タイトル: | 再公表特許(A1)_びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の病型の診断方法及び予後診断の方法 |
出願番号: | 2006112483 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C12Q 1/68,C12N 15/09,C12M 1/00,G01N 33/53,G01N 37/00 |
瀬戸 加大 田川 博之 吉田 安子 吉良 茂樹 JP WO2006112483 20061026 JP2006308235 20060419 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の病型の診断方法及び予後診断の方法 愛知県 304031427 日本碍子株式会社 000004064 特許業務法人アイテック国際特許事務所 110000017 瀬戸 加大 田川 博之 吉田 安子 吉良 茂樹 US 60/672,516 20050419 C12Q 1/68 20060101AFI20081114BHJP C12N 15/09 20060101ALI20081114BHJP C12M 1/00 20060101ALI20081114BHJP G01N 33/53 20060101ALI20081114BHJP G01N 37/00 20060101ALI20081114BHJP JPC12Q1/68 AC12N15/00 AC12N15/00 FC12M1/00 AG01N33/53 MG01N37/00 102 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,LY,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20081211 2007528177 43 4B024 4B029 4B063 4B024AA11 4B024CA04 4B024CA09 4B024CA20 4B024HA11 4B024HA14 4B029AA07 4B029BB20 4B029CC08 4B029FA15 4B063QA01 4B063QA19 4B063QQ42 4B063QR32 4B063QR35 4B063QR56 4B063QR62 4B063QR66 4B063QR84 4B063QX02 本発明は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の病型の診断及びDLBCLの予後診断に関する。 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は最も一般的な非ホジキンリンパ腫であり、これには病態生理学的に異なるグループが含まれていることが知られている( Harris NL, Jaffe ES, Stein H, et al. A revised European-American classification of lymphoid neoplasms: a proposal from the International Lymphoma Study Group. Blood. 1994; 84: 1361-1392, Offit K, Le Coco F, Louie DC, et al. Rearrangement of BCL6 gene as a prognostic marker in diffuse large cell lymphoma. N Engl J Med 1994; 331: 74-80, Kramer MHH, Hermans J, Wijburg E, et al. Clinical relevance of BCL2, BCL6, and MYC rearrangements in diffuse large B-cell lymphoma. Blood. 1998; 92: 3152-3162, Gatter KC and Warnke RA. Diffuse large B-cell lymphoma, In: Jaffe ES, Harris NL, Stein H, Vardiman JW, eds. World health classification of tumors. Pathology & Genetics of tumors of haematopoietic and lymphoid tissues. Washington: IARC press, Lyon; 2001. 171-174)。また、DLBCLは、患者が著しく異なる臨床経過を辿ることから臨床的異質性があることも知られている(Fisher RI, Gaynor ER, Dahlberg S, et al. Comparison of a standard regimen (CHOP)with three intensive chemotherapy regimens for advanced non-Hodgkin's lymphoma.N Engl J Med. 1993; 328: 1002-1006.)。このため、異質性のDLBCLにおけるサブグループ同定の重要性に関心が集まっている。 Alizadeh et al(2000)が実施した遺伝子発現プロファイリングから、B細胞分化の異なるステージを示す遺伝子発現パターンを伴う2つの分子的に区別されるDLBCLの型、すなわち活性化B細胞様(ABC)型、及び胚中心B細胞様(GCB)型が明らかにされた(Alizadeh AA, Eisen MB, Davis RE, et al. Distinct types of diffuse large B-cell lymphoma identified by gene expression profiling. Nature. 2000; 403: 503-511, Wright G, Tan B, Rosenwald A, et al. A gene expression-based method to diagnose clinically distinct subgroups of diffuse large B cell lymphoma. Proc Natl Acad Sci USA. 2003; 100: 9991-9996)。ABCグループは活性化B細胞及びプラズマ細胞に特有な遺伝子を発現し、一方、GCBグループは正常な胚中心B細胞の遺伝子発現プログラムを維持している(Alizadeh AA, Eisen MB, Davis RE, et al. Distinct types of diffuse large B-cell lymphoma identified by gene expression profiling. Nature. 2000; 403: 503-511, Wright G, Tan B, Rosenwald A, et al. A gene expression-based method to diagnose clinically distinct subgroups of diffuse large B cell lymphoma. Proc Natl Acad Sci USA. 2003; 100: 9991-9996, Rosenwald A, Wright G, Chan WC, et al. The use of molecular profiling to predict survival after chemotherapy for diffuse large-B-cell lymphoma. N Engl J Med. 2002; 346: 1937-1947)。この著者らはABCグループの全生存はGCBグループと比較して有意に劣っていたことも報告している。 さらに、本発明者らは、表現型の異なる3つのサブグループ、CD5+、CD5-CD10+、及びCD5-CD10-のDLBCLを同定したことを報告した(Harada S, Suzuki R, Uehira K, et al. Molecular and immunological dissection of diffuse large B cell lymphoma: CD5+ and CD5 with CD10+ groups may constitute clinically relevant subtypes. Leukemia. 1999; 13: 1441-1447)。CD5+グループは全DLBCL症例の約10%を占めることが明らかにされているが、これはCD5+C10+-CD19+CD20-CD21-CD23-サイクリンD1-表現型を有し、CD5- DLBCLよりも予後が不良で、節外病変が多く生じ、パフォーマンスステータスが不良で、また乳酸脱水素酵素濃度が高いという特徴を持つ(Yamaguchi M, Seto M, Okamoto M, et al. De novo CD5+ diffuse large B-cell lymphoma: a clinicopathologic study of 109 patients. Blood. 2002; 99: 815-821.)。CD5-CD10+グループはその他のグループよりBCL2タンパク質の発現頻度が低く、通常はBCL2発現を欠く正常胚中心細胞との明確な関連性が示唆されている。最後に、CD5-CD10-グループは最も多く認められ、BCL6遺伝子再配列の発現率が他の2グループよりも高いが、その差は有意ではない(Harada S et al )。 DLBCLの各サブグループは分子的または表現型的に異なるにもかかわらず、遺伝的特徴及びそれらの関連性については十分な検討が行われていない。そこで、本発明は、死亡率や予後に大きく影響するDLBCLのサブグループを容易に診断する技術を提供することを一つの目的とする。また、本発明は、DLBCLの予後の診断方法を提供することを他の一つの目的とする。 本発明者らは、DLBCLの異なるサブグループのゲノム不均衡の特徴の同定にアレイを用いる比較ゲノムハイブリダイゼーション(マイクロアレイCGH法)を使用した(Ota A, Tagawa H, Karnan S, et al. Identification and characterization of a novel gene, C13orf25, as a target for 13q31-q32 amplification in malignant lymphoma. Cancer Res. 2004; 64: 3087-3095、Tagawa H, Tsuzuki S, Suzuki R, et al. Genome-wide array-based comparative genomic hybridization of diffuse large B-cell lymphoma: comparison between CD5-Positive and CD5-negative cases. Cancer Res. 2004; 64: 5948-5955)。また、遺伝子発現プロファイリングも使用し、ABCとGCB、及びCD5+とCD5-CD10+サブグループ間の関連性を解明した。さらに、本発明者らは、DLBCLが特定の染色体領域の欠損との関連性を見出した。これらの知見によれば、以下の手段が提供される。 本発明の一つの形態によれば、ヒトから採取した染色体を含む被験試料中のヒト染色体の増幅領域及び/又は欠損領域を検出する検出工程を備える、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の病型の診断方法が提供される。この診断方法においては、前記検出工程で検出された前記増幅領域が、ヒト染色体の3、8q21-q26、11q21-q25、16p11-p13、16q22-q24、18、19q13及びXから選択される1種又は2種以上にあるかどうか及び/又は前記欠損領域がヒト染色体の2p11、6q12-27、8p22-p23、9p21及び17pから選択される1種又は2種以上の領域にあるかどうかを指標としてびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の病型がABC型であると肯定的に判定する判定工程を備えることができる。さらに、前記判定工程は、前記増幅領域がヒト染色体の3p23-q28、18q11.2-q23及び9q13.41-q13.43から選択される1種又は2種以上にあるかどうか及び前記欠損領域がヒト染色体の6q22.31-q24.1及び9p21.3から選択される1種又は2種以上にあるかどうかを指標とする工程としてもよい。また、前記判定工程は、前記増幅領域がヒト染色体の3q23-q28及び/又は前記欠損領域がヒト染色体の9p21.3であるかどうかを指標とする工程としてもよい。さらに、前記判定工程は、前記病型がABC型であると肯定的に判定されるとき、前記病型がCD5+型であると肯定的に判定する工程としてもよい。 