生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_神経治療のための合成物と方法
出願番号:2001516530
年次:2012
IPC分類:A61K 31/424,A61K 31/536,A61K 38/00,A61K 31/43,A61P 25/18,A61P 25/20,A61P 25/22,A61P 25/24,A61P 25/28,A61P 43/00


特許情報キャッシュ

コッペル,ゲーリー,エー. JP 5049437 特許公報(B2) 20120727 2001516530 20000816 神経治療のための合成物と方法 リヴァアックス ファーマスーティカルズ,エルエルシー 506065150 一色国際特許業務法人 110000176 一色 健輔 100071283 原島 典孝 100084906 鈴木 知 100094042 コッペル,ゲーリー,エー. US 60/149,115 19990816 US 60/172,452 19991217 US 60/176,570 20000118 US 60/194,534 20000404 20121017 A61K 31/424 20060101AFI20120927BHJP A61K 31/536 20060101ALI20120927BHJP A61K 38/00 20060101ALI20120927BHJP A61K 31/43 20060101ALI20120927BHJP A61P 25/18 20060101ALI20120927BHJP A61P 25/20 20060101ALI20120927BHJP A61P 25/22 20060101ALI20120927BHJP A61P 25/24 20060101ALI20120927BHJP A61P 25/28 20060101ALI20120927BHJP A61P 43/00 20060101ALI20120927BHJP JPA61K31/424A61K31/536A61K37/02A61K31/43A61P25/18A61P25/20A61P25/22A61P25/24A61P25/28A61P43/00 111 A61K 31/00 - 31/80 A61K 38/00 - 38/58 A61P 25/18 A61P 25/20 A61P 25/22 A61P 25/24 A61P 25/28 A61P 43/00 CAPlus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開昭59−225182(JP,A) 特表平09−508623(JP,A) 国際公開第98/013046(WO,A1) 国際公開第98/045256(WO,A1) 国際公開第99/033849(WO,A1) 10 US2000022450 20000816 WO2001012184 20010222 2003506490 20030218 69 20070816 荒巻 真介 【0001】<発明の分野>この発明は、神経精神学的介入の新規な機構に関する。特に、この発明は認知や行動の障害を含む様々な神経学的病状を治療するための薬学的処方と方法を目的とする。【0002】<発明の背景と概要>薬学業界は、神経障害の治療のための薬の発見と商品化に対する広範な研究と開発努力を目指している。そのような障害は、一般的には、脳内の化学的アンバランスに由来する。適切な種類の神経化学的物質の生産過剰や生産不足、かつ/または受容体の機能障害が、神経学者、精神科医、心理学者、診断技術や精神病治療技術のある他の医学的臨床医によって認識された多くの病状とともに、同定されている。神経学的に活性のある新しい薬品を発見する努力のほとんどが、脳内に無数にある受容体の一つまたは複数、あるいはそれら受容体のリガンドと相互作用するアゴニスト/アンタゴニストの研究を基にしている。【0003】本発明は、広範な神経学的病状や他の病状、あるいは関連した病因をもつ臨床症状の治療における、薬品介入への新しいアプローチを提供する。それは、細菌性ペプチダーゼやプロテアーゼ、特にトランスペプチダーゼ、かつ/またはカルボキシペプチダーゼの阻害剤として、その活性が知られている化合物を含むβラクタムが、Nアセチルα結合酸性ペプチダーゼ(NAALADアーゼ)を含む哺乳類神経ペプチダーゼの有力な阻害剤でもあるという発見に、部分的に基づく。その神経ペプチダーゼのうち、いくつかのものは、文献中で同定され、特徴づけられている[Pangalos et al.,J.Biol.Chem.,1999,274,No.13,8470−8783]。本発明は、また、神経原性NAALADアーゼが、有意な行動の修飾や、認識動作の促進に効果を生じるために、NAALADアーゼの阻害剤を用いて、そのターゲットとし得るという発見にも、部分的に基づく。予備的な研究によって、ある神経ペプチド(例えばNアセチルLアスパリルLグルタミン酸)を認識して、変換することのできる一つまたは複数の神経プロテアーゼ、それは今やNAALADアーゼとそれに関連性のあるペプチダーゼやトランスペプチダーゼであると思われているのだが、それが脳機能の神経化学のレベルで、最も有力な役割ではなくとも、重要な役割を果たしていることが確証された。NAALADアーゼ阻害剤として働くグルタミン酸アナログが、前立腺の病気やある神経組織損傷に伴うグルタミン酸の異常を治療するために使用できることが、以前報告された。今や、NAALADアーゼ阻害剤、そこには特に血液脳関門を輸送できるβラクタム含有の細菌性ペプチダーゼ阻害剤やβラクタマーゼ阻害剤が含まれているが、それらは行動異常や知覚や認識の機能不全によって特徴づけられる広範な神経障害の症状を減らすための有力な神経活性医薬物質として、非常に低濃度で機能できるということが結論された。意義深いことには、そのような細菌性酵素阻害剤は、臨床的に有効な細菌性酵素阻害に必要であることが知られている濃度以下の濃度で、NAALADアーゼや関連した神経ペプチダーゼの有効な阻害剤になると信じられている。こうして、そのような化合物は、また、他のNAALADアーゼ阻害剤での治療に反応すると以前に記述された、前立腺の病気や神経組織損傷に伴う病状を治療するためにも有効に使用され得ることが期待される。【0004】従って、本発明の一実施形態は、細菌性のプロテアーゼ阻害剤やペプチダーゼ阻害剤としての活性が知られている化合物を投与することによって、温血の脊椎動物における認識障害や行動障害を治療する方法を目的としている。その化合物は、脳内に有効濃度で存在するとき、一つまたは複数の神経原性のNAALADアーゼや関連した神経原性酵素の活性を阻害する、さもなくば修飾することができると、今や結論されている。【0005】関連した実施形態において、認識障害や行動障害の治療の必要のある患者において、その治療法が提供される。その方法は、NAALADアーゼや関連した神経原性酵素を含んだ神経原性ペプチダーゼを阻害するステップを含む。ある実施形態において、そのような神経ペプチダーゼ阻害は、細菌性酵素、例えば、細菌性細胞壁合成に関与するβラクタマーゼや細菌性プロテアーゼ、に結合して阻害する能力のあることが認識されているβラクタム化合物の有効量を投与することによって、効力を発する。そのような細菌性プロテアーゼは、ペニシリン結合蛋白質として当業者に知られている。本発明の他の実施形態では、その方法は、専門家によって認識されたNAALADアーゼ阻害剤、特にデアミノグルタミン酸アナログとN置換グルタミン酸誘導体を含んでいるのだが、その投与によって、効力を発する。温血の脊椎動物における、そのようなニューロペプチダーゼ活性の有効な阻害は、認識動作や行動統御を著しく促進させることが見いだされた。【0006】この発明による治療が可能な認識障害や行動傷害の具体例は、攻撃的障害、強迫的障害、不安、うつ、注意欠陥多動性障害(ADHD)、及び記憶障害である。動物を用いたデータによると、この発明の方法と処方は、自閉症、トゥレット症候群、知恵遅れ、精神病、老人性痴呆、及び人格障害や不正攻撃性をもった人、における衝動と暴力を制御するために抗攻撃性物質としての可能性をもっていることが示唆される。臨床的な応用は、抗不安薬として、及び老人が学習や記憶を改善し、見当識障害を改善する認識促進剤として、ADHDの子供や行為障害の治療にまで広がる。【0007】この発明の他の実施形態には、脳や他の神経組織におけるグルタミン酸の細胞外濃度の異常によって少なくとも一部は特徴づけられる状態を患っているか、そういう状態の進行傾向のある患者の治療法が提供される。その方法は、細菌起源のペニシリン結合蛋白質の活性を阻害することができる化合物の有効量を患者に投与するステップを含む。その組成物は、そういう状態の症状を防ぐか、消失させるために有効な量を投与される。これらの例として、脳内に局在したグルタミン酸の濃度が、脳卒中や他の脳損傷の犠牲者において報告されている。ごく最近は、脳や末梢神経組織における高濃度のグルタミン酸が、多発性硬化症と関連していることが報告されている。【0008】この発明のさらに他の実施形態において、ヒトの患者で、前立腺癌や良性前立腺肥大から選択された前立腺の病気を治療するための方法が提供される。その方法は、細菌起源のペニシリン結合蛋白質の活性を阻害することができる化合物を含む組成物を患者に投与するステップを含む。その化合物は、病気の進行を遅らせるか、病気の症状を減らすのに有効な量を投与される。【0009】この発明による使用のための一つのグループの化合物は、β−ラクタム化合物、即ちβ−ラクタム環系をもつ化合物であり、特に、ペニシリン、セファロスポリンやそれらのアナログのようなβ−ラクタム抗生物質を含む。さらに、ペプチドAla−D−γ−Glu−Lys−D−Ala−D−Ala(NAALADアーゼの基質として働くと思われている)は、この発明に関連した行動の修飾や認識力の促進に役立つペプチダーゼ阻害剤として有効であることが明らかにされている。非β−ラクタム系NAALADアーゼ阻害剤は、特許及び特許以外の文献で報告されている。例えば、米国特許番号5795877.5804602、5968915、5902817、5962521、5863536、及び6017903であり、その明細書は、そのようなNAALADアーゼ阻害剤と、NAALADアーゼ阻害剤療法に反応性のある病状の治療のためにそのようなNAALADアーゼ阻害剤を一般に用いることの教示のため、特にここに緩用される。この発明によって使用できる他の化合物は、分子モデル研究を用いて同定されうる。この発明における使用のための抗生物質は、一つまたは複数の他の酵素阻害剤、例えば有効量のβ−ラクタマーゼ阻害剤(この中の活性をもつ化合物はβ−ラクタム化合物である)や他のNAALADアーゼ阻害剤、あるいは活性のある化合物の脳内レベルを上昇させるためのP−糖蛋白質流出性阻害剤と共に投与されることができる。本発明の方法と処方の実施形態は、人の健康においても、獣医学に対する応用、例えば犬や猫や馬、においても有効である。【0010】本発明の一つの実施形態において、温血性の脊椎動物、もっとも典型的な例はヒトであるが、認識や行動の異常で特徴づけられる神経学的病状に影響されているものは、任意に経口(口内投与あるいは舌下投与を含む)あるいは非経口で投与される処方において活性化エステル誘導体として、1−オキサ−1−デチアセファロスポリンで、より好ましくは7−メトキシ−1−オキサ−1−デチアセファロスポリンで治療される。ある実施形態において、ペプチダーゼ阻害剤は、モキサラクタム即ち[7−β−[2−カルボキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)アセトアミド]7α−メトキシ−3−[[(1−メチル−1H−テトラゾル−5−イル)チオ]メチル]−1−オキサ−1−デチア−3−セファム−4−カルボキシル酸]であり、米国特許番号4323567において、経口吸収される活性化エステル誘導体を含んだ関連した化合物と共に、記述され、請求項に挙げられている。この明細書は、ここにおいて、明らかに緩用される。モキサラクタムは、少なくとも、体重1キログラム当たり約50μgを非経口で投与するとき、有意に投与量に関連して神経反応を引き起こすことが明らかになっている。【0011】本発明の他の実施形態では、行動障害や認識障害の症状を結果的に軽減する治療の必要のある患者において、その治療のための薬の処方が提供される。その処方は、細菌に由来するペニシリン結合蛋白質に対する親和性が特徴である化合物を含む。一つの実施形態では、その化合物は、C末端のペプチド配列、アシルーD−アラニル−D−アラニンを含むペプチドグリカンの基質に対して蛋白質分解活性を示すことが知られている細菌性プロテアーゼに結合して、その機能を抑制することができる。他の実施形態では、その化合物は、ペニシリンに結合することができる他の細菌性蛋白質であるβ−ラクタマーゼに結合し、その酵素の機能を抑制することができる。その処方で用いられる抑制剤の量は、内在性のNAALADアーゼの活性を抑制するのに効果的であると決められた量である。ある実施形態において、その量は、脳において、認識や行動の特性を修飾するのに十分なレベルでNAALADアーゼを抑制するのに効果的である。その後の実施形態では、本発明におけるNAALADアーゼ阻害剤のもつ活性レベルは、ペニシリン結合蛋白質とNAALADアーゼとに対する親和性に依存するだけでなく、患者の行動及び/又は認識動作を修飾するのに効果的な脳内レベルを達成するために、血液脳関門を通る阻害剤化合物の能力に特に依存している。【0012】本発明のある実施形態において、その薬学的処方は、ペニシリンと、セファロスポリンと、β−ラクタマーゼ阻害剤のような、β−ラクタムを含むそれらのアナログと、からなるグループから選択されたβ−ラクタムを含む化合物と、そのようなβ−ラクタムを含む化合物の薬学的担体と、を含んでいる。例えば、β−ラクタム化合物が市販されて入手可能な抗生物質である場合、前記処方におけるβ−ラクタム化合物の量は、市販の詳細な投与形態に従って投与すると、その化合物の臨床的に効果的な抗生物質としての血中レベルを生じるために必要な量以下である。しかし、前記抗生物質の減少された投与量は、適切な血液脳関門輸送特性を仮定すると、脳での神経原性プロテアーゼ活性を阻害し、認識と行動の特性を修飾するために十分な化合物の脳内及びCSFレベルを生じるのに効果的であり得る。その上、そのような処方は、一つあるいはそれ以上のβ−ラクタマーゼ阻害剤やP−糖蛋白質流出性ポンプ阻害剤、あるいはNAALADアーゼや関連した神経原性酵素の活性を阻害することのできる他の化合物の効果的な量を、任意に含むことができる。この発明の処方は、脳内でプロテアーゼを阻害する最低限の閾値濃度を達成することができる、当業者には周知の投与形態のために特別に調整されうるけれど、一般には、非経口投与または経口投与のために処方され、オプションとして、当業者にはよく知られた徐放すなわち「薬物補給所」タイプの処方という形も取りうる。【0013】<発明の詳細な説明>本明細書に記述され、かつ、特許が請求される、本発明および各種実施形態は、一部は、下記の発見から得られたものである。すなわち、細菌起源のペニシリン結合タンパク質に結合し、かつ、その酵素活性を阻害することができる化合物はまた、脳中の、N−アセチル化−α−結合酸性ジペプチダーゼ(NAALADアーゼ)、および、恐らくはその他の関連酵素の、強力な阻害剤であること、および、脳においてNAALADアーゼ活性に対する有効阻害閾値濃度を実現するように投与された場合、このNAALADアーゼ阻害剤は、一部は、行動の修飾および、認識や機能の強化で示される、臨床的に重要な神経活性化を呈すること、という発見である。【0014】一つの実施形態では、本発明によって有効に使用されるNAALADアーゼ阻害剤は、アシル−D−アラニル−D−アラニンを含む、タンパク質またはペプチド基質に対して選択的タンパク質分解活性を呈する細菌性プロテアーゼに対し、阻害能力を持つという特徴を持つ。言いかえると、本発明の一つの実施形態に従って、行動・認識障害の治療において効果的に使用されるNAALADアーゼ阻害剤は、ペニシリン結合タンパク質に対する選択的親和性(会合結合、および/または、共有結合による)によって特徴付けることが可能であり、そのような化合物としては、特に、β−ラクタム抗生物質、例えば、ペニシリン類、セファロスポリン類、および、そのアナログが挙げられる。これまでに行われた動物実験に基づき、そのような細菌性プロテアーゼの阻害剤は、脳における、抗生物質の臨床的有効濃度以下のレベルにおいて、行動・認識能力の神経化学的仲介物として機能する可能性のある神経ペプチダーゼを阻害する機能を有するようである。神経ペプチダーゼ活性の効果的阻害と、それに伴う行動・認識機能の仲介も、β−ラクタマーゼ阻害剤、クラブラン酸や、臨床的には重要な抗菌作用を持たない、β−ラクタム含有化合物の投与によって実現される。このような神経ペプチダーゼ(例えば、NAALADアーゼ)活性の阻害によって、1個以上の神経伝達物質または神経修飾物質の濃度、および/または、機能の修飾が行われ、それに伴って、知能の強化や、異常行動表現型の軽減によって証拠付けられる、神経学的機能の改善がもたらされるものと推測されている。本発明の一つの実施形態では、腹腔内に50マイクログラム/kgで投与されたモキサラクタムは、ハムスターにおいて攻撃性を阻害し、ラットにおいて空間学習を強化し、かつ、ラットにおいて抗不安剤として作用する。クラブラン酸も、1マイクログラム/kg未満で腹腔内に投与されると、同様の活性を示した。【0015】ベータラクタム抗生物質の分野に精通している人は、歴史的に、抗菌剤としての作用モードは、ペニシリン結合タンパク質(PBP)に対する基質として作用することによって、細胞壁合成を阻害することによること、および、PBPという用語は、セファロスポリンを含めた全てのベータラクタム類に結合するものを含めるよう拡張されていると理解する。比較的最近、研究者達は、これらPBPをクローン化し、その配列決定を可能にしたばかりでなく、それらの酵素を結晶化し、かつ、活性部位モチーフを確定している(P.Palomeque et al.,J.Biochem.279,223−230,1991参照)。このデータに基づき、PBPの、予想される4個の結合部位は、活性部位I、II、IIIおよびIVと表示される。これらの活性部位、配列、位置、および、アミノ酸(AA)配列は下記の通りである。【0016】活性部位IN末端から35AA上流:STTK活性部位IISTTKモチーフから57AA上流:SGC、SGNまたはSAN活性部位IIISGCモチーフから111AA上流:KTG活性部位IVSGCモチーフから41AA上流:ENKD【0017】モキサラクタムがPBPに対するのと同様のやり方で、脳中で阻害する酵素系を同定することと関連して、N−アセチル−α−結合酸性ジペプチダーゼ(NAALADアーゼ)という名で知られるグルタミルカルボキシペプチダーゼ酵素が、PBPの予想活性部位に対し、ほぼ完全な重複部位を有することが発見された(M.N.Pangalos et al.,J.Bio.Chem.,264,8470−8483,1999参照)。この酵素系は、グルタミン酸作動性神経伝達経路の制御を担当するが、この経路の作用は、攻撃、記憶/認識、および、不安と言った行動結果に現れる。PBPの予想活性部位と、ヒトおよびラットのNAALADアーゼにおける保存配列の間に、ほぼ完全な重複の見られるために、モキサラクタムおよびその他のβ−ラクタム化合物は、低濃度においてNAALADアーゼを阻害することによって行動効果を仲介すると考えられている。これは、下記に示す通り、PBPと、いくつかの既知NAALADアーゼの一つであるNAALADアーゼIとの間に、下記の重複配列に見られる類似性のあることに基づく。【0018】活性部位IPBP:N末端から35AA上流:STTKNAALADアーゼ:N末端から38AA上流:STQK活性部位IIPBP:STTKモチーフから57AA上流:SGC、SGNまたはSANNAALADアーゼ:STQKモチーフから59AA上流:SFG活性部位IIIPBP:SGCモチーフから111AA上流:KTGNAALADアーゼ:SFGモチーフから110AA上流:KLG活性部位IVPBP:SGCモチーフから41AA上流:ENKDNAALADアーゼ:SFGモチーフから41AA上流:ERGVベータラクタム類は、上記四つの活性部位に結合することによって、細菌細胞壁におけるPBPペプチド転移反応を阻害するのであるから、活性部位配列と位置における、この保存された類似性によって、モキサラクタムや、その他のβ−ラクタム化合物は、NAALADアーゼ、および、恐らく、上記4個の活性結合部位モチーフと重複する配列を持つ、他の神経原性酵素に対しても、同様の結合特性を持つことが予想される。ある種のペニシリン結合性タンパク質化合物のごく低用量の投与によって、相当な行動修飾作用が得られたという観察と結びついた発見が、神経学的機能不全によって特徴付けられる病状の予防と治療において新規の解決法を求めるという洞察を与えた。【0019】これまでに、2個のβ−ラクタム化合物、すなわち、モキサラクタムとクラブラン酸について、その独特の神経学的活性プロフィールがもっとも広汎に調べられているが、そのプロフィールから、これらの化合物は、NAALADアーゼおよび構造的に関連の酵素を含む、多数の神経学的酵素標的に対して、特に、PBPとNAALADアーゼの両方に共通の、4個の活性結合部位モチーフを共有するものに対して、活性を表わすことが示唆されている。モキサラクタムおよびクラブラン酸に関して見出された、行動・認識活性に関わる、その他の、予想される神経学的標的を同定するために、NAALADアーゼII配列を用いて、ヒトゲノム・データベース(NCBI−BLAST)を探索した。NAALADアーゼIIと有意な相同性を持ち、かつ、4個の活性部位モチーフをコードする、7個のヒト遺伝子配列が同定された。