生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_ホスホリパーゼA2阻害剤
出願番号:2004047422
年次:2005
IPC分類:7,A61K35/78,A61P29/00,C12N9/99,A23L1/30


特許情報キャッシュ

加藤 博史 大久保 剛 JP 2005239559 公開特許公報(A) 20050908 2004047422 20040224 ホスホリパーゼA2阻害剤 日本油脂株式会社 000004341 加藤 博史 大久保 剛 7A61K35/78A61P29/00C12N9/99A23L1/30 JPA61K35/78 BA61P29/00C12N9/99A23L1/30 B 1 OL 6 4B018 4C088 4B018MD61 4B018ME14 4B018MF01 4C088AB03 4C088AC06 4C088BA08 4C088CA06 4C088NA14 4C088ZB11 本発明は、松樹皮より得られ抽出物を有効成分とするホスホリパーゼA2阻害剤に関する。 炎症に起因する浮腫の発症機序は、炎症により、炎症細胞の遊走、侵潤して炎症物質を放出することによる。この炎症物質としては、ヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジン、キニン系物質などが含まれている。ヒスタミンは血管の拡張をし、血管透過性を亢進する。それによりタンパク質成分だけでなく、様々な物質や細胞成分が組織内に滲みでて、その中で好中球やマクロファージがアナフフィラトキシン(LTB4,C5aなど)の濃度勾配により炎症細胞に集まることにより浮腫が生じると言われている。 アラキドン酸カスケードの開始酵素である、ホスホリパーゼA2(以下、PLA2と略す)は重要な酵素である。その理由は、アラキドン酸は、膜リン脂質の2位に結合していて、PLA2で加水分解されて切り出されたアラキドン酸は、種々の酵素によって、プロスタグランジン、トロンボキサン、ロイコトリエン、リポキシンなど様々な生理活性物質へ変換され、中に炎症系のメディエーターである例えばロイコトリエンやプロスタグランジンなども生成される。 アラキドン酸カスケードが活性化した場合には、特に生成するプロスタグランジンにより、局所の血流を増進し、浮腫形成と炎症細胞侵潤を増強し、炎症反応を促進することが言われている。 従って、これらの炎症系のメディエーター、例えばヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジンなどの生成により炎症を引き起こし浮腫を生じたり、掻痒感(かゆみ)を生じることが言われている。(標準薬理学 第28卷、286頁:非特許文献1:) そこで、アラキドン酸カスケードの働きを抑制することは、浮腫の発生を抑制したり、掻痒感の発生を抑えることになり、その点から有効なPLA2阻害剤が求められていた。標準薬理学 第28卷、286頁本発明の目的は、抗炎症により浮腫発生の抑制、掻痒感の低減などの効果が期待でき、医薬品、化粧品、食品等の用途に好適に使用できる、松樹皮抽出物からなるPLA2阻害剤を提供することにある。 本発明者らは、前記の問題点に鑑み、鋭意検討した結果、松樹皮を原料として抽出した樹脂成分にPLA2の阻害剤としての著しい効果があることの知見を得て、本発明を完成するに至った。即ち本発明は、次の[1]である。[1]松樹皮より得られる抽出物を有効成分とするホスホリパーゼA2阻害剤。 本発明によれば、松樹皮から極性溶媒を用いて抽出した樹脂成分を有効成分とするホスホリパーゼA2阻害剤が提供される。ホスホリパーゼA2を阻害する効果により、抗炎症により浮腫発生の抑制、掻痒感の低減などの効果が期待でき、医薬品、化粧品、食品等の用途に好適に使用できる。本発明のPLA2阻害剤は、松樹皮より得られる抽出物を有効成分とすることを特徴とする。 ここで、本発明で用いるPLA2阻害剤は、松樹皮を原料として、抽出した樹脂成分であり、原料とする松としては、マツ属マツ科の植物であればよく、種類や原産国には特に限定されない。具体的には、アカマツ、クロマツ、エゾマツ、ゴヨウマツなどが挙げられる。さらに例えば、フランス海岸マツが好ましく、フランス海岸マツの野生種、またはこれらを交配して得られた園芸種のマツを用いることが好ましい。原料は松の樹皮部分が好ましく挙げられる。 本発明に用いる松樹皮からの抽出した樹脂成分は、松の樹皮部分を用い、水やエタノールなどの極性溶媒との混合溶媒を用いて抽出される。抽出温度は、特に限定されず、適宜選択できるが、室温から溶媒の沸点までの温度であればよい。例えば、抽出温度の条件として、50〜70℃程度がより好ましい条件として挙げられる。 