部分は、表4(以下)中に記載の小さな空洞またはポケットを構成するKit受容体中の1つまたは複数の残基と結合し得る(またはそれを含み得るかもしくはそれからなり得る)。たとえば、本発明のペプチド性分子は、Kit受容体のD3−D4ヒンジ領域中の以下の残基のうちの1つまたは複数と結合し得る(またはそれを含み得るかもしくはそれからなり得る):D3ドメインからのK218、S220、Y221、L222およびD4ドメインからのF340、P341、K342、N367、E368、S369、N370、I371、Y373。また、本発明のペプチド性分子は、Kit受容体のD4ドメイン中で凹表面を構成する以下の残基のうちの1つまたは複数とも結合し得る(またはそれを含み得るかもしくはそれからなり得る):Y350、R353、F355、K358、L379、T380、R381、L382、E386およびT390。別の実施形態では、本発明のペプチド性分子は、Kit受容体のD2−D3ヒンジ領域中でポケットを形成する以下の残基のうちの1つまたは複数と結合し得る(またはそれを含み得るかもしくはそれからなり得る):D2ドメインからのY125、G126、H180、R181、K203、V204、R205、P206およびF208ならびにD3ドメインからのV238、S239、S240、S241、H263、G265、D266、F267、N268およびY269。 本発明のペプチド性部分は、近接したアミノ酸残基または近接していないアミノ酸残基と結合して、チロシンキナーゼの活性化を可能にする距離および配向でのRTKの膜近位領域の配置に必要な挙動を妨げる分子ウェッジとして機能し得る。また、本発明のペプチド性分子は、ホモタイプのD4、D5もしくはD7受容体の相互作用を妨げるかまたはリガンド−受容体の相互作用部位を不安定化するようにも作用し得る。一部の好ましい実施形態では、本発明のペプチド性分子は、Kit受容体上の以下の残基のうちの1つまたは複数と結合し得る(またはそれを含み得るかもしくはそれからなり得る):Y125、G126、H180、R181、K203、V204、R205、P206、P206、F208、K127、A207、V238、S239、S240、S241、H263、G265、D266、F267、N268、Y269、T295、L222、L222、L223、E306、V308、R224、V308、K310、K218、A219、S220、K218、A220、Y221、A339、D327、D398、E338、E368、E386、F312、F324、F340、F355、G311、G384、G387、G388、I371、K342、K358、L382、L379、N326、N367、N370、N410、P341、S369、T385、V325、V407、V409、Y373、Y350、Y408、T380、T390、R381、R353、T411、K412、E414、K471、F433、G470、L472、V497、F469、A431、またはG432。本発明のペプチド性部分は、表4中に同定したポケットまたは空洞を形成するすべてのアミノ酸残基と結合し得(またはそれを含み得るかもしくはそれからなり得る)、あるいは、これらは、ポケットまたは空洞を形成する残基のサブセットと結合し得る(またはそれを含み得るかもしくはそれからなり得る)。当業者には、一部の実施形態では、本発明のペプチド性分子は、他のIII型RTK中の対応する残基、たとえば、類似のポケットもしくは空洞を形成する残基または構造アラインメントもしくは配列アラインメントによって同じ位置にあるものに対して容易に標的化し得ることが理解されよう。 具体的な実施形態では、本発明のペプチド性分子は、III型RTKまたはV型RTK上のコンフォメーションエピトープまたは不連続エピトープと結合する。コンフォメーションまたは不連続エピトープは、III型RTK、たとえばヒトKit受容体もしくはPDGF受容体、またはV型RTK、たとえばヒトVEGF受容体からの、D3、D4、D5もしくはD7ドメイン、またはD4−D5もしくはD3−D4ヒンジ領域からの2つ以上の残基から構成され得る。たとえば、コンフォメーションまたは不連続エピトープは、以下の表4中に記載の残基のうちの2つ以上から構成され得る。特定の実施形態では、本発明のペプチド性分子は、Y125、H180、R181、K203、V204、R205、P206、V238、S239、S240、H263、G265、D266、F267、N268、およびY269からなる群より選択される2つ以上のアミノ酸から構成されるコンフォメーションエピトープと結合する。類似の実施形態では、本発明のペプチド性分子は、以下のアミノ酸の群のうちの1つから選択される、2つ以上のアミノ酸から構成されるコンフォメーションエピトープと結合し得る:P206、F208、V238、およびS239;K127、A207、F208、およびT295;L222、A339、F340、K342、E368、S369、N370、I371、およびY373;L222、L223、E306、V308、F312、E338、F340、およびI371;R224、V308、K310、G311、F340、P341、およびD398;K218、A219、S220、N367、E368、およびS369;K218、A220、E368、およびS369;G384、T385、T411、K412、E414、およびK471;Y408、F433、G470、K471、およびL472;F324、V325、N326、およびN410;D327、N410、T411、K412、およびV497;G384、G387、V409、およびK471;L382、G387、V407、およびV409;Y125、G126、H180、R181、K203、V204、R205、P206、F208、V238、S239、S240、S241、H263、G265、D266、F267、N268、およびY269;P206、F208、V238、およびS239;K218、S220、Y221、L222、F340、P341、K342、N367、E368、S369、N370、I371、およびY373;G384、G387、G388、Y408、V409、T411、F433、F469、G470、およびK471;D327、T411、K412、E414、A431、G432、およびK471;Y350、F355、K358、L379、T380、R381、L382、E386、およびT390;Y350、R353、およびF355。 さらなる実施形態では、本発明のペプチド性分子は、表5中に記載のペプチドから選択される2つ以上のアミノ酸残基から構成されるコンフォメーションエピトープと結合する。具体的な実施形態では、コンフォメーションエピトープは、第1のペプチドから選択される1つまたは複数のアミノ酸残基および第2のペプチドから選択される1つまたは複数のアミノ酸から構成され、第1および第2のペプチドは、表5中に記載のペプチドの群から選択される。したがって、本発明のペプチド性分子はコンフォメーションエピトープと結合し、第1および第2のペプチド群は以下のとおりである:Ala219−Leu222およびThr304−Val308;Asp309−Gly311およびArg224−Gly226;Thr303−Glu306およびAla219−Leu222;Asn367−Asn370およびSer217−Tyr221;Ala339−Pro343およびAsn396−Val399;Ala339−Pro343およびGlu368−Arg372;Lys358−Tyr362およびVal374−His378;Asp357−Glu360およびLeu377−Thr380;Met351−Glu360およびHis378−Thr389;His378−Thr389およびVal323−Asp332;Val409−Ile415およびAla493−Thr500;Val409−Ile415およびAla431−Thr437;Val409−Ile415およびPhe469−Val473;Val409−Ile415およびVal325−Asn330;Val409−Ile415およびArg381−Gly387;Gly466−Leu472およびGly384−Gly388;Val325−Glu329およびTyr494−Lys499;Thr411−leu416およびVal497−Ala502;Ile415−Leu421およびAla502−Ala507;Ala502−Ala507およびLys484−Thr488;およびAla502−Ala507およびGly445−Cys450。本発明のペプチド性部分は、前述の第1および第2のペプチド群を形成するすべてのアミノ酸残基と結合し得るか、または、これらは第1および第2のペプチド群を形成する残基のサブセットと結合し得る。 別の実施形態では、本発明のペプチド性部分は、以下からなる群より選択される2つ以上のアミノ酸と結合し得る(またはそれを含み得るかもしくはそれからなり得る):E33、P34、D72、E76、N77、K78、Q79、K158、D159、N250、S251、Q252、T253、K254、L255、N260、W262、H264、G265、E344、N352、R353、F355、T356、D357、Y362、S365、E366、N367、N370、およびG466。 別の実施形態では、本発明のペプチド性部分は、VEGF受容体上の近接エピトープと結合する。一実施形態では、近接エピトープは、VEGF受容体のD7ドメイン中の2つ以上の残基から構成される。別の実施形態では、近接エピトープは、VEGFR1の672VAISSS677、VEGFR1の678TTLDCHA684、VEGFR1の685NGVPEPQ691、VEGFR1の700KIQQEPG706、VEGFR1の707IILG710、VEGFR1の711PGS713、VEGFR1の714STLFI718、VEGFR1の719ERVTEEDEGV728、VEGFR3の689VNVSDS694、VEGFR3の695LEMQCLV701、VEGFR3の702AGAHAPS708、VEGFR3の717LLEEKSG723、VEGFR3の724VDLA727、VEGFR3の728DSN730、VEGFR3の731QKLSI735、およびVEGFR3の736QRVREEDAGR745、VEGFR2の678TSIGES683、VEGFR2の684IEVSCTA690、VEGFR2の691SGNPPPQ697、VEGFR2の706TLVEDSG712、VEGFR2の713IVLK716、VEGFR2の717DGN719、VEGFR2の720RNLTI724およびVEGFR2の725RRVRKEDEGL734からなる群より選択されるエピトープである。 別の実施形態では、本発明のペプチド性分子は、ヒトPDGFRβのアミノ酸残基385Argおよび390Glu、またはPDGFRα中の対応する残基と結合するか、またはそれを含む。ヒトPDGFRβの残基385Argおよび390Gluは、Kit受容体の残基381Argおよび386Gluに類似しており、PDGFRβのホモタイプのD4−D4相互作用を媒介する。本発明のペプチド性分子は、チロシンキナーゼの活性化に必須の距離および配向での細胞質ドメインの配置に必須の、III型RTKの膜近位領域間の重要なホモタイプ相互作用(ヒトPDGFRβの385Argと390Gluとの間に形成された塩橋など)を妨げることによって、受容体の活性化に対するその阻害効果を発揮し得る。本明細書中に記述した実験は、ホモタイプのD4−D4相互作用はPDGFRβの二量体化に必要ではなく、PDGFRβの二量体化は受容体の活性化に必要であるが十分ではないことを示している。したがって、本発明のペプチド性分子は、PDGFRβの二量体化を可能にする一方で、活性化を妨げ得る。構造に基づく配列アラインメントにより、EFループの大きさ、ならびにD4−D4境界領域を含む重要なアミノ酸は、Kit、PDGFRα、PDGFRβ、およびCSF1R中で保存されていることが示されている。したがって、一部の実施形態では、本発明のペプチド性分子は、III型RTKのD4またはD5ドメインの保存された領域に対して標的化し得る。 本発明のペプチド性部分は、本明細書中で同定したアミノ酸配列のうちの任意のもの(たとえば、配列番号1〜89、92、93、および105〜157)を含むか、またはそれからなるペプチドであり得る。たとえば、本発明のペプチド性部分は、以下のアミノ酸配列のうちの任意のものを含むか、またはそれからなるペプチドであり得る:EVVDKGFIN(配列番号2)、ASYL(配列番号3)、TLEVV(配列番号4)、ASYLTLEVV(配列番号5)、DKG、REG、DKGREG(配列番号6)、VVSVSKASYLL(配列番号7)、VTTTLEVVD(配列番号8)、REGEEFTVTCTI(配列番号9)、TTLE(配列番号10)、TTLEASYL(配列番号11)、KSENESNIR(配列番号12)、NESN(配列番号13)、SKASY(配列番号14)、NESNSKASY(配列番号15)、AFPKP(配列番号16)、NSDV(配列番号17)、AFPKPNSDV(配列番号18)、ESNIR(配列番号19)、AFPKPESNIR(配列番号20)、DKWEDYPKSE(配列番号21)、IRYVSELHL(配列番号22)、LTRLKGTEGGT(配列番号23)、GENVDLIVEYE(配列番号24)、MNRTFTDKWE(配列番号25)、KWEDY(配列番号26)、VSELH(配列番号27)、KWEDYVSELH(配列番号28)、DKWE(配列番号29)、LHLT(配列番号30)、DKWELHLT(配列番号31)、HLTRLKGTEGGT(配列番号32)、MNRTFTDKWE(配列番号25)、HLTRLKGTEGGT(配列番号32)、MNRTFTDKWEHLTRLKGTEGGT(配列番号33)、VFVNDGENVD(配列番号34)、VNTKPEI(配列番号35)、AYNDVGKT(配列番号36)、VNTKPEIAYNDVGKT(配列番号37)、AGFPEPT(配列番号38)、VNTKPEIAGFPEPT(配列番号39)、FGKLV(配列番号40)、VNTKPEIFGKLV(配列番号41)、VNDGEN(配列番号42)、VNTKPEIVNDGEN(配列番号43)、RLKGTEG(配列番号44)、VNTKPEIRLKGTEG(配列番号45)、GPPFGKL(配列番号46)、GTEGG(配列番号47)、GPPFGKLGTEGG(配列番号48)、VNDGE(配列番号49)、YNDVGK(配列番号50)、VNDGEYNDVGK(配列番号51)、TKPEILTYDRL(配列番号52)、DRLVNGMLQC(配列番号53)、GKTSAYFNFAFK(配列番号54)、CPGTEQRCSAS(配列番号55)、CSASVLPVDVQ(配列番号56)、DSSAFKHNGT(配列番号57)、GTVECKAYND(配列番号58)、LNSSGPPFGKL(配列番号59)、FAFKGNNKEQI(配列番号60)、TKPEIL(配列番号61)、VGKTSA(配列番号62)、TKPEILVGKTSA(配列番号63)、ILTYDRL(配列番号64)、AYFNFA(配列番号65)、ILTYDRLAYFNFA(配列番号66)、KHNGT(配列番号67)、AYFNFAKHNGT(配列番号68)、GTEQRC(配列番号69)、AYFNFAGTEQRC(配列番号70)、YHRKVRPVSSHGDFNY(配列番号71)、PFVS(配列番号72)、KAFT(配列番号73)、LAFKESNIY(配列番号74)、LLEVFEFI(配列番号75)、RVKGFPD(配列番号76)、KASNES(配列番号77)、KAES(配列番号78)、GTTKEK(配列番号79)、YFGKL(配列番号80)、FVNN(配列番号81)、DNTKV(配列番号82)、GGVK(配列番号83)、LGVV(配列番号84)、YGHRKVRPFVSSSHGDFNY(配列番号85)、PFVS(配列番号72)、KSYLFPKNESNIY(配列番号86)、GGGYVTFFGK(配列番号87)、DTKEAGK(配列番号88)、YFKLTRLET(配列番号89)、およびYRF。 本発明のペプチド性分子は、その安定性、生物学的利用能、または溶解性を増加させるためにさらに修飾されてもよい。たとえば、ペプチド性分子内の1つまたは複数のL−アミノ酸残基は、D−アミノ酸残基と交換されてもよい。本発明のペプチド性分子に適用される用語「模倣体」は、D−ペプチド性構造の化学構造を模倣し、D−ペプチド性構造の機能的な特性を保持する分子を含むように意図される。用語「模倣体」は、下記に記載されるペプチドの「類似体」および/または「誘導体」を包含するようにさらに意図される。ペプチドアナログ、誘導体、および模倣体の設計に対するアプローチは、当技術分野において公知である。たとえば、Farmer, P.S. Drug Design(E.J. Ariens編)Academic Press、New York、1980年、10巻、119〜143頁;Ball. J.B.およびAlewood, P.F.(1990年)J. Mol. Recognition 3巻:55頁;Morgan, B.A.およびGainor, J.A.(1989年)Ann. Rep. Med. Chem. 24巻:243頁;ならびにFreidinger, R.M.(1989年)Trends Pharmacol. Sci. 10巻:270頁を参照されたい。Sawyer, T.K.(1995年)「Peptidomimetic Design and Chemical Approaches to Peptide Metabolism」Taylor, M.D. およびAmidon, G.L.(編)Peptide−Based Drug Design: Controlling Transport and Metabolism、第17章;Smith, A.B. 3rdら(1995年)J. Am. Chem. Soc. 117巻:11113〜11123頁;Smith, A.B. 3rdら(1994年)J. Am. Chem. Soc. 116巻:9947〜9962頁;およびHirschman, R.ら(1993年)J. Am. Chem. Soc. 115巻:12550〜12568頁もまた、参照されたい。 本明細書において使用されるように、本発明のペプチド性分子の「誘導体」は、分子上の1つまたは複数の反応基が置換基により誘導体化されたペプチド性分子の形態を指す。ペプチド誘導体の例は、アミノ酸側鎖、ペプチド主鎖、またはアミノ末端もしくはカルボキシ末端が誘導体化されたペプチド(たとえばメチル化されたアミド連結を有するペプチド性化合物)を含む。本明細書において使用されるように、本発明のペプチド性分子の「類似体」は、上記分子と異なるある種の化学構造もまた含有するが、上記分子の機能的な活性に必要な上記分子の化学構造をなお保持するペプチド性分子を指す。天然に存在するペプチドの類似体の例は、1つまたは複数の天然に存在しないアミノ酸を含むペプチドである。本明細書において使用されるように、本発明のペプチド性分子の「模倣体」は、上記分子の機能的な活性に必要な上記分子の化学構造が、上記分子のコンフォメーションを模倣する他の化学構造と交換されているペプチド性分子を指す。ペプチド模倣体の例は、ペプチド主鎖が1つまたは複数のベンゾジアゼピン分子により置換されているペプチド性化合物を含む(たとえばJames, G.L.ら(1993年)Science 260巻:1937〜1942頁を参照されたい)。 本発明のペプチド性分子の類似体は、分子の特性が維持されるように、ペプチド性構造の1つまたは複数のL−またはD−アミノ酸が相同アミノ酸により置換されている分子を含むように意図される。好ましくは、保存されたアミノ酸置換は、1つまたは複数のアミノ酸残基でなされる。「保存されたアミノ酸置換」は、類似する側鎖を有するアミノ酸残基とアミノ酸残基が交換される置換である。塩基性側鎖(たとえばリシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(たとえばアスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖(たとえばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、無極性側鎖(たとえばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(たとえばトレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(たとえばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む、類似する側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野において定義されている。本発明のペプチド性分子の構造においてなすことができる相同置換の非限定的な例は、D−チロシン、D−ピリジルアラニン、もしくはD−ホモフェニルアラニンとのD−フェニルアラニンの置換、D−バリンまたは脂肪族側鎖を有する他の天然もしくは非天然アミノ酸とのD−ロイシンの置換、ならびに/またはD−ロイシンまたは脂肪族側鎖を有する他の天然もしくは非天然アミノ酸とのD−バリンの置換を含む。 模倣体、特にペプチド模倣体という用語は、同配体を含むように意図される。本明細書において使用されるような用語「同配体」は、第1の構造の立体的なコンフォメーションが第2の構造に特異的な結合部位と適合するために、第2の化学構造と置換することができる化学構造を含むように意図される。この用語は、特に、当業者らに周知のペプチド主鎖修飾(つまりアミド結合模倣体)を含む。そのような修飾は、アミド窒素、α−炭素、アミドカルボニル、アミド結合の完全交換、伸長、欠失、または主鎖架橋の修飾を含む。Ψ[CH2S]、Ψ[CH2NH]、Ψ[CSNH2]、Ψ[NHCO]、Ψ[COCH2]、およびΨ[(E)または(Z) CH=CH]を含む、いくつかのペプチド主鎖修飾が、公知である。上記に使用される命名法では、Ψは、アミド結合の不在を示す。アミド基に取って代わる構造は、括弧内に指定される。 他の可能な修飾は、N−アルキル(もしくはアリール)置換(Ψ[CONR])またはラクタムおよび他の環状構造を構築するための主鎖架橋を含む。本発明の調節因子化合物の他の誘導体は、C末端ヒドロキシメチル誘導体、O修飾誘導体(たとえばC末端ヒドロキシメチルベンジルエーテル)、アルキルアミドおよびヒドラジドなどのような置換アミドを含むN末端修飾誘導体を含む。 本発明のペプチド性分子は、当技術分野において公知の標準的な方法によって作製されてもよい。ペプチド性分子、たとえばヒトKit RTKのD4ドメインまたはヒトVEGF受容体のD7ドメインを、標準の技法を使用してヒト細胞からクローニングし、組換えベクター内に挿入し、in vitro細胞系中で発現させ得る(たとえば、酵母細胞内へのベクターのトランスフェクションによる)。その代わりに、ペプチド性分子は、Athertonら(1989年)Oxford、England:IRL Press. ISBN 0199630674;Stewartら(1984年)第2版、Rockford:Pierce Chemical Company, 91巻. ISBN 0935940030;Merrifield(1963年)J. Am. Chem. Soc. 85巻:2149〜2154頁などのような公知の合成方法を介して、設計され、新たに合成されてもよい。 次いで、ペプチド性分子を、本明細書において記載されるアッセイのいずれか、たとえば、下記の実施例の部において記載されるものを使用して、機能的な活性について試験することができる。 IV.本発明の部分を同定するためのスクリーニングアッセイ 本発明の部分を、本明細書中に記載のアッセイおよび当技術分野で周知のアッセイのうちの任意のものを使用して、RTK阻害活性についてスクリーニングし得る。たとえば、受容体の内在化、受容体の自己リン酸化、および/またはキナーゼシグナル伝達を決定し得るアッセイを使用して、標的RTK、たとえばKit受容体またはヒトVEGF受容体の活性化を妨げる部分を同定し得る。新しい阻害部分のスクリーニングは、当技術分野で公知の標準の方法を使用することによって、たとえば、phosphoELISA(商標)手順(Invitrogenから利用可能)を用いてRTKまたは下流分子のリン酸化状態を決定することによって達成し得る。受容体、たとえばKit受容体またはVEGF受容体のリン酸化状態を、たとえば、C−Kit[pY823]ELISA KIT、HU(BioSource(商標)、カタログ番号−KHO0401)、c−KIT[TOTAL]ELISA KIT、HU(BioSource(商標)、カタログ番号−KHO0391)などの市販のキットを使用して決定し得る。本発明の抗体、小分子、および他の部分を、そのRTK阻害活性を決定するためにそのようなキットを使用してスクリーニングし得る。たとえば、適切なリガンドおよび本発明の部分で処理した後、phosphoELISA(商標)を行って、目的のRTKのリン酸化状態、したがって活性化状態を決定し得る。本発明の部分は、RTKの活性化を妨げるものとして同定される場合がある。以下の実施例15および16は、抗ホスホチロシン抗体を使用したRTKの活性化の検出を含むアッセイを記載している。以下の実施例20は、phosphoELISA(商標)システムを使用して受容体の活性化を検出する1つの可能なアッセイを記載している。実施例22〜25(それに関連する方法および導入が含まれる)は、RTKの活性化状態を決定するために本明細書中で使用するさらなる方法を記載している。 受容体の活性化はエンドサイトーシスおよび受容体の内在化をもたらし得るため、一部の実施形態では、受容体の内在化を妨げるその能力を測定することによって、標的RTKを阻害する本発明の部分の能力を決定することが有用である。以下の実施例25(およびそれに関連する方法)は、PDGF受容体変異体の内在化および分解の測定を記載している。受容体内在化アッセイは当技術分野で周知であり、たとえば、そのそれぞれの内容全体が本明細書中に参考として組み込まれている、Fukunagaら(2006年) Life Sciences. 80巻(1号)17〜23頁、Bernhagenら(2007年) Nature Medicine 13巻、587〜596頁(natureprotocols.com/2007/04/18/receptor_internalization_assay.php)に記載されている。受容体の内在化を決定するための1つの周知の方法は、リガンドを蛍光タンパク質、たとえば緑色蛍光タンパク質(GFP)、または他の適切な標識剤でタグ付けすることである。リガンドと受容体との結合に際し、蛍光顕微鏡観察を使用して受容体の内在化を可視化し得る。同様に、本発明の部分を標識剤でタグ付けし、蛍光顕微鏡観察を使用して受容体の内在化を可視化し得る。部分が受容体の活性を阻害することができる場合、適切な対照と比較してリガンドの存在下における蛍光の内在化は低下する(たとえば、蛍光は、エンドソームまたは小胞中ではなく、部分(moity)が受容体と結合する細胞の周辺でのみ観察され得る)。 上述のものに加えて、様々な他の受容体活性化アッセイが当技術分野で公知であり、そのうちの任意のものを使用して本発明の部分の機能を評価し得る。本発明に従って使用し得るさらなる受容体活性化アッセイは、米国特許第6,287,784号、第6,025,145号、第5,599,681号、第5,766,863号、第5,891,650号、第5,914,237号、第7,056,685号、ならびに、それだけには限定されないが、Amir−Zaltsmanら(2000年) Luminescence 15巻(6号):377〜80頁、NakayamaおよびParandoosh (1999年) Journal of Immunological Methods. 225巻(1〜2号)、27、67〜74頁、Pikeら(1987年) Methods of Enzymology 146巻:353〜362頁、Atienzaら(2005年) Journal of Biomolecular Screening. 11巻(6号):634〜643頁、Hunterら(1982年). Journal of Biological Chemistry 257巻(9号):4843〜4848頁、WhiteおよびBacker (1991年) Methods in Enzymology 201巻:65〜67頁、Maddenら(1991年) Anal Biochem 199巻:210〜215頁、Cleavelandら(1990年) Analytical Biochemistry 190巻:249〜253頁、Lazaroら(1991年) Analytical Biochemistry 192巻:257〜261頁、HunterおよびCooper (1985年) Ann Rev Biochem 54巻:897〜930頁、UllrichおよびSchlessinger (1990年) Cell 61巻:203〜212頁、KnutsonおよびBuck (1991年) Archives of Biochemistry and Biophysics 285巻(2号):197〜204頁、Kingら(1993年) Life Sciences 53巻:1465〜1472頁、Wang. (1985年) Molecular and Cellular Biology 5巻(12号):3640〜3643頁、Glenneyら(1988年) Journal of Immunological Methods 109巻:277〜285頁、Kamps (1991年) Methods in Enzymology 201巻:101〜110頁、Kozmaら(1991年) Methods in Enzymology 201巻:28〜43頁、Holmesら(1992年) Science 256巻:1205〜10頁、およびCorfasら(1993年) PNAS、USA 90巻:1624〜1628頁を含めた多くの科学出版物に記載されている。 リガンド結合による受容体の活性化は、典型的には続く細胞内事象、たとえばIP3などの二次メッセンジャーの増加を開始させ、これは次にカルシウムイオンの細胞内貯蔵を放出させる。したがって、受容体活性は、二次メッセンジャー、例えば、IP3、環状ヌクレオチド、細胞内カルシウム、もしくはSTAT、PI3K、Grb2などのリン酸化されたシグナル伝達分子、または当技術分野で公知の他の可能な標的の量を測定することによって決定し得る。米国特許第7,056,685号は、受容体活性を検出するために本発明に従って使用し得るいくつかの方法を記載および言及しており、これは本明細書中に参考として組み込まれている。 受容体内在化アッセイまたは受容体活性化アッセイなどの上述のアッセイの多くは、免疫学的結合アッセイを使用した標的RTKの検出または定量を含み得る(たとえば、受容体内在化アッセイ中に、細胞表面上のRTKの量を検出するために放射性標識した抗体を使用する場合)。免疫学的結合アッセイは当技術分野で広く記載されている(たとえば、米国特許第4,366,241号、第4,376,110号、第4,517,288号、および第4,837,168号を参照)。一般的な免疫アッセイの総説には、Methods in Cell Biology: Antibodies in Cell Biology、第37巻(Asai編、1993年)、Basic and Clinical Immunology (StitesおよびTerr編、第7版、1991年)も参照されたい。 