生命科学関連特許情報

タイトル:公表特許公報(A)_繊維芽細胞成長因子受容体誘導ペプチド
出願番号:2008535889
年次:2009
IPC分類:C07K 14/71,A61K 38/00,A61P 25/00,A61P 25/02,A61P 25/28,A61P 3/10,A61P 21/00,A61P 25/18,A61P 25/20,A61P 25/22,A61P 25/24,A61P 25/16,A61P 15/00,A61P 1/18,A61P 13/12,A61P 9/00,A61P 43/00,A61P 7/02,A61P 35/00,C07K 7/06,C07K 7/08


特許情報キャッシュ

ウラディミール・ベレジン ウラディスラフ・ヴェー・キセルヨフ エリザベート・ボック JP 2009511614 公表特許公報(A) 20090319 2008535889 20061017 繊維芽細胞成長因子受容体誘導ペプチド エンカム ファーマシューティカルズ アクティーゼルスカブ 503214070 田中 光雄 100081422 山田 卓二 100101454 岩崎 光隆 100067035 中川 将之 100144923 ウラディミール・ベレジン ウラディスラフ・ヴェー・キセルヨフ エリザベート・ボック DK PA200501466 20051019 C07K 14/71 20060101AFI20090220BHJP A61K 38/00 20060101ALI20090220BHJP A61P 25/00 20060101ALI20090220BHJP A61P 25/02 20060101ALI20090220BHJP A61P 25/28 20060101ALI20090220BHJP A61P 3/10 20060101ALI20090220BHJP A61P 21/00 20060101ALI20090220BHJP A61P 25/18 20060101ALI20090220BHJP A61P 25/20 20060101ALI20090220BHJP A61P 25/22 20060101ALI20090220BHJP A61P 25/24 20060101ALI20090220BHJP A61P 25/16 20060101ALI20090220BHJP A61P 15/00 20060101ALI20090220BHJP A61P 1/18 20060101ALI20090220BHJP A61P 13/12 20060101ALI20090220BHJP A61P 9/00 20060101ALI20090220BHJP A61P 43/00 20060101ALI20090220BHJP A61P 7/02 20060101ALI20090220BHJP A61P 35/00 20060101ALI20090220BHJP C07K 7/06 20060101ALI20090220BHJP C07K 7/08 20060101ALI20090220BHJP JPC07K14/71A61K37/02A61P25/00A61P25/02A61P25/28A61P3/10A61P21/00A61P25/18A61P25/20A61P25/22A61P25/24A61P25/16A61P15/00A61P1/18A61P13/12A61P9/00A61P43/00 107A61P7/02A61P35/00A61P43/00 105C07K7/06C07K7/08 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,LY,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW DK2006000585 20061017 WO2007045247 20070426 53 20080612 4C084 4H045 4C084AA02 4C084AA03 4C084AA07 4C084BA01 4C084BA08 4C084BA17 4C084BA18 4C084BA23 4C084CA18 4C084MA13 4C084MA16 4C084MA17 4C084MA22 4C084MA23 4C084MA31 4C084MA44 4C084MA52 4C084MA56 4C084MA59 4C084MA60 4C084MA63 4C084MA66 4C084NA14 4C084ZA022 4C084ZA052 4C084ZA122 4C084ZA152 4C084ZA162 4C084ZA182 4C084ZA202 4C084ZA222 4C084ZA362 4C084ZA662 4C084ZA812 4C084ZA892 4C084ZA942 4C084ZB212 4C084ZB222 4C084ZB262 4C084ZC192 4C084ZC352 4H045AA10 4H045AA30 4H045BA15 4H045BA16 4H045BA18 4H045CA40 4H045DA50 4H045EA20発明の分野 本発明は、繊維芽細胞成長因子受容体ファミリー(FGFR)に結合し、該受容体の活性を調節することができる新規ペプチドに関する。本発明のペプチドは、FGFRのペプチド断片であり、FGFRの免疫グロブリン様モジュール1および2の相互結合のための結合サイトに由来する。本発明は、FGFRの相互Ig1対Ig2結合サイトに由来するアミノ酸配列を開示し、該アミノ酸配列を含むペプチドの使用およびFGFRが顕著な役割を果たす異なる病的状態の処置のためのそれを含む医薬組成物の使用に関する。発明の背景 繊維芽細胞成長因子受容体(FGFR)は、密接に関連した膜貫通チロシンキナーゼ(FGFR1-FGFR4)のファミリーである。FGFR活性化およびシグナル伝達は、FGFRの天然リガンドである繊維芽細胞成長因子ファミリー(FGF)の結合により誘導される受容体の二量体化に依存し、それはまた、細胞表面ヘパリンまたはヘパラン硫酸プロテオグリカンの参加を必要とする(McKeehan et al., 1998; Itoh and Ornitz, 2004)。FGF(FGF1-FGF23)およびFGFRは、実質的にあらゆるほ乳類組織の多くの発生および修復過程に参加する複雑なシグナル伝達系を構成し(Bottcher and Niehrs, 2005)、特に、それらは、成体の末梢および中枢神経系の機能化において顕著な役割を果たす(FGFファミリーの23個のメンバーのうち、10個が脳で同定された(Jungnickel et al, (2004) Mol Cell Neurosci. 25:21-9; Reuss and von Bohlen und Halbach (2003) Cell Tissue Res. 313:139-57))。 典型的なFGFRは、3つの免疫グロブリン様モジュール(Ig1-Ig3)、膜貫通ドメインおよび細胞内チロシンキナーゼドメインからなる。Ig1とIg2モジュール間のリンカー領域は、非常に長く、20-30アミノ酸残基からなり、acid boxと呼ばれる酸性アミノ酸のストレッチを含む。FGFRはまた、ヘパリン/ヘパラン硫酸に結合し、それは、高親和性FGF-FGFR相互作用のために必要とされる(Yayon et al., 1991; Ornitz et al., 1992)。さまざまなFGFR断片に対するいくつかのFGFの結合研究およびIg2およびIg3モジュールからなるFGFRの断片と結合したいくつかのFGFの結晶構造は、これらのモジュールおよびリンカー領域が、特異的なFGF-FGFR相互作用のために十分であることを示している(Wang et al., 1995a; Plotnikov et al., 1999; Pellegrini et al., 2000)。FGF-FGFR結合の結果、FGFRの二量体化を生じ、受容体チロシンキナーゼドメインの自己リン酸化を導く。三次元FGF-FGFRヘパリン複合体の結晶構造に基づき、FGFR二量体化の2つのモデル、対称のおよび非対称のモデルが提案された。対称モデル(Plotnikov et al., 1999; Plotnikov et al., 2000; Schlessinger et al., 2000)では、2個のFGF-FGFR複合体の二量体は、1)一次および二次相互作用サイトを介した二価FGF-FGFR相互作用、2)直接のFGFR-FGFR相互作用、そして3)ヘパリン-FGFとヘパリン-FGFRの相互作用により安定化する。非対称モデル(Pellegrini et al., 2000)では、2個のFGF-FGFR複合体間でタンパク質-タンパク質接触が存在せず、三次元複合体は、ヘパリン-FGF相互作用によってのみ安定化する。最近、二次FGF-FGFR相互作用サイト(対称モデルでのみ観察される)での相互作用を破壊する突然変異が、FGF-FGFR結合に影響を与えることなしに減少したFGFR活性を生じることが示され、これは、対称モデルを支持する(Ibrahimi et al., 2005)。FGFの結合特異性の制御は、主に、FGFRのオルタナティブスプライシングにより達成される。FGFR1-3でのIg3モジュールのC末端部分をコードするエキソンのオルタナティブスプライシングは、異なるFGF結合特異性を有する2個のアイソフォーム(3bおよび3c)を生じる(Miki et al., 1992; Yayon et al., 1992)。また、下記のFGFRアイソフォームが存在する;Ig1モジュールを欠失したもの(FGFR1および2)、Ig1-Ig2リンカー配列と結合したIg1モジュール(FGFR2)、またはIg1-Ig2リンカーのみ(FGFR3では)(McKeehan et al., 1998; Shimizu et al., 2001)。 Ig1モジュールの構造は、未知であり、該モジュールの生理学的な重要性は、十分に明らかにはなっていない。Ig1モジュールは、FGF-FGFR結合のために必要ではないが、3種類のIgモジュール型(FGFR1α)は、2種類のIgモジュール型(FGFR1β)と比較したとき、FGF1およびヘパリンに関して、それぞれ8倍および3倍の低親和性を有する(Wang et al., 1995b)。FGFR1αにおけるIg1-Ig2リンカーの欠失は、Ig1モジュールの阻害効果を破壊するので、Ig1-Ig2リンカーは、柔軟なヒンジを形成し、Ig1モジュールがIg2/Ig3モジュールと相互作用することを可能にすることが示され(Wang et al., 1995b)、この想定は、最近、FGFR3のIg1モジュールが、20 μMの解離定数でFGFR3βに結合することを示した、Olsen et al. (2004)により支持された。 現在までに蓄積した多くの証拠は、FGFRが、神経細胞分化、生存および可塑性に関与する主要な細胞接着分子NCAM、L1およびN-カドヘリンと結合して、細胞内シグナル伝達に関与していることを示している(Williams et al. (1994) Neuron 13:83-94; Doherty and Walsh, 1996; Kiselyov et al., 2003)。 NCAMは、最近、FGFRの推定されるオルタナティブリガンド(弱い親和性リガンド)の新規クラスのメンバーであると同定された(Kiselyov et al., 2003; Kiselyov et al. (2005) J Neurochem 94:1169-1179)。NCAMと受容体間の直接的な相互作用およびNCAMによるFGFRの刺激に関して、取得された証拠が存在した(Kiselyov et al. (2003) Structure (Camb) 11:691-701)。NCAMとFGFR間の相互作用に関与し、配列EVYVVAENQQGKSKA(FGLペプチド)を有する同定したNCAM断片は、FGFRの活性が役割を果たし得るさまざまな病的状態の処置のための新規候補薬剤として示された(WO 03/016351)。WO 03/016351は、FGFRに結合し活性化するための、FGLペプチドのいくらかの生物学的活性を開示している。 FGFRの多機能は、多くの疾患、例えば、受容体を治療介入のための重要な標的とみなす癌と関連していた。しかしながら、FGFRが顕著な役割を果たす制御での生物学的過程の多さおよび多量のFGFRリガンドの存在が、そのような探求を、非常にやりがいのある課題としている。 本発明は、FGFR活性およびFGFR依存性生物学的過程を調節するために有利に使用し得る新規化合物を提供し、したがって、本発明は、FGFR関連疾患の処置のための新規候補薬剤を提供する。発明の要約 本発明は、同じFGFR分子のFGFR Ig1およびIg2モジュールの相互結合のための新規FGFR結合サイトを開示し、そして該結合サイトに結合しそれにより該受容体活性化を調節できるペプチド配列を開示する。 したがって、第1の局面では、本発明は、FGFRに結合し、FGFR活性を調節できる新規ペプチド配列に関する。 本発明にしたがって、相互Ig1対Ig2結合サイトに結合できるペプチド配列は、アミノ酸モチーフQ/E-(x)3-xp[式中、xpは、疎水性アミノ酸残基であり、そして(x)cは、3個のアミノ酸残基のアミノ酸配列である(ここで、xは、任意のアミノ酸残基である)]か、またはアミノ酸モチーフK/R-xp-(x)0-1-K/R[式中、xpは、疎水性アミノ酸残基であり、そして(x)は、荷電アミノ酸残基である]を含む。 好ましくは、本発明のペプチドは、約25個のアミノ酸残基を含み、相互Ig1対Ig2結合サイト由来のFGFRの断片を含む。本発明は、本発明の相互結合サイト由来のアミノ酸配列を開示し、それを含む医薬組成物に関する。本発明はまた、FGFRが病状および/または疾患からの回復で役割を果たす異なる病的状態の処置のための、ペプチドおよびそれを含む医薬組成物の使用に関し、該病的状態の処置は、例えば、下記のものである;a)術後神経損傷、外傷性神経損傷、障害された神経繊維の髄鞘形成、卒中から生じるような虚血後損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、認知症、例えば、多発脳梗塞性認知症、硬化症、糖尿病に付随する神経変性、概日時計に影響を与える傷害または神経-筋伝達、および統合失調症、気分障害、例えば、躁鬱病に関連する中枢および末梢神経系の状態の処置;b)神経-筋結合の障害された機能を有する状態、例えば、臓器移植後の、または例えば、遺伝性もしくは外傷性萎縮性筋障害を含む、筋肉の疾患または状態の処置のための;または、様々な器官の疾患または状態、例えば、生殖腺の変性状態、膵臓の、例えば、I型およびII型糖尿病、腎臓の、例えば、ネフローゼならびに心臓、肝臓および腸の疾患または状態の処置;c)創傷治癒の促進;d)例えば、急性心筋梗塞後の心筋細胞死の予防;e)血管再生の促進;f)学習する能力ならびに/または短期および/もしくは長期記憶の刺激;g)虚血による細胞死の予防;h)アルコール消費による身体損傷の予防;i)プリオン疾患の処置;j)癌の処置。図の説明 図1. FGFR1 Ig1モジュールの構造。A) Ig1モジュールの構造のリボン表示。B) Ig1モジュールの20個の多層構造の骨格原子のオーバーレイ。C) Ig1およびIg3モジュールのA/A'ループ領域の構造の比較。 図2. FGFR1 Ig1モジュールの結合したFGFR Ig2-Ig3モジュールへの結合。A) Ig1モジュールのIg2-3モジュールへの平衡結合レベル対Ig1モジュールの濃度のプロットを示す。結合は、SPR解析の手段により調べた。Ig1モジュールを、特定の濃度でセンサーチップに注入した。結合は、固定化Ig2-3モジュールを有するセンサーチップへの結合とブランクセンサーチップ(非特異的結合)間の応答相違として特定する。結合は、6回の反復の平均として特定し、エラーバーは、標準偏差を示す。データは、解離定数(Kd)を計算するために理論曲線に合わせた。B) 2 mM非標識Ig2モジュールの添加後の0.5 mM 15N標識Ig1モジュールの化学シフトの変化。C)非標識Ig1モジュールの添加後の0.5 mM 15N標識Ig2モジュールの化学シフトの変化。化学シフトは、15N-HSQCスペクトルから決定した。データは、2回の独立した実験からの平均として特定した。化学シフトの変化は、下記の式を用いて計算した:((5*ΔH)^2+ (ΔN)^2)^0.5[式中、ΔHは、1H化学シフトの変化であり、ΔNは、15N化学シフトの変化である]。 図3. FGFR1 Ig1およびIg2モジュールの構造での様々なFGFR1-リガンド結合サイトのマッピング。A) Ig2モジュールの構造上のIg1モジュールとの相互作用により摂動された、Ig2モジュールの残基のマッピング;およびIg1モジュールの構造上のIg2モジュールとの相互作用により摂動された、Ig1モジュールの残基のマッピング。B) Ig2モジュールへの結合に関与するIg2モジュールの残基、ヘパリン、主要な相互作用サイトを介したFGF(対称および非対称モデルにしたがって)および二次的相互作用サイト(対称モデルにしたがって)のマッピング。 図4. FGFR1 Ig1モジュールの自己阻害効果の定量的解析。A) FGFR1α(三重Ig型)の構造を、Ig1-Ig2リンカーの様々な無作為構造で図式化して記載する(Ig1とIg2モジュール間の相互作用は存在しないと仮定する)。円周は、FGFR1 Ig1およびIg2モジュールのN末端間の平均距離に相当する。B) 様々なIg1-Ig2リンカー長およびFGF1濃度に関する、FGF1-FGFR1β(2個のIg型)結合(青色)、FGF1-FGFR1α(三重Ig型)結合(緑色)および分子内Ig1-Ig2結合(赤色)の刺激。C) FGF1-FGFR1α結合(パネルBから)に関するデータポイントを、明かな解離定常値を計算するために、単一サイト結合を記載する曲線に適合させた。D) Ig1モジュールの自己阻害効果による親和性減少対リガンド-FGFR1β(2個のIg型)結合の解離定数(Kd)のプロット。 図5. FGFR1のリン酸化におけるFGFR1 Ig1およびIg2モジュールおよび由来するペプチドの効果。TREX-293細胞を、C-末端StrepII-タグを含むFGFR1で安定的にトランスフェクトし、特定の濃度で、100 ng/mlのFGF1、または他の化合物で20分間、刺激した。FRD1は、Ig1モジュールを表し、FRD2は、Ig2モジュールを表し、FRD1aは、Ig1モジュールのIg1-Ig2結合サイトに相当するペプチドを表し、FRD2aおよびFRD2bは、Ig2モジュールのIg1-Ig2結合サイトに相当するペプチドを表す。刺激後、FGFRを、抗ホスホチロシン抗体を用いて免疫精製し、次いで、StrepII-タグ(パネルA)に対する抗体を用いたイムノブロッティングにより解析した。FGFR1リン酸化の定量(パネルB)は、バンド強度の濃度解析により行った。リン酸化は、100%まで標準化したコントロール(非処理細胞)と比較して推定した。エラーバーは、平均の1つの標準誤差を表す。処理した細胞をコントロールと比較するときの、対応のあるt検定によるp <0.05(*で表される)およびp<0.01(**で表される) (t検定は、6回の独立した非標準化データで行った)。 図6. FGFR1のIg1およびIg2モジュールのN末端間の平均距離の推定。rは、Ig1とIg2モジュールのN末端間の距離であり、lは、リンカー長であり、pは、Ig1モジュールの長さであり、そしてΨは、Ig1モジュールの長軸ならびにIg2モジュールのN末端およびIg1モジュールのC末端に結合する直線間の角度である。 