さらに本発明に用いる松樹皮抽出物を得る方法は、具体的には例えば、以下のように製造される。原料の松樹皮を粉砕し、樹皮片を水とエタノールの混合溶液で50〜70℃程度で抽出を行う。これを濾過して抽出液を得る。この抽出液を食塩等の無機塩を用いて塩析して高分子画分のタンニンを除去する。再度、濾過して分子量 300〜2500のプロアントシアニジンを多く含有する抽出液を得る。 プロアントシアニジンはその炭素−炭素結合の開裂により、アントシアニジンを生成する化合物であると提案されている。そしてシアニジンはアントシアニジン中の1種で、配糖体として広く存在する。化合物を酸処理とともに加熱すると、その炭素−炭素結合が開裂し、シアニジンを生成するものをプロシアニジンと呼ぶ。天然に存在するプロアントシアニジンの大部分は、プロシアニジンのタイプである。これらの中でもOPC(オリゴメリック・プロアントシアニジン)とは、カテキンの2量体〜4量体を中心とする比較的低分子量の縮合型タンニンであり、フラバン−3−オールまたは、フラバン−3、4−ジオールを構成単位として縮合もしくは重合により結合した化合物である。 このようにして得た分子量 300〜2500のプロアントシアニジンとしては、例えば、C18逆相カラムにて10mMリン酸緩衝液(pH2.6)とアセトニトリル(93:7)でカラム温度30℃、流量1.0ml/minで分画を行ないUV280nmの吸光度で分析を行なうと、カテキン、エピカテキン、エピカテキン没食子酸塩、プロシアニドールB1、プロシアニドールB2、プロシアニドールB3、プロシアニドールB4、トキシフォリンなどが分離検出される。全抽出物の97%がこれらの物質で分子量300〜2500である。このようなものとしては、市販品として、例えば、(株)東洋新薬製 商品名 フラバンジェノールや、ホーファリサーチ製 商品名 ピクノジェノール、あるいはBERKEM社製 商品名 ベルパイン等が挙げられる。 この抽出液は、適宜に濃縮して液体抽出物とし用いてもよく、また、この液体抽出物を噴霧乾燥法によって粉末としても良い。更には、前記の液体抽出物にデキストリン等の賦形剤を添加し、噴霧乾燥または凍結乾燥することにより、粉末の形状としてもよい。特に固体化、粉末化することにより経時的な安定性が得られるために、また取り扱い性の観点から前記の抽出物は、凍結乾燥することにより固形化、粉末化することがより好ましい。これらの賦形剤としては、乳糖、マルトオリゴ糖、デキストリン等が挙げられる。これらの賦形剤は、凍結乾燥した固形化物、粉末化物として配合しても良いし、前記のようにして得た濃縮液に配合して粉末化しても良い。前記賦形剤の配合量は、例えば、濃度が8重量%の前記濃縮液100重量部に対して、10〜70重量部の賦形剤を添加して噴霧乾燥や凍結乾燥するのが好ましい。粉末化は、凍結乾燥、噴霧乾燥等、任意の方法を採用することができる。このうち、凍結乾燥がより好ましく、この場合は、前記濃縮液あるいは賦形剤を添加したものを凍結乾燥した後、粉砕用ブレンダーを使用して粉末化するのが好ましい。凍結乾燥等の条件は、通常使用される条件が適宜選択される。例えば、凍結乾燥の温度は、−3〜−40℃、特に−10〜−30℃程度が好ましい。 本発明のPLA2阻害剤として使用する形態は、特に制限がなく、例えば、液体、錠剤、丸薬、顆粒粉末、カプセル等の形態として使用することができる。 本発明のPLA2阻害剤は、打錠品に添加して使用することが出来る。また、該PLA2阻害剤を添加した食品は、浮腫の発生抑制、掻痒感の抑制など炎症の予防または緩和させる目的で摂取することが出来る。なお、上記の打錠品とは、松抽出物のプロアントシアニジンの粗精製物、精製物を必要に応じて形賦剤を配合して錠剤にしたものであってもよい。以下に、具体例を挙げて本発明をさらに詳細に説明をする。<ホスホリパーゼA2阻害効果の評価方法>本発明では、松樹皮抽出物によってホスホリパーゼA2活性の阻害効果を次の測定方法を用いて行った。<試薬>1.トリス−HCl緩衝液(pH8.0)2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール[トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]を0.01Mおよび塩化カルシウムを0.05Mとなるように精製水に溶解し、塩酸でpH8.0に調整する。2.PC溶液ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(BioRad社 商品名;TritonX−100)に純度70%以上のホスファチジルコリンを溶解させたのもを0.45μmのフィルターで濾過する。