生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_免疫調節化合物による出血性ウイルス感染の治療又は予防
出願番号:2007539137
年次:2012
IPC分類:A61K 31/405,A61P 31/14,A61P 43/00,A61P 37/00


特許情報キャッシュ

モーセル、エリック・シー トゥーティル、シンシア・ダブリュ ルドルフ、アルフレッド・アール ピーターズ、クラレンス・ジェームズ JP 4874985 特許公報(B2) 20111202 2007539137 20051027 免疫調節化合物による出血性ウイルス感染の治療又は予防 サイクローン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド 593199563 SciClone Pharmaceuticals,Inc. ザ・ボード・オブ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・テキサス・システム 507053954 THE BOARD OF REGENTS OF THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM 曾我 道治 100110423 古川 秀利 100084010 鈴木 憲七 100094695 梶並 順 100111648 大宅 一宏 100122437 モーセル、エリック・シー トゥーティル、シンシア・ダブリュ ルドルフ、アルフレッド・アール ピーターズ、クラレンス・ジェームズ US 60/622,022 20041027 20120215 A61K 31/405 20060101AFI20120126BHJP A61P 31/14 20060101ALI20120126BHJP A61P 43/00 20060101ALI20120126BHJP A61P 37/00 20060101ALI20120126BHJP JPA61K31/405A61P31/14A61P43/00 111A61P37/00 A61K 31/405 A61P 31/14 A61P 37/00 A61P 43/00 BIOSIS(STN) CAplus(STN) EMBASE(STN) MEDLINE(STN) 特表2001−527065(JP,A) 生化学辞典,株式会社 東京化学同人,1998年,第3版,第375頁、第916頁 Journal of Virology,2000年,vol.74, no.5,p.2186-2192 Journal of Immunology,1985年,vol.135, no.2,p.1401-1407 Infection and Immunity,1981年,vol.32, no.2,p.872-880 9 US2005038834 20051027 WO2006047702 20060504 2008518031 20080529 11 20080827 馬場 亮人 [発明の背景] [発明の分野] 本発明は、出血性ウイルス感染の治療又は予防の分野に関する。 [関連出願の相互参照] 本出願は、2004年10月27日に出願された米国仮特許出願第60/622,022号の利益を主張し、これは本明細書中に援用される。 [背景技術の記載] 出血熱ウイルス(HFV)は、幾つかの分類群に分類されるウイルスである。HFVは、急性出血熱症候群と称される、類似の臨床的特徴を伴う多様な疾病症候群を引き起こす。HFV感染の病態生理学的特徴は、微小血管障害及び血管透過性の増大である。