受容体内在化研究、受容体活性化研究、または受容体検出アッセイにおいて使用し得るものなどの免疫アッセイは、しばしば、検出抗体およびRTKによって形成された複合体と特異的に結合し、それを標識するための標識剤を使用する(本明細書中に参考として組み込まれている米国特許第7,056,685号を参照)。標識剤自体が、受容体を検出するために使用する抗体であってもよい(ここでいう抗体は、本発明の部分であってもなくてもよい)。あるいは、標識剤は、二次または三次抗体(たとえば標的RTKに特異的なマウスモノクローナル抗体と結合する抗マウス抗体)などの第3の薬剤であり得る。また、プロテインAまたはプロテインGなどの免疫グロブリン定常領域と特異的に結合することができる他のタンパク質も、免疫学的結合アッセイにおける標識剤として使用し得る。これらのタンパク質は、様々な種からの免疫グロブリン定常領域と強力な非免疫原性の反応性を示す(たとえば、Kronvalら(1973年)、J. Immunol. 111巻:1401〜1406頁、Akerstromら(1985年)、J. Immunol. 135巻:2589 2542頁を参照)。また、標識剤は、ビオチン(ストレプトアビジンなどの別の分子が特異的に結合することができる)などの検出可能な薬剤で修飾することもできる。様々な検出可能な部分が当業者に周知である。 一般的に使用されるアッセイには、非競合的アッセイ、たとえばサンドイッチアッセイ、および競合的アッセイが含まれる。一般的に使用されるアッセイ様式には、試料中のタンパク質の存在を検出および定量化するために使用するウエスタンブロット(免疫ブロット)が含まれる。アッセイで使用する特定の標識または検出可能な基は、RTKを検出するために使用する免疫グロブリンまたはRTKと結合してそれを不活性化するように設計されている本発明の部分の特異的結合を顕著に妨害しない限りは、本発明の重要な態様ではない。検出可能な基は、検出可能な物理的または化学的特性を有する任意の物質であることができる。そのような検出可能な標識は免疫アッセイの分野において十分に開発されており、一般に、そのような方法において有用なほとんどすべての標識を本発明に適用することができる。したがって、標識は、分光的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的な手段によって検出可能な任意の組成物である。本発明において有用な標識には、蛍光色素(たとえば、フルオレセインイソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミンなど)、放射性標識(たとえば、3H、125I、35S、14C、または32P)、酵素(たとえば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼおよびELISAにおいて一般的に使用される他のもの)、ならびに比色標識、例えば、コロイド金または有色ガラスまたはプラスチックビーズ(たとえば、ポリスチレン、ポリプロピレンもしくはラテックス)が含まれる。 標識を、当技術分野で周知の方法に従って、アッセイの所望の構成要素に直接または間接的にカップリングさせ得る。また、標識は、たとえば酵素または蛍光体とのコンジュゲーションによって、シグナル生成化合物に直接コンジュゲートさせることもできる。標識としての目的の酵素は、主に加水分解酵素、特にホスファターゼ、エステラーゼおよびグリコシダーゼ、またはオキシダーゼ(oxidotase)、特にペルオキシダーゼである。蛍光化合物には、フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロンなどが含まれる。化学発光化合物には、ルシフェリン、および2,3−ジヒドロフタラジンジオン、たとえばルミノールが含まれる。使用し得る様々な標識またはシグナル生成系の総説には、米国特許第4,391,904号を参照されたい。 標識を検出する手段は当業者に周知である。したがって、たとえば、標識が放射性標識である場合、検出手段には、シンチレーションカウンターまたはオートラジオグラフィーなどにおける写真フィルムが含まれる。標識が蛍光標識である場合、これは、蛍光色素を適切な波長の光で励起させ、生じる蛍光を検出することによって検出し得る。蛍光は、写真フィルムによって、電荷結合デバイス(CCD)または光電子増倍管などの電子検出器を使用することによって、視覚的に検出し得る。同様に、酵素標識は、酵素の適切な基質を提供し、生じる反応生成物を検出することによって検出し得る。最後に、単純な比色標識は、単に標識と関連する色を観察することによって検出し得る。したがって、様々なディップスティックアッセイにおいて、コンジュゲートした金は多くの場合ピンク色を表す一方で、様々なコンジュゲートしたビーズはビーズの色を表す。 本発明のさらなる態様では、本発明の部分は、標的RTK上のエピトープと結合し、それでも受容体チロシンキナーゼの外部ドメインが二量体化することを可能にし得る。この実施形態では、部分の結合は、2つの単量体のIg様ドメイン(たとえば、III型受容体チロシンキナーゼのD4−D4もしくはD5−D5ドメインまたはV型受容体チロシンキナーゼのD7−D7ドメイン)間の配置、配向および/または距離に影響を与え、それによって受容体チロシンキナーゼの活性を阻害する場合がある。言い換えれば、部分は、受容体チロシンキナーゼの外部ドメインの、リガンド誘導性の二量体化を可能にするが、細胞表面境界領域での2つの外部ドメインの配置に影響を与えるか、または受容体チロシンキナーゼ中のコンフォメーション変化を変更もしくは妨げ、それによって受容体チロシンキナーゼの活性を阻害する(たとえば、受容体の内在化を阻害する、および/または受容体のチロシン自己リン酸化を阻害する、および/または下流のシグナル伝達経路を活性化させる受容体の能力を阻害する)場合がある。 したがって、一部の実施形態では、受容体の二量体化を可能にするが、受容体を不活性にさせる部分を同定することができるアッセイを用いることが有用である。そのようなアッセイは以下に記載されている。たとえば、実施例18は、PDGF受容体を用いて実施した実験を記載しており、受容体の二量体化は架橋結合を使用して検出し、受容体の活性化はホスホチロシン特異的抗体を使用して決定する。さらに、実施例23は、PDGFRの変異体は、リガンド誘導性のチロシン自己リン酸化に障害を有しており、これはリガンド誘導性の受容体の二量体化の欠損によって引き起こされていないことを示す(実施例22〜25への方法および導入(Introducion)も参照)。 また、RTKのコンフォメーション状態は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)分析によっても決定し得る。タンパク質のコンフォメーションおよび相互作用を決定するための蛍光の方法論の包括的な総説は、本明細書中に参考として組み込まれているJohnson (2005年) Traffic. 2005年12月、6巻(12号):1078〜92頁中に見つけることができる。FRETアッセイでは、目的のRTKを適切なFRET蛍光体で標識する。RTKを標識した後、標識されたRTKを発現する細胞を、本発明の試験部分およびRTKのリガンド(たとえばKit RTKのSCF)と共にインキュベートする。FRET分析により、リガンド結合に関連するRTK中のコンフォメーション変化、RTKの二量体化、および/または受容体の活性化の観察が可能となる。この方法によって、当業者は、下流の活性化なしのRTKの二量体化を示すタンパク質のコンフォメーション変化を直接評価し得る。FRET分析を行うためにいくつかの方法が利用可能であり、変動の大部分は、様々な蛍光体またはこれらの蛍光体を目的のタンパク質内に組み込むための様々な技法の使用から生じる。FRET蛍光体および分析方法は当技術分野で周知であり、FRET技術の手短な総説は、Heyduk. (2002年) Current Opinion in Biotechnology. 13巻(4号). 292〜296頁およびそれの中の参考文献中で利用可能である。以下の出版物はFRET方法を詳しく述べており、本明細書中に参考として組み込まれている:Kajiharaら(2006年) Nat Methods. 3巻(11号):923〜9頁、Biener−Ramanujanら(2006年) Growth Horm IGF Res.16巻(4号):247〜57頁、Taniguchiら(2007年) Biochemistry. 46巻(18号):5349〜57頁、米国特許第6,689,574号、第5,891,646号、およびWIPO公開第WO/2002/033102号。蛍光体がRTKの機能またはRTKと結合する本発明の部分の能力を妨害しない限りは、FRET蛍光体を、RTKの任意のドメインまたはヒンジ領域内に組み込んで、コンフォメーション変化を検出し得る(たとえば、III型RTKのD4もしくはD5ドメインまたはV型RTKのD7ドメイン)。 FRETに有用な蛍光体は、多くの場合、以下に記述する生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)に有用なものと同じである。最も一般的なFRET方法は、反応性システイン残基を目的のタンパク質内で操作することである。その後、蛍光体は選択されたシステイン残基と容易に反応することができる。多くの場合、融合タンパク質を構築し、目的のタンパク質を緑色蛍光タンパク質と融合させる(Neiningerら(2001年) EMBO Reports. 2巻(8号):703〜708頁を参照)。FRETのさらなる方法および有用な蛍光体は、本明細書中に参考として組み込まれている、HuebschおよびMooney (2007年) Biomaterials. 28巻(15号):2424〜37頁、SchmidおよびBirbach (2007年) Thromb Haemost. 97巻(3号):378〜84頁、Jares−ErijmanおよびJovin (2006年) Curr Opin Chem Biol. 10巻(5号):409〜16頁、Johansson (2006年) Methods Mol Biol. 335巻:17〜29頁、WallrabeおよびPeriasamy (2005年) Curr Opin Biotechnol. 16巻(1号):19〜27頁、ならびにClegg RM (1995年) Curr Opin Biotechnol. 6巻(1号):103〜10頁に記載されている。 他の実施形態では、どのRTKコンフォメーションが活性化なしの二量体化の具体的な指標であるかが知られていないか、またはその決定が困難であり得る(受容体に依存する)。そのような場合、当業者は、受容体の二量体化を決定するアッセイを受容体の活性化を決定するものと組み合わせ得る。たとえば、RTKの二量体化を検出するための伝統的な架橋結合研究(Rodriguezら(1990年) Molecular Endocrinology、4巻(12号)、1782〜1790頁によって例示)を、上述の受容体活性化アッセイのうちの任意のものと組み合わせて使用し得る。また、FRETおよび同様の系を使用して、受容体の活性化または二量体化を直接測定してもよい。たとえば、適切なFRET蛍光体をRTKの細胞質ドメイン内およびリン酸化標的タンパク質(すなわち下流のシグナル伝達分子)内に組み込むことによって、FRETは、下流のシグナル伝達分子がRTKにリクルートされたか否かを決定することができる。したがって、一実施形態では、成功した本発明の部分は、架橋結合またはFRETによって測定して受容体の二量体化を可能にするが、FRETもしくはBRET分析による蛍光の欠如によってまたは他の受容体活性化アッセイ(たとえば、抗ホスホチロシン抗体およびウエスタンブロットを用いた自己リン酸化アッセイ)によって検出される、受容体の活性化を妨げるものである。したがって、本明細書中に記載の技法を使用して、当業者は、部分(たとえば、小分子、ペプチド、または抗体)を容易に試験して、それらがRTK活性を阻害するか否か、およびそれらが受容体の二量体化を可能にするか否かを決定することができる。 具体的には、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)分析を使用して、RTKの活性を阻害する部分を同定し得る。米国特許公開第20060199226号、WIPO公開WO/2006/094073号、およびTanら(2007年. Molecular Pharmacology. 72巻:1440〜1446頁)は、RTKを活性化するリガンドを同定する方法を具体的に記載しており、したがって本明細書中に参考として組み込まれている。これらの技法は、タンパク質の相互作用をin vitroおよびin vivoで決定するために用いられている(すべて本明細書中に参考として組み込まれているPflegerら(2006年) Nature Protocols 1 337〜345頁、Kroegerら(2001年)、J. Biol. Chem.、276巻(16号):12736〜43頁、およびHarikumarら(2004年) Mol Pharmacol 65巻:28〜35頁)。 BRETは、RTKの活性化を妨げる部分についてスクリーニングすることによって、試験化合物から本発明の部分を同定するために有用である。 本明細書中に参考として組み込まれている米国特許公開第2006/0199226号に記述されているように、BRETに基づくアッセイを使用して、生物発光性のドナー分子(DM)を有するタンパク質と蛍光のアクセプター部分(AM)を有するタンパク質との相互作用を監視することができる。手短に述べると、RTK−DMの融合体を発現する細胞は、基質の化学エネルギーを光へと変換する。AM(たとえばシグナル伝達タンパク質−AMの融合体)がRTK−DMの融合体と近接して存在する場合、細胞は特定の波長の光を放射する。たとえば、BRETに基づくアッセイを使用して、RTK−ルシフェラーゼの融合体とGFP−シグナル伝達タンパク質の融合体との間の相互作用を評価することができる。これは、ドナー分子を化学的エネルギー変換ではなく特定の波長の光によって励起させ得るFRET分析とはわずかに異なる。BRET分析に使用し得るルシフェラーゼ活性を有する生物発光タンパク質の例は、米国特許第5,229,285号、第5,219,737号、第5,843,746号、第5,196,524号、第5,670,356号中に見つけ得る。代替のDMには、適切な基質に作用して発光シグナルを生じさせることができる酵素が含まれる。そのような酵素の具体的な例は、ベータ−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ−グルクロニダーゼおよびベータ−グルコシダーゼである。これらの酵素の合成発光基質は当技術分野で周知であり、Tropix Inc.(米国マサチューセッツ州Bedford)などの企業から市販されている。また、DMは昆虫から単離または操作することもできる(米国特許第5,670,356号)。 基質に応じて、DMは異なる波長で光を放射する。DMの基質の非限定的な例には、セレンテラジン、ベンゾチアゾール、ルシフェリン、ギ酸エノール、テルペン、およびアルデヒドなどが含まれる。DM部分は、RTKタンパク質のアミノ末端部分またはカルボキシル末端部分のどちらかと融合させることができる。好ましくは、RTK−DMの融合体内でのBDMドメインの配置は、ネイティブタンパク質の活性または本発明の部分の結合を変更させない。RTK−DMの融合タンパク質を、リガンド結合およびネイティブタンパク質の下流のシグナル伝達分子と相互作用する能力などの生化学的特性をそれが保持することを確実にするために、試験することができる。 BRET分析におけるAMは、移動されたエネルギーを蛍光として再放射し得る。AMの例には、緑色蛍光タンパク質(GFP)、またはYFP、EGFP、EYFPなどのそのアイソフォームおよび誘導体が含まれる(R. Y. Tsien、(1998年) Ann. Rev. Biochem. 63巻:509〜544頁)。好ましくは、AM−タンパク質の融合体内でのAMドメインの配置は、ネイティブタンパク質の活性を変更させない。AM−第2のタンパク質の融合タンパク質を、RTKとの相互作用などの関連ネイティブタンパク質の生化学的特性をそれが保持することを確実にするために、試験することができる。例として、標的RTKによってリン酸化されるか、またはそれと結合することができる任意の基質への、GFPタンパク質のアミノ末端融合を使用することができる。 V.本発明の部分を含有する医薬組成物 別の態様では、本発明は、薬学的に許容されるキャリアと一緒に処方した、本発明の部分(たとえば、本発明のモノクローナル抗体もしくはその抗原結合性一部分(複数可)、抗体模倣体、小分子、またはペプチド性分子)のうちの1つまたは組合せを含有する組成物、たとえば医薬組成物を提供する。そのような組成物には、本発明の抗体、または免疫コンジュゲート、小分子、もしくはペプチド性分子のうちの1つまたは組合せ(たとえば2つ以上の異なる)が含まれ得る。たとえば、本発明の医薬組成物は、標的RTK上の異なるエピトープと結合するか、または相補的活性を有する抗体および小分子の組合せ、たとえば、III型RTKのD3−D4ヒンジ領域と結合する小分子およびIII型RTKのD4ドメインと結合するモノクローナル抗体を含むことができる。 また、本発明の医薬組成物は、組合せ療法で、すなわち他の薬剤と組み合わせて投与することもできる。たとえば、組合せ療法には、少なくとも1つの他の抗がん剤と組み合わせた、本発明の抗RTK抗体(または小分子もしくはペプチド性分子)が含まれることができる。組合せ療法で使用することができる治療剤の例は、以下にさらに詳述されている。 本明細書中で使用する「薬学的に許容されるキャリア」には、生理的に適合性のある任意かつすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張化および吸収遅延剤などが含まれる。好ましくは、キャリアは、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄または表皮の投与(たとえば注射または注入によるもの)に適している。投与経路に応じて、活性化合物、すなわち本発明の部分を、化合物を不活性化させ得る酸および他の天然条件の作用から化合物を保護する物質でコーティングし得る。 本発明の医薬化合物には、1つまたは複数の薬学的に許容される塩が含まれ得る。「薬学的に許容される塩」とは、親化合物の所望の生物活性を保持しており、かつ望ましくない毒性効果を全く与えない塩をいう(たとえばBerge, S.M.ら(1977年) J. Pharm. Sci. 66巻:1〜19頁を参照)。そのような塩の例には、酸付加塩および塩基付加塩が含まれる。酸付加塩には、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸などの無毒性の無機酸、ならびに脂肪族モノおよびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸などの無毒性の有機酸に由来するものが含まれる。塩基付加塩には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、ならびにΝ,Ν’−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどの無毒性の有機アミンに由来するものが含まれる。 また、本発明の医薬組成物には、薬学的に許容される抗酸化剤も含まれ得る。薬学的に許容される抗酸化剤の例には、(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、メタ亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性の抗酸化剤、(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ−トコフェロールなどの油溶性の抗酸化剤、および(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート化剤が含まれる。 本発明の医薬組成物中で用い得る適切な水性および非水性のキャリアの例には、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびその適切な混合物、オリーブ油などの植物油、ならびにオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが含まれる。適正な流動性は、たとえば、レシチンなどのコーティング物質を使用することによって、分散液の場合は所要の粒子径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって、維持することができる。 また、これらの組成物は、保存料、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントも含有し得る。微生物の存在の予防は、滅菌手順によって、ならびに様々な抗細菌および抗真菌剤、たとえば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを包含させることによって、確実にし得る。また、糖、塩化ナトリウムなどの等張化剤を組成物内に含めることが望ましい場合もある。さらに、注射用医薬品形態の持続的吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤を包含させることによってもたらし得る。 薬学的に許容されるキャリアには、無菌的な注射用溶液または分散液の即時調製のための、無菌的な水性溶液または分散液および無菌的な粉末が含まれる。医薬上活性のある物質のためのそのような媒質および薬剤の使用は、当技術分野で公知である。活性化合物と非適合性である場合以外は、本発明の医薬組成物における任意の慣用の媒質または薬剤の使用が企図される。また、補助活性化合物を組成物内に組み込むこともできる。 治療組成物は、典型的には、製造および貯蔵の条件下で無菌的かつ安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、または高い薬物濃度に適した他の秩序立った構造として処方することができる。キャリアは、たとえば、水、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、ならびにその適切な混合物を含有する溶媒または分散媒であることができる。適正な流動性は、たとえば、レシチンなどのコーティングを使用することによって、分散液の場合は所要の粒子径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって、維持することができる。多くの場合、等張化剤、たとえば、糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、または塩化ナトリウムを組成物中に含めることが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、組成物中に吸収を遅延させる薬剤、たとえばモノステアリン酸塩およびゼラチンを含めることによってもたらすことができる。 無菌的な注射用溶液は、所要量の活性化合物を、適切な溶媒中に、必要に応じて上記列挙した成分のうちの1つまたは組合せと共に組み込み、次いで滅菌微細濾過を行うことによって調製することができる。一般に、分散液は、活性化合物を、基本分散媒および上記列挙したものからの所要の他の成分を含有する無菌的なビヒクル内に組み込むことによって調製する。無菌的な注射用溶液を調製するための無菌的な粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥(freeze−drying、lyophilization)であり、これは、事前に滅菌濾過した溶液から活性成分および任意の追加の所望の成分の粉末をもたらす。 単一投薬形態を生成するためにキャリア材料と組み合わせることができる活性成分の量は、処置する被験体および特定の投与様式に応じて変動する。単一投薬形態を生成するためにキャリア材料と組み合わせることができる活性成分の量は、一般に、治療効果を生じる組成物の量である。一般に、100パーセントのうち、この量は、薬学的に許容されるキャリアと組み合わせて、約0.01パーセント〜約99パーセントの活性成分、好ましくは約0.1パーセント〜約70パーセント、最も好ましくは約1パーセント〜約30パーセントの活性成分の範囲である。 投薬レジメンは、最適な所望の応答(たとえば治療反応)が提供されるように調節する。たとえば、単一のボーラスを投与し得、いくつかの分割した用量を期間にわたって投与し得、または、用量を治療状況の緊急性によって示されるように比例的に低下もしくは増加させ得る。投与の容易性および用量の均一性のために、非経口組成物を単位投薬形態で処方することが特に有利である。本明細書中で使用する単位投薬形態とは、処置する被験体の単位投薬量として適した物理的に別々の単位体をいい、それぞれの単位体は、所要の医薬キャリアと組み合わせて所望の治療効果を生じるように計算された、事前に決定された量の活性化合物を含有する。本発明の単位投薬形態の仕様は、(a)活性化合物の特有な特徴および達成する特定の治療効果、ならびに(b)個体において感受性を処置するためのそのような活性化合物を混合する(compound)分野に固有の制限によって指示され、それに直接依存する。 抗体、小分子、またはペプチド性分子の投与に関して、用量は、宿主体重1kgあたり約0.0001〜100mg、より通常は0.01〜5mgの範囲である。たとえば、用量は、0.3mg/kgの体重、1mg/kgの体重、3mg/kgの体重、5mg/kgの体重もしくは10mg/kgの体重、または1〜10mg/kgの範囲であることができる。例示的な処置レジームは、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1カ月に1回、3カ月に1回または3〜6カ月毎に1回の投与を伴う。本発明の部分の好ましい投薬レジメンには、静脈内投与によって1mg/kgの体重または3mg/kgの体重が含まれ、抗体は以下の投薬スケジュールのうちの1つを使用して与える:(i)4週間毎に6回の投薬、その後、3カ月毎、(ii)3週間毎、(iii)3mg/kgの体重を1回、次いで1mg/kgの体重を3週間毎。 あるいは、抗体、小分子、またはペプチド性分子を、持続放出処方物として投与することができ、その場合、より低頻度の投与が必要とされる。用量および頻度は、患者における投与した物質の半減期に応じて変動する。一般に、ヒト抗体が最も長い半減期を示し、次いでヒト化抗体、キメラ抗体、および非ヒト抗体である。投与の用量および頻度は、処置が予防的であるか治療的であるかに応じて変動する場合がある。予防的な応用では、比較的低い用量を比較的低頻度の間隔で長い期間にわたって投与する。一部の患者は、その余生の間ずっと処置を受け続ける。治療的な応用では、比較的短い間隔での比較的高い用量が、疾患の進行が低下または停止されるまで、好ましくは患者が疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで、必要な場合がある。それ以降、患者に予防的レジームを施すことができる。 特定の患者に毒性とならずに、患者、組成物、および投与様式において所望の治療反応を得るために有効な活性成分の量を得るために、本発明の医薬組成物中の活性成分および小分子の実際の用量レベルを変動させ得る。選択された用量レベルは、用いる本発明の特定の組成物、またはそのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与時間、用いる特定の化合物の排出速度、処置の期間、用いる特定の組成物と組み合わせて使用する他の薬物、化合物および/または物質、処置する患者の年齢、性別、重量、状態、全体的な健康状態および以前の病歴、ならびに医学分野で周知の同様の要因を含めた、様々な薬物動態学的要因に依存する。 本発明の抗RTK部分の「治療上有効な用量」は、好ましくは、疾患症状の重篤度の減少、疾患症状が無い期間の頻度および持続期間の増加、または疾患の苦痛が原因の障害もしくは能力欠如の予防をもたらす。たとえば、腫瘍の処置では、「治療上有効な用量」は、好ましくは、細胞増殖または腫瘍増殖を、無処置の被験体と比較して少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも約60%、さらにより好ましくは少なくとも約80%阻害する。腫瘍増殖を阻害する化合物の能力は、ヒト腫瘍における有効性を予測する動物モデル系中で評価することができる。あるいは、組成物のこの特性は、当業者に公知のアッセイによって、化合物の阻害、たとえばin vitro阻害の能力を検査することによって、評価することができる。治療上有効な量の治療化合物は、腫瘍の大きさを減少させるか、または他の様式で被験体において症状を改善させることができる。当業者は、被験体の大きさ、被験体の症状の重篤度、および選択した特定の組成物または投与経路などの要因に基づいて、そのような量を決定することができるであろう。 本発明の抗RTK部分を試験して、RTKの拮抗に有効であるか否かを決定し得る。抗RTK部分を試験する1つの方法は、抗RTK部分とRTKとの間に相互作用が起こることを確認することである。たとえば、当業者は、本発明の抗体、小分子、またはペプチド性分子が、ヒトKit RTKのD4もしくはD5ドメインまたはVEGF受容体のD7ドメインと結合するか否かを試験し得る。そのような結合の試験は当技術分野で周知であり、抗RTK部分を標識(たとえば放射性標識)するステップと、結合が起こり得る条件下で抗RTK部分をRTKと共にインキュベートするステップと、その後、複合体をゲルまたはホスフォスクリーン(phosphor screen)上で単離/可視化するステップとを含み得る。同様に、結合を決定するためにELISA技法を用い得る。 本発明の部分がRTKに拮抗しているか否かを決定するための別の方法は、RTKの細胞質ドメインのリン酸化状態を試験することである。具体的な実施形態では、有効な拮抗剤はRTKの活性化および自己リン酸化を妨げる。RTKのリン酸化は、当技術分野で公知の標準の方法を使用して、たとえば、RTKのリン酸化された残基と特異的に結合する抗体を使用することによって試験し得る。リン酸化事象を検出するための他の方法には、米国特許第6548266号、もしくはGosheら(2006年) Brief Funct Genomic Proteomic. 4巻:363〜76頁、de Graauwら(2006年) Electrophoresis. 27巻:2676〜86頁、Schmidtら(2007年) J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci. 849巻:154〜62頁に記載のもの、またはPerkinElmerの[ガンマ−33P]ATPを使用したキナーゼリン酸化アッセイのFlashPlates(SMP200)プロトコルの使用が含まれる。当業者には、これらの方法、および実施例中に示されたものを使用して、RTKによってリン酸化されており、細胞内のシグナル伝達物質であるタンパク質のリン酸化状態を決定してもよいことが理解されよう。また、そのようなタンパク質のリン酸化状態の検出は、RTKが本発明の部分によって有効に拮抗されたか否かも示す。 本発明の組成物を、当技術分野で公知の様々な方法のうちの1つまたは複数を使用して、1つまたは複数の投与経路を介して投与することができる。