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タイトル:特許公報(B2)_多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)治療剤
出願番号:2006517881
年次:2010
IPC分類:A61K 36/07,A61P 15/08


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冨永 國比古 安西 英雄 庄 邨 JP 4464964 特許公報(B2) 20100226 2006517881 20050204 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)治療剤 白田 正樹 503310947 志賀 正武 100064908 渡邊 隆 100089037 冨永 國比古 安西 英雄 庄 邨 20100519 A61K 36/07 20060101AFI20100422BHJP A61P 15/08 20060101ALI20100422BHJP JPA61K35/84 AA61P15/08 A61K 36/07 CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 雪村八一郎 他,和漢薬治療を試みた多のう胞性卵巣、下垂体腺腫による不妊症例,信州医誌,1983年,Vol.31,No.3,pp.228-232 2 JP2005001697 20050204 WO2006082649 20060810 12 20050825 鶴見 秀紀 本発明は、女性の不妊症、月経異常、にきび、多毛、肥満傾向などの原因となる多嚢胞性卵巣症候群(PCOS:Polycystic ovary syndrome)に対して有効で安全な治療剤に関する。 最近の研究によれば、生殖可能な年齢の女性の6%が、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)であると報告されている。そして、潜在的な多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の患者数は、これよりも極めて多いと考えられている。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは、卵胞が排卵に至るまで順調に大きく成熟せず、卵巣が多数の小さな未熟な卵によって満たされ、排卵障害を起こしている状態をいう。 この原因は、脳下垂体から分泌され、排卵を起こすために必要な性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン:Gonadotropins)のうち、FSH(卵胞刺激ホルモン:Follicle−stimulating hormone)とLH(黄体化ホルモン:Luteinizing hormone)とのバランスが乱れるためであると考えられているが、まだ未解明の部分も多い。 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、月経不順、無月経、月経過多、男性ホルモン(テストステロン:Testosterone)の増加、肥満症などの症状をもたらし、また、不妊症の原因となる。従来の多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の治療法としては、以下の薬物療法と手術療法が知られている。 (I)排卵誘発剤(クロミフェン、クロミッド)療法 クロミフェンが視床下部に働きかけて、排卵を起こさせる治療法であるが、排卵が起らない場合がある。 (II)クロミフェンと他剤との併用療法 クロミフェンだけの投与で効果が見られない場合、クロミフェンにステロイドホルモンやHMG(ヒト閉経ゴナドトロピン:Human menopausal gonadotropins)などの薬剤を併用する治療法である。 (III)ゴナドトロピン療法(HMGまたはFSH投与法) 性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)を患者に注射し、卵巣を刺激して排卵を誘発する治療法である。この治療法は、効果が比較的高く、妊娠率も良好であるが、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群(OHSS:Ovarian hyperstimulation syndrome)といった副作用を発症しやすい問題点がある。 (IV)芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)の投与法 漢方薬の一種である芍薬甘草湯を投与する治療法であり、副作用がほとんどないが、充分に満足できる効果を挙げていない問題点がある。 (V)腹腔鏡治療法 腹腔鏡を用いて卵巣の表面にレーザー光線を照射し、小さな孔を開ける治療法である。根治的な治療法ではなく、生体に対する侵襲が避けられない問題点がある。 (VI)経口避妊薬の投与法 挙児(妊娠)を希望しない、未婚や若年の多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の女性には、経口避妊薬などのホルモン剤を用いて、月経を周期的に起こさせるような治療が行なわれている。 