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タイトル:公開特許公報(A)_フォン・ヴィレブランド因子及び第VIII因子/フォン・ヴィレブランド因子複合体の濃縮物を得るための方法及びその使用
出願番号:2008328536
年次:2009
IPC分類:C07K 14/745,A61K 38/43,A61K 35/14,A61P 7/04,C07K 1/34


特許情報キャッシュ

ペレ リストル デバルト マリア メルセデス ファロ トマス ホアン イグナチオ ホルケラ ニエト JP 2009161528 公開特許公報(A) 20090723 2008328536 20081224 フォン・ヴィレブランド因子及び第VIII因子/フォン・ヴィレブランド因子複合体の濃縮物を得るための方法及びその使用 グリフォルス,ソシエダッド アノニマ 508377211 青木 篤 100099759 石田 敬 100077517 福本 積 100087871 古賀 哲次 100087413 渡辺 陽一 100117019 中村 和広 100108903 池田 達則 100138210 ペレ リストル デバルト マリア メルセデス ファロ トマス ホアン イグナチオ ホルケラ ニエト ES 200800021 20080108 C07K 14/745 20060101AFI20090626BHJP A61K 38/43 20060101ALI20090626BHJP A61K 35/14 20060101ALI20090626BHJP A61P 7/04 20060101ALI20090626BHJP C07K 1/34 20060101ALN20090626BHJP JPC07K14/745A61K37/48A61K35/14 ZA61P7/04C07K1/34 15 OL 18 4C084 4C087 4H045 4C084AA02 4C084AA06 4C084BA44 4C084DC10 4C084DC15 4C084MA02 4C084MA66 4C084NA01 4C084NA14 4C084ZA53 4C087AA01 4C087AA02 4C087AA05 4C087DA06 4C087DA23 4C087MA02 4C087MA66 4C087NA01 4C087NA14 4C087ZA53 4H045AA10 4H045AA20 4H045AA30 4H045BA10 4H045CA40 4H045DA65 4H045EA20 4H045FA71 4H045GA10 本発明は、フォン・ヴィレブランド因子又は第VIII因子/フォン・ヴィレブランド因子複合体の治療用濃縮物及び、A型肝炎又はエリスロウイルスB19といったようなエンベロープを伴う及び伴わないウイルスを効果的に除去することのできる35nm未満の細孔サイズを通してナノろ過されたフォン・ヴィレブランド病(VWD)及び血友病Aの治療に適応した医薬化合物の調製方法に関する。 フォン・ヴィレブランド因子(VWF)は、さまざまな形態の分子量が、各単量体サブユニットについての約230000ダルトン(Da)からより大きな分子量のマルチマー形態における2千万Da超までの間で変動し、かくして公知の最大の可溶性タンパク質を形成している、マルチマー構造を有する血漿タンパク質である。その血漿濃度は、およそ5〜10μg/ml前後[Siedleckiら、Blood、第88巻、n8、1996年;2939〜2950頁]であり、より小さいサイズの血漿形態は約500000Daのサイズをもつ2量体に対応する。 VWFは、損傷を受けた血管表面に対する血小板の付着ひいてはフィブリン凝集物の形成機序がその上で展開する血小板血栓の形成に関与しており、一次止血において重要な役割を果たす。より高い分子量のマルチマーがさらに効率良く内皮下層に対する血小板付着機序を支援することが示唆され、VWF濃縮物の臨床的効能は、より高い分子量のこれらのマルチマーの濃度に関係づけされてきた[Matznerら、Haemopbilia(1998年)4,25〜32頁]。 これに加えて、天然状態での第VIII因子(FVIII)分子がVWFのマルチマー形態に接合された形で発見されることから、血漿中においてVWFは、FVIIIの輸送体及び安定化剤の役割を果たす。第VIII因子/フォン・ヴィレブランド因子複合体(FVIII/VWF)は、最大1150nmの長さに達する[Furuya Kら、Vox Sanguinis(2006年)91、119〜125頁]。これに加えて、VWFはそのさらに小さい球形形態でおよそ149×77×3.8nmのサイズを有し、せん断力に応じて、拡張形態又は線形形態へとその構造を変えることができる[Siedleckiら、Blood(1996年)88、2939〜2950頁]。FVIIIの血漿濃度はおよそ0.05〜0.1μg/ml前後(すなわちVWFの濃度の約50分の1〜100分の1である)。 VWF内の量的又は質的な欠陥は、フォン・ヴィレブランド病として知られ出血性障害として現われる一次止血の変化を生み出す。 フォン・ヴィレブランド病の治療においては、機能的VWFの含有量が高い精製されたVWF濃縮物及びFVIII濃縮物が治療目的で使用される。 考慮しなければならないもう1つの側面は、VWFがFVIIIの天然の安定剤であることから、例えば、「注入されたFVIIIについてのより長い平均インビボ寿命、FVIII阻害物質抗体に対する防御効果」[Gensana M.ら、Haemophilia,(2001年)v.7、369〜374頁][Bjorkman S.ら、Clin Parmacokinet,(2001年)v.40、815〜832頁][Behrmann K.ら、Thromb Haemost,(2002年)]、v.88、221〜229頁]及び「FVIII活性を阻害する抗体に関して考えられる発生頻度低下」[Goudemand J.ら、Blood(2006年)107:36〜51頁]といった数多くの著者によって指摘されているように、血友病Aの治療において使用された場合に、高いVWF含有量をもつFVIIIの濃縮物が数多くの利点を有しうる、という点にある。 これらの濃縮物中のVWFの含有量及び活性を特徴づけするための分析技術が確立されてきた。リストセチン補因子としてのVWF活性(VWF:RCo)の決定は、VWFの活性を決定するために広く使用されてきた方法である[Heathら、Thromb Haemost 1992年;68:155〜159頁]。VWF抗原(VWF:Ag)の測定[Cejka J. 、Clin Chem. 1982年;28:1356〜1358頁]は、試料中の活性及び不活性の両方のVWFの数量を我々に示す。 VWF濃縮物の機能的品質を推定するための適切なパラメータの1つは、VWF:RCo活性とVWF:Ag抗原の間の関係である。 VWF及び高分子量マルチマーの構造はその臨床的活性及び効能との関係において重要性をもつ可能性があるため、このマルチマー構造の特徴づけは、高いVWF含有量をもつVWF濃縮物及びFVIII濃縮物の有用性を決定する上で欠かせないものである。このマルチマー構造は、ゲル電気泳動によって決定される[Ruggeriら、Blood 1981年;57:1140〜1143頁]。 欧州特許第0411810号(EP0411810)及び欧州特許第0639203号(EP0639203)といった特許又はRistol P.らの刊行物Sangre(1996年)41;125〜130頁が示すように、VWFが機能的でありかつVWDにおける治療用生成物としてのその使用にとって充分な濃度を有しているVWF又はFVIII/VWF複合体を精製するためのさまざまな方法が記述されてきた。 その他のFVIII精製方法は、VWFを含まないか又は微量のVWFしか含まない最終生成物を提供する。これらの濃縮物は、VWDの治療には適さない。同様に、一部のケースでは、これらのFVIII濃縮物中に存在する残留VWFは、それを形成するマルチマーの一部分特により大きな分子量のものを失っているため、機能的ではない。これらの濃縮物は、血友病Aの治療に使用される場合VWFを富有するFVIII濃縮物がもつ利点を有さない。 既存のFVIII濃縮物は、なかでも分画及びウイルス不活性化方法及びそのVWF含有量及び機能的有効性を規定する、世界血友病連盟(WHF)が1997年に構築し2006年に更新した凝固因子濃縮製剤の記録(Kasper, C. K.;Brooker, M, 凝固因子濃縮製剤登録、2006年1月)の中で報告されている(表2及び3)。 FVIIIのナノろ過された濃縮物の中でも、35nm(又はそれより大きい細孔サイズ)を通してナノろ過された濃縮物と、例えばA型肝炎ウイルス(約24nm)又はB19ウイルス(18〜24nm)といったようなエンベロープをもたないウイルスに対してこのナノろ過が有効でない濃縮物を区別することが必要である。その一方で、35nm未満の細孔サイズを有するナノろ過されたFVIII濃縮物はVWFを全く含有しておらず、VWFをまさに含有している場合であっても高分子量のマルチマーが欠如しており、その結果としてVWDの治療用には有効ではなく、血友病Aの治療に使用された場合、VWFを富有するFVIII濃縮物がもつ利点を有していない。 生物学的製剤の安全性を確保するためには病原体を除去する強力な能力が不可欠であり、従ってこの目的でさまざまな方法が生産方法内に組込まれる。これらの中でも、脂質エンベロープを伴うウイルスに対し高い有効性をもつ、洗浄剤と結びつけられた有機溶媒の作用に基づく化学的不活性化処理について言及すべきであるが、これらは脂質エンベロープを伴わないウイルスに対しては有効ではない。熱処理といったようなその他の物理的処理は、脂質エンベロープの有無に関わらず有効であるが、その有効性は、処理の厳しさにより左右され、これはそれ自体、加工中のタンパク質の不活性化に対する耐性によって支配される。ウイルス負荷の減少を助長するその他の技術には、沈澱又はクロマトグラフィによる分離が含まれる。 脂質エンベロープが存在するか否かに関わらずウイルスを除去する上で非常に有効であることが証明された1つの方法は、ウイルス粒子を食い止めることのできる細孔サイズをもつフィルタを通してのろ過である(ナノろ過)。この方法は同様に、プリオンといったようなその他の感染性粒子の除去においても有効であることが示されてきた。それにも関わらず、この方法の効能は、使用される細孔サイズにより支配され、このサイズはそれ自体ろ過すべきタンパク質のサイズによって基本的に支配されている。 