【0020】1)〉dbj/AP001769.2/AP001769ホモサピエンス染色体11クローンPR11−240F8マップ11q14活性部位IPBP:N末端から35AA上流:STTKNAALADアーゼ:N末端から38AA上流:STQK〉dbj/AP001769 NSRK活性部位IIPBP:STTKモチーフから57AA上流:SGC、SGNまたはSANNAALADアーゼ:STQKモチーフから59AA上流:SFG〉dbj/AP001769 SFG活性部位IIIPBP:SGFモチーフから111AA上流:KTGNAALADアーゼ:SFGモチーフから110AA上流:KLG〉dbj/AP001769 KLG活性部位IVPBP:SGCモチーフから41AA上流:ENKDNAALADアーゼ:SFGモチーフから41AA上流:ERGV〉dbj/AP001769 ERSI2)〉dbj/AP000827.2/AP000827ホモサピエンス染色体11クローンRP活性部位IPBP:N末端から35AA上流:STTKNAALADアーゼ:N末端から38AA上流:STQK〉dbj/AP00827.2 NSRK活性部位IIPBP:STTKモチーフから57AA上流:SGC、SGNまたはSANNAALADアーゼ:STQKモチーフから59AA上流:SFG〉dbj/AP000827.2 SFG活性部位IIIPBP:SGCモチーフから111AA上流:KTGNAALADアーゼ:SFGモチーフから110AA上流:KLG〉dbj/AP000827.2 KLG活性部位IVPBP:SGCモチーフから41AA上流:ENKDNAALADアーゼ:SFGモチーフから41AA上流:ERGV〉dbj/AP000827.2 ERSI3)〉dbj/AP000648.2/AP000648ホモサピエンス染色体11クローンCM活性部位IPBP:N末端から35AA上流:STTKNAALADアーゼ:N末端から38AA上流:STQK〉〉dbj/AP000648.2 NSRK活性部位IIPBP:STTKモチーフから57AA上流:SGC、SGNまたはSANNAALADアーゼ:STQKモチーフから59AA上流:SFG〉dbj/AP000648.2 SFG活性部位IIIPBP:SGCモチーフから111AA上流:KTGNAALADアーゼ:SFGモチーフから110AA上流:KLG〉dbj/AP000648.2 KLG活性部位IVPBP:SGCモチーフから41AA上流:ENKDNAALADアーゼ:SFGモチーフから41AA上流:ERGV〉dbj/AP000648.2 ERSI4)〉gb/AC074003.2/AC074003ホモサピエンス染色体2クローンRP11活性部位IPBP:N末端から35AA上流:STTKNAALADアーゼ:N末端から38AA上流:STQKgb/AC074003.2/AC074003 STQ−活性部位IIPBP:STTKモチーフから57AA上流:SGC、SGNまたはSANNAALADアーゼ:STQKモチーフから59AA上流:SFGgb/AC074003.2/AC074003 SFG活性部位IIIPBP:SGCモチーフから111AA上流:KTGNAALADアーゼ:SFGモチーフから110AA上流:KLGgb/AC074003.2/AC074003 KLG活性部位IVPBP:SGCモチーフから41AA上流:ENKDNAALADアーゼ:SFGモチーフから41AA上流:ERGVgb/AC074003.2/AC074003 ERGV5)〉emb/AL162372.6/AL162372ホモサピエンス染色体13クローンRP活性部位IPBP:N末端から35AA上流:STTKNAALADアーゼ:N末端から38AA上流:STQKemb/AL162372.6 STQ−活性部位IIPBP:STTKモチーフから57AA上流:SGC、SGNまたはSANNAALADアーゼ:STQKモチーフから59AA上流:SFGemb/AL162372.6 SFG活性部位IIIPBP:SGCモチーフから111AA上流:KTGNAALADアーゼ:SFGモチーフから110AA上流:KLGemb/AL162372.6 KLG活性部位IVPBP:SGCモチーフから41AA上流:ENKDNAALADアーゼ:SFGモチーフから41AA上流:ERGVemb/AL162372.6 ERGV6)gb/AC024234.5/AC024234ホモサピエンス染色体11クローンRP1活性部位IPBP:N末端から35AA上流:STTKNAALADアーゼ:N末端から38AA上流:STQKgb/AC024234.5/AC024234 STQ−活性部位IIPBP:STTKモチーフから57AA上流:SGC、SGNまたはSANNAALADアーゼ:STQKモチーフから59AA上流:SFGgb/AC024234.5/AC024234 SFG活性部位IIIPBP:SGCモチーフから111AA上流:KTGNAALADアーゼ:SFGモチーフから110AA上流:KLGgb/AC024234.5/AC024234 KLG活性部位IVPBP:SGCモチーフから41AA上流:ENKDNAALADアーゼ:SFGモチーフから41AA上流:ERGVgb/AC024234.5/AC024234 ERGV7)dbj/AP002369.1/AC002369ホモサピエンス染色体11クローンRP活性部位IPBP:N末端から35AA上流:STTKNAALADアーゼ:N末端から38AA上流:STQKdbj/AP002369.1 STQ−活性部位IIPBP:STTKモチーフから57AA上流:SGC、SGNまたはSANNAALADアーゼ:STQKモチーフから59AA上流:SFGdbj/AP002369.1 SFG活性部位IIIPBP:SGCモチーフから111AA上流:KTGNAALADアーゼ:SFGモチーフから110AA上流:KLGdbj/AP002369.1 KLG活性部位IVPBP:SGCモチーフから41AA上流:ENKDNAALADアーゼ:SFGモチーフから41AA上流:ERGVdbj/AP002369.1 ERGV【0021】脳において発現する上記各遺伝子配列がコードしているタンパク質が、β−ラクタムおよびその他のNAALAD阻害剤による、行動・認識活性化のためのかなり確かな標的となると考えられる。従って、本発明の一つの局面において、行動、および/または、認識を修飾する方法であって、上に同定された遺伝子配列の1個以上が発現する非NAALADアーゼタンパク質(単数または複数)の生物学的活性を、NAALADアーゼ阻害の可能な、β−ラクタム化合物またはその他の化合物の有効量を投与することによって阻害するステップを含む方法を提供する。【0022】ある実施形態では、各種製薬処方や、本発明の方法形態に有効に使用されるNAALAD阻害剤は、一般に、従来技術で既知のペニシリン結合性タンパク質に対して検出可能な選択的親和性を呈する化合物であり、そのようなペニシリン結合性タンパク質としては、特に、β−ラクタム含有化合物(以後「β−ラクタム化合物」)、例えば、ペニシリン類やセファロスポリン類、およびそのアナログ、ある種のβ−ラクタマーゼ阻害剤、および、アミノ酸配列Ala−D−γ−Glu−Lys−D−Ala−D−Alaを含むペプチドが挙げられる。このようなNAALADアーゼ阻害化合物の内、本発明に従って好ましく使用されるものは、好適な脳脊髄液(CSF)/脳血清濃度比によって証拠付けられる、良好な血液脳関門輸送特性をも呈する化合物である。さらに、他の、従来技術で既知のNAALAD阻害剤も、行動的、および/または、認識的障害の治療・予防のために、単独で、または、ペニシリン結合タンパク質と併用して使用が可能であることが了解されるであろう。【0023】行動を修飾し、および/または、認識機能を改善するために、神経原性NAALADアーゼの阻害に使用される製薬処方に向けられた、本発明の実施形態では、β−ラクタム化合物や、その他のNAALADアーゼ阻害化合物は−この中には、ペプチドや、それらの化合物のアナログも含まれるが−典型的には、必要であれば、血液脳関門を横切る薬剤輸送を強化することが知られている、他の化合物または分子実体と、それぞれ、併用して、または、その共有的接合体として、単位剤形として処方される。そのような薬剤処方/接合技術は、下記に列挙した米国特許に記述され、特許請求されている。すなわち、米国特許第5,624,894号、5,672,683号、5,525,727号、5,413,996号、5,296,483号、5,187,158号、5,177,064号、5,082,853号、5,008,257号、4,933,438号、4,900,837号、4,880,921号、4,824,850号、4,771,059号、および、4,540,564号である。【0024】脳におけるNAALADアーゼ阻害剤を含めた、薬剤物質の濃度強化は、下記の米国特許に記載されるもののようなP−糖タンパク流出性阻害剤と共同投与することによって実現が可能である。その米国特許とは、第5,889,007号、5,874,434号、5,654,304号、5,620,855号、5,643,909号、および、5,591,715号である。上記特許明細書を、引用することによって本明細書に緩用することを明言する。別実施形態として、本発明に有用なβ−ラクタム抗生化合物、その中には、ペニシリン類、セファロスポリン類、ペネム類、1−オキサ−1−デチアセフェム類、クラバム類、クラベム類、アゼチジノン類、カルバペナム類、カルバペネム類、および、カルバセフェム類が含まれるが、これらの化合物は単独で投与されてもよく、あるいは、それ自体、β−ラクタム化合物、または、ペニシリン結合タンパク質に対して選択的親和性を呈することが可能な化合物、であっても、または、そうでなくともよい、従来技術で既知のβ−ラクタマーゼ阻害剤と併用して投与されてもよい。認識または行動障害の治療および/または予防のために、本発明において有用な、単独で、または、他の神経ペプチダーゼ阻害剤と併用して使用が可能な、β−ラクタマーゼ阻害剤の例としては、独立に臨床的に著明な抗菌活性を呈しても、または、呈しなくともよい、他のβ−ラクタム化合物があり、それは例えば、クラブラン酸やチエナマイシンやそのアナログ、サルバクタム、タゾバクタム、サルタミシリン、および、アズトレオナムや、その他のモノラクタム類である。【0025】特許文献や、非特許文献にも、β−ラクタム抗生物質、その調製法、その特徴、その処方、および、その作用形式を記述する引用が多数存在する。β−ラクタム抗生物質は、細菌の細胞壁合成に関わる、1個以上の生物学的経路に干渉することによって、その抗菌活性を呈することが知られている。さらに詳細に言うと、β−ラクタム抗生物質は、細胞壁合成の建設用ブロックとして用いられるペプチドグリカン鎖の架橋に与る、カルボキシペプチダーゼ、および/または、トランスペプチダーゼ(またはプロテアーゼ)活性を阻害する。従って、β−ラクタム抗生物質は、一般に、ペニシリン結合タンパク質(PBP)と呼ばれる、一群の細菌酵素の内の1個以上に対して共有的に結合することによって、かつ、ある報告によれば、非共有的に会合的結合することによって、カルボキシペプチダーゼまたはトランスペプチダーゼの阻害剤として作用すると考えられている。これらの酵素は、ペプチドグリカン鎖を架橋することによって、細菌の細胞壁合成を完了させるのに役立つ。【0026】同様のペプチダーゼと基質の相互作用/阻害が、今、本発明において、認識能力や行動表現型にとって鍵となる、脳機能に与る重要な神経化学的経路として示唆されている。このような神経化学的機構はまた、Ala−D−γ−Glu−Lys−D−alanyl−D−alanineの有効量を直接脳中に搬送すると、脳における相当濃度のβ−ラクタム化合物によってもたらされるものと同じ行動特性修飾が得られるという発見によっても示唆される。このペプチドは、認識能力や、行動表現型を仲介する、ある種の神経化学的行程の正規の経過において、通常、ペプチド性神経伝達物質またはニューロモヂュレーター、すなわち、NAADに対して活性を示す、1個以上の神経原性ペプチダーゼ(例えば、NAALADアーゼ)の代用基質として働くようである。【0027】これまでの動物実験に基づき、本発明による有効量のNAALADアーゼ阻害剤の投与によって予防ないし治療の可能な、一般クラスの行動障害は、攻撃性障害、強迫障害、不安、鬱状態、および、注意力欠乏多動病(ADHD)を含むと考えられる。従って、本発明の一つの実施形態では、ペニシリン結合性タンパク質に結合することの可能なもの、例えば、β−ラクタム抗生物質またはβ−ラクタマーゼ阻害剤、および/または、C−末端アミノ酸配列acyl−D−alanyl−D−alanineを含む、細菌性タンパク質またはペプチド基質に対して選択的タンパク質分解活性から成る阻害を呈するもの、の中から選ばれたNAALAD阻害剤、あるいは、その他のNAALAD阻害剤が、自閉症、ツレット症候群、知恵遅れ、精神病、躁病、老人性痴呆の患者における、または、人格障害や、不適切な攻撃性の既往を有する患者における、衝動性や暴力をコントロールするための抗攻撃性剤として投与される。別の実施形態では、脱アミノグルタミン酸アナログ、または、N−置換グルタミン酸誘導体が、上記の病状を持つ患者の衝動性と暴力をコントロールするのに有効な量において投与される。【0028】本発明に従って治療の可能な、その他の神経学的病的状態としては、下記の大鬱病(単一エピソード、繰り返しエピソード、鬱性エピソード)が挙げられる。すなわち、非典型的、気分変調的、症候群形成レベル以下、誘発性、遅滞性、癌・糖尿病との共同疾患、心筋梗塞後疾患、退行性、二極性疾患、精神的不調、内因性および反応的、強迫的疾患、または、過食症である。さらに、NAALAD阻害剤は、下記に苦しむ患者の治療に使用が可能である。すなわち、痛み(単独投与であっても、モルフィン、コデイン、または、デキストロプロポシフェンとの併用であってもよい)、強迫性人格障害、精神的トラウマ後ストレス障害、高血圧、動脈硬化症、不安、神経性食欲不振、パニック、厭人症、吃音、睡眠障害、慢性疲労、アルツハイマー病と関連する知能障害、アルコール過飲、食欲障害、体重減少、広場恐怖症、記憶力改善、記憶消失、禁煙、ニコチン禁断症候群症状、月経前症候群と関連する、気分障害および/または食欲障害、月経前症候群と関連する、鬱気分および/または炭水化物欲求、気分障害、食欲障害またはニコチン禁断関連の常習性に導く障害、日周リズム障害、境界線上の人格障害、心気症、月経前症候群(PMS)、後黄体期不快障害、月経前不快障害、抜毛癖、他の抗鬱剤を中断した後に見られる症状、攻撃的/断続的爆発障害、強迫的賭博癖、強迫的浪費癖、強迫的性交癖、精神活性物質使用障害、性的障害、精神分裂病、早漏、または、ストレス・心配・怒り・拒絶感受性、および、精神的または肉体的エネルギーの欠如・から選ばれる精神的症状、である。【0029】本発明に従って治療可能と思われる、病理学的・精神病学的状態の他の例としては、中等度の知恵遅れ(318.00)、重度の知恵遅れ(318.10)、深刻な知恵遅れ(318.20)、非特異的知恵遅れ(319.00)、自閉障害(299.00)、拡散性発達障害NOS(299.80)、注意力不足多動障害(314.01)、行動障害、グループ型(312.20)、行動障害、孤立攻撃型(312.00)、行動障害、未分化型(312.90)、ツレット障害(307.23)、慢性的運動または発声チック障害(307.22)、一過性チック障害(307.21)、チック障害NOS(307.20)、アルツハイマー型一次退行性痴呆、老年期初発、合併症無し(290.00)、アルツハイマー型一次退行性痴呆、老年期初発、譫妄を伴う(290.30)、アルツハイマー型一次退行性痴呆、老年期初発、妄想を伴う(390.20)、アルツハイマー型一次退行性痴呆、老年期初発、鬱状態を伴う(290.21)、アルツハイマー型一次退行性痴呆、前老年期初発、合併症無し(290.10)、アルツハイマー型一次退行性痴呆、前老年期初発、譫妄を伴う(290.11)、アルツハイマー型一次退行性痴呆、前老年期初発、妄想を伴う(290.12)、アルツハイマー型一次退行性痴呆、前老年期初発、鬱状態を伴う(290.13)、多発梗塞性痴呆、合併症無し(290.40)、多発梗塞性痴呆、譫妄を伴う(290.41)、多発梗塞性痴呆、妄想を伴う(290.42)、多発梗塞性痴呆、鬱状態を伴う(290.43)、老人性痴呆NOS(290.10)、前老年期痴呆NOS(290.10)、アルコール禁断性譫妄(291.00)、アルコール幻覚症(291.30)、アルコール症に関連するアルコール痴呆(291.20)、アンフェタミンまたは類似作用を持つ交感神経様物質による中毒(305.70)、アンフェタミンまたは類似作用を持つ交感神経様物質による妄想障害(292.11)、大麻妄想障害(292.11)、コカイン中毒(305.60)、コカイン譫妄(292.81)、コカイン妄想障害(292.11)、幻覚剤による幻覚症(305.30)、幻覚剤による妄想障害(292.11)、幻覚剤による気分障害(292.84)、幻覚剤による幻覚剤服用後知覚障害(292.89)、フェンシクリジン(PCP)または類似作用を持つアリルシクロヘキシラミン中毒(305.90)、フェンシクリジン(PCP)または類似作用を持つアリルシクロヘキシラミン譫妄(292.81)、フェンシクリジン(PCP)または類似作用を持つアリルシクロヘキシラミン妄想障害(292.11)、フェンシクリジン(PCP)または類似作用を持つアリルシクロヘキシラミン気分障害(292.84)、フェンシクリジン(PCP)または類似作用を持つアリルシクロヘキシラミン器官的精神障害NOS(292.90)、他のまたは非特定的精神活性物質中毒(305.90)、他のまたは非特定的精神活性物質譫妄(292.81)、他のまたは非特定的精神活性物質痴呆(292.82)、他のまたは非特定的精神活性物質妄想障害(292.11)、他のまたは非特定的精神活性物質幻覚症(292.12)、他のまたは非特定的精神活性物質気分障害(292.84)、他のまたは非特定的精神活性物質不安障害(292.89)、他のまたは非特定的精神活性物質人格障害(292.89)、他のまたは非特定的精神活性物質器官的精神障害NOS(292.90)、譫妄(293.00)、痴呆(294.10)、器官的妄想障害(293.81)、器官的幻覚症(293.81)、器官的気分障害(293.83)、器官的不安障害(294,80)、器官的人格障害(310.10)、器官的精神障害(29.80)、強迫障害(300.30)、精神性トラウマ後ストレス障害(309.89)、漠然不安障害(300.02)、不安障害NOS(300.00)、体異型障害(300.70)、心気症(または心気症的神経症)(300.70)、身体化障害(300.81)、未分化体型障害(300.70)、体型障害NOS(300.70)、断続的爆発障害(312.34)、盗癖(312.32)、病的賭博(312.31)、放火癖(312.33)、抜毛癖(312.39)、および、衝動コントロール障害NOS(312.39)、が挙げられるが、ただしそれらに限定されない。【0030】本発明に記載されるβ−ラクタム含有プロテアーゼ阻害剤によって治療可能と思われる、病理学的・精神病学的状態の追加の例としては、分裂病、カタトニー性、亜慢性(295.21)、分裂病、カタトニー性、慢性(295.22)、分裂病、カタトニー性、亜慢性で急性悪化を伴う(295.23)、分裂病、カタトニー性、慢性で急性悪化を伴う(295.24)、分裂病、カタトニー性、寛解中(295.55)、分裂病、カタトニー性、非特異的(295.20)、分裂病、解体型、慢性(295.12)、分裂病、解体型、亜慢性で急性悪化を伴う(295.13)、分裂病、解体型、慢性で急性悪化を伴う(295.14)、分裂病、解体型、寛解中(295.15)、分裂病、解体型、非特異的(295.10)、分裂病、妄想型、亜慢性(295.31)、分裂病、妄想型、慢性(295,32)、分裂病、妄想型、亜慢性で急性悪化を伴う(295,33)、分裂病、妄想型、慢性で急性悪化を伴う(295,34)、分裂病、妄想型、寛解中(295,35)、分裂病、妄想型、非特異的(295,30)、分裂病、未分化、亜慢性(295.91)、分裂病、未分化、慢性(295.92)、分裂病、未分化、亜慢性で急性悪化を伴う(295.93)、分裂病、未分化、慢性で急性悪化を伴う(295.94)、分裂病、未分化、寛解中(295.95)、分裂病、未分化、非特異的(295.90)、分裂病、残遺性、亜慢性(295.61)、分裂病、残遺性、慢性(295.62)、分裂病、残遺性、亜慢性で急性悪化を伴う(295.63)、分裂病、残遺性、慢性で急性悪化を伴う(295.94)、分裂病、残遺性、寛解中(295.65)、分裂病、残遺性、非特異的(295.60)、妄想(パラノイア性)障害(297.10)、短期反応性精神病(298.80)、分裂病型障害(295.40)、分裂誘導性障害(295.70)、誘発性精神障害(297.30)、精神障害NOS(非典型的精神病)(298.90)、二極性障害、混合型、重度、精神病特質無し(296.63)、二極性障害、躁的、重度、精神病特質無し(296.43)、二極性障害、鬱的、重度、精神病特質無し(296.53)、二極性障害、混合型、精神病特質無し(296.64)、二極性障害、躁的、精神病的特質無し(296.44)、二極性障害、鬱的、精神病特質無し(296.54)、二極性障害NOS(296.70)、大鬱病、単一エピソード、精神病特質無し(296.24)、大鬱病、精神病特質を伴う頻回エピソード(296.34)、人格障害、パラノイア性(301.00)、人格障害、分裂性(301.20)、人格障害、分裂型(301.22)、人格障害、反社会的(301.70)、人格障害、境界線上(301.83)、が挙げられる。【0031】本発明に従って治療が可能と思われる不安障害としては、不安障害(235)、パニック障害(235)、広場恐怖症を伴うパニック障害(300.21)、広場恐怖症を伴わないパニック障害(300.01)、パニック障害の既往を伴わない広場恐怖症(300.22)、対人恐怖症(300.23)、単純恐怖症(300.29)、器官的不安障害(294.80)、精神活性物質不安障害(292.89)、隔離不安障害(309.21)、幼児期または思春期における回避的障害(313.21)、および、過度の不安障害(313.00)が挙げられるが、ただしそれらに限定されない。【0032】有効量のNAALADアーゼ阻害剤、特に、本明細書に記載されるβ−ラクタム化合物は、下記の、病理学的・精神病学的状態の治療に使用が可能である。すなわち、中等度の知恵遅れ;重度の知恵遅れ;深刻な知恵遅れ;自閉障害;注意力不足多動障害;拡散性発達障害NOS;行動障害、グループ型;行動障害、孤立攻撃型;ツレット障害;アルツハイマー型一次退行性痴呆、老年期初発、譫妄を伴う;アルツハイマー型一次退行性痴呆、老年期初発、妄想を伴う;アルツハイマー型一次退行性痴呆、前老年期初発;分裂病、カタトニー性、亜慢性;分裂病、カタトニー性、慢性;分裂病、カタトニー性、亜慢性で急性悪化を伴う;分裂病、カタトニー性、慢性で急性悪化を伴う;分裂病、カタトニー性、寛解中;分裂病、カタトニー性、非特異的;分裂病、解体型、亜慢性;分裂病、解体型、慢性;分裂病、解体型、亜慢性で急性悪化を伴う;分裂病、解体型、慢性で急性悪化を伴う;分裂病、解体型、寛解中;分裂病、解体型、非特異的;分裂病、妄想型、亜慢性;分裂病、妄想型、慢性;分裂病、妄想型、亜慢性で急性悪化を伴う;分裂病、妄想型、慢性で急性悪化を伴う;分裂病、妄想型、寛解中;分裂病、妄想型、非特異的;分裂病、未分化、亜慢性;分裂病、未分化、慢性;分裂病、未分化、亜慢性で急性悪化を伴う;分裂病、未分化、慢性で急性悪化を伴う;分裂病、未分化、寛解中;分裂病、未分化、非特異的;分裂病、残遺性、亜慢性;分裂病、残遺性、慢性;分裂病、残遺性、亜慢性で急性悪化を伴う;分裂病、残遺性、慢性で急性悪化を伴う;分裂病、残遺性、寛解中;分裂病、残遺性、非特異的;妄想(パラノイア性)障害;短期反応性精神病;分裂病型障害;分裂誘導性障害;誘発性精神障害;精神障害NOS(非典型的精神病);二極性障害、混合型、精神病特質を伴う;二極性障害、躁的、精神病特質を伴う;二極性障害、鬱的、精神病特質を伴う;二極性障害NOS、大鬱病、単一エピソードまたは頻回エピソード、精神病特質を伴う;人格障害、パラノイア性;人格障害、分裂性;人格障害、分裂型;人格障害、反社会的;人格障害、境界線上;不安障害;パニック障害;広場恐怖症を伴うパニック障害;広場恐怖症を伴わないパニック障害;パニック障害の既往を伴わない広場恐怖症;対人恐怖症;単純恐怖症;強迫障害;精神的トラウマ後ストレス障害;漠然不安障害;不安障害NOS;器官的不安障害;精神活性物質不安障害;隔離不安障害;幼児期または思春期における回避的障害;および、過度の不安障害が挙げられるが、ただしそれらに限定されない。