生命科学関連特許情報

タイトル:公表特許公報(A)_肝臓の幹細胞および前駆細胞の膵臓機能細胞への転換
出願番号:2003536424
年次:2005
IPC分類:7,C12N5/10,C12N15/09,C12P21/00,A61K35/12,A61L27/00,A61P3/10


特許情報キャッシュ

イン,リー JP 2005506074 公表特許公報(A) 20050303 2003536424 20021018 肝臓の幹細胞および前駆細胞の膵臓機能細胞への転換 イクシオン・バイオテクノロジー・インコーポレーテッド 503354192 社本 一夫 100089705 増井 忠弐 100076691 小林 泰 100075270 千葉 昭男 100080137 富田 博行 100096013 村上 清 100092886 イン,リー US 60/337,446 20011018 7 C12N5/10 C12N15/09 C12P21/00 A61K35/12 A61L27/00 A61P3/10 JP C12N5/00 B C12P21/00 E C12N15/00 A A61K35/12 A61L27/00 Z A61P3/10 AP(GH,GM,KE,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,LU,MC,NL,PT,SE,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NO,NZ,OM,PH,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW US2002033304 20021018 WO2003033697 20030424 53 20040419 4B024 4B064 4B065 4C081 4C087 4B024AA01 4B024BA02 4B024CA02 4B024DA02 4B024GA11 4B024GA18 4B064AG15 4B064AG16 4B064CA10 4B064CC24 4B064DA01 4B065AA90X 4B065AA90Y 4B065AB01 4B065AC20 4B065BA01 4B065BA12 4B065BB23 4B065CA24 4C081AB35 4C081CD34 4C081EA01 4C087AA01 4C087AA02 4C087AA03 4C087BB51 4C087BB64 4C087NA20 4C087ZC35 【背景技術】【0001】(発明の背景)糖尿病の療法または治療としての細胞移植I型糖尿病は、インスリン産生膵島β細胞の選択的自己免疫不全に起因する慢性代謝疾患である。糖尿病の臨床的管理にはわが国において年間〜1,000億ドルのコストを要する。I型糖尿病のインスリン不全および高血糖は、長い間には重症の2次的合併症をもたらす。しかし、毎日のグルコースの変動をコントロールするために使用されている規則的なインスリン補充治療では、臨床的合併症を予防/低減するために絶えず正常範囲付近のグルコースレベルを維持することはできない(The DCCT Research Group(1991) N. Eng. J. Med. 329:977)。【0002】(インスリン非依存性の達成および2次的合併症発症の低減の双方に関して)I型糖尿病を治すまたは治療するためには、全膵臓または膵島のいずれかの移植で患者の膵島β細胞を回復することが必須である。米国では毎年〜35,000例のI型糖尿病の新たな症例が診断されているが、一方約3,000の死体膵臓が同期間で入手できるに過ぎない(Hering, G. J. et al. (1999)Graft 2: 12-27)。このように膵島および/またはインスリン産生細胞を含む、膵臓系譜の機能細胞の代替材料の開発が早急に必要である。移植用膵臓組織の深刻な不足を回避するために利用できる唯一の概念的選択肢は、膵臓系譜の機能細胞(例えば膵島またはインスリン産生細胞)を、幹細胞からin vitroで発生させることである。【0003】移植可能な膵島の1つの材料は、膵臓由来の膵島産生幹細胞(IPSC)である(Ramiya, V.K. et al. (2000) Nature Med. 6(3): 278-282;およびPCT/US00/26469,2000年9月27日出願)。しかしI型糖尿病を治すまたは治療する試みにおいて成功のチャンスを拡大するため、膵臓系の細胞を生成する付加的/代替的方法を研究すべきであろう。肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞は、膵臓系の細胞への転換のための実現可能な材料として提供できる。肝臓幹細胞を使用することには多くの利点がある:a)肝臓は部分的肝切除後に再生する非常に大きな潜在能力を有しており(例えば部分的肝切除した肝臓の重量および機能は、肝臓の2/3を切除した場合でさえ、約1週間で完全に回復することができ(Higgins, G.F. et al. (1931) Arc. Pathol. 12: 186-202; Grisham. J.W. (1962)Cancer Res. 22: 842-849;およびBucher, N. (1963)Int. Rev. Cytol. 15: 245-300))、したがって肝臓は、自己移植用の幹細胞のより入手し易い材料として提供できる;およびb)肝臓幹細胞表面の表現型は既に確立されており、したがって器官からそれらを精製することはより容易である(表1参照のこと)。また肝臓幹細胞は、CD34、Thy1.1、幹細胞因子(SCF)/c−kit、Flt−3リガンド/flt−3のような表面の造血幹細胞マーカーを共有しており(Yin, L. et al. (2001) Proc. Am. Assoc. Canc. Res. 42:354; Yin, L. et al. (2001) FASEB J. Late-Breaking Abstracts: 49 (LB267); Fujio, K. et al. (1996) Exp. Cell Res. 224; 243-50; Blakolmer, K. et al. (1995) Hepatology 21(6): 1510-16: Omori, N. et al. (1997) Hepatology 26(3): 720-27; Omori, M. et al. (1997) Am. J. Pathol. 150(4): 1179-87; Lemmer, E.R. et al. (1998) J. Hepatol. 29: 450-454; Petersen, B.E. et al. (1998) Hepatology 27(2): 433-445; およびBaumann, U. et al. (1999) Hepatology 30(1): 112-117)、これらのマーカーを他の公知の肝臓幹細胞マーカーと共に細胞の分類に使用することができる。【0004】【表1】【0005】以下のセクションで肝臓および膵臓の幹細胞の現状、胚発生期のこれらの関連、およびこれら器官内の分化転換について述べる。肝臓および肝臓幹細胞の発生胚において肝臓は、マウスでは発生後約8.5から9日(8.5 to 9 days of development)で前心臓(precardiac)中胚葉と接触する領域の、腹側前腸(ventral foregut)の上皮細胞から発生する。この領域の細胞が増殖して肝臓憩室を形成する。妊娠約9.5日で、肝臓憩室の細胞は周囲の横中隔内に移動し始める。この段階で、細胞は肝芽細胞と命名され、これらの細胞は肝臓上皮細胞系譜に沿って決定されることが示されている。肝芽細胞は二分化能があり、肝細胞および胆管細胞の双方が形成される(Houssaint, E. (1980) Cell Differ. 9: 269-279)。一般に肝臓が傷害されると、成熟肝細胞が増殖して肝臓の重量および機能を回復し、肝臓幹細胞は関与しない(Kelly, D.E. et al.(1984) Bailey's Textbook of Microscopic Anatomy(顕微鏡解剖学についてのBaileyの教科書)、第18版、Williams and Willkins、Baltimore, pp590-616)。しかし傷害が非常に重症である場合、および/または肝細胞の増殖が化学物質、例えば2−N−アセチルアミノフルオレン(2AAF)およびフェノバルビタールにより阻害される場合には、肝臓幹細胞部分が活性化される。成体肝臓における肝臓幹細胞は、主に動物の肝傷害モデル、例えば2AAF/部分肝切除(PH)(Golding, M. et al. (1995) Hepatology 22(4): 1243-1253)、2AAF/アリルアルコール(AA)およびフェノバービタル/コカイン誘発性の門脈周囲の肝傷害(Yavokovsky, L. et al. (1995) Hepatology 21(6): 1702-12; Petersen, B. et al. (1998)Hepatology 27(4): 1030-1038; Yin, L. et al. (1999) J. Hepatology 31: 497-507;およびRosenberg, D. et al. (2000) Hepatology 31(4): 948-955)、および2AAF/CCl4誘発性の中心周囲の肝傷害(Petersen et al. (1998))において広範囲に研究されてきた。傷害部位にかかわりなく、卵円形状の肝臓幹細胞は常にへーリング管の門脈領域に由来する(Wilson, J. et al. (1958) J. Pathol. Bacteriol. 76: 441-449)。