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タイトル:再公表特許(A1)_溶血性貧血の予防・治療剤
出願番号:2001008572
年次:2004
IPC分類:7,A61K38/55,A61P7/00,A61P7/04,A61P7/06,A61P9/00,A61P11/00,A61P15/00,A61P31/04,A61P31/12,A61P33/02,A61P33/06,A61P43/00


特許情報キャッシュ

保坂 義隆 松本 美和 今田 和則 JP WO2002028416 20020411 JP2001008572 20010928 溶血性貧血の予防・治療剤 持田製薬株式会社 000181147 萼 経夫 100068618 中村 壽夫 100093193 宮崎 嘉夫 100104145 保坂 義隆 松本 美和 今田 和則 JP 2000338308 20000930 7 A61K38/55 A61P7/00 A61P7/04 A61P7/06 A61P9/00 A61P11/00 A61P15/00 A61P31/04 A61P31/12 A61P33/02 A61P33/06 A61P43/00 JP A61K37/64 A61P7/00 A61P7/04 A61P7/06 A61P9/00 A61P11/00 A61P15/00 A61P31/04 A61P31/12 A61P33/02 A61P33/06 A61P43/00 111 AP(GH,GM,KE,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,CH,CY,DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,LU,MC,NL,PT,SE,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NO,NZ,PH,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VN,YU,ZA,ZW 再公表特許(A1) 20040212 2002532240 14 技術分野本発明はトロンボモジュリン(以下、TMと略記する)様蛋白質を含有することを特徴とする溶血抑制剤および溶血性貧血予防・治療剤に関する。背景技術赤血球は骨髄で作られ、末梢血液中に送り出され、様々な生理的役割を果たしている。正常な赤血球は色素タンパク質であるヘモグロビンを高濃度に含んでいる。ヘモグロビンは、肺で酸素と結合し、酸素を酸素分圧の低い末梢組織に運び、そこで酸素を与え、かわりに末梢組織で発生した二酸化炭素をとらえ、肺にゆき肺胞にそれを放出する。このような生理的役割をもつ赤血球は中央が凹んだ円盤状の変形能に富んだ細胞であるが、それ自身の径より小さな末梢の毛細血管を形態を変えながら通過する際に物理的な力を繰り返し受けて細胞は傷つき、脾臓の網内系細胞に捕らえられ循環系から除去される。体内で何らかの異常によって溶血、すなわち赤血球の破壊が亢進すれば、その破壊が軽度のときは骨髄の赤血球産生を高めることで代償されるが、破壊が著しい場合には骨髄が代償しきれなくなり、赤血球数の減少やヘモグロビン濃度の低下が起こり、貧血症状、すなわち溶血性貧血が生ずる。臨床上、溶血性貧血の診断においては、第一に溶血の有無を確認することが重要であり、赤血球数、ヘモグロビン量などを基準として判断するが、加えて、有力な情報として血清ビリルビン値の上昇および網状赤血球数の増加があげられる。溶血が確認されたら、その病因を鑑別する必要がある。とりわけ、溶血の原因が赤血球自身にあるのか、赤血球以外の要因にあるのかを見極めることが必要である。溶血を引き起こす原因は多岐にわたり、大別すると先天性溶血性疾患と後天性溶血性疾患に分けられる。