生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_免疫増強組成物及びそれを製造する方法
出願番号:2011500533
年次:2012
IPC分類:A61K 35/74,A61P 37/04,A61P 43/00,A61P 29/00,A61P 37/08,A61P 37/02,A61P 31/04,A61P 31/12,A61P 31/14,A61P 31/18,A61P 35/00,A61P 3/10,A61P 9/12,A61P 17/02,A61P 19/08,A61P 17/10,A61P 27/02,A61K 39/39


特許情報キャッシュ

御手洗 薫 長濱 陽二 JP 4951150 特許公報(B2) 20120316 2011500533 20100222 免疫増強組成物及びそれを製造する方法 有限会社メイショウ 506359060 矢口 太郎 100104411 御手洗 薫 長濱 陽二 JP 2009061956 20090220 20120613 A61K 35/74 20060101AFI20120524BHJP A61P 37/04 20060101ALI20120524BHJP A61P 43/00 20060101ALI20120524BHJP A61P 29/00 20060101ALI20120524BHJP A61P 37/08 20060101ALI20120524BHJP A61P 37/02 20060101ALI20120524BHJP A61P 31/04 20060101ALI20120524BHJP A61P 31/12 20060101ALI20120524BHJP A61P 31/14 20060101ALI20120524BHJP A61P 31/18 20060101ALI20120524BHJP A61P 35/00 20060101ALI20120524BHJP A61P 3/10 20060101ALI20120524BHJP A61P 9/12 20060101ALI20120524BHJP A61P 17/02 20060101ALI20120524BHJP A61P 19/08 20060101ALI20120524BHJP A61P 17/10 20060101ALI20120524BHJP A61P 27/02 20060101ALI20120524BHJP A61K 39/39 20060101ALI20120524BHJP JPA61K35/74 GA61P37/04A61P43/00 107A61P29/00A61P37/08A61P37/02A61P31/04A61P31/12A61P31/14A61P31/18A61P35/00A61P3/10A61P9/12A61P17/02A61P19/08A61P17/10A61P27/02A61K39/39A61P43/00 111 A61K 35/74 A61K 39/39 A61P 3/10 A61P 9/12 A61P 17/02 A61P 17/10 A61P 19/08 A61P 27/02 A61P 29/00 A61P 31/04 A61P 31/12 A61P 31/14 A61P 31/18 A61P 35/00 A61P 37/02 A61P 37/04 A61P 37/08 A61P 43/00 CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) G-Search 特開平05−279394(JP,A) 特開2007−117083(JP,A) 特開2000−004830(JP,A) 特開2006−137703(JP,A) 特開2003−071479(JP,A) 西井丈博, et al.,死活化した乳酸菌および酵母菌粉末の投与による犬皮膚炎への治療効果,動物臨床医学会年次大会プロシーディング,2006年,Vol. 27th, No. 3,p. 194-195 20 IPOD FERM BP-11206 IPOD FERM BP-11207 IPOD FERM BP-11208 IPOD FERM BP-11209 JP2010001120 20100222 WO2010095463 20100826 49 20111017 小松 邦光 本発明は、自然免疫を刺激することによって、抗菌作用、抗ウイルス作用、抗炎症作用、及び抗癌作用を増強させると共に、リンパ球系の免疫システムに影響を与え炎症を抑制させる組成物に関する。 具体的には、本発明に係る組成物は、自然免疫の受容体であるTLRやNLRおよびRIGなどを刺激し、それに引き続き、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞、ナチュラルキラーT細胞を含む自然免疫応答細胞を活性化させると共に、Th17およびTh1、或いはTreg等の自然免疫と連動するリンパ球系免疫を活性化させる。また、過剰な免疫反応を抑制するIL−21を産生させる一連の免疫プロセスの活性を誘導することによって、抗癌作用、抗菌作用、抗ウイルス作用、抗炎症作用を増強させCTLの暴走に起因する自己免疫作用を緩和する。 近年、生活習慣の多様化に伴う各種疾患の増加に比例して、自然免疫の果たす役割の重要さが増しつつある。米国のNIH助成プロジェクトの一つStevenB.Mizelによる研究では、自然免疫のリガンドの一つであるフランジェリンとペスト菌ワクチンとの結合体によりワクチンに対するアジュバンド効果が約50万倍に増強されることが明らかにされた。その成果は自然免疫の可能性の大きさを示唆するものであり、自然免疫リガンドのアジュバンド効果に期待が寄せられつつある(非特許文献1および非特許文献2参照)。 自然免疫の受容体またはその類似センサーは、広く動物、植物、微生物に存在している。具体的には、脊椎動物の自然免疫受容体としては、TLR(Toll−like−receptor)、NLR(Nod−like−receptor)、及びRLR(RIG−like−receptor)が細胞の内外に存在し、菌やウイルスなどが分解されてできた物質(リガンド)によって菌やウイルスなどの外敵を検知し、パターン認識で判別している。リガンドは分解される菌やウイルスの種類によって複数生成され、一般的に、生成された物質もその濃度も異なるため、それらのリガンド群の組み合わせにより認識されるパターンが微妙に異なって識別され、自然免疫応答されている。 ヒトの上皮細胞などの自然免疫応答細胞では、細胞膜上でTLR−1&2、TLR−6&2、TLR−4&MD−2、TLR−5が働き、エンドゾームや食細胞の食包内でリソゾーム酵素群により分解された菌やウイルスの核酸(DNAやRNA)の分解断片がTLR−3、TLR−7、TLR−8、TLR−9を活性化させる。細胞質内には菌の低分子分解物を感知する受容体であるNOD1、NOD2、NALP3、NAIP5、IPAFなどの菌の低分子分解物を感知するNLR受容体やウイルスの低分子分解物や核酸を感知するRIGやMDA−5などが働いている。 これら自然免疫のセンサーである受容体は、それぞれの菌やウイルスの分解物を感知した組み合わせのパターンに従って様々な抗菌のためのインターロイキンやI型のインターフェロン(IFN−αファミリ−やINF−βそしてINF−λ)、又はこれらの類似物質を放出して、近隣細胞に感知させる。そして、それを感知した細胞群がディフェンシン、カテリシジン、デルミシジンなどの抗菌物質やISGと呼ばれる数百種類に及ぶ抗ウイルス物質群を一斉に放出することで、外敵から味方の細胞群を防御している。ここで、急速に変化してゆくウイルスに対抗して生体が多数の抗ウイルス物質を放出している事実は、本発明に係る組成物を必要とする理由の一つとなっている。 自然免疫の受容体の第2の役割は、腸管を持つ多細胞生物に存在する食細胞を活性化することである。食細胞は動く自然免疫の責任分担された細胞として発達し、ヒトではマクロファージや好中球などがその役割を担っている。特にマクロファージは免疫の司令官として重要な役割を担っている。自然免疫のセンサーである受容体群が刺激されるとマクロファージや好中球とその仲間達が活性化し、菌やウイルスなどの外敵と闘う体制になる。 ヤツメウナギとメクラウナギを除く脊椎動物では、リンパ球系の自己、非自己を識別する免疫系が発達し免疫システムを補強している。特に、哺乳類ではこのリンパ球系の免疫システムが補体系を基礎に高度化し強化された。しかしその反面、アレルギー疾患や自己免疫疾患で苦しむことになった。 特に、哺乳類では、マクロファージ、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、ミクログリアなどの自然免疫応答細胞の受容体がそれぞれのリガンド(特異的な刺激物)の存在を感知すると、T細胞を分化させるIL−12、IL−6、IL−4、TGF−βなどのインターロイキンおよび分化したT細胞を活性化させるIL−1β、IL−23、IL−2並びに分化したT細胞の活性を抑えるIL−2、IL−25、IL−27、IL−6などが、そのパターン認識の結果に従って分泌される。 これらのプロセスは、Th17またはナチュラルキラーT細胞からIL−21を放出させ自己を攻撃する抗体を持つB細胞や記憶T細胞をアポトーシス又は抑制させて自己免疫疾患に陥ることを防いでいる。 自然免疫のリガンドの様々な組み合わせ、抗原と自然免疫のリガンドとの組み合わせなどによって、プロセスに多様なると変化と作用の差異をもたらすことがDNAマイクロアレイによるDNAから発現したRNAの動態解析により解明されてきた。これは、DNAやRNAの動態解析の技術の進歩により、自然免疫やリンパ球系免疫(いわゆる獲得免疫)発現のプロセス、細胞のアポトーシス経路、炎症コントロール(抗菌、抗癌)経路、抗ウイルス経路へのスイッチング、炎症並びに炎症抑制のプロセスなどの変化が時系列で捉えられるようになったためである。 このような自然免疫のTLR、NLR、RLRの受容体とそれに続く生理プロセスの解明は、医療に革命をもたらす可能性を秘めている。すなわち、従来の医学では治療が困難とされる「各種の癌疾患や前癌段階のポリープ形成」、「HIV、HCV、HPV、HHVおよび新型インフルエンザなどのウイルス疾患」、「抗生物質による耐性菌や体内潜伏菌」、「各種アレルギー疾患などの炎症性の疾患」、「各種自己免疫による炎症性の疾患」などへの根本的な解決への道が開けるものと期待されている。 このような技術の流れを背景として、A.「自然免疫のリガンドの効果的組み合わせ」、B.「抗原ワクチンと自然免疫のリガンドの組み合わせ」が極めて重要な意味を持つようになった。 たとえば、従来、自然免疫リガンドとして普及しているものにLPSとR−848とイミダキノリン、そしてフランジェリンがある。LPSは、TLR4とMD2を活性化するリガンドであり、 イミダキノリンやその誘導体であるR−848はTLR7を活性化するリガンドで、フランジェリンはTLR5を活性化するリガンドである。 イミダキノリンとR−848は同じTLR7活性でも異なる種類のIFN−αを産生させるため、イミダキノリンはHPV(パピロ−マウイルス)の治療薬として、R−848はHHV(ヘルペスウィルイス)の治療薬として使われている。同じ受容体の活性でもリガンドの違いによってその作用は異なってくることを示している。 また、MDP(ムラミルジペプチド)とその誘導体も1985年代頃から注目された自然免疫リガンドでTLR−2を活性化する。誘導体のMDP−Lysがアジュバントとして医薬品となっている。最近、NLRを活性化することで再注目を浴びているが、単独使用されることはなく、LPSやリピドAなど他のリガンドと組み合わせることでそのリガンド効果を高めることができることが分かっている。 さらに、特許文献1では、IL−12産生の細菌や酵母とIL−12非産生の細菌や酵母を組み合わせた菌から作られた複合リガンドで、意外にもIL−10を産生するということを発見している。 このように複合リガンドは、単一リガンドにない相乗効果をもたらし、かつ作用点を分散させることでLPS(エンドトキシン)というリガンドにもし弊害があるとすればそのリスク分散を可能にすることができる。このような理由から複合的に働くリガンドの開発が強く求められている。特にフランジェリンの強力なアジュバンド効果が発見されてからは重要な意味をもつに至った。 現在の医療は、一つの壁に突き当たっている。頼りにされている抗生物質は、ウイルスには効かず、耐性菌を生むという深刻な問題を抱えている。また、アナフィラキシーを起こすという副作用もある。ステロイドなどのホルモン剤や免疫抑制剤は免疫の弱体化を通して病原菌や日和見菌への感染という危険を増大させるが、その使用でヒトを含む生命体を正常化することはできない。また、インヒビターによる治療も生体の正常なシステムを阻害することによる弊害が強く指摘されている。根治しない薬剤を使い続けることは医療費の増大にも影響を与えている。この壁を打破する観点からも、安全で優れた自然免疫活性リガンドの実現が求められている。特開2008−31153号公報特開2006−265212号公報特表2007−506789号公報特表2006−514601号公報特表2005−530716号公報Medical Tribune 2005.6.16Clin Vaccine Immunol. 2009 Jan;16(1):21−8. Epub 2008 Nov 5J.Biol.Chem.,Vol.282,Issue48,34605−34610,November30,2007Nakanishi K.et.al:Interleukin−18 regulates both Th1 and Th2 responses.Annu.Rev Immunol19,423−474,2001医学書院 標準免疫学p209〜p211中西憲司「IL−18とスーパーTh1型アレルギー炎症」兵庫医科大学Immunity30(1):108−119,2009Nature 2008年7月17日号Vol.454 No.7202/P.350−352 本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、細胞障害性のない効果的な組成物(リガンドまたはアジュバンド)を提供することを目的とする。さらに詳しく述べれば、炎症疾患を誘発しない抗菌効果、抗ウイルス効果、抗癌効果、及びCTLの暴走抑制を含む炎症抑制効果を有する安全性の高い組成物(リガンドまたはアジュバンド)を提供することを目的とする。 また、本発明は、細胞膜を容易に透過できる低分子組成物(低分子リガンド)を提供することを目的とする。細胞膜を容易に透過できることは、細胞表面と細胞内部のエンドゾームおよび細胞質に立体的に存在する自然免疫受容体を複合的に刺激することが可能になることを意味する。 同様に、本発明は、自然免疫受容体を立体的に刺激する組成物(リガンド)を提供することを目的とする。立体的な組成物(リガンド)の実現によって、その相乗効果を期待することができ、安全性をさらに高めることが可能になるからである。さらに、低分子化により、腸管や皮膚からも容易に吸収可能な免疫活性剤を提供することも可能になる。また、低分子であるが故に抗体に攻撃されない組成物(リガンド)が実現でき、注射剤としても使用可能になる。 さらに、本発明は、アジュバンドとして利用できる組成物を提供することを目的とする。 本発明の発明者の一人である御手洗薫は、好気性の土壌菌類を大分県佐伯市近郊の山中の森林で採取し、長年培養した結果、個性の強い安定した共生菌群を得、さらに鋭意研究・実験を重ねた結果、本発明を完成するに至ったものである。 