生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_網膜変性疾患治療のための改良された様式
出願番号:2012040491
年次:2012
IPC分類:A61L 27/00,A61P 25/16,A61P 27/02,C12N 5/079,A61K 35/12,C12N 15/09


特許情報キャッシュ

クリマンスカヤ、イリーナ、ヴィ. JP 2012148085 公開特許公報(A) 20120809 2012040491 20120227 網膜変性疾患治療のための改良された様式 アドバンスド セル テクノロジー、インコーポレイテッド 502004973 浅村 皓 100066692 浅村 肇 100072040 池田 幸弘 100102897 長沼 暉夫 100088926 クリマンスカヤ、イリーナ、ヴィ. US 60/538,964 20040123 A61L 27/00 20060101AFI20120713BHJP A61P 25/16 20060101ALI20120713BHJP A61P 27/02 20060101ALI20120713BHJP C12N 5/079 20100101ALI20120713BHJP A61K 35/12 20060101ALI20120713BHJP C12N 15/09 20060101ALN20120713BHJP JPA61L27/00 DA61P25/16A61P27/02C12N5/00 202RA61K35/12C12N15/00 A 45 2006551392 20050124 OL 31 4B024 4B065 4C081 4C087 4B024AA01 4B024BA80 4B024CA02 4B024DA03 4B024GA11 4B024HA20 4B065AA93X 4B065AB01 4B065AC20 4B065BA01 4B065BB21 4B065BB40 4B065BC46 4C081AB21 4C081BA12 4C081BA13 4C081CD27 4C081CD29 4C081CD34 4C081DA13 4C081EA02 4C087AA01 4C087AA02 4C087AA03 4C087BB56 4C087BB57 4C087CA04 4C087ZA15 4C087ZA33 4C087ZB21 4C087ZB22 本願は、2005年1月24日に、米国以外の国すべての指定については出願人が米国国内企業であるAdvanced Cell Technology社の名前の、米国のみの指定については出願人が米国国民であるIrina V.Klimanskayaの名前のPCT国際特許出願として出願されており、2004年1月23日に出願された米国仮出願第60/538,964号の優先権を主張するものである。 本発明は全体として、網膜変性及び他の視力障害についての細胞に基づく改良療法、並びにパーキンソン病の治療のための方法に関し、また哺乳動物の胚性幹細胞及び哺乳動物の胚由来細胞を、網膜色素上皮(RPE)細胞、並びに、杆体、錐体、双極、角膜、神経、虹彩上皮及び前駆細胞を含むがそれだけに限らない他の眼組織へと分化させる方法に関する。 中枢神経系(CNS)の多数の部分は層状の構成を示し、神経病理学的プロセスには、一般にこの複数の細胞層のうち2つ以上が関与する。CNSの疾患では、ニューロン細胞の欠失が頻繁にあり、内因性再増殖がなされないので、CNS関連疾患後の有効な機能回復は極めて限定的であるか、又はない。特に、加齢性黄斑変性症(AMD)として知られる一般的な網膜の病態は、網膜色素上皮(RPE)と一緒に光受容体が欠失することから生じ、内顆粒層(INL)の介在(「中継」)ニューロンがさらに様々に関与する。したがって、中程度〜高度の視力の回復には、損傷した細胞層の一部又は全部の機能置換が必要である。 解剖学的には、遺伝性網膜変性のファミリーである色素性網膜炎(RP)は、光受容体細胞核数の継続的な減少であり、それによって視力が消失する。その表現型はRPのほとんどの形態にわたって類似するが、根底にある細胞機構は多様であり、多数の遺伝子の様々な突然変異から生じる可能性がある。光受容体細胞特異的遺伝子の発現を変化させる突然変異がそのほとんどに関与し、ロドプシン遺伝子の突然変異がこれらの約10%を占める。その疾患の他の形態では、アポトーシスの制御遺伝子が変化している(例えば、Bax及びPax2)。AMDは、分子レベルでの病因がおそらく異なる変性状態の範囲を包含する臨床診断である。AMDの全例は、中心網膜内で光受容体細胞が欠失するという特徴を共有する。しかし、この共通のエンドポイントは、RPE、血管新生、及び根底にあるブルッフ膜のレベルでの初期異常の二次的な結果であると思われる。後者は光受容体膜の代謝回転に伴う困難性と関係する可能性があるが、その困難性は、今のところ理解が不十分である。さらに、網膜色素上皮は、光受容体の機能の支持に極めて重要であるので、眼において最も重要な細胞型の1つである。それは、杆体及び錐体の脱落した外側部分の貪食、ビタミンAの代謝、網膜下空間内での代謝物交換に関与するムコ多糖の合成、代謝物の輸送、血管新生の制御、光の吸収、解像力の亢進、並びにプロテアーゼやプロテアーゼ阻害因子などの分泌タンパク質を介した、網膜における他の多くの機能の制御を含めて、複数の複雑な作業を行う。 AMDの一部の例に存在するさらなる特徴は、異常な血管の存在であり、その結果脈絡膜血管新生(CNV)として知られる状態となる。この血管新生(「滲出」)型のAMDは特に破壊的であり、血管形成の適切な制御の消失から生じると思われる。RPE機能障害の結果生じるブルッフ膜の破壊により、脈絡膜循環から網膜下空間への新血管の到達が可能となり、そこで新血管は外側部分の構成を物理的に破壊し、さらなる光受容体の欠失を誘導する血管漏出又は出血を引き起こすことができる。 CNVは、レーザー治療の標的とすることができる。したがって、「滲出」型のAMDのレーザー治療は、米国で一般に使用されている。しかし、望ましくない副作用があることが多く、したがって治療の結果に対して患者は不満がある。これは、レーザーの熱傷が起こった場合、それが光受容体の死滅につながり、視野の対応する部分内での完全且つ回復不能な失明につながることに起因する。さらに、レーザー治療は、発生しているCNVに対して根底にある素因を治すものではない。実際、レーザーの熱傷は、サルでCNVを誘導する簡便な方法として使用されている(Archer及びGardiner、1981)。CNVに対する黄斑レーザー治療は、英国などの他の国々ではさらに慎重に使用される。光受容体が欠失し、黄斑中にRPEの萎縮した不規則な断片が重なり、ドルーゼンと呼ばれる細胞外物質を伴うより一般的な「萎縮(dry)」型のAMDについて一般に認められている治療は存在しない。 RPEが光受容体の維持及び血管形成の制御においてある重要な役割を担うので、in vivoでの様々なRPEの機能不全が、色素性網膜炎、RPEの剥離、異形成、萎縮、網膜症、黄斑ジストロフィーや、加齢性黄斑変性症を含めた変性など視力が変化する疾患と関係し、その結果光受容体の損傷及び失明が生じる恐れがある。特に、AMDに加えて、黄斑を冒す他の様々な変性状態には、それだけに限らないが、錐体ジストロフィー、錐体−杆体ジストロフィー、マラッティアレベンティネース(malattia leventinese)、ドイン(Doyne)蜂巣状ジストロフィー、ソースビー(Sorsby’s)ジストロフィー、スタルガルト(Stargardt)病、パターン/蝶形ジストロフィー(pattern/butterfly dystrophies)、ベスト(Best)卵黄様ジストロフィー、ノースカロライナ(North Carolina)ジストロフィー、中心輪紋状脈絡膜ジストロフィー、色素線条、及び中毒性黄斑症がある。 黄斑に二次的に影響を及ぼす恐れがある一般の網膜疾患には、網膜剥離、病的近視、色素性網膜炎、糖尿病性網膜症、CMV網膜炎、閉塞性網膜血管疾患、未熟児網膜症(ROP)、脈絡膜破裂、眼ヒストプラズマ症候群(POHS)、トキソプラズマ症、レーベル(Leber’s)先天性黒内障がある。上記の列挙は包括的なものではない。 上記の病態のすべてに光受容体の欠失が関与し、したがって治療の選択肢はほとんどなく不十分である。 その創傷治癒が可能であるので、移植療法への適用においてRPEが広く研究されている。2002年には、試験に入って1年で、患者は30〜50%の改善を示した。RPEの移植が視力回復の良好な潜在的可能性を有することが、複数の動物モデル及びヒトで(Gourasら、2002、Stangaら、2002、Binderら、2002、Schraermeyerら、2001、Lundらによる総説、2001)示されている。しかし、眼などの免疫特権部位でさえ移植片拒絶の問題があり、したがって同種異系移植を使用する場合にこの手法の進歩が妨げられている。移植により実験的に新たな光受容体(PRC)が導入されているが、移植されたPRCは、宿主網膜の生存しているニューロンとの連結に対する著明な抵抗を示す。RPE細胞が非常に低い増殖能を示すので、胎児組織由来のRPE細胞への依存が別の問題としてある。エモリー大学の研究者は、ヒトの眼供与者からRPE細胞をin vitroで培養し、それを進行性パーキンソン病患者6名に移植する試験を行った。移植後1年で症状の30〜50%の低下が認められたが、眼供与者が不足し、これはまだFDAの承認を受けておらず、提供される眼組織では満たすことができない要求が依然として存在するはずである。 これまで、異所性RPE細胞を用いた治療法は、線維芽細胞のように挙動することが示され、軸索の欠失(Villegas−Perezら、1998)、及び網膜剥離を伴う増殖性硝子体網膜症(PVR)(Cleary及びRyan、1979)を含めたいくつかの破壊的な網膜の合併症を伴っている。遊離したシートとして送達されたRPEは、巻き上がる傾向がある。このことによって、光受容体の有効な被覆ができなくなり、また不正確な極性を有する多層のRPEが生じ、その結果嚢胞が形成され黄斑の浮腫が生じることが考えられる。 罹患ヒト眼の網膜下(黄斑下)空間への神経網膜移植片の送達は、Kaplanら、(1997)、Humayunら、(2000)、及びdel Cerroら、(2000)に記載されている。通常は神経網膜移植片が宿主網膜と機能的に統合しない点で重大な問題が存在する。さらに、完全なRPE単層が存在しないことは、RPEの機能障害又はブルッフ膜の破壊が修正されていないことを意味する。どちらも、視力欠失の基本的な先行事象である。 