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タイトル:特許公報(B2)_高濃度抗体含有溶液製剤
出願番号:2009548102
年次:2012
IPC分類:A61K 39/395,A61K 9/08,A61K 47/18,A61P 43/00


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森近 俊行 亀岡 大介 今枝 好美 前田 照利 シュタオヒ,オリバー・ボリス JP 4937358 特許公報(B2) 20120302 2009548102 20081226 高濃度抗体含有溶液製剤 中外製薬株式会社 000003311 エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー 591003013 F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT 小野 新次郎 100140109 小林 泰 100075270 千葉 昭男 100080137 富田 博行 100096013 中濱 明子 100135415 森近 俊行 亀岡 大介 今枝 好美 前田 照利 シュタオヒ,オリバー・ボリス JP 2007336310 20071227 20120523 A61K 39/395 20060101AFI20120426BHJP A61K 9/08 20060101ALI20120426BHJP A61K 47/18 20060101ALI20120426BHJP A61P 43/00 20060101ALI20120426BHJP JPA61K39/395 NA61K9/08A61K47/18A61P43/00 105 A61K 39/395 A61K 9/08 A61K 47/18 A61P 43/00 CAplus(STN) 特表2005−527503(JP,A) 特表2007−511566(JP,A) 特開2007−204498(JP,A) 国際公開第02/013860(WO,A1) 2 JP2008073798 20081226 WO2009084659 20090709 18 20110107 馬場 亮人 本発明は抗体含有製剤に関し、特に安定な高濃度抗体含有溶液製剤に関する。 近年、種々の抗体製剤が開発され実用に供されているが、多くの抗体製剤は静脈注射用製剤として用いられている。一方、医療現場のニーズにより、抗体含有製剤を自己注射可能な皮下注射用製剤として開発する要望が高くなっている。 皮下注射用の抗体含有製剤を設計するにあたっては、1回あたりの抗体投与量が大量となる一方で(100〜200mg-程度)、皮下注射では一般的に注射液量の制限があることから、投与液中の抗体の高濃度化が必要となる。そこで、凍乾前より少ない容量の水を用いて凍結乾燥製剤を再溶解することにより高濃度溶液製剤を調製する、いわゆる凍乾濃縮技術を利用した高濃度製剤が使用されることが多い。しかし、再溶解の手間が要らない使い勝手のよい溶液製剤への需要も大きい。また、凍結乾燥製剤の製造において、糖などの凍結保護剤の添加により製剤の粘度が増大することは、皮下注射用の製剤としては好ましくないが、溶液製剤であれば、この問題を回避することができると思われる。 高濃度の抗体含有溶液は、タンパク質の巨大分子としての性質及び分子間相互作用によりそれ自体粘度の高い溶液を形成する傾向にある。さらに、タンパク質を高濃度溶液にて保存する場合、不溶性及び/又は可溶性凝集体の生成を始めとする劣化現象が問題となり、それを防止する必要がある。特に、抗体製剤では溶液状態で保存時に会合体が生成しやすく、不溶性凝集体が生じやすい。また、溶液製剤を長期保存する場合、アスパラギンその他のアミノ酸残基の脱アミド化により抗体分子の生理活性が喪失してしまう問題がある。 一般に、タンパク質製剤を長期保存した後も活性成分の損失が少ない、安定化させた製剤とするための様々な工夫がなされており、活性成分と種々の添加剤を緩衝液に溶解して製造される。しかし、特に高濃度の抗体含有溶液製剤においては、抗体の二量体生成や脱アミド化を防止するための技術はいまだ不十分である。 長期保存時の二量体生成や脱アミド化が抑制された、安定な、皮下投与に適した高濃度抗体含有製剤に対するニーズが存在する。 本発明の目的は、長期保存時の二量体生成や脱アミド化が抑制された、安定な、皮下投与に適した高濃度抗体含有製剤を提供することである。 上記目的を達成するために鋭意研究した結果、本発明者らは、安定化剤としてアミノ酸であるアルギニンまたはその塩を添加することにより、高濃度の安定な抗体含有溶液製剤となしうることを見いだし、本発明を完成した。 すなわち、本発明は以下のものを提供する。(1)アルギニン及びメチオニンを含有することを特徴とする、安定な抗体含有溶液製剤。(2)さらにヒスチジン緩衝剤を含む、(1)に記載の溶液製剤。(3)さらに界面活性剤を含む、(1)または(2)に記載の溶液製剤。(4)抗体の濃度が50mg/ml以上である、(1)〜(3)に記載の溶液製剤。(5)抗体の濃度が100mg/ml以上である、(1)〜(3)に記載の溶液製剤。(6)抗体の濃度が120mg/ml以上である、(1)〜(3)に記載の溶液製剤。(7)抗体が抗インターロイキン−6レセプター抗体である、(1)〜(6)に記載の溶液製剤。(8)アルギニンまたはメチオニンを含有することを特徴とする、安定な抗インターロイキン−6レセプター抗体含有溶液製剤。