また、本発明者らは、その共生菌群の菌体を分解して得た低分子分解物を、発病したHIV患者に与えたところ、その容態が著しく改善し、エイズ発症の指標であるCD4も1ヶ月以内という短期で著しく増加し全員が元気になることを見出し、この共生菌群を「MRE共生菌群」と名付けた。このことは、MRE共生菌群の分解生成物が、患者における自然免疫を増強させ、その疾患を治療することができるものであることを意味する。すなわち、本願発明は、対象が有する免疫を増強させることができる、MRE共生菌群の分解生成物を含む自然免疫増強組成物を提供するものである。 したがって、本発明の第一の主要な観点によれば、自然免疫を刺激することによって対象が有する免疫を増強させる免疫増強組成物であって、バシラスsp.(Bacillus sp.)(FERM BP−11209)、リシニバシラス フシフォルミス(Lysinibacillus fusiformis)(FERM BP−11206)、バシラス ソノレンシス(Bacillus sonorensis)、リシニバシラスsp.(Lysinibacillus sp.)(FERM BP−11207)、及びコマモナスsp.(Comamonas sp.)(FERM BP−11208)から成るMRE共生菌群から選択される1若しくはそれ以上の菌類を分解することによって生じる免疫賦活物質を有効成分として有するものであることを特徴とする、免疫増強組成物が提供される。 また、本発明の一実施形態によれば、このような免疫増強組成物において、前記免疫賦活物質は、少なくともその98重量%以上が、平均分子量1,000Da以下の親水性低分子物質である。 また、本発明の別の実施形態によれば、このような免疫増強組成物において、前記免疫賦活物質は、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞、又はナチュラルキラーT細胞を活性化させるものである。 本発明の別の実施形態によれば、このような免疫増強組成物において、前記免疫賦活物質は、樹状細胞、ミクログリア細胞、ランゲルハンス細胞、又はクッパー細胞を活性化させるものである。 さらに他の本発明の実施形態によれば、このような免疫増強組成物において、前記免疫賦活物質は、上皮細胞、繊維芽細胞、ケラチノサイト、又は骨芽細胞を活性化させるものである。 さらに他の本発明の実施形態によれば、このような免疫増強組成物において、前記免疫賦活物質は、Th17又はTh1を分化又は活性化させるものである。 さらに他の本発明の実施形態によれば、このような免疫増強組成物において、前記免疫賦活物質は、IL−21産生を増強させるものである。 また、本発明の別の実施形態によれば、このような免疫増強組成物において、前記免疫賦活物質は、前記MRE共生菌群から選択される1若しくはそれ以上の菌類を生育に適した培養条件下で培養し、得られた培養液を飢餓状態におき、エアレーションを行うことによって得られるものであることが好ましい。 また、本発明の別の実施形態によれば、このような免疫増強組成物において、この免疫増強組成物は、アレルギー疾患又は自己免疫疾患に罹患した対象における抗炎症剤として使用されるものである。 このような場合、前記アレルギー疾患又は自己免疫疾患は、顎関節炎、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎からなる群から選択されることができる。 また、本発明の他の実施形態によれば、このような免疫増強組成物において、この免疫増強組成物は、病原性細菌又は病原性ウイルスに対するワクチンのアジュバンドとして使用されるものである。 この場合、前記病原性細菌又は病原性ウイルスは、日和見感染菌、HIV、HCV、及びHPVからなる群から選択されることができる。 また、本発明の別の実施形態によれば、このような免疫増強組成物において、この免疫増強組成物は、肝臓癌、前立腺癌、大腸癌、直腸癌、肺癌、膵臓癌、胃癌、悪性リンパ腫、糖尿病、高血圧、創傷、靭帯損傷、骨折、低温火傷、ニキビ、飛蚊症、辱創、蕁麻疹からなる群から選択される疾患に罹患した対象を治療又は予防するための医薬又は動物薬として使用されるものである。 本発明の他の実施形態によれば、このような免疫増強組成物において、この免疫増強組成物は、食品若しくは飼料として用いられるものである。 本発明の第二の主要な観点によれば、自然免疫を刺激することによって対象が有する免疫を増強させる免疫増強組成物を製造する方法であって、バシラスsp.(Bacillus sp.)(FERM BP−11209)、リシニバシラス フシフォルミス(Lysinibacillus fusiformis)(FERM BP−11206)、バシラス ソノレンシス(Bacillus sonorensis)、リシニバシラスsp.(Lysinibacillus sp.)(FERM BP−11207)、及びコマモナスsp.(Comamonas sp.)(FERM BP−11208)から成るMRE共生菌群から選択される1若しくはそれ以上の菌類を用意する工程と、前記用意された1若しくはそれ以上の菌類を分解する工程とを有することを特徴とする、方法が提供される。 また、本発明の一実施形態によれば、このような方法において、前記分解する工程は、前記用意された1若しくはそれ以上の菌類を生育に適した培養条件下で培養し、得られた培養液を飢餓状態におき、エアレーションを行うことによって行われるものである。 本発明の第三の主要な観点によれば、自然免疫に関連する疾患に罹患した哺乳動物を治療若しくは予防する方法であって、バシラスsp.(Bacillus sp.)(FERM BP−11209)、リシニバシラス フシフォルミス(Lysinibacillus fusiformis)(FERM BP−11206)、バシラス ソノレンシス(Bacillus sonorensis)、リシニバシラスsp.(Lysinibacillus sp.)(FERM BP−11207)、及びコマモナスsp.(Comamonas sp.)(FERM BP−11208)から成るMRE共生菌群から選択される1若しくはそれ以上の菌類を分解することによって生じる免疫賦活物質を有効成分として有する免疫増強組成物の治療上有効な量を用意する工程と、前記用意した免疫増強組成物の治療上有効な量を前記哺乳動物に投与する工程とを有することを特徴とする、方法が提供される。 また、本発明の一実施形態によれば、このような方法において、前記哺乳動物はヒトである。 また、本発明の他の実施形態によれば、このような方法において、前記投与する工程は経口的に行われるものである。 また、本発明の他の実施形態によれば、このような方法において、前記投与する工程は非経口的に行われるものである。 この場合、前記非経口的に行われる投与する工程は、血管内投与、組織周囲および組織内注射、皮下注射、点眼投与、点鼻投与、経皮的投与、粘膜投与から選択されるものであることが好ましい。 さらに別の本発明の実施形態によれば、このような方法において、前記自然免疫に関連する疾患は、顎関節炎、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎を含むアレルギー疾患又は自己免疫疾患、日和見感染菌、HIV、HCV、及びHPVを含む病原性細菌又は病原性ウイルス関連疾患、肝臓癌、前立腺癌、大腸癌、直腸癌、肺癌、膵臓癌、胃癌、悪性リンパ腫、糖尿病、高血圧、創傷、靭帯損傷、骨折、低温火傷、ニキビ、飛蚊症、辱創、蕁麻疹からなる群から選択されることができる。 なお、上記した以外の本発明の特徴及び顕著な作用・効果は、次の発明の実施形態の項及び図面を参照することで、当業者にとって明確となる。図1は、ナイーブT細胞がTh17、Th1、Th2、Tregに分化していくプロセスを示した概略図である。図2は、ヒトの血液を使ったIL−21の産生試験のグラフである。A〜Eの5人の無刺激(Control)とMRE飲料6%希釈液を添加した場合のIL−21の産生濃度を比較している。図3は、ヒトの血液を使ったIFN−αの産生試験のグラフである。A〜Dの4人の無刺激(Control)とMRE飲料6%希釈液を添加した場合のIFN−αの産生濃度を比較している。図4は、マクロファージ単独でのTNF−α産生試験のグラフである。無刺激(Contol)、LPS(エンドトキシン)とMRE6%希釈液をマクロファージに添加した場合のTNF−αの産生濃度を比較している。図5は、ヒトの血液を使ったIFN−γの産生試験のグラフである。A〜Dの4人の無刺激(Control)とMRE飲料6%希釈液を添加した場合のIFN−γの産生濃度を比較している。 上述したように、本発明によれば、MRE共生菌群の菌体分解で生じる低分子の免疫賦活物質を利用して自然免疫活性を含む免疫機能を効果的に増強させる免疫増強組成物を提供することができる。 ここで、前記MRE共生菌群は、バシラスsp.(Bacillus sp.)(FERM BP−11209)、リシニバシラス フシフォルミス(Lysinibacillus fusiformis)(FERM BP−11206)、バシラス ソノレンシス(Bacillus sonorensis)、リシニバシラスsp.(Lysinibacillus sp.)(FERM BP−11207)、及びコマモナスsp.(Comamonas sp.)(FERM BP−11208)から成るものであり、いずれも好気性の細菌類である。 また、本発明において使用される「低分子」とは、細胞膜を通過し細胞内部に影響を与えることができる分子量を持つ分子を意味するものである。 さらに詳しくは、本発明によれば、好気性グラム陽性菌群と好気性グラム陰性菌群とからなるMRE共生菌群をリソゾーム酵素群またはリソゾーム類似酵素群により菌体分解することによって、低分子ペプチド、糖鎖、糖脂質、低分子核酸分解物などを含む菌体分解生成物からなる細胞膜透過可能な低分子の免疫賦活物質を得ることができる。 この免疫賦活物質は、細胞膜を透過可能であるため細胞膜表面に存在するTLR受容体群ばかりでなく、エンドゾームや食包に存在する内部のTLR受容体群、そして細胞深部に存在する細菌感受性のNLR受容体群やウイルス感受性のRLR受容体などにも到達し、深みのある立体的なリガンド刺激を自然免疫応答細胞に与えることになる。 そして、このMRE共生菌群の菌体分解で得られた免疫賦活物質は、そのほぼ99%が親水性の分子量3,000以下の物質であり、MDP類似物質を含むオリゴペプチドやオリゴ糖鎖および一本鎖RNAなどの成分から構成され、いわゆるプロテアーゼなどの一般的な消化酵素では得られない細胞毒性のない低分子リガンド成分となっている。そのため、このMRE共生菌群から得られた免疫増強組成物は、生体内においてリガンドとして機能することができる。また、複数の混在した菌から得られたリガンドであるため多様であり自然免疫受容体は様々なパターンの認識刺激を同時に受けることになる。これが、MRE共生菌群から得られた低分子の免疫増強組成物の特徴である。 なお、以下に説明する本願発明に係る実施形態および実施例においては、上記のようなMRE共生菌群から得られた「免疫増強組成物」を、便宜上、「MRE複合リガンド」と呼ぶことがあるが、いずれも同意若しくは同義である。 また、本願発明において使用される「リガンド」とは、免疫受容体などに特異的に結合することで受容体の活性化を起こす物質をいい、複合リガンドとは、複数のリガンドの混合物または結合物をいうものとする。また、アジュバンドとして働くことも「リガンド」に含まれる。 本願発明に係るMRE複合リガンド(免疫増強組成物、以下同)は、細胞内外の自然免疫受容体を刺激してマクロファージ、樹状細胞、クッパー細胞、ミクログリア細胞、ランゲルハンス細胞、ナチュラルキラー細胞、ナチュラルキラーT細胞などの自然免疫系の免疫細胞のおよび粘膜や皮膚の上皮細胞、繊維芽細胞、腸管に存在するパ−ネット細胞などを活性化させることができる。 また、この活性化によりI型のインターフェロンが産生され、このインターフェロンの放出により近隣細胞から抗菌、抗ウイルス物質が一斉に産生される。 さらに、本願発明に係るMRE複合リガンドによる自然免疫系の免疫細胞の活性化によって、インターロイキンなどの物質が血液やリンパ液の中に分泌する。これにより、リンパ球であるT細胞を、抗菌力、抗ウイルス力、抗癌力を増強するTh1およびTH17という状態へ分化し活発化させることができる。 そして、これらの一連の免疫活性化プロセスに引き続き、炎症抑制、組織修復のプロセスを時系列的に推し進めることとなる。特に、本願発明に係るMRE複合リガンドは、TH17等から、自己免疫を抑制する機能を有するIL−21を産生することができる。 本発明は、このように、抗菌、抗ウイルス、抗癌、抗炎症効果とそれに引き続く自己免疫抑制効果を有する新規な低分子免疫賦活物質を有する免疫増強組成物を提供することができ、これにより、上述した本願発明に係る課題を解決するものである。 ここで、本発明を具体的に説明すると、本願発明は、上述したように、高濃度培養することなく菌体分解して十分な効果を発揮する優れた免疫賦活物質を生成するMRE共生菌群という新規の微生物共生菌群を発見し、それを利用した免疫増強組成物を提供するものである。そして、このMRE共生菌群は、好気性グラム陽性菌および好気性グラム陰性菌からなる5種類の菌から構成されている。これらの菌群は単なる自然に存在する菌の混合物ではなく、様々な土壌菌と海産物に付着した菌を長期間培養し続けた結果、当初の菌の激しい生存競争を経て、その競争の中で互いの役割分担を見出し、さらに菌の変異または進化に伴って安定的に変化し出現した個性的な5種類の菌から成る共生菌群である。 このMRE共生菌を構成する5種類の菌群は、好気性グラム陽性菌であるバシラスsp.(Bacillus sp.)(受託番号FERM BP−11209、識別番号MK−005)、リシニバシラス フシフォルミス(Lysinibacillus fusiformis)(受託番号FERM BP−11206、識別番号MK−001)、バシラス ソノレンシス(Bacillus sonorensis)(識別番号MK−004)、リシニバシラスsp.(Lysinibacillus sp.)(受託番号FERM BP−11207、識別番号MK−002)、及び好気性グラム陰性菌であるコマモナスsp.(Comamonas sp.)(受託番号FERM BP−11208、識別番号MK−003)から成るものである。 ここで、受託番号FERM BP−11206(平成20年3月19日に寄託された受託番号FERM P−21548より移管)、受託番号FERM BP−11207(平成20年3月19日に寄託された受託番号FERM P−21549より移管)、受託番号FERM BP−11208(平成20年3月19日に寄託された受託番号FERM P−21550より移管)、受託番号FERM BP−11209(平成21年2月2日に寄託された受託番号FERM P−21760より移管)は、独立法人産業総合技術研究所の生物寄託センターに寄託されている菌である。 続いて、本願発明における「共生菌群」の特徴について説明する。複数の菌を混合して培養すると周知のように一時的に不安定な状況が生まれる。発酵で利用される麹菌と酵母菌や枯草菌と他のバシラス菌のように栄養の棲み分けも起こるが、一方では激しい有機物の争奪戦やフリーラジカルによる互いの攻撃、そして富栄養価下でも一定の割合で起こる内胞子化に伴うバシラス菌によるペプチド型抗生物質による攻撃や近年解明された酵母菌による抗生物質(ペプチド)による反撃など激しい生存競争が繰り広げられる。そのような激しい生存競争の時期を経て、栄養に対する棲み分けや抗生物質に対する耐性の獲得そしてフリーラジカルの除去能力を持つ短鎖ペプチドや分子シャペロンの放出による酵素変性に対する防御などに加え、まったく異なる種の菌同士で互いの生存や成長を助ける低分子ヘプチドを交換しあうことまで知られている。