また、本発明の診断方法においては、前記検出工程で検出された前記増幅領域が、ヒト染色体の1q22-32、2p14-p24、5pl2-pl5、5q15-q31、6p12-p25、7、8q22-q26、9q33-q34、11q、12、13q31-q33、16p11-p13、18q21-q23、19p、19q13、21q及びXから選択される1種又は2種以上にあるかどうか及び/又は前記欠損領域がヒト染色体の1p36、2p11、3p14、4p12-p13、4q33-q34、6q14-q16、8p22-p23、9p21、13q12-q22、17pl2及び18q22-q23から選択される1種又は2種以上にあるかどうかを指標としてびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の病型がGCB型であると肯定的に判定する判定工程を備えることとしてもよい。また、前記判定工程は、前記増幅領域がヒト染色体q21.1-q23.3、1q31.1-q42.13、2p15-p16.1、7q22.1-q36.2及び12q13.1-q14から選択される1種又は2種以上にあるかどうかを指標とする工程としてもよく、前記判定工程は、前記増幅領域がヒト染色体の7q22-q36にあるかどうかを指標とする工程としてもよい。さらにまた、前記判定工程は、前記病型がGCB型であることが肯定的に判定されるとき、前記病型がCD5−DC10+であると肯定的に判定する工程を備えることもできる。 また、本発明の診断方法においては、前記検出工程で検出された前記増幅領域が、ヒト染色体の3、6p22-p25、7p22-q31、8q24、11q22-q25、12、16p13-q21、18、19及びXから選択される1種又は2種以上にあるかどうか及び/又は前記欠損領域がヒト染色体の1p36、2p11、6q14-q27、8p23、9p21、15q13-q14及び17p11-p13から選択される1種又は2種以上にあるかどうかを指標として前記病型がCD5+であることを肯定的に判定する工程を備えることができる。この場合、前記判定工程は、前記増幅領域がヒト染色体の3であるか及び/又は前記欠損領域がヒト染色体の9p2であるかどうかを指標とする工程としてもよい。 また、本発明の診断方法においては、前記検出工程で検出された前記増幅領域が、ヒト染色体の1q、2p13-p25、6p21-p25、7、8q22-q24、9q33-q34、12、13q31-q33、15q、16p13、19q13.3-13.4及びXから選択される1種又は2種以上にあるかどうか及び/又は前記欠損領域がヒト染色体の1p36、1p22、2p11、3p14、4p、6q13-q27、9p21及び13q14-q21から選択される1種又は2種以上にあるかどうかを指標として前記病型がCD5−CD10+であると肯定的に判定する判定工程を備えていてもよい。この場合、前記判定工程は、前記増幅領域がヒト染色体の7q22-q36及び12q13-q14から選択される1種又は2種以上にあるかどうか及び/又は前記欠損領域がヒト染色体の17p13であるかどうかを指標とする工程としてもよい。 本発明の診断方法においては、前記検出工程は、被験試料中の前記領域について、PCR法、RT−PCR法及び核酸ハイブリダイゼーションのいずれかを実施する工程を含むことができ、さらに、前記ヒト染色体上の領域を含むプローブと前記被験試料中の核酸とをハイブリダイゼーションする工程を含むことができる。前記検出工程は、アレイCGH法を実施する工程とすることもできる。 本発明の他の一つの形態によれば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の病型診断用の核酸プローブであって、ABC型のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫におけるヒト染色体上の増幅領域及び/又は欠損領域を検出可能な1種又は2種以上の核酸プローブが提供される。この核酸プローブは、所定範囲のヒト染色体に由来する核酸プローブを固定化したアレイに対して前記ABC型のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫罹患ヒト個体から採取した被験試料を供給し核酸ハイブリダイゼーションを実施して前記核酸プローブの固定部位において得られる蛍光強度のlog2比値に基づいて設定した所定の上下の閾値に対する前記log2比値の大小に基づいて選択される核酸プローブを含むことができる。 本発明の他の一つの形態によれば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の病型診断用の核酸プローブであって、GCB型のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫におけるヒト染色体上の増幅領域及び/又は欠損領域を検出可能な1種又は2種以上の核酸プローブが提供される。この核酸プローブは、所定範囲のヒト染色体に由来する核酸プローブを固定化したアレイに対して前記GCB型のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫罹患ヒト個体から採取した被験試料を供給し核酸ハイブリダイゼーションを実施して前記核酸プローブの固定部位において得られる蛍光強度のlog2比値に基づいて設定した所定の上下の閾値に対する前記log2比値の大小に基づいて選択される核酸プローブを含むことができる。 本発明の他の一つの形態によれば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の病型診断用アレイであって、上記いずれかに記載の核酸プローブが固定化されたアレイが提供される。このアレイには、ヒト染色体の3、8q21-q26、11q21-q25、16p11-p13、16q22-q24、18、19q13、X、2p11、6q12-27、8p22-p23、9p21、17pから選択される1種又は2種以上の領域の少なくとも一部を検出可能な核酸プローブが固定化されていてもよい。また、このアレイには、ヒト染色体の1q22-32、2p14-p24、5p12-p15、5q15-q31、6p12-p25、7、8q22-q26、9q33-q34、11q、12、13q31-q33、16p11-p13、18q21-q23、19p、19q13、21q、X、1p36、2p11、3p14、4p12-p13、4q33-q34、6q14-q16、8p22-p23、9p21、13q12-q22、17pl2及び18q22-q23から選択される1種又は2種以上の領域の少なくとも一部を検出可能な核酸プローブが固定化されていてもよい。 本発明の他の一つの形態によれば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の予後の診断方法であって、ヒトから採取した染色体を含む被験試料について、ヒト染色体の9p21の欠損又は変異を検出する検出工程を備える方法が提供される。この予後診断方法において、前記検出工程は、前記ヒト染色体上の領域を含むプローブと前記被験試料とをハイブリダイゼーションする工程とすることができる。また、前記検出工程は、アレイCGHを用いる工程とすることができる。さらに、前記検出工程は、p16INK4a遺伝子の欠損又は変異を検出する工程とすることができる。前記検出工程は、p16INK4a遺伝子によってコードされるタンパク質の発現の有無、発現量又は変異を検出する工程としてもよい。 本発明の他の一つの形態によれば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の予後診断用アレイであって、ヒト染色体の9p21を検出するための核酸プローブを固定化したアレイが提供される。 本発明の他の一つの形態によれば、ヒト染色体9p21の少なくとも一部を検出するためのポリヌクレオチドである、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の予後診断用マーカーが提供される。前記ポリヌクレオチドは、p16INK4a遺伝子若しくはその一部又はこれらに相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドとすることができる。 本発明の他の一つの形態によれば、p16INK4a遺伝子によってコードされるタンパク質若しくはその一部又はこれらに対する抗体である、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の予後診断用マーカーが提供される。異なるサブグループのカプランマイヤー解析である。(A)はABC(26症例)とGCB(17症例)のカプランマイヤー解析を示す。(B)はCD5+(33症例)、CD5−CD10+(19症例)およびCD5−CD10−(44症例)のカプランマイヤー解析を示す。p値は、ログランクテストによって得られた。96症例の全体の生存率が解析され、CD5+の生存率がCD5−Cd10+及びCD5−CD10−よりも悪いことが示された(ログランクテスト、p=0.0238)。一方、CD5−CD10+とCD5−CD10−との間には有意な生存率の差がなかった(ログランクテスト、p=0.5045)。46症例について発現プロファイリングが実施され、43症例について生存率が解析され、ABC群の生存率がGCB群よりも悪いことを示した(p=0.0031)。DLBCL症例の階層的クラスターである。46症例(22症例のCD5+、7症例のCD5−CD10+、17症例のCD5−CD10−)が、ローゼンワルドらによって記載あsれた100遺伝子のうちの67遺伝子の発現に基づいてツリービュウソフトウェアによりクラスター化された。各検体の相対的な発現程度を下段に示す。検体は、ABC(左側)及びGCB(右側)の二つのサブグループに区別された。DLBCL症例のゲノムプロファイルの典型的な特徴を示す。二つのCD5−CD10−症例、(A)は、ABC signatureを示し、(B)は、GCB signatureを示す。注:遺伝子増幅:3p26.3-q12.3, 3q13.33-q29、4q32.1-q35.1, 9p24.3-q22.33, 17p11.2-q21.1, 17q21.32, 17q23.2-q24.2, and 18q;遺伝子欠損:9p21.3 (矢印), 13q14.3-q21.2, 15q21.3, 17p11.2-p13.3, and 17q21.33-q22。9p21の欠損は、p16INK4aを含むBAC RP11-149I2 (矢印参照)においてのみ生じた。(B) 遺伝子増幅:1q21.3-q44, 2p13.2-p25.1, 7, 11q13.5-q25, 15q24.3-q26.3,16, 及び21q; 遺伝子欠損:1p36.22-p36.33, 1p13.1-p31.2,及び13q13.1-q14.3。DLBCLのABC型及びGCB型のゲノム不均衡の特徴を示す。(A)は、ABC群の28症例の、(B)は、GCB群の18症例との染色体不均衡の要約を示す。左側(赤)のラインは欠損を支援し、右側(緑)は、増幅を示す。左側の赤の四角は、ホモ欠損(Log2比 <-1.0)を示し、右側の緑四角は、右側における高度の増幅(Log2比 > +1.0)を示す。区別されるDLBCLサブグループのゲノムワイドな遺伝子不均衡頻度を示す。水平のライン:1番染色体から22番染色体及びX染色体の順で2213 BAC/PAC クローンを示す。各染色体内においては、Ensembl Genome Data Resources of Sanger Center Instituteの情報(November 2004 version)に基づいてpテロメアからqテロメアの順で示す。垂直のライン:増幅と欠損との頻度(%)を示す。 (A)は ABC 群 (28 症例)、 GCB 群 (18 症例)及び ABC群とGCB群との合計(46症例)を示す。 (B)は CD5+群 (36症例), CD5−CD10+ 群 (19 症例)及び CD5−CD10−群 (44 症例)を示す。CD5+ 群及び CD5−CD10+群のゲノム不均衡の特徴は、それぞれABC群及びGCB群のそれに類似していた。また、CD5−CD10−群のゲノム不均衡の領域は、ABC群及びGCB群のそれに類似したパターンを示した。9p21.3の遺伝子欠損、全生存率及びABC群とGCB群とにおけるp16INK4a遺伝子を示す。 (A)は、全症例、ABC症例、CD+症例及びCD5−CD10−症例の9p21.3 (p16INK4a 座)の欠損の有無でのカプラン−マイヤー生存率を示す。(B)は、3症例における9p21の代表的な個別のゲノムプロファイルを示す。ドットは、BAC/PACクローンのlog2比をpテロメアからqテロメアにわたって示し、各プロファイルにおける太線は、欠損領域を示す。MCRは9p領域における最小共通領域を示し、垂直線は、log2比を示す。水平線は、メガベース単位である。log2比<−0.2からlog2比が<+0.2の範囲を示す。(C)ABC群及びGCB群におけるp16INK4a 遺伝子の発現の比較を示す。