生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_増殖した細胞系およびその使用方法
出願番号:2003565425
年次:2011
IPC分類:C12N 5/075,C12Q 1/02,A61K 35/12,A61K 45/00


特許情報キャッシュ

フリーマン トーマス ビー. カビエデス パブロ カビエデス ラウル サンバーグ ポール アール. キャメロン ドン エフ. JP 4741189 特許公報(B2) 20110513 2003565425 20030207 増殖した細胞系およびその使用方法 ユニヴァーシティ オブ サウス フロリダ 398014333 ユニバーシティー オブ チリ 504303252 清水 初志 100102978 刑部 俊 100119507 新見 浩一 100128048 川本 和弥 100121072 フリーマン トーマス ビー. カビエデス パブロ カビエデス ラウル サンバーグ ポール アール. キャメロン ドン エフ. US 60/355,157 20020208 20110803 C12N 5/075 20100101AFI20110714BHJP C12Q 1/02 20060101ALI20110714BHJP A61K 35/12 20060101ALI20110714BHJP A61K 45/00 20060101ALI20110714BHJP JPC12N5/00 202EC12Q1/02A61K35/12A61K45/00 C12N1/00-15/90 C12Q1/00-1/68 C07K1/00-19/00 A61K1/00-49/04 CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN) JSTPlus(JDreamII) PubMed Brain Research,1986年,Vol.365,p.259-268 Journal of Molecular and Cellular Cardiology,1993年,Vol.25,p.829-845 Biochimica et Biophysica Acta,1992年,Vol.1134,p.247-255 European Journal of Neuroscience,2000年,Vol.12,p.3259-3264 Cell Biology International Reports,1985年,Vol.9, No.3,p.209-218 Endocrinology,1976年,Vol.99, No.2,p.549-554 78 DSMZ DSM ACC2535 US2003003753 20030207 WO2003065999 20030814 2005524633 20050818 76 20060201 福澤 洋光関連出願の相互参照 本出願は、2002年2月8日に提出された米国仮特許出願第60/355,157号(これは、あらゆる図、表、核酸配列、アミノ酸配列または図面を含む、その全体が本明細書に参照として組み入れられる)の優先権による利益を請求する。発明の背景 ほとんどの細胞は、適した栄養分および増殖のためのその他の条件が与えられれば、従来の細胞培養技術を用いて、限られた程度までインビトロで培養することができる。このような培養物は、遺伝現象、生理現象およびその他の現象を研究するために、さらにはさまざまな発酵手法を用いて特定の生体分子を製造するために用いられてきた。哺乳動物細胞生物学の研究には、例えば、リンパ節、筋肉、結合組織、腎臓、真皮およびその他の組織に由来する細胞培養物が用いられている。しかし、ほとんどの正常細胞は培養下での増殖能が限られている。ある特定回数の細胞分裂(ヘイフリック限界)の後には、それらはそれ以上増殖できなくなる(Hayflick L., Exp. Cell. Res., 1965, 37: 614-636)。この限られた寿命は分裂性老化(replicative senescence)と呼ばれ、寿命の長い動物における無制限のクローン進化および癌に対する防御機構として生じた可能性が高い。このため、あらゆる種類の細胞をインビトロで維持できるようにすることは以前から科学者の目標となっているが、標準的な培養条件はほとんどの細胞の長期的な生存または増殖を促さない。 「不死化」とは、有限数の分裂サイクルという増殖に関しての通常の限界からの逸脱のことである。したがって、いったん不死化すれば、細胞系は連続培養が可能である。しかし、不死細胞系が通常の培養条件下で自然に出現することは極めて稀である。 刊行物に発表された技法では、培養下での細胞の寿命を延長させるために、胚細胞の使用を取り入れている。胚細胞から出発する戦略は、胚細胞の方が成体細胞よりも分化の程度が低いため、終末分化に達するまでに数サイクルを要すると考えられるという事実に基づいている。分化した細胞よりも未分化細胞の方がより速く増殖することは生物学における一般原理の一つである。細胞は、例えばホルモンの合成および分泌のために必要な細胞内機構を確立した時点では、もはや分裂能を持たず、仮に持っているにしても急速に分裂する能力はないと一般に考えられている。 培養下にて細胞を樹立するためのもう一つの既知の戦略は、腫瘍細胞から出発することであり、これはその増殖能力の高さに起因する。これらのタイプの細胞系は多数の細胞を生成しうるが、これらのタイプの細胞系の数が限られ、それらが生成しうる表現型の数が限られている上に、それらに腫瘍形成能が備わっているために、これらのタイプの細胞系は理想的とは言えない。 正常細胞の培養下での形質転換は、細胞の遺伝的プログラミングを変化させ、それによって細胞が無限に増殖するように誘導する、UV光の使用、発癌性化学物質および癌遺伝子の導入を含む、さまざまな手段によってなされている。シミアンウイルス40(SV40)は一時期、連続的に増殖する細胞系を得る目的で種々の組織由来のヒト細胞を不死化するために用いられた(Sack, G.H. In vitro, 1981, 17: 1-19)。ラット顆粒膜細胞は、SV40全ゲノムおよび活性化Ha-ras遺伝子による同時トランスフェクションによって形質転換されている(Baum, Gら、Develop Biol, 1990, 112: 115-128)。これらの細胞は、cAMPに応答してステロイドを合成しうるというように、分化した特徴の少なくとも一部を保っていることが報告されている。また、SV40ラージTタンパク質の発現だけで、初代細胞に形質転換特性を誘導させるのに十分であることも示されている(Abcouver, S. Bio/Technology, 1989, 7: 939-946)。培養下で樹立されたその他の細胞系には、新生ラットの正常膵島に由来するUMR細胞(NG, K.W.ら、J. Endocrinol., 1987, 113: 8-10)およびハムスター膵島のSV40感染によって生じたHIT細胞(Santerre, R.F.ら、PNAS, 1981, 78: 4339-4343)が含まれる。しかし、これらの細胞系のインスリン分泌量は少なく、培養下で継代するうちにグルコースに対する応答性も失われる。このため、これらの細胞系の増殖状態は、細胞の決定および分化の過程で起こる決断に関する研究のため、ならびに外因性物質の影響に関する検討のためには有用な場合もあると思われるが、これらの不死化性物質は、細胞の分化能および生理的に正しい様式で遺伝子を発現する能力といった、細胞の他の特性に影響を及ぼす可能性がある。 まだ開発が始まった段階にある、さらに最近の細胞系不死化法は、非コード反復DNA配列から構成される染色体の末端であるテロメアを取り入れている。培養下にある正常(二倍体)細胞の増殖寿命が限定的であることは、1つまたは複数のテロメアの短縮が必然的に起こることによって説明されうると示唆されている。癌細胞、生殖細胞および一部の真核性微生物には、テロメア伸長を触媒するテロメラーゼという酵素によってこの現象を修正する能力があることが知られている。テロメラーゼを発現するように改変された正常細胞は培養下で不死であり(Bodnarら、Science, 1998, 279(5349): 349-352)、これはテロメア長が一定に保たれるためと思われる。さらに、インビトロで加齢状態に達した線維芽細胞をテロメラーゼで処理すると皮膚の機能を再び獲得する(Funkら、Exp. Cell. Res., 2000, 258(2): 270-278)。 成体脳で分裂することが報告されている神経細胞の種類はごく少数しかなく、成体ニューロンはインビトロではうまく生存しない。脳のさまざまな領域からクローン細胞系を作製することにより、新たな神経栄養因子およびそれらの受容体の発見が大きく促進され、それらの機能の理解が進むと考えられる。中枢神経系は、ニューロンおよびグリア細胞として知られる2つの主なクラスの細胞を含んでいる。ニューロンには数百もの種類があり、それらの成長および分化に影響を及ぼす神経栄養因子にも数多くの種類がある。ニューロンの種類およびそのニューロンが存在する脳の領域に応じて、異なる単一の神経栄養因子または因子の特定の組み合わせがニューロンの生存、増殖および分化に影響を及ぼす。 これまで、中枢神経系(CNS)における神経薬理学的な研究は、有用な可能性のある神経活性化合物を調べるために必要な神経系がないことから遅れてきた。生きた動物の場合には、脳が複雑であるために、どの細胞受容体がこれらの化合物による標的となっているかをうまく評価することが難しい。さらに、生きた動物の研究に必要な経費および動物の権利運動に端を発する現在の議論のために、初期研究にインビボ動物試験を用いることは受け入れられにくくなっている。CNSの研究には神経組織由来の初代細胞がしばしば用いられる;しかし、初代ニューロンの長期培養は未だ実現されていない。神経細胞の長期培養および増殖を実現するための試みはごく少数しか報告されていない。事実、神経細胞の増殖は非常に実現困難なことが判明しているため、科学者の間では神経細胞はインビトロでは増殖しないという考え方が染みついている。その結果、必要な種類の神経細胞を入手するためには研究のたびに新たな摘出を行わなければならず、そのため、研究費用が増すとともに実験結果のばらつきを増加させる結果となっている。 神経腫瘍細胞系はいくつか存在するものの、それらの数はわずかであり、特徴も十分には解明されていない。一般に、これらの腫瘍細胞系は、それらが最初に樹立される元となった初代ニューロンの生物的特徴には似ていない。初代細胞を表現型の面でさらに代表し、増殖が可能な特定の神経細胞系の連続培養物を生じうるインビトロ初代培養物は極めて貴重である。 ニューロンと同様に、哺乳動物の膵臓の内分泌細胞も分裂終了細胞、すなわち、終末化した本質的には分裂しない細胞とみなされてきた。最近の研究で、哺乳動物の膵臓の細胞(ヒトのものを含む)は培養下で生存しうるが、持続的な細胞分裂は行えないことが示された。このため、この組織細胞の初代培養はうまく行えるが、培養細胞が十分に細胞分裂をしないため、初代培養物を継代して連続培養物を形成することは不可能であった。これらの培養物では、分裂中期の細胞が時に認められ、トリチウム標識チミジンの取込みおよび細胞分裂の他の証拠が認められるものの(Clarkら、Endocrinology, 1990, 126: 1895;Brelijieら、Endocrinology, 1991, 128: 45)、全体的な細胞分裂速度は置換速度を下回るとみなされている(すなわち、死滅する細胞の数が生成される細胞の数よりも多いか同程度である)。 さまざまなタンパク質、ペプチド、ホルモン、増殖因子および他の生物活性物質の生産のための「生物工場(biofactory)」として、動物細胞のインビトロでの培養は幅広く研究されてきた。例えば、下垂体細胞は成長ホルモンの生産のためにインビトロで培養されている;腎細胞はプラスミノーゲン活性化因子の生産のために培養されている;さらにA型肝炎抗原が培養肝細胞で生産されている。他の細胞も種々のウイルスワクチンおよび抗体の生産のために個別的に培養されている。インターフェロン、インスリン、血管新生因子、フィブロネクチンおよび他のさまざまな生体分子が、さまざまな動物細胞のインビトロ培養によって生産されている。当然ながら、これらの生物工場によって生産される生体分子の量は用いうる細胞の数および細胞種の範囲によって限定される。 移植の動物モデルにも種々の細胞系がさまざまな目的で用いられている。胎児腎細胞および羊膜細胞は栄養因子の供給源として移植されている。副腎髄質細胞、交感神経節細胞および頸動脈体細胞はドーパミンの供給源として移植されている。線維芽細胞およびグリア細胞は、例えば、栄養因子の供給源として、組換え手法によって遺伝子を伝達するため、または脱髄疾患を対象として移植されている。角膜内皮細胞は角膜移植片のために用いられている。筋原細胞は筋ジストロフィーおよび心疾患の治療のために移植されている。その他の細胞系には、糖尿病に対する膵島細胞;甲状腺疾患に対する甲状腺細胞;AIDS、骨髄移植および遺伝病に対する血液細胞;変形性関節症、関節リウマチまたは骨折修復に対する骨および軟骨;熱傷後の皮膚移植または美容外科手術、脂肪による豊胸術、毛包移植などにおける再構成目的での皮膚細胞または脂肪細胞;肝炎を誘発する肝障害に対する肝細胞;ならびに網膜色素変性症およびパーキンソン病に対する網膜色素上皮細胞(RPE)が含まれる。 残念ながら、遺伝的に安定な初代細胞を多数入手することが不可能であるために、細胞移植療法の分野での医科学の進歩は妨げられてきた。さらに、治療用ドナー細胞の現行の入手源も、ドナー間に内在する生物学的な違いのためにさらに限定される。 幹細胞は数多くの疾患に対する治療の目的に非常に有望であると考えられている。幹細胞は、胚細胞、芽細胞、組織由来細胞、血液細胞および臍帯血細胞;臓器由来の前駆細胞;ならびに骨髄間質細胞などを非制限的に含む、さまざまなドナー源から得られている。このような幹細胞は、さまざまな経路に沿って分化させて事実上あらゆる種類の細胞を生じさせることができる。これらの細胞は分化前に移植することも分化後に移植することもできる。治療的な観点のみからも、このような細胞は極めて種々の疾患の治療に有用と考えられる。幹細胞によって治療しうる可能性がある神経疾患の例には、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、ALS、脳卒中、脱髄性疾患、てんかん、頭部外傷および脊髄損傷が含まれる。しかし、幹細胞には、細胞を診断、研究または治療の目的に十分な量でインビトロで増殖させる能力に関して、他の細胞と共通する問題がある。さらに、最も大きな可塑性が認められている初代幹細胞は胚性幹細胞である。これらの細胞を大量に入手することは特に困難であり、倫理的な問題を伴う。 技術の現状に関する以上の説明から、何らかの細胞またはあらゆる細胞を長期培養物中で高い増殖率で維持し、それによってより豊富でしかもより費用のかからない細胞の供給源を提供するための方法には需要があることは明らかである。このような長期培養物は、例えば、治療的に有用なタンパク質の生産のための生物「工場」として開発することが可能と思われる。確実に樹立された細胞系は、薬物および他の化学物質に対する細胞の応答に基づくインビトロのバイオアッセイ(例えば、毒性試験および有効性試験)の可能性ももたらす。また、均一な細胞系、特にヒト由来の均一な細胞系を作製することにも需要がある。凍結保存が可能な細胞および細胞系の入手性も同じように不足している。 連続培養した細胞系は、多くの罹患状態の是正に有効なことが判明している細胞移植療法のための細胞の源としても極めて貴重である。例えば、膵臓のインスリン分泌性β細胞の機能を補う細胞の移植により、糖尿病を安定化し、もしかすると治癒させることが可能と考えられる。パーキンソン患者は、ドーパミン作動性ニューロンまたはドーパミン作動性ニューロンを生成する幹細胞を直ちに与えることによって治療可能と考えられる。このような細胞系は、細胞を介した遺伝子治療に用いる目的で、移植前のインビトロでの遺伝的改変に直ちに用いうる細胞および組織の無尽蔵な供給をももたらすと考えられる。このため、分化した機能を忠実に保ったままで長期間にわたってインビトロで増殖すると考えられる細胞および細胞系を作製するための方法には需要が存在する。発明の概要 本発明は、ヒト細胞およびその他の動物細胞の培養物を含む、細胞の増殖能を高めるために有用な腫瘍細胞系に関する。本発明は特に、細胞の増殖能を高めるために有用なラット甲状腺細胞系(UCHT1)に関する。本発明はまた、このような腫瘍細胞系から調製された馴化培地(conditioned medium)、およびその他の腫瘍細胞系抽出物にも関する。本発明の馴化培地は、不死化細胞系または連続継代細胞系の作製に用いることができる。本発明はさらに、本発明の馴化培地を用いて不死化された細胞系にも関する。 さらにもう1つの面において、本発明は、UCHT1細胞系などの腫瘍細胞系から得られる増殖因子のほか、腫瘍細胞系、その増殖因子、腫瘍細胞系の馴化培地、および/またはその他の腫瘍細胞系抽出物を、細胞の増殖能を高めるために用いる方法にも関する。増殖因子は、さまざまな種、特にラットおよびヒトなどの哺乳動物種の腫瘍細胞系から入手しうる。本発明はまた、腫瘍細胞系増殖因子を用いて、またはこのような腫瘍細胞系増殖因子を含む組成物(例えば、馴化培地および/またはその他の腫瘍細胞系抽出物)を用いて、不死化された細胞系にも関する。1つの特定の態様において、増殖因子は約30kD〜約100kDである。本発明はさらに、完全長腫瘍細胞系増殖因子の断片、類似体または誘導体にも関する。本発明の方法は、増殖持続時間および/または増殖速度を含む、細胞の増殖能を高めるために用いることができる。例えば、本発明の方法により、無限に増殖する上に、細胞の逐次的な分裂の間隔が24時間程度の短さであるような細胞系が作製される。さらに、本発明の細胞は、大規模培養下で増殖させて、インビトロおよびインビボでの生育能力を完全に保ちながら凍結保存することができる。 もう1つの面において、本発明は、細胞を、それを必要とする罹患生物(patient)に対して移植するための方法に関する。これらの方法は、本発明の増殖した細胞を、それを必要とする罹患生物(例えば、ヒトまたはその他の動物)に投与することにより、種々の障害または外傷の症状を緩和するために用いうる。例えば、本発明の増殖した細胞を、病的状態(細胞死、細胞喪失または細胞機能不全に伴う状態など)に冒された罹患生物に対して投与することができる。好都合なことに、本発明の方法を用いると、癌遺伝子を組み入れる必要性を伴わずに、細胞系に対して不死性を付与することができる。したがって、本発明の方法によって作製された、増殖した細胞系の大半は、インビボで非腫瘍形成性である。 本発明の増殖した細胞は、可塑性の点で、全能性もしくは多能性の幹細胞(例えば、成体性または胚性)、前駆細胞または始原細胞から、中枢神経系のもの(例えば、ニューロンおよびグリア)のように高度に特殊化した細胞までの範囲にわたりうる。本発明の増殖した幹細胞は、例えば胚組織、胎児組織、成体組織、臍帯血、末梢血、骨髄および脳を含む、さまざまな源から入手しうる。芽細胞は本発明の方法を用いて増殖させることができる。 本発明の方法を用いて、幹細胞を改変し、その後に増殖させることができる。例えば、幹細胞を遺伝的改変(例えば、遺伝子工学)によって改変させるか、分化誘導物質(differentiation agent)(例えば、栄養因子)または補助的手段(例えば、化学療法、放射線療法など)によって分化させた後に、増殖させることができる。または、幹細胞を増殖させ、その後に改変することもできる。 本発明の方法を用いると、非幹細胞(例えば、ドーパミン産生性ニューロンなどの特殊化した細胞もしくは成熟細胞、またはそれらの前駆細胞もしくは始原細胞)を改変し、その後に増殖させることができる。例えば、非幹細胞を遺伝的改変(例えば、遺伝子工学)によって改変させるか、分化誘導物質(例えば、栄養因子)または補助的手段(例えば、化学療法、放射線療法など)によって分化させた後に、増殖させることができる。または、非幹細胞を増殖させ、その後に改変することもできる。 例えばB細胞およびT細胞を含む、本発明の細胞を、栄養因子または抗体などの種々の生体分子を産生するように、さらには任意のさまざまな生物活性特性を示すように、遺伝的に改変することができる。細胞の遺伝的改変は、本発明の腫瘍細胞系増殖因子による増殖の前、最中または後のいずれに行うこともできる。 当業者には理解されるであろうが、人体には200種を上回る細胞種が存在する。本発明の方法は、これらの細胞種の任意のものを治療またはその他の目的に増殖させるために用いうると考えられる。例えば、外胚葉、中胚葉または内胚葉の胚細胞層から生じる任意の細胞を、本発明の方法を用いて増殖させることができる。当業者には、本発明の方法を獣医学的な目的にも応用しうることが理解されると考えられる。例えば、非ヒト動物の細胞は、罹患したヒトまたは動物(例えば、獣医学的な用途)のいずれにも応用しうる。ヒト、ブタおよびラット由来のドーパミン性ニューロンは、ドーパミンを合成して脳内にシナプス性に放出するという点で類似しているが、それらは免疫学的な点、脳の神経再支配の程度、寿命、および特定のドナーまたはドナー種に付随する感染性因子については差がある。これらの特色を、その個別の強さおよび弱さに関して利用することができる。 本発明は、種々の薬剤のスクリーニングのための薬理学的試験ならびに化粧品産業および製薬産業のための毒性試験を含む、直ちに利用できる研究用の細胞の源を提供する。本発明はさらに、天然の様式または組換え手法により、生体分子の大規模生産のための生物工場として用いうる細胞も提供する。 本発明はさらに、本明細書に開示する本発明の増殖因子、および増殖因子受容体をコードする、DNA配列などのヌクレオチド配列にも関する。これらのヌクレオチド配列は当業者による合成が可能である。これらの配列は、増殖因子またはその受容体を産生する能力を宿主に付与するために適切な宿主を遺伝的に改変する目的で用いてもよい。特に関心が持たれる宿主には、例えば、本明細書に開示する脊椎動物細胞のほか、細菌および酵母が含まれる。本発明はまた、本明細書に開示する増殖因子または増殖因子受容体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターにも関する。発明の詳細な開示 本発明は、不死化細胞または連続継代細胞の培養物が作製されるように、ヒト細胞およびその他の動物細胞の培養物を含む細胞培養物の増殖能を高めるために有用な、Fisher 344ラット甲状腺細胞系(UCHT1)などの腫瘍細胞系に関する。本発明はまた、このような腫瘍細胞系から調製された馴化培地にも関し、これも不死化細胞系または連続継代細胞系を作製するために用いることができる。本発明はさらに、本発明の馴化培地を用いて不死化された細胞系にも関する。 さらにもう1つの面において、本発明は、腫瘍細胞系によって産生された増殖因子、ならびに、腫瘍細胞系、それらの増殖因子、馴化培地および/またはその他の腫瘍細胞系抽出物を細胞の増殖能を高めるために用いる方法に関する。本発明はまた、腫瘍細胞系増殖因子を用いて、またはこのような腫瘍細胞系増殖因子を含む組成物(例えば、馴化培地および/またはその他の腫瘍細胞系抽出物)を用いて、不死化された細胞系にも関する。馴化培地には、増殖因子が腫瘍細胞系によって培地に対して分泌されるかまたは別の様式で送達される形で、本発明の腫瘍細胞系(例えば、UCHT1)を増殖させた培地が含まれうる。1つの特定の態様において、増殖因子は約30kD〜約100kDである。本発明はさらに、本明細書に開示する腫瘍細胞系増殖因子の特徴的な増殖活性の一部またはすべてを保っているポリペプチドである、完全長腫瘍細胞系増殖因子の断片、類似体もしくは誘導体であるポリペプチド、またはこのような配列を含む融合タンパク質にも関する。本発明の方法は、無限に増殖する連続継代細胞系を作製するために用いることができる。これらの増殖した細胞系の多くは、分化マーカーを保持しながら、1年およびそれ以上にわたってインビトロで維持されており、中には10年以上にわたるものもある。本発明の方法を用いることにより、24時間またはそれ未満の短さである細胞分裂期間を実現することが可能である。 本発明の細胞は大規模培養下で増殖させて、生育能力を実質的に保ちながら凍結保存することができる。有益なことに、本発明の方法を用いることで、細胞を形質転換し、標的細胞系の内部に癌遺伝子を組み入れる必要を伴わずに連続継代細胞系を作出することができる。このため、腫瘍細胞系、その増殖因子、腫瘍細胞系から得られる馴化培地またはその他の抽出物は、標的細胞の増強的および/または持続的な増殖を可能にする。腫瘍細胞系は、ヒトを含む非常にさまざまな哺乳動物種から導き出すことができる。1つの態様において、腫瘍細胞系は甲状腺腫瘍細胞系である。もう1つの態様において、腫瘍細胞系は齧歯類の甲状腺腫瘍細胞系(例えば、ラットまたはマウスの細胞系)である。さらにもう1つの態様において、腫瘍細胞系はラット甲状腺細胞系である。1つの特定の態様において、腫瘍細胞系はラット甲状腺腫瘍細胞系UCHT1である。 細胞を増殖させ、それによって不死化細胞系または連続継代細胞系を作製するための本発明による方法は、1つまたは複数の標的細胞をUCHT1細胞系増殖因子などの腫瘍細胞系増殖因子と接触させる段階を含む。増殖因子は細胞の増殖を誘導または促進する。1つの態様において、本方法は、標的細胞をFisher 344ラット甲状腺細胞系UCHT1などの腫瘍細胞系による馴化培地を用いて初代培養下で培養することを含む。約1〜8カ月という範囲内のある期間の後に、細胞は、連続的に分裂するものの分化した状態へと分化する。しかし、本発明の連続継代細胞系を作製するために必要な、腫瘍細胞系増殖因子に対する曝露(例えば、接触)の期間は、標的細胞の種類および接触を行わせる条件によって異なる。例えば、1カ月より短い曝露期間も8カ月より長い曝露期間も考えられる。細胞を増殖させるための方法は、ヒトまたはその他の動物から1つまたは複数の細胞を単離する段階も含みうる。細胞を増殖させるための方法は、選択的には、細胞が分化するように誘導する段階を含みうる。 もう1つの面において、本発明は、細胞を増殖させるための組成物に関する。本発明の組成物は、UCHT1細胞系などの腫瘍細胞系によって産生される増殖因子を含む。1つの態様において、組成物は、腫瘍細胞系増殖因子を含む、腫瘍細胞系の馴化培地である。 本発明の腫瘍細胞系および増殖因子は、Martin GR, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, December 1981, 78(12): 7634-7638に記載された奇形癌幹細胞系(PSA-1)でも因子でもない。 標的細胞が形質転換して連続継代培養物が生じるような期間および様式で、標的細胞を腫瘍細胞系増殖因子(または増殖因子を含む組成物)と接触させるためには、当技術分野で知られたさまざまな培養方法を用いることができる。増殖は、懸濁培養下もしくは固定した基質に細胞を付着させることによるというようなインビトロ条件下、またはインビボ条件下で行わせることができる。例えば、円形瓶のように増殖用の表面積が大きい容器を用いて、細胞を集密化した単層として増殖させることができる。細胞を懸濁状態に保つための電動式機器で瓶を回転または振盪させることができる(例えば、「回転フラスコ」法)。回転培養装置および類似の機器は市販されている(WHEATON SCIENCE PRODUCTS)。 本発明の細胞は、複数の細胞もしくは細胞種の異種混交的な混合物として、またはクローン的に培養下で増殖させることができる。細胞は、それが単細胞の分裂によって生じており、その細胞と遺伝的に同一であれば、クローン的に派生した、またはクローン性を示すと言われる。純化された集団(クローン系統)は、インビトロでの細胞応答性試験、特定の生体分子の効率的な生産、および細胞移植療法のために特に有用であり、これは細胞の遺伝的能力および機能的性質の厳密な実体を容易に特定しうるためである。 本発明の連続継代細胞系を作製するために、標的細胞を、当技術分野で知られたさまざまな方法により、本明細書に開示する腫瘍細胞系増殖因子に曝露させることができる。さらに、本発明の方法を実施するために、Freshney RI編(2000)、「動物細胞の培養:基本的技法マニュアル(Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique)」、第4版、Wiley-Liss, New Yorkに記載された技法を含む、細胞の単離、培養および特徴分析のためのさまざまな技法を利用することができる。例えば、血清またはその他の栄養因子などの種々の物質の存在下または非存在下で、標的細胞を腫瘍細胞系増殖因子に曝露させることができる。 標的細胞の具体的な種類に応じて、非常にさまざまな培地、塩、培地添加物および培地調合用の製品を、本発明の連続継代細胞系を作製するために利用することができる。