先天性のものは、赤血球膜の異常、酵素異常、ヘモグロビン異常等、赤血球に内在する異常に起因する溶血であり、後天性のものは、免疫学的、物理学的(機械的刺激、熱)、生物学的(感染症)、化学的(薬剤の投与など)原因等、赤血球をとりまく環境に起因する溶血である。唯一の例外は、後天性溶血性貧血でありながら、赤血球膜の異常に起因する発作性夜間赤色素尿症(以下PNHと略記する)である。溶血を起こす自己免疫性溶血性貧血(以下AIHAと略記する)は、自己の赤血球膜に対して身体が自己抗体を産生することが原因で発生する。AIHAは、関与する抗体の反応性に基づいて、温式(抗体が37℃で反応する)または冷式(抗体が4℃で反応する)の2つに分類される。温式AIHAは単独で発生する場合もあるが、他の疾患と合併し生ずることがある。特発性血小板減少性紫斑病と合併している場合は、エヴァンス症候群として知られている。治療にはコルチコステロイド(プレドニゾロン)、脾摘出、根本原因の除去が含まれるが、免疫抑制剤は必ずしも高い効果を示すものではない。冷式AIHAの場合、治療は患者を暖かく保ち、必要に応じて根本治療をおこなうが、温式AIHAとは異なり、脾摘出およびステロイドは効果がない。ある個体の抗体が他者の赤血球と反応する場合、同種異系免疫性溶血性貧血が起こる。たとえば、ABO式血液型不適合の血液を輸血した後や、新生児のRh式血液型不適合の後に発生する。また、同種移植の後にも発生しうる。さらに、ある種の薬剤投与が抗体産生を惹起し、その結果、溶血性貧血が生じることがある。ペニシリンによる溶血がその代表的なものであるが、メチルドパも抗体産生を惹起し溶血性貧血を生じることがある。この場合、貧血症状は、薬剤投与を中止することにより、消失する場合が多いが、そのため基礎疾患の治療が不十分となることが問題である。赤血球が心臓血管系の中で直接機械的障害を受けると、破壊を受けて溶血を起こす。このような状態を赤血球破砕症候群と呼び、その原因としては▲1▼心・血管の異常と、▲2▼微小血管の異常があげられる。心・血管系の異常による溶血は、心臓弁膜に異常のある患者、あるいは人工的な装置、特に人工弁を挿入した患者で発生する。また、心臓弁膜障害、大動脈狭窄、大血管の手術後、動静脈瘻、等に発生する場合もある。微小血管の異常による溶血は、血栓性微小血管症(以下TMAと略記する)、特に溶血性尿毒症症候群(以下HUSと略記する)および血栓性血小板減少性紫斑病(以下TTPと略記する)、電撃性紫斑病、免疫機序による微小血管の障害、特に移植拒絶、ヘパリン惹起血小板減少性血栓症(以下HITTSと略記する)、血管腫、産科的疾患、特に子癇・子癇前症・胎盤早期剥離・羊水塞栓症、薬剤惹起性の微小血管障害、経口避妊薬の使用に伴う微小血管障害、悪性高血圧、行軍ヘモグロビン尿症、等の細血管障害を伴う疾患において発生する。なお、HUSおよびTTPにおいては、プロトロンビン時間、活性化部分トロンボプラスチン時間およびフィブリノーゲン等は、あまり変動しないとされ、基本的な病態は播種性血管内凝固症候群(以下DICと略記する)とは明らかに異なり、通常その治療には抗血小板薬が使用される(日本臨床、51巻、135−137頁および215−221頁、1993年)。赤血球破砕症候群の貧血症状は、原因の除去あるいは原疾患の治療が優先されるが、原因の除去が困難な場合あるいは原因疾患の治療が困難な場合が多く、貧血症状の改善において十分な効果は得られていない。生物学的因子に起因する溶血性貧血は大腸菌O157感染症、劇症A群レンサ球菌感染症等の細菌感染症、肝炎ウイルス感染症等のウイルス感染症、マイコプラズマ肺炎等のマイコプラズマ感染症、マラリア、トキソプラズマ症、リュウシュマニア症等の原虫感染症で生じる。