(9)抗体がヒト化抗体またはヒト抗体である、(1)〜(8)に記載の溶液製剤。(10)さらにトリプトファンを含む、(1)〜(9)に記載の溶液製剤。(11)pHが4〜8である、(1)〜(10)に記載の溶液製剤。(12)アルギニンの含有量が、50〜1500mMである、(1)〜(11)に記載の溶液製剤。(13)粘度が、2〜15mPa・sである、(1)〜(12)に記載の溶液製剤。(14)溶液製剤が22〜28℃で少なくとも6ヶ月間安定である、(1)〜(13)に記載の溶液製剤。(15)抗体二量体の生成が抑制されることを特徴とする、(1)〜(13)に記載の溶液製剤。(16)抗体分子の脱アミド化が抑制されることを特徴とする、(1)〜(13)に記載の溶液製剤。(17)皮下投与される、(1)〜(13)に記載の溶液製剤。(18)溶液製剤の製造過程に凍結乾燥工程を含まないで製造される、(1)〜(13)に記載の溶液製剤。(19)溶液中にアルギニンを添加することを含む,抗体含有溶液製剤の抗体分子の脱アミド化を抑制する方法。(20)溶液中にアルギニンとメチオニンを添加することを含む,抗体含有溶液製剤の抗体二量体生成を抑制する方法。 凍乾濃縮による再構成の必要がなく、再溶解の手間が要らない、高濃度抗体含有製剤が提供される。本発明の高濃度抗体含有製剤は溶液状態で安定に長期保存可能であり、製造過程に凍結乾燥工程を含まないで製造することができるため、凍結保護剤としての糖などの添加が不要である。実施例1の典型的なクロマトグラフである。実施例1のゲルろ過クロマトグラフ法(SEC)の評価結果を示す。実施例1のゲルろ過クロマトグラフ法(SEC)の評価結果を示す。実施例2の典型的なクロマトグラフである。実施例2のイオン交換クロマトグラフ法(IEC)の評価結果を示す。実施例2のイオン交換クロマトグラフ法(IEC)の評価結果を示す。実施例3のゲルろ過クロマトグラフ法(SEC)の評価結果を示す。実施例3のイオン交換クロマトグラフ法(IEC)の評価結果を示す。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明において、抗体含有溶液製剤とは、活性成分として抗体を含み、ヒト等の動物に投与できるように調製された溶液製剤を言い、好ましくは製造過程に凍結乾燥工程を含まないで製造された溶液製剤を言う。 本発明の抗体含有溶液製剤は、高濃度の抗体を含有する溶液製剤であり、抗体濃度が50mg/mL以上であるものが好ましく、さらには100mg/mL以上であるものが好ましく、120mg/mL以上であるものがさらに好ましく、150mg/mLがさらに好ましい。特に、今まで120mg/mL以上、好ましくは150mg/mL以上の抗体含有溶液製剤が実用化された例はなく、本発明の処方により初めてこのような高濃度の抗体含有溶液製剤の実用化が可能となった。 また、本発明の抗体含有溶液製剤の抗体濃度の上限は、製造の観点から、一般的に300mg/mLであり、好ましくは250mg/mLであり、さらに好ましくは200mg/mLである。よって、本発明の高濃度抗体溶液製剤の抗体濃度は50〜300mg/mLが好ましく、さらに100〜300mg/mLが好ましく、さらに120〜250mg/mLが好ましく、特に150〜200mg/mLが好ましい。 本発明に使用される抗体は、所望の抗原と結合する限り特に制限はなく、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよいが、均質な抗体を安定に生産できる点でモノクローナル抗体が好ましい。 本発明で使用されるモノクローナル抗体としては、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ヒツジ、ラクダ、サル等の動物由来のモノクローナル抗体だけでなく、キメラ抗体、ヒト化抗体、bispecific抗体など人為的に改変した遺伝子組み換え型抗体も含まれる。また、抗体の免疫グロブリンクラスは特に限定されるものではなく、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4などのIgG、IgA、IgD、IgE、IgMなどいずれのクラスでもよいが、IgG及びIgMが好ましい。 さらに本発明の抗体としてはwholeの抗体だけでなく、Fv、Fab、F(ab)2などの抗体断片や、抗体の可変領域をペプチドリンカー等のリンカーで結合させた1価または2価以上の一本鎖Fv(scFv、sc(Fv)2やscFvダイマーなどのDiabody等)などの低分子化抗体なども含まれる。 上述した本発明の抗体は、当業者に周知の方法により作製することができる。 モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。すなわち、所望の抗原や所望の抗原を発現する細胞を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞(ハイブリドーマ)をスクリーニングすることによって作製できる。ハイブリドーマの作製は、たとえば、ミルステインらの方法(Kohler. G. and Milstein, C., Methods Enzymol. (1981) 73: 3-46 )等に準じて行うことができる。抗原の免疫原性が低い場合には、アルブミン等の免疫原性を有する巨大分子と結合させ、免疫を行えばよい。 