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タイトル:公開特許公報(A)_マスティックを用いた歯周病予防・治療用組成物及び歯周病予防・治療方法
出願番号:2002244286
年次:2004
IPC分類:7,A61K35/78,A61K7/26,A61K31/704,A61K45/00,A61P1/02


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渡辺 秀司 JP 2004083443 公開特許公報(A) 20040318 2002244286 20020823 マスティックを用いた歯周病予防・治療用組成物及び歯周病予防・治療方法 渡辺 秀司 500192078 石戸 久子 100097250 ▲橋▼場 満枝 100101111 赤澤 日出夫 100101856 山口 栄一 100103573 渡辺 秀司 7 A61K35/78 A61K7/26 A61K31/704 A61K45/00 A61P1/02 JP A61K35/78 C A61K35/78 E A61K35/78 J A61K35/78 K A61K35/78 Q A61K35/78 T A61K7/26 A61K31/704 A61K45/00 A61P1/02 14 OL 17 4C083 4C084 4C086 4C088 4C083AA111 4C083AA112 4C083CC41 4C083EE33 4C084AA17 4C084MA02 4C084MA57 4C084NA10 4C084NA14 4C084ZA671 4C084ZB112 4C084ZC751 4C086AA01 4C086AA02 4C086EA10 4C086MA02 4C086MA03 4C086MA04 4C086MA07 4C086MA57 4C086NA10 4C086NA14 4C086ZA67 4C086ZB11 4C086ZC75 4C088AB12 4C088AB21 4C088AB26 4C088AB38 4C088AB43 4C088AB60 4C088AB62 4C088AB83 4C088BA08 4C088CA03 4C088MA02 4C088MA07 4C088MA08 4C088MA57 4C088NA10 4C088NA14 4C088ZA67 4C088ZB11 4C088ZC75 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、歯周病の予防・治療に有効な口腔用組成物、及びこれと生薬抽出物を含む洗口含嗽剤とを組み合わせて用いることを特徴とする歯周病の予防・治療方法に関する。【0002】【従来の技術】平均寿命が延びる傾向にある昨今、特に高齢者になるに従って頻発する歯周病(以前は、歯周炎(歯槽膿漏ともいう)と歯肉炎とに分けて呼ばれていた疾患である)に対して有効な予防・治療方法を見出すことは、重要な医学的・歯学的研究課題となっている。また、齲蝕の予防についても有効な薬物や方法を見出すことも言うまでもなく医学的・歯学的に重要な課題である。【0003】いわゆる歯周病の原因菌(歯周病関連細菌)として知られている細菌には、次のようなものがある:ポルフィロモナス・ギンギヴァーリス(Porphyromonas gingivarlis)ポルフィロモナス・エンドドンタリス(Porphyromonas endodontalis)プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)フソバクテリウム・ヌクレアウム(Fusobacterium nucleaum)アクチノバシルス・アクチノマイセテム・コミタンス(Actinobacillus actinomycetem comitans)【0004】また、齲蝕の原因菌(齲蝕関連細菌)として知られている細菌には、次のようなものがある:ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)ストレプトコッカス・サンギス(Streptpcoccus sanguis)ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)アクチノミセス・ビスコスス(Actinomyces viscosus)アクチノミセス・ネスルンディイ(Actinomyces naeslundii)ラクトバシラス・カセイ(Lactobacillus casei)【0005】従来、歯周病の原因菌に対する治療方法としては、殺菌剤によるうがいが一般的であった。しかしながら、このような殺菌剤によるうがいは、口腔内に存在する全ての細菌に対して殺菌的な作用を及ぼし、一過性に細菌数の減少を引き起こす。従って、歯周病原因菌と共に、口腔内の免疫機能をつかさどる、生体にとって有益な常在菌までも殺菌してしまうことになる。【0006】生体全体の免疫機能が良好な状態のときには、殺菌剤によって減少した有益な常在菌も、比較的短時間で元の状態に回復する。しかしながら、老化や疾病などにより生体の免疫機能が低下している場合には、常在菌の増加よりも歯周病原因菌の増加の方が勝ってしまい、歯周病がさらに悪化してしまうという結果をもたらすことがある。【0007】また、歯周病の予防・治療には、ブラッシング(歯磨き)による口腔内の清掃と同時に、口腔内の免疫力の強化が非常に重要であることもよく知られている。【0008】そこで、歯周病原因菌の増殖は充分に抑制するが、有益な常在菌までは抑制しない、選択的な抗菌活性を有する歯周病予防・治療に有用な薬物の開発が望まれていた。【0009】このような状況の下、本発明者は、ビンロウジ、カンゾウ、ニクズクおよびヤクモソウのうち、少なくとも2種以上の抽出エキスを含有する口腔用組成物が、上記のような選択的抗菌活性を有することを見出した(特開平6−157259号公報;以下、第1先願という)。この口腔用組成物は、歯周病原細菌に対しても高い抗菌活性を示し、口腔内の免疫力を低下させず、歯周病によって破壊された歯周組織の回復を促進し、さらに、繊維芽細胞の増殖をも促進する作用を有する(渡辺秀司著、「歯周病は自分で防げる治せる」(マキノ出版)1999年出版)。