成体肝臓のこれらの肝臓前駆細胞は肝細胞および胆管細胞の双方に分化することができる(Stenberg, P. et al. (1991) Carcinogenesis 12: 225-231; およびDabeva, J. et al.(1993) Am. J. Pathology 143: 1606-1620)。ごく最近、動物およびヒトの双方からの証拠のいくつかの傾向は、造血幹細胞が肝臓幹細胞の肝臓以外の材料であることを強く示唆している(Peterson, B. et al. (1999) Science 284: 1168-70; Theise, N. et al. (2000) Hepatology 31(1): 235-40; Theise, N. et al.(2000)Hepatology 32(1): 11-16; およびAlison, M. et al.(2000) Nature 406: 257)。幹細胞様特性を持つ上皮細胞株が、マウス肝臓憩室(Rogler, L. (1997) Am. J. Pathol. 150(2): 591-602)、傷害されたラット肝臓(Yin, L. et al.(2001A) PAACR 42: 354; Yin, L. et al (2001B) FASEB J. Late-Breaking Abstracts: 49 (LB267); Yin, L. et al (2002) Hepatology 35(2): 315-324)、ならびに正常ラット肝臓(Tso, M-S. et al. (1984)Expp. Cell. Res. 154: 38-52; およびTso, M-S. (1988) Lab. Invest. 58: 636-642)、および正常ブタ肝臓(Kano, J. et al. (2000) Am. J. Pathol. 156(6): 2033-2043)、および正常ヒト肝臓(Crosby, H. et al. (2001) )Gastroenterology 120(2): 534-544)から確立された。これらの細胞を誘導して肝細胞および/または胆管細胞にin vitroで(Rogler, L. (1977); Yin, L. et al. (2001A); Yin, L. et al. (2001B); Yin, L. et al. (2002); Crosby, H. et al. (2001);およびColeman, W. et al. (1993) Am. J. Pathol. 142: 1373-82)および移植下のin vivoで(Coleman, W. et al. (1993);およびGrisham, J. et al. (1993) Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 204: 270-79)分化させることができる。【0006】哺乳類の消化管内胚葉から肝臓へ胚を誘導するシグナリング分子は、完全には理解されていない。心臓中胚葉で発現される繊維芽細胞成長因子(FGF)1,2および8は、最初の肝発生に必須であることが報告されている(Jung, J. et al. (1999) Science 284: 1998-2003)。インターロイキン−6ファミリーのサイトカインであるオンコスタチンM(OSM)は、グルココルチコイドと共に胚の肝臓における肝細胞の成熟を誘発し、このことが今度は胚の造血機能を終了させることになる。gp130、すなわちOSM受容体サブユニットを欠損するマウス由来の肝臓は、肝細胞が成熟できないことを示す(Kamiya, A. et al. (1999) EMBO J. 18(8): 2127-36;およびKinoshita, T. et al. (1999) PNAS 96: 7265-70)。分化した肝細胞は、HNF1、HNF3、HNF4およびC/EBPファミリーの肝臓に豊富に含まれる(肝臓固有ではないが)転写因子を固有の組み合わせで発現することを特徴とする(Johnson, P. (1990) Cell. Growth Differ. 1:47-51; Lai, E. et al. (1991) Trends Biochem. Sci. 16: 427-30; DeSimone, V. et al. (1992) Biochem. Biophys. Acta 1132: 119-126; およびCrabtree, G. et al. (1992) Transcriptional Regulation(転写の制御)S.S. McKnight and K.R. Yamamoto(編)Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY, pp. 1063-1102)。【0007】膵臓および膵臓の幹細胞の発生胚の発生期、膵臓は背側および腹側の前腸内胚葉の2つの別々の成長に由来し、腹側および背側の膵芽を形成する。その後これらの膵芽が融合して完全な膵臓を形成する(Houssaint, E. (1980); Spooner, B. et al.(1970) J. Cell Biol. 47: 235-46; Rutter, W. et al.(1980) Monogr. Pathol. 21: 30-38; Guaidi, R. et al.(1996) Genes Dev. 10: 1670-82; Zaret, K. (2000) Mech. Dev. 92: 83-88; Edlund, H. (1998) Diabetes 47: 1817-1823; St-Onge, L. et al. (1999) Curr. Opin. Gene Dev. 9: 295-300; およびSlack, J. (1995) 121: 1569-80)。胚形成期、膵臓内の膵島の発生は、膵管上皮に最初に関与する未分化の前駆体細胞から開始するようである(Pictet, R. et al. (1992) Handbook of Physiology(生理学のハンドブック), Steiner, D. and Frienkel, N. (編) Williams and Wilkins, Baltimore, MD, pp. 25-66)。この管上皮は急速に増殖して、その後様々な膵島に関連する細胞集団に分化する(Teitelman, G. et al. (1993) Development 118: 1031-39; およびBeattie, G. et al. (1994) J. Clin. Endo. Met. 78: 1232-1240)。成体の膵臓において、膵島細胞の成長は2つの異なる系列:すなわち管上皮の分化による新たな膵島の成長(新生)、または既に存在するβ細胞の複製のいずれかにより起こりうる。新生は、ダイズトリプシン阻害剤による食事治療(Weaver, C. et al. (1985) Diabetologia 28: 781-785)、高レベルのインターフェロン−γ(Gu, D. (1993) Dev. 118: 33-46)、部分膵移植(Bommer-Weir, S. et al. (1993) Diabetes 42: 1715-1720)、セロハン内に膵臓頭部を包むこと(Rosenberg, L. et al. (1992) Adv. Exp. Med. Biol. 321: 95-104)により、そして特異的成長因子(Otonkonski, T. et al. (1994) Diabetes 43: 947-952)により実験的に誘導することができた。このように膵島のすべてのタイプの内分泌細胞は、同一の管上皮幹細胞から連続的な分化を通して発生することが、一般に受け入れられている(Gu, D. (1993); Rosenberg, L. (1992); およびHellerstrom, D. (1984) Diabetologia 26: 393-400)。膵臓幹細胞が成体膵管調製物から単離され、in vitro でインスリン産生細胞に(ある程度まで)分化することが示され(Ramiya, V. et al. (2000); Cornelius, J. et al. (1997) Horm. Metab. Res, 29: 271-277; およびBonner-Weir, S. et al. (2000) PNAS 97(14): 7999-8004)、このことから移植で非肥満型糖尿病(NOD)マウスの糖尿病を改善することができた(Ramiya, V. et al. (2000))。【0008】胚の発生期、背側および腹側の膵臓原基痕跡の特性には違いがある。背側の前膵臓(pre-pancreatic)内胚葉は初期発生段階では脊索との緊密な関連を維持する。覆っている脊索由来のシグナル、例えばアクチビンおよびFGF−2が、ソニックヘッジホッグ(Shh)の内胚葉発現を抑制することにより、背側膵臓の発生を促進する(Hebrok M. et al. (2000) Dev. 127: 4905-13; Kim, S. et al. (1997) Dev. 124: 4243-52; およびLi, H. et al. (1999) Nat. Genet. 23: 67-70)。これらのシグナリング事象に応答しての背側膵臓の形成はまた、多数の転写因子の発現も必要とする。例えばマウスの“ノックアウト”の研究は、背側膵臓の形成がIsl1およびHlxb9に依存し、その後の分化にはPdx1を必要とすることを示した(Li, H. et al. (1999); Harrison, K. et al. (1999) Nat. Genet 23: 71-75; Ahlgren, U. et al. (1997) Nature 385: 257-60)。腹側膵臓の発生の開始を制御するメカニズムは完全には解明されていない。