生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_アトピー性皮膚炎抑制剤
出願番号:2005301156
年次:2006
IPC分類:A61K 31/122,A61P 37/00,A61P 37/08


特許情報キャッシュ

岡田 裕実春 JP 2006022121 公開特許公報(A) 20060126 2005301156 20051017 アトピー性皮膚炎抑制剤 ヤマハ発動機株式会社 000010076 南條 博道 100104673 岡田 裕実春 JP 2005194694 20050704 A61K 31/122 20060101AFI20051222BHJP A61P 37/00 20060101ALI20051222BHJP A61P 37/08 20060101ALI20051222BHJP JPA61K31/122A61P37/00A61P37/08 1 2 OL 8 4C206 4C206AA01 4C206AA02 4C206CB25 4C206MA01 4C206MA04 4C206NA14 4C206ZA89 4C206ZB13 本発明は、アトピー性皮膚炎抑制剤に関する。 アトピー性皮膚炎は、増悪・緩解を繰り返す痒みのある湿疹と皮膚の乾燥を主病変とする疾患である。アトピー性皮膚炎の最も大切な臨床症状は、痒みとそれに伴う皮膚の損傷である。アトピー性皮膚炎の痒みは発作的に激烈になることが多く、掻破のために皮疹はさらに悪化し、さらに痒みが増して掻破するという悪循環を繰り返して、慢性化した皮膚の損傷・湿疹病変となる。皮膚は人体の最外層にある防御バリアであるため、その損傷と機能低下は、物理的・化学的および生物的防御の低下につながり、感染症などの二次疾患を招く。また、痒み、痛み、視覚的違和感を伴うため、QOLを大きく低下させる。アトピー性皮膚炎は、通常、数年から数十年にわたって発症を繰り返す。そのため長期の治療が必要である。 近年、先進国では、アトピー性皮膚炎を初めとするアレルギー疾患が増加しており、遺伝的素因に加えて環境因子が原因であると考えられている。その原因としては、食餌由来とも、ダニなどの接触物ともいわれ、様々なものが挙げられている。従来、アトピー性皮膚炎は、若年者にのみ見られていたが、近年では成人から老人に至るまで全世代層にわたって罹患者が急増し、その治療の確立が急務となっている。 アトピー性皮膚炎の治療薬としては、外用ステロイド剤による治療が最も有効であるとされ、皮膚症状の種類と程度、部位、年齢などにより、種々のステロイド剤が使用されている。しかし、ステロイド剤には、使用後に皮膚炎が再発しその離脱が困難となるという欠点がある。また、ステロイド剤にはホルモン様作用があるため、副作用を起こすこともしばしばあり、時に重篤な病態を引き起こす。 ステロイド剤以外の薬剤として、皮膚の痒みに抗ヒスタミン剤(H1受容体拮抗薬)や抗アレルギー剤が用いられる。後者は、外用ステロイド剤の使用量や強さのランクを下げることが期待されるが、投与開始から効果発現まで2〜4週間を必要とする。また、アトピー性皮膚炎では、皮膚表面に黄色ぶどう球菌が存在しており、特にびらん面などの炎症病巣には多数存在している。このような観点から、アトピー性皮膚炎に対して、抗菌剤の塗布も行われている。しかし、単に感染症を予防するのみであり、アトピー性皮膚炎自体を改善するものではない。 このように、現在のところアトピー性皮膚炎を治療または予防するための、副作用や習慣性を伴うことのない有効な手段は存在していない。 カロテノイド(カロチノイド)は、動物、植物、および微生物に広く分布し、その数約600種におよぶ黄〜橙〜赤色を呈する脂溶性生体色素である。その一種であるアスタキサンチンは、オキアミ、エビ、カニなどの甲殻類、サケ・マスの筋肉・卵(イクラなど)、タイ・コイ・金魚などの体表などに含有されている。アスタキサンチンは、プロビタミンAとなり得ることや顕著な抗酸化作用を有することだけでなく、抗炎症作用を有することも知られている(例えば、特許文献1および2)。特許文献2では、抗炎症作用を有する黒糖抽出物と組み合わせることによって、アスタキサンチン単独で用いる場合よりも、抗炎症作用が大きく増強されることが記載されている。この特許文献2の実施例における化粧料のアスタキサンチンの含量はきわめて低い。また、アスタキサンチンは、Th1免疫応答を抑制し、Th2免疫応答を刺激することも知られている(特許文献3)。しかし、アスタキサンチン単独によるアトピー性皮膚炎に対する影響については全く知られていない。特開平7−300421号公報特開2004−331512号公報特表2003−510353号公報 本発明は、アトピー性皮膚炎を抑制する新たな安全性の高い薬剤を提供することを目的とする。 