統計的有意差は、マン−ウィットニーUテストにより算出した。 本発明は、ヒトから採取した染色体を含む被験試料中のヒト染色体の増幅領域及び/又は欠損領域に基づいてDLBCLの病型を診断することを特徴としている。本発明によれば、DLBCL罹患ヒト個体から採取した染色体を含む被験試料中のヒト染色体の増幅領域及び/又は欠損領域を検査することによってDLBCLの病型を簡易に診断できる。DLBCLの病型としては発現解析によって既により悪性度の高いABC型とGCB型とに分類されているが、本発明によれば、これらの病型を容易に診断できる。なお、本発明において、病型の診断ないし判定とは、DLBCL患者がABC型であるかGCB型であるかを判断すること又はDLBCL患者がCD5+型であるかCD5−CD10+型であるかを判断するものである。こうした判断は、判断対象となる病型のうち一方の病型において特徴的な増幅領域及び/又は欠損領域を有しているか否かあるいは一方の病型に高頻度な領域の検出数に基づくことができる。本発明は、診断方法、アレイの形態で実施することができる。 また、本発明は、ヒトから採取した染色体を含む被験試料中のヒト染色体の9p21の欠損又は変異に基づいてDLBCLの予後を診断することを特徴としている。本発明によれば、DLBCLの予後診断を簡易に、また精度よく実施できる。予後診断により、治療法等についてより適切な選択が可能となる。なお、本発明において予後の診断ないし判定とは、「予後良好」か「予後不良」かのいずれかを判断するものである。「予後良好」とは、2つの病型のDLBCL患者群間でカプランマイヤー曲線を比較したとき、ログランクテストのp値が0.05以下の有意差をもって生存率がよい患者群を示すものとすることができる。また、「予後不良」とは、カプランマイヤー曲線を比較したログランクテストのp値が0.05以下の有意差で生存率が悪い患者群を示すものとすることができる。ヒト染色体の9p21は、p16INK4a遺伝子に対応しているため、当該遺伝子の発現の有無や、発現量や変異を検出することによりDLBCLの予後を診断することもできる。本発明は、診断方法、アレイ、診断用マーカーの形態で実施することができる。 以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。(DLBCLの病型の診断方法) DLBCLの病型を診断するための指標となる染色体の増幅領域及び欠損領域とは、予め発現解析等により病型が診断されたDLBCL罹患ヒト個体から採取した染色体含有試料を利用して決定することができる。指標となる増幅領域及び欠損領域を決定するには、アレイCGHを利用することが好ましい。なお、以下の説明において、高頻度の増幅及び高頻度の欠損の語については、後述する実施例に詳細な定義がなされている。 DLBCLのABC型であると判定するのに有用な増幅領域としては、後述する実施例の表3及び図5に示すゲノム不均衡の頻度グラフからABC型に特徴的な増幅領域が挙げられる。例えば、ヒト染色体の3、8q21-q26、11q21-q25、16p11-p13、16q22-q24、18、19q13及びXから選択される1種又は2種以上の領域が挙げられる。これらの領域は、ABC型において高頻度の増幅領域であるからである。なかでも、3p23-q28、18q11.2-q23及び9q13.41-q13.43から選択される1種又は2種以上の領域はさらに高頻度若しくはABC型に特徴的である。さらに、3q23-q28はABC型に特徴的な増幅領域である。 また、DLBCLのABC型であると判定するのに有用な欠損領域としては、後述する実施例の表3及び図5に示すゲノム不均衡の頻度グラフからABCに特徴的な欠損領域が挙げられる。例えば、ヒト染色体の2p11、6q12-27、8p22-p23、9p21及び17pから選択される1種又は2種以上が挙げられる。これらの領域は、ABC型において高頻度の欠損領域であるからである。なかでも、6q22.31-q24.1及び9p21.3から選択されることが好ましい。さらには、ヒト染色体の9p21.3である。 一方、DLBCLのGCB型であると判定するのに有用な増幅領域としては、ヒト染色体の1q22-32、2p14-p24、5p12-pl5、5q15-q31、6p12-p25、7、8q22-q26、9q33-q34、11q、12、13q31-q33、16p11-p13、18q21-q23、19p、19q13、21q及びXから選択される1種又は2種以上が挙げられる。これらの領域は、GCB型において高頻度の増幅領域であるからである。なかでも、1q21.1-q23.3、1q31.1-q42.13、2p15-pl6.1、7q22.1-q36.2及び12q13.1-q14が選択されることが好ましく、より好ましくは、7q22-q36である。 また、DLBCLのGCB型であると判定するのに有用な欠損領域としては、ヒト染色体の1p36、2p11、3p14、4p12-p13、4q33-q34、6q14-q16、8p22-p23、9p21、13q12-q22、17pl2及び18q22-q23から選択される1種又は2種以上が挙げられる。これらはGCB型において高頻度の欠損領域であるからである。 さらに、DLBCLのCD5+型であると判定するのに有用な増幅領域としては、ヒト染色体の3、6p22-p25、7p22-q31、8q24、11q22-q25、12、16p13-q21、18、19及びXから選択される1種又は2種以上が挙げられる。好ましくはヒト染色体3である。また、同様に有用な欠損領域としては、ヒト染色体の1p36、2p11、6q14-q27、8p23、9p21、15q13-q14及び17p11-p13が挙げられる。好ましくは、ヒト染色体の9p2である。本発明者らによれば、DLBCLのABC型とCD5+型におけるゲノム不均衡から、ABC型であるとき、CD5+型との関連付けが可能である場合があるといえる(特に、アジア人、なかでも日本人について)。したがたって、ABC型であるときには、CD5+型であると肯定的に判定するようにしてもよい。 また、DLBCLのCD5−DC10+型であると判定するのに有用な増幅領域としては、ヒト染色体上の1q、2p13-p25、6p21-p25、7、8q22-q24、9q33-q34、12、13q31-q33、15q、16p13、19q13.3-13.4及びXから選択される1種又は2種以上が挙げられる。また、ヒト染色体の7q22-q36、12q13-q14及び17p13も好ましい。また、同様に有用な欠損領域としては、ヒト染色体の1p36、1p22、2p11、3p14、4p、6q13-q27、9p21及び13q14-q21が挙げられる。また、本発明者らによれば、DLBCLのGCB型とCD5−DC10+型におけるゲノム不均衡から、GBC型であるとき、CD5−DC10+型との関連付けが可能である場合があるといえる(特に、アジア人、なかでも日本人について)。したがって、ABC型であるときには、CD5−CD10+型であると肯定的に判定するようにしてもよい。 これらの染色体上における増幅領域及び欠損領域を検出するには、各種方法を採用することができる。たとえば、DLBCLに罹患したヒト個体から採取される染色体含有被験試料とこれらの染色体上の各種領域とハイブリダイズするプローブを用いたハイブリダイゼーションにより検出することができる。症例等からの核酸試料としては、患者のリンパ腫標本などから標準的なDNA抽出法等により取得することができる。一方、これらの増幅や欠損を検出することができるプローブとしては、こうした染色体上の領域の少なくとも一部とハイブリダイズするものであればよい。たとえば、プローブとしては、染色体領域に対応したBACクローン及び/又はPACクローンあるいはこれを鋳型としてDOP−PCRやアダプターPCR法によりクローン化したゲノムDNAを増幅して用いることができる。また、増幅領域または欠損領域に対応する遺伝子が特定される場合には、当該遺伝子を含むBAC/PACクローンまたはこれを鋳型としてPCR法を利用してクローン化したゲノムDNAを用いることもできる。被験試料とプローブとのハイブリダイゼーションの形態は、特に限定されない。液相反応であっても、ビーズや基板などの固相担体を用いた方法であってもよい。好ましくは、DNAプローブをチップやビーズなどの固相担体に固定したものを用いることができる。染色体上の特定領域の増幅や欠損の検出は、実施例におけるアレイCGH法に準じてDNAアレイを作成し、実施することができる。 本診断方法において、こうした染色体上の増幅領域及び欠損領域の検出は、DLBCL罹患ヒト個体の染色体上の所定領域について所定のプライマーを利用したPCR法を実施し、PCR産物の取得の有無やその同定によって検出することも可能である。プライマーは、p16遺伝子等の配列に基づいて設計することができる。プライマーの塩基長は、好ましくは、15〜40塩基、望ましくは15〜30塩基である。ただし、LA(longaccurate)PCRを行う場合には、少なくとも30塩基とすることが好ましい。なそ、センス鎖とアンチセンス鎖が互いにアニールしないように、また、ヘアピン状構造の形成を回避できるような塩基配列を選択することが好ましい。さらに、本診断方法において、染色体上の増幅領域および欠損領域の検出は、これらの染色体領域に含まれる遺伝子の発現量に基づくこともできる。すなわち、各染色体領域の遺伝子の発現量が健常者の生体試料として比較して有意に多いか又は少ないかで病型を判断することも可能である。なお、この場合、発現量が有意に多いとは、健常者の同一遺伝子の発現量と比較して10%以上、好ましくは、30%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上、一層好ましくは100%以上である。また、発現量が有意に少ないとは、健常者の同一遺伝子の発現量と比較して60%以下、好ましくは50%以下、さらに好ましくは20%以下、一層好ましくは10%以下である。 対象となる各遺伝子は公知の方法によって容易に取得することができる。たとえば、cDNAライブラリを形成して、公知の塩基配列に基づいて作成したDNAプローブを用いて各cDNAを単離することができる。また、cDNAの塩基配列に基づいたプライマーを用いてmRNAを鋳型としてRT−PCR法によって必要量のcDNAを取得してもよい。 遺伝子の発現量に基づく解析は、ヒトから採取した試料につき公知の方法で実施することができる。たとえば、in situ ハイブリダイゼーション、ノザンブロッティング、ドットブロット、RT−PCR、real-Time PCR、DNAアレイによる方法などを用いることができる。 本診断方法において、染色体上の増幅領域および欠損領域を検出するには、これらの領域に対応する遺伝子によってコードされるタンパク質の発現の有無、発現量又は変異を検出することによってもよい。このためには、例えば、こうしたタンパク質に対して特異的な抗体を用いることができる。抗体としては、ポリクローナル抗体やモノクローナル抗体を用いることができる。抗体分子又はその一部であってもよい。このような抗体は、例えばポリクローナル抗体の場合には、タンパク質やその一部断片を免疫原として動物を免役した後、血清から得ることができる。あるいは、上記の真核細胞用発現ベクターを注射や遺伝子銃によって、動物の筋肉や皮膚に導入した後、血清を採取することによって作製することができる。動物としては、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ニワトリなどが用いられる。また、モノクローナル抗体は、公知のモノクローナル抗体作製法(「単クローン抗体」、長宗香明、寺田弘共著、廣川書店、1990年;"Monoclonal Antibody" James W. Goding, third edition, Academic Press, 1996)に従い作製することができる。 抗体は、適宜標識物質によって標識化されていてもよい。標識物質は、酵素、放射性同位体または蛍光色素を使用することができる。酵素としては、例えば、特に限定しないで、通常のEIAに用いられる酵素、例えば、ペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、グルコース−6−リン酸化脱水素酵素、リンゴ酸脱水素酵素等を用いることもできる。また、酵素阻害物質や補酵素等を用いることもできる。これら酵素と抗体との結合は、マレイミド化合物等の架橋剤を用いる公知の方法によって行うことができる。基質としては、使用する酵素の種類に応じて公知の物質を使用することができる。蛍光色素としては、フルオレッセンスイソチオシアネート(FITC)やテトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)等の通常の蛍光抗体法に用いられるものを使用することができる。 