腹側膵臓の発生のコントロールは背側膵臓のそれとは異なると思われる、というのは脊索は腹側内胚葉まで達しておらず、脊索がないため腹側内胚葉はShhを発現しない。さらに腹側膵臓の発生はIsl1−/−およびHlxb9−/−マウスでは正常である(Deutsch, G. et al. (2001) Development 128: 871-881; およびDuncan, S. (2001) Nature Genetics 27: 355-356)。Pdx1は膵臓発生の初期の段階で必要である(Jonsson, J. et al. (1994) Nature 371: 606-609; Ahlgren, U. et al. (1996) Development 122: 1409-1416; Stoffers, D. et al. (1997) Nat. Genet. 15: 106-110; およびOffield, M. et al. (1996) Development 122: 983-995)。Pdx1を欠損するマウスおよびヒトは無膵である(Jonsson, J. et al.(1994); Ahlgren, U. et al. (1996); Stoffers, D. et al.(1997); およびOffield, M. et al.(1996))。しかし消化管内胚葉を膵臓原基に最初に方向付けるためのPdx1発現の上流に作用する他の遺伝子があるようである。したがって上皮の外反ならびに背側および腹側の膵芽の最初の方向付けは、Pdx1変異マウスでもまだ起こり、インスリンポジティブおよびグルカゴンポジティブな細胞もまだ分化する(Ahlgren, U. et al.(1996); およびOffield, M. et al. (1996))。後に膵臓におけるPdx1およびHlxb9の発現は、インスリン産生β細胞に限定されるようになる(Li, H. et al. (1999); Harrison, K. et al.(1999); およびJonsson, J. et al. (1994))。インスリン、GLUT2、グルコキナーゼ、およびプロホルモンコンバターゼ(PC)1、2および3を含む様々な内分泌遺伝子の発現を調節することにより、ホルモンを産生するβ細胞の形質発現を維持するため、Pdx1が必要となる(Ahlgren, U. et al.(1998) Genes Dev. 12: 1763-68; Hart, A. et al.(2000) Nature 408: 864-68; およびBaeza, N. et al.(2001) Diabetes 50, Sup. 1: S36)。Pdx1遺伝子の活性化は、HNF3β(Zaret, K. (1996) Annu. Rev. Physiol. 58: 231-251)およびNeuroD/β2(Sharma, T. et al. (1997) Mol. Cell Biol. 17: 2598-2404)により制御することができる。ngn3、Isl1、Nkx2.2、Nkx6.1、Pax4、Pax6およびNeuroD/β2のような、いくつかのホメオドメインおよび塩基性ヘリックス−ループ−ヘリックス(bHLH)の転写因子が、膵臓内分泌細胞の分化のコントロールに重要な役割を担っていることが示された(Edlund, H. (1998); St-Onge, L. et al. (1999); Sander, M. et al. (1997) J. Mol. Med. 75: 327-340; Madsen, O. et al. (1997) Horm. Metab. Res. 29(6): 265-270;およびGradwohl, G. et al. (2000) PNAS 97(4): 1607-11)。これらの遺伝子のうち、ngn3は膵臓の4つの内分泌細胞系譜すべての発生に極めて重要であることが報告された(Grawohl, G. et al. (2000))。Pax4はインスリン産生β細胞およびソマトスタチン産生δ細胞の発生を選択的にコントロールするようである(Sosa-Pineda, B. et al. (1997) Nature 386: 399-402)。Nkx6.1は成体ラットにおける高度に制限されたβ細胞発現を有する(Madsen, O. et al. (1997))。マウスのNkx6.1を破壊するとβ細胞前駆細胞の欠損をきたし、β細胞新生が遮断される(Sander, M. et al. (2000) Dev. 127(24): 5533-5540)。このように分化の過程を追ってこれらの因子のスクリーニングし、分化の程度を決定することは極めて重要である。【0009】様々な成長因子、ホルモン、ビタミンおよび化学物質、例えば肝細胞成長因子(HGF)、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、エキセンディン−4、アクチビン−A、β−セルリン(cellulin)、デキサメタゾン、ニコチンアミド、酪酸ナトリウムは、in vitro でβ細胞の分化に有効であることが示された。HGF(Mashima, H. et al. (1996) Endocrinol. 137: 3969-76)、GLP−1(Zhou, J. et al. (1999) Diabetes 48: 2358-2366)、エキセンディン−4(Zhou, J. et al (1999))、デキサメタゾン、β−セルリンおよびアクチビン−A(Mashima, H. et al.(1996) J. Clin. Invest. 97(7): 1647-54)は、腺房細胞をインスリン分泌細胞に分化させる。GLP−1はβ細胞cAMPおよびインスリン遺伝子の転写のレベルを増加させ、グルコース依存性のインスリン放出を刺激する(Grucker, D. et al. (1987) PNAS 84: 3434-3438)。部分的膵切除に続く糖尿病新生仔ラットへの10日間GLP−1投与は、膵島の増殖および新生の誘導によるβ細胞の重量増加を刺激した(Xu, G. et al. (2000) Diabetes 48: 2270-76)。GLP−1はまたPdx1遺伝子の発現および結合能を増加させる(Buteau, J. et al. (1999) Diabetes 49: 1156-1164)。エキセンディン−4はGLP−1の非常に有効な構造的類似体で、より長い血中半減期を有する。この物質は膵島上のGLP−1受容体にGLP−1と類似するアフィニティーで結合するが、等モル濃度のGLP−1に比してcAMPレベルを3倍増加させるため、長期にわたる動物の研究に使用するためのより有効な薬剤とすることができる(Garcia-Ocana, A. et al. (2001) JCE & M 86: 984-988)。デキサメタゾンおよび酪酸ナトリウムは、ブタの膵島様細胞クラスターにおけるインスリン/DNA含有量の増加により証明されたように、β細胞の分化を促進する可能性がある(Korsgren, O. et al. (1993) Ups. J. Med. Sci. 98(1): 39-52)。膵臓細胞株において、RIN−m5F、酪酸ナトリウムはヘキソキナーゼおよびグルコキナーゼの双方の活性、ならびにグルコキナーゼ遺伝子の発現を2倍に増加させる。ニコチンアミドは、培養ヒト胎児膵臓細胞およびマウスIPSCにおいて、β細胞を分化しその質量を増加させることが知られているポリ(ADP−リボース)シンセターゼ阻害剤であり(Ramiya, V. et al. (2000); およびOtonkoski, T. et al. (1993) J. Clin. Invest. 92: 1459-66)、薬剤誘発型糖尿病動物モデルならびにNODマウスにおける糖尿病の発症を防ぐ(Uchigata, Y. et al. (1983) Diabetes 32: 316-18; およびYamada, K. et al. (1982) Diabetes 31: 749-753)。【0010】膵臓幹細胞および肝臓幹細胞の分化の操作胚の発生において肝臓および腹側膵臓は双方とも、腹側前腸の同じ位置を起源とする(Houssaint, E. (1980); Rutter, W. (1980); Guaidi, R. et al. (1996); Zaret, K. (2000); Deutsh, G. et al. (2001); およびZaret, K. (1996))。したがって発生の観点から、これら2つの器官の上皮細胞は、共通の幹細胞を持ち得ることは可能である。新たな研究は、肝臓および膵臓の双方を形成することになる胚の内胚葉中に、二分化能の細胞集団が存在することを示している。膵臓細胞原基または肝臓細胞原基のいずれに適用させるかのこれらの細胞による決定は、発生する心臓にそれらの細胞が近位かどうかにより決定される(Deutsch, G. et al. (2001))。腹側内胚葉の発生プログラムのデフォルトは、腹側膵臓になることである。証拠のいくつかの傾向は、膵臓幹細胞の肝臓細胞に分化する能力を証明した。例えば銅の枯渇および過多は、膵臓外分泌腺の萎縮をきたし、膵管内に卵円形細胞が出現し、その卵円形細胞が膵臓内での肝細胞に分化する(Rao, M. et al. (1986) Cell Differ. 18: 109-117; Rao, M. et al. (1988) Biochem. Biophys. Res. Commun. 156: 131-136; およびReddy, J. et al. (1991) Dig. Dis. Sci. 36(4): 502-509)。肝臓幹細胞と同一の免疫表現型をもつ卵円形細胞はまた、急性膵炎、慢性膵炎および膵島細胞症(pesidioblastosis)のヒトの膵臓内でも発見された(Mikami, Y. et al. (1998) Hepatology 28(4), Pt. 4: 417A)。