【0010】さらに、本発明者は、上記各生薬の抽出物の、ヒト歯肉上皮細胞のDNA合成に対する効果及びヒト歯肉線維芽細胞のIL−8に及ぼす効果についても調査研究を行い、上記生薬の抽出物にDNA合成促進作用及びIL−8産生促進作用を有することを見出している(「伝統と医療」、Vol.8、No.1(2002)。【0011】しかしながら、この口腔用組成物は、歯周病原因菌のうち、悪性度の高い歯周病患者に多く見出されるアクチノバシルス・アクチノマイセテム・コムタンスに対する抗菌活性は不十分であった。【0012】本発明者は、アクチノバシルス・アクチノマイセテム・コムタンスに対して充分な抗菌活性を有し、且つ歯周組織に対して障害性を示さない薬物を探索した。その結果、マスティック(乳香)のオイル抽出エキスが、アクチノバシルス・アクチノマイセテム・コムタンスのみでなく、その他の前記歯周病原因菌及び齲蝕原因菌に対しても高い抗菌活性を示すことを見出した(特開2002−29982号;以下、第2先願という)。マスティックの歯周病原因菌、齲蝕原因菌に対する抗菌活性を明らかにしたのは本発明者が初めてである。【0013】「マスティック」とは、乳香とも呼ばれ、地中海沿岸に生育する低木である、ウルシ科のピスタチア・レンチスクス(Pistacia lentiscus)から得られる樹脂状浸出液である。マスティック樹脂の歴史は古く、古代ギリシャ時代から種々の用途に用いられてきた。例えば、チューインガムのガムベース、香料、食品添加物、つや出し剤、塗料、飲料添加物、腸皮膜剤、薬等が挙げられる。マスティック樹脂は、潰瘍の治療、血圧とコレステロールの低下、糖尿病の改善、癌の治療のために用いられ、また免疫系の反応を増加させる作用を有すると考えられている。【0014】マスティック樹脂の歯科的な利用としては、一時的な充填材として用いられている。また、歯を強くする働きがあると信じられており、マスティック樹脂の原産地では、古くからピスタチア・レンチスクス(マスティック樹脂が得られる木)から作られた爪楊枝で、歯の清掃を行っていた。【0015】米国特許第5,637,290号明細書には、キオス産天然マスティック、抽出されたマスティックオイル、及び合成マスティックオイル試薬から選択される成分(以下、まとめてマスティック成分という)と、練り歯磨き又はうがい薬のベースとを混合して得られる口腔衛生製品(練り歯磨き又はうがい薬)が開示されている。この米国特許明細書では、マスティックは白血球を集めさせる多核球(polymorph−nucleus)と化学的に反応し、その部位の組織の防御システムを増加させ、歯垢(plaque)の形成及び歯周病(gum disease)を抑制すると理解されており、マスティックの抗菌作用については開示も示唆もされていない。【0016】【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、マスティックのオイル抽出エキスをより高濃度で、且つ安定した状態で用いることができる形態とすること、さらに、より優れた歯周病の予防・治療効果が得られるマスティックのオイル抽出エキス及び生薬の使用方法を開発することを課題とした。【0017】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、市販の歯磨き剤に後から添加することができる形態の、マスティックのオイル抽出エキスを主成分とする口腔用組成物によれば、高濃度のマスティックを歯周病の状態に応じた適切な量で使用することができ、且つ長期に渡って組成物の安定な状態を保つことができる歯周病予防・治療用組成物が得られることを見出した。【0018】マスティックのオイル抽出エキスは油状物(油液)であるため、現在市販されている練り歯磨き及び洗口剤にマスティックのオイル抽出物を混合したものでは、マスティックのオイル抽出物と歯磨き剤及び洗口剤との均一な混合が難しく、そのためマスティックの含有量を高くすることには限界があり、市販のマスティック入り歯磨き剤には1質量%未満しか含まれていない。さらに、マスティックのオイル抽出物を混合した市販の歯磨き剤を長期間保存すると、マスティックを含むオイル成分が歯磨き剤から分離してくることもある。なお、マスティック含有量が1質量%未満では、歯周病の予防や治療には不十分である。【0019】また、本発明の口腔用組成物を添加した歯磨き剤でブラッシング(歯磨き)をした後、生薬の抽出物を含むうがい薬でうがいを行い、生薬の抽出物を口腔粘膜から吸収させて、口腔内の免疫機能を高め、従来より優れた歯周病の予防・治療効果が得られることを見出し、本発明に到達した。【0020】すなわち、本発明は、(1)マスティック(乳香)のオイル抽出エキス及び消炎剤を有効成分とする歯周病予防・治療用組成物;(2)市販の歯磨き剤に添加して用いることを特徴とする上記(1)に記載の歯周病予防・治療用組成物;(3)マスティックのオイル抽出エキスが、マスティックのオリーブ油抽出エキス又はヤシ油抽出エキスであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の歯周病予防・治療用組成物;【0021】(4)消炎剤が、グリチルリチン酸及びその塩類、グリチルレチン酸及びその塩類、トラネキサム酸、塩化リゾチーム、オウバクエキス、トウキ軟エキス、酢酸dl−αトコフェロール、ニコチン酸dl−αトコフェロール、イプシロアミノカプロン酸、アズレンスルホン酸塩、ジヒドロコレステロール、エピジヒドロコレステリンからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の歯周病予防・治療用組成物;(5)消炎剤が、グリチルリチン酸及びその塩類からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする上記(4)に記載の歯周病予防・治療用組成物;【0022】(6)グリチルリチン酸の塩類が、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、グリチルリチン