最終的には、プラスミドを含む遺伝子の交換によって互いの能力を交換することで微生物群の全体の共存と安定性を図ろうとする。 また、本願発明に係るMRE共生菌群は、それらが生育可能な環境下であれば如何なる条件下においても生育されることができ、具体的には、分子生物学分野において通常用いられる培養条件で生育可能である。例えば、後述するように、培養曝気槽において、エアレーション(曝気)を行いつつ、魚粉10kg、米ぬか10kg、油カス5kg、肉汁1kgの栄養源に加え、さらに硫酸マグネシュウム等のミネラル等の存在下において、PH6.0〜6.8、培養温度25℃〜35℃、及び適度なエアレーションによって培養することができる。好ましくは、前記栄養源は、魚粉5kg、米ぬか5kg、油カス2.5kg、肉汁0.5kgである。なお、本願発明に係るMRE共生菌群の培養条件は、これらの設定条件に限定されるものではない。 本願発明に係るMRE共生菌群では、遺伝子交換を活発にする段階まで進行し、Bacillus sp.のように菌体融合に近い不思議な菌体にまで変異、進化している。 ここでMRE共生菌を構成する個々の菌について説明する。 MRE共生菌を構成するそれぞれの菌の16SrDNAは、次の通りである。 本願発明において、これらMRE共生菌の培養は、公知の好気性Bacillus菌と同じ方法で培養できる。一般的な寒天培地(Nutrient Aga)の培養プレートでも曝気した液体容器の中でも可能である。 [菌体分解の方法] ここで、本願発明に係るMRE共生菌群を菌体分解して、低分子のMRE複合リガンドを得る2つの方法を以下に説明する。 第一の方法は、MRE共生菌群をリソゾーム酵素群で分解して低分子複合リガンドを得る方法である。 第二の方法は、MRE共生菌群のスポア形成過程で出現する原始的なリソゾーム相同の母細胞融解酵素群で分解して低分子複合リガンドを得る方法である。 これらの方法を取る理由は、通常の消化酵素や普通のプロテアーゼなどの分解酵素では、細胞膜を透過するのに必要な分子量のリガンドが得られないためである。 これに対して、動物のリソゾームや植物の液胞や果実などで分泌される酵素群は、細胞の内のオルガネラや高分子物質を一括してバルクで低分子まで分解する能力を持っている。リソゾーム酵素群は、細胞内で老朽化したオルガネラを分解して若返らせるためのオートファジーや癌細胞やウイルス感染細胞がアポトーシスする最終段階で出現する酵素群で、特に細胞内に侵入してきた細菌をエンドゾーム内で分解する際に活躍することが知られている。 その相同酵素群は、動物、植物、微生物のオートファジーやアポトーシスの過程で顔を出すことが知られている。植物ではプロセシング酵素と呼ばれ、液胞ないまたは果実の形成過程で出現する酵素群でもある。これらの酵素群により菌体は細胞膜を透過できるほど小さい低分子に分解されることになる。 本願発明に係るリソゾーム酵素群としては、核酸分解酵素であるリボヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ等、コラーゲン分解酵素であるカテプシンL、アスパラギン酸プロテアーゼであるカテプシンD及びカテプシンE、システインプロテアーゼであるカテプシンK、カテプシンB、及びカテプシンS、セリンプロテアーゼであるカテプシンG、アミノペプチターゼであるカテプシンHなどの強力で多機能な能力をもつ蛋白質分解酵素、さらにアリールスルファターゼ、βグルクロシダーゼ、エステラーゼ、酸性フォスファターゼなどに加え、糖鎖分解酵素では、スフィンゴ脂質を分解するαガラクトシターゼ、βヘキソサミニダーゼAおよびB、アリルスルファダーゼA、ガラクトシトルセラミダーゼ、グルコシルセラミダーゼ、酸性スフィンゴミエリナーゼ、酸性セラミダ−ゼなど、糖蛋白を分解するαフコシダーゼ、αおよびβマンノシダーゼ、ノイラミニダーゼ、アスーパールチルグルコサミニダーゼ、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼなど、ムコ多糖類を分解するαイズロニダーゼ、イズロネート−スルファダーゼ、ヘパランNスルファターゼ、α−N−アセチルグルコサミニダーゼ、6スルファターゼ、ガラクトース6−スルファターゼ、βガラクトシターゼ、アリルスルファダーゼB、βグルクロニダーゼなど、並びに、酸性リパーゼのようなコレステリルエステルや脂肪分解の酵素、さらに、重要なものに病原性の原核微生物などの細胞壁を形成するペプチドグリカン層を分解するムラミターゼ、ムコペプチドヒドロラーゼなどを含む50以上の分解酵素を使用することができる。また、カテプシンKに類似した青パパイヤのリソゾーム相同分解酵素であるパパインなども利用可能である。 これらのリソゾーム酵素群は、弱酸性(PH6.3〜PH6.8)で働き、通常の消化酵素の活動が抑制される高温領域(38℃〜42℃)で活性を高める性質がある。さらに、その中には非常に分解力の高いものが多く通常の消化酵素の5,000倍から1万倍の分解力をもつものまで存在する。 本願発明に係るMRE共生菌群からMRE複合リガンドを得る第一の方法は、これらのリソゾーム酵素群の中から細胞壁分解酵素とカテプシン類および核酸分解酵素を組み合わせて使う方法である。 細胞壁分解酵素としては、ムラミターゼ、ムコペプチドヒドロラーゼなどが使用され、カテプシンとしては、カテプシンB、カテプシンD、カテプシンLおよびカテプシンKまたはハパインなどが、核酸分解酵素としては、リボヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼなどが使用される。これらの酵素は、DNAやプラスミドへの遺伝子組み込みによっても作ることが可能であるが、魚類(ウナギを含む)を無菌の状態で高温(38℃〜45℃)、湿潤な環境で自己分解させることで得ることもできる。ハパインなどの果実が熟されるときに産生されるリソゾーム酵素群を使用することによって得ることもできる。 しかし、この第一の方法は、様々な酵素のブレンド割合を変化させて菌体分解を調整できるという長所がある反面、現状では酵素が高価なうえ、扱いが難しく、特別な装置を必要とするものもあるので、コスト高になるという欠点がある。 MRE共生菌群から低分子複合リガンドを得る第二の方法は、スポア形成過程で放出される原始的な母細胞融解酵素をそのまま利用する方法である。酵素配合の割合は変えることはできないが、極めて低コストでの大量生産が可能で優れたリガンドが得られる。この方法は、MRE共生菌群のスポア化に伴って放出される母細胞融解酵素群を菌体分解に利用して低分子複合リガンドを得る方法である。 なお、本願発明において用いられる「母細胞融解酵素群」又は「母細胞融解酵素」とは、菌類細胞のスポア形成過程において産生されるリソゾーム相同酵素群のことを指すものである。 本願発明に係る低分子のMRE複合リガンドの製造は、第一段階ではMRE共生菌群を混合培養液に投入し、魚粉、米ぬか、油カス、肉汁などおよび硫酸マグネシュウムなどのミネラルを菌の栄養物として、培養PH6.0〜6.8、培養温度25℃〜35℃で、充分なエアレーション(曝気:溶存酸素濃度0.1mg/L〜1.0mg/L)を加えた培養条件下で培養する。MRE菌群の増殖と安定化を待って、一切の栄養を絶って飢餓状態下に置き、エアレーション(曝気)を続行すると窒素成分の枯渇をトリガーにスポア化(内胞子化)が起こる。この場合、スポア化する前の栄養細胞を別の曝気槽に移すとさらに品質の安定したものが得られる。このようにして、MRE共生菌の菌体を低分子まで分解することが可能になる。 本願発明に係る菌体分解の過程をさらに詳しく述べると、菌相互の共生関係を構築し、安定した菌の共生体の栄養細胞状態にある混合菌をその栄養細胞から分泌された消化酵素群を含むこの培養液と共に別の曝気培養槽に分別する。この曝気培養槽でシリカ以外の栄養を一切与えずエアレーションを続行する。共生状態にあるMRE菌群のオートファゴゾーム相同の母細胞融解が始まりリソゾーム相同の母細胞融解酵素群を放出しつつ菌の母細胞はバルク分解し消滅して行く。スポア化が完了したことを確認した上でエアレーション(酸素供給)を止めるとスポア(胞子)は一斉に沈殿を始め透明な上澄み液を得る。こうして得られた上澄み液を0.2μmのメンブランで加圧ろ過し残存スポアを除去した後、さらに0.02μmのフィルターで微小スポアや不純物を除去する。こうして、MRE共生菌体群のスポア形成の際の母細胞融解酵素群を利用することにより効果的な低分子のMRE複合リガンドを得ることができる。また、分別プロセスを工夫することで連続生産も可能になる。 このようにMRE共生菌では、高濃度生産しなくても十分に有効なMRE複合リガンドを得ることができるが、高濃度生産をすることもまた可能である。その場合、栄養細胞化とスポア化を繰り返すと、栄養細胞が複合リガンドを吸収してしまって効率が悪くなることと抗生物質の産生が増えるため、高密度培養した後に一気にスポア化することが大切である。スポア化に際してシリカの栄養を与えることでさらに効率よくなることはすでに公知である。 一気にスポア化したものは、抗生物質もほとんど含まれず検出限界以下となった。 このようにして得られた低分子複合リガンドは、次のような分子量分布を持つオリゴペプチド、一本鎖のRNA低分子分解物、オリゴ糖鎖や糖脂質、MDP(ムラミルジペプチド)類似物質およびフランジェリン分解物などが含まれている。 MRE複合リガンドの分子量分布を以下に示すと表2のようになる。 このように本発明のMRE複合リガンドは、その98%以上がオリゴペプチド、オリゴ糖鎖、オリゴレベルの核酸の他、オリゴ領域の糖ペプチドや糖脂質を含む1000以下の親水性の低分子物質で構成されている。このようにして得られた低分子複合リガンドは、エンドトキシンのような毒性を持たず、また、低分子であるので抗体による直接の攻撃を受けない。 また、MRE複合リガンドは、LPSやペプチドグリカンの存在を検出できるエンドトキシン検査によっても、検出限界以下との結果が出ており、LPSやペプチドグリカンが含まれていないことが証明されている。また、マクロファージやナチュラルキラー細胞などの活性試験をするために行う細胞障害試験でも浸透圧によって破壊される限界濃度まで細胞障害がないことが分かっている。また、うさぎを使用した急性毒性試験もクリアしている。 このように低分子化することで、毒性の極めて少ないリガンドが得られるというメリットのほかに、腸管からの吸収や粘膜からの吸収できるので、飲料として高効率に摂取できるという大切なメリットもある。親水性でかつ分子量がオリゴ領域なので理論的には皮膚からの吸収も可能である。 つぎに、本発明のMRE複合リガンドによる自然免疫活性とそれに続く一連の免疫プロセス活性を明らかにするために、ヒトのマクロファージを使用したDNAマイクロアレイによる網羅的なDNA動態解析とリアルタイムPCRによる確認試験を実施した。 また、ヒトの血液の免疫細胞群(マクロファージ、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、NK細胞、NKT細胞、T細胞群、B細胞群など)を分離して、MRE複合リガンドによる各サイトカインの産生量について抗体を利用して調べた。 使用したMRE複合リガンド含有原液は、MRE複合リガンド含有低分子成分を80μg/ml含有している。 予備試験として、TNF−αの産生量をリアルタイムPCRによって測定し、表3のように通常の90.46倍の産生という結果を得た。ここで、Medは無刺激を意味する。LPSpは、エンドトキシンで刺激の場合。MRE1/10はMRE複合リガンド含有原液を10倍希釈したもの、以下100倍希釈、1000倍希釈したものである。比較のためのLPSpの濃度は100ng/mlである。 このようにマクロファージ単独ではMRE複合リガンド含有原液の10倍希釈液による刺激によりTNF−αは、その産生量が平常の90.46倍に達し、比較のLSPsと比べても7.5倍産生している。このことはMRE複合リガンドが高いマクロファージ活性力があることを示している(図4参照)。 一方、TNF−αの産生力が高いからと言って、炎症を促進するということではないということに注意をする必要がある。この数値は、マクロファージ活性能力が高いことを示しているにすぎない。 なぜなら、生命は炎症を起こす物質を発現しながら同時に僅かに炎症を抑制する物質を出すというように、常にバランスを取りつつ波のように免疫プロセスを進行させていくことが今回の網羅的なDNA動態解析により浮かび上がってきた。 その一つの証拠に、表4に示すように、さまざまな免疫細胞を含むヒトの血液を使用したMRE複合リガンド含有原液による刺激ではTNF−αを産生することはなく、また、多くの臨床治験からも反対に抗炎症作用があることが確認されている。 このことは、免疫のプロセス全体を通じてリガンド効果やアジュバンド効果を評価する必要があり、単にあるリガンドによってあるサイトカインが産生したから効くという単純な理屈は通用しないことを示している。 MRE複合リガンドでは、自然免疫活性とそれに引き続く抗ウイルス、抗菌、抗炎症、組織修復という免疫プロセスを活性化させ生体を正常化させることができる。いわば、画期的リガンドまたはアジュバンドと言えるものである。 この自然免疫活性化からリンパ球免疫活性化、そして抗炎症、組織修復へのプロセスを時系列順にさらに詳細に説明することにする。 A.自然免疫受容体(TLR、NLR、RLR)の活性化 このMRE複合リガンドは、自然免疫の受容体であるTLR−2,TLR−7,TLR−8とNLR−2を含むNLR群が活性化させることが網羅的なDNA動態解析によって確認された。TLR−2は、細胞表面に存在する自然免疫の受容体で、グラム陽性菌のペプチドグリカン、リボテイコ酸、リボ蛋白質、ウイルスの糖蛋白、真菌の多糖類などを感知する。MRE複合リガンドでは、分子量1000以下のMDP様のペプチドグリカン分解物が作用している。 TLR−7とTLR−8は、両方とも細胞のエンドゾームに存在して、一本鎖RNAを感知する受容体であるとともに、菌やウイルスが菌体分解された低分子物質を感知する受容体でもある。本発明のMRE低分子複合リガンドでは、分子量1000以下の一本鎖RNAを検知していると思われる。そして、この事実は、本発明がRNAウイルスに対する高いアジュバント効果が期待できることを意味している。 また、NLR−2を含むNLRは、細胞内部に存在する原始的な受容体で、細菌やウイルスなどが低分子分解されたものを検知することができる。特に、NLR−2は、マクロファージや樹状細胞、ランゲルハンス細胞、クッパー細胞などのAPC(抗原提示細胞)に特異的に発現している受容体である。MRE低分子複合リガンドにより活性化されるこのNLR受容体群は、MDP類似物質などの低分子リガンド類を検知することができ、これもまたアジュバントとしても非常に有効な働きをすることが期待できると言える。 このように、本発明のMRE低分子複合リガンドは、細胞表面に存在する受容体、エンドゾームに存在する受容体、細胞内に存在する受容体と3つの自然免疫のセンサーによって立体的に感知されていることがわかる。 B.マクロファージ活性とナチュラルキラー細胞活性化 つぎに、MRE複合リガンドにより動物の自然免疫の主役であるマクロファージ活性とナチュラルキラー細胞活性および好中球遊走を誘発するマクロファージからのIL−8産生が確認された。好中球は自然免疫の食細胞の一つである。 