生命科学関連特許情報

タイトル:公表特許公報(A)_肥満細胞症治療のための強力で選択的かつ非毒性のc−kit阻害剤の使用
出願番号:2003508353
年次:2005
IPC分類:7,A61K45/00,A61K31/7076,A61K38/21,A61P17/00,A61P35/02,A61P43/00,C12N15/09,C12Q1/02


特許情報キャッシュ

ムーシー アラン キネ ジャン−ピエール JP 2005503361 公表特許公報(A) 20050203 2003508353 20020628 肥満細胞症治療のための強力で選択的かつ非毒性のc−kit阻害剤の使用 アブ サイエンス 504006445 清水 初志 100102978 橋本 一憲 100108774 新見 浩一 100128048 ムーシー アラン キネ ジャン−ピエール US 60/301,406 20010629 7 A61K45/00 A61K31/7076 A61K38/21 A61P17/00 A61P35/02 A61P43/00 C12N15/09 C12Q1/02 JP A61K45/00 A61K31/7076 A61P17/00 A61P35/02 A61P43/00 105 A61P43/00 111 A61K37/66 G C12N15/00 A C12Q1/02 AP(GH,GM,KE,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,CH,CY,DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,LU,MC,NL,PT,SE,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NO,NZ,OM,PH,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VN,YU,ZA,ZM,ZW IB2002003303 20020628 WO2003002114 20030109 81 20040105 4B024 4B063 4C084 4C086 4B024AA01 4B024AA11 4B024BA80 4B024CA04 4B024DA02 4B024EA02 4B024EA04 4B063QA01 4B063QA05 4B063QA11 4B063QQ08 4B063QR48 4B063QR51 4B063QR66 4B063QR77 4B063QS36 4B063QX01 4C084AA02 4C084AA17 4C084AA19 4C084DA22 4C084MA02 4C084MA16 4C084MA21 4C084MA22 4C084MA28 4C084MA63 4C084NA14 4C084ZA89 4C084ZB21 4C084ZB27 4C084ZC20 4C086AA01 4C086AA02 4C086EA18 4C086MA01 4C086MA02 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZA89 4C086ZB21 4C086ZB27 4C086ZC20 【技術分野】【0001】本発明は、IL-3の存在下で培養したIL-3依存性細胞の死滅を促進することができないチロシンキナーゼ阻害剤、より詳細に述べると非毒性で強力かつ選択的なc-kit阻害剤をそのような治療が必要なヒトへ投与することを含む、肥満細胞症を治療する方法に関する。本発明はまた、I型肥満細胞症を治療するための上記阻害剤を含有する局所適用の為の組成物を企図している。【背景技術】【0002】肥満細胞(MC)は、CD34、c-kit、およびCD13抗原を発現している造血幹細胞の特定のサブセットに由来した組織要素である(Kirshenbaumら、Blood、94:2333-2342(1999)、およびIshizakaら、Curr Opin Immunol.、5:937-43(1993))。未熟なMC先駆細胞は血流を循環し、組織において分化する。これらの分化および増殖過程は、サイトカインの影響下にあり、その中で最も重要なものは、幹細胞因子(SCF)であり、Kitリガンド(KL)、Steel因子(SL)、または肥満細胞増殖因子(MCGF)とも称される。SCF受容体は、癌原遺伝子c-kitによりコードされ、これはIII型受容体型チロシンキナーゼサブファミリーに属している(BoissanおよびArock、J. Leukoc Biol.、67:135-48(2000))。この受容体はまた、他の造血細胞または非造血細胞上においても発現されている。SCFによるc-kit受容体の連結はその二量体化、続くそのトランスリン酸化を誘導し、様々な細胞質内基質の動員および活性化につながる。これらの活性化された基質は、細胞増殖および活性化に寄与する複数の細胞内シグナル伝達経路を誘導する(BoissanおよびArock、2000)。肥満細胞は、関連する組織配置および構造だけでなく、機能および組織化学的レベルのそれらの不均一性により特徴付けられる(AldenborgおよびEnerback.、Histochem. J.、26:587-96(1994);Braddingら、J Immunol.、155:297-307(1995);Iraniら、J. Immunol.、147:247-53(1991);Millerら、Curr Opin Immunol.、1:637-42(1989);および、Welleら、J. Leukoc Biol.、61:233-45(1997))。【0003】実際、少なくとも3種の異なる肥満細胞サブタイプがヒトにおいて存在し、これらは、それらの形態学的外観、それらの組織配置、それらの生化学的含有物、および様々な化合物に対するそれらの反応性が異なる。これら3種の異なる肥満細胞サブタイプは、中性プロテアーゼの含量を基に識別される。トリプターゼ(T)のみを含有する肥満細胞はMCTと称され、トリプターゼおよびキマーゼ(C)を含有するMCはMCTCとして知られている。これら2種のヒトMCの主要なサブセットの間の大きい差異は表1に示している。加えて、少量の肥満細胞はキマーゼのみを発現し、トリプターゼは発現せず、MCCと称される(Liら、J. Immunol.、156:4839-44(1996))。それらの機能に関して、即時型過敏症に関連した細胞としてこれまで主に調べられたそれらの役割に加え、最近の研究は、肥満細胞は抗原提示細胞として、および生物の抗炎症性防御に高度に関連した要素としての、ふたつの主要な生理的特性を有することを示すことができる(AbrahamおよびArock、Semin Immunol.、10:373-381(1998);ArockおよびAbraham、Immun.、66:6030-4(1998);Galliら、Curr Opin Immunol.、11:53-59(1999))。【0004】肥満細胞症は比較的稀な疾患の異質性群を表わしており、これは様々な組織内のMC蓄積を特徴としており、ヒトにおいては孤立性または時には他の血液悪性疾患に関連して認めることができる。今日肥満細胞症(骨髄付随障害を伴うまたは伴わない)は、その生物学的特徴の点で、血液疾患であると考えられる。肥満細胞症につながる初発事象は未だ明かではないが、患者のかなりの割合で、c-kit遺伝子の変化が説明されている。特に興味深いのは構成的に活性化された受容体を生じる変異の獲得であり、これにはおそらく組織におけるMC数増加が関連している可能性がある。この理由から、変異したc-kitおよび/またはその細胞内シグナル伝達を特異的に標的とすることが今後の戦略と見なされている。【0005】肥満細胞症は、疾患の性質に応じて異なる組織、主に皮膚および骨髄中、更には脾臓、肝臓、リンパ節、および胃腸管における、異常な肥満細胞蓄積を特徴とする疾患の非常に異質な群である。これらは、ヒトでは男女を問わずあらゆる年齢で罹患し得る。MC新生物は急性または慢性であることができる。急性肥満細胞新生物は肥満細胞性白血病と称される。慢性肥満細胞新生物は局所性または全身性でありうる。皮膚肥満細胞症は最も一般的な局所性新生物であり、小児においてしばしば認められ、これは寛解し二度と再発しないことが多い。肥満細胞症は通常、後天性疾患であるが、稀に家族性症例が説明されている。【0006】肥満細胞新生物の極端な異質性に関し、これらの疾患を分類することは重要である。最も良く使用される分類法のひとつは、Metcalfeによるものであり、これは肥満細胞症を4つの型に区別している(Metcalfe、J Invest Dermatol.、96:2S-4S(1991)):【0007】I型は、ふたつのサブタイプ(IAおよびIB)により構成される。IA型は、肥満細胞浸潤が、厳密に皮膚に限定されている疾患により形成される。この型は、本疾患の最も頻出する形を表わしており、i)色素性じんま疹(特に小児期に遭遇する、皮膚肥満細胞症の最も一般的な形)、ii)びまん性皮膚肥満細胞症、iii)単発性肥満細胞腫、ならびにiv)水疱性、紅斑性、および毛細血管拡張性の肥満細胞症のような、いくつかの稀なサブタイプを含む。これらの形は、小児期の自然寛解によるそれらの優れた予後、ならびに成人における非常に不活性な経過を特徴としている。概してこの型の疾患の長期生存は健常集団と同等であり、別の形の肥満細胞症と解釈されることは稀である。IB型は、皮膚が関与したまたは関与していない不活性の全身疾患(SM)により表わされる。これらの形は、小児よりも成人においてはるかに一般的である。本疾患の経過は不活性であることが多いが、時には急速進行性または悪性の肥満細胞症の徴候を示し、進行性臓器機能不全につながり得る。【0008】II型は、骨髄増殖性もしくは骨髄異形成症候群、または急性白血病などの、関連した血液障害を伴う肥満細胞症を含む。これらの悪性肥満細胞症は通常は皮膚には関与しない。この疾患の進行は、一般に予後を条件付ける関連した血液障害の型によって左右される。【0009】III型は、異常な肥満細胞による複数の臓器の大規模浸潤が一般的である、急速進行性全身性肥満細胞症により説明される。この種の急速進行性の臨床経過を辿っている患者において、末梢血は、骨髄増殖性障害はより顕著であるという示唆を特徴としている。本疾患の進行は急性白血病同様非常に急激であるか、もしくは一部の患者においては比較的長い生存期間を示すことができる。【0010】最後に、IV型肥満細胞症は、10%を超える白血球を示している循環血中肥満細胞および肥満細胞前駆体の存在を特徴とする肥満細胞性白血病を含む。この実体は、おそらくヒトにおける最も稀な白血病型を示し、悪性肥満細胞症の急性進行性の変種同様、非常に予後不良である。肥満細胞性白血病は新たに(de novo)、または色素性じんま疹もしくは全身性肥満細胞症の終末相としてのいずれかで発生する。