こうした抗体を用いてタンパク質の発現量等を検出するには、組織あるいは細胞染色などの免疫染色、競合型又は非競合型による放射免疫測定法(RIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、ルミネッセント免疫測定法(LIA)、酵素免疫測定法(EIA、ELISA)等の各種検出方法による測定方法を用いることができる。なお、こうした測定方法における抗原抗体反応は、液相で行っても固相で行ってもよい。検出には、抗原抗体反応産物が分離されていることが好ましい。このためには、例えば、クロマトグラフィーやビーズやプレートなどの固相担体を用いてもよい。また、ウエスタンブロッティングの手法を用いてもよい。さらに、ELISA法などを用いることができる。さらには、抗体を基板などの固相担体に固定化したアレイを用いることでもできる。 なお、この態様によれば、タンパク質若しくはその一部又はこれらに対する抗体を含むDLBCLの病型の診断用のマーカーが提供される。特に、抗体は、こうしたタンパク質を検出するための検出試薬として好ましい。また、この態様によれば、こうした抗体を含むDLBCLの病型診断用キットが提供される。本発明の診断キットは、抗体や標識化抗体を液相中に含むものであってもよく、あるいは抗体や標識化抗体を固相担体に結合したものであってもよい。また、固定化された抗原又はその一部を含んでいてもよい。診断用キットは、抗体が酵素で標識されている場合には、その基質を含んでいてもよい。さらに、固相担体を含むものの場合には、固相への非結合分子を洗浄除去するための洗浄液を含んでいてもよい。このほか、一般に抗体を含む診断用キットに含まれることのできる要素を含むことができる。(DLBCLの病型の診断用の核酸プローブ) 本発明の核酸プローブは、DLBCLの病型を診断するための指標となる染色体の増幅領域及び欠損領域を検出可能な核酸プローブを含んでいる。こうした核酸プローブによれば、これらの領域の増幅や欠損をハイブリダイゼーションを用いて容易に検出することができる。こうした核酸プローブは、例えば、表3や図5に示すゲノムワイドな染色体不均衡グラフにおいて病型に特徴的な領域を検出可能であればよい。すなわち、これらの領域を含むBAC/PACクローンあるいはこれらから得られたDNAをプローブとして利用できる。 具体的には、既に説明したABC型のDLBCLにおけるヒト染色体上の増幅領域及び欠損領域から選択される1種又は2種以上の領域を検出可能なプローブであり、より具体的には、これらの領域を含有するBAC/PACクローンまたはこれらから得られるゲノムDNAである。ABC型を判定するのに適したプローブは、すでに診断方法において説明したのと同様である。どの領域を含むDNAをプローブとして用いるかは、たとえば、所定範囲(好ましくはゲノムワイドな範囲)のヒト染色体に由来する核酸プローブを固定化したアレイに対して前記ABC型のDLBCL罹患ヒト個体から採取した染色体を含む被験試料を供給し核酸ハイブリダイゼーションを実施して前記核酸プローブの固定部位において得られる蛍光強度のlog2比値に基づいて所定の上下の閾値を設定し、該閾値に対する前記log2比値の大小に基づいて選択した核酸プローブを含むこともできる。例えば、後述する実施例に示すように、蛍光強度のlog2比の閾値を+0.2から−0.2に設定し、この閾値を基準として蛍光強度log2比の大小で低レベルの増幅、高レベルの増幅、低レベルの欠損及び高レベルの欠損を定義することができる。 また、既に説明したGCB型のDLBCLにおけるヒト染色体上の増幅領域及び欠損領域から選択される1種又は2種以上の領域を検出可能なプローブであり、より具体的には、これらの領域を含有するBAC/PACクローンまたはこれらから得られるゲノムDNAである。GCB型を判定するのに適したプローブは、すでに診断方法において説明したのと同様である。一方、所定範囲(好ましくはゲノムワイドな範囲)のヒト染色体に由来する核酸プローブを固定化したアレイに対して前記GCB型のDLBCL罹患ヒト個体から採取した被験試料を供給し核酸ハイブリダイゼーションを実施して前記核酸プローブの固定部位において得られる蛍光強度のlog2比値に基づいて所定の上下の閾値を設定し、該設定した閾値に対する前記log2比値の大小に基づいて選択した核酸プローブを含むこともできる。 さらに、既に説明したCD5+やCD5+CD10−を判定するのに有用な増幅領域及び欠損領域から選択される1種又は2種以上の領域を検出可能な核酸プローブであってもよい。 本発明の核酸プローブとしては、DLBCLの2つの病型であるABC型とGCB型とを判定できる核酸プローブセットであることが好ましい。ABC型判定用としては、例えば、ヒト染色体の3、8q21-q26、11q21-q25、16p11-p13、16q22-q24、18、19q13、X、2p11、6q12-27、8p22-p23、9p21、17pから選択される1種又は2種以上の領域の少なくとも一部を検出可能な核酸プローブを用いることができる。また、GCB型判定用としては、ヒト染色体の1q22-32、2p14-p24、5pl2-pl5、5q15-q31、6p12-p25、7、8q22-q26、9q33-q34、11q、12、13q31-q33、16p11-p13、18q21-q23、19p、19q13、21q、X、1p36、2p11、3p14、4p12-p13、4q33-q34、6q14-q16、8p22-p23、9p21、13q12-q22、17pl2及び18q22-q23から選択される1種又は2種以上の領域の少なくとも一部を検出可能な核酸プローブを用いることができる。 また、本発明の核酸プローブとしては、発現解析用プローブも含まれる。こうしたプローブとしては、所定の遺伝子由来の核酸試料に対して特異的にハイブリダイズすればよく、遺伝子に対して完全に相補的である必要はない。このような多少変異したポリヌクレオチドは、部位特異的変異(Current protocols in Molecular Biology,Ausubelら編,(1987)John Wiley&Sons,第8.1-8.5章)、PCR(Current protocols in Molecular Biology,Ausubelら編,(1987)John Wiley&Sons,第6.1-6.4章)、通常のハイブリダイゼーション(Current protocols in Molecular Biology,Ausubelら編,(1987)John Wiley&Sons,第6.3-6.4章)等により得ることができる。プローブはストリンジェント(stringent)な条件下で遺伝子由来の核酸試料とハイブリダイゼーションする。ここで、ストリンジェントな条件とは、プローブと前記核酸試料との選択的かつ検出可能な特異的結合を可能とする条件である。ストリンジェント条件は、塩濃度、有機溶媒(例えば、ホルムアミド)、温度、およびその他公知の条件によって定義される。すなわち、塩濃度を減じるか、有機溶媒濃度を増加させるか、またはハイブリダイゼーション温度を上昇させるかによってストリンジェンシー(stringency)は増加する。例えば、ストリンジェントな塩濃度は、通常、NaCl約750mM以下およびクエン酸三ナトリウム約75mM以下、より好ましくはNaCl約500mM以下およびクエン酸三ナトリウム約50mM以下、最も好ましくはNaCl約250mM以下およびクエン酸三ナトリウム約25mM以下である。ストリンジェントな有機溶媒濃度は、ホルムアミド約35%以上、最も好ましくは約50%以上である。ストリンジェントな温度条件は、約30℃以上、より好ましくは約37℃以上、最も好ましくは約42℃以上である。その他の条件としては、ハイブリダイゼーション時間、洗浄剤(例えば、SDS)の濃度、およびキャリアーDNAの存否等であり、これらの条件を組み合わせることによって、様々なストリンジェンシーを設定することができる。なお、上記のハイブリダイゼーション条件は単なる例示であり、当業者であれば、プローブのヌクレオチド配列、濃度、及び長さ、反応時間、反応温度、試薬濃度等の条件を考慮して、適当なハイブリダイゼーション条件を設定することができる。 なお、プローブは、必要に応じて適宜標識されていてもよい。標識は、ラジオアイソトープ(RI)法または非RI法によって行うことができるが、非RI法を用いることが好ましい。非RI法としては、蛍光標識法、ビオチン標識法、化学発光法等が挙げられるが、蛍光標識法が挙げられる。(DLBCLの病型の診断用の核酸プローブが固相担体に固定化した固定化体) 本発明によれば、各種の核酸プローブを固相担体に固定化した固定化体も提供される。固相担体は、典型的には、スライドガラスなど平坦な基板状体やビーズなどの粒状体が挙げられる。プローブの固定形態は特に限定しないで、共有結合性及び/又は静電的、疎水性相互作用等の非共有結合性の各種の結合による固定形態が包含される。なお、こうした核酸プローブを固定化した固相担体は、典型的にはCGHアレイと称されるDNAアレイである。こうした固定化体に適用される核酸プローブは、本発明の診断方法において用いられる核酸プローブのすべての態様を含んでいる。(DLBCLの病型診断用キット等) 以上のことから、DLBCLの病型診断には、ABC型およびGCB型に関連付けられるヒト染色体上の増幅領域もしくは対応遺伝子および欠損領域もしくはその対応遺伝子を検出可能に、これら領域の少なくとも一部あるいはこれと相補的な塩基配列を有する核酸プローブを病型診断用マーカーとして好ましく用いることができる。また、当該領域や対応遺伝子を増幅可能なプライマー(セット)等も病型診断用マーカーとして用いることができる。さらに、こうした核酸プローブを固相担体に固定化した固定化体(アレイなど)をDLBCLの予後診断に好ましく用いることができる。さらに、病型診断用マーカーは、ヒト染色体上の増幅領域や欠損領域の対応遺伝子によってコードされるタンパク質若しくはその一部又はこれらに対する抗体、該抗体を固相担体に固定化した固定化体であってもよい。また、本発明によれば、こうした病型診断用プローブ、プライマー(セット)、抗体、アレイなどの少なくとも1つを含む病型診断用キットも提供される。(DLBCLの予後の診断方法) 本発明の予後の診断方法は、ヒトから採取した被験試料について、ヒト染色体9p21の欠損又は変異を検出する検出工程を備えている。9p21に欠損がある場合には、DLBCLの悪性度が高く、予後が不良であるからである。ヒト染色体9p21の欠損を検出するには、すでに説明したように、この染色体領域に対応するBAC/PACクローンまたはこのクローンから取得したゲノムDNA等などのプローブとのハイブリダイゼーションを用いることができる。この場合、アレイCGHなどのDNAアレイを用いることができる。また、PCR法による部位特異的増幅によって検出することができる また、9p21の遺伝子であるp16INK4a遺伝子についてその欠損や変異をハイブリダイゼーション等によって直接検出することもできるし、あるいは、PCR法、RT-PCR法、ノザンブロッティング、Real-Time PCR法などを利用した発現解析によって検出することもできる。発現解析による場合、被験試料中の当該遺伝子の発現量が健常者の発現量よりも有意に少ない場合、DLBCLにおいて予後不良であると診断することができる。発現量が有意に少ないとは、健常者の同一遺伝子の発現量と比較して60%以下、好ましくは50%以下、さらに好ましくは20%以下、一層好ましくは10%以下である。 さらに、p16INK4a遺伝子によってコードするタンパク質の発現の有無、発現量、変異を検出することによってもよい。たとえば、こうしたタンパク質と特異的に結合する抗体を用いることができる。抗体の取得等についてはすでに説明したのと同様の態様を適用することができる。 以上のことから、DLBCLの予後診断には、ヒト染色体の9p21又はその一部を検出可能に、この領域の少なくとも一部あるいはこれと相補的な塩基配列を有する核酸プローブを予後診断用マーカーとして好ましく用いることができる。プローブは、p16INK4a遺伝子若しくはその一部又はこれらに相補的な塩基配列を有するものであってもよい。また、当該領域や責任遺伝子を増幅可能なプライマー(セット)等も予後診断用マーカーとして用いることができる。さらに、こうした核酸プローブを固相担体に固定化した固定化体(アレイなど)をDLBCLの予後診断に好ましく用いることができる。さらに、予後診断用マーカーは、p16INK4a遺伝子によってコードされるタンパク質若しくはその一部又はこれらに対する抗体または該抗体を固相担体に固定化した固定化体であってもよい。また、本発明によれば、こうしたDBCL予後診断用プローブ、プライマー(セット)、抗体、アレイなどの少なくとも1つを含むDBCL予後診断用キットも提供される。 以下、開示された方法、及び請求の範囲に記載された方法の実施可能性を説明するために実施例を示すが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではなく、本発明の範囲は、請求の範囲の記載された内容に基づき、その均等物も含むより包括的なものとして判断される。