当業者には理解されるように、投与の経路および/または様式は所望の結果に応じて変動する。本発明の結合部分の好ましい投与経路には、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄または他の非経口の投与経路、たとえば注射または注入によるものが含まれる。本明細書中で使用する語句「非経口投与」とは、経腸または局所投与以外の、通常は注射による投与様式を意味し、それだけには限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内の注射および注入が含まれる。 あるいは、本発明の抗RTK結合部分を、局所、表皮または粘膜の投与経路、たとえば、鼻腔内、経口、経膣、直腸、舌下または局所などの、非経口ではない経路を介して投与することができる。 活性化合物は、インプラント、経皮パッチ、およびマイクロカプセル封入送達系を含めた徐放性処方物などの、化合物を迅速な放出から保護するキャリアを用いて調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの、生分解性、生体適合性のポリマーを使用することができる。そのような処方物を調製するための多くの方法が特許取得されているかまたは一般に当業者に公知である。たとえばSustained and Controlled Release Drug Delivery Systems、J.R. Robinson編、Marcel Dekker, Inc.、New York、1978年を参照されたい。 治療組成物は、当技術分野で公知の医療デバイスを用いて投与することができる。たとえば、好ましい実施形態では、本発明の治療組成物は、米国特許第5,399,163号、第5,383,851号、第5,312,335号、第5,064,413号、第4,941,880号、第4,790,824号、または第4,596,556号に開示されているデバイスなどの無針皮下注射デバイスを用いて投与することができる。本発明において有用な周知のインプラントおよびモジュールの例には、薬物を制御された速度で供給するための埋め込み型のマイクロ注入ポンプを開示している米国特許第4,487,603号、皮膚を通して薬物を投与するための治療用デバイスを開示している米国特許第4,486,194号、薬物を正確な注入速度で送達するための薬物注入ポンプを開示している米国特許第4,447,233号、連続的な薬物送達のための可変流の埋め込み型注入機器を開示している米国特許第4,447,224号、複数チャンバ区画を有する浸透性薬物送達系を開示している米国特許第4,439,196号、および浸透性薬物送達系を開示している米国特許第4,475,196号が含まれる。これらの特許は本明細書中に参考として組み込まれている。多くの他のそのようなインプラント、送達系、およびモジュールが当業者に公知である。 V.本発明の部分の使用方法 別の態様では、本発明は、被験体に治療上有効な量の本発明の部分を投与することを含む、被験体においてRTKに関連する疾患を処置する方法を提供する。本発明の抗RTK部分、たとえば、抗体、小分子、またはペプチド性分子は、受容体チロシンキナーゼに関連する疾患の診断および処置に関与する、数々のin vitroおよびin vivoの診断的および治療的な利用性を有する。本発明の結合部分を、受容体チロシンキナーゼに関連する疾患を処置し、妨げ、そして診断するために、培養中、in vitroもしくはex vivoの細胞に、またはヒト被験体にたとえばin vivoで、投与することができる。 本明細書中で使用する「受容体チロシンキナーゼに関連する疾患」とは、RTKの活性によって媒介されるか、または異常なRTKの発現もしくは活性化に関連する疾患または状態である。受容体チロシンキナーゼに関連する疾患の例には、たとえば、加齢黄斑変性症(AMD)、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、糖尿病性網膜症または疼痛に関連する疾患などの、FGF受容体、HGF受容体、インスリン受容体、IGF−1受容体、NGF受容体、VEGF受容体、PDGF受容体−α、PDGF受容体−β、CSF−1受容体、およびFlt3受容体に関連する疾患または状態が含まれる。受容体チロシンキナーゼに関連する疾患の具体的な例には、それだけには限定されないが、胃腸管系間質腫瘍(GIST)、急性骨髄性白血病(AML)、小細胞肺がん(SCLC)、乳がん、骨転移性乳がん、リンパ性疾患および腱鞘巨細胞腫が含まれる。受容体チロシンキナーゼに関連する疾患のさらなる例には、結腸がん(小腸がんが含まれる)、肺がん、乳がん、膵がん、黒色腫(たとえば転移性悪性黒色腫)、急性骨髄性白血病、腎臓がん、膀胱がん、卵巣がんおよび前立腺がんが含まれる。本発明の方法を使用して処置し得る他のがんの例には、腎臓がん(たとえば腎細胞がん)、膠芽細胞腫、リンパ性がん、脳腫瘍、慢性または急性の白血病(急性リンパ球性白血病(ALL)、成人T細胞白血病(T−ALL)、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病が含まれる)、リンパ腫(たとえば、ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫、リンパ球性リンパ腫、原発性CNSリンパ腫、T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、皮膚T細胞リンパ腫、結節性小切れ込み細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、レナートリンパ腫、免疫芽球性リンパ腫、T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、中心芽細胞性/中心細胞性(cb/cc)濾胞性リンパ腫がん、B系統の広汎性大細胞リンパ腫、血管免疫芽球性リンパ節腫脹(AILD)様T細胞リンパ腫およびHIV関連の体腔に基づくリンパ腫)、胎生期癌、上咽頭の未分化がん腫(たとえばシュミンケ腫瘍)、キャッスルマン病、カポジ肉腫、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症および他のB細胞リンパ腫、鼻咽頭がん腫、骨がん、皮膚がん、頭部または頸部のがん、皮膚または眼内の悪性黒色腫、子宮がん、直腸がん、肛門部がん、胃がん、精巣がん、子宮がん、卵管がん、子宮内膜がん、子宮頸部がん、膣がん、外陰部がん、食道がん、小腸がん、内分泌系がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟組織肉腫、尿道がん、陰茎がん、小児期固形腫瘍、膀胱がん、腎臓または尿管のがん、腎盂がん、中枢神経系(CNS)新生物、腫瘍血管形成、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、類表皮がん、扁平細胞がん、アスベストに誘導されるものを含めた環境誘導性がん、たとえば中皮腫、ならびに前記がんの組合せが含まれる。本発明の方法を使用して処置し得るリンパ性疾患、または「リンパ系の疾患」の例には、無フィブリノーゲン血症、貧血、再生不良性貧血、溶血性貧血、先天性非球状赤血球性貧血、巨赤芽球性貧血、悪性貧血、鎌状赤血球貧血、腎性貧血、好酸球増加随伴性血管類リンパ組織増殖症、抗トロンビンIII欠乏症、ベルナール−スーリエ症候群、血液凝固障害、血小板障害、青色ゴムまり様母斑症候群、チェディアック−東症候群、クリオグロブリン血症、播種性血管内血液凝固、好酸球増加症、エルトハイム−チェスター病、胎児赤芽球症、エバンス症候群、第V因子欠乏症、第VII因子欠乏症、第X因子欠乏症、第XI因子欠乏症、第XII因子欠乏症、ファンコーニ貧血、巨大リンパ節過形成、血液疾患、異常血色素症、ヘモグロビン尿症、発作性、血友病A、血友病B、新生児出血性疾患、組織球症、組織球症、ランゲルハンス細胞、組織球症、非ランゲルハンス細胞、ヨブ症候群、白血球減少症、リンパ節炎、リンパ管平滑筋肉腫症、リンパ浮腫、メトヘモグロビン血症、脊髄形成異常症候群、骨髄線維症、骨髄化生、骨髄増殖性障害、好中球減少症、パラプロテイン血症、血小板貯蔵プール欠乏症、真性赤血球増加症、タンパク質C欠乏症、タンパク質S欠乏症、紫斑病、血小板減少性、紫斑病、血栓性血小板減少性、RH−同種免疫、サルコイドーシス、サルコイドーシス、球状赤血球症、脾破裂、サラセミア、血小板無力症、血小板減少症、ワルデンストレームマクログロブリン血症、またはヴォン・ヴィレブランド病が含まれる。 さらに、様々な腫瘍細胞上でのIII型またはV型RTKの発現を考慮すると、本発明の結合部分、組成物、および方法を使用して、たとえば胃腸管系間質腫瘍、肥満細胞疾患、および急性骨髄性白血病を含めた腫瘍形成性障害、たとえばKitを発現する腫瘍細胞の存在によって特徴づけられる障害を有する被験体を処置することができる。腫瘍形成性障害を有する他の被験体の例には、以下に罹患している被験体が含まれる:腎臓がん(たとえば腎細胞がん)、膠芽細胞腫、脳腫瘍、慢性または急性の白血病(急性リンパ球性白血病(ALL)、成人T細胞白血病(T−ALL)、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病が含まれる)、リンパ腫(たとえば、ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫、リンパ球性リンパ腫、原発性CNSリンパ腫、T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、皮膚T細胞リンパ腫、結節性小切れ込み細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、レナートリンパ腫、免疫芽球性リンパ腫、T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、中心芽細胞性/中心細胞性(cb/cc)濾胞性リンパ腫がん、B系統の広汎性大細胞リンパ腫、血管免疫芽球性リンパ節腫脹(AILD)様T細胞リンパ腫およびHIV関連の体腔に基づくリンパ腫)、胎生期癌、上咽頭の未分化がん腫(たとえばシュミンケ腫瘍)、キャッスルマン病、カポジ肉腫、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症および他のB細胞リンパ腫、鼻咽頭がん腫、骨がん、皮膚がん、頭部または頸部のがん、皮膚または眼内の悪性黒色腫、子宮がん、直腸がん、肛門部がん、胃がん、精巣がん、子宮がん、卵管がん、子宮内膜がん、子宮頸部がん、膣がん、外陰部がん、食道がん、小腸がん、内分泌系がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟組織肉腫、尿道がん、陰茎がん、小児期固形腫瘍、膀胱がん、腎臓または尿管のがん、腎盂がん、中枢神経系(CNS)新生物、腫瘍血管形成、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、類表皮がん、扁平細胞がん、アスベストに誘導されるものを含めた環境誘導性がん、たとえば中皮腫、ならびに前記がんの組合せ。 本明細書中で使用する用語「被験体」には、ヒトおよび非ヒト動物が含まれることを意図する。非ヒト動物には、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ニワトリ、両生類、および爬虫類などの、すべての脊椎動物、たとえば哺乳動物および非哺乳動物が含まれる。好ましい被験体には、受容体チロシンキナーゼに関連する疾患に罹患しているヒト被験体が含まれる。 本発明の部分(たとえば、抗体、その抗原結合性一部分、小分子、ペプチド性分子、抗体模倣体、および組成物)は、RTKに関連する疾患の治療および診断においてさらなる有用性を有する。たとえば、ヒトモノクローナル抗体、多特異性もしくは二重特異性分子、小分子、またはペプチド性分子を使用して、以下の生物活性のうちの1つまたは複数をin vivoまたはin vitroで誘発させることができる:RTK(たとえば、Kit、VEGF受容体もしくはPDGFR)を発現する細胞の増殖を阻害および/もしくは死滅させること、ヒトエフェクター細胞の存在下でRTK(たとえば、Kit、VEGF受容体もしくはPDGFR)を発現する細胞の貪食もしくはADCCを媒介すること、またはRTK、たとえばRTKのIII型もしくはV型ファミリーのメンバーの外部ドメインを不活性状態および/もしくは単量体状態に固定し、それによって受容体の活性に拮抗すること。 本発明の抗RTK部分をin vivoおよびin vitroで投与するための適切な経路は当技術分野で周知であり、当業者によって選択されることができる。たとえば、抗RTK部分は、注射(たとえば静脈内または皮下)によって投与することができる。使用する分子の適切な用量は、被験体の年齢および重量ならびに結合部分の組成物の濃度および/または処方に依存する。 既に記載したように、本発明の抗RTK部分は、1つまたは他の複数の治療剤、たとえば、細胞毒性剤、放射性毒性剤または免疫抑制剤と共に投与することができる。部分は、薬剤と連結させることができるか、または薬剤と別々に投与することができる。後者の場合(別々の投与)、結合部分は、薬剤を投与する前、後もしくはそれと同時に投与することができるか、または、他の公知治療、たとえば、抗がん治療、たとえば放射線と共に投与することができる。そのような治療剤には、とりわけ、それ単独では患者に毒性または準毒性があるレベルでのみ有効である、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、シスプラチン、硫酸ブレオマイシン、カルムスチン、クロラムブシルおよびシクロホスファミド、ヒドロキシ尿素などの抗新生物剤が含まれる。シスプラチンは、100mg/用量として4週間毎に1回静脈内投与し、アドリアマイシンは、60〜75mg/mlの用量として21日間毎に1回静脈内投与する。本発明の抗RTK結合部分と化学療法剤の共投与は、異なる機構を介して作動し、ヒト腫瘍細胞に対して細胞毒性効果を与える、2つの抗がん剤を提供する。そのような共投与は、結合部分と非反応性にさせる、薬物に対する耐性の発生または腫瘍細胞の抗原性の変化が原因の問題を解決することができる。 異常細胞増殖に関連する疾患の予防および/または処置で使用するために本発明の抗RTK部分−パートナー分子のコンジュゲートを投与する場合、投与化合物の循環濃度は、約0.001μΜ〜20μΜまたは約0.01μΜ〜5μΜを使用し得る。 本明細書中に記載の化合物の経口投与の患者用量は、典型的には約1mg/日〜約10,000mg/日、より典型的には約10mg/日〜約1,000mg/日、最も典型的には約50mg/日〜約500mg/日の範囲である。患者の体重に関連して記述すると、典型的な用量は、約0.01〜約150mg/kg/日、より典型的には約0.1〜約15mg/kg/日、最も典型的には約1〜約10mg/kg/日の範囲、たとえば5mg/kg/日または3mg/kg/日である。 少なくとも一部の実施形態では、腫瘍増殖を遅延または阻害する患者用量は、1μmol/kg/日以下であることができる。たとえば、患者用量は、0.9、0.6、0.5、0.45、0.3、0.2、0.15、または0.1μmol/kg/日以下(薬物のモルに言及)であることができる。好ましくは、抗RTK部分−薬物のコンジュゲートは、1日投薬量を少なくとも5日間の期間にわたって投与した場合に腫瘍の増殖を遅延させる。 一実施形態では、本発明のコンジュゲートを使用して、化合物(たとえば、治療剤、標識、細胞毒素、放射性毒素、免疫抑制剤など)は、RTK細胞表面受容体を有する細胞を標的とすることができ、これは、そのような化合物を抗RTK結合部分と連結することによる。たとえば、抗RTK部分を、本明細書中にその全体が参考として組み込まれている米国特許第6,281,354号および第6,548,530号、米国特許公開第20030050331号、第20030064984号、第20030073852号および第20040087497号中に記載されているか、またはWO03/022806号に公開されている毒素化合物のうちの任意のものとコンジュゲートさせることができる。したがって、また、本発明は、RTKを発現する細胞をex vivoまたはin vivoで局在化させる方法も提供する(たとえば、放射性同位元素、蛍光化合物、酵素または酵素補因子などの検出可能な標識を用いる)。 また、標的特異的なエフェクター細胞、たとえば、本発明の組成物(たとえば、抗体、その抗原結合性一部分、小分子、またはペプチド性分子)と連結したエフェクター細胞は、治療剤としても使用することができる。標的化のためのエフェクター細胞は、マクロファージ、好中球または単球などのヒト白血球であることができる。他の細胞には、好酸球、ナチュラルキラー細胞および他のIgGもしくはIgA受容体保有細胞が含まれる。所望する場合は、エフェクター細胞を処置する被験体から得ることができる。標的特異的なエフェクター細胞は、生理的に許容される溶液中の細胞の懸濁液として投与することができる。投与する細胞の数は108〜109個の桁数であることができるが、治療目的に応じて変動する。一般に、量は、標的細胞、たとえばRTKを発現する腫瘍細胞において局在化し、たとえば貪食によって細胞死滅をもたらすために十分なものである。また、投与経路も変動することができる。 標的特異的なエフェクター細胞を用いた治療は、標的細胞を除去するための他の技法と併せて行うことができる。たとえば、本発明の部分および/またはこれらの組成物を備えたエフェクター細胞を使用した抗腫瘍治療を、化学療法と併せて使用することができる。 本発明は、試料および対照試料を、RTK結合部分、たとえばヒトモノクローナル抗体、またはヒトRTKと特異的に結合する他の結合部分と、抗体または他の部分とKitなどのヒトRTKまたはヒトVEGF受容体との間の複合体の形成を可能にする条件下で接触させることを含む、試料中のヒトRTK抗原の存在を検出する方法、またはヒトRTK抗原(たとえば、ヒトKit RTK、ヒトVEGF受容体もしくはPDGFRのIg様ドメイン)の量を測定する方法をさらに提供する。その後、複合体の形成を検出し、ここで、対照試料と比較した試料間の複合体形成の相違が、試料中のRTK、たとえば、ヒトKit RTK、ヒトVEGF受容体またはPDGFRのRTKの存在の指標である。 抗RTK結合部分(たとえば、抗体、その抗原結合性一部分、小分子、またはペプチド性分子)および使用説明書を含むキットも、本発明の範囲内にある。キットは、免疫抑制試薬、細胞毒性剤もしくは放射性毒性剤などの1つもしくは複数の追加の試薬、または1つもしくは複数の追加の本発明の抗RTK部分(たとえば、第1の抗RTK部分とは別個のRTK抗原中のエピトープと結合する相補的な活性を有する抗RTK結合部分)をさらに含有することができる。典型的には、キットには、キットの内容物の意図する使用を示すラベルが含まれる。用語ラベルには、キット上もしくはそれと共に提供されるか、または他の様式でキットに付随する、任意の文書または記録資料が含まれる。 本発明は、さらに限定するとは解釈されるべきでない以下の実施例によってさらに例示されている。本出願の全体にわたって引用したすべての図およびすべての参考文献、特許、公開特許出願、および図面の内容は、明確にその全体が本明細書中に参考として組み込まれている。 実施例1〜19への導入 幹細胞因子(SCF)とは、受容体チロシンキナーゼKit(SCF受容体としても公知である)と結合してそれを活性化することによってその多様な細胞応答を媒介するサイトカインである。Kitは、表面受容体の活性化されかつ切断された形態を捕捉したネコのレトロウイルス中のがん遺伝子として最初に発見された(Besmerら(1986年) J Virol 60巻:194〜203頁)。SCFはマウスsteel(SI)遺伝子座によってコードされている一方で、Kitはマウスにおける優性のwhite spotting(W)遺伝子座によってコードされている(Copelandら(1990年) Cell 63巻:175〜183頁、Huangら(1990年) Cell 63巻:225〜233頁、FlanaganおよびLeder (1990年) Cell 63巻:185〜194頁、Tanら(1990年) Science 247巻:209〜212頁、Bernsteinら(1990年) Ciba Found Symp 148巻:158〜166頁、discussion 166〜172頁)。SCFは非共有結合性ホモ二量体として機能し、選択的RNAスプライシングおよびタンパク質分解性プロセッシングによって生じたSCFの膜係留形態および可溶性形態の両方が記載されている(Ashman(1999年)Int J Biochem Cell Biol 31巻:1037〜1051頁中に総説)。Kitは、PDGF受容体−αおよびβ、CSF−1受容体(M−CSF受容体またはFmsとしても公知)、ならびにFlt3受容体(Flk2としても公知)も含まれる、III型受容体チロシンキナーゼ(RTK)ファミリーのメンバーである(UllrichおよびSchlessinger (1990年) Cell 61巻:203〜212頁、Blume−Jensenら(2001年) Nature 411巻:355〜365頁中に総説)。Kitは、1個の膜貫通(TM)ドメインによって細胞質領域と接続された、グリコシル化された細胞外リガンド結合ドメイン(外部ドメイン)から構成される(Schlessinger (2000年) Cell 103巻:211〜225頁中に総説)。KitおよびIII型RTKの他のメンバーの外部ドメインはすべて5個のIg様ドメインを含有しており、第2および第3の膜遠位ドメインはリガンド認識において役割を果たすことが示された(UllrichおよびSchlessinger (1990年) Cell 61巻:203〜212頁に総説)。その細胞外リガンド結合ドメインがもっぱら複数のIg様反復から構成されている他のRTKには、VEGF受容体ファミリー(7個のIg様)、CCK4受容体(7個のIg様)およびFGF受容体(3個のIg様)のメンバーが含まれる。Kitの細胞質領域は、大きなキナーゼ−挿入領域を有するタンパク質チロシンキナーゼ(PTK)ドメインを含有しており、これはIII型RTKの別の特徴である。SCFとKitとの結合は、受容体の二量体化、分子間自己リン酸化およびPTKの活性化をもたらす。Kitの第4のIg様ドメインが、一価または二価のどちらかのSCF結合に応答してKitの二量体化の原因となっていることが提案された(Levら(1992年b) J Biol Chem 267巻:15970〜15977頁、Blechmanら(1995年) Cell 80巻:103〜113頁)。しかし、他の研究により、Kitのリガンド誘導性の二量体化がSCFの二価結合によって駆動されていることが示されている(Philoら(1996年) J Biol Chem 271巻:6895〜6902頁、Lemmonら(1997年) J Biol Chem 272巻:6311〜6317頁)。 SCF遺伝子座またはKit遺伝子座を変異させたマウスの特徴づけにより、SCFおよびKitが造血細胞、メラニン形成細胞、生殖細胞および腸管のペースメーカー細胞(intestinal pacemaker cell)の発生に必要であることが示されている(Ashman (1999年) Int J Biochem Cell Biol 31巻:1037〜1051頁中に総説)。ヒトでは、Kit中の機能喪失型変異は、腹側の胸部および腹部の色素脱失によって特徴づけられているまだら症体質(piebald trait)、白い前髪(white fareflock of hair)、聴覚消失および便秘を引き起こす(Fleischmanら(1991年) Proc Natl Acad Sci U S A 88巻:10885〜10889頁)。Kitの様々な機能獲得型変異が様々な種類のヒトがん中で見つかった。活性化Kit変異は、他のがんの中でもとりわけ、胃腸管系間質腫瘍(GIST)、急性骨髄性白血病(AML)および肥満細胞性白血病(MCL)中で見つかった。変異は、膜近位のIg様ドメイン(D5)(エクソン8および9)、膜近傍(JM)ドメイン(エクソン11)、ならびにチロシンキナーゼ(PTK)ドメイン(エクソン17)中で同定された(Forbesら(2006年) COSMIC 2005. BR J. CANCER、94巻:318〜22頁。Somatic mutation database: Catalogue of Somatic Mutations in Cancer http://www.sanger.ac.uk/genetics/CGP/cosmic/を参照)。自己阻害性の束縛を解放することによって、JMドメインおよびPTKドメイン中の機能獲得型変異がKitの構成的な活性化をもたらしたという十分な証拠が存在するが(Molら(2004年) J Biol Chem. 279巻:31655〜31663頁)、外部ドメインのD5中の機能獲得型変異の根底にある分子機構は理解されていない。KitおよびPDGFR、ならびにSCF、PDGFα/β、および結合したKit/SCF複合体などのRTKの構造をより良好に特徴づける必要性が存在する。そのような特徴づけにより、薬物、医薬品、または他の生物製剤を用いて標的化し得る領域の、情報に基づいた同定がもたらされるであろう。 幹細胞因子(SCF)は、Kitの外部ドメインと結合することによってその複数の細胞応答を開始させ、チロシンキナーゼの活性化をもたらす。以下の実施例のうちの一部では、SCF刺激の前および後のKitの外部ドメイン全体の結晶構造を記載する。構造は、Kitの二量体化が、その唯一の役割が2つのKit分子を一緒にすることであるSCF結合によって駆動されることを示している。受容体の二量体化に次いで、2つのKit分子の膜近位のIg様ドメインD4およびD5間の側方相互作用を可能にするコンフォメーション変化が起こる。培養細胞を用いた実験は、Kitの活性化が、D4−D4相互作用に重要なアミノ酸中の点変異によって損なわれることを示している。さらに、様々な腫瘍発生性変異がD5−D5境界領域にマッピングされている。Kit構造の主要な特徴である、リガンド誘導性の受容体の二量体化およびD4−D4境界領域中の重要な残基は他の受容体中で保存されているため、本報告書中で公表するKit刺激の機構は他の受容体の活性化にも適用され得る。これは、これらの境界領域に標的化された薬物または生物製剤を治療剤として使用できることを示している。 本明細書中に記載のSCF刺激の前および後のKitの外部ドメイン全体のX線結晶構造の解明により、SCF誘導性のKitの二量体化および活性化の機構に関する貴重な識見を提供された。構造は、D1、D2およびD3と命名されたKitの最初の3個のIg様ドメインがSCF結合に関与することを示している。SCF結合の主な役割は、2つのKit分子を架橋結合させて細胞膜上のKitの局所濃度を増加させることである。これは、Kitの膜近位領域中の大きなコンフォメーション変化を促進し、隣接するKit分子のD4またはD5間のホモタイプ相互作用をもたらす。2つの隣接するKit分子のD4間の側方相互作用は、それぞれのD4プロトマーのEFループからの2対の塩橋を介した直接接触によって起こる。膜近位のD5ドメインは、隣接するKit分子間のさらなる間接的な相互作用を提供して、さらに外部ドメインの膜近位部分を安定化させ、細胞質チロシンキナーゼの活性化を可能にする距離および配向で配置する。 以下の実施例のうちのいくつかにおいて、単量体形態およびSCF誘導性のホモ二量体形態(SCF−Kitの2:2複合体)の両方における、Kitの外部ドメイン全体の結晶構造が記載されている。3.0Åの分解能の占有されていない単量体および3.5Åの分解能のSCF誘導性のホモ二量体の詳細な図は、Kitおよび他のRTKの活性化機構に関する新規の識見を提供する。当業者には、以下に記載の実験は他のRTKを用いて実施し得ることを理解されよう。本発明の方法によって使用し得るRTK配列の例には、それだけには限定されないが、Kit mRNAのGenbank参照配列NM_000222.2(タンパク質NP_000213.1をコードしている;(配列番号92))またはKit mRNAのバリアント2のGenbank参照配列NM_001093772.1(タンパク質NP_001087241.1をコードしている;(配列番号93))が含まれ、タンパク質は標準の一文字のアミノ酸コードによって指定されている。 (実施例1) SCFおよびKitの発現、精製および結晶化 D1、D2、D3、D4およびD5と命名された5個のIg様ドメインから構成されるKitの外部ドメイン全体を、バキュロウイルス発現系を使用して昆虫細胞中で発現させた。精製したKit外部ドメイン単量体またはSCF誘導性のKit外部ドメインホモ二量体(SCF−Kitの2:2複合体)を、結晶の成長および最適化のための大規模なスクリーニング、次いでその結晶構造の決定にそれぞれ供した。 タンパク質の発現および精製 C末端にポリヒスチジンタグを含有する可溶性Kit外部ドメイン(アミノ酸1〜519)を、バキュロウイルス発現系を使用して昆虫細胞(Sf9)中で発現させた。Kit外部ドメインをNi−キレートによって、次いでサイズ排除クロマトグラフィー(Superdex200、GE Healthcare)によって精製した。エンドグリコシダーゼF1を使用した部分的脱グリコシル化の後、陰イオン交換クロマトグラフィー(MonoQ、GE Healthcare)を使用して外部ドメインをさらに精製した。SCF(1〜141)を発現させ、再折り畳みさせ、以前に記載されているように精製した(Langleyら(1994年) Arch Biochem Biophys 311巻:55〜61頁、Zhangら(2000年) Proc Natl Acad Sci U S A 97巻:7732〜7737頁)。 細胞系および発現ベクター HEK細胞およびNIH3T3細胞を、それぞれ10%のFCSおよび10%のCSを補充したDMEM中で培養した。SCF刺激の前に、以前に記載されているように細胞を無血清培地中で終夜欠乏状態にした(Kouharaら(1997年) Cell 30巻:693〜702頁)。トランスフェクションは、Lipofectamin(Invitrogen)を用いて、製造者の指示に従って行った。完全長KitのcDNAを、一過性のトランスフェクションのためにはRK5発現ベクター内に、および安定な発現にはpBABE/puroベクター内にサブクローニングした(Kouharaら(1997年) Cell 30巻:693〜702頁)。抗Kit抗体は、ウサギを組換えKit外部ドメインで免疫化することによって産生させた。モノクローナル抗Kit抗体(Santa Cruz)を免疫ブロッティングに使用した。抗ホスホチロシン(抗pTyr)抗体はUpstate Biotechnologyから購入した。 結晶化およびデータ収集 Kit外部ドメイン単独またはSCFとの複合体の試料を、結晶の成長および最適化のための大規模なスクリーニングに供した。約0.12×0.1×0.05mmの寸法の脱グリコシル化された外部ドメインの結晶は、リン酸緩衝液中、ポリエチレングリコール(PEG)を沈殿剤として用いて(0.1MのNa−Pi緩衝液、pH6.0、0.2MのKCl、12%のPEG400)、4°で得られた。すべての結晶を、5〜18%のグリセロールを補充したリザーバ溶液に数秒間浸し、フラッシュ冷却し、データ収集の間100°Kの窒素ガス流中に保った。