生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_アオサを原料とする抗ウイルス剤
出願番号:2001104860
年次:2006
IPC分類:A61K 36/02,A23K 1/16,A23K 1/18,A61P 31/12,C12P 1/00,C12R 1/89


特許情報キャッシュ

平山 伸 植田 良平 宮坂 政司 菅田 清 JP 3740029 特許公報(B2) 20051111 2001104860 20010403 アオサを原料とする抗ウイルス剤 三菱重工業株式会社 000006208 鈴江 武彦 100058479 村松 貞男 100084618 坪井 淳 100068814 橋本 良郎 100092196 河野 哲 100091351 風間 鉄也 100100952 平山 伸 植田 良平 宮坂 政司 菅田 清 20060125 A61K 36/02 20060101AFI20060105BHJP A23K 1/16 20060101ALI20060105BHJP A23K 1/18 20060101ALI20060105BHJP A61P 31/12 20060101ALI20060105BHJP C12P 1/00 20060101ALI20060105BHJP C12R 1/89 20060101ALN20060105BHJP JPA61K35/80 ZA23K1/16 304CA23K1/18 102AA61P31/12 171C12P1/00 ZC12P1/00 ZC12R1:89 A61K 35/80 A23K 1/16 A23K 1/18 BIOSIS(STN) CA(STN) JICSTファイル(JOIS) MEDLINE(STN) 特開2001−046051(JP,A) V.Ivanova et al,Isolation of a polysaccharide with antiviral effect from Ulva lacteca,Preparative Biochemistry,1994年,Vol.24,No.2,pp.83-97 Hari S. Garg et al,A antiviral sphingosine derivative from the green alga Ulva fasciata,Tetrahedron Letters,1992年,Vol.33,No.12,pp.1641-1644 3 2002302454 20021018 8 20020704 鶴見 秀紀 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、海藻の一種であるアオサ、及びアオサ抽出物の餌飼料及び薬品等への利用に関する。特に、アオサのもつ抗ウイルス成分の利用に関する。【0002】【従来の技術】養殖漁業では生産効率を重視した過密生産が行われており、かかる過密養殖に起因して、養殖魚の斃死を招く様々な魚病が報告されている。このような魚病のうち、バクテリア等が原因の場合には、抗生物質等の多様な薬剤により魚病を抑制することができ、抗生物質による魚病抑制は既に養殖業における一つの産業分野となっている。【0003】ウイルス病に関しても、1980年代以降、種々のウイルス性の魚病被害が報告されはじめた。たとえば、ヒラメラブドウイルス(HRV:200nm長さ、弾丸上の形態、エンベロープあり)は、1980年代前半に北海道のヒラメ養殖場で広まり、ヒラメの稚魚の80%が死滅したと報告されている。またサケ科魚類の伝染性造血器壊死症ウイルス(IHNV:200nm長さ、弾丸上の形態、エンベロープあり)による被害額は、国内では20〜30億円/年、世界での被害額は数100億円に上るといわれており、全世界で警戒されている。【0004】しかし、養殖魚のウイルス病対策については、診断薬および予防ワクチンの開発が行われているが、未だそれほど進んでいない。例えば、1999年には、マダイ等の養殖時に多く報告されているイリドウイルスに対するワクチンが開発されたが、ワクチンは魚体一匹ずつに注射をしなくてはならないため、現場ではあまり普及していないのが現状である。【0005】一方、アオサは海水中で成長する緑藻の一種であり、海岸や海水湖では窒素やリンを多く含有した富栄養化により大量に発生する。