(実験方法)(患者及び試料) リンパ節の試料及び臨床データを施設内審査委員会の承認を得たプロトコルにより患者99名(CD5+36例、CD-CD10+19例、CD5-CD10-44例)から得た。CD5+3例はCD10+を有していた。特記すべきことは、一般集団におけるよりも高い比率となった合計36症例のCD5+DLBCLを本疾病の遺伝的状態の評価用に収集したことである。このDLBCL 99例にアレイCGH法を用いてゲノム不均衡の解析を行った。この中の46例(CD5+ 22例、CD5-CD10+ 7例、CD5-CD10-の17例)に引き続き遺伝子発現プロファイリングを行った。また、これらの患者は悪性リンパ腫の既往歴を有していなかった。全てのDLBCL患者には診断後適切な用量のシクロホスファミド、アドリアマイシン、ビンクリスチン、及びプレドニン(CHOP)などの治療薬が投与されが、DNA及びRNA試料は全て、診断時に治療薬が投与される前に腫瘍から採取した。表1に全患者の年齢、病期、パフォーマンスステータス、乳酸脱水素酵素(LDH)、節外病変数、及び診断時の国際予後指標(International Prognostic Index (IPI))のデータを示してある。表1 DLBCLサブグループの臨床的特徴(遺伝子発現プロファイリング) 塩化セシウム遠心法を用いて各試料から全RNAを抽出した。Cy5-又はCy3-を標識した相補的RNA(cRNA)を全RNAからLow RNA Input Amplification Kit(Agilent Technologies, Palo Alto, CA)を用いて合成した。プローブは実験用のCy5-標識cRNA及びコントロールのCy3-標識cRNAのミクスチャーであった。後者はリンパ節過形成の10試料から抽出した全RNAのプールから調製した。ガラススライドマイクロアレイは、財団法人癌研究会の癌研究所のために注文作成された合計21619の遺伝子がスポットされているAgilentオリゴヌクレオチドアレイ(Agilent Technologies)を使用した。プローブをIn Situ Hybridization Kit Plus(Agilent Technologies)を用いて製造者のプロトコルに従いガラススライド上で一晩ハイブリダイズした。ハイブリダイズしたマイクロアレイの蛍光イメージをAgilent社スキャナG2565AA(Agilent Technologies)により取得し、さらにFeature Extractionソフトウェア(Agilent Technologies)を用いて解析し、Cy3-標識コントロールに対する実験用Cy5-標識試料の蛍光比を算出した。全てのフラグが立てられていない(non-flagged)蛍光比は対数変換(底は2)し、クラスタ解析から算出した各遺伝子の中央値を引くことにより中央化した。階層的クラスタアルゴリズムをCluster and TreeViewソフトウェア(http://rana.lbl.gov/EisenSoftware.htm)を利用して、これらの遺伝子の発現レベルに従いDLBCLの症例に用いた(Eisen MB, Spellman PT, Brown PO, et al. Cluster analysis and display of genome-wide expression patterns. Proc Natl Acad Sci U S A. 1998; 95:14863-1486813。Rosenwald et al(2002;http://llmpp.nih.gov/DLBCL)によってABC及びGCBグループのクラスタリング用に特定された100の遺伝子の中で、67種がクラスタ解析に利用可能であった(Rosenwald A, Wright G, Chan WC, et al. The use of molecular profiling to predict survival after chemotherapy for diffuse large-B-cell lymphoma. N Engl J Med.2002; 346: 1937-1947)8。これらの67の遺伝子とは、BARD1、PIK3CG、LRMP、Hs.1098、BCL6、HDAC1、MYBL2、MME (CD10)、STAG3、LMO2、APS、Hs.151051、ADPRT、ITPKB、REL、FLJ20094、Hs.211563、MEF2B、CD44、Hs.75765、IL6、PTPN2、PTPN12、BMI1、Hs.128003、BACH2、HIVEP1、CFLAR、APAF1、RYK、EDG1、KIAA0874、Hs.153649、MADH4、PTPN1、Hs.93213、DCTD、Hs.193857、IL16、SP140、SH3BP5、IRF4 (MUM1)、TLK1、KCNA3、TCL1A、PAK1、Hs.188、CXCR4、SLA、CCND2、TGFBR2、ETV6、SPAP1、PM5、PDIR、IGHM、CD22、Hs.296938、Hs.1565、Hs.83126、MAPKAPK3、RUNX1、Hs.55947、S100A4、TFAP4、IRF2、及びOPA1である。この67の遺伝子を用いて報告されているマイクロアレイデータにクラスタリング解析を実施した。Lymphochipマイクロアレイから得られたDLBCL遺伝子発現プロファイルのデータをhttp://llmpp.nih.gov/DLBCLのサイトの参照資料8に含まれる補足情報から取得した。我々はLymphochipマイクロアレイのデータセットの274のDLBCLがABC及びGCBそして、タイプ3に分けることが可能であることを確認した。上記の67の遺伝子を持つ腫瘍の分布はRosenwald et al8によって報告されている100の遺伝子とほぼ同じであった。(アレイCGH法) ACCアレイスライドバージョン4.0のスライドガラスを用いた以前に報告された方法により、DLBCL症例についてアレイCGH解析を実施した。このアレイは2304種のBAC(細菌人工染色体)とPAC(P-1由来人工染色体)のクローン(BAC/PACクローン)から成り、全ヒトゲノムを約1.3Mb(メガベース)の解像度でカバーしているものである。BACクローンはRP11及びRP13ライブラリから入手し、PACクローンはRP1、RP3、RP4、及びRP5ライブラリから入手した。10ngのBAC/PAC DNAをテンプレートに用いて縮重オリゴヌクレオチド(5’-CCGACTCGAGNNNNNNATGTGG-3’、Nは、A,T,CおよびGのいずれかである。)をプライマーとして用いたPCR(oligonucleotide primed PCR)(Hakan, T. et al., Genomics, 13:718-725, 1992)を行った。増幅は、TaKaRa PCR thermal Cycler MP(Takara、Tokyo、Japan)とExTaqポリメラーゼ(TaKaRa)得られたPCR産物をエタノール沈殿により濃縮し、蒸留水で溶解し、続いて等量のDNAスポッティング溶液DSP0050(MATSUNAMI, Osaka, Japan)を添加し(〜1μg/μl)、インクジェット技術(NGK, Nagoya, Japan)によりロボットでCodeLinkTM活性スライド(Amersham Biosciences, Piscataway, NJ)上にデュプリケートでスポットした。なお、使用したBAC/PACクローンはNIBC(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)及びEnsembl Genome Data Resources(http://www.ensembl.org/)からの情報に基づいて選択した。これらのクローンは小児病院(Children's Hospital)(Oakland Research Institute, Oakland, CA: http://bacpac.chori.org/)のBACPACリリースセンターから入手した。DNA調製、標識、アレイ作製及びハイブリダイゼーションは以前の報告に従って実施した(Ota A, Tagawa H, Karnan S, et al. Identification and characterization of a novel gene, C13orf25, as a target for 13q31-q32 amplification in malignant lymphoma, Cancer Res. 2004; 64: 3087-3095、 Tagawa H, Tsuzuki S, Suzuki R, et al. Genome-wide array-based comparative genomic hybridization of diffuse large B-cell lymphoma: comparison between CD5-Positive and CD5-negative cases. Cancer Res. 2004; 64: 5948-5955)。すなわち、試験DNAおよび対照DNA(各1μg)をDpnIIで消化し、Bio prime DNA Labeling system(Invitrogen Life Technologies, Inc, Tokyo, Japan)により、Cy3-dUTP及びCy5-dUTP(Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ) を用いて標識した。標識化された1μgの試験DNAおよび対照DNAを、50〜100μg(どちらでも同じ結果がでるので50〜100μgとしました:瀬戸)のCot-1 DNA(Life Technologies, Inc., Gaithersburg, MD)と混合し沈殿させて、45μlのハイブリダイゼーション溶液(50vol%ホルムアミド、10%硫酸デキストラン、2x SCC、4%SDS及び10μg/μl tRNA)に再懸濁させた。このハイブリダイゼーション容器を、73℃で5分間加熱してDNAを変性させ、続いて37℃で45分間インキュベートして反復配列のブロッキングがなされるようにした。DNAをスポットしたスライドは、70%ホルムアミド/2xSSCを含む溶液中で73℃で4分間にわたり変性させ、続いて5分づつ、70%、85%、100%冷エタノール中で脱水して風乾させた。緩やかに振動するテーブル上で、湿度調節のために200μlの50%ホルムアミドと2xSSCを含む容器中において48〜66時間のハイブリダイゼーション後、スライドを洗浄(50%ホルムアミド/2xSSC中、50℃で15分間、2xSSC/0.1%SDS中、50℃で30分間、0.1M Na2HPO4、pH8.0の0.1M Na2HPO4、0.1%NP-40により構成されるNP緩衝液中、室温で15分間)を行い、2xSSC中室温ですすぎを行い、最後に室温にてそれぞれ2分づつ70%、85%及び100%エタノール中で脱水して風乾した。スキャニング分析は、アジレントマイクロアレイスキャナー(Agilent Technologies, Palo Alto, CA) によりスキャンし、得られたアレイイメージをGenepix Pro 4.1 (Axon Instruments, Inc., Foster City, CA)により解析した。すなわち、DNAスポットを自動的に分割し、局所的なバックグラウンドを減算して、シグナル強度を決定した。引き続き、2種の色素(Cy3強度/Cy5強度)のシグナル強度の比を各スポットについて計算し、エクセルシート上において染色体における位置の順でlog2比に変換した。このアレイには、健常男性に対する健常男性の同時ハイブリダイゼーションを10回実施し、log2比の正常な変動を明らかにした。蛍光強度が全クローンの平均値の10%未満で、参照群に対する試験群の比の最も極端な1.0からの平均偏差を有し、この健常対照者のデータセットにおいて最大の標準偏差を有する合計で91クローンをさらなる解析から除外した。従って、合計2213クローン(1.3Mbの解像度で2988Mbをカバー)に次の解析を行った。この2213の中の2158クローン(2834Mbをカバー)は染色体1pのテロメアから22qのテロメア由来であった。残る55クローンはX染色体由来であった。 各スポット(2×2191クローン)に測定した蛍光強度のlog2比の値の96%超が+0.2から−0.2までの範囲であったことから、この増幅と欠損のlog2比の閾値をそれぞれ+0.2と−0.2に設定した。低レベルのゲイン/増幅の領域を+0.2から+1.0、ヘテロ接合体のロス/欠損を含む領域を−1.0から−0.2、高レベルのゲイン/増幅を示す領域を>+1.0、ホモ接合体のロス/欠損を示唆する領域を<−1.0のlog2比と定めた。我々は増幅又は欠損の領域の定義を、(a)連続する3クローンが増幅又は欠損を示す、又は(b)1つのクローンが反復して高コピー数の増幅(log2比>+1.0)又はホモ接合体の欠損(log2比<−1.0)を示すこととした11,12。高レベルのゲイン/増幅の領域、及びホモ接合性のロス/欠損の領域も容易に検出され、また低レベルのゲイン/増幅及びヘテロ接合性のロス/欠損の領域も同様であった。