酸二アンモニウム、グリチルリチン酸二ナトリウム及びグリチルリチン酸三ナトリウムからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする上記(5)に記載の歯周病予防・治療用組成物;(7)消炎剤が、グリチルリチン酸二カリウムであることを特徴とする上記(6)に記載の歯周病予防・治療用組成物;【0023】(8)グリチルリチン酸二カリウムが、これを含有するカンゾウ(甘草)の抽出物由来であることを特徴とする上記(7)に記載の歯周病予防・治療用組成物;(9)シコン(紫根)、ニクズク、ビンロウジ、ヨモギ、オオバク、ボタンピ、オウゴン、ダイオウ(大黄)、ノギクカ及びヤクモソウからなる群から選択される少なくとも1種の生薬抽出物をさらに含むことを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載の歯周病予防・治療用組成物;【0024】(10)マスティックのオイル抽出物が、1質量%以上含まれていることを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれかに記載の歯周病予防・治療用組成物;(11)マスティックのオイル抽出物が、3〜10質量%含まれていることを特徴とする上記(10)に記載の歯周病予防・治療用組成物;【0025】(12)上記(1)〜(11)のいずれかに記載の歯周病予防・治療用組成物を、市販の歯磨き剤に添加したものでブラッシングを行った後、カンゾウ(甘草)、ビンロウジ(檳榔子)、ニクズク(肉蒄)及びヤクモソウ(益母草)からなる群から選択される1種以上の生薬抽出物を含む洗口含嗽剤でうがいを行うことを特徴とする歯周病の予防・治療方法;(13)シコン(紫根)、ニクズク、ビンロウジ、ヨモギ、オオバク、ボタンピ、オウゴン、ダイオウ(大黄)、ノギクカ及びヤクモソウからなる群から選択される少なくとも1種の生薬抽出物をさらに含む洗口含嗽剤を用いることを特徴とする上記(12)に記載の歯周病の予防・治療方法;及び【0026】(14)上記(1)〜(11)のいずれかに記載の歯周病予防・治療用組成物と、カンゾウ(甘草)、ビンロウジ(檳榔子)、ニクズク(肉蒄)及びヤクモソウ(益母草)からなる群から選択される1種以上の抽出物を含む洗口含嗽剤とを含む歯周病予防・治療用キットを提供するものである。【0027】【発明の実施の形態】以下、本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の記載に何ら限定されるものではない。本発明の歯周病予防・治療用組成物(以下、本発明の組成物という)は、マスティック(乳香)のオイル抽出エキス及び消炎剤を必須有効成分とし、用時に市販の歯磨き剤に添加して用いることを特徴とする。【0028】前記米国特許第5,637,290号明細書に記載の、練り歯磨きにマスティックを配合した口腔衛生製品(練り歯磨き又は歯磨きジェル)が、米国や日本国内において販売されている。この製品は、予めマスティック成分が歯磨き剤に混合されているものである。【0029】これに対し、本発明の組成物は、単独で用いることもできるが、通常は、単独で用いるのではなく、ブラッシング時に市販の歯磨き剤に加えるものである。なお、本発明の組成物と歯磨き剤とを使用前に混合する必要はない。具体的には、例えば、歯ブラシ上に歯磨き剤を絞り出し、この歯磨き剤の上に本発明の組成物の適量を載せて、通常のブラッシングを行う。【0030】なお、歯周病の予防・治療のみならず齲蝕を予防するためにも、歯磨き剤による歯磨き(ブラッシング)は、口腔内の清浄を保ち、歯垢を除去する上で必要であるだけでなく、歯肉の血行を促すためにも欠かすことのできないものである。後述する理由から、本発明の組成物には、口腔内の清掃に役立つ、研磨剤、発泡剤等の市販の歯磨き剤に通常含まれている成分が含まれていない。それ故、本発明の組成物は、市販の歯磨き剤に添加して用いるのが好ましい。【0031】原料であるマスティック樹脂は水不溶性であるため、通常、これを溶解することのできるオイル(油)、エタノール等を用いてマスティックの有効成分を抽出する。本発明の組成物は口腔内で用いられるため、オイルによって抽出する場合、生体にとって安全な食用油を用いることが好ましい。安全な食用油としては、例えば、オリーブ油、ヤシ油、大豆油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、ナタネ油、落花生油、ツバキ油などが挙げられ、これらの他、安全な油として、中鎖脂肪酸トリグリセリドなども挙げられる。【0032】本発明の組成物の必須有効成分の1つである「マスティックのオイル抽出エキス」としては、オリーブ油抽出エキス又はヤシ油抽出エキスが好ましい。オリーブ油及びヤシ油は、口腔粘膜への浸透性に優れているため、生体への吸収効率が高く、マスティックの作用を最もよく発揮させることができる。また、オリーブ油及びヤシ油は、揮発性脂肪酸及び水溶性脂肪酸を多く含有していることから、歯磨き剤との混和性にも優れている。【0033】マスティックのヤシ油抽出エキスの製造方法としては、例えば、マスティック樹脂100質量部に対し、ヤシ油100質量部とを混合し、約110℃の油浴上で約30分間撹拌し、マスティック樹脂を完全に溶解させる。次に、これを約50μm程度の目開きを有する網等に通過させ、不純物を除去した後、約25℃に冷却することにより、マスティックを溶解した油液であるマスティックのヤシ油抽出エキスを得る。なお、マスティック抽出時のマスティック樹脂とオイルとの比率(質量比)は、50:50が限界であり、これが最も高濃度のマスティックを含有するオイル抽出エキスである。【0034】オイル以外の物質を用いてマスティックを抽出する例として、マスティック樹脂をエタノールに溶解し、濾過等によって不純物を除去した後、乾燥してエタノールを揮発させることにより、不純物を含まないマスティックの微細な粉体を得ることもできる。この粉体をオイルに溶解させて油液としたものをマスティックのオイル抽出エキスとして用いてもよい。【0035】マスティックのヤシ油抽出エキスは、後記試験例1に記載のとおり、種々の歯周病原細菌、齲蝕原因菌に対して高い抗菌性を有する。