したがって、現在のどの治療法でもRPEを再構成する有効な手段は存在せず、それぞれにおいて、特に移植片と宿主網膜が機能的に結合しないという基本的な問題において欠陥が存在したままである。したがって、改良された網膜療法の必要性が存在する。 本発明の目的は、それだけに限らないが、水平細胞及びアマクリン細胞を含めた神経細胞、杆体や錐体などの網膜細胞、角膜細胞、血管細胞、並びにRPE及び幹細胞由来のRPE様細胞を含めた眼の細胞を誘導するための改良された方法を提供し、網膜変性を治療するための改良された方法及び治療法を提供することである。特に、これらの方法では、RPE及びヒト胚性幹細胞由来のRPE様細胞を使用する。 本発明の一実施形態は、それだけに限らないが、色素性網膜炎及び黄斑変性並びにその関連病態を含めた様々な病態を治療するために、哺乳動物胚性幹細胞に由来する、RPE細胞、RPE様細胞、これらの細胞の前駆体、或いは前記細胞の2種又は3種の組合せを使用して網膜変性治療用の細胞を生成する改良された方法を提供する。本発明を用いて生成することができる細胞型には、それだけに限らないが、RPE、RPE様細胞、及びRPE前駆体がある。やはり生成することができる細胞には、虹彩色素上皮(IPE)細胞がある。介在ニューロン(例えば、内顆粒層(INL)の「中継」ニューロン)及びアマクリン細胞(光受容体−双極−神経節の細胞の鎖からなる垂直に直接的な経路の第2のシナプスレベルで相互作用する介在ニューロンであり、内網状層(IPL)内でシナプス上活性があり、神経節細胞に提示された視覚的メッセージに対して統合し、修飾し、一時的なドメインを介在させるのに役立つ)を含めた、視力に関連する神経細胞はまた、本発明を用いて生成することもできる。さらに、網膜細胞、杆体、錐体、及び角膜細胞を生成することができる。本発明のさらなる実施形態では、眼の脈管構造をもたらす細胞を生成することもできる。硝子体切除術を用いることによって、本発明の細胞を網膜下空間へと移植することができる。非限定的な例として、懸濁液、マトリックス、又は基質中のこれらの細胞の移植がある。治療することができる色素性網膜炎の動物モデルには、げっ歯類(rdマウス、RPE−65ノックアウトマウス、タビー(tubby)様マウス、RCSラット)、ネコ(アビシニアネコ(Abyssinian cat))、及びイヌ(錐体変性「cd」イヌ、進行性杆体−錐体変性「prcd」イヌ、初期網膜変性「erd」イヌ、杆体−錐体異形成1、2及び3「rcd1、rcd2及びrcd3」のイヌ、光受容体異形成「pd」イヌ、及びブリアール(Briard)「RPE−65」(イヌ))がある。行動試験、蛍光血管造影、組織検査、又は貪食(光受容体の断片)を行う細胞の能力、ビタミンAの代謝、密着帯の伝導性の測定や、電子顕微鏡法を用いた評価などの機能試験を用いて評価を行う。本明細書で示した方法に対する多数の利点の1つは、眼の供与組織の使用に限定される場合に治療することができるよりももっと多数の患者を提示し治療することができることである。 本発明のさらなる実施形態は、hES細胞を、RPEの多数の特徴を有する細胞へと自発的に分化させる方法を提供する。このRPE調製物は、培養中に表現型の変化が可能であり、複数回の継代を介してRPEの特徴を維持している。本発明はまた、樹立RPE細胞系を、非限定的な例として、bFGF又はFGFの使用を介して、代替のニューロン系統、角膜細胞、網膜細胞へと分化させる方法も提供する。 本発明の他の実施形態は、既存のES細胞系及び新たなES細胞系から新たなRPE系及び前駆細胞を誘導する方法である。異なるES細胞系に由来するとき、増殖速度、色素の発現や培養中での脱分化及び再分化などのRPE様細胞の特性には変動がある可能性がある。その機能性及び核型安定性には特定の変動がある可能性があり、そのため高品質なRPE様細胞の純粋な集団が生成されるようにクローン選択することができる望ましい特性を有する系統の選択を可能にする、新たなRPE系及び新たなES細胞系を誘導する方法の提供が所望される。 やはり既存のES細胞系及び新たなES細胞系に由来する可能性がある細胞には、虹彩色素上皮(IPE)細胞がある。さらなる実施形態では、介在ニューロン(例えば、内顆粒層(INL)の「中継」ニューロン)及びアマクリン細胞を含めた視力に関連する神経細胞はまた、本発明を用いて生成することもできる。さらに、網膜細胞、杆体、錐体、及び角膜細胞を生成することができる。本発明のさらなる実施形態では、眼の脈管構造をもたらす細胞を生成することもできる。 本発明の他の実施形態は、RPE系又は前駆体を、血管新生を防止する能力が亢進したRPE細胞へと誘導する方法である。細胞の正常な複製寿命の少なくとも10%が過ぎるまでテロメラーゼが短くなるように患者の体細胞を加齢させ、次いで前記体細胞を核移植供与細胞として使用して、色素上皮由来因子(PEDF/EPC−1)などの血管形成阻害因子を過剰発現する細胞を作製することにより、そのような細胞を生成することができる。或いは、血管新生を阻害する外来遺伝子でそのような細胞を遺伝子改変することもできる。 本発明の他の実施形態は、HLA領域でホモ接合性があるES又は胚由来細胞バンクを利用するものであり、その結果、前記細胞はそのHLA抗原の複雑性が低下する。 したがって、本発明のさらなる実施形態は、ES由来のRPE様細胞の特徴付けを包含する。ES由来の色素上皮細胞は、その形態、挙動及び分子マーカーがRPEに強く類似するが、その治療的価値は、この細胞がRPE機能を果たし、且つ非発癌性のままであることができるかどうかで決まる。したがって、ES由来のRPE細胞は、1種又は複数種の下記の技術を用いて特徴付ける:(i)その機能性の評価、すなわち光受容体断片の貪食、ビタミンAの代謝、創傷治癒の潜在的可能性、(ii)動物モデル移植を介したRPE様ES細胞誘導体の多分化能の評価(非限定的な例として、これはSCIDマウスを含み得る)、(iii)RPE様細胞の表現型決定及び核型決定、(iv)遺伝子発現プロファイリングによるES細胞由来のRPE様細胞及びRPE組織の評価、(v)ベストロフィン(bestrophin)、CRALBP、RPE−65、PEDFを含めた、タンパク質レベルでのRPEの分子マーカー発現の評価。rx/rax、chx10/vsx−2/alx、ots−1、otx−2、six3/optx、six6/optx2、mitf、pax6/mitf、及びpax6/pax2(Fischer及びReh、2001、Baumerら、2003)を含めた、眼の発生に通常必要となる転写活性化因子の発現に基づいて細胞を評価することもできる。 本発明のさらなる実施形態は、(i)ES由来のRPE様細胞の機能性の評価、(ii)動物モデル移植を介したRPE様ES細胞誘導体の多分化能の評価、(iii)RPE様細胞の表現型決定及び核型決定、(iv)遺伝子発現プロファイリングの評価、(v)タンパク質レベルでのRPEの分子マーカー発現の評価、並びに(vi)眼の発生に通常必要となる転写活性化因子の発現からなる群から選択される少なくとも1種の技術を用いてES由来のRPE様細胞を特徴付ける方法である。さらなる実施形態では、複数のhES細胞に由来する細胞型の評価にこれらの技術を使用することができる。 本発明の他の実施形態は、ヒト及び非ヒト動物の桑実胚又は胚盤胞段階の胚(EDC)から、ES細胞系を作製せずにRPE細胞及びRPE前駆細胞を直接誘導する方法である。 胚性幹細胞(ES)は、未分化状態で無限にin vitroで維持することができ、さらに、事実上どんな細胞型にも分化することができる。したがって、ヒト胚性幹(hES)細胞は、ヒト細胞の分化に関する研究に有用であり、移植療法についての潜在的供給源とみなすことができる。今日まで、心筋細胞[Kehatら、2001、Mummeryら、2003、Carpenterら、2002]、ニューロン及び神経前駆体(Reubinoffら、2000、Carpenterら、2001、Schuldinerら、2001)、脂肪細胞(Bostら、2002、Aubertら、1999)、肝細胞様細胞(Rambhatlaら、2003)、造血細胞(Chadwickら、2003)、卵母細胞(Hubnerら、2003)、胸腺細胞様細胞(Lin RYら、2003)、膵島細胞(Kahan、2003)、並びに骨芽細胞(Zur Niedenら、2003)を含めた多数の細胞型へのヒト及びマウスのES細胞の分化が報告されている(Smithによる総説、2001)。本発明の他の実施形態は、胚、胚性幹細胞系又は有用な細胞型への分化能を有する他の胚性細胞に由来する、RPE細胞、造血細胞、筋細胞、肝細胞、膵β細胞、ニューロン、上皮、前駆細胞や、細胞療法又は研究に有用な他の細胞などの細胞を、そのような細胞のメッセンジャーRNA転写物をin vivoで誘導された細胞と比較することによって同定する方法である。この方法は、正常な表現型を有する細胞の同定、及び細胞療法又は研究用に最適化された細胞の誘導を促進する。 本発明は、ニューロン系統での特殊化細胞である網膜色素上皮(RPE)へのヒトES細胞の分化をもたらす。RPEは、脈絡膜と神経網膜の間にある濃い色素性の上皮単層である。それは、血流と網膜の間の障壁の一部として働き、その機能には、脱落した杆体及び錐体の外側部分の貪食、迷光の吸収、ビタミンAの代謝、レチノイドの再生、並びに組織修復がある(Griersonら、1994、Fisher及びReh、2001、Marmorsteinら、1998)。RPEは、黒い色素性細胞の敷石状の細胞形態により容易に認識される。さらに、頂端微絨毛中にも認められる細胞質タンパク質である細胞レチナールデヒド結合タンパク質(CRALBP)(Bunt−Milam及びSaari、1983)、網膜代謝に関与する細胞質タンパク質であるRPE65(Maら、2001、Redmondら、1998)、ベスト卵黄様黄斑ジストロフィー遺伝子の産物であるベストロフィン(VMD2、Marmorsteinら、2000)、及び血管形成阻害特性を有する色素上皮由来因子(PEDF)48kD分泌タンパク質(Karakousisら、2001、Jablonskiら、2000)を含めた、RPEの複数のマーカーが知られている。 RPEの珍しい特徴は、その視覚的に明らかな可塑性である。RPE細胞は、正常では分裂静止状態であるが、損傷又は光凝固に反応して分裂を開始することができる。損傷に隣接するRPE細胞は平らになり増殖し、新たな単層を形成する(Zhaoら、1997)。いくつかの研究から、RPE単層が、後にその元のRPE形態に戻ることができる、線維芽細胞に見える細胞を産生できることが示されている(Griersonら、1994、Kirchhofら、1988、Leeら、2001)。