ここでMRE複合リガンドのマクロファージの活性化試験のデータを見ると、無刺激の培養液ではNO産生能が0.446μMであるのに対し、MRE複合リガンド含有原液の10倍希釈液ではNO産生能24.059μMとなり、LPSpの0.1ng/ml液による18.712μMより大きい値となっている。 さらに重要なことに、表5に示すようにLPSでは濃度が上がると生存細胞数は低下するのに対し、MRE複合リガンドでは濃度が上がると生存細胞数が増加する点である。これはMRE複合リガンドとしての優れた点であり、アジュバンドとして利用するときにも免疫細胞の生存率を高めながら免疫増強するので有利であることを意味している。 このマクロファージの生存細胞試験は、マクロファージのプレート付着率をクリスタルバイオレットで染色し570nmの吸光度を用いて生存細胞数の指標として測定をした。 また、ナチュラルキラー細胞でも、後述するように、ヒトの血液を用いたMRE複合リガンド含有原液のNK活性化試験で、平均1.73倍(56.2/Very High)という結果を得ている。 C.自然免疫受容体刺激からそのパターンに従ったスウィッチングプロセス リガンドやアジュバンドがTLR、NLR、RLRなどの自然免疫受容体を刺激すると、細胞の活性化が誘導されると共にその多様なパターンに従って、「抗ウイルス物質産生プロセス」「炎症開始および遅延的炎症抑制プロセス(抗菌、抗癌、炎症修復プロセス)」「アポトーシスのプロセス」へと移行する3種類のプロセスへのスウィッチング(切り替え)が行われる。 本発明に係るMRE複合リガンドが対象において作用すると、前者2つのプロセスが進行し、「アポトーシスのプロセス」が阻止されていることが網羅的DNA動態解析であきらかになった。 「アポトーシスへのプロセス」は、FADDがアポトーシスのトリガーとなって、カスパーゼ8酵素やカスパーゼ10酵素が活性化し、実行部隊酵素であるカテプシンDやカテプシンBなどのアポトーシス分解酵素群を誘発する一連のアポトーシスを引き起こすプロセスである。 本願発明においては、アポトーシスを誘導する遺伝子群のAP1類の発現は通常レベルにあり、アポトーシスを抑制する遺伝子であるJUN(通常の6.77409倍)が発現し、アポトーシスを引き起こすチトクロームCがミトコンドリアから放出されないように防御している遺伝子SOD2(通常の8.99963倍)も発現してアポトーシスを阻止していることが確認された。 D.自然免疫受容体刺激からI型インターフェロンの産生へのプロセス 「抗ウイルス物質産生プロセス」は、自然免疫本来のプロセスの一つで、TLR3、TLR7、TLR8およびRGRなどの刺激により、TRAMおよびTRIFの発現が起こり、それに続いてIKKの活性、IRAK3、IRAK7などの活性というように一連のプロセス活性が伝搬してゆき、その結果I型のINF−α(現在13種類知られている)とINF−βが産生され細胞外に放出される。このプロセスは単細胞時代に作られた仕組みと考えられているが、ヒトなどではこれらのインターフェロンの放出によって上皮細胞や粘膜細胞など近隣細胞から抗ウイルス物質であるISG(数百種類知られている)を一斉に放出させる。 このプロセスは自然免疫本来の役割でもあり、刺激のパターンによって産生する抗ウイルス物質であるISGの組み合わせが異なってくることが知られている。例えばインフルエンザでは、IFIT1、G1P3、G1P2、OAS1、M1X1、IFIH1、IFIT3、RIG−I、GBP1、LAMP3、IRF7、ISGF3G、WARS、PSMBS、BTC、SOCS1、SERPING1などの抗ウイルス物質を放出して、ウイルスの変異に対処した抗ウイルス効果を発揮している。MRE複合リガンドでは、このプロセスの事前に活性化することにより、インフルエンザなどのウイルスを感染したときに即座に強力にI型インターフェロンを作り出すことが可能になり、抗ウイルス力を効果的に増強させる。つまりアジュバンド効果が極めて高いものとなる。 MRE複合リガンドによる自然免疫受容体刺激によって、ウイルスが存在しない状態で、実際にI型インターフェロンの産生が起こることを次のように確認した。 表6は、ウイルス感染のない状態でMRE複合リガンドによってI型インターフェロンの遺伝子の発現がどのくらい増加するかについて網羅的DNA動態解析を使って明らかにしたものである。 このように、MRE複合リガンドで、IFN−αとINF−βの有意な増加がみられている。 後述するように、採血した新鮮なヒトの血液を使ったMRE複合リガンドによるI型インターフェロン産生の測定でも、INF−αの産生量がさらに多くなっている(図3参照)。このようにMRE複合リガンドは、抗ウイルスのためのアジュバンドとしても副作用のない効果をもつと考えられる。 MRE複合リガンドによるマクロファージへの刺激により、表7のような抗菌物質の遺伝子が直接発現していた。 このプロセスは解明されていないが、Th17細胞を経ないで直接抗菌物質を放出されるプロセスも同様に活性化されると思われる。 これらのプロセスは、マクロファージの兄弟である樹状細胞、ミクログリア細胞、クッパー細胞、ランゲルハンス細胞、繊維化細胞の他、同じ自然免疫受容体を発現する上皮細胞やケラチノサイトおよび気管、消化管、尿管を含む各臓器に配置された自然免疫応答細胞の活性化も同様に起こることになる。 E.炎症開始および遅延的炎症抑制プロセス=抗菌、抗癌、炎症修復プロセスこのプロセスは、自然免疫の受容体刺激からT細胞を活性化させるインターロイキン類を産生するまでのプロセスで、つぎの2段階のプロセスからなっている。 第1段階のプロセスでは、TLR受容体の刺激によりMYD88、IRAK1、IRAK4活性化、TRAF6などのプロセスを経てNF−κBからI−κBを分離、NF−κBを活性化させる。 また、NLR受容体では、リガンドの刺激を受けたNLR受容体がペアになって、RICKがNLRのCARDを介して結合する。するとRICKにユビキチン化が起こり、TAK1やMEMOなどの複合体がさらに結合して、IKKβを活性化しNF−κBからI−κBを分離、NF−κBを活性化させる。 こうして活性化したNF−κBはAP−1と共にDNAに結合して働き、IL−1β、TNF−α、IL−8を含むケモカインなどを産生する。そして第1段階の終わりに、第2段階のトリガー(引き金)であるIκB−ζを産生することにより第2段階へ移行する。 第2段階のプロセスでは、DNA上で働くNF−κB、AP−1にIκB−ζが加わり、IL−12p40およびIL−6その他を産生し、Tリンパ球系の免疫を制御することになる。 表8は、ヒトマクロファージを使ってMRE複合リガンドで刺激した場合の網羅的DNA動態解析による第一段階プロセスの遺伝子発現の結果を示したものである。この結果は、リアルタイムPCR分析の結果とも一致しているものであった。 MRE複合リガンドによる第1段階活性化のプロセスでは、IL−1βとTNF−α、そしてIL−8を含むケモカインの産生が盛んに行われている瞬間を捉えたものであり、炎症プロセスに遅延して始まるNF−κBの働きを抑制する炎症抑制遺伝子群が活発化の勢いが増して、NF−κBの遺伝子発現が低下してきた状況を表している。 そして、TNA−αなどによる自らの細胞のアポトーシス誘導をブロックするためにJUNやSOD2が発現し、SOCS3によって自然免疫受容体からの必要以上の刺激を受けて炎症を過剰に進行させないようにしている。 この制御系がうまく機能しているために、過剰なNF−κBをユビキチン化してプロテアゾームで分解する働きのあるPDLIM2は稼働する必要はなく1.0721337と通常の値であった。 そして、この瞬間では第1段階から第2段階へ移行する鍵をにぎるIκB−ζが急激に上昇しているタイミングを捉えている。 遅延型炎症抑制 第1段階に遅延して炎症を抑える遅延型炎症抑制遺伝子群が発現する。これらの遺伝子群はNF−κBとAP−1の働きを抑制する。すなわち、炎症プロセスに遅延して炎症抑制プロセスが進行することが、今回のMRE複合リガンドによる解析で明らかになった。 ここで、表9に示すように、TNFAIP6はNF−κBを強く抑制する遺伝子でTNF−α産生を制御する強い抗炎症作用をもっていて37.0424倍という高い値で発現している。TNFAIP3もまた、NF−κBとAP−1の発現を抑制する遺伝子で、これも18.8308倍と高い値である。その他にJUN、SOD2、SOCS3が働いていることはすでに述べた通りである。 第2段階目のプロセスはI−κB−ζがトリガー(引き金)になって引き起こされる。NF−κBとAP−1は数多くすでに核酸と結合して働いているので、遅延炎症抑制遺伝子群が活発化しNF−κBとAP−1の新たな供給は減少していく。 新しく作り出されたIκB−ζがトリガーとなって、すでに核酸と結合しているNF−κBと結合し、同じくすでに核酸と結合しているAP−1と共にT細胞を制御する4つのグループのサイトカイン群を産生、分泌する。マクロファージなどでは、M1活性では、「IL−12p40」、「IL−6およびIL−23p19」をM2活性では「IL−4」、「TGF−βおよびIL−2」などのサイトカインを産生する。続いて、細胞内に常に作られているp35と結合して、IL−12p40はIL−12へ、IL−23p19はIL−23になる。 表10は、MRE複合リガンド刺激による第2段階開始の遺伝子発現の様子を現わしている。この解析の瞬間ではI−κB−ζトリガーが通常の20.0115倍と急増しており、NF−κBとAP−1はその産生が炎症抑制の遺伝子群の発現強化により低下している状態である。 しかし、発現を低下させているNF−κBやAP−1はすでに核酸(DNA)に結合しているので、IκB−ζの発現が急上昇することによりIL−6、IL−23p19、IL−12p40の産生を開始しており、通常の1.4倍〜1.8倍の値となっていて上昇し始めている。このことから分かるように、MRE複合リガンドでは、明らかにM1活性を発現している。このことは、MRE複合リガンドを使用した人の血液からのIL−23産生が通常の2.11倍になる後述する事実からも裏付けられている。 このように、MRE複合リガンドは、マクロファージとその兄弟であるミクログリア、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、クッパー細胞などをM1活性に導き、抗菌作用、抗ウイルス作用の効果を発揮する。また、アポトーシスした癌細胞の残骸に対する貪食活動を活発にさせる。 通常、M1活性による抗菌作用、抗ウイルス作用の結果、菌体やウイルスが低分子分解を受け除去されると、マクロファージのM1活性は菌やウイルスの低分子分解物をシグナルとしてM2活性へ切り替わると考えられている。M2活性は炎症を抑制し、繊維牙細胞を活性化して炎症などで破壊された組織を修復する後処理プロセスである。実施例をみると、このM2においてもMRE複合リガンドが重要な役割を果たしていることを示唆している。 また、後述する発見により、MRE複合リガンドは従来の抗菌、抗ウイルス作用、又は抗癌作用の発現をするM1活性のプロセスとは別に、アレルギー疾患や自己免疫疾患を含む炎症性疾患に対して抗炎症作用を持つプロセスを同時進行させるという優れた性質を持つことが明らかになった。 F.MRE複合リガンドによるT細胞の分化とその後のプロセス活性 活性化されたマクロファージやその兄弟から放出された4組のサイトカイン群は、図1に示すように、Th17、Treg、Th1、Th2というT細胞の4つの状態をコントロールする。 マクロファージのM1活性では、Th17およびTh1を誘導し、マクロファージのM2活性では、TregまたはTh2を誘導する。なお、本発明に係るMRE複合リガンドは、Th17とTregとを誘導し、Th1とTh2との誘導を抑制する性質を有するものであることが判明している。 自然免疫の受容体刺激による一連のフロセスを経て産生されたサイトカイン群の中のIL−12p40とIL−23p19は、細胞内に常在しているp35と結合して、それぞれIL−12とIL−23となる。 これら4組のサイトカイン群は、T細胞を次のようにコントロールする(図1参照)。 M1活性では、1) IL−12は、ナイーブT細胞(CD4)をTh1へ分化、活性化させる。2) IL−6はナイーブT細胞(CD4)をTh17へ分化させ、IL−23とIL−1βは、Th17を活性化させる。 M2活性では、3) IL−4は、ナイーブT細胞(CD4)をTh2へ分化、活性化させる。4) TGF−βは、ナイーブT細胞(CD4)をTregへ分化させ、IL−2はTregを活性化させる。 そして、M1活性に引き続くTh1とTh17のプロセスは抗菌、抗ウイルス、抗癌、アレルギー抑制などの働きがあり、M2活性に引き続くTh2はアレルギー反応のプロセスへ、Tregのプロセスには、炎症抑制と組織修復と自己免疫抑制(免疫寛容)の働きがある。 ここで、Th1は、IL−12による作用によりINFγを産生。マクロファージ、ナチュラルキラー細胞、ナチュラルキラーT細胞などの貪食作用や遊走性を活性化。NOなどのフリーラジカルを産生して細胞内殺菌力を強化。CD8−T細胞であるCTL(キラーT細胞)活性を高めて癌細胞やウイルス内在細胞を殺傷する細胞性免疫を増大することにより、細胞内に寄生する細菌やウイルスを排除するプロセスを誘導する。主に抗体に非依存的な抗菌、抗ウイルスプロセスである。細胞殺傷性自己免疫疾患や遅延型アレルギーを起こすプロセスでもある。 Th2は、IL−4、IL−13を産生し、CD4−T細胞を介してB細胞からIgE抗体を放出させる。IgEではマスト細胞や好塩基球からヒスタミンを分泌することにより寄生虫などの大型の生物を排除するために働いている。また、IL−5を産生することによって好酸球からEPOを放出し鼻づまりなどの遅延性のアレルギー疾患誘発することでも知られている。 Th17は、IL−1やIL−23の作用によりIL−17A、IL−17F、IL−22、IL−21などを産生。液性免疫を増大することにより、抗体産生を活発にして細胞外細菌や真菌を排除する。さらに、好中球の貪食作用を増進し、主に上皮細胞、好中球からディフェンシンなどの抗菌物質を放出させ、また、細胞外マトリックスの再構築を通して上皮バリアを強化する。最近IL−21の産生が確認され、新たなプロセスが解明されつつある(非特許文献3参照)。 Tregは、腸管免疫を特徴付けるものであり、TGF−βによって誘導され、IL−10を産生し、炎症抑制や免疫寛容を誘導するプロセスと考えられている。特に腸内細菌の多い腸管は、通常はリンパ球免疫が暴走しないようにTreg状態に保たれており、その防御力を粘膜の上皮細胞やパーネット細胞の自然免疫に委ねるとともに、バイエル板を通して分泌性の抗体であるIgAを腸管内に分泌させ腸内細菌をコントロールしている。また、Tregは、アレルギーを起こすTh1やIgEを分泌するB細胞、そして自己免疫疾患を起こすCTL(キラーT細胞)をアポトーシスまたは抑制することで、炎症を抑えることでも知られている。 MRE複合リガンドでは、マクロファージのM1活性のプロセスから引き続いて、前表の結果に示されているようにIL−23p19とIL−12p40が増加しIL−4は変化せずTGF−βはむしろ減少傾向にあることから、Th17とTh1を活性化し、Th2とTregは活性化しないことが示された。また、MRE複合リガンドが潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症を抑制することから、実際の腸管においてMRE複合リガンドによるTreg正常化のプロセスもまた炎症抑制や免疫寛容に寄与しているものと考えられる。 このことを明らかにするために、採取した人の血液を管理された条件下によりMRE複合リガンドで刺激して産生してきたIL−23の量を測定した結果を表11に示した。 