【0011】II型およびIII型は予後が異ならないので、Metcalfeの分類はHornyらの推奨に従い、表1に示したようにさらに簡略化することができる(Hornyら、Am J Surg Pathol.、22:1132-40(1998))。【0012】(表1)【0013】肥満細胞症の臨床症状は、肥満細胞の化学メディエーターの放出および肥満細胞による様々な臓器の浸潤から生じる。これらの要素による様々な臓器の浸潤およびそれらの臨床結果に加え、肥満細胞由来メディエーターの主な有害作用に関する知見は以下のものである。【0014】末梢血不活性の皮膚型を有する患者において、末梢血は大多数の症例において正常である。全身性疾患の不活性型の患者において、末梢血はほとんどの場合は正常であるが、少数の症例は好中球増加症、好酸球増加症、好塩基球増加症、単球増加症、血小板増加症、またはリンパ球増加症を有する(Travisら、Cancer、62:965-72(1988);Hornyら、Br J Haematol.、76:186-93(1990))。非常に少数の循環肥満細胞が存在することがある。急速進行性疾患において、大半の患者は好中球増加症を有し、多数は好酸球増加症、好塩基球増加症、または単球増加症を有し、少数が血小板減少症を有する。対照的に、一部の患者は血球減少症、特に貧血および血小板減少症が存在することがあるが、白血球減少症および好中球減少症も認められることがある。一部の患者は循環肥満細胞を有し、これは通常少数である。【0015】肥満細胞性白血病において、末梢血は患者毎に変動する数の肥満細胞を示している(Torreyら、Am J Hematol.、34:283-6(1990);Baghestanianら、Leukemia、10:159-66(1996))。これらの肥満細胞は顆粒球減少または核分葉を伴い、未熟または異常であることが多い(Torreyら、1990)。これらの新生物肥満細胞は時折細胞学的に非定型であるので、異常な好塩基球から識別することは困難である。【0016】骨髄MCによる骨髄浸潤は大半の全身性肥満細胞症症例の特徴である。MCは、試験した試料が骨髄吸引液である場合には、常に増大するわけではない。実際それらの増殖により誘起された線維増多のために、これらは過小評価され得る。加えて、骨髄の細胞性は、不活性SMにおいて正常であり続け、ごく少数の肥満細胞はほぼ正常な外観を伴うことがあるのに対し、急速進行性の経過を辿る患者の骨髄試料は高い細胞性を示す可能性があり、顆粒球過形成、および頻繁に細胞学的非定型性を示す多数のMCを伴う(Pariら、Recenti Prog Med.、90:169-72(1999))。一部症例において、骨髄異形成の特徴が認められる(Valentら、Blood、84:4322-32(1994))。肥満細胞性白血病において、骨髄は細胞過剰であり、および異常な肥満細胞により大きく浸潤される(Le Camら、Ann Dermatol Venereal.、124:621-2(1997))。【0017】骨髄生検は圧倒的多数のMS症例において異常である。最も一般的所見は、無作為に分布された、または小柱近傍(paratrabecular)領域および血管周囲領域内の肥満細胞による限局性浸潤である(Pariら、1999;Genoveseら、Int J Clin Lab Res.、25:178-88(1995))。MCのびまん性間質性浸潤は余り一般的ではない。通常、浸潤に関連したレチクリン線維の濃密なネットワーク、および骨硬化症さえもが存在する(Alexanderら、Acta Haematol.、74:108-10(1985))。【0018】骨髄吸引液中またはトレフィン生検中の肥満細胞は、特に肥満細胞性白血病において、それらの非定型性のために、古典的染色法の使用によって特徴付けることが困難な場合がある。これらの症例において、MCトリパーゼに特異的なモノクローナル抗体を用いた免疫細胞化学の使用は、浸潤のMC特徴を確認する際に非常に有用である。【0019】他組織の浸潤複数の臓器が関与した全身性肥満細胞症において、組織内の肥満細胞の浸潤は、肝臓の門脈領域、脾臓の濾胞周囲、皮膚の血管周囲、またはリンパ節洞内の肥満細胞のクラスターにより形成される(Metcalfe、J Invest Dermatol.、96:45S-46S(1991))。肝腫および脾腫は、全身性肥満細胞症患者の50%において認められ、肥満細胞による肝臓および脾臓の浸潤を生じる(Paulsら、Arch Intern Med.、159:401-5(1999))。結節性病巣は文献において余り説明されていないが、これは悪性型においてより一般的であるか、または血液障害に関連しているように見える。骨病巣は臨床的に無症候性であることが多い。しかし、症状が存在する場合、これらは通常溶解性病巣、骨粗鬆症、または骨髄線維症を意味する。その後放射線医学的試験は頻繁にびまん性の異常を示し、稀には限局性または混合型の異常を示す(Weideら、Ann Hematol.、72:41-3(1996);Grieserら、Lancet.、350:1103-4(1997))。【0020】肥満細胞由来のメディエーターの有害作用多くの症状が、MC浸潤によるヒスタミンおよびプロスタグランジンのようなメディエーターの放出に関連づけることができる。胃腸管症状は全身性肥満細胞疾患の患者において頻出し、および一般に悪心、吐気、下痢、腹痛、およびアルコール不耐性により表わされる(Pariら、1999;Minerら、J Invest Dermatol.、96:40S-43S(1991))。他の臨床徴候は、皮膚において(皮膚潮紅、掻痒、熱、および冷気に対する不耐性)、または全身循環において(動悸、息切れ、気絶、血圧低下、ヘパリン放出の結果としての凝固阻止、ならびに場合によっては失神およびショック)、肥満細胞により放出されたメディエーターと関連づけることができる(Bainら、Br J Haematol.、106:9-17(1999);Soter、J Invest Dermatol.、96:32S-38S(1991))。加えて、当初の病巣から血流中に放出されたメディエーターの活性のために、本疾患の皮膚型のみを有する患者であっても全身症状が存在し得ることに注目することができる。MC顆粒の症候性放出は情動障害、労作、熱への曝露、アルコール、アスピリン、アヘン、抗コリン作用薬、抗ステロイド薬、抗炎症薬、および造影剤への曝露により促進され得る(Valent、Wien Klin Wochenschr.、108:385-97(1996))。【0021】肥満細胞症の分子遺伝学的病変MCの分化、生存、および増殖は、SCFに大きく依存している(Torreyら、1990)。SCFの受容体は、癌原遺伝子c-kitによりコードされたc-kitであり;これは、III型受容体型チロシンキナーゼサブファミリーに属する(Baghestanianら、1996)。肥満細胞症の新生物の機構に関して、c-kitの遺伝的異常(変異、欠失)を研究する、多くの研究が行われている。これらは先に齧歯類またはヒトの白血病MC株において認められているので、このような異常の存在が示唆されていた。ヒト肥満細胞症において、c-kitの変異は様々な形の肥満細胞症(皮膚肥満細胞症、全身性不活性または全身性急速進行性の肥満細胞症)において、インビボにおいて説明されている。認められた変異の中で、最も一般的なものは、コドン816でのAspからValへの変異の活性化である。例えば、この変異は、急速進行性全身性肥満細胞症(Pariら、1999)、または成人(Valentら、1994)もしくは小児(Le Camら、1997)の不活性皮膚肥満細胞症患者からの肥満細胞において同定されている。加えてある報告は、ヒト肥満細胞症におけるc-kitの傍細胞膜ドメイン(コドン560でValからGly)での変異を説明している(Valentら、1994)。対照的に、コドン560でのこの変異の役割は、腸腫瘍(GIST)症例の一部において想起されている(Genoveseら、1995)。更にc-kit遺伝子内の他の点変異は、チロシンキナーゼドメイン内のコドン820においてPignonらにより報告されており(Alexanderら、1985、およびMetcalfe、1991)、これは急速進行性肥満細胞症患者由来のMCにおいてAspのGlyとの置換を生じ、ならびにコドン816において、Longleyらにより散発性全身性肥満細胞症または皮膚肥満細胞症の小児においてチロシンまたはフェニルアラニンのアスパラギン酸との置換を引き起こし、同じくコドン839において、散発性不活性の色素性じんま疹の小児においてリシンのグルタミン酸との置換を生じる変異が報告されている。更にLongleyら(Paulsら、1999)は、816における点変異はc-kitの自然発生的リン酸化を引き起こしたのに対し、839での変異を伴うc-kitは外因性SCFへの曝露後は自己リン酸化もリン酸化もされず、更には816位で変異したc-kitの自己リン酸化を阻害したことを示している。【0022】最後に、文献において報告された少数の家族性症例において認められる状況においては、c-kitの変異が存在しないことが非常に限定された数の患者において認められたので(Paulsら、1999)、散発性疾患とは異なるように思われる。【0023】結論として、c-kit遺伝子の構造に関して、ヒト肥満細胞症は3群に分けることができる:- おそらく大半の成人SM症例を説明している、主にコドン816に活性化変異を伴う肥満細胞症;- 特に色素性じんま疹の小児が遭遇する、コドン839などにおける不活性化変異を伴う肥満細胞症;- 家族性肥満細胞症の稀な症例を対象とする、いかなるc-kit変異も伴わない肥満細胞症。【0024】提唱された肥満細胞症の治療(MCメディエーターの放出の阻害またはこのようなメディエーターの劣化作用の阻害)は、肥満細胞によるメディエーターの異常な産生により誘導された有害作用の妨害を目的とした対症療法である。使用される主な分子は、H1およびH2抗ヒスタミン薬である(Gasior-Chrzanら、Dermatology、184:149-52(1992))。H1抗ヒスタミン薬は掻痒、潮紅に対し通常投与されるのに対し、H2抗ヒスタミン薬は胃炎および消化性潰瘍を治療するために使用される。コルチコステロイドのような他の分子は、重症の皮膚症状の症例において必要であることがある(Burrallら、「Chronic urticaria」、West J Med.、152:268-76(1990))。同じく下痢および頭痛を治療するために、抗コリン作用薬が投与される(Valent、1996)。肥満細胞脱顆粒の阻害剤であるクロモグリシン酸二ナトリウムは、呼吸器症状を緩和するために使用される(Martinez-Orozcoら、Med Clin(Barc)、78:77(1982)。急性心臓血管系虚脱は、アドレナリンおよび静脈内輸液が必要である。