膵臓の肝細胞は発癌性物質に対して肝臓の肝細胞と類似した形で反応する(Rao, M. et al. (1991) Am. J. Pathol. 139(5): 1111-1117)。肝臓内への移植後、銅欠乏ラット膵臓から単離された膵臓卵円形細胞は、肝臓柔組織に構造的に組み込まれた成熟肝細胞に分化し、肝細胞固有の生化学的機能を発現することができる(Dabeva, J. et al. (1997) PNAS 94: 7356-61)。ごく最近Wangらは、正常な成体マウスの膵臓内に肝細胞の未分化の前駆細胞があることを示した(Wang, X. et al. (2001))Am. J. Pathol. 158: 571-79)。膵臓細胞はまた、in vitroでデキサメタゾン処理により肝細胞に転換させることができる(Shen, C-N. et al. (2000) Nature Cell Biol. 2: 879-887)。初期の事象は転写因子C/EBP−βの活性化を伴う。C/EBP−βでの細胞のトランスフェクションは肝臓の分化を引き起こす。したがってC/EBP−βは、肝臓および膵臓の分化のプログラムを区別する鍵となる成分であることが示唆される。インスリンプロモーターにより誘発されるKGFを過剰発現するトランスジェニックマウスにおける膵臓の肝細胞の持続的な発生は、分化転換過程におけるKGFの関与を示唆する(Krakowski, M. et al. (1999) Am. J. Pthol. 154(3): 683-91)。内分泌細胞特異的ではないが、膵臓上皮細胞を産生する肝臓の能力についての報告もある(Rao, M. et al. (1986) Histochem. Cytochem. 34: 197-201; およびBisgaard, H. et al. (1991) J. Cell Physiol. 147(2): 333-343)。さらにPdx1をコードする遺伝子を保有する組換えアデノウイルスで形質導入された肝臓は、機能的なインスリンを産生することができ、マウスのストレプトゾトシン誘発糖尿病を改善する;しかしPdx1は、in vitroでは肝臓の肝細胞をインスリン産生細胞に分化転換しないことが報告されており、マウス肝臓の幹細胞または前駆細胞がin vivo (またはin vitro)でPdx1コンストラクトでトランスフェクトするという証拠は提供されていない(Ferber, S. et al. (2000) Nature Med. 6(5): 568-571)。最後に、転写因子、例えばIsl1、ngn3、NeuroD/β2、Pax4、pax6およびNkx2.2が内分泌および神経への分化経路で共有されていることが確認された(Ahlgren, U. et al. (1997); Sander, M. et al. (1997); Sosa-Pineda, B. et al. (1997); Pfaff, S. et al. (1996) Cell 84: 309-320; Lee, J. et al. (1995) Science 268: 836-844; Naya, F. et al. (1997) Genes Dev. 11: 2323-2334; Miyata, T. et al. (1999) Genes Dev. 13: 1647-52; St-Onge, L. et al. (1997) Nature 387: 406-409; Ericson, J. et al. (1997) J. Cell 90: 169-180; Sussel, L. et al. (1998) Dev. 125: 2213-2221; Briscoe, J. et al. (1999) Nature 398: 622-627)が、転写因子を肝臓と膵臓との間で共有することに関する明確な情報はない。【発明の開示】【課題を解決するための手段】【0011】(発明の概要)本発明は肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞を、ホルモン、成長因子、ビタミンおよび化学物質と組み合わせて培養して、肝臓の幹細胞または前駆細胞を膵臓機能細胞に転換させる方法を含む。本発明はさらに肝臓の幹細胞または前駆細胞の膵臓機能細胞への転換のためのトランスフェクションの方法を含む。【0012】したがって本発明は、肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞を膵臓発生遺伝子でトランスフェクトすることにより、肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞を膵臓機能細胞に転換させる方法を提供する。あるいは肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞は、同細胞を膵臓機能細胞に転換させる条件下で培養することができる。さらに転換は、トランスフェクションおよび培養条件の双方により達成する、すなわち同時にまたはいずれかの順で連続して行うことができる。【0013】肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞は、肝芽細胞または肝臓卵円形細胞とすることができる。肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞は少なくとも1つの造血マーカーおよび/または少なくとも1つの肝臓卵円形細胞または肝芽細胞のマーカーを発現することが好ましい。造血マーカーはCD34、Thy1.1、およびCD45を含む。肝臓の肝芽細胞または卵円形細胞のマーカーは、α−胎児タンパク質、アルブミン、サイトケラチン14(CK14)、c−kit、OC.2、OC.3、OC.10、OV1およびOV6を含む。【0014】膵臓発生遺伝子は、肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞を膵臓機能細胞に転換させることのできるあらゆる遺伝子であり、Pdx1、Hlxb9、Isl1、ngn3、Nkx2.2、Pax6、NeuroD/β2、Nkx6.1およびPdx4を含む。好ましくは膵臓発生遺伝子はPdx−1である。【0015】肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞を膵臓機能細胞に転換させる培養条件は、基本培地に加えて膵臓細胞への分化を誘導するホルモン、成長因子、ビタミンおよび化学物質、またはそれらのあらゆる組み合わせとする付加的な因子を含む。このようなホルモンは、デキサメタゾン、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、およびエキセンディン−4を含み;成長因子はガストリン、インターフェロン−γ(IFNγ)、肝細胞成長因子(HGF)、表皮成長因子(EGF)、β−セルリン、アクチビン−A、ケラチノサイト成長因子(KGF)、繊維芽細胞成長因子(FGF)、トランスフォーミング成長因子−α(TGF−α)、トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)、神経成長因子(NGF)、インスリン様成長因子類(IGFs)、膵島新生に関連するタンパク質(INGAP)、および血管内皮成長因子(VEGF)を含み;ビタミンはニコチンアミドおよびレチノイン酸を含み;そして化学物質は酪酸ナトリウムを含む。【0016】この方法により転換された肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞は、インスリンI(InsI)、インスリンII(InsII)、グルカゴン、ソマトスタチン、膵臓のポリペプチド(PP)、アミラーゼ、エラスターゼ、グルコーストランスポーター2(GLUT2)、グルコキナーゼ、PC1、PC2、PC3、カルボキシペプチダーゼE(CPE)、Pdx1、Hlxb9、Isl1、ngn3、Nkx2.2、Pax6、NeuroD/β2、Nkx6.1およびPdx4を含む、多数の膵臓のメッセンジャーRNAのあらゆる組み合わせを発現することができる。同様に転換された細胞は、InsI、InsII、グルカゴン、ソマトスタチン、PP、アミラーゼ、エラスターゼ、GLUT2、グルコキナーゼ、PC1、PC2、PC3、CPE、Pdx1、Hlxb9、Isl1、ngn3、Nkx2.2、Pax6、NeuroD/β2、Nkx6.1およびPdx4を含む、多数の膵臓のタンパク質のあらゆる組み合わせを発現することができる。【0017】好ましくは転換された肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞は、膵臓の内分泌系列に分化する。このような転換された細胞を培養して、内分泌ホルモン(例えばβ、αおよびγ細胞由来のインスリン、グルカゴンおよびソマトスタチン)を産生することができる。【0018】膵臓の発生遺伝子でのトランスフェクションによる、または培養条件による転換の方法により、膵島産生幹細胞(IPSC)、膵島前駆細胞(IPC)および膵島様構造体もしくはIPC由来の膵島(IdI)、またはそれらの細胞成分(α、β、γおよび/またはPP細胞)を含む、分化の異なる段階の膵臓細胞を得ることができる。分化転換はまた、膵臓細胞の発現パターンを明らかに示し(例えばインスリン産生)、そしてまた肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞の特徴も保持し得る(例えば肝臓の幹細胞または前駆細胞のマーカー)細胞を得ることができる。肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞のマーカーは、造血マーカーおよび肝臓卵円形細胞もしくは肝芽細胞のマーカーを含む。【0019】当明細書に引用したすべての参考文献を、その全内容において参照として援用する。(発明の詳細な説明)本発明のさらなる理解を促進するため、以下の定義を提供する。【0020】“膵島産生幹細胞”(IPSC)は、in vitro およびin vivoで膵管上皮からまたは膵管上皮の間で発生する幹細胞をいう。IPSCを得て、維持する方法は、2000年9月27日に出願されたPCT/US00/26469に詳細に記載されており、同文献をその全内容において当明細書に参照として援用する。【0021】“膵島前駆細胞”(IPC)は、当明細書およびPCT/US00/26469に記載の方法を用いてin vitroで培養されたIPSCから発生する膵臓前駆細胞をいう。“IPC由来の膵島”(IdI)は、当明細書およびPCT/US00/26469に記載の方法を用いてin vitroで培養されたIPCから発生する膵島様構造体をいう。【0022】“肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞”は、非限定的に肝芽細胞、卵円形細胞、幹細胞様特性を有する肝臓上皮細胞、ならびに未分化の肝細胞および胆管細胞を含む、すべての肝臓の幹細胞および/または前駆細胞をいう。多くの肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞株が文献に報告されている(Williams, G. et al. (1971) Exp. Cell Res. 69: 106-112; Williams, G. et al. (1973) 29: 293-303; Grisham, J. (1980) Ann. N.Y. Acad. Sci. 349: 128-137; Tsao, M-S. et al. (1984) Exp. Cell Res. 154: 38-52; Coleman, W. et al. (1997) Am. J. Pathol. 151: 353-359; Coleman, W. et al. (1993) Am. J. Pathol. 142: 1372-82; McCullough, K. et al. (1994) Cancer Res. 54: 3668-71; Amicone, L. et al. (1997) EMBO J. 16: 495-503; Spagnoli, F. et al. (1998) J. Cell Biol. 143: 1101-1112; Sell, S. et al. (1982) Hepatol. 2: 77-86; Shinozuka, H. et al. (1978) Cancer Res. 38: 1092-98; McMahon, J. et al. (1986) Cancer Res. 46: 4665-71; Brill, S. et al. (1999) Digest. Dis. Sci. 44: 364-71; およびRogler, L. (1977) Am. J. Pathol. 150: 591-602)が、好ましくは当該方法で使用する肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞は、例えばYin, L. et al. (2001A), Yin, L. et al. (2001B)およびYin, L. et al. (2002)に記載されているように、発癌性物質の関与のない肝臓傷害モデルから得る。肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞は、1つまたはそれ以上の肝臓卵円形細胞または肝芽細胞のマーカー(α−胎児タンパク質、アルブミン、サイトケラチン14(CK14)、c−kit、OC.2、OC.3、OC.10、OV1およびOV6)、および/または1つまたはそれ以上の造血幹細胞マーカー(CD34、Thy1.1およびCD45)を発現することもまた好ましい。【0023】“膵臓内分泌系”は、発生が膵臓内分泌細胞に方向付けられていることをいう。“膵臓系”は、発生が内分泌細胞、外分泌細胞および/または管細胞を含む膵臓細胞に方向付けられていることをいう。【0024】“膵臓機能細胞”は、膵臓系の細胞、または当明細書に記載の方法により分化転換もしくは転換された細胞をいい、これらの細胞は、膵臓細胞に特徴的および特異的なmRNAまたはタンパク質(例えばインスリン)を発現し、そしてまた肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞の特徴(すなわち肝臓の肝細胞または前駆細胞のマーカー)を保持することもできる。膵臓機能細胞は好ましくはグルコース応答性のインスリン産生細胞である。この機能細胞は好ましくはグルコース刺激に応答してインスリンタンパク質を産生、分泌する。この応答は好ましくは、目的の哺乳類種のインスリン応答の正常範囲内である。このような正常範囲は当該技術分野で公知であり、容易に決定できる。【0025】“トランスフェクション”は、コードする配列を含む核酸のフラグメントまたはコンストラクトを標的細胞(ここでは肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞)内に導入して標的細胞内でコードする配列を発現させるに至ることのできる、当該技術分野に公知のあらゆる方法をいう。標的細胞内での発現のための必要なプロモーター配列および制御配列は、フラグメントまたはコンストラクトに含まれるものとする。【0026】このように本発明は、肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞を膵臓発生遺伝子でトランスフェクトすることにより、および/または膵臓機能細胞への分化を誘導する因子を含む倍地中で、前記の肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞を培養することにより、肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞を膵臓機能細胞に転換させる方法を含む。得られる膵臓機能細胞は、膵臓内分泌系の細胞とすることができる、または肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞と膵臓系の細胞との間の中間的な発現パターンを有する細胞とすることができる。“膵臓系の細胞”という用語は、膵島産生幹細胞(IPSC)、膵島前駆細胞(IPC)、膵島様構造体もしくはIPC由来の膵島(IdI)、または天然に由来する膵臓内分泌細胞(例えばα、βおよび/もしくはδ細胞、または管細胞)を意味する。加えて、中間的発現パターンを有する細胞は、グルコースの刺激に応答してインスリンタンパク質を産生、分泌する細胞であり、そしてこの細胞は肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞のマーカーを発現することができる。【0027】肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞は、肝芽細胞および/または肝臓卵円形細胞とすることができる。肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞は、少なくとも1つの造血マーカーおよび/または少なくとも1つの肝臓卵円形細胞もしくは肝芽細胞のマーカーを発現する。造血マーカーはCD34、Thy1.1、および/またはCD45である。肝芽細胞または卵円形細胞のマーカーは、α−胎児タンパク質、アルブミン、サイトケラチン14(CK14)、c−kit、OC.2、OC.3、OC.10、OV1およびOV6である。【0028】トランスフェクションの態様において、膵臓発生遺伝子は、Pdx1、Hlxb9、Isl1、ngn3、Nkx2.2、Pax6、NeuroD/β2、Nkx6.1および/またはPdx4とすることができる。好ましくは膵臓発生遺伝子はPdx−1である。【0029】培養による分化転換の態様において、肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞を当該技術分野に公知の方法で、標準的な培地に因子を加えて培養する。この因子は、デキサメタゾン、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、エキセンディン−4、ガストリン、インターフェロン−γ(IFNγ)、肝細胞成長因子(HGF)、表皮成長因子(EGF)、β−セルリン、アクチビン−A、ケラチノサイト成長因子(KGF)、繊維芽細胞成長因子(FGF)、トランスフォーミング成長因子−α(TGF−α)、トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)、神経成長因子(NGF)、インスリン様成長因子類(IGFs)、膵島新生に関連するタンパク質(INGAP)、および血管内皮成長因子(VEGF)、ニコチンアミド、レチノイン酸、酪酸ナトリウム、またはそれらのあらゆる組み合わせを含む。【0030】転換された細胞は、インスリンI(InsI)、インスリンII(INsII)、グルカゴン、ソマトスタチン、膵臓のポリペプチド(PP)、アミラーゼ、エラスターゼ、グルコーストランスポーター2(GLUT2)、グルコキナーゼ、PC1、PC2、PC3、カルボキシペプチダーゼE(CPE)、Pdx1、Hlxb9、Isl1、ngn3、Nkx2.2、Pax6、NeuroD/β2、Nkx6.1および/またはPdx4を含む多数の膵臓のメッセージのいずれかを発現することができる。