(統計解析) DLBCLの各サブグループの全生存率の統計解析をログランク検定により実施した。有意性を示すためP<0.05とした。(アレイCGH解析の統計解析) 2つの患者群(すなわち、ABC群とGCB群)間のゲノム領域に統計的有意差があるかを解析するため、ゲノムの変化をlog2比が+0.2以上のコピー数の増幅、及びlog2比が−0.2以下のコピー数の欠損として規定してデータセットを構築した。増幅(log2比≧+0.2)を示すクローンに「1」、これに対して増幅を示さないクローン(log2比<+0.2)に「0」を各症例のExcelテンプレートに入力した。同様に、欠損を示したクローン(log2比≦−0.2)に「1」、欠損を示さなかったクローン(log2比>−0.2)に「0」を各症例毎のもう1つのExcelテンプレートに入力した。その後、データ解析を次の目的、すなわちi)クローン毎の増幅又は欠損の頻度の2群(すなわちABC群とGCB群)間の比較、ii)1つのクローンの増幅又は欠損を示す症例と増幅又は欠損を示さない症例間の全生存率の比較をするために実施した。前者の比較にはフィッシャーの直接確率検定を用い、後者の2群間の生存曲線の比較にはログランク検定を用いた。(遺伝子発現の統計解析) ABC群とGCB群間のp16INK4a発現レベルの有意差の検出にマンホイットニーのU検定を用いた。統計解析は全てSTATA ver.8統計解析パッケージ(StataCorp, College Station, TX)により実施した。(結果)1.CD5+、CD5-CD10+、及びCD5-CD10-のDLBCLの遺伝子発現プロファイリング:ABC DLBCLとGCB DLBCLの関連性 DLBCLの種類は遺伝子発現プロファイリング及び細胞表面フェノタイピング(cell surface phenotyping)によって特徴付け及び分類が可能である。臨床的に、ABC DLBCLはGCB DLBCLよりも悪性の挙動を示す。CD5+ DLBCL症例の生存期間は短く、CD10+ DLBCLは比較的緩慢である(図1)。CD5及び/又はCD10マーカーを有するDLBCLがABC及びGCBサブグループと関連があるかどうかを決定するため、合計DLBCL46例(CD5+ 22例、CD5-CD10+ 7例、CD5-CD10- 17例)に遺伝子発現プロファイリングを行った。この結果から、これら46例はABC群又はGCB群のどちらかに明確に分けられることが示され(図2)、また特に重要なことに、CD5+及びCD5-CD10+表現型がそれぞれABC及びGCBサブグループと密接に関連することが示された(表2)。CD5+DLBCL 22例中、19例がABC signatureを示し、3例のみ(CD5+CD10+が2例、CD5+CD10-が1例)がGCB signatureによって特徴付けられた(P=0.0009)。これとは著しく対照的に、CD5-CD10+ DLBCLの7例全てがGCB signatureを示した(P=0.0031)。CD5-CD10- DLBCLの症例では、ABC(9例)又はGCB(8例)のsignatureが示されるという混合した結果が得られ(P=0.5335)、これが異質性の疾患であることが示唆された。表2 遺伝子プロファイルによるサブグループ間の関連性2.ABC DLBCL及びGCB DLBCLのゲノム不均衡 ABC及びGCBのDLBCLは分子的に異なるサブグループであることが以前に証明されているため6-8、我々は最初にこれらのサブグループのゲノムプロファイルを比較した。CD5-CD10-の2症例のABC signatureを有する1例とGCB signatureを有する1例の典型的な2つのゲノムプロファイルを図3に示す。 ABC群(≧6例)における高頻度のゲノム不均衡(コピー数の変化)は、染色体3、8q21-q26、11q21-q25、16p11-p13、16q22-q24、18、19q13、Xの増幅、及び染色体2p11(Igk遺伝子座)、6q12-27、8p22-p23、9p21、17pの欠損であった。GCB群(≧4例)における高頻度のゲノム不均衡は、1q22-32、2p14-p24、5pl2-pl5、5q15-q31、6p12-p25、7、8q22-q26、9q33-q34、11q、12、13q31-q33、16p11-p13、18q21-q23、19p、19q13、21q、Xの増幅、及び1p36、2p11、3p14、4p12-p13、4q33-q34、6q14-q16、8p22-p23、9p21、13q12-q22、17pl2、18q22-q23の欠損であった。ゲノムの高頻度の増幅及び欠損とは各群の20%以上と定義した。ABC群はより高頻度の3p23-q28、18q11.2-q23、9q13.41-q13.43の増幅、及び6q22.31-q24.1と9p21.3の欠損というゲノム的特徴を有していた。GCB群はより高頻度の1q21.1-q23.3、1q31.1-q42.13、2p15-pl6.1、7q22.1-q36.2及び12q13.1-q14の増幅というゲノム的特長を有していた(フィッシャーの直接確率法、P<0.05)。ABC及びGCB DLBCLのゲノム不均衡のイデオグラムを図4A-Bに、ABC及びGCB DLBCLの各群のゲノム不均衡のゲノムワイドな頻度を図5Aに示してある。我々はABC及びGCB DLBCLのゲノム不均衡のパターンが明確に異なることを見出した。例えば、染色体3q23-q28の増幅はABC群の25〜36%に認められ、GCB群では認められなかったが(0%)、7q22-q36の増幅はGCB群の50〜61%に認められ、ABC群では遥かに少なかった(<5%)。CD5の発現はABC及びGCB群に認められたゲノム不均衡に影響を及ぼさなかったことは注目すべきである。本研究でABC群に検出されたゲノム不均衡はCD5で分類される症例数が優勢であることを反映している。すなわち、ABC群の67%(28例中の19例)はCD5+型であったが、ABC群内のCD5+及びCD5−-間のゲノム不均衡の頻度と領域は同様であった。ABC群内のCD5+及びCD5-間のゲノム不均衡の領域又は頻度のどちらにも有意差は認められなかった(データは示さず)。1つの典型例は9p21の欠損である。この欠損はABC群のみに見出され、このABC群内でCD5+DLBCL 19例中の13例(68%)、及びCD5- DLBCL 9例中の6例(66%)にこの欠損が認められた(P=0.999)。3.CD5+、CD5-CD10+、及びCD5-CD10-DLBCLのゲノム不均衡我々はCD5+(36例)、CD5-CD10+(19例)、及びCD5-CD10-(44例)の群に増幅及び欠損領域の頻度を検討した。CD5+群における高頻度のゲノム不均衡(≧8例)は染色体3、6p22-p25、7p22-q31、8q24、11q22-q25、12、16p13-q21、18、19、Xの増幅、及び1p36、2p11、6q14-q27、8p23、9p21、15q13-q14、17p11-p13の欠損であった。1q21-q32、7p22-q36、及び12の増幅はGCB群の特徴であったが、これらの増幅はCD5+群の≦20%にも認められた。 CD5−CD10+群における高頻度のゲノム不均衡(≧4例)は、1q、2p13-p25、6p21-p25、7、8q22-q24、9q33-q34、12、13q31-q33、15q、16p13、19ql13.3-13.4、Xの増幅、及び1p36、1p22、2p11、3p14、4p、6q13-q27、9p21、13q14-q21の欠損であった。CD5+及びCD5-CD10+サブグループ間の比較から、CD5+ DLBCLでは染色体3の増幅及び染色体9p21の欠損がCD5-CD10+DLBCLよりも高頻度に認められたが、CD5-CD10+DLBCLでは7q22-q36、12q13-q14及び17p13の増幅がCD5+DLBCLよりも高頻度に認められた(表3)。CD5+及びCD5-CD10+ DLBCLの各群のゲノム不均衡のゲノムワイドな頻度を図5Bに示してある。特に重要なことに、これらのCD5+及びCD5-CD10+DLBCLのゲノムプロファイルの特徴は、それぞれABC及びGCB DLBCLのそれと極めて類似している(図5A-B)。CD5+群とABC群間、又はCD5-CD10+群とGCB群間のどちらにも、ゲノム不均衡の領域又は頻度に有意差は認められなかった(表3)。表3 特徴的なゲノム不均衡と頻度の比較表3つづき表4 増幅/欠損領域とBACクローン等との関係表4つづき表4つづき表4つづき CD5−CD10−群(≧9例)における高頻度なゲノム不均衡は、1q21-q42、3q21-q29、5p13-p15、6p21-p25、7、11q22、12q13-q14、18、19q13.1-q13.4、Xの増幅、及び2p11、3p14.2、6q12-q27、9p21.3、15q14-q15、17p11-p13の欠損であった。CD5-CD10-DLBCLのゲノム不均衡は、これらの増幅及び欠損がCD5+及びCD5―CD10+群において認められたため、混合型であった。さらに、CD5−CD10− DLBCLのゲノム不均衡の頻度と領域は、図5に示されている通り「ABCプラスGCB」群のそれと極めて類似していた。CD5−CD10+と「ABCプラスGCB」群間にゲノム不均衡の領域又は頻度に有意差は認められなかった(データは示していない)。これらの知見は、CD5−CD10− DLBCLがABC及びGCB群に均等に分布していたことを示した遺伝子発現プロファイリングの結果と良好な相関を示す。4.強力な予後マーカーとしての9p21(p16INK4a遺伝子座)の欠損の同定最後に、我々はアレイCGH法によって検出された予後変数の同定を試み、9p21の欠損が患者の生存に有害な影響を与えたことを見出した。9p21の欠損を有する37例はこの欠損を有さない59例よりも生存が有意に低かった(ログランク検定、P=0.0003)(図6A)。 9p21の欠損はABC群(19例)でGCB群(5例)よりも有意に多く検出された(フィッシャーの直接確率検定、P=0.0147)。9p21が欠損しているABC症例の生存はこのような欠損をもたないABC症例よりも有意に劣っていたが(ログランク検定、P=0.0138)、GCB群の同じ領域の欠損は生存に影響を及ぼさなかった。同様に、9p21を欠損しているCD5+症例の生存は、この欠損を持たない症例よりも有意に劣っていた(ログランク検定、P=0.0048)。従って、我々は9p21(p16INK4a遺伝子座)の欠損がDLBCLの最も悪性の型を示すことを立証することができた。CD5-CD10-DLBCL症例の中で、9p21の欠損は生存にマイナスの影響を及ぼす傾向があったが、これは統計的有意性に達しなかった(ログランク検定、P=0.0684)。 図6Bに示されている通り、9pの欠損が最小である共通の領域は9p21.3の2.2Mb以内に位置していた。9p21のホモ接合性の欠損を示唆する証拠が6例に認められたが(log2比<−1.0として定義、CD5+及びCD5-CD10-の各群に3例)、一方でどのGCB又はCD5-CD10+の症例にも9p21.3にホモ接合性の欠損を示唆する徴候は示されなかった。9p21の欠損を有する37例中の13例が一つのBAC、pl6INK4a腫瘍抑制遺伝子を含むRP11-149I2を取り囲むゲノムの制限部位に欠損を示した。ABC群におけるpl6INK4aの発現レベルはGCB群よりも有意に低かった(図6C)(マンホイットニーのU検定、P=0.001)。これらの結果はABC DLBCL症例において9p21.3の欠損の頻度が高かったという知見とよく一致する。(考察) 一部の研究者らは、従来のCGH法又はアレイCGH法を用いて検出したDLBCLにおけるゲノムの変化を報告している(Monni O, Joensuu H, Franssila K, Knuutila S. DNA copy number changes in diffuse large B-cell lymphoma-comparative genomic hybridization study. Blood. 1996; 87:5269-5278、 Rao PH, Houldsworth J, Dyomina K, et al. Chromosomal and gene amplification in diffuse large B-cell lymphoma. Blood. 1998; 92: 234-240、 Berglund M, Enblad G, Flordal E, et al. Chromosomal imbalances in diffuse large B-cell lymphoma detected by comparative genomic hybridization. Mod Pathol, 2002; 15: 807-816、. Bea S, Colomo L, Lopez-Guillermo A, et al. Clinicopathologic significance and prognostic value of chromosomal imbalances in diffuse large B-cell lymphomas. J Clin Oncol. 