生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_向精神剤
出願番号:2007020501
年次:2008
IPC分類:A61K 36/00,A61K 36/18,A61K 36/71,A61K 36/28,A61K 36/53,A61P 25/00,A61P 25/18,A61P 25/20,A61P 25/22,A61P 25/24,A61P 43/00


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藤原 道弘 三島 健一 瀬井 康雄 岡本 拓也 JP 2008184448 公開特許公報(A) 20080814 2007020501 20070131 向精神剤 イスクラ産業株式会社 591082650 恩田 博宣 100068755 恩田 誠 100105957 藤原 道弘 三島 健一 瀬井 康雄 岡本 拓也 A61K 36/00 20060101AFI20080718BHJP A61K 36/18 20060101ALI20080718BHJP A61K 36/71 20060101ALI20080718BHJP A61K 36/28 20060101ALI20080718BHJP A61K 36/53 20060101ALI20080718BHJP A61P 25/00 20060101ALI20080718BHJP A61P 25/18 20060101ALI20080718BHJP A61P 25/20 20060101ALI20080718BHJP A61P 25/22 20060101ALI20080718BHJP A61P 25/24 20060101ALI20080718BHJP A61P 43/00 20060101ALI20080718BHJP JPA61K35/78 WA61K35/78 CA61K35/78 FA61K35/78 TA61K35/78 QA61P25/00A61P25/18A61P25/20A61P25/22A61P25/24A61P43/00 121 2 1 OL 9 4C088 4C088AB26 4C088AB38 4C088AB40 4C088AB58 4C088AB79 4C088AC01 4C088BA06 4C088MA07 4C088NA14 4C088ZA02 4C088ZA05 4C088ZA08 4C088ZA12 4C088ZA14 4C088ZA18 4C088ZA42 4C088ZC35 4C088ZC51 4C088ZC52 4C088ZC75 本発明は、向精神剤に係り、詳しくは冠元顆粒を有効成分として含有する向精神剤に関する。 従来より生薬成分として「活血化お」の作用を有する紅花(コウカ)、芍薬(シャクヤク)、センキュウ及び丹参(タンジン)の4種類の薬草と、理気作用を有する香附子(コウブシ)及び木香(モッコウ)の2種類の薬草を所定の配合割合で調合した冠元顆粒が知られている。従来より、冠元顆粒は各種有効成分により中年以降又は高血圧傾向のある者の頭痛、肩こり、めまい、動悸等の症状改善に適用されている。また、特許文献1,2に記載されるような、細胞の老化を抑制する作用や糖尿病の合併症を抑制する作用も知られている。 ところで、現代人は日常生活の中で、騒音等の物理的ストレス、排気ガス等の化学的ストレス又は心理社会的な精神的ストレス等を受けている。例えば、動物がストレスを受け、ストレスが蓄積されると精神状態が不健康な状態に変化することがある。例えば、気の昂ぶり、多動、攻撃的行動等の躁症状、又は不安、脱力感等の行動萎縮症状を示し、それらがさらに悪化すると躁うつ症、神経衰弱等の精神性疾患が生ずることがある。 また、従来より例えば、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血等の脳卒中による脳虚血後にあらわれる血管性認知症が知られている。血管性認知症においては、中核症状として記憶障害及び認知障害が生ずる他、その周辺症状として活動障害、攻撃性、焦燥感等の精神性症状が生ずることが知られている。 従来より、これらの精神性疾患を治療する薬として、中枢神経に作用して精神機能に影響を及ぼす薬物である向精神剤が知られている。向精神剤として、具体的には精神安定剤、抗躁剤、鎮静剤、睡眠剤、催眠剤、抗うつ剤及び抗不安剤等が挙げられる。例えば、従来より精神安定剤としてエチルアミノ誘導体等のフェノチアジン系化合物、ハロペリドール等のブチフェノン系化合物、抗躁剤として炭酸リチウム、抗うつ剤としてアミトリプチリン等の三環系化合物等が知られている。特開2006−28155号公報特開2006−63076号公報 ところが、上述した精神安定剤であるフェノチアミン系化合物及びブチフェノン系化合物、抗うつ剤である三環系化合物は、抗コリン作用の影響による口渇、便秘等の副作用を生ずるという問題があった。また、抗躁剤である炭酸リチウムも、消化器・循環器障害、泌尿器異常、内分泌異常等の副作用が報告されている。 この発明は、本発明者らの鋭意研究の結果、天然薬草成分からなる冠元顆粒が精神安定作用、抗躁作用、鎮静作用及び睡眠作用等の向精神作用を有するという新規な薬理作用を解明したことによりなされたものである。その目的とするところは、副作用が少なく、向精神作用に優れた向精神剤を提供することにある。 上記目的を達成するために請求項1記載の発明の向精神剤は、冠元顆粒を有効成分として含有することを特徴とする。 請求項2記載の発明は、請求項1記載の向精神剤において、精神安定剤、抗躁剤、鎮静剤及び睡眠剤から選ばれる少なくとも一種として使用されることを特徴とする。 本発明によれば、副作用が少なく、向精神作用に優れた向精神剤を提供することができる。 以下、本発明を具体化した向精神剤の一実施形態を説明する。 