したがって転換された細胞は、InsI、InsII、グルカゴン、ソマトスタチン、PP、アミラーゼ、エラスターゼ、GLUT2、グルコキナーゼ、PC1、PC2、PC3、CPE、Pdx1、Hlxb9、Isl1、ngn3、Nkx2.2、Pax6、NeuroD/β2、Nkx6.1およびPdx4を含む複数の膵臓のタンパク質を発現することができる。しかし、転換された細胞はグルコース刺激に応答してインスリンタンパク質を産生、分泌することが好ましい。反応は好ましくは目的の哺乳類の細胞の正常範囲内である。【0031】本発明はまた当明細書に記載の方法により産生される膵臓機能細胞を含み、この場合膵臓機能細胞は、肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞および膵臓系の細胞との間の中間的な発現パターンを有する。1つの態様において、膵臓機能細胞はPdx1、アミラーゼおよびインスリンIIを発現する。【0032】本発明はさらに、当明細書に記載したように肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞を膵臓細胞に転換させ、当該技術分野に公知の方法を用いて該膵臓機能細胞を培養し、そして当該技術分野に公知の方法を用いて細胞培養物から内分泌ホルモンを回収することを含む、内分泌ホルモンを産生する方法を含む。【実施例】【0033】(実施例)実施例1−肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞肝臓幹細胞特性をもつ肝臓上皮細胞株を、Yin, L. et al. (2001A); Yin, L. et al. (2001B);およびYin, L. et al. (2002)に記載されているようにアリルアルコール(AA)により傷害された成体ラット肝臓から発生させた。 AAは門脈周囲の肝臓の傷害を誘発する、したがって肝臓発癌物質の関与のない肝臓傷害モデルである(Peterson B.E. et al. (1998) Hepatology 27(4): 1030-38)。1(1)#3、1(1)#6、1(3)#3、2(11)および3(8)#21と命名された5つの細胞株を選択し、それらの膵臓系の細胞への分化の可能性を調べた。これら5株は、様々な肝臓発生マーカー、細胞系譜マーカーおよび造血幹細胞マーカーについて、ウェスタンブロット、ノーザンブロット、免疫細胞化学および組織化学により十分に特徴付けられている。結果を図1にまとめる。細胞株3(8)#21の免疫細胞化学の結果の写真も、図1に示す。興味深いことにこれらの細胞株のほとんどすべてが造血幹細胞とのこれらの関連の可能性を示す、造血幹細胞マーカーCD34,Thy1.1およびCD45を発現している。これらは肝臓前駆細胞遺伝子、例えばα−胎児タンパク質(AFP)、アルブミン、サイトケラチン14(CK14)およびc−kitもまた発現している。これらはIto細胞マーカーのデスミンまたはクッパー細胞/マクロファージのマーカー、ED1およびED2は発現しない(結果は示していない)。これらの細胞は成熟肝細胞の特異的遺伝子、例えばグルコース−6−ホスファターゼ(G−6−Pase)、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)、およびシトクロムP450(CYP450)を発現しない、そして成熟胆管細胞の特異的遺伝子CK19の発現を示さない、未分化の状態で維持することができる(結果は示していない)。5株はすべてフローサイトメトリーにより二倍体であることが確認されている。細胞株3(8)#21で行われた分化の誘導は、STO繊維芽細胞のフィーダーレイヤーを使用せずに長期間培養することにより、肝細胞表現型を誘導できることを示す(図2A、B)。塩基性FGFは分化を増大させることができる(図2C)。マトリゲル上での細胞の培養は肝臓の胆管の表現型を誘導する(図2D、E)。これらの結果は、肝細胞または肝臓の胆管細胞に分化する、細胞株3(8)#21の二分化能を示唆している。【0034】実施例2−肝臓前駆細胞株における、膵臓発生および細胞系譜の特異的遺伝子の発現これら5つの(未処理)肝臓前駆細胞株を、インスリンIおよびインスリンII、膵臓外分泌マーカーのアミラーゼ、GLUT2(グルコーストランスポーター)、および膵臓の発生に深く関与する一部の転写因子、例えばPdx1、Isl1、NeuroD/β2、Nkx6.1およびPdx4を含む、選択された膵臓内分泌マーカーの発現について分析した。これらの遺伝子の発現はRT−PCRにより決定し、サザンブロットにより確認した。データは図3に示した。ラットの膵臓組織は、インスリンI、インスリンII、アミラーゼ、GLUT2、Pdx1、Isl1およびNkx6.1を含む検査したマーカーのほとんどを発現するが、NeuroD/β2およびPdx4は発現しない(図3;レーン1)。ガンマ照射したSTOフィーダー細胞はこれらのマーカーのいずれも発現しない(図3;レーン2)。肝臓前駆細胞株1(1)#3(図3;レーン3)および3(8)#21(図3;レーン7)は検査したほとんどすべての膵臓転写因子、そしてインスリンIおよびインスリンIIさえも発現するが、アミラーゼ、Pdx1およびGLUT2は検出可能なレベルでは発現しない(図3;レーン3および7)。細胞株1(1)#6は、INSIおよびIIならびにNeuroD/β2についてはポジティブである(図3;レーン4)。細胞株2(11)はNeuroD/β2、Nkx6.1およびPdx4についてはポジティブであるが、他のすべてのマーカーにはネガティブである(図3;レーン6)。細胞株1(1)#3はNeuroD/β2についてのみポジティブである(図3;レーン5)。これらのデータは、検査した5つの肝臓前駆細胞株の少なくとも2つ(1(1)#3および3(8)#21)が、膵島に分化させる因子による何らかの処置前でさえも、これらの膵臓系列に入る “準備ができていること”を発現していることを示す。【0035】さらにそしてポジティブコントロールとして、膵臓分化経路に肝臓幹細胞を方向付ける目的で、膵臓決定転写因子であるPdx1をこれらの各肝臓前駆細胞株にトランスフェクトした。図4に示したようにPdx1遺伝子の導入はアミラーゼ遺伝子発現の引き金となる(図4;レーン3、5、7、9、11)が、トランスフェクトしなかった親株では発現していない(図4;レーン2、4、6、8、10)。興味深いことにインスリンIIを発現する細胞株1(1)#3および3(8)#21は、Pdx1遺伝子によるトランスフェクション後、インスリンIIの発現低下を示す(図4;レーン2、3、10、11)が、一方トランスフェクション前にこの遺伝子を発現しなかった細胞株ではインスリンIIの誘発がみとめられた(図4;レーン4、5、6、7)。【0036】実施例3−肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞の分化能を決定するための、異なる実験条件下での同細胞における発現の特徴づけ当明細書で述べた肝臓前駆細胞株を、異なる段階で膵臓の発生をコントロールする遺伝子(Pdx1、Hlxb9、Isl1、ngn3、Nkx2.2、Pax6、NeuroD/β2、Nkx6.1およびPdx4)、内分泌細胞系譜マーカー(インスリンI、インスリンII、グルカゴン、ソマトスタチンおよびPP)、外分泌マーカー(アミラーゼおよびエラスターゼ)、ならびにインスリンの感知(sensing)、合成、過程(process)および分泌に関与する遺伝子(GLUT−2、グルコキナーゼ、PC1、PC2、PC3およびカルボキシペプチダーゼE(CPE))の発現について検討する。各細胞株を、未処理および処理の条件下での発現について評価する。処理する細胞株は膵臓の幹細胞または前駆細胞の分化を高めることが知られている培養条件下で増殖させる、および/または膵臓発生遺伝子でトランスフェクトするものとする。【0037】RT−PCR、サザンブロット、免疫細胞化学、およびウェスタンブロットの技術を用いて、mRNAの発現(すべての遺伝子)およびタンパク質レベル(例えばPdx1およびホルモン)の双方で遺伝子の発現を決定する。正常な膵臓組織、初期肝細胞、およびSTOフィーダー細胞をコントロールとする。処理細胞株の特徴付けを行い、未処理株と比較する。肝臓幹細胞マーカー(AFP、アルブミン、CK14、c−kit、OV6、OV1)および造血幹細胞/前駆細胞マーカー(CD34、Thy1.1、CD45)の発現についても処理細胞株で分析し、それらの肝臓幹細胞の表現型が処理後に失われているかどうかを調べる。【0038】プラスミド、例えばPdx1遺伝子およびNeo遺伝子を保有するプラスミドpBKCMV/Stf1(Pdx1)(Dr. Dutta, Hoffmann-La Roche, Inc. Nutley, NJ より供与)を使用して、肝臓細胞株をトランスフェクトした。Pdx1でトランスフェクトした細胞は、インスリン産生細胞への分化に関するポジティブコントロールとして使用することができる。【0039】RT−PCR/サザンブロットDNAを含まないRNAは、StrataPrep(登録商標)Total RNA Miniprep Kit(Stratagene, La Jolla, CA)またはRNAqueous(登録商標)-4PCR Kit(Ambion, Austin, TX)を用いて、製品のプロトコルに従って抽出する。RT−PCRは当該技術分野で公知の方法に従って行う。PCRのアンプライマー(amplimer)として使用するオリゴヌクレオチドを表1に列記する。PCRサイクルは、95℃で3分間、続いて94℃で45秒間、各プライマーペアに対応する至適アニーリング温度で45秒間、72℃で1分間(34サイクル)そして72℃で10分間とする。