RNAウイルスであるHFVとしては、ラッサウイルス、並びにフニンウイルス、マチュポウイルス、グアナリトウイルス、及びサビアウイルスを含む南アメリカ出血熱ウイルス(これらはそれぞれ、ラッサ熱、アルゼンチン出血熱、ボリビア出血熱、ベネズエラ出血熱、及びブラジル出血熱の病原体である)、ホワイトウォーター・アロヨウイルス、及びフレキサル(Flexal)ウイルス等のアレナウイルス科;フィロウイルス科(エボラウイルス及びマールブルグウイルス);ブニアウイルス科:クリミア−コンゴ出血熱ウイルス(CCHFV)、リフトバレー熱ウイルス、腎症候群関連のハンタウイルス(これには、ハンターンウイルス、ソウルウイルス、ドブラバウイルス(ドブラバ−ベオグラードウイルスとも称される)、及びプーマラウイルスが含まれる)による出血熱ウイルス、並びにハンタウイルス肺症候群関連のハンタウイルス(これには、バイユーウイルス、ブラック・クリーク・キャナルウイルス、ニューヨークウイルス、シンノンブルウイルス、アンデスウイルス、オランウイルス、ジュキチバ(Juquitiba)ウイルス、ラグナネグラ(Laguna Negra)ウイルス、及びレチグアナスウイルスが含まれる);並びにフラビウイルス科(デング、デング熱、デング出血熱、デング熱ショック症候群、キャサヌール森林病、オムスク出血熱、及び黄熱病)が挙げられる。 自然条件下において、ヒトは、感染した節足動物の噛み付き又は感染した、病原体を保有する動物(animal reservoirs)との接触によって感染させられる。出血熱ウイルスはエアロゾルによる感染性が高く、高い罹患率、及び場合によっては、高い致死率に関連し、生物兵器として深刻な危険性をもたらすとされている。 HFVの正確な発症機序は、病原体(etiologic agent)によって変化する。主要な標的器官は血管内皮である。免疫メディエーター及び炎症メディエーターは、HFVの病因において重要な役割を果たすとされている。全てのHFVが血小板減少を引き起こすおそれがあり、血小板機能異常を引き起こすこともある。エボラウイルス、マールブルグウイルス、リフトバレー熱ウイルス、及び黄熱病ウイルスによる感染により感染細胞が破壊される。播種性血管内凝固症候群(DIC)は、フィロウイルス科による感染に特徴的なものである。エボラウイルス及びマールブルグウイルスは、免疫メディエーター及び炎症メディエーターの放出による、微小循環、及び柔細胞における細胞変性効果の機能障害を伴って、血管内皮細胞及び血小板への直接的な損傷による出血性素因及び組織壊死を引き起こすおそれがある。一方で、アレナウイルス科は、マクロファージによる炎症メディエーターの刺激、血小板減少、及び血小板凝集の阻害による出血を介在するとされている。 HFVのインキュベーション期間は、2〜21日の範囲である。これらの疾病の臨床所見は、非特異的で且つ可変的であり、このことが診断を難しくしている。注目すべきは、全ての患者が出血症状を発現するとは限らないということである。エボラウイルス感染した患者でさえ、かなりの割合で臨床的徴候である出血を示さない可能性がある。 急性HFV症候群の初期の徴候としては、発熱、頭痛、筋肉痛、発疹、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、関節痛、筋肉痛、及び不快感が挙げられ得る。エボラウイルス、マールブルグウイルス、リフトバレー熱ウイルス、黄熱病ウイルス、オムスク出血熱ウイルス、及びキャサヌール森林病ウイルスにより引き起こされる疾患が突発性発症によって特徴付けられる一方で、ラッサ熱並びにマチュポウイルス、フニンウイルス、グアナリトウイルス、及びサビアウイルスによる引き起こされる疾病は、より潜行性に発症する。初期の徴候としては、発熱、多呼吸、相対性徐脈、低血圧(これは循環性ショックにまで進行するおそれがある)、結膜充血、咽頭炎、及びリンパ節症が挙げられ得る。精神錯乱、発作、小脳徴候、及び昏睡状態を伴う脳炎を発症するおそれがある。ほとんどのHFVが皮膚の紅潮又は皮膚の斑状発疹を引き起こすが、この発疹は肌の浅黒い人では評価することが難しく、また原因となるウイルスによって変化する可能性がある。これらが発生した場合、出血症状が疾患の後期で発現し、この出血症状としては、点状出血、紫斑、粘膜及び結膜への出血、血尿、吐血、並びに下血が挙げられる。肝臓障害は共通であり、腎障害は心臓血管の易感染性(compromise)に比例して変化する。 検査の異常としては、白血球減少(ラッサ熱の幾つかの場合を除いて)、貧血又は血液濃縮、及び肝酵素の上昇が挙げられ;関連の凝固異常及び血小板減少を伴うDICが共通である。