挙児を希望する不妊症の多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の女性に対しては、主に上記のような排卵を目指した治療が行われている。そのなかでも、(I)〜(III)のような排卵誘発剤による治療法は、不妊治療の切り札とされている一方で、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)といった重大な副作用を招く可能性があり、困難な問題を投げかけている。 また、未婚女性や若年女性の治療には、別の問題点がある。これらの患者の中には、産婦人科を受診したがらない人も多く、適切な治療を受けないまま放置される場合がある。疾患をそのまま放置した場合、卵巣の皮膜肥大などの症状が進行して、治療が一層難しくなるという悪循環に陥る問題がある。 また、産婦人科を受診した場合であっても、未婚女性や若年女性に対しては、医師も患者も上記(I)〜(III)のような排卵誘発剤、ゴナドトロピンなどの強い薬物を用いた療法を、できる限り避ける傾向にある。上記(IV)の経口避妊薬の投与もまた患者にとっては抵抗感がある。そのため、現状では、「月経不順」などの診断名のもとに、不充分な対症療法的治療しか行われていない問題がある。 このように、従来からの多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の治療法には、上述したような様々な問題点があり、有効性と副作用の未発症という両方を満足するものではなかった。さらに、近年の研究によれば、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の患者は、非罹患者に比べ、糖尿病を併発するリスクが7倍高いことが報告されている。糖尿病は、周知のように、心筋梗塞、脳卒中、腎不全、網膜症による失明などをもたらす深刻な疾患である。そのため、糖尿病を併発する前の多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の段階でこれを治療する必要がある。 本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、副作用がほとんどなく、有効で無排卵を改善し、挙児を希望する女性ばかりでなく、未婚や若年の女性に対しても安全に使用可能な多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)治療剤を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決すべく、安全で有効な多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の治療剤の研究を重ねた結果、キノコ類の抽出物が多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)に有効な活性を示すことを見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明は、マイタケの抽出物を有効成分とする多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)治療剤である。 また、上記マイタケの抽出物は、(1)マイタケ原料(マイタケ子実体および/または菌糸体を総称して「マイタケ原料」という。)を濃度90%以上のエタノールで処理し、エタノール可溶性成分を除去する工程、(2)その後、熱水抽出を行ない、得られた熱水抽出液に最終容量濃度が50〜75%になるまでエタノールを加え、生成した不溶性成分を除去し、上澄液を得る工程、(3)得られた上澄液から、分子量14,000以上の画分を収集する工程、を含む工程により製造されるものであることが好ましい。 本発明の多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)治療剤は、キノコ類の抽出物を有効成分とすることにより、安全で、副作用がほとんどなく、無排卵を改善する優れた効果があり、また、挙児を希望する女性ばかりでなく、未婚や若年の女性に対しても安全に使用することができる。 [図1]図1は、製造例1で得られたマイタケ抽出物の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の分析結果を示したチャート図である。(分析例)[図2]図2は、製造例3で得られたシイタケ抽出物の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の分析結果を示したチャート図である。(製造例3)[図3]図3は、製造例4で得られたアガリクス抽出物の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の分析結果を示したチャート図である。(製造例4)[図4]図4は、製造例5で得られたレイシ抽出物の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の分析結果を示したチャート図である。