通常は15〜75ナノメートル(nm)の間の異なる細孔サイズをもつナノフィルタが存在し、一般に細孔サイズが小さくなればなるほど病原菌を保持する上での有効性が大きくなり、35nm未満、好ましくは15〜20nmの間の細孔サイズのナノフィルタが、エリスロウイルスB19又はA型肝炎ウイルス(およそ24nm)といったような18〜23nmの間の最小サイズのウイルスを阻止するナノフィルタである。その特性のため、これらのフィルタは、工業的生産にとって許容可能な回収率(通常はナノろ過後の回収率は60%以上でなくてはならない)でろ過可能なより小さなサイズのタンパク質に対してのみ物理的に応用可能である。 VWF又はFVIII/VWF複合体、特により高い分子量のVWFのマルチマー形態はその分子構造のため、基本的に35nmよりも小さいナノフィルタによりろ過できるとは思われない。これまで、より高い分子量のマルチマー形態を含めたVWF又はFVIII/VWF複合体の35nm未満のナノフィルタによるナノろ過は不可能であった。 上述の世界血友病連盟(WHF)の凝固因子濃縮製剤登録に由来する1つのナノろ過されたFVIII濃縮物(この場合20nmを使用)は、K. Furuyaらによる刊行物Vox Sanguinis(2006年)91、119〜125頁の中でも記述されている日本赤十字社のCross Eight Mである。この刊行物中ではFVIII濃縮物の含有VWFの20nmによるろ過が達成されたことそしてそのマルチマー構造が改変されなかったことが述べられているという事実にも関わらず、このWHF登録から、この濃縮物が非機能的VWFを有することがわかる。Furuyaの刊行物に立ち戻ると、含有VWFが微量レベルであり[123頁目:…VWF含有量は通常見出されるものと類似していた(FVIII:C1Uあたり0.007〜0.015UのVWF)…]、一方血漿中の比は各々のFVIII活性単位について1活性単位のVWF(1:1の割合)であることがわかる。他方で、この残留VWFのマルチマー構造の特徴づけ(図4、123頁)は、10以下のマルチマーバンドを示しているのに対し、高分子量のマルチマーを有する充分保存されたマルチマー構造は11以上のバンドを含んでいるはずであるということがわかっている(Metznerら、Haemophilia(1998年)4;27頁、第2段落)。Furuyaが自らの刊行物の中で我々に告げているのは、モノクローナル抗体を用いた親和性クロマトグラフィによって精製されたFVIII濃縮物のVWF含有量が微量レベルであること、より低い分子量のマルチマーだけが保存されること、そしてこのVWF組成物が20nmでのナノろ過による不利な影響を受けていないこと、である。明らかにこの濃縮物(Cross Eight M)は、VWDの治療には適しておらず、正常なヒト血漿の中に見られる割合(1:1)でのVWFの存在による恩恵は受けていない。 上述の世界血友病連盟の凝固因子濃縮製剤登録の中で言及されているもう1つのナノろ過されたFVIII濃縮物は、LFBのFACTANEである。登録簿によると、この濃縮物は15nmでナノろ過され、VWFを含有する。この製品は、13〜25nmの間の細孔サイズのふるいを通してナノろ過されたFVIIIについて記述している国際公開第2005040214号(WO2005040214)という特許に従って得られるものに対応しているが、この特許中では、ウイルス保持効率は、高分子量VWF(10個超のマルチマー)含有量が15%未満であることに結びつけられており、ここでも又、Furuyaの刊行物中で観察されたこと、つまりより低分子量のVWFマルチマーがFVIIIとの関係において低濃度で存在する場合すなわち1とは程遠いVWF/FVIII比(Furuyaのケースでは0.015そしてFactameの特許WO2005040214の場合には0.15)で存在する場合は、20nmを通してナノろ過され得ること、が確認されている。換言すると、より大きい分子量のマルチマーがナノフィルタによって保持される。その上、この特許では、同様に保持されるVWFと会合されたFVIIIを回収するために、FVIII/VWF複合体が解離する最低濃度である0.20Mより高濃度でCaCl2を添加することを通して、FVIII/VWF複合体の解離がもたらされる。これにも関わらず、全ての例で、FVIII/VWF複合体の解離ひいてはFVIIIの回収を確実にするため少なくとも0.35MのCaCl2濃度が使用された。この特許で定義づけされた組成物は、FVIIIの欠損を治療する目的のみをものでありVWDの欠損を治療するためのものではない。同様にこの製品は、それがVWDの治療にとって充分な量でVWFを含有していないことを明白に規定している「フランス保健製品安全保障機関」、[http://afssaps-prd.afssaps.fr/php/ecodex/frames.php?specid=66716833&typedoc=R&ref=R0093176/htm]からの製品認可第4.1節「治療指標」の中で証明されている通り、VWD治療には適していない。これに加えて、この製品に関する刊行物[Vox Sanguinis(2007年)92,327〜337頁]の中で、著者らは、該製品(Factane)がVWDの治療用に意図されたものではない(335頁)ということを確認している。 要約すると、K. Furuyaら[Vox Sanguinis(2006年)91,119〜125頁]及び、特許国際公開第2005040214号(WO2005040214)及びVox Sanguinis(2007年)92,327〜337頁の刊行物によって記述されている手順の目的は、血友病Aの治療に応用可能ではあるものの、VWFを富有する濃縮物であれば血友病の治療のために提供するはずの利点の恩恵を受けてはおらず、いかなる状況下でもVWDの治療には適していない、VWFの乏しい(15%未満か又は0.15:1未満のVWF/FVIII比)FVIII濃縮物を得ることにある。 VWFは、高いせん断力(高いせん断応力)を発生させる流量条件下でその3次元構造を変え、これによりインビボで血小板付着機序が発生し得ることになる、ということが述べられてきた(Siedleckiら、Blood、第88巻、n.8、1996年;2939〜2950頁)。この構造変化は、分子が球形構造からより線形の形態へと変わるという結果をもたらす。この点において、K. Furuyaらは、その刊行物(Vox Sanguinis(2006年)91,119〜125頁)の中ですでに、許容可能なFVIII収量を得るためには20nmを通したそのFVIII濃縮物のろ過を高圧(0.8バール)で実施しなければならないということ、そして恐らくこのことは、より低い圧力では存在するVWFがその構造を変えるのに充分なほどの流量効果がなくかくしてろ過が困難になるという事実に起因すると思われるということを記していた。規定された条件(0.8バール)の下で、彼らは又、ナノろ過の前の出発値が非常に低いものであることを念頭において、存在する低分子量のVWFマルチマーの良好な回収率をも達成した。 引用された文献は、VWDの治療のための使用の可能性を与えるか又は血友病Aの治療に使用した場合にVWF富有濃縮物について記述された利点を維持する機能的な高分子量マルチマーを含有するVWF又はVWF/FVIII複合体(0.4以上の比)に対する、例えば20nmといった35nm未満を通したナノろ過の応用の可能性を開示していない。さらに、WO2005040214は当業者に対して明らかに、この細孔サイズが高分子量VWFの通過を妨げるということを示している。 治療薬としてのVWFのナノろ過が現在35nmを通したナノろ過に制限されている技術的現状は、欧州特許第1632501号(EP1632501)によって実証されている。この特許は、明細書の第23段落及び実施例1、第37段落で記されているような35nmの細孔サイズをもつフィルタを通したナノろ過によるウイルス除去段階を含む、FVIII(0.06未満のFVIII:C/VWF:RCo比)含有量の低いVWF濃縮物を得るための方法を開示している。この特許から、VWFのサイズの分子のナノろ過が35nm未満の細孔サイズを有するナノフィルタにとって実現不可能なものであることがわかる。 上述のとおり、現在のところ、20nmを通してナノろ過されたフォン・ヴィレブランド病の治療を適応症とする治療用濃縮物は全く存在しない。これに加えて、この技術的現状は、高分子量のVWFマルチマーが存在しVWFとFVIIIの間の割合が0.15超である場合FVIII/VWF分子複合体の場合と同様、20nmを通した高分子量マルチマーを含むVWFのこのナノろ過が不可能であることを示している。 通常ヒト血漿の中で遭遇するものにより類似したFVIIIとVWF高分子複合体の2つの構成要素間の割合(FVIII一単位について一単位のVWF)を有し、なおかつ天然のFVIII/VWF複合体の利点の全てを有しかつVWD及び血友病Aの治療に適している、20nmを通してナノろ過されたFVIII/VWFの調製は、今なお未解決の問題である。 ヒト血漿からVWF又はFVIII/VWF複合体を得るための方法は通常、クレオプレシピテート画分から出発し、選択的沈澱又より最近では基本的にイオン交換及び/又は親和性を用いるクロマトグラフィ技術による精製を行なう。 現在(モノクローナル抗体を用いた)免疫親和性クロマトグラフィに基づいているFVIIIの精製のための方法は、非常に高い比活性度をもつFVIIIを提供するが、機能的VWFが欠如している[K. Furuyaら、Vox Sanguinis(2006年)91、119〜125頁]。 上述のとおり、VWF又はFVIII/VWF複合体を得るためのこれらの方法には、ウイルス不活性化又は除去の特異的な段階が1以上関与している。 この発明においては、VWFの活性は、血小板凝集を誘発するその能力における抗生物質リストセチンのための補因子(VWF:RCo)としてのVWFの役割に基づいている(欧州薬局方第07/2006:20721号)。この活性は、国際単位(IU VWF:RCo)で表され、その濃度はIU/ミリリットル(IUVWF:RCo/ml)で表現される。 FVIIIの活性は、FIXa、カルシウムイオン及びリン脂質の存在下でのFXの活性化における補因子としてのFVIIIの役割に基づくFVIII(FVIII:C)の凝固活性に関するものである(欧州薬局方第07/2006:20704号)。