PCR産生物はBioRad/RAC300 power supplyを用いて100ボルトで80分間、TBEバッファー中の1.5% Seakem アガロースゲルに流す。ゲルをTBEバッファー中の1% 臭化エチジウム溶液中で15から30分間インキュベーションした後、UV光で可視化する。画像を撮影し、AlphaImage(登録商標)2200 Documentation & Analysis system (Alpha Innotech Corporation, San Leandro, CA)を用いて処理する。サザンブロッティング用のオリゴプローブのジゴキシゲニン標識は、Dig Oligonucleotide Tailing Kit (Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN)を用いて、製品のプロトコルに従って行う。確認のための技術として、サザンブロッティングをPCR反応後に標準的なプロトコルを用いて行う。【0040】【表2】【0041】免疫細胞化学Biogenex (San Ramon, CA)から導入したアビジン−ビオチン法を次に行う。細胞は細胞遠心機(Cytopro(登録商標), Wescor, Inc. Logan, UT)を用いてFisher Brand superfrost pulus slide (Fisher Scientific, Pittsburgh, PA)上にサイトスピンさせる(cytospun)か、または組織培養プレート(Falcon(登録商標),Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)に設置した8ウェルガラススライド(ICN Costa Mesa, California)上で増殖させるかのいずれかとし、0.5% グルタルアルデヒド中で1時間、室温で固定する。細胞内染色のため、細胞を0.2%Triton-X を用いて透過処理する。ブロッキングおよび抗原回復(必要な場合)は細胞の第1抗体染色前に行う。アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼに連結させたビオチンと第2抗体を複合させ;ストレプトアビジン(ビオチンと結合する)を、アルカリホスファターゼまたはぺルオキシダーゼに連結させる。次に3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)、3−アミノ−9−エチルカルボゾール(AEC)、Fast Red、または5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム(BCIP/NBT)を用いて抗体を視覚化する。このシステムはまた、複数の抗原の発現を視覚化できる二重染色法として使用することもできる。【0042】ウェスタンブロットウェスタンブロットもまた遺伝子の翻訳の研究に使用する。細胞を溶菌バッファー(8.0mlに対して:3.8mlのdH2O、1mlの0.5M Tris−HCl(pH6.8)、0.8mlのグリセロール、1.6mlの10%(w/v)SDS、および0.4mlのβ−メルカプトエタノール、および0.4mlの0.5% ブロモフェノールブルー)中で溶菌させる。【0043】【表3】【0044】組織を氷上でホモジェネート用バッファー(20mM Tris、137mM NaCl、10% グリセロール、1mM Na3VO4、1u/ml アプロチニン、1mM 4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド(AEBSF)、pH8.0)中でホモジェネートし、9,000gで20分間、4℃で遠心し、上清を集める。タンパク質濃度をCoomassie Plus Protein Assay Reagent(クーマシープラスタンパク質アッセイ試薬)(PIERCE, Rockford, Illinois)を用いて決定する。次にサンプルを適当な濃度で分離用ゲルに100V,4ワット、および50mAで2時間流す。次にゲルを、Mini Trans-Blot Cell(Bio-Rad, Hercules, CA)を用いて、移行用バッファー(25mM Tris、192mM グリシンおよび20%v/v メタノール、pH8.3)中で30ボルト、2ワット、および50mA、オーバーナイトで、ニトロセルロース膜(Bio-Rad)に移行させる。その後膜を各プライマリー抗体中で4℃、オーバーナイトでブロットする。その後、膜を洗浄し、アルカリホスファターゼと連結させた対応する2次抗体と共に、1時間室温でインキュベーションし、適当な発色が得られるまで、60μlのニトロブルーテトラゾリウム(NBT)溶液(50mgのNBTを0.3ml dH2Oを含む0.7mlのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶かす)、および60μlの5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート(BCIP)溶液(50mgのBCIPを1mlの100%DMFに溶かす)を含む炭酸バッファー(0.1M NaHCO3、1mM MgCl2、pH9.8)中で、発色させる。【0045】肝臓幹細胞の分化肝臓幹細胞を、ホルモン(デキサメタゾン、GLP−1、エキセンディン−4)、成長因子(ガストリン、インターフェロン−γ(IGFγ)、HGF、EGF、β−セルリン、アクチビン−A、KGF、FGF、TGF−αおよび−β、NGF、IGFs、INGAP、およびVEGF)、ビタミン(ニコチンアミドおよびレチノイン酸)、および/または化学物質(酪酸ナトリウム)を組み合わせたものを表4に列記した濃度で含む基本培地(BM)中で培養する。表4に示した濃度はそれらの有効性を至適化するように濃度を1−3桁変動させてもよい。上述のホルモン、成長因子、ビタミンおよび化学物質は膵臓/β細胞の発生に関与することが、文献または2002年3月29日に出願されたPCT特許出願第PCT/US02/09881号に報告されている。処理細胞株において、肝臓幹細胞マーカーおよび造血幹細胞マーカーの発現についても観察し、処理後に肝臓幹細胞表現型が失われているかどうかを決定する。【0046】トランスフェクションおよび選択FuGENE6トランスフェクション試薬(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN)を用いてPdx1遺伝子およびNeogeneを保有するpBKCMV/Stf1(Pdx1)を、製品のプロトコルにより肝臓幹細胞にトランスフェクトする。Mockトランスフェクションおよびベクターのみのトランスフェクションもまた同時に行う。遺伝子のトランスフェクションの3日後、細胞を1mg/mlのG418を含む培養用培地で培養する。耐性クローンは約10日で認められる。2から4週間の間に選択を行う。その後、細胞を0.3mg/mlのG418を含む培養用培地で培養する。類似のトランスフェクションも他の膵臓発生遺伝子を含むプラスミドで行うことができる。【0047】実施例4−ラット肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞由来のインスリン産生細胞(LSDIPC)機能の能力の決定インスリンを産生することが発見された実施例3の細胞株(LSDIPC)を、さらにそのグルコースへの応答性について評価する。細胞は細胞外および細胞内双方のインスリン産生について検査する。細胞株がグルコース応答性のインスリン産生を示す場合は、次に基質のリン酸化パターンをグルコースの刺激後に決定することができる。新たに単離されたラット膵島細胞をポジティブコントロールとする。基質のリン酸化パターンの観察により、インスリン産生の誘導に関与する早期のシグナル応答を明らかにする。【0048】グルコースに誘発されるインスリンの刺激のアッセイ分化させたLSDIPCを5.5mM グルコースを含む1mlの培地を入れた24ウェルプレートで、各ウェル当たり2x105個の細胞の濃度で植え付け、24時間寝かせる。細胞をKrebs-Ringerバッファー(KRB)で洗浄し、グルコースを含むまたは含まない(0、5.5、11および17.5mMグルコース)培養用培地1mlで3−18時間刺激する。細胞を含まない上清を集め使用するまで−70℃で保存する。次に細胞を溶菌バッファーで処理して、Mercodia Ultrasensitive Rat Insulin ELISA Enzyme イムノアッセイキット(Mercodia, Uppsala, Sweden)を用いてインスリン含有量を決定する。このインスリンキットを使用して、BioRad's Benchmark プレートリーダー(490nm)を用いて分泌されたインスリンおよび細胞内のインスリン双方を測定する。インスリンの値は細胞の(Trizol (登録商標),Gibcoを用いて抽出された)総DNA濃度に対して標準化する。【0049】ホルモン検出のためのELISA上述のように、分泌されたインスリンおよび細胞内のインスリンを、Mercodia Ultrasensitive Rat Insulin ELISA Enzyme イムノアッセイキット(Mercodia, Uppsala, Sweden)を用いて製品のプロトコルに従って測定する。同様にグルカゴンアッセイを当該技術分野に公知の方法、またはそれを適応させた方法で行う。【0050】基質のリン酸化のアッセイ分化させたLSDIPCを17.5mM グルコースで0、5、15および30分間刺激した後、抽出バッファー(20mmol/l K2HPO4、pH7.5、5mmol/l DTT、1mmol/l EDTA、および110mmol/l KCL)中でホモジェネートする。