抗酸化剤として知られているアスタキサンチンについて種々の検討を行ったところ、アスタキサンチンがアトピー性皮膚炎抑制作用を有することを見出し、本発明を完成した。 本発明は、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有する、アトピー性皮膚炎抑制剤を提供する。 本発明によれば、新たなアトピー性皮膚炎抑制剤が提供される。本発明のアトピー性皮膚炎抑制剤は、非常に毒性が低いため、安全性が高い。 本発明のアトピー性皮膚炎抑制剤に含まれるアスタキサンチンおよび/またはそのエステルは、以下の式:(ここで、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子または脂肪酸残基である)で示されるカロテノイドの一種である。アスタキサンチンのエステルとしては、特に限定されないが、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸などの飽和脂肪酸、あるいはオレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、ビスホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などの不飽和脂肪酸のモノエステルまたはジエステルが挙げられる。これらは単独でまたは適宜組み合わせて用いることができる。アスタキサンチンは、β−カロチンの骨格の両端にオキソ基とヒドロキシ基とを余分に有する構造であるため、β−カロチンとは異なり、分子の安定性が低い。これに対し、両端のヒドロキシ基が不飽和脂肪酸などでエステル化されたエステル体(例えば、オキアミ抽出物)はより安定である。 本発明に用いられるアスタキサンチンおよび/またはそのエステルは、化学的に合成されたものであっても、あるいは天然物由来のもののいずれであってもよい。後者の天然物としては、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有する赤色酵母;ティグリオパス(赤ミジンコ)、オキアミなどの甲殻類の殻;緑藻類などの微細藻類などが挙げられる。本発明においては、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルの特性を利用できるものであれば、どのような方法で生産されたアスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有する抽出物をも使用することができる。一般的には、これらの天然物からの抽出物が用いられ、抽出エキスの状態であっても、また必要により適宜精製したものであってもよい。本発明においては、このようなアスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有する粗抽出物や破砕粉体物、あるいは必要により適宜精製されたもの、化学合成されたものを、単独でまたは適宜組み合わせて用いることができる。体内での安定性を考慮すると、好ましくはエステル体が用いられる。 本発明のアトピー性皮膚炎抑制剤の投与経路は、経口投与または非経口投与のいずれであってもよい。その剤形は、投与経路に応じて適宜選択される。例えば、注射液、輸液、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、腸溶剤、トローチ、内用液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、外用液剤、湿布剤、点鼻剤、点耳剤、点眼剤、吸入剤、軟膏剤、ローション剤、坐剤、経腸栄養剤などが挙げられる。これは、症状に応じてそれぞれ単独でまたは組み合わせて使用することができる。これらの製剤には、必要に応じて、賦形剤、結合剤、防腐剤、酸化安定剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤などの医薬の製剤技術分野において通常用いられる補助剤が用いられる。 本発明のアトピー性皮膚炎抑制剤の投与量は、投与の目的や投与対象者の状況(性別、年齢、体重など)に応じて異なる。通常、成人に対して、アスタキサンチンフリー体換算で、経口投与の場合、1日あたり0.1mg〜2g、好ましくは4mg〜500mg、一方、非経口投与の場合、1日あたり0.01mg〜1g、好ましくは0.1mg〜500mgで投与され得る。 本発明のアトピー性皮膚炎抑制剤は、上記のような医薬品としてだけでなく、医薬部外品、化粧品、機能性食品、栄養補助剤、飲食物などとして使用することができる。