【0033】下記の精神病学的状態の治療に、特に、向神経性β−ラクタム抗生物質、またはβ−ラクタマーゼ阻害剤を含む、1個以上の神経原性NAALADアーゼ阻害剤が、単独で、または、P−糖タンパク質阻害剤と併用して使用が可能である。すなわち、分裂病、カタトニー性、亜慢性;分裂病、カタトニー性、慢性;分裂病、カタトニー性、亜慢性で急性悪化を伴う;分裂病、カタトニー性、慢性で急性悪化を伴う;分裂病、カタトニー性、寛解中;分裂病、カタトニー性、非特異的;分裂病、解体型、亜慢性;分裂病、解体型、慢性;分裂病、解体型、亜慢性で急性悪化を伴う;分裂病、解体型、慢性で急性悪化を伴う;分裂病、解体型、寛解中;分裂病、解体型、非特異的;分裂病、妄想型、亜慢性;分裂病、妄想型、慢性;分裂病、妄想型、亜慢性で急性悪化を伴う;分裂病、妄想型、慢性で急性悪化を伴う;分裂病、妄想型、寛解中;分裂病、妄想型、非特異的;分裂病、未分化、亜慢性;分裂病、未分化、慢性;分裂病、未分化、亜慢性で急性悪化を伴う;分裂病、未分化、慢性で急性悪化を伴う;分裂病、未分化、寛解中;分裂病、未分化、非特異的;分裂病、残遺性、亜慢性;分裂病、残遺性、慢性;分裂病、残遺性、亜慢性で急性悪化を伴う;分裂病、残遺性、慢性で急性悪化を伴う;分裂病、残遺性、寛解中;分裂病、残遺性、非特異的;妄想(パラノイア性)障害;短期反応性精神病;分裂病型障害;分裂誘導性障害;誘発性精神障害;精神障害NOS(非典型的精神病);二極性障害、混合型、精神病特質を伴う;二極性障害、躁的、精神病特質を伴う;二極性障害、鬱的、精神病特質を伴う;二極性障害NOS;人格障害、パラノイア性;人格障害、分裂性;人格障害、分裂型;人格障害、反社会的;人格障害、境界線上、である。【0034】本発明に従ってもっとも好適に治療される、精神病状態の例としては、分裂病、カタトニー性、亜慢性;分裂病、カタトニー性、慢性;分裂病、カタトニー性、亜慢性で急性悪化を伴う;分裂病、カタトニー性、慢性で急性悪化を伴う;分裂病、カタトニー性、寛解中;分裂病、カタトニー性、非特異的;分裂病、解体型、亜慢性;分裂病、解体型、慢性;分裂病、解体型、亜慢性で急性悪化を伴う;分裂病、解体型、慢性で急性悪化を伴う;分裂病、解体型、寛解中;分裂病、解体型、非特異的;分裂病、妄想型、亜慢性;分裂病、妄想型、慢性;分裂病、妄想型、亜慢性で急性悪化を伴う;分裂病、妄想型、慢性で急性悪化を伴う;分裂病、妄想型、寛解中;分裂病、妄想型、非特異的;分裂病、未分化、亜慢性;分裂病、未分化、慢性;分裂病、未分化、亜慢性で急性悪化を伴う;分裂病、未分化、慢性で急性悪化を伴う;分裂病、未分化、寛解中;分裂病、未分化、非特異的;分裂病、残遺性、亜慢性;分裂病、残遺性、慢性;分裂病、残遺性、亜慢性で急性悪化を伴う;分裂病、残遺性、慢性で急性悪化を伴う;分裂病、残遺性、寛解中;分裂病、残遺性、非特異的;妄想(パラノイア性)障害;短期反応性精神病;分裂病型障害;分裂誘導性障害;人格障害、分裂性;および、人格障害、分裂型が挙げられる。【0035】本発明の一つの好ましい局面において、不安症に対する治療法が供給される。本法および本発明の製薬処方によって治療される不安障害の例としては、不安障害;パニック障害;広場恐怖症を伴うパニック障害;広場恐怖症を伴わないパニック障害;パニック障害の既往を伴わない広場恐怖症;対人恐怖症;単純恐怖症;強迫障害;精神的トラウマ後ストレス障害;漠然不安障害;不安障害NOS;器官的不安障害;精神活性物質不安障害;隔離不安障害;幼児期または思春期における回避的障害;および、過度の不安障害が挙げられる。【0036】もっとも好適に治療される不安障害の例としては、パニック障害;対人恐怖症;単純恐怖症;強迫障害;精神的トラウマ後ストレス障害;漠然不安障害;および、不安障害NOSが挙げられる。【0037】本発明の方法と処方において、神経化学的機能剤として使用されるNAALADアーゼ阻害剤は、本発明の一つの実施形態では、ペニシリン結合性タンパク質に結合することによって(これは、例えば、B.G.Spratt,Properties of the penicillin−binding proteins of Escherichia coli K12,Eur.J.Biochem.,72:341−352(1977)およびN.H.Georgopapadakou,S.A.Smith,C.M.Cimarusti,and R.B.Sykes,Binding of monolactams to peniclline−binding proteins of Escherichia coli and Straphylococcus aureus:Relation to antibacterial activity,Antimicrob.Agents Chemother.,23:98−104(1983)によって記載される方法によって定量される)、かつ、抗生物質の場合ならば、Ala−D−γ−Glu−Lys−D−alanyl−D−alanineを含むペプチド基質に対する、カルボキシペプチダーゼおよび/またはトランスペプチダーゼ活性の選択的阻害によって、特徴付けられる。そのような化合物としては、特に、β−ラクタム化合物が挙げられる。本発明に従って使用される、好ましいβ−ラクタム化合物は、ペニシリン類、セファロスポリン類、および、単環および双環のアナログ、および/または、その誘導体である。本発明の方法、および、製薬処方の製造に使用される市販の抗生物質としては、ペナム類、セフェム類、1−オキサ−1−デチア・セフェム類、クラバム類、クラベム類、アゼチジノン類、カルバペナム類、カルバペネム類、および、カルバセフェム類が挙げられる。【0038】下記の化合物は、本発明に従って使用されるβ−ラクタム化合物を例示するものである。【0039】ここに、V=−CO2M,SO3M,SO2M,PO3M2,PO2Mであって、ここに、M=H、または、薬学的に許容しうる塩、または、エステル形成基であり、C1キラル性はRでもSでもよく、各エピマーは、独自の生物活性を持ち、X=O,R1=低級アルコキシル、好ましくはメトキシであり、Y=OM、M=H、薬学的に許容し得る塩、または、活性を持つエステル形成基であり、例えば、1−インダニル、ピバロイロキシメチル、アセトキシメチルであり、かつ、ここに、R2=低級アルキル、好ましくはメチル、または、分枝鎖低級アルキルである。【0040】ここに、V=−CO2M,SO3M,SO2M,PO3M2,PO2Mであって、ここに、M=H、または、薬学的に許容しうる塩、または、エステル形成基であり、C1キラル性はRでもSでもよく、各エピマーは、独自の生物活性を持ち、X=O,R1=H、Y=OM、M=H、薬学的に許容し得る塩、または、活性を持つエステル形成基であり、例えば、1−インダニル、ピバロイロキシメチル、アセトキシメチルであり、かつ、ここに、R2=低級アルキル、好ましくはメチル、または、分枝鎖低級アルキルである。【0041】ここに、V=−CO2M,SO3M,SO2M,PO3M2,PO2Mであって、ここに、M=H、または、薬学的に許容しうる塩、または、エステル形成基であり、C1キラル性はRでもSでもよく、各エピマーは、独自の生物活性を持ち、X=S,S=O,SO2、R1=低級アルコキシ、好ましくはメトキシ、Y=OM、M=H、薬学的に許容し得る塩、または、活性を持つエステル形成基であり、例えば、1−インダニル、ピバロイロキシメチル、アセトキシメチルであり、かつ、ここに、R2=低級アルキル、好ましくはメチル、または、分枝鎖低級アルキルである。【0042】ここに、V=−CO2M,SO3M,SO2M,PO3M2,PO2Mであって、ここに、M=H、または、薬学的に許容しうる塩、または、エステル形成基であり、C1キラル性はRでもSでもよく、各エピマーは独自の生物活性を持ち、X=S,S=O,SO2、R1=H、Y=OM、M=H、薬学的に許容し得る塩、または、活性を持つエステル形成基であり、例えば、1−インダニル、ピバロイロキシメチル、アセトキシメチルであり、かつ、ここに、R2=低級アルキル、好ましくはメチル、または、分枝鎖低級アルキルである。【0043】ここに、V=−CO2M,SO3M,SO2M,PO3M2,PO2Mであって、ここに、M=H、または、薬学的に許容しうる塩、または、エステル形成基であり、C1キラル性はRでもSでもよく、各エピマーは独自の生物活性を持ち、X=CR1=低級アルコキシル、好ましくはメトキシであり、Y=OM、M=H、薬学的に許容し得る塩、または、活性を持つエステル形成基であり、例えば、1−インダニル、ピバロイロキシメチル、アセトキシメチルであり、かつ、ここに、R2=低級アルキル、好ましくはメチル、または、分枝鎖低級アルキルである。【0044】ここに、V=−CO2M,SO3M,SO2M,PO3M2,PO2Mであって、ここに、M=H、または、薬学的に許容しうる塩、または、エステル形成基であり、C1キラル性はRでもSでもよく、各エピマーは独自の生物活性を持ち、X=CR1=H、Y=OM、M=H、薬学的に許容し得る塩、または、活性を持つエステル形成基であり、例えば、1−インダニル、ピバロイロキシメチル、アセトキシメチルであり、かつ、ここに、R2=低級アルキル、好ましくはメチル、または、分枝鎖低級アルキルである。【0045】ここに、V=−CO2M,SO3M,SO2M,PO3M2,PO2Mであって、ここに、M=H、または、薬学的に許容しうる塩、または、エステル形成基であり、C1キラル性はRでもSでもよく、各エピマーは独自の生物活性を持ち、X=CR1=H、Y=OM、M=H、薬学的に許容し得る塩、または、活性を持つエステル形成基であり、例えば、1−インダニル、ピバロイロキシメチル、アセトキシメチルであり、かつ、T=C1,F,Br,I,CH3,C2−C4アルキル、ヘテロアリルを含むアリル、S−アルキル、S−ヘテロアリルを含むS−アリル、SO3R(R=H、アルキル、アリル)、SO2R(R=H、アルキル、アリル)、N−アルキル2、N−アリル2、CO2R(R=H、アルキル)、P−アルキル2、P−アリル2、PO3R2(R=H、アルキル、アリル)ここに、V=−CO2M,SO3M,SO2M,PO3M2,PO2Mであって、ここに、M=H、または、薬学的に許容しうる塩、または、エステル形成基であり、C1キラル性はRでもSでもよく、各エピマーは独自の生物活性を持ち、X=CR1=低級アルコキシル、好ましくはメトキシ、Y=OM、M=H、薬学的に許容し得る塩、または、活性を持つエステル形成基であり、例えば、1−インダニル、ピバロイロキシメチル、アセトキシメチルであり、かつ、T=C1,F,Br,I,CH3,C2−C4アルキル、ヘテロアリルを含むアリル、S−アルキル、S−ヘテロアリルを含むS−アリル、SO3R(R=H、アルキル、アリル)、SO2R(R=H、アルキル、アリル)、N−アルキル2、N−アリル2、CO2R(R=H)アルキル)、P−アルキル2、P−アリル2、PO3R2(R=H、アルキル、アリル)ここに、V=−CO2M,SO3M,SO2M,PO3M2,PO2Mであって、ここに、M=H、または、薬学的に許容しうる塩、または、エステル形成基であり、C1キラル性はRでもSでもよく、各エピマーは独自の生物活性を持ち、X=OR1=低級アルコキシル、好ましくはメトキシ、Y=OM、M=H、薬学的に許容し得る塩、または、活性を持つエステル形成基であり、例えば、1−インダニル、ピバロイロキシメチル、アセトキシメチルであり、かつ、ここに、R2=低級アルキル、好ましくはメチル、または、分枝鎖低級アルキルである。【0046】本発明に一致するものは、それぞれ化学式III、IV、III’およびIV’の化合物であり、同式において、W、V、X、R1、Y、MおよびZの各基は、それぞれ、化合物Ia−Ifについて定義される通りである。【0047】本発明に従って使用される、他の好適な化合物、IXa−IXf,Xa−Xf,XIa−XIf,XIIa−XIIf,XI’a−XI’fおよびXII’a−XII’fは、それぞれ、化学式IX、X、XI、XII、XI’およびXII’の化合物であり、同式において、W、V、X、R1、Y、およびMの各基は、それぞれ、化合物Ia−Ifと定義され、基Tは、それぞれ、化合物IgおよびIhの場合と同様に定義される。【0048】本発明に従って使用される好適な化合物の、別のグループは、XIIIa−XIIIf,XIVa−XIVf,XVa−XVf,XVIa−XVIf,XV’a−XV’fおよびXVI’a−XVI’fは、それぞれ、化学式XIII、XIV、XV、XVI、XV’およびXVI’の化合物であり、同式において、W、V、X、R1、Y、およびMの各基は、それぞれ、化合物Ia−Ifと定義され、基Tは、それぞれ、化合物IgおよびIhの場合と同様に定義される。【0049】本発明に従って使用される好適な化合物の、さらに別のグループは、それぞれ、化合物XVIIa−XVIIf,XVIIIa−XVIIIf,XIXa−XIXf,XXa−XXfであり、同式において、W、V、X、R1、MおよびYの各基は、それぞれ、化合物Ia−Ifの場合と同様に定義される。【0050】本発明の一つの実施形態では、プロテアーゼ阻害剤は、の化学式の化合物である。ここに、Rは水素、塩形成基または活性を持つエステル形成基;R1は、水素またはC1−C4アルコキシ;TはC1−C4アルキル、(クロリ、フルロ、ビオモおよびイオドを含む)ハロ、ヒドロキシ、O(C1−C4)アルキル、または、−CH2Bであり、ここに、Bは、求核性B:Hの残基であり、アシルは、有機酸アシルOHの残基である。【0051】このような市販化合物(1−アルコキシ−1−デチア・セフェム類)の例は、モキサラクタムとフロモキセフである。モキサラクタムは、米国特許第4,323,567号に記述され、特許請求されているが、この明細書を、引用することにより本明細書に緩用することを明言する。モキサラクタムは、良好な血液脳関門通過輸送特性を持ち、そのため、血液/血清濃度に対して、脳において同化合物は比較的高い濃度比を実現するので、特に好ましい。【0052】本発明の別の実施形態では、臨床的に効果的な抗生物質の組織濃度を実現するために取られる非経口投与に関して詳述されるモキサラクタム、または、別の市販のβ−ラクタム抗生物質(または、その誘導体ないしアナログ)は、対応するモノ−またはビス−活性エステルに変換される。これは、前記化合物の経口吸収を向上させ、それによって、血清濃度においては臨床的な抗生物質効力をもたらすには不充分であっても、脳において神経原性プロテアーゼ活性を阻害し、同時に行動・認識能力の改善をもたらすには十分な程の濃度に達せしめるためである。【0053】別実施形態として、N−置換グルタミン酸誘導体、または、2−デアミノ2−置換グルタミン酸アナログは、対応する、活性を持つエステル誘導体に変換される。好適な、生体内で加水分解可能な(活性を持つ)エステルグループとしては、例えば、アセトキシメチル、ピバロイロキシメチル、β−アセトキシエチル、β−ピバロイロキシエチル、1−(シクロヘキシルカルボニロキシ)プロプ−1−イル、および、(1−アミノエチル)カルボニロキシメチルのようなアシロキシアルキル・グループ;エトキシカルボニロキシメチル、および、アルファ−エトキシカルボニロキシエチルのようなアルコキシカルボニロキシアルキル・グループ;エトキシカルボニロキシメチル、および、β−エトキシカルボニロキシエチルのようなジアルキルアミノアルキル・グループ;ジアルキルアミノアルキル・グループ、特に、ジ−低級アルキルアミノアルキル・グループで、ジメチラミノメチル、ジメチラミノエチル、ジエチラミノメチル、または、ジエチラミノエチル等;2−(イソブトキシカルボニル)ペント−2−エニル、および、2−(エトキシカルボニル)ブト−2−エニルのような2−(アルコキシカルボニル)−2−アルケニル・グループ;フタリジル、および、ジメトキシフタリジルのようなラクトン・グループ;および、もう一つのβ−ラクタム抗生物質、または、β−ラクタマーゼ阻害剤と結合したエステル類が挙げられる。市販の、非経口投与性、β−ラクタム抗生物質の、このような化学的修飾の例としては、モキサラクタム(Ia,Y=OH,R1=OCH3,およびV=COMで、ここにM=OH)において、その活性を持つエステルアナログIaの調製があり、その場合、Y=OM、M=Hまたは活性を持つエステル、例えば、1−インダニル、および、V=CO2Mであり、ここにMはH、または、活性を持つエステルであり、また、VとYの内の少なくとも一つは、活性性エステル半量体を含む。【0054】上に同定されたβ−ラクタム抗生物質、または、グルタミン酸誘導体、または、アナログの、カルボキシル基の、製薬学的に好適に受容可能な塩としては、金属塩、例えば、ナトリウムやカリウムのようなアルカリ金属塩、カルシウムやマグネシウムのようなアルカリ土類金属塩、および、アンモニア塩または置換アンモニア塩で、例えば、トリエチラミンのような低級アルキルアミン、2−ヒドロキシエチラミン、ビス−(2−ヒドロキシエチル)アミン、または、トリス−(2−ヒドロキシエチル)アミンのようなヒドロキシ−低級アルキラミン、または、ジシクロヘキシラミンのようなシクロアルキラミンによって置換されるもの;あるいは、プロカイン、ジベンジラミン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、1−エフェナミン、N−メチルモルフォリン、N−エチルピペリジン、N−ベンジル−▲黒四角▼−フェネチラミン、デヒドロアビエチラミン、N,N’−ビスデヒドロアビエチラミン、エチレンジアミン、teピリジン型の塩基、例えば、ピリジン、コリジンまたはキノリン、または、既知のペニシリン類やセファロスポリン類と共に塩を形成するのに使用される、他のアミン類によって置換されるもの、が挙げられる。他の、有用な塩としては、リチウム塩および銀塩が挙げられる。式(I)に含まれる化合物内部の塩は、通常のやり方の塩置換によって調製が可能である。【0055】本発明の別の実施形態では、下式のペニシリンまたはペニシリンアナログが、NAALADアーゼ阻害剤として使用される。前記式において、X=O,S,SO,SO2またはCであり;RはHまたは薬学的に許容し得る塩形成基またはエステル形成基であり;R1はHまたは低級アルコキシであり;Gは水素かヒドロキシであり;Zはアミノ、アシラミノ、CO2M SO3M PO3M2またはPO2Mであり、ここにMは、水素または薬学的に許容し得る塩形成基またはエステル形成基、好ましくは、活性を持つエステル形成基である。【0056】非抗生物質、または、弱い抗生物質であるペナムやセフェム、または、セフェムスルフォキシドやスルフォン、および、構造的に関連するβ−ラクタマーゼ阻害剤、例えば、タゾバクタム、クラブラン酸やスルバクタム等は、抗生物質耐性の発達が問題となる用途においては特に有用である。【0057】使用され、修飾され、あるいは、本発明に従ってその効力を最適化するよう処方される、市販のβ−ラクタム抗生物質には様々のものがある。そのような化合物の例として、セファマンドールナファート(マンドール)セファゾリンナトリウム(ゾリセフ、アンセフ、ケフゾール)セフメタキソールナトリウム(ゼーガゾン)セフォノシドナトリウム(モノシド)セフォペラゾンナトリウム(セフォビド)セフォラニド(プレセフ)セフォタキシムナトリウム(クラフォラン)セフォテタンナトリウム(セフォタン、アパテフ)セフォキシチンナトリウム(メフォキシン)セフタジジム(セプタズ、フォルタズ、タジセフ、タジジム)セフチゾキシムナトリウム(ケフロックス、ジナセフ)セフトリアキソン(ロセフィン)セフトリアキソンナトリウム(ロセフィン)セフロキシム注射剤(ケフロックス、ジナセフ)セフラジン注射剤(ベロセフ注射剤)セファロチンナトリウム(ケフリン、セフィン)セファピリンナトリウム(セファジル)モキサラクタム(モキサム)アモキシシリン(アモキシル、ポリモックス)アモキシシリンおよびクラブラン酸塩(アウグメンチン)アンピシリン(オムニペン、プリンシペン)アンピシリンおよびスルバクタム(ウナシン)アズロシリン(アズリン)バカンピシリン(スペクトロビド)カルベニシリン(ゲオシリン、ゲオペン)セファクロール(セクロール)セフダドロキシル(ヅリセフ、ウルトラセフ)セファマンドール(マンドール)セファゾリンナトリウム(アンセフ、ケフゾール)セフィキシン(スプラックス)セフメタゾールナトリウム(ゼファゾン)セフォニシド(モノシド)セフォペラゾン(セフォビド)セフォラニド(プレセフ)セフォタキシム(クラアフォラン)セフォテタン(セフォタン)セフォトキシン(メフォキシン)セフプロジル注射剤セフプロジル経口剤(セフジル)セフタジジム(セプタズ、フォルタックス)セフチゾキシム(セフィゾックス)セフトリアキソン(ロセフィン)セフロキシム(セフチン、ジナセフ)セファレキシン(ケフレックス、ケフタブ)セファロチン(ケフリン)セファピリン(セファヂル)セフラジン(アンスポル、ベロセフ)クロキサシリン(クロキサペン、テゴペン)シクラシリンジクロキサシリン(ジシル、パトシル)ロラカルベフ注射剤ロラカルベル経口剤メチシリン(スタフシリン)メズロシリン(メズリン)モキサラクタム(モキサム)ナフシリン(ナフシル、ウニペン)オキサシリン(バクトシル、プロスタフリン)ペニシラミン(クプリミン、デペン)ペニシリンG(ウィシリン、ペンチド、ビシリンLA)ペニシリンV(ベーチド、V−シリンK)ピペラシリン(ピプラシル)チカルシリン(チカル)チカルシリンおよびクラブラン酸塩(チメンチン)【0058】その他の市販のβ−ラクタム抗生物質としては、典型的には、シラスタチン(腎臓酵素による分解を防止する)と併用して投与されるイミペネム(プリマキシン)が挙げられる。他のβ−ラクタム抗生物質としては、メロペネム(メロネム/ゼネカ)、および、アズトレオナム(アザセタム)が挙げられる。その他のペネム類としては、ビアペネム、パニペネム、カルモナム、および、リチペナムが挙げられる。従来技術で既知のβ−ラクタマーゼ阻害剤で、同時にNAALADアーゼの交差阻害を示し、かつ、独立の抗生物質活性を示しても、示さなくともよいものは、本発明において特に有用である。【0059】非経口投与用として詳細に記載された、上記β−ラクタム抗生物質化合物は、前述したように、経口吸収を改善するために、活性を持つそのエステル誘導体となるよう修飾が可能であり、それによって、神経原性プロテアーゼを阻害するのには十分な程の脳中濃度を達成しながら、かといって、臨床的に有効な抗生物質の血中濃度を実現するのには必ずしも十分でない、そのような目標の達成を目指すことができる。その抗生物質作用のために、プロテアーゼ仲介性細胞壁合成の阻害に依存する、その他の抗生物質、例えば、ガンマラクトン類、および/または、キノリン抗生物質も、本発明には有用である。【0060】β−ラクタム化合物活性に関して仮定された機構を介して神経原性ペプチダーゼ阻害の実行が可能な、その他の化合物は、従来技術で既知の、分子発見技法、例えば、米国特許第5,552,543号に記載のものを用いて同定が可能である。この明細書を、引用することによって本明細書に緩用することを明言する。この特許は、ペニシリン結合性タンパク質とβ−ラクタム抗生物質の間に見られる、抗菌活性、および、「鍵穴と鍵」相互作用の間の相関を検出するアルゴリスムを記載している。