これらの物質の例には、担体タンパク質および輸送タンパク質(例えば、アルブミン)、生物用界面活性剤(例えば、細胞を剪断力および機械的損傷から保護するため)、生物用緩衝液、増殖因子、ホルモン、ヒドロシレート(hydrosylate)、脂質(例えば、コレステロール)、脂質キャリアー、必須アミノ酸および非必須アミノ酸、ビタミン、血清(例えば、ウシ、ウマ、ヒト、ニワトリ、ヤギ、ブタ、ウサギ、ヒツジ)、血清添加物、抗生物質、抗真菌薬ならびに接着因子が非制限的に含まれる。これらの物質は、さまざまな古典的なおよび/または市販の培地中に存在させることができ、これを本発明に用いることもできる。このような培地には、エイムス培地、イーグル基礎培地(BME)、クリック培地、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、DMEM/F12 Ham栄養混合培地(Nutrient Mixture F12 Ham)、フィッシャー培地、最小必須イーグル培地(MEM)、栄養混合培地(ハム培地)、ウェイマス培地およびウィリアムE培地が非制限的に含まれる。 UCHT1細胞系は、2002年2月1日に以下の国際寄託機関(IDA)に寄託されている:ドイツ微生物および細胞培養物収集機関(Deutsche Sammlung Von Miroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)(Mascheroder Weg 1b、D-38124 Braunschweig, ドイツ)。培養物の寄託番号はDSM ACC2535である。 本特許出願のために寄託された培養物は、米国特許法施行規則1.14条(37 CFR §1.14)および米国特許法122条(35 U.S.C. §122)の下で権利が与えられると特許商標庁長官が定めている者に対する、本特許出願が審理中の間の培養物の入手を保証する条件下で寄託された。寄託物は、本出願の対応物またはその後継物が提出される国における外国特許法により必要とされる場合には入手可能と考えられる。しかし、寄託物を入手可能であることが、行政措置によって付与される特許権の緩和の下で本発明を実施する特許実施権を意味するわけではないことは理解される必要がある。 さらに、主題培養寄託物は、生物材料の寄託に関するブダペスト条約の条項に準拠して保管され、公的に利用可能とされると考えられ、すなわち、それらは寄託物のサンプルの供給に関する最新の請求から少なくとも5年間という一定の期間にわたって汚染されていない生きた状態に保つために必要なすべての管理の下で保管され、いかなる場合にも、寄託日から少なくとも30年間、または培養物の開示を生じる可能性のある任意の特許の有効期間にわたって保管されるものと考えられる。本寄託者は、請求がなされた時に寄託物の状態が理由となって寄託所が供給を行えない場合には、寄託物を交換すべき義務を負うことを認識している。主題培養寄託物の公的な入手可能性に対するすべての制限は、それらを開示する特許が許可された時点で変更不能な形で撤廃されると考えられる。 もう1つの面において、本発明は、本明細書に開示する本発明の腫瘍細胞系増殖因子をコードする、DNA配列などのヌクレオチド配列に関する。本ヌクレオチド配列には、天然の配列だけでなく、コードされるポリペプチドが本明細書に開示する腫瘍細胞系増殖因子の特徴的な増殖活性の一部またはすべてを保っているような、これらの配列の断片、これらの配列の類似体および変異体も含まれる。これらのヌクレオチド配列は当業者によって容易に合成されうる。これらの配列は、本発明の増殖因子の合成のために真核細胞または原核細胞、例えば、細菌細胞、哺乳動物細胞、酵母細胞または真菌細胞を遺伝子的に改変するために用いうる。ポリヌクレオチドを宿主細胞に送達するためのベクターとして利用するために、このようなポリヌクレオチドを用いて、ウイルスを遺伝的に改変することもできる。したがって、さらにもう1つの面において、本発明は、本明細書に開示する本発明の腫瘍細胞系増殖因子をコードするポリヌクレオチドを含むベクターに関する。例となるベクターには、プラスミド、コスミド、ファージ、ウイルス、リポソームおよび脂質結合性担体が含まれる。 宿主細胞の遺伝的改変に用いられる方法はさまざまなものが当技術分野で周知であり、これらは例えば、Sambrookら(1989)「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」、第2版、1-3巻、Cold Spring Harbor Laboratory、New YorkおよびGloves, D.M.(1985)「DNAクローニング、第1巻:実践的アプローチ(DNA Cloning, Vol. I. A Practical Approach)」、IRL Press、Oxfordに記載されている。したがって、DNAをその源から抽出すること、制限酵素による消化を行うこと、DNA断片の電気泳動を行うこと、プラスミドのテーリングおよびアニーリングを行ってDNAを挿入すること、DNAを連結すること、細胞、例えば原核細胞および真核細胞の形質転換を行うこと、プラスミドDNAを調製すること、タンパク質の電気泳動を行うこと、ならびにDNAの配列を決定することは、遺伝子工学の当業者の技能の範囲に含まれる。 本発明の方法を用いて、幹細胞を改変し、その後に増殖させることができる。例えば、幹細胞を遺伝的改変(例えば、遺伝子工学)によって改変させるか、分化誘導物質(例えば、栄養因子)または補助的手段(例えば、化学療法、放射線療法など)によって分化させた後に、増殖させることができる。または、幹細胞を増殖させ、その後に改変することもできる。 本発明の方法を用いると、非幹細胞(例えば、ドーパミン産生性ニューロンなどの特殊化した細胞もしくは成熟細胞、またはそれらの前駆細胞もしくは始原細胞)を改変し、その後に増殖させることができる。例えば、非幹細胞を遺伝的改変(例えば、遺伝子工学)によって改変させるか、分化誘導物質(例えば、栄養因子)または補助的手段(例えば、化学療法、放射線療法など)によって分化させた後に、増殖させることができる。または、非幹細胞を増殖させ、その後に改変することもできる。 したがって、幹細胞および非幹細胞(例えば、特殊化した細胞もしくは成熟細胞、またはそれらの前駆細胞もしくは始原細胞)を、本発明の方法を用いて、増殖の前、最中および/または後に随意選択的に改変することができる。改変は以下の介入の1つまたは複数によるものでありうる:遺伝的改変、分化誘導物質または補助的手段による分化など。誘導される分化は、任意のさまざまな表現型経路に沿った部分的な分化または完全な分化のいずれでもよく、これには細胞の形態および/または機能の変化が含まれうる。標的細胞 本発明の増殖した細胞は、ヒト、または非ヒト霊長類、齧歯類およびブタなどを含むその他の哺乳動物に由来しうる。源となる種の具体例には、類人猿、チンパンジー、オランウータン、ヒト、サル;イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ダルマブタ、ウサギおよびフェレットなどの飼い慣らされた動物(ペット);ウシ、バッファロー、バイソン、ウマ、ロバ、ブタ、ヒツジおよびヤギなどの家畜;動物園で通常みられる外国産動物、例えばクマ、ライオン、トラ、パンサー、ゾウ、カバ、サイ、キリン、レイヨウ、ナマケモノ、ガゼル、シマウマ、ウィルドビースト、プレーリードッグ、コアラ、カンガルー、オポッサム、アライグマ、パンダ、ジャイアントパンダ、ハイエナ、アザラシ、アシカ、ゾウアザラシ、ネズミイルカ、イルカおよびクジラなどが非制限的に含まれる。標的細胞が魚類などの非哺乳動物に由来してもよい。 本発明の増殖した細胞は、可塑性の点で、全能性もしくは多能性の幹細胞(例えば、成体性または胚性)、前駆細胞または始原細胞から、中枢神経系のもの(例えば、ニューロンおよびグリア)のように高度に特殊化した細胞までの範囲にわたりうる。幹細胞は、胎児組織、成体組織、臍帯血、末梢血、骨髄および脳などを含む、さまざまな源から入手しうる。幹細胞および非幹細胞(例えば、(例えば、特殊化した細胞もしくは成熟細胞、またはそれらの前駆細胞もしくは始原細胞)を、本発明の方法を用いて、増殖の前、最中および/または後に分化させること、および/または遺伝的に改変することが可能である。本明細書で用いる「胚」という用語は、桑実胚、胚盤胞、嚢胚および神経胚を含むものとする。例えば、芽細胞を本発明の方法を用いて増殖させることができる。 クローン化細胞、受精卵および未受精配偶子を本発明の方法に従って増殖させることもできる。例えば、受精卵または未受精配偶子は、生殖目的またはクローニングの目的に用いることができる。 本発明の方法を用いて増殖させうる、その他の細胞の例には、胎児、新生児および成体由来の黒質ドーパミン作動性ニューロン;胎児、新生児および成体由来の、中脳および線条体からのグリア細胞系;胎児、新生児および成体由来の、線条体または皮質を含む脳のさまざまな領域からのGABA作動性細胞;胎児、新生児および成体由来の線条体、中隔および基底核からのコリン作動性ニューロン;ならびに胚、新生児または成体由来の視床下部外側部、縫線核背核または後脳からのセロトニン作動性ニューロンを含む、神経細胞が非制限的に含まれる。胎児、新生児および成体由来の、中脳、線条体、皮質、皮質下白質、脊髄またはシュワン細胞を含むさまざまな領域からのグリア細胞。 当業者には理解されるであろうが、人体には200種を上回る細胞種が存在する。本発明の方法は、これらの細胞種の任意のものを治療またはその他の目的に増殖させるために用いうると考えられる。例えば、外胚葉、中胚葉または内胚葉の胚細胞層から生じる任意の細胞を、本発明の方法を用いて増殖させることができる。このような細胞には、ニューロン、グリア細胞(アストロサイトおよびオリゴデンドロサイト)、筋細胞(例えば、心筋、骨格筋)、軟骨細胞、線維芽細胞、メラノサイト、ランゲルハンス細胞、ケラチノサイト、内皮細胞、上皮細胞、色素細胞(例えば、メラノサイト、網膜色素上皮(RPE)細胞、虹彩色素上皮(IPE)細胞)、肝細胞、微小血管細胞、周皮細胞(ルジェ細胞)、血液細胞(例えば、赤血球)、免疫系の細胞(例えば、Bリンパ球およびTリンパ球、プラズマ細胞、マクロファージ/単球、樹状細胞、好中球、好酸球、マスト細胞)、甲状腺細胞、副甲状腺細胞、下垂体細胞、膵臓細胞(例えば、インスリン産生性β細胞、グルカゴン産生性α細胞、ソマトスタチン産生性δ細胞、膵臓ポリペプチド産生細胞、膵管細胞)、間質細胞、セルトリ細胞、脂肪細胞、細網細胞、桿体細胞および有毛細胞が非制限的に含まれる。本発明の方法を用いて増殖させうる細胞種のその他の例には、Spier R.E.ら編(2000)「細胞技術辞典(The Encyclopedia of Cell Technology)」、John Wiley & Sons, Inc.およびAlberts B.ら編(1994)「細胞の分子生物学(Molecular Biology of the Cell)」、第3版、Garland Publishing, Inc.、例えば1188-1189ページに示されたものが含まれる。 幹細胞の同定および分化した細胞種の特徴分析のために一般に用いられる方法およびマーカーは、科学文献(例えば、National Institutes of Healthが作成した報告書である「幹細胞:科学的進歩および今後の研究の方向(Stem Cells:Scientific Progress and Future Research Directions)」、補遺E1-E5, June, 2001を参照されたい)に記載されている。幹細胞を含むことが報告されている成体組織のリストは増えつつあり、これには骨髄、末梢血、臍帯血、脳、脊髄、歯髄、血管、骨格筋、皮膚および消化器の上皮、角膜、網膜、肝臓ならびに膵臓が含まれる。 本発明の方法によれば、幹細胞を、腫瘍細胞系、腫瘍細胞系馴化培地、その他の腫瘍細胞系抽出物との接触により、または精製した増殖因子それ自体との接触により、腫瘍細胞系増殖因子に曝露させることができる。幹細胞は、芽細胞期、始原細胞期、幹細胞期といった発生のさまざまな段階、さらには分化した始原細胞へと分化能が決定された段階にある時点で、腫瘍細胞系増殖因子に曝露させることができる。分裂性の細胞は、ドナー組織が馴化培地に曝露される時点での、インビトロでの発生段階に応じた分化状態を維持することが予想される。 本発明の方法を用いると、幹細胞を、分化誘導物質(例えば、栄養因子)、遺伝的改変(例えば、遺伝子工学)または補助的手段(例えば、化学療法、放射線療法など)によって分化させ、その後に増殖させることができる。または、幹細胞を増殖させ、その後に改変することもできる。 未分化幹細胞は、それらが特定の細胞種(例えば、ドーパミン性ニューロン)になるように分化能が決定される時点まで培養した後に、罹患生物に投与して、宿主の内部(例えば、宿主脳の内部)で増殖および分化を完了させることができる。または、分化能がそれほど決定されていない幹細胞を、それらが適切な種類の補充用細胞となるように「環境」シグナルに導かれることを頼りにして、罹患生物に投与することもできる。 本発明の細胞は、増殖が停止するところまで増殖速度が低下するように誘導することができる。例えば、増殖速度が培養下での基礎的速度よりも大きくなるように、本発明の方法を用いて細胞を増殖させた場合には、単に、増殖中の細胞を増殖因子との接触状態から取り除くこと、または増殖因子を細胞との接触状態から取り除くことにより、増殖が停止するように誘導することができる。増殖を維持するための増殖因子との接触がもはや必要でなくなるまで、細胞を不死化させる(それによって連続継代細胞系を作製する)のに十分な期間にわたって増殖因子を用いて細胞を増殖させた場合には、以下に述べるように、血清除去などの分化手順によって、または細胞を以下に述べる1つもしくは複数の分化誘導物質と接触させることによって細胞を分化させることにより、細胞が増殖を停止するように誘導することができる。有益なことに、罹患生物に対する投与の前に、本発明の細胞が増殖を停止するように誘導することができる。 本発明の方法は、分化した特質の少なくとも一部を保った細胞の増殖を可能にするものの、本発明の細胞を、その細胞の可塑性に応じて、特定の発生経路に沿ってさらに分化するように誘導することもできる。例えば、細胞増殖が停止している場合には、本発明の細胞を、出発した細胞材料の正確な細胞種を有する「野生型」細胞、および、出発した細胞の特性の少なくとも一部を保つ、またはその産物の少なくとも一部を産生するが、出発した細胞種へと完全には分化していない「野生型様」細胞を非制限的に含む、連続体に沿って分類することができる。 細胞種に応じて、細胞の分化は、細胞増殖をもたらす生物学的イベントのカスケードを活性化する、当技術分野で知られた任意の方法によって誘導することができる。例えば、フラスコ、プレートもしくはカバーグラス、またはコラーゲン、フィブロネクチン、ラミニンもしくはMATRIGEL(Collaborative Research)などの細胞外マトリックス調製物の支持体などの固定基質上に細胞をプレーティングすることにより、または馴化培地の除去により、細胞が分化するように誘導することができる。細胞を、MATRIGELをコーティングした培養皿の中およびカバーグラス上でインキュベートしてゲル化を行わせ、その後に処理した表面に播くことができる(Cardenas, A.M.ら、Neuroreport., 1999, 10: 363-369)。分化は、1%ウシ血清ならびにいずれも10μg/mlのインスリンおよびトランスフェリンを含むGMに移すことによって誘導することができ、この際、分化用培地は1%ウシ血清および1%ストック用添加物を加えたF12/D培地である(Liberona, J. L.ら、Muscle & Nerve, 1998, 21: 902-909)。融合速度を高めるためにウマ血清を用いることができる。そのほかの分化手順および物質は、例えば、Caviedes, R.ら、Brain Research, 1996, 365: 259-268(この場合は、集密に達する前の培養物を完全増殖培地+2%ジメチルスルホキシド中で10日間培養した)およびArrigada, C.ら、Amino Acids, 2000, 18(4): 363-373(この場合、分化用培地はDMEM/Ham F12栄養混合培地に2%成体ウシ血清および1%(v/v)N3添加物および1%(v/v)Site+3(SIGMA)を添加したものからなり、細胞を1週間かけて分化させた)に記載されている。 細胞は1つまたは複数の分化誘導物質(例えば、栄養因子、ホルモン補給剤(hormonal supplement))との接触によって分化するように誘発することができ、これには例えば、フォルスコリン、レチノイン酸、プトレッシントランスフェリン、コレラ毒素、インスリン様増殖因子(IGF)、トランスフォーミング増殖因子(例えば、TGF-α、TGF-β)、腫瘍壊死因子(TNF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮増殖因子(EGF)、顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子(GM-CSF)、肝細胞増殖因子(HGF)、ヘッジホッグ(hedgehog)、血管内皮増殖因子(VEGF)、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、血小板由来増殖因子(PDGF)、酪酸ナトリウム、酪酸、サイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)、cAMP誘導体(例えば、ジブチリルcAMP、8-ブロモ-cAMP)、ホスホジエステラーゼ阻害剤、アデニル酸シクラーゼ活性化物質、プロスタグランジン、毛様体神経栄養因子(CNTF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン3、ニューロトロフィン4、インターロイキン(例えば、IL-4)、インターフェロン(例えば、インターフェロン-γ)、白血病抑制因子(LIF)、カリウム、アンフィレギュリン、デキサメタゾン(グルココルチコイドホルモン)、イソブチル3-メチルキサンチン、ソマトスタチン、リチウムおよび成長ホルモンなどがある。 本発明は、種々の薬剤のスクリーニングのための薬理学的試験ならびに化粧品産業および製薬産業のための毒性試験を含む、直ちに利用できる研究用の細胞の源を提供する。本発明の細胞は、細胞に対する合成物質または生物因子の影響を判定するための方法に用いることができる。「生物因子(biological agent)」とは、ウイルス、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質、糖質、核酸、ヌクレオチド、薬物、プロドラッグといった生物由来の任意の作用物質、または細胞に対して何らかの影響を及ぼすと考えられるその他の物質のことを指し、このような影響が有害、有益またはそれ以外のいずれであるかは関係ない。したがって、本発明の細胞は、例えば、特定の細胞の種々の代謝経路に影響を及ぼす化合物および因子のアゴニストおよびアンタゴニストのスクリーニングのために用いることができる。細胞の選択は、具体的な被験物質およびに実現しようとする効果に依存すると考えられる。例えば、心筋細胞系由来の細胞は膜電位の変化を評価するためにインビトロで用量増加的な様式でインキュベートしうる、等である。アドリアマイシンの投与などの化学療法は心毒性の原因となることが知られている。このため、本発明の心筋細胞系は、この種の化学療法を心毒性に関して試験するために有用である。例えば、実施例5に記載した本発明のRCVC細胞系を種々の合成物質または生物因子に曝露させ、対照(例えば、作用物質の非存在下)における生理学的基準との比較により、細胞の生理に対する作用物質の影響を判定することができる(Caviedes, P.ら、J Molec. & Cell Cardiol., 1993, 25(1993): 829-845)。さらに、スルホンアミドは膵臓腺房細胞の毒性を誘発する。このため、本発明の膵臓腺房細胞系およびその他の細胞系は、このような作用物質の毒性を試験するために有用と考えられる。図19A〜B、20A〜C、21A〜Bおよび22A〜Bに示されたように、本発明の方法を用いて作製したRCSN-3細胞は、ドーパミン作動性神経細胞の特徴的な特性をインビトロで示し、神経変性誘発物質に対して曝露させるとアポトーシス現象を呈した。多くの薬剤が肝障害を誘発することが知られている。このため、これに対処するために、本発明の肝細胞系を毒性試験のために用いることができる。本発明の方法に従って、腎細胞系を増殖させ、同じように用いることもできる。 細胞に対する合成物質または生物因子の影響は、発現された表現型の比、細胞の生存度および遺伝子発現の変化などの基準に関する、対照培養物との比較による有意差に基づいて特定することができる。細胞の物理的な特徴は、細胞の形態および増殖を顕微鏡下で観察することによって分析しうる。酵素などのタンパク質、受容体および他の細胞表面分子、アミノ酸、ペプチドならびに生体アミンなどのレベルの上昇または低下は、このような分子のレベルの変化を同定することが可能な、当技術分野で知られた任意の技法を用いて分析することができる。これらの技法には、このような分子に対する抗体を用いる免疫組織化学、または生化学分析が含まれる。このような生化学分析には、タンパク質アッセイ、酵素アッセイ、受容体結合アッセイ、固相酵素免疫アッセイ(ELISA)、電気泳動分析、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析、ウエスタンブロット法およびラジオイムノアッセイ(RIA)が含まれる。ノーザンブロット法およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの核酸分析は、これらの分子をコードする、またはこれらの分子を合成する酵素をコードするmRNAのレベルを調べるために用いうる。 または、これらの作用物質で処理した細胞を動物に移植し、その生存ならびに生化学的および免疫学的な特徴を前記の通りに調べることもできる。 増殖した細胞は、ワクチン生産用のウイルス粒子を増殖させるため、またはその他の目的のためのプラットフォームとして用いることができる。例えば、ヒト子宮頸部上皮を培養下で増殖させ、ワクチンの開発に際してパポパウイルスの扶助に用いることができる。また、胎児腎細胞は数種類のワクチンの生産のために一般に用いられている。 本発明の方法によって増殖した細胞は、細胞が疾患のインビトロモデルとなるように、天然の欠陥または誘発された欠陥を有することができる。正常細胞に関して上に述べたように、これらの細胞は疾患モデルにおける合成物質または生物因子の影響を検討するために用いることができる。例えば、神経系の安定したインビトロモデルが樹立されれば、種々の神経疾患に対して迅速かつ的確に対処するための重要なツールになると考えられる。すなわち、元の組織と類似した機能不全の機序を有し、治療法の候補および/または細胞機能のさらなる変化を検討するためのモデルとして役立つと考えられる、本発明の方法に従って増殖させた細胞系を得ることができる。例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの患者から単離した筋肉は、この疾患と関連のある特有の生化学的および遺伝的な異常を調べるために用いることができる。 さらに、本発明の細胞を、細胞特異的タンパク質に対する抗体を作製し、細胞種と細胞マトリックス成分との間の相互作用を解明するために用いることもできる。免疫細胞は、免疫療法として罹患生物に投与するために増殖させることができる。例えば、特定の抗癌特性を有するB細胞系およびT細胞系を増殖させ、細胞ワクチン療法のために用いることができる(Couzin, J. Science, September 20, 2002, 297: 1973;Dudley M.E.ら、Science, October 25, 2002, 298: 850-854)。さらに、腫瘍壊死因子を標的とする抗体産生性細胞系を、関節リウマチまたは乾癬性関節炎およびその他の自己免疫疾患の治療に用いることもできる。細胞表面マーカーに対する抗体を作製して、細胞の異種混成的な集団から細胞選別システムを用いて部分集団を精製するために用いることもできる。本発明の細胞の膜断片を用いて、当技術分野で知られた方法に従ってモノクローナル抗体を作製し(Kohlerら、Nature, 1975, 256: 495;Kohlerら、Eur. J. Immunol., 1976, 6: 511-519)、さまざまな細胞系を用いてスクリーニングして、細胞特異性を示す抗体を同定することができる。さらに、細胞特異的なモノクローナル抗体を、細胞表面マーカーを精製してその機能を同定するために用いることもできる。本発明の幹細胞および前駆細胞を例えばβ-ガラクトシダーゼを用いて標識し、その個体発生を不均一な細胞環境および栄養環境下で追跡することもできる。 ひとたび不死化細胞系が樹立されれば、細胞から得た遺伝物質をcDNAライブラリーの構築に用いることができる。cDNAライブラリーを作製するための方法は当技術分野で周知である(Sambrookら(1989)「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Springs Harbor, N.Y.;Ausabelら編、「分子生物学における最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」、John Wiley and Sons, Inc. New York)。細胞を分化のさまざまな段階で選別することにより、分化経路における特定の段階とかかわる生物学的機能を、cDNAライブラリーを細胞のmRNAからひとたび作製することで同定することができる。このライブラリーは、分化因子、成長ホルモンならびにその他のサイトカインおよび増殖因子といった、特定の細胞種によって産生される新規因子をクローニングするために用いうる。 本発明の方法によって作製された細胞系を、cDNAライブラリーに対して補完的な、タンパク質ライブラリーの作製に用いることもできる。ライブラリーから得られたアミノ酸配列情報により、目的のタンパク質をコードするcDNAの迅速な単離が可能となる。タンパク質とcDNAライブラリーとの組み合わせにより、特に関心が持たれる配列を標的としたクローニングも容易になる。タンパク質ライブラリーは、例えば、既知の方法に従って細胞からタンパク質(全タンパク質または目的の画分)を抽出し、タンパク質を二次元ゲル電気泳動によって分離することによって作製される。単離したタンパク質は、続いてインサイチュー消化(例えば、トリプシン消化)にかけ、その後にミクロボアHPLCによる分離を行うことができる。分離した断片は、その後に質量分析によって分析しうる。その結果得られた質量プロファイルを、タンパク質の実体を推測するために、タンパク質配列データベースで検索することができる。同定されていないペプチドはエドマン分解によって配列を決定することができる。その結果得られるcDNAライブラリーおよびタンパク質ライブラリーは、新たなタンパク質およびそれらをコードする配列の有用な源である。細胞の産物 本発明の方法を用いて細胞を増殖させ、その細胞の産物を、当技術分野で知られた方法を用いて採取することができる。本発明の方法を用いて増殖させた遺伝子改変(genetically modified)細胞または非遺伝子改変細胞によって産生された種々の生体分子を、薬剤の製造および薬理試験といったさまざまな用途のために採取すること(例えば、当技術分野で知られた方法を用いて生体分子産生細胞から単離すること)ができる。したがって、本発明の方法を用いることで、連続的に増殖する細胞を作製するために細胞を増殖させ、外因性DNAの産物および/または細胞の天然産物をインビトロまたは動物体内のインビボに提供するための生物「工場」として用いることができる。「生体分子」という用語は、細胞によって産生されうる任意の1つまたは複数の分子のことを指す。このような生体分子には、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質、糖質、核酸、ヌクレオチド、ウイルスおよびその他の物質が非制限的に含まれる。生体分子のいくつかの具体例には、脳由来増殖因子(BDNF)およびグリア由来神経栄養因子(GDNF)などの栄養因子、ホルモンおよび増殖因子が含まれる。例えば、下垂体細胞を成長ホルモンの生産のために増殖させることができる;腎細胞をプラスミノーゲン活性化因子の生産のために増殖させることができる;骨細胞を骨誘導タンパク質(BMP)または骨融合もしくは補綴外科手術にかかわるその他のタンパク質の生産のために増殖させることができ(Urist, M. R.