このため、従来からアオサの存在は海域の富栄養化状態を示す指標の一つとされてきた。アオサは窒素やリンを取り込んで増殖するため、アオサによる自然浄化作用は非常に重要とされている。しかし、一方ではアオサの処理に苦慮しているのが現状であり、その有効利用が望まれている。この観点から見ると、アオサは一部で食品として応用的に利用されている安全な食料源であり、またタンパク質、ビタミン、ミネラル等の栄養成分に着目して家畜の飼料添加物等への応用を目指した基礎研究が着手されている。しかし、これまでに決定的な有効利用法が見つかっておらず、大量消費を目指した新たな有効な利用法の開発が望まれている。【0006】本発明者らは、アオサを有効利用するために以前から研究を続けてきたが、アオサ中の含硫アミノ酸であるD−システノール酸が体内の中性脂肪を低減すること、及び有害なラジカルを生成させるフェトン反応を阻害することを見出し、これらについては既に特許出願を行っている(特願2000-202404,2000-103724)。【0007】しかし、アオサの有効利用の観点から、アオサの成分について種々の観点で更に十分な分析および評価が望まれる。【0008】【発明が解決しようとする課題】本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、アオサの生理活性成分を探求し、アオサの有効利用を図る研究の一環としてなされたものである。【0009】本発明の第一の目的は、既に食料として安全性が確認されている材料であるアオサを利用して、抗ウイルス剤を提供することである。【0010】本発明の第二の目的は、アオサを利用して、ウイルス抑制効果を有する餌飼料を提供することである。【0011】【課題を達成するための手段】本発明者らは、不稔性アオサについて、抗腫瘍性、抗菌性、抗メラニン性、神経細胞助長性、抗ウイルス性等の様々な生理活性について鋭意分析し、検討した。その結果、アオサに抗ウイルス作用が存在することを見いだし、本願発明に至った。これまでにアオサやその抽出物がウイルス感染を抑制するという生理活性を持つことは報告されていない。【0012】即ち、本発明による抗ウイルス剤は、アオサまたはアオサの有機溶媒抽出画分を含有することを特徴とするものである。【0013】また、本発明による餌飼料は、餌飼料成分と共に上記抗ウイルス剤を含有することを特徴とするものである。【0014】【発明の実施の形態】本発明において「アオサ」とは、入り江等の海に浮遊し、自然界に存在するアオサ(Ulva)属に属する藻類を意味する。不稔性アオサ(Ulva lactuca)は、年間を通して培養生産が容易にできるので、本発明で用いるための好ましいアオサである。 本発明において、アオサから抗ウイルス活性成分を抽出する場合、使用するアオサはアオサそのもの(生の藻体)でもよく、乾燥した藻体でもよい。アオサから抗ウイルス成分を抽出する場合、乾重量あたり数10倍量の有機溶媒でアオサから抽出することが有効である。また、より高純度の抽出物を必要とする場合は、乾重量あたり数倍の水又はリン酸緩衝液(PH7)で水溶性画分を抽出後、その残渣にアオサ乾重量あたり数10倍量の有機溶媒を加えて抽出することで、より高純度の抽出物が回収できる。ここで使用する有機溶媒にはメタノール、エタノール、クロロホルム等が含まれるが、これに限定されるものではない。さらに減圧等により、この抽出物から有機溶媒を除去し、その抽出物を1%ジメチルスルホオキシド(DMSO)に溶解させることができる。なお真空乾燥等により乾燥させ、粉末状にして長期保存することも可能である。【0015】こうして得られたアオサの有機溶媒抽出画分は、後述の実施例で示すように効果的な抗ウイルス活性を有している。また、アオサそれ自体についても、有効な抗ウイルス活性が認められた。従って、アオサおよびその有機溶媒抽出画分は、抗ウイルス剤として有用である。【0016】本発明はまた、特に抗ウイルス活性を有する機能性飼料を提供する。その一つの態様として、アオサを1mm以下に微粉砕し、脂溶性画分を露呈しやすくしたもの、及び上記のように有機溶媒抽出物を、従来使用されている既知成分からなる餌に混合して魚病ウイルスの感染を防止する技術を提供する。【0017】次に、アオサから抗ウイルス剤を抽出し、更にこれを用いて抗ウイルス性餌飼料を製造するための一つの方法を説明する。