(製造例5)[図5]図5は、製造例6で得られたヒラタケ抽出物の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の分析結果を示したチャート図である。(製造例6) 本発明の多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)治療剤は、キノコ類の抽出物を有効成分とするものである。このキノコ類の抽出物は、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の治療方法として用いることができる。また、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の治療剤を製造するために、このキノコ類の抽出物を使用することができる。 上記キノコ類は、食用・薬用に供され、古来より健康によいと珍重されてきた点から、マイタケ(Grifola frondosa)、チョレイマイタケ(Polyporus umbellatus)、トンビマイタケ(Meripilus giganteus)、白マイタケ(Grifola albicans)、シイタケ(Lentinus edodes)、アガリクス(Agaricus blazei Murill)、マッシュルーム(Agaricus bispirus)、コフキサルノコシカケ(Ganoderma applanatum)、ツガサルノコシカケ(Fomitopsis pinicola)、カワラタケ(Coriolus versicolor)、レイシ(Ganoderma lucidum)、ヒラタケ(Pleurotus ostreatus)、エリンギ(Pleurotus eryngii)、ヤマブシタケ(Hericium erinaceus)、冬虫夏草(Cordyceps sinensis)、セミタケ(Cordyceps sobolifera)、キクラゲ(Auricularia auricula)、シロキクラゲ(Tremella fuciformis)、およびメシマコブ(Phellinus linteus)からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。 そのなかでも、マイタケ、シイタケ、アガリクス、レイシ、およびヒラタケからなる群より選ばれる1種以上であることがより好ましく、マイタケであることが最も好ましい。 これらのキノコ類には、糖の結合したタンパク質(複合タンパク質)であるグリコプロテインが含まれており、本発明に係るこれらのキノコ類からの抽出物には、このグリコプロテインが主成分として含まれていると考えられる。 本発明に係るキノコ類の抽出物の主成分であるグリコプロテインは、褐色であり、水溶性および熱安定性を示し、単純タンパク質部分と糖質部分との質量比率が、75:25〜90:10、分子量分布が18,000〜22,000であり、かつビューレット反応とフェーリング反応に陽性であることが好ましい。ここで「単純タンパク質部分」とは、複合タンパク質であるグリコプロテインのうち、ポリペプチド鎖のみからなる部分をいう。 グリコプロテインの分子量分布は、18,000〜22,000であることが好ましく、平均分子量としては、20,000であることがより好ましい。また、熱安定性とは、温度80〜130℃に1〜5時間放置しても生物活性が失われないことをいう。 また、本発明に係るキノコ類の抽出物は、(1)上記キノコ類原料(キノコ類子実体および/または菌糸体)を濃度90%以上のエタノールで処理し、エタノール可溶性成分を除去する工程、(2)その後、熱水抽出を行ない、得られた熱水抽出液に最終容量濃度が50〜75%になるまでエタノールを加え、生成した不溶性成分を除去し、上澄液を得る工程、(3)得られた上澄液から、分子量14,000以上の画分を収集する工程、を含む工程により製造されるものであることが好ましい。 本発明に係るキノコ類の抽出物の製造方法は、上記(1)〜(3)の工程を含むものである。まず、最初の工程として、(1)本発明に用いるキノコ類原料を濃度90%以上のエタノールで処理し、エタノール可溶性成分を除去する。 本発明に用いるキノコ類原料は、上記キノコ類原料の生鮮品やその乾燥体などを特に制限なく使用できる。そのなかでも、効率的な処理を行なう点から、粉末乾燥体を使用するのが好ましい。また、濃度90%以上のエタノールとは、エタノールを90%以上含有する水(エタノール水)であればよい。そのなかでも、キノコ類原料から溶け出したエタノール可溶性成分を効率的に除去する点から、エタノールを95%以上含有する水であるのが好ましく、エタノールが100%であるのが最も好ましい。 (1)の工程における処理とは、キノコ類原料に、エタノールまたはエタノール水を加え、攪拌することをいう。この時のキノコ類原料の含量は、10〜25質量%であるのが好ましく、10〜12.5質量%であるのがより好ましい。また、処理温度は20〜70℃とするが、室温でもよい。処理時間は、用いるキノコ類原料の状態及び処理温度等にもよるが、1〜10時間であることが好ましく、2〜3時間であることがより好ましい。 この処理により、キノコ類原料からエタノールに可溶な成分が、エタノールまたはエタノール水中に溶け出す。溶け出したエタノール可溶性成分は不要であるため、濾過や遠心分離により除去する。