さらに、まれではあるが、風疹、麻疹、水痘、コクサッキーA、インフルエンザA、アデノウイルス等の感染でも溶血を起こすことが知られている。膜の異常に起因する溶血性貧血としては、赤血球の補体に対する感受性が亢進したPNHがある。PNHの治療としては、ステロイドの投与等、対処療法的な治療法にとどまっており、臨床上満足できるレベルではない。TMは、1981年にエズモンらにより血管内皮細胞表面上に存在する抗凝固物質として発見され、その後1987年に鈴木らによりその全一次構造が明らかにされた糖蛋白質であり、トロンビンと結合してトロンビンの凝固促進作用を抑制するとともにトロンビンによるプロテインC活性化を著しく促進させる。TM様蛋白質は効率よく凝固系を抑制することから、全身性の凝固系が亢進するDICや各種血栓症等の予防や治療に有用であることが示唆されている。しかしながら、TM様蛋白質が溶血抑制作用および溶血性貧血予防・治療効果を有することについてはこれまで全く知られていなかった。最も一般的な抗凝固物質であるヘパリンは長期使用において、抗体産生を惹起し、HITTSを引き起こし、さらには溶血性貧血を引き起こすことが懸念されている。活性化プロテインCがHUS、TTPに有用であることが示唆されているが、その生体半減期は短く持続的な効果は期待できない為、96時間静脈内持続投与されている(WO 00/33867号公報)。生体内には、プロテインCインヒビター(以下PCIと略記する)やα1アンチトリプシンなど活性化プロテインCの中和物質が存在するため、効果発現のためには多量の活性化プロテインCを投与する必要がある。また、PCIが抗凝固作用を有することが明らかにされ(スロンボーシス アンド ヘモスタシス(Thrombosis and Haemostasis)、84巻、54−58頁、2000年)、多量の活性化プロテインCを投与するとPCIの低下を引き起こし、活性化プロテインC投薬終了後に凝固異常を再燃させる懸念がある。さらに、一般的には、多量の蛋白質をヒトに投与することにより抗体産生が惹起され、溶血性貧血を引き起こすことが懸念されており、活性化プロテインCにおいてもその危険性が危惧される。薬物の評価には、通常、それに対応し得る動物モデルが必要である。ラットにリシン(Ricin)および/またはリポポリサッカライド(以下LPSと略記する)を投与することにより、HUSの病態モデルを作製できることが報告されている(キドニー インターナショナル(Kidney International)、55巻、1367−1374頁、1999年)。しかしながら、リシンは非常に毒性が高いことから一般には入手困難な試薬であり、また実験者にとって危険性を伴う。また、HUSのモデルとの位置づけがされているが、溶血あるいは溶血性貧血の動物モデルとして認知されておらず、さらには溶血抑制作用を有する薬物の評価に使用できるか否かは不明である。溶血性貧血は、赤血球自体の異常、赤血球の周辺環境の異常、赤血球の内外両方の異常が原因の溶血で引き起こされる疾患であり、単一の疾患ではなく、病因学的にも病態学的にも多様な疾患であり、必ずしも十分な治療法が確立されていない。従って、溶血抑制剤および溶血性貧血予防・治療剤として、臨床において十分な効果を有し、生体内で安定であり、持続的な効果が認められ、かつ副作用が少なく安全性の高い薬剤が求められている。そこで、本発明は、種々の原因により生じる溶血に適用できる溶血抑制剤および溶血性貧血予防・治療剤であり、特に好ましくは後天性溶血性貧血予防・治療剤として有効であり、生体内で安定であり、持続的な効果が認められ、かつ副作用が少なく安全性が高い医薬組成物を提供することを課題とする。また、本発明は溶血抑制作用あるいは溶血性貧血予防・治療効果を有する薬物を評価する為の安全な動物モデル系、その動物モデル系を用いた溶血抑制作用あるいは溶血性貧血予防・治療効果を有する薬物を評価する方法、およびその動物モデル系を用いて評価された溶血抑制作用あるいは溶血性貧血予防・治療効果を有する薬物を提供することを課題とする。