特に、重症度の高い歯周病患者に多く見出される、アクチノバシルス・アクチノマイセテム・コミタンスに対しても高い抗菌活性が認められる。【0036】本発明の組成物中のマスティックのオイル抽出エキスの濃度は、マスティックが口腔内において充分な抗菌活性を発揮でき、且つ、本発明の組成物の使い勝手のよい範囲で適宜選択することが好ましい。本発明の組成物中のマスティックのオイル抽出エキス(上記50:50のオイル抽出エキスとして)の含有量は、0.0001質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3〜10質量%である。すなわち、マスティックのオイル抽出エキスの濃度が1質量%未満の場合、マスティックの充分な抗菌活性を得るためには、本発明の組成物を多量に用いなければならず、逆に、濃度が10質量%より高い場合には、本発明の組成物の使用量が非常に少なくなり、いずれも使い勝手が悪くなってしまう。【0037】また、本発明の組成物と市販の歯磨き剤との使用割合は、組成物中のマスティックのオイル抽出エキスの濃度を考慮し、使い勝手がよい範囲で適宜選択することが好ましい。通常は、市販の歯磨き剤と本発明の組成物との重量比が、1:0.5〜1:2.0の割合、好ましくは1:1〜1:1.5の割合である。【0038】本発明の組成物は、もう1つの必須有効成分として、消炎剤を含む。本発明で用いるマスティックのオイル抽出エキスには消炎作用は無い。消炎剤を併用することにより、特に歯肉炎の改善に非常に有効である。【0039】本発明の組成物に用いられる消炎剤は、消炎作用を有し、口腔用に使用できるものであれば特に限定されないが、例えば、グリチルリチン酸及びその塩類、グリチルレチン酸及びその塩類、トラネキサム酸等が挙げられる。このうち、グリチルリチン酸及びその塩類が好ましく、グリチルリチン酸の塩類としては、例えば、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸一アンモニウム、グリチルリチン酸二アンモニウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、グリチルリチン酸三ナトリウムなどが挙げられ、特にグリチルリチン酸二カリウムが好ましい。【0040】上記の消炎剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。【0041】消炎剤として、例えば、グリチルリチン酸及びグリチルリチン酸の塩類を用いる場合、本発明の組成物中のグリチルリチン酸及びグリチルリチン酸の塩類をグリチルリチン酸として換算した場合の濃度は、通常0.01〜0.25質量%であり、マスティックの苦味を緩和する上で、好ましくは0.05〜0.22質量%である。【0042】さらに、本発明の組成物において、グリチルリチン酸二カリウムは、カンゾウ(甘草)の抽出物由来であることが好ましい。本発明の組成物中のカンゾウ抽出物の濃度は、通常0.03〜1.0質量%、好ましくは0.1〜0.8質量%である。消炎剤グリチルリチン酸二カリウムを含有する甘草抽出物を用いることにより、消炎効果が得られると同時に、口腔内の免疫機能を高めるという効果も同時に得られる。【0043】本発明の組成物に、消炎剤グリチルリチン酸二カリウムを含むカンゾウ以外の種々の生薬抽出物を任意成分として含ませることによって歯周病予防・治療効果をさらに高めるができる。このような生薬の例としては、例えば、シコン(紫根)、ニクズク、ビンロウジ、ヨモギ、オオバク、ボタンピ、オウゴン、ダイオウ(大黄)、ノギクカ、ヤクモソウ、チャ、ケイヒ、チョウジ、ウワウルシ、アロエ、生姜、イチョウ、ザクロ実、紅花、ハッカ、オウセイ、エンメイソウ、キンギンカ、クジン、ゲンノショウコ、ジュウヤク、ビワ、ビャクシ、モモ、ユキノシタ、レンギョウ、シラカンハ、ホップ、ラベンダー、レモン、ムクロジ、クマザサ、サイシン、オトギソウ、トモエソウ、アルニカ、カミツレ、インチコウ、ゴボウ、トウキンセンカ、キンセンカ、ヤグルマギク、ローマカミツレ、オウレン、ゲッケイジュ、ソウハクヒ、サルビア、タイム、シソ、セイヨウハッカ、スイカズラ、ウイキョウ、センキュウ、セイヨウトチノキ、トチノキ、バラ、サンショウ等が挙げられる。【0044】これらのうち、シコン(紫根)、ニクズク、ビンロウジ、ヨモギ、オオバク、ボタンピ、オウゴン、ダイオウ(大黄)、ノギクカ、ヤクモソウ等が好ましい。特に、シコンは、漢方で解熱、解毒薬、あるいは火傷、凍傷などに外用される生薬であり、歯周病によって破壊された歯周組織の回復を促進する作用を有するため好ましい。また、ニクズク及びヤクモソウは、歯周病の治療効果をさらに高めるDNA合成促進作用及びIL−8産生促進作用を有しているため特に好ましい。【0045】本発明の歯周病予防・治療用組成物には、上記必須有効成分以外に、本発明の効果を高めるために有効な範囲内で種々の添加剤を加えることができる。【0046】本発明の組成物は、通常、歯ブラシの上に載せたときに流れ落ちない程度の粘稠性を有する液状、ペースト状、ジェル状等の形態を有する。このような形態とするために用いることができる基剤としては、抽出に用いた食用油の他、シリカ、炭酸カルシウム、歯磨用リン酸水素二カルシウム、ヒドロキシアパタイト等が挙げられる。これらのうち、シリカ、炭酸カルシウム及び歯磨用リン酸水素二カルシウムが好ましい。【0047】本発明の組成物に粘稠性を付与するための粘結剤としては、例えば、キサンタンガム、セルロースガム、カラギーナン、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム等を用いることができ、これらのうち、キサンタンガム及びセルロースガムが好ましい。【0048】マスティックのオイル抽出エキスは油液であるので、ブラッシング時に口腔内の水分や歯磨き剤と混ざり合って口腔内の隅々まで行き渡るようにするため、本発明の組成物、特に液状の本発明の組成物には乳化剤を含有させることが好ましい。乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート類、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられ、特にポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びポリソルベート類が好ましい。【0049】本発明の組成物には、上記添加剤の他、溶媒、香料、清涼剤、甘味剤、着色剤、界面活性剤、潤滑剤、増粘剤、pH調整剤、防腐剤、薬用成分等の通常口腔用に用いられている添加剤をさらに含むことができる。【0050】溶媒としては、エタノール、水等の生体適合性の良いものを用いることが好ましい。【0051】香料としては、メントール、ペパーミント油、スペアミント油、オレンジ油、レモン油、ユーカリ油、ハッカ油、アカシア油、ウイキョウ油、クエントウ油、カラムス油、ショウノウ油、ニッケイ油、ケイ皮油、ケイ葉油、バラ油、ビャクダン油、チョウジ油、ハーブ油、バナナ油、リンゴ油、サリチル酸メチル、カルボン、アネトール、リモネン等のテルペン類;及び調合香料などが挙げられる。【0052】甘味料としては、サッカリン、サッカリンナトリウム、キシリトール、ステビオサイド、ステビアエキス、レバウディオサイド、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスベリジルジヒドロキシカルコン、ペリラルチン、タウマチン、グリチルチン、グリチルリチンモノグルコサイド、ヘルナンズルチン、トレハロース、アスパルテーム、ソルビット等が挙げられる。【0053】着色剤としては、青色1号、黄色4号等の法定色素、二酸化チタン、カルメル等が挙げられる。【0054】界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤等が挙げられる。具体的には、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ショ糖脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル、ラウロイルサルコシン塩、N−アシルグルタミン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、2−アルキル−N−カルボキシ−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、N−アシルタウリン塩、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油又はその脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。【0055】潤滑剤としては、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、ラクチトールなどの糖アルコール;グリセリン、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコールなどが挙げられる。【0056】増粘剤としては、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸アルカリ金属塩、ジュランガム、キサンタンガム、グアガム、トラガントガム、カラヤガム、ビーガム、アラビアガム等のガム類;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、シリカゲル、アルミニウムシリカゲルなどが挙げられる。【0057】pH調整剤としては、クエン酸、リンゴ酸、リン酸、酢酸等の有機酸及びその塩類;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸カリウムナトリウム、炭酸リチウム、尿素、アミノ酸オリゴマー、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、水酸化カルシウム等の無機酸カルシウム塩、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム、マロン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセリン酸カルシウム、酒石酸カルシウム、フィチン酸カルシウム等の有機酸カルシウム塩などが挙げられる。【0058】防腐剤としては、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、イソプロピルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類、安息香酸ナトリウム等の安息香酸塩、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、フェノキシエタノール、ソルビン酸等が挙げられる。【0059】薬効成分としては、アラントイン、酢酸トコフェロール、イソプロピルメチルフェノール、デキストラーゼ、クロロフィル、銅クロロフィルナトリウム、フラボノイド、ムタナーゼ、リゾチーム、アミラーゼ、プロテアーゼ、溶菌酵素、スーパーオキサイドディスムターゼ、イプシロンアミノカプロン酸、アルミニウムアラントイン、アルミニウムクロルヒドロキシアラントイン、ジヒドロコレスタノール、ビサボロール、グリセロフォスフェート、水溶性無機リン酸化合物、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズ、フッ化カリウム、フッ化ケイ素酸ナトリウム、フッ化アルミニウム、フッ化銀、フッ化水素酸ヘキシルアミン、フッ化水素酸デカノールアミン、フッ化水素酸オクタデセニルアミン等のフッ化物、エデト酸、クエン酸亜鉛、塩化亜鉛、グルコン酸銅、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化銅、ポリリン酸塩、ピロリン酸塩、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB6、パントテン酸塩等のビタミン類、グリシン、リジン、ヒスチジン等のアミノ酸類、塩化ナトリウム、重曹、乳酸アルミニウム、硝酸カリウム、ザルコシネート、カテキン類等のポリフェノール化合物類、生薬などが挙げられる。