また、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた遺伝子組換え型抗体を用いることができる(例えば、Carl, A. K. Borrebaeck, James, W. Larrick, THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES, Published in the United Kingdom by MACMILLAN PUBLISHERS LTD, 1990 参照)。具体的には、ハイブリドーマのmRNAから逆転写酵素を用いて抗体の可変領域(V領域)のcDNAを合成する。目的とする抗体のV 領域をコードするDNA が得られれば、これを所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNA と連結し、これを発現ベクターへ組み込む。または、抗体のV 領域をコードするDNA を、抗体C 領域のDNA を含む発現ベクターへ組み込んでもよい。発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させることができる。 本発明では、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ(Chimeric)抗体、ヒト化(Humanized)抗体などを使用できる。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。キメラ抗体は、ヒト以外の哺乳動物、例えば、マウス抗体の重鎖、軽鎖の可変領域とヒト抗体の重鎖、軽鎖の定常領域からなる抗体であり、マウス抗体の可変領域をコードするDNA をヒト抗体の定常領域をコードするDNA と連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得ることができる。 ヒト化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、ヒト以外の哺乳動物、たとえばマウス抗体の相補性決定領域(CDR; complementarity determining region)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている。具体的には、マウス抗体のCDR とヒト抗体のフレームワーク領域(framework region;FR)を連結するように設計したDNA 配列を、末端部にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドからPCR 法により合成する。得られたDNA をヒト抗体定常領域をコードするDNA と連結し、次いで発現ベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開番号EP 239400 、国際特許出願公開番号WO 96/02576 参照)。CDR を介して連結されるヒト抗体のFRは、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように抗体の可変領域のフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato, K.et al., Cancer Res. (1993) 53, 851-856)。 また、ヒト抗体の取得方法も知られている。例えば、ヒトリンパ球をin vitroで所望の抗原または所望の抗原を発現する細胞で感作し、感作リンパ球をヒトミエローマ細胞、例えばU266と融合させ、抗原への結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる(特公平1-59878 参照)。また、ヒト抗体遺伝子の全てのレパートリーを有するトランスジェニック動物を抗原で免疫することで所望のヒト抗体を取得することができる(国際特許出願公開番号WO 93/12227, WO 92/03918,WO 94/02602, WO 94/25585,WO 96/34096, WO 96/33735参照)。さらに、ヒト抗体ライブラリーを用いて、パンニングによりヒト抗体を取得する技術も知られている。例えば、ヒト抗体の可変領域を一本鎖抗体(scFv)としてファージディスプレイ法によりファージの表面に発現させ、抗原に結合するファージを選択することができる。選択されたファージの遺伝子を解析すれば、抗原に結合するヒト抗体の可変領域をコードするDNA配列を決定することができる。抗原に結合するscFvのDNA配列が明らかになれば、当該配列を含む適当な発現ベクターを作製し、ヒト抗体を取得することができる。これらの方法は既に衆知であり、WO 92/01047, WO 92/20791, WO 93/06213, WO 93/11236, WO 93/19172, WO 95/01438, WO 95/15388を参考にすることができる。 抗体遺伝子を一旦単離し、適当な宿主に導入して抗体を作製する場合には、適当な宿主と発現ベクターの組み合わせを使用することができる。真核細胞を宿主として使用する場合、動物細胞、植物細胞、真菌細胞を用いることができる。動物細胞としては、(1) 哺乳類細胞、例えば、CHO, COS,ミエローマ、BHK (baby hamster kidney ),HeLa,Vero,(2) 両生類細胞、例えば、アフリカツメガエル卵母細胞、あるいは(3) 昆虫細胞、例えば、sf9, sf21, Tn5などが知られている。