およびStrates, B. S. J. Dent. Res. Suppl., 1971, 50: 1392-1406;Boden, S. D.ら、Spine, 1995, 20: 2633-2644;Boden, S. D.およびSumner, D. R. Spine, 1995, 20(Suppl. 24):1025-1125)、さらにA型肝炎抗原は増殖させた肝細胞によって生産させることができる。細胞を、さまざまなウイルスワクチンおよび抗体を生産するために増殖させることが可能である。インターフェロン、インスリン、血管新生因子、フィブロネクチンおよび他のさまざまな生体分子を、細胞を増殖させて連続継代細胞系を樹立することによって生産することができる。生体分子は例えば、細胞内のものでも膜貫通性でもよく、または細胞によって分泌されてもよい。細胞の投与 もう1つの面において、本発明は、本発明の不死化細胞からの細胞を、それを必要とする罹患生物(例えば、ヒトまたはその他の動物)に投与することにより、さまざまな障害または外傷を治療するための方法に関する。選択的には、増殖した細胞を、罹患生物に対する投与の前に、本発明の増殖因子から単離すること(接触状態から取り除くこと)ができる。有益なことに、本発明の細胞は癌遺伝子の組み入れを必要とせず、インビトロまたはインビボで増殖を停止するように誘導しうるため、それらは分化した表現型をインビトロまたはインビボで発現することができる。本発明の細胞系の大半はインビボで非腫瘍形成性である。このため、特定の細胞系が非腫瘍形成性であることを当技術分野で知られた方法を用いて判定し、その細胞をそれを必要とする罹患生物に対して投与することができる。 本発明の細胞系は、病態発生のさまざまな段階にある、非常にさまざまな疾病状態および病的状態の症状を緩和するための細胞療法として投与することができる。例えば、本発明の細胞を、急性疾患(例えば、脳卒中または心筋梗塞)の治療のために用い、急性期、亜急性期または慢性状態において投与することができる。同様に、本発明の細胞を慢性疾患(例えば、パーキンソン病、糖尿病または筋ジストロフィー)の治療のために用い、予防的に(preventatively and/or prophylactically)、疾病状態の早期、中等度の疾病状態、または重度の疾病状態において投与することもできる。例えば、本発明の細胞を、罹患生物自身の障害性、喪失性または別の様式の機能不全細胞を補充または代償する目的で、1つもしくは複数の標的部位または罹患生物の体内に投与することができる。これには、細胞を罹患生物の血流に注入することが含まれる。投与する細胞は、障害性、喪失性または別の様式の機能不全細胞種と同じ細胞でもよく、異なる細胞種の細胞でもよい。例えば、インスリン産生性膵島β細胞を、本発明の他の種類の細胞を加えた上で、肝臓に投与することができる(Goss, J.A.,ら、Transplantation, December 27, 2002, 74(12): 1761-1766)。本明細書で用いる場合、本発明の細胞を「必要とする」罹患生物には、待機的美容外科手術などの待機的手術を望んでいる患者が含まれる。 本発明の細胞は、例えば、自己移植片、同種同系移植片、同種異系移植片および異種移植片として投与することができる。本明細書で用いる「移植片」という用語は、ヒトまたはその他の動物の体内への移植を意図した1つまたは複数の細胞のことを指す。このため、移植片は例えば、細胞移植片でも組織移植片でもありうる。 増殖した細胞は、細胞を送達しようとする1つまたは複数の解剖学的部位に応じて、血管内、頭蓋内、大脳内、筋肉内、皮内、静脈内、眼内、経口的、経鼻的、局所外用的といった任意の送達方法により、または観血的外科処置により、罹患生物に投与することができる。増殖した細胞は、直視下心臓手術中の心臓内もしくは定位手術中の脳内などのように直視的な様式で、または特定の臓器の血液供給路に向かうカテーテルを用いる血管内インターベンション法により、または糖尿病に対する膵臓細胞の肝内動脈注射などのインターベンション法により、投与することができる。 本発明の細胞は、単離された状態で、細胞および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物中にある状態で、罹患生物に投与することができる。本明細書で用いる場合、薬学的に許容される担体には、溶媒、分散媒、被覆物、抗菌薬および抗真菌薬、等張剤などが含まれる。薬学的組成物は、薬学的に有用な組成物を調製するための既知の方法に従って製剤化しうる。製剤は、当業者に知られていて容易に利用しうるさまざまな出典に記載されている。例えば、「レミントン薬学(Remington's Pharmaceutical Science)」(Martin EW, Easton Pennsylvania, Mack Publishing Company, 第19版)には、本発明に際して用いうる製剤が記載されている。例えば、非経口的投与に適した製剤には、水性の滅菌注射液(これは抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および製剤を想定レシピエントの血液と等張にする溶質を含みうる);ならびに水性および非水性の滅菌懸濁液(これは懸濁化剤および濃稠化剤を含みうる)が含まれる。以上に個別に述べた成分に加えて、本発明の製剤が、当該の製剤の種類および投与経路を考慮した上で、当技術分野で一般的な他の作用物質も含みうることは理解される必要がある。 本発明の細胞は、固体、液体、半固体などとして製剤化しうる種々の担体の表面または内部にある状態で投与することができる。例えば、遺伝子改変細胞または非遺伝子改変細胞を注射用ヒドロゲル組成物(米国特許第6,129,761号)中に懸濁し、または微粒子(例えばマイクロカプセル)内に封入し、これを罹患生物に投与して、選択的には標的の解剖学的部位で放出させることができる(Read T.A.ら、Nature Biotechnology, 2001, 19: 29-34, 2001;Joki T.ら、Nature Biotechnology, 2001, 19: 35-38;Bergers G.およびHanahan D.、Nature Biotechnology, 2001, 19: 20-21;Dove A. Nature Biotechnology, 2002, 20: 339-343;Sarkis R. Cell Transplantation, 2001, 10: 601-607)。 マイクロカプセルは種々のポリマーから構成されたものでよく、その内容物には、細胞に加えて酵素およびその他の材料が含まれうる。マイクロカプセルは、内容物が漏出して免疫反応を引き起こすことを防ぎながら、栄養分および代謝産物の自由な交換は許容されるような方式で作製することが好ましい。肝細胞のマイクロカプセル化は、いわゆる「バイオ人工肝臓補助装置」(BLAD)の作製に用いられている。球状マイクロカプセルは表面-体積比が大きいため、膜を介した栄養分、気体または代謝産物の交換による最大限の輸送が容易になる。さらに、生きた細胞の封入は、適した基質を選択し、以下に述べるような制御放出の特徴を組み入れることを介して、最適な細胞機能が得られるように微小環境をより適切に制御することを可能にする。このようなデバイスは、本発明の方法に従って増殖させたさまざまな種類の細胞の送達に用いることができる。マイクロカプセルは、複数の種類の細胞を内容物として運ぶことができる。例えば、膵島細胞をセルトリ細胞とともに封入した上で罹患生物に投与することができる。 担体は、生体適合性があって選択的には生分解性であることが好ましい。適した担体には、細胞および/または細胞により産生された生物性因子が、標的となる1つまたは複数の解剖学的部位で担体から制御放出的な様式で放出される、制御放出システムが含まれる。放出の機序には、例えばpH条件、温度または内因性もしくは外因性酵素による担体の分解が含まれうる。 本発明の細胞は、合成スカフォールドまたは生体組織スカフォールドなどの種々のスカフォールドの内部または表面にある状態で投与することができる(Griffith G.およびNaughton G., Science, 2002, 295: 1009-1013;Langer R., Stem Cell Research News, April 1, 2002, pp.2-3)。多孔性スカフォールド構築物は、選択的には架橋性である、生体鉱物(例えば、リン酸カルシウム)およびポリマー(例えば、アルジネート)などの種々の天然マトリックスおよび合成マトリックスから構成されてよく、それらは細胞増殖のため、最終的には組織形成のためのテンプレートとしての役を果たす。スカフォールドの孔のサイズおよび形態の三次元的調節、機械的特性、分解および再吸収の動態、ならびに表面トポグラフィーは、細胞の集落化の速度および構築されたスカフォールド/組織構築物の内部の構造を制御する目的に最適化することができる。このようにして、スカフォールドの形態および特性を、生物活性物質(例えば、タンパク質、ペプチドなど)および細胞の分布の制御が行えるように操作することができる。増殖した細胞の送達用の媒体として用いることに加えて、細胞をインビトロで増殖させるためにスカフォールドを利用することもできる。選択的には、本発明の方法を用いて、スカフォールド自体の表面上で細胞を増殖させることができる。 スカフォールドは、必要に応じて相互接続した孔のネットワークを含むことができ、これは軟骨性マトリックス成分の接着、増殖および生合成を促進しうる。例えば、本発明の骨細胞(軟骨細胞など)を有する合成スカフォールドまたは生体スカフォールドを、それを必要とする罹患生物に対して投与することができる。生体適合性があってインビボで酵素的に分解されるキトサンスカフォールドに本発明の方法に従って増殖した軟骨細胞を播種した上で移植することができる。アルジネートスカフォールドを心臓弁の形に造り、本発明の増殖した細胞を播種した上で、それを必要とする罹患生物の体内に移植することもできる。アルジネートには本来、細胞のための足場がないため、細胞の付着を促進するためには、ペプチド配列R-G-D(アルギニン-グリシン-アスパラギン酸)を細胞のインテグリンに対するリガンドとして作用させるために利用し、それをアルジネートと連結させるとよい。 本発明の細胞は、治療的有益性を得るために有効な量として罹患生物に投与されることが好ましい。「治療的有効量」とは、病的状態を治療するのに有効な量のことである。本発明の目的に関して、「治療する」または「治療」という用語は、治療しようとする病的状態の発生を予防する、抑制する、減少する、および/または、その病的な影響を緩和することを含む。細胞は約104個〜約1010個の範囲の量として罹患生物に投与することが好ましい。細胞を約107個〜約1010個の範囲の量として罹患生物に投与することがより好ましい。細胞の投与量は、投与後の細胞生存率、通常の状態で生理的応答を誘導するために必要な細胞の数、および罹患生物の種といった要因を考慮した上で、当業者により決定されうる。 開示した治療方法によって利益を受ける哺乳動物種には、以下のものが非制限的に含まれる:類人猿、チンパンジー、オランウータン、ヒト、サル;イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ダルマブタ、ウサギおよびフェレットなどの飼い慣らされた動物(ペット);ウシ、バッファロー、バイソン、ウマ、ロバ、ブタ、ヒツジおよびヤギなどの家畜;動物園で通常みられる外国産動物、例えばクマ、ライオン、トラ、パンサー、ゾウ、カバ、サイ、キリン、レイヨウ、ナマケモノ、ガゼル、シマウマ、ウィルドビースト、プレーリードッグ、コアラ、カンガルー、オポッサム、アライグマ、パンダ、ジャイアントパンダ、ハイエナ、アザラシ、アシカ、ゾウアザラシ、ネズミイルカ、イルカおよびクジラなど。本明細書で用いる「罹患生物」という用語は、本発明の細胞のレシピエントのことを指す。例えば、適した罹患生物には前記の哺乳動物種が含まれる。 本発明の細胞系には、移植の目的に現在用いられている、当技術分野で知られた他の細胞を上回る利点がある。本発明の細胞系はヒト由来でありうる。本発明は、通常であれば分裂しない細胞または極めて緩徐に分裂する細胞細胞(例えば、ドーパミン作動性ニューロンまたはインスリン産生性β細胞)を増殖させることを可能にし、これは生体分子の生産の目的および細胞療法の観点からは重要な面である。このため、このような細胞は、免疫学的な観点から臨床的な同種異系移植片として利用することができ、十分な量が入手可能であり、優良製造工程を用いて製造することができ、その上、非増殖性細胞に混入する可能性のある他の細胞種または幹細胞から派生した細胞による混入を伴わずに作製することができる。これらの細胞は凍結保存が可能であり、待機的手術に利用することができ、使用前に標準化および特徴分析を行うことができる。これらの細胞は非分裂性にすることができる上、既知のHLA型を持たせることができ、これは有益な免疫学的適合化もしくは意図的不適合化を容易にする、または免疫学的に適合化された多数の細胞系の作製を可能にする。 本発明の方法を用いて、異なるドナーから、それらの由来であるドナーに基づき、表面抗原の免疫学的発現のみの点に違いのある多数の同一な細胞系を作出することができる。このため、ある特定のレシピエント候補に対して高い免疫学的適合性を有する細胞系を、さらに厳密にカスタマイズすることができる。このため、この技法を用いて、ドナーと免疫学的な適合性のあるドナー特異的な細胞系を作製すること、または、意図的な不適合性がある類縁性の細胞系を作製すること(それが望まれる場合、例えば、遺伝的に不適合性のある細胞系を有することが望まれる遺伝子障害における移植の場合)が可能である。ヒト集団の種々の組織型ならびに現在の免疫抑制法に基づき、米国および欧州におけるアングロサクソン系患者全体の70%〜80%に認められるABO抗原とII型抗原との組み合わせの大半に対しては、せいぜい12種の細胞系でドナー源として十分と考えられることが明らかになっている。さらに、ドナーがO型であれば、11種未満の細胞系で十分なドナー源であると考えられる。 全身性移植(例えば、膵臓)のために、多数の異なる細胞系を作製することができる。このようにして、十分な細胞系を入手できれば、各々の罹患生物に類似した細胞系を入手することができ、拒絶のリスクが最小限に抑えられる。さらに、罹患生物が第2の移植物を必要とする場合には、第1のものと免疫学的に異なる細胞系を移植することができ、第1の細胞系移植物に対する二次移植片拒絶の誘導は起こらないと考えられる。さらに、細胞系が罹患生物と厳密には免疫学的に同一でない場合には、免疫抑制の中止によって移植片拒絶反応が引き起こされると考えられる。この戦略は、移植した細胞が多すぎた場合、または予想外の有害事象が生じた場合に害を取り除く目的に用いることができる。CNSでは、免疫学的に不適合性の細胞は、免疫抑制がなされなくとも拒絶されない。このため、安全性の目的から、害が生じた場合には神経移植片を拒絶させうる必要がある。このためには、神経細胞系および皮膚細胞系(または例えば、ドーパミン作動性ニューロン、網膜色素上皮細胞、腎細胞および皮膚細胞。これらをCNSに移植する場合)を同一のドナーから増殖させることが必要と考えられる。免疫学的に同一な皮膚細胞系の同所性移植(末梢への)は、神経移植片の二次移植片拒絶を誘導すると考えられる(Freed, W.J., Biological Psychiatry [1983] 18: 1204-1267;Nicholas, M.K.ら、J. Immunology [1987] 139: 2275-2283;Mason D.W.ら、Neuroscience [1986] 19: 685-694)。 治療能力を高めるために、細胞系の組み合わせを同時投与することができる。例えば、栄養因子を産生する細胞系を神経細胞系と同時投与することができる。インスリン分泌性細胞系およびグルカゴン細胞系を、膵管細胞系と組み合わせるかそのままで、糖尿病の治療のために同時投与することもできる。同時投与の方法には、複数の細胞系を一緒に作製すること(例えば、1つの回転フラスコ内で)、または別個のバッチで個別に作製して移植前に混合することが含まれる。培養下で増殖させた細胞の比および容積は、有効性ならびにインビトロまたはインビボでの細胞の生存度に対してある程度影響を及ぼす可能性がある。セルトリ細胞系を別の種の細胞系(異種移植片として)と同時投与し、セルトリ細胞に異種移植片に対する局所的な免疫抑制を付与させることができる。セルトリ細胞は、全身性に移植された同種異系移植片(異種移植片に加えて)に対して局所的な免疫抑制を付与し、免疫抑制の必要がない(または少ない量しか必要でない)ようにすることができる。 通常は非分裂性である膵臓由来の細胞系を用いることで、本発明は、1型もしくは2型糖尿病、膵炎、切除後状態(post resection)または膵臓の代替を必要とする任意の状態に冒された罹患生物の治療手段を提供する。例えば、膵臓のグルカゴンおよび/またはインスリン分泌特性をいずれも代替する目的で、ヒト膵臓のαおよび/またはβ細胞を本発明の方法を用いて増殖させることができる。膵臓細胞種のレパートリー(例えば、α細胞、β細胞、δ細胞、膵臓ポリペプチド産生細胞)を含む膵島全体を増殖させて投与することもできる。 さらに、血管、皮膚、脂肪、軟骨細胞/骨、腱、靱帯および軟骨の細胞を非制限的に含む、他の臓器および組織に由来する細胞の増殖を行うこともできる。皮膚細胞は、例えば、慢性潰瘍(例えば、褥瘡または糖尿病性足部潰瘍)の治療に有用である;腱、靱帯および軟骨細胞は、変性疾患、変形性関節症および関節リウマチの治療のほか、整形外科的再建のために有用である。さらに、心筋細胞または心臓弁細胞を本発明の方法を用いて増殖させ、心筋梗塞またはその他の原因による心筋もしくは弁の障害が起こった後の罹患生物に投与することもできる。肝細胞は肝炎または肝不全の治療のために増殖させうる。角膜細胞は角膜移植のために増殖させうる。副腎髄質の神経内分泌クロマフィン細胞は本発明の方法を用いて増殖させることができる。神経内分泌クロマフィン細胞はオピオイドペプチド、カテコールアミンのほか、ソマトスタチン、ニューロペプチドYおよびニューロスタチンを含むいくつかのニューロペプチドを分泌し、これを炎症性関節症および神経障害性疼痛などの急性または慢性の疼痛症状に対して罹患生物に投与することができる(例えば、クモ膜下腔、脊髄または脳の内部に)。交感神経節アドレナリン作動性ニューロンを増殖させることもできる。軟骨細胞は関節症の罹患生物に対して増殖させることができる。例えば、このような細胞を罹患生物の他の関節から採取し、本発明の方法を用いて増殖させて軟骨細胞細胞系を作製した後に、罹患生物の罹患関節または障害関節に投与することができる。 本発明の肝細胞は、罹患生物の肝臓に直接投与することができる。しかし、1つの代替的な態様においては、本発明の方法を用いて増殖させた肝細胞をデバイスの内部に配置して、それを罹患生物の循環系に投与し、罹患生物の肝臓とは解剖学的に離れた部位で細胞に肝機能を遂行させることができる(Sarkis R.ら、Cell Transplantation, 2002, 10: 601-607)。肝炎および代謝性疾患の治療法としての肝細胞の投与のほかに、これらの細胞を、急性または慢性の肝不全の治療のために、肝移植待機中の患者に対するつなぎ(bridge)として、または今後肝移植を必要としない根治療法として投与することもできる(Kobayashi, N.およびTanaka, N.、Cell Transplantation, 2002, 11: 417-420)。さらに、治癒線量の肝臓照射を必要とする患者に対する癌治療手段として肝細胞を投与することもできる。 本発明の方法によれば、造血細胞およびリンパ系細胞を、リンパ腫、骨髄腫および白血病などの癌の治療のため、さらには骨髄移植を目的として増殖させることもできる。さらに、ヒト樹状(血液由来)細胞の増殖を、HIV、自己免疫疾患もしくは癌などの病的状態における、または化学療法もしくは放射線療法の後の、免疫療法における免疫系の回復、修復または増強のために用いることもできる。副腎皮質組織を、アジソン病などの副腎皮質機能不全に対処するために増殖させることもできる。増殖した下垂体組織は、下垂体機能不全に対して、特定ホルモンの必要性などのために有用であり(すなわち、下垂体由来のTSH、プロラクチン、ACTHまたはその他のホルモンを産生する細胞)、これは閉経、子宮摘出術または化学療法の後の移植に際して有用である。増殖した卵巣細胞も同じような状況で有用である。さらに、卵細胞も、クローニング、研究またはインビトロ受精などのさまざまな用途のために増殖させることができる。肺間葉細胞を増殖させ、嚢胞性線維症および気腫を含む肺疾患の治療のために投与することもできる。声帯の細胞または幹細胞を増殖させ、声帯の修復または声帯器官の生成のために投与することもできる。同様に、胸腺細胞または幹細胞は、T細胞などの免疫細胞の作製のため、または胸腺器官の修復もしくは生成のために増殖させることができる。 骨髄移植は、同種異系関係にある腎臓ドナーの腎移植の前に寛容を誘導することが観察されている。このため、本発明の方法を用いて、臓器細胞系(例えば、膵臓、心臓など)と同じドナーに由来する骨髄造血細胞系を、増殖した骨髄造血細胞系の寛容を誘導するために用いることができる(Dove A., Nature Biotechnology, 2002, 20: 339-343)。 網膜細胞を、網膜色素変性症(ロドプシン欠損症)、虚血型網膜症および黄斑変性症などの眼の病的状態を治療するための移植用に増殖させることもできる。ヒト網膜色素上皮細胞およびヒト虹彩色素上皮細胞を増殖させ、視覚の回復のため、またはパーキンソン病に対して患者に投与することができる。胚性肝細胞またはその他の幹細胞を増殖させ、例えば、光受容体細胞を変性から復旧させるために網膜下に投与することもできる。 本発明の方法によれば、好中球を増殖させ、例えば小児における敗血性ショックの治療のために、静脈内に投与することができる。この治療は敗血症の症例のほか、化学療法によって免疫不全状態となった癌患者にも用いうる。従来は、成体罹患生物に用いるのに十分な量の好中球を入手することは不可能であった。例えば、コロニー刺激因子を用いる骨髄抑制によって患者における好中球産生を誘発する現行のプロトコールが存在するが、これは非常に費用がかかる。有益なことに、本発明の方法を用いると、好中球細胞系を増殖させ、成体(および小児)の敗血症患者の治療に用いることができる。たとえ細胞が拒絶される場合であっても、それらは細胞が拒絶される前に敗血性ショックの誘発の原因となる感染性病原体を攻撃すると考えられることが理解される必要がある。 本発明の方法は、CNSのある領域、例えば持続的な欠陥、疾患または外傷を有する領域への、ドナー細胞の脳内移植を想定している。神経移植または「移植(grafting)」は、細胞を中枢神経系もしくは脳室腔の内部に、または宿主脳の表面に対して硬膜下に移植することを含む。移植の成功にかかわる条件には以下のものが含まれる:(i)移植片の生存度;(ii)移植片が適切な移植部位に保たれること;(iii)移植部位での病的反応がわずかであること;(iv)特有な細胞機能の維持;(v)免疫反応の阻止;および(vi)栄養補給および血液供給が用意されること。以上の条件に関係するパラメーターには、組織の源、ドナーの年齢、ドナーの数、移植した組織の分布、移植部位、細胞の保存方法、および移植片の種類(細胞懸濁液または固形状)が含まれる。 さまざまな神経組織を同種異系移植片および異種移植片として移植するための方法は、以前に記載されている(Freeman T.B.ら、Progress in Brain Research, 1988, Chapter 61, 78: 473-477;Freeman T.B.ら、「パーキンソン病(Parkinson's Disease)」: Advances in Neurology, 2001, Chapter 46, 86: 435-445;Freeman T.B.ら、Annals of Neurology, 1995、38(3): 379-387;Freeman T.B.ら、Progress in Brain Research, 2000, Chapter 18, 127: 405-411;Olanow C.W.ら、「大脳基底核およびパーキンソン病に対する新たな外科的アプローチ(The Basal Ganglia and New Surgical Approaches for Parkinson's Disease)」、Advances in Neurology, 1997, 74: 249-269;Bjorklundら、「哺乳動物CNSにおける神経移植(Neural Grafting in the Mammalian CNS)」、1985, p.709, Elsevier, Amsterdam;Das GD, 「哺乳動物CNSにおける神経移植(Neural Grafting in the Mammalian CNS)」、1985, Chapter 3, p.23-30, Elsevier, Amsterdam)。これらの手順には、実質内移植、すなわち、移植時に脳実質に対向して配置されるように組織を宿主脳の内部に注入または留置することによって実施される、宿主脳組織の内部への移植(脳の外側または実質外への移植との対比で)が含まれる。 実質内移植のための方法には、例えば以下のものが含まれる:(i)ドナー細胞を宿主脳実質の内部に注入すること(例えば、画像誘導を用いて、および/または、MEDTRONICシステムなどのポンプに接続されたカテーテルにより、定位的に);ならびに(ii)外科的手段によって腔を作製し、宿主脳実質を露出させた後に移植片を腔内に留置すること。このような方法により、移植時に移植片と宿主脳組織との実質での並置が得られ、しかも移植片と宿主脳組織との解剖学的な統合が容易になる。 または、移植片を脳脊髄液(CSF)中に、観血的手術による注入により、針もしくは脳室リザーバーを介して脳室内に、腰椎穿刺を用いて腰椎クモ膜下腔内に、またはポンプおよびカテーテル(例えば、MEDTRONIC)を用いて任意のCSF部位に、留置することもできる。これらの方法は、CSFまたは脳に対する経時的な反復投与を行えると考えられる。脳室への移植は、ドナー細胞の注入により、または細胞を3%コラーゲンなどの基質中で増殖させて固形組織による栓子(plug)を形成させ、それを次に移植片の転位を防ぐために脳室内に移植することにより、実施しうる。硬膜下移植のためには、硬膜に切れ目を入れた後に脳の表面周りに細胞を注入するとよい。宿主の選択した領域への注入は、マイクロシリンジの針を挿入しうるように、ドリルで孔を開けて硬膜を貫通させることによって行いうる。マイクロシリンジを定位架台に装着し、脳または脊髄の所望の位置に針を留置するために三次元的な定位座標を選択する。画像誘導法を用いることもできる。本発明の細胞を、血管内手技を用いて、被殻、尾状核、淡蒼球、基底核、海馬、皮質、小脳、皮質下白質、脳のその他の領域、さらには脊髄に導入することもできる(Amar A.P.ら、Neurosurgery [2003] 52: 402-413)。 前述の細胞系の多くは栄養因子を産生し、これにはセルトリ細胞系、グリア細胞系、および前述の神経細胞系の多くが含まれる。特に、網膜色素上皮(RPE)細胞、虹彩色素上皮(IPE)細胞、腎細胞およびhNT細胞は、神経栄養因子を産生する。これらの細胞系は、栄養因子を産生する性質がある点で、神経疾患、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)および脳卒中を非制限的に含む神経疾患の治療に有用である。例えば、本発明の不死化細胞系による細胞を、ドーパミン作動性ニューロンの蓄積量を補うため、および、線条体におけるドーパミン作動性入力を復旧させるために、罹患生物に対して投与することができる。さらに、毛様体神経栄養因子(CNTF)および/または脳由来神経栄養因子(BDNF)を天然の状態で分泌する、または分泌するように改変された細胞を増殖させ、ハンチントン病の治療のために罹患生物に投与することもできる。正常状態および病態生理学的な状態の双方で、体内の種々の細胞の発生または維持に重要な役割を果たしている栄養因子はまだ多くのものが同定されていない。本発明の方法を用いることで、これらの因子を産生する細胞の増殖が、治療および製造の双方の目的に対して、さらには研究および実験の目的に対して想定される。 特定臓器の疾患があるレシピエントからの成体幹細胞または非分裂性細胞を、移植を目的として、本発明の方法を用いて増殖させることができる。これらの細胞は、その特定の罹患生物に対して同質遺伝子性である(免疫学的に適合性があり、ドナー特異的である)。例えば、膵炎の発作後に膵臓を除去しなければならない場合には、その罹患個体のために同様の組織片を増殖させ、免疫抑制の必要を伴わずに移植することができる。