結晶はロンボイド空間群(rhomboidal space group)R3に属しており、六方格子設定で単位格子の寸法はa=162.4Åおよびc=67.1Åであり、非対称単位(asymmetric unit)あたり1個の分子であった。Kitの白金、臭素およびヨウ素誘導体は、結晶を、0.1mM〜50mMの濃度範囲の重原子試薬を含有するリザーバ溶液中に、277Kで、数秒間から10日間浸漬することによって調製した。 SCF−Kit複合体の結晶は、ポリエチレングリコール(PEG)を沈殿剤として用いて(0.2Mの硫酸アンモニウム、8〜12%のPEG8000、5〜8%のエチレングリコール、pH7.0〜8.5)、4℃で成長させ、回折データは、NSLS、Brookhaven National LaboratoryのX25ビームラインで、ADSD quantum−210CCD検出器を用いて3.5Åの分解能まで収集された。結晶は単斜空間群C2に属しており、単位格子の寸法はa=269.5Å、b=52.1Å、c=189.8Å、β=108.2°であり、これは非対称単位中の2組のSCF分子およびKit分子から構成される。すべてのデータ組は、DENZOおよびSCALEPACKおよびHKL2000プログラムパッケージを使用して処理およびスケーリングした(Otwinowskiら(1997年) Methods Enzymol. 276巻:307〜326頁)。データ収集の統計量は表1A中に要約されている。 (実施例2) 構造決定 実験段階は、異常散乱を用いた多重同形置換(MIRAS、multiple isomorphous replacement with anomalous scattering)を使用することによって、および多波長異常回折(MAD、multi−wavelength anomalous diffraction)によって、3.0Åの分解能まで計算した(表1A)。生じる電子密度マップは、βサンドイッチ構造の連続的な電子密度、および明瞭な溶媒−タンパク質の境界を示した。単量体Kit外部ドメインの分子モデルは、実験的電子密度マップ内に手動で構築した。ネイティブデータ組を結晶学的R因子25.4%および自由R因子29.6%まで使用して構造を3.0Åの分解能まで精密化した(表1B)。SCF−Kitの2:2複合体の構造は、本報告書中に記載されている単量体形態の構造およびSCFの構造(Zhangら(2000年) Proc Natl Acad Sci U S A 97巻:7732〜7737頁、タンパク質データバンクからコード:1EXZで検索可能)を検索モデルとして使用した分子置換によって解析した。ネイティブデータ組を結晶学的R因子24.9%および自由R因子29.5%まで使用して構造を3.5Åの分解能まで精密化した(表1Aおよび1B)。分子像はPymol(pymol.sourceforge.net)およびCCP4MG(Pottertonら(2004年) Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 60巻:2288〜2294頁)ソフトウェアを使用して生成した。Kit単量体およびSCF−Kit複合体の原子座標および構造因子は、それぞれ受託コード2EC8および2E9Wでタンパク質データバンク(rcsb.org/pdb)に寄託されている。 (実施例3) Kit外部ドメインの構造の分析 外部ドメインの構造の一般的な分析 Kit外部ドメインは、約170×60×50Åの寸法を有する細長い蛇のような形状を示す(図1A)。KitのD1、D2、D3、D4およびD5ドメインは典型的な免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)の折り畳みを示し、2つの逆平行βシートからなるβサンドイッチへとアセンブルされる、ABCC’DEFGと示される8本のβストランドから構成される(図1A)。D1、D2、D3およびD5はそれぞれ、B5およびF5(それぞれストランドBおよびFの第5のアミノ酸)でシステイン残基を接続する保存的なジスルフィド結合を含有しており、これは、2つのβシートを架橋してIg様の折り畳みの疎水性コアの中心を形成する位置である(HarpazおよびChothia (1994年) J Mol Biol 238巻:528〜539頁)。D2およびD5は2つのジスルフィド結合を含有しており、D4はシステイン残基を全く含有しないが、それにもかかわらず、B5およびF5での保存的なシステイン残基がそれぞれバリンおよびフェニルアラニン残基によって置き換えられていても、D4のIg様の折り畳みの完全性は維持される。 D1とD2との間の、2つのドメインの軸に沿った角度は76°であり(図1A、B)、これはインターロイキン−1β受容体の第1および第2のIg様ドメインの間の配向に似ている(Vigersら(1997年) Nature、386巻:190〜194頁)。対照的に、D2とD3の間の角度は150°であり、D3とD4の間は119°であり、D4とD5の間は162°である。様々なIg様ドメインのABEDとA’GFCのβ−シートの間の配向は、D1−D2では約180°であり、D2−D3では約180°であり、D3−D4では約90°であり、D4−D5では約180°である(図1)。 Kit外部ドメインの5個すべてのIg様ドメインおよびIgの折り畳みの標準として使用されるテロキン(Holdenら(1992年) J. Mol. Biol. 227巻:840〜851頁)の重ね合わせにより、等価なCα原子で1.5〜2.9Åの二乗平均平方根(r.m.s.)偏差が明らかとなる。テロキンと重ね合わせた場合のそのより高いr.m.s.d.値によって明らかとなるように、D2は、5個のKitのIg様ドメインのうちで最も多岐にわたるものである(図8)。Ig様ドメイン中の主要なアミノ酸の構造上の保存およびその二次構造のトポロジーに基づいて(Harpazら(1994年) J Mol Biol 238巻:528〜539頁、Halabyら(1999年) Protein Eng 12巻:563〜571頁)、D1、D2、D3およびD4はIサブセットに属しており、D5はIgSFのC2およびIgCAMサブセットに関連している。さらに、IgSFの構造的に保存された20個のフィンガープリント残基のうち(Harpazら(1994年) J Mol Biol 238巻:528〜539頁)、10〜14個の残基がKitの5個のIg様ドメイン中で保存されている(表2)。 KitのIg様ドメインの構造の詳細な分析 KitのD1。D1の折り畳みは、2つのβシートから構成されるβサンドイッチである。1つのシートは3本のストランド、A、BおよびEによって形成されており、第2のシートは5本のストランド、A’、G、F、CおよびC’(ABE/A’GFCC’)から構成される。Pro41でシス−コンフォメーションによって中断された第1のストランドは、それぞれストランドBおよびGと対合するAおよびA’の2本のより短いストランドへと分割される。B5のCys58をF5のCys97と接続するジスルフィド結合が2つのβシートを架橋する。ストランドCと相互作用するかなり長いストランドC’は、ポリペプチド鎖のC末端を、ストランドEと直接接続しているD1の上面に向かわせる。Ig様ドメインの命名法に基づいて、D1はIgSFのI2サブセットに属する(Casasnovasら(1998年) Proc Natl Acad Sci USA 95巻:4134〜4139頁)。 KitのD2。D2は、ストランドB、E、およびDによって形成された小さなβ−シート、ストランドA’、G、FおよびC(BED/A’GFC)から構成された第2のβ−シート、ならびにストランドEとFとの間のクロスオーバーでの追加のヘリックス(残基177〜179)からなる。IgSFのIセットの11〜20個の特徴残基がD2上で同定されているが、このIg様ドメインは、いくつかの様式でIgSFの標準のI1組と異なる。D2はC4位置にLeu残基を有する一方で、IgSFの他のI1組は保存されたTrpを有する。ストランドB中の水素結合のパターンは、ストランドBおよびB’と呼ばれる2本の短いβストランドの形成に起因して変更されている。追加のB’ストランドはストランドAとアラインメントされており、AB’トポロジーを有する短いβシートを形成する。Gストランドは、アミノ酸197〜199での挿入が原因で2本の短いストランド、G(下側)およびG’(上側)へと分割されており、これはストランドA’とβシートの形成をもたらす。Gストランド中の残基197〜199での「捻れ」によって引き起こされた水素結合パターンの破壊は、Ser197の側鎖とCys186の主鎖アミドとの間の水素結合によって補償される。注目すべきは、Ser197は、SerまたはThr残基として、様々な種からのKit中および他のIII型RTK中で保存されている。D2は、Cys151とCys183との間に追加のジスルフィド結合を含有しており、これは、CDループをFストランドの末端と架橋して、ストランドCおよびCDループにさらなる安定性をもたらす。追加のジスルフィド架橋は、ストランドCおよびFの間の低下した水素結合のネットワークを補償し得る。これら2つのCysは、ゼブラフィッシュからヒトまでのKit中で高度に保存されている。 KitのD3。D3は、IgSFのI1サブセットに属する2組のβシート(ABED/A’GFC)から構成される。2つのβシートは、ストランドB上のCys233およびストランドF上のCys290の間のジスルフィド結合によって架橋されている。テロキン(PDBコード:1TLK)およびD3構造の比較により、D3の98個のアラインメントしたCα残基について10.4のZスコアおよび2.0Åのr.m.s.偏差が示される。 KitのD4。D4は、B5およびF5でシステイン間の特徴的なジスルフィド結合を欠いているが、D4はIgSFトポロジーを維持する。さらに、IセットのIgSFの20個のフィンガープリント残基のうち、13個がD4中で保存されている。D4の構造的完全性は、B5およびF5にそれぞれ存在する埋没脂肪族(Val335)および芳香族(Phe392)の残基の間の相互作用によって保存されており、これはドメインの疎水性コアの一部を構成する。DALIを使用した構造比較により、KitのIg様ドメインのうちD4がテロキン(タンパク質データバンクコード:1TLKで検索)に最も類似しており、89個のアラインメントしたCα残基について11.9のZスコアおよび1.5Åのr.m.s.d.であることが示される。Val335およびPhe392のCα−Cα間の8.6Åの距離は、B5およびF5を接続するジスルフィド結合を欠くIgSFドメイン中の類似の位置の間で見られる距離の範囲内である。たとえば、やはりジスルフィド結合を欠くタイチンIg様ドメインM5(タンパク質データバンクコード:1TNM)は、2Åのr.m.s.dでD4と重ね合わせられ、B5およびF5の位置の間で8.9Åの距離を有する。D4は、それぞれがアレンジABED/A’GFCを有する4本のストランドを含有する2つのβシートから構成される。A’ストランドの第1の残基であるThr321は、高度に保存されたPhe405の芳香環とファンデルワールス接触を形成する。注目すべきは、ドメインの上側の上に向かって折り畳まれたCDループが3つの主な相互作用によって安定化されることである。Thr354の側鎖は、Gln347の側鎖およびTrp348の主鎖カルボニルと水素結合を形成する。疎水性コアの端部に位置する疎水性残基(Trp348、Tyr350、Trp359、Val377、Leu379およびTyr390)は、Phe355に疎水性環境を提供する。CDループは注目すべき配列の保存を示さないが、このループは、すべてのIII型ファミリーのRTK中で8個のアミノ酸を含有する。 KitのD5。D5はIgSFのC2およびIgCAMサブセットに属しており、20個のフィンガープリント残基のうちの10個がこのモジュール中で保存されている。D5は、ABED/CFGトポロジー、2つのβシートを架橋するB5のCys428およびF5のCys491の間のジスルフィド結合、ならびにCストランドおよびCDループを架橋する第2のジスルフィド結合を示す。2つのジスルフィド結合はすべてのKitおよびIII型RTK中で保存されている。注目すべきは、D5の上半分が神経細胞接着分子の第3のIgに似ていることである。 アキソニン−1/TAG−1(タンパク質データバンクコード1CS6)。いくつかの特徴を、より低い程度ではあるが、テロキン(タンパク質データバンクコード1FHG)、FGFR(タンパク質データバンクコード1CVS)およびRTK Musk(タンパク質データバンクコード2IEP)中で同定することができる。これらには、B5をF5と接続するジスルフィド結合に近接した、2つのAla残基(Ala430およびAla493)が含まれて、この領域中の小さな側鎖の存在は、ドメインの上部での密な充填を可能にする。第2の特徴は、A、B、CおよびGストランド中のProおよびGly残基である、それぞれPro413、Gly432、Pro436およびGly498の環アレンジである。第3の特徴は、FGおよびBCループのそれぞれVal497およびPro434の主鎖と水素結合を形成する、F9中のAsn残基(Asn495)の存在である。これらが一緒になって、D5の上部のこれらの3つの特徴が、細胞接着タンパク質のIg様ドメインの立体配置に類似の密に充填された立体配置をもたらす。 (実施例4) Kit単量体形態中のIg様ドメイン間の相互作用 Kitの5個のIg様ドメイン間のドメイン間相互作用は、Kit外部ドメイン単量体の全体的なトポロジーの維持に関与する(図1)。D2に対するD1の配向は、2つのIg様ドメイン間の多数の相互作用によって引き起こされる大規模な埋没表面積によって決定される(図1B)。D1−D2境界領域中の1240Å2の埋没表面積は、500〜800Å2の範囲であるKit外部ドメイン中の3つの他のIg様間境界領域を含めた、竿様の多ドメインIgSF構造のほとんどのIg様ドメイン間の境界領域の埋没表面積よりもはるかに大きい(Suら(1998年) Science 281巻:991〜995頁)。この境界領域は、D1のストランドA’およびG、ループEFおよびCC’とストランドAのN末端領域、ストランドBのC末端、D2のループBCおよびDEとの間の疎水性かつ静電気的な相互作用によって主に形成される(図1B)。さらに、D1のストランドG、D1およびD2を接続するリンカー領域ならびにD2のBCループからのアミノ酸を含めた、D1−D2境界領域中の多くの残基が、様々な種からのKitで保存されている(図1B)。 D2−D3境界領域の埋没表面積は約780Å2である。D2−D3境界領域は、2つの静電気的な相互作用によって囲まれた小さな疎水性パッチから構成される。この境界領域は、D2のEFループとD3のDEループとの間の相互作用ならびにD2−D3リンカー領域とD3のFGおよびBCループとの間の相互作用によって形成される(図1C)。D3−D4境界領域の埋没表面積は約570A2である。D3およびD4は、主にD3のストランドA’およびGとD4のBCおよびDEループによって相互作用する(図1D)。D3−D4境界領域の長さは、D3に対するD4の角度アレンジが原因で約20Åであり、2つのIg様ドメインの長軸に沿った角度は119°である。D4−D5境界領域は、主に疎水性相互作用によって媒介される、760Å2の埋没表面積を形成する(図1E)。D4のストランドA、GおよびFと、D5のBCおよびDEループとの間、ならびにD4−D5リンカー領域との間の相互作用によって、この境界領域が形成される(図1E)。 Kit単量体中のIg様ドメイン間相互作用に関する詳細なドメイン毎の情報 D1−D2境界領域。D1の残基Ile47、Ile70、Leu71、Ala89、Tyr108およびPhe110とD2のLeu119、Pro137、Leu138、Pro141、Pro166およびLys167側鎖との間の疎水性相互作用は、ドメイン間相互作用を安定化する(図1B)。D1のArg112とD2のAsp140との間の相互作用およびD1のAsp72とD2のArg135との間の相互作用を含めた疎水性パッチを取り囲む領域中には、2つの主要な静電気的な相互作用が存在する(図1B)。 D2−D3境界領域。疎水性パッチは、Arg177の脂肪族部分ならびにPro206、Phe208、Val238およびPhe267の側鎖から構成される。静電気的な相互作用は、D2のGlu128およびAsp129の側鎖とD3のLys209との間の水素結合を含む(図1C)。Arg177の側鎖とGlu128の側鎖との間の塩橋は、D2中のArg177の側鎖およびPro206の側鎖ならびにD3中のPhe267の位置を安定化して、D2中のArg177の側鎖の脂肪族部分に疎水性環境を作製する(図1C)。第2の静電気的な相互作用は、D2中のArg181の側鎖とD3のAsp266の側鎖によって媒介される。 D3−D4境界領域。D3−D4境界領域中の疎水性相互作用には、D3からのVal308およびLeu222とD4からのPhe312、Phe340、およびIle371との間のものが含まれる。D3−D4境界領域は、他のIg様ドメイン間の境界領域よりも小さい埋没面積を覆う(図1D)。 D4−D5境界領域。D4−D5境界領域上の疎水性パッチには、それぞれD4のAおよびGストランドからのPhe324およびTyr408ならびにD5のBCループからのPhe433が含まれる。さらに、ファンデルワールス接触は、疎水性パッチを取り囲む境界領域の安定化に寄与し、D4のPhe324、Gly384、Thr389、Tyr408、Asn410、Thr411およびMet351は、D5のVal497、Phe433、Gly470、Phe649およびLys471と相互作用する(図1E)。 (実施例5) 結合したSCF−Kit複合体の全体的な構造の分析 SCF−Kit複合体の構造は、非対称単位中の2組の1:1複合体が非結晶学的な二回回転対称性によって関連している、2:2の化学量論を示す(図2)。結晶格子中の観察されたSCF−Kitの2:2複合体は、Kitの二量体化が二量体SCFリガンドによって駆動されることを示す実験と一致している(Philoら(1996年) J Biol Chem 271巻:6895〜6902頁、Lemmonら(1997年) J Biol Chem 272巻:6311〜6317頁)。2組のKit外部ドメインおよびSCF分子は、逆さまの文字「A」に似ており、寸法は約170×130×70Åである(図2Aおよび図9)。 Kitと結合したSCFの全体的な構造は、以前に記載されている遊離SCFの構造に類似している(Zhangら(2000年) Proc Natl Acad Sci U S A 97巻:7732〜7737頁、Jiangら(2000年) Embo J 19巻:3192〜3203頁)。SCF−Kitの2:2複合体の構造は、個々のSCFプロトマーが個々のKitプロトマーのD1、D2およびD3と直接結合することを示している(図2B)。その結果、単一の受容体プロトマーは、SCFプロトマー上の同様の二回(two−fold)関連表面と対称な複合体を形成する。また、Kitの二量体化は、Kitの2つの膜近位Ig様ドメイン間のホモタイプ相互作用、すなわち、D4−D4およびD5−D5の相互作用によっても媒介される(図2B)。これは、C末端をそれらが膜貫通ドメインと接続される場所から互いに15Å以内に近接させる、分子の残りの部分に対して劇的に変更されたD4およびD5の立体配置をもたらす(図2Bおよび図9)。また、構造は、約50×50×15Åの寸法を有する複合体の中心の大きな空洞の存在によっても特徴づけられている(図2B)。結晶構造は、SCFのそれぞれのプロトマーが単一のKit分子と排他的に結合し、受容体の二量体化がさらなる受容体−受容体の相互作用を促進するSCF二量体によって駆動されることを示している。 (実施例6) KitのSCF結合領域の分析 SCFは、SCFの4つのヘリックスバンドルがD1、D2およびD3の長軸に垂直に配向されており、SCFおよびKitのC末端が逆方向を向いている立体配置で、KitのD1、D2およびD3によって形成された凹表面と結合している(図2、3および図9)。KitとSCFプロトマーのそれぞれとの間の境界領域に埋没した溶媒接近可能な表面積のは約2060Å2であり、これは、公知のリガンド受容体境界領域の範囲内にある埋没表面積である。SCF−Kitの境界領域を3つの結合部位に分割することが可能である(図3A、B、表2、および表3)。部位−IはD1上に位置しており、部位−IIはD2およびD2−D3リンカー領域中に位置しており、部位−IIIはD3中に位置している。部位I、IIおよびIIIの埋没表面積は、それぞれ約280、770および1010Å2である。 部位−I 図3C中に提示するように、SCFのαC−β2ループはD1のストランドC’に垂直にアラインメントされている。D1のAsp72、Glu73およびThr74ならびにSCFのLys99’、Ser101’およびPhe102’は、Cαに6〜8Åの距離で近接して位置しており、これは、これらの残基がD1とSCFとの間の相互作用に参加している可能性があることを示している。αC−β2ループの乏しい側鎖電子密度が原因で、具体的な相互作用は定義できなかった。 部位−II SCF結合は、大部分が、Kit上の荷電表面の相補的な(complimentary)静電気的な相互作用によって媒介される(図3A、B、D)。塩橋がKitの塩基性アミノ酸Arg122、Arg181、Lys203およびArg205とSCF上の酸性アミノ酸Asp54’、Asp77’、Asp84’およびGlu88’との間に形成される。Arg122のコンフォメーションは、KitのGlu198とSCFのAsp54’との間の塩橋によって安定化されている。図3Dは、D2上の主要な相互作用する残基のうちの3つ、Tyr125、Arg181およびLys203が同じ平面上にアラインメントされており、αBのAsp77’、Asn81’、Asp84’、Ser53’およびThr57’ならびにSCFのαCと水素結合を形成することを示している。また、D2のSer123およびIle201とSCFのVal50’およびThr57’との間のファンデルワールス接触も、リガンド−受容体の複合体の形成に寄与する。しかし、他の種からのKitおよびSCF中の部位−IIの残基中には注目すべき相違が存在する(図3、図8および図10)。Arg181およびLys203は哺乳動物中の塩基性アミノ酸として不変である一方で、Tyr125はマウスおよびラット中でフェニルアラニンによって置換されており、これはほとんどの場合に水素結合の損失をもたらす。KitのArg205は高度に保存されたアミノ酸である一方で、Glu88’はマウスおよびラット中でそれぞれロイシンおよびアラニン残基によって置換されている。さらに、ヒト中のKitのArg122およびSCFのAsp54’は、マウスおよびラット中でそれぞれロイシンまたはバリンによって置換されている。これらの置換は、ヒトKitに対するげっ歯類SCFの親和性の低下の原因となる可能性がある(Levら(1992年b) J Biol Chem 267巻:15970〜15977頁)。 部位−III SCFのN末端セグメントはD3のストランドDと相互作用する(図3A、E)。水素結合がSCFのAsn10’の側鎖とSer261の主鎖アミドおよびカルボニル基との間、ならびにD3上のAsp260およびTrp262の側鎖との間に形成される。さらに、SCFのThr9’およびAsn11’は、KitのSer261およびHis263の側鎖および主鎖アミドとそれぞれ結合する。SCFの変異分析により、Asn10’をアラニンまたはグルタミン酸残基で置換することでKitに対するSCFの結合親和性が約10分の1になり、Asn10’(または他の種中のAsp)が生物活性に必要であることが示されている(Hsuら(1998年) Biochemistry 37巻:2251〜2262頁)。様々な種からのSCF中の受容体結合境界領域の比較は、Asn10’(またはAsp)が高度に保存された残基であることを示している(図8)。さらなる重要な相互作用は、SCFのAsn6’およびArg7’によって、KitのD3上のTyr259、Thr269、Ser240、Val242、Ser241、Ser244とのファンデルワールス接触を介して媒介されている。 (実施例7) Kit/SCF構造および結合に関連するコンフォメーション変化の分析 Kitのリガンド結合ドメインはSCF結合の準備がある Kit単量体形態の個々のD1、D2、およびD3の構造とSCF誘導性のホモ二量体形態の対応する構造との重ね合わせにより、D1、D2、およびD3中の82、92、および100個のアラインメントしたCα残基についてそれぞれ0.5、0.8、および1.1Åのr.m.s.d.値が明らかとなる。同様に、Kit単量体のD1−D2−D3領域全体の構造とSCF−Kitの2:2複合体中の対応する構造との重ね合わせにより、D1−D2−D3領域の274個のアラインメントしたCα残基について1.1Åのr.m.s.d.が明らかとなる。著しいことに、KitのSCF結合ポケットの構造には顕著な主鎖変化が存在しない(図3および図11)。しかし、いくつかの軽微な構造変化がSCF結合の際にSCF結合間隙(cleft)中で検出された。SCF結合の後に、D2のストランドG、F、およびCの上半分(アミノ酸167〜187および143〜166)中で構造変化が見られる(図1A、2A)。これらのストランドはSCF結合境界領域の反対側に位置しており、SCFとのどのような直接接触の媒介にも関与していない。全体的に、Kit単量体の構造とSCFで占有されたKitの二量体の構造との比較は、KitのD1−D2−D3領域を、SCF結合、次いで二量体SCF分子によって駆動されるKitの二量体化の準備がある機能的単位としてみなし得ることを示している。 Kitと結合したSCF分子中のコンフォメーション変化 Kitと結合したSCFの全体的な構造は遊離SCFの構造と類似しているが、2つのプロトマー間の角度、接続ループのコンフォメーション、および分子の柔軟なN末端の構造には注目すべき相違が存在する(図4)。SCF二量体の公開されている構造(タンパク質データバンク中で受託コード1EXZおよび1SCF)の比較により、遊離SCFホモ二量体の2つのプロトマー間の角度(αCヘリックス間の角度)が様々な構造中で2°〜6°変動し得ることが示されており、これは、特定の度合の柔軟性がSCF二量体中に存在することを示唆している。SCFプロトマーと結合したKitと遊離SCFのものとの間の角度の差異の範囲は、3〜9°増加していた。図4は、SCFプロトマー間の角度が5°増加している、Kitと結合したSCF構造を示す。 図4Bは、Cys4’からAsn11’の遊離SCFのN末端がランダム−コイルの立体配置を有することを示す(Zhangら(2000年) Proc Natl Acad Sci U S A 97巻:7732〜7737頁)。最初の4個のアミノ酸の欠失が、Kitに対するSCFの結合親和性の約25%の低下をもたらすことも示され、これは、Cys4’とCys89’との間のジスルフィド架橋がSCFの機能的完全性の維持に役割を果たすことを示唆している(Langleyら(1994年) Arch Biochem Biophys 311巻:55〜61頁)。また、図4Bは、Kitと結合したSCFのN末端領域のThr9’およびAsn10’は、受容体結合の際にそのCα位置が3〜5Å移動される、コンフォメーション変化を受けることも示している(図4B)。N末端のCys4’とαCヘリックスでのCys89’との間のジスルフィド架橋は、SCFのN末端中で起こるコンフォメーション変化の媒介において重要な役割を果たすと考えられる。遊離SCF中のCys24’の位置は、Cα位置の1.2Åの二乗平均平方根偏差(r.m.s.d.)によって明らかとなるように、受容体の占有の際に変更されない。最後に、遊離SCFのαC−β2は、不秩序であるか、またはKitと結合したSCF中のαC−β2ループの構造とは異なる構造を有する。図4Cは、SCFのαC−β2ループが受容体結合の際に、SCF−Kitの境界領域の部位−Iの確立に重要な変化である大きなコンフォメーション変化を受けることを示す。 SCFと結合したKit中のD4およびD5の配向の大きな再構成 Kit単量体形態の個々のD1、D2、D3、D4、およびD5の構造とSCF誘導性のホモ二量体形態中の対応する個々のIg様ドメインとの重ね合わせにより、SCF結合後のKitのIg様ドメインの構造中の軽微な変化が明らかとなる。対照的に、Kit単量体形態のD3−D4−D5領域とホモ二量体形態中の対応する領域との重ね合わせにより、D4およびD5の互いに対するおよびKitのリガンド結合領域に対する配向の大きな構造変化が明らかとなる(図5Aおよび図12)。単量体Kitの個々のドメインD3、D4、およびD5のそれぞれは、SCFで占有されたKit中のその対応物と重ね合わせることができ、D3、D4、およびD5の98、101、および85個のCa原子についてそれぞれ0.9、0.9および1.9Åのr.m.s.d.値である。しかし、Kit単量体のD3構造とリガンドで占有されたホモ二量体形態中のD3構造との重ね合わせにより、SCFと結合したKit中のD4およびD5の配向の劇的な移動が明らかとなる(図5A)。リガンド結合領域に対するD4およびD5の再配向は、それぞれD3−D4およびD4−D5の境界領域を通った、D3をD4と接続するリンカー中の軸に沿った回転、およびD4をD5と接続するリンカー中の軸に沿った回転によって起こる(図5A)。遊離Kitおよびリガンドと結合したKitの比較は、リガンドで占有されたKitのD4はD3に対して22°回転し、リガンドで占有されたKitのD5はD4に対して27°回転することを示す(図5A)。SCFで占有されたKit中のD4およびD5の再構成は、2つの隣接するKit分子のD4−D4およびD5−D5の相互作用によって媒介される受容体−受容体の相互作用をもたらす(図5B)。D5のDEループのコンフォメーションはSCFで占有された外部ドメイン中で変更されている。受容体の二量体化によって駆動されたD4およびD5の再配向は、D5のDEループに新しい立体配置を課す(図5A)。 Kitホモ二量体中のD4:D4相互作用 2つの隣接するKit分子のD4間のホモタイプ相互作用は、SCF−Kitの2:2複合体中のD4−D4境界領域によって媒介される。D4−D4境界領域は、それぞれのKitプロトマーのD4のABEDストランドによって形成された2つのβシートによって媒介されて、それぞれのプロトマーのArg381が互いに向かい合わせになっており、360A2の埋没表面積をもたらす、ほぼ平面状のアレンジを形成する。図6Aは、Arg381およびGlu386がKitの二量体の二回回転軸を横断して塩橋およびファンデルワールス接触を形成することを示している。さらに、それぞれのプロトマーのArg381の側鎖は、隣接するKit分子の対応する残基の主鎖カルボニルと水素結合を形成する。 構造に基づく配列解析により、D4−D4境界領域がCSF1R、PDGFRαおよびPDGFRβを含めたほとんどのIII型RTK中で保存されていることが示されている(図6Bおよび図8)。PDGFRα中では、Glu386は、塩橋パートナーとしても機能することができる残基であるアスパラギン酸によって置き換えられている。一対の塩基性残基(Arg381)および酸性残基(Glu386)が、様々な種のIII型RTK中で厳密に保存されている。また、D4−D4境界領域中に見つかる配列モチーフも、VEGFR−1(Flt1)、VEGFR−2(Flk1)およびVEGFR−3(Flt4)を含めたV型RTK(VEGFRファミリー)のすべてのメンバーの膜近位の第7のIg様ドメイン(D7)中で保存されている。