このような攻撃に易罹患性である患者は、自己投与用のアドレナリンを携帯するのがよい(Bainら、1999)。おそらく、ビホスホネートは骨粗鬆症および病的骨折を伴う患者において有用であるように思われる(Pariら、1999)。このような治療は肥満細胞症に関連した症状を緩和するが、本疾患の長期治療を構成するものではない。【0025】従って、本発明の全般的目的は、肥満細胞症の原因である肥満細胞増殖を阻害する解決法を提供することである。【0026】これに関して、当技術分野において、コルチコステロイドと関係した又はしていない、インターフェロンINFαおよびINFγが使用される(Pariら、1999)。インターフェロン使用の概念は、急速進行性肥満細胞症はINFαが、場合によってはフィラデルフィア染色体の喪失を誘導し得る慢性骨髄性白血病のような骨髄増殖性症候群に類似しているという事実を基にしている。Fiehnら(Eur J Clin Invest.、25:615-8(1995))は、81歳の女性における骨髄、皮膚、および胃粘膜への浸潤を伴う全身性肥満細胞症の症例を説明しており、この患者は、IFNγにより治療され、臨床状況ならびに胃腸および血液学的徴候の改善を示した。再発は4ヶ月後に認められ、インターフェロンに対する循環血中抗体の出現を伴っていた。同様の症例は、Delaporteら(Br J Dermatol.、132:479-82(1995))により報告されており、そこでは10ヶ月間のINFαとコルチコステロイドとの間の関係は、インターフェロン停止時の再発を伴わずに臨床状況を改善した。更に一部のインターフェロンに対するアナフィラキシー反応が注目され(Pardiniら、Acta Haematol.、85:220(1991))、そのためこれは低用量で開始されなければならない。これらの結果は極めて魅力的であるが、このインターフェロンによる治療は、初期の異常、すなわち、異常なMC内のc-kit活性化変異の存在は正常化しない。【0027】実際現時点で、本疾患の主な形は、そのチロシンキナーゼドメイン内のc-kitの活性化変異に関連していることは明かであるので、この異常なチロシンキナーゼ活性の阻止を目的とすることは、全身性肥満細胞症の近い将来の治療的戦略のための今後の課題である。例えば、慢性骨髄性白血病と同様の治療薬が、この悪性疾患においてその慢性期に認められた顆粒球系列の異常な増殖を引き起こすシグナル伝達経路を阻止するためのBcr-Abl阻害剤の開発により検討されている(BoissanおよびArock.、Leukoc Biol.、67:135-48(2000))。【0028】この方法において、Maらは、特異的チロシンキナーゼ阻害剤であるいくつかのインドリノン誘導体(SU4984、SU6663、SU6577、およびSU5614)をインビトロにおいて試験し、これらの化合物の一部は、構成的に活性化されたc-kit変異体を阻害することができることを発見した(Maら、J Invest Dermatol.、114:392-4(2000))。しかしこの公開において、被験化合物中で、SU6577のみが40μMで、D816変異体である活性化されたc-kitの受容体リン酸化を実質的に低下させたことが示されている。この化合物はまた、野生型c-kitを活性化するが、40μM濃度での問題点は、D816変異体に対するSU6577の活性は、毒性の結果であることである。他のチロシンキナーゼに対するc-kitにおける特異性の欠如は、治療目的に対してこのような化合物を不適切とするであろう。【0029】従って、本発明の目的は、選択的で強力であるが毒性のないc-kitの阻害剤である化合物を提供することである。【0030】多くの異なる化合物が、チロシンキナーゼ阻害剤として説明されているが、しかしこれらの化合物で、IL-3の存在下で培養されたIL-3依存性細胞の死滅を促進できず、より低い毒性を生じる、活性化されたc-kitの選択的阻害を示すものはない。【0031】更に肥満細胞は腫瘍性病因、特に骨髄増殖性症候群に類似した血液疾患である全身性肥満細胞症に関与している。関心対象として、c-kit変異は異なる形の肥満細胞症においてインビボにおいて説明され、ならびにこの受容体の細胞質内尾部(intracytoplasmic tail)において、主にそのホスホトランスフェラーゼドメインにおいて生じることである。この変異の位置に従い、肥満細胞増殖に対するその作用は異なるように思われる。実際、これらの変異は急性進行性疾患または不活性肥満細胞症のいずれかにおいて認めることができる。c-kit変異はまた、他の悪性血液病に関連した肥満細胞症において、またはより少ない頻度で急性骨髄性白血病および骨髄増殖性または骨髄異形成性症候群のような独立した血液疾患においても認めることができる。【0032】いくつかの化合物は所定の変異体c-kitを効率的に阻害する一方で、これらは、c-kit活性化またはSCF活性化c-kitに寄与する様々な変異体を阻害することはできない。従って医師にとっての別の問題点は、それらの素因においてあらゆる活性化、すなわち変異またはSCFであろうと、活性化されたc-kitに作用する一般的c-kit阻害剤を有することである。【0033】いかなるc-kit活性化の原因であろうと、すなわちSCF活性化または変異活性化であろうと、肥満細胞症の治療法に関連した本発明は、SCF活性化されたc-kitおよび/または構成的に活性化されたc-kitの阻害剤である化合物を投与することを含み、更にこの問題に対する回答を提供する。【発明の開示】【0034】説明本発明は、IL-3の存在下で培養したIL-3依存性細胞の死滅を促進することができないチロシンキナーゼ阻害剤を、そのような治療を必要とする哺乳類に投与することを含む、肥満細胞症の治療法に関する。【0035】チロシンキナーゼ阻害剤は、例えば、ビス単環式、二環式、またはヘテロ環式アリール化合物(国際公開公報第92/20642号)、ビニレン-アザインドール誘導体(国際公開公報第94/14808号)および1-シクロプロピル-4-ピリジル-キノロン(米国特許第5,330,992号)、スチリル化合物(米国特許第5,217,999号)、スチリル置換ピリジル化合物(米国特許第5,302,606号)、セレオインドールおよびセレニド(国際公開公報第94/03427号)、三環式ポリヒドロキシル化合物(国際公開公報第92/21660号)およびベンジルホスホン酸化合物(国際公開公報第91/15495号)、ピリミジン誘導体(米国特許第5,521,184号および国際公開公報第99/03854号)、インドリノン誘導体およびピロール置換インドリノン(米国特許第5,792,783号、欧州特許第934 931号、米国特許第5,834,504号、米国特許第5,883,116号、米国特許第5,883,113号、米国特許第5,886,020号、国際公開公報第96/40116号、および国際公開公報第00/38519号)に加え、ビス単環、二環式アリール、およびヘテロアリール化合物(欧州特許第584 222号、米国特許第5,656,643号、および国際公開公報第92/20642号)、キナゾリン誘導体(欧州特許第602 851号、欧州特許第520 722号、米国特許第3,772,295号、および米国特許第4,343,940号)、ならびにアリールおよびヘテロアリールキナゾリン(米国特許第5,721,237号、米国特許第5,714,493号、米国特許第5,710,158号、および国際公開公報第95/15758号)から選択される。【0036】好ましくは、チロシンキナーゼ阻害剤は、非毒性で選択的かつ強力なc-kit阻害剤である。このような阻害剤は、インドリノン、ピリミジン誘導体、ピロロピリミジン誘導体、キナゾリン誘導体、キノキサリン誘導体、ピラゾール誘導体、ビス単環式、二環式、またはヘテロ環式アリール化合物、ビニレン-アザインドール誘導体およびピリジル-キノロン誘導体、スチリル化合物、スチリル置換ピリジル化合物、セレオインドール、セレニド、三環式ポリヒドロキシル化合物およびベンジルホスホン酸化合物からなる群より選択することができる。【0037】好ましい化合物の中で関心が集まっているのは、N-フェニル-2-ピリミジン-アミン誘導体のようなピリミジン誘導体(米国特許第5,521,184号および国際公開公報第99/03854号)、インドリノン誘導体およびピロール置換インドリノン(米国特許第5,792,783号、欧州特許第934 931号、米国特許第5,834,504号)、米国特許第5,883,116号、米国特許第5,883,113号、米国特許第5,886,020号、国際公開公報第96/40116号、および国際公開公報第00/38519号)に加え、ビス単環式、二環式アリール、およびヘテロアリール化合物(欧州特許第584 222号、米国特許第5,656,643号、および国際公開公報第92/20642号)、キナゾリン誘導体(欧州特許第602 851号、欧州特許第520 722号、米国特許第3,772,295号、および米国特許第4,343,940号)、4-アミノ置換キナゾリン(米国特許第3,470,182号)、4-チエニル-2-(1H)-キナゾロン、6,7-ジアルコキシキナゾリン(米国特許第3,800,039号)、アリールおよびヘテロアリールキナゾリン(米国特許第5,721,237号、米国特許第5,714,493号、米国特許第5,710,158号、および国際公開公報第95/15758号)、4-アニリノキナゾリン化合物(米国特許第4,464,375号)、および4-チエニル-2-(1H)-キナゾロン(米国特許第3,551,427号)である。【0038】従って好ましくは、本発明は、下記からなる群より選択される、IL-3の存在下で培養したIL-3依存性細胞の死滅を促進することはできない非毒性で強力かつ選択的なc-kit阻害剤を、そのような治療を必要とする哺乳類へ投与することを含む、肥満細胞症を治療する方法に関する:- ピリミジン誘導体、より詳細にはN-フェニル-2-ピリミジン-アミン誘導体、- インドリノン誘導体、より詳細にはピロール置換されたインドリノン、- 単環式、二環式アリール、およびヘテロアリール化合物、ならびに- キナゾリン誘導体。【0039】別の態様において、前述のc-kit阻害剤は活性化されたc-kitの阻害剤である。本発明の枠組みの中で、「活性化されたc-kit」という表現は、点変異、欠失、挿入から選択される少なくとも1個の変異を含む、構成的に活性化された変異体c-kitを意味するが、天然のc-kit配列(配列番号:1)の修飾および変更も意味する。このような変異、欠失、挿入、修飾、および変更は、トランスホスホリラーゼドメイン、傍細胞膜ドメインに加え、c-kit活性に直接もしくは間接に貢献するいずれかのドメインにおいて生させることができる。同じく「活性化されたc-kit」という表現は、ここではSCF活性化c-kitも意味する。好ましいおよび最適なc-kitの活性化のためのSCF濃度は、5x10-7M〜5x10-6Mであり、好ましくは約2x10-6Mである。