発明の開示本発明者らは、TM様蛋白質の溶血抑制剤および溶血性貧血の予防・治療剤としての有用性が未知であるという状況下において、安全な溶血および溶血性貧血の動物モデル系を見出し、この動物モデル系を用いてTM様蛋白質の溶血および溶血性貧血に対する生理作用を鋭意研究した結果、驚くべきことに、TM様蛋白質に強い溶血抑制作用および溶血性貧血予防・治療効果を見出し、本発明を完成した。以下に本発明を詳細に説明する。本発明の第一の態様は、TM様蛋白質を有効成分として含有する溶血抑制剤である。この溶血抑制剤として、TM様蛋白質が可溶性のTM様蛋白質である態様、中でもTM様蛋白質がヒト尿由来可溶性のTM様蛋白質又は遺伝子組換えヒト可溶性のTM様蛋白質である態様が好ましい。本発明の第二の態様は、TM様蛋白質を有効成分として含有する溶血性貧血予防・治療剤である。好ましいTM様蛋白質の態様は上記と同様である。溶血性貧血としては、AIHA、同種異系免疫性溶血性貧血、薬剤投与に起因する溶血性貧血、赤血球破砕症候群、生物学的因子に起因する溶血性貧血、赤血球膜の異常に起因する溶血性貧血等が例示される。より詳しくは、温式AIHA、冷式AIHA、ABO式血液型不適合あるいは新生児のRh式血液型不適合の後に発生する溶血性貧血、同種移植の後に発生する溶血性貧血、ペニシリンあるいはメチルドパによる溶血性貧血、心臓弁膜に異常のある患者あるいは人工的な装置、特に人工弁を挿入した患者で発生する溶血性貧血、心臓弁膜障害、大動脈狭窄、大血管の手術後、動静脈瘻、等に発生する溶血性貧血、微小血管の異常による溶血性貧血、例えば、TMA、HUS、TTP、電撃性紫斑病、免疫機序による微小血管の障害(移植拒絶、HITTS)、血管腫、産科的疾患、特に子癇・子癇前症・胎盤早期剥離・羊水塞栓症、薬剤惹起性の微小血管障害、経口避妊薬の使用に伴う微小血管障害、悪性高血圧、行軍ヘモグロビン尿症等に発生する溶血性貧血、大腸菌O157感染症、劇症A群レンサ球菌感染症等の細菌感染症、肝炎ウイルス感染症等のウイルス感染症、マイコプラズマ肺炎等のマイコプラズマ感染症、マラリア、トキソプラズマ症、リュウシュマニア症等の原虫感染症で生じる溶血性貧血、さらに、まれではあるが、風疹、麻疹、水痘、コクサッキーA、インフルエンザA、アデノウイルス等の感染症で生じるよう稀有性貧血、およびPNH等が挙げられる。本発明の第三の態様は、リシナス コミュニス アグルチニン(Ricinus Communis Agglutinin)I(以下RCA120と略記する)とエンドトキシンとを動物に投与することを特徴とする溶血抑制作用あるいは溶血性貧血予防・治療効果を有する薬物を評価する為の安全な動物モデル系、その動物モデル系を用いた溶血抑制作用あるいは溶血性貧血予防・治療効果を有する薬物を評価する方法およびその動物モデル系を用いて評価された溶血抑制作用あるいは溶血性貧血予防・治療効果を有する薬物に関する。動物種としては、ラット、マウス、モルモット、ハムスター、ウサギ、イヌおよびサル等が挙げられ、ラットあるいはマウスが好ましく、ラットが更に好ましい。エンドトキシンとしては、グラム陰性菌の細胞壁外膜を構成するLPSが使用でき、大腸菌のLPS、赤痢菌のLPS、サルモネラ菌のLPSおよびシゲラ菌のLPS等が挙げられ、大腸菌のLPSが好ましい。また複数のLPSを使用することもできる。RCA120とエンドトキシンの投与方法としては、静脈内投与あるいは腹腔内投与が好ましく、静脈内投与がより好ましい。発明を実施するための最良の形態本発明において「TM様蛋白質」の語は、TMおよびTMの生物学的活性に必要な一部分のアミノ酸配列を有するペプチドまたはそれらの類似物を意味する。