VEGFRでは、塩基性残基(Arg)および酸性残基(Asp)がEFループ中に位置する。III型RTKのD4−D4境界領域に関与するコア配列モチーフはVEGFRの異なるIg様ドメイン中に位置しているが(すなわち、D7対III型のD4)、KitのD4−D4境界領域中で見られるものに類似の受容体−受容体の相互作用は、RTKのVEGFRファミリーのすべてのメンバー中で同様のD7−D7境界領域を介しても起こることが可能である(図6A)(Ruchら(2007年) Nature. Struct. Mol. Biol. 14巻:249〜250頁)。 Kitホモ二量体中のD5−D5相互作用 図2Bおよび図5B、6Cは、SCF−Kitの2:2複合体中では、隣接するD5プロトマーは平行であり、互いに密接に近接しており、細胞膜に対して垂直である可能性の高い配向にあることを示している。D5のβ−シートトポロジーは、ストランドAがストランドAおよびA’に分割されているほとんどのIセットのIgSFとは異なる、非定型のアレンジに従う。D5のストランドAはストランドBと対合し、ABED/CFGのβシートトポロジーをもたらす。その結果、2つのβシート(ABED/CFG)の端に位置するストランドAおよびGは、Cα中で互いから6.5〜11.5Åの距離でほぼ平行である。さらに、1つのプロトマーのストランドAおよびGは、隣接するD5のストランドAおよびGと二回回転対称性で向き合っている。2つの隣接するKitプロトマーのAsn505の側鎖は互いから約4.2Åであるが、2つのアスパラギン間の間接的な相互作用を媒介し得る水または金属イオンは、この弱い電子密度の領域中で検出することができなかった。さらなるD5−D5の相互作用が2つの隣接するKit分子のTyr418によって媒介される(図6C)。隣接するTyr418側鎖のヒドロキシル基間の相互作用は、水分子によって媒介されることができる。また、これは、隣接するD5ドメインの相対的な位置は、隣接するプロトマーのTyr418およびAsn505によって形成される間接的な相互作用によって媒介されることも示唆している。D5のGストランドは、短いリンカーを介してKitの膜貫通ドメインに接続されている。 (実施例8) 受容体活性化の機構 Kit外部ドメイン単量体およびSCF誘導性の二量体の構造は、その細胞外ドメイン中に5または7個のIg様ドメインを含有するKitおよび他のRTKのリガンド誘導性の活性化の機構に関する新規の識見を提供する。Kit外部ドメイン単量体のD1、D2およびD3の構造とSCF誘導性の外部ドメイン二量体中の対応する領域との比較により、SCF結合後のSCF結合ポケットならびにD1、D2およびD3の他の部分においてごくわずかな構造変更が示される。その明白に異なる生化学的機能に基づいて、本発明者らはKitの外部ドメインを3つの独立した機能的単位へと分割した。第1の単位は、3つの膜遠位Ig様ドメインD1、D2、およびD3から構成される。D1−D2−D3領域は、特定のSCF結合単位として機能する別のモジュールとして機能する。SCF結合単位は柔軟な接合部(D3−D4境界領域)によってD4と接続されており、これは第2の独立した単位であり、追加の柔軟な接合部(D4−D5境界領域)によってD5(第3の独立した単位として定義される)と接続されている。D4およびD5の機能は、それぞれ、2つの隣接するKit外部ドメインの膜近位領域を一緒にしてその間の相互作用を安定化する、側方のD4−D4およびD5−D5の相互作用を媒介することである。 この視点によれば、Kitの二量体化は、その唯一の機能がSCFと結合して2つのKit分子を一緒にすることである、二価SCF結合によって駆動される。SCF誘導性のKitの二量体化には、D1−D2−D3のSCF結合単位の位置に対するD4およびD5の配向の大きな変化が続く。本明細書中に提示するデータは、D3−D4およびD4−D5の境界領域での柔軟な接合部が、受容体の二量体化の際に大きなコンフォメーション変化をもたらす側方相互作用を可能にすることを示している。二量体化は、Kit中のコンフォメーション変化を誘導するのではなく、柔軟に接合された単量体から強固な二量体への遷移において特定のコンフォメーションを選択し得る。これは、Kitの2つの隣接するD4および2つの隣接するD5間の複合体形成にまで至り、D5のC末端を、2つの隣接するKit分子の膜貫通ドメインが互いに15Å内である細胞膜での点に持って行く。実際、KitのSCF誘導性のチロシン自己リン酸化(図7B)および下流のシグナル伝達経路の刺激は、KitのD4内のArg381またはGlu386のどちらかの点変異によって強く損なわれる。また、PDGF受容体活性化および下流のシグナル伝達経路の刺激は、PDGFRのD4中の同様の点変異によっても損なわれる。本明細書中に提示するデータは、Kitの膜近位領域間のホモタイプ相互作用が主にD4−D4境界領域によって媒介されること、およびD5−D5境界領域が、細胞表面境界領域での2つのKit外部ドメインの正確な配置を促進することで協力的な二次的な役割を果たすことを示している。 SCF−Kit複合体は、以下の特徴を伴って、静電場の強力な分極を示す:(i)全体的な負荷電表面、(ii)SCF(陰性)およびリガンド結合D1−D2−D3単位(陽性)の間の相補性、ならびに(iii)D4−D4境界領域の真上およびその周辺の強力に負に分極した表面(図6D、3Bおよび図13)。このデータは、SCFとKitとの結合は少なくとも2つのステップで起こることを示している。最初に、SCFとD1−D2−D3との間の静電引力は、SCFをKit上の対向するリガンド結合領域に沿ってアラインメントさせる。また、静電引力は、操縦効果(Steering effect)が原因で、より速いSCFの会合速度ももたらし得る(Muelleraら(2002年) Biochina and Biophysica Acta. 1592巻:237〜250頁)。続いて、SCF−Kit複合体形成は、結合されたSCF分子中のコンフォメーション変化によって媒介されるものを含めた、さらなる相互作用によって安定化される。また、D4上の強力に分極した静電的表面は、隣接するKit受容体のD4ドメイン間の反発を誘導することによって、Kitを単量体の不活性の立体配置に維持することにおいても役割を果たし得る(図6D)。隣接する受容体のD4に対するD4およびD5に対するD5の結合親和性は、おそらく細胞表面上の局所的受容体濃度がSCFに駆動される受容体の二量体化および次元性(dimensionality)の効果によって増加される前は、Kit外部ドメイン二量体化を促進するためには低すぎる。そのような局所濃度の閾値に達した後は、隣接するD4間の引力が静電反発力に打ち勝って、2つの隣接するD4単位が互いに結合できる程度までになる。興味深いことに、D4−D4境界領域を維持する主な相互作用、すなわち隣接するKit分子中のArg381とGlu386との間の二重塩橋も、静電気的相互作用によって媒介される。 KitおよびC−カドヘリンの外部ドメインは(Boggonら(2002年) Science 296巻:1308〜1313頁)、それぞれ5個のタンデムのIg様ドメインから構成され、どちらも同様な細長いトポロジーを示し、Kitは170Åであり、C−カドヘリンは185Åである。さらに、細菌接着分子インベイシンは著しく類似した細長い構造およびIg様ドメイン間トポロジーを示す(Hamburgerら(1999年) Science 286巻:291〜295頁)。Kit外部ドメインは、細胞−細胞の相互作用を媒介するタンパク質をコードしていた共通の先祖遺伝子から進化した可能性がある。古典的−カドヘリンは、その最も膜遠位のIg様ドメインを、細胞−細胞の相互作用を媒介するホモタイプの結合に利用するが、Kitの外部ドメインは、膜固定または可溶性のSCFアイソフォームと結合して受容体の二量体化および活性化を誘導する細胞シグナル伝達受容体として機能するように進化している(図7C)。 Kit構造の特徴であるリガンド結合および受容体の二量体化は他の受容体中で保存されているため、本明細書中に記載のKitの活性化の機構は、多くの受容体の活性化の一般的な機構であり得る(図7C)。さらに、本明細書中に記載の構造情報は、がんおよび活性化された受容体によって駆動される他の疾患を処置するための新規な治療的介入の設計に適用することができた。 (実施例9) ヒト疾患におけるKitの変異の分析 様々なヒト疾患がKit遺伝子中の変異によって引き起こされる。ヒトでは、Kitの外部ドメイン中の機能喪失型変異はまだら症体質を引き起こす(Fleischmanら(1996年) J Invest Dermatol 107巻:703〜706頁、Murakamiら(2005年) J Invest Dermatol. 124巻:670〜672頁)。Kit遺伝子座中のこれらのエクソン−2およびエクソン−3の点変異の結果、Cys136がアルギニン残基で置き換えられ、Ala178がスレオニン残基によって置換される。どちらの変異も、Kit上のSCF結合部位の重要な構成要素であるD2中で起こる(図7A)。まだら症のCys136Argの変異は、D2の構造的および機能的完全性の維持において重要な役割を果たす重要なジスルフィド結合の損失、したがってSCFを認識するその能力の損失を引き起こす。Ala178は、D2のEFループ中、D2−D3境界領域の非常に近くに位置する(図7A)。まだら症のAla178Thrの変異は、D2−D3境界領域の完全性の維持に必要な相互作用ならびにD2および/またはD3とSCFとの結合に必要な相互作用を破壊し得る(図7A)。 Kit遺伝子座中の様々な機能獲得型変異が、GIST、AMLおよびSCLCを含めた様々ながん中で見つかった(Forbesら(2006年) COSMIC 2005. BR J. CANCER、94巻:318〜22頁。Somatic mutation database: Catalogue of Somatic Mutations in Cancer http://www.sanger.ac.uk/genetics/CGP/cosmic/を参照)。多くの腫瘍発生性変異がKitのJMおよびPTKドメイン中で同定された。また、集合的に活性化された形態のKitの形成をもたらすインフレーム欠失、点変異、インフレーム重複および挿入を含めた、様々な腫瘍発生性変異もKit外部ドメイン中で見つかった(図7A)。Asp419の損失または置換のどちらかを含むエクソン−8でのインフレーム欠失および挿入変異がAMLに罹患している患者において記載されている一方で、Ala502〜Tyr503およびAla502〜Phe506の配列の重複がGISTにおいて同定された(図7A)。Asp419は、D5のストランドAおよびABループを接続する領域中に位置し、Ala502−Tyr503は、KitのD5のストランドG上に位置する。興味深いことに、Kit外部ドメイン中に見つかった事実上すべての活性化させる腫瘍発生性変異は、D5−D5境界領域にマッピングされた(図7A)。腫瘍発生性のD5変異の作用様式の最ももっともらしい解釈は、これらの変異が、会合速度(on−rate)を増加させるもしくは解離速度(off−rate)を減少させる、またはD5−D5の相互作用の増強を促進する様式で両方のプロセスの速度を変更させることによって、隣接するD5ドメイン間の結合親和性およびホモタイプの相互作用を増強させるということである。 上記分析は、D4およびD5領域が治療剤を標的化する良好な候補であることを示している。Kitの二量体化/活性化を促す、またはより好ましくは二量体化/活性化を妨げるために、薬物、医薬品、または生物製剤を使用してKitと結合させ得る。 (実施例10) Kit外部ドメインの発現、精製および部分的脱グリコシル化 C末端にさらに5個のヒスチジン残基を含有する、ヒトKitのアミノ酸1〜519をコードしているDNA構築体(Lemmonら(1997年) J Biol Chem 272巻:6311〜6317頁)を、pFastBac1内にライゲーションさせた(Invitrogen,Inc.)。外部ドメインKitタンパク質を発現するバキュロウイルスを、Bac−to−Bacの指示マニュアル(Invitrogen)に記載の手順に従って調製した。昆虫Sf9細胞を、10%の熱失活させたウシ胎児血清を補充したGraceの昆虫培地の15L培養物中で、Waveバイオリアクター(Wave Biotech、LLC、システム20/50)を用いて2〜3×106個の細胞/mlまで成長させ、その後、Kit外部ドメイン遺伝子を保有する組換えバキュロウイルスで感染させた。外部ドメインKitはヒトKitからのシグナル配列を含有していたが、タンパク質は外に分泌されずに昆虫細胞中に蓄積された。72時間後、細胞を収穫し、200mMのNaCl、10%のグリセロール、1%のNDP−40および2mMのPMSFを含有する1.4リットルの50mMのリン酸カリウム緩衝液、pH8中で、20分間、氷上で溶解した。遠心分離および濾過の後、Kitの外部ドメインを、Ni−NTAビーズを用いたアフィニティークロマトグラフィー、次いでSuperdex200を用いたゲル濾過を使用して精製した。25mMのNaClおよび1%のグリセロールを含有する25mMのトリス緩衝液、pH8.5中の精製したKit外部ドメインを、12時間、4℃で、Kit溶液に10:1w/wの最終比で加えた組換えエンドグリコシラーゼF1を用いて処理した。その後、エンドヌクレアーゼF1で処理したKitの外部ドメインを、事前に平衡化した16/10MonoQカラム上に載せ、400mMのNaClおよび1%のグリセロールを含有する軽度の(shallow)勾配のトリス緩衝液、pH8.5で溶出させた。脱グリコシル化されたKit外部ドメインの画分をプールし、遠心濃縮器を使用して35mg/mlまで濃縮した。精製した部分的に脱グリコシル化された(deglycoslyated)Kit外部ドメイン調製物をアリコートに分割し、液体N2中でフラッシュ凍結した。この手法を使用して、約10mgの部分的に脱グリコシル化されたKit外部ドメインが15リットルの培養細胞から精製された。SCF(1〜141)を以前に記載されているように発現させ、再折り畳みさせ、精製した(Zhangら(2000年) Proc Natl Acad Sci U S A 97巻:7732〜7737頁)。また、Kitの外部ドメイン(アミノ酸1〜514)も、以前に記載されているように、バキュロウイルス系を使用してSf9昆虫細胞中で分泌形態として発現させ、精製した(Lemmonら(1997年) J Biol Chem 272巻:6311〜6317頁)。 (実施例11) 構造の決定および精密化 実験段階は、Kit外部ドメイン単量体の結晶の多波長異常回折(MAD)および異常散乱を用いた多重同形置換(MIRAS)の組合せを使用して決定した。重原子の検索および位相調整はCNS(Brungerら(1998年) Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 54巻:905〜921頁)およびSHARP(Bricogneら(2003年) Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 59巻:2023〜2030頁)のプログラムスイートを使用して実施した。1つの主要部位および2の副部位が白金誘導体(K2Pt(NO2)4)で検出され、1つの主要部位および5の副部位がヨウ素に浸漬した結晶で検出された。MAD位相は、白金誘導体について、3つの波長で、CNSを使用して3.3Åの分解能まで計算した。MIRAS位相は、白金およびヨウ素誘導体について、CNSおよびSHARPを使用して3.0Åの分解能まで計算した。溶媒フリッピング密度の改変により、連続的な電子密度および非常に明瞭な溶媒−タンパク質の境界を有する、解釈可能な品質の電子密度マップがもたらされた。D2中のストランド(stand)F、G、Cの上半分およびCDループ、ならびにD5中のCDループ、ストランドD、DEループ、EFループおよびストランドFの下半分を含めた乏しい電子密度品質の領域は、MIRASおよびMADの位相調整によって計算した電子密度マップを比較することによって確認した。データ収集および位相調整の統計量は表1Aおよび1B中に要約されている。Kitの分子モデルは、COOTを使用して実験的電子密度マップ内に手動で構築した(EmsleyおよびCowtan (2004年) Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 60巻:2126〜2132頁)。自由R因子の計算には、精密化中にデータの5%を除外した。精密化は、CNSを使用してネイティブデータに対して3.0Åの分解能まで実施した。精密化の最終段階では、並進/振動/回転(TLS、translation/liberation/screw)精密化をCCP4プログラムスイート中のRefmac5(Murshudovら(1997年) Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 53巻:240〜255頁)によって実施し、TLSMDウェブサーバーを使用して3つのTLS群を生成した(Painterら(2006年) J Appl Cryst 39巻:109〜111頁)。 SCF−Kit複合体の構造は、PHASERを使用した分子置換によって解いた(McCoyら(2005年) Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 61巻:458〜464頁)。Kit外部ドメインおよびSCFのD1D2D3D4の明瞭な分子置換解は、PHASERを使用して、KitおよびSCFのD1D2D3およびD4をそれぞれネイティブデータ組に対する検索モデルとして使用して見つけた。Kit(D1D2D3D4)−SCF複合体の構造を20〜4Åの剛体精密化に供し、43.8%のRcrystがもたらされた。モデルの再構築および精密化は、CNSを使用して、それぞれ31.6%および34.0%のRcrystおよびRfree値まで行った。D5の領域中の連続的な電子密度が2σ2Fo−Fcおよび3σFo−Fcマップ中で見つかった。COOTを使用してD5のストランドをマップ内に手動で引き、次いでそれぞれのステップ後に精密化を適用した。初期精密化の全体にわたって、非結晶学的対称性(NCS)の束縛(constraint)が残基に課されていた。さらなる精密化をネイティブX線回折データに対して3.5Åの分解能まで行った。SCF−Kit複合体分子のほぼ全体を構築した後、NCSの束縛を解放し、低下したRおよびRfreeの値ならびに改善された電子密度がもたらされた。精密化の最終段階では、NCSの束縛は完全に解放されていた。モデルの立体化学はPROCHECKで分析した(Laskowskiら(1993年) J Appl Cryst 26巻:283〜291頁)。精密化の統計量の要約を表1B中に示す。 (実施例12) SCFの放射標識およびリガンド置換アッセイ Iodo−Genヨウ素化チューブ(Pierce)を使用して、製造者の指示に従って、ヒトSCF(10μg)を1mCiの125I(PerkinElmer)で標識した。置換結合アッセイには、WT KitまたはKit変異体を発現する3T3細胞を、10%のFCSを含有するDMEM中で成長させた。細胞を、10mMのHEPES、PH7.4および0.1%のBSAを含有するDMEM(DMEM−BSA)で3回洗浄し、その後、1時間、室温で、2ngの125Iで標識したSCFと共に、漸増濃度のネイティブSCFの存在下でインキュベートした。その後、細胞を冷DMEM−BSAで3回洗浄し、0.5mlの0.5MのNaOH中で1時間、室温で溶解させ、100μlの細胞溶解液を10mlのOpti−Fluorシンチレーション溶液(Perkin Elmer)に添加して、LS6500シンチレーションカウンター(Beckman Coulter)を使用して細胞に関連した放射能を測定した。 (実施例13) 保存分析 ヒトSCFおよびKitのアミノ酸配列を、PSI−BLASTを使用して非重複データベース(nr)を相同配列について検索するためのクエリとして使用した(Altschulら(1990年) J Mol Biol 215巻:403〜410頁)。ClustalWを使用してSCF配列またはKit配列に対する配列アラインメントを行い(Higgins (1994年) Methods Mol Biol 25巻:307〜318頁)、その後、KitのIg様ドメイン中の20種の主要な残基のIgSFの折り畳みの制約に基づいて手動で調節した。SCF−Kit複合体の結晶構造によって明らかとなったアミノ酸配列のアラインメントをConsurf3.0サーバーに送り(Landauら(2005年) Nucleic Acids Res 33巻:W299〜302頁)、アラインメントのそれぞれの位置の最大尤度の正規化された進化率を生成した。ここでは、低い発散率が高い配列保存に対応する。Consurfの出力と同様、連続的な保存スコアは、可視化のために、ビン9が最も保存された(えび茶色)位置を含有し、ビン1が最も可変性(シアン色)の位置を含有するように、9種のビンの別々のスケールに分配されている。 (実施例14) タンパク質の発現、精製および抗体の作製 ヒトKitの第4のIg様ドメイン(残基309〜413、KitのD4)をコードしているDNAを、PCR反応を使用して完全長ヒトKitのcDNAから増幅させた。BL21(DE3)E.Coliコドンプラス細胞を、KitのD4の合成を指示する細菌発現ベクター(pET−NusAヒスチジンタグ付き)で形質転換させ、次いで終夜16℃でインキュベートした。金属キレート化親和性カラム(Ni−NTA、QIAGEN)を使用してKit D4−NusAの融合タンパク質をBL21溶解物から精製し、次いで陰イオン交換クロマトグラフィー(SourceQカラム、GE Healthcare)を使用してさらに精製した。その後、NusAおよびヒスチジンタグをD4から切断するために、Kit D4−NusAを、終夜4℃でTEVプロテアーゼと共にインキュベートした。ゲル濾過クロマトグラフィー(Superdex200カラム、GE Healthcare)を使用してKitのD4の追加の精製ステップを実施した。 ヒトKitの第5のIg様ドメイン(残基410〜519、KitのD5)をE.coli株BL21(DE3)細胞中で発現させ、細菌封入体から、6.0Mの塩酸グアニジンを含有する10mMのトリス緩衝液、pH8.0を使用した再折り畳みステップを使用して精製した。再折り畳みさせたKitのD5を陰イオン交換クロマトグラフィー(Qセファロースカラム、GE Healthcare)を使用してさらに精製し、次いで、ゲル濾過クロマトグラフィー(Superdex200カラム、GE Healthcare)を使用した精製および陰イオン交換クロマトグラフィー(SourceQカラム、GE Healthcare)を使用した追加の精製ステップを行った。 単離されたD4、D5、またはKit外部ドメイン全体(アミノ酸1〜519、Kit EC)、またはヒトKitのC末端領域からの断片(残基876〜976)を含有するGST−融合タンパク質に対するウサギポリクローナル抗体を、実施例1中で列挙した方法などの当技術分野で周知の技法を使用して作製した。たとえば、Kit外部ドメインに対するポリクローナル抗体は、ウサギを精製したKit外部ドメインで免疫化し、生じた抗体を標準の方法によって収集することによって作製し得る。プロテインA親和性クロマトグラフィー(chromography)を用いた精製に供した抗体調製物を使用して、実施例15および図14などの、Kitの活性化に対する抗体の効果を試験した実験を行った。 (実施例15) KitのD5ドメインに対する抗体を使用したSCF誘導性のKit活性化の阻害 ヒトKitを発現する3T3細胞を、Kitの単離された組換えD5に対して作製した漸増濃度のポリクローナルウサギ抗体を含有する緩衝溶液と共にインキュベートした(図14)。対照として、細胞を、バキュロウイルス発現系を使用して昆虫細胞中で産生させたSCFに対するウサギポリクローナル抗体またはKit外部ドメイン全体に向けられたウサギポリクローナル抗体で処理した。細胞溶解液を、抗Kit抗体を用いた免疫沈降、次いで、SDS−PAGEおよび抗Kit抗体または抗pTyr抗体のどちらかを用いた免疫ブロッティングに供した(図14)。 この実験は、抗D5抗体がKitのSCF誘導性のチロシン自己リン酸化を遮断することを示している。 (実施例16) 単離された組換えKitのD4ドメインによるSCF誘導性のKit活性化の阻害 Kitを発現する3T3細胞を、10分間、23℃で、E.Coli中で発現させた漸増濃度の精製した組換えD4と共にインキュベートし、次いでSCFインキュベーションを行った。刺激していない細胞または刺激した細胞の溶解物を、抗Kit抗体を用いた免疫沈降、次いで、SDS−PAGEおよび抗Kit抗体または抗pTyr抗体のどちらかを用いた免疫ブロッティングに供した(図15)。 この実験は、単離されたD4の存在がKitのSCF誘導性のチロシン自己リン酸化を妨害することを示している。 (実施例17) SCF誘導性のKit刺激実験 ヒトKitを発現する3T3細胞を、10%の仔ウシ血清を含有するDMEM中で成長させた。SCF刺激の前に、Yuzawaら(2007年) Cell、130巻:323頁に記載のように、細胞を無血清培地中で終夜欠乏状態にした。欠乏状態にした細胞を10mMのHEPES、pH7.4および0.1%のBSAを含有する冷DMEMで3回洗浄し、次いで、図14または図15に示すように、漸増濃度の抗体またはKit−D4と共に10分間、23℃でインキュベートした。細胞を100ng/mLのSCFで10分間、23℃で刺激し、冷PBSで3回洗浄した。刺激していない細胞またはSCFで刺激した細胞の溶解物を、抗Kit抗体を用いた免疫沈降、次いで、SDS−PAGEおよび抗Kit抗体または抗p−Tyr抗体を用いた免疫ブロッティングに供した。 (実施例18) PDGF受容体βのPDGF誘導性の活性化およびPDGFRβを介したシグナル伝達はPDGFRβのD4中の重要なアミノ酸中の点変異によって妨げられる。 WT PDGFRβまたはD4中の重要なアミノ酸における点変異体(Kit外部ドメインX線結晶構造におけるD4−D4境界領域との配列類似度に基づく)のどちらかを発現するPDGFR−/−マウスに由来するマウス胚性線維芽細胞(MEF)を使用して、R385またはE390の変異が、PDGF誘導性の受容体活性化(図16A)、またはPDGF誘導性のMAPキナーゼ応答およびAkt刺激(図16B)を妨げることを示した。さらに、共有結合性架橋結合剤を用いた架橋結合実験を使用して、本発明者らは、E390A点変異がPDGF誘導性の受容体の二量体化を妨害しないことを示す。しかし、活性化状態で細胞表面上に存在するWT PDGFRβの共有結合的に架橋結合した二量体とは異なり、E390A変異体の共有結合的に架橋結合した二量体は不活性である(図16C)。この実験は、D4中の重要なE390残基の変異がPDGFRの活性化に必須のD4−D4相互作用を妨げることを示している。しかし、PDGFRのPDGF誘導性の二量体化は、受容体の活性化を妨げるD4中の点変異によって影響を受けず、これは、D4−D4が、外部ドメインの膜近位領域の配置を媒介してPDGFRのチロシンキナーゼドメインの活性化を可能にすることにおいて重要な役割を果たすことを示している。 したがって、本発明の一実施形態には、PDGFR中の残基R385またはE390と結合する、またはそれを標的とする部分が含まれる。これらの部分は、受容体の二量体化を保存したままで受容体を不活性化させるために用い得る。また、本実施例は、1つのRTKの結晶構造、この場合はKitの外部ドメイン(ecodomain)の結晶構造に基づく情報を、他のRTKに容易に移すことができることも示している。ここでは、KitのD4ドメインの知識は、PDGF受容体の活性化に重要であったアミノ酸を同定することにおいて正しかった。PDGFRに関するより詳細な実験の組は実施例22〜25に記載されている。 (実施例19) Kit外部ドメインの分子表面分析 本明細書中に記載のSCF結合の前および後のKitの外部ドメイン全体の結晶構造の決定により、SCF誘導性の受容体の二量体化に次いで、2つの隣接するKit分子の膜近位のIg様ドメインD4およびD5間のホモタイプの側方相互作用が起こることが示されている。ホモタイプのD4およびD5の相互作用は、2つの隣接する受容体の細胞質チロシンキナーゼドメインを、チロシン自己リン酸化およびキナーゼ活性化を可能にする距離および配向に配置する。また、本明細書中ではD4ホモタイプ相互作用に重要な単一アミノ酸残基の変異は、SCF誘導性のKit活性化およびPDGF誘導性のPDGF受容体活性化を損なわせたことも示されている(実施例22〜25を参照)。 本明細書中に記載の構造分析は、RTKの外部ドメイン(たとえば、D3、D4、もしくはD5領域)によって形成される空洞の浅い領域中のコンフォメーションエピトープもしくは非近接エピトープと結合するモノクローナル抗体などの阻害性部分、またはKitおよび他のIII型RTKの外部ドメインのD3−D4およびD4−D5ヒンジ領域と結合する小分子インヒビターをどのように設計するかについての新しい識見を提供する。外部ドメイン中の4つの領域を最初に標的とした:(A)D3−D4ヒンジ領域と結合し、チロシンキナーゼの活性化を可能にする距離および配向での膜近位領域の配置に必要な挙動を妨げる分子ウェッジとして機能する、本発明の部分を作製し得る(図17を参照)、(B)D4−D5ヒンジ領域と結合し、チロシンキナーゼの活性化を可能にする距離および配向での膜近位領域の配置に必要な挙動を妨げる分子ウェッジとして機能する部分を作製し得る(図18を参照)、(C)D4:D4境界領域と結合してホモタイプのD4受容体の相互作用を妨げる部分を作製し得る(図19を参照)、(D)D2−D3ヒンジ領域で凹表面と結合して、リガンド−受容体の相互作用の不安定化をもたらす部分を作製し得る(図20を参照)、ならびに(E)ペプチド領域と結合して、様々な近接したおよび近接していないエピトープをKitの表面上に形成する部分を作製し得る(表5)。 KitおよびSCF−Kit複合体(PDBコード:2EC8および2E9W)の外部ドメインの分子表面を、タンパク質の表面トポグラフィーのコンピュータ図解(CASTp、Computed Atlas of Surface Topography of proteins)サーバーを使用して分析して、タンパク質の三次元構造上の凹表面領域の位置に関する情報を提供し、描写および測定を可能にする(Dundasら、(2006年) Nucl Acids Res、34巻:W116〜W118頁)。Pymol(DeLano.(2002年)DeLano Scientific、米国カリフォルニア州San Carlos)を使用して、同定された空洞を可視化し、そして調べた。 (A)D3−D4ヒンジ領域中の空洞(図17) いくつかの空洞が外部ドメイン単量体の構造中のD3−D4境界領域上に点在している。空洞の画定に関与しているアミノ酸は、表4中に要約されている。2つのKit受容体間のホモタイプ相互作用の形成の際、D3−D4ヒンジ領域が変更され、D3からのK218、S220、Y221、L222、およびD4からのF340、P341、K342、N367、E368、S369、N370、I371、Y373の残基によって作製される浅い空洞の形成がもたらされる。