致死率は、リフトバレー熱の1%未満からエボラウイルス及びマールブルグウイルスの感染の70%〜90%までの範囲に及ぶ。 HFVの非特異的で、且つ可変的な臨床所見は、重要な診断上の課題を提示している。急性出血熱症候群のWHOサーベイランス標準(WHO surveillance standards)に基づく臨床診断基準としては、体温が3週間未満、38.3℃(101華氏度)より高いこと;重病及び出血症状の素因がないこと;並びに以下の出血症状:出血性発疹若しくは紫斑、鼻血、吐血、血尿、喀血、血便、又は代替的な確定診断のない他の出血症状の少なくとも2つが挙げられる。HFVの診断のための検査技法としては、抗原検出、IgM抗体検出、細胞培養の分離、電子顕微鏡法による可視化、免疫組織化学技法、及び逆転写−ポリメラーゼ連鎖反応が挙げられる。 HFVの現行の治療法は広く支持的であるが、リバビリンがその病原体に応じた幾つかの利点により使用されている。HFVの患者は、輸液に対する反応性が乏しく、急激に肺水腫を発現する傾向がある。 出血性ウイルス感染の治療方法又は予防方法に関する当該技術分野での必要性が依然として残っている。[発明の概要] 本発明によれば、被検体におけるアレナウイルス感染を治療もしくは予防するための組成物であって、式A: の免疫調節化合物の有効量を含む。 式Aにおいて、nは1又は2であり、Rは水素、C2−C10アシル又はC1−C6アルキルであり、Xは芳香族アミノ酸、複素環アミノ酸、又はこれらの誘導体である。Xは、L−トリプトファン又はD−トリプトファンである。 [発明の詳細な記載] 一実施形態によれば、本発明は被検体に免疫調節化合物を投与することによる出血性ウイルス感染の治療又は予防に関する。 被検体は哺乳類であることが好ましく、ヒト患者であることが最も好ましい。 予防のための投与は、疾病の疑いがある保菌体又は無症状性の保菌体(in carriers who are asymptomatic)との接触による危険性が高い人のために行うことができる。 本発明による免疫調節化合物は、式A:の免疫調節剤を含む。 式Aにおいて、nは1又は2であり、Rは水素、アシル、アルキル、又はペプチド断片であり、Xは芳香族アミノ酸、複素環アミノ酸、又はこれらの誘導体である。Xは、L−トリプトファン又はD−トリプトファンであることが好ましい。 「X」について、適切な芳香族アミノ酸又は複素環アミノ酸の誘導体は、アミド、モノ−又はジ−(C1〜C6)アルキル置換アミド、アリールアミド、及び(C1〜C6)アルキルエステル又はアリールエステルである。「R」について、適切なアシル部又はアルキル部は、炭素数1〜約6の分岐アルキル基又は非分岐アルキル基、炭素数2〜約10のアシル基、及びカルボベンジルオキシ及びt−ブチルオキシカルボニル等の保護基である。nが2の時、式Aに示されるCH基の炭素は、Xの立体配置と異なる立体配置を有していることが好ましい。 好ましい実施形態では、γ−D−グルタミル−L−トリプトファン、γ−L−グルタミル−L−トリプトファン、γ−L−グルタミル−Nin−ホルミル−L−トリプトファン、N−メチル−γ−L−グルタミル−L−トリプトファン、N−アセチル−γ−L−グルタミル−L−トリプトファン、γ−L−グルタミル−D−トリプトファン、β−L−アスパルチル−L−トリプトファン、及びβ−D−アスパルチル−L−トリプトファン等の化合物が利用される。特に好ましい実施形態では、γ−D−グルタミル−L−トリプトファン(SCV−07と称することもある)が利用される。これらの化合物、これらの化合物の調製方法、これらの化合物の薬学的に許容可能な塩、及びこれらの製剤処方は、米国特許第5,916,878号明細書に開示され、参照されて本明細書中の一部とする。 