好ましい態様において、工程a)において活性化された変異体c-kitは、Y823の近位に、より詳細にはc-kit自己リン酸化に関連した配列番号:1のアミノ酸800〜850の間に少なくとも1個の変異を有し、特にD816V、D816Y、D816F、およびD820G変異体である。別の好ましい態様において、工程a)において活性化された変異体c-kitは、c-kitの傍細胞膜ドメインに欠失を有する。このような欠失は例えば、コドン573と579との間で、c-kit d(573-579)と称される。傍細胞膜ドメインc-kitの近位の点変異V559Gも関心対象である。【0040】これに関して、本発明は、下記を含むスクリーニング法により入手可能な、活性化されたc-kitの選択的で強力かつ非毒性の阻害剤である化合物を、そのような治療を必要とする哺乳類へ投与することを含む、肥満細胞症を治療する方法を企図している:a)(i)活性化されたc-kit、および(ii)少なくとも1種の被験化合物を;成分(i)および(ii)が複合体形成することができるような条件下で接触させる工程、b)活性化されたc-kitを阻害する化合物を選択する工程、c)IL-3の存在下で培養したIL-3依存性細胞の死滅を促進することができない、工程b)において同定された化合物サブセットを試験および選択する工程。【0041】このスクリーニング法は更に、SCF活性化野生型c-kitも阻害することが可能である、変異体である活性化されたc-kit(例えば、トランスホスホリラーゼドメイン)の阻害剤である、工程b)において同定された化合物のサブセットを試験および選択することからなる工程を含むことができる。【0042】あるいは、工程a)において、活性化されたc-kitは、SCF活性化野生型c-kitである。【0043】この方法を実践する最良の様式は、工程a)において、推定阻害剤を、10μMを上回る濃度で試験することからなる。関連濃度は、例えば、10、15、20、25、30、35、または40μMである。【0044】工程c)において、IL-3は、好ましくは0.5〜10ng/ml、好ましくは1〜5ng/mlを構成する濃度で、IL-3依存性細胞の培養培地中に存在する。【0045】IL-3依存性細胞の例は以下を含むが、これらに限定されるものではない:- c-kitを天然に発現しならびに増殖および生存をこれに依存している細胞株。このような細胞の中で、ヒト肥満細胞株は、下記の手法を用いて確立することができる:正常なヒト肥満細胞はc-kitシグナルペプチドを含む変異体c-kitをコードしている配列およびTAG配列を含むレトロウイルスベクターにより感染させることができ、造血細胞において発現された野生型c-kitから変異体c-kitの、抗体による識別を可能にする。【0046】この技術は、細胞死を誘導せず、遺伝子導入は安定および満足できる収率(ほぼ20%)をもたらすので都合がよい。純粋な正常ヒト肥満細胞は、ヒト臍帯血から得られた血液起源の前駆体細胞を培養することにより慣習的に得ることができる。これに関して、他の血液成分から単核細胞を単離するために、ヒト臍帯血由来のヘパリン処理した血液は、Ficoll勾配で遠心分離される。その後CD34+前駆体細胞は、免疫磁気選択システムMACS(Miltenyi biotech社)を用い、前述の単離された細胞から精製される。その後CD34+細胞は、培地MCCM(L-グルタミン、ペニシリン、ストレプトマイシン、5x10-5Mβ-メルカプトエタノール、20%ウシ胎仔血清、1%ウシ血清アルブミン、および100ng/ml組換えヒトSCFを補充したα-MEM)において、濃度細胞105個/mlで、5%CO2大気中、37℃で培養される。この培地は、5〜7日おきに交換される。培養物中に存在する肥満細胞の割合は、May-Grunwal Giemsaまたはトルイジンブルー染色を用い、毎週評価される。培養物中の肥満細胞の検出には、抗トリプターゼ抗体も使用することができる。10週間培養した後、肥満細胞の純粋な細胞集団(<98%)が得られる。【0047】前述のように確立された細胞株をトランスフェクションするための、c-kitを発現しているベクターを調製するために、標準的手法を使用することが可能である。ヒトc-kitのcDNAは、Yardenらの論文(EMBO J、6(11):3341-3351(1987))に説明されている。c-kitのコード部分(3000bp)はPCRにより増幅され、以下のオリゴヌクレオチドを用いてクローニングすることができる:【0048】これらのPCR産物は、NotIおよびXhoIで消化され、T4リガーゼを用いpFlag-CMVベクター(SIGMA社)へ挿入されるが、このベクターはNotIおよびXhoIにより消化され、CIP(Biolabs社)を用いて脱リン酸化する。このpFlag-CMV-c-kitを用いて、細菌クローンXL1-blueを形質転換する。クローンの形質転換は下記プライマーにより検証される:【0049】当技術分野において公知の慣習的かつ一般的手法により、関連カセットを用いて位置指定変異誘発が行われる。【0050】ベクターMigr-1(ABC社)を、成熟肥満細胞のトランスフェクションに使用するためのレトロウイルスベクター構築のための基礎として使用することができる。このベクターは、IRESの3'末端にGFPをコードしている配列を含むので都合がよい。これらの特徴は、フルオロサイトメーターによる直接分析を用い、レトロウイルスに感染した細胞の選択を可能にする。前述のように、c-kit cDNAのN末端は、内因性c-kitから異種を識別するのに有用であるFlag配列を導入するために修飾することができる。【0051】使用することができるその他のIL-3依存性細胞株は下記を含むが、これらに限定されるものではない:- 野生型または変異型c-kitを発現している(傍細胞膜および触媒部位)BaF3マウス細胞は、Kitayamaら(Blood、88:995-1004(1996))およびTsujimuraら(Blood、93:1319-1329(1999))の論文に説明されている。- c-kitWTまたはc-kitD814Yのいずれかを発現しているIC-2マウス細胞は、Piaoらの論文(Proc. Natl. Acad. Sci. USA、93:14665-14669(1996))に説明されている。【0052】IL-3非依存性細胞株は以下である:- HMC-1は、肥満細胞性白血病患者由来の因子非依存性細胞株であり、これは構成的キナーゼ活性を有する傍細胞膜変異体c-kitポリペプチドを発現している(Furitsu Tら、J. Clin. Invest.、92:1736-1744(1993);Butterfieldら、「Establishment of an immature mast cell line from a patient with mast cell leukemia」、Leuk Res.、12:345-355(1988);および、Nagataら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA.、92:10560-10564(1995))。- P815細胞株(814位でc-kit変異を天然に発現している肥満細胞腫)は、Tsujimuraらの論文(Blood、83:2619-2626(1994))に説明されている。【0053】成分(ii)が活性化されたc-kitを阻害する程度は、インビトロまたはインビボにおいて測定することができる。インビボにおいて測定される場合は、Y823の近位に、より詳細にはc-kit自己リン酸化に関連した配列番号:1のアミノ酸800〜850に少なくとも1個の変異を有し、特にD816V、D816Y、D8l6F、およびD82OGの変異体である、活性化された変異体c-kitを発現している細胞株が好ましい。【0054】活性化された変異体c-kitを発現している細胞株の例は、先に記されたものである。【0055】別の好ましい態様において、この方法は更に、野生型c-kitを濃度1μM未満で阻害することが可能である化合物を試験および選択することからなる工程を含む。これはインビトロまたはインビボにおいて測定することができる。【0056】従って、前述の方法に従い同定および選択された化合物は、強力で選択的かつ非毒性の野生型c-kit阻害剤である。【0057】あるいは、本発明のスクリーニング法はインビトロにおいて実践することができる。これに関して、変異体活性化c-kitおよび/または野生型c-kitの阻害は、免疫沈降およびウェスタンブロットのような、標準の生化学技術を用い測定することができる。好ましくは、c-kitリン酸化の量が測定される。【0058】更に別の態様において、本発明は先に説明された肥満細胞症を治療する方法を企図しており、ここでこのスクリーニングは、下記を含む:a)変異体は永続的に活性化されたc-kitであるような、変異体c-kit(例えばトランスホスホリラーゼドメイン)を発現している細胞を用いて、複数の被験化合物により増殖アッセイ法を行い、細胞死の程度を測定することにより、各々IC50<10μMを有する活性化されたc-kitを標的とする候補化合物のサブセットを同定する工程、b)工程(a)で同定された候補化合物のサブセットを、細胞はIL-3の存在下で培養したIL-3依存性細胞である、野生型c-kitを発現している細胞を用いて増殖アッセイ法を行い、特異的にc-kitを標的とする候補化合物のサブセットを同定する工程、c)c-kitを発現している細胞用いて、工程b)で同定された化合物のサブセットにより増殖アッセイ法を行い、細胞死の程度を測定することにより、各々IC50<10μM、好ましくはIC50<1μMを有する野生型c-kitを標的とする候補化合物のサブセットを選択する工程。【0059】本明細書において、細胞死の程度は3Hチミジン取込み、トリパンブルー排除能法、またはヨウ化プロピジウムによるフローサイトメトリーにより測定することができる。当技術分野において慣習的に実践される通常の技術が存在する。【0060】従って、本発明は、哺乳類、特にヒトおよびイヌにおいて肥満細胞症を治療するための医薬品を製造するのための、先に定義された化合物の使用を包含している。【0061】本発明において利用される薬学的組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、鞘内、脳室内、経皮的、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、外用、舌下、または経直腸手段を含むがこれらに限定されるものではない、任意の経路で投与することができる。【0062】これらの薬学的組成物は、活性成分に加え、薬学的に使用することができる調製物への活性化合物の加工を促進する賦形剤および助剤を含む、適当な薬学的に許容できる担体を含有することができる。