これは、発色性基質について定量化されて、国際単位(IU FVIII)で表され、その濃度はIU FVIII/ミリリットル(IU FVIII/ml)で表わされる。 本発明は、35nmと同等未満の小さい細孔サイズのふるいを通してナノろ過された、フォン・ヴィレブランド因子又は第VIII因子/フォン・ヴィレブランド因子複合体の治療用濃縮物において、得られた生成物が0.4以上のVWF:RCo/FVIII:C比ならびに高分子量マルチマ(11バンド超)を内含するVWFのための保存されたマルチマー構造を有し、さらにフォン・ヴィレブランド病及び血友病Aの治療を適応症とする医薬化合物の調製に有用な治療用濃縮物、及びそれを獲得する方法について記述する。 VWFが高分子量マルチマーを含有する保存されたマルチマー構造を有しているVWF又は第VIII因子/フォン・ヴィレブランド因子複合体のナノろ過について行なわれた調査に基づいて、発明者らは、驚くべきことに、VWF又はFVIII/VWF複合体及びカルシウムイオンを含有する溶液の場合、0.5バール未満そして好ましくは0.2〜0.4バールの間の最大圧力で35nm未満、好ましくは20nm未満の公称細孔サイズをもつナノフィルタを通してろ過を行なうことが可能である、ということを実証した。 ナノろ過すべき溶液は、12IU VWF:RCo/ml以下と同等である0.6吸光度単位(AU280)の最大濃度を有する。溶液のタンパク質組成物は、それ自体のVWF及びFVIII含有量に加えて、例えばフィブリノーゲン又はフィブロネクチンといったその他のタンパク質をも含むことができ、VWFの比活性度(タンパク質1mgあたりのIU VWF:RCo)は1以上で標準的には10以上である。FVIII/VWF複合体のナノろ過の場合のFVIIIの比活性度(タンパク質1mgあたりのIU FVIII)は同様に1以上であり、標準的には10以上である。 ナノろ過しなくてはならない溶液は、0.05〜0.20Mの間のカルシウム(塩化物)及び20〜30mMの間の好ましくはヒスチジンであるタンパク質安定化剤としての少なくとも1つの塩基性アミノ酸を含有していてよい。ろ過しなくてはならない溶液のpHは、変性を防ぐため5.5超でなくてはならない。 ろ過しなくてはならないタンパク質の生物活性として表現される積載率は、1cm2あたり0.5mgのVWFと等価であるろ過表面積1cm2あたり50IUのVWF:RCoに達し得る。 規定の条件下で、ろ過表面積1m2あたり最大120リットルの溶液をろ過し、使用された材料のものの少なくとも80%であるVWF:RCo/FVIII比及び保存されたVWFマルチマー構造(11個超のマルチマー)と合わせて70%超のFVIII活性回収率及び60%超のVWF活性の回収率を得ることができる。 ろ過しなければならない溶液は、0.4以上そして標準的には1〜3の間であり、従って、より大きなサイズのマルチマー分子であるVWFが方法の制限要素であることを考えるとFVIII無しのVWF溶液及びFVIII/VWF複合体溶液の両方に等しく適用可能であるVWF:RCo/FVIII活性比を有することを特徴とする。 規定の条件下で、標準ろ過流量は最大30リットル/時/m2、そして標準的には10〜20リットル/時/m2であり、ろ過時間は12時間以下である。これにより工業的利用が可能となり、高いコストを理由としてこれが方法を制限する要因であることからナノろ過表面積を変動させることによりこれらのパラメータを変更又は最適化できるということは明白である。 好ましい実施形態においては、35nm未満の細孔サイズを通したナノろ過に先立ち35nmと100nmの間の細孔サイズのナノフィルタを用いて予備ろ過が実施される。前置フィルタとナノフィルタ(<35nm)の面積比は、1:2と1:4の間にある。 20nmを通した2重ナノろ過(20nm+20nm)を実施することも又可能であり、これはナノろ過生成物についての安全性の追加という利点を増大させる。 この発明を通して、100IU VWF:RCo/ml超のVWF活性及び0.4以上のVWFとFVIII間の活性比を有し、かつVWFのマルチマー構造に高分子量のマルチマー(11個超のバンド)が含まれている、VWD及び血友病Aの治療に適した高純度の医薬品を調製できるようにするナノろ過されたVWF又はFVIII/VWF複合体が得られる。ナノろ過段階を伴う及びそれを伴わない異なる最終生成物ロット内のVWFのマルチマー構造を示している。ナノろ過された材料に対応するレーン内の少なくとも16のバンドを、オリジナルの写真の中で計算することができる。 市販のナノフィルタのうち、再生セルロースから製造されPlanova(登録商標)35Nの場合には約35±2nm、そしてPlanova(登録商標)20Nの場合には19±1nmという細孔サイズを有する日本の旭化成株式会社製のPlanova(登録商標)ナノフィルタが、本発明の実施例を提供するのに使用された。このタイプのフィルタは、デッドエンドモード及び接線方向モードのろ過を可能にする。以下の実施例において、Planova(登録商標)を用いたナノろ過はデッドエンドモードで実施されたが、本発明の目的では、当業者にとって公知であるその他の市販の銘柄及び組成のナノフィルタの使用がそうであるように、接線方向モードの使用も適している。本発明が関係しているナノフィルタが無欠であることを保証する試験と作業の方法そしてアセンブリの両方については、メーカーの取扱説明書中に全て規定されている。 実施例1:出発材料の取得 ナノろ過前のヒト血漿由来のFVIII/VWF複合体の溶液は、例えば、欧州特許第0411810号(EP0411810)に示されているように、ポリエチレングリコールでの沈澱とそれに続く親和性クロマトグラフィでの精製により可溶化されたクリオプレシピテートから得ることができる。ナノろ過された溶液は、その後、欧州特許第0639203号(EP0639203)に示されているように、例えばグリシンでの沈澱により高純度生成物を得るべく精製可能である。代替的には、トランスジェニック細胞又は動物において組換え型DNA技術を用いた生合成により、FVIII又はVWF又はその両方を得ることができる[Wood W. I.ら、Nature(1984年)312:330〜337頁];[Toole, JJ.ら、Nature(1984年)312:342〜347頁]。 実施例2:FVIII/VWF複合体のナノろ過 0.12m2のPlanova35Nフィルタ及び0.3m2のPlanova20Nフィルタを通した連続ろ過を、6.77のpH及び20±5℃の温度で25mMのヒスチジン及び0.14Mのカルシウムの存在下で、0.235AU280nmと等価の5.69IU/mlのVWF:RCo濃度及び10.4IU FVIII/AU280nmの比活性度を有する部分的に精製されたFVIII/VWF複合体の溶液14.7リットルを用いて実施した。3.3時間という時間内に完了した全ての溶液のろ過全体を通してPlanova20N内で0.20〜0.30バールの間の圧力差を維持しながら、約14L/時/m2の恒常な流量でろ過を実施した。面積及び時間単位あたりの生産性は、3.6IU FVIII/cm2/時、8.2IU VWFRCo/cm2/時(VWF:RCo/FVIII:C比=2.3)及び9.8IU VWF:Ag/cm2/時であった。活性回収率は、FVIII94%、VWFRCo95%であった。 実施例3:Planova20Nを通してナノろ過されたFVIII/VWF複合体の特性 実施例2に例示された要領で、7つの異なる出発材料ロットを加工した。10IU FVIII/AU280nmに近いか又はそれを超える比活性度及び0.3±0.2AU280nmのタンパク質濃度をもつFVIII/VWF複合体を、6.8±0.2のpH及び20±5℃の温度で、25mMのヒスチジン及び0.14Mのカルシウムの存在下で、出発材料として使用した。0.1μmを通した清澄化とそれに続いてPlanova35N及びPlanova20Nを通した連続ナノろ過を実施した。ろ過を10〜20リットル/時/m2の間の恒常な流量に維持した。Planova20Nフィルタ内の作動圧力を、全てのケースにおいてろ過を通して0.2〜0.4バールに維持した。 得られた結果(表1)は、規定の条件下で20nmの細孔サイズを通したFVIII/VWF複合体のナノろ過が、得られたナノろ液の活性及び純度(比活性度)に対し全く影響を及ぼさない、ということを示している。 ナノろ過前後の材料中で得られたVWF:RCo/FVIII及びVWF:RCo/VWF:Ag比(表1)の比較分析により、規定条件下で、リストセチンの補因子としてのVWFの機能性に影響を及ぼすことなく20nmの細孔サイズのふるいを通してFVIII/VWF濃縮物中に存在するVWFをろ過することができるということを実証することが可能である。 実施例4:11個超のバンドを有するより高い分子量のマルチマーを含むマルチマー構造の保存を実証する、ゲル電気泳動により得られるVWFのマルチマー構造。 図1は、ナノろ過段階を伴う及びそれを伴わない異なる最終生成物ロット内のVWFのマルチマー構造を示している。ナノろ過された材料に対応するレーン内の少なくとも16のバンドを、オリジナルの写真の中で計数することができる。 実施例5:FVIII/VWF複合体のナノろ過に対する圧力差の効果、 FVIIIの比活性度が約10IU/AU280nmである0.1〜0.3AU280nmの範囲の濃度のFVIII/VWFの部分的に精製された溶液を、実施例2及び実施例3で記述された条件下でPlanova35Nを通してろ過した。ナノろ過を高圧(0.8バール)及び低圧(0.3バール)用にセットし、表2に示された結果を得た。 同様にして、Planova35Nを通して予備ろ過されたFVIII/VWF複合体のこの溶液を、実施例2で記述された条件に基づいてPlanova20Nを通してろ過した。ナノろ過を高圧(0.8バール)及び低圧(0.3バール)用にセットし、以下の結果を得た。 高圧でのPlanova35Nを通したろ過において、流量の大幅な低下が存在し、1時間のナノろ過の後に観察されたのは初期流量の10.6%及び14.6%にすぎず、1つのケースでは3時間で初期流量のわずか7.9%であった。0.3バールの圧力差でのPlanova35Nを通したろ過においては、流量は3時間のナノろ過の後でさえ88.6%にとどまった。 出発材料としてPlanova35Nを通して予備ろ過したFVIII/VWF複合体の溶液を用い0.8バールの圧力差でのPlanova20Nを通したろ過においては1時間のナノろ過の後40%の流量比が得られ、フィルタの目詰まりを理由として3時間経過以前にろ過を停止した。