図7. FGFRのIg1対Ig2相互結合サイトに由来するペプチドFRD2a(配列番号8)(A)およびFRD2b(配列番号13)(B)を用いた処理に対する応答での小脳顆粒神経細胞の神経突起伸張。培養での神経突起の長さを、コントロール(未処理培養)と比較した処理した培養での神経突起の長さの割合として提供する。発明の詳細な説明1. 受容体 “繊維芽細胞成長因子受容体”または“FGFR”は、特異的に、1個またはそれ以上の繊維芽細胞成長因子に結合するポリペプチドのことを言う。FGFRは、典型的には、リンカー領域を介して相互に接続した3個の免疫グロブリン様モジュール(Igモジュール)Ig1、Ig2およびIg3からなる細胞外ドメイン、膜貫通ドメインならびに細胞内チロシンキナーゼドメインを含む、1本鎖膜貫通型ポリペプチドである。 本発明は、機能的細胞表面FGFRに関する。“機能的細胞表面受容体”は、細胞の外側の細胞膜に位置し、細胞外リガンドの特定可能集団を有する受容体を意味する。“リガンド”は、受容体分子の特定のサイトに結合する任意の分子である。リガンドの特定のサイトでの受容体への結合は、通常、細胞外で起こり、典型的には、受容体分子の変化を生じ、それは、さらに膜を介して伝達され、細胞内シグナル伝達を誘導し、その結果、細胞の生理学的な応答を生じる。細胞の生理学的な応答、例えば、細胞代謝の変化、細胞分化の誘導、細胞増殖の終結または誘導、細胞の生存または死、細胞の運動行動の変化は、受容体のどの特定のサイトがリガンドにより占有されているか(複数のリガンドにより占有されている場合もある)、または受容体の細胞内および細胞外環境および/または、とりわけ、リガンド-受容体相互作用(例えば、親和性および/または相互作用の持続)に依存する。 受容体へのリガンド結合は、しばしば、受容体の活性化状態の変化を生じ、例えば、受容体は、細胞内の生化学的反応のカスケードを開始し、上記の1個またはそれ以上の細胞応答を生じることができるようになる。リガンドの結合はまた、受容体活性の阻害を生じ得て、それは、受容体が、通常はリガンド結合により開始される生化学的反応のカスケードを開始できなくなることを意味する。 今までのところ当分野で記載されたFGFRリガンドの集団は、繊維芽細胞成長因子(FGF)、ヘアピンおよび神経細胞接着分子NCAM、L1ならびにN-カドヘリンを含む。後者のリガンドの結合サイトは異なっており、FGFR分子の細胞外部分に位置する。1つの個々のFGFR分子はまた、Ig2モジュールに位置する特定の結合サイトで、他の個々のFGFR分子と細胞外で結合し得て、したがって、FGFR二量体を形成する。FGFR活性のために重要なFGFR-to-FGFRは、リガンド結合の過程で生じ、したがって、リガンドは、受容体結合/二量体化を助ける。2個の個々のFGFR分子の自然発生の二量体化は、ほとんど起こらず、通常は、病的状態と関連している。 本発明にしたがって、リンカー領域により分離したIg1およびIg2モジュールを含む個々のFGFR分子は、Ig1およびIg2モジュール相互作用が、該個々のFGFR分子と他の個々のFGFR分子の相互作用を妨げ、したがってFGFRの二量体化を妨げるとき、相互作用のための結合サイトを含む。Ig1およびIg2モジュールの相互作用は、該モジュールの特定のアミノ酸残基を含む。相互結合サイトの相互作用するアミノ酸残基は、同じFGFR分子のIg1およびIg2モジュールの両方の残基を含む。 したがって、本発明にしたがい、同じFGFRポリペプチドのIg1およびIg2モジュールの相互作用は、該FGFRポリペプチドと他のFGFRポリペプチドの相互作用を妨げて、したがって、FGFの非存在でのFGFR自己活性化を妨げる。本発明に記載の同じFGFR分子のIg1およびIg2モジュールの相互結合は、また、FGFR-リガンド相互作用の親和性を減少させるおよび/またはFGFR-リガンド受容体複合体の安定性を減少させ、その結果、FGFR活性を阻害することにより、リガンド、例えば、FGF、ヘパリン、細胞接着分子によるFGFRの活性化を減少させる。 したがって、第1の局面では、本発明は、FGFRの相互Ig1対Ig2結合サイトおよびこの結合サイトでのIg1とIg2モジュールの相互作用を調節することができる化合物に関する。 本発明の化合物の1つの態様では、Ig1およびIg2モジュールの相互作用に関与するアミノ酸残基を含んだ、FGFRの断片を含む単離したペプチドである。ペプチドが、相互Ig1対Ig2結合サイト由来の連続したアミノ酸配列を含むFGFRの断片を含むことは、本発明の好ましい態様である。1つの態様では、ペプチドは、Ig1モジュールのアミノ酸残基を含む相互Ig1対Ig2結合サイトの一部に由来する、連続したアミノ酸配列を含み得る。他の態様では、本発明に記載のペプチドは、Ig2モジュールのアミノ酸残基を含む相互Ig1対Ig2結合サイトの一部に由来する、連続したアミノ酸配列を含み得る。 したがって、1つの態様では、本発明に記載のペプチドは、相互Ig1対Ig2結合サイトでのFGFRのIg1モジュールと相互作用し得る。他の態様では、本発明に記載のペプチドは、相互Ig1対Ig2結合サイトでのFGFRのIg2モジュールと相互作用し得る。 本発明のペプチドは、任意のFGFR、例えば、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4およびFGFR5に結合することができるか、またはFGFR1-5のいずれかの変異型、例えば、天然もしくは組み換えFGFR変異型、例えば、オルタナティブスプライシングにより産生されるFGFR変異型、例えば、FGFR1bもしくはFGFR2b、または遺伝学的多型、または組み換えFGFRのいずれかの型に結合し得る。本発明のFGFRおよびその変異型は、本明細書に記載した相互Ig1対Ig2モジュール結合サイトを含むか、または少なくとも該相互結合サイトの一部を含むものと理解すべきである。本発明の相互結合サイトを含む本発明のFGFRの例は、GenBankデータベースAss. Nos:P11362 (ヒトFGFR1に相当する)、P21802 (ヒトFGFR2に相当する)、P22607 (ヒトFGFR3に相当する)、P22455 (ヒトFGFR4に相当する)またはAAK26742 (ヒトFGFR5に相当する)で同定したFGFRポリペプチドであり得る。 本発明に記載のペプチドは、FGFRの活性を調節することができるペプチドである。1つの態様では、該ペプチドは、FGFRを活性化し得る。他の態様では、該ペプチドは、FGFRを阻害し得る。 好ましい態様では、本発明のFGFRは、FGFR1またはその変異型である。したがって、1つの態様では、FGFR1は、本発明のペプチドにより活性化され得る。他の態様では、FGFR1は、本発明のペプチドにより阻害され得る。アミノ酸配列 本発明に記載のペプチドは、相互Ig1対Ig2結合サイトに由来する連続したアミノ酸配列を含むFGFRの断片を含む。本発明に記載のそのようなアミノ酸配列は、下記のアミノ酸配列から選択され得る:TLPEQAQPWGA (配列番号1)TKYQISQPEV (配列番号2)EPGQQEQLV (配列番号3)SLEQQEQKL (配列番号4)SLVEDTTLEPEEP (配列番号5)GTEQRVVGRAAEV (配列番号6)EASEEVELEPCLA (配列番号7) EKMEKKLHAV (配列番号8)EKMEKRLHAV (配列番号9)ERMDKKLLAV (配列番号10)QRMEKKLHAV (配列番号11)SKMRRRVIAR (配列番号12)AAKTVKFKC (配列番号13)AANTVKFRC (配列番号14)AANTVRFRC (配列番号15)AGNTVKFRC (配列番号16)またはVGSSVRLKC (配列番号17)。 ある好ましい態様では、本発明に記載のペプチドは、相互Ig1対Ig2結合サイトの一部に由来し、FGFRのIg1モジュールのアミノ酸残基を含む連続したアミノ酸配列を含み得る。したがって、この態様では、本発明は、下記の配列に関する:TLPEQAQPWGA (配列番号1)TKYQISQPEV (配列番号2)EPGQQEQLV (配列番号3)SLEQQEQKL (配列番号4)SLVEDTTLEPEEP (配列番号5)GTEQRVVGRAAEV (配列番号6)EASEEVELEPCLA (配列番号7)。 本発明にしたがって、配列番号1-7として同定したアミノ酸配列すべてが、該配列の、Ig2モジュールに位置するFGFRのIg1対Ig2相互結合サイトのアミノ酸残基との相互作用のために重要な結合モチーフを含み、該結合モチーフは、下記の式:Q/E-(x)3-xp[式中、xpは、疎水性アミノ酸残基であり、そして(x)3は、3個のアミノ酸残基のアミノ酸配列である(ここで、xは、任意のアミノ酸残基である)]を有する。本発明にしたがって、残基xpは、任意の疎水性アミノ酸残基であり得るが、残基V、LまたはPが好ましい。また、アミノ酸配列(x)3が、少なくとも1個の残基Qまたは少なくとも1個の残基Eを含むことが好ましく、(x)3配列がさらに、荷電アミノ酸残基または疎水性アミノ酸残基を含むことがより好ましい。好ましい疎水性残基は、P、I、LまたはVから選択され得る。最も好ましいのは、任意の下記アミノ酸配列に相当するモチーフである:QAQPW (配列番号18)QISQP (配列番号19)QQEQL (配列番号20)QEQKL (配列番号21)QEQLV (配列番号22)EPEEP (配列番号23)EQRVV (配列番号24)EEVEL (配列番号25)。 他の好ましい態様では、本発明に記載のペプチドは、相互Ig1対Ig2結合サイトの一部に由来し、FGFRのIg2モジュールのアミノ酸残基を含む連続したアミノ酸配列を含み得る。したがって、この態様では、本発明は、下記の配列に関する:EKMEKKLHAV (配列番号8)EKMEKRLHAV (配列番号9)ERMDKKLLAV (配列番号10)QRMEKKLHAV (配列番号11)SKMRRRVIAR (配列番号12)AAKTVKFKC (配列番号13)AANTVKFRC (配列番号14)AANTVRFRC (配列番号15)AGNTVKFRC (配列番号16)VGSSVRLKC (配列番号17)。 本発明にしたがって、配列番号8-17は、該配列の、Ig1モジュールに位置するFGFRのIg1対Ig2相互結合サイトのアミノ酸残基との相互作用のために重要な結合モチーフを含む。結合モチーフは、式:K/R-xp-(x)0-1-K/R[式中、xpは、疎水性アミノ酸残基であり、(x)は、荷電アミノ酸残基である]により定義される。本発明にしたがって、xpは、任意の疎水性アミノ酸残基であるが、xpの位置での残基M、LまたはFが好ましい。ある態様では、アミノ酸配列が、3個のアミノ酸モチーフK/R-xp-(x)0-K/R(ここで、xpは、FまたはLである)を含むことが好ましくあり、他の態様では、配列が、4個のアミノ酸モチーフK/R-xp-(x)1-K/R(ここで、xpは、Mである)を含むことが好ましくあり得る。下記のアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列に相当するモチーフが、最も好ましい:KMEK (配列番号26)RMDK (配列番号27)RMEK (配列番号28)KMRR (配列番号29)KFK (配列番号30)KFR (配列番号31)RFR (配列番号32)RLK (配列番号33)。 本発明は、本発明のペプチドにより含まれる好ましいアミノ酸配列として、配列番号1-17および配列番号18-33に関する。しかしながら、結合モチーフQ/E-(x)3-xp[式中、xpは、疎水性アミノ酸残基であり、そして(x)3は、3個のアミノ酸残基のアミノ酸配列である(ここで、xは、任意のアミノ酸残基である)]または、結合モチーフK/R-xp-(x)0-1-K/R[式中、xpは、疎水性アミノ酸残基あり、そして(x)は、荷電アミノ酸残基である]を含む、任意のアミノ酸配列は、本発明のペプチドに含まれ得ると理解されるべきであり、したがって、これらのアミノ酸モチーフのいずれかを含むすべてのアミノ酸配列は、FGFR Ig1対Ig2相互結合サイトと相互作用できるアミノ酸配列として、本発明の範囲内にある。したがって、配列番号1-17は、本発明の範囲内にある非限定的なアミノ酸配列の例を表す。 本明細書では、アミノ酸残基の標準的な一文字表記および標準的な三文字表記を適用する。アミノ酸の略称は、IUPAC-IUB Joint Commission on Biochemical Nomenclature Eur. J. Biochem, 1984, vol. 184, pp 9-37の推薦に従う。本明細書および請求項を通して、天然アミノ酸の三文字表記または一文字表記を使用する。L型またはD型が特定されていないとき、問題のアミノ酸は、天然L型(cf. Pure & Appl. Chem. Vol. (56(5) pp 595-624 (1984))またはD型を有し、その結果、形成されるペプチドは、L型、D型、またはL型およびD型が混在した配列のアミノ酸を構成し得るものと理解すべきである。 何も特定されていなければ、本発明のペプチドのC末端アミノ酸は、遊離カルボン酸として存在し、これはまた、“-OH”として特定し得るものと理解されるべきである。しかしながら、本発明の化合物のC末端アミノ酸は、アミド化された誘導体であり、それは、“-NH2”として示される。他に何も記載がなければ、ポリペプチドのN末端アミノ酸は、遊離アミノ基を含み、これはまた、“H-”として特定し得る。 他に何も特定されていなければ、アミノ酸は、自然に生じるか否かを問わず、任意のアミノ酸、例えば、アルファアミノ酸、ベータアミノ酸、および/またはガンマアミノ酸から選択し得る。したがって、集団は、非限定的に、A、V、L、I、P、F、W、M、G、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、H Aib、Nal、Sar、Orn、リジン類似体、DAP、DAPAおよび4Hypを含む。 また、本発明にしたがって、アミノ酸配列の修飾、例えば、アミノ酸のグリコシル化および/またはアセチル化を行い得る。 塩基性アミノ酸残基は、本発明にしたがって、アミノ酸H、KおよびRの残基により表され;酸性アミノ酸残基は、アミノ酸EおよびDの残基により表され;疎水性アミノ酸残基は、アミノ酸A、L、I、V、M、F、YおよびWの残基により表され;中性の弱い疎水性は、P、AおよびGにより表され;中性親水性は、アミノ酸残基Q、N、SおよびTにより表され;架橋形成は、アミノ酸残基Cにより表される。 本発明に記載の好ましいペプチドは、多くとも25個のアミノ酸残基を含む、単離した連続するペプチド配列である。1つの態様では、ペプチドのアミノ酸配列の長さは、15個から25個のアミノ酸残基、例えば、16、17、18、19、20、21、22、23または24個のアミノ酸残基であり得る。他の態様では、ペプチドのアミノ酸配列の長さは、3個から15個のアミノ酸残基、例えば、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14個のアミノ酸残基であり得る。アミノ酸配列が、5個から15個のアミノ酸残基、例えば、6個から14個、例えば、7、8、9、10、11、12または13個の範囲の長さを有するペプチドが好ましい。本発明のあらゆるペプチドは、配列番号1-17の配列のいずれかから選択される少なくとも1個のアミノ酸配列またはこれらの配列のいずれかの少なくとも1個の断片を含むものと理解される。 したがって、本発明のある態様では、配列番号1-17から選択される配列の断片を含むペプチドに関し得る。他の態様では、本発明は、配列番号1-17の変異型に関し得る。 本発明にしたがって、配列番号1-17の配列から選択されるアミノ酸配列の変異型は、下記のものであり得る:i)選択した配列と少なくとも60%の同一性、例えば、61-65%の同一性、例えば、66-70%の同一性、例えば、71-75%の同一性、例えば、76-80%の同一性、例えば、81-85%の同一性、例えば、86-90%の同一性、例えば、91-95%の同一性、例えば、96-99%の同一性を有するアミノ酸配列(ここで、同一性は、選択した配列と照合したときに、該配列中の同一アミノ酸の割合として定義される)。アミノ酸配列間の同一性は、既知のアルゴリズム、例えば、BLOSUM 30、BLOSUM 40、BLOSUM 45、BLOSUM 50、BLOSUM 55、BLOSUM 60、BLOSUM 62、BLOSUM 65、BLOSUM 70、BLOSUM 75、BLOSUM 80、BLOSUM 85、またはBLOSUM 9を用いて計算し得る; ii)選択した配列と少なくとも60%のポジティブアミノ酸一致、例えば、61-65%のポジティブアミノ酸一致、例えば、66-70%のポジティブアミノ酸一致、例えば、71-75%のポジティブアミノ酸一致、例えば、76-80%のポジティブアミノ酸一致、例えば、81-85 %のポジティブアミノ酸一致、例えば、86-90%のポジティブアミノ酸一致、例えば、91-95%のポジティブアミノ酸一致、例えば、96-99%のポジティブアミノ酸一致を有するアミノ酸配列(ここで、ポジティブアミノ酸一致は、2つの比較される配列の同じ位置での、物理的および/または化学的特性の類似性を有するアミノ酸残基の割合として定義される)。本発明の好ましいポジティブアミノ酸一致は、KとR、EとD、LとM、QとE、IとV、IとL、AとS、YとW、KとQ、SとT、NとSおよびQとRである; iii)選択した配列と同一のアミノ酸配列であるか、またはそれが、該配列と少なくとも60%の同一性、例えば、61-65%の同一性、例えば、66-70%の同一性、例えば、71-75%の同一性、例えば、76-80%の同一性、例えば、81-85%の同一性、例えば、86-90%の同一性、例えば、91-95%の同一性、例えば、96-99%の同一性を有するか、もしくは選択した配列と少なくとも60%のポジティブアミノ酸一致、例えば、61-65%のポジティブアミノ酸一致、例えば、66-70%のポジティブアミノ酸一致、例えば、71-75%のポジティブアミノ酸一致、例えば、76-80%のポジティブアミノ酸一致、例えば、81-85%のポジティブアミノ酸一致、例えば、86-90%のポジティブアミノ酸一致、例えば、91-95%のポジティブアミノ酸一致、例えば、96-99%のポジティブアミノ酸一致を有するアミノ酸配列を有し、そして他の化学的部分、例えば、ホスホリル、硫黄、アセチル、グリコシル部分を含む。 “ペプチド配列の変異型”なる用語は、また、ペプチド配列が、例えば、アミノ酸残基の1個またはそれ以上の置換により修飾され得ることを意味する。L-アミノ酸およびD-アミノ酸の両方を使用し得る。他の修飾は、誘導体、例えば、エステル、糖など、例えば、メチルおよびアセチルエステルを含み得る。 他の局面では、本発明に記載のアミノ酸配列の変異型は、同じ変異型、もしくはその断片または異なる変異型もしくはその断片の中に、少なくとも1個の置換、例えば、互いに独立して導入される複数の置換を含み得る。