2004; 22: 3498-3560、Martinez-Climent JA, Alizadeh AA, Segraves R., et al. Transformation of follicular lymphoma to diffuse large cell lymphoma is associated with a heterogeneous set of DNA copy number and gene expression alterations. Blood. 2003; 101: 3109-3117)。しかし、DLBCLのサブタイプのゲノム比較解析を実施した研究は極めて少ない(Tagawa H, Tsuzuki S, Suzuki R, et al. Genome-wide array-based comparative genomic hybridization of diffuse large B-cell lymphoma: comparison between CD5-Positive and CD5-negative cases. Cancer Res. 2004; 64: 5948-5955、Zang X, Karnan S, Tagawa H, et al. Comparison of genetic aberrations in CD10+diffuse large B-cell lymphoma and follicular lymphoma by comparative genomic hybridization and tissue-fluorescence in situ hybridization. Cancer Sci. 2004; 95:809-814)。 本研究では、我々のアレイCGH法により、ABC及びGCBサブグループ間にゲノム不均衡のパターンの明確な差を検出することが可能であった。ABC DLBCLは3q、18q、19qの増幅、及び6qと9p21の欠損というゲノム的特徴を有し、GCB DLBCLは1q、2p、7q、12qの増幅というゲノム的特徴を有する。従って、これらの結果から、ABC及びGCB群は遺伝的に異なっているという証拠が得られ、これはABC及びGCB DLBCLでは腫瘍が異なるゲノム経路によって発生することを示唆している。 4グループの研究者らが濾胞性リンパ腫(FL)から転化したDLBCLのゲノム不均衡について研究報告を発表している(Martinez-Climent JA, Alizadeh AA, Segraves R., et al. Transformation of follicular lymphoma to diffuse large cell lymphoma is associated with a heterogeneous set of DNA copy number and gene expression alterations. Blood. 2003; 101: 3109-3117、Goff LK, Neat MJ, Crawley CR, et al. The use of real-time quantitative polymerase chain reaction and comparative genomic hybridization to identify amplification of the REL gene in follicular lymphoma. Br J Haematol. 2000; 111: 618-625、Nagy M, Balazs M, Adam Z, et al., Genetic instability is associated with follicle center lymphoma. Leukemia. 2000; 14: 2142-2148、 Hough RE, Goepel JR, Alcock HE, Hancock BW, Lorigan PC, Hammond DW. Copy number gain at 12q12-14 may be important in the transformation from follicular lymphoma to diffuse large B cell lymphoma. Br J Cancer. 2001; 84:499-503)。これらの報告によれば、FLから転化したDLBCLは2p、7p、12p、12qの増幅、及び4qと13qの欠損からなるゲノム不均衡を有している。これらのFLから転化したDLBCLに特徴的なゲノム不均衡はGCB群のそれと類似しているため、FLから転化したDLBCLとGCB DLBCLには、リンパ腫発生の過程におけるゲノム異常のプログラムにある共通のステップが存在する可能性がある。 我々は以前にCD5+及びCD10+ DLBCLが臨床的関連性のあるサブタイプを構成することを報告している。本稿で、我々はCD5+DLBCLがABCの発現とゲノムパターンによって特徴付けられることを初めて報告する。最近、Katzenberger et al.(2003)は新規のCD5+DLBCLを対象とする細胞遺伝及びLOH研究を実施し、CD5+ DLBCLがD13S25遺伝子座及びp16INK4a癌抑制因子の高頻度の欠損を示したことから、CD5+DLBCLはB-慢性リンパ性白血病(CLL)と同じ前駆細胞に由来する可能性があると推測した(Katzenberger T, Lohr A, Schwarz S, et al. Genetic analysis of de novo CD5+ diffuse large B-cell lymphomas suggests an origin from a somatically mutated CD5+ progenitor B cell. Blood. 2003; 101: 699-702)。しかし、CD5+ DLBCLはその起源と経路の両方において、CD5も発現するCLL及びマントル細胞リンパ腫(MC)とは異なっていると考えられる。CLL及びMCLは共に、1p22、6q、9p21、11q22-q23、13q14-q21の欠損という特徴を有するが(症例の30〜50%に認められる)(24. Bentz M, Plesch A, Bullinger L, et al. t(11;14)-positive mantle cell lymphomas exhibit complex karyotypes and share similarities with B-cell chronic lymphocytic leukemia. Genes Chromosomes Cancer. 2000; 27: 285-294、 Schwaenen C, Nessling M, Wessendorf S, et al. Automated array-based genomic profiling in chronic lymphocytic leukemia: development of a clinical tool and discovery of recurrent genomic alterations. Proc Natl Acad Sci U S A. 2004; 101:1039-1044、Kohlhammer H, Schwaenen C, Wessendorf S, et al. Genomic DNA-chip hybridization in t(11;14)-positive mantle cell lymphomas shows a high frequency of aberrations and allows a refined characterization of consensus regions. Blood. 2004;104: 795-801、 Tagawa H, Karnan S, Suzuki R, et al. Genome-wide array-based CGH for mantle cell lymphoma: identification of homozygous deletions of the proapoptotic gene BIM. Oncogene. 2005; 24: 1348-1358)、我々が検討したCD5+ DLBCL症例の10%未満が1p22、11q22-q23、及び13q14-q21の欠損を示し、p16INK4aの欠損のみが共通の特徴であるとみられる。 我々はまた、CD10+ DLBCLがGCBの発現とゲノムパターンによって特徴付けられること示すことができた。我々は以前に、正常な濾胞中心を持つ細胞はCD5-及びCD10+の免疫表現型を有し、BCL2をほとんど発現しないことから、CD10+DLBCLが胚中心前駆細胞に由来する可能性を報告した。最近、Huang et al.(2002)は、我々の結果からも明らかであるように、遺伝子発現プロファイリングを用いて、CD10+DLBCLがGCB signatureによって特徴付けられることを示した(Huang JZ, Sanger WG, Greiner TC, et al. The t(14;18) defines a unique subset of diffuse large B-cell lymphoma with a germinal center B-cell gene expression profile.Blood. 2002; 99: 2285-2290、Iqbal J, Sanger WG, Horsman DE, et al. BCL2 translocation defines a unique rumorsubset within the germinal center B-cell-like diffuse large B-ell lymphoma. A JourPathol. 2004; 165: 159-166)。我々はCD5-CD10- DLBCLが2つのサブタイプ(すなわちCD5+及びCD-CD10+サブタイプ)のゲノム不均衡の混合パターンを示すことを認めた。この結果はCD5-CD10-DLBCLがABC又はGCBグループのどちらにも均等に認められたことを示した遺伝子発現プロファイリングの結果とよく関連しており、CD5-CD10- DLBCLが遺伝的に異質性の疾患であることを示唆している。 9p21(p16INK4a)の欠損は最も侵攻性の疾患を示す特徴であるだろう。我々の症例において特に興味深いのは、9p21を欠損しているABC及びCD5+ DLBCLの症例はこれを欠損していない症例よりも転帰が不良であったことである。9p21の欠損は、従って、DLBCLの最も侵攻性の型を示す可能性のある因子であろう。9p21.3(p16INK4a遺伝子座)の欠損は侵攻性のリンパ腫及び急性リンパ芽球性白血病において多く認められるが、低悪性度のリンパ腫においてはそれほど多くはない(Serrano M, Hannon GJ, Beach D. A new regulatory motif in cell-cycle control causing specific inhibition of cyclin D/CDK4. Nature. 1993; 366: 704-707、Nobori T, Miura K, Wu DJ, et al. Deletions of the cyclin-dependent kinase-4 inhibitor gene in multiple human cancers. Nature. 1994; 368: 753-756、 Koduru PR, Zariwala M, Soni M, et al. Deletion of cyclin-dependent kinase 4 inhibitor genes p15 and p16 in non-Hodgkin's lymphoma. Blood. 1995; 86:2900-2905、 Stranks G, HeightSE, Mitchell P, et al. Deletions and rearrangement of CDKN2 in lymphoid malignancy. Blood.1995; 85: 893-901、 Ogawa S, Hangaishi A, Miyawaki S, et al. Loss of the cyclin-dependent kinase 4-inhibitor (p16; MTS1) gene is frequent in and highly specific to lymphoid tumors in primary human hematopoietic malignancies. Blood. 