上皮及び紡錘形というRPE細胞の2つの集団が同定されているので、分裂中の細胞及び色素上皮層が同じ系統に由来するかどうかは不明である(McKay及びBurke、1994)。in vitroでは、成長因子と基層の組合せに応じて、RPEを上皮として維持することもでき、或いは迅速に脱分化し増殖性にすることもできる(Zhao、1997、Opas及びDziak、1994)。興味深いことに、その上皮の表現型は、長期の静止培養で再構築することができる(Griersionら、1994)。 哺乳動物の発生では、RPEは、眼胞の神経上皮という神経網膜と同じ前駆体を共有する。特定の条件下では、RPEがニューロン前駆体(Opas及びDziak、1994)、ニューロン(Chenら、2003、Vinoresら、1995)、及び水晶体上皮(Eguchi、1986)へと分化転換できることが示唆されている。ニューロンへのRPEの変化を刺激することができる因子の1つはbFGFである(Opaz及びDziak、1994、rx/rax、chx10/vsx−2/alx、ots−1、otx−2、six3/optx、six6/optx2、mitf、及びpax6/pax2(Fischer及びReh、2001、Baumerら、2003)を含めた、眼の発生に通常必要とされる転写活性化因子の発現と関係する過程)。最近、ニワトリ網膜の辺縁が神経幹細胞を含み(Fischer及びReh、2000)、pax6/mitfを発現するその領域の色素性細胞がFGFに反応してニューロン細胞を形成できる(Fischer及びReh、2001)ことが示されている。 本発明は、hESからの小柱網細胞の誘導を提供し、又緑内障の治療用の遺伝子改変された小柱網細胞をも提供する。 本発明はまた、RPE前駆体及びRPE様細胞からの小柱網細胞の誘導を提供し、又緑内障の治療用の遺伝子改変された小柱網細胞をも提供する。 本発明は、ヒト及び非ヒト動物の桑実胚又は胚盤胞段階の胚(EDC)から、ES細胞系を作製せずにRPE細胞及びRPE前駆細胞を直接誘導する方法を包含し、その方法は、a)未分化状態でES細胞をin vitroで維持するステップと、b)ES細胞をRPE及びRPE前駆細胞へと分化させるステップと、c)そのような細胞のメッセンジャーRNA転写物をin vivoで誘導された細胞と比較することによってRPE細胞を同定するステップとを含む。 RPE系又は前駆体を、血管新生を防止する能力が亢進したRPE細胞へと誘導する方法が本発明によってさらに提供され、前記方法は、a)細胞の正常な複製寿命の少なくとも10%が過ぎるまでテロメラーゼが短くなるように動物の体細胞を加齢させるステップと、b)その体細胞を核移植供与細胞として使用して、血管形成阻害因子を過剰発現する細胞を作製するステップとを含み、血管形成阻害因子は、色素上皮由来因子(PEDF/EPC−1)でもよい。 本発明は、hES由来のRPE、RPE様細胞及び/又はRPE前駆細胞でパーキンソン病を治療する方法を提供する。マイクロキャリアを用いた定位線条体内移植によってこれらを送達することができる。或いは、マイクロキャリアを用いずにそれらを送達することもできる。その細胞は、培養で増殖させ、当業者に知られている任意の方法によりパーキンソン病の治療で使用することもできる。 本発明の他の特徴及び利点は、下記の詳細な説明から明らかとなるであろう。自発的に分化しているhES細胞における(RPE細胞に特徴的な)色素性領域の外観を示す一連の写真である。図1Aは、6穴プレートの穴の、2.5ヶ月齢の付着培養物における色素性領域の走査写真である。図1Bは、EB中で増殖した2.5ヶ月齢の培養物における色素性領域の、倍率×45での写真である。図1Cは、付着培養物の色素性領域の写真である。図1Dは、EB増殖培養物の色素性領域の写真である。図1Eは、色素性領域と培養物の残部との境界の、×200の写真である。図Fは、倍率が×400である以外は図Eと同じである。A及びBの矢印は色素性領域を指す。培養中の色素沈着及び上皮性の形態の消失及び回復を示す一連の写真である。図2Aは、1週齢の初代EB増殖物を示す写真である。図2Bは、トリプシンにより単離された1週齢の細胞の初代培養物を示す図である。図2Cは、増殖中の細胞に囲まれた上皮島を示す写真である。図2Dは、1ヶ月齢の培養物における色素沈着及び上皮性の形態の回復を示す写真である。図2Eは、3回継代した後の培養物を示す、倍率×200の写真である。図2Fは、ホフマン(Hoffman)顕微鏡による倍率×400の、Eと同じ培養物を示す。黒い矢印は色素性細胞を指し、白い矢印は色素を含まない増殖中の細胞を指す。hES細胞由来の色素上皮細胞におけるRPEのマーカーを示す一連の写真及び1つのグラフである。図3A及び3Bは、RPEマーカーであるベストロフィンの免疫局在化及び対応する位相差顕微鏡での視野を示す、倍率×200の写真である。図3C及び3Dは、CRALBP及び対応する位相差顕微鏡での視野を示す、倍率×400の写真である。矢印は、色素性細胞(C、D)に対するベストロフィン(A)及びCRALBP(C)の同時局在を示し、矢印は、非色素性領域(C、D)でこれらのタンパク質の染色(A、B)が認められないことを指す。右図は、ベストロフィン(a)及びCRALBP(b)に対する抗体を用いた細胞溶解物(hES#36系)のウェスタンブロットの写真及びグラフを示す。ここで、c、dは未分化hES細胞であり、cは抗CRALBP抗体に対する対照、dは抗ベストロフィン抗体に対する対照である。長期の静止培養物におけるRPE様細胞中でのPax6(図4A)、Pax2(図4E)及びmitf(図4B、図4F)のマーカー発現を示す写真であり、図4C、図4Gは位相差顕微鏡写真である。図4D、図4Hは、Pax6/mitf/位相差(図4A、図4B、図4C)及びPax2/mitf/位相差(図4E、図4F、図4G)の結合画像である。ES細胞系の誘導の段階を回避した、ヒト胚由来細胞の培養におけるRPE分化を示す写真である。RPE調製物の転写上の比較を示す図である。形而上的な注釈付けに基づいて、この表は、hES細胞由来の網膜色素上皮(hES−RPE)、hES細胞由来の分化転換体(hES−RPE−TD)、ARPE−19及びD407、並びに新鮮単離ヒトRPE(fe−RPE)についてのRPE関連遺伝子の発現パターンを表す。RPE調製物の転写上の比較を示す図である。形而上的な注釈付けに基づいて、この表は、hES細胞由来の網膜色素上皮(hES−RPE)、hES細胞由来の分化転換体(hES−RPE−TD)、ARPE−19及びD407、並びに新鮮単離ヒトRPE(fe−RPE)についてのRPE関連遺伝子の発現パターンを表す。RPE調製物の転写上の比較を示す図である。形而上的な注釈付けに基づいて、この表は、hES細胞由来の網膜色素上皮(hES−RPE)、hES細胞由来の分化転換体(hES−RPE−TD)、ARPE−19及びD407、並びに新鮮単離ヒトRPE(fe−RPE)についてのRPE関連遺伝子の発現パターンを表す。RPE調製物の転写上の比較を示す図である。形而上的な注釈付けに基づいて、この表は、hES細胞由来の網膜色素上皮(hES−RPE)、hES細胞由来の分化転換体(hES−RPE−TD)、ARPE−19及びD407、並びに新鮮単離ヒトRPE(fe−RPE)についてのRPE関連遺伝子の発現パターンを表す。RPE調製物の転写上の比較を示す図である。形而上的な注釈付けに基づいて、この表は、hES細胞由来の網膜色素上皮(hES−RPE)、hES細胞由来の分化転換体(hES−RPE−TD)、ARPE−19及びD407、並びに新鮮単離ヒトRPE(fe−RPE)についてのRPE関連遺伝子の発現パターンを表す。RPE調製物の転写上の比較を示す図である。形而上的な注釈付けに基づいて、この表は、hES細胞由来の網膜色素上皮(hES−RPE)、hES細胞由来の分化転換体(hES−RPE−TD)、ARPE−19及びD407、並びに新鮮単離ヒトRPE(fe−RPE)についてのRPE関連遺伝子の発現パターンを表す。RPE調製物の転写上の比較を示す図である。さらなるデータマイニングから、メラニン生合成、視覚、レチノール結合など、既知のRPE特異的な形而上的事象が、胎児RPE及びES−RPEでのみ認められるがARPE−19では認められないことが明らかとなった。 本発明の様々な実施形態を詳細に説明し、提供した実施例によりそれをさらに説明することができる。本明細書での記載及び下記の特許請求の範囲全体においては、「1つの(a、an)」及び「その(the)」の意味は、その場面で明らかに別段の指示がない限り複数形の言及を包含する。また、本明細書での記載においては、「中の(in)」の意味は、その場面で明らかに別段の指示がない限り「中の(in)」及び「上の(on)」を包含する。 本明細書で使用する用語は一般に、本発明の場面内で、且つ各用語を使用する特定の場面の中で、当技術分野における通常の意味を有する。本発明の組成物及び方法、並びにそれを作製し使用する方法の説明において実施者にさらなる指針をもたらすために、以下で又は本明細書の他の箇所で、本発明の説明に使用する特定の用語を論じる。便宜上、例えば斜体及び/又は引用符を用いて特定の用語を強調することがある。強調の使用は、用語の範囲及び意味に影響を及ぼさない。すなわち、強調されていてもされていなくても、同じ場面では用語の範囲及び意味は同じである。同じことを複数の形で言うことができることが理解されるであろう。その結果、本明細書で論じる1種又は複数種の任意の用語に代替言語及び同義語を使用することができ、用語が本明細書で詳しく述べられ又は論じられていてもそうでなくても特別な意味はない。特定の用語について同義語が提供されている。1種又は複数種の同義語の詳述は、他の同義語の使用を除外するものではない。本明細書で論じる任意の用語の例を含めて、本明細書の任意の場所での例の使用は、例示的なものに過ぎず、特定の理論又は行為の枠組みを問わず本発明に従ってデータに処理、標本抽出、転換などを行う限り、本発明の範囲を制限するものでは一切ない。 定義 「胚」又は「胚性の」とは、母方宿主の子宮の膜内に着床していない発生途中の細胞塊を意味する。「胚性細胞」とは、胚から単離された、又は胚中に含まれる細胞である。これには、2細胞期と同程度に早く得られる割球、及び凝集した割球も含まれる。 「胚性幹細胞」という用語は、胚由来細胞を指す。より具体的には、それは、胚盤胞又は桑実胚の内部細胞塊から単離され、細胞系として連続的に継代されている細胞を指す。 「ヒト胚性幹細胞」(hES細胞)という用語は、ヒト胚由来細胞を指す。より具体的には、それは、ヒトの胚盤胞又は桑実胚の内部細胞塊から単離され、細胞系として連続的に継代されている細胞を指し、それには、割球及び凝集した割球も含まれ得る。 