そのなかでも、大量処理等の点から、遠心分離を用いるのが好ましい。 次いで、(2)工程として、エタノール可溶性成分を除去したエタノール抽出残渣から熱水抽出を行ない、得られた熱水抽出液に最終容量濃度が50〜75%になるまでエタノールを加え、生成した不溶性成分を除去し、上澄液を得る。 熱水抽出とは、(1)工程で得られたエタノール抽出残渣に水を加え、加熱することである。この時のエタノール抽出残渣濃度は、10〜25質量%であるのが好ましく、10〜12.5質量%であるのがより好ましい。また、加熱温度は80〜130℃であるのが好ましく、100〜120℃で行なうのがより好ましい。また、抽出時間は1〜5時間であることが好ましく、2〜3時間であることがより好ましい。 次いで、この溶液に不溶な成分を濾別し、濾別後の濾液である熱水抽出液に、最終容量濃度が50〜75%になるまでエタノールを加える。エタノールを加える前に、あらかじめ熱水抽出液を容量の1/3〜1/2に濃縮しておくと効率的でよい。 エタノールを加えた後は、低温下、好ましくは0℃〜室温、より好ましくは4〜10℃で、5〜24時間、好ましくは8〜12時間静置し、不溶性成分である沈殿物や浮遊物の生成を促すのが好ましい。その後、生成した不溶性成分を、遠心分離や濾過により除去し、濾液等を含む上澄液を得る。エタノールの添加で生成した不溶性成分を除去することにより、免疫抑制作用のある物質などを、最終生成物から実質的に除去することができる。 次いで、(3)工程として、得られた上澄液から、分子量14,000以上の画分を収集する。分子量14,000以上の画分の収集は、透析または限外濾過を用いて行うことが好ましい。この透析または限外濾過に用いる透析膜としては、分画分子量14,000のものであれば特に制限はなく、セロファン膜やコロジオン膜など一般的なものを使用できる。 この後、得られた分子量14,000以上の画分を、さらに純度を高める目的で精製してもよい。このような精製方法としては、例えば、ゲル濾過クロマトグラフィー等、グリコプロテインの精製によく用いられる方法を、特に制限なく使用することができる。 上記キノコ類の抽出物の製造に用いられる溶媒は、健康食品素材等の生産に用いることを日本国厚生労働省に認可されているものであり、この抽出物は健康食品素材としても使用が可能である。 本発明の多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)治療剤は、有効成分である上記キノコ類の抽出物に加えて、医薬用として許容される担体および/または希釈剤を含有することができる。このような担体としては、例えば、セルロース、リン酸一水素カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、二酸化ケイ素、メチルセルロース、ラクトースなどを用いることができる。また、希釈剤としては、例えば、水、グリセロールなどを用いることができる。また、防腐剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、甘味料などの一般的な添加物を添加してもよい。 また、本発明の多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)治療剤は、経口、非経口または経皮投与することができる。投与される有効成分の量は、通常、患者の体重、疾患の性質、状態、および投与経路などに応じて適切に定めることが望ましい。そのなかでも、好ましくは、経口で1日当たり、50〜800mg/人であり、より好ましくは100〜500mg/人であり、最も好ましくは200〜350mg/人であり、これを1日〜数回に分けて投与する。 本発明に係るキノコ類の抽出物は、それ自身でまたは他の薬理的に活性な物質と共に用いることができる。投与に適した形態は、例えば、錠剤(plain tablets)もしくは被覆錠、カプセル、坐剤、溶液、シロップ、乳液、または分散性粉末等を包含する。錠剤等は、本発明に係るキノコ類の抽出物を、3〜80質量%含有するのが好ましく、5〜50質量%含有するのがより好ましい。 錠剤は、例えば、単数もしくは複数の活性物質を既知の賦形剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ラクトース等の不活性成分;コンスターチ、アルギン酸等の崩壊剤;スターチ、ゼラチン等の結合剤;ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤;および/またはカルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテート等の遅延放出を与える剤と、本発明に係るキノコ類の抽出物、またはこれと他の薬理的に活性な物質とを混合することにより製造できる。錠剤はいくつかの層からなっていてもよい。 被覆錠は、錠剤と同様にして製造した芯を、錠剤被覆に通常用いられる物質、例えば、アラビアゴム、タルク、二酸化チタン、メチルセルロース、ショ糖等で被覆することにより製造できる。遅延放出を得るべくまた不適合性を避けるべき芯は、いくつかの層からなっていてもよい。同様に錠剤被覆は、遅延放出を与えるべく、いくつかの層からなっていてもよく、また、錠剤についての上記賦形剤を用いることができる。 