本実施形態の向精神剤は、冠元顆粒を有効成分として含有する。向精神剤とは、中枢神経に作用して、精神機能に影響を及ぼす薬剤のことを示す。より具体的には、例えば精神安定作用、抗躁作用、鎮静作用、睡眠作用、催眠作用、中枢神経刺激作用、抗うつ作用及び抗不安作用等の精神・神経作用を発揮する薬剤を示す。本実施形態の向精神剤は、有効成分として配合される冠元顆粒により、これらの精神・神経作用を発揮する。即ち、本実施形態の向精神剤は、これらの精神・神経作用の発揮を目的とした精神安定剤(メジャートランキライザー)、抗躁剤、鎮静剤、睡眠剤、催眠剤、中枢神経刺激剤、並びにマイナートランキライザーとして抗うつ薬及び抗不安薬等として好適に用いることができる。本実施形態の向精神剤は、これらの中で特に精神安定作用、抗躁作用、鎮静作用及び睡眠作用に優れるため、より好ましくは精神安定剤、抗躁剤、鎮静剤及び睡眠剤として用いられる。 ところで、現代人は日常生活の中で、騒音等の物理的ストレス、排気ガス等の化学的ストレス又は心理社会的な精神的ストレス等の様々なストレスを受けている。例えば、動物がストレスを受け、ストレスが蓄積されると精神状態が不健康な状態に変化することがある。例えば、気の昂ぶり、多動、攻撃的行動等の躁症状、又は不安、脱力感、行動萎縮等のうつ症状等が挙げられる。それらの症状がさらに悪化すると躁うつ、神経衰弱等の精神性疾患が生ずる。躁うつ症とは、気分が高揚して自己の行動や思考の制御が困難となる躁状態と、気分的に抑圧され、不安や無気力感によって行動量が減少するうつ状態が繰り返し生ずる精神症状をいう。 本実施形態の向精神剤は、精神安定作用、抗躁作用、鎮静作用、睡眠作用、催眠作用、中枢神経刺激作用、抗うつ作用及び抗不安作用等の向精神作用を有するため、例えばストレス等から生ずる精神性疾患の患者に好適に使用することができる。有効成分である冠元顆粒は、特に、精神安定作用、抗躁作用、鎮静作用及び睡眠作用に優れるため、躁症状を有する患者、躁うつ症状を有する患者により好ましく適用される。 また、従来より例えば、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血等の脳卒中による脳虚血後にあらわれる血管性認知症が知られている。血管性認知症においては、中核症状として記憶障害及び認知障害が生ずる他、その周辺症状として活動障害、攻撃性、焦燥感等の精神症状が生ずることが知られている。本実施形態の向精神剤は、これら血管性認知症の周辺症状の改善にも有効である。本実施形態の向精神剤は、血管性認知症の患者にも好ましく適用される。 向精神剤の評価方法としては、例えばマウス、ラット等の正常動物にストレスを負荷したモデル(外因的モデル)、並びに薬物投与及び脳破壊モデル(内因的モデル)が用いられる。外因的モデルとしては、例えば、対象個体に分離飼育ストレス、逃避不可能な電気ショック、強制走行、強制水泳、拘束ストレス等のストレスを負荷し、躁状態、不安、うつ症状等を惹起させる方法が挙げられる。内因性モデルは、メタンフェタミン等の中枢神経刺激作用を有する薬剤を対象個体に投与することにより躁状態を惹起させる方法が挙げられる。また、レセルピン、5−ハイドロキシトリプタミン(セロトニン)、β−カルボリン等の薬剤を投与することにより不安症、うつ症を惹起させる方法が挙げられる。その他、チオペンタール等の鎮静作用を有する物質との併用により、鎮静作用の増強又は減退を観察することにより向精神剤の効果を評価することができる。 本実施形態の有効成分である冠元顆粒は、生薬成分として「活血化お」の作用を有する紅花(コウカ)、芍薬(シャクヤク)、センキュウ及び丹参(タンジン)の4種類の薬草と、理気作用(気のめぐりを改善する)を有する香附子(コウブシ)及び木香(モッコウ)の2種類の薬草を所定の配合割合で調合した漢方薬(漢方方剤)である。 この冠元顆粒は、1960年代に中国で脳・心血管疾患に対する治療薬の研究から誕生し、1969年には9種類の生薬からなる冠心一号方、続いて1978年には5種類の生薬(丹参、芍薬、センキュウ、紅花、降香)からなる冠心二号方が誕生し、さらに降香を木香、香附子に置き換えた冠元顆粒が1990年に日本で医薬品として承認された。 冠元顆粒に含まれる各構成生薬の配合割合は、丹参2.6〜6.8重量部、香附子0.6〜1.7重量部、木香0.6〜1.7重量部、紅花1.1〜3.4重量部、芍薬1.1〜3.4重量部、センキュウ1.1〜3.4重量部が好ましく、丹参、香附子、木香、紅花、芍薬及びセンキュウが重量比で4:1:1:2:2:2であるのがより好ましい。この冠元顆粒は、従来より中年以降又は高血圧傾向のあるものの頭痛、頭重、肩こり、めまい、動悸等の諸症状を改善する効能・効果を有していることが知られている。 丹参はシソ科(Labiatae)の多年草タンジン(Salvia miltiorrhiza Bunge)の根である。香附子はカヤツリグサ科(Cyperaceae)の多年草ハマスゲ(Cyperus rotundus Linne)の根茎である。木香はキク科(Compositae)の多年草サウスレアラパア(Aucklandia lappa Decne (Saussurea lappa Clarke))の根である。紅花はキク科(Compositae)の1〜2年草木ベニバナ(Carthamus tinctorius Linne)の管状花である。芍薬はボタン科(Paeoniaceae)の多年草シャクヤク(Paeonia lactiflora Pallas)の根である。センキュウはセリ科(Umbelliferae)の多年草センキュウ(C nidium officinale Makino)の根茎である。 この冠元顆粒は、前記構成生薬を所定の配合割合で混合し、この混合物全重量の5〜30倍量、好ましくは10〜20倍量の水にて熱水抽出した後、抽出された熱水抽出液(冠元顆粒エキス)を濃縮及び乾燥することにより製造される顆粒状品である。