生命科学関連特許情報

タイトル:公表特許公報(A)_デメチルカンタリジン白金錯体の立体異性体及びその使用
出願番号:2007506641
年次:2007
IPC分類:C07F 15/00,A61K 31/555,A61P 35/00,A61P 35/02


特許情報キャッシュ

何 綺萍 欧▲エン▼ 植▲クン▼ 杜 健華 王 新寧 JP 2007532494 公表特許公報(A) 20071115 2007506641 20050408 デメチルカンタリジン白金錯体の立体異性体及びその使用 香港中文大学 506339545 志賀 正武 100064908 渡邊 隆 100089037 村山 靖彦 100108453 実広 信哉 100110364 何 綺萍 欧▲エン▼ 植▲クン▼ 杜 健華 王 新寧 CN 200410033701.1 20040408 C07F 15/00 20060101AFI20071019BHJP A61K 31/555 20060101ALI20071019BHJP A61P 35/00 20060101ALI20071019BHJP A61P 35/02 20060101ALI20071019BHJP JPC07F15/00 FA61K31/555A61P35/00A61P35/02 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NA,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW CN2005000463 20050408 WO2005097813 20051020 25 20061128 4C086 4H050 4C086AA01 4C086AA02 4C086AA03 4C086GA16 4C086HA12 4C086HA28 4C086MA01 4C086MA02 4C086MA04 4C086MA05 4C086MA52 4C086MA66 4C086NA14 4C086ZB26 4C086ZB27 4H050AA01 4H050AA03 4H050AB28 4H050WB13 4H050WB14 4H050WB21 本発明は、腫瘍細胞の増殖の阻害における、デメチルカンタリジン白金錯体の立体異性体及びその使用に関する。 デメチルカンタリジン(DMC)は、「ツチハンミョウ科」の活性成分であるカンタリジンより修飾される。ツチハンミョウ科は、ヒトの肝臓、肺、腸、及び消化管の腫瘍の治療のための伝統的な漢方薬(TCM)として使用されている。 シスプラチン及びカルボプラチンの双方は、世界中で抗腫瘍剤として医学的に使用されている白金に基づく医薬である。これらの薬剤に関連する共通の問題はそれらの毒性の副作用及び薬剤耐性である。 本発明者の特許US6,110,907は、優れた抗腫瘍活性を有する化学式Iの錯体を含むDMC白金錯体を開示している。US6,110,907PCT/CN01/00885Transdermal Delivery of Drugs, A. F. Kydonieus (ED) 1987 CRL PressPercutaneous Penetration Enhancers, eds. Smith et al., CRC Press, 1995Lenneruas et al., J Pharm Pharmacol 2002, 54(4): 499-508Karande et al., Pharm Res 2002, 19(5): 655-60Vaddi et al., J Pharm Sci 2002 July, 91(7): 1639-51Ventura et al., J Drug Target 2001; 9(5): 379-93Shokri et al., Int J Pharm 2001, 228(1-2): 99-107Suzuki et al., Biol Pharm Bull 2001, 24(6): 698-700Alberti et al., J Control Release 2001, 71(3): 319- 27Goldstein et al., Urology 2001; 57(2): 301-5Kiijavainen et al., Eur J Pharm Sci 2000, 10(2): 97-102Tenjarla et al., Int J Pharm 1999, 192(2) : 147-58 本出願人によって出願されたPCT出願PCT/CN01/00885は、上述の化学式Iの錯体を含むDMC白金錯体、またはシスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチンのような他の白金錯体と組み合わせて使用される際に、DMCが相乗的な効果を示すことを明らかにしている。