この方法は、図1に示すように、1:アオサ回収工程2:アオサの水抽出工程3:アオサの有機溶媒抽出工程4:アオサ抽出物の乾燥工程、及び5:アオサ抽出物の餌料添加工程、からなる。【0018】アオサ回収工程1では、自然界に存在するアオサ又は培養生産したアオサを回収籠にて回収し、集積する。このための装置としては、本発明者らの特願平11-066247に記載の装置が利用可能である。【0019】アオサ水抽出工程2では、アオサに泥が混ざっている場合には水で洗浄した後、アオサの乾燥重量比で数10倍の水を加え、ホモジナイザーによりアオサを粉砕し、遠心分離又はメッシュ濾過によりアオサ粉砕残渣を得る。【0020】アオサ有機溶媒抽出工程3では、該アオサ残渣にアオサの乾燥重量の数10倍の有機溶媒を加え、抽出を行う。有機溶媒としてはエタノール、メタノール、クロロホルムなどがあげられるが、操作上の容易さからメタノール又はエタノールが好ましい。【0021】アオサ抽出物の乾燥工程4は、真空凍結乾燥装置にてアオサ抽出物を乾燥させる工程である。乾燥によって粉末化が可能となり、長期保存が容易になる。また、乾燥により、餌への混合が容易になる。抽出にメタノールやクロロホルムを使用した場合は、これらの有機溶媒を真空減圧下において完全に除去した後、乾燥させることとなる。しかし、毒性の低いエタノールを使用した場合には、エタノールを真空減圧下で完全に除去する必要はなく、少量のエタノール溶液として抽出物を保存すること、又は後述の餌料添加工程に利用することができる。【0022】アオサ抽出物餌料添加工程5は、魚の餌となる配合餌料や魚ミンチに、該アオサ有機溶媒抽出物を混合する工程である。この工程は、一連のアオサ抽出工程に隣接する大規模な場合と、給餌時の現場にて混合する小規模または簡易型の2つに分類される。どちらの場合においても、アオサの有機溶媒抽出物を餌に混合する割合は重量比で0.1〜2%が望ましい。【0023】なお、図1の方法では、抗ウイルス成分としてアオサの有機溶媒抽出画分を用いたが、その代わりにアオサそれ自体を用いてもよい。その場合、アオサ回収工程1からのアオサ、またはアオサの水抽出工程2を経たアオサの何れを用いてもよい。何れの場合にも、アオサそのものを餌に混合する割合は、重量比で1〜20%、望ましくは3〜10%である。【0024】【実施例】実施例1アオサ抽出物の製造、及び抗ウイルス活性試験。【0025】実験には、横浜海の公園から採取した不稔性アオサ(Ulva lactuca)を使用した。なお、ここで使用したアオサは、不燃性アオサMHI-ATRC-1株として工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託新生したが、緑藻であるとの理由で受託拒否の対象となった株である。【0026】上記のアオサ乾重量換算10gにリン酸緩衝液(pH7)を加え、粉砕し、水溶液として抽出後、さらにその残差から有機溶媒で抽出を行った。抽出した成分を乾燥し、重量を測定した。その結果、リン酸緩衝液抽出成分は480mg、クロロホルム抽出成分は1000mg、メタノール抽出成分は1440mg、エタノール抽出成分は1520mgであった。操作性のよいエタノールやメタノールでは、ほぼ同重量の粗抽出物を得ることができた。抽出したそれぞれの画分を1%DMSOに溶解し、抗ウイルス活性の評価に使用した。【0027】2種類の魚病ウイルス[ヒラメラブドウイルス(HRV8401−H株―宿主:コイ由来EPC細胞)及びサケ科魚類の伝染性造血器壊死症ウイルス(IHNVChAb株―宿主:マスノスケ胚由来CHSE―214細胞)]を使用して、アオサ抽出物の抗ウイルス活性を評価した。ウイルス溶液とアオサ抽出物を1時間共存させた後、ウイルスを各種宿主細胞に接種した。接種後、シャーレ上で7日間培養し、培養により出現するプラーク(ウイルスの感染によって溶解した細胞群が穴状に出現したもの)の数を測定した。アオサ抽出物を添加していない場合のプラーク数を100として、その減少率を測定した。【0028】アオサのメタノール抽出液とリン酸緩衝液抽出液のウイルス感染抑制効果を、2種類のウイルスで調べた。その結果図2、3に示すようにメタノール抽出物は、2種類のウイルス(IHNV,HRV)の感染を濃度依存的に抑制した。メタノール抽出物50μg/ml以上の濃度ではプラークを完全(100%)阻害した。図2及び図3に示すように、アオサのリン酸緩衝液抽出物では、プラーク形成阻害はほとんど見られなかった。