MRE複合リガンド含有液によってIL−23の産生量は平均でも通常の1.92倍に増加しており、興味深い事実は高年齢になるほどIL−23が高い値になる傾向にある。従って、MRE複合リガンドはマクロファージなどのM1活性を増加させ、引き続きTh17およびTh1を活性化させることで、細胞性免疫と液性免疫を高め抗菌、抗ウイルス、抗癌効果を発揮する。このことは、実施例で示したものも含む臨床治験とも一致するものである。 新たな抗炎症プロセスの発見 さて他方、MRE複合リガンドがIL−1β、TNF−α、IL−8などの炎症性のサイトカインの遺伝子群を極めて強く活性化し、またTh17およびTh1のプロセスを活性化するにも関わらず、なぜかMRE複合リガンド含む飲料により顎炎や潰瘍性大腸炎やアトピーの炎症などが著しく改善されるかという分子生理学のデータと臨床上の所見との矛盾が生じた。 この矛盾を解決するために、発明者らは、DNAアレイを使用したマクロファージの網羅的DNA動態解析やヒトの血液を使ったサイトカイン産生の時系列推移に注目し鋭意検討した。その結果、MRE複合リガンドが従来のLPSなどのリガンドにはない新たな免疫プロセスを発現していることを確認した。その第一点は、MRE複合リガンドによるIL−18産生の抑制作用である。今回のDNA動態解析により、表12のようにMRE複合リガンドがIL−18産生を抑制していることが見出された。これは注目すべき発見であった。 IL−18は炎症性疾患に深く関わるサイトカインで、従来のLPSなどのM1リガンドの刺激で酵素であるカスパーゼ1を生成、このカスパーゼ1がIL−18の前駆物質を切断してIL−18を産生する。そして、IL−18はIL−12の存在下でTh1細胞やNK細胞に作用してINF−γ産生を強力に誘導する。なぜなら、IL−12がTh1細胞やNK細胞にIL−18のレセプターを増やすからである。また逆に、Th1細胞が産生するINF−γはマクロファージからのIL−12やIL−18の産生を促し、さらにそれがTh1細胞を刺激することで炎症を持続拡大するサイクルが形成されることになる。 このように、普通マクロファージのM1活性を起こすLPSのようなリガンドでは、IL−12とIL−18が共に上昇することになる。 しかし、MRE複合リガンドでは、IL−12やIL−23の産生を活発化しながら、IL−18産生を抑制するという事実があきらかになった。これを裏付ける事実として、カスパーゼ1を発現させる遺伝子のCASP1が通常の0.67590倍とMRE複合リガンドによって抑制されており、ヒトの血液を使用したIFN−γ産生試験でもこれを確認する結果が得られている(図5参照)。 さて、IL−18の特徴として、IL−12やIL−23とIL−18とが同時に過剰産生されると腸や肝臓で重篤な臓器障害や自己免疫疾患が起こることが知られている。また、逆にIL−2とIL−18の共存下では、IL−4やIL−13の産生が促進されTh2プロセスの活性化によるIgE産生が起こり、肥満細胞や好塩基球からヒスタミンが放出さる。続いて、IL−5が産生されると好酸球からEPOが放出され鼻閉などの炎症性疾患が引き起こされることになる。 また、IL−18は肥満細胞や好塩基球を単独で直接刺激して、IgEを介さず、ヒスタミンを放出したり、IL−4、IL−13産生を誘導したりすることも明らかにされている。 特に、IL−13は、気管支喘息や肺線維症を誘発するサイトカインとしても知られている(非特許文献4参照)。 さらに、Th1細胞にIL−18と本来Treg細胞を活性化するIL−2が作用すると、Th1細胞がスーパーTh1と呼ばれる細胞に変身して、本来Th2のサイトカインであるIL−13を放出して気管支喘息や肺線維症を引き起こす。黄色ぶどう球菌によるアトピー性皮膚炎も同様なメカニズムで増悪化が起こると考えられている(非特許文献6)。 このことは注目すべき事実である。なぜなら、IL−18は、トリガーとして、Th1細胞、Th2細胞、Th17細胞などを炎症と非炎症という2つの状態にスウィッチングさせていると考えられるからである。 IL−18の増加を伴う炎症促進型活性化プロセスにおいては、Th1細胞では自己免疫疾患を引き起こし、Th2細胞ではアレルギー疾患を引き起こす。IL−18の減少を伴う炎症抑制活性化プロセスでは細胞内抗菌作用、抗ウイルス作用、抗癌作用など細胞性免疫を増強させる。 Th2細胞では、IL−18の共存下でIL−4やIL−13などを産生しアレルギー疾患を誘発する。IL−18が少ない場合は腸管や乳腺からIgA分泌するように、分泌性の免疫プロセスが活性化する。 Treg細胞でも同様にIL−18というトリガーの出現で、IgEを伴わず、肥満細胞や好酸球を直接刺激してアレルギー症状を起こすことになる。Th17でもIL−18をトリガーとして炎症促進のプロセスと炎症抑制のプロセスへと分岐されると考えることができる。 Th17では、IL−18の増大で炎症性のIL−17AやIL−22が誘導され液性免疫のプロセスを活性化する。また、IL−17Aが過剰に産生されると炎症を盛んにして慢性関節炎、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、クローン病、乾癬などの自己免疫疾患を引き起こすことが知られている。IL−22は乾癬との関係が深くαディフェンシンであるhNP−3を過剰産生させる。 IL−18が減少すると炎症を抑制するIL−17FやIL−21が誘導され、IL−17Fが抗体産生やディフェンシン分泌を活発にするなど抗菌、抗ウイルス力を高める液性免疫プロセスを活性化する。特に、IL−17は好中球からHNP1〜2およびHNP4〜6などのαディフェンシンの産生を、上皮細胞からhBD1〜4のβディフェンシンの産生を促すことが知られている(非特許文献7参照)。 注目すべきMRE複合リガンドの働きの第二点目は、このIL−21の増加作用である。MRE複合リガンドは、炎症を引き起こすIL−18の産生を抑制することで、アレルギーや自己免疫疾患を含む炎症を抑制する効果が期待され、実際に炎症性の疾患での臨床治験結果と一致している。 さらに、後述するように、ヒトの血液を採血して測定したサイトカイン試験でもMRE複合リガンドによりIL−21が通常の2倍近く増加することが確認された(図2参照)。臨床的にもMRE複合リガンドを服用している非ホジキン型のリンパ種の患者(62歳女性)の血中のIL−21が著しく上昇しているのを偶然確認している。この患者の全身への転移癌は消失傾向にあり、元々のリンパ腫も縮小傾向にあることもまた確認された。 IL−21は、抗ウイルス物質の分泌やナチュラルキラー細胞を増殖させて抗癌作用を高めるサイトカインで(特許文献4および特許文献5参照。実施例8〜実施例13参照)、別に、自己免疫疾患を引き起こすT細胞とB細胞をアポトーシスさせる働きもあると報告されている(特許文献3参照)。 このIL−21については、マクロファージM1細胞からIL−12が放出され、そのIL−12が直接NKT細胞(ナチュラル、キラーT細胞)に作用して、IL−21を産生誘導するプロセスが存在することが知られている(特許文献2参照)。 しかし、MRE複合リガンドでは、IL−23の増加に伴いIL−21が増加し、かつIL−12やIFN−γを産生していないヒトの血液中でもIL−21が増加している場合もあることが確認されており、むしろIL−12からNKT細胞の活性化のルート以外のプロセスが主に働いていることが推測された(図2と図5参照)。また、上記の特許文献2の例では、大きな分子量の単体リガンドがTLRレセプターに作用することを利用しており、本発明が複合的な低分子リガンドを利用して細胞内部のNLRなどの自然免疫レセプターを含めた立体的に刺激する方法とはその原理を全く異なることが暗示された。 その新しい原理とは、最近、Th17活性によりTh17からIL−21が産生誘導されることが解明され(非特許文献3参照)、さらにそのIL−21がTh17細胞の分化を促しIL−1やIL−23の刺激などでIL−21を分泌するというサイクルを持つことも明らかになってきた(非特許文献8)。 このようにMRE複合リガンドは、主にTh17の非炎症活性によりIL−21を産生させると共に、補助的にIL−12を通したNKT細胞活性によるIL−21産生のルートも利用しているということができる。しかも、実際のヒトを含む脊椎動物では、MRE複合リガンド以外のリガンドの刺激を常に受けており、この2つのIL−21産生ルートも常に変化することになる。そのケースでは、MRE複合リガンドはアジュバンドとしての性格が強くなり、そのアジュバンドとしての優れた効果を発揮することとなる。 また、MRE複合リガンドでは、マクロファージが炎症を抑制するときに出現するカテプシンEの遺伝子も通常の1.2倍発現していた。 このように、MRE複合リガンドは、抗菌、抗ウイルス、抗癌の免疫プロセスへの活性を保ちながら、炎症を静めるという驚くべき働きをしている。これらの事実は、後に述べる臨床治験でも確認されている。 従来の炎症を静める医薬品であるステロイド剤や免疫抑制剤は抗菌力を低下させるという重大な欠陥があった。また、抗生物質はウイルスに効かず、また、恐ろしい耐性菌を作るという欠点やアナフィラキシーという呼吸困難などを伴う副作用もあった。MREリガンドは、これらの欠点を持たず抗菌、抗ウイルスにも抗炎症にも同時に効果のある画期的な免疫活性剤となっている。 さらに、組織修復を促すサイトカインの一つFGF2も通常の2.525倍発現しており、組織損傷を早期に回復させる力もありこれも臨床治験と一致している。 本発明のMRE複合リガンドは、以上のように、マクロファージ、ミクログリア、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、クッパー細胞、上皮細胞、ケラチノイド、繊維化細胞などを含む細胞内外の自然免疫受容体を立体的にM1活性化することにより、ディフェンシンやISGなどの抗菌、抗ウイルス物質を分泌させると共に、NK細胞、NKT細胞も活性化して癌細胞やウイルス内在細胞をアポトーシスさせる。それに引き続き、NF−κBのプロセスを2段階に活性化してIL−1β、TNF−α、IL−8を含むケモカインを分泌すると同時に複数の炎症抑制物質やミトコンドリアSODを産生してTNF−αなどによる細胞損傷を阻止。さらにIL−6、IL−12やIL−23などのTリンパ球のサイトカインを産生、ナイーブT細胞をTh17細胞およびTh1細胞に分化、活性化させる。また、MRE複合リガンドは様々な炎症疾患の引き金になるIL−18を抑制して、Th17活性とTh1活性をスイッチングして非炎症性プロセスへと誘導する。Th17は、このスイッチングによってIL−21およびIL−17Fを産生。さらにこのIL−21がナイーブT細胞を非炎症性Th17へ分化するサイクルが働く。IL−17Fは、炎症を伴わずに液性免疫プロセスが活性化して抗体産生を高めるほか、直接自然免疫の抗菌物質であるディフェンシンや抗ウイルス物質などを分泌して、抗菌、抗ウイルス力効果を発揮する。さらに、IL−12の放出により、IFN−γの産生を経ずにNKT細胞からIL−21を産生させる。これらのIL−21は、直接NK細胞の活性を増大させ抗癌作用を発揮するほか、自己免疫疾患を引き起こすT細胞やB細胞をアポトーシスさせて、自己免疫を抑制する。さらに、マクロファージのM1活性から、M2活性へと誘導され組織修復が行われるプロセスを経る経過を辿り、抗菌作用、抗癌作用、抗ウイルス作用、アレルギー抑制、抗炎症作用、組織修復作用、自己免疫抑制の作用が進行する。また、マクロファージ活性は、その食作用も活発化し、血液やリンパ液そして組織体液中の老廃物、異物の除去を促進する。 アジュバンドとしての有用性 なお、本発明の炎症を抑制するリガンドという特性は、様々なワクチンの炎症性の副作用を低減するという性質をもった優れたアジュバントとしての利用を可能にする。MRE複合リガンドをアジュバンドとして組み合わせて用いるワクチンには、インフルエンザ、ワクチンやペスト菌のワクチンなどの抗ウイルス、抗菌ワクチンの他、新世代のLPS、ペプチドグリカン、リポアラビノマンナン、ザイモザン、リポペプチド、リポテイコ酸、RSV F タンパク質、ファイブロネクチンEDAドメイン、HSP60、フラジェリン、非メチル化CpG DNA、二本鎖RNA、ポリイノシンポリシチジン酸、イミダゾキノリン系化合物、βグルカン、丸山ワクチン、マイコバクテリウムボビス、及びOK−432などのTLRリガンドおよびそれと結合したウイルスを含む菌体成分のワクチンも含まれる。 キノコや薬草の分解物とのブレンド MRE複合リガンドは、他の免疫リガンドや免疫アジュバンドとブレンドして使用可能である。特に、糖鎖系の免疫活性成分とは相性がよく、霊芝、夏虫冬草、白樺茸、キチンキトサン、ヒメマッタケなどの糖鎖成分を含有するものを分子量8000以下に分解してMRE複合リガンドに加えると49%〜60%のマクロファージ活性(生存数とNO産生)の増加が見られた。これは、MRE複合リガンドが優れたアジュバンドとして機能し得ることを示している。 癌をアポトーシス誘導する成分を含む原料との併用 紅豆杉、レスベラトロール、ケルセチンなどの癌のアポトーシスを復活させる物質との併用による癌治療法も極めて有効である。 リアルタイムPCRとDNAマイクロアレイ なお、DNAマイクロアレイによるDNA動態解析は、バイオマトリックス研究所のHuman Gene 1.0 ST Arrayで行った。 リアルタイムPCRは、次のような条件下で実施した。 1.被験液に用いる細胞は、ヒト末梢血単球由来のTHP−1細胞(ECACC No88081201)を非動化した牛胎児血清とアンピシリンナトリウムに抗生物質の硫酸カナマイシンを添加してRPMI1640培地にて培養し、細胞濃度を2×E6個/mlに調整して使用した。2.細胞刺激は、細胞懸濁液を1.5mlずつ事前調整した6穴プレートの各ウェルに加え被検液とし、陰性対照と陽性対照のウェルを決めて、陽性対照ウェルに調整した刺激サンプルを添加し、よく振り混ぜた後、37℃の5%炭酸ガスインキュベータに移し3時間培養を行った。3.トータルRNAの抽出は、TRIzolの手順に従って抽出、調整した。各サンプルについて26Gの注射針を付けた1mlのシリンジを使い10ストローク液を出し入れしてDNAの切断を行い、調整後4℃で14000rpmの遠心分離を15分間行いRNAを分離抽出した。4.このRNAを精製した後、アガロースゲル電気泳動法で品質評価を行った。5.精製RNAから残存DNAを除去するためにDNAseI処理を行い、cDNAの合成をした。6.cDNAの合成には、Transcriptor First cDNA synthesis Kitを用いて、そのマニュアルに従って合成した。7.この合成したcDNAを鋳型にして、リアルタイムPCRを実施してデータを得た。DNAマイクロアレイには、この手順によって得られたRNAを使用し、網羅的な遺伝子発現を解析した。 このように本発明のMRE複合リガンドは、自然免疫およびそれに引き続くリンパ球系の後天免疫のプロセスを活性化させると共に、炎症を抑制して組織修復力を高める働きを持っている。そのため本発明のMRE複合リガンドは、抗菌作用、抗癌作用、抗ウイルス作用、抗炎症作用、組織修復作用、老廃物除去作用を持っている。 先に述べたように、本発明のMRE複合リガンドが強力な自然免疫活性力を持つLPS(エンドトキシン)の7.54倍もの刺激力があることがリアルタイムPCRによるTNF−α産生試験で明らかにされた。同時に、数々の抗炎症成分の出現とミトコンドリアSODの産生で、血液中ではTNAαは増加せず細胞障害を起こさないことも明らかにされた。そして、MRE複合リガンドがLPSのように細胞毒性がないという優れた特性をもつことも確認された。