本発明は、出血性ウイルス感染の予防及び/又は治療に適用可能であり、これにはラッサウイルス、並びにフニンウイルス、マチュポウイルス、グアナリトウイルス、及びサビアウイルスを含む南アメリカ出血熱ウイルス(これらはそれぞれ、ラッサ熱、アルゼンチン出血熱、ボリビア出血熱、ベネズエラ出血熱、及びブラジル出血熱の病原体である)、ホワイトウォーター・アロヨウイルス、及びフレキサルウイルス等のアレナウイルス科;フィロウイルス科(エボラウイルス及びマールブルグウイルス);ブニアウイルス科:クリミア−コンゴ出血熱ウイルス(CCHFV)、リフトバレー熱ウイルス、腎症候群関連のハンタウイルス(これには、ハンターンウイルス、ソウルウイルス、ドブラバウイルス(ドブラバ−ベオグラードウイルスとも称される)、及びプーマラウイルスが含まれる)による出血熱ウイルス、並びにハンタウイルス肺症候群関連のハンタウイルス(これには、バイユーウイルス、ブラック・クリーク・キャナルウイルス、ニューヨークウイルス、シンノンブルウイルス、アンデスウイルス、オランウイルス、ジュキチバウイルス、ラグナネグラウイルス、及びレチグアナスウイルスが含まれる);並びにフラビウイルス科(デング、デング熱、デング出血熱、デング熱ショック症候群、キャサヌール森林病、オムスク出血熱、黄熱病)が挙げられるが、これらに限定されない。 ピチンデ(Pichinde)ウイルスは、ラッサ熱の確立モデルとして使用される。 製剤として、約0.001〜10mgの範囲で式A化合物を投与することができる。1日に1回又は複数回の製剤の投与で、1週間に1回又は複数回、好ましくは毎日、製剤を投与することができる。この製剤は、筋肉内注射で投与することができるが、他の形態の注射及び注入を利用することができ、経口吸入、鼻孔吸入、又は経口摂取等の他の形態の投与を用いることができる。 好ましい実施形態では、約0.01〜10mgの範囲内の用量、より好ましくは約0.1〜1mgの用量で式Aの化合物を投与する。 用量はまた、被検体の体重1kg当たりのμgで測定することができ、その用量は約0.01〜100μg/kgの範囲内、より好ましくは約0.1〜10μg/kgの範囲内、及び最も好ましいくは約1μg/kgである。 置換部(substitute)、欠失部、伸長部、置換部(replaced)、又はそうでなければSCV−07と実質的に同等の生物活性のある修飾部を有する生物学的に活性な類似体、例えばSCV−07と実質的に同等の活性を伴って、実質的に同じ方法で機能するのに、SCV−07と十分に相同性であるSCV−07由来ペプチドが含まれる。 経口、注射、定期的な注入、及び持続注入等を含む任意の好適な方法によって投与を行うことができる。 幾つかの実施形態では、式A化合物が注射用水、生理学的濃度の生理食塩水、又はその同等物等の薬学的に許容可能な液体キャリアで与えられる。 式A化合物の有効量は、日常的な用量漸増実験によって確定することができる。 他の免疫促進剤又は抗ウイルス剤と共に式A化合物も投与することができる。 アレナウイルスには、自然獲得感染及び生物脅威病原体(biothreat agent)として使用される可能性の両方により、現行の公衆衛生上の懸念が存在する。アレナウイルス科は、アンビセンスで二等分された(bi-segmented)ゲノムを有するエンベロープのあるウイルスから構成される。この22個の成員は、2つの血清型群に分けられる。リンパ球性脈絡髄膜炎−ラッサ群(complex)は、5つの既知の「旧世界の(Old World)」ウイルスを含み、タカリベ群は南北アメリカの17個の「新世界の(New World)」ウイルスから構成されている。それぞれのウイルスは、一種類の齧歯類、又は数種類の密接に関連した病原体を保有する齧歯類(2種類のコウモリから単離されただけであるタカリベ群を除いて)に関連する。この齧歯類宿主との密接な関連により、ウイルスの地理的範囲は病原体を保有する齧歯類の地理的範囲までに限定される。至る所に存在するハツカネズミに関連するLCMVは、世界中で見出される唯一のアレナウイルスである。 無症状性感染した齧歯類がヒトと接触すると、エアロゾル化した排泄物におけるウイルスの吸引によって感染させられる。ほとんどのアレナウイルスはヒト感染とは関係なく、またヒトに感染するものとして既知の全てのアレナウイルスが疾病を引き起こすわけではない。しかし、幾つかのアレナウイルスによって、軽度なものから非常に深刻な範囲まで及ぶヒトにおける疾病が引き起こされる。