しかしながら、従来技術では、化学式Iの白金錯体の立体異性体の活性の開示が全く存在していない。 本発明は、化学式Iの白金錯体の幾つかの立体異性体が腫瘍に対する優れた活性を有するという、本発明者の驚くべき発見に基づいて提供される。 本発明の態様によれば、化学式Iのデメチルカンタリジン(DMC)白金錯体の立体異性体が提供される。 ここで、前記立体異性体は、シス-異性体、トランス-S,S(+)-異性体、トランス-R,R(-)-異性体、またはトランス-ラセミ体である。 本発明の他の態様によれば、腫瘍細胞の増殖を阻害するための医薬の製造における化学式IのDMC白金錯体のシス-異性体、トランス-S,S(+)-異性体、トランス-R,R(-)-異性体、またはトランス-ラセミ体である立体異性体の使用が提供される。 本発明の好ましい実施態様では、前記腫瘍細胞はシスプラチン、カルボプラチン、またはオキサリプラチン感受性及び耐性腫瘍細胞を含む。 本発明の更なる好ましい実施態様では、前記腫瘍細胞は肺、肝臓、乳房、結腸、卵巣、子宮頚、白血病、リンパ腫、または鼻咽頭ガン由来である。 本発明の更なる他の態様によれば、化学式Iのデメチルカンタリジン(DMC)白金錯体のシス-異性体、トランス-S,S(+)-異性体、トランス-R,R(-)-異性体、またはトランス-ラセミ体である立体異性体及び製薬学的に許容される担体を含む製薬組成物が提供される。 好ましくは、本発明の製薬組成物が腫瘍の治療のために使用されて良い。前記腫瘍は、シスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチン感受性または耐性のものを含み、好ましくは、肺、肝臓、乳房、結腸、卵巣、子宮頚、白血病、リンパ腫、または鼻咽頭ガンを含む。 好ましくは、本発明の組成物は局所的、経口、静脈内、及び筋肉内の投与のために適切な形態に製剤される。 本発明の更なる他の態様によれば、化学式Iのデメチルカンタリジン白金錯体のシス-異性体、トランス-S,S(+)-異性体、トランス-R,R(-)-異性体、またはトランス-ラセミ体である立体異性体と腫瘍細胞とを接触させる工程を含む、腫瘍細胞の増殖を阻害する方法が提供される。前記腫瘍細胞は、シスプラチン、カルボプラチン、またはオキサリプラチン感受性及び耐性腫瘍細胞を含み、好ましくは肺、肝臓、乳房、結腸、卵巣、子宮頚、白血病、リンパ腫、または鼻咽頭ガン由来である。 本明細書で使用される用語「阻害する(阻害)」はin vitro及び/またはin vivoで阻害すること(in vitro及び/またはin vivo阻害)を意味する。 本発明の更なる態様によれば、治療上有効量の化学式Iのデメチルカンタリジン白金錯体のシス-異性体、トランス-S,S(+)-異性体、トランス-R,R(-)-異性体、またはトランス-ラセミ体である立体異性体、またはそれを含む製薬組成物を被験者に投与する工程を含む、被験者における腫瘍の治療のための方法が提供される。好ましくは、前記腫瘍は、シスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチン感受性または耐性の腫瘍を含み、特に、肺、肝臓、乳房、結腸、卵巣、子宮頚、白血病、リンパ腫、または鼻咽頭ガンを含む。 本発明は、化学式Iのデメチルカンタリジン(DMC)白金錯体の立体異性体を提供する。 ここで、前記立体異性体はシス-異性体、トランス-S,S(+)-異性体、トランス-R,R(-)-異性体、またはトランス-ラセミ体である。 本発明は、腫瘍細胞の増殖を阻害するための医薬の製造における化学式IのDMC白金錯体の立体異性体の使用も提供する。 好ましくは、前記腫瘍細胞は、シスプラチン、カルボプラチン、またはオキサリプラチン感受性及び耐性腫瘍細胞を含み、肺、肝臓、乳房、結腸、卵巣、子宮頚、白血病、リンパ腫、または鼻咽頭ガン由来である。 本発明は、治療上有効量の化学式Iのデメチルカンタリジン(DMC)白金錯体の立体異性体、及び製薬学的に許容される担体を含む製薬組成物を更に提供する。 本明細書で使用される「治療上有効量」は、動物及びヒトを典型的に含む被験者における腫瘍細胞またはその増殖を阻害するために有効な任意の量である。 