「ヒト胚由来細胞」(hEDC)という用語は、内部細胞塊、胚盾又は原外胚葉のものを含めた桑実胚由来細胞、胚盤胞由来細胞、或いは原始内胚葉、外胚葉、及び中胚葉並びにその誘導体を含めた初期胚の他の全能性又は多能性幹細胞を指し、それには、割球、及び凝集した単一の割球又は様々な発生段階の胚由来の細胞塊も含まれるが、細胞系として継代されているヒト胚性幹細胞は含まれない。 事実上ヒト身体のどんな組織にも分化する能力がある胚性幹(ES)細胞は、移植療法用の若返った組織適合性細胞を無制限に供給することができ、免疫拒絶の問題は、核移植及び単為生殖技術で克服することができる。Hiranoら(2003)の最近の知見により、マウスES細胞がin vitroでの分化実験で眼様の構造を作り出せることが示されている。その中で、網膜色素上皮に類似している色素上皮細胞が記載されている。 Advanced Cell Technologyで、霊長類及びヒトES細胞系を用いて実施された予備実験は、特殊化された培養系でこれらの細胞がRPE様の細胞に分化し、それを単離し継代することができることを示すものである。ヒト及びマウスのNT、Cyno単為生殖体ES細胞誘導体は、RPEの複数の特徴を有し、すなわち、これらの色素上皮細胞はRPEの4種の分子マーカーであるベストロフィン、CRALBP、PEDF、及びRPE65を発現し、また培養中のその増殖はRPEと同様、脱分化、すなわち色素及び上皮形態の消失を伴い、それらはどちらも細胞が単層を形成し静止状態になった後回復する。そのようなRPE様の細胞を容易に継代、凍結及び解凍することができ、それによってその増殖が可能となる。 本発明者らは、in vitroでの分化実験でヒトES細胞が複数の眼(硝子体)様構造をも作り出すことをさらに示している。この構造の組織学的分析から、杆体及び錐体と類似する細胞の凝集物を含めて、初期の網膜発生と一致する細胞のパターンが示されている。 RPE移植 現在のところ、RPE同種異系移植片の慢性的な緩徐型拒絶のために、学者らはこのRPE移植の治療効果を判定することができない。この障害を克服するいくつかの方法が考えられている。最も簡単な方法は、全身の免疫抑制を使用することであるが、これは癌や感染など重度の副作用を伴う。第2の手法は、患者自身のRPE、すなわち同種移植片を移植することであるが、これは、老齢の罹患RPEを用いてさらに重度の罹患RPEを置換するという欠点を有する。さらに、第3の手法は、同じ患者の虹彩上皮(IPE)を使用することであるが、これは、IPEがRPEの視力関連機能をすべて果たすわけではない可能性があるという欠点がある。結局、拒絶を排除する方法を見出すことが必要となり、その結果、学者らはAMD及びARMDにおけるRPE移植の真の効果を判定することができる。核移植及び単為生殖は、移植したRPE細胞及び前駆体の組織適合性を促進する。 色素性網膜炎におけるRPE欠損 色素性網膜炎とは、視覚受容体が異常な遺伝的プログラミングにより徐々に破壊される遺伝性疾患である。一部の型は、比較的若齢での全盲を引き起こし、他の型は、軽度の視覚破壊を伴う特徴的な「骨棘」網膜変化を示す。世界中で約150万人の人々がこの疾患に罹患している。常染色体劣性RPを引き起こす2種の遺伝子の欠損が、RPEでのみ発現する遺伝子の中で見つかっている。1つは、ビタミンAの代謝に関与するRPEタンパク質(シスレチナールデヒド結合タンパク質)に起因し、もう1つには、RPE独特の他のタンパク質であるRPE65が関与する。拒絶が克服されると、どちらの型のRPも、RPE移植によって直ちに治療可能となるはずである。この治療は、RPが絶望的に治療不能であり、失明の形態についての理解が不十分であった数年前には考えられなかった。 RPE移植における新たな研究から、黄斑変性を含めた網膜変性の治療に展望があることが示唆される。さらに、進行性RP患者の幾名かは、胎児網膜細胞移植後に有用な視力がいくらか回復した。例えば、その患者の1人は、ほとんど光が見えない状態から、その患者の顔から約6フィート(約183cm)離れている指を数えることができるまで改善した。第2の事例では、視野狭窄を経て文字を見ることができるまで視力が改善した。これらの試験での移植は注射により行われ、既存の神経網膜の下に新たな網膜細胞が導入された。移植された胎児細胞が同種異系であった(すなわち遺伝的に適合しなかった)ため細胞のすべてが生存したわけではなかったが、生存したものは他のニューロンと結合を形成し、その周囲にある光受容体のように機能し始めた。最初の8名が移植を受けてから約1年後、4名の視覚機能がいくらか回復し、1/5がそのようになる徴候を示している。 3種の新たに誘導されたヒト胚性幹細胞系は、以前に記載されたものと特性が類似する(Thomsonら、1998、Reibunoffら、2000、Richardsら、2000、Lanzendorfら、2001)。それらの細胞は、培養中45回の継代を経て、又は130集団の倍加にわたって未分化表現型を維持し、未分化hES細胞の既知のマーカーであるOct−4、アルカリホスファターゼ、SSEA−3、SSEA−4、TRA−I−60、TRA−I−81を発現する。すべてのhES細胞系は、EB又は長期の付着培養物及び奇形腫中で3種の胚葉の誘導体へと分化する。hES細胞の分化誘導体の1つは、以下の基準によって網膜色素上皮と類似する。形態的に、それは典型的な上皮敷石状単層の外観を有し、その細胞質中に暗茶色の色素を含み、その色素は、ヒト身体ではメラニン生成細胞、ケラチン生成細胞、網膜色素上皮及び虹彩色素上皮(IPE)中にのみ存在することが知られている。しかし、メラニン生成細胞は、上皮細胞ではなく、ケラチン生成細胞は、メラニンを分泌せず蓄積するのみである。一連のRPE特異的タンパク質であるベストロフィン、CRALBP、PEDFはこれらの細胞中に存在し、このことから、それらはIPEではなくRPEと類似する可能性が高いことが示唆される。他の類似性は、増殖している細胞中に色素はほとんど又は全く認められなったが、堅く包まれた上皮島中に保持されたときか、或いは細胞が静止状態となった後に新たに確立される敷石状単層中で再発現されたときの、培養中の単離色素性細胞の挙動である。培養中のRPE細胞についてそのような挙動が記載されており(Zhaoらによる総説、1997)、in vitroで、ニューロンのマーカーであるチューブリンβIIIが、脱分化しているRPE細胞中に特異的に局在し、典型的なRPEの形態を有する細胞には局在せず、このことが、RPEの可塑性、及び神経系統へと脱分化する能力を反映すると示唆されることが以前に報告されている(Vinoresら、1995)。本発明者らは、RPE及びRPE様細胞の初代及び継代培養物中でチューブリンβIIIの局在が同じパターンであることを観察し、そのことは培養中でのそのような細胞の脱分化を反映している可能性があり、又は長期培養物中のhES細胞の分化を介して元は色素性細胞の隣に位置し、RPE様細胞と同時に単離することができた、ニューロンとなる運命にある細胞の分離集団を示唆するものである。 成長中の眼胞RPEと神経網膜は同じ二分化能神経上皮前駆体を共有し、その運命はPax2、Pax6、及びMitfによって決定されることが示され(Baumerら、2003)、後者は最初の2つの標的である。初期段階でPax6はプロニューラル(proneural)遺伝子の活性化因子として働き、さらに発生の進んだRPEでは下方制御され、成熟した網膜におけるアマクリン細胞及び神経節細胞中に残存している(Ashery−Padan及びGrussによる総説、2001)。金魚では、分裂上活性がある再生ニューロン前駆体中にも認められる(Hitchcockら、1996)。本発明者らは、RPE様細胞の多くがチューブリンβIIIと類似したパターンでmitf及びPax6を発現し、長期培養物中で、又は「部分的な」RPE表現型を有する(軽度に色素性であり、緩やかに包まれた)細胞中で色素性の上皮島を囲む、非上皮性の形態を有する非色素性細胞中でのみ認められることを見出した。新たに継代された増殖中の細胞では、これらすべてのマーカーがあらゆる細胞でほぼ認められ、網膜前駆体の増殖の開始時又は大量増殖時にRPE様細胞が前駆体段階へと復帰することが示唆される。興味深いことに、上皮性の形態を有する色素性細胞の島も認められた奇形腫では、Pax6は、色素性領域に隣接する非色素性細胞中で発現されていた(データは示さず)。複数の研究から、培養中のRPEが脱分化し、それがニューロンの表現型を有する細胞(Reh及びGretton、1987、Skaguchiら、1997、Vinoresら、1995、Chenら、2003)、ニューロン、アマクリン及び光受容体細胞(Zhaoら、1995)、グリア(Skaguchiら、1997)、神経網膜(Galyら、2002)、並びにニューロン前駆体(Opaz及びDziak、1993)へと分化転換することが以前に示されている。そのような前駆体は次に、培養中で成熟RPE様細胞と同時に存在し、又はRPE様細胞の脱分化の結果現れる可能性がある。それと同時に、神経網膜の細胞は、in vitroでRPEへと分化転換することができ(Opasら、2001)、したがって、或いは、チューブリンβIII及びPax6陽性細胞は、同時単離された神経細胞又は神経前駆体の、RPE様細胞へのそのような分化転換の一時的な段階を表し得る。 RPE様細胞へのhES細胞の分化は、下記の実施例中に記載の方法を使用したとき自発的に起こり、本発明者らは、色素上皮細胞が6〜8週間より長期の培養物中に確実に現れ、その数が経時的に増加し、3〜5ヶ月経った培養物ではほとんどすべてのEBが大きな色素性領域を有していたことに注目した。記載したhES系に加えて、さらに新たに誘導されたhES細胞6種がRPE様細胞へと変わり、そのことから、神経となる運命が通常は自発的にES細胞によって選択されるために、RPE様細胞がそのような経路の進行した段階としてデフォルトで(by default)生じる可能性があることが示唆される。分化中のhES細胞が多層の環境を形成するそのような長期培養物では、許容的且つ/又は指令的な分化シグナルが細胞外マトリックスから発せられ、成長因子がhES細胞の分化中の誘導体により産生されることも考えられる。RPE様細胞へのhES細胞の分化のモデルは、そのような微小環境がどのようにRPEの分化及び分化転換を調整するかを研究する有用な手段となり得る。 RPEは光受容体の維持においてある重要な役割を担い、in vivoでの様々なRPEの機能不全が、RPEの剥離、異形成、萎縮、網膜症、色素性網膜炎、黄斑ジストロフィーや、加齢性黄斑変性症を含む変性など視力が変化するいくつかの疾患と関係し、それから光受容体の損傷及び失明が生じる恐れがある。その創傷治癒が可能であるので、移植療法への適用においてRPEが広く研究されている。RPEの移植が視力回復の良好な潜在的可能性を有することが、複数の動物モデル及びヒトで(Gourasら、2002、Stangaら、2002、Binderら、2002、Schraermeyerら、2001、Lundらによる総説、2001)示されている。最近、RPE移植について他の有望な適用分野が提唱され、臨床試験の段階にまで到達している。これらの細胞がドーパミンを分泌するため、それらをパーキンソン病の治療に使用することができる(Subramanian、2001)。しかし、眼などの免疫特権部位でさえ移植片拒絶の問題があり、したがって同種異系移植を使用する場合にこの手法の進歩が妨げられている。成体RPEが非常に低い増殖能を示すので、他の問題は胎児組織への依存である。 免疫拒絶の問題は核移植技術で克服することができるので、免疫適合性組織の供給源として、hES細胞は移植療法の展望を保持するものである。ヒトES細胞の新たな分化誘導体、網膜色素上皮様細胞、並びにそのような分化の系の信頼性及び単純性によって、移植用のRPE細胞の魅力的で潜在的可能な供給が提供される可能性がある。(例1) 長期培養物中での色素上皮細胞への自発的分化 LIF、FGF及びプラズマネート(Plasmanate)の不在下で、MEF上でhES細胞培養物を過剰増殖させたとき、それは細胞の厚い多層を形成する。約6週間後、細胞の暗色の島が大きな集団内に現れる(図1)。この暗色細胞は裸眼で容易に認められ、図1Aに示すように細胞のプレートの中で「そばかす」のように見える。より高倍率では、この島は、上皮細胞に特有の、敷石状の単層中の堅く包まれた多角細胞のように見え、細胞質中に茶色の色素を含む(図1C)。島の中心部にある細胞では色素が最も多く、辺縁に近い細胞では最も少なく、細胞中の色素の量に差が認められる(図1E、F)。 hES細胞が胚様体(EB)を形成したとき、色素上皮細胞が最初の6〜8週間中にEBの約1〜2%に現れる(図1B)。時間が経つと、ますますEBは色素性細胞を発生させ、3ヶ月までにはほとんどすべてのEBが色素上皮領域を有していた(図1D)。EBの色素性領域中にある細胞の形態は、付着培養物のものに極似していた(図1D)。(例2) 色素上皮細胞の単離及び培養 本発明者らは、付着hES細胞培養物とEBの両方から色素上皮細胞を単離した。色素性多角細胞を酵素(トリプシン、及び/又はコラゲナーゼ、及び/又はディスパーゼ(dispase))で消化し、この色素性の島の細胞をガラス毛細管で選択して取り出した。色素性細胞だけを取り出すように注意したが、単離細胞の集団は常に非色素性細胞を一部含んでいた。ゼラチン又はラミニン上に細胞を播いてから1〜2日間経った後、その細胞を初代培養物(P0)とみなした。 初代培養物は色素性多角細胞の島、並びにいくつかの単一の色素性細胞を含んでいた。培養してから3〜4日後、上皮性の形態(扁平であり、膜状仮足を有する細胞)が消失したように思われた非色素性細胞がいくつかの島の末梢に現れた(図2)。そのような末梢細胞の数は時間が経つと増加し、このことからこの細胞が増殖していることが示唆され、2週間後、新たに形成された単層中のほとんどの細胞は、極めて少量の色素を含み、又は色素を含まなかった。さらに2〜3週間継続して培養した後、色素上皮細胞は再び現れ始め、それは視覚的に元の培養物のものと区別が付かなかった(図2)。(例3) RPEマーカーの検出 この分化したヒト細胞の、RPEとしての予備的な特徴付けは、前記のRPE培養物との類似性、主として上皮性の形態及び色素の含有に基づく。ヒト身体では、網膜及び虹彩の色素上皮並びにケラチン生成細胞という3種類の色素上皮細胞があるが、後者は色素を分泌しない。上皮性の構造及び敷石状の形態は、他の色素性細胞、例えばメラニン生成細胞とは共通しない。RPE細胞が培養中に増殖するときにその色素及び上皮性の形態が消失し回復することが示されている(Zhao、1997、Opas及びDziak、1994)ことも注目に値し、その色素性細胞も同様に挙動し、そこでES由来細胞がRPEである可能性があるという仮説について調べるために、その細胞をRPEの既知のマーカーであるベストロフィン及びCRALBPに対する抗体で染色した。図4(左図)は、ベストロフィン(A)及びCRALBP(C)の膜局在を示すものであり、どちらも色素性の上皮島中に認められる。そのすべての細胞がこれらの抗体で染色されるわけではなく、染色の強度は、色素の発現、及びコロニーの「堅さ」、すなわち色素性の各島の境界と相関し、大きく緩やかに包まれた細胞ほど、両方のタンパク質の低発現を示した。 RPEと推定される細胞をさらに特徴付けるために、ウェスタンブロット法により、ベストロフィン、CRALBPの発現に関する分析を行った。図4(右図)は、細胞溶解物中のベストロフィンに相当する68kDのバンド(a)、及びCRALBPに相当する36kDのバンド(b)を示す。これらのタンパク質はすべて、初期培養物中でもその後の継代培養物中でも認められた。 他の既知のPREマーカーであるRPE65は、リアルタイムRT−PCRにより、RPE様細胞中に認められ(図4、右図下)、PEDFのELISAアッセイから、RPEと推定される培養物すべての細胞溶解物中にPEDFの存在が示され、ウェスタンブロットから、約48kDのバンドが示された(本明細書には示さず)。 RPE様培養物におけるニューロン前駆体及び網膜前駆体のマーカーの検出 図4は、hES細胞に由来するRPEの新たに継代した培養物及び古い培養物中でのPAX−6、Pax2、mitf、及びチューブリンβIIIの局在を示す。増殖中の細胞のRPE様形態が消失した増殖中の培養物では(トリプシン処理の3日後、示さず)、ほとんどすべての細胞にmitf、Pax6、チューブリンβIII及びネスチンが存在することが示された(本明細書には示さず)。Pax2は、mitf陰性にみえる細胞の小さな部分集団にのみ認められ、Pax6/mitf、mitf/チューブリンβIII、及びPax6/チューブリンβIIIの強度の同時局在性が認められた。色素性の上皮島が再構築された21日齢の静止状態の培養物では、PAX−6及びmitfの群が、色素性の上皮島の間にある非上皮性の形態を有する非色素性細胞で大部分認められ(図4、A〜C)、チューブリンβIIIの分布のパターンは類似していた(示さず)。しかし、mitf陽性且つPax6陰性の細胞の集団が存在し、色素性の島の末梢に近接して位置していた(図4、A〜C)。Pax2は、mitf陰性の極めて小さな部分集団にのみ認められた(図4、E〜H)。「成熟した」色素性の上皮島の細胞中では、これらのタンパク質の存在はどれもこれまで検出されなかった。しかし、RPEの一部の特徴しか有していない細胞、すなわち上皮性に見えるが色素を有していない細胞、又は色素性の上皮島から離れている特定の単一色素性細胞の中でこれらのマーカーが認められることが多かった。(例4) Cyno−1 ES細胞由来のhES細胞系H9及びACT J−1に由来するRPE様細胞の特徴付け、並びに既存のhES細胞系H1及びH7からのRPE様細胞の誘導 RPE様細胞系を増殖させ、凍結し回復するかどうか試験し、下記の方法及びRPE細胞の分子マーカーを用いて、ベストロフィン及びCRALBPについてはウェスタンブロット及び免疫蛍光法により、PEDFについてはELISA及びウェスタンブロットにより、REP65についてはRT−PCRにより特徴付ける。SCIDマウス中に、未分化hES細胞、又は対照としてCyno−1細胞を注射して腫瘍形成性を評価する。RPE様細胞の核型分析は、商業的な臨床検査室によって行われる。次いで、本願中に他の形で記載したように、また当業者に既知の技術を用いてRPE様細胞の機能的特性の特徴付け、及びその移植潜在性の研究を実施する。 Affymetrixのヒトゲノムアレイを用いて、遺伝子発現プロファイリング実験を行う。ES細胞に由来するRPE様細胞と、剖検からの網膜試料とで遺伝子発現を比較する。それだけに限らないが、アカゲザル、ラット、及びウサギを含めた複数の動物モデルを使用して、移植したRPE様細胞の有効性を検証することができる。(例5) 確実に高収量のRPE様細胞が得られる分化培養系の最適化 段階的な添加を含めて、bFGF、インスリン、TGF−β、IBMX、bmp−2、bmp−4又はその組合せの存在下で、フィーダー細胞上で又は胚様体(EB)としてES細胞を培養する。或いは、RPE形成におけるECMの役割を評価する際に、様々な細胞外マトリックス被覆プレート(ラミニン、フィブロネクチン、コラーゲンI、コラーゲンIV、マトリゲル(Matrigel)など)上でES細胞を増殖させる。初期RPE前駆体の分子マーカー(Pax6、Pax2、mitf)及びRPE細胞の分子マーカー(CRALBP、ベストロフィン、PEDF、REP65)の発現を、種々の時間間隔でリアルタイムRT−PCRにより評価して、上記で述べた作用物質の組合せの成功、及びRPE様細胞又はその前駆体を濃縮する段階的な手順を検証し判定する。この手法を用いて、RPEと、光受容体や神経網膜など他の眼組織との共通前駆体を生成することもでき、それを単離し、その分化潜在性についてさらに特徴付け、移植試験で用いることができる。(例6) 既存のES細胞系及び新たなES細胞系からのRPE及び他の眼組織前駆体の誘導 RPE前駆体細胞に対する表面マーカーの独特の組合せを見つけるために、遺伝子発現プロファイリングのデータを用いて、RPE前駆体マーカーの発現を、表面タンパク質の発現と相関させる。そのようなマーカーが見つかった場合、表面タンパク質に対する抗体を用いて、RPE前駆体の純粋な集団を単離することができ、次いでそれを培養し、培養中にさらに分化させ、又は移植試験に用いて移植後に分化させることができる。 遺伝子発現プロファイリング実験のデータが不十分である場合、RPE前駆体を単離するために下記の手法を用いる。ES細胞及びRPE様細胞に、Pax6プロモーターの調節下にあるGFPを形質移入し、安定な形質移入体を選択する。形質移入した分化中のES細胞又は増殖中の(脱分化した)RPE細胞の培養物から、GFP/Pax6陽性細胞をFACSによって単離し、マウス注射用の抗原供給源として用いて、Pax6陽性細胞の表面分子に対するモノクローナル抗体を産生させる。Pax6はRPE前駆体にのみ存在するわけではないので、複数の戦略、すなわちa)増殖中のRPE様細胞に対するもの、b)Pax2陽性RPE細胞に対するもの、c)mitf陽性RPE細胞に対するものを用いてスクリーニングを(FACSにより)行う。b)及びc)では、対応するプロモーター下にあるGFPをRPE細胞に形質移入し、陰性対照として、これらの抗原が陰性であるRPE又はES細胞を使用する。