したがって、複合体の変異型、またはその断片は、互いに独立して、保存的置換含み得て、ここで、該変異型、またはその断片の少なくとも1個のグリシン(Gly)が、Ala、Val、Leu、およびIleからなるアミノ酸の集団から選択されるアミノ酸で置換され、そしてそれぞれ独立して、変異型、またはその断片、ここで、該変異型、またはその断片の少なくとも1個のアラニン(Ala)が、Gly、Val、Leu、およびIleからなるアミノ酸の集団から選択されるアミノ酸で置換され、そしてそれぞれ独立して、変異型、またはその断片、ここで、該変異型、またはその断片の少なくとも1個のバリン(Val)が、Gly、Ala、Leu、およびIleからなるアミノ酸の集団から選択されるアミノ酸で置換され、そしてそれぞれ独立して、変異型、またはその断片、ここで、該変異型、またはその断片の少なくとも1個のロイシン(Leu)が、Gly、Ala、Val、およびIleからなるアミノ酸の集団から選択されるアミノ酸で置換され、そしてそれぞれ独立して、変異型、またはその断片、ここで、該変異型、またはその断片の少なくとも1個のイソロイシン(Ile)が、Gly、Ala、ValおよびLeuからなるアミノ酸の集団から選択されるアミノ酸で置換され、そしてそれぞれ独立して、変異型、またはその断片、ここで、該変異型、またはその断片の少なくとも1個のアスパラギン酸(Asp)が、Glu、Asn、およびGlnからなるアミノ酸の集団から選択されるアミノ酸で置換され、そしてそれぞれ独立して、変異型、またはその断片、ここで、該変異型、またはその断片の少なくとも1個のアスパラギン(Asn)が、Asp、Glu、およびGlnからなるアミノ酸の集団から選択されるアミノ酸で置換され、そしてそれぞれ独立して、変異型、またはその断片、ここで、該変異型、またはその断片の少なくとも1個のグルタミン(Gln)が、Asp、Glu、およびAsnからなるアミノ酸の集団から選択されるアミノ酸で置換され、そして該変異型、またはその断片の少なくとも1個のフェニルアラニン(Phe)が、Tyr、Trp、His、Proからなるアミノ酸の集団から選択されるアミノ酸で置換され、好ましくは、TyrおよびTrpからなるアミノ酸の集団から選択され、そしてそれぞれ独立して、変異型、またはその断片、ここで、該変異型、またはその断片の少なくとも1個のチロシン(Tyr)が、Phe、Trp、His、Proからなるアミノ酸の集団から選択されるアミノ酸で置換され、好ましくは、PheおよびTrpからなるアミノ酸の集団から選択されるアミノ酸で置換され、そしてそれぞれ独立して、変異型、またはその断片、ここで、該断片の少なくとも1個のアルギニン(Arg)が、LysおよびHisからなるアミノ酸の集団から選択されるアミノ酸で置換され、そしてそれぞれ独立して、変異型、またはその断片、ここで、該変異型、またはその断片の少なくとも1個のリジン(Lys)が、ArgおよびHisからなるアミノ酸の集団から選択されるアミノ酸で置換され、そしてそれぞれ独立して、変異型、またはその断片、そしてそれぞれ独立して、変異型、またはその断片、そしてここで、該変異型、またはその断片の少なくとも1個のプロリン(Pro)が、Phe、Tyr、Trp、およびHisからなるアミノ酸の集団から選択されるアミノ酸で置換され、そしてそれぞれ独立して、変異型、またはその断片、ここで、該変異型、またはその断片の少なくとも1個のシステイン(Cys)が、Asp、Glu、Lys、Arg、His、Asn、Gln、Ser、Thr、およびTyrからなるアミノ酸の集団から選択されるアミノ酸で置換される。 したがって、上記から、当然に、ペプチド断片の同じ機能的同等体、または該機能的同等体の断片は、上記本明細書に記載したとおり、保存的アミノ酸の2個以上の集団からの2個以上の保存的アミノ酸置換を含み得るということになる。“保存的アミノ酸置換”なる用語は、“相同なアミノ酸置換”なる用語と同義的に本明細書で用いられる。保存的アミノ酸の集団は、下記のものである:A、G (中性、弱い疎水性)、Q、N、S, T (親水性、非荷電)E、D (親水性、酸性)H、K、R (親水性、塩基性)L、P、I、V、M、F、Y、W (疎水性、芳香族性)C (架橋形成)。 保存的置換は、本発明の好ましい前決定されたペプチドまたはその断片の任意の位置に導入し得る。しかしながら、また、非保存的置換(特に、非限定的に、任意の1個またはそれ以上の位置での非保存的置換)を導入することも望み得る。 本発明のペプチドの機能的同等断片の形成を生じる非保存的置換は、実質的に、極性が異なり得て(例えば、非極性側鎖(Ala、Leu、Pro、Trp、Val、Ile、Leu、PheまたはMet)を有する残基の、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、またはGlnのような極性側鎖を有する残基か、もしくはAsp、Glu、Arg、またはLysのような荷電アミノ酸への置換、または荷電残基もしくは極性残基の非極性残基への置換);および/または ii) 実質的に、ペプチド骨格方向における効果が異なり得て(例えば、ProまたはGlyの他の残基への置換); および/または iii)実質的に、電荷が異なり得て(例えば、GluまたはAspのような負電荷残基の、Lys、HisまたはArgのような正電荷残基への置換(逆もまた然り)); および/または iv) 実質的に、立体的体積(steric bulk)が異なり得る(例えば、His、Trp、PheまたはTyrの様な巨大な残基の、Ala、GlyまたはSerのような小さい側鎖を有する1つへの置換(逆もまた然り))。 1つの態様では、アミノ酸の置換は、それらの疎水性および親水性値ならびに荷電、サイズなどを含むアミノ酸側鎖置換基の相対的な類似性に基づいてなされる。 本発明にしたがって、本発明の選択したアミノ酸配列の断片、例えば、配列番号1-17から選択した配列の断片は、選択したアミノ酸配列の約25 - 99%の長さを有するアミノ酸配列であり得る。好ましくは、本発明に記載の断片は、配列番号1-17の配列のいずれかの少なくとも3個の連続したアミノ酸残基、例えば、配列番号18-33の配列から選択した配列を含む。 本発明に記載の本発明のアミノ酸配列の断片および変異型の両方は、該配列の機能的同等体である。 アミノ酸配列の“機能的同等体”なる用語は、本明細書中では、上記の該アミノ酸配列の変異型または断片のための基準を満たし、該配列または該配列を含む化合物の1個またはそれ以上の機能的活性が可能である分子を意味する。好ましい態様では、本発明のアミノ酸配列の機能的同等体は、FGFRに結合し、その活性を調節することができる。 本発明は、本発明の単離したペプチドおよび本発明のペプチドを含む融合タンパク質に関する。 1つの態様では、ペプチドは、単離したペプチドである。“単離したペプチド”なる用語は、本発明のペプチドが、個々の化合物であり、他の化合物の一部ではなく、例えば、25個のアミノ酸残基より多くを含むポリペプチドであることを意味する。単離したペプチドは、任意の組み換え技術法または化学合成の使用により製造し、他の化合物から分離し得るか、または酵素学的または化学的切断の方法により、より長いポリペプチドまたはタンパク質から分離し、さらに他のタンパク質断片から分離した。 1つの態様において、本発明の単離したペプチドは、配列番号1-33の配列の1個またはそれ以上を含み得る。他の態様において、単離したペプチドは、配列番号1-33の配列の1個またはそれ以上からなり得る。 したがって、1つの態様では、ペプチドは、配列番号1-8または18-28から選択される配列、好ましくは、配列番号1-8から選択される配列、またはその機能的同等体を含む。他の態様では、ペプチドは、配列番号1-8から選択される配列またはその機能的同等体からなり得る。 他の態様では、ペプチドは、配列番号9-17または26-33から選択される配列、好ましくは、配列番号9-17から選択される配列、またはその機能的ホモログを含み得る。 好ましいアミノ酸配列は、FGFR活性を調節するのに必要な型に依存して、選択し得る。したがって、1つの態様では、FGFRを活性化することが必要であり得て、他の態様では、FGFRの活性を減らすか、または該受容体を阻害することが必要であり得る。時々、好ましいアミノ酸配列の選択は、FGFRのどの受容体が関与しているかに依存し得る。例えば、1つの態様では、FGFR1が関与し得て、他の態様では、FGFR2またはFGFR3が関与し得る。また他の態様では、FGFR4の活性を調節する必要があり得る。しかしながら、本発明にしたがって上記のアミノ酸配列が、すべてのFGFRの相互Ig1対Ig2モジュール結合サイトと相互作用できるとき、どのFGFRが関与しているかに依存した好ましいアミノ酸配列の選択は、時々、あまり重要ではない。多量体化合物 単離した本発明のペプチド配列は、融合タンパク質で化学結合により、他の単離したペプチド配列と結合し得るか、またはアミノ酸配列は、リンカー基を介して互いに結合し得る。ある態様では、本発明のペプチド配列は、一量体のオリゴマー(多量体)として製剤し得て、ここで各一量体は、上記に定義したペプチド配列である。特に、デンドリマーのような多量体ペプチドは、複数の柔軟なペプチド一量体による立体配座決定要因またはクラスターを形成し得る。1つの態様では、化合物は二量体である。より好ましい態様では、化合物は、デンドリマーであり、例えば、リジン骨格に結合するか、またはポリマー担体、例えば、タンパク質担体、例えば、BSAに結合する、4個のペプチドである。繰り返し配列のようなポリマー化または様々な担体への連結は、当分野で既知であり、例えば、リジン骨格、例えば、4個のペプチド、8個のペプチド、16個のペプチド、または32個のペプチドを有するリジンデンドリマーである。他の担体は、脂溶性デンドリマー、または脂溶性誘導体により形成されるミセル様担体、または星形(星様)炭素鎖ポリマー共役体であり得る。 したがって、本発明にしたがい、多量体化合物は、本発明の2個またはそれ以上の同一もしくは異なるペプチド配列を含むポリマーであり得て、ここで、好ましい態様では、少なくとも2個またはそれ以上のアミノ酸配列の1つは、配列番号1-15、または該配列の断片もしくは変異型から選択される。 ある態様では、化合物は、配列番号1-15から選択される2個の同一のアミノ酸配列、または選択した配列の2個の同一の断片もしくは変異型(ここで、該アミノ酸配列、断片または変異型)を含み得る。または、化合物は、配列番号1-15から選択したアミノ酸配列の4個の同一のコピーを含み得るか、または該選択した4個の同一の配列の断片もしくは変異型を含み得る。 他の態様では、化合物は、2個またはそれ以上の異なるアミノ酸配列を含み得て、ここで、2個のアミノ酸配列のうち少なくとも1個は、配列番号1-15、またはその断片もしくは変異型から選択される配列である。 また他の態様では、化合物は、2個またはそれ以上の異なるアミノ酸配列を含み得て、ここで、該2個またはそれ以上のアミノ酸配列は、配列番号1-15、またはその断片もしくは変異型から選択される。 本発明の好ましい多量体化合物は、アミノ酸配列が、リンカーまたはリンカー集団を介して互いに結合する化合物である。 リンカーは、本発明にしたがって、2個またはそれ以上のペプチド配列と架橋することができるあらゆる分子または化学的部分であり得て、例えば、それは、一般式;X[(A)nCOOH][(B)mCOOH][式中、nおよびmは、独立して、1から20の整数であり、Xは、HN、H2N(CR2)pCR、RHN(CR2)pCR、HO(CR2)pCR、HS(CR2)pCR、ハロゲン-(CR2)pCR、HOOC(CR2)pCR、ROOC(CR2)pCR、HCO(CR2)pCR、RCO(CR2)pCR、[HOOC(A)n][HOOC(B)m]CR(CR2)pCR、H2N(CR2)p、RHN(CR2)p、HO(CR2)p、HS(CR2)p、ハロゲン-(CR2)p、HOOC(CR2)p、ROOC(CR2)p、HCO(CR2)p、RCO(CR2)p、または[HOOC(A)n][HOOC(B)m](CR2)pであり(ここで、pは、0または1から20の整数である)、AおよびBは、独立して、置換または非置換C1-10 アルキル、置換または非置換 C2-10 アルケニル、置換または非置換環式部分、置換または非置換ヘテロ環式部分、置換または非置換芳香族性部分であるか、またはAおよびBは、一緒になって、置換または非置換環式部分、置換または非置換ヘテロ環式部分、置換または非置換芳香族性部分を形成する]で示されるアキラルのジ-、トリ-またはテトラカルボン酸であり得る。 C1-10 アルキルなる用語は、1-10個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、ブチル、およびtertブチルを意味する。 C2-10 アルケニルなる用語は、2-10個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルケニル基を意味し、例えば、エチニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、およびtert-ブテニルを意味する。 環式部分なる用語は、シクロヘキサン、およびシクロペンタンを意味する。 芳香族性部分なる用語は、フェニルを意味する。 “AおよびBは、環式の、ヘテロ環式のまたは芳香族性部分を形成する”なる表現は、シクロヘキサン、ピペリジン、ベンゼン、およびピリジンを表す。 本発明の多量体化合物が、上記のリンカーを含むそれらの態様では、該化合物は、好ましくは、WO0018791およびWO2005014623に記載されたとおり、LPA法(リガンド提示会合法)により取得される。 本発明の好ましいリンカーの他の例は、アミノ酸リジンであり得る。個々のペプチド配列は、リジンのようなコア分子に結合し、それにより、個々のペプチド配列(複数もある)の樹状多量体(デンドリマー)を形成し得る。デンドリマーの産生はまた、当業者に既知であり(PCT/US90/02039, Lu et al., (1991) Mol Immunol. 28:623-630; Defoort et al., (1992) Int J Pept Prot Res. 40:214-221; Drijfhout et al. (1991) Int J Pept Prot Res. 37:27-32)、デンドリマーは、現在、研究および医学的応用において広く使用されている。 また、ある態様では、アミノ酸システインが、好ましいリンカー分子であり得る。 本発明の好ましい態様の1つは、リジンコア分子に結合した4つの個々のアミノ酸配列を含む化合物、すなわち、本発明のペプチド配列の樹状四量体/デンドリマーに関する。 本発明の多量体化合物、例えば、LPA-二量体またはデンドリマーは、本発明の最も好ましい化合物である。本発明の2個またはそれ以上の個々の配列を含む他の型の多量体化合物は、また、本発明の範囲内にある。これらの化合物は、当業者に既知の技術を用いて産生し得る。 ペプチド配列は、アミノ-またはカルボキシ-基を介して、好ましくは、N-またはC末端アミノ-またはカルボキシ-基を介して、それらのリンカーに共有的に結合し得る。生物学的活性 本発明にしたがって、上記の化合物は、機能的に活性な化合物である。“化合物”なる用語は、本明細書では、本発明の単離したペプチド配列および該配列を含む化合物に関する。 化合物は、機能的な細胞表面受容体に結合し、該受容体の活性を調節することができる。本発明に記載の受容体は、FGFRであり、複数のFGFRのいずれかから選択し得て、例えば、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4またはFGFR5であり得る。本発明に記載の化合物は、FGFRのIg1およびIg2モジュールに位置する相互Ig1対Ig2結合サイトで、後者FGFRのいずれかに結合することができる。 本発明は、好ましくは、FGFR1およびFGFR1-関連シグナル伝達に関する。本発明の化合物によりFGFR1シグナル伝達を調節した結果、受容体活性化状態の変化を生じ、それは、FGFR1チロシンリン酸化により反映され得るか、またはFGFR1-関連シグナル伝達に関与する1個またはそれ以上の細胞内タンパク質の活性化の状態、例えば、STAT1、JNK、PLCγ、ERK、STAT5、PI3K、PKC、FRS2および/またはGRB2タンパク質の活性化状態により反映され得る。本発明の化合物によるFGFR1シグナル伝達の調節の結果は、また、細胞分化関連効果に関し得る。 FGFRシグナル伝達が、FGFRのリン酸化のレベルとして測定されるとき、リン酸化の程度は、コントロール値の、少なくとも、20%超、例えば、少なくとも、20-200%超、例えば、少なくとも、50-200%超として推定される。本明細書でのコントロール値は、FGFRを活性化することができる化合物が存在しない媒体中での、FGFRのリン酸化の程度を意味する。 FGFRシグナル伝達の調節の観点から化合物の有効濃度を推定すると、該濃度は、0.1-1000 μM、1-1000 μM、例えば、1-200 μM、例えば、10-200 μM、例えば、20-180 μM、例えば、30-160 μM、例えば、40-140 μM、例えば、50-130 μM、例えば、60-120 μM、例えば、70-110 μM、例えば、80-100 μMであり得る。 細胞分化関連効果のような下流のFGFRシグナル伝達効果を推定すると、本発明は、好ましくは、結節の形成、軟骨の形成、または該効果の2個またはそれ以上に関し(Listrum, G. P. et al. J. Histochem. Cytochem. 1999, 47:1-6)、そのような効果は、光学顕微鏡法、比濁法、またはフローサイトメトリーにより検出し得る。細胞分化関連効果は、また、骨シアロプロテイン(J. Bone Miner. Res. 1998, 13:1852-61; Genomics 1998, 53: 391-4)、またはX型コラーゲン(Cell Tissue Res. 1998, 293: 357-64)、ヒトILA遺伝子(Osteoarthritis Gartilage 1997, 5: 394-406)、またはII型コラーゲン/もしくはMGP(J Miner Res. 1997: 1815.23)などのRNAの発現またはタンパク質レベルの変化として測定し得る。 FGFRチロシンリン酸化またはFGFR関連下流シグナル伝達の分子、例えば、STST1、JNK、PLCγ、ERK、STAT5、PI3K、PKC、FRS2および/またはGRB2タンパク質のいずれかの活性化は、市販されている活性化タンパク質に対する抗体を用いて、任意の慣用的な方法、例えば、免疫細胞化学、免疫ブロッティングまたは免疫沈降により推定し得る。活性化の程度は、コントロール値の、少なくとも、20%超/以下、例えば、少なくとも、20-200%超/以下、例えば、少なくとも、50-200%超/以下として推定される。コントロール値は、FGFRを活性化することができる化合物が存在しない媒体中での、興味のあるタンパク質のリン酸化の程度として推定される。 他の態様では、本発明は、FGFRとの相互作用に関与したタンパク質と関連するシグナル伝達に関し、例えば、該タンパク質は、FGFR1リガンド、好ましくは、受容体様リガンドFGFR1である。FGFR1のそのようなリガンドの好ましい態様は、神経細胞接着分子NCAMおよびL1である。受容体様FGFRリガンドは、FGFRと相互作用でき、あらゆるシグナル伝達カスケードと関連する他のタンパク質を含み得る。 本発明のFGFR1の最も好ましい受容体様リガンドは、NCAMである。したがって、本発明は、FGFR-NCAM相互作用と関連する生物学的効果、例えば、神経突起伸張または神経細胞分化に関する。 