心筋細胞も同様に増殖させ、うっ血性心不全に冒された罹患生物の障害のある心筋を代替するために投与することができる。これは特に、免疫抑制のリスクが関心事となるような、命にかかわらない疾患の場合に有益である。このような疾患には、角膜置換術のための角膜組織の増殖;整形外科的処置のため、または変性疾患の治療のための腱、靱帯および軟骨の増殖;閉経後または子宮摘出後のホルモン補充のための卵巣皮質細胞の増殖;および、糖尿病性潰瘍に対するケラチノサイトおよびコラーゲンの調製などが含まれる。遺伝子改変細胞 本発明の方法は、遺伝子改変細胞の、単独での、または異なる種類の細胞と組み合わせての投与も想定している。すなわち、本発明の遺伝子改変細胞を他の細胞とともに同時投与することができ、後者には遺伝子改変細胞または非遺伝子改変細胞が含まれうる。遺伝子改変細胞は、例えば、同時投与した細胞の生存および機能を補助する働きをしてもよい。 「遺伝的改変」という用語は、本明細書で用いる場合、永続的または一時的な遺伝子型の変化を引き起こす、当技術分野で知られた任意の手段(例えば、細胞またはウイルス粒子からのポリヌクレオチド配列の直接的な伝達、感染性ウイルス粒子の伝達、および既知の任意のポリヌクレオチド保有物質による伝達を含む)による外因性核酸の意図的な導入による、本発明の細胞の遺伝子型の安定的または一時的な変化のことを指す。核酸は合成性でも天然物に由来するものでもよく、これには遺伝子、遺伝子の部分またはその他の有用なポリヌクレオチドが含まれうる。「遺伝的改変」という用語は、天然のウイルス活性、自然下での遺伝子組換えなどによって生じるもののような自然な変化は含まないものとする。しかし、このような自然下で変化した細胞も本発明の方法に従って増殖させることができる。 外因性核酸を、例えばウイルスベクター(レトロウイルス、改変ヘルペスウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスなど)により、または直接的なDNAトランスフェクション(リポフェクション、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン、電気穿孔など)により、本発明の細胞に導入することが可能である。 もう1つの態様において、細胞はトランスジェニック動物に由来し、このため、ある意味ではすでに遺伝子改変されている。現在、トランスジェニック動物の作製にはいくつかの方法が用いられている。代表的な技法は、単細胞性受精卵へのDNAの直接的なマイクロインジェクションである。その他の方法には、レトロウイルスを介した移入、または胚性幹細胞における遺伝子導入が含まれる。これらをはじめとする技法は、Hoganら「マウス胚の操作、実験マニュアル(Manipulating the Mouse Embryo, A Laboratory Manual)」(Cold Spring Harbor Laboratory編、1986)に詳述されている。 本発明の遺伝子改変細胞(いわゆる「人工的に設計された(designer)細胞系」)は、細胞/遺伝子療法のために、例えば、上記の栄養因子などの種々の生体分子のインビボ送達のために罹患生物に対して投与することができる。または、遺伝子改変細胞を、外因性DNAの産物および/または改変細胞の天然産物をインビトロまたは動物体内のインビボで提供するための生物「工場」として用いることができる。遺伝子改変細胞は例えば幹細胞でも非幹細胞でもよい。 本発明の細胞は、遺伝的に改変されているか否かにかかわらず、増殖因子、抗生物質または神経伝達物質などの、欠陥、外傷または疾患の治療に有用な治療薬と同時投与することができる。 サイトカイン、増殖因子、抗原、受容体、糖タンパク質および酵素といった極めて多岐にわたる生物活性分子を、増殖の前、最中または後に産生させるために、本発明の細胞を遺伝的に改変すること(例えば、遺伝的に操作すること)ができる。細胞を、毒素、細胞性送達のための薬物、化学療法薬、神経伝達物質およびその他の生体分子を産生するように遺伝的に改変することもできる。細胞を、調節因子、誘導性プロモーター、組織特異的プロモーター、オンオフ(on-off)遺伝子または自殺遺伝子を含むように遺伝的に改変することもできる。酸化ストレスを阻止する外因性遺伝子(例えば、グルタミン酸輸送体)を細胞に加えることも可能と考えられる。特定の癌細胞を標的とするモノクローナル抗体、または関節リウマチもしくは乾癬性関節炎の治療のための腫瘍壊死因子(TNF)に対するモノクローナル抗体を作製するために、B細胞およびT細胞を遺伝的に改変することもできる。 遺伝子改変細胞系は複数の遺伝子構築物を含みうる。例えば、ドーパミン細胞系は、胚性幹細胞、hNTニューロンまたは何らかの他の源から構築しうる。ドーパミン細胞系に対する強力な因子であるグリア由来神経栄養因子(GDNF)用の二次構築物を、遺伝子改変したドーパミン細胞系に追加することができる。続いて、改変された細胞系を本発明の方法を用いて増殖させる。同様に、抗アポトーシス物質をコードする二次構築物を追加することもできる。例えば、カスパーゼ阻害因子またはインターロイキンをコードする遺伝子構築物は、細胞の機能および生存にとって有益と考えられる。 さらに、ソニックヘッジホッグ(sonic hedgehog)(Shh)およびFGF-8は正常発生過程における中脳ドーパミン作動性ニューロンの誘導に必要であり、ShhとFGF-8との組み合わせにより、神経管前部に沿った異所性領域にドーパミン作動性表現型を有するニューロンを誘導することができる(Ye, Wら、Cell, 1998, 93: 755-766)。本発明の細胞(例えば、線維芽細胞)は、治療、製造または研究を目的として、Shhおよび/またはFGF-8を産生するように遺伝的に改変することができる。例えば、このような遺伝子改変細胞は、同時投与したドーパミン作動性ニューロンの生存数を有意に高めるために投与しうる(Yurek, D.M.ら、Cell Transplantation, 2001, 10: 665-671)。 幹細胞を遺伝的に改変し、その後に本発明の方法を用いて増殖させることができる。または、幹細胞を本発明の方法を用いて増殖させ、その後に遺伝的に改変することもできる。 非幹細胞(例えば、特殊化した細胞もしくは成熟細胞、またはそれらの前駆細胞もしくは始原細胞)を遺伝的に改変し、その後に本発明の方法を用いて増殖させることができる。または、非幹細胞を本発明の方法を用いて増殖させ、その後に遺伝的に改変することもできる。増殖因子および受容体 本明細書に記載の腫瘍細胞系増殖因子の活性の機序は少なくとも2つが考えられ、それらは必ずしも排反的ではない。これらの機序には、例えば、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)のリン酸化もしくはCKI(CDK阻害因子)の阻害;および/または、機能を損なわずに正常なDNA修復を障害させる、テロメラーゼもしくはその他のDNA修復機構(例えば、リガーゼ)との相互作用が含まれる。本発明のさらにもう1つの面には、1つまたは複数の細胞の増殖サイクルをモジュレートする方法が含まれる。考えられる標的細胞には、本発明の他の方法に関連して本明細書に述べたものが含まれる。細胞の増殖サイクルのモジュレーションは、細胞を、腫瘍細胞系増殖因子(その生物活性断片または類似体を含む)、増殖因子受容体のアゴニスト、または拮抗抗体などの増殖因子受容体の機能的アンタゴニストと接触させること、または別の様式で曝露させることによって行いうる。このようなアゴニストおよびアンタゴニストは、増殖因子受容体に対して直接的もしくは間接的に作用してもよく、および/または増殖経路の内部にあってもよい。 UCHT1増殖因子およびその受容体は、本発明のその他の腫瘍細胞系増殖因子および対応する増殖因子受容体の単なる例に過ぎない。したがって、本発明は、相同なヒト増殖因子および増殖因子受容体といった、バリアント型または同等の腫瘍細胞系増殖因子および増殖因子受容体も含む。バリアントまたは同等の腫瘍細胞系増殖因子および受容体(ならびに同等な増殖因子および受容体をコードするヌクレオチド配列)は、UCHT1増殖因子および受容体と同じまたは類似の活性を有する。同等な増殖因子および増殖因子受容体は一般にそれぞれ、範例となるUCHTI増殖因子および受容体とのアミノ酸相同性を有すると考えられる。このアミノ酸同一性は一般に60%を上回り、好ましくは75%を上回り、より好ましくは80%を上回り、より好ましくは90%を上回り、さらに95%を上回ってもよい。これらの同一性は、標準的なアライメント法を用いて決定される。アミノ酸相同性は、生物活性を担っていて最終的には生物活性の原因となる三次元配置にかかわる、増殖因子および受容体の重要な領域で最も高いと考えられる。この点に関して、ある種のアミノ酸置換および/または欠失は、これらの置換および欠失が活性にとって特に重要でない領域にあれば、または分子の三次元配置に影響を及ぼさない保存的アミノ酸置換もしくは欠失であれば、許容され、想定することができる。例えば、アミノ酸は以下のクラスに当てはめることができる:非極性、非荷電極性、塩基性および酸性。1つのクラスに属するアミノ酸が同じタイプの別のアミノ酸に置き換えられる保存的置換は、その置換が増殖因子または増殖因子受容体の生物活性を完全に消失させない限り、本発明の範囲に含まれる;しかし、好ましい置換は、増殖因子または増殖因子受容体の生物活性の大部分またはすべてが保たれるものである。表1に、各クラスに属するアミノ酸の例の一覧を提示した。(表1) 場合によっては、非保存的な置換を作製することもできる。特に重要な要因は、これらの置換が受容体の生物活性を完全に消失させてはならないという点である;しかし、好ましい置換は、増殖因子または増殖因子受容体の生物活性の大部分またはすべてが保たれるものである。ポリヌクレオチドプローブの使用は当業者に周知である。1つの具体例においては、腫瘍細胞(例えば、甲状腺腫瘍細胞系)に関するcDNAライブラリーをルーチン的な手段によって作製し、目的のDNAをそのcDNAライブラリーから単離することができる。本発明のポリヌクレオチドは、構築したcDNAライブラリーのDNA断片とハイブリダイズさせるために用いることができ、これによって目的の遺伝子の、すなわち、本発明のプローブとハイブリダイズする上に増殖因子活性または増殖因子受容体活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の、同定および選択(または「プローブによる探索(probing out)」)が可能になる。これらの遺伝子の単離は、本開示の恩恵を受ける当業者により、分子生物学の当業者に周知の技法を用いて実施可能である。 したがって、生物学的分析の助けを借りずに、腫瘍細胞系増殖因子および対応する受容体をコードするポリヌクレオチド配列を同定することが可能である。このようなプローブ分析は、さまざまな宿主から増殖因子および増殖因子受容体をコードする遺伝子を同定するための迅速な方法を提供する。単離された遺伝子は、適切な媒体に挿入した上で、適した宿主の形質転換に用いることができる。本発明の増殖因子および増殖因子受容体をコードする遺伝子の存在は、腫瘍細胞系以外の細胞を含む、さまざまな宿主で判定することができる。 ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、さまざまな程度のものを用いることができる。条件が厳しいほど、二重鎖形成に必要な相補性の度合いが高くなる。条件の厳しさは、温度、プローブの濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間などによって調節しうる。ハイブリダイゼーションは、例えばKeller, G.H., M.M. Manak(1987)「DNAプローブ(DNA Probes)」、Stockton Press, New York, NY., pp.169-170に記載されている、当技術分野で周知の技法により、中程度から高度のストリンジェンシー条件下で行うことが好ましい。 さまざまなストリンジェンシー条件の例を本明細書では提示している。サザンブロット上に固定化されたDNAと32Pで標識した遺伝子特異的プローブとのハイブリダイゼーションは、標準的な方法によって実施しうる(Maniatisら(1982)「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」、Cold Spring Harbor Laboratory, New York)。一般に、ハイブリダイゼーションおよびその後の洗浄は、範例となるポリヌクレオチド配列との相同性がある標的配列の検出を可能にする、中程度から高度のストリンジェンシー条件下で行うことができる。二本鎖DNA遺伝子プローブの場合には、ハイブリダイゼーションは、6×SSPE、5×デンハルト溶液、0.1%SDS、0.1mg/ml変性DNA中で、DNAハイブリッドの融解温度(Tm)よりも20〜25℃低い温度で一晩かけて行うことができる。融解温度は以下の式によって表される: Tm=81.5℃+16.6 Log [Na+]+0.41(%G+C)−0.61(%ホルムアミド)−600/二重鎖の塩基対単位での長さ(Beltzら(1983)、Methods of Enzymology, R. Wu, L. GrossmanおよびK. Moldave[編]Academic Press, New York 100: 266-285)。 洗浄は一般に以下のように行われる: (1)室温にて1×SSPE、0.1%SDS中で15分間を2回(低ストリンジェンシー洗浄); (2)Tm-20℃にて0.2×SSPE、0.1%SDS中で15分間を1回(中程度ストリンジェンシー洗浄)。 オリゴヌクレオチドプローブの場合には、ハイブリダイゼーションは、6×SSPE、5×デンハルト溶液、0.1%SDS、0.1mg/ml変性DNA中で、DNAハイブリッドの融解温度(Tm)よりも10〜20℃低い温度で一晩かけて行うことができる。オリゴヌクレオチドプローブに関する融解温度は以下の式によって決定しうる: Tm(℃)=2(T/A塩基対の数)+4(G/C塩基対の数)(Suggs, S.V.ら(1981)ICN-UCLA Symp. Dev. Biol. 「精製された遺伝子の使用(Using Purified Genes)」、D.D. Brown[編]、Academic Press, New York, 23: 683-693)。 洗浄は以下のように行うことができる: (1)室温にて1×SSPE、0.1%SDS中で15分間を2回(低ストリンジェンシー洗浄); (2)ハイブリダイゼーション温度にて1×SSPE、0.1%SDS中で15分間を1回(中程度ストリンジェンシー洗浄)。 一般に、塩および/または温度を変化させることでストリンジェンシーを変更することができる。70塩基長を上回る程度の標識DNA断片を用いる場合には、以下の条件を用いうる: 低:1または2×SSPE、室温 低:1または2×SSPE、42℃ 中程度:0.2×または1×SSPE、65℃ 高:0.1×SSPE、65℃。 二重鎖の形成および安定性はハイブリッドの2本のストランドの間の実質的な相補性に依存し、上に指摘した通り、ある程度のミスマッチは許容される。このため、本発明のプローブ配列は、変異、挿入および欠失が目的の標的ポリヌクレオチドとの安定なハイブリッドの形成を許容するような、記載した配列に対する変異(単一および複数の両方)、欠失、挿入、およびそれらの組み合わせを含む。変異、挿入および欠失は、所定のポリヌクレオチド配列中にさまざまなやり方で作製することができ、これらの方法は当業者に周知である。他の方法が将来知られるようになるかも知れない。 本明細書で用いる場合、「増殖する(proliferate)」および「増殖する(propagate)」という用語は細胞分裂を指して互換的に用いられる。細胞を腫瘍細胞系増殖因子、このような増殖因子を産生する腫瘍細胞系、または腫瘍細胞系増殖因子を含む組成物(例えば、馴化培地)と接触させること、または別の様式で曝露させることによって細胞を増殖させる文脈において、増殖には連続継代細胞系の作製地点(例えば、不死化、非腫瘍性または非悪性の形質転換)に向かっての増殖も含まれうるものとする。本発明の増殖因子は、その因子と接触した細胞に対して増殖誘発効果を及ぼす。因子と接触した場合、細胞はインビトロでの細胞の通常の増殖速度よりも高い増殖速度を獲得するように誘導され、このために細胞の増殖能が高くなる。 本明細書で用いる場合、「培養」という用語は、単細胞の培養を含む、インビトロでの細胞の維持または育成のことを表すために用いられる。培養物は、組織化の程度に応じて、細胞培養物、組織培養物または器官培養物のいずれでもありうる。 本明細書で用いる場合、「細胞系」という用語は、初代培養物から派生した、連続継代が可能な細胞のことを指して用いられる。 本明細書で用いる場合、「連続継代細胞培養物」または「連続継代細胞系」という用語は、無限回数の集団倍加が可能な培養物または細胞系を指して用いられる;これはしばしば、不死細胞培養物または細胞系と呼ばれる。このような細胞はインビトロでの腫瘍性または悪性形質転換の特徴を呈してもよく、呈なくてもよい。これは、有限な回数しか集団倍加を行えず、その後は培養物または細胞系が増殖を停止する(すなわち、インビトロ老化)有限な細胞培養物または細胞系とは対照をなすものである。 本明細書で用いる場合、「不死化」という用語は、擾乱によるか内因性であるかにかかわらず、有限な細胞培養物による連続継代細胞系の特質の獲得のことを指す。不死化細胞系は必ずしも腫瘍性または悪性の形質転換を起こしたものとは限らない。 本明細書で用いる場合、「単離された」という用語は、その天然の環境から取り出されたことを意味し、これにはそれに近接した天然の環境から取り出されることも含まれうる。本明細書で用いる場合、「単離された因子」または「単離された増殖因子」という用語は、その因子が、それを産生する腫瘍細胞系(例えば、UCHT1細胞系)から単離されたことを表す。 本明細書で用いる場合、「分化した」という用語は、インビボでのその細胞種の代表的な特化した構造および機能のすべてまたはかなりの量を培養下で維持している細胞のことを指す。部分的に分化した細胞は、特化した構造および/または機能の全要素をかなりの量としては維持していない。 本明細書で用いる場合、「幹細胞」という用語は、複製または自己再生を行え、さまざまな細胞種の特化した細胞へと発生することができる、特化していない細胞のことである。分裂を行っている幹細胞による生成物は、元の細胞と同じ能力を有する少なくとも1つの別の幹細胞である。例えば、適切な条件下では、造血幹細胞は第二世代の幹細胞およびニューロンを生成しうる。幹細胞には、胚性幹細胞(例えば、胚盤胞の内部細胞塊から派生した幹細胞)および成体幹細胞(これはヒトを含む、より成熟した動物のいたる部位に認められる)。本明細書で用いる場合、幹細胞には、胚形成期を過ぎて成熟した動物(例えば、胎児、乳児、青年期、若年期、成体など)に認められる幹細胞が含まれるものとする。幹細胞を含むことが報告されている組織のリストは増えつつあり、これには例えば、骨髄、末梢血、脳、脊髄、臍帯血、羊水、胎盤、歯髄、血管、骨格筋、皮膚および消化器の上皮、角膜、網膜、肝臓ならびに膵臓が含まれる。 本明細書で用いる場合、「始原細胞(progenitor cell)」(前駆細胞としても知られる)という用語は、特化していないか、または特化した細胞の部分的な特徴を有しており、細胞分裂を行って2種類の特化した細胞を生じることができる。例えば、骨髄性始原/前駆細胞は、細胞分裂を行って2種類の特化した細胞(好中球および赤血球)を生成することができる。 本明細書で用いる場合、「表現型」という用語は、細胞(または生物)の観察しうる特徴;その形状(形態);他の細胞および非細胞性環境(例えば、細胞外マトリックス)との相互作用;細胞表面に存在するタンパク質(表面マーカー);ならびに細胞の挙動(例えば、分泌、収縮、シナプス伝達)、のすべてのことを指す。 本明細書で用いる場合、「投与する」「適用する」「治療する」「移植する(transplant)」「移植する(implant)」「送達するおよびそれらの文法的変形物は、本発明の細胞を罹患生物に提供する目的で互換的に用いられる。 本明細書で用いる場合、「同時投与」およびその変形物は、2種類またはそれ以上の作用物質の同時の(1つまたは複数の製剤として)または連続的な投与のことを指す。 本明細書で言及または引用したすべての特許、特許出願および刊行物は、本明細書の明示的な教示と矛盾しない範囲で、すべての図、表、核酸配列、アミノ酸配列または図面を含む、その全体が参照として組み入れられる。材料および方法RCSN-3細胞系の樹立 RCSN-3細胞系は4カ月齢の正常フィッシャー(Fisher)344ラットの黒質から派生させた。初代培養物の樹立に用いた細胞を、UCHT1細胞により馴化した培地にそれらを曝露させることによって不死化させた(図1に示した通り)。標準的な培養条件としては、細胞を、6g/lグルコース、10%ウシ血清、2.5%ウシ胎仔血清、100U/mLペニシリン、10μg/mLストレプトマイシン(SIGMA)を含むように改変し、10%(v/v)UCHT1馴化培地を加えたDMEM/Ham F12栄養混合培地(1:1)(SIGMA Chemical Co., Saint Louis, MO, USA)からなる栄養培地中に保った。培養物は37℃、湿度100%および10%CO2の空気を含むインキュベーター内で維持し、形質転換巣または形態変化の出現に関してルーチン的に観察した。10週間培養した後に形質転換巣が認められた。培養物を増殖させ、その一部を液体窒素中で凍結保存した。細胞系のクローン化を希釈培養によって行い、クローン系統RCSN-3を得た。細胞は集密に達した時点でトリプシン処理(1%トリプシン、GIBCO, Grand Island, NY, USA)によって継代した。標準的な増殖条件としては、RCSN-3細胞を栄養培地中で培養した。培地は週2回完全に交換した。分化のためには、以前の記載の通りに2%成体ウシ血清および1%(v/v)N3添加物を添加し(Cardenas A.M.ら、Neuroreport, 1999、10(2): 363-369)、さらに1%(v/v)Site+3添加物(SIGMA)を加えたDMEM/Ham F12栄養混合培地からなる培地中に細胞を保った。細胞を1週間かけて分化させた。RCSN-3細胞系の細胞学的検討 細胞を、4%ホルムアルデヒドを含むリン酸緩衝液pH 7.4中で固定した。細胞化学反応には以下のものが含まれる:ヘマトキシリン-エオジン染色、神経メラニンの形態にあるメラニンの存在を示すための第一鉄イオン捕捉法、カテコールアミンの存在を示すためのパラホルムアルデヒド-グリオキシル酸染色。RCSN-3細胞系の免疫組織化学的検討 固定した細胞に、50%〜96%の範囲で濃度が順に高くなる/低くなる一連のアルコール中で透過化処理を行った。ブロッキング反応は1%BSAを含むリン酸緩衝液中で行った。用いた抗体は以下の通りである:(i)ニューロンマーカー:NSE(希釈済み、BIOGENEX)シナプトフィジン(希釈済み、BIOGENEX)、MAP-2(1:1000、SIGMA);(ii)グリアマーカー:GFAP(希釈済み、BIOGENEX)、S-100(希釈済み、BIOGENEX);および(iii)機能マーカー:TH(1:1000〜1:1500、SIGMA)。一次抗体とのインキュベーションを一晩行い、ABC検出キット(BIOGENEX)をDABを色素原として用いて反応を現像した。ニューロフィラメント200kDおよび破傷風毒素受容体の存在の評価には、特異的な一次抗体、フルオレセイン標識した二次抗体および破傷風毒素を用いた。細胞内Ca2+の測定 細胞内Ca2+の測定のためには細胞を35mm培養皿に再プレーティングした。細胞内Ca2+の変動はFluro-3を用いるCa2+画像化法によって評価した。細胞をこの指示薬とともに37℃で40〜60分間インキュベートした。落射蛍光装置(ハロゲンランプ)を備えたOLYMPUS BH2顕微鏡により、培養皿を可視化した。この顕微鏡には高性能冷却式Isisデジタルカメラ(PHOTONIC SCIENCE, Ltd, Robertsbridge, UK)が装着され、これはAXON DIGIDATA 2000デジタル変換ボード(AXON Instruments, Foster City, CA)を装備した専用PCに接続されている。画像はカスタマイズしたソフトウエアAXON Imaging Workbench 2.1.80(AXON)を用いて解像度12bitおよび1Hzで収集した。正常な細胞外液の組成は以下の通りであった(mM単位):135または145 NaCl、5 KCl、2 MgCl2、1.5または2.5 CaCl2、10 4-(2-ヒドロキシエル)ピペラジン-1-エタンスルホン酸(HEPES)-NaOH、10 デキストロース(pH=7.4)。外科的処置および行動試験 4匹の成体雄性Fisher 344ラット(200〜250g)に対して、内側前脳束に沿った2つの部位への臭化6-ヒドロキシドーパミンの一側注入によって損傷を加えた。移植の前に、アポモルフィンで誘発される回転行動(体重1kg当たり5mgのアポモルフィンの腹腔内注射, National Health Service, Chile)の目視による評価を2回、週1回ずつ行った。30分間に160回転を上回ったラットのみを移植後に3回用いた(第30日、55日および80日)。移植物に関しては、集密化した培養物をPBSで洗い、1%トリプシンで解離させた。容積4μL中にある500,000個の細胞を先の尖っていないHamiltonシリンジで移植し、AP +1.0mm、ML -2.5mmおよびV -4.7mm(ブレグマを基準とした座標)(ツースバー(toothbar)は-2.5に設定)に留置した。移植後に回転行動を2週間毎に目視により評価した。UCHT1増殖因子の精製および特徴分析 UCHT1増殖因子の単離および特徴分析のために二段階アプローチを用いた:(i)UCHT1細胞系により馴化した培地の収集;ならびに(ii)UCHT1腫瘍細胞系に付随する増殖因子の同定(すなわち、形質転換促進因子)およびバイオアッセイでの検討。培地は、DMEM/Ham F12栄養混合培地(1:1)(SIGMA Chemical Co, St. Louis, MO. カタログ番号D8900)に1g/l炭酸水素塩を加えたものから構成される。この基礎培地に対して、以下の改変を加えた:完全培地:87.5%基礎培地、10%成体ウシ血清および2.5%ウシ胎仔血清を含む;2%血清培地:98%基礎培地+2%ウシ胎仔血清;ならびに凍結保存培地:70%基礎培地、20%ウシ胎仔血清および10%DMSOを含む。使用しない場合、細胞は凍結保存培地とともに凍結チューブに入れ、液体窒素中で保存した。細胞は37℃の水浴中で90秒以内に解凍させた。解凍した細胞を培養皿に播き、完全培地を与えた。培養皿は37℃、湿度100%および10%CO2下に保ち、培地を3日毎に交換した。細胞が集密に達した時点で継代を行った。細胞をPBSで洗い、トリプシン処理(トリプシン0.1%)で剥離させた上でピペッティングによって再懸濁させた。細胞を1000r.p.m.で10分間遠心し、上清は廃棄した。続いて細胞を新たな培養皿に1/20スリットで播き、完全培地を与えた。UCHT1増殖因子の精製および特徴分析のための凍結保存 培地を培養皿から吸引し、細胞をPBSで洗った上でトリプシン0.1%により剥離させた。懸濁液を1000r.p.m.で遠心し、細胞ペレットを凍結保存培地中に1×106個/mlの密度で再懸濁した。懸濁液を凍結チューブに入れ、第1段階として、1℃/分の速度で-86℃にして凍結した。24時間後に、凍結チューブを最終的な保存のために液体窒に移した。UCHT1増殖因子の精製および特徴分析のためのUCHT1馴化培地の収集および前処理 UCHT1細胞を直径15cmのペトリ皿の中で集密に達するまで培養した。この時点で馴化培地を収集し、-20℃で凍結した。培地の融解および再凍結を3サイクル繰り返した。その後、培地を5000r.p.m.で約20分間遠心し、上清を孔径0.2μmのニトロセルロースフィルターで濾過した。血清を加えた培地および血清を含まない基礎培地を集密化したUCHT1培養物に対して24時間曝露させた上で収集した。クロマトグラフィー試験に関しては、脱塩および濃縮の手順を行った。培地試料をSEPHADEX G-25M(PHARMACIA BIOTECH)を含むPD-10カラムに通したが、この際、試料は1.4倍に希釈された。続いて試料をCENTRICON分子フィルターバイアル(AMICON)に入れ、SORVALL RC-28S冷却遠心機(DUPONT)により4800r.p.m.で2.5時間遠心することによって濃縮した。各バイアルには100μlの0.1%Tween 80を添加した。UCHT1増殖因子の精製および特徴分析のためのゲル電気泳動 ドデシル硫酸ナトリウムを含むポリアクリルアミドゲル(SDS、SDS-PAGE)を用いた。