前記濃縮及び乾燥は常用手段、例えば減圧蒸発濃縮法、スプレードライ法、凍結乾燥法等により行われる。この冠元顆粒の製造方法によれば、例えば、丹参4.5g、香附子1.125g、木香1.125g、紅花2.25g、芍薬2.25g及びセンキュウ2.25g(合計13.5g)から、固形分4.5gの冠元顆粒が得られる。このように製造された冠元顆粒は、本実施形態において向精神剤として用いられる。 こうして得られた冠元顆粒(固形物)は、そのまま散剤や粉剤等の形態で服用してもよく、或いは適当な賦形剤、基剤、乳化剤、溶剤、安定剤等の添加剤とともに顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、坐剤、液剤、注射剤等の形態に加工して投与してもよい。また、前記乾燥前の熱水抽出液又はその濃縮液を基に、ドリンク剤等の形態に加工して服用することも可能である。 向精神剤は、有効成分としての冠元顆粒を成人1日当たり好ましくは1〜20g、さらに好ましくは4.5g程度投与するように処方され、前記1日当たりの投与量を1日複数回(3回程度)に分けて食間又は空腹時に服用するように処方されることが特に好ましい。冠元顆粒を有効成分とする向精神剤は、漢方薬等の医薬品、又は健康食品や一般食品等の食品に含有させることにより、医薬品又は食品としての用途で利用可能である。 本実施形態の向精神剤によれば、以下のような効果を得ることができる。 (1)本実施形態の向精神剤では、6種類の生薬成分が配合される冠元顆粒を有効成分として含有する。したがって、摂取により向精神作用を発揮することができる。 (2)本実施形態の向精神剤は、有効成分である冠元顆粒により、特に、精神安定作用、抗躁作用、鎮静作用及び睡眠作用を有効に発揮することができる。したがって、躁症状等の精神性疾患の治療に好適に用いることができると期待される。 (3)本実施形態の向精神剤は、天然の植物を原料とするとともに既に広く使用されている漢方薬を基礎としていることから、副作用の心配がない。 (4)本実施形態の向精神剤の有効成分である冠元顆粒は、脳虚血による学習・記憶障害の改善剤としても用いられるため、血管性認知症の患者に適用することにより、中核症状(記憶障害及び認知障害)の改善作用のみならず、その周辺症状(活動障害、攻撃性、焦燥感等の精神症状)の改善作用も期待される。 (5)また、本実施形態の向精神剤に有効成分として配合される冠元顆粒は、その他の薬効(頭痛、頭重、肩こり、めまい、動悸等の諸症状を改善する効能・効果、糖尿病の合併症を抑制する作用)を有しているため、摂取によりそれらの効能も期待することができる。 なお、本実施形態の向精神剤は、次のように変更して具体化することも可能である。 ・本実施形態の向精神剤は、例えば精神性疾患を有する患者の治療に適用される。しかしながら、治療の用途のみならず、健常者が精神性疾患の予防のために摂取してもよい。 ・本実施形態の向精神剤は、ストレスから生ずる躁症状等の精神的症状を低減する作用を有するため、ストレス低減剤として使用してもよい。 ・本実施形態の向精神剤は、ストレスから生ずる精神性疾患又は血管性認知症の周辺症状の治療又は予防を目的に投与するのみならず、それ以外の精神性疾患の患者に適用してもよい。 ・本実施形態の向精神剤は、ヒト以外にも、ウマ、ウシ、ブタのような家畜(非ヒト哺乳動物)、ニワトリ等の家禽、或いは犬、猫、ラット及びマウス等のペットに投与してもよい。 ・前記有効成分である冠元顆粒を、パン、ケーキ、スナック菓子等の嗜好品、牛乳やヨーグルト等の乳製品、清涼飲料等の飲料品に含有させてもよい。 次に、各試験例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。 (冠元顆粒の調製) 本試験に用いた冠元顆粒の構成生薬及びその含有量は、2.25gの芍薬、2.25gのセンキュウ、2.25gの紅花、1.125gの香附子、1.125gの木香及び4.5gの丹参からなる。これらの構成生薬を調合したものに20倍量の水を加えて100℃で1時間熱水抽出した。次いで、ろ過後に減圧濃縮して溶媒を留去したところ、収率44%の冠元顆粒(冠元顆粒エキス)が得られた。 試験例1(メタンフェタミン投与マウスに対する冠元顆粒の影響) メタンフェタミン(Methamphetamine)とは、アンフェタミンにメチル基が置換した構造の化合物である。メタンフェタミンは、中枢神経興奮作用を有する化合物である。5週齢ddY系雄性マウスを用い、冠元顆粒を投与したマウスにメタンフェタミンを投与した際の運動量の変化を測定することより冠元顆粒の中枢神経に与える影響を調べた。 まず、マウスを一群につき10−11匹ずつ4群(コントロール群及び第1群〜第3群)にグループ分けをした。次いで、第1群、第2群及び第3群のマウスに対し、冠元顆粒をそれぞれ30mg/kg体重、100mg/kg体重及び300mg/kg体重の投与量となるように、運動量測定の60分前にマウスに経口投与した。有効成分である冠元顆粒を含有しない賦形剤(デキストリン)のみを与えたマウスをコントロール(Vehicle)とした。 次にメタンフェタミン1mg/kg体重を運動量測定の30分前に腹腔内投与し、運動量(Ambulation)の変化を冠元顆粒投与後1時間、2時間、3時間において測定した。運動量の測定は、19区画に分かれたオープンフィールド(Open-Field)装置を用いて、3分間に各区画を横切った回数を測定し、その合計数を運動量として示した。結果を図1に示す。 図1に示されるように、コントロール(Vehicle)マウスは、メタンフェタミン投与1時間後に運動量が著しく増加し、それ以降徐々に運動量が投与前に戻ることが確認される。冠元顆粒30mg/kg体重及び100mg/kg体重投与マウスは、1時間後の運動量がそれぞれコントロールマウスに比べて有意に増加を抑制していることが確認される。