【0060】なお、本発明の組成物が添加される「市販の歯磨き剤」は特に限定されず、如何なる種類のものであってもよい。市販の歯磨き剤の種類には、練り歯磨き(いわゆるペースト)、歯磨きジェル、粉状の歯磨き粉などがあるが、本発明の組成物はいずれの種類の歯磨き剤にも適用できる。【0061】次に、上記本発明の歯周病予防・治療用組成物を、歯磨き剤に添加したものでブラッシングを行った後、カンゾウ(甘草)、ビンロウジ(檳榔子)、ニクズク(肉蒄)及びヤクモソウ(益母草)からなる群から選択される1種以上の生薬抽出物を含む洗口含嗽剤でうがいを行うことを特徴とする歯周病の予防・治療方法(以下、本発明の方法という)について説明する。【0062】本発明の方法によれば、本発明の組成物を添加した歯磨き剤でのブラッシングに加え、生薬の抽出物を主成分とする洗口含嗽剤によるうがいを行うことによって、口腔内をリンスし、歯ブラシでは届かない部分に存在する歯周病原因菌の増殖をも抑制することができる。【0063】さらに、前述のように、本発明者は、生薬抽出物からなる洗口含嗽剤によるうがいによって、口腔内の免疫力を低下させること無く、歯周病原因菌を抑制することができることを明らかにしている(特開平6−157259号公報(第1先願)参照)。しかしながら、この生薬抽出物ではアクチノバシルス・アクチノマイセテム・コムタンスを抑制することはできなかった。【0064】そこで、生薬抽出物からなる洗口含嗽剤でのうがいと、アクチノバシルス・アクチノマイセテム・コムタンスに対しても高い抗菌活性を有するマスティックのオイル抽出エキス及び消炎剤を有効成分とする本発明の組成物を市販の歯磨き剤に添加してブラッシングを併用すれば、主たる歯周病原因菌の全てを抑制することが可能になるのである。【0065】また、マスティックには口腔内の免疫力を高める作用は認められないので、マスティックと、口腔内の免疫力を高める作用、DNA合成促進作用、IL−8産生促進作用等を有する生薬とを組み合わせて用いることによって、より優れた歯周病の予防・治療効果が得られるのである。【0066】ここで、生薬抽出物からなる洗口含嗽剤について説明する。本発明の方法で用いる洗口含嗽剤は、カンゾウ(甘草)、ビンロウジ(檳榔子)、ニクズク(肉蒄)及びヤクモソウ(益母草)からなる群から選択される1種以上の生薬抽出物を含むことを特徴とする。【0067】本発明において、生薬抽出物とは、温湯などによって抽出されたエキス状のもの及びパーコレーション法によって得られる流エキスの両者を含む。【0068】各生薬抽出物の歯周病原因菌に対する抗菌活性は、下記表1に示すとおりである。なお、本出願において、MIC(最小発育阻止濃度)の測定は、日本化学療法学会標準法に準じて行った。【0069】【表1】【0070】本発明の方法で用いる洗口含嗽剤の製造方法は次の通りである。カンゾウ、ビンロウジ、ニクズク及びヤクモソウの抽出物を得る方法には特に制限はなく、生薬の有効成分を抽出するために用いられる通常の方法を用いることができる。例えば、温湯を用いて抽出(一般的なエキス状)してもよいし、パーコレーション法によって抽出(流エキス)してもよい。また、生薬抽出物の性状も特に制限されず、液状、軟稠エキス状、粉末状、顆粒状等のものを用いることができる。【0071】例えば、各生薬を、それぞれ個別に生薬を煎じた後、固形物を濾別、得られた濾液を濃縮して軟稠なエキスとする。これらの軟稠エキスのいずれか1種を、又は2種以上を適当な割合で混練した後、例えば、乾燥して細粒化する。あるいは、上記4種類の生薬のいずれか2種以上を適当な割合で混合したものを煎じた後、固形物を濾別し、濾液を濃縮して軟調なエキスとしてもよい。用時に際して、得られた細粒又は軟調エキスを水で希釈して洗口含嗽剤水溶液を得る。【0072】本発明の方法で用いる洗口含嗽剤には、上記4種の生薬抽出物の他、本発明の歯周病予防・治療用組成物に添加することができる前記生薬抽出物を加えることができる。中でも、シコン(紫根)、ニクズク、ヤクモソウの抽出物をさらに含有することが好ましい。シコンは、前述したように、解熱、解毒あるいは火傷、凍傷などに外用される生薬であり、歯周病によって破壊された歯周組織の回復を促進する効果が期待できる。ニクズク及びヤクモソウは、DNA合成促進作用、IL−8産生促進作用を有するため、歯周病の治療効果をさらに高めることが期待できる。【0073】シコン抽出物を得る方法は次のとおりである。シコン(ムラサキの根)に、約70℃の温湯を加えて抽出し、減圧濃縮し、エタノールを適量加え、冷却した後、濾過することによってシコン抽出物を得ることができる。【0074】本発明で用いる生薬抽出物からなる洗口含嗽剤には、上記有効成分の他、香料、甘味剤、可溶化剤、発泡剤、安定剤、キレート剤、pH調整剤等の添加剤を加えてもよい。【0075】また、本発明の方法を実施するに当たっては、歯磨き剤に添加する前記本発明の組成物と、上記生薬抽出物からなる洗口含嗽剤をキットとして用いるのが便利であり、好ましい。【0076】【実施例】以下、製造例、試験例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの記載によって何ら限定されない。【0077】製造例1:マスティックのヤシ油抽出エキス及びカンゾウ抽出物を有効成分とする組成物の製造(1)マスティックのヤシ油抽出エキスの製造マスティック樹脂1000gと精製ヤシ油(三生医薬社製)1000gとを混合し、110℃の油浴にて約30分間撹拌し、マスティックを完全に溶解させた。次に、この溶液を約50μm程度目開きの網に通過させ、不純物を除去した後、約25℃に冷却することにより、マスティックを溶解した油液である、マスティックのヤシ油抽出エキスを得た。【0078】(2)カンゾウ抽出物の製造カンゾウの根に、約70℃の温湯を加えて抽出した。抽出液を減圧濃縮し、エタノールを適量加え、冷却した後、濾過することによってカンゾウ抽出物を得た。