0.3バールの圧力差でのPlanova20Nを通したろ過においては、3時間のナノろ過の後でさえ流量は75.7%にとどまった。 以上の実施例から、35nm以下の細孔サイズのためのろ過において低圧条件を維持することによって流量の突然の下降の発生が回避されるということは明白である。その結果として、最大20000000Daのサイズに達するVWFのマルチマー形態といったようなFVIII/VWF溶液中に存在する高分子量の分子の被着に起因するフィルタ膜の気孔の一部分の閉塞は、これらの圧力条件下では全く観察されなかった。 実施例6:FVIII/VWF複合体のナノろ過に対する使用材料の濃度の効果 約2というFVIII活性との関係におけるVWF(VMF:RCo:FVIII)で約10IU FVIII/AU280nmの比FVIII活性度を有しかつ0.1〜0.65AU280nmの範囲内の濃度を含む部分的に精製されたFVIII/VWF複合体の異なる溶液を用いて、約0.5バールの圧力差でかつ実施例1及び2で記述されたものと同様の方法(ただし濃度は除く)及び生成物組成条件の下でPlanova20Nを通してろ過を実施した。 得られた結果は、表4に示されている: ナノろ過中に観察された流量の低下は、負荷材料の濃度に正比例する。かくして、1時間のナノろ過の後に観察された流量は、それぞれ0.106AU、0.17AU、0.314AU、0.343AU及び0.648AUの濃度について初期流量との関係において80.7%、63.6%、60.7%、52.9%及び16.2%である。3時間のナノろ過の後に観察された流量に関しては、初期流量の約30.5%の値より低い下降は、ナノろ過が方法の上限に相当する圧力条件下で実施されたという事実にその原因を帰すことができる。 0.3AUに近い負荷濃度について、最適な生産性値(46.8IUのVWF:RCo/cm2と等価の7.8IUのVWF:RCo/cm2/h)及びタンパク質回収率(表参照)が得られた。負荷材料の濃度が最大(0.648AU)である場合、ろ過の開始時点からフィルタの目詰まりが見られ、生産性及び回収率の値は、2IUのVWF:RCo/cm2/時及び46.8%の合計タンパク質回収率より低い値まで大幅に下降し、これはこの濃度におけるナノろ過を不可能とする結果である。 これらの結果から、およそ10IU FVIII/AU280nmの比活性度を有するFVIII/VWF溶液のナノろ過のための実行可能な濃度範囲が0.6AU以下であり、これは6IU/ml以下のFVIII及び12IU/ml以下のVWF:RCoとほぼ等価であることを実証することができる。 実施例7:FVIII/VWF複合体のナノろ過に対するカルシウム濃度の効果。 10IU FVIII/AU280超の比活性度及び4IU/mlのVWF:RCoとほぼ等価である3IU/ml前後のFVIII活性を有するアルブミンを用いて処方されたFVIII/VWF複合体の異なる溶液を用いて、7.3±0.1のpHで0.1Mのアルギニン、25mMのヒスチジン及び0.05mMのカルシウムの存在下で20nmの細孔サイズを有するフィルタを通してろ過を実施した。およそ0.5バールというPlanova20Nを横断した圧力差を維持してろ過を実施した。表5は、2つの別々の生成物ロットを用いて実施した試験において得られた最も適切なパラメータを示す。 これらの結果は、カルシウムが実質的に不在で(0.05mM)アルギニン(0.1M)により置換されていることによって、生産性が両方のケースにおいて1.6IU FVIII/cm2/時及び2.0IU VWF:RCo/cm2/時の値にまで著しく降下し、これらの値が、出発材料中の類似のFVIII活性で実施例2にて観察された値(3.6IU FVIII/cm2/時及び8.2IU VWF:RCo/cm2/時)よりもはるかに低いものであるということを示している。 同様にして、2つの試験において観察されたFVIII活性の回収率はそれぞれ43.3%及び46.6%の値まで下降した。それでも、これらの条件下でさえ、自然界で遭遇するものに類似したVWFとFVIIIの活性間の割合(1:1)をもつFVIIIとVWFの高分子複合体のナノろ過は、実行可能である。 実施例8:工業的規模でナノろ過されたFVIII/VWFロットの生産 3000リットル超の血漿に由来し15.6IUFVIII/AU280の比活性度をもつFVIII/VWF複合体の部分精製された溶液から出発して、pH6.80で25mMのヒスチジン及び0.14Mのカルシウムの存在下にて公称細孔サイズ35nmで4m2の1基のフィルタ(Planova35N)及び公称細孔サイズ20nmで4m2の2基のフィルタ(Planova20N)を通して連続的ろ過を実施した。Planova20N1m2あたり120.2kgの適用負荷(生成物溶液+後洗浄)で、0.20〜0.35バールの間の圧力差をPlanova20Nを横断して維持しながら、およそ107L/時の恒常な流量でろ過を実施した。単位面積あたりの適用された合計活性は8.9IUFVIII/cm2及び19.1IUUWF:RCo/cm2であった。ナノろ過からの活性回収率は、FVIIIが70.4%、VWF:RCoが77.3%であった。後洗浄を含み、得られたナノろ過済み生成物の濃縮の後、観察された活性回収率は、FVIIIが97.5%、VWF:RCoが86.8%であった。 (欧州特許第0639203号(EP0639203)に従い)塩化ナトリウムとグリシンをその後沈澱させることで、高純度のナノろ過されたFVIII/VWF濃縮物が得られた。 得られた高純度のナノろ過されたFVIII/VWF濃縮物を安定化させ、生成物をびんの中に計量する前にその強度を調整した。 精製方法全体にわたるVWF:RCo/FVIII比として表現したFVIII含有量との関係における相対的VWF含有量を、下表6に示す: これらの結果は、FVIII/VWF複合体を精製する方法においてナノろ過を使用することが、高純度生成物を導く後続する精製段階に基本的に影響を及ぼさないということを示している。従ってこれは、20nmの細孔サイズのふるいを通したFVIII/VWF濃縮物のナノろ過のために設定された条件が、より高い分子量のVWFのマルチマー形態の割合に対する不利な影響を与えないということを示しており、これはかかる変化があった場合沈澱によるその後の精製に対し不利な影響を及ぼす可能性があるはずだからである。 ナノろ過されたFVIII/VWF濃縮物は、VWDにおける治療薬としての使用に充分なものである相対的VWF濃縮、及び血友病Aの治療にもそれを使用できるようにするFVIII含有量を有しており、これにはさらに、以前に言及した血友病Aの治療における有益な特性をもつ、自然の中に見られるものと類似のVWF(FVIIIの天然の安定化剤)が大量に存在するという追加の利点が付随している。 本発明について、その好ましい実施形態及び例示された実施例に基づいて記述してきたが、開示された材料に基づいて当業者であれば多数の変形形態を本発明の実施形態に導入することができ、これらの変形形態は、以下のクレーム及び同等の内容を考慮して、大部分が本発明の中に内含されるものである。 ヒト又は組換え体由来のフォン・ヴィレブランド因子又は第VIII因子/フォン・ヴィレブランド因子複合体の濃縮物を得るための方法であって、 a) 最大12IU VWF:RCo/mlの濃度及び0.4以上のフォン・ヴィレブランド因子/第VIII因子間比率でVWFを含有するフォン・ヴィレブランド因子又は第VIII因子/フォン・ヴィレブランド因子複合体の溶液の調製、b) 35ナノメートル未満の細孔サイズを有するフィルタを介する、a)で調製された溶液のナノろ過、により特徴付けられる方法。 ヒト又は組換え体由来のフォン・ヴィレブランド因子又は第VIII因子/フォン・ヴィレブランド因子複合体の濃縮物調製方法であって、a) 最大12IU VWF:RCo/mlの濃度及び0.4以上のフォン・ヴィレブランド因子/第VIII因子間比率でVWFを含有するフォン・ヴィレブランド因子又は第VIII因子/フォン・ヴィレブランド因子複合体の溶液の調製、b) 低圧における、35ナノメートル未満の細孔サイズを有するフィルタを介する、a)で調製された溶液のナノろ過、により特徴付けられる方法。 ヒト又は組換え体由来のフォン・ヴィレブランド因子又は第VIII因子/フォン・ヴィレブランド因子複合体の濃縮物の調製方法において、a) 最大12IU VWF:RCo/mlの濃度及び0.4以上のフォン・ヴィレブランド因子/第VIII因子間比率でVWFを含有するフォン・ヴィレブランド因子又は第VIII因子/フォン・ヴィレブランド因子複合体の溶液の調製、b) 低圧かつカルシウムイオンの存在下で、35ナノメートル未満の細孔サイズを有するフィルタを介する、a)で調製された溶液のナノろ過、により特徴付けられる方法。 最大ナノろ過圧力が0.5バールであることを特徴とする請求項2に記載の方法。 ナノろ過を受ける溶液中のカルシウムイオンの濃度が0.05〜0.2Mの間で変化することを特徴とする請求項3に記載の方法。 ナノろ過の後に回収されたフォン・ヴィレブランド因子が、11以上のオーダーのマルチマーを含むマルチマー構造を維持していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のナノろ過方法。 ナノろ過後のフォン・ヴィレブランド因子の回収率が60%以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のナノろ過方法。 ナノろ過後の第VIII因子の回収率が70%以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のナノろ過方法。 1cm2のろ過表面積あたり最大50IUのフォン・ヴィレブランド因子という積載率が使用されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のナノろ過方法。 ろ過される溶液の最大濃度が0.6AU(OD280)であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のナノろ過方法。 ナノろ過が0.2〜0.4バールの圧力で行われることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のナノろ過方法。 標準的ナノろ過流量が10〜20リットル/時/m2であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のナノろ過方法。 ナノろ過が、35ナノメートル未満の細孔サイズを有するフィルタを用いて行われることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のナノろ過方法。 ナノろ過が、19±1ナノメートルの細孔サイズを有するフィルタを用いて行われることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のナノろ過方法。 血友病A又はフォン・ヴィレブランド病の治療において使用するための医薬化合物の調製のための、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法において得られる濃縮物の使用。 【課題】フォン・ヴィレブランド因子又は第VIII因子/フォン・ヴィレブランド因子複合体の濃縮物の調製方法及びその使用。【解決手段】該方法は、最大12IU VWF:RCo/mlの濃度及び0.4以上のフォン・ヴィレブランド因子/第VIII因子比でVWFを含有するフォン・ヴィレブランド因子又は第VIII因子/フォン・ヴィレブランド因子複合体の溶液の調製、そして次に35ナノメートル未満の細孔サイズを有するフィルタを通した、a)で調製された溶液のナノろ過を開始することを特徴とする。【選択図】なし