また、本発明に係るキノコ類の抽出物、またはこれと他の薬理的に活性な物質との組み合わせを含有するシロップは、サッカリン、シクラメート、グリセロール、ショ糖等の甘味料、および風味改善剤、例えば、バニリン、オレンジ抽出物等の風味剤を含有していてもよい。また、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の懸濁補助薬もしくは増粘剤;脂肪族アルコールとエチレンオキシドの縮合物等の湿潤剤;またはp−ヒドロキシベンゾエート等の保存剤を含有していてもよい。 また、本発明に係るキノコ類の抽出物、またはこれと他の薬理的に活性な物質との組み合わせを含有するカプセルは、例えば、これらの物質とラクトース、ソルビトール等の不活性担体とを混合し、混合物をゼラチンカプセル等に封入することによって製造できる。 また、坐薬は、例えば、本発明に係るキノコ類の抽出物、またはこれと他の薬理的に活性な物質との組み合わせを常用の担体、具体的には中性脂肪、ポリエチレングリコールもしくはその誘導体等と混合することにより製造できる。 また、本発明に係るキノコ類の抽出物、またはこれと他の薬理的に活性な物質との組み合わせは、健康食品、機能性食品もしくは一般食品などの食品とすることもできる。本発明におけるグリコプロテインは、キノコ類の抽出物であることから安全性に優れており、上記食品は恒常的に摂取することができる。これらの食品には、上記添加成分の他、ビタミン類、ミネラル類、ハーブ類やその他の栄養素材などを添加してもよい。 以下の実施例は、本発明の範囲を限定することなく、例示するものである。 [製造例1]キノコ類(マイタケ)の抽出物の製造 乾燥マイタケ子実体粉末1000gに、95%エタノール水5Lを加え、室温で攪拌しながら2〜3時間処理し、濾過によりエタノール可溶性成分を除去した。 次いで、得られた残渣に脱イオン水5Lを加え、100〜120℃で攪拌しながら2時間抽出を行なった。この熱水抽出液を容量が約1/2になるまで濃縮してから、最終容量濃度が50〜75%になるまでエタノールを添加した。これを、4〜10℃の低温室で8〜12時間放置後、不溶性成分である沈殿物や浮遊物などの固形物質を遠心分離により除去し、上澄液を得た。 この上澄液から、透析によって分子量14,000以上の画分を収集し、マイタケ抽出物を得た。 このマイタケ抽出物を分析するため、ゲル濾過クロマトグラフィーで精製し、約21gの褐色物質を得た。この精製したマイタケ抽出物について、ビューレット反応とフェーリング反応を行ったところ、陽性であったことから、タンパク質部分と糖質部分とを含むことが確認された。 [分析例]精製したマイタケ抽出物の分析 上記のようにして得られた精製したマイタケ抽出物について、単純タンパク質部分の定量はBradford法により行なった。単純タンパク質部分の構成アミノ酸の分析については、自動アミノ酸分析装置(Hitachi L−8500A Amino Acid Analyzer)により行なった。また、糖質部分の定量はフェノール硫酸法により行ない、糖質部分の組成は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により行なった。分子量の測定はSDS−PAGE電気泳動により行なった。また、1H−NMR測定も行なった。 精製したマイタケ抽出物中の単純タンパク質部分と糖質部分との質量比率の分析結果を、表1に示す。当該物質は、グリコプロテインであることがわかった。 また、図1に、製造例1で得たマイタケ抽出物の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の分析結果のチャート図を示す。図1中、7.189のピークは、グリコプロテインと同定された。 得られたマイタケ抽出物中の主成分であるグリコプロテインは、以下の性質を有するものであった。 外観:褐色、吸湿性粉末 溶解性:水およびアルカリ性溶液に可溶 安定性:高温に安定、エタノールにも安定 化学構成:単純タンパク質部分:糖質部分=75:25〜90:10(表1を参照) 単純タンパク質部分の構成アミノ酸組成:アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、グリシン、アラニン、バリン、システイン、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、リシン、ヒスチジン、アルギニン、プロリン 糖質部分の組成:ガラクトース、マンノース、グルコース、N−アセチルグルコサミン、フコース1H−NMRスペクトル:3.0473、3.8983、6.8500、7.3150平均分子量:20,000。 [製造例2]錠剤の製法 製造例1で得たマイタケ抽出物を用いて、以下の組成で錠剤を製造した。 錠剤 錠剤当たり 主成分: マイタケ抽出物(粉末) 36mg 乾燥マイタケ原料の粉末 250mg 助剤: 微結晶セルロース 264mg リン酸−水素カルシウム 20mg ショ糖脂肪酸エステル 20mg 微粒化二酸化ケイ素 10mg コーティング材: メチルセルロース 錠剤質量の1〜1.5% ここで、乾燥マイタケ原料の粉末とは、マイタケを乾燥・粉砕しただけの粉末をいい、エタノール抽出を行っていないものである。