すなわち、本発明に用いるTM様蛋白質は、トロンビンと結合してトロンビンの凝固促進作用を抑制するとともにトロンビンによるプロテインC活性化を著しく促進させる蛋白性物質をすべて含む。従って、天然型あるいは遺伝子工学的に産生されたいずれでも良く、遺伝子工学手法により得られる改変型あるいはキメラ型であってもよい。医薬品とする場合、好ましくはヒト由来のTM様蛋白質(以下、ヒトTM様蛋白質と略記する)が好まれる。また本発明においては水溶液に溶解性の高いTM様蛋白質(以下、可溶性のTM様蛋白質と略記する)、例えば、天然型のヒト尿由来の可溶性のTM様蛋白質もしくは遺伝子組換えによるヒト可溶性のTM様蛋白質がさらに好ましい。なお、遺伝子組換え技術等を利用して産生された、TMのアミノ酸配列の部分構造を有する様々なTM様蛋白質も溶血抑制作用を有するものは、本発明に使用できる。本発明で用いるTM様蛋白質は、溶血性貧血モデルラットにおいて、臨床においても溶血性貧血の指標として用いられている全血ヘモグロビン量の低下、血漿ヘモグロビン量の上昇および血漿ビリルビン値の上昇抑制作用を示す。TM様蛋白質は、現在臨床開発中のDIC治療薬であり、ヘパリンに付随するような出血傾向などの副作用も少なく、医薬品として安全性が高いことが期待されている(スロンボーシス アンド ヘモスタシス(Thrombosis and Haemostasis)、77巻、789−795頁、1997年)。また、TM様蛋白質は生体内半減期が長く、生体内で安定であり、持続的な効果を発揮するという医薬品として好ましい体内動態を示すことが確認されている(スロンボーシス アンド ヘモスタシス(Thrombosis and Haemostasis)、73巻、805−811頁、1995年)。本発明において「溶血性貧血」の語は、赤血球の破壊による溶血が進行して骨髄の赤血球産生増加により代償できなくなり、赤血球数の減少やヘモグロビン濃度が低下して貧血症状を呈する疾患である。臨床的には、溶血性貧血の指標として全血ヘモグロビン量の低下、血漿ヘモグロビン量の上昇および血漿ビリルビン値の上昇として診断される。より具体的には先天性溶血性貧血として、遺伝性球状赤血球症、遺伝性楕円赤血球症、赤血球酵素異常症、鎌状赤血球貧血、タラセミア、不安定ヘモグロビン症、ポルフィリア等が挙げられる。後天性溶血性貧血としては、免疫学的、物理学的、生物学的、化学的原因に起因する後天性溶血性貧血およびPNHが挙げられる。より詳しくは、免疫学的原因による溶血性貧血としてAIHA(温式AIHA、冷式AIHA等)、新生児溶血性貧血、不適合輸血に起因する溶血性貧血、薬剤(ペニシリン、メチルドパ、ヘパリン等)に対する抗体に起因する溶血性貧血、物理学的原因による溶血性貧血としては赤血球破壊症候群および熱傷による溶血性貧血が挙げられる。詳しくは、心・血管系の異常(心臓弁膜障害、大動脈狭窄、大血管の手術後、動静脈瘻、人工弁の挿入等)に起因する溶血性貧血および微小血管障害性溶血性貧血(TMA、HUS、TTP、電撃性紫斑病、免疫機序による微小血管の障害(移植拒絶、HITTS)、血管腫、産科的疾患、特に子癇・子癇前症・胎盤早期剥離・羊水塞栓症、薬剤惹起性の微小血管障害、経口避妊薬の使用に伴う微小血管障害、悪性高血圧および行軍ヘモグロビン尿症等)が挙げられる。また、生物学的因子に起因する溶血性貧血は大腸菌O157感染症、劇症A群レンサ球菌感染症等の細菌感染症、肝炎ウイルス感染症等のウイルス感染症、マイコプラズマ肺炎等のマイコプラズマ感染症、マラリア、トキソプラズマ症、リュウシュマニア症等の原虫感染症で生じる溶血性貧血が挙げられる。さらに、まれではあるが、風疹、麻疹、水痘、コクサッキーA、インフルエンザA、アデノウイルス等の感染で生じる溶血性貧血も挙げられる。