最も重要なものは、稀に死に至るCNS症候群を引き起こすLCMV、ラッサ熱の病因であるラッサウイルス、南アメリカ出血熱の病原体であるフニンウイルス、マチュポウイルス、グアナリトウイルス、サビアウイルスである。 ラッサウイルス病原体を保有するマストミス種(Mastomys sp.)等のラッサ熱は、西アフリカに固有のものである。この疾病は、感染発症の7〜18日後の発熱、衰弱、不快感、頭痛、及び咽喉炎を特徴とする。他の共通の症状としては、関節痛及び背痛、咳、嘔吐、並びに下痢が挙げられる。出血熱とは違い、関連する皮疹、出血斑、又は溢血は存在しない。入院患者の致死率は15〜20%であるが、全てのラッサ熱感染者の致死率は2〜3%程度と低いものであり得る。エアロゾル化して人から人への伝播が起こるということは報告されていないが、感染者の分泌物との接触は重大な危険性のある要因である。 フニンウイルス、マチュポウイルス、グアナリトウイルス、及びサビアウイルスは、南アメリカ出血熱:それぞれアルゼンチン出血熱、ボリビア出血熱、ベネズエラ出血熱、及びブラジル出血熱の病原体である。これらは異なるが、これらの全てが感染後1〜2週間から始まる発熱、不快感、及び筋肉痛等の同様の症状を有する。病状の悪化に伴い、さらなる症状:胃腸痛、眩暈、頭痛、光線恐怖症、眼窩後痛(retroorbital pain)、心悸高進、溢血、及び結膜充血が発現する。マチュポウイルス感染は、人から人への感染の拡大の傾向が最も強いとされ、このことは院内感染及び家庭内感染の拡大により実証されている。ラッサ熱感染と同様であるが、他の出血熱のアレナウイルスとは異なり、グアナリトウイルス感染後には聴覚障害が観察される。南アメリカ出血熱ウイルスの致死率は約20%である。 これらの高い致死率、エアロゾル感染性、及び公衆衛生上の危機を引き起こす可能性のために、ラッサ、フニン、マチュポ、グアナリト、及びサビアは、米国疾病管理センター(CDC)においてカテゴリーAの病原体に指定されている。これらの病原体の研究は、BSL−4予防措置を使用して行わなければならない。 ピチンデウイルス(PIC)は、非病原生のタカリベ群ウイルスである。13個体のモルモット系における連続した脾臓輸送により、モルモットのPICの病原性が劇的に増加した。適合ウイルスによるモルモットの感染により、サル及びヒトにおけるラッサ熱に非常に類似した疾病を発症する。特徴としては、発熱、血小板減少、血小板機能異常、血管漏出、呼吸障害、ほとんどの神経外組織におけるウイルス複製、及び感染組織における最小限の組織変化が挙げられる。ピチンデはヒトにとって病原性はないので、このモデルが、ラッサ熱及びアレナウイルス出血熱の両方の研究に、感染性の小さい(low-containment)代用物として、広く使用されている。 ヌクレオシド類似体のリバビリンは、ラッサ熱に対する主要な抗ウイルス治療であり、アレナウイルス出血熱に対する有力な治療である。しかし、リバビリン治療が急性出血熱を予防するか、又は軽減し得る一方で、アレナウイルス感染におけるリバビリンの使用が遅発性の神経症を引き起こすこともある。また幾つかの免疫治療法が、アレナウイルスの感染及び疾病の動物モデルで試みられているが、成功していない。インビトロで、アレナウイルスは、小胞口内炎ウイルスより、IFNβに対する感受性が、10〜1,000倍低い。この非感受性は、IFN誘導ポリ(ICLC)によるマチュポ感染アカゲザルの研究により支持される。全体的な致死率及び死亡時期は治療によっては改善されず、幾つかの群では、治療によりウイルス血症が有意に高くなった。Lucia他は、PIC感染したモルモットモデルを利用した、IFNα、リバビリン、及び免疫調節剤C246,783の使用を試験した。C246,783の効果は、中でもIFN誘導、並びにNK細胞及びマクロファージの活性化である。IFNα(最大1.7×105U)又はC246,783で処理した動物の間で、致死率の有意な改善は見られなかった。感染後28日間毎日投与したリバビリンによって、致死率の改善がこの研究で観察され、死亡時期は処理の14日目まで延長した。I型IFNに対するアレナウイルスの相対的な非感受性により、有意にこれらの研究が実質的に失敗する可能性が高い。 