3.酵素溶液ホスホリパーゼA2(酵素活性2IU/ml)溶液を使用する。4.反応停止液EDTA・2Na(エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸−2Na・2H2O)の0.1M水溶液である。5.試験溶液活性阻害を測定する試料を、トリス−NCl緩衝液に、所定量溶解する。(松樹脂抽出物を、トリス−HCl緩衝液にそれぞれ0.4〜4%(w/v)溶解する。)次にホスホリパーゼA2活性阻害効果の測定方法について記す。<測定操作方法>(1)10ミリリットル容ネジ口試験管に、試験溶液1mlと酵素溶液0.4mlを採取して混和した後、37℃に調温したウォーターバスで振とうしながら5分間予備加熱をする。(2)また、ブランクとして試験溶液の代わりにトリス−HCl緩衝液を1ml用いた試験を平行して行う。5分経過後、前記PC溶液0.6mlを加えて混和し、37℃のウォーターバスで振とうしながら、15分間反応する。(3)15分経過後、反応停止液1.5mlを加えて混和し、反応を停止する。ここでクロロホルムを正確に5ml加えて脂質を抽出した。回収したクロロホルムを薄層クロマトグラフィー(TLC)に供する。(4)この時に、TLCはクロロホルムを等しく各試料12μlずつスポットした。(5)TLCのプレートは通常のシリカゲルとし、展開溶媒は石油エーテル/ジエチルエーテル/酢酸=80/20/1(容量比)を用いる。展開終了後、50%(v/v)硫酸を噴霧し、105℃恒温槽で加熱発色する。ブランクの遊離脂肪酸のスポットの強度を100とし、試料溶液を添加した系の遊離脂肪酸のスポット強度のブランクに対する百分率を反応率(%)とする。これを100から差し引いたものを反応阻止率(%)とする。反応阻止率(%)=[{(ブランクの脂肪酸の強度)−(試験液の脂肪酸の強度)}/(ブランクの脂肪酸の強度)]×100実施例1 松樹皮抽出物(BERKEM社製 商品名 ベルパイン:フラバン−3−olのモノマー10重量%、2〜4のオリゴマーを74重量%含有したもので分子量300〜2500のプロアントシアニジン)を0.04g量り取り、0.01Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)10mlに溶解し、0.4%溶液とした。この溶液を1mlと前記のPLA2の酵素(ノボ(株)製、商品名;レシダ−ゼ 2IU/ml)溶液0.4mlをネジ口試験管の中で混和した後、37℃で5分間予備加熱した。次いで高純度のホスファチジルコリンをTritonX−100溶液に溶解した溶液0.6mlを加えて混和し、37℃で15分間反応させた。その後、反応停止液として0.1MのEDTA溶液を1.5ml添加して反応を停止させた。これを試験溶液と称する。試験溶液から、クロロホルムで脂質を抽出し、展開溶媒[石油エーテル/ジエチルエーテル/酢酸=80/20/1(容量比)]で薄層クロマトグラフィーに供した。展開後は50%硫酸による加熱発色による分析を行った。実施例2〜4表1のように、実施例1に用いた松樹皮抽出物と同じものを使用して、その濃度を0.8重量%、2重量%、4重量%とし、それぞれ実施例1と同様の操作を行った。結果を合わせて表1に示す。 以上、表1より、本発明の実施例1〜4では、松樹皮の濃度が0.4重量%、0.8重量%、2重量%、4重量%の順に反応阻害率が18.6%、38.0%、51.7%、57.4%となり、反応阻害率が松樹皮抽出物の濃度に依存することがわかる。このように松樹皮抽出物にはホスホリパーゼA2活性阻害効果があり、前記のように浮腫の発生抑制、掻痒感の低減などの作用があることが期待される。参考例1(錠剤の作製)実施例1で用いた松樹皮抽出物2g(2重量%)、乾燥コーンスターチ[日本食品化工(株)]96g(96重量%)、タルク[和光純薬工業(株)]1.8g(1.8重量%)およびステアリン酸カルシウム[日本油脂(株)]0.2g(0.2重量%)を混合し、ロッキングミキサーで10分間混和した後、打錠機を用いて1錠、0.52gの錠剤を作製した。このことから、ホスホリパーゼA2活性阻害効果を有する松樹皮抽出物を錠剤として摂取しやすい形状とすることができる。 松樹皮より得られる抽出物を有効成分とするホスホリパーゼA2阻害剤。 【課題】 ホスホリパーゼA2を阻害する効果により、抗炎症により浮腫発生の抑制、掻痒感の低減などの効果が期待でき、医薬品、化粧品、食品等の用途に好適に使用できる、PLA2阻害剤を提供する。【解決手段】 松樹皮より得られる抽出物を有効成分とするホスホリパーゼA2阻害剤。【選択図】なし


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る