NCAM依存性シグナル伝達は、さまざまな下流の分子を含み、シグナル伝達におけるその活性を測定し得る。本発明は、特に、接着斑キナーゼFAK、チロシンキナーゼFynおよび/または環状AMP応答結合エレメントタンパク質CREBの活性の評価に関する。リン酸化の程度は、コントロール値の少なくとも、20%超/以下、例えば、少なくとも、20-200%超/以下、例えば、少なくとも、50-200%超/以下として推定される。コントロール値は、上記のとおり推定される。 NCAM依存性シグナル伝達の活性化または阻害は、また、形態レベルでの細胞応答、特に細胞分化関連効果を評価することにより測定し得る。したがって、アッセイは、他の特定の態様では、NCAM依存性細胞凝集、細胞運動、神経突起生成、生存、記憶および学習と関連した可塑性における候補化合物の効果の評価に関する。 当業者は、上記細胞応答を評価するために当分野で開発された多くのアッセイから選択し得る。細胞凝集および神経突起生成は、例えば、Skladchikova et al. J. Neurosci. Res 1999, 57: 207-18に記載されたとおり評価し得る。増殖およびアポトーシスは、あらゆる市販されているアッセイおよびキットを用いて、製造者の手順にしたがって評価し得る。 したがて、本発明の化合物は、本明細書に記載した相互結合サイトに直接結合することにより、FGFRを活性化することができるか、またはそれらは、他のリガンドに依存して活性化したFGFRを減らし得る。したがって、本発明の化合物は、他のリガンド結合に依存して、受容体シグナル伝達を調節し得る。 受容体の活性化に対する細胞応答は、受容体刺激の強度に依存していることは既知であり、それは、例えば、リガンドと受容体の相互作用の親和性値、および/またはそのような相互作用の持続により特徴づけ得る。したがって、FGFならびに受容体の相互作用の親和性および持続は、本発明の化合物により影響し得る。したがって、本発明の他の態様では、それは、他の受容体リガンド、例えば、FGFまたは細胞接着分子により誘導される受容体シグナル伝達を調節することができる化合物を提供することである。 本明細書では、“相互作用する”なる用語は、“結合する”なる用語と同じ意味で用いられ、本発明の化合物とFGFR間の直接または間接的な接触のことを言い、好ましくは、直接的な相互作用である。“直接の相互作用”なる用語は、問題の化合物が、直接、受容体に結合することを意味する。 本発明に記載の化合物の結合親和性は、好ましくは、Kd値が、10-3から10-10 Mの範囲内、例えば、好ましくは、10-4から10-8Mの範囲内である。本発明にしたがって、結合親和性は、この目的のために適当なあらゆる利用可能なアッセイにより決定し得て、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)解析または核磁気共鳴(NMR)分光法である。 本発明の化合物のFGFRへの結合は、FGFRが介在する一連の細胞応答を生じる。したがって、FGFRに結合し、FGFRを活性化する/阻害することができる化合物は、また、FGFR提示細胞の分化を誘導し、FGFR提示細胞の増殖を調節し、FGFR提示細胞の生存を刺激し、および/またはFGFR提示細胞の形態学的可塑性を刺激することができる。 “FGFRを提示する細胞”なる用語は、細胞の外部膜にFGFRを発現する細胞を意味し、これらの細胞は、例えば、神経細胞、グリア細胞、あらゆる型の筋細胞、神経内分泌細胞、生殖器細胞および腎臓細胞、内皮細胞、繊維芽細胞、骨芽細胞、癌細胞、幹細胞および胚細胞である。FGFRの活性化は、受容体を発現する細胞の増殖、分化および生存と関連することが示された。 したがって、FGFRは、発生の間および成人期の間での神経細胞生存(Haspel et al. (2000) J Neurobiol 15:287-302; Roonprapurt et al. (2003) J Neurotrauma 20:871-882; Wiencken-Barger et al. Cereb Cortex (2004) 14:121-131; Loers er al. (2005) J Neurochem 92:1463-1476; Reuss and von Bohlen und Halbach (2003) Cell tissue Res, 313:139-57)、筋細胞および癌細胞(Ozen et al. (2001) J Nat Cancer Inst. 93:1783-90; Miyamoto et al. (1998) J Cell Physiol. 177:58-67; Detilliux et al. (2003) Cardiovasc Res. 57:8-19)の重要な決定要因であることが示された。FGF受容体の活性化は、正常なおよび病的な血管新生に関与している(Slavin, Cell Biol Int 1995, 19:431-44)。それは、発生、増殖、機能化および生存骨格筋細胞、心筋細胞および神経細胞のために重要である(Merle at al., J Biol Chem 1995, 270:17361-7; Cheng and Mattson, Neuron 1991, 7:1031-41; Zhu et al., Mech Ageing Dev 1999, 108:77-85)。FGFRシグナル伝達の変更が、異なる病的状態、例えば、糖尿病の発生と関連していた(Hart et al., Nature 2000, 408:864-8)。受容体は、正常な腎臓構造の維持で役割を果たし(Cancilla et al., Kidney Int 2001, 60:147-55)、創傷治癒および癌疾患に関与する(Powers et al., Endocr Relat Cancer. 2000, 7:165-97)。FGFRの活性化は、神経突起伸張のために必要である(Anderson et al., J Neurochem. 2005 95(2):570-83; Neiindam et al., J Neurochem. 2004 91(4):920-35; Niethammer et al., J Cell Biol. 2002 157(3):521-32)。受容体は、学習および記憶と関連する過程に関与することが示された(Cambon et al,. J Neurosci. 2004, 24(17):4197-204; Reuss and von Bohlen und Halbach (2003) Cell tissue Res, 313:139-57)。 したがって、FGFRシグナル伝達を刺激する潜在性を有する物質は、神経突起伸張を促進し、神経細胞の再生および/または分化を刺激し、細胞生存、特に、神経細胞生存を刺激し、幹細胞または未成熟細胞の分化、例えば、神経細胞分化を刺激し、記憶および学習に関連する神経可塑性を刺激する潜在性を有し、例えば、神経再生および神経可塑性の他の形態を促進する化合物を探索する主要なターゲットである。 本発明の化合物は、神経突起伸張を促進することが示され、したがって、損傷後の神経結合の再生、およびそれによる機能回復の有効な促進剤、ならびにそのような効果が必要とされる他の状態での神経機能の有効な促進剤であると考えられる。さらに、本発明の化合物は、神経細胞前駆体細胞分化を刺激し、成熟した神経細胞へ変換することができる。本発明の化合物はまた、学習および記憶と関連する神経細胞の形態学的可塑性の有力な刺激剤である。 本明細書では、“分化”は、神経前駆細胞の分化の開始の過程、すなわち、未成熟な神経細胞の成熟、例えば、該神経細胞の最後の細胞分裂の後に起こる神経突起伸長、ならびに、例えば、学習および記憶と関連して脳で起こる成熟神経細胞の形態学的可塑性の両方に関する。したがって、本発明の化合物は、神経前駆細胞および未成熟な神経細胞分裂を止め、該細胞の成熟を開始し、例えば、神経突起の伸長を開始でき得る。あるいは、“分化”は、神経前駆細胞、未成熟な神経細胞または胚性幹細胞の遺伝学的、生化学的、形態学的および生理学的形質転換の過程の開始に関し、それは、正常な神経細胞の機能的特徴(該特徴は、当分野で定義されている)を有する細胞の形成を生じる。本発明は、“未成熟な神経細胞”を、神経細胞に特有の特徴として当業者に受容される神経細胞の少なくとも1個の特徴を有する細胞と定義する。 本発明にしたがって、上記ペプチド配列の少なくとも1個を含む化合物は、神経突起伸張を刺激することができる。本発明は、神経突起伸張改善/刺激、例えば、コントロール/非刺激細胞の神経突起伸張の値の約75%超の改善/刺激、例えば、50%、例えば、約150%、例えば、100%、例えば、約250、例えば、200%、例えば、約350%、例えば、300%、例えば、約450%、例えば、400%、例えば、約500%に関する。 候補化合物の神経突起伸張を刺激する能力の推定は、例えば、実施例に記載したとおり、神経突起伸張の推定のための既知の方法またはアッセイを用いることによりなし得る。 本発明にしたがって、化合物は、細胞増殖基質不可溶性固定構成成分としておよび細胞増殖培地の可溶性構成成分として、神経突起生成活性を有する。本明細書において“固定”は、化合物が、水または水溶液に不溶性な基質に結合/接着し、それにより、さらに、該化合物が、そのような溶液に不溶性になることを意味する。医学的応用のために、不可溶性および可溶性化合物の両方が、適用に考えられるが、可溶性化合物が好ましい。水または水溶液に可溶な化合物は、“可溶性化合物”のもとにあると理解される。 また、他の好ましい態様では、本発明の化合物は、シナプス可塑性を刺激できる。したがって、該化合物は、さらに学習および記憶を刺激することができる。1つの態様では、本発明のペプチド配列は、スパイン形成を刺激し得て、他の態様では、配列は、シナプス効率を促進し得る。したがって、本発明はさらに、本発明のペプチド配列および/または該配列を含む化合物を用いることを含む、記憶および/または学習を刺激するための方法を提供する。 他の好ましい態様では、本発明の化合物は、細胞生存を刺激できる。本発明に記載の化合物は、細胞死、特に、神経細胞死、例えば、外傷または疾患による細胞死を予防することができる。本明細書では、“生存を刺激する/促進する”なる表現は、“細胞死を予防する”なる表現と同意語として使用される。細胞生存を刺激する/促進することにより、疾患を予防するか、または変性疾患を患っている個体での神経系のさらなる変性を予防することが可能である。“生存”は、細胞が外傷を受けて、もし、本発明の化合物を、該細胞が変性するのを予防するために使用しなかったならば、高い確立で死ぬ通常の状況下で、該化合物が、該外傷を受けた細胞の生存を促進するか、または刺激する過程のことを言う。 末梢神経細胞は、さまざまな障害後、それらの標的と機能的な結合を再生するおよび再確立する、限定された程度の潜在性を有する。しかしながら、機能的回復が完成することはまれであり、末梢神経細胞損傷は、相当な問題のままである。中枢神経系では、再生に関する潜在性は、さらにより限定されている。したがって、末梢および中枢神経系での神経細胞死を予防する能力を有する物質の同定は、重大な関心事である。 本発明はまた、FGFR機能を減少させる、例えば、FGFR活性を阻害することができる化合物に関する。FGFR(FGFR1-FGFR3)の病的活性は、軟骨形成不全症、心気症、扁平椎致死性骨異形成症、致死性異形成、アントレー・ビクスラー症候群、アペール症候群、ベーレ・スティーブンソン症候群、クルゾン症候群、ジャクソンワイス症候群、パイフェル症候群、およびセートレ・ヒョツェン症候群を含む、異なる病型と関連することが示された(Passos-Bueno et al., 1999Hum. Mutat. 14: 115-125)。上皮細胞における常在FGFR2の異常な出現および年齢依存性欠損ならびにFGFR1の活性の獲得は、ある型の前立腺癌の悪性度における緩徐な進行の指標である(Wu et al., Cancer Res. 2001 61(13):5295-302)。 したがって、本発明のある態様では、上記の化合物は、FGFRを阻害することができる。ペプチド配列の産生 本発明のペプチド配列は、任意の慣用的な合成法、組み換えDNA技術、該ペプチド配列が由来する完全長タンパク質の酵素学的切断、または該方法の組合せにより製造し得る。組み換え製造 したがって、1つの態様では、本発明のペプチドは、組み換えDNA技術により産生される。 ペプチドまたはペプチドが由来する相当する完全長タンパク質をコードするDNA配列は、確立された標準的な方法、例えば、Beaucage and Caruthers, 1981, Tetrahedron Lett. 22:1859-1869によるホスホアミド法またはMatthes et al., 1984, EMBO J. 3:801-805により記載された方法により合成的に製造し得る。ホスホアミド法にしたがって、オリゴヌクレオチドは、例えば、自動DNA合成機で合成され、精製され、アニール化され、ライゲートされ、そして適当なベクター中にクローン化される。 ペプチドをコードするDNA配列は、標準的なプロトコールにしたがってDNAase Iを用いて、ペプチドが由来する相当する完全長タンパク質をコードするDNA配列の断片化により製造し得る(Sambrook et al., Molecular cloning: A Laboratory manual. 2 rd ed., CSHL Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989)。本発明は、上記で同定したタンパク質の集団から選択される完全長タンパク質に関する。本発明の完全長タンパク質をコードするDNAは、あるいは、特異的な制限エンドヌクレアーゼを用いて断片化し得る。DNAの断片は、さらに、Sambrook et al., Molecular cloning: A Laboratory manual. 2 rd ed., CSHL Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989に記載された標準的なプロトコールを用いて精製される。 完全長タンパク質をコードするDNA配列はまた、ゲノムまたはcDNA起源であり得て、例えば、ゲノムまたはcDNAライブラリーを製造し、標準的な技術にしたがって、合成オリゴヌクレオチドプローブを用いたハイブリダイゼーションにより、完全長タンパク質のすべてまたは部分をコードするDNA配列をスクリーニングすることにより取得し得る(cf. Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor, 1989)。DNA配列はまた、例えば、米国特許第4,683,202号またはSaiki et al., 1988, Science 239:487-491に記載されたとおり、特異的なプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応により製造し得る。 次いで、DNA配列は、任意のベクターであり得て、好適には、組み換えDNA手順にかけられ得る、組み換え発現ベクター中に挿入される。ベクターの選択は、しばしば、それが導入される宿主細胞に依存する。したがって、ベクターは、自律的に複製するベクター、すなわち、染色体外物質として存在し、その複製が、染色体複製から独立しているベクター、例えば、プラスミドであり得る。あるいは、ベクターは、宿主細胞に導入されると、宿主細胞ゲノムに統合され、それが統合された染色体(複数もある)と共に複製されるベクターであり得る。 ベクター中では、ペプチドまたは完全長タンパク質をコードするDNA配列は、操作可能に、適当なプロモーター配列と結合されるべきである。プロモーターは、任意のDNA配列であり得て、それは、選択した宿主細胞での転写活性を示し、宿主細胞と同種または異種のタンパク質をコードする遺伝子に由来し得る。ほ乳類細胞でのコードDNA配列の転写に向けられるための適当なプロモーターの例は、SV40プロモーター(Subramani et al., 1981, Mol. Cell Biol. 1:854-864)、MT-1(メタロチオネイン遺伝子)プロモーター(Palmiter et al., 1983, Science 222: 809-814)またはアデノウイルス2主要後期プロモーターである。昆虫細胞における使用のための適当なプロモーターは、ポリヘドリンプロモーターである(Vasuvedan et al., 1992, FEBS Lett. 311:7-11)。酵母宿主細胞における使用のための適当なプロモーターは、糖分解遺伝子(Hitzeman et al., 1980, J. Biol. Chem. 255:12073-12080; Alber and Kawasaki, 1982, J. Mol. Appl. Gen. 1: 419-434)もしくはアルコール脱水素酵素遺伝子(Young et al., 1982, in Genetic Engineering of Microorganisms for Chemicals, Hollaender et al, eds., Plenum Press, New York)からのプロモーター、またはTPI1(US 4,599,311)もしくはADH2-4c(Russell et al., 1983, Nature 304:652-654)プロモーターを含む。糸状菌宿主細胞における使用のための適当なプロモーターは、例えば、ADH3プロモーター(McKnight et al., 1985, EMBO J. 4:2093-2099)またはtpiAプロモーターである。 コードDNA配列はまた、操作可能に、適当なターミネーター、例えば、ヒト成長ホルモンターミネーター(Palmiter et al., op. cit.)または(真菌宿主のために)TPI1(Alber and Kawasaki, op. cit.)またはADH3(McKnight et al., op. cit.)プロモーターに結合し得る。ベクターはさらに、エレメント、例えば、ポリアデニル化シグナル(例えば、SV40またはアデノウイルス5 Elb領域から)、転写エンハンサー配列(例えば、SV40エンハンサー)および翻訳エンハンサー配列(例えば、アデノウイルスVA RNAをコードする配列)を含み得る。 組み換え発現ベクターは、さらに、ベクターが問題の宿主細胞で複製することができるDNA配列を含み得る。そのような配列の例は(宿主細胞が、ほ乳類細胞であるとき)、SV40複製開始点である。ベクターはまた、選択可能マーカー、例えば、遺伝子産物が、宿主細胞の欠損を補完する遺伝子、例えば、ジヒドロ葉酸(DHFR)をコードする遺伝子または薬剤に対する耐性を与える遺伝子、例えば、ネオマイシン、ヒドロマイシンもしくはメトトレキサートを含み得る。 ペプチドまたは完全長タンパク質をコードするDNA配列、プロモーターおよびターミネーターを、それぞれライゲートし、それらを、複製に関する必要な情報を含む適当なベクター中に挿入するために使用する手順は、当業者に既知である(cf., 例えば、Sambrook et al., op.cit.)。 本発明の組み換えペプチドを取得するために、コードDNA配列を、通常、第2ペプチドコード配列およびプロテアーゼ切断サイトコード配列と融合させ、融合タンパク質をコードするDNAコンストラクトを生じ得る(ここで、プロテアーゼ切断サイトコード配列は、HBP断片と第2ペプチドコードDNAの間に位置し、組み換え発現ベクター中に挿入され、組み換え宿主細胞で発現させる)。