十分な電荷-質量相関を得るために、併せて1gのタンパク質に対して計1.4gのSDSを想定した。ゲルはBIORAD電気泳動チャンバー(MINI PROTEAN II)により12.5%アクリルアミドで泳動し、試料1つ当たり10カラムを用いた。このゲルの感度は、高輝度クーマシーブルーによる染色ではバンド当たりタンパク質0.1μg〜1.0μgであり、銀染色では2ng〜10ngであった。分解能は15kDa〜60kDa(Bollag, Dら(1996)「タンパク質の方法(Protein Methods)」、第2版)。ゲルはEPS 3500XL電気泳動電源供給装置(PHARMACIA BIOTECH)またはPower Pac 1000(BIORAD)を用いて200Vで45分間泳動した。タンパク質は電場によって生じたpH勾配に従って移動し、タンパク質の等電点を示すため、等電点電気泳動(IEF)により、それらを正味の電荷によって分離することが可能である。ファルマライト(Pharmalyte)3〜9を含むPhast Gel 1%Agarosa IEFという市販のゲルによるPhast System法を用いた。このゲルはpIのスペクトルが広いことから選択した。焦点化の段階は連続的に行い、ゲルをその後に硝酸銀で染色し、さらにその後に色素を除去した。ゲルには勾配がないため、それぞれのpIは直線的に可視化される。UCHT1増殖因子の精製および特徴分析のためのクロマトグラフィー 疎水相互作用樹脂およびイオン交換樹脂を用いた。FPLC液体クロマトグラフィーキットをFPLC DIRECTORソフトウエアの指令下で用いた。適切な結合バッファーおよび脱吸着バッファを用いた。操作のための溶出勾配、カラム容積および流量を決定した。収集した情報は導電率および280nmでの吸光度に対応し、これによってクロマトグラフィープロファイルが決定される。EXPRESS-ION、Exchanger Dカラム(WHATMAN INTERNATIONAL)、これはセルロース基質中にあるジエチルアミノエチル、DEAE-セルロースを用いる。吸着能力は1ml当たりタンパク質61mgである。用いた緩衝液は、結合用にはBis-Tris 20mM pH 7.0であり、溶出用には同じ緩衝液にNaCl 1Mを加えたものを用いた。疎水相互作用クロマトグラフィーに関しては、フェニル-セファロースおよびButyl-SEPHAROSE FAST FLOW(SIGMA)の1mlカラムを用いた。結合バッファーはBis-Tris、または(NH4)2SO4 0.7Mを加えたBis-Tris Propane 20mM pH 7.0とした。勾配を作成するためには、硫酸アンモニウムを含まない同じ緩衝液を用いた(Andrews, B.A.ら、Bioseparations, 1996, 6: 303-313)。この手法は高い塩濃度およびpH 6.5〜8.0を想定している。タンパク質の特徴が十分に明らかではないため、フェニル基を置換した樹脂カラムが好ましいとみなした。UCHT1馴化培地中のタンパク質含有量 タンパク質はBradfordの方法の変法(Deutscher, M.P. [1990]「酵素学におけるタンパク質精製法の手引き(Guide to Protein Purification-Methods in enzymology)」、Academic Press, Inc., 182)により、クーマシーブリリアントブルー(Coomassie Brilliant Blue)G-250を用いて測定した。BSA(SIGMA)を標準化のために用いた。ULTRASPEC 3000分光光度計(PHARMACIA BIOTECH)を用いた。例外的に、タンパク質アッセイキット(PIERCE)を用いて、ビシンコニン酸法によるタンパク質の測定も行った。UCHT1馴化培地画分のバイオアッセイ 収集したUCHT1培地のさまざまな画分による形質転換を検出するのに適切なバイオアッセイを選択することが望ましいと考えた。用いた細胞系はKGFR細胞系、NRK 52E細胞系およびヒト神経芽腫細胞系であった。KGFR細胞系はマウス線維芽細胞3T3細胞系に由来し、EGF受容体をトランスフェクトしたものである。この細胞は、DMEM/F12(1:1)(SIGMA)に10%ウシ胎仔血清を加えたものから構成される培地中で表面に付着して増殖し、標準的なトリプシン処理によって継代される。KGFR細胞系は、UCHT1馴化培地の画分を試験するための軟寒天培地および液体培地アッセイを確立するために用いた。NRK 52E細胞系(ATCC:CRL-1571)はラット(Rattus norvegicus)の正常腎臓上皮に由来する。NRK 52E細胞系はEGF受容体および増殖刺激活性(MSA)を発現し、表面に付着して増殖する。NRK 52E細胞は形質転換しておらず、形質転換および悪性度のアッセイにおける基本的な特性である接触阻止を培養下で呈する。この細胞は、10%ウシ胎仔血清(FBS)を加えたDMEM/F12 1:1培地(SIGMA)中で増殖する。継代は標準的なトリプシン処理によって行った。継代比率は1:3〜4とし、培地は週2回交換した。組織の外植片に由来するヒト神経芽腫細胞を患者の生検標本から派生させ、その後に培養した。この細胞は10%FBS、10%成体血清およびNGF(CALBIOCHEM)10ng/mlを加えたDMEM/F12 1:1培地(SIGMA)中で基質に付着して増殖する。それらをその後、10%成体血清、7.5%FBSおよび5ng/ml NGFに順応させた。UCHT1増殖因子の精製および特徴分析のための軟寒天法 この技法は形質転換と90%の相関性があり、腫瘍形成性の検出のためにヌードマウスなどの動物モデルを用いて作業を進めるよりも迅速でコストもかからない。細胞を軟寒天中で1週間かけて増殖させ、コロニーを色素で明示させる。この環境で増殖している細胞は足場とは無関係であり、これは形質転換した表現型と相関する。軟寒天法のプロトコールは以下の通りである:(1)5%寒天を培地で10倍に希釈し、最終濃度を0.5%にする;(2)0.7mlの0.5%寒天を直径3.5cmの培養皿に添加する(基部);(3)培養皿1枚当たり0.2mlの細胞懸濁液(約3×104個/ml)を混合する;(4)0.7mlの0.3%寒天を基部寒天の上に重ね、培養皿をインキュベーター内に1週間保つ(37℃、湿度100%、10%CO2);(5)1週間後に細胞を0.5mg/ml p-ヨードニトロテトラゾリウムで染色する;そして(6)細胞を24時間のインキュベーション時間にわたってインキュベートし、コロニーの数を評価する。アセトンによる沈殿 沈殿には2種類の方法を用いた:(1)アセトンによる;および(2)硫酸アンモニウムによる。アセトンによる沈殿のためには、血清を含まず、UCHT1馴化培地中に24時間保った培地を用いた。総タンパク質含有量をビシンコニン酸アッセイにより評価した。一連の手順は、無血清馴化培地の5,000rpmでの20分間の遠心処理によって開始し、その後に上清を孔径0.2μmに対して濾過した。その後にアセトンを-20℃として添加し、10,000rpmでの30分間の遠心処理によって沈殿物を収集した。上清を採取し、さらにアセトンを添加した。沈殿物は1mlの冷却滅菌PBS中に再懸濁した。第2の沈殿は、0.1mlずつの各PBS画分および1.5mlアセトンを用いて過剰量のアセトンによって行った。硫酸アンモニウムによる沈殿 無血清UCHT1馴化培地を5,000rpmで20分間遠心し、その後に孔径0.2μmに対して濾過した。いずれの時点でもpHは7.0〜7.5の範囲に保ち、温度は4℃とした。硫酸アンモニウムを添加し、30分混合して溶媒をタンパク質と平衡化した。10,000rpm、30分間の遠心処理の後に沈殿物を採取した。上清を再び用いてさらに沈殿させ、最終的な沈殿物を200μlの冷却滅菌緩衝液中に再懸濁した。規定培地、血清除去への順応 規定培地は、表2に列挙した添加物(これらは甲状腺細胞に対する栄養作用がある)を加えたDMEM/F-12に対応する(Scopes, R. [1988]「タンパク質の精製―原理および実践)(Protein Purification-Principles and Practice)」、Springer-Verlag Inc., New York)。UCHT1細胞を、血清含有量を漸減することにより、規定培地に対して徐々に順応させた:12.5%から9.4%、6.3%、3.1%、最終的には1.25%。各血清濃度における2回の継代については条件を同じに保った。(表2)1ml当たりの培地組成 UCHT1細胞を、血清含有量を漸減することにより、規定培地に対して徐々に順応させた:12.5%から9.4%、6.3%、3.1%、最終的には1.25%。各血清濃度における2回の継代については条件を同じに保った。培地、溶液 溶液はいずれも滅菌し、3回蒸留し、脱イオン化した水で調製した。リン酸緩衝食塩水(PBS)pH 7.4は以下を含む:8.0g/l NaCl(136.9mM);0.2g/l KCl(2.7mM);1.5g/l NaHPO4(10.6mM);0.2g/l KH2PO4(1.5mM);D溶液、pH 7.4は8.0063g/l NaCl(137mM);0.4026g/l KCl(5.4mM);24.1mg/l Na2HPO4(0.17mM);29.9mg/l KH2PO4(0.22mM);1.0899g/lグルコース(5.5mM);2.0196g/l(5.9mM)を含む。トリプシンはPBSで0.1%w/vに希釈した。培地は、DMEM/F-12に1gr/l炭酸水素塩および40μg/mlゲンタマイシン(Laboratorio Chile、80μg/アンプル)を必要に応じて加えたものを含む。 以下は、本発明を実施するための手順を例示した実施例である。これらの実施例は限定的なものとみなされるべきではない。別に指摘しない限り、すべての比率は重量比率であり、すべての溶媒混合比は容積比である。実施例1-ラット甲状腺細胞系(UCHT1) 機能性があって移植可能なラット甲状腺腫瘍に由来するクローン細胞系を、酵素による解離後に培養-動物での継代手順を交互に行うことにより、連続継代単層培養物として樹立した(Caviedes, R.およびStanbury J.B., Endocrinology, 1976, 99: 549-554)。自律性で移植可能な腫瘍を培養物のための細胞源として用いた(Matovinovic, J.ら、Cancer Res., 1970, 30: 540;Matovinovic, J.ら、Cancer Res., 1971, 31: 288)。ヨウ素欠乏食を14〜18カ月間与えたラット由来の甲状腺組織を、同様の食事を与えた131I甲状腺切除ラットに移植することにより、腫瘍を発達させた。約9カ月後に、通常食を与えたラットに腫瘍を移植した。6カ月後に現れた、十分に分化した濾胞性および機能性の腫瘍(第二世代)を、連続継代培養物の樹立のために選択した。 いくつかの腫瘍からの細胞を、酵素による分散化に続いて培養-動物での継代を交互に行うことによって単層培養物に導入した(Buonassissi, Bら、Proc. Natl. Acad. Sci., 1962, 48: 1184)。栄養混合培地Ham's F-10に15%ウマ血清および2.5%ウシ胎仔血清を加えたものを細胞系の樹立のために用いた。細胞がこれらの培養条件に順応した時点で直ちに、同じ血清添加物を加えたダルベッコおよびフリーマン変法イーグル必須培地に移した。培養物をFalconプラスチック製フラスコに入れ、加湿大気(5%CO2を含む空気)中にて37℃で増殖させた。培地は3日毎に交換し、細胞を8日間隔で継代した。集密に達した時点で、2枚のペトリ皿からの細胞を0.5mLの等張食塩液中に懸濁し、各ラット(2〜3カ月齢)の大腿に皮下注射した。約2カ月後に腫瘍を摘出し、酵素曝露によって解離させた上で再び培養下にプレーティングした。単細胞プレーティング法により、クローン系統が腫瘍の1つから単離された。他のものは初代培養下に保った。 ラットに戻し移植を行い、再び培養下にプレーティングした後に、上皮様細胞が凝集して培養皿の底面に単独で再配列し、正常甲状腺の横断面と類似した構造をとった。非常に多くの継代培養および凍結/融解期間の後にも同じ形態および増殖パターンが維持された。細胞は、血清を加えた合成培地中では集団倍加時間が約24時間で増殖した。過ヨウ素酸-シフ(PAS)で染色した細胞単層は、均一な上皮様形態を示した;その細胞質は、アミラーゼによる酵素消化に対して抵抗性のあるPAS陽性物質を大量に含んでいた。初代培養物およびクローン培養物の酸-ブタノール細胞抽出物の薄層クロマトグラフィーを行い、続いてヨウ素化合物に対する特異的かつ高感度の染色法を行ったところ、モノヨードチロシン(MIT)、ジヨードチロシンおよびトリヨードチロニン-チロキシンの存在が示された。これに対して、培養肝細胞系から入手した同様の抽出物中のヨード化アミノ酸はMITのみであった。このため、以上の基準の点からは、この細胞系は特化した甲状腺細胞の形態および機能を保っていた。用いた材料および方法、ならびに培養物の形態の観察およびホルモン検出に関するそのほかの詳細は、Caviedes, R.およびStanbury J.B.(1976)に記載されている。実施例2―UCHT1馴化培地(UCHT1-CM)の調製 ガラス製ペトリ皿(直径15cm)に、約5×105個のマイコプラズマ非含有UCHT1細胞(実施例1に記載)を、同容積のHam F12培地およびダルベッコ変法イーグル培地からなる混合溶液(F12/D)に10%ウシ血清、2.5%ウシ胎仔血清、0.015M HEPES(n-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N'-2-エタンスルホン酸)緩衝液pH 7.2、50mg/l硫酸ストレプトマイシンおよび100mg/lペニシリン-Gナトリウムを加えたもの(これを基礎増殖培地(BGM)として用いた)の中にある状態で接種した。培養物を、10%CO2、90%空気の雰囲気下に調節したインキュベーター内で36℃、湿度100%にてインキュベートし、3日毎に培地をすべて交換した。UCHT1-CMは指数増殖中の培養物から収集し、24時間の培養期間の4回分を続けて採取して、4日後にはペトリ皿1枚当たり合計80mLの量を得た;集密化に達した後の大規模な細胞剥離のためにそれ以上のUCHT1-CM収集は行えない。最終的に、UCHT1-CMを0.2μm Gelman SUPOR-200ニトロセルロース膜で濾過し、-20℃で凍結保温した。実施例3―不死化骨格筋細胞系 永続的培養下にある細胞系(RCMH)を、甲状腺細胞から得た馴化培地に対する曝露により、外科的に採取した成人正常骨格筋から樹立した。細胞は無限に増殖したが増殖の密度阻止を呈し、いくつかの分化マーカーが維持された。特定のインキュベーション条件下では、細胞は融合して筋管様構造をとり、免疫細胞化学手順を用いて同定したところ、これに伴ってヒトミオグロビン、骨格筋ミオシン、デスミンおよびジストロフィンなどの筋特異的タンパク質が増加した。さらに、RCMH細胞はα-ブンガロトキシン(Bmax=0.7pmol/mgタンパク質、Kd=1.5nM)およびジヒドロピリジン(Bmax=0.3pmol/mgタンパク質、[3H]PN200-110に対するKd=0.5nM)に対する高親和性受容体も示した。これらの値は初代培養下の正常筋細胞と同等である。パッチクランプ試験により、42pSカルバコール依存性チャンネルおよび5pSカルシウムチャンネル(電流はバリウムにより搬送);塩素チャンネルおよびカリウムチャンネルも認められた。RCMH細胞系に対して行った培養物の樹立、培養条件、免疫細胞化学手順、結合実験および単一チャンネル記録、ならびに結果は、Caviedes, Rら、Biochimica et Biophysica Acta, 1992, 1134: 247-255に記載されている。実施例4―不死化小脳細胞系 6カ月齢の雌性Fisherラット10匹に対して106個のUCHT1細胞を皮下注射した。3カ月以内で腫瘍を発達させた後に、ラットに麻酔をかけ、小脳皮質の部分を切離して、ダルベッコ変法イーグル培地およびHam's F12培地の1:1混合物(GRAND ISLAND BIOL. Co., NY, U.S.A.)(血清を含まない)を含む時計皿に載せた。約1mm3の小脳外植片を作製してガラス製ペトリ皿に入れ、15%ウシ血清、2.5%ウシ胎仔血清、0.015H M Hepes緩衝液pH 7.2に加えて50mg/l硫酸ストレプトマイシン、100mg/lペニシリン-Gナトリウム、および総量を6g/lとするのに十分な量のグルコースを含む、同じ培地混合物中で増殖させた。培養した外植片を36℃、湿度100%でインキュベートした。樹立した小脳培養物から25回目の継代の時点、インビトロに15カ月間おいた後にクローンを単離した。1つのクローン(UCHCC1)は培養下に維持して検討したが、残りのものは凍結した。小脳細胞系UCHCC1はニューロン様形態を保っていた;培地へのジメチルスルホキシド(DMSO)の添加により、突起伸長を主な特徴とする、再現性のある形態的「分化」イベントが誘発された。「分化した」細胞において、ベラトリジンは22Naの取り込みを有意に増加させた。この取り込み増強はテトロドトキシン(TTX)によって阻止され、半値阻害濃度は0.9nMであった。TTXの[3H]エチレンジアミン誘導体([3H]en-TTX)と、同じDMSO処理細胞から調製したミクロソーム画分との結合により、最大結合量(Bmax)が173fmol/mgタンパク質であってKdが1.1nMである単一クラスの受容体が示された。甲状腺UCHT1細胞および「未分化」(DMSOの非存在下で培養した)小脳細胞では、22Na取り込みに対しても[3H]en-TTX結合に対してもベラトリジンの明らかな影響は認められなかった。適切な環境操作によって誘導された「分化した」神経様の性質は、中枢ニューロンを発生するモデル系としての小脳UCHCC1細胞の有用性を示している。UCHCC1細胞系に対して行った培養物の樹立、ナトリウム流アッセイ、[3H]エチレンジアミン-テトロドトキシン([3H]en-TTX)を用いた結合アッセイ、形態学的検討、および結果は、Caviedes R.ら、Brain Res., 1986, 365: 259-268に記載されている。実施例5―不死化心筋細胞系 永続的培養下にある細胞系(RCVC)を、成体ラット心室細胞から作製した;形質転換はUCHT1ラット甲状腺細胞系による馴化培地とのインキュベーションによって行った。詳細には、断頭したFisher 344正常雄性ラットの心臓から心室腔を取り出し、脂肪および間充織包膜を除去して微粉砕した。約1mm3の心筋外植片を作製し、直径10cmのガラス製培養皿に播種して付着させ、BGM+20%UCHT1馴化培地(UCHT1-CM)中で増殖させた。心室外植片の約25%が付着し、2週間で増生を開始して40日で集密化した。初期増生物をトリプシン処理およびEDTAによって分離し、「選択的連続継代」法によって選別した。3回の連続的継代を、対応する各24時間のプレプレーティング期間に続いて行い、最も緩徐に付着する細胞を選択した。線維芽細胞を除去するために、システイン、グルタミンおよび血清を除去して一定期間にわたり培養物をインキュベートした。筋原細胞を多く含む培養物をトリプシン処理によって継代し、増殖能力に応じて1:2〜1:10に希釈した。培養下で3カ月間の連続増殖させた後にUCHT1-CMをBGMから除いたが、細胞増殖パラメーターには明らかな影響はなかった。 倍加時間が20時間であって増殖接触阻止を示し、グリコーゲン含量の多さならびにミオグロビン、α-サルコメアアクチン、α-アクチニンおよびデスミンに対するに対する陽性免疫反応といった、いくつかの筋肉マーカーを示す不死化心室細胞が得られた。これらの細胞からのミクロソーム画分は3H-ニトレンジピンと結合し、最大結合量は295fmol/mgタンパク質で平衡解離定数は0.7nMであることが示された。部分的に脱分極した細胞(インキュベーション培地中40mM K-)でニフェジピン感受性45CA2+流入が認められた。通常通りに脱分極した細胞では、カルシウムチャンネル作動薬BAYK-8644およびCGP-28392によって誘発された同程度の流入が得られた。 パッチクランプ試験では遅い内向き電流が認められ、これは5μM ニフェジピンによって完全にブロックされた;ホルモン添加培地中で30日間培養することにより、細胞がさらに分化するように誘導した。この条件下では、速く不活性化する内向き電流および大きな外向き電流が明らかになった。40〜60日後には、細胞は、T型およびL型Ca2+電流に類似した、La3-感受性の速く、および遅く不活性化する内向き電流を示した。RCVC細胞系の樹立、培養条件、免疫細胞化学的検討、3H-ニトレンジピン結合試験、45Ca2-流実験、パッチクランプ法、および結果は、Caviedes, P.ら、Mol. Cell. Cardiol., 1993, 25: 829-845に記載されている。実施例6―疾患のモデルとしての障害性細胞系 本発明の方法に従って増殖させた細胞は、細胞が疾患のインビトロモデルとなるように天然または誘発性の病的欠陥を有することができる。したがって、変異、罹患または別の様式の障害のある細胞を、その特定の疾患に対する薬物スクリーニングのために増殖させることができる。例えば、病的組織がUCHT1馴化培地を用いて形質転換を受け、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを有する罹患生物の骨格筋、嚢胞性線維症を有する罹患生物の膵管、ならびにヒトのダウン症候群およびアルツハイマー病のマウスモデルの神経組織から、細胞系が作製されている。 ヒトのトリソミー21(ダウン症候群)における神経機能不全に関する知見は、神経系障害が生じる機序を理解するために極めて重要である。コリン機能はアルツハイマー病およびダウン症候群で最も損なわれるものの一つであり、この2つの疾患は類似の病態(Caviedes, P.ら、Brain Res., 1990, 510: 229-236)およびコリン輸送の変化を示す。神経系の安定したインビトロモデルの樹立は、これらの問題に迅速かつ的確に対処するための重要なツールになると考えられる。すなわち、元の組織と類似した機能不全の機序を有し、治療法の候補および/または細胞機能のさらなる変化を検討するためのモデルとして役立つと考えられる、本発明の方法に従って増殖させた細胞系を得ることができる。 UCHT1ラット甲状腺細胞系を用いて連続培養したT16トリソミーマウス由来の細胞系(CTb)が樹立されており(Allen, D. D.ら、Euro. J. Neurosci., 2000, 12: 3259-3264)、これはダウン症候群ののインビトロモデルとして用いることができる。トリソミー16の胎仔および正常胎仔は、二重ヘテロ接合体(Rb 2H/RB 32Lub)の雄を正常雌性C5B7BLと交配することによって得た。妊娠した雌に麻酔をかけ、妊娠12〜16日の時点で屠殺した。胎仔をリン酸緩衝食塩水(PBS)中に置き、トリソミー胎仔を特徴的な高度の浮腫によって特定した。トリソミー胎仔を取り出し、髄膜を剥がして大脳皮質を注意深く切離した。組織を切片化し、0.12%(w/v)トリプシン(SIGMA)を含む3mLのPBS中に浮遊させ、37℃で30分間インキュベートした。トリプシン反応は、6g/lグルコース、10%ウシ血清、10%ウシ胎仔血清、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン(SIGMA)を含むように改変したDMEM/Ham F12栄養混合培地(1:1)(SIMA)からなる同容積のプレーティング培地を添加することによって停止させた。懸濁液を遠心し、ペレットを2mLのプレーティング培地中に再懸濁した。先端熱加工したパスツールピペットを通過させることによって組織を解離し、続いて細胞をコラーゲンがコーティングされた(CALBIOCHEM)培養皿に40,000/cm2の密度でプレーティングした。播種の時点でプレーティング培地に10%(v/v)のUCHT1馴化培地を加えた。24時間後に、最初のプレーティング培地を、6g/lグルコース、10%ウシ血清、2.5%ウシ胎仔血清、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンおよび10%UCHT1馴化培地を含むように改変したDMEM/Ham F12栄養混合培地(1:1)からなる栄養培地と交換した。培養物は37℃、湿度100%および10%CO2の雰囲気下にあるインキュベーター内で維持し、形質転換巣または形態変化の出現に関して定期的に観測したところ、さまざまな期間(7〜8カ月)の後に明らかとなり、これが細胞系CNh(正常皮質に由来)およびCTb(トリソミー皮質に由来)の樹立を示す徴候となった。CTbトリソミー細胞系の樹立および特徴分析については、以下ならびにAllen, D.D.ら(2000)およびCardenas A.M.ら、Neuroreport, 1999, 10(2): 363-369に記載されている。正常およびトリソミー16型の脊髄細胞系および後根神経節細胞系も作製されている。 ヒト筋細胞系(RCDMD)を、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの患者から、外植片をUCHT1馴化培地の存在下で培養することによって樹立した。この細胞系は30回を上回る継代を経ており、最近クローニングされた。母細胞系はデスミン、ミオグロビン、骨格筋ミオシンおよびアクチニンに関して免疫組織化学的に陽性であり、ジストロフィンについては陰性である。RCDMD細胞系の樹立、特徴分析については、Caviedes, P.ら、Muscle & Nerve, 1994, 17: 1021-1028およびLiberona, J.L.ら、Muscle & Nerve, 1998, 21: 902-909に記載されている。実施例7―ラット、マウス、ウシおよびヒト由来のその他の不死化細胞系 2種類のラット細胞系(RCHT-1およびRCHT-2)が、Fisher 344ラットの視床下部由来の外植片をUCHT1馴化培地の存在下で培養することによって樹立された。細胞核周囲部で免疫組織化学によって検出されたマーカー(陽性細胞の%)を提示する。値は未分化細胞から得たものである。LHRH(+):10%;破傷風毒素(+):50〜60%;ニューロフィジン:1%;ACTH:1%;α MSH:1%;βエンドルフィン:1%;ソマトスタチン:1%;メトエンケファリン:0.5%;TRH:0.5%;バソプレッシン:0.1%:オキシトシン:0.1%;チロシンヒドロキシラーゼ:0.1%;GAD:0.1%;CRH(-);GFAP(-);S100(-);NSE(-);N-エピネフリン取り込み:存在;ノルエピネフリン(HPLCによる):>10ng/mgタンパク質;および、ドーパミン(HPLCによる):13ng/mgタンパク質。 ラット心房心筋細胞細胞系(RCAC)は、外植片をUCHT1馴化培地の存在下で培養することによって樹立された。 正常胎児マウスおよびトリソミー16の胎児マウスの神経系から、外植片をUCHT1馴化培地の存在下で培養することにより、いくつかの細胞系が樹立されている。上記の通り、後者はヒトトリソミー21(ダウン症候群)およびアルツハイマー病の動物モデルである。これらのマウス細胞系は正常マウスおよびトリソミーマウスの大脳皮質、海馬、脊髄および後根神経節から派生した。皮質細胞系CNH(正常)およびCTb(トリソミー)は、免疫組織化学的には神経細胞マーカー(NF、NSE、シナプトフィジン、MAP-2など)を有し、グリアマーカー(GFAP、S-100)を有していない。これらのマウス神経細胞系はグルタミン酸作動性刺激(グルタミン酸、NMDA、AMPAおよびカイニン酸)およびコリン作動性(ニコチン)刺激に反応して、細胞内Ca2+が増加する。CTb細胞系は細胞内に空胞化した大きなアミロイド沈着を呈し、これはコンゴーレッド染色および免疫組織化学の両方によって認められた。これらの不死化マウス細胞系の樹立および特徴分析については、Cardenas A.M.ら、(1999);Allen, D.D.ら(2000)に記載されている。 ウシ角膜内皮細胞系は、外植片をUCHT1馴化培地の存在下で培養することによって樹立されている。この不死化細胞系はフォンビルブラント因子およびPECAMに関して免疫組織化学的に陽性である。この細胞をMATRIGEL上で培養すると管様構造を生じる。 ヒト卵巣顆粒細胞系は、外植片をUCHT1馴化培地の存在下で培養することによって樹立された。この不死化細胞はエストロゲンおよびプロゲステロンを基礎レベルとして産生し、FSHおよびLHに応答して前記のステロイド性ホルモンの産生が増加する。 ヒト甲状腺細胞系は、外植片をUCHT1馴化培地の存在下で外植片を培養することによって樹立された。この不死化甲状腺細胞はチログロブリンを産生し、トリチウム標識ヨウ素を取り込む。