アレナウイルスに対する免疫治療におけるこれらの早期の失敗にもかかわらず、T細胞刺激は依然として未研究の治療様式である。したがって、PIC感染したモルモットにおける免疫調節剤SCV−07の効果を試験するように、予備試験を設計した。SCV−07は、免疫刺激に対するTh1応答を高めるものとして既知である。SCV−07 SCV−07すなわちγ−D−グルタミル−L−トリプトファンは、γ−グルタミル部又はβ−アスパルチル部を有する免疫調節剤群の成員であり、これはロシアの科学者によって発見され、SciClone Pharmaceuticals, Inc.により米国で幾つかの症状に対する有効性が試験されている。SCV−07は、インビボ及びインビトロで多くの免疫調節活性を有している。SCV−07はCon−A誘導胸腺細胞を増加させ、リンパ細胞の増殖を高め、Con−A誘導インターロイキン−2(IL−2)の生成及び脾臓リンパ細胞によるIL−2レセプターの発現を高めて、骨髄細胞におけるThy−1.2の発現を刺激する。インビボでは、SCV−07は、5−FU免疫抑制動物及びヒツジの赤血球による免疫付与モデルにおける免疫刺激性の効果が強い。 SCV−07作用の個々の(discrete)メカニズムは、厳密には確定してはいない。しかし、上記のデータに基づき、SCV−07は、多能性幹細胞の胸腺細胞への分化及び/又は胸腺細胞のT細胞への分化における影響を通じて作用することが示唆された。さらに、SCV−07の投与がTh1サイトカインであるIL−2及びIFNγを増加させたが、Th2サイトカインを増加させなかったことから、SCV−07がTh1細胞の優先的な活性化を通じて作用することを示した。 次々と出る証拠によって、CD4+Th1細胞並びにIL−2及びIFNγを含む、関連のサイトカインがミコバクテリアの感染に対する防御免疫反応を発生させるのに重要であることが示唆される。ネズミの結核モデルの研究において、SCV−07が肺損傷を有意に低減することが示された。SCV−07処理動物由来のCon−A誘導脾臓細胞によるIFNγ生成が、未処理の動物由来の細胞より多くなった一方で、IL−4生成は少なくなった。腹膜マクロファージによる食細胞活性は、未処理で感染した対照より著しく増大した。これらの前臨床データによって、SCV−07の使用に関する臨床試験の開始が支持された。ロシアで行ったII相臨床試験によって、SCV−07の投与には、ミコバクテリア陰性唾液培養液の発生を高め、いかなる薬剤誘導性の副作用を示さずに窩洞治癒及び結核の症状においてはっきりした効果があったことが見出された。ヒトの結核の場合におけるSCV−07の有効性により、アレナウイルス疾病を含む、TH1免疫性が重要であることが示されている他の疾病におけるSCV−07の有効性に関する仮説が示される。 上記に基づいて、PIC感染したモルモットを処理する際のSCV−07の有効性を試験するように2つの予備試験を設計した。 本発明は以下の実施例によってさらに例示され、これらは限定を意図しない。(実施例1) 20個体の雄のハートレーモルモット(400〜450g)を5個体ずつ群に分けた。 0群には、SCV−07を与えなかった。 1群には、感染前の5日間、毎日、1μg/kgのSCV−07を腹腔内において与えた。 2群には、感染と同じ日に1度、1μg/kgのSCV−07を腹腔内において与えた。 3群には、感染の1日後に1度、1μg/kgのSCV−07を腹腔内において与えた。 感染:腹腔内において動物を100pfuのモルモット適合性PICで接種した。 体重、体温、及び疾病進行の代理マーカーを1週間につき少なくとも3回測定した。明らかに病気の動物は、より頻繁に検査した。これまでの研究によって、末期的な病気の動物で25%の体重減少が示された。しかし、テキサス医科大学IACUCは、20%の体重減少が、動物の末期(terminal)と致死(sacrifice)とを分ける境界であることを要求している。 0群の動物は2つの別々の実験;処理した1群〜3群と共にここで記載されている実験、及び処理した4群〜6群と共に以下に記載される実験で使用される(pooled from)。 