1つの態様では、該第2ペプチドは、非限定的に、グルタチオン-S-レダクターゼ、ウシチモシン、細菌チオレドキシンまたはヒトユビキチン天然もしくは合成変異型、またはそのペプチドを含む集団から選択される。他の態様では、プロテアーゼ切断サイトを含むペプチド配列は、アミノ酸配列IEGRを有するFactor Xa、アミノ酸配列DDDDKを有するエンテロキナーゼ、アミノ酸配列LVPR/GSを有するトロンビン、 またはアミノ酸配列XKXを有するAcharombacter lyticusであり得る(各アミノ酸配列は、切断サイトである)。 発現ベクターが導入される宿主細胞は、ペプチドまたは完全長タンパク質の発現を可能にする任意の細胞であり得て、好ましくは、真核細胞、例えば、無脊椎動物(昆虫)細胞または脊椎動物細胞、例えば、Xenopus laevis卵母細胞またはほ乳類細胞、特に、昆虫およびほ乳類細胞である。適当なほ乳類細胞株の例は、HEK293(ATCC CRL-1573)、COS(ATCC CRL-1650)、BHK(ATCC CRL-1632, ATCC CCL-10)またはCHO(ATCC CCL-61)細胞株である。ほ乳類細胞にトランスフェクトし、該細胞に導入したDNA配列を発現させる方法は、例えば、Kaufman and Sharp, J. Mol. Biol. 159, 1982, pp. 601-621; Southern and Berg, 1982, J. Mol. Appl. Genet. 1:327-341; Loyter et al., 1982, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79: 422-426; Wigler et al., 1978, Cell 14:725; Corsaro and Pearson, 1981, in Somatic Cell Genetics 7, p. 603; Graham and van der Eb, 1973, Virol. 52:456;およびNeumann et al., 1982, EMBO J. 1:841-845に記載されている。 あるいは、真菌細胞(酵母細胞を含む)は、宿主細胞として使用し得る。適当な酵母細胞の例は、Saccharomyces spp.またはSchizosaccharomyces spp.の細胞、特に、Saccharomyces cerevisiaeの株を含む。他の真菌細胞の例は、糸状菌、例えば、Aspergillus spp.またはNeurospora spp.の細胞、特に、Aspergillus oryzaeまたはAspergillus nigerの株である。タンパク質の発現のためのAspergillus spp.の使用は、EP 238 023に記載されている。 細胞を培養するために使用する培地は、増殖するほ乳類細胞のために適当な任意の慣用的な培地、例えば、適当な補完物を含有する血清含有もしくは無血清培地、または増殖する昆虫、酵母もしくは真菌細胞のための適当な培地であり得る。適当な培地は、市販で利用可能であるか、または公開された方法(例えば、American Type Culture Collectionのカタログ)にしたがって製造し得る。 細胞により組み換え的に産生されたペプチドまたはタンパク質は、次いで、慣用的な手順により培養培地から回収され得て、それは、遠心分離またはろ過により培地から宿主細胞を分離し、上清のタンパク質様構成成分を沈殿させるか、または塩の手段、例えば、硫酸アンモニウムによるろ過、様々なクロマトグラフィー手順、例えば、HPLC、イオン交換クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィーなどによる精製を含む。合成製造 ペプチドの合成産生の方法は、当業者に既知である。合成ペプチドを製造するための詳細な記載および実際的な助言は、Synthetic Peptides: A User's Guide (Advances in Molecular Biology), Grant G. A. ed., Oxford University Press, 2002、またはPharmaceutical Formulation: Development of Peptides and Proteins, Frokjaer and Hovgaard eds., Taylor and Francis, 1999に見出し得る。 ペプチドは、例えば、Fmoc化学およびAcm保護化システインを用いることにより合成し得る。逆相HPLCによる精製後、ペプチドはさらに、例えば、環状またはC-もしくはN-末端修飾アイソフォームを取得するために加工し得る。環状化および末端修飾の方法は、当業者に既知であり、上記に引用したマニュアルにおいて詳細に記載されている。 好ましい態様では、本発明のペプチド配列は、特に、配列補助ペプチド合成(Sequence Assisted Peptide Synthesis)(SAPS)法により合成的に産生される。 ペプチドは、N-a-アミノ保護基および側鎖官能性のための適当な通常の保護基として、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)またはtert.-ブチルオキシカルボニル、(Boc)を用いた完全自動合成機で、ろ過のためのポリプロプロピレンフィルターを装備したポリエチレン容器でのまたはポリアミド固相法(Dryland, A. and Sheppard, R.C., (1986) J.Chem. Soc. Perkin Trans. I, 125 - 137.)の連続フロー版でのいずれかのバッチ式で、合成し得る。医薬 FGFRは、正常状態および疾患での多くの身体過程、特に、神経系に関与していることが既知である。これらの過程は、分化、増殖、生存、可塑性および細胞の運動を含む。 細胞死は、正常な神経発生(そこでは、発生中の神経細胞の50%が、プログラムされた細胞死により除去される)および神経変性状態の病理学、例えば、アルツハイマーおよびパーキンソン病で重要な役割を果たす。FGFRは、発生の間および成人期の両方で、神経生存の重要な決定要因であることが示された(Haspel et al. (2000) J Neurobiol 15:287-302; Roonprapurt et al. (2003) J Neurotrauma 20:871-882; Wiencken-Barger et al. Cereb Cortex (2004) 14:121-131; Loers er al. (2005) J Neurochem 92:1463-1476; Reuss and von Bohlen und Halbach (2003) Cell tissue Res, 313:139-57)。したがって、FGFRに結合し、活性化することにより神経細胞生存を促進することができる化合物が、非常に望まれる。したがって、1つの局面では、本発明は、神経細胞の生存を促進し、神経細胞死を含む状態の処置のための医薬として使用し得る化合物を特徴とする。しかしながら、本発明の化合物はまた、FGFRシグナル伝達が、筋肉および癌細胞の生存因子であることが示されたので、他の型の細胞、例えば、異なる型の筋肉細胞の生存の促進、あるいはまた他の型の細胞、例えば、癌細胞の細胞死の促進のための医薬として使用し得る(Ozen et al. (2001) J Nat Cancer Inst. 93:1783-90; Miyamoto et al. (1998) J Cell Physiol. 177:58-67; Detilliux et al. (2003) Cardiovasc Res. 57:8-19)。 細胞表面受容体の活性は、健康な個体では、厳格に制御されている。突然変異、異常な発現または受容体もしくは受容体リガンドのプロセッシングの結果、受容体活性の異常を生じ、したがって、受容体の機能障害を生じる。受容体の機能障害は、順に、該受容体を様々な細胞過程の誘導および/または維持のために使用する細胞の、機能障害の理由となる。後者は、疾患の兆候である。また、FGFRシグナル伝達の減少が、多くの異なる病的状態、例えば、糖尿病(Hart et al., Nature 2000, 408:864-8)を生じることが示された。FGF受容体の活性化は、正常なおよび病的な血管新生に関与している(Slavin, Cell Biol Int 1995, 19:431-44)。それは、発生、増殖、機能化ならびに生存骨格筋細胞、心筋細胞および神経細胞のために重要である(Merle at al., J Biol Chem 1995, 270:17361-7; Cheng and Mattson, Neuron 1991, 7:1031-41; Zhu et al., Mech Ageing Dev 1999, 108:77-85)。それは、正常な腎臓構造維持において役割を果たし(Cancilla et al., Kidney Int 2001, 60:147-55)、創傷治癒および癌疾患に関与する(Powers et al., Endocr Relat Cancer. 2000, 7:165-97)。 本発明は、FGFRの活性を調節することができる化合物を提供する。結果として、該化合物は、本発明により、FGFR活性の調節が、治癒のために重要なものとして関与し得る、疾患を処置するための医薬として関与する。 したがって、本発明の医薬は、1つの態様では、1)中枢および末梢神経系、または筋肉または様々な器官の疾患および状態、および/または2)中枢および末梢神経系の疾患または状態、例えば、術後神経損傷、外傷性神経損傷、障害された神経繊維の髄鞘形成、卒中から生じるような虚血後損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、認知症、例えば、多発脳梗塞性認知症、硬化症、糖尿病に付随する神経変性、概日時計に影響を与える傷害または神経-筋伝達、および統合失調症、気分障害、例えば、躁鬱病;3)神経-筋結合の障害された機能を有する状態、例えば、臓器移植後の、または例えば、遺伝性もしくは外傷性萎縮性筋障害を含む、筋肉の疾患または状態の処置のための;または、様々な器官の疾患または状態、例えば、生殖腺の変性状態、膵臓の、例えば、I型およびII型糖尿病、腎臓の、例えば、ネフローゼならびに心臓、肝臓および腸の疾患または状態の処置のための、および/または4)癌疾患、および/または5)プリオン疾患の予防および/または処置を目的とする。 本発明は、癌が血管新生を必要とする任意の型の固形腫瘍であるものに関する。 本発明は、スクレイピー、クロイツフェルト-ヤコブ病からなる集団から選択される、プリオン疾患に関する。FGFRは、プリオン疾患で、異なる役割を果たすことが示された(Castelnau et al. (1994) Exp Neurobiol. 130:407-10; Ye and Carp (2002) J Mol Neurosci. 18:179-88)。 他の態様では、本発明の化合物は、1)創傷治癒の促進、および/または2)例えば、急性心筋梗塞後、または血管新生後の心筋細胞の細胞死の予防、および/または3)血管再生のための医薬の製造を目的とする。 また、他の態様では、本発明の化合物は、1)虚血による細胞死の予防;2)アルコール消費による身体損傷の予防;のための医薬の製造を目的とする。 本発明は、正常な、異常なまたは損傷を受けたFGFR提示細胞もしくはFGFRリガンドを提示する細胞を処置するための医薬に関する。“FGFRリガンドを提示する細胞”なる用語は、受容体またはリガンドを発現する細胞を意味し、そこでは、FGFRおよび/またはFGFRの部分が結合し得る(すなわち、いわゆるカウンター受容体)。FGFRリガンドの例は、FGF(繊維芽細胞増殖因子)、NCAM、L1またはプロテオグリカン、例えば、ヘパリン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、およびコンドロイチン硫酸プロテオグリカンである。 本発明の医薬は、有効量の上記した1個もしくはそれ以上の化合物、または1個もしくはそれ以上の化合物および薬学的に許容される添加物を含む組成物を含む。 したがって、本発明は、他の局面では、また、本発明の少なくとも1個の化合物を含む医薬組成物に関する。 本発明のさらなる局面は、医薬組成物を製造する工程であり、本発明の1個またはそれ以上の化合物の有効量、または本発明に記載の医薬組成物を、1個またはそれ以上の薬学的に許容される添加物または担体と混合することを含む。1つの態様では、化合物は、人工装具と組み合わせて使用し得て、該装具は、人工神経ガイドに関する。したがって、さらなる局面では、本発明は、上記したとおりの1個またはそれ以上の化合物または医薬組成物を含むことで特徴づけられる人工神経ガイドに関する。神経ガイドsは、当業者に既知である。 本発明は、下記に記載した疾患および状態のいずれかの処置または予防のための、本発明の化合物を含む医薬および/または医薬組成物の使用に関する。 そのような医薬および/または医薬組成物は、適当には、経口、経皮、筋肉内、静脈内、頭蓋内、髄腔内、脳室内、経鼻、肺内投与のために製剤し得る。 本発明の化合物に基づく医薬および組成物の製剤開発における戦略は、一般に、あらゆる他のタンパク質に基づく薬剤産物のための製剤戦略に相当する。潜在的な問題およびこれらの問題を克服するために必要とされる手引きは、いくつかの教科書、例えば、“Therapeutic Peptides and Protein 式formulation. Processing and Delivery Systems”, Ed. A.K. Banga, Technomic Publishing AG, Basel, 1995で取り扱われている。 注射用は、通常、液体溶液または懸濁液、注射前に液体の溶液または懸濁液のために適当な固形として製造される。製剤はまた、エマルジョン化し得る。有効成分は、しばしば、薬学的に許容され、そして有効成分に適合する賦形剤と共に混合し得る。適当な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびその組合せである。さらに、所望により、製剤は、少量の補助物質、例えば、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤または製剤の効果または輸送を高める物質を含み得る。 本発明の化合物の製剤は、当業者に既知の技術により製造し得る。該製剤は、マイクロスフェア、リポソーム、マイクロカプセル、ナノ粒子などを含む、薬学的に許容される担体および賦形剤を含み得る。 製剤は、注射により、所望により、有効成分がその効果を及ぼす場所に、適当に投与し得る。投与の他の形態のために適当なさらなる製剤は、座薬、経鼻、肺内および、ある場合には、経口製剤を含む。座薬に関して、伝統的な結合剤および担体は、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドを含む。そのような座薬は、0.5%から10%、好ましくは、1-2%の範囲内での有効成分(複数もある)を含む混合物から形成し得る。経口製剤は、そのような通常使用される賦形剤を、例えば、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウムなどの医薬グレードとして含む。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、糖衣錠、カプセル、徐放製剤または粉末の形態をとり、一般に、10-95%の有効成分(複数もある)、好ましくは、25-70%の有効成分を含む。 他の製剤は、例えば、経鼻および肺内投与、例えば、吸入器およびエアロゾルでの投与のために適当である。 活性化合物は、中性または塩型として製剤し得る。薬学的に許容される塩は、酸付加塩(ペプチド化合物の遊離アミノ基で形成される)を含み、無機酸、例えば、塩酸もしくはリン酸、または有機酸、例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などで形成される。遊離カルボキシル基で形成される塩は、また無機塩基、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化鉄、および有機塩基、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来し得る。 製剤は、用量製剤に適合する方法で、例えば、治療上有効な量で投与される。投与する量は、例えば、対象の体重および年齢、処置される疾患および疾患の段階を含む、処置される対象に依存する。適当な用量範囲は、1投与につき、通常は、キロ体重あたり数百μgの有効成分であり、好ましい範囲は、キロ体重あたり約0.1μgから5000μgである。化合物の単量体型を用いて、適当な用量は、しばしば、キロ体重当たり0.1μgから5000μgの範囲内、例えば、キロ体重当たり約0.1μgから3000μgの範囲内、とりわけ、キロ体重当たり約0.1μgから1000μgの範囲内にある。化合物の多量体型を用いて、適当な用量は、しばしば、キロ体重当たり0.1μgから1000μgの範囲内、例えば、キロ体重当たり約0.1μgから750μgの範囲内、とりわけ、キロ体重当たり約0.1μgから500μgの範囲内、例えば、キロ体重当たり約0.1μgから250μgの範囲内にある。特に、経鼻で投与するとき、他の経路で投与するときよりもより少ない量を使用する。投与は、1度に行われ得るか、またはその後、次の投与を行い得る。用量はまた、投与の経路に依存し、処理される対象の年齢および体重と共に変わり得る。多量体形態の好ましい用量は、体重70 kgあたり1 mgから70 mgの範囲内にあるであろう。 ある適応症のために、局所または実質的に局所適用が好ましい。 他の適応症のために、経鼻適用が好ましい。 本発明の化合物のいくつかは、十分に活性であるが、他のいくつかは、調製物がさらに薬学的に許容される添加物および/または担体を含むとき、効果が高められるであろう。そのような添加物および担体は、当業者に既知である。ある場合には、活性物質の標的への送達を促進する化合物を含むことが、有利である。 多くの例では、製剤を複数回投与することが必要である。投与は、持続注入、例えば、脳室内注入またはより多い投与で、例えば、1日により多い投与回数、毎日、1週間により多い回数、毎週などでの投与であり得る。医薬の投与は、個体が、細胞死を生じ得る要因(複数もある)に付される前か、または付された直後に開始することが好ましい。好ましくは、医薬は、要因発生から8時間以内、例えば、要因発生から5時間以内に投与される。化合物の多くは、長期の効果を示し、それにより、化合物の投与は、例えば、1週間または2週間のような長期の間隔で行い得る。 神経ガイドにおける使用と関連して、投与は、継続するか、または有効成分(複数もある)の制御された放出に基づく小部分であり得る。さらに、前駆体は、放出速度および/または放出部位を制御するために使用し得る。他の種類のインプラントおよび経口投与は、同様に、前駆体の制御された放出および/または使用に基づき得る。処置 本発明に記載の化合物/組成物の使用による処置は、1つの態様において、分化を誘導し、増殖を調節し、再生、神経可塑性および細胞(例えば、細胞は、インプラントまたは移植されたものである)の生存を刺激するために有用である。