また、冠元顆粒300mg/kg体重投与マウスは、冠元顆粒30mg/kg体重及び100mg/kg体重投与マウスよりもさらに、1時間後の運動量増加を抑制していることが確認された。以上により、冠元顆粒は、メタンフェタミンによる運動量増加を抑制する作用を有することが確認された。 試験例2(単独隔離飼育後の攻撃行動に対する冠元顆粒の影響) 7週齢のウィスター(Wistar)系ラットを使用し、2週間以上単独隔離飼育し、冠元顆粒投与後に発現した攻撃行動を測定することにより、冠元顆粒の攻撃行動に与える影響を調べた。ラットを単独隔離飼育することにより、ラットに対し精神的ストレスを負荷することができる。精神的ストレスを受け、ストレスが蓄積したラットは、ストレス負荷前よりも高い攻撃性を獲得する。従来より、外因的ストレス負荷モデルとして用いられている。 まず、ラットを一群につき10匹ずつ3群(コントロール群、第1群及び第2群)にグループ分けをした。そして、コントロール群、第1群及び第2群のそれぞれのラットを単独隔離飼育することにより、外因的ストレス負荷ラットを作成した。次いで、第1群及び第2群の外因性ストレス負荷ラットに対し、冠元顆粒をそれぞれ30mg/kg体重及び100mg/kg体重の投与量となるように経口投与した。有効成分である冠元顆粒を含有しない賦形剤(デキストリン)のみを与えたラットをコントロール(Vehicle)とした。 鼻先に差し出した棒に対する攻撃反応(Attack Response)を冠元顆粒投与前、投与後(30分、1時間、2時間、4時間)について、4段階のスコア(Score)で評価した。各ラット群において、冠元顆粒投与前の反応がスコア4を示すラットを選択した。攻撃反応なしをスコア0とした。冠元顆粒投与前の反応がスコア4を示すラットの半分の攻撃反応をスコア2とし、スコア4及びスコア0の間をそれぞれスコア3及びスコア1とした。結果を図2に示す。 図2に示されるように、コントロール(Vehicle)ラットは投与後1時間後にスコア3に低下し、その後時間の経過とともにスコアの僅かな上昇が確認された。冠元顆粒30mg/kg体重投与ラットは、コントロールラットに比べ有意差を示さなかった。冠元顆粒100mg/kg体重投与ラットは、投与後30分後にスコア2付近に低下し、投与1時間後及び2時間後までスコア1.5付近を示した。以上により、冠元顆粒は、単独隔離飼育後に増加する攻撃行動を抑制する作用を有することが確認された。 試験例3(チオペンタールナトリウムによる睡眠作用に対する冠元顆粒の影響) チオペンタールナトリウム(Thiopental Na)とは、バルビタール系麻酔薬の一つで鎮静・睡眠効果を有する。4週齢ddY系雄性マウスを用い、冠元顆粒を投与したマウスにチオペンタールナトリウムを投与した際の睡眠時間の変化を測定することより、冠元顆粒の睡眠作用に与える影響を調べた。 まず、マウスを一群につき6−9匹ずつ4群(コントロール群及び第1群〜第3群)にグループ分けをした。次いで、第1群、第2群及び第3群のマウスに対し、冠元顆粒をそれぞれ30mg/kg体重、100mg/kg体重及び300mg/kg体重の投与量となるように、マウスに経口投与した。有効成分である冠元顆粒を含有しない賦形剤(デキストリン)のみを与えたマウスをコントロール(Vehicle)とした。 チオペンタールナトリウムによる睡眠作用は、マウスに冠元顆粒とコントロール群を経口投与した1時間後に、すべてのマウスにチオペンタールナトリウム60mg/kg体重を腹腔内に投与した。チオペンタールナトリウム投与後から正向反射(righting reflex:RR)を指標として、正向反射の消失から回復までの時間を睡眠時間として測定した。 図3に示されるように、コントロール(Vehicle)マウスは睡眠時間が約5時間であった。冠元顆粒30mg/kg体重、100mg/kg体重、及び300mg/kg体重投与のマウスは、いずれも睡眠時間が10時間以上であり、コントロールマウス群に比べて睡眠時間が大幅に増加していることが確認された。以上により、冠元顆粒は、チオペンタールナトリウムによる睡眠作用を延長する作用を有することが確認された。以上の実験に示されるように、冠元顆粒には精神安定作用、抗躁作用、鎮静作用及び睡眠作用等の向精神作用を有していることが明らかになった。 次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。 (a)前記有効成分を30〜300mg/kg体重/日投与することを特徴とする向精神剤の投与方法。従って、この(a)に記載の発明によれば、向精神作用を有効に発揮させることができる。 (b)前記向精神剤を有効成分として含有する医薬品又は飲食品。従って、この(b)に記載の発明によれば、向精神剤を効率的に摂取することができる。 (c)ストレス低減剤として使用される前記向精神剤。メタンフェタミンによる運動量増加作用に対する冠元顆粒の影響。単独隔離飼育後の攻撃行動に対する冠元顆粒の影響。チオペンタールナトリウムによる睡眠作用に対する冠元顆粒の影響。 冠元顆粒を有効成分として含有することを特徴とする向精神剤。 精神安定剤、抗躁剤、鎮静剤及び睡眠剤から選ばれる少なくとも一種として使用されることを特徴とする請求項1記載の向精神剤。 【課題】副作用が少なく、向精神作用に優れた向精神剤を提供する。【解決手段】本発明の向精神剤は、冠元顆粒を有効成分として含有することを特徴とし、例えば、精神安定剤、抗躁剤、鎮静剤及び睡眠剤等として使用される。【選択図】図1


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特許公報(B2)_向精神剤

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_向精神剤