上記マイタケ抽出物(粉末)と乾燥マイタケ原料の粉末に、細かく砕いた助剤を調合し、顆粒化し、乾燥し、粉砕し、打錠し、適当な形および大きさの錠剤にした後、コーティング材を塗布した。 得られた錠剤の分析結果と衛生検査の結果を、以下に示す。この錠剤は、薬事法上の規格を満足するものであることが確認された。 分析項目: 崩壊時間 45分以下 質量差 600mg±5% 衛生検査: 一般生菌数 3000以下 酵母とカビ 300以下 サルモネラ 陰性 大腸菌群 陰性 [製造例3〜6]シイタケ、アガリクス、レイシ、ヒラタケからの抽出物の製造と分析 キノコ類をマイタケに代えて、シイタケ(製造例3)、アガリクス(製造例4)、レイシ(製造例5)、ヒラタケ(製造例6)とした以外は、製造例1と同様にして、キノコ類抽出物を製造した。これらの抽出物について、上記分析例と同様の方法でHPLCの測定を行った。図2にシイタケ抽出物のHPLCの分析結果のチャート図を、図3にアガリクス抽出物のHPLCの分析結果のチャート図を、図4にレイシ抽出物のHPLCの分析結果のチャート図を、図5にヒラタケ抽出物のHPLCの分析結果のチャート図を、それぞれ示す。図2〜5では、製造例1のマイタケ抽出物の7.189とほぼ同じ位置に、すなわちそれぞれ7.087(図2)、7.082(図3)、7.096(図4)、7.086(図5)にピークが見られ、製造例1のマイタケ抽出物と同様の成分が含まれていることが確認された。 [試験例1]多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)患者への投与 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断された外来患者で、3ヶ月以上にわたって無排卵のもの18名を無作為に2群に分けた。試験群には、上記製造例2で製造した錠剤(本発明錠剤)を、1日9錠を3回に分けて投与し、対照群には、芍薬甘草湯を1日7.5gを3回に分けて投与した。それぞれ12週間(3周期)にわたって投与を続け、各群の患者に基礎体温表を記録させ、排卵の有無を確認した。 排卵した患者数による排卵率の比較の結果を、表2に示す。また、排卵した周期数による比較の結果を、表3に示す。 表2によれば、上記製造例2で製造した錠剤(本発明錠剤)と芍薬甘草湯をそれぞれ投与した場合の排卵率を患者数で比較すると、本発明錠剤:芍薬甘草湯=75%:10%であった。また、表3によれば、排卵した周期数で比較すると、本発明錠剤:芍薬甘草湯=46%:10%であった。フィッシャーの直接確率法によれば、P<0.05となり、有意差が認められ、統計学的にも本発明の多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)治療剤は、芍薬甘草湯による治療より有意に優れていることが確認された。また、両群とも副作用はまったく認められず、本発明の多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)治療剤は安全性が高いことが確認された。 [試験例2]キノコ類抽出物の安全性試験 健康な4週齢のICR系マウスを、雌雄それぞれ10匹づつ用いて安全性試験を行なった。これらマウスにつき絶食後4時間後に体重を測定した後、試験群には、雌雄ともに、製造例1で得たマイタケ抽出物を蒸留水に溶解したものを、2,000mg/kg体重の用量で胃ゾンデを用いて強制単回投与した。対照群には、雄で0.7mL,雌で0.6mLの純水を同様に投与した。観察期間は14日間とし、観察期間終了後にすべて剖検した。 その結果、雌雄ともに観察期間中に死亡例はなく、一般状態と体重にも異常は見られなかった。剖検では、すべての試験マウスの主要臓器にも異常は見出せなかった。したがって、本発明に係るキノコ類抽出物のマウスに対する単回経口投与によるLD50値は、雌雄ともに2,000mg/kg体重以上であると考えられ、本発明に係るキノコ類抽出物は、安全性が高いことが確認された。 本発明の多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)治療剤は、キノコ類の抽出物を有効成分とすることにより、安全で、副作用がほとんどなく、無排卵を改善する優れた効果があり、挙児を希望する女性ばかりでなく、未婚や若年の女性に対しても安全に適用できる。 マイタケの抽出物を有効成分とする多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)治療剤。 前記マイタケの抽出物が、 (1)前記マイタケ原料を濃度90%以上のエタノールで処理し、エタノール可溶性成分を除去する工程、 (2)その後、熱水抽出を行ない、得られた熱水抽出液に最終容量濃度が50〜75%になるまでエタノールを加え、生成した不溶性成分を除去し、上澄液を得る工程、 (3)得られた上澄液から、分子量14,000以上の画分を収集する工程、を含む工程により製造されるものである請求項1に記載の多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)治療剤。


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