植物細胞としては、ニコティアナ(Nicotiana)属、例えばニコティアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)由来の細胞が知られており、これをカルス培養すればよい。真菌細胞としては、酵母、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces )属、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、糸状菌、例えば、アスペルギルス(Aspergillus )属、例えばアスペスギルス・ニガー(Aspergillus niger )などが知られている。原核細胞を使用する場合、細菌細胞を用いる産生系がある。細菌細胞としては、大腸菌(E. coli )、枯草菌が知られている。これらの細胞に、目的とする抗体遺伝子を形質転換により導入し、形質転換された細胞をin vitroで培養することにより抗体が得られる。 さらに、本発明の抗体は、その抗体断片や低分子化抗体、並びに抗体修飾物であってよい。例えば、抗体断片や低分子化抗体としてはFab、F(ab')2、Fv又はH鎖とL鎖のFvを適当なリンカーで連結させた一価又は二価以上のシングルチェインFv(scFv、sc(Fv)2など) (Huston, J. S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1988) 85, 5879-5883) が挙げられる。具体的には、抗体を酵素、例えば、パパイン、ペプシンで処理し抗体断片を生成させるか、又は、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させる(例えば、Co, M. S. et al., J. Immunol. (1994) 152, 2968-2976 ; Better, M. and Horwitz, A. H., Methods Enzymol. (1989) 178, 476-496 ; Pluckthun, A. and Skerra, A., Methods Enzymol. (1989) 178, 497-515 ; Lamoyi, E., Methods Enzymol. (1986) 121, 652-663 ; Rousseaux, J. et al., Methods Enzymol. (1986) 121, 663-669 ; Bird, R. E. and Walker, B. W., Trends Biotechnol. (1991) 9, 132-137参照)。 抗体修飾物として、ポリエチレングリコール(PEG)等の各種分子と結合した抗体を使用することもできる。本発明の「抗体」にはこれらの抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物を得るには、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。これらの方法はこの分野において既に確立されている。 本発明の製剤に含まれる抗体としては、抗組織因子抗体、抗IL−6レセプター抗体、抗IL-6抗体、HM1.24抗原モノクローナル抗体、抗副甲状腺ホルモン関連ペプチド抗体(抗PTHrP抗体)、抗グリピカン-3 抗体、抗ガングリオシドGM3抗体、抗TPO受容体アゴニスト抗体、凝固第VIII因子代替抗体、抗CD3抗体、抗CD20抗体、抗GPIIb/IIIa抗体、抗TNF抗体、抗CD25抗体、抗EGFR抗体、抗Her2/neu抗体、抗RSV抗体、抗CD33抗体、抗CD52抗体、抗IgE抗体、抗CD11a抗体、抗VEGF抗体、抗VLA4抗体、抗AXL抗体などを挙げることができるが、これに限定されない。 再構成ヒト化抗体としては、ヒト化抗インターロイキン6(IL−6)レセプター抗体(hPM−1あるいはMRA)(国際特許出願公開番号WO92−19759を参照)、ヒト化抗HM1.24抗原モノクローナル抗体(国際特許出願公開番号WO98−14580を参照)、ヒト化抗副甲状腺ホルモン関連ペプチド抗体(抗PTHrP抗体)(国際特許出願公開番号WO98−13388を参照)、ヒト化抗組織因子抗体(国際特許出願公開番号WO99−51743を参照)、抗グリピカン-3 ヒト化IgG1κ抗体(国際特許出願番号PCT/JP05/013103を参照)などが本発明で使用する好ましい抗体である。本発明で使用するヒト化抗体として特に好ましいのは、ヒト化抗IL−6レセプター抗体である。 ヒトIgM抗体としては、抗ガングリオシドGM3 組み換え型ヒトIgM抗体(国際特許出願公開番号WO05−05636を参照)などが好ましい。 低分子化抗体としては、抗TPO受容体アゴニストDiabody(国際特許出願公開番号WO02−33072を参照)、抗CD47アゴニストDiabody(国際特許出願公開番号WO01−66737を参照)などが好ましい。 本発明者らは、高濃度抗体含有試料の保存時の安定性を評価するために、熱加速試験及び光加速試験により種々の添加剤の効果を検討した。その結果、アミノ酸であるアルギニンを含有する緩衝液中に高濃度の抗体を溶解した溶液は、アルギニン非添加の溶液に比べて、二量体生成量が低いことから、二量体生成を抑制する安定化剤としてアルギニンが有効であることを見出した。