3種すべての戦略によって選択された陽性クローンを増殖させた後、スクリーニングで使用しさらに分析する全種類の細胞に対して抗体を試験する。この戦略によりRPE前駆体に特異的な細胞表面抗原及び非特異的な細胞表面抗原を認識する抗体を産生することができるので、この抗体で選択したES細胞の又はRPE細胞の分化中の全集団からの細胞を、RPE前駆体の分子マーカーがあるかどうか、及びRPEを生成するかどうかについて評価する。 最適化された、RPE、又は眼組織の他の初期前駆体を生成する確定した段階的な手順、及びその独特の表面マーカーに対する抗体を用いて、分化中のES細胞からそのような前駆体を単離し、in vitroで培養する。目的2(Aim 2)に記載の戦略を用いて、眼の様々な組織に分化するその能力について調べる。 目的1及び2に記載のように、すでにRPE様細胞を生成した3種のES細胞系(H9、ACT J−1、Cyno−1)、RPE様細胞を使用して、RPE様細胞及びその前駆体の誘導を継続し、H1及びH7のhES細胞系を使用して、新たなRPE様細胞系を生成する。増殖させ、RPEの分子マーカーについて特徴付けた後、この系を単一クローン化し、得られた系を目的1に記載のように特徴付ける。RPE細胞の基準を満たす系を移植試験に使用する。受精させずに発生を刺激した(単為生殖体)、供与された卵母細胞に由来する使用しないIVF胚から、また核移植技術を適用して、供与された卵母細胞から得られた、発生した発育途中の胚盤胞から新たなヒトES細胞系を誘導する。目的2の手法を用いてこの系からRPE様細胞及び共通する眼の前駆体を誘導し、得られた系を目的1と同様に特徴付ける。[任意選択]ウイルスを含まない系の中で新たなヒトES細胞系を誘導し、特徴付け、それについて臨床試験を行う。(例7) 色素性網膜症及び黄斑変性の様々な動物モデルにおけるRPE様細胞及び前駆体の治療潜在性 カニクイザル(マカク(Macaque))で霊長類ES細胞を試験する。最初に、硝子体切除術を行い、その細胞を動物の網膜下空間に移植する。最初のステップは、懸濁液の形で細胞を移植することであり、その後基質又はマトリックスを用いて単層の移植を行う。これは、ヒトES細胞に由来する細胞を用いて免疫抑制ウサギで行うこともでき、げっ歯類(rdマウス、RPE−65ノックアウトマウス、タビー様マウス、RCSラット)、ネコ(アビシニアネコ)、及びイヌ(錐体変性「cd」イヌ、進行性杆体−錐体変性「prcd」イヌ、初期網膜変性「erd」イヌ、杆体−錐体異形成1、2及び3「rcd1、rcd2及びrcd3」のイヌ、光受容体異形成「pd」イヌ、及びブリアール「RPE−65」(イヌ))を含めた、色素性網膜症の様々な他の動物モデルで行うこともできる。蛍光血管造影、組織検査(光受容体の回復の有無)、及び可能であればERGを用いて評価を行う。貪食(光受容体の断片)、ビタミンAの代謝、密着帯の伝導性、及び電子顕微鏡法を含めた機能試験も行う。(例8) ヒト胚由来細胞からのRPE細胞の直接分化 ヒト胚盤胞段階の胚を、栄養外胚葉を除去する免疫手術を行い、又は行わずに、ネズミ又はニワトリ胚線維芽細胞の存在下でプレートに播き、或いは細胞外マトリックスタンパク質被覆組織培養器具上に直接播く。細胞を培養し継代してヒトES細胞系を生成する代わりに、細胞を直接分化させる。 LIF、FGF及びプラズマネートの不在下で、MEF上でhEDC細胞培養物を過剰増殖させたとき、それは細胞の厚い多層を形成する。(当業者に知られているように、代替の直接分化のために代替の成長因子、培地及びFBSを用いることができる。)約6週間後、細胞の暗色の島が大きな集団内に現れる。この暗色細胞は裸眼で容易に認められ、図5Bに示すように細胞のプレートの中で「そばかす」のように見える。より高倍率では、この島は、上皮細胞に特有の、敷石状の単層中の堅く包まれた多角細胞のように見え、細胞質中に茶色の色素を含む(図5A)。島の中心部にある細胞では色素が最も多く、辺縁に近い細胞では最も少なく、細胞中の色素の量に差が認められる(図5B)。 hEDC細胞を直接分化させたとき、それは、通常は形成しないが、胚様体(EB)を形成する。色素上皮細胞は、最初の6〜8週間中にこの分化した細胞及び/又はEBの約1〜2%に現れる。時間が経つと、ますますEBは色素性細胞を発生させ、3ヶ月までにはほとんどすべてのEBが色素上皮領域を有していた。EBの色素性領域中にある細胞の形態は、付着培養物のものに極似していた。 材料及び方法 MEF培地:2mMのGlutaMAX I、500u/mlのペニシリン、500ug/mlのストレプトマイシン(すべてInvitrogen)及び16%のFCS(HyCLone)を補充した高グルコースDMEM。hES細胞増殖培地:500u/mlのペニシリン、500ug/mlのストレプトマイシン、1%の非必須アミノ酸溶液、2mMのGlutaMAX I、0.1mMのβ−メルカプトエタノール、4ng/mlのbFGF(Invitrogen)、1ng/mlのヒトLIF(Chemicon、Temecula、カリフォルニア州)、8.4%のSerum Replacement(SR、Invitrogen)及び8.4%のプラズマネート(Bayer)を補充したノックアウト高グルコースDMEM。誘導培地は、増殖培地と比べて低濃度のSR並びにプラズマネート(各4.2%)、8.4%のFCS及び2×濃度のヒトLIF及びbFGFを有する以外は増殖培地と同じ構成成分を含むものであった。EB培地:bFGF、LIF、及びプラズマネート以外は増殖培地と同様;SRの濃度は13%であった。RPE培地:50%のEB培地及び50%のMEF培地。 hES細胞系 これらの研究に使用した細胞系hES35、36、45は、以前に報告された手順を改変して誘導したものであった(Thomsonら、1998、Reubinoffら、2000、Lanzendorfら、2001)。ヒト凍結胚盤胞(hES35系)又は分割胚(hES36系及びhES45系)は、試験のために供与され、2つの施設内治験審査委員会、不妊治療が終了した夫婦により承認された。 付着性hES細胞又は胚様体(EB)で分化実験を行った。付着性分化では、hESコロニーの堅い境界が消失するまでhES細胞をMEF上で過剰増殖させ、そのとき培地をEB培地に交換した(通常、継代してから8〜10日後)。培地は1〜2日毎に交換した。EB形成では、hES細胞をトリプシン処理し、低付着性プレート(Costar)上で、EB培地中で培養した。 免疫染色 細胞内抗原の局在化のために細胞を2%パラホルムアルデヒドで固定し、0.1%NP−40で浸透化処理し、10%ヤギ血清、10%ロバ血清(Jackson Immunoresearch Laboratories、West Grove、ペンシルバニア州)のPBS(Invitrogen)溶液で少なくとも1時間ブロッキング処理した。一次抗体とのインキュベーションを4℃で1晩実施し、二次抗体(Jackson Immunoresearch Laboratories、West Grove、ペンシルバニア州)を添加し1時間置いた。すべてのインキュベーションの間で、0.1%Tween−20(Sigma)のPBS溶液で3〜5回、各洗浄につき10〜15分間標本を洗浄した。DAPI入りのVectashield(Vector Laboratories、Burlingame、カリフォルニア州)を用いて標本を封入し、蛍光顕微鏡(Nikon)下で観察した。製造業者の説明書に従って、生細胞に対してVector Red(Vector Laboratories、Burlingame、カリフォルニア州)により、又は免疫染色間の2回目の洗浄後にアルカリホスファターゼの局在化を行った。使用した抗体:ベストロフィン(Novus Biologicals、Littleton、コロラド州)、抗CRALBP抗体は、ワシントン大学のSaari博士から寛大に贈与されたものであった。二次抗体はJackson Immunoresearch Laboratoriesから、ストレプトアビジン−FITCはAmershamから購入した。 RPE様細胞の単離及び継代 hES細胞の付着性培養物又はEBをPBSで2回すすぎ、0.25%トリプシン/1mM EDTA(Invitrogen)中で、単層が緩むまで37℃でインキュベートした。色素性領域の細胞をガラス毛細管で掻き取り、MEF培地に移し、200×gで遠心分離し、RPE培地の入ったゼラチン被覆プレート上に播いた。細胞が付着した後(通常1〜2日以内に)培地を交換し、その後5〜7日毎に交換した。2〜4週間毎に0.05%トリプシン/0.53mM EDTA(Invitrogen)を用いて細胞を継代した。 ウェスタンブロット及びELISA 5%のメルカプトエタノール及びプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)を補充したLaemmli緩衝液(Laemmli、1970)中で試料を調製し、5分間煮沸し、Mini−Protean装置を用いて8〜16%濃度勾配ゲル(Bio−Rad、Hercules、カリフォルニア州)上に添加した。ゲルは、ゲル1枚当たり25〜30mAで泳動した。20ボルトで1晩かけてタンパク質を0.2ニトロセルロース膜(Schleicher and Shull、Keene、ニューハンプシャー州)に移した。ブロットをポンソーレッド(Sigma)で簡単に染色してバンドを視覚化し、Milli−Q水で洗浄し、5%脱脂粉乳の0.1%TBST(Bio−Rad)溶液中で1時間ブロッキング処理した。ベストロフィン、CRALBP又はPEDF(Chemicon)に対する一次抗体を添加して2時間置き、その後TBSTで15分間3回洗浄した。ペルオキシダーゼ結合二次抗体を添加して1時間置き、洗浄を繰り返した。ECLシステムとSuper−Signal試薬(Pierce)を用いてブロットを検出した。PEDFのELISAは、製造業者の説明書に従ってPEDF ELISAキット(Chemicon)を用いて、細胞溶解物に対して行った。 リアルタイムRT−PCR 分化中のES培養物から2ステップの手順により全RNAを精製した。Trizol試薬(Invitrogen)を用いて粗RNAを単離し、RNeazyミニカラム(Qiagen)でさらに精製した。RPE65検出用の市販のプライマー組(注文アッセイ#Hs00165642_m1、Applied Biosystems)及びQuantitect Probe RT−PCR試薬(Qiagen)を用いたリアルタイムPCRにより、製造業者(Qiagen)のプロトコールに従って、RPE65転写物のレベルをモニターした。 