処方および投与技術に関する更なる詳細については、「Remington's Pharmaceutical Sciences」最新版(Maack Publishing社、イーストン、Pa)に見ることができる。【0063】経口投与のための薬学的組成物は、当技術分野において周知の薬学的に許容できる担体を用い、経口投与に適した用量で処方することができる。このような担体は、患者が服用するために、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などとして処方される。【0064】経口使用のための薬学的調製物は、活性化合物の、固形賦形剤との組合せにより得ることができる。適当な賦形剤は、炭水化物またはタンパク質充填剤であり、例えば乳糖、ショ糖、マンニトール、またはソルビトールを含む糖類;トウモロコシ、コムギ、コメ、ジャガイモ、または他の植物からのデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース;アラビアゴムおよびトラガカントガムを含むガム;ならびに、ゼラチンおよびコラーゲンのようなタンパク質を含む。望ましい場合、架橋したポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはアルギン酸ナトリウムのようなそれらの塩などの、崩壊剤または可溶化剤を添加してもよい。【0065】糖衣錠コアは、更にアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー液、および適当な有機溶媒もしくは溶媒混合物を含有することができる、濃縮された糖溶液のような適当なコーティングと組合わせて使用することができる。色素または顔料を製品識別のため、または活性化合物の量、すなわち用量を特徴付けるために、錠剤または糖衣錠コーティングに添加してもよい。【0066】経口使用することができる薬学的調製物は、ゼラチンで製造されたカプセル剤に加え、ゼラチンおよびグリセロールまたはソルビトールのようなコーティングで製造された軟質密封カプセル剤を含む。プッシュフィット式(push-fit)カプセル剤は、乳糖またはデンプンのような充填剤または結合剤、タルクまたはステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤、および選択的に安定剤と混合された活性成分を含有することができる。軟質カプセル剤において、活性化合物は、脂肪油、液体、またはプロピレングリコール液などの適当な液体中に、安定剤を伴いまたは伴わずに、溶解または懸濁することができる。【0067】非経口投与に適した薬学的処方は、水溶液、好ましくは生理的適合性のある緩衝液、例えばハンクス液、リンゲル液、または生理的に緩衝された生理食塩水中に処方することができる。水性注射用懸濁剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランのような、懸濁液の粘性を増大する物質を含有することができる。加えて、活性化合物の懸濁液は、適当な油性注射用懸濁剤として調製することもできる。適当な親油性溶媒または賦形剤は、ごま油のような脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドのような合成脂肪酸エステル、またはリポソームを含む。非脂質ポリカチオン性アミノポリマーも、送達のために使用することができる。選択的に、この懸濁剤は、高濃度の溶液を調製することができるように、適当な安定剤または化合物の溶解度を増大する物質を含有することもできる。【0068】この薬学的組成物は塩として提供することができ、ならびに塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、およびコハク酸などを含むが、これらに限定されるものではない多くの酸で形成することができる。塩は、対応する遊離塩基型の場合よりも、水性溶媒または他のプロトン性溶媒中により多く溶解する傾向がある。別の場合において、好ましい調製物は、以下のいずれかまたは全てを含有し得る凍結乾燥された散剤であることができる:1〜50mMヒスチジン、0.1〜2%ショ糖、および2〜7%マンニトールを、pH4.5〜5.5の範囲で、先に使用した緩衝液と組合わせたもの。【0069】本発明における使用に適した薬学的組成物は、意図された目的を達成するのに有効な量のc-kit阻害剤が含まれる組成物を含んでいる。有効量の決定は、十分当業者の能力内である。治療有効量は、症状または状態を緩和する活性成分の量を意味する。例えば、ED5O(集団の50%に有効な治療用量)およびLD5O(集団の50%の致死量)のような、治療効能および毒性は、細胞培養または実験動物において、標準の薬学的手法により決定することができる。治療作用に対する毒性作用の用量比は治療指数であり、これはLD50/ED50の比として表わすことができる。大きい治療指数を示す薬学的組成物が好ましい。前述のように、チロシンキナーゼ阻害剤、およびより詳細には本発明のc-kit阻害剤は、IL-3存在下で培養されたIL-3依存性細胞の死滅を促進することができない。【0070】加えて、本発明は、ヒトにおけるI、II、III、およびIV型肥満細胞症の治療、ならびにI、II、III、およびIV型肥満細胞症に関連した任意の症状の治療について先に定義した方法に関する。より詳細に述べると、本発明の方法はヒトにおける色素性じんま疹、びまん性皮膚肥満細胞症、単発性肥満細胞腫に加え、イヌの肥満細胞症ならびに水疱性、紅斑性、および毛細血管拡張性の肥満細胞症のような稀なサブタイプ、血液障害に関連した肥満細胞症(例えば骨髄増殖性もしくは骨髄異形成性障害症候群)、または急性白血病、肥満細胞症に関連した骨髄増殖性障害、ならびに肥満細胞性白血病の治療に有用である。【0071】肥満細胞症の診断は主に組織学的判定を基にしており、所定の患者の症例毎にどれが最良の阻害剤であるかを評価することができる。実際、本発明の方法により、適当な処方内の適当な阻害剤を用いて患者を治療することが現時点で可能である。例えばI型肥満細胞症について、外用組成物で投与されたSCF活性化c-kit阻害剤がより適している。II、III、およびIV型肥満細胞症に関して、先に定義された変異体である活性化c-kit阻害剤がより適している。本発明は、本疾患の任意の形を治療するために使用することができる、全般的に活性化されたc-kit阻害剤である化合物も提供することを言及する。【0072】肥満細胞症の臨床上の疑いは、特に皮膚および骨髄の組織学的試験により確認されなければならない。トルイジンブルーなどの染色を用い、肥満細胞の異染顆粒を染色することにより肥満細胞を同定することができる。同じくクロロアセテート-エステラーゼで染色を完了することができる。加えて、トリプターゼの免疫細胞化学は細胞浸潤の性質を確認するために有用である。最後に、この診断は骨髄吸引液中のMCの免疫表現型タイピングの使用により補助することができる。実際正常な肥満細胞に加え肥満細胞症関連肥満細胞は、強力にCD117抗原を発現し(Arberら、Hum Pathol.、29:498-504(1998);Escribanoら、Cytometry、30:98-102(1997))、CD2、CD25、およびCD35のような、正常MCにおいては認められないいくつかの抗原は、新生物性肥満細胞により異常に発現され得る(Escribanoら、Blood、91:2731-6(1998);Ormerodら、British Journal of Dermatology、122:737-44(1990))。加えて、最近の知見は、CD69活性化抗原は正常肥満細胞と比べ、全身性肥満細胞症患者由来のMC上において過剰発現されることを示している(Diaz-Agustin ら、Br. J. Haematol.、106:400-5(1999))。【0073】肥満細胞メディエーターの生化学的決定は、肥満細胞症診断も補助することができる:血中および尿中のヒスタミンレベル、尿中のプロスタグランジンD2、およびヒスタミンの代謝産物はほとんどのSM症例において上昇し、更に血中のトリプターゼレベルも上昇する(HoganおよびSchwartz、Methods、13:43-52(1997);Van Gyselら、J Am Acad Dermatol.、35:556-8(1996);Morrowら、J Invest Dermatol.、104:937-40(1995);Maroneら、Chem Immunol.、62:1-21(1995))。しかし、これらの試験により、若干の偽陽性(アレルギー)または偽陰性(メディエーター放出を伴わない肥満細胞症)が存在することがある。PCRを基にした標準の分子生物学的技術は、所定の患者において活性化する変異を正確に決定するためにも企図されるべきである。このような変異分析に特異的であるようにプローブおよびプライマーをデザインする事ができ、それらは配列番号:1の断片およびそれらの相補的配列に由来する(下記表2参照)。【0074】(表2)単離された肥満細胞症を伴う患者において記載された主なc-kit変異UP:色素性じんま疹、SM:全身性肥満細胞症、CM:型について正確には説明されていない皮膚肥満細胞症、Sol M:単発性肥満細胞腫、CMd:びまん性皮膚肥満細胞症;Adult sp:成人散発性、Adult fam:成人家族性、nt:変異の活性は試験されず【0075】結果的に更に別の態様において、本発明に従う治療法は、所定の個体において肥満細胞症の型を診断する工程、および適当なc-kit阻害剤を適当な形で投与する工程を含む。【0076】イヌの肥満細胞腫に関する限り、自然発生的肥満細胞腫瘍(MCT)がイヌにおける最も一般的な悪性新生物であり、これは全イヌ腫瘍の7%〜21%を示し、これはヒトにおいて認められる発症率よりもはるかに高い。これらの腫瘍は攻撃的様式で挙動することが多く、局所的にリンパ節、肝臓、脾臓、および骨髄に転移する。リガンド結合非存在下でのチロシンリン酸化につながるc-kitのキナーゼドメインの点変異は、様々な形の肥満細胞症のヒト患者の一部において同定されているが、最近、イヌMCT由来のc-kitは、エキソン11および12に関連する縦列重複からなる新規変異を有することが示された(Valent、1996)。これは、イヌの肥満細胞腫細胞株において検出されたこのような重複が、c-kitタンパク質の構成的リン酸化に関連していることも示している。本発明者らは、本発明に関連して、これらの変異はイヌMCTの発症または進行に寄与し得るということ、およびこのような変異を特異的に阻止することを目的とする化合物は、非毒性である場合にMCTの治療において有用であることを発見した。従って、チロシンキナーゼ阻害剤、およびより詳細には前述のような非毒性のc-kit阻害剤は、イヌにおける本疾患治療のための優れた候補化合物である。