さらに、アルギニンに加えてメチオニンを含有する緩衝液中に高濃度の抗体を溶解した溶液において、アルギニンとメチオニンの合計濃度にしてアルギニン単独の場合よりも低濃度で同様の二量体生成の抑制効果が観察されたことから、アルギニンとメチオニンの併用による相乗効果が発揮されることを見出した。また、アルギニンの添加により抗体分子の脱アミド化が抑制されることを見出した。これらの検討結果は、本明細書中の後述の実施例において、180mg/mlのヒト化抗IL−6レセプター抗体を含有する試料を用いた試験結果として例示されている。 すなわち、安定化剤としてアルギニンを含有することにより、抗体の二量体の生成が少なく、脱アミド化が防止された安定な抗体製剤とすることができる。したがって、本発明の第一の態様は、溶液中にアルギニンを添加することを特徴とし、これにより抗体含有溶液製剤の抗体分子の二量体生成または脱アミド化を抑制することに関する。そして、安定な抗体含有溶液製剤としての態様は、抗体およびアルギニンを緩衝液中に含有することを特徴とするものである。また、上述のように、本発明の抗体含有溶液製剤は、さらにメチオニンを含むことにより、アルギニンとメチオニンの併用による相乗効果が発揮される。したがって、本発明の第二の態様は、溶液中にアルギニンとメチオニンを添加することを特徴とし、特に、抗体含有溶液製剤の抗体二量体生成を抑制することに関する。そして、安定な抗体含有溶液製剤としての態様は、抗体およびアルギニンおよびメチオニンを緩衝液中に含有することを特徴とするものである。 本発明で使用するアルギニンとしては、単品、その誘導体、その塩のいずれを用いてもよく、特に、L−アルギニンまたはその塩が望ましい。本発明で使用するメチオニンとしては、単品、その誘導体、その塩のいずれを用いてもよく、特に、L−メチオニンまたはその塩が望ましい。 本発明の抗体含有溶液製剤中にメチオニン非添加でアルギニンのみが含まれるときは、アルギニンの量は、50〜1500mMであることが好ましく、100〜1000mMであることがより好ましく、200〜700mMであることがさらに好ましい。本発明の抗体含有溶液製剤中にアルギニンおよびメチオニンが含まれるときは、アルギニンとメチオニンの合計濃度が50〜1200mMであること、例えばアルギニンの量が40〜1000mMであり且つメチオニンの量が10〜200mMであることが好ましく、アルギニンの量が50〜700mMであり且つメチオニンの量が10〜100mMであることがより好ましく、アルギニンの量が100〜300mMであり且つメチオニンの量が10〜50mMであることがさらに好ましい。 緩衝液は、溶液のpHを維持するための物質である緩衝剤を使用して調製する。本発明の高濃度抗体含有溶液製剤においては、溶液のpHが4〜8であることが好ましく、5.0〜7.5であることがより好ましく、5.5〜7.2であることがさらに好ましく、6.0〜6.5であることがなおさらに好ましい。本発明で使用可能な緩衝剤は、この範囲のpHを調整でき、且つ医薬的に許容可能なものである。このような緩衝剤は溶液製剤の分野で当業者に公知であり、例えば、リン酸塩(ナトリウムまたはカリウム)、炭酸水素ナトリウムなどの無機塩;クエン酸塩(ナトリウムまたはカリウム)、酢酸ナトリウム、コハク酸ナトリウムなどの有機酸塩;または、リン酸、炭酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、グルコン酸などの酸類を使用できる。さらに、Tris類及びMES、MOPS、HEPESのようなグッド緩衝剤、ヒスチジン(例えばヒスチジン塩酸塩)、グリシンなどを使用してもよい。本発明の高濃度抗体含有溶液製剤においては、緩衝液がヒスチジン緩衝液またはグリシン緩衝液であることが好ましく、特にヒスチジン緩衝液が好ましい。緩衝液の濃度は、一般には1〜500mMであり、好ましくは5〜100mMであり、さらに好ましくは10〜20mMである。ヒスチジン緩衝液を使用する場合、緩衝液は好ましくは5〜25mMのヒスチジン、さらに好ましくは10〜20mMのヒスチジンを含有する。 本発明の「安定な」高濃度抗体含有溶液製剤は、冷蔵温度(2〜8℃)で少なくとも12ヶ月、好ましくは2年間、さらに好ましくは3年間;または室温(22〜28℃)で少なくとも3ヶ月、好ましくは6ヶ月、さらに好ましくは1年間、有意な変化が観察されない。例えば、5℃で2年間保存後の二量体量及び分解物量の合計が5.0%以下、好ましくは2%以下、さらに好ましくは1.5%以下、あるいは25℃で6ヶ月保存後の二量体量及び分解物量の合計が5.0%以下、好ましくは2%以下、さらに好ましくは1.5%以下である。 本発明の製剤は、さらに界面活性剤を含有することができる。 界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、例えばソルビタンモノカプリレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート等のソルビタン脂肪酸エステル;グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノミリテート、グリセリンモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル;デカグリセリルモノステアレート、デカグリセリルジステアレート、デカグリセリルモノリノレート等のポリグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビットテトラステアレート、ポリオキシエチレンソルビットテトラオレエート等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリルモノステアレート等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンプロピルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル;ポリオキシエチエレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン水素ヒマシ油)等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ポリオキシエチレンソルビットミツロウ等のポリオキシエチレンミツロウ誘導体;ポリオキシエチレンラノリン等のポリオキシエチレンラノリン誘導体;ポリオキシエチレンステアリン酸アミド等のポリオキシエチレン脂肪酸アミド等のHLB6〜18を有するもの;陰イオン界面活性剤、例えばセチル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム等の炭素原子数10〜18のアルキル基を有するアルキル硫酸塩;ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム等の、エチレンオキシドの平均付加モル数が2〜4でアルキル基の炭素原子数が10〜18であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;ラウリルスルホコハク酸エステルナトリウム等の、アルキル基の炭素原子数が8〜18のアルキルスルホコハク酸エステル塩;天然系の界面活性剤、例えばレシチン、グリセロリン脂質;スフィンゴミエリン等のフィンゴリン脂質;炭素原子数12〜18の脂肪酸のショ糖脂肪酸エステル等を典型的例として挙げることができる。本発明の製剤には、これらの界面活性剤の1種または2種以上を組み合わせて添加することができる。 好ましい界面活性剤はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルであり、特に好ましいのはポリソルベート20、21、40、60、65、80、81、85並びにプルロニック型界面活性剤であり、最も好ましいのはポリソルベート20、80及びプルロニックF−68(ポロキサマー188)である。 本発明の抗体製剤に添加する界面活性剤の添加量は、一般には0.0001〜10%(w/v)であり、好ましくは0.001〜5%であり、さらに好ましくは0.005〜3%である。 本発明の別の態様として、本発明の製剤は好ましくは以下の成分:A)抗IL−6レセプター抗体B)アルギニンおよび/またはメチオニン、および任意の追加成分としてさらに別のアミノ酸(例えばトリプトファン)C)緩衝剤、及びD)界面活性剤から実質的に構成される。 「実質的に構成される」とは、後述する任意の添加成分である懸濁剤、溶解補助剤、等張化剤、保存剤、吸着防止剤、希釈剤、賦形剤、pH調整剤、無痛化剤、含硫還元剤、酸化防止剤等の通常製剤に添加される成分以外の成分を含まないことを意味する。 上記(B)の「アルギニンおよび/またはメチオニン、および任意の追加成分としてさらに別のアミノ酸(例えばトリプトファン)」とは、製剤に含有し得る添加剤としてのアミノ酸の種類が、(b−1)アルギニン;(b−2)アルギニンおよびメチオニン;(b−3)メチオニン、の場合を含み、さらに別のアミノ酸を含む場合があることを意味する。別のアミノ酸として、好ましい例はトリプトファンであり、トリプトファンとしては、単品、その誘導体、その塩のいずれを用いてもよく、特に、L−トリプトファンまたはその塩が望ましい。 本発明の製剤には、必要に応じて、懸濁剤、溶解補助剤、等張化剤、保存剤、吸着防止剤、希釈剤、賦形剤、pH調整剤、無痛化剤、含硫還元剤、酸化防止剤等を適宜添加することができる。 懸濁剤の例としては、メチルセルロース、ポリソルベート80、ヒドロキシエチルセルロース、アラビアゴム、トラガント末、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等を挙げることができる。 溶液補助剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート80、ニコチン酸アミド、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、マグロゴール、ヒマシ油脂肪酸エチルエステル等を挙げることができる。 等張化剤としては例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等を挙げることができる。 保存剤としては例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、ソルビン酸、フェノール、クレゾール、クロロクレゾール等を挙げることができる。 吸着防止剤としては例えば、ヒト血清アルブミン、レシチン、デキストラン、エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド共重合体、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール等を挙げることができる。 