LPSでは、その濃度を増すに従ってマクロファージの生存数が減少するのに対し、MRE複合リガンドの濃度が増すとマクロファージの生存数が増すという事実が示された。 本発明のMRE複合リガンドは、極性の低いほとんど電荷を持たないオリゴレベルの低分子リガンドなので、細胞壁を容易に通過することが可能で、細胞表面に発現しているTRL受容体だけでなく、細胞内のエンドゾームに発現しているや細胞質に存在するNLR受容体やRLR受容体をも立体的かつ複合的に刺激、活性化することができる。このような低分子のリガンドは腸壁から容易に吸収することが可能であり、また、抗体の攻撃を受けないので有効成分を精製した上で静脈注射用としても使用可能である。この性質は、濃度が増すと細胞を保護し細胞生存を増す性質と共に他のリガンドにないという優れた特性と相乗効果をもたらすものである。 さて、このような特性を持つ本発明のMRE複合リガンドによる多様で動的な免疫活性効果を説明することにする。 マクロファージ活性 表13および表14は、[実施例1]で作られたMRE複合リガンド含有原液を希釈し、ヒトのマクロファージに作用させて、そのNO産生量とマクロファージの生存細胞数を測定したものである。 この測定結果を見るとMRE複合リガンド含有原液のNO産生はLPSのNO産生よりも多い値を示し、特に300倍希釈では、2.19倍もNO産生が高くなっている。一方、MRE複合リガンド含有原液ではNO値が増加しているにも関わらず、MRE複合リガンド含有原液のマクロファージ生存細胞指標は増加しており、LPSでは減少しているのと逆の傾向を示している。ここでは数値を示さなかったが浸透圧限界までMRE複合リガンド含有原液の濃度を増加させても細胞障害が起こらなかったことを付記する。つまり、MRE複合リガンドは、細胞障害を起こさず、むしろマクロファージの生存率を高めるマクロファージ活性効果がある免疫活性剤であると言えるものである。 抗菌効果 最初にMRE複合リガンド含有原液に直接の殺菌作用がないことを大腸菌、緑膿菌、黄色ぶどう球菌、カンジダ、クロコウジカビを使用した発育阻止確認試験で確認した。したがって、MRE複合リガンド含有原液には抗生物質を含む殺菌物質は一切含まれておらず、臨床治験で見られる抗菌効果はすべて免疫力によるものだと言うことができる。 また、本発明に係るMRE複合リガンドによる抗菌効果は、以下のようにまとめることができる。すなわち、1つ目は、マクロファージの貪食作用増強による抗菌効果であり、2つ目は、マクロファージ、上皮細胞、ケラチノイドなどからのディフェンシンを含む抗菌物質の放出による抗菌効果である。具体的にはマクロファージから抗菌物質であるPTX3が通常の7.27倍の放出されていることが確認された。 また、3つ目は、Th17活性を経由した好中球の貪食活性の増強による抗菌効果であり、貪食された菌は好中球のアズール顆粒に存在するα−ディフェンシンであるHNP1〜6により殺菌される。αディフェンシンは溶血性など細胞障害を起こすので専ら好中球の内部で利用される。 さらに、4つ目として、Th17細胞から産生されるIL−17Fの作用によって、上皮細胞やケラチノイドからβディフェンシンであるhBD1〜4が分泌されることが挙げられる。また、炎症性のIL−22はケラチノイドからhBD3を分泌させて抗菌するが、乾癬ではIL−22とhBD3が過剰分泌されている。MRE複合リガンドはIL−22を抑制する効果はないので、乾癬を治癒することはできないし、臨床治験とも一致している。 そして、5つ目は、Th17の活性化を通してCD4液性免疫プロセスが活性化しB細胞からIgGが、粘膜上皮細胞からIgAが分泌され抗菌効果をもたらす点である。このTh17を活性化するのがIL−23とIL−1であり、MRE複合リガンド含有原液による活性化ではIL−1Bが通常の47.64倍、IL−1Aが通常の6.30倍の遺伝子発現をしており、またIL−23Aが通常の1.78倍(上昇中の値)の遺伝子発現をしている。採決されたヒトの血液を使ったIL−23の産生試験でも平均で通常の1.92倍の分泌が確認されている(表11参照)。 抗ウイルス効果 MRE複合リガンドによるHIV疾患やHCV疾患でのウイルスの不活性化には注目に値するものがある。 MRE複合リガンドによる抗ウイルスプロセスには、次のプロセスがある。 1つ目は、自然免疫受容体であるTLR3、TLR7、TLR9およびRIG1、MAD5がMRE複合リガンドなどによって刺激されてINF−αやINF−βなどを直接放出するプロセスである。マクロファージ、ミクログリアなどからは、INF−αが、上皮細胞、繊維芽細胞、ケラチノイド、骨芽細胞などからINF−βが主に放出される。これらINF−αとINF−βは、INF受容体を持つ近隣の細胞に感知され、ISGなどの抗ウイルス物質を一斉に放出して抗ウイルス効果を発揮する。 MRE複合リガンドでは、マクロファージのインターフェロン遺伝子の発現は表15のようであった。 MRE複合リガンドの自然免疫受容体刺激により、直接IFN−α5が通常の1.6倍、IFN−α6が通常の1.2倍、そしてINF−βが通常の1.4倍発現している。IFN−λはNK細胞を活性化するインターフェロンでウイルス感染細胞を攻撃する能力を高める働きをする。 このことは、MRE複合リガンドで採血したヒトの血液を刺激して測ったI型IFN−α産生によっても裏付けられた。 表16で示されたように、平均で通常の2.89倍ものIFN−αを実際に産生しているのが分かる。 これらは、あくまでもリガンドとしての値であり、実際にウイルス感染があった場合には、MRE複合リガンドはアジュバンドとして働き、さらに高いINF−α値を得ることになる。 2つ目は、IL−21を通したI型のIFN産生である。MRE複合リガンドでは、非炎症性Th17のプロセスを活性化し、IL−21を産生する。このIL−21はNK細胞を活性化すると共に、上皮細胞、繊維芽細胞、ケラチノサイト、マクロファージなどからI型のIFN産生を促し、IFN−αやIFN−βはさらに多くの細胞から抗ウイルス物質を放出させる働きをする。 3つ目は、MRE複合リガンドがTh17からIL−17Fを産生し液性免疫のプロセスを活性化するアジュバンドとして働き、実際にウイルス感染があった場合にウイルスに対する抗体産生を増強する役割を果たす。 4つ目には、ナチュラルキラー細胞(NK)、ナチュラルキラーT細胞(NKT)、そして細胞障害性T細胞(CTL)によるウイルス感染細胞の排除である。MRE複合リガンドでは、表18のようにナチュラルキラー細胞の活性化をする。また、MRE複合リガンドはTh12プロセスを活性化することからCTLを含む細胞性免疫を高めウイルス感染細胞や癌細胞を排除するプロセスも活性化するがメインではない。 5つ目には、1990年代にオリゴペプチドによるウイルスの不活性化が発見されており、MRE複合リガンドにはオリゴペプチドが90%以上占めているため、このプロセスが働いていることを否定できない。 このように、MRE複合リガンドは、5つのプロセスの活性化により優れた抗ウイルス効果をもつこととなる。 ここで、本願発明において、「ウイルス」とは、ヒト免疫不全ウイルス、C型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、ヒトパピロ−マウイルス、ヒトヘルペスウイルス、B型肝炎ウイルスを始め、魚類以上の脊椎動物が感染するDNA型およびRNA型ウイルスを含むものとする。 抗癌効果 癌細胞は、一般に前癌細胞のアポトーシス障害によって癌化する。その原因が、フリーラジカルによる癌抑制遺伝子の損傷が原因でも、子宮頚癌のようにHPVによるP53分解促進によるものでも、膵臓癌のようにストレスなどのHSP(ヒ−トショック蛋白質)によるアポトーシス阻害の場合でも、常にアポトーシス障害があって癌化が引き起こされる。 紅豆杉やケフレチンやレスベラトロールのように不死化した癌細胞を再びアポトーシス機能を回復させる物質も存在するが、免疫プロセスでは細胞障害性のCD8+T細胞(CTL)およびNKT細胞、そしてNK細胞が癌細胞や癌ウイルス感染細胞に接着し、パーフォリンで細胞に穴を開け、グランザイムで癌細胞をアポトーシスへ誘導することによって抗癌効果を発揮する。 一方、TNF−αも、ミトコンドリアからチトクロームCを放出させカスパーゼ8を活性化させて癌細胞をアポトーシス誘導するプロセスを活性化させる。しかしTNF−αは、一般の細胞への障害性も高く、HIV発症の引き金にもなる物質として知られている。またCTLは、IL−12によって活性化されたTh1プロセスにより細胞性免疫が強められてCTLを活性化させる。しかし、このCTLはC型肝炎ウイルスやHIVに感染した細胞を破壊して肝炎やHIVを発症させ、細胞障害性の自己免疫疾患も引き起こす。MRE複合リガンドの抗癌効果は、主にナチュラルキラー細胞(NK細胞)によって行われ、それにCTL細胞やNKT細胞が加わり抗癌効果を高める。 NK細胞は、MRE複合リガンドにより次のプロセスを経て活性化され抗癌効果を発揮する。 1つ目は、自然免疫受容体の刺激により、I型のインターフェロンを産生させ直接NK細胞を活性化するプロセスで早期に効果が現れるプロセスである。 MRE複合リガンドでは、表17のようにNK細胞を強く活性化することで知られているINF−λ(IL−28A)が通常の1.84倍も遺伝子発現しており、INF−α、INF−βと共に抗癌効果を高めている。 また、肺や肝臓に癌細胞を転移されるケモカインのCXVR4は通常の0.67倍と抑制され癌の転移を抑えている。 2つ目は、MRE複合リガンドによる非炎症性Th17プロセスを通じたIL−21産生によるNK細胞の活性化による抗癌効果である。 3つ目は、IL−12から直接NKT細胞に作用してIL−21を産生し、NK細胞を活性化するプロセスである。 4つ目は、IL−12によりTh1プロセスを活性化してINFγを産生。CTLを活性化して抗癌効果を高めるプロセスである。このようにMRE複合リガンドでは、3つのプロセスからNK細胞を活性化できる。 表18は、NK細胞の癌細胞殺傷能力を比較試験したものである。リガンドを一切添加しないの場合と実施例1で作られたMRE複合リガンド含有原液を希釈した液を添加した場合を比較している。 NK細胞の癌細胞殺傷能力試験の方法と手順は次の通りである。 採血後30時間以内の全血を試験に使用した。Ficoll−Conray比重遠心法によりPMBCを分離後、RPMI 1640(10%FBS含有)にて洗浄しEffector cellとした。これを以下の4条件でPBMC 4.0×106cells/ml、24時間培養した(5%CO2、37℃)。 なお、MRE複合リガンド含有原液添加濃度は、MRE複合リガンド含有原液の1日摂取目安量100mlおよび標準的なヒトの血液量4,500mlから、MRE発酵原液が血中に100%吸収された場合の濃度6.66%(v/v)を基準として濃度設定した。(1)Control(=添加なし)(2)MRE複合リガンド含有原液 添加(培養時濃度0.06%(v/v))(3)MRE複合リガンド含有原液 添加(培養時濃度0.60%(v/v))(4)MRE複合リガンド含有原液 添加(培養時濃度6.00%(v/v)) 培養後、Eu3+により標識した骨髄性白血病由来K562細胞をTarget cellとしてEffector cellと混合し、4時間培養した(5%CO2、37℃)。このときEffector cellとTarget cellの混合比率はE/T=40:1で混合した。4時間培養後、各ウェル中に遊離したEu3+量を時間分解蛍光測定により測定し、NK細胞の癌細胞殺傷能力活性を算出した。得られた数値は、癌細胞であるK562細胞の何%をNK細胞が殺傷したかを表している。 活性評価の判定は、51以上がVery High、42〜51がHigh、24〜42がStandard、14〜24がLow、14以下がVery Lowとなっている。 このように、MRE複合リガンドは、NK細胞を多様なルートで活性化することができ、癌をVery Highのレベルでアポトーシスに導くことができる。 しかも、アポトーシスの残骸は、速やかにマクロファージが貪食し、抗癌剤や放射線照射のように癌細胞をネクローシスさせることがないので、炎症や悪液体質を引き起こさずに癌は自然に縮小してゆくのが見られる。 MRE複合リガンドは、静脈注射により犬の肝臓癌(実施例8参照)、飲料による非ホジキンリンパ癌(実施例13参照)、腎臓癌の透析患者で良い結果が得られている(実施例31参照)。この結果は、IL−21投与の臨床結果とほぼ一致している(特許文献4)。また、ウイルス性の癌の前癌症状であるポリープの消失も観察された。 そして、MRE複合リガンドでは、炎症を伴わず癌細胞を縮小させる制癌効果をもつことが明らかとなった。 ここで、癌とは、ガン腫、肉腫、腫瘍、上皮腫、白血病、リンパ腫、ポリープ、および硬性ガン、悪性転換、新生物など「正常でない細胞」が含まれるものとする。なぜなら、NK細胞は、「正常性」を逸脱した細胞のみを選んで排除する自然免疫細胞だからである(非特許文献5)。 抗炎症効果 MRE複合リガンドは、抗菌作用、抗ウイルス作用、抗癌作用という働きを維持しながら、同時に抗炎症作用、組織修復作用という働きを持つという他のリガンドにはない優れた性質をもっている。抗炎症作用は、MRE複合リガンドの注目すべき性質でもある。 また、本願発明に係るMRE複合リガンドは、次のプロセスによって炎症を抑制している。 1つ目は、一貫した免疫活性プロセスをパルス状に活性化するために、活性化とそれに遅延した抑制化が時間差でパルス状に進行し、生命体としてのバランスと恒常性を保っていることが分かる。TLR、NLR、RLRの刺激からNF−κBとAP−1の活性化を経て、IL1B(47.641)とTNFA(21.182)およびIL−8(20.431)の遺伝子発現が最大になると、プロセスの第2段階目の「引き金」となるNFKBIZ(20.011)の遺伝子発現が盛んになり、次の産生物であるIL−6(1.405)、IL−12B(1.837)、IL−23A(1.784)などを産生し始める。それと同時に、第1段階目のNF−κBを強く抑制するTNFAIP6(37.142)とTNFAIP3(18.830)の遺伝子発現が著しく増大し、遊離NF−κBをブロックして不活化するNFKBIA(8.425)、NFKBID(2.101)、IKBKE(1.447)などの遺伝子が発現、NF−κBの遺伝子であるNFKB1(2.794)とNFKB2(2.534)の発現が低下していく、というように進行していく(カッコ内は、通常と比べた遺伝発現倍率)。このようにMRE複合リガンドによるプロセスでは、不必要な炎症は抑制されていく。慢性炎症では、この抑制過程が働かなくなる状態と考えられる。MRE複合リガンドによって炎症性疾患が回復するのが見られるが、このプロセスの正常化も貢献していると考えられている。 2つ目は、MRE複合リガンドによる炎症性疾患のトリガー(引き金)であるIL−18の産生を抑制する。IL−18産生の減少によって、非炎症性のTh17プロセス、非炎症性のTh1プロセス、非炎症性のTh2プロセスが活性化する。 MRE複合リガンドでは、非炎症性のTh17プロセスと非炎症性のTh1プロセス活性化される。Th17からは、非炎症性の液性免疫を活性化させるIL−17FとNK細胞を活性化させるIL−21が分泌される。Th1からは、INF−γが産生され細胞性免疫を高める。そして、双方のプロセスとも抗菌力および抗ウイルス力を保持しながらIL−18の抑制によって自己免疫やアレルギー疾患を含む炎症性疾患を鎮める働きをする。 3つ目は、IL−21産生によるアレルギー疾患および自己免疫疾患の沈静化である。