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特許公報(B2)_フォン・ヴィレブランド因子及び第VIII因子/フォン・ヴィレブランド因子複合体の濃縮物を得るための方法及びその使用

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_フォン・ヴィレブランド因子及び第VIII因子/フォン・ヴィレブランド因子複合体の濃縮物を得るための方法及びその使用
出願番号:2008328536
年次:2012
IPC分類:C07K 14/755,C07K 1/34


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ペレ リストル デバルト マリア メルセデス ファロ トマス ホアン イグナチオ ホルケラ ニエト JP 4976366 特許公報(B2) 20120420 2008328536 20081224 フォン・ヴィレブランド因子及び第VIII因子/フォン・ヴィレブランド因子複合体の濃縮物を得るための方法及びその使用 グリフォルス,ソシエダッド アノニマ 509348487 青木 篤 100099759 石田 敬 100077517 福本 積 100087871 古賀 哲次 100087413 渡辺 陽一 100117019 中村 和広 100108903 池田 達則 100138210 ペレ リストル デバルト マリア メルセデス ファロ トマス ホアン イグナチオ ホルケラ ニエト ES 200800021 20080108 20120718 C07K 14/755 20060101AFI20120628BHJP C07K 1/34 20060101ALI20120628BHJP JPC07K14/755C07K1/34 C07K 14/755 C07K 1/34 CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開2006−058298(JP,A) Vox Sanguinis,2006年,Vol.91,p.119-125 9 2009161528 20090723 16 20090611 松原 寛子 本発明は、フォン・ヴィレブランド因子又は第VIII因子/フォン・ヴィレブランド因子複合体の治療用濃縮物及び、A型肝炎又はエリスロウイルスB19といったようなエンベロープを伴う及び伴わないウイルスを効果的に除去することのできる35nm未満の細孔サイズを通してナノろ過されたフォン・ヴィレブランド病(VWD)及び血友病Aの治療に適応した医薬化合物の調製方法に関する。 フォン・ヴィレブランド因子(VWF)は、さまざまな形態の分子量が、各単量体サブユニットについての約230000ダルトン(Da)からより大きな分子量のマルチマー形態における2千万Da超までの間で変動し、かくして公知の最大の可溶性タンパク質を形成している、マルチマー構造を有する血漿タンパク質である。その血漿濃度は、およそ5〜10μg/ml前後[Siedleckiら、Blood、第88巻、n8、1996年;2939〜2950頁]であり、より小さいサイズの血漿形態は約500000Daのサイズをもつ2量体に対応する。 VWFは、損傷を受けた血管表面に対する血小板の付着ひいてはフィブリン凝集物の形成機序がその上で展開する血小板血栓の形成に関与しており、一次止血において重要な役割を果たす。より高い分子量のマルチマーがさらに効率良く内皮下層に対する血小板付着機序を支援することが示唆され、VWF濃縮物の臨床的効能は、より高い分子量のこれらのマルチマーの濃度に関係づけされてきた[Matznerら、Haemopbilia(1998年)4,25〜32頁]。 これに加えて、天然状態での第VIII因子(FVIII)分子がVWFのマルチマー形態に接合された形で発見されることから、血漿中においてVWFは、FVIIIの輸送体及び安定化剤の役割を果たす。第VIII因子/フォン・ヴィレブランド因子複合体(FVIII/VWF)は、最大1150nmの長さに達する[Furuya Kら、Vox Sanguinis(2006年)91、119〜125頁]。これに加えて、VWFはそのさらに小さい球形形態でおよそ149×77×3.8nmのサイズを有し、せん断力に応じて、拡張形態又は線形形態へとその構造を変えることができる[Siedleckiら、Blood(1996年)88、2939〜2950頁]。FVIIIの血漿濃度はおよそ0.05〜0.1μg/ml前後(すなわちVWFの濃度の約50分の1〜100分の1である)。 VWF内の量的又は質的な欠陥は、フォン・ヴィレブランド病として知られ出血性障害として現われる一次止血の変化を生み出す。 フォン・ヴィレブランド病の治療においては、機能的VWFの含有量が高い精製されたVWF濃縮物及びFVIII濃縮物が治療目的で使用される。 考慮しなければならないもう1つの側面は、VWFがFVIIIの天然の安定剤であることから、例えば、「注入されたFVIIIについてのより長い平均インビボ寿命、FVIII阻害物質抗体に対する防御効果」[Gensana M.ら、Haemophilia,(2001年)v.7、369〜374頁][Bjorkman S.ら、Clin Parmacokinet,(2001年)v.40、815〜832頁][Behrmann K.ら、Thromb Haemost,(2002年)]、v.88、221〜229頁]及び「FVIII活性を阻害する抗体に関して考えられる発生頻度低下」[Goudemand J.ら、Blood(2006年)107:36〜51頁]といった数多くの著者によって指摘されているように、血友病Aの治療において使用された場合に、高いVWF含有量をもつFVIIIの濃縮物が数多くの利点を有しうる、という点にある。 これらの濃縮物中のVWFの含有量及び活性を特徴づけするための分析技術が確立されてきた。リストセチン補因子としてのVWF活性(VWF:RCo)の決定は、VWFの活性を決定するために広く使用されてきた方法である[Heathら、Thromb Haemost 1992年;68:155〜159頁]。VWF抗原(VWF:Ag)の測定[Cejka J. 、Clin Chem. 1982年;28:1356〜1358頁]は、試料中の活性及び不活性の両方のVWFの数量を我々に示す。 VWF濃縮物の機能的品質を推定するための適切なパラメータの1つは、VWF:RCo活性とVWF:Ag抗原の間の関係である。 VWF及び高分子量マルチマーの構造はその臨床的活性及び効能との関係において重要性をもつ可能性があるため、このマルチマー構造の特徴づけは、高いVWF含有量をもつVWF濃縮物及びFVIII濃縮物の有用性を決定する上で欠かせないものである。このマルチマー構造は、ゲル電気泳動によって決定される[Ruggeriら、Blood 1981年;57:1140〜1143頁]。 欧州特許第0411810号(EP0411810)及び欧州特許第0639203号(EP0639203)といった特許又はRistol P.らの刊行物Sangre(1996年)41;125〜130頁が示すように、VWFが機能的でありかつVWDにおける治療用生成物としてのその使用にとって充分な濃度を有しているVWF又はFVIII/VWF複合体を精製するためのさまざまな方法が記述されてきた。 その他のFVIII精製方法は、VWFを含まないか又は微量のVWFしか含まない最終生成物を提供する。これらの濃縮物は、VWDの治療には適さない。同様に、一部のケースでは、これらのFVIII濃縮物中に存在する残留VWFは、それを形成するマルチマーの一部分特により大きな分子量のものを失っているため、機能的ではない。これらの濃縮物は、血友病Aの治療に使用される場合VWFを富有するFVIII濃縮物がもつ利点を有さない。 既存のFVIII濃縮物は、なかでも分画及びウイルス不活性化方法及びそのVWF含有量及び機能的有効性を規定する、世界血友病連盟(WHF)が1997年に構築し2006年に更新した凝固因子濃縮製剤の記録(Kasper, C. K.;Brooker, M, 凝固因子濃縮製剤登録、2006年1月)の中で報告されている(表2及び3)。 FVIIIのナノろ過された濃縮物の中でも、35nm(又はそれより大きい細孔サイズ)を通してナノろ過された濃縮物と、例えばA型肝炎ウイルス(約24nm)又はB19ウイルス(18〜24nm)といったようなエンベロープをもたないウイルスに対してこのナノろ過が有効でない濃縮物を区別することが必要である。その一方で、35nm未満の細孔サイズを有するナノろ過されたFVIII濃縮物はVWFを全く含有しておらず、VWFをまさに含有している場合であっても高分子量のマルチマーが欠如しており、その結果としてVWDの治療用には有効ではなく、血友病Aの治療に使用された場合、VWFを富有するFVIII濃縮物がもつ利点を有していない。 生物学的製剤の安全性を確保するためには病原体を除去する強力な能力が不可欠であり、従ってこの目的でさまざまな方法が生産方法内に組込まれる。