【0079】(3)市販の歯磨き剤に添加するための組成物(マスティックペースト)の製造上記(1)及び(2)で製造したマスティックのヤシ油抽出エキス及びカンゾウ抽出物を用い、下記表2に示す処方に従って、マスティックペーストを調製した。【0080】【表2】【0081】試験例1:マスティックのヤシ油抽出エキスの歯周病原因菌に対するMIC抗菌性試験(1)試験方法▲1▼製造例1−(1)で得たマスティックのヤシ油抽出エキス(マスティック50%、精製ヤシ油50%)に、エタノールを加え、20%エタノール溶液となるように希釈した。この20%エタノール溶液を種々の濃度にさらに希釈して、滅菌後55℃に保温したBHI(Brain heart Infusion)培地にそれぞれ加え、平板培地を作製した。【0082】なお、BHI培地は、被験細菌の種類によって、以下の処方のものを使用した。歯周病原因菌:Yeast. hemin. VK1含有Brain heart Infusion(BHIY+H. VK1培地)及びYeast. hemin. VK1含有Brain heart Infusion Agar(BHIY+H. VK1寒天培地)齲蝕原因菌及び標準菌:Brain heart Infusion(BHI培地)及びBrain heart Infusion Agar(BHI寒天培地)【0083】▲2▼各平板培地に、下記表3に記載の14種類の細菌を塗抹し、歯周病原因菌は嫌気条件下で、他の細菌は好気条件下で、37℃、3日間培養した。【0084】▲3▼培養後、肉眼で集落(コロニー)の形成が全く認められない平板培地に添加されたマスティックの最小濃度(%)を、最小発育阻止濃度(MIC)とした。【0085】(2)試験結果を下記表3に示す。【0086】【表3】【0087】表3の結果から、マスティック抽出エキスは、試験を行ったいずれの歯周病原因菌、齲蝕原因菌に対しても充分な抗菌活性を有しており、特に、アクチノバシルス・アクチノマイセテム・コムタンスに対しても、MICが0.2%と非常に高い抗菌活性を示すことがわかる。【0088】試験例2:上記表2に示す処方を有する本発明のマスティックのヤシ油抽出エキスとカンゾウ抽出物とを有効成分とする上記製造例1で製造したペーストと、マスティックのヤシ油抽出エキスのみを有効成分とするペーストを下記患者に適用(就寝前にペーストを添加した歯磨き剤で歯磨きを行った)し、歯周病の治療効果を比較・検討した。【0089】患者:K(55歳)<腔口内所見>(1)治療開始前の歯周ポケットの深さ:4〜6mm(2)カンゾウ抽出物を含まないペーストを3ヵ月使用後の歯周ポケットの深さ:2〜5mm歯肉の腫れもある程度改善したが、未だ歯肉の赤味が残っていた。(3)上記(2)の後、カンゾウ抽出物を含むペーストを4ヵ月使用後の歯周ポケットの深さ:2〜3mm歯肉の腫れも改善され、歯肉は健康なピンク色に近くなっていた。【0090】カンゾウ抽出物を含まないペーストによれば、歯周ポケットの深さを減少させるという効果は示したが、歯肉炎の症状の改善はあまり見られなかった。これに対し、カンゾウ抽出物を含むペーストは高い消炎作用を有する、カンゾウ抽出物由来のグリチルリチン酸二カリウムを含有しているため、歯周ポケットの深さをより減少させると共に、歯肉炎の症状を改善することができた。従って、マスティックのオイル抽出エキスと消炎剤とを必須有効成分とする本発明の歯周病予防・治療用組成物は、より高い歯周病治療効果を有している。【0091】製造例2:生薬抽出物からなる洗口含嗽剤の製造(1)生薬抽出物の製造ビンロウジ、カンゾウ、ニクズク及びヤクモソウのそれぞれを、水抽出し、濃縮した液にエタノールを加えて、各生薬の抽出物を得た。各生薬1gから、それぞれ1mLの抽出物を製造した。【0092】(2)生薬抽出物からなる洗口含嗽剤の製造上記(1)で製造したビンロウジ、カンゾウ、ニクズク及びヤクモソウの抽出物(松浦漢方株式会社製)を、配合比1:1:1で、定法に従って混練した後、乾燥し、細粒化して、粒状の洗口含嗽剤を得た。用時に際しては、得られた洗口含嗽剤の適量を水で希釈し、うがいを行う。【0093】使用例1市販の練り歯磨き剤約1.5gを歯ブラシに取り、その上に、製造例1で調製したマスティックペースト約1gを載せ、通常のブラッシングを行う。【0094】使用例2使用例1のブラッシング後、製造例2で調製した洗口含嗽剤1gを水100mLに溶解させた溶液でうがいを行う。【0095】試験例3:上記製造例2で製造した生薬抽出物からなる洗口含嗽剤のみを用いた場合と上記製造例1で製造したマスティックペーストと該洗口含嗽剤とを組み合わせて用いた場合(マスティックペーストを市販の歯磨き剤に添加してブラッシングを行った後、洗口含嗽剤でのうがいを行った)の歯周病の治療効果を比較した。【0096】患者:I(69歳)<腔口内所見>(1)治療開始前の歯周ポケットの深さ:5〜10mm数カ所の病巣から排膿が見られた。(2)洗口含嗽剤のみを10ヵ月使用後の歯周ポケットの深さ:4〜7mmグラム陰性菌(特にアクチノバシルス・アクチノマイセテム・コムタンス)の抑制が不十分なため、マスティックペーストを併用することとした。(3)上記(2)の後、洗口含嗽剤とマスティックペーストを3ヵ月使用後の歯周ポケットの深さ:2〜4mmグラム陰性菌(特にアクチノバシルス・アクチノマイセテム・コムタンス)を効果的に抑制でき、排膿も見られなくなった。【0097】患者:IT(73歳)<腔口内所見>(1)治療開始前の歯周ポケットの深さ:4〜6mm数カ所の病巣からの排膿が見られた。(2)洗口含嗽剤のみを7ヵ月使用後の歯周ポケットの深さ:2〜5mm軽度の病巣では病状が安定又は改善されたが、中程度の病巣では病状の進行が見られた(排膿が続いていた)ため、マスティックペーストを併用することとした。(3)上記(2)の後、洗口含嗽剤とマスティックペーストを9ヵ月使用後の歯周ポケットの深さ:2〜3mm全ての病巣で症状が安定し、排膿も見られなくなった。【0098】患者:IM(53歳)<腔口内所見>(1)治療開始前の歯周ポケットの深さ:5〜11mm(2)洗口含嗽剤のみを12ヵ月使用後の歯周ポケットの深さ:3〜8mmグラム陰性菌の抑制が不十分なため、マスティックペーストを併用することとした。