【0077】II、III、およびIV型肥満細胞症の治療に関して、経口、静脈内、および筋肉内投与経路が好ましい。【0078】更に別の態様において、本発明は、チロシンキナーゼ阻害剤、より詳細に述べると活性化されたc-kit阻害剤に加え、外用塗布のための、先に定義した非毒性で強力かつ選択的なc-kit阻害剤を含有する組成物に関する。このような組成物は、ヒトの肥満細胞症、特に色素性じんま疹、びまん性皮膚肥満細胞症、単発性肥満細胞腫、水疱性、紅斑性、および毛細血管拡張性の肥満細胞症を含む、皮膚肥満細胞症に関連した皮膚障害の治療に適用される。【0079】本発明の組成物は、外用塗布に通常使用される全ての形で、特にゲル剤、貼付剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、水性懸濁液、水性酒精剤もしくは油性液剤、またはローションもしくは血清型の分散剤、または無水もしくは親油性ゲル剤、または水相中の脂肪相もしくはその逆の分散により得られたミルク型の液体もしくは半固形の粘度の乳剤、またはクリームもしくはゲル型の軟質の半固形粘度の懸濁剤もしくは乳剤、あるいはマイクロエマルション、マイクロカプセル、微粒子、またはイオン性および/もしくは非イオン性型の小胞分散剤の形で存在することができる。これらの組成物は、標準的方法に従い調製される。【0080】本発明の組成物は、皮膚科および化粧品において通常使用されるいずれかの成分を含有する。これは、親水性または親油性ゲル化剤、親水性または親油性活性物質、保存剤、皮膚軟化剤、増粘性ポリマー、保湿剤、界面活性剤、保存剤、酸化防止剤、溶媒、ならびに充填剤、酸化防止剤、溶媒、香料、充填剤、スクリーニング剤、殺菌剤、消臭剤、および着色物質から選択された少なくとも1種の成分を含有することができる。【0081】本発明において使用することができる油分として、鉱油(流動パラフィン)、植物油(シアバターの液体画分、ヒマワリ油)、動物油、合成油、シリコーン油(シクロメチコーン)、およびフッ素化された油を意味することができる。脂肪族アルコール、脂肪酸(ステアリン酸)、およびワックス(パラフィン、カルナバ、蜜蝋)も、脂肪物質として使用することができる。【0082】本発明において使用することができる乳化剤としては、ステアリン酸グリセロール、ポリソルベート60、およびPEG-6/PEG-32/ステアリン酸グリコール混合物が企図されている。親水性ゲル化剤としては、カルボキシビニルポリマー(カルボマー)、アクリル系コポリマー、例えばアクリレート/アルキルアクリレートコポリマー、ポリアクリルアミド、多糖類、例えばヒドロキシプロピルセルロース、クレイ、および天然ゴムを挙げることができ、ならびに親油性ゲル化剤としては、改質クレイ、例えばベントン、脂肪酸の金属塩、例えばステアリン酸アルミニウムおよび疎水性シリカ、またはエチルセルロースおよびポリエチレンを挙げることができる。【0083】親水性活性物質としては、タンパク質またはタンパク質の加水分解産物、アミノ酸、ポリオール、尿素、アラントイン、糖質および糖誘導体、ビタミン、デンプンおよび植物抽出物、特にアロエ抽出物を使用することができる。【0084】親油性活性物質としては、レチノール(ビタミンA)およびその誘導体、トコフェロール(ビタミンE)およびその誘導体、必須脂肪酸、セラミド、および精油を使用することができる。これらの物質は、使用時に余分の湿潤化または皮膚軟化の特徴が追加される。【0085】加えて、これらの成分およびチロシンキナーゼ阻害剤のより深部への浸透を提供するために、界面活性剤をこの組成物中に含有することができる。【0086】企図された成分の中で、本発明は、例えば鉱油、水、エタノール、トリアセチン、グリセリン、およびプロピレングリコールからなる群より選択される浸透増強剤;例えばポリイソブチレン、ポリ酢酸ビニル、およびポリビニルアルコールからなる群より選択される粘着剤、ならびに増粘剤を包含している。【0087】薬剤の外用吸収を増大する化学的方法は当技術分野において周知である。例えば、浸透増強特性を持つ化合物は、ラウリル硫酸ナトリウム(Dugard, P.H.およびSheuplein, R.J.、「Effects of Ionic Surfactants on the Permeability of Human Epidermis: An Electrometric Study」、J.Ivest. Dermatol.、60:263-69(1973))、ラウリルアミン酸化物(Johnsonら、米国特許第4,411,893号)、アゾン(Rajadhyaksha、米国特許第4,405,616号および第3,989,816号)、ならびにデシルメチルスルホキシド(Sekura, D. L.およびScala, J.、「The Percutaneous Absorption of Alkylmethyl Sulfides」、Pharmacology of the Skin, Advances In Biolocy of Skin、(Appleton-Century Craft)、12:257-69(1972))を含む。両性分子の頭部の基(head group)の極性の増加はそれらの浸透増強特性を増大するが、それらの皮膚刺激特性の増加が犠牲になっていることは認められている(Cooper, E.R.およびBerner, B.、「Interaction of Surfactants with Epidermal Tissues: Physiochemical Aspects」、Surfactant Science Series、16巻、Reiger, M. M.編集(Marcel Dekker社)、195-210頁、1987年)。【0088】化学増強剤の第二の種類は、一般に補助溶剤と称されている。これらの物質は外用で比較的容易に吸収され、様々な機序により一部の薬剤の浸透増強を実現する。エタノール(Galeら、米国特許第4,615,699号、ならびにCampbellら、米国特許第4,460,372号および第4,379,454号)、ジメチルスルホキシド(米国特許第3,740,420号および第3,743,727号、ならびに米国特許第4,575,515号)、およびグリセリン誘導体(米国特許第4,322,433号)は、様々な化合物の吸収を増強する能力を示す化合物のほんの数例である。【0089】本発明は、IL-3の存在下で培養したIL-3依存性細胞の死滅を促進することができないチロシンキナーゼ阻害剤、好ましくは先に定義されたc-kit阻害剤、ならびに2-クロロ-2'-デスオキシアデノシンおよびそれらの類似体から選択された化合物をそのような治療が必要な哺乳類へ投与することを含む、肥満細胞性白血病を含むIV型肥満細胞症を治療する方法にも関する。これに関して、本発明は肥満細胞性白血病を含むIV型肥満細胞症を治療するために、個別に、逐次、または同時に使用する少なくとも1種のチロシンキナーゼ阻害剤、好ましくは先に定義したc-kit阻害剤、ならびに2-クロロ-2'-デスオキシアデノシンおよびそれらの類似体から選択される化合物を含有する製品も企図している。【0090】2-クロロ-2'-デスオキシアデノシン(2-CDA)、クラドリビン、Merck Index(第12版)#2397は、下記式を有する:【0091】全身性肥満細胞症、特にIV型肥満細胞症に関して、本発明はIL-3の存在下で培養したIL-3依存性細胞の死滅を促進することができないチロシンキナーゼ阻害剤、好ましくはc-kit阻害剤、およびIFNαをそのような治療が必要なヒトへ投与することを含む、前述の方法にも関する。これに関して本発明は、全身性肥満細胞症、特にIII型肥満細胞症を治療するために、個別に、逐次、または同時に使用するための、少なくとも1種のチロシンキナーゼ阻害剤、好ましくは先に定義したc-kit阻害剤、ならびにIFNαを含有する製品も企図している。【0092】本発明の有用性は下記の詳細な説明からさらに保証される。【0093】実施例1:肥満細胞症の分子遺伝学的病変患者所見MCの分化、生存、および増殖はサイトカインによって左右され、最も重要なもののひとつはSCFである(Costaら、1996)。SCF受容体は、III型受容体型チロシンキナーゼサブファミリーに属している癌原遺伝子c-kitによりコードされたc-kitである(Flanaganら、Cell、64:1025-35(1991))。最新データの開発により、肥満細胞症において肥満細胞の異常な増殖に関連しているであろうふたつの主要な要因は、SCFおよびその特異的受容体c-kitであるように思われる。実際、数名の執筆者が本疾患の病理進行におけるSCFおよびc-kitの役割を調べている。加えて、肥満細胞症が腫瘍性病理または反応性障害のいずれであるかを正確に決定することは困難である(Longleyら、Ann Med.、26:115-6(1994))。肥満細胞症の過形成仮説はいくつかの皮膚肥満細胞疾患、すなわち、大半は良性肥満細胞症の症例において、Longleyらの論文により関連づけられている(N. Engl J Med.、328:1302-7(1993))。彼らは、不活性の皮膚肥満細胞症患者の皮膚において可溶性型SCFのレベル上昇を発見している。これらの症例において、SCF遺伝子の変異は同定されず、このことはSCFの異常な代謝を示唆している。しかしこの機構は余り良く立証されていない。【0094】対照的に、肥満細胞症の新生物の機構に関する多くの研究が行われており、肥満細胞の癌遺伝子悪性転換を誘導することができる腫瘍性タンパク質へ転換される、c-kitの遺伝的異常(変異、欠失)が研究されている。これらは齧歯類またはヒト白血病性肥満細胞株において先に発見されているため、このような異常の存在が示唆されていた。実際、c-kitのSCF非依存性活性化に、およびおそらくは肥満細胞の新生物性増殖に寄与している様々な体細胞点変異が、齧歯類およびヒト細胞株において説明されている(下記参照)。ほとんどの場合、これらの変異はc-kitの触媒ドメインにおいて認められ、活性化されている。【0095】ヒト肥満細胞症において、c-kit変異が肥満細胞疾患の異なる臨床形に関連しているかどうかを解明するために多くの研究が行われている。実際、c-kit変異は、肥満細胞症の様々な形(皮膚肥満細胞症、全身性不活性のまたは全身性急速進行性肥満細胞症)でインビボにおいて説明されている。認められた変異の中で、最も一般的であるのは、コドン816でのAspからValへの活性化変異である。例えばこの変異は、急速進行性全身性肥満細胞症患者(Longleyら、Nat Genet.、12:312-4(1996))、成人の不活性皮膚肥満細胞症患者(Buttnerら、J. Invest Dermatol.、111:1227-31(1998))または小児の不活性皮膚肥満細胞症患者(Nagataら、Int Arch Allergy Immunol.