このような分子モデル法は、良好な血液脳関門輸送効率を持つ化合物を同定するための、他の薬剤モデル法(例えば、PCT国際公開公報第WO99/10522号に記載されているもので、その記載を、引用することによって本明細書に緩用することを明言する)とも相関させることが可能である。これによって、本発明の実施形態に従って使用した場合、最高に効果的な化合物を同定することが可能になる。従って、本発明による神経原性NAALADアーゼを標的とした治療においては、本発明において有用な化合物は、標的とされる神経原性プロテアーゼ(NAALADアーゼ)の阻害剤として活性を持つばかりでなく、その化合物が、ある閾値程度の効率で、血液脳関門を通過して輸送され、脳中において、同薬剤の、プロテアーゼ阻害有効濃度を供給することが可能になることが重要である。この血液脳関門輸送特性は、内在的に、化合物構造に由来することがあり、あるいは、そのような化合物を処方したり、または、他の化学的実体に結合させ、それによって、血液脳関門輸送を強化するようにしてもよい。血液脳関門輸送を強化するための、化合物の処方や調製法に向けては、従来から相当の研究・開発がなされており、また、そのような技法を、本発明において有用なプロテアーゼ阻害剤およびそのためのアジュバントの脳中濃度強化のために応用することが可能である。【0061】動物実験から、モキサラクタムの閾値有効濃度(非経口投与)は、体重kg当り約50μgであることが示されている。動物実験データ、および、非経口投与モキサラクタムの、脳およびその他の生体組織間における既知の分布に基づいて、脳における、モキサラクタムの、神経原性プロテアーゼ阻害のための、有効最小濃度は約30nMであることが示される。クラブラン酸は、体重kg当り1マイクログラム未満で腹腔内投与されると、神経原性NAALADアーゼに対して効果的な阻害剤となることが判明している。本発明に従って、行動および/または認識障害の治療に用いる際の、NAALADアーゼ阻害剤の有効投与濃度範囲は、患者の体重;その阻害剤の、標的神経原性プロテアーゼに対する親和性;その活性化合物の、血液脳関門輸送特性;投与法;および、血液脳関門輸送強化のために利用可能な薬剤処方・接合技法の、その特殊の場合における選択的使用等に大きく依存する。非経口投与モキサラクタムの場合、ハムスターや、その他の実験動物種における有効最小用量は、体重kg当り約50マイクログラム、または、その前後である。モキサラクタムを、好ましくは修飾して、または、活性エステルの形の誘導体として、経口剤形で用いた場合、その有効用量は、治療的に有効な抗生濃度を与えるのに必要なモキサラクタム用量よりも遥かに低い、約2.5から約50mgの範囲にあると推定されている。クラブラン酸塩の有効経口用量は、1回用量当り約0.1から約10mgと予想される。クラブラン酸塩は経口的に吸収され、かつ、良好な血液脳関門輸送を示す。【0062】他のプロテアーゼ阻害剤の有効用量も、標的プロテアーゼに対する内在的親和性;選択された投与ルート;患者の体重;および、血液脳関門輸送効率に依存して変動する。本発明に従って使用されるNAALAD阻害剤の有効用量は、動物モデルを、従来技術で既知の分析技法と結合して用いることによって簡単に経験的に決定することが可能である。典型的には、本発明の方法・処方に使用されるβ−ラクタム抗生物質化合物の用量レベルは、臨床的に有効な抗生レベルを達成するのに必要な量よりも遥かに低い。β−ラクタム抗生化合物の非経口用量は、1回投与当り約1から約80mgの範囲にあることが可能である。経口用量は、1回投与当り約2.5から約150mgの範囲にあることが可能である。患者の状態によって、主治医がその必要性を判断すれば、それよりも高い投与量、または、低い投与量を、本発明に従って好適に使用することが可能である。従って、例えば、患者/臨床状態が、β−ラクタム化合物の内在的抗生活性が、合併症誘発性不適合をもたらさないと判断される程度のものである場合、その抗生物質のさらに高い用量、最大、臨床的に有効な閾値抗生物質血液濃度を与えることが可能な用量レベルまで、または、そのレベルを越える用量を、本発明によるNAALADアーゼ阻害によってもたらされる治療を必要とする患者を処置するのに使用することが可能である。【0063】さらに、本発明に従って、有効な量において血液脳関門を通過することが可能な、その他の、従来技術で既知のNAALADアーゼ阻害剤も、行動および認識障害の治療に使用することが可能である。例えば、それらの薬剤を、痴呆症を患う患者の認識能力の改善のために、または、攻撃性の阻害のために使用することが可能である。既知のNAALAD阻害剤の例としては、O−フェナンスロリンのような汎用メタロペプチダーゼ阻害剤、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびエチレングリコール−ビス(ベータミノエチルエーテル)−N,N−四酢酸(EGTA)のような金属キレート剤、および、ペプチドアナログ、例えば、ケスコーリン酸、アスパラギン酸・グルタミン酸(Asp−Glu)、Glu−Glu、Gly−Glu、γ−Glu−Glu、および、ベータ−N−アセチル−L−アスパラギン酸−L−グルタミン酸が挙げられる。その他のNAALADアーゼ阻害剤として、下記の処方を持つ、比較的最近記載される化合物がある。【0064】ここに、Xは、RP(O)(OH)CH2−(米国特許第5,968,915号参照、引用によって本明細書に含める);RP(O)(OH)NH−(米国特許第5,863,536号参照、引用によって本明細書に緩用する);RP(O)(OH)O−(米国特許第5,795,877号参照、引用によって本明細書に含める);RN(OH)C(O)Y−あるいはRC(O)NH(OH)Yで、ここに、YはCR1R2、NR3またはO(米国特許第5,962,521号参照、引用によって本明細書に含める);あるいは、XはRS(O)Y、RSO2Y、または、RS(O)(NH)Yで、ここに、YはCR1R2、NR3またはO(米国特許第5,902,817号参照、引用によって本明細書に含める)。【0065】上記米国特許のいずれも、下記のグルタミン酸異常に関連する病的状態の治療に、前記NAALAD阻害剤の使用を示唆している。その異常としては、癲癇、脳卒中、アルツハイマー病、パーキンソン氏病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン氏病、分裂病、慢性痛、虚血症、および、神経性障害である。本発明の基礎となった発見により、ペニシリン結合性タンパク質(細菌性カルボキシペプチダーゼまたはトランスペプチダーゼ)阻害剤、特に、β−ラクタム抗生物質およびβ−ラクタム阻害剤を、それらの化合物の、NAALAD阻害剤たる、従来認められていなかった活性に基づいて、上記病気に対する治療プロトコール開発のために使用することが可能となった。比較的最近、神経組織における、グルタミン酸塩の高濃度が、多発性硬化症と関連するとされており、これらの組織におけるNAALADアーゼ阻害、および、それによる、グルタミン酸塩生産の阻害が、この病気を患う患者に対して、症状程度を寛解させることによって、または、その初発の発生を遅らせることによって、治療効果をもたらす可能性があると考えられている。【0066】本発明はさらに、行動または認識障害、および、NAALADアーゼ活性を含む神経組織およびその他の組織における、異常なグルタミン酸濃度の生成に関連するその他の病状治療用の、ある種の製薬処方を供給する。一般に、この処方は、細菌酵素を阻害することが可能であり、かつ、経験的証拠から、アミノ酸配列Ala−D−γ−Glu−Lys−D−alanyl−D−alanineを含むペプチドに対して選択的に作用することが知られている、神経原性ペプチダーゼ(例えば、NAALADアーゼ)を阻害することが可能な化合物、および、その、薬学的に許容しうる担体を含む。一つの実施形態では、単位剤形におけるその製薬処方は、NAALADアーゼ阻害によって予防が、または、その症状軽減のための治療が可能となる病状を経験している、または、そのような病状を生ずる傾向を有する患者において、NAALADアーゼ活性を阻害することが可能な、一定量のβ−ラクタム化合物を含む。このペプチダーゼ(NAALADアーゼ)阻害剤の量および担体の性質は、当然のことながら、意図する投与ルートに依存する。阻害剤の量は、指定の投与ルートによって搬送された場合、NAALADアーゼ阻害が望まれる組織において、例えば、脳において、NAALADアーゼ活性の阻害によって治療が可能な、標的行動または認識障害またはその他の障害の症状を治療・阻害するのに有効な濃度を供給するのに効果的な量である。β−ラクタム抗生化合物を用いる実施形態では、本処方中のペプチダーゼ阻害剤の量は、典型的には、臨床的に有効な、細菌性プロテアーゼ阻害を実現することが可能な量、すなわち、供給される剤形で患者に投与された場合、抗生物的に有効な濃度を与える量には達しない量である。本発明によって使用されるペプチダーゼ阻害剤は、1個以上の、薬学的に許容しうる担体と併用することが可能であり、例えば、経口的に、錠剤、カプセル、キャプレット、分散性散剤、顆粒、ローゼンジ、粘膜パッチ、サシェット等のような形で経口的に投与されてもよい。このNAALADアーゼ阻害剤は、薬学的に許容しうる担体、例えば、澱粉、ラクトースまたはトレハロースと、単独で、あるいは、1個以上の錠剤賦形剤と併用して、錠剤またはローゼンジに型押しされてもよい。最適なものとしては、この錠剤、キャプレットまたはカプセルは、胃における加水分解/崩壊を極小に留めるために腸内消化用にコートされてもよい。経口投与処方は、重量にして、約1から約99%の活性成分と、約1から約99%の薬学的に許容しうる担体、および/または、処方賦形剤とを含むことが可能である。最適には、NAALADアーゼ阻害剤としてβ−ラクタム抗生物質を用いる場合には、剤形は、P−糖タンパク質阻害剤と併用するような処方が可能である。それによって、薬剤の半減期を向上させ、かつ、活性成分の脳中濃度を強化するためである。また別実施形態として、このプロテアーゼ阻害剤を、単純に、P−糖タンパク質またはβ−ラクタマーゼ阻害剤と共同投与することも可能であるし、あるいは、この剤形は、β−ラクタマーゼ阻害剤(それ自体もNAALADアーゼ阻害剤である)のみを含むことも可能であるし、または、P−糖タンパク質と担体と併用されてもよい。【0067】本発明の別実施形態では、製薬処方は、担体と併用して、例えば、約2.5%から約90%の活性成分を、さらに一般的には約5%から約60重量%の活性成分を含んでいてよい。本発明の一つの実施形態による製薬処方は、経口投与用、あるいは、頬内または舌下投与用として処方される(サシェット、ローゼンジ、および/または、口内粘膜パッチとして)。別の実施形態では、剤形は経口投与用であるが、活性成分を長期に渡って放出するよう処方された、徐放剤形として調製される。【0068】経皮パッチを含む、局所適用剤形、および、そのような投与ルートに適用した、活性を持つプロテアーゼ阻害剤、および、通常の、非毒性で、薬学的に許容し得る担体、アジュバントや賦形剤も、本発明の範囲内にある。【0069】本発明による製薬処方は、また別法として、皮下投与、腹腔内投与、筋肉内投与および静脈内投与を含む、非経口投与ルートを通じて投与することが可能である。このような非経口投与剤形は、通常、水溶液、あるいは、薬学的に許容しうる担体、例えば、等張生食液、5%グルコース、または、その他の既知の薬学的に許容しうる液体搬送構成物を利用した分散液の形として存在する。【0070】注射用として好適な剤形としては、無菌水溶液または分散液、および、無菌散剤、あるいは、無菌の注射液または分散液の、即席調製用凍結体が挙げられる。いずれの場合も、剤形は無菌で、製造・保存条件下で安定であり、かつ、微生物の汚染作用に対して防腐されていなければならない。注射処方用担体は、例えば、水、エタノール、または、ポリオール(または、例えば、グリセロール、プロピレン・グリコールや、液体ポリエチレングリコール)、それらの混合物、および、植物油を含む溶媒または分散媒体であってもよい。【0071】神経原性ペプチダーゼ阻害に対して反応する、行動・認識障害およびその他の病状の治療に有用な、ペプチダーゼ阻害剤の非経口剤形はまた、注射用徐放処方として処方することも可能である。この処方では、プロテアーゼ阻害剤は、1個以上の、天然または合成の生体分解性または生体分散性ポリマー、例えば、澱粉を含む炭水化物、ゴムや、エーテル化した、または、エステル化したセルロース誘導体、ポリエーテル、ポリエステル(特にポリラクチド、ポリグリコリドや、ポリ−ラクチド−グリコリド)、ポリビニール・アルコール、ゼラチン、または、アルギン酸塩と併用される。この投与処方は、例えば、微小粒子懸濁液、ゲル(親水性または疎水性構成を持つ)、あるいは、生物学的活性成分の徐放を実現する「デポ型」薬剤搬送系として、その機能が従来技術でよく知られる、調整形ポリマー基質インプラントの形で調製することが可能である。上記構成物は、従来技術で既知の処方技術を用いて調製が可能であり、広汎な薬剤放出特性の内のどれについてもその設計が可能である。【0072】本発明で使用される製薬構成物の投与は、治療を要する患者に対して、断続的であっても、漸進的でも、連続的、定常的、あるいは、設定割合で行ってもよい。さらに、その製薬処方の投与される、一日における時間や、一日当りの投与回数も、患者の条件や環境に応じて変動することが可能である。本発明の範囲内において使用される、どのプロテアーゼ阻害剤についても、その効力レベル、最適用量および剤形は、患者依存性であり、主治医の判断において正当な範囲で調整が可能である。本処方は、典型的には、患者の病態を治療または予防するのに十分な時間、例えば、治療を受ける患者の行動または認識能力を修飾するのに十分な時間に渡って投与される。標的病態の予防のために、本プロテアーゼ阻害剤処方を連続的に、同じ、または、減衰された投与プロトコールで投与されてもよい。【0073】一つの神経原性プロテアーゼ、または、複数の神経原性プロテアーゼの存在や機能に関する知識があれば、そのような化合物(単数または複数)は、すぐに脳ホモジェネート、脳脊髄液(CSF)または脳組織抽出物から分離し、構造解明のため、また、薬剤発見応用に使用するために精製することが可能である。従って、特異的アフィニティークロマトグラフィー、および/または、高速液体クロマトグラフィーを含む、従来技術で既知の技法を用いることによって、行動表現型や認識能力の、ある定義された、神経化学的機能決定因子を単離し、その特徴を明らかにすることが可能である。従って、例えば、β−ラクタム抗生物質は、必要ならば分断可能なリンカーを介して、固相基質に、例えば、磁気ビーズまたは官能基付着シリカに共有結合させ、それによって、標的プロテアーゼ(単数または複数)に対して選択的に馴染む/相互作用を持つことが可能な固相を形成させることが可能である。次に、固相基質に付着する、このβ−ラクタム化合物を、CSF、脳ホモジェネートあるいは脳抽出物と、その神経原性プロテアーゼが、不動化されたβ−ラクタム化合物と反応する(または、会合性結合させる)のに十分な期間、1以上のpHレベルにおいて、接触させる。別法として、アミノ酸配列acyl−D−alanyl−D−alanineを含むタンパク質またはペプチド基質を固相基質の上に不動化して、標的神経原性プロテアーゼ用のアフィニティープローブとして使用することも可能である。【0074】次に、共有結合または会合的に結合したプロテアーゼを、抽出物から分離し、その後、プロテアーゼ対不動化プローブ相互作用の性質に応じた技法によって、固相の基質から解放することが可能である。プロテアーゼが、不動化β−ラクタム化合物と共有結合を形成している場合は、得られる複合体は、例えば、分断可能なリンカーを分断して、固相基質から解放し、それによって、神経原性プロテアーゼを、さらに具体的には、その誘導体を、実質的に非プロテアーゼ成分を含まない形で供給することが可能である。別法として、また、好ましくは、プロテアーゼのアフィニティーカラム用に用いられるこのプローブは、プロテアーゼに対して、選択的会合性(非共有性)アフィニティーを示し、そのために、その後において緊縮度(液相のイオン強度やpH)を変えることによって、プロテアーゼを、固相から、非プロテアーゼ成分を実質的に含まない形で解放する。【0075】本発明の方法および製薬処方の、神経原性プロテアーゼ標的の同定を可能とするもう一つのステップは、放射性核種(H3)によって標識したペニシリンまたはセファロスポリンを使用することを含む。この溶液を、実験動物の脳に注入し(かつ、指定の時間後、動物を安楽死させて、直ちにその脳を抽出し、ホモジェナイズする。次に、この脳抽出物/ホモジェネートを、遠心、透析、および、クロマトグラフィー(例えば、ゲル濾過クロマトグラフィー)のような、1段以上の分離行程にかける。分離された化学的分子種について、標識の有無について分析し、標識分子種を単離し、要すれば追加の精製行程にかけ、構造解明のために、物理化学的分析にかける。【0076】従来技術で既知の、タンパク質・アミノ酸分析法/配列法を用いることによって、神経原性プロテアーゼの構造は簡単に解明が可能であり、それによって、少なくともそのプロテアーゼの一部をコードする、核酸プローブを調製することが可能となる。次に、このプローブを用いて、入手可能な遺伝子ライブラリーから、そのプロテアーゼをコードするDNAを回収することが可能になる。この標的遺伝子構築体を分析し、従来技術で既知のクローン法を用いてクローン化して、工学的に製作された微生物、真核生物または前核生物を供給する。これらは、この純粋プロテアーゼの無制限量を発現するのに利用し、さらに、それを、診断または薬剤スクリーニング用途に使用することが可能である。【0077】本発明の一つの関連実施形態では、プロテアーゼは、ハプテンの形で接合される。これは、神経原性プロテアーゼの、1個以上のエピトープを認識するモノクロナール抗体の生産のために、げっ歯類または、その他の動物種に接種される。抗体生産は、従来技術に通常の熟練を持つ人々にはよく知られる、従来技術で既知のハイブリドーマ形成法を用いて実行が可能である。この方法は、米国特許第4,628,077号に、特に、コラーゲン蛋白に対して特異性を示すモノクロナール抗体の形成に関して、その概略が紹介されているが、モノクロナール抗体生産に関連する明細書部分を、引用することによって本明細書に緩用する。抗体自体を、検出可能な標識、例えば、放射性核種、酵素、または、蛍光性または電気発光性分子種に対して、共有結合によって、あるいは、親和性結合によって(例えば、ビオチンアビジン複合体を介して)接合することが可能である。そのような標識抗体は、診断キットや、例えば、脳脊髄液を分析し、それによって、患者の行動または認識状態を、神経性プロテアーゼ濃度の関数として定量する方法において使用することが可能である。このような診断法はさらに、この場合も、神経原性プロテアーゼ濃度の関数として、薬剤治療に対する患者の反応を評価し、患者の状態を監視することを可能にする。この方法は、従来技術で通常の熟練を有する人々によく知られる、従来技術で既知の、競合性またはサンドイッチ型特異的結合定量法を用いて実行が可能である。【0078】従って、本発明のさらに別の実施形態によれば、患者の神経化学的状態を評価する方法が供給される。この方法は、脳脊髄液サンプルを、神経原性プロテアーゼ(単数または複数)のエピトープに特異的に結合することが可能な標識抗体と接触させ、かつ、最終的に、検出された濃度を、あらかじめ定められた認識または行動表現型を持つ患者集団から得られた結果と比較する行程を含む。ここに、このプロテアーゼは、患者の認識能力レベル、および/または、行動表現型に決定的な、神経化学的経路の修飾に与る。【0079】本発明のさらにもう一つの実施形態において、実質的に純粋な形の、ペプチド性ニューロモヂュレーターまたは神経伝達物質が供給される。この神経ペプチドは、患者の行動・認識能力を仲介することによって、さらに、神経原性プロテアーゼの基質として機能することによって、また、それ自体、モキサラクタムのD−異性体、または、acyl−D−alanyl−D−alanine配列を含むペプチドのいずれかによって阻害されることによって特徴付けられる。ペプチド性ニューロモヂュレーターまたはニューロトランスレーターに対して選択的活性を示す、この神経原性プロテアーゼは、トランスプロテアーゼまたはカルボキシプロテアーゼ活性(言いかえると、トランスペプチダーゼまたはカルボキシペプチダーゼ活性)を含む、タンパク質分解活性を示すことが可能である。この神経ペプチドは、神経原性プロテアーゼの単離・精製に関して上述したものと同様の方法を用いて、脳脊髄液または脳ホモジェネートから単離が可能である。しかしながら、標的分子に対するアフィニティープローブとして、共有的に結合したβ−ラクタム抗生物質を担持する固相基質を使用する代わりに、ペニシリン結合タンパク質(または、単離神経原性プロテアーゼそのもので、必要であれば化学的に修飾された形のもの)が、固相基質の表面に不動化される。このペニシリン結合性タンパク質(PBP)は、ペプチド性ニューロモヂュレーター/神経伝達物質に対して選択的親和性を示すので、ペプチド性標的分子は、このPBP支持固相が、イオン強度および/またはpHにおいて、1種以上の相互交換可能な条件下で、脳ホモジェネートまたは脳脊髄液に接触させられた場合、好適に基質に結合する。このPBPを担持する固相は、クロマトグラフィーカラムの形で、すなわち、アフィニティークロマトグラフィー用途において使用が可能であり、あるいは、この固相基質は、単純に、脳のホモジェネートまたは抽出物、あるいは、脳脊髄液中に分散させて、それによって、ペプチド性ニューロモヂュレーター/神経伝達物質と選択的に結合させ、その後、それらの物質をペニシリン結合性タンパク質から解放し、単離し、要すれば、高速液体クロマトグラフィーにて精製すれば、前記ペプチド性ニューロモヂュレーター/神経伝達物質を、その他のタンパク質様構成物を含まない、実質的に純粋な形で生産することが可能である。このペプチド性神経伝達物質は、それ自体、神経学的活性薬剤物質として使用が可能であり、あるいは、関連の、神経活性薬剤物質を開発するための、薬剤リードとして使用が可能である。さらに、この精製神経伝達物質の構造は、従来技術で既知のアミノ酸配列分析法によって簡単に解明が可能であり、それによって、熟練した技術者であれば、核酸プローブ(恐らくは、合成遺伝子として)の調製が可能であり、それによって、このペプチド性神経伝達物質/ニューロモヂュレーターをコードするDNA配列が単離される。最後に、前述の神経原性プロテアーゼ遺伝子使用の場合と同様に、この単離された遺伝子構築体をクローン化し、このペプチド性神経伝達物質/ニューロモヂュレーターについて、薬剤処方用に、抗体生産用に、あるいは、薬剤回収プロトコールのために、その臨床量を生産するのに使用することが可能である。【0080】本発明のさらにもう一つの局面では、知的または行動的障害に悩む患者に対し、ワクチンを用いて予防接種が可能であることも思量される。このワクチンは、例えば、患者に接種した場合、神経原性プロテアーゼ機能を減衰させ、かつ同時に、患者の行動および/または認識表現型を修飾するのに十分な抗体反応を惹起し、それによって、異常なグルタミン酸濃度/活性と関連する、前述したものを含む、その他の状態(ただしそれらに限定されない)を寛解することが可能な神経原性接合体として調製される。