「治療上有効量」を決定する方法は当業者によく知られており、性別、年齢、及び状態などを含む、関係する被験者のタイプ、治療される疾患の状態、並びに使用される製剤の形態を含むが、それらに限らない多数の因子に依存する。例えば、製薬組成物において、治療上有効量は組成物の全体量の0.01から99.99重量%、好ましくは0.5から99.95重量%、及びより好ましくは1から99重量%であって良い。 本発明の組成物は、各種の経路を介する治療上の投与のための配合物に製剤されて良い。例えば、前記組成物は、局所的、経口、静脈内、及び筋肉内の投与のために適切な形態に製剤されて良い。前記配合物は、経口、頬、直腸、非経口、腹腔内、皮内、経皮、及び気管などの経路を含む各種の経路を介する治療の必要がある被験者または患者に投与されて良い。 局所的な投与のために適切な配合物は、経皮外傷用医薬材料(transdermal derssing)、坐剤、ペースト、洗浄剤、スラリー、及びゲルなどの形態であって良い。局所的な配合物は、1つ以上の浸透剤、増粘剤、希釈剤、乳化剤、分散剤、または結合剤を更に含有して良い。経皮投与のために、前記組成物は、皮膚を通じて組成物の送達を促進することができる化学的及び物理的な浸透促進剤を含む、浸透促進剤と組み合わせて製剤または投与されて良い。化学的及び物理的な浸透促進剤の例としては、例えば、Transdermal Delivery of Drugs, A. F. Kydonieus (ED) 1987 CRL Press; Percutaneous Penetration Enhancers, eds. Smith et al., CRC Press, 1995; Lenneruas et al., J Pharm Pharmacol 2002, 54(4): 499-508; Karande et al., Pharm Res 2002, 19(5): 655-60; Vaddi et al., J Pharm Sci 2002 July, 91(7): 1639-51; Ventura et al., J Drug Target 2001; 9(5): 379-93; Shokri et al., Int J Pharm 2001, 228(1-2): 99-107; Suzuki et al., Biol Pharm Bull 2001, 24(6): 698-700; Alberti et al., J Control Release 2001, 71(3): 319- 27; Goldstein et al., Urology 2001; 57(2): 301-5; Kiijavainen et al., Eur J Pharm Sci 2000, 10(2): 97-102; and Tenjarla et al., Int J Pharm 1999, 192(2): 147-58に開示されている。 本発明の組成物が、適合する化学的な浸透促進剤と共に製剤される場合では、前記促進剤は、被験者の循環系への前記錯体の送達のような、被験者の皮膚を通過する本発明の錯体の送達を促進するのに十分な量で使用される。 経口投与のために、前記錯体は単独で錠剤、粉末剤、顆粒剤、若しくはカプセル剤に、またはラクトース、マンニトール、コーンデンプン、及びジャガイモデンプンのような従来の添加剤、結晶セルロース、セルロース誘導体、アラビアガム、コーンデンプン、及びゼラチンのような混合物、コーンデンプン、ジャガイモデンプン、及びカルボキシメチルセルロースナトリウムのような崩壊剤、タルク及びマグネシウムステアレートのような潤滑剤、並びに望まれる場合には、希釈剤、緩衝液、湿潤剤、保存剤、及び香味剤を含むが、それらに限らない適切な添加剤と組み合わせて製剤されて良い。好ましくは、前記錯体は緩衝液と共に製剤されて、被験者の胃の中の低いpH状態から保護される。代替的に、腸溶コーティングが提供されて、胃を通過する間の前記錯体の析出を避ける。 本発明の錯体は、植物油若しくは同様の油、合成脂肪グリセリド、高級脂肪酸エステル、並びにアクリルエチレングリコールのような、水溶性または非水溶性の溶液におけるサルベーション(salvation)、懸濁、または乳化によって注射剤に製剤されて良い。望まれる場合には、前記錯体は、可溶化剤、等張化剤、懸濁剤、乳化剤、安定剤、及び保存剤のような従来の添加剤と組み合わせて製剤されて良い。