(3)上記(2)の後、洗口含嗽剤とマスティックペーストを10ヵ月使用後の歯周ポケットの深さ:2〜5mm全ての病巣において病状が安定してきた。【0099】マスティックのオイル抽出エキス及び消炎剤を必須有効成分とする組成物を市販の歯磨き剤に添加して行うブラッシングと、生薬抽出物からなる洗口含嗽剤によるうがいを併用することで、洗口含嗽剤のみでは改善の認められなかった病巣に対しても高い治療効果が認められた。従って、特に重傷の歯周病を有する患者に、両者の併用使用が非常に高い治療効果を示すことがわかった。【0100】【発明の効果】本発明のマスティックのオイル抽出エキスと消炎剤とを必須有効成分とする歯周病予防・治療用組成物は、高濃度のマスティックのオイル抽出エキスを含有しているので、非常に治療効率が高い。また、歯周病の重症度に応じて使用量を調節でき、より適切な歯周病の予防・治療ができる。さらに、本発明の組成物は、使用時に市販の歯磨き剤に添加して用いるため、水溶性の歯磨き剤成分とマスティックのオイル抽出エキスとの分離が問題とならず、安定に長期間保存ができる。【0101】市販の歯磨き剤に、本発明のマスティックのオイル抽出エキスと消炎剤とを必須有効成分とする組成物を添加してブラッシングを行った後、生薬抽出物からなる洗口含嗽剤でうがいを行う本発明の方法によれば、さらに歯周病の予防・治療効果を高めることができる。【0102】本発明の方法によれば、口腔内の免疫力を損なうこと無く、重症度の高い歯周病患者に多く見出されるアクチノバシルス・アクチノマイセテム・コムタンスを含む歯周病原因菌、齲蝕原因菌の増殖を強力に抑制することができる。マスティックには口腔内の免疫力を高める作用は認められないが、マスティックと、口腔内の免疫力を高める作用を有する生薬とを組み合わせて用いることで、より優れた歯周病の予防・治療効果が得られるものである。 マスティック(乳香)のオイル抽出エキス及び消炎剤を有効成分とする歯周病予防・治療用組成物。 市販の歯磨き剤に添加して用いることを特徴とする請求項1に記載の歯周病予防・治療用組成物。 マスティックのオイル抽出エキスが、マスティックのオリーブ油抽出エキス又はヤシ油抽出エキスであることを特徴とする請求項1又は2に記載の歯周病予防・治療用組成物。 消炎剤が、グリチルリチン酸及びその塩類、グリチルレチン酸及びその塩類、トラネキサム酸、塩化リゾチーム、オウバクエキス、トウキ軟エキス、酢酸dl−αトコフェロール、ニコチン酸dl−αトコフェロール、イプシロアミノカプロン酸、アズレンスルホン酸塩、ジヒドロコレステロール、エピジヒドロコレステリンからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯周病予防・治療用組成物。 消炎剤が、グリチルリチン酸及びその塩類からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項4に記載の歯周病予防・治療用組成物。 グリチルリチン酸の塩類が、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、グリチルリチン酸二アンモニウム、グリチルリチン酸二ナトリウム及びグリチルリチン酸三ナトリウムからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項5に記載の歯周病予防・治療用組成物。 消炎剤が、グリチルリチン酸二カリウムであることを特徴とする請求項6に記載の歯周病予防・治療用組成物。 グリチルリチン酸二カリウムが、これを含有するカンゾウ(甘草)の抽出物由来であることを特徴とする請求項7に記載の歯周病予防・治療用組成物。 シコン(紫根)、ニクズク、ビンロウジ、ヨモギ、オオバク、ボタンピ、オウゴン、ダイオウ(大黄)、ノギクカ及びヤクモソウからなる群から選択される少なくとも1種の生薬抽出物をさらに含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の歯周病予防・治療用組成物。 マスティックのオイル抽出物が、1質量%以上含まれていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の歯周病予防・治療用組成物。 マスティックのオイル抽出物が、3〜10質量%含まれていることを特徴とする請求項10に記載の歯周病予防・治療用組成物。 請求項1〜11のいずれか1項に記載の歯周病予防・治療用組成物を、市販の歯磨き剤に添加したものでブラッシングを行った後、カンゾウ(甘草)、ビンロウジ(檳榔子)、ニクズク(肉蒄)及びヤクモソウ(益母草)からなる群から選択される1種以上の生薬抽出物を含む洗口含嗽剤でうがいを行うことを特徴とする歯周病の予防・治療方法。 シコン(紫根)、ニクズク、ビンロウジ、ヨモギ、オオバク、ボタンピ、オウゴン、ダイオウ(大黄)、ノギクカ及びヤクモソウからなる群から選択される少なくとも1種の生薬抽出物をさらに含む洗口含嗽剤を用いることを特徴とする請求項12に記載の歯周病の予防・治療方法。 請求項1〜11のいずれか1項に記載の歯周病予防・治療用組成物と、カンゾウ(甘草)、ビンロウジ(檳榔子)、ニクズク(肉蒄)及びヤクモソウ(益母草)からなる群から選択される1種以上の抽出物を含む洗口含嗽剤とを含む歯周病予防・治療用キット。 【課題】マスティックのオイル抽出エキスを、より高濃度且つ安定した状態で用いることができる形態を提供し、さらに、より優れた歯周病の予防・治療効果が得られるマスティックのオイル抽出エキス及び生薬抽出物の使用方法を提供する。【解決手段】マスティック(乳香)のオイル抽出エキス及び消炎剤を有効成分とする歯周病予防・治療用組成物;及び上記の歯周病予防・治療用組成物を、市販の歯磨き剤に添加したものでブラッシングを行った後、カンゾウ(甘草)、ビンロウジ(檳榔子)、ニクズク(肉蒄)及びヤクモソウ(益母草)からなる群から選択される1種以上の生薬抽出物を含む洗口含嗽剤でうがいを行うことを特徴とする歯周病の予防・治療方法。【選択図】 なし


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