図17は、占有されていない単量体(図17A)およびSCFと結合した二量体(図17B)のD3−D4ヒンジ領域のリボン図、ならびにD3−D4ポケットのメッシュ表示を示す。 (B)D4−D5ヒンジ領域中の空洞(図18) 小さな空洞は、Kit単量体中のD4のABループおよびEFループ、D4−D5接続リンカーならびにD5のDEループおよびFGループの一部によって形成される。前述の空洞を画定する残基は表4中に要約されている。空洞の形状および大きさは、Kit外部ドメイン二量体構造中で変化している。D4のEFループおよびストランドG、D4−D5リンカーならびにD5のストランドBおよびDEループによって形成される主要な空洞は、D4ホモタイプ境界領域の形成に重要な領域であるD4のEFループの下に位置する。空洞の近くに位置するD5のDEループは、結合していないKit構造および占有されたKit構造の両方に由来するより低い品質の電子密度によって明らかとなるように、より高い柔軟性を有し得ることに留意されたい。図18は、占有されていない単量体(図18A)およびSCF−二量体(図18B)のリボン図、ならびにD4−D5ヒンジ領域の周りの浅い空洞のメッシュ表示を示す。 (C)D4ホモタイプ相互作用を媒介する領域における空洞 KitのD4のCDループおよびEFループによって形成される凹表面は、D4ホモタイプ境界領域の真上に位置する。D4からの残基Y350、R353、F355、K358、L379、T380、R381、L382、E386およびT390は、外部ドメイン二量体構造中の凹表面に約130A2の表面積を提供する。D4ホモタイプ境界領域中で重要な役割を果たすGlu386の側鎖は、表面の中心に向かって突出する。凹表面の特徴は、荷電残基(Glu386およびLys358)によって囲まれた小さな疎水性パッチである。表面の大きさおよび接近可能性は、ホモタイプのD4:D4相互作用の際に変更され、ドメインの上に向かって折り畳まれるCDループのコンフォメーション中で変化が起こる。凹表面の形成に関与する残基は表4中に要約されている。図19Aは、リガンドで占有されたKitのD4(示さず)上に重ねたKitの占有されていないD4ドメイン(金色)のリボン図、ならびにリガンドで占有された外部ドメインの構造(緑色)および占有されていない外部ドメインの構造(赤色)の間のCDおよびEFループの異なるコンフォメーションを示す。D4:D4相互作用の重要な残基をスティックモデル形態で示す。図19Bおよび19Cは、占有されていないKit構造(図19B)およびSCFで占有されたKit構造(図19C)のリボン図ならびにD4ホモタイプ境界領域の上側の浅い空洞のメッシュ表示を示す。 (D)リガンド結合D2およびD3領域での凹表面 浅い凹表面が、D2およびD3ドメインのリガンド結合表面の一部上に位置する。小さなポケットに関与する残基は、D2からのY125、G126、H180、R181、K203、V204、R205、P206およびF208ならびにKitのD3ドメインからのV238、S239、S240、S241、H263、G265、D266、F267、N268およびY269である。ポケットは、親水性残基によって囲まれた小さな疎水性パッチによって作製される。占有されていないおよびSCFで占有されたKit構造の間で大きな変更はなく、全体的な埋没表面積は約500A2である。図20Aおよび20Bは、占有されていないKit(A)およびSCFと結合したKit(B)のリボン図ならびにD2−D3ポケットのメッシュ表示を示す。 (E)KITチロシンキナーゼの構造解析を上述のように実施した。分析により、本発明の部分の標的であり得る連続および不連続エピトープがどちらも明らかとなった。表5中、エピトープ1、4、5、6、8、12〜16、19、22〜23、および31〜39は連続エピトープである。これらのエピトープは、KITタンパク質中の連続したアミノ酸から構成される。表5中のエピトープ2、3、7、9〜11、17、18、20、21、24〜30、および40〜43は、KITタンパク質の折り畳みによって近接させられるKITタンパク質の少なくとも2つのペプチドから構成される不連続なコンフォメーションエピトープである。 (実施例20) RTK活性アッセイ 目的のRTKを含有する細胞を、受容体および本発明の部分に対する活性化リガンドに曝露させる。目的のRTKは、標準の分子生物学的方法(たとえば抗体精製)によって単離し得る。精製後、RTKと結合する抗体(本発明の部分ではなく、精製に使用する単なる構造結合剤(structural binder))を96ウェルのマイクロタイター(mictrotiter)プレート上に事前にコーティングする。その後、RTKおよび較正した標準物質を別々のウェルに加え、RTKタンパク質を捕捉させる。次に、ホスホ部位(たとえば、c−KitのpY823または活性化の際にリン酸化されるKitの他の残基、phosphoELISA(商標)系はウサギ抗体を使用する)に特異的であり得る検出抗体を加える。抗体−Kitの複合体は、標識または酵素(たとえば、西洋ワサビペルオキシダーゼがphosphoELISA(商標)系中で使用されている)とコンジュゲートさせた二次抗体(たとえば、ウサギ由来の一次抗体を検出するためには抗ウサギAb)、次いで比色基質を使用して検出する。その後、停止溶液を加え、プレートを読み取る(たとえば、450nmの光源および検出器を使用する)。phosphoELISA(商標)の詳細なプロトコルは、Invitrogen(invitrogen.com/content.cfm?pageid=11655;invitrogen.com/downloads/F1027_BN_pELISA1006.pdf;invitrogen.com/downloads/F1028_BN_pELISA1006.pdf C−KIT[pY823]ELISA KIT,HU(BioSource(商標))カタログ番号−KHO0401;c−Kit[TOTAL]ELISA ΚIT、HU(BioSource(商標))カタログ番号−KHO0391)から入手可能である。 (実施例21) 受容体内在化アッセイ 目的のRTKを発現する細胞は、最初に適切なリガンドと共にインキュベート(たとえば、Kitを発現する細胞をSCFと共にインキュベート)して、受容体の内在化を誘導する。受容体の内在化の過程は、細胞を冷PBSで洗浄することによって停止される。その後、リガンドを解離させるために十分な塩濃度および/またはpHレベルを有する溶液で細胞を洗浄することによって、残りの表面結合リガンドを除去する。その後、細胞を適切な緩衝液に再懸濁させる。細胞はこの時点で内在化した受容体を含有し、したがって、より少ない量の受容体が細胞表面上に残っている。 細胞を適切なリガンドおよび本発明の試験部分に曝露させる、同様の実験の別の組を実行する。試験部分が標的RTKの活性化を妨げる場合は、受容体の内在化が阻害される。上記実験(受容体の活性化が起こったもの)中で記載した細胞と比較した場合、これらの細胞は、減少した内在化および細胞表面上により多い量の受容体を示す。また、細胞を緩衝液または薬物を可溶化するための一般的なビヒクルであるエタノール溶液のみで処理する対照群も設定する。 上記実験における細胞表面上の受容体の量の決定は、細胞を受容体に特異的なマウス抗体と共にインキュベートし、次いで緑色蛍光タンパク質(GFP)などの蛍光体とコンジュゲートしている抗マウス抗体とインキュベートすることによって達成し得る。その後、蛍光顕微鏡検査技法を使用して、細胞表面上の受容体の量を可視化および定量し得る。 細胞表面受容体を定量または可視化するための代替技法は当技術分野で周知であり、様々な蛍光および放射性の技法が含まれる。たとえば、一方法は、細胞を放射標識した抗受容体抗体と共にインキュベートすることを含む。あるいは(Alternatitively)、受容体の天然リガンドを蛍光分子または放射性標識とコンジュゲートさせ、細胞と共にインキュベートし得る。さらなる受容体内在化アッセイは当技術分野で周知であり、たとえば、そのそれぞれの内容全体が本明細書中に参考として組み込まれている、Jimenezら(1999年) Biochemical Pharmacology. 57巻(10号):1125〜1131頁、Bernhagenら(2007年) Nature Medicine. 13巻(5号):587〜596頁、およびConwayら(2001年) J. Cell Physiol. 189巻(3号):341〜55頁に記載されている。 実施例22〜25への導入 一般に受け入れられている受容体チロシンキナーゼ(RTK)の活性化の機構は、リガンド誘導性の受容体の二量体化が触媒コアの活性化ループ中の重要な調節性チロシン残基のトランス自己リン酸化を促進することであり、これはチロシンキナーゼの活性化に必須のステップである。これに次いで、様々なシグナル伝達タンパク質のSH2(Src相同性2)の結合部位またはPTB(ホスホチロシン結合)ドメインとして役割を果たす細胞質ドメイン中の複数のチロシン残基の自己リン酸化が起こり、これは、動員および/またはチロシンリン酸化の際に、様々な細胞内区画にシグナルを調節された様式で伝達する(Schlessinger, J. (2000年) Cell 103巻、211〜225頁、Pawson, T.およびNash, P. (2003年) Science 300巻、445〜452頁、およびHunter, T. (2000年) Cell 100巻、113〜127頁)。 すべてのRTKは二量体化によって活性化されるが、様々なRTKファミリーが、リガンド誘導性の受容体の二量体化および活性化のために様々な分子戦略を利用するように進化している(Burgess, A. W.ら(2003年) Mol Cell 12巻、541〜552頁、Schlessinger, J.ら(2000年) Molecular Cell 6巻、743〜750頁)。PDGF、SCF、CSFおよびFlt3Lを含めたIII型RTKのすべてのリガンドは、2つの隣接する受容体分子の等価な部位との二価結合によってその同族受容体を架橋結合することができる二量体分子である。PDGFプロトマーは、分子の一方の末端に特徴的なシステインノットを有する、中心の4本鎖のβ−シートから構成される。2つのPDGFプロトマーは逆平行の様式で配置されており、2つの鎖間ジスルフィド架橋によって互いに連結されている(Oefner, C.ら(1992年) EMBO J. 11巻、3921〜3926頁)。対照的に、それぞれのSCF、CSFまたはFlt3Lプロトマーは、短いヘリックスの折り畳みから構成されており、非共有結合性相互作用によって互いに接続されている(Jiang, X.ら(2000年) Embo J 19巻、3192〜3203頁、Zhang, Z.ら(2000年) Proc Natl Acad Sci U S A 97巻、7732〜7737頁、Pandit, J.ら(1992年) Science 258巻、1358〜62頁、およびSavvides, S. N.ら(2000年) Nat Struct Mol Biol 7巻、486〜491頁)。その多様な折り畳みにもかかわらず、2つの増殖因子の亜型は、事実上同一の様式でその同族RTKと結合してそれを活性化させ、活性化されたリガンド/RTKの2:2複合体の形成をもたらす(Savvides, S. N.ら(2000年) Nat Struct Mol Biol 7巻、486〜491頁)。すべてのIII型RTKは、5個のタンデムのIg様ドメインを含有する細胞外リガンド結合領域、次いで1個の膜貫通ヘリックス、ならびに自己リン酸化および異種プロテインキナーゼによるリン酸化の標的となる調節領域と隣接した大きなキナーゼ挿入領域を有する細胞質チロシンキナーゼドメインから構成される(Hubbard, S. R. (1999年) Prog Biophys Mol Biol 71巻、343〜358頁)。 PDGF受容体β(PDGFRβ)の活性化の機構は、関連する受容体チロシンキナーゼKitの細胞外領域の結晶構造に基づいて設計した変異体受容体の特性を分析することによって調査した。これらの実験に基づいて、D4(細胞外領域の第4のIg様ドメイン)中のArg385またはGlu390を変異させたPDGFRβのPDGF誘導性の活性化が損なわれ、様々なPDGF誘導性の細胞応答の機能障害をもたらしたことが示された。また、これらの実験は、Arg385およびGlu390の間の塩橋によって媒介されている可能性が高いホモタイプのD4の相互作用が、PDGFRβおよびすべてのIII型RTKの活性化において重要な役割を果たすことも示している。また、化学的架橋剤を使用して、PDGFで刺激した細胞を共有結合的に架橋結合させて、PDGFRβのGlu390Ala変異体が典型的なPDGF誘導性の受容体の二量体化を受けることも示した。しかし、リガンドで刺激した細胞の表面上に活性状態で発現されるWT PDGFRとは異なり、PDGF誘導性のGlu390Alaの二量体は不活性である。D4ホモタイプ相互作用の媒介に必要な保存されたアミノ酸はPDGFRβの活性化(およびIII型RTKにおける同様の相互作用)に不可欠である一方で、これらの相互作用はPDGFRβの二量体化には不要である。さらに、PDGFRβの二量体化は、チロシンキナーゼの活性化に必要であるが十分ではない。 KitのD4ドメインと同様、PDGFRαおよびPDGFRβのD4ドメインは、Ig様ドメイン中のB5およびF5中に位置するシステイン残基を架橋する特徴的なジスルフィド結合を欠く。図21中に提示するアミノ酸配列アラインメントは、IセットのIgSFの折り畳みの20個のフィンガープリント残基のうちの13個がPDGFRのD4ドメイン中で保存されており、フィンガープリント残基に相当するストランドの数および長さがKit、PDGFRα、PDGFRβおよびCSF1RのD4ドメイン中で高度に保存されていることを示している。これは、本発明のインヒビターを、すべてのIII型RTKを含めた様々な受容体分子を阻害するように設計し得ることを示している。 KitのD4ドメインは、それぞれがアレンジABED/A’GFCを有する4本のストランドを含有する2つのβシートから構成されており、ホモタイプのD4接触は、2つの隣接するKit分子から突出するD4のEFループによって媒介される。本明細書中に開示したKit構造は、EFループ中のArg381およびGlu386がKitの二量体の二回回転軸を横切って塩橋およびファンデルワールス接触を形成することを示している。さらに、それぞれのプロトマーのArg381の側鎖は、隣接するKit分子の対応する残基の主鎖カルボニルと水素結合を形成する。構造に基づく配列アラインメントにより、EFループの大きさ、ならびにD4−D4境界領域を構成する重要なアミノ酸は、Kit、PDGFRα、PDGFRβ、およびCSF1R中で保存されていることが示されている。PDGFRαでは、Glu386は、塩橋パートナーとしても機能し得る残基であるアスパラギン酸によって置き換えられている。さらに、塩基性および酸性(Glu/Asp)残基の対がTakifugu rubripesからHomo sapienの範囲の様々な種のPDGFRαおよびPDGFRβ中で厳密に保存されており(図21)、この領域の機能的重要性のさらなる支持を提供している。したがって、様々なアミノ酸配列を有するRTK、たとえばIII型RTKまたは本明細書中に記載のものと同様の機能のバリアントドメインを標的とした本発明の部分も、本発明の範囲内にある。 実施例22〜25に関連する方法 配列アラインメントおよび相同性モデリング アミノ酸配列アラインメントを、CONSEQサーバーを使用して(Berezin, C.ら(2004年) Bioinformatics 20巻、1322〜1324頁)、ならびにIgSFの折り畳み特徴に従って(Harpaz, Y.およびChothia, C. (1994年) Journal of Molecular Biology 238巻、528〜539頁)およびヒトKit構造のD4のIgの折り畳みのコア残基に従って(Yuzawa, S.ら(2007年) Cell 130巻、323〜334頁)行った。それぞれの配列の受託コードは、PDGFRαはヒト(P16234)、マウス(P26618)、ニワトリ(Q9PUF6)、カエル(P26619)およびフグ(Q8AXC7)、PDGFRβはヒト(P09619)、イヌ(Q6QNF3)、マウス(P05622)、フグ(P79749)、およびKitはヒト(Q96RW7)である。PDGFRβのD4の相同性モデルは、D4 Kit構造(PDBコード:2E9W)に基づいて、WHAT IFサーバー(Rodriguez, R.ら(1998年) Bioinformatics 14巻、523〜528頁)を使用して作成した。図はPyMOLを使用して作成した(Delano, W.L.、pymol.org)。 試薬および抗体 L−ヒスチジノールおよび抗flag抗体はSigmaから購入した。MAPKに対する抗体、ホスホ−MAPKに対する抗体、Aktに対する抗体、ホスホ−Aktに対する抗体、およびホスホリパーゼCγに対する抗体はCell Signaling Technologyから購入した。抗ホスホチロシン(4G10)抗体はUpstate Technologyからのものであった。抗ユビキチン抗体(P4D1)はSanta Cruzeからのものであった。PDGFRβに対する抗体は、ウサギをPDGFRβの細胞質ドメインからの合成ペプチドで免疫化することによって産生させた。PDGF BBのcDNAはStuart Aaronsonから得た。PDGF BBはInvitrogenから購入し、以前に記載されているように細菌中で産生させた(Hoppe, J.ら(1990年) European Journal of Biochemistry 187巻、207〜214頁)。125I放射性核種はPerkin Elmerから購入した。Bolton−Hunter試薬およびIODO−GENで事前にコーティングされたヨウ素化チューブはPierce(Piece)からのものであった。FITC−ファロイジンはInvitrogenから購入した。 細胞系およびレトロウイルス感染 PDGFRαおよびPDGFRβ(PDGFRα/β)をどちらも欠損したマウス胚に由来する線維芽細胞は、Philip SarianoおよびAndrius Kazlauskasによって提供された。PDGFRβのcDNAはDaniel DeMaioによって提供された。PDGFRβのcDNAをpLXSHDレトロウイルスベクター内にサブクローニングし、flagタグを受容体のC末端に付加した。D4中のすべての変異体は、部位特異的変異誘発によって、製造者の指示(Stratagen)に従って作製した。WTおよび変異体PDGFRβをコードしているレトロウイルスは、293GPG細胞中で産生させた(Ory, D. S.ら(1996年) Proc. Nat. Acad. Sci. 93巻、11400〜11406頁)。感染後、細胞をL−ヒスチジノールで選択し、選択された細胞のプールを実験に使用した。 免疫沈降および免疫ブロッティング 刺激していないまたはPDGFで刺激した細胞を、50mMのHepes、150mMのNaCl、1mMのEDTA、1%のTriton X−100、25mMのフッ化ナトリウム、1mMのオルトバナジン酸塩、1mMのフッ化フェニルメチルスルホニル、5μgのアプロチニンおよびロイペプチンを含有する緩衝溶液(pH7.5)で溶解した。等量の細胞溶解液を示した抗体で免疫沈降させ、免疫ペレット(immunopellet)をSDS−PAGEによって分離し、ニトロセルロース膜に移した。様々な抗体を用いて膜を免疫ブロットした。デンシトメーター(Amersham)を使用してフィルムを走査し、Imagequantソフトウェア(Molecular dynamics)を用いて定量した。 PDGFRのin vitroリン酸化アッセイ 細胞を16時間血清欠乏させ、150mMのNaCl、50mMのHepes(pH7.4)、1mMのEDTA、25mMのNaF、0.1mMのオルトバナジン酸ナトリウム、5μg/mlのロイペプチンおよびアプロチニン、1mMのPMSFならびに1%のNP40を含有する溶解緩衝液に可溶化した(solubalized)。溶解物を抗PDGFRβ抗体で免疫沈降させ、免疫ペレットを、50mMのHepes(pH7.4)、1mMのATPおよび10mMのMgCl2を含有する反応緩衝液中で、室温で5分間インキュベートした。インキュベーション後、ペレットをSDS−PAGE、次いで抗ホスホチロシン抗体を用いた免疫ブロッティングによって分析した。膜をストリッピング(strip off)し、抗flagタグ抗体で再ブロッティングして、全PDGFRβレベルを決定した。 受容体二量体の化学的架橋結合 細胞を80%コンフルエントに達するまで150mmのプレート中で成長させ、16時間血清欠乏させた後、50mMのHepes(pH7)を含有するDMEM中の示した濃度のPDGFと共に4℃でインキュベートした。90分後、細胞をPBS(pH7.4)で大規模に洗浄した。プレートを室温に移し、スベリン酸ジスクシンイミジル(DSS)を0.5mMの最終濃度まで加えた。30分後、10mMのトリス緩衝液と共に15分間インキュベートし、次いでPBSで大規模に洗浄することによって、架橋結合反応をクエンチした。50mMのHepes、150mMのNaCl、1mMのEDTA、1%のTriton X−100、25mMのフッ化ナトリウム、1mMのオルトバナジン酸ナトリウム、1mMのフッ化フェニルメチルスルホニル、5μg/mlのアプロチニンおよび5μg/mlのロイペプチン(pH7.4)中の細胞溶解液を、抗PDGFR抗体を用いて免疫沈降させ、SDS−PAGEによって分離した。ニトロセルロース膜を、flagタグに対する抗体または抗ホスホチロシン(4G10)抗体を用いて免疫ブロットして、全受容体およびリン酸化された受容体のレベルをそれぞれ検出した。 PDGF誘導性のアクチン細胞骨格再構成 MEFをサブコンフルエントまでガラス製カバーガラス上で24時間平板培養し、次いで終夜血清欠乏させた。細胞を50ng/mlのPDGFで2、5、10、もしくは30分間処理したか、または未処理のままにした。細胞をPBS中の4%のパラホルムアルデヒドで固定し、PBS中の0.1%のTritonで透過処理(permeablized)し、1%のBSAを含有するPBS中のFITC−ファロイジン(Sigma)で30分間染色した。カバーガラスをProlong Antifade封入剤(Invitrogen)でマウントし、画像をNikonの蛍光顕微鏡で得た。それぞれのカバーガラス上の約400個の細胞を分析し、アクチン環形成を示す細胞の百分率を計算し、直線的に提示した。 PDGF結合および内在化実験 Bolton−Hunter試薬(Pierce)を使用してPDGFを標識した後、Iodo−genヨウ素化チューブ(Pierce)を使用して、製造者の指示に従ってヨウ素化した。細胞を24ウェルプレート上にプレートし、10%のウシ胎児血清を補充したDMEM中で80%コンフルエントまで成長させた。細胞を、20mMのHepes(pH7.4)および0.1%のBSAを含有する冷DMEMで2回洗浄した。三連のウェルを、5ng/mlの125I−PDGFと共に、漸増量のネイティブPDGFの存在下でインキュベートした。結合を25℃で1時間進行させた。その後、細胞を冷PBSで洗浄し、0.5MのNaOHに可溶化した。LS6500シンチレーションカウンター(Beckman Coulter)を使用して試料の放射性含有量を決定し、PRISMソフトウェア(GraphPad)を使用してデータを分析した。 内在化の実験には、細胞を24ウェルプレートに播種し、80%コンフルエントまで成長させ、終夜欠乏状態にした。細胞をDMEM/0.1%のBSA/50mMのHepes、pH7.4中の5ng/mlの125I−PDGFと共に90分間4℃でインキュベートした。非結合のリガンドは氷冷PBS(pH7.4)で洗浄することによって除去した。事前に温めたDMEM/0.1%のBSA/50mMのHepesを細胞に加え、37℃で示した時間の間インキュベートした。細胞表面と会合したリガンドを、PBS(pH3)および0.1%のBSAを含有する氷冷酸性緩衝液で10分間収集した。内在化したリガンドは、0.5MのNaOHで可溶化させることによって収集した。分解された125I−PDGFの量は、インキュベーション培地を10%のトリクロロ酢酸(TCA)で沈殿させ、上清をTCA可溶性画分について計数することによって決定した。細胞表面と会合した、内在化および放出された放射能は、液体シンチレーションカウンターによって決定した。表面結合した、細胞内および分解されたPDGFの量は、氷上で90分間インキュベートした後の(t=0分間)、細胞に関連した全放射能のパーセントとして表した。それぞれの時点は三連で行い、結果を平均±SEとして表した。 (実施例22) PDGF誘導性のPDGF受容体活性化はD4ドメイン中の変異によって損なわれる。 図21Aに提示するアミノ酸配列アラインメントは、PDGFRのEFループ中のArg385およびGlu390が、隣接するKit受容体間のホモタイプのD4の相互作用の媒介に関与しているKitのArg381とGlu386との間に形成された塩橋と同様にして、ホモタイプのD4の相互作用を媒介し得ることを示している。同様の機構がPDGFRβによって用いられているか否かを調査するために、Arg385およびGlu390を、それぞれ単独で(R385A、E390A)または組み合わせて(R385E390/AA)、アラニン残基によって置換した。また、ループ領域中の追加の保存されたLys387残基もアラニン(R385K387E390/AAA)残基によって置換して、PDGF誘導性のPDGFRβの活性化の制御におけるその潜在的な役割を検査した。野生型および変異体PDGFRβを、PDGFRαおよびPDGFRβをどちらも欠損したマウス胚(MEF)に由来する線維芽細胞中で安定に発現させた(Soriano, P. (1994年) Genes Dev. 8巻、1888〜1896頁、Soriano, P. (1997年) Development 124巻、2691〜2700頁、およびAndrews, A.ら(1999年) Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 40巻、2683〜2689頁)。発現レベルについて一致した野生型または変異体PDGFRβを発現するMEFを以下に記載の実験に使用した。刺激していないまたはPDGFで刺激した細胞からの細胞溶解液を、抗PDGFR抗体を用いた免疫沈降、次いで抗ホスホチロシン抗体を用いた免疫ブロッティングに供した。 続いて膜をストリッピングし、抗PDGFR抗体で再ブロッティングして、PDGFRの発現を定量した。図22A中に提示する実験は、PDGFRβのPDGF誘導性のチロシン自己リン酸化が、PDGFRβのE390A、R385A、(R385E390/AA)、および(R385K387E390/AAA)変異体を発現する細胞中で強く損なわれていることを示しており、チロシン自己リン酸化の規模および動態はどちらもそれぞれ低下および減弱されていた。これらの実験は、D4のEFループ中のArg385およびGlu390がPDGFRβのPDGF誘導性の刺激において重要な役割を果たすことを示しており、これは、Kit構造中で同定されたものに類似の塩橋の対が活性化されたPDGFRおよび他のIII型RTK中に存在することを示している。リガンド−受容体の複合体内の隣接する受容体のD4ドメイン間の直接相互作用が、III型RTKのリガンド誘導性の活性化に利用される共通の機構を表している可能性がある。PDGF誘導性の受容体自己リン酸化は、R385A、(R385E390/AA)または(R385K387E390/AAA)変異体を発現する細胞と比較して、E390Aを発現する細胞中でより強く損なわれていることが、一貫してかつ再現可能に観察されている。これらの変異体間の相違に関与している正確な機構は明らかではないが、D4境界領域での正の局所的表面荷電が、リガンド刺激の前に隣接する受容体のD4を離して維持するための静電反発力を生じ得ることが可能である。アラニン残基によるArg385の置換は塩橋形成を妨げる一方で、この変化は、D4−D4境界領域中の正味の正電荷も減少させて、PDGFRの活性化のより弱い阻害をもたらし得る。 PDGFRのD4ドメイン中の変異が変異体PDGFRβの細胞膜発現およびリガンド結合親和性に影響を与え得たか否かの可能性を検査するために、野生型または変異体PDGFRβを発現する細胞に対する定量的PDGF結合実験を次に行った。野生型、R385A、E390Aまたは(R385E390/AA)のPDGFRβ変異体を発現する細胞を、125I−PDGFを含有する緩衝溶液と共に、90分間、4℃で、漸増濃度のネイティブPDGFの存在下でインキュベートした。細胞と結合した放射能は、シンチレーションカウンターを使用して測定した。野生型および変異体PDGFRβの置換曲線のEC50値は、Prism4を用いた曲線の当てはめによって分析した(図22B)。また、トランスフェクトされたMEF中で発現される野生型および変異体PDGFRβの量も、PDGFRに対する抗体または抗タグ抗体を用いた全細胞溶解液の免疫ブロッティングによって比較した(図22AおよびC)。まとめると、これらの実験は、類似量の野生型または変異体PDGFRβがトランスフェクトされた細胞の細胞表面上で発現されることを示している。さらに、類似のIC50値(125I−PDGFの結合の50%を置換するPDGF濃度)が、野生型(3.7nM)、R385A(6.0nM)、E390A(2.8nM)またはRE/AA(3.0nM)変異体を発現する細胞で得られた。また、野生型および変異体の受容体のin vitroチロシンキナーゼ活性を比較することによる、変異体PDGFRβの固有のチロシンキナーゼ活性が有害な影響を受けたか否かの可能性も検査した。この実験では、血清欠乏させた細胞からの細胞溶解液を、抗PDGFR抗体を用いた免疫沈降に供し、固定したPDGFRを1mMのATPおよび10mMの塩化マグネシウムの存在下のin vitroキナーゼアッセイに供した。インキュベーション後、試料を、抗ホスホチロシン抗体を用いた免疫ブロッティングによって分析した。図22C中に提示する実験は、R385A、E390AまたはRE/AA変異がPDGFRの固有のチロシンキナーゼ活性に影響を与えないことを示している。総合すると、これらの実験は、PDGFRβのPDGF誘導性の刺激に影響を与えるD4中の変異が、細胞表面のPDGFRβ(PDFGRβ)の発現を変更させず、PDGFRβ(PDFGRβ)のリガンド結合親和性に影響を与えず、変異体PDGFRβの固有のチロシンキナーゼ活性を変更させないことを示している。 (実施例23) PDGF受容体のD4点変異体はPDGFで刺激した細胞の表面上に不活性の二量体(dimmer)の形態で発現される 受容体の二量体化は受容体チロシンキナーゼの活性化の根底にある重要な機構として確立されているため、本発明者らは、PDGF刺激に応答した変異体PDGFRβのチロシン自己リン酸化の低下が受容体の二量体化の欠損によって引き起こされるか否かを調査した。化学的架橋剤は、生細胞の細胞表面上の野生型および様々なEGF受容体変異体を含めたいくつかの細胞膜受容体のリガンド誘導性の二量体化を監視および追跡するために、以前に使用されている(Cochet, C.ら(1988年) J Biol Chem 263巻、3290〜3295頁)。この実験では、野生型PDGFRβまたはE390A変異体を発現する細胞を終夜血清欠乏させ、次いで、PDGFで90分間、4℃でインキュベートした。