好ましい可溶化剤はビタミンE TPGS(d-a-トコフェロールポリエチレングリコール1000スクシネート)、及びデキストリンなどを含む。 本発明は、多量の化学式Iのデメチルカンタリジン白金錯体のシス-異性体、トランス-S,S(+)-異性体、トランス-R,R(-)-異性体、またはトランス-ラセミ体である立体異性体と腫瘍細胞とを接触させる工程を含む腫瘍細胞の増殖を阻害する方法を更に提供する。好ましくは、前記腫瘍細胞は、シスプラチン、カルボプラチン、またはオキサリプラチン感受性及び耐性腫瘍細胞を含み、肺、肝臓、乳房、結腸、卵巣、子宮頚、白血病、リンパ腫、または鼻咽頭ガン由来である。 本明細書で使用される用語「阻害する(阻害)」は、in vitro及び/またはin vivoで阻害すること(in vitro及び/またはin vivo阻害)を意味する。 本発明は、治療上有効量の化学式Iのデメチルカンタリジン白金錯体の立体異性体、またはそれを含む製薬組成物を被験者に投与する工程を含む、被験者における腫瘍を治療する方法を更に提供する。前記腫瘍は肺、肝臓、乳房、結腸、卵巣、子宮頚、白血病、リンパ腫、または鼻咽頭ガンを含む。 本発明のデメチルカンタリジン白金触媒の立体異性体の合成のための方法を以下で説明する。1.デメチルカンタリジン配位子の調製 テトラヒドロフラン(THF)のような有機溶媒にフラン及びマレイン酸無水物を溶解し、中間体を得て、引き続きPd-C触媒を添加する。次いで水素曝気条件下で反応混合物を還流して、DMC配位子を得る。2.硝酸Pt(II)誘導体の調製 K2PtCl4を水に溶解し、次いでジアミノシクロヘキサン(DACH)と反応させ、続いて硝酸銀を添加して、硝酸Pt(II)誘導体を得る。3.DMC白金錯体の合成 工程2で調製した硝酸Pt(II)誘導体に工程1で調製したDMC配位子を添加し、続いてNaOHを添加してDMC白金錯体を得る。 フラン及び過酸化水素はRDH Company社より市販されており、マレイン酸無水物及び硝酸銀はFarco Chemical Supplies社より得られ、Pd-C(10%活性炭)はBDH Laboratory Supplies社より得られ、並びにK2PtCl4(II)及びジアミノシクロヘキサンの各種の誘導体はAldrich Chemical Company社より得られる。 下文では、以下の実施例を用いて本発明を詳細に説明する。(実施例1)トランス-ラセミ体のDMC白金錯体の調製 フラン(5.4ml, 0.073mol)及びマレイン酸無水物(6g, 0.061mol)をTHF(8ml)を含有する乾燥ビーカーに入れて、室温で60分間攪拌した。溶媒を真空条件下で除去し、残留物をエチルアセテート中で再結晶させて白色結晶の中間体を得た(9.1g, 収率88.4%)。前記中間体(2g, 0.012mol)をエチルアセテート(30ml)に溶解し、次いでPd-C触媒(10%活性炭, 0.2g)を添加した。反応混合物を攪拌しながら還流して、水素ガスを16時間大気圧下で反応フラスコに通気した。次いでPd-Cを濾過して除き、真空条件下で溶媒を除去してDMC配位子を得た(収率98%)。融点:116.9〜117.3℃IR(KBr, cm-1):1843, 1784(C=O), 1237, 1099, 890(C-O-C)。 K2PtCl4(1g, 2.410mmol)水溶液(5ml)にトランス-ラセミ体のジアミノシクロヘキサン(DACH)(0.2747g, 2.410mmol)水溶液(1ml)を滴々と添加して、黄色の沈殿物を形成した。その混合物を室温で6から8時間攪拌して、濾過し、水(5ml)、エタノール(5ml)、及びエーテル(5ml)で連続して洗浄し、次いで、65℃の温度のオーブンで乾燥させた。 AgNO3(0.3579g, 2.1053mmol)及びPt(DACH)Cl2(0.4g, 1.0526mmol)を、水(5ml)を含有する反応フラスコに入れて、暗所で18時間攪拌し、次いで、濾過して固体のAgClを除去した。上述のように調製されたDMC配位子(0.1768g, 1.0526mmol)及びNaOH(0.0842g, 1.1053mmol)を濾過物に添加して、室温で16時間攪拌して灰色がかった白色の固体を得た。前記固体を真空条件下で乾燥させ、氷冷水(5ml)、エタノール(5ml)、及びエーテル(5ml)で連続して洗浄し、次いで65℃の温度のオーブンで乾燥させて0.22g(72%)の生成物を得た。