、113:184-6(1997))からの肥満細胞において同定された。対照的に、ヒト肥満細胞症においてコドン560でのValからGlyへの変異については、ひとつのみの報告が記載されている。実際Buttnerらは、この変異を成人肥満細胞症から得た4個の病変性皮膚試料中2個において発見し(Buttnerら、1998);この後者の変異は、患者において行われたいかなる他の試験においても証明されてはいないので、その真実性については依然確認の余地がある。それにもかかわらず、この変異の役割は、傍細胞膜ドメインにc-kit変異を有する腸腫瘍(GIST)のいくつかの症例において再現されている(Hirotaら、Science、279:577-80(1998))。加えて、c-kit遺伝子における他の点変異は、Pignonらにより報告された(Pignonら、Hematol Cell Ther.、39:114-6(1997);Pignonら、Br J Haematol.、96:374-6(1997))、チロシンキナーゼドメインのコドン820において、急速進行性肥満細胞症患者のMCにおけるAspのGlyとの置換を生じるもの、ならびにLongleyらにより報告された(Longleyら、Proc Natl Acad Sci USA.、96:1609-1614(1999))、散発性全身性肥満細胞症または皮膚肥満細胞症の小児において、コドン816において、チロシンまたはフェニルアラニンのアスパラギン酸との置換を生じるもの、同じく散発性不活性の色素性じんま疹の小児において、コドン839においてリシンのグルタミン酸との置換(c-kitE839K)を生じるものである。更に、Longleyら(Proc Natl Acad Sci USA.、96:1609-1614(1999))は、先にc-kitD816Vについて示されたように、変異c-kitD816Fおよびc-kitD8l6Yが、c-kitの自発的リン酸化を生じたのに対し、c-kitE839Kは、外因性SCFへの曝露後に自己リン酸化またはリン酸化はされず、816位で変異されたc-kitの自己リン酸化を阻害さえしたことを示している。これらのデータから、839位の変異は、「不活性化」と称される。【0096】興味深いことに、ごく最近の報告は肥満細胞症患者から得られた末梢血および骨髄の両方中の、骨髄性単球細胞に加えTおよびBリンパ球の分化マーカーを生じる細胞試験により、造血細胞系の間でのAsp816Val変異の分布を分析している(Akinら、Exp Hematol.、28:140-7(2000))。この研究において、変異は試験した患者7名中7名の骨髄ならびに色素性じんま疹および不活性疾患の成人患者11名中11名の末梢血中の少なくとも1種の細胞株において、RT-PCRにより検出可能であった。この変異は、B細胞および骨髄細胞において最も頻繁に同定された。フローサイトメトリー分析は、変異したc-kitを発現している分化した細胞は表面c-kitについて陰性であることを明らかにした。これらの結果は、c-kit Asp816Val変異はMCに加え骨髄性単球細胞、T細胞、およびB細胞により保持されるので初期の前駆細胞において生じるが、成熟肥満細胞においては生じないという結論に一致している。【0097】加えてc-kit遺伝子のコドン816における同じ活性化点変異が、独立した肥満細胞症の患者のみではなく、骨髄増殖性もしくは骨髄異形成性症候群、または急性白血病などの血液障害を伴う肥満細胞症においても説明されている(BoissanおよびArock、Leukoc Biol.、67:135-48(2000))。【0098】先に説明された変異の活性化または不活性化とは対照的に、いくつかの点変異はサイレント変異であることができ、おそらく重要ではないと考えられている。例えば、Nagataらの論文(Proc Natl Acad Sci USA.、92:10560-4(1995))は、単発性肥満細胞腫患者において単独の塩基変化を観察し(コドン862でのCTGからCTCへ);コドンCTGおよびCTCの両方ともロイシンをコードしていた。このサイレント変異はおそらく本疾患の出現には関係しておらず、このことはこの単発性肥満細胞症がc-kit変異以外の異常を介して生じることを示唆している。【0099】最後に、文献において報告された数例の家族症例において観察された状況は、散発性疾患のそれとは異なるように見える。実際に、Langleyらの論文(Proc Natl Acad Sci USA.、96:1609-1614(1999))は、25名の肥満細胞症患者の系において、家族性皮膚肥満細胞症家系の一員である3名の患者を報告しており;小児1名および成人2名であった。これら3名の患者においては、c-kit変異は認められず、このことはc-kit変異は家族性肥満細胞症の病態生理には関連しないことを示唆している。【0100】結論として、c-kit遺伝子の構造に関して、ヒト肥満細胞症は3群に分けることができる:活性化変異を伴う肥満細胞症である第一群は、おそらく成人SM症例のほとんどを表わし、不活性化変異を伴う肥満細胞症の第二群は、特に色素性じんま疹の小児が遭遇し、最後にいずれのc-kit変異も伴わない肥満細胞症の第三群は、家族性肥満細胞症の稀な症例を対象としている。これらの様々な知見をまとめ、下記表3に示している。【0101】(表3)他の血液障害を随伴する肥満細胞症患者、または肥満細胞系に関連しない血液障害を伴う患者において認められたc-kit構造の異常SM:全身性肥満細胞症、PBMC:末梢血単核細胞、BMC:骨髄細胞【0102】インビトロデータ造血細胞および肥満細胞の増殖および活性化におけるc-kit変異の結果に関する現在の知識のほとんどは、1種または他の変異を生じる様々な齧歯類およびヒトの細胞株を用いて得られている。これらのインビトロ試験の第一の目標は、c-kit変異はそれら自身が患者において肥満細胞症時に認められたMCの異常な増殖を誘導するのに十分であることを明らかにすることであった。本明細書に示されたデータは基本的に細胞株および動物モデルを用いて得られたので、現時点でこの重要な疑問が依然部分的に解明されていないことを示している。結論として、これらはヒトにおいて遭遇する正確な状況を反映していない場合がある。【0103】現段階では、4種の腫瘍性肥満細胞株を使用し、c-kit遺伝子における変異の結果について調べた。これらの肥満細胞株は以下である:- P815およびFMA3 ふたつのマウス肥満細胞腫細胞株であり、変異は、各々、ホスホトランスフェラーゼドメインにおけるコドン814でのTyrのAspとの置換(Tsujimuraら、Blood、83:2619-26(1994))、および傍細胞膜ドメイン内のコドン573から579における7個のアミノ酸の欠失である(Tsujimuraら、Blood、87:273-83(1996))。- RBL-2H3 ラットの肥満細胞性白血病細胞株であり、変異は、ホスホトランスフェラーゼドメイン内のコドン817におけるTyrのAspとの置換を生じる(Tsujimuraら、Int. Arch Allergy Immunol、106:377-85(1995))。- HMC1 肥満細胞性白血病患者からの、ヒト起源の唯一の肥満細胞株であり、以下のふたつの変異が同定されている:ひとつはc-kitの傍細胞膜ドメイン内のコドン560におけるValからGlyへの置換を生じ、および他方はチロシンキナーゼドメインのコドン816でのAspからValへの置換を誘導する(Furitsuら、Journal of Clinical Investigation、92:1736-44(1993))。【0104】c-kitの癌遺伝子潜在性を、これらの細胞株モデル(P-815、FMA3、RBL-2H3、およびHMC1)において主に試験した。これら4種の肥満細胞腫瘍において、c-kitはチロシン上で構成的にリン酸化および活性化され、SCF非存在下で細胞増殖を誘導することがわかった。それにもかかわらず、これらの細胞株において認められた様々な遺伝的異常は同じ生物学的作用を有さない。Furitsuらによると、c-kit形質転換活性は、HMC1において560位での変異の方が816位の変異よりも弱い(Furitsuら、1993)。更にFMA3の7個のアミノ酸の欠失を除き、c-kitをコードしている遺伝子における体細胞点変異はほとんどの場合において1個のアミノ酸の変化を生じるが、これはc-kit調節不能を生じるのに十分である。更に、アミノ酸置換は各種において同等のコドンで生じる。【0105】c-kit触媒ドメインのコドン814(ヒトc-kitのコドン816と同等)における点変異の役割を理解する上で、Piaoらは、この変異を、内因性野生型c-kit(WT)を発現しないIL-3依存性肥満細胞株であるIC2細胞へトランスフェクションした後の、この変異の生物学的作用を研究した(Blood、87:3117-23(1996))。彼らは、以下の3点の主なデータを得た:- この変異体は、SCF非存在下、チロシン残基上でリン酸化された。- この変異体を発現するIC2細胞は、あらゆる増殖因子の非存在下で4週間よりも長く増殖し、インビトロにおいてSCF非依存性コロニーを形成した。最後に- この変異体c-kitを発現しているIC2細胞の同系DBA/2マウスへの注射は、注射した全マウスにおいて肝肥満細胞腫の発生を誘導した。これらの観察は、814位におけるこの変異体の発現はIC2細胞に腫瘍形成能を付与するのに十分であることを明確に明らかにした。【0106】c-kit変異に関連した様々な分子機能障害が説明されている。実際、これらの変異は、二量体化、シグナル伝達、酵素発現、およびインターナリゼーションに関する、c-kit代謝の様々な局面を変更することが明らかになっている。これらの変化は、c-kitの発癌性活性化を説明するであろう。【0107】Tsujimuraら(Tsujimuraら、Blood、87:273-83(1996);Tsujimuraら、Pathol Int.、46:933-8(1996))およびKitayamaら(Kitayamaら、Blood、85:790-8(1995))は、様々なc-kit受容体、野生型および変異した変異体の交差連結分析を行い、構成的に活性化されたc-kitがSCF非存在下で受容体二量体化につながるかどうかを決定した。これに関して、彼らは各々4種のc-kitを試験した:c-kitWT(野生型)、c-kitd(573-579)(コドン573から579の欠失を伴うc-kit)、c-kitV559G(コドン559でValからGly)、c-kitD814V(コドン814でAspからValへ)。これらの型はBa/F3細胞へ導入された。彼らは、傍細胞膜ドメインに生じるc-kitd(573-579)のような欠失の活性化、またはc-kitV559Gのような活性化変異はSCF活性化の非存在下でc-kitの構成的二量体化を誘導することができるが、チロシンキナーゼドメイン内のc-kitD814Vのような活性化変異は二量体化を伴わない構成的活性化を引き起こすことを発見した。