出願番号:2007020501
年次:2011
IPC分類:A61K 36/00,A61K 36/18,A61K 36/28,A61K 36/53,A61P 25/18,A61P 43/00


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藤原 道弘 三島 健一 瀬井 康雄 岡本 拓也 JP 4799434 特許公報(B2) 20110812 2007020501 20070131 向精神剤 イスクラ産業株式会社 591082650 恩田 博宣 100068755 恩田 誠 100105957 藤原 道弘 三島 健一 瀬井 康雄 岡本 拓也 20111026 A61K 36/00 20060101AFI20111006BHJP A61K 36/18 20060101ALI20111006BHJP A61K 36/28 20060101ALI20111006BHJP A61K 36/53 20060101ALI20111006BHJP A61P 25/18 20060101ALI20111006BHJP A61P 43/00 20060101ALI20111006BHJP JPA61K35/78 WA61K35/78 CA61K35/78 TA61K35/78 QA61P25/18A61P43/00 121 A61K 36/23 A61K 36/285 A61K 36/286 A61K 36/53 A61K 36/65 A61K 36/8905 A61P 25/18 A61P 43/00 CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開平06−056684(JP,A) 特表2005−533080(JP,A) 特開2006−104157(JP,A) 国際公開第06/013792(WO,A1) 日本東洋医学雑誌,2006年,Vol.57 別冊号,p.234 日本東洋医学雑誌,2004年,Vol.55 別冊号,p.180 和漢薬の選品と薬効,(株)たにぐち書店,2000年,第3刷,p.49 和漢薬の選品と薬効,(株)たにぐち書店,2000年,第3刷,p.53 NEW薬理学,2003年,第4版第3刷,p.278 脳神経,1982年,Vol.34 No.4,pp.355-364 薬学雑誌,1969年,Vol.89 No.7,pp.879-886 Phytomedicine,2000年,Vol.7 No.5,pp.417-422 Phytomedicine,1996年,Vol.3 No.2,pp.147-153 Life Sci.,1986年,Vol.39 No.26,pp.2571-2580 精神科治療学,2006年,Vol.21 No.9,pp.923-928 1 2008184448 20080814 9 20070131 鈴木 理文 本発明は、向精神剤に係り、詳しくは冠元顆粒を有効成分として含有する向精神剤に関する。 従来より生薬成分として「活血化お」の作用を有する紅花(コウカ)、芍薬(シャクヤク)、センキュウ及び丹参(タンジン)の4種類の薬草と、理気作用を有する香附子(コウブシ)及び木香(モッコウ)の2種類の薬草を所定の配合割合で調合した冠元顆粒が知られている。従来より、冠元顆粒は各種有効成分により中年以降又は高血圧傾向のある者の頭痛、肩こり、めまい、動悸等の症状改善に適用されている。また、特許文献1,2に記載されるような、細胞の老化を抑制する作用や糖尿病の合併症を抑制する作用も知られている。 ところで、現代人は日常生活の中で、騒音等の物理的ストレス、排気ガス等の化学的ストレス又は心理社会的な精神的ストレス等を受けている。例えば、動物がストレスを受け、ストレスが蓄積されると精神状態が不健康な状態に変化することがある。例えば、気の昂ぶり、多動、攻撃的行動等の躁症状、又は不安、脱力感等の行動萎縮症状を示し、それらがさらに悪化すると躁うつ症、神経衰弱等の精神性疾患が生ずることがある。 また、従来より例えば、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血等の脳卒中による脳虚血後にあらわれる血管性認知症が知られている。血管性認知症においては、中核症状として記憶障害及び認知障害が生ずる他、その周辺症状として活動障害、攻撃性、焦燥感等の精神性症状が生ずることが知られている。 従来より、これらの精神性疾患を治療する薬として、中枢神経に作用して精神機能に影響を及ぼす薬物である向精神剤が知られている。向精神剤として、具体的には精神安定剤、抗躁剤、鎮静剤、睡眠剤、催眠剤、抗うつ剤及び抗不安剤等が挙げられる。例えば、従来より精神安定剤としてエチルアミノ誘導体等のフェノチアジン系化合物、ハロペリドール等のブチフェノン系化合物、抗躁剤として炭酸リチウム、抗うつ剤としてアミトリプチリン等の三環系化合物等が知られている。特開2006−28155号公報特開2006−63076号公報 ところが、上述した精神安定剤であるフェノチアミン系化合物及びブチフェノン系化合物、抗うつ剤である三環系化合物は、抗コリン作用の影響による口渇、便秘等の副作用を生ずるという問題があった。また、抗躁剤である炭酸リチウムも、消化器・循環器障害、泌尿器異常、内分泌異常等の副作用が報告されている。 この発明は、本発明者らの鋭意研究の結果、天然薬草成分からなる冠元顆粒が精神安定作用、抗躁作用、鎮静作用及び睡眠作用等の向精神作用を有するという新規な薬理作用を解明したことによりなされたものである。その目的とするところは、副作用が少なく、向精神作用に優れた向精神剤を提供することにある。 上記目的を達成するために請求項1記載の発明の向精神剤は、丹参2.6〜6.8重量部、香附子0.6〜1.7重量部、木香0.6〜1.7重量部、紅花1.1〜3.4重量部、芍薬1.1〜3.4重量部、及びセンキュウ1.1〜3.4重量部を構成生薬として含有する冠元顆粒を有効成分として含有し、抗躁剤として使用されることを特徴とする。 