1995; 86: 1548-1556、 Pinyol M, Cobo F, Bea S, et al. p16(INK4a) gene inactivation by deletions, mutations, and hypermethylation is associated with transformed and aggressive variants of non-Hodgkin's lymphomas. Blood. 1998; 91: 2977-2984)。またCD5+ DLBCLも多くの侵攻性の臨床的特徴又はパラメーターと密接に関連しており、p16INK4aの不活性化と9p21の欠損はCD5+ DLBCLの特徴である可能性が高いが、実際に、CD5+ DLBCLにおける極めて高頻度の9p21の欠損が我々及び他のグループによって報告されている(12. Tagawa H, Tsuzuki S, Suzuki R, et al. Genome-wide array-based comparative genomic hybridization of diffuse large B-cell lymphoma: comparison between CD5-Positive and CD5-negative cases. Cancer Res. 2004; 64: 5948-5955. 23. Katzenberger T, Lohr A, Schwarz S, et al. Genetic analysis of de novo CD5+ diffuse large B-cell lymphomas suggests an origin from a somatically mutated CD5+ progenitor B cell. Blood. 2003; 101: 699-702)。 要約すると、我々はABC及びGCB DLBCLは遺伝子発現のみが異なっているのではなく、ゲノム不均衡もまた異なっていること、並びにCD5+及びCD5-CD10+DLBCL症例の殆どがABC群及びGCB群にそれぞれ含まれることを示すことができた。さらに、患者の予後に影響するゲノム不均衡を模索する際に、我々は9p21(p16INK4a遺伝子座)の欠損がDLBCLの最も侵攻性の型を示すことを見出した。遺伝子発現プロファイリグとアレイCGH法を併用することで、DLBCLだけではなく、一般の異質性腫瘍に関する知識をさらに深めることが可能である。 本明細書に記載の参考文献に記載の全内容は、引用により本明細書の一部に組み込まれる。産業上の利用の可能性 本発明は、DLBCLの病型や予後の診断に有用である。 ヒトから採取した染色体を含む被験試料中のヒト染色体の増幅領域及び/又は欠損領域を検出する検出工程を備える、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の病型の診断方法。 前記検出工程で検出された前記増幅領域が、ヒト染色体の3、8q21-q26、11q21-q25、16p11-p13、16q22-q24、18、19q13及びXから選択される1種又は2種以上にあるかどうか及び/又は前記欠損領域がヒト染色体の2p11、6q12-27、8p22-p23、9p21及び17pから選択される1種又は2種以上にあるかどうかを指標としてびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の病型がABC型であると肯定的に判定する判定工程を備える、請求項1に記載の診断方法。 前記判定工程は、前記増幅領域がヒト染色体の3p23-q28、18q11.2-q23及び9q13.41-q13.43から選択される1種又は2種以上にあるかどうか及び前記欠損領域がヒト染色体の6q22.31-q24.1及び9p21.3から選択される1種又は2種以上にあるかどうかを指標とする工程である、請求項2に記載の診断方法。 前記判定工程は、前記増幅領域がヒト染色体の3q23-q28及び/又は前記欠損領域がヒト染色体の9p21.3であるかどうかを指標とする工程である、請求項3に記載の診断方法。前記判定工程は、前記病型がABC型であると肯定的に判定されるとき、前記病型がCD5+型であると肯定的に判定する工程である、請求項1〜4のいずれかに記載の診断方法。 前記検出工程で検出された前記増幅領域が、ヒト染色体の1q22-32、2p14-p24、5pl2-pl5、5q15-q31、6p12-p25、7、8q22-q26、9q33-q34、11q、12、13q31-q33、16p11-p13、18q21-q23、19p、19q13、21q及びXから選択される1種又は2種以上にあるかどうか及び/又は前記欠損領域がヒト染色体の1p36、2p11、3p14、4p12-p13、4q33-q34、6q14-q16、8p22-p23、9p21、13q12-q22、17pl2及び18q22-q23から選択される1種又は2種以上にあるかどうかを指標としてびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の病型がGCB型であると肯定的に判定する判定工程を備える、請求項1に記載の診断方法。 前記判定工程は、前記増幅領域がヒト染色体q21.1-q23.3、1q31.1-q42.13、2p15-p16.1、7q22.1-q36.2及び12q13.1-q14から選択される1種又は2種以上にあるかどうかを指標とする工程である、請求項6に記載の診断方法。前記判定工程は、前記増幅領域がヒト染色体の7q22-q36にあるかどうかを指標とする工程である、請求項7に記載の診断方法。前記判定工程は、前記病型がGCB型であることが肯定的に判定されるとき、前記病型がCD5−CD10+であると肯定的に判定する工程を備える、請求項1、6〜8のいずれかに記載の診断方法。前記検出工程で検出された前記増幅領域が、ヒト染色体の3、6p22-p25、7p22-q31、8q24、11q22-q25、12、16p13-q21、18、19及びXから選択される1種又は2種以上にあるかどうか及び/又は前記欠損領域がヒト染色体の1p36、2p11、6q14-q27、8p23、9p21、15q13-q14及び17p11-p13から選択される1種又は2種以上にあるかどうかを指標として前記病型がCD5+であることを肯定的に判定する工程を備える、請求項1に記載の診断方法。前記判定工程は、前記増幅領域がヒト染色体の3であるか及び/又は前記欠損領域がヒト染色体の9p2であるかどうかを指標として前記病型がCD5+であると肯定的に判定する工程を備える、請求項1に記載の診断方法。前記検出工程で検出された前記増幅領域が、ヒト染色体の1q、2p13-p25、6p21-p25、7、8q22-q24、9q33-q34、12、13q31-q33、15q、16p13、19q13.3-13.4及びXから選択される1種又は2種以上にあるかどうか及び/又は前記欠損領域がヒト染色体の1p36、1p22、2p11、3p14、4p、6q13-q27、9p21及び13q14-q21から選択される1種又は2種以上にあるかどうかを指標として前記病型がCD5−CD10+であると肯定的に判定する判定工程を備える、請求項1に記載の診断方法。 前記判定工程は、前記増幅領域がヒト染色体の7q22-q36、12q13-q14及び17p13から選択される1種又は2種以上にあることを指標として前記病型がCD5−CD10+であると肯定的に判定する判定工程を備える、請求項1に記載の診断方法。 前記検出工程は、被験試料中の前記領域について、PCR法、RT−PCR法及び核酸ハイブリダイゼーションのいずれかを実施する工程を含んでいる、請求項1〜13のいずれかに記載の診断方法。 前記検出工程は、前記ヒト染色体上の領域を含むプローブと前記被験試料とをハイブリダイゼーションする工程である、請求項1〜14に記載の方法。 前記検出工程は、アレイCGH法を実施する工程である、請求項1〜15のいずれかに記載の診断方法。 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の病型診断用の核酸プローブセットであって、 ABC型のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫におけるヒト染色体上の増幅領域及び/又は欠損領域を検出可能な1種又は2種以上の核酸プローブ。 所定範囲のヒト染色体に由来する核酸プローブを固定化したアレイに対して前記ABC型のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫罹患ヒト個体から採取した被験試料を供給し核酸ハイブリダイゼーションを実施して前記核酸プローブの固定部位において得られる蛍光強度のlog2比値に基づいて設定した所定の上下の閾値に対する前記log2比値の大小に基づいて選択される核酸プローブを含む、請求項17に記載の核酸プローブ。 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の病型診断用の核酸プローブセットであって、 GCB型のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫におけるヒト染色体上の増幅領域及び/又は欠損領域を検出可能な1種又は2種以上の核酸プローブ。 所定範囲のヒト染色体に由来する核酸プローブを固定化したアレイに対して前記GCB型のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫罹患ヒト個体から採取した被験試料を供給し核酸ハイブリダイゼーションを実施して前記核酸プローブの固定部位において得られる蛍光強度のlog2比値に基づいて設定した所定の上下の閾値に対する前記log2比値の大小に基づいて選択される核酸プローブを含む、請求項19に記載の核酸プローブ。 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の病型診断用アレイであって、 請求項17〜20のいずれかに記載の核酸プローブが固定化されたアレイ。 ヒト染色体の3、8q21-q26、11q21-q25、16p11-p13、16q22-q24、18、19q13、X、2p11、6q12-27、8p22-p23、9p21、17pから選択される1種又は2種以上の領域の少なくとも一部を検出可能な核酸プローブが固定化された、請求項21に記載のアレイ。 ヒト染色体の1q22-32、2p14-p24、5pl2-pl5、5q15-q31、6p12-p25、7、8q22-q26、9q33-q34、11q、12、13q31-q33、16p11-p13、18q21-q23、19p、19q13、21q、X、1p36、2p11、3p14、4p12-p13、4q33-q34、6q14-q16、8p22-p23、9p21、13q12-q22、17pl2及び18q22-q23から選択される1種又は2種以上の領域の少なくとも一部を検出可能な核酸プローブが固定化された、請求項21又は22に記載のアレイ。 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の予後の診断方法であって、 ヒトから採取した染色体を含む被験試料について、ヒト染色体の9p21の欠損又は変異を検出する検出工程を備える、方法。 前記検出工程は、前記ヒト染色体上の領域を含むプローブと前記被験試料とをハイブリダイゼーションする工程である、請求項24に記載の方法。 前記検出工程は、アレイCGHを用いる工程である、請求項25に記載の方法。 前記検出工程は、p16INK4a遺伝子の欠損又は変異を検出する工程である、請求項24〜26のいずれかに記載の方法。 前記検出工程は、p16INK4a遺伝子によってコードされるタンパク質の発現の有無、発現量又は変異を検出する工程である、請求項27に記載の方法。 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の予後診断用アレイであって、 ヒト染色体の9p21を検出するための核酸プローブを固定化したアレイ。 ヒト染色体9p21を検出するためのポリヌクレオチドである、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の予後診断用マーカー。 前記ポリヌクレオチドは、p16INK4a遺伝子若しくはその一部又はこれらに相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドである、請求項30に記載のマーカー。 p16INK4a遺伝子によってコードされるタンパク質若しくはその一部又はこれらに対する抗体である、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の予後診断用マーカー。 本発明は、DLBCLのサブグループを容易に診断することを目的とする。この目的のため、本発明は、ヒトから採取した染色体を含む被験試料中のヒト染色体の増幅領域及び/又は欠損領域を検出する検出工程を備える、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の病型の診断方法を提供する。