一つの実施形態では、この接合体は、前述のNAALADアーゼまたはPBPの活性部位モチーフを1個以上含む、NAALADアーゼの4から20個のアミノ酸配列を含む、1個以上のペプチドから成るハプテン接合体を含む。【0081】本発明の前述の実施形態は、一部は、後述の、動物の行動・認識・スキルモデルで得られたデータから演繹された作用機構から導かれたものである。本発明の他の実施形態も、後述の非限定的実験例で得られたデータの分析から明白となろう。これらの実験例は、本発明の方法および処方によって実現が可能な、行動修飾・認識力改善を単に例示するものであるに過ぎない。【0082】<実験例>1981−1982年に市場に出されたモキサラクタム(Mox)はセファロスポリンに類似した三世代目の抗生物質として世界中で使用された。臨床的な効果と安全性が、バクテリアに感染した2200人以上の患者に使用されることにより確認された(Jacson et al,1986)。グラム陰性菌による髄膜炎患者260人にMoxを使用した結果、241人(93%)の患者に抗生物質療法による十分な反応が見られた。患者には4gのMoxが8時間おきに2−3週間投与された。Moxの血清濃度が最高値に達するのは筋肉注射により投与した1時間後であり、その後は半減期2−3時間で消失していった。8−12時間の休止期間を置くと、数回の注入による蓄積はみられなかった。モキサラクタムは血液脳関門を通過しうる。2.0gのMoxを静脈注射した場合、小脳脊髄液(CSF)における濃度の範囲は25−39μg/mlであった。CSF濃度は血清中の濃度と比較すると20%であると推測される。D型異性体は抗生物質活性を持ち、L型異性体より遊離の血しょうタンパク質画分に多く含まれる。【0083】モキサラクタムを使った行動実験方法動物の世話Harlian Sprague−Dawley Laboratories(Indianapolis,IN)から譲渡された雄のシリアゴールデンハムスター(Mesocricetus auratus)(140−150g)は、1匹ずつプレキシグラスケージ(24cmx24cmx20cm)の中で明暗周期(明周期14時間:暗周期10時間、ライトは19時につけられた)のある場所で維持され、必要に応じて食物と水が与えられた。動物は、少なくとも試験を行なう2週間前からこの明暗周期に慣れさせた。全ての行動テストは明暗周期の暗期に行われた。全ての動物は、「実験動物の世話と使用のためのガイド」(National Institutes of Health Publications No.85−23,Revised 1985)に示されたガイドラインに従って得られ、世話された。攻撃性対決行動は攻撃的であるか防御的であるかに分類される(Blanchard and Blanchard,1977;Adams,19798;Albert and Wakshm 1984)。敵に攻撃を始めるものを攻撃的な性質とし、敵に対して積極的に近寄っていかないものを防御的であるとする。両方の性格が、それぞれ独自の神経行動学的な系を持っている。攻撃性と防御性を誘発する刺激が違うのは、それらがそれぞれの対決反応を伴った行動の連続であるからである。攻撃と防御を支配する神経回路の知識を支持する経験的なデータが動物モデルからたくさん集められつつある一方で、ヒトにも類似した神経回路が存在することを示唆する興味深い類似性が存在する(Blanchard,1984)。攻撃性は、攻撃性モデル(Ferris and Potegal,1988)を打ち立てた、居住者/侵入者パラダイムと呼ばれる方法で雄のゴールデンハムスターを試験すれば簡単にわかる。親しくない雄のハムスターを他の雄のハムスターのホームケージに入れることにより、居住者が次に行なうであろう簡単に判別のつく攻撃性を含む対決行動を、別の雄によって誘発する事ができるのである。行動の測定及び解析ハムスターは夜行性であるので、全ての行動試験は暗期の始めの4時間の間に弱く赤い照明下で行われた。居住者は10分間の間にどのような攻撃性を示すか、例えば侵入者に噛み付くまでの時間、噛み付いた回数、侵入者に接触していた時間、横腹マーキングなど(Ferris and Potegal,1988)の攻撃性が記録された。横腹マーキングとは、ハムスターが背側に反り返ったり、その環境に存在する物にフェロモンを分泌する横腹をこすりつけたりする、鼻で行うコミュニケーションの形である(Johnson,1986)。横腹マーキングはしばしば、攻撃性な遭遇が行われているときに非常に高まったり、あるいは居住動物が戦いを始めたり勝利したときに特に強まる(Ferris et al.,1987)。パラメトリックなデータ、例えば隠れていた時間や接触していた時間は、一元配置分散分析法で解析された後、Newman−Keulsのポストホック検定が行われた。ノンパラメトリックなデータ、例えば噛み付いた回数や横腹マーキングの回数は、グループ間の違いを決定する為にMann−Whitney U検定を行った後に、Kruskal−Wallis検定を行うことによって解析した。2サンプルの比較はそれぞれ、パラメトリックなデータはペアとペアでないt検定を行い、ペアとペアでないノンパラメトリックなデータはWilcoxon検定とMann−Whitney検定を行うことによって解析された。結果I.モキサラクタムを多量に使用した場合パイロット試験として、居住者より小さな侵入者に対する攻撃性であらかじめ選択された6匹の雄のハムスターに、Mox(50mg/kgを約150μlの体積で)が腹腔内注射(IP)された。Moxと溶媒食塩水で処理されたハムスターは、それぞれ少なくとも48時間あけて両方の処理を受けることでバランスがとられた。動物は、Moxの血しょう濃度が最高に達すると推定される(Jackson et al.1986)、処理した90分後に試験された。モキサラクタムは0.9%NaClに溶解され、氷上に保存された。それは、試験のたびに新しく準備された。食塩水で処理された居住者の動物は、侵入者に1分以内に噛み付いた(図1)。続いて行ったMox処理により噛み付くまでにかかる時間は6分以上(p<0.05)に増加した。さらに10分間の観察している間に噛み付いた回数は著しく減少していた(p<0.05)。しかし接触時間、例えば侵入者の匂いをかいだり調べたりしている時間もまた、著しく減少していた(p<0.01)。横腹マーキングに著しい減少は見られなかったが、傾向は見られた(p<0.07)。まとめ攻撃性に関係する全ての測定値が減少していたことは、50mg/kgのMoxの使用量が動的活動や興奮喚起に、非特異的な抑制効果を持つ可能性がある。この可能性を確かめる為に、他の行動を変えることなく攻撃性だけを効果的に抑制するMoxの最も低い使用量を調べる必要があった。II.モキサラクタムの使用量に応じた反応攻撃性を著しく減少させるMoxの最小使用量を調べる為に、6匹の動物が次の範囲の濃度(溶媒のみ、0.5,5.0,50,500,5000μg/kg)で試験された(図2と3)。それぞれの動物がそれぞれの処理を少なくとも48時間あけて受けることによって、バランスがとられた。処理によって噛み付くまでの時間が著しく異なった(F(5,30)=5.66;p<0.001)。5.0μgかそれ以下のモキサラクタム処理は、攻撃性の行動測定に何の効果も与えなかった。しかし、使用量が50μg/kgのときは、対照実験の溶媒を与えたときと比べて噛み付くまでの時間が7分以上も遅延した(p<0.01)。使用量が500μg,5.0mgのときも、噛み付くまでの時間に著しい遅延がみられた。予想通り、噛み付くまでの時間が遅延したのと同じ使用量で行ったものは、噛み付いた回数も減少していた(H=24.12;p<0.001)。50μgのMoxで処理した動物は、噛む回数が著しく減少した(0<0.05)。実際に、6匹のうち3匹は観測していた10分間に1度も噛み付かなかった(F(5,30)=2.5;p<0.05)。使用量が500μg,5.0mgのときも、、対照実験の溶媒を与えたときと比べて接触時間が著しく減少した(それぞれp<0.05とp<0.01)。横腹マーキングについては、グループによる違いはみられなかった(H=9.256;p<0.09)。まとめ50μg/kgのMoxを使用した場合、接触時間や横腹マーキングを著しく減少させることなく攻撃性を効果的に抑制することができた。しかし、Moxの使用量がそれ以上になると、攻撃性は効果的に抑制されるが接触時間も減少した。それゆえ、将来行動試験をするにあたっては50μgの使用量を最良の条件とした。Moxの使用量を決定する為には、より多くの動物を使いより多くの行動を解析することが必用であった。III.50μgモキサラクタムを用いた行動試験攻撃性13匹のハムスターが、溶媒の食塩水または50μg/kg Moxを用いて以下の処理をされた後攻撃性を試験された(図4)。両方の処理は、約150μlの体積を腹腔内注射することによって行われた。動物は、注射した90分後に試験された。それぞれの動物は両方の処理を受けた。少なくとも48時間間隔を置いた処置を行うことによって対照実験がとられた。モキサラクタムは噛み付くまでの時間を著しく遅延させ(p<0.01)、噛み付く回数を減少させた(p<0.01)。接触時間や横腹マーキングに著しい変化は見られなかった。【0084】まとめMoxは侵入者と共に過ごす時間などで測定できる社会的行動を変えることなく、効果的に攻撃性を減少させるということが、この少ない使用量のMoxに対する反応を見る試験の詳細な研究により確証された。オープンフィールドでの動的活動6匹の動物が溶媒の食塩水または50μg/kg Moxで処理した後、オープンフィールドでの一般的な動的活動を調べられた(図5)。この実験は、それぞれの動物が両方の処理を受けることによってバランスがとられた。注射した90分後、動物は1匹ずつ床敷きのひいていない広くて清潔なプレキシグラス・ケージ(48x32x40cm)に移された。このオープンフィールドは、ケージの裏側にテープで等しい4分円が描かれている。動物の動的活動は、1分間に横切った4分円の回数を数える事によって測定された。オープンフィールドでの活性について、処理による著しい違いはみられなかった。嗅覚による識別16匹の動物が、溶媒または50μg/kg Moxで処理され、隠されたひまわりの種を探すまでの時間を測定することによって嗅覚による識別が試験された(図5)。それぞれの動物がそれぞれの処理を受けることによって、バランスがとられた。試験に先駆けて、動物は24時間絶食させられた。注射して90分後、動物は一時的にホームケージからはずされ、その間に6つのひまわりの種がある一角の床敷きの下にうめられた。動物はホームケージに戻され、10分間観測して種を探し出すまでの時間が記録された。溶媒で行った対照実験と比べて、Moxで処理した動物は種を探し出すまでの時間が著しく遅延した(p<0.001)。驚いたことに、全ての種はMox処理を行った動物により5分以内に全て速やかに消費されたが、食塩水処理を行った動物ではそのようなことはなかった。事実、Moxで処理した全ての動物は種を消費したのに比べ、食塩水で処理した16匹の動物のうち全ての種を消費した動物は1匹もいなかった。性的活性6匹の動物が溶媒の食塩水または50μg/kg Moxで処理され、5分間の観察で性的活性が試験された(図6)。この実験では、それぞれの動物がそれぞれの処理を受けることによってバランスがとられた。注射した90分後、動物は上に乗るまでの時間と干渉の回数、すなわちケージに入れられた雄を受け入れる雌に対する挿入の回数が記録された。雌のゴールデンハムスターは、全身麻酔され卵巣摘出手術をされた。続いて回復した動物は、性的受け入れ能力を誘導する為に3日連続で50mgエストラジオール・ベンゾエイトを皮下注射される処理をされた。試験の日、エストロゲンを注射された雌は実験される雄のケージに入れられた。雄による最初の試験は、慣例的に雌に強い前彎を引き起こした。前彎とは、激しく持続した脊椎の後屈によって性格付けられる、一定の姿勢である。溶媒処理の後、動物は約30秒後には受け入れ能力を持つ雌の上に乗り挿入した。Mox処理により、上に乗るまでの時間は著しく遅延した(p<0.05)。両方の処理とも高頻度の交尾動作を示したが、Moxで処理した動物は挿入回数が減少する傾向が見られた(p<0.07)。まとめモキサラクタムには非常に良い鎮静作用があるようだ。鎮静剤は衝撃や暴力を処置する為に使用される薬剤である(Olivier and Mos,1991)。鎮静剤は社会的、欲求、認識の行動を妨げることなく攻撃性を抑制するものであるべきである。侵入者への社会的興味、すなわち接触時間はMox処理によって変化しなかった。薬剤処理によって横腹マーキングとオープンフィールドでの活性にも変化がなかったことは、一般的な意識活動と動的活動に変化がないことの証拠である。Mox処理した絶食動物がより上手く隠されたひまわりの種を見つけたことは、薬剤処理は食物を探す為の嗅覚や動機の障害にはならないことの証明であり、事実それらを高めているかもしれない。面白いことに、5分間の観察時間においてMox処理により受け入れ能力のある雌の上に乗るまでの時間が減少し、顕著ではないが挿入の回数は減少した。Mox処理によって動物は性的に活性化された状態が維持されながら、行動が弱くなったことは注意されるべきであろう。このMoxの性的活性の沈静を伴う抗攻撃効果は、暴力的な性犯罪者の処置に医療的価値があるかもしれない。【0085】最初の鎮静剤の1つであるエルトプラジンの開発は、動物に恐怖や不安を増加させることが見つかり一部破棄された(Olivier et al 1994)。この可能性を調整する為に、Moxがモデル動物に不安の効果を与える薬剤であるかどうかを調べる必要があった。IV.モキサラクタムの不安活性の試験進化したプラス迷路ラットに対する抗不安剤と不安剤の効果を測定する為に、高度のある十字(プラス)迷路が開発された(Pellow et al.,1985)。その方法は行動学的、生理学的、薬学的に有効であるとされている。十字迷路は、2つの開いた(覆いのない)アームと2つの閉じた(覆いのある)アームからなる。ラットは普通閉じたアームに入るよりも開いたアームに入る方が少なく、また開いたアームで過ごす時間の方が顕著に少ない。開いたアームに閉じ込めると閉じたアームに閉じ込めるよりも、顕著により多くの不安から起こる行動をとると共に、より高いストレスホルモンの血中濃度を示す。臨床的に効果的であることが知られているクロルジアゼポキシドやジアゼパムのような抗不安剤は、開いた腕で過ごす時間の割合と開いた腕に入る回数を顕著に増加させる。逆にヨヒンビンやアンフェタミンのような不安剤は、開いたアームに入る回数や開いた腕で過ごす時間を減少させる。方法体重が250−300gの雄のウィスターラットは、明期の開始が午前8時の12:12の明暗周期で、1ケージあたり数匹で飼われ、必要に応じて食物と水が与えられた。十字迷路は2つの50x10cmの開いたアームと、2つの開いた屋根を持つ50x10x40cmの閉じたアームからなり、2つの開いたアームがお互いに反対側になるように並べられた。迷路は高さが50cmになるように組立てられた。50μg/kg Moxと溶媒の食塩水を腹腔内注射され90分たった8匹の動物が、プラス迷路で試験された。同一個体に、少なくとも48時間あけて両方を注射することによってバランスがとられた。実験開始時、動物は閉じたアームに面したプラス迷路の中心に置かれた。5分間の観測時間中に、動物が閉じたアームに入るまでの時間、閉じたアームで過ごした時間、最初に閉じたアームに入った後に開いたアームに入った回数が記録された(図7)。Mox処理を行うことによって、溶媒と比べて、顕著に閉じたアームに入るまでの時間が増加した(p<0.05)。閉じたアームで過ごす時間は顕著に減少(p<0.01)した一方、開いたアームに入った回数は顕著に増加した(p<0.05)。まとめこれらのデータにより、Moxを50μg/kgの使用量で投与することにより抗不安剤活性があることがわかった。この発見はMoxに鎮静作用があることを支持すると共に、それは一部分で恐れと不安を増加させることによって攻撃性を抑制するエルトプラジンのような既存の鎮静剤とは異なることを示す。これらのデータはMoxが抗不安剤として臨床的に価値をもつであろう事も示している。しかしMoxの抗不安剤活性は、行動の特異性について他の懸念を引き起こす。多くの抗不安剤、特にベンゾジアゼピンは鎮静剤であり、一般的な動的活動を抑制し、記憶喪失を引き起こす可能性もあり、学習や記憶を阻害する。Moxは横腹マーキングやオープンフィールドでの動的活動に何の効果も示さないので、一般的な鎮静剤とは異なるようである。しかし、Moxが学習や記憶に与える効果を調べる必要はあった。V.モキサラクタムの抗不安剤活性に対する試験モキサラクタム対クロルジアゼポキシド方法MoxとCDPは、例えば脳への透過性など生物学的有効性の性質が異なるので、それらの中枢神経系における活性は、それぞれの薬剤を等量全身投与しても比較はできない。そうではなく、両方の薬剤を直接血液脳関門を通り抜けた脳室系に、直接与える必要があった。動物はペントバービタル・ナトリウム(50mg/kg)で麻酔され、試験の日には回復しているように、試験の2日前に、ミクロインジェクション・ガイド・カニューレが側脳室に入るように注入された。6匹の動物のグループが、MoxまたはCSPを使った試験を受けた。それぞれの動物は、薬剤と0.9% NaClを別の日に注入された。同一個体と異なるものを投与することでバランスが取られ、それらは2日あけられた。MoxとCDPは両方とも0.9% NeClに1mMの濃度で溶解された。全ての注入は、拘束された意識のある動物に、2μlの体積を10秒間かけて行われた。60分後、動物は3分間の観察時間のプラス迷路試験が行われ、既に述べたように行動が記録された。結果Mox処理により、食塩水処理をしたものと比較して(p<0.05)閉じたアームに入るために要する時間が著しく遅延した(図17)。Mox処理を行うことによって、動物はほとんどの時間を十字迷路の開いたアームで過ごすようになった。溶媒処理を行った動物と比較して暗所で過ごす時間が、Mox処理を行った後顕著に(p<0.01)減少した。1mMのCDPで処理した動物は、閉じたアームに入るまでに要した時間も、閉じたアームで過ごした時間も、食塩水処理をしたものと比較して違いはみられなかった。【0086】動的活動の非特異的抑制の対照実験CDPは5−15mg/kgの使用量でげっ歯類に全身投与されると、鎮静作用と抑制された動的活動が与えられる。しかし、何日間にもわたってCDPを繰り返し投与していると、この抑制された動的活動は消えていく。動物がCDPによる運動効果に対して非感受性を示すようになってからでないと、抗不安剤活性を測定する為のプラス迷路で試験できない。MoxとCDPを直接脳に注入したときに起こる動的活動に対する非特異的効果の対照実験として、十字迷路で試験する30分前にオープンフィールドでの試験が行われた(図18)。抗不安剤活性にも一般的な動的活動にも顕著な効果は見られなかった。【0087】まとめMoxが抗不安剤であるという発見は、それに鎮静作用があること支持し、また既に知られているエルトプラジンのような、一部分で恐怖や不安を増加させることによって攻撃性を抑制する鎮静剤とは異なることを意味する。等量での比較において、Moxは脳に直接打ち込んだとき、CDPでは何の効果もみられない濃度において抗不安剤活性を示した。これらのデータはMoxが鎮静剤としてだけでなく抗不安剤としても臨床的に使えるかもしれないことを意味している。【0088】しかし、Moxの抗不安剤活性は行動の特異性に関して別の可能性をとり上げる。多くの抗不安剤、特にベンゾジアゼピンは鎮静剤であり、一般的な動的活動を抑制し、記憶喪失を引き起こす可能性もあり、学習や記憶を阻害する。Moxは横腹マーキングやオープンフィールドでの動的活動に何の効果も示さないので、一般的な鎮静剤とは異なるようである。しかし、Moxが学習や記憶に与える効果を調べる必要はあった。VI.モキサラクタムの空間的記憶への関与の試験放射状アーム迷路放射状アーム迷路は、げっ歯類の空間学習や記憶を試験するための最も一般的に使われる方法の1つである。この迷路はOltonとその共同研究者らによって作製され(1976)、試験課題の為にいくつかの道を同時に選択する場面が与えられる。動物は空間的な景色を手がかりにして食物が置いてある場所(覚えるべき場所)を覚えなければならない。方法実験:実験は3つの局面からなる(以下に記述)。迷路のアームは時計まわりに1から7まで数がうたれ、アーム1は迷路の右側から最も離れている。全ての実験が約12分で行われた。実験されないとき、全てのハムスターは自由に水が飲める環境に置いた。さらに迷路でひまわりの種を探す実験を行うときは、ハムスターはAgway Prolab 3000フードペレットを1日に1つ与えられた。全ての局面における実験は、連続した日に行われた。◎局面1:局面1では15分の実験が5回行なわれる。局面1の5回の実験が始まるそれぞれの前に、4つのひまわりの種をアーム1,2,3の端に置く。アーム4,5,6,7は空のままにしておく。◎局面2:実験の局面2は局面1と同じだが、種をアーム2,4,7に置く。アーム1,3,5,6は空のままにしておく。局面2では15分の実験が4回行われる。◎局面3:実験の局面3では15分の実験が3回行われ、アーム2,4,7にひまわりの種を置いておく。アーム1,3,5,6は空のままにしておく。局面3と局面2の違いは、迷路を部屋の中で時計回りに110度動かしておく。行動の記録:アームに入った回数は、ハムスターの全ての4本の足がアームの入り口の内側に入ったときに記録された。アームに完全に入った回数は、ハムスターの鼻がアームの端にあるブロックの上に触れたとき、または鼻がブロックの上を通り過ぎたときに記録された。これらの記録はえさが置かれているアームでも、置かれていないアームでも行われた。さらに、ハムスターが頬に入れた種の数も記録された。【0089】結果6匹の雄のハムスターが、0.9% NaClまたは50 μg/kg Mox処理の後放射状アーム迷路で試験された(図8)。それぞれの動物がそれぞれの処理を受けることによって、バランスがとられた。この放射状アーム迷路で最も重要な測定値は、最後の日に行われる迷路の方向を変えた後に発見する種の数である。モキサラクタム処理をした動物は、食塩処理をした動物と比較して顕著に多くの種を発見した(p<0.01)。まとめこれらのデータは、モキサラクタムの抗不安剤の性質がベンゾジアゼピンの抗不安剤作用のように学習や記憶を破壊が伴うものではないという知見を支持する。逆に、モキサラクタムは空間記憶を増強させていることから、意識活動を改良する精神薬として振舞う可能性もある。この結果は、モキサラクタムはADHDや、子供の行動異常や、老人病学患者の老化を処置する際、効果的な臨床的薬剤になる可能性を示唆する。水迷路での空間ナビゲーションMorrisの水迷路は、放射状アーム迷路のように空間記憶を試験するために開発された(Morris,1984)。円形のプールは4分割され、通常それぞれ北、南、東、西と名付けられる。プールの中の水は、粉ミルクを加えることにより不透明化される。プールの中にはげっ歯類のための逃げ道として働くプラットホームが、4分円の1つに水面のすぐ下に隠されている。