IR (KBr, cm-1): 3195, 3150 (N-H), 1642, 1608 (C=O), 1396 (COO-), 1267, 1214, 1066, 940 (C-O-C)。(実施例2)トランス-R,R(-)-DMC白金錯体の調製 トランス-ラセミ体のDACHの代わりにトランス-R,R(-)DACHを使用したことを除いて、実施例1に記載したものと同一の方法でトランス-R,R(-)-白金錯体を調製した。収率は73%であり、生成物は200℃〜250℃で分解した。(実施例3)トランス-S,S(+)-DMC白金錯体の調製 トランスラセミ体のDACHの代わりにトランス-S,S(+)-DACHを使用したことを除いて、実施例1に記載したものと同一の方法でトランス-S,S(+)-DMC白金錯体を調製した。収率は73%であり、生成物は200℃〜250℃で分解した。(実施例4)シス-DMC白金錯体の調製 トランス-ラセミ体のDACHの代わりにシス-DACHを使用したことを除いて、実施例1に記載したものと同一の方法でシス-DMC白金錯体を調製した。収率は73%であり、生成物は200℃〜250℃で分解した。(実施例5)錯体の同定(1)トランス-R,R-DMC/-S,S-DMC白金錯体の特異的な旋光度 トランス-R,R-DMC/-S,S-DMC白金錯体の特異的な旋光度を以下の条件で測定し、結果を表1に示した。温度:20℃濃度:トランス-R,R-DMC及びトランス-S,S-DMC白金錯体は0.25mg/ml; トランス-R,R-1,2-及びトランス-S,S-1,2-ジアミノシクロヘキサンは1mg/ml;セル長:10cm溶媒:水単色光(Monochromatic Light):589.3nmの波長を有するナトリウムD線。(2)DMC白金錯体、1,2-ジアミノシクロヘキサンの立体異性体、及びDMCに関する円偏光二色性スペクトル 上記の化合物に関する円偏光二色性スペクトルを以下の条件で測定し、結果を図1から4に示した。機器:JASCO J-715円偏光二色性分光計;セル長:1.0cm溶媒:水;温度:20℃データモード:CD;Ch2モード:HT;範囲(Range):225から375nm帯域幅(Band width):1.0nm;感度(Sensitivity):200mdeg;分解比(Resolution ratio):0.1nm;反応(Response):1秒;集積(Accumulation):1;速度(Speed):50nm/分。(3)DMC白金錯体の立体異性体の溶解度 DMC白金錯体の立体異性体の溶解度を表2に示した。(4)結論 上述の特異的な旋光度、及び円偏光二色スペクトルの結果に鑑みて、以下の結論に達した。 1)以下の表3に示されるように、出発物質であるDACHと生成物との間で、旋光度の符号(+/-)における交換が認められた。 2)トランス-S,S-DACHまたはトランス-R,R-DACH、及びトランス-S,S-DMC白金錯体またはトランス-R,R-DMC白金錯体に関するデータは再現性があった。 3)DMC、トランス-DACH、シス-DACH、トランス-DMC白金錯体、シス-DMC白金錯体のような光学活性を有さない全ての化合物は、いかなるシグナルも示さずに基準線のままであった。(5)DMC白金錯体の立体異性体に関するNMRスペクトル 実施例1から4で調製したDMC白金錯体の立体異性体のNMRスペクトルを以下の表4に示した。実験条件:溶媒:D2O機器:Bruker ARX-500 High Resolution Superconducting FT-NMR Spectrometer (5mm BBI Z-Gradient probeheadを取り付けた)周波数:1H 500.131 MHz記録条件:1-D実験: 1H:D1=1秒、P1=6μ秒、DE=88.75μ秒2-D実験: 1H:D1=1秒、P1=8.50μ秒、DE=237.14μ秒 D0=3μ秒、P0=8.50μ秒。(実施例6)in vitroの抗腫瘍活性の試験 対照のシスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチンと共に、DMC白金錯体を、テトラゾリウムマイクロカルチャーアッセイを使用して、各種の腫瘍細胞株に対するin vitroの抗腫瘍活性に関してスクリーニングした。 薬剤:使用される最高濃度の2倍で、試験される薬剤を完全培地に溶解し、続いて濾過(0.22μm)滅菌した。完全培地を使用して、一連の対数希釈を各薬剤溶液より作製した。全ての薬剤溶液を細胞に添加する10分前に調製した。 