医薬部外品または化粧品として使用する場合、必要に応じて、医薬部外品または化粧品などの技術分野で通常用いられている種々の補助剤とともに使用され得る。あるいは、機能性食品、栄養補助剤、または飲食物として使用する場合、必要に応じて、例えば、甘味料、香辛料、調味料、防腐剤、保存料、殺菌剤、酸化防止剤などの食品に通常用いられる添加剤とともに使用してもよい。また、溶液状、懸濁液状、シロップ状、顆粒状、クリーム状、ペースト状、ゼリー状などの所望の形状で、あるいは必要に応じて成形して使用してもよい。これらに含まれる割合は、特に限定されず、使用目的、使用形態、および使用量に応じて適宜選択することができる。 (調製例1:アスタキサンチンモノエステルの調製) アスタキサンチンモノエステルを、次のように調製した。ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pulvialis)K0084株を、25℃にて光照射条件下3%CO2を含むガスを通気しながら栄養ストレス(窒素源欠乏)をかけて培養し、シスト化した。シスト化した細胞を、当業者が通常用いる手段によって破砕し、エタノールで油性画分を抽出した。抽出物は、アスタキサンチン類の他に、トリグリセリドなどの脂質を含んでいた。抽出物を、合成樹脂吸着剤を用いるカラムクロマトグラフィーにかけて、アスタキサンチンのモノエステルを含む精製物を得た。この精製物をHPLCによって分析し、このアスタキサンチンモノエステル精製物が、分子量858のモノエステルを主成分として含み、アスタキサンチンの遊離体およびジエステル体を含まず、わずかにジグリセリドを含んでいることを確認した。 (実施例1:ダニ抗原誘発アトピー性皮膚炎モデルマウスに対する効果の検討−1) 上記調製例1で得たアスタキサンチンモノエステルについて、ダニ抗原誘発アトピー性皮膚炎モデルマウスに対する効果を検討した。 上記調製例1で得たアスタキサンチンモノエステルをオリーブ油に溶解して、3mg/mLのアスタキサンチンモノエステル試験液を調製した。 7週齢のNC/NgaTndCrlj(SPF)雄マウス20匹を準備し、各マウスの左右の耳介に、マイクロシリンジを用いて5μg/部位(1μL/部位)のダニ抗原(ダニ抽出物−Dp:(株)エル・エス・エル)を、3日間隔で7回皮内投与した。ダニ抗原投与開始後7日目に以下のように測定した各マウスの耳の厚さ(耳浮腫の程度)に基づいて、マウスを1群10匹として試験群および対照群に群分けした。試験群には、ダニ抗原投与開始7日目から21日目まで、上記試験液を1日1回毎日10mL/kg(30mg/kg)ずつ、経口用ゾンデを用いて経口投与した。また、対照群には、10mL/kgのオリーブ油を経口投与した。 ダニ抗原の投与開始前(0日目)、および投与開始後7、14、および21日目に、耳介の症状観察を行い、同時にdial thickness gaugeを用いて左右の耳の厚さ(耳浮腫)および耳介における浮腫の割合(耳浮腫率)を測定した。耳介の症状観察については、ヒトアトピー性皮膚炎の臨床症状の評価基準を参考に、以下のようにスコア化した: 評価項目:掻痒症、発赤・出血、浮腫、擦傷・組織欠損、および乾燥 スコア:0:無症状 1:軽度 2:中等度 3:高度それぞれの項目についてスコア化し、その総和を個体のスコアとした。耳介のスコア、耳の厚さ、および耳浮腫率について、いずれも平均値±標準誤差を算出した。 耳介の症状観察のスコアの結果を図1に、耳浮腫の測定結果を図2に、そして耳浮腫率の経時変化を図3に示す。図に示すように、試験群では、アスタキサンチン投与開始後(抗原投与14および21日目)には、耳介のスコアが対照群よりも低下し、そして耳浮腫の程度が軽減しそして耳浮腫率も低下していた。したがって、アスタキサンチンによりアトピー性皮膚炎の症状が抑制されることがわかった。なお、本実施例においては、投与期間中に、オリーブ油の投与量が多かったためと思われる死亡例があった。 (実施例2:ダニ抗原誘発アトピー性皮膚炎モデルマウスに対する効果の検討−2) 上記調製例1で得たアスタキサンチンモノエステルについて、投与に用いるオリーブ油の量を減少させ、一方アスタキサンチンモノエステル量が同じになるように、上記実施例1と同様にダニ抗原誘発アトピー性皮膚炎モデルマウスに対する効果を検討した。 上記調製例1で得たアスタキサンチンモノエステルをオリーブ油に溶解して、12mg/mLのアスタキサンチンモノエステル試験液を調製した。 上記実施例1と同様に、マウスを1群10匹として試験群および対照群に群分けした。試験群には、ダニ抗原投与開始7日目から21日目まで、上記試験液を1日1回毎日2.5mL/kg(30mg/kg)ずつ、経口用ゾンデを用いて経口投与した。