ホモジェネート液を用いて、10%SDS−PAGE(BioRad)上でタンパク質を分離し、リン酸化されたタンパク質基質を抗ホスホチロシン抗体(Pharmingen, San Diego, CA)を用いてウェスタンブロット法で検出する。【0051】当明細書に述べた実施例および態様は説明のみを目的としており、その観点において様々な修飾または変更を当業者に示唆しており、そしてそれらは本出願の精神および範囲ならびに付記した請求項の範疇内に含まれるものとすることは、理解されるべきであろう。【図面の簡単な説明】【0052】【図1】図1はアリルアルコールに傷害されたラット肝臓由来の5つの肝臓上皮細胞株の特徴を示す。記号の意味は:−ネガティブ、+/−わずかにポジティブ、+ポジティブ、++非常にポジティブである。【図2】図2は、幹細胞様細胞および胆管様細胞に分化する、肝臓上皮細胞株3(8)#21の二分化能を示す。A:フィーダーを使用せずに培養した3(8)#21は成熟肝細胞マーカーH4にポジティブである。B:6日目、フィーダーを使用せずに培養した3(8)#21は12日目で成熟肝細胞マーカーCYPIAIIにポジティブである。C:フィーダーを使用しないがbFGFを使用して培養した3(8)#21;6日目でH4によりポジティブな細胞が観察された。D:フィーダーを使用せずマトリゲル上で培養した3(8)#21は4日目で管状構造を形成する。E:フィーダーを使用せずにマトリゲル上で培養した3(8)#21は13日目で成熟胆管細胞マーカーBD1を強発現する。パネルA、B、C、およびEの倍率は400xである。パネルDの倍率は200xである(Yin, L. et al. (2001A); Yin, L. et al. (2001B);およびYin, L. et al. (2002))。【図3】図3は5つの肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞株における膵臓発生マーカーの発現を示す。【図4】図4はPdx1遺伝子によるトランスフェクション後、肝臓前駆細胞株におけるインスリンIIおよびアミラーゼの発現を示す。 肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞を膵臓機能細胞、ここで当該膵臓機能細胞はグルコースの刺激に応答してインスリンを産生し、そして分泌する、に転換させる方法であって、以下:当該肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞を膵臓発生遺伝子でトランスフェクトすること、膵臓機能細胞への分化を誘導する因子を含む培地中で当該肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞を培養すること、またはその双方を含み、それにより前記のトランスフェクトした細胞を膵臓機能細胞に転換させる、前記方法。 膵臓機能細胞が膵臓内分泌系の細胞である、請求項1に記載の方法。 転換された細胞が、膵島産生幹細胞(IPSC)、膵島前駆細胞(IPC)、および膵島様構造体もしくはIPC由来の膵島(IdI)からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。 膵臓機能細胞がさらに肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞のマーカーを発現する、請求項1に記載の方法。 肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞が、肝芽細胞または肝臓卵円形細胞からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。 肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞が、造血マーカーおよび肝臓卵円形細胞または肝芽細胞のマーカーからなる群から選択される少なくとも1つのマーカーを発現する、請求項1に記載の方法。 造血マーカーがCD34、Thy1.1、およびCD45からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。 肝臓の肝芽細胞または卵円形細胞のマーカーが、α−胎児タンパク質、アルブミン、サイトケラチン14(CK14)、c−kit、OC.2、OC.3、OC.10、OV1およびOV6からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。 膵臓発生遺伝子が、Pdx1、Hlxb9、Isl1、ngn3、Nkx2.2、Pax6、NeuroD/β2、Nkx6.1およびPdx4からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。 膵臓発生遺伝子がPdx−1である、請求項9に記載の方法。 因子が、デキサメタゾン、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、エキセンディン−4、ガストリン、インターフェロン−γ(IFNγ)、肝細胞成長因子(HGF)、表皮成長因子(EGF)、β−セルリン、アクチビン−A、ケラチノサイト成長因子(KGF)、繊維芽細胞成長因子(FGF)、トランスフォーミング成長因子−α(TGF−α)、トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)、神経成長因子(NGF)、インスリン様成長因子類(IGFs)、膵島新生に関連するタンパク質(INGAP)、および血管内皮成長因子(VEGF)、ニコチンアミド、レチノイン酸、酪酸ナトリウム、およびそれらのあらゆる組み合わせ、からなる群から選択される請求項1に記載の方法。 転換された細胞が、インスリンI(InsI)、インスリンII(InsII)、グルカゴン、ソマトスタチン、膵臓のポリペプチド(PP)、アミラーゼ、エラスターゼ、グルコーストランスポーター2(GLUT2)、グルコキナーゼ、PC1、PC2、PC3、カルボキシペプチダーゼE(CPE)、Pdx1、Hlxb9、Isl1、ngn3、Nkx2.2、Pax6、NeuroD/β2、Nkx6.1およびPdx4からなる群から選択される膵臓のメッセージを発現する、請求項1に記載の方法。 転換された細胞が、InsI、InsII、グルカゴン、ソマトスタチン、PP、アミラーゼ、エラスターゼ、GLUT2、グルコキナーゼ、PC1、PC2、PC3、CPE、Pdx1、Hlxb9、Isl1、ngn3、Nkx2.2、Pax6、NeuroD/β2、Nkx6.1およびPdx4からなる群から選択される膵臓タンパク質を発現する、請求項1に記載の方法。 請求項1に記載の方法により産生される膵臓機能細胞。 細胞がさらにPdx1、アミラーゼおよびインスリンIIを発現する、請求項14に記載の膵臓機能細胞。 肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞を請求項1の方法により転換させることを含む内分泌ホルモンを産生させる方法であって:前記の転換された細胞を培養すること;および該細胞培養から内分泌ホルモンを回収すること;をさらに含む前記方法。 膵臓発生遺伝子でトランスフェクトした肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞。 肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞が、肝芽細胞または肝臓卵円形細胞からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。 膵臓発生遺伝子がPdx1、Hlxb9、Isl1、ngn3、Nkx2.2、Pax6、NeuroD/β2、Nkx6.1およびPdx4からなる群から選択される、請求項17に記載の肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞。 膵臓発生遺伝子がPdx1である、請求項19に記載の肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞。 膵臓機能細胞への分化を誘導する因子を含む倍地中で培養した肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞。 因子が、デキサメタゾン、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、エキセンディン−4、ガストリン、インターフェロン−γ(IFNγ)、肝細胞成長因子(HGF)、表皮成長因子(EGF)、β−セルリン、アクチビン−A、ケラチノサイト成長因子(KGF)、繊維芽細胞成長因子(FGF)、トランスフォーミング成長因子−α(TGF−α)、トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)、神経成長因子(NGF)、インスリン様成長因子類(IGFs)、膵島新生に関連するタンパク質(INGAP)、および血管内皮成長因子(VEGF)、ニコチンアミド、レチノイン酸、酪酸ナトリウム、およびそれらのあらゆる組み合わせ、からなる群から選択される請求項21に記載の肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞。 本発明は、肝臓幹細胞/肝臓前駆細胞を膵臓発生遺伝子でトランスフェクトすることにより、および/または膵臓発生因子と共に培養することにより、該肝細胞を膵臓機能細胞に転換させる方法である。得られる細胞はグルコースの刺激に応答してインスリンタンパク質を産生、分泌する。


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