数回の洗浄を使用して非結合のPDGFを除去し、細胞をPBS中の0.5mMのスベリン酸ジスクシンイミジル(DSS)と共に30分間、25℃でインキュベートした。刺激していないまたはPDGFで刺激した細胞からの細胞溶解液を、抗PDGFR抗体を用いた免疫沈降、次いでSDS−PAGE、およびPDGFRの二量体化の状態を監視するための抗flag抗体またはPDGFRの活性化の状態を監視するための抗ホスホチロシン抗体のどちらかを用いた免疫ブロッティングに供した(図23)。 図23中に示した実験は、刺激していない細胞の溶解物では、PDGFR単量体に対応する180kDaの見かけの分子量でSDSゲル上を移動するバンドが、野生型PDGFRβまたはE390A変異体のどちらかを発現する細胞からの溶解物中で検出されたことを示している。PDGF刺激の際、PDGFR二量体に対応する360kDaの見かけの分子量でSDSゲル上を移動する追加のバンドが、野生型PDGFRβを発現する細胞およびE390A変異体を発現する細胞の両方で検出された。しかし、抗ホスホチロシン抗体を用いた試料の免疫ブロッティングは、野生型PDGFRの二量体に対応するバンドは強くチロシンリン酸化されている一方で、E390A変異体の二量体に対応するバンドの非常に弱いチロシンリン酸化が検出されたことを示している(図23)。 この実験は、E390A変異体のリガンド誘導性のチロシン自己リン酸化の障害は、リガンド誘導性の受容体の二量体化の欠損によって引き起こされていないことを示す。また、この実験は、共有結合的に架橋結合した野生型PDGFRβはPDGFで刺激した細胞の細胞表面上に活性二量体の形態で表示されている一方で、E390A変異体はPDGFで刺激した細胞の表面上に不活性の二量体の形態で表示されていることも示している。前述のデータは、PDGFR中のD4ホモタイプ相互作用は受容体の二量体化に不要であり、PDGF誘導性の受容体の二量体化はチロシンキナーゼの活性化に必要であるが十分ではないことを示している。 (実施例24) D4 PDGF受容体変異体を発現する細胞中での細胞シグナル伝達の刺激障害 PDGF刺激に応答した細胞シグナル伝達に対する、PDGFRのD4変異の影響を検査した。WTまたはPDGFRのD4変異体のどちらかを発現する、刺激していないまたはPDGFで刺激した細胞からの溶解物を、抗ホスホリパーゼCγ(抗PLCγ)抗体を用いた免疫沈降、次いで、SDS−PAGEおよび抗PLCγ抗体または抗pTyr抗体のどちらかを用いた免疫ブロッティングに供した。図24A中に提示する実験は、PLCγのチロシンリン酸化が、R385A、E390A、RE/AAまたはRKE/AAAのPDGFR変異体を発現する細胞中で激しく損なわれていることを示す。さらなるPDGF誘導性の細胞応答の刺激障害が、PDGFRのD4変異体を発現する細胞中で観察されている。図24B中に提示する実験は、MAP−キナーゼ応答およびAkt刺激が、R385A、E390A、R385E390/AAまたはR385K387E390/AAAのPDGFR変異体を発現する細胞において、WT PDGFRを発現するMEF中のPDGFによって誘導された類似の応答と比較して強く損なわれていたことを示す。全体的に、E390A、R385E390/AA(すなわちRE/AA)またはR385K387E390/AAA(すなわちRKE/AAA)のPDGFR変異体を発現する細胞では、約10倍高い濃度のPDGFが同様のレベルのMAPキナーゼ応答およびAkt刺激に必要であった。 培養線維芽細胞のPDGF刺激の特徴の1つは、PDGFで刺激した細胞の背面上の膜ひだ(membrane ruffle)および環状アクチン環構造の典型的な形成である。図25中に提示する実験は、アクチン環形成のPDGF刺激がPDGFRのD4変異体を発現するMEF中で損なわれていることを示す。50ng/mlのPDGFで2分間刺激した後に、WT PDGFRを発現するMEFの約83%が環状アクチン環形成を示した一方で、PDGFRのD4変異体細胞の5%のみが同様の環状アクチン環形成を示した。さらに、WT PDGFRを発現するMEFではPDGF刺激の2〜5分後にピークとなる一過性の環状アクチン環形成は、R385A、E390AまたはRE/AA PDGFR変異体を発現する細胞中で弱く検出された。 (実施例25) D4 PDGF受容体変異体の内在化および分解の低下 また、PDGFの内在化、PDGFRの分解およびPDGFRのユビキチン化に対するPDGFRのD4変異の効果も検査した。WT PDGFRまたはPDGFRのD4変異体を発現するMEFを5ng/mlの125Iで標識したPDGFで90分間、4℃で処理し、次いでPBS(pH7.4)で手短に洗浄して、培地中の過剰のリガンドを除去した。事前に標識した細胞を37℃まで温めて、リガンド−受容体の複合体のエンドサイトーシスを4時間までの様々な時間間隔で開始させた。培地中の細胞表面と結合した、細胞内および分解された125I−PDGFを収集し、シンチレーションカウンターを使用して定量し、4℃で90分間インキュベートした後の(t=0)、細胞に関連した全125IPDGF放射能のパーセントとして表した(平均±SD)。図26A中に提示する実験は、WT PDGFRを発現するMEFと結合した、125Iで標識したPDGFの内在化の動態が、E390A、R385AまたはR385E390/AA PDGFR変異体を発現する細胞と結合した、125Iで標識したPDGFの内在化の動態よりもはるかに速いことを示す。30分後、125I−PDGFの約75〜80%が細胞表面から除去され、WT受容体を発現する細胞内に蓄積されていたのに対し、変異体受容体を発現する細胞においてはそれは50%未満であった。 125I−PDGFの低分子量分解生成物は30分後に検出可能となった。分解された125I−PDGFの放出は、WT細胞よりもE390A変異体細胞中ではるかに遅かった(図26A)。PDGFの内在化および分解の低下は、PDGFRのD4変異体の分解の低下に反映されていた。分解実験中の新しいPDGFR分子の生合成を防ぐために、WTまたはR385A、E390AもしくはR385E390/AA PDGFR変異体を発現する細胞を最初にシクロヘキシミドと共に30分間インキュベートした。刺激していないまたはPDGFで刺激した細胞の溶解物を、抗PDGFR抗体を用いた免疫沈降、次いで、SDS−PAGEおよびWTまたはPDGFRのD4変異体のC末端に付着したタグに向けられた抗体を用いた免疫ブロッティングに供した。図26B中に提示する実験は、R385A、E390AまたはR385E390/AA PDGFR変異体の分解の動態が強く減弱されたことを示し、WT PDGFRの半分がPDGF刺激の1.5時間以内に分解された一方で、PDGFRのD4変異体の半減期は約4〜6時間まで伸びていた。図26C中に提示する実験は、E390A PDGFRのユビキチン化のPDGF誘導性の刺激も、同様の条件下でWT PDGFRと比較して強く低下したことを示す。まとめると、これらの実験は、PDGFRの内在化およびユビキチン媒介性のPDGFRの分解がPDGFRのD4中の変異によって損なわれることを示している。 実施例22〜25の考察 PDGFRα、PDGFRβ、CSF1R、Flt3およびKitを含めたIII型RTKのすべてのメンバーの細胞外ドメインは、5個のIg様ドメインから構成され、そのうち、最初の3個は二量体リガンド分子の結合部位として機能し、これは結合の際に受容体の二量体化および活性化を刺激する。分子構造としては、III型RTKのリガンド結合特徴および受容体の二量体化の機構は高度に保存されており、SCF刺激の前および後のKitの完全な細胞外ドメインの結晶構造によって明らかとなるSCF誘導性のKit活性化の機構は、すべてのIII型RTKの活性化の一般的な機構を表す。さらに、その細胞外ドメイン中にIg様ドメインを含有するRTKの系統学的分析は、VEGFR1(Flt1)、VEGFR2(KDR)およびVEGFR3(Flt4)を含めたファミリーであるIII型およびIV型RTKの共通の進化的起源を示している。さらに、VEGFおよびPDGFはどちらも同じシステインノットファミリーに属しており、同様のトポロジー、大きさおよび受容体結合戦略を共有するホモ二量体増殖因子である。したがって、その細胞外ドメインのX線構造解析によって明らかとなるKitの活性化の顕著な特徴(本明細書中で初めて開示される)は、V型RTKのリガンド誘導性の活性化にも当てはまり得る。 Kitの構造解析により、2つの隣接するD4ドメインのGlu386とArg381との間に形成された塩橋の対が、SCF誘導性のKit活性化に必須のホモタイプのD4の相互作用の媒介に関与していることが示されている。III型RTKのアミノ酸配列の比較は、PDGFRα、PDGFRβおよびCSF1RのD4のEFループ領域中に同一の配列モチーフが存在することを示しており(図21)、類似の塩橋もIII型RTKのD4間に形成されている証拠を提供している。実際、PDGFRβのD4ドメインのArg385またはAsp390をアラニンによって置換することで、PDGFRβの活性化のPDGF刺激が損なわれ、WT PDGFRβを発現する細胞においてPDGFによって刺激される様々な細胞応答の機能障害がもたらされた。Kit構造の分析によって明らかとなったリガンド誘導性のKit活性化の機構は、すべてのIII型RTKの活性化に当てはまる。D4ホモタイプ相互作用に関与している配列モチーフと同一である配列モチーフは、RTKのVEGFRファミリー(IV型)の3つすべてのメンバーの膜近位の第7のIg様ドメイン(D7)のEFループ中でも同定されている。Kitおよび他のIII型RTK中のホモタイプのD4の相互作用の媒介に関与している保存された配列モチーフはIV型RTKのD7ドメイン中に位置するが、VEGFRのD7は、IV型RTKの膜近位領域間のホモタイプ相互作用の媒介においてD4と同様の役割を果たす可能性が高い。実際、VEGFR2の細胞外ドメインの構造の電子顕微鏡分析により、VEGFと結合したVEGFR2の二量体中のD7間の直接接触が明らかとなっている(Ruch, C.ら(2007年) Nat Struct Mol Biol 14巻、249〜250頁)。膜近位のIg様ドメイン間の直接接触は、III型およびIV型RTKのどちらにもよっても用いられている一般的な機構を表す。 様々な受容体変異体を探求した研究、またはKit(Blechmanら(1995年) Cell 80巻、103〜113頁)、PDGF受容体(Miyazawa, K.ら(1998年) J. Biol. Chem. 273巻、25495〜25502頁)および他のIII型RTKの個々のIg様ドメインと特異的に結合するモノクローナル抗体を用いた研究は、Kitが一価SCFリガンドによって刺激される場合にも、D4が受容体の二量体化の媒介において役割を果たすことを提案している(Lev, S.ら(1992年) J Biol Chem 267巻、15970〜15977頁)。しかし、SCF結合のマイクロ熱量測定(microcalorimetry)および最初の3個のIg様ドメイン(D1〜D3)または5個すべてのIg様ドメイン(D1〜D5)のどちらかから構成されるKitの精製した細胞外ドメインに対するSCFの化学量論を用いた定量分析により、D4およびD5がKitの二量体化のSCF刺激に不要であることが示されている。言い換えれば、これらの報告は、Kitの二量体化は、Kitと結合するSCFの二量体性質によって主に駆動されることを示している(Lemmon, M. A.ら(1997年) J. Biol. Chem. 272巻、6311〜6317頁)。 しかし、本明細書中に提示する研究は、隣接する受容体間のホモタイプのD4の(およびホモタイプのD5も)相互作用は、受容体の二量体化において役割を果たすのではなく、チロシンキナーゼの活性化をもたらす、2つの受容体の膜近位領域の、その細胞質ドメイン間の相互作用を可能にする距離および配向での正確な配置に必要であることを示している。したがって、部分、たとえば本発明のモノクローナル抗体は、受容体の二量体化を妨害するのではなく、チロシンキナーゼの活性化に必須の距離および配向での細胞質ドメインの配置に必要な、III型RTKの膜近位領域間において重要なホモタイプ相互作用を妨げることによって、受容体の活性化に対するその阻害効果を発揮する。 本明細書中に提示した実験は、PDGFRβ、Kitおよび他のIII型RTKの二量体化はリガンド結合によって完全に駆動されており、リガンド結合の唯一の役割は、細胞膜中のその局所濃度を増加させるために2つの受容体分子を架橋結合することであることを示している。ホモタイプのD4の相互作用の媒介に関与している2つの塩橋(360Å2の埋没表面積の境界領域を有する)は、リガンドに媒介される受容体の二量体化の支持なしでは受容体の相互作用を支持するためには弱すぎ、これは、Kitの場合は様々な強力な相互作用によって媒介されており、全埋没表面積はそれぞれのSCFプロトマーについて2060Å2である。細胞1個あたり20,000個の受容体を発現する刺激していない細胞の、細胞膜中の受容体の見かけの濃度は、約1〜3μΜであると推定されている(Klein, P.ら(2004年) Proc Natl Acad Sci U S A 101巻、929〜934頁、Chandrasekhar, S. (1943年) Reviews of Modern Physics 15巻、1頁)。SCFなどの二量体リガンドと結合する際、2つの占有された受容体は75Åの距離で一緒に保たれる。これらの条件下では、最近傍手法に対して平均距離を使用して計算した、細胞膜中の見かけの受容体濃度は、2桁より多く増加して、4〜6×10−4Mとなる。この計算は、2つの塩橋によって媒介されるものなどの、10−4〜10−5Mの範囲の解離定数を有する弱い相互作用さえも、2つの隣接する受容体の膜近位領域間の会合および直接接触を媒介できることを示している。細胞膜中の高い局所濃度が、D4およびD5を受容体分子の残りの部分と接続する接合部の柔軟性とあいまって、受容体の膜近位領域を正確な配向および距離(Kitの場合は15Å)に配置する、ホモタイプのD4ならびにホモタイプのD5の接触の移動および形成を可能にし、これは、隣接する細胞質ドメイン間の相互作用、チロシン自己リン酸化、およびチロシンキナーゼ活性の刺激を可能にする。 最後に、刺激していないまたはPDGFで刺激した細胞上のWTまたは変異体受容体を共有結合的に架橋結合させるために化学的架橋剤を適用することにより、E390A PDGFRβ変異体がWT受容体のPDGF誘導性の二量体化に類似のPDGF誘導性の二量体化を受けることが、本明細書中で示されている。しかし、PDGFで刺激した細胞の細胞表面上で活性化された二量体の形態で発現されるWT PDGFRβとは対照的に、E390A変異体は、PDGFで刺激した細胞の表面上で不活性の二量体の形態で発現される。この実験は、ホモタイプのD4−D4相互作用はPDGFRβの二量体化に不要であり、PDGFRβの二量体化は受容体の活性化に必要であるが十分ではないことを示している。 (実施例26) D4−D4境界領域の破壊は、腫瘍発生性KITの活性化を克服する 野生型(WT)KIT、D5のAla502およびTyr503が重複している腫瘍発生性KIT変異体(D5−反復変異体)、またはD5のAla502およびTyr503が重複しており(D5−反復)、かつD4のGlu386がAla残基によって置換されている追加の点変異を有するKIT変異体(D5−反復/E386A変異体)を安定に発現するマウス3T3細胞を、1、5または10ng/mlのSCFで5分間、37℃で刺激した。 刺激していないかまたはSCFで刺激した細胞の溶解物を、抗KIT抗体を用いた免疫沈降、次いで、SDS−PAGEおよび抗Kitまたは抗ホスホチロシン(抗pY)抗体のどちらかを用いた免疫ブロッティングに供した。 図27中に提示する実験は、野生型KITへのSCF刺激が、SCF刺激に応答した、KITの増強されたチロシン自己リン酸化によって明らかとなるKITの活性化の増強をもたらすことを示している。また、この実験は、KITの腫瘍発生性のD5−反復変異体が構成的にチロシン自己リン酸化されている(すなわちSCF刺激の非存在で活性化される)ことも示す。対照的に、D4中に追加の点変異(正常な受容体タンパク質のバックグラウンドにおいてKITのSCF活性化を損なわせることが示されている)を保有するD5−反復/E386A変異体は、腫瘍発生性のD5−反復変異によって媒介されるKITの構成的なチロシン自己リン酸化を遮断する。 この実験は、D5中の腫瘍発生性変異および恐らくはKIT分子の様々な一部分中の他の腫瘍発生性変異によるKITの活性化の媒介における、D4−D4ホモタイプ相互作用の重要性についての遺伝的な妥当性確認を提供する。さらに、この実験は、本発明の部分、たとえば、抗体もしくはその抗原結合性一部分、小分子またはペプチド性分子による薬理学的介入によるD4−D4境界領域の破壊が、D5中の腫瘍発生性変異、KIT分子の他の一部分中の腫瘍発生性変異ならびに腫瘍発生性III型およびIV型RTKの活性を遮断するという考えに対する、さらなる妥当性確認を提供する。 (実施例27) D4ホモタイプ相互作用の媒介に関与するKITの特徴的なモチーフに対応する合成ペプチドに向けられた抗体はインタクトなKITタンパク質を認識する 本実施例では、3つの異なるKIT抗原に対するウサギポリクローナル抗体を産生させた: 1.ヒトKITの完全長細胞外ドメイン(アミノ酸1〜510)。 2.アミノ酸308〜411から構成されるKITのIg様ドメイン4(D4)(KIT−D4) 3.KLHとコンジュゲートした、KITのD4の特徴的なモチーフ(SELHLTRLKGTEGGTYT)を含めたアミノ酸375〜391に対応する17merペプチド。 ウサギを2週間間隔で3つの抗原のそれぞれを用いて免疫化し、試験採血を分析した。提示した結果は、3回目の免疫化の後に収集した血清試料からのものである。 野生型ヒトKITを発現する3T3細胞の溶解物を、以下の抗体のうちの1つを含有する30μlの血清と共にインキュベートした:1.完全長KITの細胞外ドメインに向けられた抗KIT。2.KIT−D4に向けられた抗D4、および3.KITのD4のアミノ酸375〜391に対応するペプチドに向けられた抗ペプチド。野生型KITを発現する3T3細胞の溶解物を、抗体のそれぞれと共に、プロテインAセファロースと一緒に2時間、4℃でインキュベートし、その後、20mMのHepes、150mMのNaCl、0.1%のTritonX−100および5%のグリセロールを含有する洗浄緩衝液で3回洗浄した。免疫沈降物をSDS−PAGE上で分離し、ニトロセルロースに移し、図28に記載のように抗体のそれぞれを用いて免疫ブロットした。図28中に提示したデータは、KITの二量体をその活性化された立体配置に配置するために必須のD4のホモタイプ相互作用領域に向けられた抗ペプチド抗体を含めた抗体のそれぞれが、実験の免疫沈降および免疫ブロットステップにおいてインタクトなネイティブKITを認識することを示している。 意外なことに、この実験は、抗ペプチド抗体が、KITのインタクトな細胞外またはD4領域に向けられた抗体と同じ効率で野生型KITを認識することを示している。 (実施例28) 細胞外の膜近位ドメイン間の直接接触がVEGF受容体活性化および細胞シグナル伝達に必要である SCFと複合体形成したKITの細胞外領域の構造分析により、ホモタイプの受容体接触の形成ならびにリガンド誘導性のKIT活性化および細胞シグナル伝達に関与している第4のIg様ドメイン(D4)のEF−ループ中の配列モチーフが明らかとなった。同一のモチーフがVEGFR1、2および3の最も膜近位の第7のIg様ドメイン(D7)中で同定された。本実施例は、D7中の重要な残基(Arg726またはAsp731)中に変異を保有するVEGFR1またはVEGFR2を介したリガンド誘導性のチロシン自己リン酸化および細胞シグナル伝達が強く損なわれていることを示している。また、VEGFR2のD7の結晶構造が2.7Åの分解能まで記載されている。この構造は、ホモタイプのD7接触が、一方のプロトマーのArg726と他方のプロトマーのAsp731との間に形成された塩橋およびファンデルワールス接触によって媒介されることを示している。D7二量体の構造は、SCFと複合体形成したKIT細胞外領域の結晶構造で見られるD4二量体の構造に非常に類似している。2つの構造中のEFループおよび塩橋の位置はほぼ同一であり、そのC末端間の距離はどちらの構造中でも約15Åである。構造および機能の両方におけるVEGFRのD7とKITのD4との間の高い類似度は、III型RTKおよびV型RTKの先祖の起源が共通であることのさらなる証拠を提供する。また、これはRTKの活性化の保存的な機構および病理学的に活性化されたRTKの薬理学的介入の新規標的も明らかにする。 血管内皮増殖因子(VEGF)は、VEGF受容体(VEGFR)受容体チロシンキナーゼ(RTK)ファミリーの3つのメンバーと結合してそれを活性化することによって、血管およびリンパ管の発生および恒常性を調節する(Olssonら、Nat. Rev. Mol. Cell. Biol.、7巻(5号):359〜371頁(2006年))。VEGFR1(Flt1)、VEGFR2(KDR/Flk1)およびVEGFR3(Flt4)は、V型RTKのメンバーであり、これは、7個のIg様ドメイン(D1〜D7)から構成される大きな細胞外領域、1個の膜貫通(TM)ヘリックス、ならびにチロシンキナーゼ活性および追加の調節配列を有する細胞質領域を含有するファミリーである。VEGFR外部ドメインの第2および第3のIg様ドメイン、D2およびD3は、VEGFサイトカインファミリーの5個のメンバー(すなわち、VEGF−A、B、C、Dおよび胎盤増殖因子(PlGF))の結合部位として機能する(Barleonら、J. Biol. Chem.、272巻(16号):10382〜10388頁(1997年)、およびShinkaiら、J. Biol. Chem.、273巻(47号):31283〜31288頁(1998年))。これらの増殖因子は、共有結合されたホモ二量体である。それぞれのプロトマーは、4本のストランドのβ−シートから構成され、これは、逆平行の様式において構造に構成されており、システインノット増殖因子と命名されている(Weismannら、Cell、91巻(5号):695〜704頁(1997年))。システインノットサイトカインファミリーの他のメンバーには、神経増殖因子(NGF)および血小板由来増殖因子(PDGF)が含まれる。しかし、PDGFR RTK(III型)ファミリーの外部ドメインは5個のIg様反復から構成されており、そのうちのD1、D2、およびD3は、PDGFRならびにファミリーの他のメンバー(すなわち、KIT、CSF1R、およびFlt3)のリガンド結合領域として機能する。構造的および生化学的実験により、細胞外領域とのSCF結合がKITの二量体化を誘導し、このステップには、隣接するKIT分子の2つの膜近位Ig様ドメインD4およびD5のホモタイプ接触が続くことが示されている(Yuzawaら、Cell、130巻(2号):323〜334頁(2007年))。野生型および腫瘍発生性KIT変異体の生化学的研究は、ホモタイプのD4およびD5の接触が、KITの二量体の細胞質領域を、トランス自己リン酸化、キナーゼ活性化および細胞シグナル伝達を促進する距離および配向で配置することにおいて重要な役割を果たすことを示している。 本実施例では、構造的および生化学的な証拠は、VEGF受容体の外部ドメインの最も膜近位のIg様ドメイン(D7)間のホモタイプ接触が、VEGF受容体を介したVEGF誘導性の活性化および細胞シグナル伝達において重要な役割を果たすことを示している。 VEGFR2のD4およびD7の配列解析 Ig様ドメイン間のホモタイプ接触の媒介に関与している進化的に保存された配列モチーフ(L/IxRΦxxxD/ExG)は、KITのD4の構造に基づく配列アラインメントによって同定された(Yuzawaら、Cell、130巻(2号):323〜334頁(2007年))。同様のモチーフがPDGFRα、PDGFRβ、およびCSF1RのD4ならびにVEGFR1、VEGFR2およびVEGFR3の最も膜近位のIg様ドメイン(D7)中で見つかった(図29)。L/IxRΦxxxD/ExGモチーフはD7のβΕストランドおよびβFストランドを連結するループ領域に位置しており、これは、ホモタイプのD4のKIT接触に必要な塩橋の媒介に関与していると示されている領域である。ArgおよびAspは、VEGFR1およびVEGFR2の両方においてウニからヒトまで進化的に保存されており(図29)、VEGFR活性におけるこれらの残基の機能的重要性を示している。しかし、KITおよびPDGFRのD4とは対照的に、VEGFR1およびVEGFR2のD7は、位置B5およびF5に、βストランド間のジスルフィド結合を形成する2つの保存的なシステイン残基を含有し、この相互作用は、IセットのIg様ドメインの疎水性コアに寄与する(HarpazおよびChothia、J. Mol. Biol.、238巻(4号):528〜539頁(1994年))。 PDGFRおよびKITのD4と同様、VEGFR2のD4は、位置B5およびF5でのβストランド間のジスルフィド結合の形成に関与している保存されたシステインを欠く。VEGFR2のD4では、βCをβΕと接続する領域は、他の典型的なIセットIgドメインと比較してより短く、これは、この領域がβストランドのうちの1本を欠いていることが原因の可能性がある。アミノ酸配列分析により、VEGFR2のD4がミオメシンドメインD13(2R15)およびテロキン(1TLK)と相同的であり、配列同一性はそれぞれ30%および33%であることが示された。手動の配列アラインメントにより、VEGFR2のD4とPDGFRαのD4との間に20%の配列同一性が明らかとなった。KITのD4およびPDGFRのD4はどちらも、D/E−x−G/A/D−x−Y−x−CモチーフからなるβF中の「Y−コーナーモチーフ」の周りに保存された「D/E−x−G」アミノ酸を含有する(Hemmingsenら、Protein Sci.、3巻(11号):1927〜1937頁(1994年))(D4中で、Cys残基は疎水性アミノ酸によって置き換えられている)。D4中で、1つの分子上のGlu残基と第2のKIT分子の−5位のArg残基との間に塩橋が形成されている(図29B)。Asp残基がVEGFR2のD4中に見つかるが、−5位のArgの代わりに、このIg様ドメインは、Asp残基に対して−2および−6の位置に逆の荷電を有する一対のアミノ酸を含有する(図29B)。D4間の直接接触がVEGFR2の外部ドメインのVEGF−A誘導性の二量体の電子顕微鏡観察(EM)画像で観察されているが(Ruchら、Nat. Struct. Mol. Biol.、14巻(3号):249〜250頁(2007年))、VEGFR2のD4の機能は未だ不明確である。したがって、D7は、VEGFR2のD4よりも、KITおよびPDGFRのD4中の対応する配列とEFループ領域が類似している。 ホモタイプのD7接触がリガンド誘導性のVEGFR2の活性化に必須である この配列解析およびKITとの比較により、VEGFR2の残基R726およびD731は受容体間の塩橋形成を媒介することができ、リガンドに対する応答を変更し得ることが示唆される。リガンド誘導性のVEGFR2の活性化およびシグナル伝達におけるD7領域中の保存的な残基の役割を調査するために、Arg726、Asp731または両方のアミノ酸をAla残基によって置き換えた(R726A、D731AおよびRD2A)VEGFR2変異体を作製した。HEK293細胞を、WT VEGFR2またはD7の変異を保有するVEGFR2の発現を指示するpCDNA3発現ベクターで一過的にトランスフェクションした。24時間のインキュベーションの後、トランスフェクションした細胞を終夜欠乏状態にした後にVEGF−A刺激を行った。刺激していないかまたはVEGF−Aで刺激したかまたは刺激していない細胞のVEGFR2のチロシン自己リン酸化およびMAPKの応答を、それぞれ抗ホスホチロシン抗体(抗pTyr)または抗ホスホ(phosho)−MAPK抗体を使用して分析した。図30Aは、受容体間の塩橋形成の媒介に関与していると予測されるArgまたはGlu残基の変異がVEGF−A誘導性のVEGFR2の自己リン酸化およびMAPK刺激を顕著に低下させたことを示す。 VEGFR2の比較的弱いキナーゼ活性を克服するために、キメラ受容体手法を用いた(Fambroughら、Cell、97巻(6号):727〜741頁(1999年)およびMeyerら、J. Biol. Chem.、281巻(2号):867〜875頁(2006年))。PDGFRの膜貫通および細胞質領域(アミノ酸528〜1106)と接続されたVEGFR2の外部ドメイン(アミノ酸1〜761)から構成されるキメラ受容体を調製し、VEGF−A誘導性のVEGFR2の活性化におけるD7によって果たされる役割をさらに調査するために使用した。キメラVEGFR2/PDGFRまたはD7の変異を保有するキメラVEGFR2/PDGFRを安定に発現するVEGF−Aで刺激したかまたは刺激していないNIH−3T3細胞からの溶解物を、抗PDGFR抗体を用いた免疫沈降、次いで、抗pTyr抗体を用いた免疫ブロッティングに供した。図30Bは、VEGF−A刺激に応答したキメラVEGFR2/PDGFRの堅調なチロシン自己リン酸化を示している(図30B、WT)。対照的に、D7の変異(R726A、D731A、RD2A)を保有するキメラ受容体のVEGF−A誘導性のチロシン自己リン酸化は強く損なわれた(図30B)。また、PDGFRのTMおよび細胞内領域と融合したVEGFR1の細胞外領域から構成されるキメラ受容体も作製した。野生型キメラ受容体を安定に発現する3T3細胞は、リガンド刺激に応答した自己リン酸化を示した(図30C、WT)。対照的に、キナーゼ活性のリガンド誘導性の刺激は、Arg720、Asp725または両方のアミノ酸中に変異を保有するキメラ受容体、それぞれR720A、D725AおよびRD2Aを発現する3T3細胞中で強く損なわれた(図30C)。前述のデータは、III型およびV型RTKの膜近位のIg様ドメイン間のホモタイプ接触がリガンド誘導性の受容体活性化および細胞シグナル伝達に必須であることを示している。 共有結合性架橋結合剤を利用して、リガンドで刺激した細胞の架橋結合、次いでリガンドで刺激したかまたは刺激していない細胞からの溶解物のSDS−PAGE分析によって、リガンド誘導性の受容体の二量体化に対するD7の変異の効果を調査した(たとえばCochetら、J. Biol. Chem.、263巻(7号):3290〜3295頁(1988年)を参照)。この実験により、キメラ受容体のVEGF−A誘導性の二量体化がD7の変異によって影響を受けなかったことが示された(データ示さず)。PDGFRおよびKITの以前の報告と同様(Yuzawaら、Cell、130巻(2号):323〜334頁(2007年)およびYangら、Proc. Nat’l. Acad. Sci. U.S.A.、105(220巻:7681〜7686頁(2008年))、D7に媒介されるホモタイプ接触は受容体の活性化に必要であるが、受容体の二量体化には必要ではない。さらに、リガンド誘導性の受容体の二量体化は、チロシン自己リン酸化および受容体の活性化に必要であるが十分ではない。対照的に、D392A変異またはAsp387およびArg391がどちらもAla残基によって置換された変異(DR2A)を含めた、VEGFR2のD4中の変異を保有するキメラ受容体のVEGF−A誘導性のチロシン自己リン酸化は変わらないまま保たれ(図30D)、これは、異なる境界領域がVEGF−A誘導性のVEGFR2外部ドメインの二量体のEM画像で見られたD4相互作用の媒介に関与している可能性があることを示している(Ruchら、Nat. Struct. Mol. Biol.