実施例8―不死化RCSN-3細胞系およびラット線条体への移植 成体ラットの黒質に由来するRCSN-3細胞系の初代培養物をUCHT1馴化培地の存在下で増殖させた。RCSN-3細胞系は、栄養培地中に保った場合、単層として増殖し、倍加時間は52時間であり、プレーティング効率は21%で飽和密度は410,000個/cm2であった。図2A〜2Fは、未分化RCSN細胞に上皮様形態を示す傾向があり、突起は短いか存在せず、酸性色素に染まりやすい細胞質を有することを示している。分化の後には細胞の増殖が大きく低下し、RCSN細胞が突起を出して近傍細胞との接触を確立する。メラニンの存在が第一鉄イオン捕捉法によって認められたが、このことは細胞質中の色素が均一に分布し、未分化段階では標識がわずかであるが分化に伴って大幅に増強することを示している。 免疫組織化学的な特徴分析により、NSE、シナプトフィジンおよびMAP2に関する免疫標識が陽性であったことからわかるように、RCSN細胞がニューロンの形質を発現することが示された。NSEおよびシナプトフィジンは、図3A〜3Hに示されているように、細胞質に均一に分布した微粒子状パターンを示した。シナプトフィジンは細胞間相互作用領域に特に多い。MAP-2は空胞様の細胞質構造を取り囲む線維状の標識パターンを示す。ニューロフィラメント200kDは分化細胞を均一に標識し、破傷風毒素は細胞膜内にパッチ様に分布して存在する。機能性神経細胞マーカーを図4Aおよび4Bに示しており、これはチロシンヒドロキシラーゼに関する免疫組織化学染色を提示している。標識は未分化細胞の方が幾分強度が低く、標識は細胞質全体に顆粒状パターンを呈して分布している。カテコールアミンの存在も図4Cおよび4Dに提示した顕微鏡写真から明らかであり、これは細胞質性に分布している。グリアマーカーGFAPおよびS100は対照条件および分化条件のいずれにおいても陰性であった。分化した場合には、図5に示した状況のように、Fluo-3を添加したRCSN細胞の最大40%は200μmグルタミン酸で外因性に刺激すると反応してCa2+が増加し、同時に脱分極させる条件(70mM K+)を用いた場合はさらに強く反応した。検討した16個の細胞の場合、Ca2+シグナルは刺激から1秒後がピークで、ピークから30〜40秒後には基礎レベルに戻った。これらの実験は、RCSN-3クローン細胞系がニューロン組織の一般的な特性を保持しており、チロシンヒドロキシラーゼ、DOPAデカルボキシラーゼおよびカテコールアミンの存在といったSNの特有の特徴を有することを示している。 RCSN細胞の懸濁液を、黒質に6-OHドーパミン誘発性損傷を有するラットの線条体に移植した。図6Aおよび6Bは移植後の回転行動の進展に関する代表的なパターンを示しており、その1つは、図6Aに示されているように、12週後にレベルが最初の回転速度の約25%に低下するという、滑らかに低下する指数型曲線を特徴とする。もう1つのパターンは、図6Bに示されているように、移植2週間後に回転の急激な低下を伴い、それに続いて回転速度の上昇およびその後の持続的な低下によって再び12週後にプラトーに達する。16週の時点でラットを屠殺し、線条体の切片を採取して、TH抗体およびDOPAデカルボキシラーゼ抗体によって免疫組織化学的に染色した。図7A〜7Cに示されている通り、高度の標識および神経突起の形成を示す、両方のマーカーに関して陽性染色される細胞が線条体に存在する。 上記の通り、RCSN-3細胞系は、6-OHドーパミン損傷ラット回転行動の持続的かつ進行性の低下を誘導する(移植16週後には初期回転値の75%)。これらの移植実験では事前にインビトロ分化誘導物質を用いなかった。このことは、細胞が接種時点で十分なドーパミン機能を有するか、または線条体におけるインビボ微小環境がRCSN-3系の分化した表現型を持続もしくは誘導させるのに十分であるかのいずれかと考えられることから、実用上の利点になると思われる。実施例9―片側パーキンソン病モデルにおける不死化RCSN-3細胞系 体重180〜200gのFisher 344ラット5匹を用いた(A群:対照(n=1)、損傷も移植もなし;B群:対照損傷(n=1)、損傷ラット、移植は行わず;C群:実験群(n=3)、損傷があって移植したラット)。ラットには同様の食事および水を自由摂取させた。移植および損傷の手順は、ケタミンによる全身麻酔下でDavid Kopfステレオトーム(stereotome)を用いて行った。パーキンソン病モデルの誘導のためには、8μgの6-OHDAを含む4μlの食塩液を、上行性中脳線条体ドーパミン作動性経路を含む腹側被蓋野に神経細胞体を損なわないように注入して定位損傷を作成した。座標は4,4mm AP、ブレグマに対して1,2mm側方、および脳の表面に対して7.8mm垂直方向とした。注入は50μl Hamiltonシリンジを用いて行った。この損傷は同側線条体のドーパミン作動性神経支配を受ける領域の神経支配を除去する(UrgenstedtおよびHerrera-Marschitz, 1981)。6-OHDAは黒質のドーパミン作動性ニューロンの死滅を引き起こし、これにより黒質-線条体経路の遮断を引き起こす。 実験群には、損傷から8週間後に、黒質-線条体回路を局所的に回復させる目的で、損傷と同側の線条体のさまざまな深さにRCSN3細胞懸濁液を合計6回移植した。6週間後に形態学的評価を行うためにラットを屠殺した。ラットにエーテル麻酔をかけ、より良好な固定を得るとともに赤血球試料を浄化するために脳室を介してPBS溶液を約10分潅流した。その後、固定後処理を2段階に分けて行った:第1に脳全体を4日間かけて固定し、分析用の組織試料(SNおよび線条体に対応)の第2の固定を最短7日間行った。25ミクロン厚の凍結切片をクリオスタットにより-20℃で作成した。切片は0.05%アジ化ナトリウムPBS溶液中に集めた。 用いた免疫酵素法はチロシンヒドロキシラーゼという酵素の検出であった。入手した切片をPBSで洗い、PBS中に3%の飽和濃度に希釈した過酸化水素を用いて内因性ペルオキシダーゼをブロックした。PBSによる洗浄を2回繰り返し、BSA 1%、アジ化ナトリウム0.05%、Triton X100 1%(PBS中)を用いて非特異的標識を60分間ブロックした。次に切片を洗浄せずに一次抗体1:2500(モノクローナル抗チロシンヒドロキシラーゼ、CLONE TH-2)と4℃で12時間インキュベートした。続いて切片を 1%BSA PBS溶液で2回洗い(以後の洗浄はすべて同じ溶液を用いて行った)、二次抗体1:100(抗マウスINMUNOGLOBULINS、ビオチン結合)とともに60分間インキュベートした。10分間の洗浄を3回行い、3つの切片をアビジン-HRP複合体1:100(EXTRAVIDINペルオキシダーゼ結合物0.5mg/ml)とともに60分間インキュベートし、10分間の洗浄3回からなる二度目の洗浄を行った。試料を色素原DAB(3.3ジアミノベンジジン)とともに3〜5分間インキュベートし、2回洗った上で、後に顕微鏡で分析するためにマウントしてカバーをかけた。 THに関して陽性であった組織切片の分析により、この酵素を発現する大脳領域ではTH+ニューロンの細胞質および軸索終末が濃い褐色に標識されることが示されている(図8)。切片内には、抗体と非特異的に結合するタンパク質に起因するある程度のバックグラウンドの存在のために薄く陽性に呈色した特定の領域が認められるが、これは移植区域に強い標識が明らかに認められるTH陽性領域とは同等でない。 正常ラットの切片を観察すると(対照A群、図8)、標識の明瞭な対称性が認められ、線条体領域が標識されている。損傷ラットの切片と比較すると(Bの損傷対照群、図9)、後者は標識パターンの顕著な非対称性を呈しており、6 OHドーパミン損傷側には特徴的なTH+標識がなく、これはドーパミン作動性終末が存在しないことを反映している。 倍率4倍では実験群の切片(図10)にTH+局在領域が認められ、これは特に線条体の残りの部分と比較すると明瞭である。損傷領域の分析では、生きている移植細胞に対応する暗褐色の小さな区域が特に側脳室の近傍に認められる。 この区域をさらに拡大(20倍)すると(図11)、移植区域にTH+構造の蓄積が観察され、これは穿刺経路、および理論的にみて線条体とのドーパミン性相互作用が最も必要な脳室の付近にもみられる。 さらに拡大して(40倍;100倍)さらに詳細にみると(図12、13および14)、これらのTH+区域は、ニューロン型の細胞体および突起を示す形態を有する細胞に対応すると捉えることが可能である。いくつかの分枝を有するこれらの突起は、線条体の方向を向いている。さらに、これらの細胞は単独ではなく、より標識の強い区域(ここでは細胞密度が高く標識が強いために個々の細胞は認識できない)に付随して小さな群として認められる。 TH+標識が陽性であることにより、脳に端を発するさまざまな領域におけるドーパミン作動性ニューロンの存在が確かめられるが、これはこのような細胞が、チロシンをL-Dopa(これは次に脱カルボキシル化を受けてドーパミンになる)に変換するこの律速酵素を酵素機構の中に含むためである(Adams, R.ら(1999)「神経学の原理(Principios de Neurologia)」、Editorial McGraw-Hill Interamericana, Mexico DC, 第6版、pp. 925-931)。さらに、本発明者らの結果によれば、ドーパミン作動性終末が多く存在する黒質および線条体などの区域には強いTH+反応が観察され、このことは、黒質-線条体経路は主としてドーパミンによって基底核の調節装置として働くことからみて、TH+ニューロン(終末)が実際にそれ自体の形態学的な位置に存在することを裏づけている(Kandel, Eら(2000)「神経科学の原理(Principles of Neural Science)」、Editorial McGraw-Hill, USA, 第4版、第15章、「神経伝達物質(Neurotransmitters)」、pp. 280-297)。 対照ラットにおいて検討した切片は、黒質-線条体経路が無傷であるため、両側の線条体の間で対称性を示している。これに対して、損傷ラットは、経路の一側性ニューロン変性を示し、黒質と線条体との間の結合をすべて失っている(このことは損傷ラットの切片で確認されている)。 本研究では、側脳室の側壁に限局して損傷側の線条体内にTH+細胞の離散的な領域が存在し、それが穿刺経路によって生じた空間の近傍に存在するニューロンと同じ形態を呈することから、移植したドーパミン作動性RCSN-3ニューロンの存在が確認された。 本研究は片側パーキンソン病の動物モデルにおいて成体黒質の不死化細胞の移植を試みた結果であり(Cenci, M.A.ら、Nature Reviews Neuroscience, July 2002, 3(7): 574-9)、これにより、現在の薬物療法を代替しうる、パーキンソン病に対する根治療法の開発を予見することが可能になった(Rascol, O., J. Neurology, April 2000, 247(Suppl. 2): II51-7;Weiner, W., Archives of Neurology, March 2000, 57: 408)。不死化細胞の移植のモデルは、疾患の外科療法のための医学における他の実験法および応用手法を上回る利点をもたらす。第1に、脱分化した成体組織に由来する不死化細胞は、胚の使用が暗に意味する、胚細胞(Jong-Hoon, K.ら、Nature, July 4, 2002, 418: 50-56;Bjorklund, L.ら、PNAS, Feb. 2002, 99: 2344-2349;Freed, C., PNAS, Feb. 2002, 99: 1755-1757)、胎児(Blanco, L.ら、Reviews Neurology, Mar. 1998, 26(151): 361-5;Vogel, G., Science, Mar. 2001, 291: 2060-2061)または幹細胞(McKay, R., Nature, July 27, 2000, 406: 361-364;Mc Laren, A., Nature, Nov. 1, 2001, 414: 129-131)の移植のような倫理上の問題を伴わない。第2に、宿主から不死化された細胞は現在の治療法のような免疫抑制を必要としないと考えられ(Lindvall, O.およびP. Hagell, Clin. Chem. Lab. Med., Apr. 2001, 39(4): 356-61;Dunnett, S.ら、Nature Reviews Neuroscience, 2002, 2: 365-69;Jankovic, J.、Archives of Neurology, July 1999, 56: 785;Fischbach, G.およびG. McKhann, N. Engl. J. Med., Mar. 2001, 344: 763-765)、このためにこの種の治療的アプローチに伴うリスクが減ると考えられる。 以上を要約すると、本研究により、TH+染色によって示されたように、移植ラットの線条体にRCSN3ニューロンが存在することが確かめられた。さらに、細胞質突起の存在は、線条体の介在ニューロンとのシナプス結合が再形成されることの形態学的な基盤になると考えられ、これはラットの片側パーキンソン病モデルでアポモルフィンによって誘導された回転行動の改善の説明になると考えられる。実施例10―RCSN-3細胞におけるドーパミン分泌の電流測定法による検出 カテコールアミン遊離の電気化学的検出を以前の記載の通りに行った(Kawagoe, K.T.ら、Analytical Chemistry, 1991, 63: 1589-1594)。簡潔に述べると、カーボンファイバーの単線(直径10μm)を、引張して作製したガラス製キャピラリーに挿入することにより、カーボンファイバー製センサーを構築した。続いて、このカーボンファイバー電極に、塗料の陽極電気泳動沈着法を用いて、薄く均一な絶縁膜をコーティングした。続いてポリマー薄膜を熱硬化させた。各々の実験の前には、マイクロピペット面取り砥石で、電極の先端を45゜に研磨した(NARISHIGE, Tokyo, Japan)。電気化学電流はList EPC-5パッチクランプ増幅器によって増幅した。カーボンファイバー電極の電位は+650mVに設定した。電流シグナルをローパスフィルターに通過させて10kHzでフィルター処理し、保存した上でIBM PC互換コンピュータを用いて解析した。 細胞は、増殖培地(F10に10%成体ウシ血清、2.5%ウシ胎仔血清、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlを加えたもの)、または成体血清を2%に減らして胎仔血清を除去した分化用培地のいずれかを用いて、直径1cmのカバーグラス中で培養した。 RCSN-3細胞がMPTPからMPP+を生成しうるか否かを検証するために、RCSN-3細胞(分化および未分化)の可溶化物をMPTPとともにインキュベートした。分化は、F10培地+2%成体ウシ血清中で1週間培養することによって誘導した。未分化条件はF10培地+10%成体ウシ血清および2.5%ウシ胎仔血清を用いて実現した。可溶化バッファーは、50μM PMSFおよびプロテアーゼ阻害混合物(ロイペプチン、ペプスタチン、ケモスタチン)を含むPBSとした。試料をMPTPおよびMPP+とともに37℃で15分間インキュベートした。HPLC試験はSHIMADZU HPLCを逆浸透下で用いて行い、245nmを読み取った。結果は図16A〜C、図17A〜Dおよび図18A〜Cに示されている。図18A〜Cは、細胞抽出物をMPTPとインキュベートした場合にはMPP+(14.4分のピークが存在しない)が産生されないことを示しており、これはMAO B活性がこれらの細胞には存在しないことを示唆している。実験11―RCSN-3細胞系におけるアポトーシス 図19Aおよび19Bは、対照条件下で培養したRCSN-3細胞系(図19A)およびMPP+による処理後のRCSN-3細胞系(図19B)におけるDNA断片化試験(TUNEL)を示している。MPP+処理細胞におけるDNAの断片化が注目され、これはアポトーシス機構の関与を示している。図20A〜20Cは、JC-1色素によるミトコンドリア膜電位変化を示している。JC-1は新規な陽イオン性カルボシアニン色素であり、ミトコンドリアに蓄積する。この色素は低濃度では単量体として存在し、フルオレセインと同様に緑色蛍光を発する。高濃度では、この色素は幅広い励起スペクトルを呈するJ凝集体を形成し、その最大発光波長は約590nmである。これらの特徴により、JC-1はミトコンドリア膜電位の高感度マーカーとなっている(MOLECULAR PROBES, Eugene, OR)。ドーパミンおよびMnで処理した細胞における蛍光の弱さは膜電位の低下を示しており、このことはこれらの物質の作用の基礎にはミトコンドリア機能不全があることを示唆している。図21Aおよび21BはMPP+の存在下でのJC-1染色を示しており、これはこの毒素もミトコンドリア機能に影響を及ぼすことを示唆する。図22Aおよび22Bは、基礎蛍光によって標準化した、JC-1とJ単量体との発光の比を示している。ドーパミン、マンガンおよびMPP+は対照との有意差を示している。実施例12―RCSN-3細胞におけるメラニンの酸化 RCSN-3細胞を100μM L-Dopaの存在下で24時間インキュベートした。細胞を低張緩衝液で可溶した。インサイチューで酸化されたメラニンはリポフスチン様の黄色蛍光を呈した。インビトロでのメラニンの酸化によってメラニン重合体が分解され、蛍光性溶液が生じた。天然メラニンおよび合成メラニンのいずれについても、蛍光分光法によって示された最大励起波長は約470nmであり、最大発光波長は約540nmであった。光または過酸化水素への曝露時間が長くなるほどメラニン蛍光は増加した(Kayatz, P.ら、Invest Ophthalmol Vis Sci, Jan. 2001,42(1): 241-6)。(表3) 表4および5は、一元配置分散分析(ANOVA)の総括表(表9)およびStudentのt検定の総括表(表10)を示している。(表4)(表5)実施例13―膵臓細胞系 新生ジャコウザルの膵臓の試料を入手し、コラゲナーゼ0.2%によって酵素的に消化処理を行った。細胞を6回継代したところ、ほとんどの細胞にはインスリンを発現した(80%)。約20%はグルカゴン発現した。この比率は、UCHT1プロトコールに用いた本発明者らの標準的なDME/Ham F12培地のグルコース含量が多い(3.15g/l)ためである可能性がある。しかし、試料はインスリン含有細胞の比率が高い尾部から採取した。新生ジャコウザルの膵尾部から樹立した。この細胞系を4〜5回継代したところ、20回を上回る集団倍加が得られた。細胞は形態的には上皮の外観を呈した。免疫蛍光試験では、3.15g/lグルコースを含む培地中でインスリンに対する陽性反応が90%を上回り、グルカゴンに関しては5%未満であった。これらの培養物は、不死化が明らかになって培養物がUCHT1培地に依存しなくなるまで増殖を続けると考えられ、その時点で十分な特徴分析を行うことができると考えられる。実施例14―不死化神経細胞系および神経疾患の治療のための移植 セロトニン作動性細胞系を、胎児、新生児または成体由来の視床下部外側部、縫線核背核または脳から派生させることができる。このような細胞は、神経障害、例えば疼痛および脊髄損傷の治療のために移植することができる。 胎児、新生児または成体ドナーからの青斑核、分界条間質核、背内側核または縫線核に由来する、ノルアドレナリン作動性細胞系を入手することもできる。このような細胞系は例えば、てんかんまたは記憶障害の治療に用いることができる。 小脳のプルキンエ細胞を、遺伝性もしくは散発性の小脳性運動失調、家族性小脳オリーブ萎縮、小脳にかかわる虚血、血管拡張性失調症または免疫病理学的傍腫瘍性変性症を含む小脳性運動失調障害、さらには他の形態の運動失調症における移植のために、胎児性、新生児性または成体性の源から増殖させることもできる。 本発明のもう1つの神経細胞系には、脊髄または脳幹の運動ニューロンが含まれ、これは、筋萎縮性側索硬化症または末梢神経損傷後の治療のための移植を目的として、胎児性、新生児性または成体性の源から増殖させることができる。 他の部位からのグリア細胞、例えば皮質オリゴデンドロサイト、オリゴデンドロサイト始原細胞、グリア神経幹細胞、さらには皮質またはその他のグリア細胞および末梢シュワン細胞を、多発性硬化症、末梢神経損傷、その他の脱髄性疾患、さらには頭部損傷、脊髄損傷、低酸素症、虚血性脳疾患/脳卒中または視神経症の治療のために増殖させることもできる。このような細胞は、胎児、新生児または成体由来の幹細胞、前駆細胞もしくは始原細胞、または成熟細胞から派生させることができる。 本発明の方法を用いて、線条体性、さらには中脳性のグリア細胞系を樹立することができる。このような細胞系は、ドーパミン性ニューロンとの同時移植、線条体ニューロンとの同時移植、特定の移植の状況で望まれているように神経突起の伸長または分枝を助長するために他の移植と混合せずに隣接して行う移植を含む、さまざまな治療法のために有用と考えられる。または、このような細胞系を、例えば、パーキンソン病またはハンチントン病などのように黒質または線条体が冒される変性疾患の進行を遅らせる、または改善するために、単独の治療法として用いることもできる。このような細胞は、他の脳領域での線条体にかかわる脳卒中後の移植の目的に有用である。同様に、グリア細胞を黒質ニューロンまたは線条体ニューロンに対する栄養供給に関与させることもでき、これによってパーキンソン病またはハンチントン病で認められる神経変性が軽減される可能性がある。これらのグリア細胞は、毒素で誘発される神経変性または神経毒性の予防に有用と考えられ、神経保護または損傷を受けた黒質ニューロンもしくは線条体ニューロンの復旧をもたらすと考えられる。これらの細胞またはその他のグリア細胞を脱髄性疾患の治療に用いることもできる。 中脳グリア細胞系の樹立は、胎児、新生児、青年期または成体の黒質(中脳)からグリア細胞を入手することによって行える。線条体細胞系には、胎児、新生児、青年期または成体の線条体から派生したグリア細胞が含まれる。このような細胞系は、前記の通り、これらの部位に由来する初代組織をUCHT1ラット甲状腺細胞系由来の増殖因子に曝露または接触させることによって作製しうる。UCHT1増殖因子は単離することもでき、UCHT1細胞系による馴化培地などの組成物に含まれた状態でもありうる。胎児中脳に由来するヒトドーパミン細胞系は、もし用いるのであれば、カーネギー段階(Carnegie Stage)18-23のドナーを用いることが好ましい(Freeman T.B.およびKordower J.H.、「ヒト死体胎児の黒質移植片:個体発生への影響、術前の移植片調製および組織保存(Human cadaver embryonic substantia nigra grafts: effects of ontogeny, preoperative graft preparation and tissue storage)」、「運動障害における脳内移植:実験の基礎および臨床経験(Intracerebral Transplantation in Movement Disorders: Experimental Basis and Clinical Experience)」中、1991, Elsevier Science Publishers, Amsterdam 15: 163-169;Freeman T.B.ら、Exp. Neurol., 1991, 113: 344-353;Freeman T.B.ら、Annals of Neurol., 1995, 38: 379-388)。グリア細胞の個体発生もこの時期に起こるが、これらの細胞の個体発生時期は、比較的限定的な時期に生じるドーパミン性ニューロンよりも幅広い。 黒質組織を上記のようにUCHT1ラット甲状腺細胞系による増殖因子に曝露させると、曝露から約1〜8カ月後に細胞は永続的に分裂するものの分化した状態となる。ドーパミン作動性細胞系ならびにグリア細胞系を含むいくつかの種類の細胞系が中脳から得られている。チロシンヒドロキシラーゼなどのニューロン分化、およびGFAPなどのグリア分化に関する免疫組織化学的マーカーを用いることも考えられる。さらに、例えば、特徴分析における段階として、このような細胞系がインビトロでドーパミン性ニューロンの神経突起の成長を誘導することを示すためにインビトロ組織培養法が用いられる。 線条体グリア細胞系は、既知の方法を用いて切離した胎児、新生児、青年期、成体の線条体組織を用いて樹立することができる(Freeman T.B.ら、Cell Transplant, 1995, 4: 539-545;Freeman T.B.ら、「運動障害の治療のためのヒト胎児組織の移植(Human fetal tissue transplantation for the treatment of movement disorders)」、「運動障害の神経外科療法(Neurosurgical Treatment of Movement Disorders))」中、AANS Publications, New York, N. Y.、177-192ページ;Freeman T.B.およびBorlongan C.V., Soc. Neurosci. Abst., 2000, 26: 209.6;Freeman, T.B.ら、Proc. Nt. Acad. Sci., 2000, 97: 13877-13882)。細胞系の作製およびグリア性構成要素の特徴分析のために同様の組織培養法を行うこともできる。GABA作動性、コリン作動性および線条体内部に認められるその他の細胞種が培養物内部にも認められると予想され、このような細胞系の特徴を、以上のようにインビトロで免疫組織化学的に、および移植後に判定することもできる。 本発明のもう1つの面は、パーキンソン病の患者における移植の目的に有用な細胞系を作製するための方法であって、ヒト新生児、青年または成体の黒質またはカーネギー段階18〜23のヒト胎児中脳からの細胞を解離することを含む方法を対象とする。これらの発生段階の間にドーパミン性ニューロンが胎児黒質に発生しており、この段階にある移植片は移植後に生着して神経突起の伸長を形成し、齧歯類およびヒトの脳と結合して、それぞれ行動的および臨床的な利益をもたらす。この年齢のドナーの使用が奏功することは臨床的に示されているほか(Freeman, TBら、Ann. Neurol., 1995, 38: 379-388)、剖検でも示されていて、移植片が移植後18カ月間生着していることが判明している(Kordower, JHら、N England J Med, 1995, 332: 1118-1124;Kordower, JHら、J Comp Neurol, 1996, 370: 203-230;Kordower, JHら、Cell Transplant, 1997, 6: 213-219)。 ドーパミン作動性黒質ニューロンを10%の割合で含む、黒質組織またはヒト胎児中脳を、例えばUCHT1馴化培地に対する曝露により、UCHT1増殖因子に対して曝露させる。この手順を齧歯類黒質組織を用いて行った。この手法によって作製した細胞系は、当技術分野でこれまでに知られている細胞とは以下の点で異なる:(1)細胞はヒト胎児に直接由来せず、インビトロで増殖させたものである;(2)細胞系は黒質由来のドーパミン性ニューロンのみを含む;(3)細胞を再現性および信頼性のある手法で優良製造工程を用いて作製することができる;(4)細胞をインビトロならびにインビボでの十分な生存度を保ちながら凍結保存することができる;ならびに(5)細胞を外科手術のために待機的に入手することができる。 中脳ドーパミン性ニューロンは中脳腹側に認められる細胞全体の約10%を占めるが、この領域からは黒質(これは通常、線条体へと投射する)からのドーパミン性ニューロン;腹側被蓋野(これは通常、中脳辺縁系および前頭方向へと投射する)からのドーパミン性ニューロン;ならびに中脳グリア細胞および他のニューロン型の細胞を含む、さまざまな種類の細胞系を派生させることができる。ドーパミン性ニューロンはチロシンヒドロキシラーゼに関する免疫組織化学のほか、チロシンヒドロキシラーゼRNAに対するマーカーを用いて分類することができる。腹側被蓋野からものではなく、アルデヒドデヒドロゲナーゼに関する免疫組織化学などの黒質ドーパミン性ニューロンの特異的マーカーを用いることもできる。さらに、線条体の成長が認められないVTAからのドーパミン性ニューロンとは異なり、黒質移植片の神経突起成長が線条体内部に認められるため、線条体内部での適切な神経突起成長が観察されると予想される6-OHDAラットモデルにおいて、適切な細胞間相互作用の確認のために特定のドーパミン作動性細胞系を移植してインビボで試験することもできる(Schultzberg, Mら、Neurosci, 1984, 12: 17-32)。 