これは、長期効果を有する化合物を使用するとき、特に有用である。 さらなる態様では、処置は、様々な要因、例えば、外傷および損傷、急性疾患、慢性疾患および/または障害、特に、通常は細胞死を生じる変性疾患、他の外部要因、例えば、遊離基の形成を生じ得るか、またはX線および化学療法のような細胞毒性効果を有する、内科的および/または外科的処置および/または診断法のために死の危険がある細胞の生存の刺激であり得る。化学療法に関連して、本発明に記載のFGFR結合化合物は、癌の処置に有用である。 したがって、処置は、中枢および末梢神経系の疾患または状態、例えば、脊髄損傷から生じる術後神経損傷、外傷性神経損傷、障害された神経繊維の髄鞘形成、卒中から生じるような虚血後損傷、多発脳梗塞性認知症、多発性硬化症、糖尿病に付随する神経変性、神経-筋変性、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン病、またはハンチントン病に関連する細胞死の処置および/または予防を含む。 また、遺伝性または外傷性萎縮性筋障害のような神経-筋結合の障害された機能を有する状態を含む筋肉の疾患または状態と関連するか、または様々な器官の疾患または状態、例えば、生殖腺の、膵臓の(例えば、I型およびII型糖尿病)、腎臓の変性状態(例えば、ネフローゼ)の処置のための本明細書に記載した化合物は、分化を誘導し、増殖を調節し、再生、神経可塑性および生存を刺激する、すなわち、生存を刺激するために使用し得る。 さらに、化合物および/または医薬組成物は、血管新生を誘導するために、例えば、急性心筋梗塞後の心筋細胞の細胞死を予防することを目的とし得る。さらに、1つの態様では、化合物および/または医薬組成物は、心筋細胞の生存、例えば、急性心筋梗塞後の生存の刺激を目的とする。他の局面では、化合物および/または医薬組成物は、例えば、損傷後の血管再生を目的とする。 創傷治癒の促進のための化合物および/または医薬組成物の使用は、また、本発明の範囲内である。本発明の化合物は、血管新生を刺激することができ、それにより、それらは、創傷治癒過程を促進することができる。 本発明はさらに、癌の処置における化合物および/または医薬組成物の使用を開示する。FGFRの活性化の制御は、腫瘍の血管新生、増殖および拡張のために重要である。 また、さらなる態様では、FGFR活性が神経細胞の分化のために重要であるので、化合物および/または医薬組成物の使用は、学習する能力ならびに/または短期および/もしくは長期記憶の刺激を目的とする。 また、他の態様では、本発明の化合物および/または医薬組成物は、アルコール消費による身体損傷の処置を目的とする。胎児の発生奇形、長期神経行動学的変化、アルコール性肝臓疾患は、特に、関係がある。 化合物および/または医薬組成物を用いることを含むプリオン疾患の治療的処置は、また、本発明の他の態様である。 特に、本発明の化合物および/または医薬組成物は、臨床的状態の処置、例えば、腫瘍例えば、悪性腫瘍、良性腫瘍、インサイチュでの癌腫および不確かな行動の腫瘍、乳房、甲状腺、膵臓、脳、肺、腎臓、前立腺、肝臓、心臓、皮膚、血液、筋肉(肉腫)の癌、機能異常および/または特異的受容体の過剰もしくは過少発現および/または突然変異した受容体の発現を有する癌、または可溶性受容体と関連する癌、例えば、非限定的に、Erb-受容体およびFGF-受容体、内分泌腺の疾患、例えば、I型およびII型糖尿病、下垂体腫瘍、精神病、例えば、老年期および初老期器質性精神病状態、アルコール性精神病、薬剤精神病、一過性器質性精神病状態、アルツハイマー病、脳リピドーシス、癲癇、進行麻痺[梅毒]、肝レンズ核変性症、ハンチントン舞踏病、クロイツフェルトヤコブ病、多発性硬化症、脳のピック病、結節性多発性動脈炎、梅毒、統合失調症、情動的精神病、神経症性障害、性格神経症を含む人格障害、器質脳症候群と関連する非精神病性人格障害、パラノイア人格障害、熱狂的人格、偏執的人格(障害)、偏執的特徴、性的倒錯および障害または機能異常(いかなる理由であれ、減少した性欲)、精神遅滞、神経系および感覚器官における疾患、例えば、視覚、聴覚、嗅覚、感覚、味覚に影響を与えるもの、疾患後の認知異常、損傷(例えば、外傷、外科手術、および暴力の後)、中枢神経系の炎症性疾患、例えば、髄膜炎、脳炎、脳変性、例えば、アルツハイマー病、ピック病、脳の老人性変性、老化NOS、交通性水頭症、閉塞性水頭症、他の錐体外路疾患および異常な行動障害を含むパーキンソン病、脊髄小脳疾患、小脳性運動失調症、マリー サンガー-ブラウン、ミオクローヌス性小脳性共同運動障害、初期小脳変性、例えば、脊髄性筋萎縮症、家族性、若年性、成人脊髄性筋萎縮症、運動神経疾患、筋萎縮性側索硬化症、運動神経疾患、進行性球麻痺、偽球麻痺、原発性側索硬化症、他の前角細胞疾患、前角細胞疾患、非特異的、脊髄の他の疾患、脊髄空洞症および延髄空洞症、血管性ミエロパチー、脊髄の急性梗塞(塞栓性)(非塞栓性)、脊髄の動脈血栓症、脊髄の浮腫、脊髄出血、亜急性壊死ミエロパシー、他の場所に分類される疾患での亜急性脊髄の合わせた変性、ミエロパシー、薬剤誘導、放射線誘導脊髄炎、自律神経系の障害、末梢自律神経系の障害、交感神経、副交感神経、または植物性系、家族性自律神経失調症[ライリー-デイ症候群]、特発性末梢自律神経系ニューロパシー、頸動脈洞性失神または症候群、頸部交感神経性ジストロフィーまたは麻痺、他の場所に分類される疾患での末梢自律神経系ニューロパシー、アミロイドーシス、末梢神経系の疾患、上腕神経叢の病変、頸肋症候群、肋骨鎖骨症候群、前斜角筋症候群、胸郭出口症候群、急性上腕神経炎または神経根炎NOS(新生児を含む); 急性感染性多発性神経炎を含む炎症性および中毒性ニューロパシー、ギランバレー症候群、感染後多発性神経炎、膠原血管病での多発性ニューロパシー、複数の眼の構造に影響を与える障害を含む眼球の障害、例えば、化膿性内眼球炎、耳および乳様突起の疾患、慢性リウマチ性心臓疾患、虚血性心疾患、不整脈、肺系の疾患、呼吸器系、感覚器、例えば、酸素、喘息、神経系を含む新生児の器官および軟組織の異常、陣痛および分娩での麻酔または他の鎮静剤の投与の合併症、感染を含む皮膚疾患、不十分な循環問題、やけど損傷および他の機械的および/または物理的損傷;手術後を含む損傷、壊滅的損傷、やけど;神経の切断を含む神経および脊髄の損傷、連続損傷(開放創傷を有するか、または有しない);外傷性神経腫(開放創傷を有するか、または有しない)、外傷性一過性麻痺(開放創傷を有するか、または有しない)、偶発的硬膜穿刺または医療処置中の裂傷、視神経および経路の損傷、視神経損傷、第2脳神経、視交叉の損傷、視覚経路の損傷、視覚野の損傷、非特異的失明、脳神経(複数もある)の損傷、他のおよび非特異的神経の損傷; 薬物による中毒、医薬および生物学的物質、遺伝的または外傷性萎縮性筋障害;または、様々な器官の、例えば、生殖腺の変性状態、膵臓の、例えば、I型およびII型糖尿病Iの、腎臓の、例えば、ネフローゼの疾患または状態の処置;スクレイピー、クロイツフェルトヤコブ病、ゲルスマン・ストロイスラー・シャインカー(GSS)病;X染色体関連水頭症およびMASA症候群脳梁形成不全、精神遅滞、内転母指、痙攣および水頭症(CRASH)症候群、疼痛症候群、脳炎、薬物/アルコール中毒、不安、術後神経損傷、術中虚血、感染因子に影響を与えるか、または組織を保護することによる組織損傷を伴う炎症性障害、HIV、肝炎、および下記の症状、自己免疫性疾患、例えば、リウマチ性関節炎、SLE、ALS、およびMS;抗炎症性効果、喘息および他のアレルギー性反応、急性心筋梗塞、および他の関連する障害またはAMIからの続発症、代謝障害、例えば、肥満脂質障害(例えば、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、アミノ酸輸送および代謝の障害、プリンおよびピリミジン代謝の障害および痛風、骨障害、例えば、骨折、骨粗鬆症、変形性関節症(OA)、萎縮性皮膚炎、乾癬、感染性疾患、インビボまたはインビトロでの幹細胞保護または成熟において使用し得る。 本発明の化合物はまた、軟骨形成不全症、心気症、扁平椎致死性骨異形成症、致死性異形成、アントレー・ビクスラー症候群、アペール症候群、ベーレ・スティーブンソン症候群、クルゾン症候群、ジャクソンワイス症候群、パイフェル症候群、およびセートレ・ヒョツェン症候群の予防および処置のために使用し得る。 本発明にしたがって、上記状態および兆候の処置および/または予防のための方法は、有効量の化合物および/または医薬組成物を必要な個体に投与する工程を含む。実施例1.FGFRの相互Ig1対Ig2結合サイト方法 FGFR1 Ig1モジュールの構造および結合特性を調べるために、我々は、下記の組み換えタンパク質を使用した:各第1および第2 Igモジュール(Ig1およびIg2)、ならびに結合第2および第3 Igモジュール(Ig2-3)。すべての組み換えタンパク質は、NMR解析により判定されたとおり、適切に折り畳まれていた。組み換えタンパク質の産生 マウスFGFR1のIg1およびIg2モジュールは、His-タグ(AGHHHHHH)、ならびに、それぞれ、アミノ酸23-119および140-251からなる(swissprot p16092)。マウスFGFR1の結合Ig2-3モジュール(3cアイソフォーム)は、His-タグ(RSHHHHHH)、ならびに、アミノ酸141-365からなる(swissprot p16092)。Ig2およびIg2-3モジュールは、以前に記載されたとおり産生した(Kiselyov et al., Structure 2003 11: 691-701)。Ig1モジュールは、製造者の指示にしたがって、酵母P. pastorisのKM71株(Invitrogen, USA)で発現した。すべてのタンパク質を、Ni2+-NTAレジン(Qiagen, USA)を用いた親和性クロマトグラフィーおよび/またはイオン交換クロマトグラフィーおよびゲルろ過により精製した。SPR解析 結合アッセイは、ランニングバッファーとして10 mMリン酸ナトリウム pH 7.4、150 mM NaClを用いて、25℃で、BIAcoreX装置(Biosensor AB, Sweden)を用いて行った。流速は、5ml/分であった。FGFR1のIg2-3モジュールは、以前記載されたとおり、センサーチップCM5 (Biosensor AB, Sweden)に固定した(Kiselyov et al., Structure 2003 11: 691-701)。Ig1モジュールの固定化Ig2-3モジュールへの結合は、下記の方法で調べた:タンパク質を、固定化FGFR1モジュールを有する浮遊細胞(Fc1細胞)中に、および何も固定化されていないコントロール浮遊細胞(Fc2-細胞)中に、特定の濃度で同時に注入した。該タンパク質のFc2-細胞の表面への非特異的結合を表す曲線は、固定化Ig2-3モジュールおよびFc1-細胞の表面への同じタンパク質の結合を表す曲線から除かれた。生じた曲線は、解析のために使用した。NMR測定 下記のサンプルをNMRスペクトルの記録のために使用した: 2 mM Ig1またはIg2モジュール(H2OまたはD2O中)、2 mM 15N-標識Ig1またはIg2モジュール(H2O中)、0.5 mM 15N、13C(50%)-標識Ig2モジュール(H2O中)。バッファーは、10 mMリン酸ナトリウムpH 7.4、30 mM NaClが使用された二重標識サンプルを除いて、10 mMリン酸ナトリウムpH 7.4、150 mM NaClであった。下記のNMRスペクトルを記録し、Ig1およびIg2モジュールの割り当てのために使用した: H2O中TOCSYまたはD2O(45および70ミリ秒混合時間)、H2O中NOESYまたはD2O(80および200ミリ秒混合時間)、DQFCOSY、15N-HSQC、15N-TOCSY-HSQC(70ミリ秒混合時間)、および15N-NOESY-HSQC(125ミリ秒混合時間)。Ig2モジュールの割り当てのために、HNCACB、CBCA(CO)NH、HNCO、HN(CA)CO、HNCA、HN(CO)CAを、また使用した。すべてのスペクトルを、ProteinPackにより提供された標準設定を用いて記録した。スペクトルを、NMRPipe(Delaglio et al., J Biomol NMR 1995 6: 277-93)により加工し、Pronto3D (Kjaer et al., Methods Enzymology 1994 239: 288-307)により解析した。NMR実験は、Varian Unity Inova 750および800 MHzスペクトロメーターを用いて行った。すべてのスペクトルは、298 Kで記録した。構造計算 X-PLORプロトコール(Brunger, X-PLOR Software Manual, version 3.1. 1992, Yale University, New Haven, CT)を用いた模擬アニーリングプロトコールを、構造計算のために使用した。1360のNOE制限は、制限がメチル基を含んでいるとき、0.5Åまで増加した2.7、3.3および6.0Åの上限結合を有する、80/200 ms NOESYおよび125ms 15N-NOESY-HSQCスペクトルに由来した。-120±40°および-57±40°(3JHNHα結合定数に由来する)の結合を有する83φ角度制限を使用した。水素結合エネルギーおよび水素交換速度の検討後、94個の水素結合制限を、NH-OおよびN-O距離に関して、それぞれ、2Åおよび3Åの上限結合と共に、NOE制限として適用した(最終構造計算で)。計算した100個の構造のうち、100個が、X-PLORにより受容され、>0.5ÅのNOE制限違反または>5°の角度違反と共に、すべての構造を区別した。構造を、MOLMOL (Koradi et al., J Mol Graph 1996 14: 51-5, 29-32)およびPROCHECK_NMR (Laskowski et al., J Mol Biol 1993 231: 1049-67)プログラムを用いて、解析および調査した。これらの100個の構造から、最も小さいエネルギーを有する20個の構造を、FGFR1のIg1モジュールの構造を表すために選択した。FGFR-1のリン酸化アッセイ Trex293細胞(Invitrogen)を、C-末端Strep IIタグ(IBA Biotech)を有するヒトFGFR-1で、安定的にトランスフェクトした。細胞を、Hygromycin (Invitrogen) 200μg/ml、10% FCS、1 % (v/v) glutamax、100 U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン(すべてGibco, BRLから)含有のDMEM培地中で維持した。リン酸化アッセイのために、2×106細胞を、無血清培地で一晩飢餓状態にした。特定の濃度で様々な化合物を用いて刺激した後、細胞を、PBS中、1%(v/v) NP-40、完全プロテアーゼ阻害剤 (Roche, Germany)(1:50)、およびホスファターゼ阻害剤 (Calbiochem阻害剤カクテルIII)(1:100)を含有する300μlの溶解バッファーで溶解した。次いで、タンパク質濃度を、ビシンコニン酸アッセイ(Pierce, Rockville, IL)を用いて決定し、各ライセートの500μgのタンパク質を、15μlのアガロース結合抗ホスホチロシン抗体 (4G10-AC) (Upstate biotechnologies)を用いて、6時間または4℃で一晩、インキュベートした。結合タンパク質を洗浄し、180 mM フェニルリン酸(Sigma)を用いて、クロマトグラフィーカラム(BIO-RAD)で溶出した。各サンプルに関して、25μlの精製タンパク質を、SDS-PAGEにより分離し、ポリフッ化ビニリデン膜(Millipore, Bedford, MA)にトランスファーした。イムノブロッティングを、5% (w/v)脱脂粉乳中、組み換えStrepIIタグ(IBA Biotech)に対するウサギ抗体(1:2000希釈)およびブタ抗ウサギIgG ホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート(1:2000希釈) (DakoCytomation, Denmark)を用いて行った。免疫複合体を、SuperSignal(登録商標)West Dura延長持続基質(PIERCE)により開発し、SynGene Gene Snap version 6.00.21ソフトウェア(Synoptics Ltd, UK)で視覚化した。あらゆるアッセイのために、暴露したバンドを、SynGene Gene Toolイメージ解析プログラム(Synoptics Ltd, UK)で定量化した。結果および考察FGFR1のIg1モジュールの構造 Ig1モジュールの解構造を、NMRにより決定した。全1360の非余剰NOEを割り当て、3JHNHαカップリング制約に由来する83個の骨格二面角誓制約と共に、構造計算に適用した。水素結合エナジーおよび水素交換速度の検討後、94個の水素結合制約を、最終構造計算でNOEとして適用した。構造のリボン表記を、図1Aで示す。モジュールの三次元倍率は、中間Igサブグループに属し、2個のβ-シートからなるβ-バレルとして記載し得る。あるシートは、A' (L43-V45)、G (G108-V107)、F (S96-S105)、C (S63-R68)およびC' (V71-L73) β-ストランドにより形成され、他のシートは、A (T26-L27)、B (D49-R54)、B' (L57-R58)、E (E85-D90)およびD (T79-T82)ストランドにより形成される。骨格原子に関して20個の重ね合わされた構造のオーバーレイを、図1Bで示す。平均からの二乗平均平方根(RMS)偏差は、骨格原子に関しては、1.05Åであり、すべての重原子に関しては、1.53Åである。全体の集団の(φ、Ψ)角度組合せの98.8%は、ラマンチャンドランプロットの可能な領域に該当する。統計に基づく構造の要約は、下記表1で提供する。表I 120の構造における25-120個の残基に関する平均からの1RMS偏差。2非余剰制約の数。3エナジーは、10 kcal mol-1 Å-2のNOEおよび8 kcal mol-1 rad-2の二面角制約に関する力定数を有する、CHARMM力場を用いて計算した。 Ig1モジュールの一般的な鎖トポロジーは、Ig2およびIg3モジュールのそれに類似している(Plotnikov et al., Cell 1999 98: 641-50)。しかしながら、Ig1モジュールのA/A'ループは、Ig2およびIg3モジュールのそれよりもずっと長い。それは、Ig3モジュールと比較して8個の過剰な残基を含み、Ig2と比較して5個の過剰な残基を含む。A/A'ループが、βバレルと平行であるIg2およびIg3モジュールとは対照に、Ig1モジュールのA/A'ループは、βバレルと垂直の状態にある(図1C)。このことは、Ig1モジュールのこの領域が、Ig2モジュールのための結合サイトを形成するので注目に値する(下記を参照のこと)。Ig1は、FGF1-Ig2、ヘパリン-Ig2およびIg2-Ig2結合サイトの領域に結合する FGFR3のIg1は、20 μM のKd値でIg2-3に結合する(Olsen et al., Proc Natl Acad Sci U S A 2004 101: 935-40)ので、FGFR1に関してこの結合を決定することに関心があった。