【0029】さらに、メタノール抽出で抑制効果を示したIHNVにおいて、エタノール、及びクロロホルムの抽出液の抗ウイルス活性を比較した。その結果図4に示すように3種の有機溶媒抽出物(メタノール、エタノール、クロロホルム)には、同程度のウイルス抑制効果が認められた。これらの結果から、この抗ウイルス活性を持つ性分は脂溶性の物質であろうと考えられる。作用機構については明確ではないが、アオサの有機溶媒抽出物の有効成分は脂溶性と考えられるため、ウイルスのエンベロープ(脂質やタンパク質からなるウイルスを包む膜)部分などに作用し、効果を発揮するものと考えられる。【0030】実施例2: アオサの餌料への配合と抗ウイルス活性アオサの配合は、乾燥したアオサの微粉末を、魚油類、又は植物油類等を混合した配合飼料に添加した。固形物の添加濃度は10%(重量比)とした。【0031】アオサ抽出物の配合は、乾燥したアオサの微粉末を、魚油類、又は植物油類等を混合した配合飼料に添加した。固形物の添加濃度は2%(重量比)とした。【0032】上記2種の混合形態において、魚類用の餌料は水中でも形を保つことができ、養殖魚(ヒラメ)が容易に接種することが可能であった。【0033】次に、アオサの抗ウイルス活性を確認するために、アオサ及びアオサのメタノール抽出物を投与したヒラメ成魚のウイルス抵抗性について検証した。HRVウイルスを感染させたヒラメ(1群100匹)に各アオサ粉末10%(重量比)とアオサのメタノール抽出物2%(重量比)を配合した餌料を給餌してから5週間飼育し、その生存率を調べた。その結果を表1に示す。表1に示したように通常の餌を与えたグループの生存率は59%まで顕著に低下した。一方、アオサ粉末を添加したグループでは生存率94%、メタノール抽出物を添加したグループでは96%と高い生存率であった。【0034】【表1】【0035】なお、HRVウイルスを感染させずに飼育したブランク試験での生存率は、アオサ無添加では95%、アオサ粉末添加では96%、アオサのメタノール抽出物では97%であり、上記の抗ウイルス活性に影響を及ぼすものではなかった。【0036】以上の結果から抗ウイルス成分を含むアオサ又はアオサの有機溶媒抽出物を給餌することで、成魚においてウイルス病に対する抵抗性、即ちウイルス病による死滅率の低減が可能となった。【0037】【発明の効果】上記実験結果より、本発明のアオサ又はアオサの有機溶媒抽出物は、各種魚病ウイルスに対する抗ウイルス活性を有し、抗ウイルス剤の他、抗ウイルス性餌料の添加成分、及び医薬品原料としても有用である。特に、養殖事業において、ワクチン注射などの煩雑な作業をすることなく、餌と共に抗ウイルス成分を投与することでウイルスを予防する効果を奏する。【0038】本発明の抗ウイルス剤は、脂溶性のエンベロープを有する種々のウイルスに効果を発揮すると考えられ、エンベロープを有する多様なウイルス、たとえばインフルエンザウイルスなどに対する抗ウイルス剤としても有用であることが期待される。【図面の簡単な説明】【図1】アオサからの抗ウイルス成分抽出及び加工の工程を示すグラフである。【図2】アオサ抽出物のヒラメラブドウイルスに対する抑制効果を示すグラフである。【図3】アオサ抽出物のサケ科魚類伝染性造血器壊死症ウイルスに対する抑制効果を示すグラフである。【図4】各種アオサ抽出物のサケ科魚類伝染性造血器壊死症ウイルスに対する抑制効果を示すグラフである。 ヒラメブドウウイルス(HRV)およびサケ科魚類の伝染性造血器壊死症ウイルス(IHNV)に対する魚類用抗ウイルス剤であって、活性成分として、不稔性アオサ(Ulva Lactuca)の有機溶媒抽出画分をそのまま濃縮乾燥したものを含有することを特徴とする魚類用抗ウイルス剤。 請求項1に記載の魚類用抗ウイルス剤であって、更に、魚類用餌飼料を含有する魚類用抗ウイルス剤。 請求項1の魚類用抗ウイルス剤を製造する方法であって: 回収した不稔性アオサ(Ulva Lactuca)から、水溶性成分を除去するための水抽出工程と; 上記水抽出工程で得た残渣から脂溶性画分を抽出するための、有機溶媒抽出工程と; 上記有機溶媒抽出工程で得た脂溶性画分を乾燥する工程と;を具備することを特徴とする方法。


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