未分化hES細胞系の誘導及び特徴付け 2種の女性hES細胞系、1種の男性hES細胞系をこれらの研究で使用した。これらのhES系の誘導についての詳細は他の箇所で報告されている。すべての系が50回を超えて継代され、その間にそれらの系は、未分化のコロニー形態、高いアルカリホスファターゼ活性を維持し、Oct−4、SSEA−3、SSEA−4、TRA I−60、及びTRA I−81を発現している(データは示さず)。2種の系(hES36、hES35)は正常な核型を有するが、hES45では正常な部分集団も異数体の部分集団も存在した。自発的な分化後、in vitroでも奇形腫中でもすべての系は3種の胚葉のマーカーである筋アクチン、α−フェトプロテイン、及びチューブリンβIIIを発現した。(例9) 転写物ゲノミクスを使用した、ex vivoで分化させた正常な分化細胞の同定 トランスクリプトミクス−hES細胞誘導体は、再生医学の将来において重要な役割を担う可能性が高い。この幹細胞誘導体及び他の幹細胞誘導体の質的な評価は、依然として難題のままであるが、機能ゲノミクスを用いて取り組むことができるはずである。hES−RPEに対して、その移植の価値について広範に調べられている、そのin vivo対応物である胎児RPE細胞の転写プロファイルを比較した。次いで、両方のプロファイルを、以前に刊行されている(Rogojinaら、2003)ヒトRPE細胞系に対するトランスクリプトミクスのデータと比較した。 本発明者らの遺伝子発現プロファイルデータ組を、2種のヒトRPE細胞系(非形質転換型のARPE−19及び形質転換型のD407、Rogojinaら、2003)と比較して、hES−RPEが類似の全体的な転写プロファイルを有するかどうか判定した。共通するハウスキーピング遺伝子がすべての細胞で発現していることを明らかにするために、未分化hES細胞(H1系、h1−hES、satoら、2003)及び気管支上皮細胞(BE、Wrightら、2004)の、公的に利用可能なAffymetrixのデータ組を、その共通する上皮起源に基づく対照として使用し、それによって共通するハウスキーピング遺伝子及び上皮遺伝子を除外し、RPE特異的遺伝子を同定することが可能となる。 hES−RPE、hES−RPE−TD、ARPE−19、D407の間には類似性及び相違性が存在した。hES−RPE/ARPE−19に存在するがBEに存在しない遺伝子間の排他的な共通部分(1026遺伝子)を分析することによって類似点をさらに実証した。バックグラウンドを明らかにするために、これをBE/hES−RPEに存在するがARPE−19に存在しない遺伝子の排他的な共通部分(186遺伝子)と比較し、その結果、BEと比較したとき、hES−RPE及びARPE−19で5〜6倍類似性が大きい。D407/ARPE19は、RPE65、ベストロフィン、CRALBP、PEDFなどのRPE特異的遺伝子を失っているように思われ、このことは、長期継代細胞に特徴的である(図6)。さらなるデータマイニングから、メラニン生合成、視覚、レチノール結合などの既知のRPE特異的な形而上的事象が、胎児RPE及びES−RPEでのみ認められるがARPE19では認められないことが明らかとなった。 hES−RPE、ARPE−19及びD407をそのin vivo対応物である新鮮単離ヒト胎児RPE(feRPE)と比較すると、本発明者らの前記のデータと一致したが、このことは、ヒトfeRPEに対するhES−RPEの転写上の同一性が、feRPEに対するD407(2.3倍の差、849遺伝子/373遺伝子)より、またfeRPEに対するARPE−19(1.6倍の差、588遺伝子/364遺伝子)より有意に高いことを実証するものである(図5c/5d)。hES−RPEにのみ存在し、ARPE−19又はD407に存在しなかった、上記で同定されたRPE特異的マーカーはfeRPEにも存在したが、このことは、hES−RPEの、そのin vivo対応物に対する類似性が、培養RPE系のものより高いことを実証するものであった。 hES−RPEに存在する784遺伝子は、feRPE及びARPE−19のデータ組に存在しなかった。「幹性(stemness)」遺伝子が保持されると、患者に移植した場合にhES誘導体が悪性の奇形腫へと形質転換する可能性があるので、現在利用可能なAffymetrixのマイクロアレイデータ組(Abeytaら、2004、Sato、2003)を用いて、保存的な潜在的「幹性」遺伝子のデータを作成した。この結果、12個すべてのデータ組に存在する3806遺伝子のリストが得られた(共通するハウスキーピング遺伝子を含む)。hES−RPEのデータ組に存在するが、feRPE、ARPE−19に存在しない784遺伝子のうち36種しか、3806種の潜在的幹性遺伝子と共通しなかった。これらのうち、Oct4、Sox2、TDGF1などの既知の幹性遺伝子はなかった。(例10) パーキンソン病治療のためのRPE細胞の使用 hRPEはL−DOPAを分泌するので、パーキンソン病の細胞療法に細胞の代替供給源としてそれを使用することができる。半身パーキンソン症状のサルで、ゼラチン被覆マイクロキャリアと結合したそのような細胞を移植することに成功し、顕著な改善(1つの標的につき細胞10000〜50000個)が生じたことが研究から示されており、2000年に開始したFDA承認の試験では、患者はhRPEの線条体内移植を受け、副作用は認められなかった。hES細胞由来のRPEを使用する多数の利点の1つは、それによって供与眼組織の不足が回避されることである。それによって遺伝子治療の使用も促進される。 他の実施形態 上記の記載から、本明細書に記載の本発明に変更及び改変を加えて、様々な使用法及び条件にそれを採用できることは明らかであろう。 網膜変性を治療又は予防する方法であって、哺乳動物の胚性幹細胞に由来するRPE細胞、RPE様細胞、RPE又はRPE様前駆体のうち少なくとも1種からなる群から選択される細胞を使用するステップを含む方法。 網膜変性の病態が、色素性網膜炎及び黄斑変性のうち少なくとも1種からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。 硝子体切除術によって、前記細胞を眼の網膜下空間へと移植するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。 前記細胞が、懸濁液、マトリックス、又は基質中で移植される、請求項3に記載の方法。 前記色素性網膜炎が動物モデルに伴う、請求項2に記載の方法。 前記動物モデルが、rdマウス、RPE−65ノックアウトマウス、タビー(tubby)様マウス、RCSラット、アビシニアネコ(Abyssinian cat)、錐体変性「cd」イヌ、進行性杆体−錐体変性「prcd」イヌ、初期網膜変性「erd」イヌ、杆体−錐体異形成1、2及び3「rcd1、rcd2及びrcd3」のイヌ、光受容体異形成「pd」イヌ、及びブリアール(Briard)「RPE−65」イヌからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。 1種又は複数種の行動試験、蛍光血管造影、組織検査、及び貪食(光受容体の断片)を行う細胞の能力、ビタミンAの代謝、密着帯の伝導性の測定や、電子顕微鏡法を用いた評価などの機能試験を用いて、前記動物モデルにおける前記治療の結果を評価する、請求項6に記載の方法。 hES細胞を、RPE、RPE様、又はRPE前駆体細胞へと自発的に分化させる方法であって、 a)MEF上でhES細胞培養物を過剰増殖させるステップと、 b)前記hES細胞培養物に細胞の厚い多層を形成させるステップと、 c)前記hES細胞を培養するステップと、 d)得られた細胞培養物から色素性のRPE、RPE様、及び/又はRPE前駆細胞を単離し培養するステップとを含む方法。 前記RPE様細胞を単離し培養するステップが、 a)前記培養したhES細胞又はEB細胞を酵素で消化するステップと、 b)前記色素性細胞を選択的に単離するステップと、 c)ゼラチン又はラミニン上に前記単離細胞を播いて1〜2日間置いて初代培養物(P0)を形成させるステップと、 d)前記初代培養物を最大3週間継続して培養するステップと、 e)前記RPE様細胞を単離するステップとを含む、請求項8に記載の方法。 前記酵素が、トリプシン、コラゲナーゼ、及びディスパーゼのうち1種又は複数種からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。 前記RPE細胞を増殖させて新たなRPE細胞系を樹立する、請求項8に記載の方法。 前記RPE細胞系を代替の系統へと分化させ、培養中の前記RPE細胞系をbFGF又はFGFで処理するステップを含む、請求項11に記載の方法。 前記新たなRPE細胞系が、異なるES細胞系に由来するとき、RPE様細胞の、増殖速度、色素の発現、培養中での脱分化、及び培養中での再分化からなる群から選択される少なくとも1つの特徴において、すでに樹立されているRPE細胞系と異なる、請求項11に記載の方法。 RPE系又は前駆体を、血管新生を防止する能力が亢進したRPE細胞へと誘導する方法であって、 a)動物の体細胞の正常な複製寿命の少なくとも10%が過ぎるまでテロメラーゼが短くなるように前記細胞を加齢させるステップと、 b)前記体細胞を核移植供与細胞として使用して、血管形成阻害因子を過剰発現する細胞を作製し、前記血管形成阻害因子が色素上皮由来因子(PEDF/EPC−1)であり得るステップとを含む方法。 血管新生を阻害する外来遺伝子で前記体細胞を遺伝子改変する、請求項14に記載の方法。 前記RPE様細胞が、HLA領域でホモ接合性があるES又は胚由来細胞バンクに由来し、その結果ES由来細胞のHLA抗原の複雑性が低下する、請求項8に記載の方法。 前記ES細胞がヒトに由来する、請求項8に記載の方法。 パーキンソン病を治療する方法であって、RPE様細胞又は前駆細胞を移植するステップを含む方法。 【課題】本発明は、網膜変性についての細胞に基づく改良療法のための方法、並びにヒト胚性幹細胞及びヒト胚由来細胞を網膜色素上皮(RPE)細胞及び他の網膜前駆細胞へと分化させるための方法に関する。【解決手段】網膜変性を治療又は予防する方法であって、哺乳動物の胚性幹細胞に由来するRPE細胞、RPE様細胞、RPE又はRPE様前駆体のうち少なくとも1種からなる群から選択される細胞を使用するステップを含む方法。【選択図】なし20120326A16333全文3 RPE細胞を産生する方法であって、下記の工程: a)胚様体をRPE細胞の外観となるのに十分な時間の間培養する工程であって、前記RPE細胞は、色素をその細胞質中に含む、上記工程;及び b)前記RPE細胞の1つ以上を工程(a)の培養物から単離する工程; を含む、上記方法。 