このように、この方法は、当技術分野で知られた他の方法とは異なり、齧歯類黒質組織ではなくヒト黒質組織を出発組織として用いており、このため、免疫抑制の必要なく臨床的に用いうる同種細胞系を作製することが可能である。また、ヒト由来の細胞系からの移植片に由来する神経突起成長も齧歯類またはブタの細胞系によるものよりも有意に大きいと予想される。 本発明のもう1つの面は、ハンチントン病を有する数多くの患者に移植可能な、GABA作動性(γ-アミノ酪酸産生性)の増殖した細胞系を作製するための方法、および、このような細胞系をパーキンソン病、てんかん、統合失調症、脊髄損傷、脳卒中またはその他の神経変性疾患といったGABA作動性細胞の移植が有用な他の疾患に用いるための方法である(Winkler, Cら、Experimental Neurology, 1999, 155: 165-186)。 パーキンソン病では、視床下核へのGABA作動性ニューロンの移植がこの核からの出力を抑制するのに有効であり、いくつかの症状またはその他の運動障害が軽減される。てんかんの場合には、発作病巣の周囲またはてんかん発生経路の他の領域への移植によって発作の活動が抑制される。統合失調症の場合には、腹側被蓋野ドーパミン作動性投射のGABA系抑制によって前頭皮質および中脳辺縁系皮質へのドーパミン性入力がダウンレギュレートされて症状が軽減される。線条体にかかわる脳卒中の後には、類似の動物モデルで示されているように、線条体移植によって臨床的な利益が得られる。 連続培養下で分化した特性を保つ安定的なヒトGABA作動性ニューロン系統は、ヒト新生児、青年期、成体または胎児の線条体をUCHT1増殖因子、例えば、本明細書の教示のようにUCHT1馴化培地に対して曝露させることによって作製しうる。例えば、成人の線条体または脳室外側隆起組織をUCHT1馴化培地に対して曝露させることができる。胎児組織は受胎後約7.5〜9週のドナー段階にあるヒト胎児に由来することが好ましい。 曝露後に、安定な増殖分化細胞系が、脳室外側隆起内に認められる細胞種から得られる。発生中の線条体に認められるGABA作動性細胞種およびコリン作動性細胞種などを、培養下にある異なるクローンの内部に見いだすことができる。見いだされた各種のニューロン表現型の細胞系を作製することができる。細胞の特徴分析は当技術分野で知られた免疫組織化学的な方法によって行うことができる。一方はCCKによって同時標識され、一方はエンケファリン(ENK)によって同時標識される、2種類の線条体GABA作動性細胞系を作製することができ、これらは線条体に認められる2種類のGABA作動性投射ニューロンに相当する(Freeman, T.B.ら、Proc. Nat. Acad. Sci.、2000, 97: 13877-13882)。 細胞系の作製後に、形質転換細胞の特徴を免疫組織化学的に判定し、ラットのハンチントン病モデルに移植することができる。成功すれば、このような細胞系を続いて移植の目的に臨床的に用いることができ、コリン作動性介在ニューロンまたは線条体グリアなどの他の線条体細胞種と混合することもできる。このような細胞系を、パーキンソン病、てんかん、脊髄損傷、脳卒中および統合失調症のモデルにおける治療的有益性を調べるために用いることもできる。 本発明のもう1つの面は、同様のGABA作動性細胞系との同時移植を目的として、線条体コリン作動性介在ニューロンの細胞系を作製するための方法を含む。この場合には、ヒト新生児、青年もしくは成体の線条体ニューロン、または脳室内側隆起(カーネギー段階18〜23)もしくは脳室外側隆起(カーネギー段階23〜29)(コリン作動性始原細胞のこの領域への移動が起こった後のもの)に由来するヒト胎児細胞を、本明細書における教示の通りにUCHT1増殖因子に対して曝露させる。UCHT1馴化培地は、例えば、初代実質培養物を実質的に永続的に分裂する分化細胞系へと形質転換させることができる。このようなヒト細胞系は、免疫学的な観点からは、移植片が同種異系移植片であるため、生涯にわたる免疫抑制を必要とせずに移植することができる。 本発明のもう1つの面は、コリン作動性ニューロンの移植により、ヒト脳におけるコリン作動性入力の喪失に伴う記憶障害を改善することを含む。このようなニューロンは、記憶障害にある脳の神経再支配をもたらす可能性が最も高いことから、基底核または中隔/対角帯経路のいずれかに由来する細胞系から供給することができる。 ヒト中隔および基底核に由来するコリン作動性ニューロンは、新生児、青年期もしくは成体の脳またはヒト胎児から既知の技法を用いて解離させることができる。以前に考察したように、組織をUCHT1増殖因子に曝露させ、細胞系を移植の目的で作製する。細胞の特徴は、コリンアセチルトランスフェラーゼおよびアセチルコリンアセチルトランスフェラーゼなどのコリン作動性ニューロンの免疫組織化学マーカーを用いて判定しうる。実施例15―免疫特権をもたらすセルトリ細胞系およびその他の細胞 セルトリ細胞を本発明の方法を用いて増殖させることもできる。セルトリ細胞は任意のさまざまな哺乳動物(例えば、齧歯類、ブタ、ヒト)から解離することができる。セルトリ細胞は思春期前期にあるドナーの睾丸から解離することが好ましい。この時期には例えば、セルトリ細胞が行う栄養供給およびFas-Lの発現が最大になる。非増殖性のセルトリ細胞は生存し、脳に対する神経栄養効果、同時移植片への神経栄養供給を及ぼすほか、Fas-Lまたはその他の機序を介した神経異種移植片ならびに全身性の同種移植片および異種移植片の局所的な免疫防御を行うことが示されている(Sanberg, P.R.ら、Transplant. Proc., 1997, 29: 1926-1928;Willing, A.E.ら、Brain Res., 1999, 246-250;Willing, A.E.ら、Brain Res. Bull., 1999, 48(4): 441-444);Kin, T.ら、Cell Transplantation, 2002, 11: 547-552)。 あらゆる細胞について以前に述べた通り、セルトリ細胞を、連続的に分裂するものの分化した状態に分化するまで、UCHT1細胞系の増殖因子に対して約1〜約8カ月間曝露させること(例えば、UCHT1馴化培地中での培養により)ができる。したがって、セルトリ細胞を、全身性の免疫抑制の必要を伴わずに、局所的な免疫抑制を生じさせる目的で、FasLを発現させるとともに同時移植するために、本発明の方法を用いて増殖させることができる。 本発明の方法を用いて増殖させたセルトリ細胞には、以下のものを含むいくつかの利点がある:(1)細胞をインビトロで増殖させることができ、このため十分な量のセルトリ細胞をさまざまな用途(例えば、生体分子の製造、治療用移植および生物反応モデル)のために作製することが可能である(ドナー用セルトリ細胞の入手可能性は通常限定されているため);(2)ヒトセルトリ細胞系は同時移植した異種移植片または同種移植片の生存性を高め、レシピエントの抗原刺激を最小限にとどめる;(3)この細胞系はセルトリ細胞のみからなり、このため、新たに調製したセルトリ細胞に混入している可能性のある他の実質細胞の混入の可能性がない;および(4)この細胞系は優良製造工程を用いて製造することができ、待機的使用のために細胞を凍結保存することができる。 さらに、卵巣間質細胞を、セルトリ細胞と同じ有益性(例えば、免疫抑制性または栄養性)を得るために本発明に用いることもできる。例えば、膵島細胞を胎盤組織と同時移植することにより、糖尿病マウスにおける血糖値を正常化し(Suzuki, K.ら、Cell Transplantation, 2002, 11: 45-457)、さらにセルトリ細胞と類似の様式で拒絶反応を防止することができる。すなわち、胎盤組織および卵巣間質細胞の増殖を本発明の方法に従って行うことができる。 セルトリ細胞、卵巣間質細胞および胎盤細胞によって産生されるもののようなアポトーシス産物をコードする遺伝子を発現するように、細胞を遺伝的に改変することができる。腰椎間板材料は、椎間板に認められる血液供給がわずかである上にFasリガンドが発現されるため、免疫特権性が比較的高い。このため、椎間板材料を本発明の方法を用いて増殖させ、免疫抑制を行わずに、または短期的な免疫抑制の下で、椎間板変性疾患の罹患生物に投与することができる。増殖した椎間板細胞は、椎間板切除術後または椎間板が冒される外傷後に移植することができる。細胞は例えば、観血的手順により、または放射線監視下(すなわち、蛍光透視法)で経皮的に投与することができる。実施例16―UCHT1増殖因子の精製および特徴分析 細胞系の不死化を引き起こすUCHT1増殖因子の特徴は一部は解明されている。この増殖因子は糖タンパク質と推定され、正常細胞および腫瘍性細胞の馴化培地に由来する多くのトランスフォーミング増殖因子(TGF)とは、既知のTGFが馴化培地の除去に対して可逆的な増殖作用を誘導する点で異なる;UCHT1増殖因子は培地を除去しても持続性である。実験動物を用いた研究で、いくつかの種類の実験的腫瘍(すなわち、リンパ腫、乳房腫瘍、原発性および移植性肝癌)の誘導および増殖に対する甲状腺ホルモンの影響が明らかに示されている。トリヨードチロニンは、X線、発癌性化学物質ならびにDNAウイルスおよびRNAウイルスによる培養細胞の腫瘍性形質転換において役割を果たす。ウイルス癌遺伝子(v-erbA)の細胞性対応物が甲状腺ホルモン受容体をコードするという事実は、このホルモンが腫瘍増殖に対して直接的または間接的な影響を及ぼすことを示唆する。しかし、ホルモン単独での作用に反応した細胞形質転換または腫瘍促進は報告されておらず、このため既知および未知の増殖因子が同時に存在することが必要であるため、ホルモンの存在のみでは形質転換を誘導するには不十分であると考えられる。 本明細書に記載したように、UCHT1細胞系は、初代細胞培養物の、組織特異性および機能的特性を保った上での増殖およびその後の不死化を誘導しうる、1つまたは複数の因子を放出することが示されている(例えば、培地中に)。UCHT1馴化培地によって樹立された細胞系(例えば、RCMH、RCVCおよびUCHCC1)およびその他のクローン細胞系(例えば、NIH3T3、PTK2、MDCKおよびKFR)に由来する馴化培地は、初代培養物に添加しても増殖活性も形質転換活性も示さない。 100,000rpm、3時間の高速上清(HSS)での超遠心を行い、0.2μmセルロースアセテート膜を通して濾過した粗UCHT1馴化培地は、複数のヒト、イヌ、マウスおよびラット初代培養物および細胞系における細胞増殖およびDNA合成を誘発した。劣性ヒト神経芽腫およびC57Bl胎児マウスの脳の初代培養物では、20〜30日間で形質転換巣の出現が検出され、これは染色体異常によって明らかとなった。同じUCHT1馴化培地HSS調製物を、カットオフ値が10、20および100kDのCENTRICON(AMICON)分子フィルター膜で限外濾過を行った場合いは、増殖誘発活性が30〜100kDの範囲で回復した。この画分は極めて安定性が高いことが判明した(熱耐性;トリプシン耐性)。0.2μmフィルターで濾過した可溶性UCHT1馴化培地HSS調製物をアセトン25%、40%、50%、60%および80%で沈殿させたところ、40%の画分が、無血清条件下で増殖中のKGFR細胞を用いた場合の増殖誘導活性を最も保持していることが示されている(図25および32A〜D)。イオン交換クロマトグラフィーを用いた場合には培地および動物血清による違いがみられ(図26)、UCHT1培地は約11mlでより大きなピークを示し、このことは分泌タンパク質の存在を示唆している。陰イオンクロマトグラフィーでは、純粋なアルブミンとトランスフェリンとの分離度に関して1.7という値が得られており、これはUCHT1馴化培地で認められる値よりも小さく(図27および28)、これらの2つ以外にタンパク質が存在することを示唆する。等電点電気泳動ゲルではアルブミンが馴化培地中のタンパク質として優勢であることが示されており、ピークの両端の減弱から他のタンパク質の存在が示唆されるが、分解度はそれらを識別するには不十分である(図29)。馴化培地の疎水相互作用クロマトグラフィーからは、トランスフェリンとアルブミンとの配合物と類似したパターンが得られ、対応関係には幾分違いがあるものの、これは非特異的なタンパク質相互作用によると考えられる(図30および31)。 図25は、表7に示したように、各飽和レベルの硫酸アンモニウムによる沈殿物においてクーマシーブルー色素で染色したSDS-PAGEを示している。最初のカラムは分子量マーカーを含む。図25は、主要成分が約65kDおよび15kDに位置し、それらがそれぞれアルブミンおよびラクトアルブミンと会合していることを示している。ほとんどのタンパク質は飽和度65%〜80%の硫酸アンモニウムで沈殿するが、40%〜50%および50%〜65%の範囲にあるタンパク質の数はさらに多い。理論的にはチログロブリンは40%〜50%で沈殿する。(表6) 表6:培養した細胞系、およびそれぞれを順応させた培養条件の概要.*インスリン、トランスフェリン、ソマトスタチン、ヒドロコルチゾン、GlyLysHis、およびTSH。(表7) 表7:種々のアセトン沈殿法におけるUCHT1-CMのタンパク質定量(BCA法)の結果(%として示した).値は1mlの滅菌PBS中に再懸濁したペレットの体積に対して標準化されている。(表8) 表8:ブラッドフォード法によるタンパク質定量の結果.CM:UCHT1馴化培地、FS:胎仔血清、10〜2.5%:複合培地、N/S:血清なし。アセトン沈殿法の値は再懸濁したペレットの値に対して標準化されている。(表9) 表9:硫酸アンモニウム沈殿物の脱塩に関する、ブラッドフォード法によるタンパク質定量の結果.結果はペレットの1:4タンパク質希釈物を示している。実施例17―腫瘍細胞系増殖因子の精製および特徴分析 いくつかの正常な細胞種を不死化させる有効性を評価するために、腫瘍細胞系培養物の元の上清をその亜画分とともに用いる。正常細胞系は迅速に不死化されるものが好ましい。次に、腫瘍上清画分をゲル濾過カラムにより、好ましくはHPLC技術を用いてサイズ画分する。次に、どの画分に不死化成分が存在するかを明らかにする。増殖性のある1つまたは複数の画分が同定されたところで、タンパク質を電荷、疎水性または吸着などによって分離するHPLCまたは一般的な実験用クロマトグラフィーカラムを用いて活性画分の亜分画をさらに行う。続いて、画分の純度をアッセイするために一次元および二次元SDS-PAGEゲルを泳動する。画分が純粋でなければ、ゲルに現れるバンドの数ができるだけ少ない数に減るまで、サイズ、電荷、吸着などに基づいてさらに分離を行うことができる。続いて、これらの画分をゲルから切り出す。 画分が精製されたところで、真核細胞または原核細胞に対する画分の効果を評価するために、精製された画分に対する一連の試験(特にバイオアッセイ)を行うことができる。例えば、細胞増殖の直接的または間接的な測定を利用することができ、これらはしばしば標識ヌクレオシドのゲノムDNAへの取り込みを用いている。その具体例には、トリチウム標識チミジン(3H-dT)法およびブロモデオキシオリジン(BrdN)法が含まれる(Waldmanら、Modern Pathol., 1991, 4: 718-722;Gratzner, Science, 1982, 218: 474-475;米国特許第6,461,806号)。遺伝子レベルでのアッセイを行うこともできる。例えば、エイムス試験、微小核試験、ムラサキツユクサ核に対するコメットアッセイ、またはムラサキツユクサ雄蘂毛に対する薄紅色変異試験を用いることができる。エイムス試験(逆変異アッセイとも呼ばれる)は、化学物質、製剤または抽出物などの被験物質変異原性を評価するために広く用いられている(Ames, B.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1973, 70: 782-786;McCann, J.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1975, 72: 979-983;McCann, J.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1975, 72: 5135-5139;Mortelmans, K.およびE. Zeiger、Mutat. Res., 2000, 455: 29-60)。微小核試験は被験物質を染色体異常誘発(染色体断裂)活性および異数性誘発(染色体全体の喪失)活性に関してスクリーニングするために用いられる。この試験は、染色体断裂を伴う有糸分裂細胞は分裂後期にクロマチン分布の乱れを示すという観察所見に基づく。分裂終期の後には置換されたクロマチンは娘細胞の核から排出され、微小核として細胞質中に認められる(Schmid, W., Mutation Res., 1975, 31: 9;Salamoneら、Mutation Res., 1980, 74: 347;Salamone, M.F.、Mutation Res., 1983, 123: 61;米国特許第6,387,618号)。微小核のスコア化は比較容易に、リンパ球、線維芽細胞および剥脱上皮細胞といったさまざまな細胞種に対して行うことができる。上に示したように、ムラサキツユクサを用いる遺伝子毒性を用いることもできる(Ichikawa, S., Mutat. Res., 1992, 270: 3-22;Alvarez-Moya, C.ら、Salud Publica de Mexico, Nov.-Dec. 2001, 43(6): 1-7)。適用可能な他のアッセイは、Ames, A.ら「変異原および発癌物質の検出および分類のための改良された細菌試験システム(An Improved Bacterial Test System for the Detection and Classification of Mutagens and Carcinogens)」、Miller, J.編、「分子遺伝学の発見(Discovering Molecular Genetics)」中、Los Angeles:Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1996、pp. 367-376;米国特許第6,489,099号;米国特許第6,461,806号;米国特許第6,010,846号;および米国特許第5,910,403号)に記載されている。 バイオアッセイに用いる細胞種は、増殖因子によって迅速に不死化されるものであることが好ましい。続いて細胞を野生型の出発材料と比較することができる。バイオアッセイに用いるのに適した細胞系の例には、NIH-3T3、CHO、MDCK、KGFR、PTK2(第14番染色体のみを有し、この細胞系はゲノムレベルでの変化の判定に有用である)、インドキョン細胞(6本の染色体を有する)、BALB/c-3T3(不死化マウス細胞系)、C3H 10T1/2(不死化マウス細胞系)、RLV(ウイルス感染したラット細胞系)およびSA7(ウイルス感染したラット細胞系が非制限的に含まれる。さらに、シリアンハムスター胚細胞の形質転換アッセイを用いることもできる(Kerckaert, G.ら、「NIEHSによる2回目の予測―毒性評価実験:30種の化学物質発癌性バイオアッセイ(The Second NIEHS Predictive-Toxicology Evaluation Experiment:30 Chemical Carcinogenicity Bioassays)」;Environmental Health Perspectives 104, Supp. 5, [October, 1996]「国立毒物学プログラムにより齧歯類バイオアッセイにおいて現在試験中である、化学物質の発癌性の予測のためのシリアンハムスター胚細胞形質転換アッセイの使用(Use of the Syrian Hamster Embryo Cell Transformation Assay for Carcinogenicity Prediction of Chemicals Currently Being Tested by the National Toxicology Program in Rodent Bioassays)」)。細胞を、タンパク質を含まない化学的に規定された培地中に懸濁化することができる。続いて二次元ゲルを、両方の細胞種による亜画分(出発材料および処理材料)に対して泳動させる。検討しうる成分には、核、小胞体、原形質膜およびミトコンドリアなどのオルガネラが非制限的に含まれる。分画はイオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィーおよびゲル濾過クロマトグラフィーを用いて行いうる。続いて、増殖中の細胞のある特有なタンパク質画分が同定されると考えられる。ほとんどの迅速アッセイには最初に現れた画分が好ましい。最も早く特有の様式で発現されたタンパク質の質量分析(好ましくは4桁の有効数字で)により、どのタンパク質断片が存在するかが同定されると考えられる。続いてこのタンパク質の配列を決定すること、またはタンパク質ライブラリーから同定することが可能である。続いて、不死化と最初に相関する二次元ゲルタンパク質画分を同定するための迅速アッセイが考えられる。 タンパク質が十分に精製されたならば、そのタンパク質をコードする核酸配列の決定のためにタンパク質を遺伝子ライブラリーと比較することができる。続いて遺伝子を増幅することができる。細胞増殖を誘導するタンパク質を組換え的に産生させるために、細菌などの適した宿主へのトランスフェクションを目的として、cDNAおよび機能的に結合したプロモーターをプラスミドに挿入することができる。実施例18―標的細胞 前記の通り、人体には200種類を上回る細胞種が存在しており、本発明の方法は、治療、製造またはその他の目的で、これらの細胞種のうち任意のものを増殖させるのに有用である。本発明の方法を用いて増殖させうる細胞種の例を以下の表に列挙した。増殖させることが可能な細胞種のその他の例は本明細書中に開示されている。(表10)標的細胞の例ラット甲状腺UCHT1細胞系により48時間にわたって馴化した培地を凍結保存剤の非存在下で3回凍結融解させる、本発明の方法を示している。この培地を0.2μmフィルターに通して濾過し、無細胞馴化培地を得る。哺乳動物由来の初代培養物を、指定した範囲の時間にわたって10〜20%(v/v)の存在下に保つ。不死化の成功については培養物中の形質転換巣の生成によって評価する。分化したRCSN細胞および未分化RCSN細胞の位相差顕微鏡像を示している。図2A(対照)は、未分化RCSN細胞には上皮様の形態を示す傾向があり、突起は短いか存在せず、細胞質が酸性色素に染まりやすいことを示している。図2Bは、分化後には細胞の増殖が大きく低下し、RCSN細胞が突起を出して近傍細胞との接触を確立することを示している。図2Cおよび2Dはそれぞれ、分化の前および後のヘマトキシリン・エオジン(H-E)染色を示している。図2Eおよび2Fはそれぞれ、第一鉄イオン捕捉法を用いた分化の前および後のメラニン染色を示しており、細胞質中の色素が均一に分布し、未分化段階では標識がわずかであるが分化に伴って大幅に増強することが示されている。神経細胞マーカーに関する免疫組織化学について示している。図3Aおよび3Bはそれぞれ、分化の前および後にニューロン特異的エノラーゼ(NSE)に関して染色したRCSN細胞を示している。図3Cおよび3Dはそれぞれ、分化の前および後にシナプトフィジン(SNP)に関して染色したRCSN細胞を示している。図3Eおよび3Fはそれぞれ、分化の前および後に微小管関連タンパク質-2(MAP-2)に関して染色したRCSN細胞を示している。図3Gおよび3Hはそれぞれニューロフィラメントおよび破傷風毒素に関して染色し、落射蛍光条件下で撮影した、分化したRCSN細胞の像を示している。RCSN細胞の免疫組織化学染色および顕微鏡写真を示している。図4Aおよび4Bはそれぞれ、未分化(対照)条件および分化条件下でのチロシンヒドロキシラーゼ(TH)に関する免疫組織化学染色を示している。図4Cおよび4Dは、第一鉄イオン捕捉法を用いた顕微鏡写真を示しており、蛍光を発する領域はカテコールアミン沈着を表している。fluo-3を添加したRCSN細胞系におけるCa2+を示している。画像は200μmグルタミン酸の添加による刺激から3秒後の細胞を示しており、同時に脱分極させる条件(70mM K+)を用いた方がはるかに強度が高かった。蛍光強度は擬似カラー尺度によって示されており、黒-青-緑-黄色-オレンジ-赤の順に強度が高くなる。6ヒドロキシドーパミン(6 OHDA)損傷ラットの線条体にRCSN-3細胞を移植した後の回転運動速度の低下のパターンを表したグラフを示している。RCSN-3細胞の移植から16週後に屠殺したラット2匹の線条体切片の顕微鏡写真を示している。図7Aおよび7Cは、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)に関して免疫染色したRCSN-3細胞を示している(それぞれ倍率10倍および40倍)。図7Bは、DOPAデカルボキシラーゼ(DOPA-DC)に関して免疫染色したRCSN-3細胞を示している(倍率40倍)。傷害(損傷)もなくRCSN-3細胞の移植も行っていない対照ラットの脳切片の全体像を示している。濃い褐色の区域はTH陽性(TH+)細胞に対応する。正常ラットは両半球の標識に関して対称性を示し、線条体(上の矢印)および黒質(SN)(下の矢印)はTHを呈する。腹側被蓋野に6ヒドロキシドーパミン(6-OHDA)誘発性の損傷があるがRCSN-3細胞は移植していない対照ラットの脳切片の全体像を示している。線条体の領域(黒の矢印)で標識に関して顕著な違いが認められる。この図は、右側線条体におけるドーパミン作動性終末の破壊が黒質線条体経路から進行したことを裏づけている。実験群(すなわち、6-OHDA誘発性の損傷があり、RCSN-3細胞を移植した)におけるラット脳の切片の全体像を示している。TH+区域(矢印、丸印)は、移植したRCSN-3細胞の側脳室(丸印)付近での蓄積に対応する。RCSN-3細胞を移植した損傷ラットの脳内の移植区域の顕微鏡写真を示している。TH+反応が認められる。矢印は、針穿刺経路の領域を取り囲むTH+細胞の蓄積を示している(倍率40倍)。移植物のニューロン密度では個々のニューロンを明瞭に区別することはできない。損傷のあるレシピエントラットの線条体における、ニューロンの形態を有する移植したRCSN-3細胞の顕微鏡写真を示している(倍率100倍)。細胞体(薄い方、下の矢印)から伸長した突起(濃い方、上の矢印)の存在に注目されたい。損傷のあるレシピエントラットの線条体における、移植したRCSN-3細胞の顕微鏡写真を示している(倍率100倍)。主として線条体の方を向いている著しい数の突起に注目されたい。損傷のあるレシピエントラットの線条体内部の移植したRCSN-3細胞の顕微鏡写真を示している(倍率100倍)。TH+細胞体(下方にある1つのグレーの矢印)および突起(上方にある4つの黒の矢印)が存在する。ラット線条体の低倍率での顕微鏡写真を示している。図15A〜15Cは、RCSN-3細胞を移植した損傷ラット脳の線条体レベルでの切片(それぞれ2倍、5倍および5倍)を示しており、TH+領域が各切片の中央にある。図15Cでは、顕微鏡の絞りはストリアソーム(striasome)のコントラストを高めるために絞られており、TH+はその周囲(右)および直線投射関係(左)にある。細胞体はこの倍率では明らかでない。図15Dおよび15Eは、損傷のあるラット線条体の対照を示している。ドーパミンの電流測定法による検出を示している。図16Aは、25μMドーパミンを用いた較正を示している。図16Bおよび16Cは、70mM外部K+による脱分極刺激後のRCSN-3細胞におけるドーパミンの電流測定シグナルを示している。ドーパミンに対応する偏りが存在し、これはRCSN細胞がインビトロでドーパミンの産生および能動分泌を行えることを示している。1-メチル-4-フェニル1,2,3,6-テトラヒドロピリジン(MPTP)とともにインキュベートした細胞可溶化物による1-メチル-4フェニルピリジニウム(MPP+)産生の評価に関する対照を示している。図17Aは組織培養液(対照)を示している。図17Bは、アンチプロテアーゼ(AP)を含むリン酸緩衝食塩水(PBS)(対照)を示している。図17Cは、10μM MPTPをPBSおよびAPとともに含むもの(対照)を示している。図17Dは、10μM MPP+をPBSおよびAPとともに含むもの(対照)を示している。MPTPとともにインキュベートしたRCSN-3細胞(分化および未分化)可溶化物によるMPP+産生の評価を示している。図18Aは、RCSN-3細胞抽出物中の10μM MPP+を示している。図18Bは、RCSN-3細胞抽出物中の10μM MPTPを示している。図18Cは、分化細胞由来のRCSN-3細胞抽出物中の10μM MPTPを示している。