動物は様々な異なる開始点としてプールの色々なところに放され、プラットホームを見つけるまでの時間が記録され、それぞれの4分円で過ごした時間の割合が計算され、泳いだ距離や泳ぐ速さも測定される。動物は、プールの中には視覚的、空間的手がかりは与えられないので、泳いでいる動物から見えるプールの外側にあるもののような迷路以外の手がかりに頼る必要がある。数回の実験を通して、ラットには「位置学習」または迷路以外の手がかりを元にしたフラットホームの位置に関する知識が芽生えてくる。プラットホームは異なる4分円に移動することができるので、空間記憶ともに労働記憶も要求される。このパラダイムは以前の記憶の無効化と、新しい空間的問題への解決が関係する。方法水迷路は、直径が約150cmで高さ54cmの黒いビニールでできた円形のプールに、粉ミルクで濁らせた水を35cm入れたものからなる。プールは4分割され、北西の4分円に表面から2cmの深さで10cmのプラットホームが沈められた。水は25℃で維持された。プールの周りには色々な視覚的手がかりが置かれた。プールの上には、実験動物の動きを追跡するビデオカメラが設置された。データの収集は、HVS Image社(Hampton,UK)が開発したソフトウエアを使用して完全に自動で行われた。試験の前、ラットはプールと北西4分円に位置するプラットホームに慣れさせられた。4日連続でそれぞれの日に、動物はプールにランダムに放され、プラットホームを探す時間を2分間与えられた。動物は試験を行う1時間前に50 μg/kg Mox(n=11)または溶媒(n=10)で処理された。これらの慣れるための試験に続いて、動物は空間ナビゲーション試験を受けた。試験の最初の日は、予想される北西4分円にプラットホームが置かれた。2分間の観察時間の全ての行動は、ビデオテープに録画された。試験が終わると、動物は乾かされホームケージに戻された。続く日ごとにプラットホームは新しい4分円に移動され、ラットは異なる地点に放された。ラットはいつもプールの側壁近くにいた。プラットホームと実験開始点との関係は、4回の実験でそれぞれ異なるように設定された。しかし、プラットホームはいつもそれぞれの4分円の中の同じ相対的地点に置かれた。プールの側壁から12cm、外側に向かって左の角である。結果二元配置分配分析法は処理(F(1,20)=6.48,P<0.05)と試験の日(F(3,63)=5.76,P<0.01)に、著しく大きな効果を示した(図19)。処理と試験日との間にも著しい相関があった(F(3,63)=4.35,P<.01)。Newman−Keulsポストホック検定は、2つの処理方法の間に2日目(p<.05)、3日目(p<.01)、4日目(p<.05)に著しい違いを示した(図19)。これらのそれぞれの日において、Mox処理をした動物は溶媒処理をしたグループと較べて、隠されたプラットホームを見つけるのに著しく短時間しかかからなかった。事実、溶媒処理をした動物は1日目と比較して、2日目(p<.05)と3日目(p<.01)に探し出すまでの時間が著しく増加した。それぞれの4分円で動物が過ごした時間の割合によって判断すると、プラットホームを見つけるための戦略は両方の処理間で著しく類似していた。(図19、下の2つのグラフ)。処理の間でどの4分円にもどの日も著しい違いはみられなかった。日によって、どの4分円で過ごしたかという時間の割合には著しい違いがあった(例、北、F(3,63)=28.80,p<.0001)。動物はある特定の日にはある特定の4分円で、時間の著しい一部を過ごした。例えば、1日目にはMox処理をした動物と溶媒処理をした動物は、他の4分円と比較して北4分円でより多くの時間を過ごした(p<.01)。これは、動物が慣れさせるために泳がせているときに、この4分円にプラットホームがあるという場所の知識を持っていたためであると推測された。面白いことに、食塩水処理をした動物には1日目に南と東と較べて西4分円で著しく多い時間を過ごしていた(p<.05)事も示された。これはおそらくプラットホームが北4分円の北西部に隠された為である。2日目、Moxと溶媒処理をした動物は、東と西に較べ、北と南の4分円で著しく多くの時間を過ごした。3日目、溶媒処理をした動物はいまだに南と西に較べ北4分円に著しい興味を引かれていたのに対して、Mox処理をした動物は特にどの4分円で多くを過ごすという傾向は見られなかった。4日目までには、Moxも食塩水も、前日にプラットホームを隠した東4分円には最小限の時間しかおらず、正しい4分円(西)でほとんどの時間を過ごした。この4日目の戦略には両方の処理をした動物にも、良い空間記憶、労働記憶、手続き記憶が示されている。Mox処理と溶媒処理をした動物の間に、プラットホームまでたどり着くまでに要した距離に日ごとの違いは顕著にはみられなかった(図20)。しかし、Mox処理をした動物は溶媒処理をした動物に較べ顕著に泳ぐ速度が速かった(F(1,20)=22.94,P<.0001)(図20)。例えば、2日目両方のグループはプラットホームに至る同じくらいの距離を渡ったが、Mox処理をした動物はその距離をほぼ2倍の速度で渡った(p<.01)。日にちを経た主な効果はなかったが(F(3,63)=2.27,P<.09)、Mox処理をした動物に関しては時間を経るごとに泳ぐ速度が遅くなるという、泳ぐ速度と日にちの間の相互関係(F(3,63)=2.75,P<.05)が存在した。水迷路でのキュー・ナビゲーション方法空間的ナビゲーションの最終日(4日目)の翌日、動物はキューナビゲーション試験をされた。これらの試験では、プラットホームは水面より高くされた。試験の1時間前に、動物はMoxまたは溶媒の食塩水処理された。空間的ナビゲーションのときにMox処理された動物は、キューナビゲーションにおいてもMox処理された。動物は2分間の試験を、45分の休憩をはさんで2回行われた。それぞれの試験で、プラットホームは違う4分円に移動された。キューナビゲーションは、プラットホームが見えることと、試験を5回連続で行い1日で終わってしまうこと以外は、空間的ナビゲーションと同じであった。動物はプラットホームを見つけるまでの時間と、それぞれの4分円で過ごした時間の割合と、泳いだ距離と泳ぐスピードが試験の間ずっと記録された。結果プラットホームを探し出すのにかかる時間は、Mox処理をした動物と溶媒処理をした動物で異なった(F(1,20)=24.68,P<0.0001)(図21)。日にちによる主な効果も存在したが(F(4,84)=6.53,P<0.0001)、処理方法と日にちの間に相関関係はみられなかった(F(4,84)=0.99,P<0.4)。1,3,4回目の試験でMox処理をした動物が、溶媒処理をした動物より顕著に短い時間でプラットホームを見つけた。空間ナビゲーションでそうであったように、動物がそれぞれの4分円で過ごした時間の割合から判断すると、両方の処理に対して、動物はそれぞれプラットホームを探す戦略が非常に類似していた(図21、下の2つのグラフ)。どの4分円も、どの試験も異なる処理の間で顕著な違いは存在しなかった(例、南、F(1,20)=1.61,P<0.21)。どの4分円で時間を過ごすかという割合は試験によって顕著に異なった(例、南、F(4,84)=16.70,P<.0001)。動物はある特定の試験において、特定の4分円で、顕著に多い時間を過ごした。例えば、5回目の試験では、Mox処理動物も溶媒処理動物もプラットホームが隠されていた北4分円と前回の試験でプラットホームが隠されていた西4分円で過ごす時間が長かった。空間ナビゲーションと異なり、キューナビゲーションを行っている間泳いだ距離は、Mox処理動物と食塩水処理動物の間で顕著に異った(F(1,20)=44.11,P<0.0001)(図22)。また、試験によって顕著に大きな効果が存在し(F(4,84)=7.90,P<0.0001)、処理と泳いだ道順の間に相関関係が存在した(F(4,84)=2.67,P<0.05)。1回目の試験では、処理によって泳いだ距離に違いはみられなかった。しかし、3回目と4回目の試験では溶媒処理をした動物はMox処理をした動物より、プラットホームを探し出す為に顕著に長い距離を泳いだ。Mox処理をした動物には、試験ごとの泳いだ距離の顕著な違いはみられなかった。すなわち、食塩水処理をした動物の3回目の試験において泳いだ距離の平均値が、この処理をした動物の他の試験より顕著に長くかかってしまったということである。空間ナビゲーションと異なり、2つの処理の間に泳ぐ速さの顕著な違いはみられなかった(F(1,20)=0.67,P<0.42)(図22)。しかし、試験の間に大きな効果が存在し(F(4,84)=17.18,P<0.0001)、処理と試験の間に相関関係も存在した(F(4,84)=4.10,P<0.01)。両方の処理似たいし、動物がそれぞれ続いておこる泳ぎを行っているうちに、泳ぐ速さが顕著に増加した。例えば、1回目の試験から4回目の試験の間に、溶媒処理した動物は顕著に泳ぐ速度が増加した(p<0.01)。まとめモキサラクタム処理をした動物は、溶媒処理をした対照実験動物より水迷路において、隠れたプラットホームと見えるプラットホームをより効果的に見つけた。しかし、それぞれのナビゲーションパラダイムで成功を導いた戦略は顕著に異なった。空間ナビゲーションの間、動物は迷路の外の手がかりと動くプラットホームを探す為の手続き記憶に頼らなければならかった。Mox処理と溶媒処理をした動物は、試験のそれぞれの日においてそれぞれの4分円で過ごす時間の割合に違いがなかったことから、同様の学習と記憶を示したようであった。泳ぎのパターンに明瞭な違いは存在しなかった(図23と図24)。処理の間で、泳いだ距離に顕著な違いはみられなかった。Mox処理をした動物は泳ぐのが速い為、プラットホームを見つけるのが速かった。しかし、キューナビゲーションでは異なる性質を示した。再びMox処理をした動物は、溶媒処理をした動物よりプラットホームを速く見つけた。再びそれぞれの4分円で過ごした時間の割合から決定される探す戦略は、非常に類似していた。しかし、空間ナビゲーションと異なり、Mox処理をした動物はずっと短い距離でプラットホームにたどり着いた。さらに、両方の処理グループ間での泳ぐ速さに違いはみられなかった。これらのデータは、モキサラクタムの抗不安剤の性質は、ベンゾジアゼピンの抗不安剤作用のように学習と記憶を壊す作用は伴わないという知見を支持する。それどころか、モキサラクタムは空間記憶を増強し、意識活動を改良する精神薬として振舞うかもしれない。この発見はモキサラクタムが、ADHD、子供の行動異常、老人病学患者の老化の治療に効果的な臨床薬になるかもしれないことを示唆する。VII.非ヒト科霊長類の社会行動実験方法8匹の、2歳の若いベンガルマカクザルがMoxを使って試験された。動物はセッティングされたフィールドステーションに、母親と一緒にグループで育てられた。1歳になったとき、一人用のケージに移された。それからは毎日2−3時間、メスと一緒にされた。若いパートナーは、いつも同じペアであった。この年の長い実験により、若いパートナーまたは「プレイメイト」は、優位と下位の地位が認識される社会的な相互関係が良く決定された歴史を持つ結果となる。サルが共に過ごせる時間は限られているので、この手配による社会行動の誇示は非常に大袈裟になる。【0090】実験の間猿は「プレイケージ」に2匹で入れられ、1時間ビデオテープに録画された。この研究は、行動データがMox処理をしたサルからも溶媒処理をしたサルからも得られる事ができるように意図された。処理はABA型管理スケジュール、すなわち1日目それぞれのペアのうち1匹が0.9% NaCl、2日目薬剤、3日目食塩水を受ける、に従って行われた。ペアのうち1匹だけが試験の日に注射された。ペアのもう一人のメンバーは、1週間後からABAスケジュールに従って注射された。モキサラクタムは1 mg/kgの使用量で筋肉注射された。動物は注射された60分後から1時間ビデオテープに録画された。動物たちは40種類以上の行動が記録された(Winslow et al.,1988)。そのうち28項目がTABLE 1に記載されている。報告されなかった行動、例えば自分自身に噛み付く、叫ぶ、くっついて離れない、上に乗っかる、逃げる、自分自身で身づくろいをする、などはそれほど行われなかったので解析から除外した。ペアのt検定は、それぞれの行動測定の為に行われた。結果Mox処理を行うことによって、溶媒処理をした動物と比べてじゃれるけんかの持続時間が著しく減少した(p<0.05)。この発見は動物の社会的地位に影響されない、すなわち優位である動物も下位である動物もMox処理を行うことによってじゃれるけんかを行うことが減少するのである。面白いことに、いくつかの異なる測定法による対決行動、例えば混合攻撃スコアは、著しいレベルで集団を形成していた。これらは若いベンガルザルであり、それがゆえに社会的攻撃性の表現が、第一段階としてじゃれるけんかに制限されてしまうということを覚えておくべきであろう。その攻撃性は、大人とは同じ感情のバランスではない。しかし、じゃれるけんかは大人の攻撃性につながる若い頃の先立つものであると考えられている。若いサルや大人のサルに対する同種間のグルーミングは、友好関係行動として最初に測定される。Mox処理によってじゃれるけんかの持続時間は著しく減少したが、同種間のグルーミングには何の影響も見られなかった。まとめモキサラクタムを1 mg/kgの使用量で若いベンガルザルに投与すると、対決行動の測定であるじゃれるけんかが著しく減少した。しかし同種間のグルーミングという友好関係行動のキーとなる測定には変化はなかった。それゆえ、Moxはげっ歯類から非ヒト科霊長類まで、対決行動を減少させることができるということがわかった。VIII.モキサラクタムのD型、L型異性体の試験原理薬品の3次元構造はもともと鏡像体であったり異性体であったりする。これらの異性体は、それらの光の回転に基づいてD型とL型に分類される。通常、どちらか片方の異性体しか生物学的活性を示さない。これらの研究において用いられてきたMoxは2つの異性体の混合物であるので、活性のある異性体を単離し試験する必要があった。方法モキサラクタムナトリウム塩(FW 564.4)は、異性体混合体としてSigma Chemical(St Louis MO)から購入した。D型、L型のMoxは、HPLCを使ってZiemniak et al.,1982の方法に従って単離された。D型、L型のMoxは水に溶解され、ランニングバッファーである1% MeCN,pH6.5によってC18カラムに通されることによって分画された。カラムの流出は275 nmのUV検出器によって監視された。両方の異性体が1つずつのピークで溶出された。D型Moxの溶出時間は6.7分であり、L型Moxの溶出時間は8.2分であった。Moxの個々の異性体は比較的不安定であり、凍結乾燥の間に再異性体化してしまうので、かなり純粋な(<98%)サンプルを得るのは困難であった。それゆえ、HPLCから動物へ直接行く必要があった。D型異性体(約200 μg/ml HPLCバッファー)は50 μg/mlになるように食塩水で希釈され、腹腔内注射(50 μg/kg)されるまで氷上に保存された。L型異性体(約150 μg/ml HPLCバッファー)も50 μg/mlになるように食塩水で希釈され、同様に処理された。結果8匹の動物のグループ2つがそれぞれ、50 μg/kgのD型とL型のMox処理をされた後、攻撃性が試験された(図9)。動物は注射して90分後に試験された。D型Moxは著しく噛み付くまでの時間を増加させ(p<0.01)、噛み付く回数を減少させた(p<0.05)。2つの異性体の間に、接触時間や横腹マーキングの著しい違いはみられなかった。まとめこれらのデータにより、攻撃的行動の影響する異性体はD型モキサラクタムであることが同定された。IX.ベータラクタムに関係した抗生物質の抗攻撃性効果の試験原理モキサラクタムは化学的に薬学的に、セファロスポリンやペニシリンといった抗生物質と類似している。実際、モキサラクタムはセファロスポリンに分類される。全てのセファロスポリンとペニシリンの基本構造を下に示す。それぞれベータラクタム環(A)を持ち、順番に、セファロスポリンは6角形のジヒドロチアジン環を持ち(B)、ペニシリンは五角形のジヒドロチアジン感を持つ(B)。これらの抗生物質の化学的核を形作るこれらの基本構造は、菌類で作られる。モキサラクタムは自然界では発見されていないが、セファロスポリンで硫黄(S)原子を酸素に置き換えたものとして特徴を述べられる。セファロスポリンとペニシリンは、細菌を殺す。それらの抗菌活性は、細菌の細胞壁でのペプチドグリカン合成を阻害することによって起こる。活性の正確な機構がすべて理解されたわけではないが、これらの抗生物質は、例えばカルボキシペプチダーゼやエンドペプチダーゼといった細菌の細胞壁を強化するペプチドグリカンの格子を作るのに関係する、いくつかのタンパク質分解酵素結合する。これらの抗生物質とタンパク質分解酵素の間の相互作用はリバーシブルである。ベータラクタム抗生物質は、アシル−D−アラニル−D−アラニンという、内在性のこれらの酵素の其質のアナログとして働くと考えられている。これらの細菌の酵素が抗生物質に結合してしまうと、それらの酵素は機能できなくなり、細菌が分裂するときに溶菌してしまうのである。類似したカルボキシペプチダーゼとエンドペプチダーゼが、哺乳類の脳のニューロンとグリアの細胞膜に結合している。それらのたくさんある機能のうちの1つが、神経伝達物質として働く神経ペプチドをすばやく分解することである。例えばドーパミンやセロトニンといった、シグナル活性が終了するのを再吸収機構に依存している古典的な神経伝達物質とは異なり、神経ペプチドは細胞外空間においてすばやく分解されることによって不活性化される。これらのベータラクタムに関係する抗生物質は、たくさんの神経ペプチドの代謝(NAALADase活性)を阻害することにより脳の神経ペプチド環境を変えるので、精神栄養活性を持つと信じられている。方法6匹の動物が同じ濃度(90 μM)のモキサラクタム(Mox)、アンピシリン(Amp)、カーベニシリン(Carb)、セフォキシチン(Cef)、アモキシシリン(Amox)と溶媒の食塩水(Veh)を用いて試験を行った。濃度はこれまでのMoxの試験に使用した50 μg/kgに調節された。全ての水溶液は0.9% NaClに溶解され、腹腔内注射にて与えられた。同一個体に異なるものを投与することでバランスが取られた。動物は注射後90分に攻撃性が試験された(図10)。処理によって噛み付くまでにかかる時間に著しい違いがみられた(F(5,30)=2.83,P<0.05)。MoxとAmpの両方とも、溶媒の対照実験と比較して、噛み付くまでの時間を遅らせた(それぞれp<0.001とp<0.05)。噛み付いた数にも処理の間で著しい違いがみられた(H=10.6;p<0.05)。MoxとAmpの両方とも、噛み付いた数が著しく減少した(p<0.05)。接触時間、または横腹マーキングに処理による著しい効果はみられなかった(図11)。まとめこれらのデータは、ベータラクタム抗生物質であるMoxの抗攻撃性効果が、ベータラクタムアンピシリンにも含まれる可能性を示す。試験された全ての抗生物質の中で、Moxは中枢神経系に最も吸収されやすかった。2.0gのMoxを静脈注射する特許によると、小脳脊髄液における薬剤の濃度は30 μg/mlを示す。小脳脊髄液と血清におけるMox濃度の割合は約15−20 %であった。140 gのハムスターに14 μgのMoxを腹腔内注射したときの、Moxの血清濃度は0.1 ng/mlであると推定される。これは小脳脊髄液濃度が15 ng/mlであり、脳におけるMox濃度が30 nMであることを反映しているであろう。これらのレベルは、ほとんどがナノモーラーの範囲で結合親和性を持つニューロペプチド受容体に効果的に結合できる範囲であろう。古典的な神経伝達物質の受容体のKd値はマイクロからミリモーラーの範囲であるので、相互作用は起こっていないと考えられる。【0091】脳脊髄炎を伴う新生児(ベータラクタム抗生物質が中枢神経系に取り込まれやすい状況)は、小脳脊髄液と血清のAmpの濃度比は約10 %である。一方、脳脊髄炎が激しくなっても、セフォキシチンは中枢神経系への透過性が低い。おそらくたくさんのベータラクタム抗生物質は攻撃性行動の抑制に効果的であるかもしれないが、単純に薬学的カイネティクスと中枢神経系への透過性に制限されているのであろう。この考えを調べる為に、ベータラクタム抗生物質のそれぞれの薬剤の使用量を高くして実験を繰り返す必要があった。X.高い使用量のベータラクタム等量で等しい濃度の(約5 mg/kg;9 mM)アンピシリン(Amp)、カーベニシリン(Carb)、セフォキシチン(Cef)と溶媒として用いた食塩水のみ(Veh)が、6匹の動物で試験された。濃度は、Moxの使用量による反応を調べたのに使った使用量と同じ5 mg/kgに合わされた。全ての水溶液は0.9% NaClで作られ、腹腔内注射によって投与された。同一個体に異なるものを投与することで対照実験が取られた。投与して90分後に動物は攻撃性が試験された(図12)。処理によって、噛み付くまでの時間に顕著な違いがみられた(F(4,25)=5.49,P<0.01)。Amp処理とCarb処理をした動物は両方とも、溶媒処理をした対照実験動物と比べて噛み付くまでの時間が遅かった(P<0.001)。処理によって噛み付いた回数にも顕著な違いがみられた(H=11.7;P<0.05)。Amp処理とCarb処理をした動物は両方とも、顕著に噛み付く回数が減少した(それぞれp<0.05とp<0.01)。接触時間や横腹マーキングについては、顕著な処理による効果はみられなかった(図13)。アモキシシリンは、この高い使用量のベータラクタム抗生物質の実験に使用されなかったが、別の実験として使用量1 mg/kg(約2 mM)を用いる実験が行われた。8匹の動物が、Amoxまたは溶媒として用いた食塩水の腹腔内注射による処理の90分後に、攻撃性が試験された(図14)。それぞれの動物は少なくとも48時間の間隔を空けて、それぞれの処理を受けた。その処理によりバランスがとられた。攻撃行動は1 mg/kg Amoxによる処理を行った動物においては、著しい変化は見られなかった。まとめこれらのデータは、十分に高い使用量のアンピシリンとカーベニシリンは、接触時間と横腹マーキングを変化させることなく、攻撃性を抑制する事を示す。これらのデータは、モキサラクタムの神経栄養効果は他のベータラクタムにも存在し、その活性の生物学的機構は類似しているかもしれない可能性を示唆する。生体に使用可能であることや、中枢神経系に浸透することなど、一部において、生物学的効能の中で様々なものに寄与する最も多い物質であるかもしれない。実際最近の試験によって、臨床的に著しい抗生物質活性を持たないが臨床的に重要なベータラクタマーゼ抑制活性があることが知られているベータラクタムの一種であるクラブラン酸が、1 μg/kgの腹腔内注射を行うだけで、抗不安、抗攻撃性、意識の高揚を含む多様な精神栄養効果を示したことが説明された。その高い経口吸収効率や血液脳関門の透過性は、この発見に従った方法や調剤規定を用いることにより、クラブラン酸やその他のベータラクタマーゼ抑制剤をよりよい候補にすることであろう。これらのベータラクタムの、向精神効果の機構は、現在、神経に存在するNAALADaseとの相互作用によるものであると信じられている。10 nM程度の濃度のファロスポリンにバクテリアを殺す活性が存在すると報告されていることから、この説は信じるに値する。