したがって、可溶性Ig1のFGFR1の固定化Ig2-3モジュールへの結合を、SPR解析により調べた。平衡結合応答対Ig1の濃度のプロットを、図2Aに示す。FGFR3のそれと同様に、結合の経時変化を、非常に速い結合および解離層により特徴づけた(データは示していない)。結合に関する計算したKd値は、FGFR3に関して決定した20 μM Kd値に非常に近い、33±6 μMであった。 Ig1とIg2間の相互作用に関与する残基を同定するために、NMR解析を使用した。NMR解析は、溶液中のタンパク質相互作用の研究のために非常に感度の高い方法を提供する。しかしながら、それは、15N標識タンパク質の産生および骨格原子のためのそれらの15N、1H共鳴振動数の割り当てを必要とする。したがって、NMRによるIg1-Ig2相互作用を調べるために、Ig2モジュールの骨格原子のためにそれらの15N、1H共鳴振動数の割り当てを行った。Ig2モジュールは、FGF、ヘパリンおよびIg2モジュール自身の結合サイトを含む(一方で、Ig3モジュールは、FGFに関してのみ結合サイトを含む)。さらに、Ig1モジュールは、FGF-FGFRおよびヘパリン-FGFR相互作用の両方を阻害する(Wang et al., J Biol Chem 1995 270: 10231-5; Olsen et al., Proc Natl Acad Sci U S A 2004 101: 935-40) 15N-標識タンパク質の15N-HSQCスペクトルにおいて、窒素およびプロトンの両方を有するすべてのアミノ酸のシグナルを、観察し得る。シグナルの化学シフトの変化は、他の分子の結合により摂動するアミノ酸残基のタンパク質での、同定のための方法を提供する。2 mM非標識Ig1モジュールを、Ig2モジュールの0.5 mM15N-標識サンプルに加え(逆もまた然り)、2 mM非標識Ig2モジュールを、Ig 1モジュールの0.5 mM15N-標識サンプルに加えた。記録した化学シフトの変化を、図2B、Cに示す。Ig2モジュールにより顕著な摂動を示す(0.04 ppmより高い)Ig1モジュールの残基は、L27、E29、Q30、A31、Q32、W34、G35およびV36であり(図2B)、Ig1モジュールにより顕著な摂動を示す(0.025 ppmより高い)Ig2モジュールの残基は、T156、S157、E159、K160、A167、V168、A171、K172、T173、V174、K175、S214、I215、I216、M217およびS219であった(図2C)。これらの残基の化学シフトの変化は、他のモジュールに近接した1個のモジュールの存在が、摂動残基での化学的環境を変えることを証明し、摂動残基が、2個の分子間の相互作用のための結合サイトの一部または近傍であることを示している。Ig1およびIg2モジュールの構造中の摂動残基のマッピングを、図3Aに示す。Ig2モジュールのNMR構造は、既知でないので、モジュールの結晶構造(Plotnikov et al., Cell 1999 98: 641-50)を、マッピングのために使用した。Ig1モジュールの摂動残基は、A/A'ループ領域に位置し、単一パッチを形成するが、Ig2モジュールの摂動残基は、2個のパッチに位置する: 12個の残基(A167、V168、A171、K172、T173、V174、K175、S214、I215、I216、M217、S219)からなるより大きいパッチおよび4個の残基(T156、S157、E159、K160)からなるより小さいパッチ。2個のパッチは、互いに近接して位置する。Ig1パッチからの残基は、Ig2パッチの両方に同時には結合できず、Ig1パッチおよびより大きいIg2パッチは、サイズがおよそ等しく、一方で、より小さいIg2パッチは、実質的に、Ig1パッチよりもより小さいので、Ig2モジュールのIg1モジュールへの結合は、より大きいIg2パッチからの残基によってのみ仲介され、より小さいIg2パッチからの残基は、Ig1-Ig2結合に関連しない(この領域の摂動は、結合により誘導される構造変化のためであり得る)ことは非常に可能性がある。 FGFR二量体化の対称モデル(Plotnikov et al., Cell 1999 98: 641-50; Plotnikov et al., 2000 Cell 101: 413-24; Schlessinger et al., Mol Cell 2000 6: 743-50)にしたがって、FGFに結合する第1 Ig2サイトは、L165、A167、P169およびV248からなり、第2 Ig2-FGF結合サイトは、P199、D200、I203、G204、G205、S219およびV221からなり、Ig2-ヘパリン結合サイトは、K160、K163、K175およびK177からなり、ならびにIg2-Ig2結合サイトは、A171、K172、T173およびD218からなる。Ig2モジュール構造のこれらの結合サイトのマッピングは、図3Bに示す。第1 Ig2-FGF結合サイトからのA167および第2 Ig2-FGF結合サイトからのS219、Ig2-ヘパリン結合サイトからのK175、ならびにIg2-Ig2結合サイトからのA171、K172、T173は、Ig1結合により摂動されるIg2モジュールの残基の中にある。図3AおよびBから理解し得るように、第1および第2 Ig2-FGFならびにIg2-ヘパリン結合サイトは、摂動残基のより大きいIg2パッチに隣接していて、一方で、Ig2-Ig2結合サイトの4残基中3個は、このパッチ内に位置している。これらのデータは、Ig2に結合するIg1が、それ自身、FGFおよびヘパリンへのFGFRの結合を妨害し、したがって、Ig1は、FGF-FGFR、ヘパリン-FGFRおよびFGFR-FGFR相互作用の競合的分子内阻害剤として機能することを示している。FGFR1のIg1モジュールの自己阻害効果の動態解析 Ig1モジュールが、FGF-FGFRおよびヘパリン-FGFR相互作用の競合的分子内阻害剤として機能し、さらに、FGFとFGFR間、ヘパリンとFGFR間の相互作用の親和性が、既知であるとき、Ig1モジュールの自己阻害効果を定量的に記載することが可能となり得て、すなわち: FGFR1β-FGF1およびFGFR1β-ヘパリン相互作用と比較して、FGFR1α-FGF1およびFGFR1α-ヘパリン相互作用の親和性において、それぞれ、およそ8倍および4倍の減少(Wang et al., J Biol Chem 1995 270: 10231-5)。下記で、我々は、Ig2-3モジュールへのIg1モジュールの分子内結合の存在下で、FGFRのトリプルIg-モジュールのIg2-3モジュールへのFGFの結合を検討する。FGF-FGFR結合および分子内Ig1、Ig2-3結合は、相互に排他的であると考えられる。 量的解析を行うために、いくつかの単純化および近似をなさなければならないであろう。これらの単純化が、正当であるか否かは、生じたモデルが、実験データとどれほど一致しているかにより判断し得る。 ラットFGFR1αのIg1-Ig2リンカーは、31個のアミノ酸: DALPSSEDDDDDDDSSSEEKETDNTKPNRRPからなる。様々な二次構造予測エンジンによるこの配列の解析は、残基のすべてまたは大部分のためのランダムコイルを予測し、それは、リンカーが、FGFR1α分子内にランダムコイルを形成することを示す。これは、同種分子FGFR3αの結晶構造では、電子密度は、リンカー領域またはIg1モジュールのために見出されない(Olsen et al., Proc Natl Acad Sci U S A 2004 101: 935-40)という事実により裏付けられ、それは、Ig1モジュールおよびリンカーが、完全に、結晶中で不規則になっていることを意味する。したがって、リンカー領域がまた、溶液中のFGFR1α中にランダムコイルを形成すると想定することは、理にかなっている。図4Aでは、FGFR1αの構造を、様々なリンカーのランダム構造と共に、図式的に示す(その時点でIg1とIg2モジュール間の相互作用は存在しないと想定する)。Ig2モジュールの周りのIg1モジュールのランダムな動きは、リンカーの長さにより明らかに制限され、Ig1モジュールの周りの少容量のみが、Ig1モジュールのランダムな動きのために利用できることを意味する。したがって、分子内相互作用の解析のために、それに利用できる容量でのモジュールの実際の濃度を、全容量でのその濃度の代りに使用する。実際の濃度を推定するために、Ig1およびIg2モジュールのN末端間の平均距離に相当する半径を有する球形(図4Aで円として記載している)でのモジュールの濃度を、使用する。この距離を計算するために、リンカー領域の平均両端距離を推定しなければならない。ポリマーのランダムコイルの平均両端距離は、自己排除ランダムウォーク(self-avoiding random walk)に関する下記の実験式により計算し得る:[式中、は、実効値両端距離であり、Nは、ポリマーの結合数であり、そしてLは、結合の長さである(連続した結合間の角度は、ランダムである)]。我々は、FGFR1αリンカー領域の連続した残基間の角度が、ランダムであり、次いで、1個のアミノ酸に相当するペプチド骨格の長さが、およそ0.4 nmであるとき、リンカーの平均両端距離は、およそ3.1 nmとして見積もり得ると、現在、少しの間想定している。しかしながら、連続したペプチド残基間の角度は、側鎖の立体障害のために、完全に無秩序ではあり得ない。したがって、実際の距離は、3.1 nmより大きいが、12.4 nmよりは小さく、それは、完全に伸張したポリペプチドの長さである。リンカーの平均長を正確に計算することは不可能なので、我々は、平均リンカー距離の全範囲を3.1から12.4 nmと考える。 FGFR1αとFGF1(またはヘパリン)間の相互作用は、Ig1が、自己阻害的に作用しているとき、下記の式により記載し得る(微分は、付録で与えている):[式中、(D23)0は、FGFR1αの開始濃度であり、(F)は、FGF1の濃度であり、(D23・F)は、FGF1-FGFR1α複合体の濃度であり、K1は、FGF1-FGFR1β相互作用のためのKd値であり、(D23・D1)は、Ig1およびIg2分子が、分子内相互作用に関与する、FGFR1α分子の濃度である]。(D23・D1)は、下記の式から決定し得る:[式中、およびであり、K2は、Ig1モジュールとFGFR1β間の相互作用のKdであり、NAは、アボガドロ数であり、lは、平均リンカー長であり、pは、Ig1モジュールの長さである]。 報告されたFGF-FGFR相互作用のKd値は、使用した方法に依存して、10 pMから100 nMの範囲内である。ヘパリン-FGFR相互作用の親和性は、0.3-1 μMのオーダーである。我々は、最初に、FGF-FGFR相互作用のKd値が、60 pMであると仮定して、詳細な動的解析を行い、次いで、我々は、10 pMから1 μMの全範囲を解析する。図4Bは、FGF1とFGFR1βまたはFGFR1α間の結合の推定(4.5、6.9および11.3 nmのリンカー長で)およびFGF1濃縮の機能としてIg1モジュールの分子内結合を示す。FGFR1αは、実質的に、FGFR1βと比較して、より低いFGF1への結合を示す。FGF1の非存在で、Ig1モジュールは、およそ80%のFGFR1α分子での分子内結合に関与し、そしてFGF1の存在で、この割合は、FGF1の濃度の増加と共に、急激に落ちる。様々なリンカー長に関して、FGF1-FGFR1α結合の明らかなKd値を決定するために、図4Bからのデータ点を、単一サイトでの結合を記載した式に適合させた(図4C)。4.5から11.3 nmの範囲のリンカー長に関して、FGFR1β-FGF1相互作用と比較して、FGFR1α-FGF1相互作用のための親和性の減少は、13.1-から4.6-倍の範囲にあり、そしてIg1モジュールが、分子内結合に関与するFGFR1α分子の数は、87.4から69%の範囲である。動態解析の結果は、下記の表IIで要約する: 表II 3 nmに近いリンカー長は、上記の理由のため存在しそうもなく、9-10 nm以上のリンカー長はまた、これが、該リンカーの十分に伸張した構造の長さに近いので、ありそうもないことに注目すべきである。したがって、該リンカーは、およそ11-から6-倍の親和性の相当する減少と共に(実験的に決定された値8-倍と十分に一致する)、6から9 nmの範囲に最もありそうである。リガンド-FGFR相互作用の親和性が、いかにIg1モジュールの推定した阻害効果に影響を与えるかを決定するために、我々は、平均8 nmのリンカー長(計算と実験データ間の最大の相関を産み出す)を用いて、親和性の全範囲(10 pMから1 μMまでのKd)のために上記の計算を行った。FGF-FGFR1α相互作用に関するIg1モジュールの阻害効果は(10 pMから100 nMのKd)、10.5-から4.2-倍の範囲にある(図4D)。ヘパリン-FGFR相互作用のためのKdは、上記したとおり約0.3-1 μMであり、したがって、Ig1モジュールの相当する阻害効果は、およそ4-倍であり(図4D)、それは、実験的に決定された値3.7-倍と完全に一致する。 したがって、本明細書で提供するIg1モジュールの阻害効果の定量的解析は、FGF-FGFR1およびヘパリン-FGFR1相互作用の動態に関して、利用可能な実験テータとかなり一致しており、それにより、Ig1モジュールが、FGF-FGFR1およびFGFR1-ヘパリン相互作用の競合的分子内阻害剤として機能するモデルを実証している。Ig1の自己阻害効果は、Ig1-Ig2リンカー長(4.5から9 nmの範囲で)にあまり依存しないので、およそ同じ自己阻害が、Ig1-Ig2リンカーがわずかに短い他のFGFRアイソフォームのめに予期されることに注目すべきである。これは、FGFR3β-FGF1およびFGFR3β-ヘパリン相互作用と比較して、FGFR3α-FGF1およびFGFR3α-ヘパリン相互作用の親和性が、それぞれ、およそ4-および5.7-倍の減少を有するFGFR3に関して、確認された(Olsen et al., Proc Natl Acad Sci U S A 2004 101: 935-40)。 さらには、我々の解析は、FGFの非存在下では、Ig1モジュールは、およそ80%でFGFR1分子への細胞内結合に関与し、したがって、推定される直接のIg2-Ig2結合を阻害することを予測する。しかしながら、FGFの存在下では、FGFは、Ig1-Ig2相互作用の競合的阻害により、Ig1による観察される阻害を軽減する(図4Bを参照のこと)。これは、Ig1モジュールが、FGFR-リガンド結合親和性を制御するだけでなく、FGFの非存在下で自然発生のFGFR二量体化を妨げることを示す。FGFRαからFGFRβへの転換が、アストロサイト悪性腫瘍と相関していることは、注目に値する(Yamaguchi et al., Genes Dev 1994 8: 3032-44)。Ig1の欠如のために、あまり堅固でない活性の制御下にあり得るFGFRβの発現は、腫瘍細胞の増殖利点を生じ得て、その結果、腫瘍進行を生じる。 可溶性Ig1およびIg2モジュールならびにFGFR1α活性化に関して2個のモジュールから設計されるペプチドの効果 細胞(培養中の)で発現したFGFR分子の小片が、培養培地中にFGFが存在しなかったとしても、活性化/リン酸化状態にあることは既知である。このバックグラウンドのFGFR活性は、直接のFGFR-FGFR相互作用によるものであることが示され、そしてこれは、三重のFGF-FGFR-ヘパリン複合体の対称モデルにおいて、直接のIg2-Ig2接触が存在するという事実により支持される。上記したとおり、我々の計算は、FGFの非存在では、Ig1およびIg2モジュールが、およそ80%のFGFR1α分子と相互作用すると予測する。分子内Ig1-Ig2相互作用が、直接のFGFR-FGFR相互作用を阻害することが予期されるので(図2を参照のこと)、20%のFGFR分子のみが、自然発生の二量体化のために利用可能である。FGFR1αを発現する細胞への可溶性Ig1またはIg2モジュールの添加は、自然発生の二量体化のために利用可能な受容体分子の数を減少させるか、または増加させ得て、したがって、バックグラウンド受容体活性化を阻害するか、または促進する。この仮説を試験するために、C末端StrepII-タグを含む完全長FGFR1で安定的にトランスフェクトしたTREX-293細胞を、FGF1(ポジティブコントロール)、Ig1もしくはIg2モジュールまたは何もなしで刺激した。20分間細胞を刺激した後、FGFR1を免疫精製し、イムノブロッティングにより解析した。図5AおよびBに見られるように、20、100、および500 μg/mlの濃度のIg2モジュールは、実質的に、受容体リン酸化を増加させ(およそ2.5倍)、一方で、Ig1モジュールは、いずれの有意な効果も有さなかった。このIg2モジュールの刺激阻害効果は、おそらく、分子内Ig1-Ig2結合の阻害によるものであり、それは、Ig2モジュールが、Ig1の分子内結合により妨害されず、したがって、自然発生の二量体化のために利用可能である受容体分子の数を増加させる。Ig1モジュールの添加は、受容体分子の数を増加させることが予期され、そこでは、Ig2モジュールは、Ig1モジュールに結合し、したがって自然発生の二量体化のために利用可能な受容体分子の数を減少させる。しかしながら、可溶性Ig1の添加前でさえ、Ig2がIg1に結合する受容体分子の数は、およそ80%である(したがって、最大結合に近い)。したがって、使用する濃度での可溶性Ig1のさらなる添加は、自然発生の二量体化のために利用可能な受容体分子の数を減少させることがあまり予期されず、そしてこれは、おそらく、Ig1モジュールが、いずれの有意な効果も有さなかった理由を説明する。 Ig1-Ig2相互作用のための結合サイトが、NMR滴定解析(上記を参照のこと)を用いて同定できたので、これらのサイトに相当するペプチドが、FGFR1αリン酸化におけるIg1およびIg2の効果を模倣し得るか否かを試験することに関心があった。したがって、NMR滴定データに基づいて、我々は、おそらく結合相互作用を模倣する、Ig1モジュールに由来のペプチド(FRD1a: TLPEQAQPWGV)およびIg2モジュールに由来の2個のペプチド(FRD2a: E159KMEKKLHAV168およびFRD2b: A170AKTVKFKC178)を設計した。図5AおよびBで見られるように、Ig2に由来のペプチドの両方(20、100および500 μg/mlの濃度でのFRD2aならびに1、5および20 μg/mlの濃度でのFRD2b)は、実質的に、Ig2モジュールのそれと類似して、受容体リン酸化を増加させ、一方で、Ig1由来のペプチド(1、5、20、100および500 μg/mlの濃度でのFRD1a)は、予期したとおり、いずれの効果も有さなかった。 これらの結果は、さらに、FGFR1α活性化におけるIg1の制御的役割を支持する。付録 我々は、Ig2-3モジュールへのIg1モジュールの分子内結合の存在下での、FGFRのトリプルIg-モジュールのIg2-3モジュールへのFGFの結合を検討する。FGF-FGFR結合および分子内Ig1、Ig2-3結合は、相互に排他的であると考えられる。これらの相互作用は、下記のスキームで記載し得る:D23は、トリプルIg-モジュールのIg2-3モジュールを表し(Ig1は、Ig2-3モジュールに結合することを意味する)、F-は、FGFまたは他のリガンド(Ig1を除く)を表し、そしてD1は、Ig1を表す。記号・は、2個の分子間の複合体を表す。