含硫還元剤としては例えば、N−アセチルシステイン、N−アセチルホモシステイン、チオクト酸、チオジグリコール、チオエタノールアミン、チオグリセロール、チオソルビトール、チオグリコール酸及びその塩、チオ硫酸ナトリウム、グルタチオン、炭素原子数1〜7のチオアルカン酸等のスルフヒドリル基を有するもの等が挙げられる。 酸化防止剤としては例えば、エリソルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、L−アスコルビン酸及びその塩、L−アスコルビン酸パルミテート、L−アスコルビン酸ステアレート、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、没食子酸トリアミル、没食子酸プロピルあるいはエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等のキレート剤が挙げられる。 本発明の抗体含有溶液製剤は通常非経口投与経路で、例えば注射剤(皮下注、静注、筋注など)、経皮、経粘膜、経鼻、経肺などで投与されるが、経口投与も可能である。皮下注射用としては、1回あたりの抗体投与量が大量となる一方で(100〜200mg-程度)、注射液量の制限があるため、本発明の製剤は皮下注射用として特に適している。 好ましくは、本発明の抗体含有溶液製剤の浸透圧比は、約0.5〜4、より好ましくは、約0.7〜2、さらに好ましくは、約1である。 好ましくは、本発明の抗体含有溶液製剤の粘度は、約2〜15mPa・s、さらに好ましくは約4〜10mPa・sである。ただし,本発明の粘度はコーンプレート型粘度計を用いた回転粘度計法(第15改正 日本薬局方 一般試験法 2.53 粘度測定法)で測定したものである。 本発明では、後述する実施例の結果から、アルギニン単独、または、アルギニンとメチオニン、またはメチオニン単独を添加することにより、長期保存時も抗体の二量体生成や脱アミド化が少ない安定な溶液製剤を得ることができる。 本発明のさらに別の態様として、溶液中にアルギニンまたはその塩を添加することを含む,抗体含有溶液製剤の脱アミド化を抑制する方法が提供される。 さらに別の態様として、溶液中にアルギニンとメチオニンを添加することを含む、抗体含有溶液製剤の抗体二量体生成を抑制する方法が提供される。 前記の二つの方法において、抗体は、好ましくはヒト化抗体またはヒト抗体である抗インターロイキン-6レセプター抗体である。 本発明を以下の実施例によってさらに詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらのみに限定されるものではない。 [実施例]抗体試料 抗IL−6レセプターヒト化抗体は国際特許出願公開番号WO92/19759号公報の実施例10に記載されたヒトエロンゲーションファクターIαプロモーターを利用し、特開平8−99902号公報の参考例2に記載された方法に準じて作成したヒト化抗体である。なお、実施例の表中ではMRAと記載することもある。 アルギニンとメチオニンとの組合せによる安定化効果 抗IL-6レセプターヒト化抗体を含む溶液製剤について、アルギニンとメチオニンの組合せが製剤の安定化に及ぼす影響を評価した。 本検討では、アルギニンとメチオニンの組合せ効果を評価するために、試料No.A1〜A9の評価試料を調製した。各評価試料の処方は以下の通りである。 溶液製剤の安定性を評価するために、各試料の熱加速試験(40℃−3ヶ月及び25℃−6ヶ月保存)を行った。そして、熱加速前後における抗体の純度を、ゲルろ過クロマトグラフ法(SEC)により評価した。分析条件は以下の通りである。[ゲルろ過クロマトグラフ法] 試料をそのまま測定溶液とする。 測定溶液1μLにつき、以下の条件で液体クロマトグラフ法により試験を行い、二量体(Dimer)、単量体(Monomer)、低分子量分解物(LMW)のピーク面積を自動分析法により測定し、その量(%)を求める。 典型的なクロマトグラフを図1に示す。 本実施例で得られたゲルろ過クロマトグラフ法(SEC)の評価結果を表1及び図2、図3に示した。このように、アルギニンを添加した試料(試料No. A2〜A6)について、40℃−3ヶ月間及び25℃−6ヶ月間の加速による二量体量はアルギニン非添加の試料(試料No. A1)に比べて低く、アルギニンによる二量体生成の抑制効果を確認することができた。また、アルギニン添加量に比例して二量体量は低くなることも確認することができた。一方、アルギニン(100 mM)にメチオニンを添加した試料(試料No. A7〜A9)について、40℃−3ヶ月間及び25℃−6ヶ月間の加速による二量体量は、全安定化剤濃度としてほぼ同じであるアルギニン濃度が150 mMの試料(試料No. A3, A4)より低く、アルギニン濃度が300 mMの試料(試料No. A6)と同等であった。この結果は、アルギニンとメチオニンの組合わせによる相乗効果としての二量体生成の抑制効果を示すと考えられる。 また、低分子量分解物量について、アルギニン及びメチオニンの影響は認められなかった。 アルギニンによる脱アミド化の抑制効果 抗IL-6レセプターヒト化抗体を含む溶液製剤について、アルギニンによる脱アミド化の抑制効果を評価した。 本検討では、アルギニン及びメチオニンについて、添加量の異なる試料No.A10〜A15及び試料No.A16〜A18の評価試料を調製した。各評価試料の処方は以下の通りである。 溶液製剤の安定性を評価するために、各試料の熱加速試験(40℃−3ヶ月及び25℃−6ヶ月保存)を行った。