本発明によれば、副作用が少なく、向精神作用に優れた向精神剤を提供することができる。 以下、本発明を具体化した向精神剤の一実施形態を説明する。 本実施形態の向精神剤は、冠元顆粒を有効成分として含有する。向精神剤とは、中枢神経に作用して、精神機能に影響を及ぼす薬剤のことを示す。より具体的には、例えば精神安定作用、抗躁作用、鎮静作用、睡眠作用、催眠作用、中枢神経刺激作用、抗うつ作用及び抗不安作用等の精神・神経作用を発揮する薬剤を示す。本実施形態の向精神剤は、有効成分として配合される冠元顆粒により、これらの精神・神経作用を発揮する。即ち、本実施形態の向精神剤は、これらの精神・神経作用の発揮を目的とした精神安定剤(メジャートランキライザー)、抗躁剤、鎮静剤、睡眠剤、催眠剤、中枢神経刺激剤、並びにマイナートランキライザーとして抗うつ薬及び抗不安薬等として好適に用いることができる。本実施形態の向精神剤は、これらの中で特に精神安定作用、抗躁作用、鎮静作用及び睡眠作用に優れるため、より好ましくは精神安定剤、抗躁剤、鎮静剤及び睡眠剤として用いられる。 ところで、現代人は日常生活の中で、騒音等の物理的ストレス、排気ガス等の化学的ストレス又は心理社会的な精神的ストレス等の様々なストレスを受けている。例えば、動物がストレスを受け、ストレスが蓄積されると精神状態が不健康な状態に変化することがある。例えば、気の昂ぶり、多動、攻撃的行動等の躁症状、又は不安、脱力感、行動萎縮等のうつ症状等が挙げられる。それらの症状がさらに悪化すると躁うつ、神経衰弱等の精神性疾患が生ずる。躁うつ症とは、気分が高揚して自己の行動や思考の制御が困難となる躁状態と、気分的に抑圧され、不安や無気力感によって行動量が減少するうつ状態が繰り返し生ずる精神症状をいう。 本実施形態の向精神剤は、精神安定作用、抗躁作用、鎮静作用、睡眠作用、催眠作用、中枢神経刺激作用、抗うつ作用及び抗不安作用等の向精神作用を有するため、例えばストレス等から生ずる精神性疾患の患者に好適に使用することができる。有効成分である冠元顆粒は、特に、精神安定作用、抗躁作用、鎮静作用及び睡眠作用に優れるため、躁症状を有する患者、躁うつ症状を有する患者により好ましく適用される。 また、従来より例えば、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血等の脳卒中による脳虚血後にあらわれる血管性認知症が知られている。血管性認知症においては、中核症状として記憶障害及び認知障害が生ずる他、その周辺症状として活動障害、攻撃性、焦燥感等の精神症状が生ずることが知られている。本実施形態の向精神剤は、これら血管性認知症の周辺症状の改善にも有効である。本実施形態の向精神剤は、血管性認知症の患者にも好ましく適用される。 向精神剤の評価方法としては、例えばマウス、ラット等の正常動物にストレスを負荷したモデル(外因的モデル)、並びに薬物投与及び脳破壊モデル(内因的モデル)が用いられる。外因的モデルとしては、例えば、対象個体に分離飼育ストレス、逃避不可能な電気ショック、強制走行、強制水泳、拘束ストレス等のストレスを負荷し、躁状態、不安、うつ症状等を惹起させる方法が挙げられる。内因性モデルは、メタンフェタミン等の中枢神経刺激作用を有する薬剤を対象個体に投与することにより躁状態を惹起させる方法が挙げられる。また、レセルピン、5−ハイドロキシトリプタミン(セロトニン)、β−カルボリン等の薬剤を投与することにより不安症、うつ症を惹起させる方法が挙げられる。その他、チオペンタール等の鎮静作用を有する物質との併用により、鎮静作用の増強又は減退を観察することにより向精神剤の効果を評価することができる。 本実施形態の有効成分である冠元顆粒は、生薬成分として「活血化お」の作用を有する紅花(コウカ)、芍薬(シャクヤク)、センキュウ及び丹参(タンジン)の4種類の薬草と、理気作用(気のめぐりを改善する)を有する香附子(コウブシ)及び木香(モッコウ)の2種類の薬草を所定の配合割合で調合した漢方薬(漢方方剤)である。 この冠元顆粒は、1960年代に中国で脳・心血管疾患に対する治療薬の研究から誕生し、1969年には9種類の生薬からなる冠心一号方、続いて1978年には5種類の生薬(丹参、芍薬、センキュウ、紅花、降香)からなる冠心二号方が誕生し、さらに降香を木香、香附子に置き換えた冠元顆粒が1990年に日本で医薬品として承認された。 冠元顆粒に含まれる各構成生薬の配合割合は、丹参2.6〜6.8重量部、香附子0.6〜1.7重量部、木香0.6〜1.7重量部、紅花1.1〜3.4重量部、芍薬1.1〜3.4重量部、センキュウ1.1〜3.4重量部が好ましく、丹参、香附子、木香、紅花、芍薬及びセンキュウが重量比で4:1:1:2:2:2であるのがより好ましい。この冠元顆粒は、従来より中年以降又は高血圧傾向のあるものの頭痛、頭重、肩こり、めまい、動悸等の諸症状を改善する効能・効果を有していることが知られている。 丹参はシソ科(Labiatae)の多年草タンジン(Salvia miltiorrhiza Bunge)の根である。香附子はカヤツリグサ科(Cyperaceae)の多年草ハマスゲ(Cyperus rotundus Linne)の根茎である。木香はキク科(Compositae)の多年草サウスレアラパア(Aucklandia lappa Decne (Saussurea lappa Clarke))の根である。紅花はキク科(Compositae)の1〜2年草木ベニバナ(Carthamus tinctorius Linne)の管状花である。芍薬はボタン科(Paeoniaceae)の多年草シャクヤク(Paeonia lactiflora Pallas)の根である。