(1)は、2個の異なる分子間の相互作用を示し、一方で、(2)は、同じ分子内の2個の異なる部分間の分子内相互作用を示す。(1)は、量的に、下記の式で記載される:[式中、(F)は、分子Fの濃度を意味し、そしてK1は、Kd値を表す]。(2)の量的記載に関して、我々は、Ig1が、ランダム構造であると推定し得る柔軟なリンカー(図4Aに記載したとおり)により、Ig2に結合すると想定している(正当性に関しては、結果および考察を参照のこと)。Ig1モジュールは、Ig2モジュールの周りに無秩序に浮いているように思われ、そしてIg1とIg2モジュール間の平均的な距離に等しい半径の球形(Ig2モジュールの周囲)中に含まれると想像し得る。したがって、この球形のモジュール濃度は、解析のために使用される。我々は、この球形のモジュール濃度が、(D1)に因子λを掛け合わせることにより計算し得ると想定する。この因子の値は、後で計算される。次いで、(2)は、下記の式で記載し得る: 我々は、D23の開始濃度を(D23)0として表し、D23・Fの平衡濃度をxとして表し、そしてD23・D1の平衡濃度をyとして表し、そしてFは、一定に保つ。(1)および(2)から、我々は、を取得する。次いで、(3)および(4)から、我々は、を取得する。式(5)および(6)を解くとこにより、我々は、を取得する。 因子λを計算するために、我々は、Ig1とIg2モジュールのN末端間の距離の平均値を推定しなければならない(図6を参照のこと)。図6に見られるように、[式中、rは、Ig1とIg2モジュールのN末端間の距離であり、pは、Ig1モジュールの長さである]。このことから当然に、[式中、記号<>は、平均することを意味する]ということになる。<l2>の推定に関しては、結果および考察を参照のこと。半径rの球形中のIg1モジュールのモル濃度cは、[式中、NAは、アボガドロ数である]として計算し得る。次いで、因子λは、下記のとおり計算し得る:2. 神経突起伸張の刺激方法 小脳顆粒神経細胞(CGN)は、Drejer and Schousboe (1989) Neurochem Res. 14:751-4に以前記載されたとおり、主に、生後7日のWistarラットから調製する。 実験のために小脳組織を、氷上で維持した改変Krebs-Ringer溶液中で解剖し、上記で海馬神経細胞に関して記載したとおり、処理した。すべての細胞培養を、5% CO2を含む加湿雰囲気で、37℃でインキュベートした。すべての動物は、動物保護に関する国内ガイドラインにしたがって取り扱った。 CGNを、0.4 % (w/v) ウシ血清アルブミン (BSA; Sigma-Aldrich)、2 % (v/v) B27 Neurobasalサプリメント、1 % (v/v) glutamax、100 U/ml ペニシリン、100 μg/ml ストレプトマイシンおよび2 % 1 M HEPES (すべて、Gibco, BRLから)を補充したNeurobasal培地中で、非被覆8ウェルpermanox Lab-Tekチャンバースライド上に、10,000 細胞/cm2 の濃度でプレーティングした。様々なシグナル伝達経路の阻害剤の有り無しでのペプチド溶液を、300 μl/cm2の全容量に加えて、スライドを37℃でインキュベートした。24時間後、神経細胞を、4 % (v/v) ホルムアルデヒドで20分間固定し、その後、GAP-43に対する一次ウサギ抗体およびAlexa Fluor二次ヤギ抗ウサギ抗体を用いて、免疫染色した。各個々の実験で、各集団に関して、少なくとも200個のイメージを、以前記載されたとおり(Ronn et al., 2000 op. cit.)、コンピューター補助蛍光顕微鏡法を用いることにより体系的に取得した。簡潔には、ビデオカメラ(Grundig Electronics, Germany)に連結されたNikon Plan 20x objective (Nikon, Tokyo, Japan)を有するNikon Diaphot倒立顕微鏡を、記録のために使用した。ドーパミン神経突起伸張アッセイのために上記した同じソフトウェアパッケージを、記録したイメージを加工するために使用した。結果および考察 図7は、FGFRのIg1対Ig2相互結合サイトに由来するFRD2a(配列番号8)(A)およびFRD2b(配列番号13)(B)ペプチドの異なる濃度での処理に応答する、小脳顆粒神経細胞の神経突起伸張の刺激を証明している。培養中の神経突起の長さは、コントロール(未処理培養)と比較した処理培養中の神経突起の長さの割合として表す。 FRD2aおよびFRD2bペプチドの両方が、神経突起伸張を刺激することができる。FGFR1 Ig1モジュールの構造。A) Ig1モジュールの構造のリボン表示。B) Ig1モジュールの20個の多層構造の骨格原子のオーバーレイ。C) Ig1およびIg3モジュールのA/A'ループ領域の構造の比較。FGFR1 Ig1モジュールの結合したFGFR Ig2-Ig3モジュールへの結合。A) Ig1モジュールのIg2-3モジュールへの平衡結合レベル対Ig1モジュールの濃度のプロットを示す。結合は、SPR解析の手段により調べた。Ig1モジュールを、特定の濃度でセンサーチップに注入した。結合は、固定化Ig2-3モジュールを有するセンサーチップへの結合とブランクセンサーチップ(非特異的結合)間の応答相違として特定する。結合は、6回の反復の平均として特定し、エラーバーは、標準偏差を示す。データは、解離定数(Kd)を計算するために理論曲線に合わせた。B) 2 mM非標識Ig2モジュールの添加後の0.5 mM 15N標識Ig1モジュールの化学シフトの変化。C)非標識Ig1モジュールの添加後の0.5 mM 15N標識Ig2モジュールの化学シフトの変化。化学シフトは、15N-HSQCスペクトルから決定した。データは、2回の独立した実験からの平均として特定した。化学シフトの変化は、下記の式を用いて計算した:((5*ΔH)^2+ (ΔN)^2)^0.5[式中、ΔHは、1H化学シフトの変化であり、ΔNは、15N化学シフトの変化である]。FGFR1 Ig1およびIg2モジュールの構造での様々なFGFR1-リガンド結合サイトのマッピング。A) Ig2モジュールの構造上でのIg1モジュールとの相互作用により摂動された、Ig2モジュールの残基のマッピング;およびIg1モジュールの構造上でのIg2モジュールとの相互作用により摂動された、Ig1モジュールの残基のマッピング。B) Ig2モジュールへの結合に関与するIg2モジュールの残基、ヘパリン、主要な相互作用サイトを介したFGF(対称および非対称モデルにしたがって)および二次的相互作用サイト(対称モデルにしたがって)のマッピング。FGFR1 Ig1モジュールの自己阻害効果の定量的解析。A) FGFR1α(三重Ig型)の構造を、Ig1-Ig2リンカーの様々な無作為構造で図式化して記載する(Ig1とIg2モジュール間の相互作用は存在しないと仮定する)。円周は、FGFR1 Ig1およびIg2モジュールのN末端間の平均距離に相当する。B) 様々なIg1-Ig2リンカー長およびFGF1濃度に関する、FGF1-FGFR1β(2個のIg型)結合(青色)、FGF1-FGFR1α(三重Ig型)結合(緑色)および分子内Ig1-Ig2結合(赤色)の刺激。C) FGF1- FGFR1α結合(パネルBから)に関するデータポイントを、明かな解離定常値を計算するために、単一サイト結合を記載する曲線に適合させた。D) Ig1モジュールの自己阻害効果による親和性減少対リガンド-FGFR1β(2個のIg型)結合の解離定数(Kd)のプロット。FGFR1のリン酸化におけるFGFR1 Ig1およびIg2モジュールおよび由来するペプチドの効果。TREX-293細胞を、C-末端StrepII-タグを含むFGFR1で安定的にトランスフェクトし、特定の濃度で、100 ng/mlのFGF1、または他の化合物で20分間、刺激した。FRD1は、Ig1モジュールを表し、FRD2は、Ig2モジュールを表し、FRD1aは、Ig1モジュールのIg1-Ig2結合サイトに相当するペプチドを表し、FRD2aおよびFRD2bは、Ig2モジュールのIg1-Ig2結合サイトに相当するペプチドを表す。刺激後、FGFRを、抗ホスホチロシン抗体を用いて免疫精製し、次いで、StrepII-タグ(パネルA)に対する抗体を用いたイムノブロッティングにより解析した。FGFR1リン酸化の定量(パネルB)は、バンド強度の濃度解析により行った。リン酸化は、100%まで標準化したコントロール(非処理細胞)と比較して推定した。エラーバーは、平均の1つの標準誤差を表す。処理した細胞をコントロールと比較するときの、対応のあるt検定によるp <0.05(*で表される)およびp<0.01(**で表される) (t検定は、6回の独立した非標準化データで行った)。FGFR1のIg1およびIg2モジュールのN末端間の平均距離の推定。rは、Ig1とIg2モジュールのN末端間の距離であり、lは、リンカー長であり、pは、Ig1モジュールの長さであり、そしてΨは、Ig1モジュールの長軸ならびにIg2モジュールのN末端およびIg1モジュールのC末端に結合する直線間の角度である。FGFRのIg1対Ig2相互結合サイトに由来するペプチドFRD2a(配列番号8)(A)およびFRD2b(配列番号13)(B)を用いた処理に対する応答での小脳顆粒神経細胞の神経突起伸張。培養での神経突起の長さを、コントロール(未処理培養)と比較した処理した培養での神経突起の長さの割合として提供する。 繊維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)の断片を含む、多くとも25個の連続したアミノ酸残基のペプチドであって、該断片が、該受容体の免疫グロブリン様モジュール2(Ig2)および免疫グロブリン様モジュール1(Ig1)の相互作用に関与するアミノ酸残基を含む、ペプチド。 相互作用が、同じFGFRポリペプチドのIg1とIg2モジュール間で生じる、請求項1に記載のペプチド。 相互作用が、FGFRの相互Ig1対Ig2結合サイトで起こる、請求項1および2に記載のペプチド。 断片が、相互Ig1対Ig2結合サイト由来の連続したアミノ酸配列を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載のペプチド。 連続したアミノ酸配列が、Ig1モジュールのアミノ酸残基を含む相互Ig1対Ig2結合サイトの一部に由来する、請求項4に記載のペプチド。 連続したアミノ酸配列が、Ig2モジュールのアミノ酸残基を含む相互Ig1対Ig2結合サイトの一部に由来する、請求項4に記載のペプチド。 TLPEQAQPWGA (配列番号1)TKYQISQPEV (配列番号2)EPGQQEQLV (配列番号3)SLEQQEQKL (配列番号4)SLVEDTTLEPEEP (配列番号5)GTEQRVVGRAAEV (配列番号6)EASEEVELEPCLA (配列番号7)EKMEKKLHAV (配列番号8)EKMEKRLHAV (配列番号9)ERMDKKLLAV (配列番号10)QRMEKKLHAV (配列番号11)SKMRRRVIAR (配列番号12)AAKTVKFKC (配列番号13)AANTVKFRC (配列番号14)AANTVRFRC (配列番号15)AGNTVKFRC (配列番号16)もしくはVGSSVRLKC (配列番号17)またはその断片から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1-6のいずれか1項に記載のペプチド。 相互Ig1対Ig2結合サイトでのIg1モジュールと相互作用できる、請求項1-4または6-13のいずれか1項に記載のペプチド。 式:Q/E-(x)3-xp[式中、xpは、疎水性アミノ酸残基であり、そして(x)cは、3個のアミノ酸残基のアミノ酸配列である(ここで、xは、任意のアミノ酸残基である)]で示されるアミノ酸モチーフを含んだアミノ酸配列を含む、請求項8に記載のペプチド。 xpが、V、LまたはPである、請求項9に記載のペプチド。 (x)3が、少なくとも1個の残基QまたはEを含む、請求項9または10に記載のペプチド。 (x)3が、荷電アミノ酸残基または疎水性アミノ酸残基を含む、請求項11に記載のペプチド。 疎水性残基が、P、I、LまたはVである、請求項12に記載のペプチド。 FGFRの相互Ig1対Ig2モジュール結合サイトでのIg2モジュールと相互作用できる、前記請求項1-5、7または14-18のいずれか1項に記載のペプチド。 式:K/R-xp-(x)0-1-K/R[式中、xpは、疎水性アミノ酸残基であり、そして(x)は、荷電アミノ酸残基である]で示されるアミノ酸モチーフを含んだアミノ酸配列を含む、請求項14に記載のペプチド。 xpが、M、LまたはFである、請求項15に記載のペプチド。 アミノ酸モチーフが、3個のアミノ酸モチーフK/R-xp-(x)0-K/Rである(ここで、xpは、FまたはLである)、請求項15に記載のペプチド。 アミノ酸モチーフが、4個のアミノ酸モチーフK/R-xp-(x)1-K/Rである(ここで、xpは、Mである)、請求項15に記載のペプチド。 アミノ酸配列が、TLPEQAQPWGV (配列番号1)TKYQISQPEV (配列番号2)EPGQQEQLV (配列番号3)SLEQQEQKL (配列番号4)SLVEDTTLEPEEP (配列番号5)GTEQRVVGRAAEV (配列番号6)EASEEVELEPCLA (配列番号7)またはその断片から選択される、請求項5、7または14-18のいずれか1項に記載のペプチド。 アミノ酸配列が、EKMEKKLHAV (配列番号8)EKMEKRLHAV (配列番号9)ERMDKKLLAV (配列番号10)QRMEKKLHAV (配列番号11)SKMRRRVIAR (配列番号12)AAKTVKFKC (配列番号13)AANTVKFRC (配列番号14)AANTVRFRC (配列番号15)AGNTVKFRC (配列番号16)もしくはVGSSVRLKC (配列番号17)、またはその断片から選択される、請求項6-13のいずれか1項に記載のペプチド。 FGFRが、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4またはFGFR5から選択される、請求項1から20のいずれか1項に記載のペプチド。 FGFRが、FGFR1である、請求項21に記載のペプチド。 FGFRの活性を調節することができる、請求項1から22のいずれか1項に記載のペプチド。 FGFRを活性化することができる、請求項23に記載のペプチド。 FGFRを阻害することができる、請求項23に記載のペプチド。 FGFR1が活性化される、請求項24に記載のペプチド。 FGFR1が阻害される、請求項24に記載のペプチド。 神経突起伸張を刺激することができる、請求項23に記載のペプチド。 細胞生存を刺激することができる、請求項23に記載のペプチド。 該化合物が、シナプス可塑性を刺激することができる、請求項23に記載のペプチド。 幹細胞の分化を刺激することができる、請求項23に記載のペプチド。 学習および/または記憶を刺激することができる、請求項23に記載のペプチド。 断片が、配列番号1-17から選択される配列の少なくとも3個の連続したアミノ酸残基を含む、請求項7、19および20のいずれか1項に記載のペプチド。 断片が、配列番号1-17から選択される配列の5個のアミノ酸残基を含む、請求項33に記載のペプチド。 断片が、請求項9-13または14-18のいずれか1項で定義したとおりのアミノ酸モチーフを含む、請求項33または請求項34に記載のペプチド。 2個またはそれ以上の連続したアミノ酸配列、例えば、二量体または四量体アミノ酸配列を含む化合物である、請求項1から35のいずれか1項に記載のペプチド。 化合物が、配列番号1-17の配列のいずれか、または該配列のいずれかの断片の少なくとも1個を含む二量体である、請求項36に記載のペプチド。 二量体が、配列番号1-17の配列のいずれか、または該配列の任意の2個の異なる断片から選択される2個の異なるアミノ酸配列を含む、請求項37に記載のペプチド。 二量体が、2個の同一のアミノ酸配列を含み、ここで、該配列が、配列番号1-17の配列のいずれか、または該配列の2個の同一の断片から選択される、請求項37に記載のペプチド。 化合物が、4個の同一の配列を含む四量体であり、ここで、該配列が、配列番号1-17の配列のいずれか、または該配列の4個の同一の断片から選択される、請求項36に記載のペプチド。 神経突起伸張、細胞生存、シナプス可塑性、幹細胞分化ならびに/または学習および記憶を刺激することが、該疾患状態から回復するのに有益である、疾患または状態の処置のための医薬の製造のための請求項1-40のいずれか1項に記載のペプチドの使用。 医薬が、中枢および末梢神経系の疾患または状態、術後神経損傷、外傷性神経損傷、障害された神経繊維の髄鞘形成、虚血後損傷、多発脳梗塞性認知症、多発性硬化症、糖尿病に付随する神経変性、神経筋変性、統合失調症、気分障害、躁鬱病、アルツハイマー病、パーキンソン病、またはハンチントン病の処置を目的とする、請求項41に記載の使用。 医薬が、神経筋接合部の減少した機能を有する状態を含む筋肉の疾患または状態の処置を目的とするか、または生殖腺、膵臓もしくは腎臓の疾患または変性状態の処置を目的とする、請求項41に記載の使用。 医薬が、心筋細胞の細胞死を予防することを目的とする、請求項41に記載の使用。 医薬が、血管再生を目的とする、請求項41に記載の使用。 医薬が、創傷治癒の促進を目的とする、請求項41に記載の使用。 化合物および/または医薬組成物が、血管形成を阻害することができる、請求項41に記載の使用。 医薬が、癌の処置を目的とする、請求項41または47に記載の使用。 医薬が、学習する能力ならびに/または短期および/もしくは長期記憶の能力の刺激を目的とする、請求項41に記載の使用。 医薬が、細胞の増殖および/または分化および/または再生および/または形態的可塑性を調節することができる、請求項41に記載の使用。 請求項1-41のいずれか1項に記載のペプチドを含む、医薬組成物。 該組成物が、経口、経皮、筋肉内、静脈内、頭蓋内、髄腔内、脳室内、経鼻または肺内投与のために製剤される、請求項51に記載の医薬組成物。 投与が継続的である、請求項52に記載の医薬組成物。 FGFRを活性化することが処置のために有益である、状態または疾患を処置する方法であって、必要とする個体に請求項1-40のいずれか1項に記載のペプチドまたは請求項51-53に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。 状態または疾患が、請求項41-50のいずれか1項に定義したとおりである、請求項54に記載の方法。 本発明は、繊維芽細胞増殖因子受容体ファミリー(FGFR)に結合し、該受容体の活性を調節することができる新規ペプチドに関する。本発明のペプチドは、FGFRの断片であり、ここで、該断片は、FGFRの免疫グロブリン様モジュール2(Ig2)および免疫グロブリン様モジュール1(Ig1)の相互作用に関与するアミノ酸残基を含む。本発明は、FGFRの相互Ig1対Ig2結合サイトに由来するアミノ酸配列を開示し、FGFRが顕著な役割を果たす異なる病的状態の処置のための該アミノ酸配列を含むペプチドの使用に関する。したがって、本発明の化合物を含む医薬組成物もまた、関係がある。 20080612A16330配列表3配列表


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