そして、熱加速前後における抗体の純度を、イオン交換クロマトグラフ法(IEC)により評価した。分析条件は以下の通りである。 [イオン交換クロマトグラフ法] 試料に精製水を加えて1mL中に抗IL-6レセプターヒト化抗体を約1mg 相当量含む液を調製したものを各試料の測定溶液とする。 測定溶液30μLにつき、以下の条件で液体クロマトグラフ法により試験を行い、各々のピーク面積を自動分析法により測定し、面積百分率法によりMRA Pre, MRA Main, MRA Sub-1, MRA Sub-2, MRA R-1, 1Q(H)-MRA, 2Q(H)-MRA及びその他の類縁物質(Others)の量(%)を求める。 MRA Preは主成分よりも短い保持時間で溶出されるピークの総和であり、抗IL-6レセプターヒト化抗体の脱アミド体を中心とした複数の分解物が含まれる。このPreピークの生成量が少ないことは本抗体の脱アミド化が抑制されていることを意味する。 典型的なクロマトグラフを図4に示す。MRA PreはMRA Mainより前に出てくる全てのピークの総和である。 本実施例によるイオン交換クロマトグラフ法(IEC)の評価結果を表2及び図5、図6に示した。このように、アルギニンを添加した試料(試料No. A11〜A15)について、40℃−3ヶ月間及び25℃−6ヶ月間の加速によるPreピーク量は、アルギニン非添加の試料(試料No. A10)に比べて低く、アルギニンによるPreピーク生成の抑制効果を確認することができた。また、アルギニン添加量に比例してPreピーク量は低くなることも確認することができた。一方、メチオニンを添加した試料(試料No. A16〜A18)について、40℃−3ヶ月間及び25℃−6ヶ月間の加速によるPreピーク量はアルギニン非添加の試料(試料No. A10)と同等であり、メチオニン添加の影響は認められなかった。 アルギニンとメチオニンとの組合せによる安定化効果 (2) 実施例1と同様に抗IL-6レセプターヒト化抗体を含む溶液製剤について、アルギニンとメチオニンの組合せが製剤の安定化に及ぼす影響を評価した。 本検討では、アルギニンとメチオニンの組合せ効果を評価するために、試料No.A19〜A27の評価試料を調製した。各評価試料の処方は以下の通りである。 溶液製剤の安定性を評価するために、各試料の光加速試験(総照度 120万lux及び総近紫外照射エネルギー 200 W・h/m2)を行った。そして、光加速前後における抗体の純度を、実施例1、2と同様のゲルろ過クロマトグラフ法(SEC)及びイオン交換クロマトグラフ法(IEC)により評価した。 本実施例におけるゲルろ過クロマトグラフ法(SEC)の評価結果を表3及び図7に示した。このように、アルギニンを添加した試料(試料No. A20〜A24)について、光加速による二量体量はアルギニン非添加の試料(試料No. A19)に比べて低く、アルギニンによる二量体生成の抑制効果を確認することができた。また、アルギニン添加量に比例して二量体量は低くなることも確認することができた。一方、アルギニン(100 mM)にメチオニンを添加した試料(試料No. A25〜A27)について、光加速による二量体量は、全安定化剤濃度としてほぼ同じであるアルギニン濃度が150 mMの試料(試料No. A22)より低く、また、アルギニン濃度が200mM及び300 mMの試料(試料No. A23, A24)よりも低かった。この結果は、アルギニンとメチオニンの組合わせによる相乗効果としての二量体生成の抑制効果を示すと考えられる。 低分子量分解物量について、アルギニン及びメチオニンの影響は認められなかった。 次に、イオン交換クロマトグラフ法(IEC)の評価結果を表4及び図8に示した。 このように、アルギニンを添加した試料(試料No. A20〜A24)について、光加速によるPre peak量はアルギニン非添加の試料(試料No. A19)に比べて低く、アルギニンによるPre peak生成の抑制効果を確認することができた。また、アルギニン添加量に比例してPre peak量は低くなることも確認することができた。一方、アルギニン(100 mM)にメチオニンを添加した試料(試料No. A25〜A27)について、光加速による二量体量は、全安定化剤濃度としてほぼ同じであるアルギニン濃度が150 mMの試料(試料No. A22)より低く、また、アルギニン濃度が200mM及び300 mMの試料(試料No. A23, A24)よりも低かった。この結果は、アルギニンとメチオニンの組合わせによる相乗効果としてのPre peak生成の抑制効果を示すと考えられる。 ヒト化抗インターロイキン−6レセプター抗体MRAを含有する安定な溶液製剤であって、該抗体180mg/ml、アルギニン100mM、メチオニン10〜50mM、および0.005〜3%(w/v)のポリソルベート80を、pH4〜8、5〜100mMのヒスチジン緩衝液中に含有することを特徴とする、前記製剤。 ヒト化抗インターロイキン−6レセプター抗体MRAを含有する溶液製剤において該抗体二量体の生成を抑制する方法であって、溶液中にアルギニンとメチオニンを添加することを含み、溶液中のアルギニン濃度が100mM、メチオニン濃度が10〜50mM、抗体濃度が180mg/ml、溶液のpHが4〜8、ヒスチジン緩衝液濃度が5〜100mM、ポリソルベート80の濃度が0.005〜3%(w/v)とすることを特徴とする、前記方法。


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