これらの中でも、脂質エンベロープを伴うウイルスに対し高い有効性をもつ、洗浄剤と結びつけられた有機溶媒の作用に基づく化学的不活性化処理について言及すべきであるが、これらは脂質エンベロープを伴わないウイルスに対しては有効ではない。熱処理といったようなその他の物理的処理は、脂質エンベロープの有無に関わらず有効であるが、その有効性は、処理の厳しさにより左右され、これはそれ自体、加工中のタンパク質の不活性化に対する耐性によって支配される。ウイルス負荷の減少を助長するその他の技術には、沈澱又はクロマトグラフィによる分離が含まれる。 脂質エンベロープが存在するか否かに関わらずウイルスを除去する上で非常に有効であることが証明された1つの方法は、ウイルス粒子を食い止めることのできる細孔サイズをもつフィルタを通してのろ過である(ナノろ過)。この方法は同様に、プリオンといったようなその他の感染性粒子の除去においても有効であることが示されてきた。それにも関わらず、この方法の効能は、使用される細孔サイズにより支配され、このサイズはそれ自体ろ過すべきタンパク質のサイズによって基本的に支配されている。 通常は15〜75ナノメートル(nm)の間の異なる細孔サイズをもつナノフィルタが存在し、一般に細孔サイズが小さくなればなるほど病原菌を保持する上での有効性が大きくなり、35nm未満、好ましくは15〜20nmの間の細孔サイズのナノフィルタが、エリスロウイルスB19又はA型肝炎ウイルス(およそ24nm)といったような18〜23nmの間の最小サイズのウイルスを阻止するナノフィルタである。その特性のため、これらのフィルタは、工業的生産にとって許容可能な回収率(通常はナノろ過後の回収率は60%以上でなくてはならない)でろ過可能なより小さなサイズのタンパク質に対してのみ物理的に応用可能である。 VWF又はFVIII/VWF複合体、特により高い分子量のVWFのマルチマー形態はその分子構造のため、基本的に35nmよりも小さいナノフィルタによりろ過できるとは思われない。これまで、より高い分子量のマルチマー形態を含めたVWF又はFVIII/VWF複合体の35nm未満のナノフィルタによるナノろ過は不可能であった。 上述の世界血友病連盟(WHF)の凝固因子濃縮製剤登録に由来する1つのナノろ過されたFVIII濃縮物(この場合20nmを使用)は、K. Furuyaらによる刊行物Vox Sanguinis(2006年)91、119〜125頁の中でも記述されている日本赤十字社のCross Eight Mである。この刊行物中ではFVIII濃縮物の含有VWFの20nmによるろ過が達成されたことそしてそのマルチマー構造が改変されなかったことが述べられているという事実にも関わらず、このWHF登録から、この濃縮物が非機能的VWFを有することがわかる。Furuyaの刊行物に立ち戻ると、含有VWFが微量レベルであり[123頁目:…VWF含有量は通常見出されるものと類似していた(FVIII:C1Uあたり0.007〜0.015UのVWF)…]、一方血漿中の比は各々のFVIII活性単位について1活性単位のVWF(1:1の割合)であることがわかる。他方で、この残留VWFのマルチマー構造の特徴づけ(図4、123頁)は、10以下のマルチマーバンドを示しているのに対し、高分子量のマルチマーを有する充分保存されたマルチマー構造は11以上のバンドを含んでいるはずであるということがわかっている(Metznerら、Haemophilia(1998年)4;27頁、第2段落)。Furuyaが自らの刊行物の中で我々に告げているのは、モノクローナル抗体を用いた親和性クロマトグラフィによって精製されたFVIII濃縮物のVWF含有量が微量レベルであること、より低い分子量のマルチマーだけが保存されること、そしてこのVWF組成物が20nmでのナノろ過による不利な影響を受けていないこと、である。明らかにこの濃縮物(Cross Eight M)は、VWDの治療には適しておらず、正常なヒト血漿の中に見られる割合(1:1)でのVWFの存在による恩恵は受けていない。 上述の世界血友病連盟の凝固因子濃縮製剤登録の中で言及されているもう1つのナノろ過されたFVIII濃縮物は、LFBのFACTANEである。登録簿によると、この濃縮物は15nmでナノろ過され、VWFを含有する。この製品は、13〜25nmの間の細孔サイズのふるいを通してナノろ過されたFVIIIについて記述している国際公開第2005040214号(WO2005040214)という特許に従って得られるものに対応しているが、この特許中では、ウイルス保持効率は、高分子量VWF(10個超のマルチマー)含有量が15%未満であることに結びつけられており、ここでも又、Furuyaの刊行物中で観察されたこと、つまりより低分子量のVWFマルチマーがFVIIIとの関係において低濃度で存在する場合すなわち1とは程遠いVWF/FVIII比(Furuyaのケースでは0.015そしてFactameの特許WO2005040214の場合には0.15)で存在する場合は、20nmを通してナノろ過され得ること、が確認されている。換言すると、より大きい分子量のマルチマーがナノフィルタによって保持される。その上、この特許では、同様に保持されるVWFと会合されたFVIIIを回収するために、FVIII/VWF複合体が解離する最低濃度である0.20Mより高濃度でCaCl2を添加することを通して、FVIII/VWF複合体の解離がもたらされる。これにも関わらず、全ての例で、FVIII/VWF複合体の解離ひいてはFVIIIの回収を確実にするため少なくとも0.35MのCaCl2濃度が使用された。この特許で定義づけされた組成物は、FVIIIの欠損を治療する目的のみをものでありVWDの欠損を治療するためのものではない。同様にこの製品は、それがVWDの治療にとって充分な量でVWFを含有していないことを明白に規定している「フランス保健製品安全保障機関」、[http://afssaps-prd.afssaps.fr/php/ecodex/frames.php?specid=66716833&typedoc=R&ref=R0093176/htm]からの製品認可第4.1節「治療指標」の中で証明されている通り、VWD治療には適していない。これに加えて、この製品に関する刊行物[Vox Sanguinis(2007年)92,327〜337頁]の中で、著者らは、該製品(Factane)がVWDの治療用に意図されたものではない(335頁)ということを確認している。 要約すると、K. Furuyaら[Vox Sanguinis(2006年)91,119〜125頁]及び、特許国際公開第2005040214号(WO2005040214)及びVox Sanguinis(2007年)92,327〜337頁の刊行物によって記述されている手順の目的は、血友病Aの治療に応用可能ではあるものの、VWFを富有する濃縮物であれば血友病の治療のために提供するはずの利点の恩恵を受けてはおらず、いかなる状況下でもVWDの治療には適していない、VWFの乏しい(15%未満か又は0.15:1未満のVWF/FVIII比)FVIII濃縮物を得ることにある。 VWFは、高いせん断力(高いせん断応力)を発生させる流量条件下でその3次元構造を変え、これによりインビボで血小板付着機序が発生し得ることになる、ということが述べられてきた(Siedleckiら、Blood、第88巻、n.8、1996年;2939〜2950頁)。この構造変化は、分子が球形構造からより線形の形態へと変わるという結果をもたらす。この点において、K. Furuyaらは、その刊行物(Vox Sanguinis(2006年)91,119〜125頁)の中ですでに、許容可能なFVIII収量を得るためには20nmを通したそのFVIII濃縮物のろ過を高圧(0.8バール)で実施しなければならないということ、そして恐らくこのことは、より低い圧力では存在するVWFがその構造を変えるのに充分なほどの流量効果がなくかくしてろ過が困難になるという事実に起因すると思われるということを記していた。規定された条件(0.8バール)の下で、彼らは又、ナノろ過の前の出発値が非常に低いものであることを念頭において、存在する低分子量のVWFマルチマーの良好な回収率をも達成した。 引用された文献は、VWDの治療のための使用の可能性を与えるか又は血友病Aの治療に使用した場合にVWF富有濃縮物について記述された利点を維持する機能的な高分子量マルチマーを含有するVWF又はVWF/FVIII複合体(0.4以上の比)に対する、例えば20nmといった35nm未満を通したナノろ過の応用の可能性を開示していない。さらに、WO2005040214は当業者に対して明らかに、この細孔サイズが高分子量VWFの通過を妨げるということを示している。 治療薬としてのVWFのナノろ過が現在35nmを通したナノろ過に制限されている技術的現状は、欧州特許第1632501号(EP1632501)によって実証されている。この特許は、明細書の第23段落及び実施例1、第37段落で記されているような35nmの細孔サイズをもつフィルタを通したナノろ過によるウイルス除去段階を含む、FVIII(0.06未満のFVIII:C/VWF:RCo比)含有量の低いVWF濃縮物を得るための方法を開示している。この特許から、VWFのサイズの分子のナノろ過が35nm未満の細孔サイズを有するナノフィルタにとって実現不可能なものであることがわかる。 上述のとおり、現在のところ、20nmを通してナノろ過されたフォン・ヴィレブランド病の治療を適応症とする治療用濃縮物は全く存在しない。これに加えて、この技術的現状は、高分子量のVWFマルチマーが存在しVWFとFVIIIの間の割合が0.15超である場合FVIII/VWF分子複合体の場合と同様、20nmを通した高分子量マルチマーを含むVWFのこのナノろ過が不可能であることを示している。 通常ヒト血漿の中で遭遇するものにより類似したFVIIIとVWF高分子複合体の2つの構成要素間の割合(FVIII一単位について一単位のVWF)を有し、なおかつ天然のFVIII/VWF複合体の利点の全てを有しかつVWD及び血友病Aの治療に適している、20nmを通してナノろ過されたFVIII/VWFの調製は、今なお未解決の問題である。 ヒト血漿からVWF又はFVIII/VWF複合体を得るための方法は通常、クレオプレシピテート画分から出発し、選択的沈澱又より最近では基本的にイオン交換及び/又は親和性を用いるクロマトグラフィ技術による精製を行なう。 