センキュウはセリ科(Umbelliferae)の多年草センキュウ(C nidium officinale Makino)の根茎である。 この冠元顆粒は、前記構成生薬を所定の配合割合で混合し、この混合物全重量の5〜30倍量、好ましくは10〜20倍量の水にて熱水抽出した後、抽出された熱水抽出液(冠元顆粒エキス)を濃縮及び乾燥することにより製造される顆粒状品である。前記濃縮及び乾燥は常用手段、例えば減圧蒸発濃縮法、スプレードライ法、凍結乾燥法等により行われる。この冠元顆粒の製造方法によれば、例えば、丹参4.5g、香附子1.125g、木香1.125g、紅花2.25g、芍薬2.25g及びセンキュウ2.25g(合計13.5g)から、固形分4.5gの冠元顆粒が得られる。このように製造された冠元顆粒は、本実施形態において向精神剤として用いられる。 こうして得られた冠元顆粒(固形物)は、そのまま散剤や粉剤等の形態で服用してもよく、或いは適当な賦形剤、基剤、乳化剤、溶剤、安定剤等の添加剤とともに顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、坐剤、液剤、注射剤等の形態に加工して投与してもよい。また、前記乾燥前の熱水抽出液又はその濃縮液を基に、ドリンク剤等の形態に加工して服用することも可能である。 向精神剤は、有効成分としての冠元顆粒を成人1日当たり好ましくは1〜20g、さらに好ましくは4.5g程度投与するように処方され、前記1日当たりの投与量を1日複数回(3回程度)に分けて食間又は空腹時に服用するように処方されることが特に好ましい。冠元顆粒を有効成分とする向精神剤は、漢方薬等の医薬品、又は健康食品や一般食品等の食品に含有させることにより、医薬品又は食品としての用途で利用可能である。 本実施形態の向精神剤によれば、以下のような効果を得ることができる。 (1)本実施形態の向精神剤では、6種類の生薬成分が配合される冠元顆粒を有効成分として含有する。したがって、摂取により向精神作用を発揮することができる。 (2)本実施形態の向精神剤は、有効成分である冠元顆粒により、特に、精神安定作用、抗躁作用、鎮静作用及び睡眠作用を有効に発揮することができる。したがって、躁症状等の精神性疾患の治療に好適に用いることができると期待される。 (3)本実施形態の向精神剤は、天然の植物を原料とするとともに既に広く使用されている漢方薬を基礎としていることから、副作用の心配がない。 (4)本実施形態の向精神剤の有効成分である冠元顆粒は、脳虚血による学習・記憶障害の改善剤としても用いられるため、血管性認知症の患者に適用することにより、中核症状(記憶障害及び認知障害)の改善作用のみならず、その周辺症状(活動障害、攻撃性、焦燥感等の精神症状)の改善作用も期待される。 (5)また、本実施形態の向精神剤に有効成分として配合される冠元顆粒は、その他の薬効(頭痛、頭重、肩こり、めまい、動悸等の諸症状を改善する効能・効果、糖尿病の合併症を抑制する作用)を有しているため、摂取によりそれらの効能も期待することができる。 なお、本実施形態の向精神剤は、次のように変更して具体化することも可能である。 ・本実施形態の向精神剤は、例えば精神性疾患を有する患者の治療に適用される。しかしながら、治療の用途のみならず、健常者が精神性疾患の予防のために摂取してもよい。 ・本実施形態の向精神剤は、ストレスから生ずる躁症状等の精神的症状を低減する作用を有するため、ストレス低減剤として使用してもよい。 ・本実施形態の向精神剤は、ストレスから生ずる精神性疾患又は血管性認知症の周辺症状の治療又は予防を目的に投与するのみならず、それ以外の精神性疾患の患者に適用してもよい。 ・本実施形態の向精神剤は、ヒト以外にも、ウマ、ウシ、ブタのような家畜(非ヒト哺乳動物)、ニワトリ等の家禽、或いは犬、猫、ラット及びマウス等のペットに投与してもよい。 ・前記有効成分である冠元顆粒を、パン、ケーキ、スナック菓子等の嗜好品、牛乳やヨーグルト等の乳製品、清涼飲料等の飲料品に含有させてもよい。 次に、各試験例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。 (冠元顆粒の調製) 本試験に用いた冠元顆粒の構成生薬及びその含有量は、2.25gの芍薬、2.25gのセンキュウ、2.25gの紅花、1.125gの香附子、1.125gの木香及び4.5gの丹参からなる。これらの構成生薬を調合したものに20倍量の水を加えて100℃で1時間熱水抽出した。次いで、ろ過後に減圧濃縮して溶媒を留去したところ、収率44%の冠元顆粒(冠元顆粒エキス)が得られた。 試験例1(メタンフェタミン投与マウスに対する冠元顆粒の影響) メタンフェタミン(Methamphetamine)とは、アンフェタミンにメチル基が置換した構造の化合物である。メタンフェタミンは、中枢神経興奮作用を有する化合物である。5週齢ddY系雄性マウスを用い、冠元顆粒を投与したマウスにメタンフェタミンを投与した際の運動量の変化を測定することより冠元顆粒の中枢神経に与える影響を調べた。 まず、マウスを一群につき10−11匹ずつ4群(コントロール群及び第1群〜第3群)にグループ分けをした。次いで、第1群、第2群及び第3群のマウスに対し、冠元顆粒をそれぞれ30mg/kg体重、100mg/kg体重及び300mg/kg体重の投与量となるように、運動量測定の60分前にマウスに経口投与した。有効成分である冠元顆粒を含有しない賦形剤(デキストリン)のみを与えたマウスをコントロール(Vehicle)とした。 次にメタンフェタミン1mg/kg体重を運動量測定の30分前に腹腔内投与し、運動量(Ambulation)の変化を冠元顆粒投与後1時間、2時間、3時間において測定した。運動量の測定は、19区画に分かれたオープンフィールド(Open-Field)装置を用いて、3分間に各区画を横切った回数を測定し、その合計数を運動量として示した。結果を図1に示す。 