これらの執筆者によると、最初の場合、c-kitのコンホメーション変化はSCF非存在下でその二量体化を誘導する。しかしながら、第二の場合、触媒ドメインにおける点変異はc-kit二量体化を伴わない自己リン酸化によりシグナル伝達を刺激することの引き金となる可能性がある。しかしより最近になって、Tsujimuraら(Blood、93:1319-29(1999))は、細胞外ドメインを欠いているc-kitD814Vが、完全長の野生型受容体またはドミナントネガティブ受容体であるc-kitW42と同時免疫沈降したことを示すデータを示した。これらの執筆者らは、c-kitD814Vの自己会合は、新たな受容体自己会合ドメインを作出することにより変異自身から生じることを提唱している。【0108】加えて、Piao, Xら(Proc Natl Acad Sci USA.、93: 14665-9(1996))は、野生型c-kitと比べ、マウスの肥満細胞株IC2におけるc-kitD814Yを介したシグナル伝達の変更を報告した。実際c-kitD814Yを発現しているIC2細胞において、彼らは新規基質である130KDaタンパク質(p130)のリン酸化のみではなく、システムSCF/c-kitWTにより誘導されたシグナル伝達の負のレギュレーターを構成しているチロシンリン酸化酵素の活性を持つ65KDaのリン酸化タンパク質であるSHP-1のユビキチン媒介したタンパク質分解も検出した。c-kitのふたつの型の間で認められた差異は、SCF刺激されたc-kitWTにより伝達されたシグナルとc-kitD814Yにより伝達されたシグナルは同等ではないことを示唆している。正常なまたは変異されたc-kitにより動員された細胞内メッセンジャーの正確な分析は、特に異常なシグナル伝達経路の阻害を目的とする新規代替治療法の発見につながる可能性がある。【0109】最後に、c-kitのいくつかの遺伝子修飾はインターナリゼーションシグナルを変更し、結果としてc-kitの延長された活性化を伴う。実際、c-kitd(573-579)は、SCF非存在下ではインターナリゼーションされないもしくはほとんどされないのに対し、活性化したc-kitD814V受容体は、例えSCF非存在下であっても連続して分解される(Moriyamaら、J Biol Chem.、271:3347-50(1996))。 IL-3の存在下で培養したIL-3依存性細胞の死滅を促進することができないチロシンキナーゼ阻害剤を、そのような治療を必要とする哺乳類へ投与する段階を含む、肥満細胞症を治療する方法。 チロシンキナーゼ阻害剤が、非毒性で選択的かつ強力なc-kit阻害剤である、請求項1記載の方法。 阻害剤が、インドリノン、ピリミジン誘導体、ピロロピリミジン誘導体、キナゾリン誘導体、キノキサリン誘導体、ピラゾール誘導体、ビス単環式、二環式、またはヘテロ環式アリール化合物、ビニレン-アザインドール誘導体およびピリジル-キノロン誘導体、スチリル化合物、スチリル置換されたピリジル化合物、セレオインドール、セレニド、三環式ポリヒドロキシル化合物およびベンジルホスホン酸化合物からなる群より選択される、請求項2記載の方法。 以下からなる群より選択される、IL-3の存在下で培養したIL-3依存性細胞の死滅を促進することができない非毒性で強力かつ選択的なc-kit阻害剤を、そのような治療を必要とする哺乳類へ投与することを含む、肥満細胞症を治療する方法:- ピリミジン誘導体、より詳細にはN-フェニル-2-ピリミジン-アミン誘導体、- インドリノン誘導体、より詳細にはピロール置換インドリノン、- 単環式、二環式アリール、およびヘテロアリール化合物、ならびに- キナゾリン誘導体。 阻害剤が、構成的に活性化された変異体c-kitおよび/またはSCF活性化c-kitから選択された活性化c-kitの阻害剤である、請求項4記載の方法。 活性化された変異体c-kitが、Y823に隣接した変異、より詳細に述べるとc-kit自己リン酸化に関連した配列番号:1のアミノ酸800と850との間の変異、特にD816V、D816Y、D816F、およびD820G変異体、ならびにc-kitの傍細胞膜ドメインにおける欠失、好ましくはコドン573と579の間の欠失から選択された、少なくとも1種の変異を有する、請求項5記載の方法。 以下のスクリーニング法により入手可能な、活性化されたc-kitの選択的で強力かつ非毒性の阻害剤である化合物を、そのような治療を必要とする哺乳類へ投与することを含む、肥満細胞症を治療する方法:a)(i)活性化されたc-kit、および(ii)少なくとも1種の被験化合物を、成分(i)および(ii)に複合体を形成させる条件下で、接触させる工程;b)活性化されたc-kitを阻害する化合物を選択する工程;c)IL-3の存在下で培養したIL-3依存性細胞の死滅を促進することができないような、工程b)において同定された化合物のサブセットを試験および選択する工程。 スクリーニング法が、SCF活性化野生型c-kitを阻害することも可能であるような、変異体である活性化されたc-kitの阻害剤である工程b)において同定された化合物のサブセットを試験および選択することからなる工程を含む、請求項7記載の方法。 活性化されたc-kitが、SCF活性化野生型c-kitである、請求項7記載の方法。 推定阻害剤が、工程a)において、10μMを上回る濃度で試験される、請求項7〜9のいずれか1項記載の方法。 IL-3が、IL-3依存性細胞の培養培地中に、0.5〜10ng/ml、好ましくは1〜5ng/mlの濃度で存在する、請求項7〜10のいずれか1項記載の方法。 成分(ii)が活性化されたc-kitを阻害する程度が、インビトロまたはインビボにおいて測定することができる、請求項7〜11のいずれか1項記載の方法。 スクリーニング法が、1μMを下回る濃度で野生型c-kitを阻害することが可能である化合物のインビトロまたはインビボにおける試験および選択からなる工程をさらに含む、請求項7〜12のいずれか1項記載の方法。 試験が、肥満細胞、トランスフェクションされた肥満細胞、BaF3、およびIC-2からなる群より選択される細胞株を用いて行われる、請求項13記載の方法。 試験が、c-kitリン酸化の量を決定することを含む、請求項13記載の方法。 スクリーニングが以下の工程を含む、請求項7〜12のいずれか1項記載の肥満細胞症の治療法:a)変異体が、永続的に活性化されたc-kitである変異体c-kit(例えば、トランスホスホリラーゼドメインにおいて)を発現している細胞を用いて、複数の被験化合物によって増殖アッセイ法を行い、細胞死の程度を測定することにより、各々IC50<10μMを有する、活性化されたc-kitを標的とする候補化合物のサブセットを同定する工程;b)IL-3の存在下で培養したIL-3依存性細胞である、野生型c-kitを発現している細胞を用いて、工程(a)で同定された候補化合物のサブセットによって増殖アッセイ法を行い、c-kitを特異的に標的とする候補化合物のサブセットを同定する工程;c)c-kitを発現している細胞を用いて、工程b)で同定された化合物のサブセットによって増殖アッセイ法を行う工程、ならびに細胞死の程度を測定することにより、各々IC50<10μM、好ましくはIC50<1μMを有する、野生型c-kitを標的とする候補化合物のサブセットを選択する工程。 ヒトにおけるI、II、III、およびIV型肥満細胞症、ならびにI、II、III、およびIV型肥満細胞症に関連した症状を治療するための、請求項1〜16のいずれか1項記載の方法。 ヒトにおける色素性じんま疹、びまん性皮膚肥満細胞症、単発性肥満細胞腫、水疱性、紅斑性、および毛細血管拡張性の肥満細胞症を治療するための、請求項17記載の方法。 阻害剤が局所投与される、請求項18記載の方法。 阻害剤を含有する皮膚科学的組成物が、皮膚に塗布される、請求項19記載の方法。 骨髄増殖性または骨髄異形成性症候群、急性白血病、肥満細胞症に関連した骨髄増殖性障害、および肥満細胞性白血病のような、関連した血液障害を伴う肥満細胞症を治療するための、請求項17記載の方法。 イヌの肥満細胞腫を治療するための、請求項1〜16のいずれか1項記載の方法。 チロシンキナーゼ阻害剤、より詳細に述べると非毒性で強力かつ選択的なc-kit阻害剤を含有する、局所適用の為の組成物。 局所適用に適している、請求項23記載の組成物。 ゲル剤、ペースト剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、水性懸濁液剤、水性酒精液剤、もしくは油性液剤、またはローションもしくは血清型の分散剤、または無水もしくは親油性ゲル剤、または水相中の脂肪相もしくは脂肪相中の水相の分散により得られたミルク型の液体もしくは半固形の粘度の乳剤、またはクリームもしくはゲル型の軟質の半固形の粘度の懸濁剤もしくは乳剤、あるいはマイクロエマルション、マイクロカプセル、微粒子、またはイオン性および/もしくは非イオン性型の小胞分散体の形である、請求項24記載の組成物。 親水性または親油性ゲル化剤、親水性または親油性活性物質、皮膚軟化剤、増粘性ポリマー、保湿剤、界面活性剤、保存剤、酸化防止剤、溶媒、および充填剤から選択された少なくとも1種の成分を含有する、請求項25記載の組成物。 肥満細胞症、特に、色素性じんま疹、びまん性皮膚肥満細胞症、単発性肥満細胞腫、ならびに水疱性、紅斑性、および毛細血管拡張性の肥満細胞症を含む、皮膚肥満細胞症に関連したヒトの皮膚障害を治療するための、請求項23〜26のいずれか1項記載の組成物の使用。 肥満細胞性白血病を含む、IV型肥満細胞症を治療するために、IL-3の存在下で培養したIL-3依存性細胞の死滅を促進することができない少なくとも1種のチロシンキナーゼ阻害剤、好ましくはc-kit阻害剤、ならびに2-クロロ-2'-デスオキシアデノシンおよびそれらの類似体から選択された少なくとも1種の化合物を、個別、逐次、または同時使用のために含有する製品。 全身性肥満細胞症、特にIII型肥満細胞症を治療するために、IL-3の存在下で培養したIL-3依存性細胞の死滅を促進することができない少なくとも1種のチロシンキナーゼ阻害剤、好ましくはc-kit阻害剤、およびIFN-αを、個別、逐次、または同時使用のために含有する製品。 本発明は、IL-3の存在下で培養したIL-3依存性細胞の死滅を促進することができないチロシンキナーゼ阻害剤、より詳細に述べると非毒性で強力かつ選択的なc-kit阻害剤を、そのような治療を必要とするヒトへ投与する工程を含む、肥満細胞症を治療する方法に関する。本発明はまた、I型肥満細胞症を治療するための上記阻害剤を含有する局所適用の為の組成物も企図している。


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