現在(モノクローナル抗体を用いた)免疫親和性クロマトグラフィに基づいているFVIIIの精製のための方法は、非常に高い比活性度をもつFVIIIを提供するが、機能的VWFが欠如している[K. Furuyaら、Vox Sanguinis(2006年)91、119〜125頁]。 上述のとおり、VWF又はFVIII/VWF複合体を得るためのこれらの方法には、ウイルス不活性化又は除去の特異的な段階が1以上関与している。 この発明においては、VWFの活性は、血小板凝集を誘発するその能力における抗生物質リストセチンのための補因子(VWF:RCo)としてのVWFの役割に基づいている(欧州薬局方第07/2006:20721号)。この活性は、国際単位(IU VWF:RCo)で表され、その濃度はIU/ミリリットル(IUVWF:RCo/ml)で表現される。 FVIIIの活性は、FIXa、カルシウムイオン及びリン脂質の存在下でのFXの活性化における補因子としてのFVIIIの役割に基づくFVIII(FVIII:C)の凝固活性に関するものである(欧州薬局方第07/2006:20704号)。これは、発色性基質について定量化されて、国際単位(IU FVIII)で表され、その濃度はIU FVIII/ミリリットル(IU FVIII/ml)で表わされる。 本発明は、35nmと同等未満の小さい細孔サイズのふるいを通してナノろ過された、フォン・ヴィレブランド因子又は第VIII因子/フォン・ヴィレブランド因子複合体の治療用濃縮物において、得られた生成物が0.4以上のVWF:RCo/FVIII:C比ならびに高分子量マルチマ(11バンド超)を内含するVWFのための保存されたマルチマー構造を有し、さらにフォン・ヴィレブランド病及び血友病Aの治療を適応症とする医薬化合物の調製に有用な治療用濃縮物、及びそれを獲得する方法について記述する。 VWFが高分子量マルチマーを含有する保存されたマルチマー構造を有しているVWF又は第VIII因子/フォン・ヴィレブランド因子複合体のナノろ過について行なわれた調査に基づいて、発明者らは、驚くべきことに、VWF又はFVIII/VWF複合体及びカルシウムイオンを含有する溶液の場合、0.5バール未満そして好ましくは0.2〜0.4バールの間の最大圧力で35nm未満、好ましくは20nm未満の公称細孔サイズをもつナノフィルタを通してろ過を行なうことが可能である、ということを実証した。 ナノろ過すべき溶液は、12IU VWF:RCo/ml以下と同等である0.6吸光度単位(AU280)の最大濃度を有する。溶液のタンパク質組成物は、それ自体のVWF及びFVIII含有量に加えて、例えばフィブリノーゲン又はフィブロネクチンといったその他のタンパク質をも含むことができ、VWFの比活性度(タンパク質1mgあたりのIU VWF:RCo)は1以上で標準的には10以上である。FVIII/VWF複合体のナノろ過の場合のFVIIIの比活性度(タンパク質1mgあたりのIU FVIII)は同様に1以上であり、標準的には10以上である。 ナノろ過しなくてはならない溶液は、0.05〜0.20Mの間のカルシウム(塩化物)及び20〜30mMの間の好ましくはヒスチジンであるタンパク質安定化剤としての少なくとも1つの塩基性アミノ酸を含有していてよい。ろ過しなくてはならない溶液のpHは、変性を防ぐため5.5超でなくてはならない。 ろ過しなくてはならないタンパク質の生物活性として表現される積載率は、1cm2あたり0.5mgのVWFと等価であるろ過表面積1cm2あたり50IUのVWF:RCoに達し得る。 規定の条件下で、ろ過表面積1m2あたり最大120リットルの溶液をろ過し、使用された材料のものの少なくとも80%であるVWF:RCo/FVIII比及び保存されたVWFマルチマー構造(11個超のマルチマー)と合わせて70%超のFVIII活性回収率及び60%超のVWF活性の回収率を得ることができる。 ろ過しなければならない溶液は、0.4以上そして標準的には1〜3の間であり、従って、より大きなサイズのマルチマー分子であるVWFが方法の制限要素であることを考えるとFVIII無しのVWF溶液及びFVIII/VWF複合体溶液の両方に等しく適用可能であるVWF:RCo/FVIII活性比を有することを特徴とする。 規定の条件下で、標準ろ過流量は最大30リットル/時/m2、そして標準的には10〜20リットル/時/m2であり、ろ過時間は12時間以下である。これにより工業的利用が可能となり、高いコストを理由としてこれが方法を制限する要因であることからナノろ過表面積を変動させることによりこれらのパラメータを変更又は最適化できるということは明白である。 好ましい実施形態においては、35nm未満の細孔サイズを通したナノろ過に先立ち35nmと100nmの間の細孔サイズのナノフィルタを用いて予備ろ過が実施される。前置フィルタとナノフィルタ(<35nm)の面積比は、1:2と1:4の間にある。 20nmを通した2重ナノろ過(20nm+20nm)を実施することも又可能であり、これはナノろ過生成物についての安全性の追加という利点を増大させる。 この発明を通して、100IU VWF:RCo/ml超のVWF活性及び0.4以上のVWFとFVIII間の活性比を有し、かつVWFのマルチマー構造に高分子量のマルチマー(11個超のバンド)が含まれている、VWD及び血友病Aの治療に適した高純度の医薬品を調製できるようにするナノろ過されたVWF又はFVIII/VWF複合体が得られる。ナノろ過段階を伴う及びそれを伴わない異なる最終生成物ロット内のVWFのマルチマー構造を示している。ナノろ過された材料に対応するレーン内の少なくとも16のバンドを、オリジナルの写真の中で計算することができる。 市販のナノフィルタのうち、再生セルロースから製造されPlanova(登録商標)35Nの場合には約35±2nm、そしてPlanova(登録商標)20Nの場合には19±1nmという細孔サイズを有する日本の旭化成株式会社製のPlanova(登録商標)ナノフィルタが、本発明の実施例を提供するのに使用された。このタイプのフィルタは、デッドエンドモード及び接線方向モードのろ過を可能にする。以下の実施例において、Planova(登録商標)を用いたナノろ過はデッドエンドモードで実施されたが、本発明の目的では、当業者にとって公知であるその他の市販の銘柄及び組成のナノフィルタの使用がそうであるように、接線方向モードの使用も適している。本発明が関係しているナノフィルタが無欠であることを保証する試験と作業の方法そしてアセンブリの両方については、メーカーの取扱説明書中に全て規定されている。 実施例1:出発材料の取得 ナノろ過前のヒト血漿由来のFVIII/VWF複合体の溶液は、例えば、欧州特許第0411810号(EP0411810)に示されているように、ポリエチレングリコールでの沈澱とそれに続く親和性クロマトグラフィでの精製により可溶化されたクリオプレシピテートから得ることができる。ナノろ過された溶液は、その後、欧州特許第0639203号(EP0639203)に示されているように、例えばグリシンでの沈澱により高純度生成物を得るべく精製可能である。代替的には、トランスジェニック細胞又は動物において組換え型DNA技術を用いた生合成により、FVIII又はVWF又はその両方を得ることができる[Wood W. I.ら、Nature(1984年)312:330〜337頁];[Toole, JJ.ら、Nature(1984年)312:342〜347頁]。 実施例2:FVIII/VWF複合体のナノろ過 0.12m2のPlanova35Nフィルタ及び0.3m2のPlanova20Nフィルタを通した連続ろ過を、6.77のpH及び20±5℃の温度で25mMのヒスチジン及び0.14Mのカルシウムの存在下で、0.235AU280nmと等価の5.69IU/mlのVWF:RCo濃度及び10.4IU FVIII/AU280nmの比活性度を有する部分的に精製されたFVIII/VWF複合体の溶液14.7リットルを用いて実施した。3.3時間という時間内に完了した全ての溶液のろ過全体を通してPlanova20N内で0.20〜0.30バールの間の圧力差を維持しながら、約14L/時/m2の恒常な流量でろ過を実施した。面積及び時間単位あたりの生産性は、3.6IU FVIII/cm2/時、8.2IU VWFRCo/cm2/時(VWF:RCo/FVIII:C比=2.3)及び9.8IU VWF:Ag/cm2/時であった。活性回収率は、FVIII94%、VWFRCo95%であった。 実施例3:Planova20Nを通してナノろ過されたFVIII/VWF複合体の特性 実施例2に例示された要領で、7つの異なる出発材料ロットを加工した。10IU FVIII/AU280nmに近いか又はそれを超える比活性度及び0.3±0.2AU280nmのタンパク質濃度をもつFVIII/VWF複合体を、6.8±0.2のpH及び20±5℃の温度で、25mMのヒスチジン及び0.14Mのカルシウムの存在下で、出発材料として使用した。0.1μmを通した清澄化とそれに続いてPlanova35N及びPlanova20Nを通した連続ナノろ過を実施した。ろ過を10〜20リットル/時/m2の間の恒常な流量に維持した。Planova20Nフィルタ内の作動圧力を、全てのケースにおいてろ過を通して0.2〜0.4バールに維持した。 得られた結果(表1)は、規定の条件下で20nmの細孔サイズを通したFVIII/VWF複合体のナノろ過が、得られたナノろ液の活性及び純度(比活性度)に対し全く影響を及ぼさない、ということを示している。 ナノろ過前後の材料中で得られたVWF:RCo/FVIII及びVWF:RCo/VWF:Ag比(表1)の比較分析により、規定条件下で、リストセチンの補因子としてのVWFの機能性に影響を及ぼすことなく20nmの細孔サイズのふるいを通してFVIII/VWF濃縮物中に存在するVWFをろ過することができるということを実証することが可能である。 実施例4:11個超のバンドを有するより高い分子量のマルチマーを含むマルチマー構造の保存を実証する、ゲル電気泳動により得られるVWFのマルチマー構造。 図1は、ナノろ過段階を伴う及びそれを伴わない異なる最終生成物ロット内のVWFのマルチマー構造を示している。ナノろ過された材料に対応するレーン内の少なくとも16のバンドを、オリジナルの写真の中で計数することができる。 実施例5:FVIII/VWF複合体のナノろ過に対する圧力差の効果、 FVIIIの比活性度が約10IU/AU280nmである0.1〜0.3AU280nmの範囲の濃度のFVIII/VWFの部分的に精製された溶液を、実施例2及び実施例3で記述された条件下でPlanova35Nを通してろ過した。