50 μg/kgのMox処理をした後の脳のMox濃度は30 nMであると算定されることに注意されたい。ベータラクタム抗生物質が向精神性を持つことへの他の可能な説明は、既知の神経伝達物質の受容体や再吸収タンパク質の阻害によって得られるかもしれない。この2つ目の可能性を試験するために、Moxと受容体の相互作用を広い範囲で放射線リガンド結合実験することによって解析する必要があった。XI.モキサラクタムと受容体とトランスポーターと結合実験MoxとバソプレシンV1Aおよびセロトニン5HT1A受容体との相互作用バソプレシンとセロトニンは両方とも、雄のハムスターの攻撃性を調節する決定的な神経伝達物質である(Ferris et al.,1998)。これらの2つの神経伝達物質はヒトの攻撃性を調節することも示唆されている(Coccaro et al.,1998)。バソプレシンは攻撃行動を促進し、セロトニンは一部でバソプレシン系の活性を抑制することにより攻撃性を抑制する。下垂体前葉のバソプレシンV1A受容体の抑制と、セロトニン5HT1A受容体の刺激により、攻撃性が抑制される(Ferris,1999)。Moxは著しく攻撃性を抑制するので、これらの受容体のうちの1つまたは両方と相互作用を示しているのではないかと仮定された。この考えを試験する為に、MoxはV1A受容体への競合を膜結合アッセイで試験され(Ferris et al.,1994)、5HT1A受容体との競合を受容体オートラジオグラフィーアッセイで試験された(Ferris,1999)。濃度が1 μMのモキサラクタムはI125HO−LVA(バソプレシンのリガンド)がハムスターの肝臓の膜分画に結合しているのを顕著に置換しなかった。また、Moxはハムスターの脳の組織切片でI125DPAT(セロトニンのリガンド)特異的な結合を効果的に減少させなかった。まとめこれらのデータはモキサラクタムが、ハムスターのバソプレシンV1A受容体とセロトニン5HT1A受容体に直接相互作用を持たないことを示した。これはモキサラクタムが、他の神経化学的経路の活性化を変えることにより行動に影響を与えていることを示唆する。アミノ酢、アドレナリン、セロトニン、ドーパミンに対する受容体とトランスポーターに関する試験モキサラクタムは、Maryland州のHanoverにある接触研究機関であるNOVASCREENによって36回にわたる様々な結合実験が試された。モキサラクタムは100 nMで試験され、以下にリストしたそれぞれの試験を2サンプルずつ行った。これらのアッセイに使用される受容体とトランスポーターは、精神病の病理性理学において役割があるかも知れない物が厳選された。モキサラクタムはこれらの結合試験においてどれとも顕著な効果を示さなかった。コルチコトロピン放出ホルモン受容体の試験コルチコトロピン放出ホルモン(CRHまたはCRF、詳細は次のページに示す)はストレスの調節に決定的な役割を示す神経ホルモンである。Moxは衝動、攻撃性、不安を抑制し、学習と記憶を向上させるので、ストレスを減少させる働きがあるのかもしれない。この理由の為MoxはNOVASCREENによってCRFとの結合実験が行われた。100 nMの濃度のモキサラクタムはこの試験で何の効果も示さなかった。まとめこれらのデータは、モキサラクタムが攻撃性や精神病の病理生理学が示唆されているたくさんの受容体やトランスポーターに直接相互作用を及ぼしているのではないことを示す。これにより活性機構について3つの可能性が残された。1)例えばヒスタミン、アセチルコリンや他の神経ペプチドなどの試していない既知の受容体と相互作用している。2)未知の受容体、またはリガンドが知られていない受容体と相互作用している。3)脳の化学環境を変える中枢神経系に存在するペプチド分解酵素(例、NAALADase)と相互作用している。XII.活性機構の探索攻撃性への効果の為のペプチドグリカン前駆体ペプチドの試験原理ベータラクタム抗生物質は、バクテリアのタンパク質分解酵素の神経の基質であるアシル−D−アラニル−D−アラニンに類似した立体構造を持つ。おそらくこの構造学的性質は、ベータラクタム抗生物質を基質の競合体として酵素活性を阻害する行動を可能にさせる。この仮説を調べるために、アシル−D−アラニル−D−アラニンのアナログであるペプチドグリカン前駆体ペプチド(Nieto and Perkins 1971;Zeiger and Maurer,1973)の抗攻撃性効果がハムスターの居住者/侵入者パラダイムを使って試験された。方法ペプチドグリカン前駆体ペプチド(PPP;Ala−D−g−Glu−Lys−D−Ala−D−Ala)はSigma Chemicalから購入され、DMSOに溶解され、0.9%NaClで約2 mMに希釈された。動物は試験の日には回復しているように、2日前にペントバービタルナトリウム(50 mg/kg)で麻酔され、側脳室にマイクロインジェクションガイドカニューレを埋め込まれた。試験の日、動物(n=6)は溶媒(0.9% NaCl中に2% DMSO)またはPPPを1 μl中に約1 mg/kgの使用量で含むようにして注入された。注入して60分後、動物はケージに入れられた自分より小さい侵入者に対して攻撃性を示すかどうか試験された。2日後、動物は1回目とは別の処理を受けて再び試験された。結果ペプチドグリカン前駆体ペプチド処理により、10分のテストの間、噛み付くまでの時間が著しく増加し(p<0.05)噛みつく回数は減少した(p<0.05)(図15)。接触時間や横腹マーキングには、処理による顕著な違いはみられなかった。臭覚による識別効果に対する、ペプチドグリカン前駆体ペプチド(PPP)の試験6匹の動物が溶媒または1 mg/kgのPPPを小脳脳室内注射され、隠されたひまわりの種を探し出すまでの時間を測定するという嗅覚による識別試験が行われた(図16)。その注入はそれぞれの動物がそれぞれの処置を受けることによってバランスがとられた。試験の24時間前から、動物は絶食させられた。注射して60分後、動物は1時的にホームケージから外され、その間に白い6個のひまわりの種がケージの隅の床敷きの下にうめられた。動物はホームケージに戻され、5分間の観測時間に種を見つけるまでの時間を記録された。溶媒処理をしたものに比べ、PPP処理をした動物は顕著に種を探し出すまでの時間が減少した(p<0.05)。まとめペプチドグリカン前駆体ペプチドをハムスターの脳に直接注入すると、Moxを末梢から注入したときと同じ行動結果が得られた。両方の薬と両方の経路による投薬は、動的活動の社会的な興味、例えば接触時間と横腹マーキング、を変えることなく攻撃行動を著しく減少させた。さらに、ベータラクタム抗生物質の試験で最も単純で最も強いと思われた鼻判別の増強と類似の効果が、前駆体ペプチドによっても見られた。この発見はベータラクタム抗生物質が、1)脳に直接働くことによって2)アシル−D−アラニル−D−アラニンペプチドの効果を一部をまねることによって行動に影響していることの証拠である。クラブラン酸はベータラクタム環を持ち構造的にペニシリンやセファロスポリンと類似しているが、抗生物質活性は弱く、抗生物質としての臨床効果はない。しかし、チカーシリン(チメンチン)のようないくつかのベータラクタム抗生物質と一緒に投与されると、クラブランン酸は性質が変わり、抗生物質活性が増強する(AHFS,1991)。クラブラン酸は通常ベータラクタム抗生物質を分解したり不活性化させたりするバクテリアのベータラクタマーゼの競合的阻害剤として働いているので、この相乗活性は可能である。(Brown et al.,1976;Reading and Cole 1977)。クラブラン酸はアメリカでは市販されているが、他の決まった薬品と一緒にしか手に入らない。一般的に処方されるチメンチンは通常(チカーシリンを基に計算すると)200−300 mg/kg/日の範囲の使用量で静脈注射で与えられ、それは7−10 mg/kg/日のクラブラン酸の使用量に相当する(AHFS,1991)。この使用量の範囲でクラブラン酸が与えられている限り、逆反応や逆効果は報告されていない(Koyu et al.,1986;Yamabe et al.,1987)。下に示されたデータは、クラブラン酸は10 ngから10 μgの使用量で、1000回から1,00,000回、抗生物質効果のために使用されている限り、中枢神経系の活性と行動を変えることはないと報告している。クラブラン酸は単独で口に入れても活性があり安定である。生物学的に使用可能であるのは64から75%(Davies et al.,1985;Bolton et al.,1986)で、排出半減期は2時間である。血清中の濃度が最高になるのは、経口摂取してから45分後から3時間後であり、血清半減期は2時間以上である(Nakagawa et al.,1994)。クラブラン酸が含まれる血液の体積が15リットルであることから、クラブラン酸は細胞外液にしか存在しないことが示唆される(Davies et al.,1985)。小脳脊髄液と血清濃度比は0.25であり、これはクラブラン酸が血管脳関門を速やかに透過することの証拠である(Nakagawa et al.,1994)。クラブラン酸を用いた行動試験I.不安についての種探しモデルでのクラブラン酸の用量と反応原理クラブラン酸(CLAV)はベータラクタム抗生物質と構造的に類似している。中枢神経系活性へのベータラクタムの影響を調べる最も強くて単純な試験は、ゴールデンハムスターの不安を調べる種探しモデルである。手短に言うと、ハムスターは一晩食事が抜かれる。次の日ホームケージから外され、新しい環境に数分間置かれるという、更なるストレスが与えられる。この操作はストレスホルモンのコルチゾールの放出を刺激する(図37)。ホームケージから外している間に、ひまわりの種をホームケージの一角の床敷きの下に隠しておく。ホームケージに戻ったとき、ハムスターは慣例的に落ち着気を取り戻し、座って、種を食べるまでの1−2分間、壁に沿って床敷きを荒らしまわる。しかし、ベンゾジアゼピン抗不安剤クロルジアゼポキシドで処理した動物は10秒以内に種を見つける。種を見つけるまでの分単位から秒単位へのこの時間の減少は、以下に行うモキサラクタムや他のベータラクタム抗生物質処理によっても起こる。【0092】実験方法Harlian Sprague−Dawley Laboratories(Indianapolis,IN)から譲渡された雄のシリアゴールデンハムスター(Mesocricetus auratus)(140−150グラム)は、1匹ずつプレキシグラスケージ(24 cm x 24 cm x 20 cm)の中で明暗周期(明周期14時間:暗周期10時間、ライトは19時につけられた)のある場所で維持され、必要に応じて食物と水が与えられた。様々な濃度のCLAV(食塩水溶媒、0.1,1.0,10,100,1000 ng/kg)が6グループのハムスターに試験された(1グループあたり4−8匹)(図25)。全ての試験は、明暗周期における暗期の間に、弱く赤い照明下で行われた。試験の前に動物は20−24時間絶食させられた。薬剤を腹腔内注射した90分後、動物はホームケージから外され、一時的なケージに2分間入れられた。外されている間に、ホームケージの一角の床敷きの下に6個のひまわりの種を隠しておいた。動物はホームケージにランダムに種の隠されていない角の方に顔を向けられて戻され、5分間の観察時間の間、種を見つけるまでの時間が測定された。かかった時間は、一元配置分散分析法とScheffeのポストホック検定で解析された。等分散の仮定も検定された(HartleyのF−max=2.1 p>.05)。結果ひまわりの種を探し出すまでの時間は使用量によって顕著に異なった(F(5,30)=10.0;p<0.0001)。溶媒の食塩水処理をしたものの平均時間が104秒であったのに比べ、CLAVを10 ngかそれ以上使用したものは8秒以内と、探し出すまでの時間が著しく減少した(p<0.01)。使用量が1 ng/kgのものは、食塩水の対照実験と、顕著な違いがみられなかった。まとめこれらのデータは体重1kgあたり10 ngのCLAVを与えられると、種探し試験に最高の効果が得られることを示す。これらの実験に使用された大人の雄のハムスターの体重は約125 gであった。それゆえ、これらの動物は約1.25 ngのCLAVが与えられた。CLAVは、細胞外液の体積とだいたい同じ体積の体液内に溶解していることになる。細胞外液は脂肪がついていない体重の約22%である。27.5 mlの水に1.25 ngのCLAVが解けたときの濃度は、0.045 ng/mlであり、それは約200 pM(CLAVのカリウム塩の分子量が約240であるから)である。小脳脊髄液/血しょう濃度比は0.25であるので、脳内の濃度は50 pMであると推定された。不安についての種探しモデルは、臨床的に不安処理に使用されるベンゾジアゼピンのような薬品もこの動物モデルには効果的であることから、経験的に信頼性があるように思われる(McKinney,1989)。しかし、不安の測定の為の種探しモデルを採用する前に、より広い範囲で抗不安剤と効果がない薬品が、偽陽性と偽陰性の範囲が調べられる必要がある。それゆえ、古典的に進化した十字迷路試験で、CLAVの潜在的抗不安剤活性を確認する必要があった。II.高度が高い十字(プラス)迷路でのクラブラン酸の試験ラットに対する抗不安剤と不安剤の薬物効果を測定する為に、高度のある十字迷路が開発された(Pellow et al.,1985)。その方法は、行動学的、生理学的、薬学的に有効であるとされている。プラス迷路は、2つの開いたアームと2つの閉じたアームからなる。ラットは普通閉じたアームから入るよりも開いたアームから入る方が少なく、また開いたアームで過ごす時間の方が顕著に少ない。開いたアームに閉じ込めると閉じたアームに閉じ込めるよりも、顕著により多くの不安から起こる行動をとると共により高いストレスホルモンの血中濃度を示す。臨床的に効果的であることが知られているクロロジアゼポキシドやディアゼパムのような抗不安剤は、開いた腕で過ごす時間の割合と開いた腕に入る回数を顕著に増加させる。逆にヨヒンビンやアンフェタミンのような不安剤は、開いた腕に入る回数や開いた腕で過ごす時間を減少させる。実験方法体重が250−300gの雄のウィスターラットは、明記の開始が午前8時の12:12の明暗周期で、1ケージあたり数匹で飼われ、必要に応じて食物と水が与えられた。十字迷路は透明なプレキシグラスでできた長さ50 cm,幅10 cm,高さ40 cmの壁を持つ2つの開いたアームからできている。2つの閉じたアームは同じ構造であるが屋根がある。閉じたアームのプレキシグラスは、黒く塗られた。迷路は高さが50 cmになるように組立てられた。1 μg/kg CLAVと対照実験の溶媒を約0.3 mlの体積で腹腔内注射され90分、18匹の動物が十字迷路で試験された。同一の動物に、少なくとも48時間あけて両方を注射することによってバランスがとられた。実験開始時、動物は開いたアームのうちのひとつの端に置かれた。5分間の観測時間中に、動物が閉じたアームに入るまでの時間、閉じたアームで過ごした時間、最初に閉じたアームに入った後に開いたアームに入った回数が記録された。この試験は繰り返し測定の表を作った。処理によるデータの違いは、繰り返しデータの二元配置分散分析法とBonferroniのポストホック検定で比較された。結果処理によって暗い場所に入るまでの時間に顕著な違いがみられた(F(1,18)=8.53;p<0.01)。CLAVで処理したとき(p<0.05)、動物は食塩水で処理したときより最初に置かれた、開いて明るい位置に長くとどまった(図26)。開いたアームで過ごした時間は処理によって顕著に異なった(F(1,18)=144 p<0.0001)(図26)。CLAV(p<0.01)は溶媒に比べて、開いたアームで過ごす時間が著しく増加させた。最後に開いた腕に入った回数は、処理によって顕著な違いがみられた(F(1,18)=44.0;p<0.0001)。CLAV(p<0.01)は溶媒に比べて、開いたアームに入る回数を増加させた(図26)。まとめこれらのデータは、十字迷路において1 μg/kgの使用量でCLAVは抗不安剤活性を持つことを示す。これらのデータは勇気を与えてくれるが、多くの抗不安剤、例えばベンゾジアゼピンは動的活動を抑制する。CLAV処理をした動物は、明るく開けたアームから暗く屋根があり閉じたアームに移動する為により多くの時間を費やしているので、このベータラクタムは不安を減少させるのではなく動きを遅くさせているということが議論されるべきである。この可能性を議論する為にオープンフィールドのパラダイムで一般的な動的活動にCLAVがどのように影響するかを試験する必要があった。III.オープンフィールドでの動的活動実験方法セクションIIでの十字迷路試験が行われた直後、動物は一般的な動的活動を「オープンフィールド」で試験された。動物は1匹ずつ床敷きの広くて清潔なプレキシグラス・ケージ(48 x 32 x 40 cm)に移された。このオープンフィールドは、ケージの裏側にテープで等しい4分円が描かれている。動物の動的活動は、1分間に横切った4分円の回数を数える事によって評価された。オープンフィールドでの活性についてはCLAVと溶媒処理による著しい違いはみられなかった(図27)。まとめオープンフィールドの試験により、CLAVによる動的活動の抑制の証拠は存在しなかった。この発見は別のセクションVIIで報告された行動試験である横腹マーキング試験結果を強めた。横腹マーキングは、ハムスターが鼻によるコミュニケーションでフェロモンを広めるために用いるステレオタイプな運動行動である(図39)。横腹マーキングはCLAV処理によって影響を受けなかった。このベータラクタムは動的活動を抑制しないことから、より伝統的に用いられているベンゾジアゼピンの抗不安剤活性よりも有利であることが示されるであろう。しかし、CLAVの抗不安剤活性は、臨床的に処方されているベンゾジアゼピンに匹敵するのであろうか?IV.十字迷路でクラブラン酸対クロルジアゼポキシド実験方法クロルジアゼボキシド(リブリウム)は、臨床研究で徹底的に性質を解明された、普通に処方される抗不安剤である。十字迷路において効果的な抗不安剤の使用量は10−25mg/kgである(Lister 1987;File and Aranko 1988;Shumsky and Luski 1994)。この範囲の使用量ではクロルジアゼポキシド(CDP)は鎮静作用があり、動的活動を抑制するので、運動を必要とするいかなる行動試験の解釈も複雑にしてしまう(McElroy et al.,1985)。しかし、動物に数日間CDPが毎日繰り返し投与されると、運動抑制が寛容になることが発見された(Shumsky and Lucki 1994)。それゆえこれらの研究において、ラット(n=6)は実験開始日までの7日間、毎日1回のCDPの腹腔内注射(10 mg/kg)を受けた。CLAVは動的活動への効果をもたないが、対照された実験計画を保証する為に、同じ数のラットに毎日CLAV(100 ng/kg)を注入する処理をすることが必要であった。さらに溶媒の食塩水の注入を毎日受ける3つ目のラットのグループ(n=6)が存在した。セクションIIにおいてCLAVを1 μg/kg使用したプラス迷路の実験を報告した。セクションIに示された不安を測定する種探し実験のデータは、CLAVは10 ngから1 μg/kgの使用量で効果を発揮するであろう事が示唆されている。この理由の為、この試験ではCLAVは100 ng/kg使用された。結果暗い場所に入るまでの時間が処理によって(F(2,15)=21.45,p<0.001)顕著に異った。溶媒処理との対照実験と比較して、CLAVとCDPで処理した動物は(p<0.01)暗い閉じたアームに入るまでの時間が顕著に増加した(図28A)。明るい場所で過ごす時間も、処理によって(F(2,15)=17.14,p<0.001)顕著に異なった。食塩水処理と比較して、CLAVとCDPで処理した動物は(p<0.01)光にさらされた開いたアームで過ごす時間が顕著に増加した(図28A)。開いたアームに入る回数は処理によって顕著な違いはみられなかった(図28B)。まとめこれらのデータは高度のある十字迷路において、CLAVとCDPが抗不安剤活性を持つことを示した。しかし、CDPより100,000倍少ない使用量で効力を発揮したCLAVの方がより大きな力を持つ。さらに、CLAVは古典的なベンゾジアゼピン抗不安剤が持つ鎮静作用、運動抑制活性を持たない。CLAVの抗不安剤活性は即効性であり、行動に効力を認めるために寛容を作る必用はない。しかし、気をつけなければならないのは、ベンゾジアゼピンには他にも寛容を作ることができない望ましくない方面の効果、記憶喪失効果が存在するのである(Shumsky and Lucki 1994)。例えば、ジアゼパン(バリウムR)は長期記憶には影響は及ぼさないが、短期記憶と注意を選択的に損なわせる(Liebowitz et al.,1987;Kumar et al.,1987)。それゆえ、CLAVが学習と記憶に意図せぬ効果をもたないかどうかを試験する必要があった。V.クラブラン酸と水迷路の空間記憶Morrisの水迷路は、空間記憶を試験するために開発された(Morris,1984)。円形のプールは4分割され、通常それぞれ北、南、東、西と名付けられる。プールの中の水は、粉ミルクを加えることにより不透明化される。プールの中にはげっ歯類のための逃げ道として働くプラットホームが、4分円の1つに水面のすぐ下に隠されている。動物は様々な異なる開始点としてプールの色々なところに放され、プラットホームを見つけるまでの時間が記録され、それぞれの4分円で過ごした時間の割合が計算され、泳いだ距離や泳ぐ速さも測定される。動物は、プールの中には視覚的、空間的手がかりは与えられないので、泳いでいる動物から見えるプールの外側にあるもののような迷路以外の手がかりに頼る必要がある。数回の実験を通して、ラットには「位置学習」または迷路以外の手がかりを元にしたプラットホームの位置に関する知識が芽生えてくる。プラットホームは異なる4分円に移動することができるので、空間記憶ともに労働記憶も試される。このパラダイムは以前の記憶の無効化と、新しい空間的問題への解決が関係する1.空間ナビゲーション方法水迷路は、直径が約150 cmで高さ54 cmの黒いビニールでできた円形のプールに、粉ミルクで濁らせた水を35 cm入れたものからなる。プールは4分割され、北西の4分円に表面から2 cmの深さで10 cmのプラットホームが沈められた。水は25 ℃で維持された。プールの周りには様々な視覚的手がかりが置かれた。プールの上には、実験動物の動きを追跡するビデオカメラが設置された。データの収集は、HVS Image社(Hampton,UK)が開発したソフトウエアを使用して完全に自動で行われた。試験の前、ラットはプールと北西4分円に位置するプラットホームに慣れさせられた。4日連続でそれぞれの日に、動物はプールにランダムに放され、プラットホームを探す時間を2分間与えられた。動物は試験を行う1時間前に1.0 μg/kg CLAV(n=9)または溶媒(n=9)で処理された。これらの慣れるための試験に続いて、動物は空間ナビゲーション試験を受けた。試験の最初の日は、予想される北西4分円にプラットホームが置かれた。2分間の観察時間の全ての行動は、ビデオテープに録画された。試験が終わると、動物は乾かされホームケージに戻された。続く日ごとにプラットホームは新しい4分円に移動され、ラットは新しい地点に放された。