また、対照群には、2.5mL/kgのオリーブ油を経口投与した。 ダニ抗原の投与開始前(0日目)、および投与開始後7、14、および21日目に、耳介の症状観察を行い、同時にdial thickness gaugeを用いて左右の耳の厚さ(耳浮腫)および耳介における浮腫の割合(耳浮腫率)を測定した。耳浮腫率の経時変化を図4に示す。本実施例においては、投与期間中に死亡例は見られなかった。 図に示すように、試験群では、アスタキサンチン投与開始後(抗原投与14および21日目)には、耳浮腫率が有意に低下していた(図中の*はp<0.01、Studentのt検定)。また、耳介のスコアおよび耳浮腫の程度も対照群よりも低下していた(データを示さず)。 (参考例1:HUVECに対する50%致死濃度の測定) ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)(ATCC CRL−1730)を、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションから入手し、1%Antibiotic-Antimycotic(GIBCO BRL, USA)を添加した10%ウシ胎児血清含有Endothelial Cell Growth Medium(CELL APPLICATIONS, USA))中、5%CO2雰囲気下、37℃にて予備培養した。 Matrigelマトリックス(BD Biosciences, USA)を融解して氷上で4℃にて保持し、そして50μLのマトリックスを96+ウェル組織培養プレートの各ウェルに移した。プレートを37℃にて少なくとも1時間インキュベートして、マトリックス溶液を固化させた。 一方、上記調製例1で得たアスタキサンチンモノエステルを、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、次いで蒸留水で希釈して、40(v/v)%DMSO中に25000、2500、250、25、および2.5μMのアスタキサンチンモノエステルを含むストック試験溶液を調製した。 100μLのHUVEC懸濁液(約2.5×103細胞/ウェル)を、5%CO2雰囲気下37℃にて96ウェルのMatrigelプレートに入れた。24時間後、100μLの増殖培地および上記の各ストック試験溶液またはベヒクル(40(v/v)%DMSO)2μLずつを、各2つのウェルに添加し、さらに72時間インキュベートした。DMSOおよびアスタキサンチンモノエステルの最終濃度は、250、25、2.5、0.25、および0.025μMであった。 インキュベーション終了後、20μLの90%alamarBlue試薬を個々のウェルに添加し、さらに6時間インキュベートした。次いで、各ウェルの蛍光強度を、Spectrafluor Plusプレートリーダーを用いて、励起波長530nmおよび発光波長590nmにて測定し、生存細胞数を計数した。これは、生存細胞が、alamarBlueを非蛍光性の酸化型(青)から蛍光性の還元型(赤)に変化させる能力に基づく。なお、50%致死濃度は、実験開始時の細胞数の50%になる濃度を算出した。 この結果、HUVECに対するアスタキサンチンモノエステルの50%致死濃度(LC50)は250μM(DMSOへの最大溶解濃度)以上であり、毒性が低いことがわかった。 本発明によれば、新たなアトピー性皮膚炎抑制剤が提供される。本発明のアトピー性皮膚炎抑制剤は、非常に毒性が低いため、安全性が高く、長期間にわたる使用が可能である。アスタキサンチンモノエステルの試験群および対照群におけるマウスの耳介の症状観察のスコアの経時変化を示すグラフである。アスタキサンチンモノエステルの試験群および対照群におけるマウスの耳浮腫(耳の厚さ)の経時変化を示すグラフである。アスタキサンチンモノエステルの試験群および対照群におけるマウスの耳浮腫率の経時変化を示すグラフである(実施例1)。アスタキサンチンモノエステルの試験群および対照群におけるマウスの耳浮腫率の経時変化を示すグラフである(実施例2)。 アスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有する、アトピー性皮膚炎抑制剤。 【課題】アトピー性皮膚炎を抑制する新たな安全性の高い薬剤を提供すること。【解決手段】アスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有する、アトピー性皮膚炎抑制剤が提供される。本発明のアトピー性皮膚炎抑制剤は、非常に毒性が低いため、安全性が高く、長期間にわたる使用が可能である。【選択図】図2


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