in vitroの薬剤曝露:各薬剤を試験するために、トリプシンを作用させた細胞を完全培地に2×105細胞/mlの濃度に調節して、0.1mlの細胞懸濁物を96ウェルマイクロカルチャープレート中の24ウェルの各々に添加した。次いで、前記細胞をウェルの底に接着させて対数増殖を再開させるために、前記プレートを標準条件で24時間インキュベートした。対照培養及び薬剤/濃度の組み合わせの各ウェルに対して、0.1mlの完全培地及び薬剤溶液を各々に添加した。各薬剤/濃度の組み合わせは4つの複製からなり、対照培養物は12の複製からなる。0.2mlの完全培地を含むブランクの対照の12の複製を確保して、バックグラウンドを明らかにした。前記培養物を更に72時間インキュベートした。全ての試験を異なる機会に少なくとも3回繰り返した。 MTTアッセイ:MTT(テトラゾリウム)アッセイを使用して、異なる薬剤の増殖阻害作用を測定した。5mg/mlのMTT(臭化3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウム)溶液をリン酸緩衝生理食塩水(pH 7.4)中で調製し、濾過(0.22μm)によって滅菌し、-20℃で保存した。0.02mlのMTT溶液を各ウェルに添加して、プレートを標準条件下で4時間インキュベートした。次いで、各ウェルの培地を除去して、0.1mlのDMSO(ジメチルスルホキシド)を各ウェルに添加し、MTTの代謝還元により生成される色素を可溶化した。還元されたMTTの量を分光光度法(570nm)によって測定した。 データ分析:ODの平均値を12の対照ウェルの全てに関して測定した。各薬剤の各濃度に関して、4ウェルの平均ODを測定した。全ての平均ODはバックグラウンドからなるブランクを差し引いた。「対照の割合」の値を測定してプロットした。ソフトウェアPrism 3.0を使用して、シグモイド用量反応曲線にグラフを合わせることによって、50%の増殖阻害を生じる薬剤の濃度(IC50)を測定した。結果を表5に示した。 以下の事項が表5に示したIC50のデータによって示された。 DMC白金錯体のシス異性体の肝臓ガン(HCC)細胞株における抗腫瘍作用は、DMC白金錯体のトランス-S,S-(+)-異性体、トランス-R,R-(-)-異性体、及びトランス-ラセミ体よりも2から3倍低かった。 SK-Hepはシスプラチンに対して4倍の抵抗性、及びカルボプラチンに対して約2.7倍の抵抗性を示す。DMC白金錯体のトランス-S,S-(+)-異性体、トランス-R,R-(-)-異性体、及びトランス-ラセミ体の全てがSK-Hepに対する効果的なin vitroの抗腫瘍活性を示す。 Huh-7はシスプラチンとカルボプラチンの双方に対して1.5倍の抵抗性を示す。しかしながら、Huh-7は実験的な誤差の範囲内でDMC白金錯体のシス異性体及びトランスラセミ体に対する交差抵抗性を示さない。DMC白金錯体のトランス-S,S-(+)-異性体、トランス-R,R-(-)-異性体、及びトランス-ラセミ体の全てがHuh-7細胞に対する効果的なin vitro抗腫瘍活性を示す。 L1210はシスプラチンとカルボプラチンの双方に対して高い抵抗性を示すが、DMC白金錯体のトランス-S,S-(+)-異性体、トランス-R,R-(-)-異性体、及びトランス-ラセミ体に対して交差抵抗性を示さない。 DMC白金錯体の立体異性体の全てが結腸直腸ガン細胞株Colo320に対する効果的な活性を示し、その内、DMC白金錯体のトランス-S,S-(+)-異性体、トランス-R,R-(-)-異性体、及びトランス-ラセミ体はより効果的である。 DMC白金錯体のトランス-S,S-(+)-異性体、トランス-R,R-(-)-異性体、及びトランス-ラセミ体の全てが肝臓ガン細胞株PLC/5に対する効果的な活性を示すが、一方で肝臓ガン細胞株PLC/5に対するDMC白金錯体のトランス-R,R-(-)-異性体の作用はシスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチンと同様である。 HCT-116及びHT-29に対するトランス-R,R-(-)-異性体の作用は、シスプラチンの10倍より大きい。 ここまで本発明を具体的に記載したため、当業者が上の記載を鑑みて本発明の各種の変形及び変化を作製することは明らかであり、その様な変形例、変化例、同等例が添付の特許請求の範囲に記載される範囲内であろう。図1はDMC白金錯体の立体異性体の円偏光二色性スペクトルを示す。