図1に示されるように、コントロール(Vehicle)マウスは、メタンフェタミン投与1時間後に運動量が著しく増加し、それ以降徐々に運動量が投与前に戻ることが確認される。冠元顆粒30mg/kg体重及び100mg/kg体重投与マウスは、1時間後の運動量がそれぞれコントロールマウスに比べて有意に増加を抑制していることが確認される。また、冠元顆粒300mg/kg体重投与マウスは、冠元顆粒30mg/kg体重及び100mg/kg体重投与マウスよりもさらに、1時間後の運動量増加を抑制していることが確認された。以上により、冠元顆粒は、メタンフェタミンによる運動量増加を抑制する作用を有することが確認された。 試験例2(単独隔離飼育後の攻撃行動に対する冠元顆粒の影響) 7週齢のウィスター(Wistar)系ラットを使用し、2週間以上単独隔離飼育し、冠元顆粒投与後に発現した攻撃行動を測定することにより、冠元顆粒の攻撃行動に与える影響を調べた。ラットを単独隔離飼育することにより、ラットに対し精神的ストレスを負荷することができる。精神的ストレスを受け、ストレスが蓄積したラットは、ストレス負荷前よりも高い攻撃性を獲得する。従来より、外因的ストレス負荷モデルとして用いられている。 まず、ラットを一群につき10匹ずつ3群(コントロール群、第1群及び第2群)にグループ分けをした。そして、コントロール群、第1群及び第2群のそれぞれのラットを単独隔離飼育することにより、外因的ストレス負荷ラットを作成した。次いで、第1群及び第2群の外因性ストレス負荷ラットに対し、冠元顆粒をそれぞれ30mg/kg体重及び100mg/kg体重の投与量となるように経口投与した。有効成分である冠元顆粒を含有しない賦形剤(デキストリン)のみを与えたラットをコントロール(Vehicle)とした。 鼻先に差し出した棒に対する攻撃反応(Attack Response)を冠元顆粒投与前、投与後(30分、1時間、2時間、4時間)について、4段階のスコア(Score)で評価した。各ラット群において、冠元顆粒投与前の反応がスコア4を示すラットを選択した。攻撃反応なしをスコア0とした。冠元顆粒投与前の反応がスコア4を示すラットの半分の攻撃反応をスコア2とし、スコア4及びスコア0の間をそれぞれスコア3及びスコア1とした。結果を図2に示す。 図2に示されるように、コントロール(Vehicle)ラットは投与後1時間後にスコア3に低下し、その後時間の経過とともにスコアの僅かな上昇が確認された。冠元顆粒30mg/kg体重投与ラットは、コントロールラットに比べ有意差を示さなかった。冠元顆粒100mg/kg体重投与ラットは、投与後30分後にスコア2付近に低下し、投与1時間後及び2時間後までスコア1.5付近を示した。以上により、冠元顆粒は、単独隔離飼育後に増加する攻撃行動を抑制する作用を有することが確認された。 試験例3(チオペンタールナトリウムによる睡眠作用に対する冠元顆粒の影響) チオペンタールナトリウム(Thiopental Na)とは、バルビタール系麻酔薬の一つで鎮静・睡眠効果を有する。4週齢ddY系雄性マウスを用い、冠元顆粒を投与したマウスにチオペンタールナトリウムを投与した際の睡眠時間の変化を測定することより、冠元顆粒の睡眠作用に与える影響を調べた。 まず、マウスを一群につき6−9匹ずつ4群(コントロール群及び第1群〜第3群)にグループ分けをした。次いで、第1群、第2群及び第3群のマウスに対し、冠元顆粒をそれぞれ30mg/kg体重、100mg/kg体重及び300mg/kg体重の投与量となるように、マウスに経口投与した。有効成分である冠元顆粒を含有しない賦形剤(デキストリン)のみを与えたマウスをコントロール(Vehicle)とした。 チオペンタールナトリウムによる睡眠作用は、マウスに冠元顆粒とコントロール群を経口投与した1時間後に、すべてのマウスにチオペンタールナトリウム60mg/kg体重を腹腔内に投与した。チオペンタールナトリウム投与後から正向反射(righting reflex:RR)を指標として、正向反射の消失から回復までの時間を睡眠時間として測定した。 図3に示されるように、コントロール(Vehicle)マウスは睡眠時間が約5時間であった。冠元顆粒30mg/kg体重、100mg/kg体重、及び300mg/kg体重投与のマウスは、いずれも睡眠時間が10時間以上であり、コントロールマウス群に比べて睡眠時間が大幅に増加していることが確認された。以上により、冠元顆粒は、チオペンタールナトリウムによる睡眠作用を延長する作用を有することが確認された。以上の実験に示されるように、冠元顆粒には精神安定作用、抗躁作用、鎮静作用及び睡眠作用等の向精神作用を有していることが明らかになった。 次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。 (a)前記有効成分を30〜300mg/kg体重/日投与することを特徴とする向精神剤の投与方法。従って、この(a)に記載の発明によれば、向精神作用を有効に発揮させることができる。 (b)前記向精神剤を有効成分として含有する医薬品又は飲食品。従って、この(b)に記載の発明によれば、向精神剤を効率的に摂取することができる。 (c)ストレス低減剤として使用される前記向精神剤。メタンフェタミンによる運動量増加作用に対する冠元顆粒の影響。単独隔離飼育後の攻撃行動に対する冠元顆粒の影響。チオペンタールナトリウムによる睡眠作用に対する冠元顆粒の影響。 丹参2.6〜6.8重量部、香附子0.6〜1.7重量部、木香0.6〜1.7重量部、紅花1.1〜3.4重量部、芍薬1.1〜3.4重量部、及びセンキュウ1.1〜3.4重量部を構成生薬として含有する冠元顆粒を有効成分として含有し、抗躁剤として使用されることを特徴とする向精神剤。


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