ラットはいつもプールの側壁近くにいた。プラットホームと実験開始点との関係は、4回の実験でそれぞれ異なるように設定された。しかし、プラットホームはいつもそれぞれの4分円のなかの同じ相対的地点に置かれた。プールの側壁から20 cm、外側に向かって左の角である。隠されたプラットホームを探し出すまでの時間、泳いだ距離、泳ぐ速さ、どの4分円にいたかは、CLAVと溶媒処理をした動物の間で、繰り返し行った測定を二元配置分散分析法とBonferroniのポストホック検定で比較した。結果薬剤処理(F(1,16)=4.17,P<0.057)と試験の日(F(3,48)=0.51,P>0.5)と要素の間の相互作用(F(3,48)=1.92,P>0.1がプラットホームを探し出すまでの時間に対して、大きな効果を示さなかった(図29)。しかしCLAV処理をした動物は1日目と4日目に短い時間でプラットホームを探し出す傾向を示した。プラットホームを探し出す戦略は、それぞれの4分円で過ごした時間の割合から判断すると、両方の処理で類似していた(図30AとB)。なぜならどの4分円もどの日も、処理による著しい違いはみられなかったからである。どの特定の4分円で時間を過ごすかという割合は日によって顕著に異なった(例、CLAV、北4分円、F(3,32)=38.81,P<.0001)。動物はある特定の試験において、特定の4分円で、顕著に多い時間を過ごした。例えば、1日目CLAV処理と溶媒処理の動物は、他の4分円に比べて北4分円で過ごす時間が長かった(p<.01)。これは、慣れるための試験の時からこの4分円にプラットホームが位置していたことを彼等が知っていたからであると予想された。それぞれの4分円で過ごした時間の割合から判断したプラットホームを探し出す戦略が、CLAV処理と溶媒処理で類似していた一方、小さいが明白な違いも存在した。CLAV処理をした動物は、溶媒処理をした動物と比べて正しい4分円で過ごした時間が長かったのである。CLAV動物が正しい(南)4分円で50%以上過ごしていた2日目において、この違いは大きな事実である。溶媒動物は40%以下しか正しい4分円にはおらず、それは他の4分円と顕著に異なる時間ではない。4日目までにはCLAVも食塩水も正しい4分円(西)でほとんどの時間を過ごしている。この4日目の戦略は、両方の処理をした動物が良い空間記憶、労働記憶、手続き記憶を得たことを示している。プラットホームを探す為に泳いだ距離に、処理による顕著に大きな効果はなかった(F(1,16)=8.40,P>0.01)。1日目CLAV処理をした動物(p<0.05)は、溶媒処理をした動物と比べて探している間ずっと短い距離しか泳がなかった(図31)。CLAVと溶媒で、泳ぐ速さに顕著な差は見られなかった(図32)。2.キューナビゲーション方法空間的ナビゲーションの最終日(4日目)の翌日、動物はキューナビゲーション試験をされた。これらの試験では、プラットホームは水面より高くされた。試験の1時間前に、動物はCLAVまたは食塩水処理された。空間ナビゲーションのときにCLAV処理された動物は、キューナビゲーションにおいてもCLAV処理された。動物は2分間の試験を、45分の休憩をはさんで2回行われた。それぞれの試験のとき、プラットホームは違う4分円に移動された。キューナビゲーションは、プラットホームが見えることと、試験を5回連続で行い1日で終わってしまうこと以外は、空間的ナビゲーションと同じであった。動物はプラットホームを見つけるまでの時間と、それぞれの4分円で過ごした時間の割合と、泳いだ距離と泳ぐスピードが試験の間ずっと記録された。結果キューナビゲーションにおいてプラットホームを探し出すのにかかる時間は、処理(F(1,16)=0.533,P>0.1)、実験(F(4,64)=0.9745,P>0.1)、要素間の相互作用(F(4,64)=0.7433,P>0.5)による効果はみられなかった(図33)。空間ナビゲーションでそうであったように、動物がそれぞれの4分円で過ごした時間の割合から判断すると、両方の処理において、動物はそれぞれプラットホームを探す戦略が非常に類似していた(図34AとB)。どの4分円を見ても、どの試験でも異なる処理の間で顕著な違いは存在しなかった(例、1回目、北、F(1,16)=1.61,P<0.21)。どの4分円で時間を過ごすかという割合は試験によって顕著に異なった(例、南、F(4,84)=0.099,P>0.5)。ほとんどの試験において、それぞれの処理に対し、どの特定の4分円で顕著に多い時間を過ごしたかに大きな違いがあり、特にCLAV処理をした動物は明白であった。CLAV処理と溶媒処理の間に、プラットホームを探すまでに泳いだ距離に顕著な違いはみられなかった(F(1,16)=0.23,P>0.5)(図35)。2つの処理の間に泳ぐ速さの顕著な違いはみられなかったが(F(1,16)=0.926,P>0.5)、泳いだ場所と(F(4,64)=7.87,P<0.001)、要素間の相互作用に(F(4,64)=2.56,P<0.05)顕著な違いがみられた。両方の処理で、4回目(p<0.01)と5回目(p<0.05)の泳ぐ速さが減少し、特にCLAV処理により顕著であった。これはおそらく、図34AとBに示したように、彼等がプラットホームを探す為に何処を探せばいいのか知っていたという事実を反映しているのであろう。まとめクラブラン酸処理された動物は、Morrisの水迷路の空間及びキューナビゲーション試験で、学習と記憶のいかなる損失も示さなかった。実際、空間ナビゲーションでもキューナビゲーションでも、隠されたプラットホームに泳いでいく距離と正しい4分円で過ごす時間の割合において、CLAV処理動物は食塩水処理動物よりよりよい行動をとっていた。これらのデータはCLAVの抗不安剤の性質は、ベンゾジアゼピン抗不安剤のように学習と記憶の損失を伴うものではないことを示す。活性機構の研究VI.クラブラン酸とストレス反応原理ストレスを感じる環境、例えば断食、種探しテストでの新しい環境、光にさらされること、高度のある十字迷路の新しい環境において、動的活動や意識活動を変えずに不安を減少させるCLAVの能力は顕著な発見である。抗不安剤としてのCLAVの潜在能力や、たくさんの感染症の治療での療法は、我々がその活性の機構を解明することによって広がるであろう。例えば、CLAVは神経ストレス反応を抑制することによって不安を変えるのであろうか?通常処方されるベンゾジアゼピン抗不安剤は、通常の日周期放出とストレス反応性放出のホルモンコルチゾールを抑制するのである(Gram and Christensen,1986;Petraglia et al.,1986;Hommer et al.,1986)。実験方法大人の雄ハムスターを新しい環境に5分間置くという単純な方法により、コルチゾールの血液濃度の増加が、顕著で予想できる(Weinberg and Wong 1986)。この目新しい試験は、ストレスによって誘導されるコルチゾールの放出に対するCLAVの効果を試験するために使用された。2つのグループの雄ハムスターが、CLAV(10 μg/kg,n=6)または溶媒の食塩水(n=6)のどちらかを腹腔内注射処理された。3つ目のグループ(n=4)は薬品処理や新しい場所に置かれるストレスを受けることなく、基本的なコルチゾール濃度として準備された。薬品処理の60分後、動物はホームケージから外され新しいケージに5分間置かれた。その後動物は首を切って殺され、胴体の血はコルチゾールの放射線免疫試験の為に集められた。全ての動物は、暗期に入ってから4時間後の暗期の状況下で試験された。データは一元配置分散分析法とFisher PLSDポストホック検定で比較された。結果処置によってコルチゾールのストレス放出に顕著な違いはみられなかった(F(2,11)=10.03 p<0.01)。溶媒(p<0.05)とCLAV(p<0.01)処置した動物は、処置しない、ストレスを与えない動物と比べてコルチゾールの血液濃度が2倍以上多かった(図37)。まとめこのデータは、ベータラクタム抗不安剤のCLAVは、新しい環境にさらされた心理ストレスに応答したコルチゾールの放出に表面上効果がないことを示した。この詳細な解析結果は、CLAVが運動抑制と意識損傷をしないことを考え合わせると、CLAVは抗不安剤の中でユニークであり、高い特異性で新しい機構の活性をもつものであることを示唆する。最初に見たとき、人はストレス反応を抑制するのは危険であると考えるかもしれない。実際、コルチゾール過剰症はうつ病の病態学とされてきた(Sancher et al.,1973)。機能が欠損して過剰活性化したアドレナリン腺を引き起こす慢性の精神社会ストレスは、命を脅かす。しかし、敏感な視床−下垂体−アドレナリン軸は通常の生理学や行動に必須である。動物が環境に慣れるのを通常は助けるストレス抑制剤は、適当なコルチゾールの放出がないと致命的になる可能性があるのである。VII.縄張りに関する攻撃性原理より複雑な行動モデルでCLAVの中枢神経系における活性の研究を続けることにより、活性機構を明白にすることができるかもしれない。例えば、動物間のアンタゴニストな社会相互作用は、リスク調査および縄張り、友、食物などを得るために争うのを沈静させる為のコミュニケーションまたは対決行動を必要とする。神経伝達物質のセロトニンとバソプレッシンは中枢神経系の組織と発現において、動物とヒトのこれらの行動の基本である(Ferris et al.,1997;Coccaro et al.,1998;Ferris 2000)。このため、CLAVは縄張りに関する攻撃性、すなわち侵入者に対する巣の防御への効果が試験された。対決行動は、攻撃性や防御性に分類される(Blanchard and Blanchard,1977;Adams 19798;Albert and Walsh,1984)敵に攻撃を始めるものを攻撃的な性質とし、敵に対して積極的に近寄っていかないものを防御的であるとする。両方の性格が、それぞれ独自の神経行動学的な系を持っている。攻撃性と防御性を誘発する刺激が違うのは、それらがそれぞれの相反する反応を伴った行動の連続であるからである。攻撃と防御を支配する神経回路の知識を支持する経験的なデータが動物モデルからたくさん集められつつある一方で、ヒトにも類似した神経回路が存在することを示唆する興味深い類似性が存在する(Blanchard,1984)。攻撃性は、攻撃性モデル(Ferris and Potegal,1988)を打ち立てた、居住者/侵入者パラダイムと呼ばれる方法で雄のゴールデンハムスターを試験すれば簡単にわかる。親しくない雄のハムスターを他の雄のハムスターが住んでいるケージに入れることにより、居住者が次に行なうであろう簡単に判別のつく攻撃性を含む対決行動を、別の雄によって誘発する事ができるのである。実験方法ハムスターは夜行性であるので、全ての行動試験は暗期の始めの4時間の間に弱く赤い照明下で行われた。居住者は10分間の間にどのような攻撃性を示すか、例えば侵入者に噛み付くまでの時間、噛み付いた回数、侵入者に接触していた時間、横腹マーキングなど(Ferris and Potegal,1988)が記録された。横腹マーキングとは、ハムスターが背側に反り返ったり、その環境に存在する物にフェロモンを分泌する横腹をこすりつけたりする、鼻で行うコミュニケーションの形である(Johnson,1986)。横腹マーキングはしばしば、攻撃性な遭遇が行われているときに非常に高まったり、あるいは居住動物が戦いを始めたり勝利したときに特に強まる(Ferris et al.,1987)。5匹の雄ハムスター(130−140 g)は、0.2 mlの体積でCLAV(200 μg/kg)と溶媒の食塩水を腹腔内注射で投与された。パイロット実験では、1.0 μg/kgの腹腔内注射は攻撃行動に影響を及ぼさなかった。それゆえ、より高い濃度ではあるが攻撃行動についての製剤学的研究の為には許容量である使用量でCLAVを試験する必要があった。食塩水とCLAV処理は、同一個体に異なるものを投与されることでバランスがとられ、5匹の動物は全てそれぞれの処理を少なくとも48時間あけて処理された。動物は処理して90分後に10分間の観察時間で試験された。攻撃するまでの時間と接触時間が二元配置分散分析法解析された。ノンパラメリックデータ、すなわち噛み付いた回数、横腹マーキングはWilcoxonのマッチペアーサインランク検定で解析された。結果侵入者を噛み付くまでの時間に対して(F(1,3)=7.40,p<0.07)、薬剤処理は顕著な効果を示さなかったが、顕著さに傾向は認められた(図38)。侵入者との接触時間も(F(1,3)=2.85,p〉0.1)、薬剤処理は顕著な効果を示さなかった(図38)。侵入者に噛み付いた回数は、薬剤処理によって顕著な違いを示した(T=3.0,p<0.05,N=8)。CLAV処理動物は、溶媒処理動物の13回と比較して、正中動脈を噛んだ回数が6回と減少した(図39)。薬品処理によって(T=4.0,p>0.1,N=5)居住者の横腹マーキング行動に顕著な違いはみられなかった(図39)。まとめクラブラン酸は緩やかな抗攻撃性または鎮静剤様の性質を持つ。鎮静剤は衝動や暴力の処置に用いられる薬剤である(Olivier and Mos,1991)。鎮静剤は社会的、欲求、認識の行動を邪魔することなく攻撃性を抑制するものであるべきである。侵入者への社会的興味、すなわち接触時間はCLAV処理によって変化しなかった。最初の鎮静剤の1つであるエルトプラジンの開発は、動物に恐怖や不安を増加させることが分かり一部破棄された(Olivier et al 1994)。CLAVの抗不安活性能力はこの可能性を排除する。VIII.グルタミルカルボキシペプチダーゼとの相互作用CLAVは、ベータラクタマーゼとの非常に高い結合親和性を持つ。これらの細菌の酵素の哺乳類類似体の存在と、それらの類似体タンパク質が中枢神経系において神経伝達物質の濃度の調節に関与していることが仮定されている。大腸菌のTEMベータラクタマーゼは、単離され、DNA塩基配列が決定され、結晶化され、活性化サイトのモチーフが決定された。CLAVを調節できるかもしれない4つのベータラクタマーゼへの推定の結合サイトが、活性化サイトI,II,III,IVと名付けられた。これらの活性化サイト、配列の位置、アミノ酸(AA)配列は以下の通りである。活性化サイトI:N末端から35AA上流:STTK活性化サイトII:STTKモチーフから57AA上流:SGC,SGN,SAN活性化サイトIII:SGKモチーフから111AA上流:KTG活性化サイトIV:SGKモチーフから41AA上流:ENKDこれらのベータラクタマーゼ結合サイトと哺乳類酵素とのアミノ酸配列の類似を調べていて、Revaaxの研究者は、CLAVがベータラクタマーゼと結合するのと潜在的に類似した方法で結合する脳の酵素システムを同定した。その酵素、グルタミルカルボキシペプチダーゼ(N−acetyl,alpha linked,acidic dipeptidase)またはNAALADアーゼ(Pngalos et al,1999)は、攻撃性、記憶/意識、不安といった行動成果に現れるような効果を示す、グルタミン酸作動性神経伝達物質経路を調節するのに必要である。ベータラクタマーゼとヒトとラットのNAALADアーゼで保存されている配列の推定される活性サイトがほぼ完全に保存されてる結果、CLAVはNAALADアーゼ活性を抑制することによって行動に影響を及ぼすことが推定される。ベータラクタマーゼとNAALADアーゼの保存された配列類似性は下に示した通りである。【0093】活性化サイトI:ベータラクタマーゼ:N末端から35AA上流:STTKNAALADase:N末端から38AA上流:STQK活性化サイトII:ベータラクタマーゼ:STTKモチーフから57AA上流:SGC,SGN,SANNAALADase:STQKモチーフから59AA上流:SFG活性化サイトIII:ベータラクタマーゼ:SGKモチーフから111AA上流:KTGNAALADase:SFGモチーフから110AA上流:KLG活性化サイトIV:ベータラクタマーゼ:SGKモチーフから41AA上流:ENKDNAALADase:SFGモチーフから41AA上流:ERGVクラブラン酸は、15−34 nMの範囲でグラム陰性菌のベータラクタマーゼを抑制する。CLAVは不安を測定する種探しモデルにおいて10 μg/kgの使用量で効果を示した(pg 3)。もし、NAALADアーゼがベータラクタマーゼの哺乳類類似体であったら、CLAVは高い親和性を持つ基質であることが予想される。IX.NAALADアーゼ活性を阻害した後の種探し原理と実験方法CLAVは、脳のNAALADアーゼ活性を阻害することによって種探し実験で抗不安剤として機能したことが仮定された。もしこの考えが本当であるとしたら、NAALADアーゼを抑制することが知られている薬剤もまた、種探しを増強することが予想される。このため、動物はNAALADアーゼの競合的阻害剤(Serval et al.,1992)であるベータNAAG(N−acetyl−beta−asprtyl−glutamic acid)処理され、不安を測定する種探しモデルで試験された。実験はセクションIで説明された方法に類似していたが、1つ注意すべき例外があった。ベータNAAGは血液脳関門を通過できないので、脳室系を経て小脳脊髄路から脳に運ばれる側脳室の中に注入された。ベータNAAG(FW 304)は、1 μlの体積の食塩水中に3 ngの使用量で与えられた。大人のハムスターの脳の重さは約1.2 gであり、そのうちの22%が細胞外液である。推定されるベータNAAGの濃度は11 ng/mlつまり36 nMである。2グループの6匹の動物が前述したように一晩絶食させられ、翌日試験を受けた。片方のグループはベータNAAGで処理され、もう片方は触媒の食塩水で処理され、1時間後隠されたひまわりの種を探し出すまでの時間を試験された。ペアでないデータの統計的比較は、Student t検定が用いられた。結果処理によって種を探し出すまでの時間は著しく(p<0.001)異なった(図40)。実際、触媒の食塩水を注入された6匹の動物は1匹も5分間の観察時間内に種を探し出すことができなかった。しかし3日後、同じ動物はベータNAAG(3 ng/μl)を注入され、種探し試験が行われたとき、彼等は平均21.8±9.7秒で種を探し出した。まとめNAALADase特異的抑制剤のベータNAAGは、隠されたひまわりの種を探し出すまでの時間を劇的に減少させた。これはベータNAAGはCLAVと生物学的活性が同じであることを示している。ベータNAAGは不安を測定する種探しモデルで活性であったので、ベータNAAGとCLAVは活性に共通の機構を持つという仮説は否定されない。これらのデータから、ベータNAAGとCLAVは生物学的、行動学的測定の範囲では類似の効果を示すと仮説は拡張された。このため、動物はセクションVIIに記述した居住者侵入者パラダイムで攻撃性が試験された。前に報告した通り、高濃度で与えられるとCLAVは攻撃性に対して適度の効果しか持たない。CLAVは10 ng/kgの使用量で種探しを増強する一方、攻撃性については200 μg/kgの高濃度で与えられても適度の効果しか示さないのである。もしベータNAAGがCLAVと共通機構をもつとしたら、ベータNAAGは攻撃性に対してあまり効果を示さないはずである。X.攻撃性に対するNAALADアーゼの阻害効果実験方法この実験で試験される動物は、セクションIXで使用されたものである。種探しアッセイの後、ベータNAAG(n=6)と溶媒の食塩水(n=6)で処理された動物は、ホームケージに残され自分より小さい雄の侵入者が与えられた。居住者は噛み付くまでの時間、噛み付いた回数、接触時間、横腹マーキングが10分の観測時間に記録された。噛み付くまでの時間と接触時間は処理間でStudent t検定を用いて比較された。ノンパラメトリックな測定、噛み付いた回数、横腹マーキングのベータNAAGと食塩水の比較はMann−Whitneyで比較された。結果ベータNAAGと食塩水処理した動物は、攻撃性に関するどのような測定においても顕著な違いはみられなかった(図41と42)。まとめ居住者侵入者パラダイムで試験したところによると、ベータNAAGを用いてNAALADアーゼ活性を阻害しても攻撃性に変化は見られなかった。この結果はCLAVとベータNAAGが共通機構を持つ、つまりNAALADアーゼ活性を抑制するという考えと矛盾するものではない。【図面の簡単な説明】図1−42は、攻撃性(図1−4、9−14、24、29、31、32)、一般的な動的活動、嗅覚による識別(図5)、性的活動(図6)、不安解消活動(図7、25、26、28、37、40)空間記憶(図8、29−36)に対する活動の検出のために、その分野で認知されている様々な動物モデルにおいて、モキサラクタム、他のβ−ラクタム抗生物質、クラブラン酸、他の神経活性のある化合物を試験する実験で集められたデータの典型例を図示したものである。図15と16は、ハムスターの攻撃性や嗅覚識別に対する、大脳内に投与されたペプチドグリカン前駆体タンパク質の効果を図示したものである。 攻撃的行動障害、不安障害、うつ、及びADHDから選択された行動障害に罹患している患者の治療のための医薬剤であって、 クラブラン酸またはその薬学的に許容される塩、モキサラクタムまたはその薬学的に許容される塩またはその活性を有するエステル、ベータNAAG、配列Ala-D-γ-Glu-Lys-D-Ala-D-Alaを含むペプチド、アンピシリン、およびカーベニシリンから成る群から選択される化合物を含むことを特徴とする医薬剤。 請求項1に記載の医薬剤であって、 前記化合物がクラブラン酸またはその薬学的に許容される塩であり、 前記患者がうつに罹患していることを特徴とする、医薬剤。 請求項1に記載の医薬剤であって、 前記患者が、不安障害に罹患していることを特徴とする、医薬剤。 請求項1に記載の医薬剤であって、 前記患者が、ADHDに罹患していることを特徴とする、医薬剤。 請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬剤であって、 有効量のP−糖タンパク質流出性ポンプ阻害剤をさらに含むことを特徴とする、医薬剤。 不安障害に罹患した患者の治療のための請求項1に記載の医薬剤であって、 前記患者の脳において、神経原性カルボキシペプチダーゼあるいはトランスペプチダーゼを調節するのに効果的な量のクラブラン酸またはその薬学的に許容される塩を含むことを特徴とする、医薬剤。 不安障害に罹患した患者の治療のための請求項1に記載の医薬剤であって、 前記患者の脳において、神経原性カルボキシペプチダーゼあるいはトランスペプチダーゼを調節するのに効果的な量のモキサラクタムまたはその薬学的に許容される塩またはその活性を有するエステルを含むことを特徴とする、医薬剤。 請求項6または7に記載の医薬剤であって、 前記神経原性カルボキシペプチダーゼ活性が、配列Ala-D-γ-Glu-Lys-D-Ala-D-Alaを含むペプチドによる阻害によって特徴づけられることを特徴とする、医薬剤。 請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬剤であって、 前記患者がヒト、犬、猫、馬のいずれかであることを特徴とする、医薬剤。 請求項9に記載の医薬剤であって、 前記患者がヒトであることを特徴とする、医薬剤。


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