予想通り、MPTPとのインキュベーション後にMPP+ピークは観察されず、このことからRCSN細胞にMAO B活性がないことが示唆される。MPP+で処理したRCSN-3細胞系におけるDNA断片化を、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼを介したdUTPニックエンド標識法(TUNEL)を用いて示している。図19AはMPP+の非存在下におけるRCSN-3細胞(対照)を示し、図19BはMPP+で処理したRCSN-3細胞を示している。四塩化カリウムまたはテトラエチルベンズイミダゾリルカルボシアニン(JC-1)を用いて検出した、RCSN-3細胞のミトコンドリア膜電位を示している。図20Aは処理していないRCSN-3細胞(対照)を示している。図20Bはドーパミンの存在下におけるRCSN-3細胞を示している。図20Cはマンガンの存在下におけるRCSN-3細胞を示している。RCSN-3細胞のミトコンドリア膜電位を示している。図21Aは処理していないRCSN-3細胞(対照)を示している。図21BはMPP+の存在下におけるRCSN-3細胞を示している。RCSN-3細胞におけるJC-1単量体の発光と「J」凝集体の発光との比(Em(520nm)/Em(590nm))を示している。レボドパ(L-Dopa)の存在下または非存在下でRCSN3細胞に対して行ったメラニン実験の結果を示している。図23は、4種類の実験条件を用いた実験結果を示している:(i)L-Dopa非存在下のプラスチック製培養皿;(ii)L-Dopa存在下のプラスチック製培養皿;(iii)L-Dopa非存在下のガラス製培養皿;および(iv)L-Dopa存在下のガラス製培養皿。UCHT1馴化培地中であらかじめ培養した、増殖性(P)または分化型(D)のいずれかである、H1b細胞系(ニューロン表現型を有する正常マウス胎仔海馬細胞)の細胞における脳由来神経栄養因子(BDNF)およびグルココルチコイド受容体(GR)の発現を示したSDS-PAGEを示している。表5に示したように、各飽和レベルの硫酸アンモニウムによる沈殿物においてクーマシーブルー色素で染色したSDS-PAGEを示している。最初のカラムは分子量マーカーを含む。図25は、主要成分が約65kDおよび15kDに位置し、それらがそれぞれアルブミンおよびラクトアルブミンと会合していることを示している。ほとんどのタンパク質は飽和度65%〜80%の硫酸アンモニウムで沈殿するが、40%〜50%および50%〜65%の範囲にあるタンパク質の数はさらに多い。理論的にはチログロブリンは40%〜50%で沈殿する。イオン交換クロマトグラフィーにおける試料に関する曲線を示している。尺度は同等ではないが、主要成分によって方法の感度を評価している。血清および培地の曲線には、基本培地にアミノ酸および酸が存在するために若干違いがあるように思われる。馴化培地と培地との違いがそれより大きいことは分泌タンパク質の存在を示唆する。しかし、実際のタンパク質含有量に関して補正した後には、直接的な比較分析を裏づける有意差は認められなかった。イオン交換クロマトグラフィー(DEAEセルロース)を示している。緩衝液は平衡化および結合用にはBis-Tris 20mM pH 7、溶出用にはBis-Tris 20mM pH 7 1M NaClであり、これはカラム20倍容量を想定している。図26との比較により、トランスフェリンおよびウシ血清アルブミン(BSA)に関するパターンがそれぞれ画分10および13〜22に明瞭に確認できる。BSAに関するピークには、塩のモル濃度の20%勾配の維持に関連して中断部が存在する。イオン交換クロマトグラフィー(DEAEセルロース)を示している。純粋なアルブミンとトランスフェリンとの分離度は1.7であり、これは同等のピークに関して0.89という分離度が認められる、馴化培地(図26に示したように)で認められるものよりも低い。理想的には、分離レベルは1.5またはそれ以上である必要がある。馴化培地のDEAE-セルロースクロマトグラフィー画分の等電点ゲル電気泳動(IEF)を示している。アルブミンは表示した画分で優勢であるが、ピークの末端では、その影響は残りのタンパク質の十分な分離を行えないほどではないものの弱まっている。疎水相互作用クロマトグラフィーを示しており、認められるピークを主な混入物に関する濃度に関連した尺度で提示している。これらのピークは、純粋なアルブミンおよびトランスフェリンを用いて行った類似の試験でのクロマトグラフィープロファイルとの比較により、容易に確認しうる(図31)。対応関係は同一ではないが、これはおそらく培地タンパク質の混合物と関連した非特異的な疎水相互作用によると思われる。分離度は2を上回る。純粋なアルブミンおよびトランスフェリンに関する疎水相互作用クロマトグラフィーを示している。分離度は1.9を上回る。KGFR細胞系を用いたバイオアッセイの結果を示している。HSS培地および馴化培地は増殖作用を発揮するが、両者の間には有意差は認められない。図32Bでは増殖誘発作用が明らかである。馴化培地の前処理過程でのタンパク質の損失について評価するための、クーマシーブルーで染色した対照SDS-PAGEを示している。この結果は、脱塩による損失は無視しうることを示している。 その細胞と接触した標的細胞の増殖能を高める、UCHT1ラット甲状腺細胞系。 寄託番号DSM ACC2535の細胞系の増殖誘導特性を有する、請求項1記載の細胞系。 UCHT1ラット甲状腺細胞系から得られる馴化培地。 UCHT1ラット甲状腺細胞系が、寄託番号DSM ACC2535の細胞系の増殖誘発特性を有する、請求項3記載の馴化培地。 細胞の増殖を誘導するための方法であって、1つまたは複数の標的細胞をUCHT1ラット甲状腺細胞系から調製された馴化培地と培養する段階を含み、その馴化培地が1つまたは複数の標的細胞の増殖を誘導するような方法。 UCHT1ラット甲状腺細胞系が寄託番号DSM ACC2535の細胞系の増殖誘導特性を有する、請求項5記載の方法。 培養が1つまたは複数の標的細胞を24時間毎に少なくとも1回の速度で分裂させる原因となる、請求項5記載の方法。 1つまたは複数の標的細胞が、幹細胞、芽細胞、クローン化細胞、前駆細胞および分化細胞からなる群より選択される、請求項5記載の方法。 1つまたは複数の標的細胞が、外胚葉、中胚葉および内胚葉からなる群より選択される源から得られる、請求項5記載の方法。 1つまたは複数の標的細胞が分泌細胞である、請求項5記載の方法。 1つまたは複数の標的細胞が栄養因子産生細胞である、請求項5記載の方法。 1つまたは複数の標的細胞が、芽細胞、クローン化細胞、受精卵、胎盤細胞、ケラチノサイト、基底表皮細胞、毛幹細胞、毛根鞘細胞、表面上皮細胞、基底上皮細胞、尿路上皮細胞、唾液腺細胞、粘液細胞、漿液細胞、フォンエブナー腺細胞、乳腺細胞、涙腺細胞、耳道腺細胞、エクリン汗腺細胞、アポクリン汗腺細胞、モル腺細胞、脂腺細胞、ボーマン腺細胞、ブルンナー腺細胞、精嚢細胞、前立腺細胞、尿道球腺細胞、バルトリン腺細胞、リトル腺細胞、子宮内膜細胞、気道もしくは消化管の杯細胞、胃の粘液細胞、胃腺の酵素原細胞、胃腺の酸分泌細胞、インスリン産生性β細胞、グルカゴン産生性α細胞、ソマトスタチン産生性δ細胞、膵臓ポリペプチド産生細胞、膵管細胞、小腸のパネート細胞、肺のII型肺胞細胞、肺のクララ細胞、下垂体前葉細胞、下垂体中葉細胞、下垂体後葉細胞、消化管もしくは気道のホルモン分泌細胞、甲状腺細胞、副甲状腺細胞、副腎細胞、生殖腺細胞、腎臓の傍糸球体細胞、腎臓の密集斑細胞、腎臓の周血管極細胞、腎臓のメサンギウム細胞、腸の刷子縁細胞、外分泌腺の横紋管細胞、胆嚢上皮細胞、腎臓の近位尿細管の刷子縁細胞、腎臓の遠位尿細管細胞、精巣輸出管の無線毛細胞、精巣上体主細胞、精巣上体基底細胞、肝細胞、脂肪細胞、I型肺胞細胞、膵管細胞、汗腺の無紋性管細胞、唾液腺の無紋性管細胞、乳腺の無紋性管細胞、腎糸球体の壁細胞、腎糸球体の有足細胞、ヘンレ係蹄の細い区域の細胞、集合管細胞、精嚢の管細胞、前立腺の管細胞、血管内皮細胞、滑膜細胞、漿膜細胞、耳の外リンパ腔の内層をなす扁平細胞、耳の内リンパ腔の内層をなす細胞、脈絡叢細胞、軟クモ膜の扁平細胞、眼の毛様体上皮細胞、角膜内皮細胞、推進機能を有する線毛細胞、エナメル芽細胞、耳の前庭器の半月面細胞、コルチ器官の歯間細胞、線維芽細胞、毛細血管の周皮細胞、椎間板の髄核細胞、セメント芽細胞、セメント細胞、象牙芽細胞、象牙細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、骨細胞、前骨芽細胞、眼の硝子体の硝子体細胞、耳の外リンパ腔の星細胞、骨格筋細胞、心筋細胞、平滑筋細胞、筋上皮細胞、赤血球、巨核球、単球、結合組織マクロファージ、ランゲルハンス細胞、破骨細胞、樹状細胞、ミクログリア細胞、好中球、好酸球、好塩基球、マスト細胞、プラズマ細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、キラーT細胞、キラー細胞、桿体細胞、錐体細胞、コルチ器官の内有毛細胞、コルチ器官の外有毛細胞、耳の前庭器のI型有毛細胞、耳の前庭器のII型細胞、II型味蕾細胞、嗅覚ニューロン、嗅覚上皮の基底細胞、I型頸動脈体細胞、II型頸動脈体細胞、メルケル細胞、触覚に特化した一次感覚ニューロン、温覚に特化した一次感覚ニューロン、痛覚に特化した一次ニューロン、固有受容一次感覚ニューロン、自律神経系のコリン作動性ニューロン、自律神経系のアドレナリン作動性ニューロン、自律神経系のペプチド作動性ニューロン、コルチ器官の内柱細胞、コルチ器官の外柱細胞、コルチ器官の内支持細胞、コルチ器官の外支持細胞、境界細胞、ヘンゼン細胞、前庭器の支持細胞、味蕾の支持細胞、嗅覚上皮の支持細胞、シュワン細胞、衛星細胞、腸グリア細胞、中枢神経系のニューロン、中枢神経系のアストロサイト、中枢神経系のオリゴデンドロサイト、水晶体前嚢上皮細胞、水晶体線維細胞、メラノサイト、網膜色素上皮細胞、虹彩色素上皮細胞、卵原細胞、卵母細胞、精母細胞、精原細胞、卵胞細胞、セルトリ細胞および胸腺上皮細胞、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項5記載の方法。 1つまたは複数の標的細胞が、骨髄細胞、セルトリ細胞、肝細胞、網膜細胞、甲状腺細胞、副甲状腺細胞、膵臓細胞、下垂体細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、桿体細胞、錐体細胞、有毛細胞、好中球、GABA作動性ニューロン、コリン作動性ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトおよび神経内分泌クロマフィン細胞、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項5記載の方法。 1つまたは複数の標的細胞が遺伝子改変細胞である、請求項5記載の方法。 1つまたは複数の標的細胞が、胚性幹細胞、成体幹細胞、芽細胞、クローン化細胞および受精卵からなる群より選択される、請求項5記載の方法。 1つまたは複数の標的細胞が哺乳動物細胞である、請求項5記載の方法。 1つまたは複数の標的細胞がヒト細胞である、請求項5記載の方法。 馴化培地との培養後に、馴化培地と1つまたは複数の標的細胞との接触を遮断することにより、1つまたは複数の標的細胞が増殖を停止するように誘導する、請求項5記載の方法。 遮断が、1つもしくは複数の標的細胞を馴化培地との接触状態から取り除く段階、または馴化培地を1つもしくは複数の細胞との接触状態から取り除く段階を含む、請求項18記載の方法。 馴化培地との培養後に、1つまたは複数の標的細胞を分化させることにより、1つまたは複数の標的細胞が増殖を停止するように誘導する、請求項5記載の方法。 分化が、1つまたは複数の標的細胞を分化誘導物質と接触させる段階を含む、請求項20記載の方法。 分化誘導物質が、ホルモン補給剤、プトレッシン-トランスフェリン、フォルスコリン、ジブチリルアデノシン-3',5'-サイクリック一リン酸(cAMP)、レチノイン酸、ラミニン、フィブロネクチン、コラーゲンおよび細胞外マトリックス調製物からなる群より選択される、請求項21記載の方法。 分化が、1つまたは複数の標的細胞を血清と接触させなくする段階を含む、請求項20記載の方法。 1つまたは複数の標的細胞が生体分子を産生し、培養後に1つまたは複数の標的細胞からその生体分子を収集する段階をさらに含む、請求項5記載の方法。 連続継代細胞系を製造するための方法であって、1つまたは複数の標的細胞を不死化させるのに十分な期間にわたって1つまたは複数の標的細胞をUCHT1ラット甲状腺細胞系から調製された馴化培地と培養する段階を含み、その馴化培地が1つまたは複数の標的細胞が無限に増殖するように1つまたは複数の標的細胞の増殖能を高めるような方法。 期間が約1カ月から約8カ月までの範囲にある、請求項25記載の方法。 UCHT1ラット甲状腺細胞系が、寄託番号DSM ACC2535の細胞系の増殖誘導特性を有する、請求項25記載の方法。 1つまたは複数の標的細胞が、幹細胞、前駆細胞、分化細胞、芽細胞、クローン化細胞および受精卵からなる群より選択される、請求項25記載の方法。 1つまたは複数の標的細胞が、外胚葉、中胚葉および内胚葉からなる群より選択される源から得られる、請求項25記載の方法。 1つまたは複数の標的細胞が分泌細胞である、請求項25記載の方法。 1つまたは複数の標的細胞が栄養因子産生細胞である、請求項25記載の方法。 1つまたは複数の標的細胞が、芽細胞、クローン化細胞、受精卵、胎盤細胞、ケラチノサイト、基底表皮細胞、毛幹細胞、毛根鞘細胞、表面上皮細胞、基底上皮細胞、尿路上皮細胞、唾液腺細胞、粘液細胞、漿液細胞、フォンエブナー腺細胞、乳腺細胞、涙腺細胞、耳道腺細胞、エクリン汗腺細胞、アポクリン汗腺細胞、モル腺細胞、脂腺細胞、ボーマン腺細胞、ブルンナー腺細胞、精嚢細胞、前立腺細胞、尿道球腺細胞、バルトリン腺細胞、リトル腺細胞、子宮内膜細胞、気道もしくは消化管の杯細胞、胃の粘液細胞、胃腺の酵素原細胞、胃腺の酸分泌細胞、インスリン産生性β細胞、グルカゴン産生性α細胞、ソマトスタチン産生性δ細胞、膵臓ポリペプチド産生細胞、膵管細胞、小腸のパネート細胞、肺のII型肺胞細胞、肺のクララ細胞、下垂体前葉細胞、下垂体中葉細胞、下垂体後葉細胞、胃もしくは気道のホルモン分泌細胞、甲状腺細胞、副甲状腺細胞、副腎細胞、生殖腺細胞、腎臓の傍糸球体細胞、腎臓の密集斑細胞、腎臓の周血管極細胞、腎臓のメサンギウム細胞、腸の刷子縁細胞、外分泌腺の横紋管細胞、胆嚢上皮細胞、腎臓の近位尿細管の刷子縁細胞、腎臓の遠位尿細管細胞、精巣輸出管の無線毛細胞、精巣上体主細胞、精巣上体基底細胞、肝細胞、脂肪細胞、I型肺胞細胞、膵管細胞、汗腺の無紋性管細胞、唾液腺の無紋性管細胞、乳腺の無紋性管細胞、腎糸球体の壁細胞、腎糸球体の有足細胞、ヘンレ係蹄の細い区域の細胞、集合管細胞、精嚢の管細胞、前立腺の管細胞、血管内皮細胞、滑膜細胞、漿膜細胞、耳の外リンパ腔の内層をなす扁平細胞、耳の内リンパ腔の内層をなす細胞、脈絡叢細胞、軟クモ膜の扁平細胞、眼の毛様体上皮細胞、角膜内皮細胞、推進機能を有する線毛細胞、エナメル芽細胞、耳の前庭器の半月面細胞、コルチ器官の歯間細胞、線維芽細胞、毛細血管の周皮細胞、椎間板の髄核細胞、セメント芽細胞、セメント細胞、象牙芽細胞、象牙細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、骨細胞、前骨芽細胞、眼の硝子体の硝子体細胞、耳の外リンパ腔の星細胞、骨格筋細胞、心筋細胞、平滑筋細胞、筋上皮細胞、赤血球、巨核球、単球、結合組織マクロファージ、ランゲルハンス細胞、破骨細胞、樹状細胞、ミクログリア細胞、好中球、好酸球、好塩基球、マスト細胞、プラズマ細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、キラーT細胞、キラー細胞、桿体細胞、錐体細胞、コルチ器官の内有毛細胞、コルチ器官の外有毛細胞、耳の前庭器のI型有毛細胞、耳の前庭器のII型細胞、II型味蕾細胞、嗅覚ニューロン、嗅覚上皮の基底細胞、I型頸動脈体細胞、II型頸動脈体細胞、メルケル細胞、触覚に特化した一次感覚ニューロン、温覚に特化した一次感覚ニューロン、痛覚に特化した一次ニューロン、固有受容一次感覚ニューロン、自律神経系のコリン作動性ニューロン、自律神経系のアドレナリン作動性ニューロン、自律神経系のペプチド作動性ニューロン、コルチ器官の内柱細胞、コルチ器官の外柱細胞、コルチ器官の内支持細胞、コルチ器官の外支持細胞、境界細胞、ヘンゼン細胞、前庭器の支持細胞、味蕾の支持細胞、嗅覚上皮の支持細胞、シュワン細胞、衛星細胞、腸グリア細胞、中枢神経系のニューロン、中枢神経系のアストロサイト、中枢神経系のオリゴデンドロサイト、水晶体前嚢上皮細胞、水晶体線維細胞、メラノサイト、網膜色素上皮細胞、虹彩色素上皮細胞、卵原細胞、卵母細胞、精母細胞、精原細胞、卵胞細胞、セルトリ細胞および胸腺上皮細胞、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項25記載の方法。 1つまたは複数の標的細胞が、骨髄細胞、セルトリ細胞、肝細胞、網膜細胞、甲状腺細胞、副甲状腺細胞、膵臓細胞、下垂体細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、桿体細胞、錐体細胞、有毛細胞、好中球、GABA作動性ニューロン、コリン作動性ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトおよび神経内分泌クロマフィン細胞、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項25記載の方法。 1つまたは複数の標的細胞が遺伝子改変細胞である、請求項25記載の方法。 1つまたは複数の標的細胞が胚性幹細胞または成体幹細胞である、請求項25記載の方法。 1つまたは複数の標的細胞が哺乳動物細胞である、請求項25記載の方法。 1つまたは複数の標的細胞がヒト細胞である、請求項25記載の方法。 1つまたは複数の標的細胞が生体分子を産生し、培養後に1つまたは複数の標的細胞からその生体分子を収集する段階をさらに含む、請求項25記載の方法。 1つまたは複数の標的細胞と馴化培地との約1カ月から約8カ月までの範囲内のある期間にわたる培養後に、1つまたは複数の標的細胞を分化させることによって1つまたは複数の標的細胞が増殖を停止するように誘導する段階を含む、請求項25記載の方法。 分化が、1つまたは複数の標的細胞を分化誘導物質と接触させる段階を含む、請求項39記載の方法。 分化誘導物質が、ホルモン補給剤、プトレッシン-トランスフェリン、フォルスコリン、ジブチリルアデノシン-3',5'-サイクリック一リン酸(cAMP)、レチノイン酸、ラミニン、フィブロネクチン、コラーゲンおよび細胞外マトリックス調製物からなる群より選択される、請求項40記載の方法。 分化が、1つまたは複数の標的細胞を血清と接触させなくする段階を含む、請求項39記載の方法。 それを必要とする罹患生物に投与するための1つ以上の細胞であって、1つ以上の細胞は、複数の細胞をUCHT1ラット甲状腺細胞系から調製された馴化培地と接触させることによって確立された培養物から入手され、その馴化培地によって複数の細胞の増殖能が高められている、1つ以上の細胞。 1つ以上の細胞が、自己移植片、同種同系移植片、同種異系移植片および異種移植片からなる群より選択される1つまたは複数の移植片として投与される、請求項43記載の1つ以上の細胞。 複数の細胞が、投与の前に増殖を停止するように誘導されている、請求項43記載の1つ以上の細胞。 複数の細胞が、馴化培地と1つまたは複数の標的細胞との接触を遮断することにより、増殖を停止するように誘導される、請求項45記載の1つ以上の細胞。 遮断が、複数の細胞を馴化培地との接触状態から取り除く段階、または馴化培地を複数の細胞との接触状態から取り除く段階を含む、請求項46記載の1つ以上の細胞。 複数の細胞を、複数の細胞を不死化させるのに十分な期間にわたって馴化培地と接触させ、その後に、投与の前に複数の細胞を分化させることによって複数の細胞が増殖を停止するように誘導する、請求項43記載の1つ以上の細胞。 分化が、複数の細胞を分化誘導物質と接触させる段階を含む、請求項48記載の1つ以上の細胞。 分化誘導物質が、ホルモン補給剤、プトレッシン-トランスフェリン、フォルスコリン、ジブチリル アデノシン3',5'サイクリック一リン酸(cAMP)、レチノイン酸、ラミニン、フィブロネクチン、コラーゲンおよび細胞外マトリックス調製物からなる群より選択される、請求項49記載の1つ以上の細胞。 分化が、複数の細胞を血清と接触させなくする段階を含む、請求項48記載の1つ以上の細胞。 分化が、複数の細胞を、細胞外マトリックス調製物を含む支持体と接触させる段階を含む、請求項48記載の1つ以上の細胞。 複数の細胞が、芽細胞、クローン化細胞、胎児細胞、胚細胞、新生児細胞、青年期細胞、成体細胞、幹細胞、前駆細胞および分化細胞からなる群より選択される、請求項43記載の1つ以上の細胞。 複数の細胞が、外胚葉、中胚葉および内胚葉からなる群より選択される源から得られる、請求項43記載の1つ以上の細胞。 複数の細胞が分泌細胞である、請求項43記載の1つ以上の細胞。 複数の細胞が栄養因子産生細胞である、請求項43記載の1つ以上の細胞。 複数の細胞が、芽細胞、クローン化細胞、受精卵、胎盤細胞、ケラチノサイト、基底表皮細胞、毛幹細胞、毛根鞘細胞、表面上皮細胞、基底上皮細胞、尿路上皮細胞、唾液腺細胞、粘液細胞、漿液細胞、フォンエブナー腺細胞、乳腺細胞、涙腺細胞、耳道腺細胞、エクリン汗腺細胞、アポクリン汗腺細胞、モル腺細胞、脂腺細胞、ボーマン腺細胞、ブルンナー腺細胞、精嚢細胞、前立腺細胞、尿道球腺細胞、バルトリン腺細胞、リトル腺細胞、子宮内膜細胞、気道もしくは消化管の杯細胞、胃の粘液細胞、胃腺の酵素原細胞、胃腺の酸分泌細胞、インスリン産生性β細胞、グルカゴン産生性α細胞、ソマトスタチン産生性δ細胞、膵臓ポリペプチド産生細胞、膵管細胞、小腸のパネート細胞、肺のII型肺胞細胞、肺のクララ細胞、下垂体前葉細胞、下垂体中葉細胞、下垂体後葉細胞、胃もしくは気道のホルモン分泌細胞、甲状腺細胞、副甲状腺細胞、副腎細胞、生殖腺細胞、腎臓の傍糸球体細胞、腎臓の密集斑細胞、腎臓の周血管極細胞、腎臓のメサンギウム細胞、腸の刷子縁細胞、外分泌腺の横紋管細胞、胆嚢上皮細胞、腎臓の近位尿細管の刷子縁細胞、腎臓の遠位尿細管細胞、精巣輸出管の無線毛細胞、精巣上体主細胞、精巣上体基底細胞、肝細胞、脂肪細胞、I型肺胞細胞、膵管細胞、汗腺の無紋性管細胞、唾液腺の無紋性管細胞、乳腺の無紋性管細胞、腎糸球体の壁細胞、腎糸球体の有足細胞、ヘンレ係蹄の細い区域の細胞、集合管細胞、精嚢の管細胞、前立腺の管細胞、血管内皮細胞、滑膜細胞、漿膜細胞、耳の外リンパ腔の内層をなす扁平細胞、耳の内リンパ腔の内層をなす細胞、脈絡叢細胞、軟クモ膜の扁平細胞、眼の毛様体上皮細胞、角膜内皮細胞、推進機能を有する線毛細胞、エナメル芽細胞、耳の前庭器の半月面細胞、コルチ器官の歯間細胞、線維芽細胞、毛細血管の周皮細胞、椎間板の髄核細胞、セメント芽細胞、セメント細胞、象牙芽細胞、象牙細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、骨細胞、前骨芽細胞、眼の硝子体の硝子体細胞、耳の外リンパ腔の星細胞、骨格筋細胞、心筋細胞、平滑筋細胞、筋上皮細胞、赤血球、巨核球、単球、結合組織マクロファージ、ランゲルハンス細胞、破骨細胞、樹状細胞、ミクログリア細胞、好中球、好酸球、好塩基球、マスト細胞、プラズマ細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、キラーT細胞、キラー細胞、桿体細胞、錐体細胞、コルチ器官の内有毛細胞、コルチ器官の外有毛細胞、耳の前庭器のI型有毛細胞、耳の前庭器のII型細胞、II型味蕾細胞、嗅覚ニューロン、嗅覚上皮の基底細胞、I型頸動脈体細胞、II型頸動脈体細胞、メルケル細胞、触覚に特化した一次感覚ニューロン、温覚に特化した一次感覚ニューロン、痛覚に特化した一次ニューロン、固有受容一次感覚ニューロン、自律神経系のコリン作動性ニューロン、自律神経系のアドレナリン作動性ニューロン、自律神経系のペプチド作動性ニューロン、コルチ器官の内柱細胞、コルチ器官の外柱細胞、コルチ器官の内支持細胞、コルチ器官の外支持細胞、境界細胞、ヘンゼン細胞、前庭器の支持細胞、味蕾の支持細胞、嗅覚上皮の支持細胞、シュワン細胞、衛星細胞、腸グリア細胞、中枢神経系のニューロン、中枢神経系のアストロサイト、中枢神経系のオリゴデンドロサイト、水晶体前嚢上皮細胞、水晶体線維細胞、メラノサイト、網膜色素上皮細胞、虹彩色素上皮細胞、卵原細胞、卵母細胞、精母細胞、精原細胞、卵胞細胞、セルトリ細胞および胸腺上皮細胞、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項43記載の1つ以上の細胞。 複数の細胞が、骨髄細胞、セルトリ細胞、肝細胞、網膜細胞、甲状腺細胞、副甲状腺細胞、膵臓細胞、下垂体細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、桿体細胞、錐体細胞、有毛細胞、好中球、GABA作動性ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、コリン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトおよび神経内分泌クロマフィン細胞、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項43記載の1つ以上の細胞。 複数の細胞が遺伝子改変細胞である、請求項43記載の1つ以上の細胞。 複数の細胞が、胚性幹細胞、成体幹細胞、芽細胞、クローン化細胞および受精卵からなる群より選択される、請求項43記載の1つ以上の細胞。 複数の細胞が哺乳動物細胞である、請求項43記載の1つ以上の細胞。 複数の細胞が、ヒト、ラット、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ヤギ、ニワトリおよび魚からなる群より選択される細胞である、請求項43記載の1つ以上の細胞。 複数の細胞がヒト細胞である、請求項43記載の1つ以上の細胞。 罹患生物が哺乳動物である、請求項43記載の1つ以上の細胞。 罹患生物がヒトである、請求項43記載の1つ以上の細胞。 UCHT1ラット甲状腺細胞系が、寄託番号DSM ACC2535の細胞系の増殖誘発特性を有する、請求項43記載の1つ以上の細胞。 複数の細胞が癌遺伝子を含まない、請求項43記載の1つ以上の細胞。 複数の細胞がインビボで非腫瘍形成性である、請求項43記載の1つ以上の細胞。 複数の細胞が第1のタイプの細胞および第2のタイプの細胞を含み、第2のタイプの細胞が、第1のタイプの細胞および第2のタイプの細胞を罹患生物に投与した後に第1のタイプの細胞に免疫保護による恩恵を付与する免疫保護細胞である、請求項43記載の1つ以上の細胞。 免疫保護細胞が、セルトリ細胞、卵巣間質細胞、腰椎間板細胞、およびFasリガンドを産生するように遺伝的に改変された細胞からなる群より選択される、請求項69記載の1つ以上の細胞。 罹患生物が病的状態に冒されている、請求項70記載の1つ以上の細胞。 病的状態が、細胞死、細胞喪失または細胞機能不全に関連する、請求項71記載の1つ以上の細胞。 病的状態が、癌、神経変性疾患、糖尿病および外傷からなる群より選択される、請求項71記載の1つ以上の細胞。 病的状態が、熱傷、頭部外傷、脊髄損傷、脳卒中、心筋梗塞、関節症、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、トゥレット症候群、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、アジソン病、下垂体機能不全、肝不全、炎症性関節症、神経障害性疼痛、失明および難聴からなる群より選択される、請求項72記載の1つ以上の細胞。 1つ以上の細胞が、血管内、頭蓋内、大脳内、筋肉内、皮内、静脈内、眼内、経口的、経鼻的、局所外用的および観血的外科処置からなる群より選択される経路によって罹患生物に投与される、請求項43記載の1つ以上の細胞。 1つ以上の細胞が、薬学的に許容される担体とともに罹患生物に投与される、請求項43記載の1つ以上の細胞。 ある作用物質の1つまたは複数の細胞に対する効果を判定するための方法であって、1つまたは複数の細胞をUCHT1ラット甲状腺細胞系から調製された馴化培地と培養する段階、1つまたは複数の細胞を被験作用物質に対して曝露させる段階、および1つまたは複数の細胞に対する作用物質の効果を判定する段階を含み、その馴化培地が1つまたは複数の細胞の増殖能を高めるような方法。 曝露が、1つまたは複数の細胞を被験作用物質と接触させる段階を含む、請求項77記載の方法。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る