ナノろ過を高圧(0.8バール)及び低圧(0.3バール)用にセットし、表2に示された結果を得た。 同様にして、Planova35Nを通して予備ろ過されたFVIII/VWF複合体のこの溶液を、実施例2で記述された条件に基づいてPlanova20Nを通してろ過した。ナノろ過を高圧(0.8バール)及び低圧(0.3バール)用にセットし、以下の結果を得た。 高圧でのPlanova35Nを通したろ過において、流量の大幅な低下が存在し、1時間のナノろ過の後に観察されたのは初期流量の10.6%及び14.6%にすぎず、1つのケースでは3時間で初期流量のわずか7.9%であった。0.3バールの圧力差でのPlanova35Nを通したろ過においては、流量は3時間のナノろ過の後でさえ88.6%にとどまった。 出発材料としてPlanova35Nを通して予備ろ過したFVIII/VWF複合体の溶液を用い0.8バールの圧力差でのPlanova20Nを通したろ過においては1時間のナノろ過の後40%の流量比が得られ、フィルタの目詰まりを理由として3時間経過以前にろ過を停止した。0.3バールの圧力差でのPlanova20Nを通したろ過においては、3時間のナノろ過の後でさえ流量は75.7%にとどまった。 以上の実施例から、35nm以下の細孔サイズのためのろ過において低圧条件を維持することによって流量の突然の下降の発生が回避されるということは明白である。その結果として、最大20000000Daのサイズに達するVWFのマルチマー形態といったようなFVIII/VWF溶液中に存在する高分子量の分子の被着に起因するフィルタ膜の気孔の一部分の閉塞は、これらの圧力条件下では全く観察されなかった。 実施例6:FVIII/VWF複合体のナノろ過に対する使用材料の濃度の効果 約2というFVIII活性との関係におけるVWF(VMF:RCo:FVIII)で約10IU FVIII/AU280nmの比FVIII活性度を有しかつ0.1〜0.65AU280nmの範囲内の濃度を含む部分的に精製されたFVIII/VWF複合体の異なる溶液を用いて、約0.5バールの圧力差でかつ実施例1及び2で記述されたものと同様の方法(ただし濃度は除く)及び生成物組成条件の下でPlanova20Nを通してろ過を実施した。 得られた結果は、表4に示されている: ナノろ過中に観察された流量の低下は、負荷材料の濃度に正比例する。かくして、1時間のナノろ過の後に観察された流量は、それぞれ0.106AU、0.17AU、0.314AU、0.343AU及び0.648AUの濃度について初期流量との関係において80.7%、63.6%、60.7%、52.9%及び16.2%である。3時間のナノろ過の後に観察された流量に関しては、初期流量の約30.5%の値より低い下降は、ナノろ過が方法の上限に相当する圧力条件下で実施されたという事実にその原因を帰すことができる。 0.3AUに近い負荷濃度について、最適な生産性値(46.8IUのVWF:RCo/cm2と等価の7.8IUのVWF:RCo/cm2/h)及びタンパク質回収率(表参照)が得られた。負荷材料の濃度が最大(0.648AU)である場合、ろ過の開始時点からフィルタの目詰まりが見られ、生産性及び回収率の値は、2IUのVWF:RCo/cm2/時及び46.8%の合計タンパク質回収率より低い値まで大幅に下降し、これはこの濃度におけるナノろ過を不可能とする結果である。 これらの結果から、およそ10IU FVIII/AU280nmの比活性度を有するFVIII/VWF溶液のナノろ過のための実行可能な濃度範囲が0.6AU以下であり、これは6IU/ml以下のFVIII及び12IU/ml以下のVWF:RCoとほぼ等価であることを実証することができる。 実施例7:FVIII/VWF複合体のナノろ過に対するカルシウム濃度の効果。 10IU FVIII/AU280超の比活性度及び4IU/mlのVWF:RCoとほぼ等価である3IU/ml前後のFVIII活性を有するアルブミンを用いて処方されたFVIII/VWF複合体の異なる溶液を用いて、7.3±0.1のpHで0.1Mのアルギニン、25mMのヒスチジン及び0.05mMのカルシウムの存在下で20nmの細孔サイズを有するフィルタを通してろ過を実施した。およそ0.5バールというPlanova20Nを横断した圧力差を維持してろ過を実施した。表5は、2つの別々の生成物ロットを用いて実施した試験において得られた最も適切なパラメータを示す。 これらの結果は、カルシウムが実質的に不在で(0.05mM)アルギニン(0.1M)により置換されていることによって、生産性が両方のケースにおいて1.6IU FVIII/cm2/時及び2.0IU VWF:RCo/cm2/時の値にまで著しく降下し、これらの値が、出発材料中の類似のFVIII活性で実施例2にて観察された値(3.6IU FVIII/cm2/時及び8.2IU VWF:RCo/cm2/時)よりもはるかに低いものであるということを示している。 同様にして、2つの試験において観察されたFVIII活性の回収率はそれぞれ43.3%及び46.6%の値まで下降した。それでも、これらの条件下でさえ、自然界で遭遇するものに類似したVWFとFVIIIの活性間の割合(1:1)をもつFVIIIとVWFの高分子複合体のナノろ過は、実行可能である。 実施例8:工業的規模でナノろ過されたFVIII/VWFロットの生産 3000リットル超の血漿に由来し15.6IUFVIII/AU280の比活性度をもつFVIII/VWF複合体の部分精製された溶液から出発して、pH6.80で25mMのヒスチジン及び0.14Mのカルシウムの存在下にて公称細孔サイズ35nmで4m2の1基のフィルタ(Planova35N)及び公称細孔サイズ20nmで4m2の2基のフィルタ(Planova20N)を通して連続的ろ過を実施した。Planova20N1m2あたり120.2kgの適用負荷(生成物溶液+後洗浄)で、0.20〜0.35バールの間の圧力差をPlanova20Nを横断して維持しながら、およそ107L/時の恒常な流量でろ過を実施した。単位面積あたりの適用された合計活性は8.9IUFVIII/cm2及び19.1IUUWF:RCo/cm2であった。ナノろ過からの活性回収率は、FVIIIが70.4%、VWF:RCoが77.3%であった。後洗浄を含み、得られたナノろ過済み生成物の濃縮の後、観察された活性回収率は、FVIIIが97.5%、VWF:RCoが86.8%であった。 (欧州特許第0639203号(EP0639203)に従い)塩化ナトリウムとグリシンをその後沈澱させることで、高純度のナノろ過されたFVIII/VWF濃縮物が得られた。 得られた高純度のナノろ過されたFVIII/VWF濃縮物を安定化させ、生成物をびんの中に計量する前にその強度を調整した。 精製方法全体にわたるVWF:RCo/FVIII比として表現したFVIII含有量との関係における相対的VWF含有量を、下表6に示す: これらの結果は、FVIII/VWF複合体を精製する方法においてナノろ過を使用することが、高純度生成物を導く後続する精製段階に基本的に影響を及ぼさないということを示している。従ってこれは、20nmの細孔サイズのふるいを通したFVIII/VWF濃縮物のナノろ過のために設定された条件が、より高い分子量のVWFのマルチマー形態の割合に対する不利な影響を与えないということを示しており、これはかかる変化があった場合沈澱によるその後の精製に対し不利な影響を及ぼす可能性があるはずだからである。 ナノろ過されたFVIII/VWF濃縮物は、VWDにおける治療薬としての使用に充分なものである相対的VWF濃縮、及び血友病Aの治療にもそれを使用できるようにするFVIII含有量を有しており、これにはさらに、以前に言及した血友病Aの治療における有益な特性をもつ、自然の中に見られるものと類似のVWF(FVIIIの天然の安定化剤)が大量に存在するという追加の利点が付随している。 本発明について、その好ましい実施形態及び例示された実施例に基づいて記述してきたが、開示された材料に基づいて当業者であれば多数の変形形態を本発明の実施形態に導入することができ、これらの変形形態は、以下のクレーム及び同等の内容を考慮して、大部分が本発明の中に内含されるものである。 ヒト又は組換え体由来のフォン・ヴィレブランド因子又は第VIII因子/フォン・ヴィレブランド因子複合体の濃縮物を得るための方法であって、 a) 最大12IU VWF:RCo/mlの濃度及び0.4以上のフォン・ヴィレブランド因子/第VIII因子間比率でVWFを含有するフォン・ヴィレブランド因子又は第VIII因子/フォン・ヴィレブランド因子複合体の溶液の調製、b) 0.5バール以下の最大圧力、カルシウムイオンの存在下、かつ5.5超のpHにおける、20ナノメートルの細孔サイズを有するフィルタを介する、a)で調製された溶液のナノろ過、により特徴付けられる方法。 ナノろ過を受ける溶液中のカルシウムイオンの濃度が0.05〜0.2Mの間で変化することを特徴とする請求項1に記載の方法。 ナノろ過の後に回収されたフォン・ヴィレブランド因子が、11以上のオーダーのマルチマーを含むマルチマー構造を維持していることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。 ナノろ過後のフォン・ヴィレブランド因子の回収率が60%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。 ナノろ過後の第VIII因子の回収率が70%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。 1cm2のろ過表面積あたり最大50IUのフォン・ヴィレブランド因子という積載率が使用されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。 前記工程a)で調製された溶液の最大濃度が0.6AU(OD280)であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。 ナノろ過が0.2〜0.4バールの圧力で行われることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。 標準的ナノろ過流量が10〜20リットル/時/m2であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。


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