次表に、MRE複合リガンドによるヒトの血液からのIL−21試験の結果を示した。 NK細胞のIL−21産生試験の方法と手順は次の通りである。 採血後30時間以内の全血を試験に使用した。Ficoll−Conray比重遠心法によりPMBCを分離後、RPMI1640(10%FBS含有)にて洗浄しEffector cellとした。これを下記の条件でPBMC4.0×106cells/ml、24時間培養した(5%CO2、37℃)。なお、MRE複合リガンド含有原液添加濃度は、MRE複合リガンド含有原液の1日摂取目安量100mlおよび標準的なヒトの血液量4,500mlから、MRE複合リガンド含有原液が血中に100%吸収された場合の濃度6.66%(v/v)を基準として濃度設定した。 こうして得たPBMCに対し、以下の条件でMRE複合リガンド含有原液のIL−21産生に与える影響を評価した。(A)Control(添加なし)PBMC 1.0×106cells/ml、PHAP−10μg/ml、24時間培養(5%CO2、37℃)(B)MRE複合リガンド含有原液添加PBMC 1.0×106cells/ml、PHAP−10μg/ml、MRE複合リガンド含有原液6.00%(v/v)、24時間培養(5%CO2、37℃) 表19のように、MRE複合リガンド含有液によってIL−21の産生量は平均でも通常の2.11倍に増加しており、注目すべきは元々IL−21が低レベルにしか発現していないヒトの方が著しい増加をしている傾向にあることが分かる。 IL−21は、抗ウイルス成分の分泌やナチュラルキラー細胞を増殖させて抗癌作用を高めるサイトカインで、また、アレルギーや自己免疫疾患を引き起こすT細胞とB細胞をアポトーシスさせる働きもあることが知られている。 MRE複合リガンドでは、このようにヒトの血液中で実際にIL−21を著しく上昇することが確認され、臨床治験でも実施例15〜実施例20のようにその抗炎効果をはっきりと裏付けている。 また、前述の表4でも、炎症性サイトカインであるTNF−αの濃度が、ヒトの血中で、リガンドなどの刺激のない状態で平均232.8ng/mlであるものが、MRE複合リガンドによる刺激を与えても平均221.8 ng/ml と微減少している。この結果は、単独のマクロファージにMRE複合リガンドによる同レベルの刺激で、通常の37.042倍遺伝子発現している(図4参照)ことと比較して考えるとき、その炎症抑制効果は明らかである。 このようなMRE複合リガンドによるIL−21産生誘導作用は、種々の免疫疾患、例えば、アレルギー性疾患(特にアレルギー性喘息、花粉症、アトピー性皮膚炎、湿疹、食物過敏症、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎等などのIgE調節アレルギー性疾患(I型アレルギー反応が関与する疾患))、自己免疫疾患(慢性関節リウマチ、クローン病、全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎、多発性軟骨炎、結節性動脈周囲炎、強直性脊椎炎、リウマチ熱、シェーグレン症候群、ベーチェット病、甲状腺炎、I型糖尿病、皮膚筋炎、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、グレーブス病、多発性硬化症、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性血液疾患(溶血性貧血、真性赤血球性貧血、特発性血小板減少症、再生不良性貧血等)、乾癬、糸球体腎炎、ループス腎炎、ウェゲナー肉芽腫症、サルコイドーシス、橋本病、川崎病、膠原病)、移植による拒絶、炎症状態(関節及び筋肉における炎症及び疼痛(慢性関節リウマチ、リウマチ様骨髄炎、骨関節症、尿酸性関節炎等)、皮膚の炎症性状態(湿疹等)、眼の炎症性状(結膜炎等)、炎症を伴う肺の障害(喘息、気管支炎等)、炎症を伴う消化器の状態(アフタ性潰瘍、クローン病、萎縮性胃炎、いぼ状胃炎、潰瘍性大腸炎、脂肪便症、限局性回腸炎、過敏性腸症候群等)、歯肉炎、(手術又は障害後の炎症、疼痛、腫脹)、炎症に関連した発熱や疼痛、炎症性慢性腎状態(糸球体腎炎、ループス腎炎、膜性腎炎等)、ぶどう膜炎、接触皮膚炎等)、ショック(敗血性ショック、アナフィラキシー性ショック、成人型呼吸窮迫性症候群等)、癌(肺癌、胃癌、結腸癌、肝癌、ホジキン症等)、ウイルス疾患(肝炎等)等の予防、治療に有用であることを示している。 組織修復作用 一般的にマクロファージのM1(GM)からM2(M)への転換によって、炎症抗菌状態から炎症抑制、組織修復へと働きが切り替わるプロセスにより組織修復が行われると考えられている。 この転換は何によってもたらされるかはいまだ解明されていない。しかし、現実には細菌やウイルスの侵入によりディフェンシンなどの抗菌物質や抗ウイルス物質そして補体が放出され殺菌、さらに好中球、マクロファージなどの食細胞が貪食して処理する初期段階。その防御網が突破され、好中球が破壊されると、好中球内のリソゾーム酵素群が放出され炎症が始まる。細菌の破片を感受した樹状細胞、マクロファージ、上皮細胞から非常時をしらせる炎症性サイトカイン群が分泌される。さらに細菌の数が多いと免疫細胞が動員され組織的な炎症へと進展していく。炎症部位では、局所的に温度を上げPHを酸性側にすることで細菌やウイルスの活動を低下させると同時にリソゾーム酵素を含む非常時の酵素群が活動しやすい環境をつくる。これが炎症の段階のプロセスである。 侵入した細菌を破壊尽くすと破壊した細菌の断片はリソゾーム酵素により低分子化され、その一部がマクロファージや樹状細胞および血管内皮細胞などの抗原提示能力のある細胞(APC)のLHA受容体(動物ではMHC受容体)で感知されその情報は記憶T細胞と記憶B細胞に格納される。他の一部は、マクロファージの自然免疫系のTLR受容体、NLR受容体、RLR受容体で感知され、その抗菌完了のリガンドのパターンを認識してマクロファージはM1状態からM2状態へ切り替えをして、IL−10およびIL−2を放出するとともに、組織修復を促すFGFを産生して線維芽細胞や骨芽細胞などを活性化する。その際に低分子リガンドが抗菌完了パターンのシグナルになるとも言われている。 MRE複合リガンドは、まさに菌体をリソゾームで低分子分解して得られたものであり、組織修復効果を期待できた。そして、マイクロアレイによるDNA動態分析で、組織修復を促すサイトカインの一つFGF2が通常の2.525倍発現しているのを見いだした。臨床治験でもMRE複合リガンドの組織修復作用を確認できた(実施例25〜実施例29参照)。 老廃物除去作用 マクロファージのM1活性化は、マクロファージの貪食活動も活性化する。このため血液やリンパ球および組織の中で、死んだ細胞や異物および酸化LDLのような酸化毒素を貪食分解して、その残渣を胆汁の中に捨てる体内浄化の働きをしている。M1活性化をするMRE複合リガンドには、マクロファージの活性化を通じて老廃物除去作用をもたらす効果がある。 このようにMRE複合リガンドは、抗炎症作用と抗菌作用、抗ウイルス作用、抗癌作用を同時に持つという優れた性質をもっている。しかも、オリゴ領域の低分子であるがゆえに腸から粘膜からも容易に吸収される。さらに、飲料としても外用剤としてもまた精製することで注射剤としても利用可能である。 本願発明に係るMRE複合リガンドの働きは、全体として、リンパ球免疫を抑制して、自然免疫を増強する性質を持つということができる。 また、本発明に係る免疫増強組成物は、ヒト及びイヌ等を含む哺乳動物に投与されることによって、上述したような様々な自然免疫刺激効果を発揮するものである。また、この場合、投与の方法は、本発明に係る免疫増強組成物がその機能を発揮し得るような状態で投与されるものであれば、医学又は医療分野で通常行われている如何なる投与方法であっても良い。例えば、経腸的または経口的に投与されることができ、または非経口的に行われるものであっても良い。非経口的に行われる投与方法としては、血管内投与、組織周囲および組織内注射、皮下注射等が挙げられ、皮膚や粘膜に直接塗布されても良い。また、点眼投与、点鼻投与、経皮的投与、粘膜投与されることもできる。 また、本願発明に係る免疫増強組成物は、その機能を発揮し得るような態様であれば、医学又は医療分野、若しくは分子生物学分野において通常用いられる如何なる剤形によっても投与されることができる。例えば、本願発明に係る免疫増強組成物は、液体の組成物として投与されることができるが、この場合、原液であっても、希釈液であっても良い。 次に、本発明の効果に関して実施例を示して説明する。しかし、本発明は以下に記載された実施例に限定されるものではなく、様々な変更及び修飾は当業者によって容易になされることが理解されるであろう。 MRE複合リガンドの製造 [実施例1/MRE共生菌群の培養と内胞子化によるMRE複合リガンド含有原液の作成] 本発明で利用されるMRE複合リガンド含有原液は、MRE共生菌群の栄養細胞から分泌された消化酵素群と内胞子化(スポア化)に伴って放出されるリソゾーム酵素相同のバルク型酵素群との混合された酵素群によって、MRE共生菌群の自身の菌体を低分子領域まで分解して作られる。 MRE菌群の培養は、好気性グラム陽性菌の公知の一般的な培養方法で培養した。まず1.2m3の培養曝気槽に1000リットルの水を入れエアレーション(曝気)を行った。その培養曝気槽に魚粉10kg、米ぬか10kg、油カス5kg、肉汁1kgを栄養物として与え、さらに硫酸マグネシュウムとシリカなどのミネラルを適量加えた。さらに菌体を投入し、培養PH6.0〜6.8および培養温度25℃〜35℃の培養条件下で、かつ溶存酸素濃度0.5mg/L〜1.2mg/Lになるようにエアレーション(曝気)を加えながらMRE共生菌培養した。 菌の十分な増殖と安定化を待って栄養細胞状態にあるMRE菌群をその培養液と共に別の曝気式の培養槽に分別する。この培養曝気槽でMRE菌群の一切の栄養を絶って飢餓状態下に置き、さらに25℃〜35℃の条件下でエアレーションを加え続けると窒素成分の枯渇オートリガーにMRE共生菌群の内胞子化が始まる。培養液の透明度が一気に増すのを待ってエアレーション(酸素供給)を止めると、内胞子は一斉に沈殿を始め透明な上澄み液を得る。 こうして得られた上澄み液をさらに0.2ミクロンのメンブレンで加圧ろ過し、低分子のMRE複合リガンド含有原液を得る。このMRE複合リガンド含有原液には、3.6mg/mlの有機成分が存在し、その中にMRE複合リガンド成分を80μg/ml含有している。なお、本願明細書において、上述のようにして得た「MRE複合リガンド含有原液」を「MRE原液」と呼び、特別に言及する場合を除いて、「MRE複合リガンドの希釈」と表現される場合には、「MRE複合リガンド含有原液の希釈」又は「MRE原液の希釈」を指すものである。 臨床治験例 抗ウイルス効果 [実施例2/エイズ(HIV)] 売血によって約800人の半数以上がHIVに感染したアジアの農村で、発症した20人を選び医薬品は一切使用せず本発明の飲料1日200mlを1カ月飲んでもらった。飲料を飲んだ3人と飲まないでエイズ薬を使用した1人について、CD4陽性T細胞の全T細胞に対する割合(CD4+/CD3)および血液1ml当たりのCD4陽性T細胞数をフローサイトメトリー法で測定し表20のような結果を得た。 本発明の飲料を飲用した20名全員が1年後には仕事を含めて元気に日常生活を送っている。副作用の報告は一つもない。 [実施例3/C型肝炎(HCV)] 男性48歳。C型肝炎で、インターフェロンとリバビリンの治療をしてもウイルス量が28,000/ml、ALT(GPT)が621、AST(GOT)が586とあまり下がらず、MRE飲料を飲用し始める。ウルソに加えて50mlを1日3回飲用する。3か月経てウイルス量をPCRで測定し、12800/mlに下がっていた。ALT(GPT)が48、AST(GOT)が52と著しく改善されていた。 [実施例4/子宮頸がん(HPV)] 女性50歳。子宮頸部のウイルス感染発症(子宮頚癌の原因ウイルスHPV)。MRE混合リガンド飲料30mlを1日2回(朝晩)摂取。2か月後の検査でクラス3aからクラス2aへ改善された。 [実施例5/かぜを引きやすい体質] 女児6歳。病弱でよく風邪を引く。時折38.5度以上の高熱が続くこともあった。MRE飲料1日2回20mlを飲み続けて3か月、風邪を引かなくなった。 [実施例6/いぼ(HPV)] 男性71歳。手の指にイボができ仕事に支障をきたしていた。MRE飲料50ml毎日2飲み続けて6か月でイボが目立たなくなるほど縮小していった。イボは、HPV(ヒト・パピローマ・ウイルス)が原因と言われている。 [実施例7/帯状疱疹] 女性60歳。MRE複合リガンド飲料30mlを1日2回摂取と共に患部へ塗布。1〜2日で改善した。ヘルペスや帯状疱疹には飲用と同時に塗布すると治りが速い。 抗菌効果 [実施例8/慢性感染] 女性58歳。全身の菌感染(日和見感染)により疲れてくると足の甲、足首、くるぶし、手の親指などと毎回異なった個所が腫れて炎症を起こす。リューマチ因子はマイナスで、抗生物質を服用すると治るということを繰り返してきた。そのうち抗生物質が効かなくなり、MRE飲料を試しに1日50mlを2回飲ようになった。その結果、月1〜3回発症していたものが、約半年に1回の発症で済んでいる。増加していた血小板も減少してきた。 [実施例9/辱創] 女性80歳。床擦れで化膿する。MRE飲料を辱創部分にスプレーした後、ガーゼに浸して湿布した。化膿が治まり始め、1か月後には辱創が小さくなり、傷口から発生する臭いも軽減した。 抗癌効果 [実施例10/肝臓癌] 12歳オスの高齢犬。肝癌で水も餌も取れなくなり、ベターっと動けない状態になっていた。治療の方法がないので、試しにMRE飲料を約15ml静脈に注射した。3日目に起き上がり水を飲み始めたので、水にMRE飲料100mlを加えて飲ませたところ餌も食べ始めそのまま元気になる。動物病院の医師からも癌は縮小したようだ完治ですと言われる。 [実施例11/肝臓癌] 13歳オスの高齢雑種犬。山口県の大学の獣医学部にて、「肝臓に悪性腫瘍がいくつもできており手の施しようがない。」と診断された。手術もできない状態なので、毎日MRE飲料を水に薄めて飲ませた。1週間後、大学で再診、癌が大きくなっていないとの診断を受ける。その後、犬が積極的にMRE飲料を飲み始め日増しに元気を回復し、1か月後には家の中を走り回るようになった。3か月後のレントゲン検診では、癌が縮小して小さくなっていた。外出の散歩も食事も通常に戻って元気に飛び跳ねている。 [実施例12/肝臓癌] 女性75歳。肝臓癌と糖尿病を併発、インシュリン注射を使用。MRE飲料50mlを1日2回飲む。2か月ほどで、癌細胞が縮小し、インシュリン注射前の血糖値が低下してきた。 [実施例13/肝機能改善] 男性42歳。肝機能検査で、ALT(GPT)の値が64。MREリガンド飲料30mlを1日2回摂取。1か月後の検査でALT値58、2か月後の検査でALT値が33と正常になる。 [実施例14/前立腺癌] 男性61歳。血液のPSA値3000μg/mlを越える末期の前立腺癌。骨転移寸前の状態で口からの吐血がある。手術は不能で、抗アンドロゲン作用のあるカソデックスと4週間に1度女性ホルモン剤のリュープリンを皮下注射する。一時、PSA値は1にまで下降したが、また再燃する。そこで、カソデックスを効果の高いオダインに変更する。しかし、オダインは重篤な肝障害を起こす恐れがある。血液検査でPSAは0.92であったが、AST(GOT)が56(正常値11〜30)で、ALT(GPT)が196(正常値4〜30)に上昇。これ以上この状態が続くと苦痛を伴う抗癌剤に移行するため、MRE飲料を1日250ml毎日飲み続けた。