、14巻(3号):249〜250頁(2007年))。 分析用遠心分離を利用して、単離されたD7領域の二量体化の解離定数を決定した。4×10−5、8×10−5および1.6×10−4Mのタンパク質濃度を使用して行った分析用遠心分離実験は、単離されたD7が10−4Mもの高い濃度の溶液中で単量体のまま保たれたことを示し、D7の二量体化の解離定数が10−4Mを超えることを示している。同様の高い解離定数が、KITまたはPDGFRの単離されたD4またはD5の二量体化について判明した。SCFまたはPDGF誘導性の二量体化の後、細胞膜中の2つの隣接するKITまたはPDGFRプロトマーの局所濃度は4〜6×10−4Mの範囲であることが、以前に示されている。このことは、低下した次元性と共に、細胞膜中で低い親和性で互いに結合するIg様ドメインの対間の効率的な側方相互作用および安定なホモタイプ接触の形成を可能にする。さらに、III型およびV型RTK中の膜近位のIg様ドメイン間のホモタイプ接触は、隣接する受容体のTMおよび細胞質領域の間で協力的な様式で起こるさらなる側方相互作用によって支持されている。 VEGFR細胞外ドメインD7の構造 リガンド誘導性のVEGFR2の活性化においてD7によって果たされる役割の根底にある分子基盤を決定するために、このIg様ドメインの結晶構造を決定した。結晶が空間群I212121で得られ、1個のD7分子/非対称単位および28個の水分子であった。D7の構造はVEGFR2のアミノ酸667〜756からなり、X線を2.7Åの分解能まで回析する。構造は、テロキン(PDBコード:1TLK)の構造に基づいたモデルを用いた分子置換によって決定した(Holdenら、J. Mol. Biol.、227巻(3号):840〜851頁(1992年))。複合体中のD7の2つのコピーは互いに非常に類似しており、r.m.s.偏差は0.1Åである。D7は、1つ目はストランドA、B、DおよびEを含み、2つ目はストランドA’、G、FおよびCを含む、2つの4本のストランドのシートによって形成されたβ−サンドイッチからなる典型的なIgSFの折り畳みをとる。受容体チロシンキナーゼMuSKの細胞外領域からのIg様ドメインIg1およびIg2の構造と同様に、Aストランドの最初の半分はBストランドと水素結合を形成し、A’ストランドはGストランドと水素結合を形成する(Stieglerら、J. Mol. Biol.、364巻(3号):424〜433頁(2006年))。ストランドβΕとβFとの間のクロスオーバー接続には、残基729〜731での単一のヘリックスターンが含まれる。VEGFR2のD7は、βΒのCys688とβFのCys737との間の保存的なジスルフィド結合、およびジスルフィド結合に対して充填されて疎水性コアを形成する特徴的なトリプトファン残基を含めた、IgSFの折り畳みのいくつかの特徴を示す。DALI(Holmら、Curr. Protoc. Bioinformatics、第5章、ユニット5 5(2006年))を使用した構造比較は、VEGFR2のIg様ドメインのうち、とりわけD7がテロキン(PDBコード:1TLK)に最も類似していることを示し(Holdenら、J. Mol. Biol、227巻(3号):840〜851頁(1992年))、89個のアラインメントしたCβ残基について13.4のZスコアおよび1.5Åのr.m.s.d.である。D7は、Iセットを定義するV−フレームプロフィール中の20個の主要な位置のうちの16個を含有する(HarpazおよびChothia、J. Mol. Biol.、238巻(4号):528〜539頁(1994年))。追加の露出された交差ストランドジスルフィド結合は、βF(Cys740)およびβG(Cys745)中に位置するCysの対によって形成される。この特長は、VEGFR2およびVEGFR3中では高度に保存されているが、VEGFR1中ではそうではない。 結晶構造は、ホモタイプのD7接触がそれぞれのプロトマーのD7のABEDストランドによって形成された2つのβシートによって媒介されており、一方のプロトマーのArg726が他方のAsp731に向かっており、約360A2の埋没表面積をもたらすことを示している。図31Bは、Arg726およびAsp731が塩橋およびファンデルワールス接触を形成することを示す。D7二量体の構造は、KITの細胞外二量体構造(PDBコード:2E9W)で見られるホモタイプのD4接触に非常に類似している(Yuzawaら、Cell、130巻(2号):323〜334頁(2007年))。さらに、VEGFR2のD7は静電場の強力な分極を示しており、D7−D7境界領域に沿った正荷電の中心分離帯を例外として全体的に負荷電の表面である(図31C)。強力に荷電した境界領域は、リガンド刺激の前の単量体受容体分子の異常な会合を防止し得る。 DALI(Holmら、Curr. Protoc. Bioinformatics、第5章、ユニット5 5(2006年))を使用したKITのD4の構造とVEGFR2のD7の構造との比較は顕著な類似度を示し、83個のアラインメントしたCα残基について10.4のZスコアおよび1.8Åのr.m.s.d.であった。2つの構造中のEFループの位置はほぼ同一であり、C末端間の距離はD4およびD7の二量体構造のどちらについても約15Åである(図33)。構造および機能の両方におけるVEGFRのD7とKITのD4との間の高い類似度は、RTKの活性化の十分に保存された機構を示唆しており、III型およびV型RTKの先祖の起源が共通であるさらなる証拠を提供する。興味深いことに、ショウジョウバエ(Choら、Cell、108巻(6号):865〜876頁(2002年))、C.elegans(Plowmanら、Proc. Nat’l. Acad. Sci. U.S.A.、96巻(24号):13603〜13610頁(1999年))、ホヤ(Satouら、Dev. Genes Evol.、213巻(5〜6号):254〜263頁(2003年))およびウニ(Duloquinら、Development、134巻(12号):2293〜2302頁(2007年))のゲノムは、その細胞外領域中に7個のIg様ドメインを含有する、単一のVEGFR/PDGFR様RTKのファミリーを含有する。III型およびV型RTK遺伝子は、脊椎動物において機能的に分離されたが、染色体中で互いに隣接して位置する(Shibuya、Biol. Chem.、383巻(10号):1573〜1579頁(2002年)およびGrassotら、Mol. Biol. Evol.、23巻(6号):1232〜1241頁(2006年))。ヒトでは、クラスIIIおよびクラスVのRTKの遺伝子は、染色体上の3つのクラスター、4q12(KIT、PDGFRαおよびVEGFR2)、5q33(FMS、PDGFRβおよびVEGFR3)ならびに13q12(FLT3およびVEGFR1)中に見つかる。クラスIIIおよびクラスVのRTKの系統発生は、これら8個のRTKが2回のシス複製および2回のトランス複製によって生じたことを示唆している(Grassotら、Mol. Biol. Evol.、23巻(6号):1232〜1241頁(2006年))。また、EF−ループ領域中の高度に保存されたモチーフも、C.elegansの2つのVEGFR/PDGFR様受容体遺伝子であるVER3およびVER4のD7中で同定されている。同様のモチーフがウニのVEGFR/PDGFR様受容体のD7中で見つかっているが、ショウジョウバエのVEGFR/PDGFR様受容体中では見つかっていない。興味深いことに、ホヤのVEGFR/PDGFR様受容体の10個のIg様ドメインのうちの3個が典型的なEF−ループモチーフを含有する。VEGFR/PDGFR様ホヤ受容体のD3、D6およびD9の間のホモタイプ接触が、その細胞外領域中に10個のIg様ドメインを含有するRTKのリガンド誘導性の活性化に必要であり得る。 本実施例中に提示した実験は、III型RTKおよびV型RTKが、共通の機構によって活性化されることを示しており、この共通の機構において、膜近位のIg様ドメインによって媒介されたホモタイプ接触は、2つの受容体単量体のTMおよび細胞質領域を近接させて正しい配向にさせて、効率的なトランス自己リン酸化、キナーゼ活性化および細胞シグナル伝達を可能にすることを確実にする。リガンド誘導性の受容体の二量体化と膜近位のIg様ドメイン間の複数の低親和性のホモタイプの会合との組合せが、リガンド誘導性の膜貫通シグナル伝達の単純であるが効率的な機構を提供する。さらに、個々のIg様ドメインの互いに対する低い結合親和性が、リガンド結合の前の、受容体単量体の偶然の受容体の活性化を防止する。ホモタイプ接触領域は、病理的RTKの活性化および細胞シグナル伝達の薬理学的介入の理想的な標的を提供する。 VEGFR1、VEGFR2およびVEGFR3のD7領域の近接エピトープ 構造に基づく配列アラインメントを行った。このアラインメントにより、本発明の部分によって認識され得るVEGFR1、VEGFR2およびVEGFR3のD7領域上の潜在的な近接エピトープが明らかとなった(表8)。エピトープは、ストランドB、D、E、A’Bループ、CDループ、DEループおよびEFループ中に位置する。これらのエピトープは、ホモタイプのD7接触を媒介する境界領域中に位置する。 実施例28の材料および方法 1.タンパク質の発現、精製および結晶化 N末端の6×Hisタグを含有するVEGFR2のD7(アミノ酸657〜765)を、E.Coli中で、PET28aベクターを使用して発現させた。封入体を収集し、6Mの塩酸グアニジン(pH8.0)中に可溶化させた。D7は、タンパク質を10mMのトリス(pH8.0)、2mMの還元グルタチオンおよび0.2mMの酸化グルタチオンを含有する再折り畳み緩衝液中に、80〜100μg/mlの最終タンパク質濃度まで滴下して希釈することによって、再折り畳みさせた。再折り畳みは4℃で48時間、撹拌しながら実施した。0.45μmのフィルターユニットを使用した濾過によって再折り畳み溶液を清澄化し、FastQセファロースカラム、次いでサイズ排除(S200、GE Healthcare)および陰イオン交換クロマトグラフィー(MonoQ、GE Healthcare)によって精製した。トロンビン消化によってN末端の6×Hisタグを除去した。D7タンパク質を、25mMのトリス(pH8.0)および200mMのNaClを含有する緩衝液中で15mg/mlまで濃縮し、結晶化および最適化のための広範囲なスクリーニングに供した(Hampton research、結晶スクリーニング)。300×75×20μΜの適切な寸法の外部ドメインD7の結晶を、0.2Mのコハク酸および16%のPEG3350中、4℃で成長させた。すべての結晶を、5〜18%のグリセロールを補充したリザーバ溶液に数秒間浸し、フラッシュ冷却し、データ収集の間100Kの窒素ガス流中に保った。結晶はI212121空間群に属しており、単位格子の寸法は、a=39.476Å、b=76.991Å、およびc=102.034Åであり、1個の分子/非対称単位であった。回折データは、NSLS、Brookhaven National LaboratoryのX29Aビームラインで、ADSD quantum−210CCD検出器を用いて2.7Åの分解能まで収集された。すべてのデータ組は、HKL2000プログラムパッケージを使用して処理およびスケーリングした(OtwinowskiおよびMinor、Methods in Enzymology、276巻(パートA):307〜326頁(1997年))。データ収集の統計量は表7中に要約されている。構造は、Phaserを用いて、MUSK(2IEP)(Stieglerら、J. Mol. Biol.、364巻(3号):424〜433頁(2006年))、テロキン(1TLK)(Holdenら、J. Mol. Biol.、227巻(3号):840〜851頁(1992年))およびKITのD4(2E9W)(Yuzawaら、Cell、130巻(2号):323〜344頁(2007年))からのIgドメインの構造に基づいたモデルを検索モデルとして使用した分子置換によって解析した。結晶学的R因子22.7%および自由R因子27.7%を用いて構造を2.7Åの分解能まで精密化した(表7)。VEGFR2のD7の原子座標をタンパク質データバンクに受託コードXXXで寄託した。分子像はPymolおよびCCP4MGソフトウェア(Pottertonら、Acta Crystallogr. D. Biol. Crystallogr.、60巻(パート12パート1):2288〜2294頁(2004年))を使用して生成した。 2.アミノ酸配列アラインメント ClustalWを使用してアミノ酸D7の配列アラインメントを行い(Thompsonら、Nucleic Acids Res.、22(220巻:4673〜4680頁(1994年))、その後、20種の主要な残基についてのIセットIgSFの折り畳みの制約に基づいて手動で調節した。ヒトVEGFRのアミノ酸配列を、PSI−BLASTを使用して非重複データベース(nr)を相同配列について検索するためのクエリとして使用した(Altschulら、J. Mol. Biol.、215巻(3号):403〜410頁(1990年))。アミノ酸配列のアラインメントおよびD7のPDBファイルをConsurf3.0サーバーに供して(Landauら、Nucleic Acids Res.、33(ウェブサーバー号)、W299〜302頁(2005年))、アラインメントのそれぞれの位置の最大尤度の正規化された進化率を生成し、ここで、低い発散率が高い配列保存に対応する。Consurfの出力と同様、連続的な9個の保存スコアは、可視化のために、ビン9が最も保存的な(えび茶色)位置を含有し、ビン1が最も可変性(シアン色)の位置を含有するように、9個のビンの別々のスケールに分配されている。 3.VEGFR発現ベクターおよびキメラ受容体の作製 ヒトVEGFR1およびVEGFR2のcDNAはMasabumi Shibuya博士によって提供していただいた(Sawanoら、Blood、97巻(3号):785〜791頁(2001年))。VEGFR2のcDNAをPCRおよびXhoI/XbaI部位内への挿入によってpcDAN3発現ベクター内にサブクローニングした。VEGFR1またはVEGFR2のどちらかの細胞外領域から構成されるキメラ受容体をPDGFR−βの膜貫通および細胞質領域と融合させた。flagタグをC末端に付加し、キメラ受容体をpLXSHDレトロウイルス発現ベクターのEcoRI/XhoI部位にクローニングした。 4.細胞系および発現ベクター VEGFR1/2−PDGFRキメラ受容体を安定に発現する3T3細胞系を、以前に記載されているようにレトロウイルス感染によって作製した(Yuzawaら、2007年およびCochetら、1988年)。細胞をL−ヒスチジノールで選択し、同様の発現レベルに関して適合したプールを実験に使用した。 HEK293細胞を1μgのDNAで一過的にトランスフェクションし、VEGF刺激の前に終夜血清欠乏させた。細胞を200ng/mlのVEGFで処理し、細胞溶解物をVEGFR1またはVEGFR2に対する抗体で免疫沈降させ、次いで抗pTyr抗体(PY20、Santa Cruz)を用いて免疫ブロットした。全細胞溶解物をSDS−PAGEによって分析し、それぞれ抗ホスホMAPKおよび抗MAPK抗体(Cell Signaling)を用いた免疫ブロットに供した。 VEGFは、以前に記載されているように、sf9細胞中でバキュロウイルス発現ベクターpFastBac1を使用して産生させた(Cohenら、Growth Factors、7巻(2号):131〜138頁(1992年))。VEGFは、ヘパリンセファロースビーズを使用して、クーマシー(Commassie)ブルー染色したSDS PAGE実験によって>80%の純度まで精製した。 5.分析用超遠心分離 沈降速度実験は、高分子アセンブリ分析用超遠心分離センター(Center for Analytical Ultracentrifugation of Macromolecular Assemblies)(生化学学科(Department of Biochemistry)、テキサス大学健康科学センター(University of Texas Health Science Center)、テキサス州San Antonio)のBeckman Optima XL−Iを用いて行った。25mMのトリス、pH8および100mMのNaClを含有する緩衝液中の4×10−5M、8×10−5M、および1.6×10−4Mの濃度のD7タンパク質を、50,000rpmで20℃の遠心分離に供した。速度データは、Monte Carlo分析と組み合わせた二次元スペクトル分析を用いて分析した。 均等物 当業者は、日常的な実験を使用して、本明細書中に記載の本発明の具体的な実施形態の多くの均等物を認識することも、確認することもできるであろう。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることを意図する。 ヒト血管内皮増殖因子受容体(VEGF受容体)の外部ドメインと結合する部分であって、該VEGF受容体の活性に拮抗する、部分。 ヒトVEGF受容体のIg様ドメインと結合する、請求項1に記載の部分。 前記Ig様ドメインがリガンドと前記VEGF受容体との結合に関与していない、請求項2に記載の部分。 前記Ig様ドメインがリガンドと前記VEGF受容体との結合に関与する、請求項2に記載の部分。 前記VEGF受容体と該VEGF受容体のリガンドとの間の相互作用を遮断しない、請求項1に記載の部分。 前記VEGF受容体と該VEGF受容体のリガンドとの間の相互作用を遮断する、請求項1に記載の部分。 前記VEGF受容体の二量体化を妨げない、請求項1に記載の部分。 前記VEGF受容体の二量体化を妨げる、請求項1に記載の部分。 前記VEGF受容体のそれぞれのプロトマーからの前記外部ドメインの膜近位領域間の相互作用を妨げる、請求項1に記載の部分。 前記相互作用がホモタイプである、請求項9に記載の部分。 前記相互作用がヘテロタイプである、請求項9に記載の部分。 前記外部ドメインの前記膜近位領域がVEGF受容体の第7のIg様ドメイン(D7)である、請求項9に記載の部分。 VEGF受容体のD7ドメインの以下のコンセンサス配列と結合する、請求項12に記載の部分:L/I X1 R Φ X2 X3 X4 D/E X5 G(配列番号158)[式中、Lはロイシンであり、Iはイソロイシンであり、Rはアルギニンであり、Φは疎水性アミノ酸であり、Dはアスパラギン酸であり、Eはグルタミン酸であり、Gはグリシンであり、X1、X2、X3、X4およびX5は任意のアミノ酸である]。 Φがバリンであり、X1が、アルギニン、グルタミン、グルタミン酸およびアスパラギン酸からなる群より選択され、X2が、アルギニン、リシンおよびスレオニンからなる群より選択され、X3が、リシン、グルタミン酸、グルタミンおよびバリンからなる群より選択され、X4が、グルタミン酸およびバリンからなる群より選択され、X5が、グルタミン酸、グリシン、セリンおよびグルタミンからなる群より選択される(配列番号159)、請求項13に記載の部分。 前記VEGF受容体のそれぞれのプロトマーからの前記外部ドメインの前記膜近位領域が16Åを超える距離によって隔てられることを引き起こす、請求項9に記載の部分。 前記VEGF受容体がVEGFR1である、請求項1に記載の部分。 前記VEGF受容体がVEGFR2である、請求項1に記載の部分。 前記VEGF受容体がVEGFR3である、請求項1に記載の部分。 前記VEGF受容体の前記外部ドメインを不活性状態に固定する、請求項1に記載の部分。 VEGFR2のアミノ酸残基Arg726と結合する、請求項1に記載の部分。 VEGFR2のアミノ酸残基Asp731と結合する、請求項1に記載の部分。 VEGFR2のアミノ酸残基Arg726およびAsp731と結合する、請求項1に記載の部分。 VEGFR2のアミノ酸残基724、725、726、727、728、729、730、731、732および733からなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸残基と結合する、請求項1に記載の部分。 VEGFR1のアミノ酸残基Arg720と結合する、請求項1に記載の部分。 VEGFR1のアミノ酸残基Asp725と結合する、請求項1に記載の部分。 VEGFR1のアミノ酸残基Arg720およびAsp725と結合する、請求項1に記載の部分。 VEGFR1のアミノ酸残基718、719、720、721、722、723、724、725、726および727からなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸残基と結合する、請求項1に記載の部分。 VEGFR3のアミノ酸残基Arg737と結合する、請求項1に記載の部分。 VEGFR3のアミノ酸残基Asp742と結合する、請求項1に記載の部分。 VEGFR3のアミノ酸残基Arg737およびAsp742と結合する、請求項1に記載の部分。 VEGFR3のアミノ酸残基735、736、737、738、739、740、741、742、743および744からなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸残基と結合する、請求項1に記載の部分。 前記VEGF受容体上のコンフォメーションエピトープと結合する、請求項1に記載の部分。 前記コンフォメーションエピトープが、前記VEGF受容体のD7ドメイン中の2つ以上の残基から構成される、請求項32に記載の部分。 前記コンフォメーションエピトープが、アミノ酸残基Arg726およびAsp731、Arg720およびAsp725、またはArg737およびAsp742を含む、請求項32に記載の部分。 前記VEGF受容体のリガンド誘導性のチロシン自己リン酸化を遮断する、請求項1に記載の部分。 前記VEGF受容体のリガンド誘導性の内在化を遮断する、請求項1に記載の部分。 前記VEGF受容体上の近接エピトープと結合する、請求項1に記載の部分。 前記近接エピトープが、前記VEGF受容体のD7ドメイン中の2つ以上の残基から構成される、請求項37に記載の部分。 前記近接エピトープが、VEGFR1の672VAISSS677、VEGFR1の678TTLDCHA684、VEGFR1の685NGVPEPQ691、VEGFR1の700KIQQEPG706、VEGFR1の707IILG710、VEGFR1の711PGS713、VEGFR1の714STLFI718、VEGFR1の719ERVTEEDEGV728、VEGFR3の689VNVSDS694、VEGFR3の695LEMQCLV701、VEGFR3の702AGAHAPS708、VEGFR3の717LLEEKSG723、VEGFR3の724VDLA727、VEGFR3の728DSN730、VEGFR3の731QKLSI735、VEGFR3の736QRVREEDAGR745、VEGFR2の678TSIGES683、VEGFR2の684IEVSCTA690、VEGFR2の691SGNPPPQ697、VEGFR2の706TLVEDSG712、VEGFR2の713IVLK716、VEGFR2の717DGN719、VEGFR2の720RNLTI724およびVEGFR2の725RRVRKEDEGL734からなる群より選択されるエピトープである、請求項38に記載の部分。 単離された抗体またはその抗原結合性一部分である、請求項1に記載の部分。 前記抗体またはその抗原結合性一部分が、ヒト抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体、およびキメラ抗体からなる群より選択される、請求項40に記載の部分。 前記抗体またはその抗原結合性一部分が、IgG1定常領域、IgG2定常領域、IgG3定常領域、IgG4定常領域、IgM定常領域、IgA定常領域およびIgE定常領域からなる群より選択される重鎖定常領域を含む、請求項41に記載の部分。 前記抗体重鎖定常領域がIgG1である、請求項42に記載の部分。 前記抗体またはその抗原結合性一部分が、Fab断片、F(ab’)2断片、単鎖Fv断片、SMIP、アフィボディ、アビマー、ナノボディ、および単一ドメイン抗体からなる群より選択される、請求項40に記載の部分。 前記抗体またはその抗原結合性一部分が、1×10−7M以下、より好ましくは5×10−8M以下、より好ましくは1×10−8M以下、より好ましくは5×10−9M以下からなる群より選択されるKDで受容体チロシンキナーゼのIg様ドメインと結合する、請求項40に記載の部分。 請求項40から請求項45のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性一部分を産生するハイブリドーマ。 小分子である、請求項1に記載の部分。 VEGFR2のアミノ酸残基Arg726、VEGFR2のAsp731、VEGFR1のArg720、VEGFR1のAsp725、VEGFR3のArg737、およびVEGFR3のAsp742からなる群より選択されるアミノ酸残基のうちの少なくとも1つと結合する、請求項47に記載の部分。 ペプチド性分子である、請求項1に記載の部分。 前記ペプチド性分子が、前記VEGF受容体のIg様ドメインに基づいて設計されている、請求項49に記載の部分。 前記ペプチド性分子が、前記ヒトVEGF受容体のD7ドメインに基づいて設計されている、請求項50に記載の部分。 前記ペプチド性分子が、構造:L/I X1 R Φ X2 X3 X4 D/E X5 G(配列番号158)[式中、Lはロイシンであり、Iはイソロイシンであり、Rはアルギニンであり、Φは疎水性アミノ酸であり、Dはアスパラギン酸であり、Eはグルタミン酸であり、Gはグリシンであり、X1、X2、X3、X4およびX5は任意のアミノ酸である]を含む、請求項51に記載の部分。 Φがバリンであり、X1が、アルギニン、グルタミン、グルタミン酸およびアスパラギン酸からなる群より選択され、X2が、アルギニン、リシンおよびスレオニンからなる群より選択され、X3が、リシン、グルタミン酸、グルタミンおよびバリンからなる群より選択され、X4が、グルタミン酸およびバリンからなる群より選択され、X5が、グルタミン酸、グリシン、セリンおよびグルタミンからなる群より選択される(配列番号159)、請求項52に記載の部分。 前記ペプチド性分子が、ヒトVEGFR2のアミノ酸残基724〜733と少なくとも80%同一である構造を含む、請求項50に記載の部分。 前記ペプチド性分子が、ヒトVEGFR1のアミノ酸残基718〜727と少なくとも80%同一である構造を含む、請求項50に記載の部分。 前記ペプチド性分子が、ヒトVEGFR3のアミノ酸残基735〜744と少なくとも80%同一である構造を含む、請求項50に記載の部分。 前記ペプチド性分子が少なくとも1つのD−アミノ酸残基を含む、請求項50に記載の部分。 アドネクチンである、請求項1に記載の部分。 ヒトVEGF受容体の第7のIg様ドメイン上のコンフォメーションエピトープと結合する部分であって、該部分は、該ヒトVEGF受容体の活性に拮抗し、該コンフォメーションエピトープは、VEGFR2の残基Arg726およびAsp731、VEGFR1の残基Arg720およびAsp725、またはVEGFR3の残基Arg737およびAsp742を含む、部分。 VEGFR2のアミノ酸残基Arg726およびAsp731、VEGFR1のアミノ酸残基Arg720およびAsp725、またはVEGFR3のアミノ酸残基Arg737およびAsp742と結合して、ヒトVEGF受容体の活性に拮抗する、部分。 請求項1から請求項60のいずれか一項に記載の部分と、薬学的に許容されるキャリアとを含む、医薬組成物。 被験体においてVEGF受容体チロシンキナーゼに関連する疾患を処置または予防するための薬の調製における、有効量の請求項1から60のいずれか一項に記載の部分の使用。 前記VEGF受容体チロシンキナーゼに関連する疾患が、がん、加齢黄斑変性症(AMD)、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、糖尿病性網膜症、リンパ性疾患および疼痛に関連する疾患からなる群より選択される、請求項62に記載の使用。 前記がんが、GIST、AML、SCLC、腎臓がん、結腸がん、リンパ性がんおよび乳がんからなる群より選択される、請求項63に記載の使用。 VEGF受容体のIg様ドメインと結合する部分を同定するための方法であって、 VEGF受容体を候補部分と接触させるステップと、 同時にまたは順次、該VEGF受容体を該VEGF受容体のリガンドと接触させるステップと、 該部分が、該リガンドによって誘導される二量体VEGF受容体のIg様ドメイン間の配置、配向および/または距離に影響を与えるか否かを決定して、VEGF受容体のIg様ドメインと結合する部分を同定するステップとを含む、方法。 前記部分が、前記VEGF受容体の外部ドメインを不活性状態に固定する、請求項65に記載の方法。 前記部分が、前記VEGF受容体の第7のIg様ドメイン(D7)と結合する、請求項65に記載の方法。 ヒトVEGF受容体の第7のIg様ドメイン上のコンフォメーションエピトープと結合する単離された抗体またはその抗原結合性一部分であって、該単離された抗体またはその抗原結合性一部分は、該ヒトVEGF受容体の活性に拮抗し、該コンフォメーションエピトープは、VEGFR2の残基Arg726およびAsp731、VEGFR1の残基Arg720およびAsp725、またはVEGFR3の残基Arg737およびAsp742を含む、抗体またはその抗原結合性一部分。 VEGFR2のアミノ酸残基724〜733と結合して、VEGFR2の活性に拮抗する、単離された抗体またはその抗原結合性一部分。 VEGFR1のアミノ酸残基Arg720およびAsp725と結合して、VEGFR1の活性に拮抗する、単離された抗体またはその抗原結合性一部分。 VEGFR3のアミノ酸残基Arg737およびAsp742と結合して、VEGFR3の活性に拮抗する、単離された抗体またはその抗原結合性一部分。 ヒトVEGF受容体のArg726およびAsp731からなる群より選択されるアミノ酸残基のうちの少なくとも1つと結合して、該ヒトVEGF受容体の活性に拮抗する、単離された抗体またはその抗原結合性一部分。 ヒトVEGF受容体のArg720およびAsp725からなる群より選択されるアミノ酸残基のうちの少なくとも1つと結合して、該ヒトVEGF受容体の活性に拮抗する、単離された抗体またはその抗原結合性一部分。 ヒトVEGF受容体のArg737およびAsp742からなる群より選択されるアミノ酸残基のうちの少なくとも1つと結合して、該ヒトVEGF受容体の活性に拮抗する、単離された抗体またはその抗原結合性一部分。 本発明は、血管内皮増殖因子(VEGF)受容体の活性に拮抗する、VEGF受容体の外部ドメインの最も膜近位のIg様ドメイン(D7)と結合する部分を提供する。本発明は、血管内皮増殖因子受容体(VEGF受容体)、たとえば、VEGFR1(Flt1)、VEGFR2(KDR/Flk1)およびVEGFR3(Flt4)の外部ドメインと結合する部分、たとえば、抗体またはその抗原結合性一部分、小分子、ペプチド性分子、アプタマー、およびアドネクチンを提供する。 配列表


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