処理群における致死率の減少によって示される有効性に対する傾向が存在する一方で、ログランク(log-rank)統計法によるカプラン−メイヤー生存率分析によって、処理動物の生存曲線のいずれも対照動物の生存曲線と有意な差はないという視覚的な見解が支持される(1群、2群、及び3群において、それぞれp=0.66、0.77、及び0.40)。処理動物間の感染の11日後(dpi)の体重増加は1群がもっとも大きかったが(表1)、いずれの群の体重増加も対照と差はなかった。いずれにおいても11dpiに評価した処理動物と対照動物との体温に差はなかった(表2)。1つの対照の生存個体が、第2の対照群由来であったという事実は、表1及び表2からは明らかではない。この動物では、対照群の体温が劇的に下方に変化し、体重増加が上方に変化した。したがって、最初の研究の結果は、プールデータの結果より有効性を強く示唆していた。 有意差はないが、最初の実験は第2の実験を始めるのに十分示唆的であった。 (実施例2) 再び20個体の動物を5個体ずつ4群に分けた。 0群には、SCV−07を与えなかった。 4群には、感染後、初めの5日間、毎日、腹腔内において1μg/kgのSCV−07を与えた。 5群には、感染後、初めの5日間、毎日、腹腔内において10μg/kgのSCV−07を与えた。 6群には、感染後、初めの5日間、毎日、腹腔内において100μg/kgのSCV−07を与えた。 感染:腹腔内において動物を100pfuのモルモット適合性PICで接種した。 体重、体温、及び疾病進行の代理マーカーを上記のように測定した。 致死率は5群及び6群で低減したが、5群の生存曲線のみが0群のものと有意な差があった(4群、5群、及び6群において、それぞれp=0.77、0.03、及び0.27)。11dpiの体重増加は処理した5群及び6群で対照より大きかったが、有意差はなかった(表1)。体温は3つ全ての処理群で対照より低かったが、これもまた有意差はなかった(表2)。血清を両方の実験の動物から採取した。これらのサンプルの分析は継続中であるが、予備試験の結果により、急性の疾患及び致死の約48時間前まで検出不可能なウイルス血症が示される。 これらの結果から、幾つかの処理群の致死率の低減に対する傾向により明らかなように、SCV−07の投与によってPIC感染したモルモットが治療され、感染後の5日間、腹腔内において10μg/kgの用量で致死率が有意に減少することが示される。 被検体におけるアレナウイルス感染を治療もしくは予防するための組成物であって、式A:(式中、nは1又は2であり、Rは水素、C2−C10アシル又はC1−C6アルキル、XはL−トリプトファン又はD−トリプトファンである)の免疫調節化合物の有効量を含む、組成物。 前記化合物がγ−D−グルタミル−L−トリプトファンである、請求項1に記載の組成物。 前記化合物が、約0.1〜10mgの範囲内の用量で投与される、請求項1に記載の組成物。 前記化合物が、約0.1〜1mgの範囲内の用量で投与される、請求項1に記載の組成物。 前記化合物が、被検体の体重1kg当たり約0.01〜100μgの範囲内の用量で投与される、請求項1に記載の組成物。 前記化合物が、被検体の体重1kg当たり約0.1〜10μgの範囲内の用量で投与される、請求項1に記載の組成物。 前記化合物がγ−D−グルタミル−L−トリプトファンである、請求項6に記載の組成物。 前記アレナウイルス感染が、ラッサ熱ウイルス、フニンウイルス、マチュポウイルス、グアナリトウイルスまたはサビアウイルスによる感染である、請求項1に記載の組成物。 被検体におけるラッサ熱、アルゼンチン出血熱、ボリビア出血熱、ベネズエラ出血熱、またはブラジル出血熱を治療もしくは治療するための組成物であって、式A:(式中、nは1又は2であり、Rは水素、C2−C10アシル又はC1−C6アルキル、XはL−トリプトファン又はD−トリプトファンである)の免疫調節化合物の有効量を含む、組成物。


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