RPE細胞を産生する方法であって、下記の工程: a)多能性細胞の多層集団をRPE細胞の外観となるのに十分な時間の間培養する工程であって、前記RPE細胞は、色素をその細胞質中に含む、上記工程;及び b)前記RPE細胞の1つ以上を工程(a)の培養物から単離する工程; を含む、上記方法。 工程(b)の前記RPE細胞を培養する工程をさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。 前記RPE細胞が、ベストロフィン+、CRALBP+、PEDF+であり、RPE65を発現し、及びPax6−である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。 工程(b)の前記RPE細胞が、Pax6−及びベストロフィン+であって、上皮細胞に特有の敷石状、多角状、上皮様の外観を呈する細胞を含み、及び/又は前記細胞が、茶色色素を含み、及び/又は、前記色素が、前記RPE細胞の細胞質中で分散している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。 工程(a)の継続時間が、少なくとも6週間、6週間と8週間との間、及び3ヶ月と5ヶ月との間、からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。 前記RPE細胞は、Oct4、Sox2、又はTDGF1を発現する細胞を含まない、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。 前記胚様体は、培養された多能性細胞から形成される、請求項1に記載の方法。 多能性細胞の前記多層集団が、多能性細胞培養物を過剰増殖させることにより産生される、請求項2に記載の方法。 工程(b)は、前記胚様体を酵素と接触させることを含み、前記酵素は、トリプシン、コラゲナーゼ、及び/又はディスパーゼ(dispase)を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。 前記多能性細胞は、Oct−4、SSEA−3、SSEA−4、TRA−I−60、及び/又はTRA−I−81を発現する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。 前記多能性細胞は、ES細胞である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。 前記RPE細胞は、前記培養物の中で自発的に生じる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。 前記RPE細胞は、哺乳動物種のものである、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。 前記RPE細胞は、霊長類動物種のものである、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。 前記RPE細胞は、ヒトのものである、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。 請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法により産生されたRPE細胞を含む組成物。 前記RPE細胞は、RPE培地の中で維持することができ、 前記RPE培地は、50%MEF培地及び50%EB培地からなり、 前記MEF培地は、高グルコースDMEM、2mM GlutaMAX I、及び500μg/mlペニシリン、500μg/mlストレプトマイシン及び16%仔ウシ血清(FCS)からなり、 前記EB培地は、ノックアウト高グルコースDMEM、500μg/mlペニシリン、500μg/mlストレプトマイシン、1%非必須アミノ酸溶液、2mM GlutaMAX I、0.1mMβ−メルカプトエタノール、及び8.4%の血清リプレースメントからなる、 請求項17に記載の組成物。 前記組成物が、網膜変性の治療又は予防のための移植に適している、請求項17又は18に記載の組成物。 網膜変性及びパーキンソン病からなる群から選択される疾患の治療又は予防のための医薬の製造における、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法により産生されたRPE細胞の使用。 網膜変性及びパーキンソン病からなる群から選択される疾患の治療又は予防のための医薬の製造における、請求項17〜19のいずれか一項に記載のRPE細胞の使用。 前記疾患が、色素性網膜炎、RPEの剥離、異形成、萎縮、網膜症、黄斑ジストロフィー、又は、加齢性黄斑変性症、錐体ジストロフィー、錐体−杆体ジストロフィー、マラッティアレベンティネース(malattia leventinese)、ドイン(Doyne)蜂巣状ジストロフィー、ソースビー(Sorsby’s)ジストロフィー、スタルガルト(Stargardt)病、パターン/蝶形ジストロフィー(pattern/butterfly dystrophies)、ベスト(Best)卵黄様ジストロフィー、ノースカロライナ(North Carolina)ジストロフィー、中心輪紋状脈絡膜ジストロフィー、色素線条、及び中毒性黄斑症を含めた変性から選択される、請求項20又は21に記載の使用。 前記RPE細胞又は医薬が、前記眼の網膜下空間の中への硝子体切除術による前記細胞の移植のために製剤化された、請求項20〜22のいずれか一項に記載の使用。 多能性細胞から分化したRPE細胞を含む組成物。 前記RPE細胞は、in vitroで多能性細胞から分化される、及び/又は、前記組成物は、移植に適している、請求項24に記載の組成物。 前記RPE細胞が、ベストロフィン+、CRALBP+、PEDF+であり、RPE65を発現し、及びPax6−である、請求項24又は25に記載の組成物。 前記RPE細胞が、Pax6−及びベストロフィン+であって、上皮細胞に特有の敷石状、多角状、上皮様の外観を呈する細胞を含み、及び/又は前記細胞が、色素を含み、前記色素は、茶色であり、及び/又は、前記RPE細胞の細胞質中で分散している、請求項24〜26のいずれか一項に記載の組成物。 前記RPE細胞は、Oct4、Sox2、又はTDGF1を発現する細胞を含まない、請求項24〜27のいずれか一項に記載の組成物。 前記RPE細胞は、RPE培地の中で維持することができ、 前記RPE培地は、50%MEF培地及び50%EB培地からなり、 前記MEF培地は、高グルコースDMEM、2mM GlutaMAX I、及び500μg/mlペニシリン、500μg/mlストレプトマイシン及び16%仔ウシ血清(FCS)からなり、 前記EB培地は、ノックアウト高グルコースDMEM、500μg/mlペニシリン、500μg/mlストレプトマイシン、1%非必須アミノ酸溶液、2mM GlutaMAX I、0.1mMβ−メルカプトエタノール、及び8.4%の血清リプレースメントからなる、 請求項24〜28のいずれか一項に記載の組成物。 前記多能性細胞は、Oct−4、SSEA−3、SSEA−4、TRA−I−60、及び/又はTRA−I−81を発現する、請求項24〜29のいずれか一項に記載の組成物。 前記多能性細胞は、ES細胞である、請求項24〜30のいずれか一項に記載の組成物。 前記組成物は、下記の工程: a)多能性細胞の多層集団をRPE細胞の外観となるのに十分な時間の間培養する工程であって、前記RPE細胞は、色素をその細胞質中に含む、上記工程;及び b)前記RPE細胞の1つ以上を工程(a)の培養物から単離する工程; を含む方法によって産生される、請求項24〜31のいずれか一項に記載の組成物。 前記組成物は、下記の工程: a)胚様体をRPE細胞の外観となるのに十分な時間の間培養する工程であって、前記RPE細胞は、色素をその細胞質中に含む、上記工程;及び b)前記RPE細胞の1つ以上を工程(a)の培養物から単離する工程; を含む方法によって産生される、請求項24〜32のいずれか一項に記載の組成物。 工程(a)の継続時間が、少なくとも6週間、6週間と8週間との間、及び3ヶ月と5ヶ月との間、からなる群から選択される、請求項32又は33に記載の組成物。 工程(b)は、前記胚様体を酵素と接触させることを含み、前記酵素は、トリプシン、コラゲナーゼ、及び/又はディスパーゼ(dispase)を含む、請求項32〜34のいずれか一項に記載の組成物。 前記RPE細胞は、前記培養物の中で自発的に生じる、請求項32〜35のいずれか一項に記載の組成物。 前記組成物は、工程(b)の前記RPE細胞を培養する工程をさらに含む方法によって産生される、請求項32〜36のいずれか一項に記載の組成物。 前記RPE細胞は、哺乳動物種のものである、請求項24〜37のいずれか一項に記載の組成物。 前記RPE細胞は、霊長類動物種のものである、請求項24〜37のいずれか一項に記載の組成物。 前記RPE細胞は、ヒトのものである、請求項24〜37のいずれか一項に記載の組成物。 網膜変性及びパーキンソン病からなる群から選択される疾患の治療又は予防のための医薬の調製における、請求項24〜40のいずれか一項に記載の組成物の使用。 前記疾患が、色素性網膜炎、RPEの剥離、異形成、萎縮、網膜症、黄斑ジストロフィー、又は、加齢性黄斑変性症、錐体ジストロフィー、錐体−杆体ジストロフィー、マラッティアレベンティネース(malattia leventinese)、ドイン(Doyne)蜂巣状ジストロフィー、ソースビー(Sorsby’s)ジストロフィー、スタルガルト(Stargardt)病、パターン/蝶形ジストロフィー(pattern/butterfly dystrophies)、ベスト(Best)卵黄様ジストロフィー、ノースカロライナ(North Carolina)ジストロフィー、中心輪紋状脈絡膜ジストロフィー、色素線条、及び中毒性黄斑症を含めた変性から選択される、請求項41に記載の使用。 前記RPE細胞又は医薬が、前記眼の網膜下空間の中への硝子体切除術による前記細胞の移植のために製剤化された、請求項41又は42に記載の使用。 ヒト多能性幹細胞を培養する工程を含むヒトRPE細胞を導出する方法。 ヒトRPE細胞の医薬的製剤であって、 前記ヒトRPE細胞は、ベストロフィン+、CRALBP+、PEDF+であり、RPE65を発現し、及びPax6−であり、 前記ヒトRPE細胞は、Oct−4、SSEA−3、SSEA−4、TRA−I−60、及び/又はTRA−I−81を発現するヒト多能性幹細胞に由来する、 上記医薬的製剤。


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