その結果、PSA値もAST、ALT値もすべて正常に保つことができた。ビールや煙草を飲みながら週に1〜2回テニスを楽しむことができるようになった。 [実施例15/胃癌] 男性70歳。肝臓癌から胃に転移して腫瘍が大きくなる。そのため食事が取れなくなる。点滴による治療と共に、MRE飲料30mlを1日2回服用。1〜2か月すると、胃と肝臓の腫瘍が縮小し始め、4か月目には食事ができるようになった。5カ月目の検査ではほとんど消滅しているように見えた。 [実施例16/大腸癌] 男性69歳。大腸癌で入院。MREリガンド飲料80mlを1日2回摂取。飲用後、腫瘍マーカーが下がりだし、1カ月後腫瘍自体も小さくなる。摘出手術を行ったがリンパなどへの転移はない。 [実施例17/膵臓癌] 男性66歳。膵臓癌で抗癌剤治療をしている。また、糖尿病でインシュリンも注射している。MREリガンド飲料1日30mlを摂取していて数カ月たつが体調がとてもよい。 [実施例18/直腸癌] 女性78歳。人工肛門装着。家族は医師から不治の宣告を受ける。MREリガンド飲料を初日2本(1800ml)、2日目1本(900ml)、3日目1本(900ml)を飲む。その後の検査で、骨まで転移していた癌も含めて消失していた。 [実施例19/肺癌] 男性76歳。肺癌から骨に転移して抗癌剤のTS−1を服用。当初は効果があり回復を期待したが、その後効果が薄れてきた。痛み・便秘が激しくホスピスで麻薬・便秘薬による治療を行う。MREリガンド飲料30mlを1日3回摂取。3週間後の検診で肺癌が消失(骨には残存)。仕事に復帰できた。 [実施例20/悪性リンパ腫] 女性62歳。ステージ4の非ホジキンリンパ腫で、全身に転移し、耳の下のあごの部分にゴム毬のような腫瘍を形成。抗癌剤など一切の医薬品治療をせず、ドクタ−の管理のもとに、ビタミンCの大量静注、と共にMRE飲料50mlを1日2回飲用する。3か月後、血中のIL−21が著しく上昇し、転移した転移癌が縮小を始め耳の下のあごの部分の腫瘍も柔らかくなってきた。 抗炎症効果 [実施例21/顎の関節炎] 男性64歳。右側の顎関節の炎症で1か月ほど口が開けられない状態となる。虫歯が原因ではないかと歯の治療をしたが、まったく治らず。MRE飲料1日100mlを飲みはじめた。翌日には顎の熱が引き、痛みが軽くなり、3日後には口を開けることが可能になり普通に食事ができるほど回復した。約1週間後には正常に戻った。 [実施例22/蕁麻疹] 女性31歳。原因不明の蕁麻疹様の発疹が全身に毎日のように出る。MRE飲料を50ml飲んでもらう。飲むと1時間ほどでかゆみが軽くなり我慢できる程度になった。翌日、また発疹したので1日2回飲んでもらうことにした。1か月過ぎる頃には、蕁麻疹様の発疹が出なくなった。 [実施例23/蕁麻疹] 女性54歳。500円玉くらいの大きさの蕁麻疹が飲用2日で小指大に小さくなり、引っ込むのに1週間くらいかかっていたのが2〜3日で引っ込み、肌がつるつるしてきた。 [実施例24/潰瘍性大腸炎] 女性49歳。潰瘍性大腸炎で定期的に入退院を繰り返す。ペンタサとサラソーピリンなどの副作用のためかなりひどい蕁麻疹様の薬疹を併発するためステロイド剤を使用する。本発明のMRE飲料を1日200ml飲み始め、約1か月後に薬疹が起こらなくなる。その後、通院と投薬を中止。MRE飲料を飲み始めてから約10か月目の内視鏡検査での炎症所見が見られなくなった。その後、食事療法とMRE飲料を継続。整腸剤以外の投薬を一切せずに潰瘍性大腸炎の症状は起きていない。 [実施例25/アトピー性皮膚炎] 女性31歳。顔を含めて全身各所の皮膚に腫れと痒みを伴うアトピー様の炎症で苦しむ。MRE飲料を化粧水のようにスプレーすると腫れと痒みが一時的にかなり軽減することを見出した。MRE飲料30mlを1日2回飲用すると2か月ほどで湿疹が出にくくなってきた。 [実施例26/スズメ蜂] 男性65歳。スズメ蜂に刺されたので、急いでMRE飲料を頭にかけたら、腫れることなく回復した。 [実施例27/ムカデ] 男性28歳。ムカデに足を刺されて4か月経っても腫れが引かず靴下のゴム跡が食い込むようにくっきりと残っていた。MRE飲料1日1回30mlを飲用したところ、10日目から腫れが引いてきた。まだ、うっかりして飲むのを忘れると腫れが出て、飲むと腫れが引く状態にある。 [実施例28/アレルギー性鼻炎] 女性15歳。アレルギー性鼻炎。MRE飲料30mlを1日2回飲用。3週間で症状が改善した。 糖尿病と高血圧 [実施例29/糖尿病] 男性56歳。糖尿病で空腹時血糖値が152〜396の範囲を変動し回復せず、A1Cが8.6を超える値となった。MRE飲料を1日180ml飲み始めて、1か月目に空腹時血糖値が134でA1C7.6に下がる。2か月目には空腹時血糖値が90でA1C7.3、3か月目には空腹時血糖値が89でA1C5.8、4か月目には空腹時血糖値が91でA1C5.0となり正常値になった。 [実施例30/糖尿病] 男性68歳。父親も兄も糖尿病で死亡。本人は、インシュリンを打つ寸前まで悪化。MRE飲料を1年近く飲み続け、医師より糖尿病は良くなっていると言われ、薬を止めることができた。それ以後、血糖値が高いと言われたことはなく、本人は毎日酒を2合飲んで快調と言っている。 [実施例31/高血圧] 男性70歳。最高血圧160、最低血圧98であったが、MRE飲料30mlを1日2回飲用。1か月後に、最高血圧140台、最低血圧80台に下がった。 [実施例32/高血圧] 男性72歳。血圧160−90。MREリガンド飲料50mlを1日2回飲用。1ヵ月後に血圧が130−80。3cmくらいあったシミも小さくなる。 組織修復効果(骨折と傷の回復) [実施例33/手術跡の創傷] 男性61歳。腹部の手術をしたが、糖尿病があるため抜糸するまでに少なくとも6か月掛かかると言われた。MRE飲料1日1回50mlを飲用。1週間で抜糸できた。 [実施例34/靭帯損傷] 男性42歳。左膝の靭帯損傷でリハビリを行っても「歩行は可能だけれども走るのは困難」と診断された。5年経ても走ったり無理をしたりすると左足の痛みが起こる状態が治らず。MRE飲料を飲み始めて2週間後、自転車を長時間運転しても左足の痛みを感じなくなっているのに気が付く。試しに走ってみたら僅か5mだが走ることができた。その後もMRE飲料を飲み続けて10m、20mと走る距離を伸ばすことができた。1週間飲用を中止したら長時間の自転車運転に痛みを感じ、走っても違和感を覚えた。5キロマラソンを目標に走る距離を伸ばす努力をしている。 [実施例35/骨折] 女性88歳。骨折で医師から繋がるまで半年かかると言われた。MRE飲料を飲用したところ、1か月で骨が繋がった。 [実施例36/足の低温火傷] 女性73歳。ひどい足の低温火傷で1カ月治療しても肉芽が上がらず回復せず。MRE飲料30mlを1日2回飲用。1週間で肉芽が上がり始めた。 [実施例37/にきび跡] 女性61歳。高校生のとき「にきび」を潰して鼻に凸凹の「にきび跡」ができる。MRE飲料を1日50ml飲む。約2ヵ月目に「にきび跡」が小さくなりはじめ、6か月目には完全ではないがかなり縮小して皮膚の凸凹が目立たなくなってきた。全体の皮膚の肌理も細かくなった。 [実施例38/手術後の飛蚊症] 男性51歳。網膜剥離の手術後飛蚊症になった。MRE飲料を1日50ml飲用したところ2週間で改善が見られ、血圧も150以上あつたものが130を越えることがなくなった。 [実施例39/腎機能改善] 男性51歳。腎臓透析をしている患者。 表21に示すように、MRE飲料を飲用する以前にはBUN値にあまり変動がなかったのが、飲用後コントロール値以内の値ではあるが、MRE飲料を飲み始めて徐々に低下してきた。なによりも元気が出てきたと喜んでいる。MRE飲料を服用して3か月目の透析後の値が正常値になってきたことに注意。 詳細なデータは得られていないが、他に、MRE飲料を飲用している腎臓透析患者が2人いる。一人は自力で尿が少しでるようになってきた。2人とも元気になり農作業や職場へ復帰している。 健常者への試験飲用例 [実施例40/健常者への試験飲用] MRE飲料を試験飲用した健康な72人にアンケートを実施した。72人中の58人が尿の出が良くなったと記述している。また、72人中41人がかぜを引かなくなったと感じている。肌に艶が出てきた人は72人中68人に上った。薬草などで便秘になる人を含めて、副作用らしいものは見当たらなかった。むしろ便秘がよくなったという人が12人いた。 その他、本発明は、さまざまに変形可能であることは言うまでもなく、上述した一実施形態に限定されず、発明の要旨を変更しない範囲で種々変形可能である。 自然免疫を刺激することによって対象が有する免疫を増強させる免疫増強組成物であって、 バシラスsp.(Bacillus sp.)(FERM BP−11209)、リシニバシラス フシフォルミス(Lysinibacillus fusiformis)(FERM BP−11206)、バシラス ソノレンシス(Bacillus sonorensis)、リシニバシラスsp.(Lysinibacillus sp.)(FERM BP−11207)、及びコマモナスsp.(Comamonas sp.)(FERM BP−11208)から成るMRE共生菌群を分解することによって生じる免疫賦活物質を有効成分として有するものであり、 前記免疫賦活物質は、前記MRE共生菌群を生育に適した培養条件下で培養し、得られた培養液を飢餓状態におくことにより当該共生菌群を内胞子化させ、さらに前記培養液から当該内胞子化された共生菌群を含む不純物を除去することによって得られるものであることを特徴とする、免疫増強組成物。 請求項1記載の免疫増強組成物において、 前記免疫賦活物質は、少なくともその98重量%以上が、平均分子量1,000Da以下の親水性低分子物質である ことを特徴とする、免疫増強組成物。 請求項1記載の免疫増強組成物において、 前記免疫賦活物質は、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞、又はナチュラルキラーT細胞を活性化させるものである ことを特徴とする、免疫増強組成物。 請求項1記載の免疫増強組成物において、 前記免疫賦活物質は、樹状細胞、ミクログリア細胞、ランゲルハンス細胞、又はクッパー細胞を活性化させるものである ことを特徴とする、免疫増強組成物。 請求項1記載の免疫増強組成物において、 前記免疫賦活物質は、上皮細胞、繊維芽細胞、ケラチノサイト、又は骨芽細胞を活性化させるものである ことを特徴とする、免疫増強組成物。 請求項1記載の免疫増強組成物において、 前記免疫賦活物質は、Th17又はTh1を分化又は活性化させるものである ことを特徴とする、免疫増強組成物。 請求項1記載の免疫増強組成物において、 前記免疫賦活物質は、IL−21産生を増強させるものである ことを特徴とする、免疫増強組成物。 請求項1記載の免疫増強組成物において、この免疫増強組成物は、 アレルギー疾患又は自己免疫疾患に罹患した対象における抗炎症剤として使用されるものである ことを特徴とする、免疫増強組成物。 請求項8記載の免疫増強組成物において、 前記アレルギー疾患又は自己免疫疾患は、顎関節炎、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎からなる群から選択されるものである ことを特徴とする、免疫増強組成物。 請求項1記載の免疫増強組成物において、この免疫増強組成物は、 病原性細菌又は病原性ウイルスに対するワクチンのアジュバンドとして使用されるものである ことを特徴とする、免疫増強組成物。 請求項10記載の免疫増強組成物において、 前記病原性細菌又は病原性ウイルスは、日和見感染菌、HIV、HCV、及びHPVからなる群から選択されるものである ことを特徴とする、免疫増強組成物。 請求項1記載の免疫増強組成物において、この免疫増強組成物は、 肝臓癌、前立腺癌、大腸癌、直腸癌、肺癌、膵臓癌、胃癌、悪性リンパ腫、糖尿病、高血圧、創傷、靭帯損傷、骨折、低温火傷、ニキビ、飛蚊症、辱創、蕁麻疹からなる群から選択される疾患に罹患した対象を治療又は予防するための医薬又は動物薬として使用されるものである ことを特徴とする、免疫増強組成物。 請求項1記載の免疫増強組成物において、この免疫増強組成物は、 食品若しくは飼料として用いられるものである ことを特徴とする、免疫増強組成物。 自然免疫を刺激することによって対象が有する免疫を増強させる免疫増強組成物を製造する方法であって、 バシラスsp.(Bacillus sp.)(FERM BP−11209)、リシニバシラス フシフォルミス(Lysinibacillus fusiformis)(FERM BP−11206)、バシラス ソノレンシス(Bacillus sonorensis)、リシニバシラスsp.(Lysinibacillus sp.)(FERM BP−11207)、及びコマモナスsp.(Comamonas sp.)(FERM BP−11208)から成るMRE共生菌群を用意して培養する工程と、 前記用意された共生菌群を分解する工程と、 前記菌類を培養した培養液から不純物を除去する工程と を有するものであり、 前記分解する工程は、前記用意された共生菌群を生育に適した培養条件下で培養し、得られた培養液を飢餓状態におくことにより当該共生菌群を内胞子化させることによって行われるものである ことを特徴とする、方法。 自然免疫に関連する疾患に罹患した哺乳動物を治療若しくは当該疾患を予防する薬剤を製造するための、免疫増強組成物の使用であって、 前記免疫増強組成物は、バシラスsp.(Bacillus sp.)(FERM BP−11209)、リシニバシラス フシフォルミス(Lysinibacillus fusiformis)(FERM BP−11206)、バシラス ソノレンシス(Bacillus sonorensis)、リシニバシラスsp.(Lysinibacillus sp.)(FERM BP−11207)、及びコマモナスsp.(Comamonas sp.)(FERM BP−11208)から成るMRE共生菌群を分解することによって生じる免疫賦活物質を有効成分として治療上有効な量で有するものであり、 前記免疫賦活物質は、前記MRE共生菌群を生育に適した培養条件下で培養し、得られた培養液を飢餓状態におくことにより当該共生菌群を内胞子化させ、さらに前記培養液から当該内胞子化された共生菌群を含む不純物を除去することによって得られるものである ことを特徴とする、使用。 請求項15記載の使用において、 前記哺乳動物はヒトである ことを特徴とする、使用。 請求項15記載の使用において、 前記薬剤は経口的に投与されるものである ことを特徴とする、使用。 請求項15記載の使用において、 前記薬剤は非経口的に投与されるものである ことを特徴とする、使用。 請求項18記載の使用において、 前記薬剤は、血管内投与、組織周囲および組織内注射、皮下注射、点眼投与、点鼻投与、経皮的投与、粘膜投与から選択される非経口的投与によって投与されるものである ことを特徴とする、使用。 請求項15記載の使用において、 前記自然免疫に関連する疾患は、顎関節炎、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎を含むアレルギー疾患又は自己免疫疾患、日和見感染菌、HIV、HCV、及びHPVを含む病原性細菌又は病原性ウイルス関連疾患、肝臓癌、前立腺癌、大腸癌、直腸癌、肺癌、膵臓癌、胃癌、悪性リンパ腫、糖尿病、高血圧、創傷、靭帯損傷、骨折、低温火傷、ニキビ、飛蚊症、辱創、蕁麻疹からなる群から選択されるものである ことを特徴とする、使用。


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