図2は1,2-DACH立体異性体の円偏光二色性スペクトルを示す。図3はS,S-DMC白金錯体(0.25mg/ml)の円偏光二色性スペクトルを示し、前記スペクトルの再現性を示す。図4はDMC(0.1mg/ml)の円偏光二色性スペクトルを示し、DMCは光学活性を有さないことを示す。 化学式Iのデメチルカンタリジン白金錯体のシス-異性体、トランス-S,S(+)-異性体、トランス-R,R(-)-異性体、またはトランス-ラセミ体である立体異性体。 トランス-S,S(+)-異性体、トランス-R,R(-)-異性体、及びトランス-ラセミ体からなる群より選択される、請求項1に記載の立体異性体。 腫瘍細胞の増殖を阻害するための医薬の製造における、化学式Iのデメチルカンタリジン白金錯体のシス-異性体、トランス-S,S(+)-異性体、トランス-R,R(-)-異性体、またはトランス-ラセミ体である立体異性体の使用。 前記立体異性体が、トランス-S,S(+)-異性体、トランス-R,R(-)-異性体、またはトランス-ラセミ体である、請求項3に記載の使用。 前記腫瘍細胞が、シスプラチン、カルボプラチン、またはオキサリプラチン感受性及び耐性の腫瘍細胞を含む、請求項3または4に記載の使用。 前記腫瘍細胞が、肺、肝臓、乳房、結腸、卵巣、子宮頚、白血病、リンパ腫、または鼻咽頭ガン由来である、請求項3から5のいずれか一項に記載の使用。 化学式Iのデメチルカンタリジン白金錯体のシス-異性体、トランス-S,S(+)-異性体、トランス-R,R(-)-異性体、またはトランス-ラセミ体である立体異性体と、製薬学的に許容される担体とを含む製薬組成物。 前記立体異性体が、トランス-S,S(+)-異性体、トランス-R,R(-)-異性体、またはトランス-ラセミ体である、請求項7に記載の組成物。 前記組成物が腫瘍の治療に有用である、請求項7または8に記載の組成物。 前記腫瘍が、シスプラチン、カルボプラチン、またはオキサリプラチン感受性及び耐性腫瘍を含む、請求項9に記載の組成物。 前記腫瘍が、肺、肝臓、乳房、結腸、卵巣、子宮頚、白血病、リンパ腫、または鼻咽頭ガンを含む、請求項9または10に記載の組成物。 局所的な投与に適切な形態である、請求項7から11のいずれか一項に記載の組成物。 経口投与に適切な形態である、請求項7から11のいずれか一項に記載の組成物。 静脈内の投与に適切な形態である、請求項7から11のいずれか一項に記載の組成物。 筋肉内の投与に適切な形態である、請求項7から11のいずれか一項に記載の組成物。 化学式Iのデメチルカンタリジン白金錯体のシス-異性体、トランス-S,S(+)-異性体、トランス-R,R(-)-異性体、またはトランス-ラセミ体である立体異性体と腫瘍細胞とを接触させる工程を含む、腫瘍細胞の増殖を阻害する方法。 前記腫瘍細胞が、シスプラチン、カルボプラチン、またはオキサリプラチン感受性及び耐性腫瘍細胞を含む、請求項16に記載の方法。 前記腫瘍細胞が、肺、肝臓、乳房、結腸、卵巣、子宮頚、白血病、リンパ腫、または鼻咽頭ガン由来である、請求項16または17に記載の方法。 前記立体異性体が、トランス-S,S(+)-異性体、トランス-R,R(-)-異性体、またはトランス-ラセミ体である、請求項16から18のいずれか一項に記載の方法。 in vitroで実施される、請求項16から19のいずれか一項に記載の方法。 治療上有効量の、化学式Iのデメチルカンタリジン白金錯体のシス-異性体、トランス-S,S(+)-異性体、トランス-R,R(-)-異性体、若しくはトランス-ラセミ体である立体異性体、またはそれを含む製薬組成物を被験者に投与する工程を含む、被験者の腫瘍を治療する方法。 前記腫瘍が、シスプラチン、カルボプラチン、またはオキサリプラチン感受性及び耐性腫瘍を含む、請求項21に記載の方法。 前記腫瘍が、肺、肝臓、乳房、結腸、卵巣、子宮頚、白血病、リンパ腫、または鼻咽頭ガンを含む、請求項21または22に記載の方法。 本発明は、化学式Iのデメチルカンタリジン白金錯体の立体異性体及びその使用を提供する。前記立体異性体は、シスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチン感受性及び耐性腫瘍細胞の増殖を阻害する。本発明は、前記デメチルカンタリジン白金錯体の立体異性体を含む製薬組成物及びその使用も記載する。


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