本発明の製剤は有効成分としてTM様蛋白質を含有していれば良く、公知のいかなる製剤学的製造法により製造することができる。当該TM様蛋白質は、薬剤として一般に用いられる適当な担体又は媒体、例えば滅菌水や生理食塩水、植物油、鉱油、高級アルコール、高級脂肪酸、無害性有機溶媒など、さらには必要に応じて精製あるいは遺伝子工学的に製造したヒト血清アルブミン、賦形剤、着色剤、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、溶解補助剤、吸着防止剤、安定化剤、保存剤、保湿剤、酸化防止剤、緩衝剤、張化剤、無痛化剤等の任意成分と適宜組合わせて、生体に効果的に投与するのに適した注射剤、経口吸収剤、点眼剤、経鼻吸収剤、経口剤等の医薬品製剤、好ましくは注射剤に調製することができる。注射剤の製剤形態としては、例えば凍結乾燥品、あるいは注射用水剤等で提供でき、特に、凍結乾燥品で提供することが好ましい。本発明の溶血抑制剤、溶血性貧血の予防・治療剤の投与方法としては、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射、筋肉注射等とすることができ、静脈内注射あるいは静脈内持続投与が好ましい。また、必要に応じて皮下投与、腹腔内投与、脳糟内投与、経口投与することもできる。静脈内投与量としては、例えば、TM様蛋白質の蛋白量として1日約0.01〜1000μg/kg、好ましくは、約0.1〜500μg/kg、より好ましくは1〜200μg/kg、さらに好ましくは5〜100μg/kgとすることができる。TM様蛋白質は、上記投与量を1回の静脈内注射あるいは数時間以内に静脈内投与することが望ましい。また、24時間かけて静脈内に持続投与してもよい。本発明の溶血抑制作用あるいは溶血性貧血予防・治療効果を有する薬物を評価するための動物モデルはRCA120とエンドトキシンとを静脈内投与あるいは腹腔内投与することにより作製することができ、静脈内投与がより好ましい。動物種としては、ラット、マウス、モルモット、ハムスター、ウサギ、イヌおよびサル等が挙げられ、ラットあるいはマウスが好ましく、ラットが更に好ましい。エンドトキシンとしては、グラム陰性菌の細胞壁外膜を構成するLPSが使用でき、大腸菌のLPS、赤痢菌のLPS、サルモネラ菌のLPSおよびシゲラ菌のLPS等が挙げられ、大腸菌のLPSが好ましい。また複数のLPSを使用することもできる。RCA120およびエンドトキシンの各々の投与量としては、例えば、1μg〜100mg/kg、より好ましくは10μg〜10mg/kg、さらに好ましくは30μg〜3mg/kgとすることができる。投与溶液量は0.05〜10ml/kg、好ましくは0.1〜5ml/kg、さらに好ましくは0.5〜2ml/kgとすることができる。溶媒は薬物を不安定化せず、かつ生体に毒性を持たないものであれば良く、例えば、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、アラビアゴム水等が挙げられ、さらにアルブミン等の本発明の製剤に用い得る担体を使用することもできる。RCA120およびエンドトキシンは上記投与量を1回の静脈内投与あるいは数時間以内に静脈内持続投与することが望ましい。また、腹腔内投与してもよい。動物種、エンドトキシンの種類、薬物投与量、投与溶液量、溶媒および投与時間等の条件は、期待する溶血の程度により上記範囲内で適宜設定することができる。被験薬物は、RCA120およびエンドトキシン投与直前、同時あるいは投与後に急速静脈内投与、静脈内持続投与、腹腔内投与することができ、急速静脈内投与が好ましい。また、1回投与または複数回投与することもできる。被験薬物投与一定時間後に採血し、溶血の公知の指標、例えば血漿ヘモグロビン量、血漿ビリルビン値あるいは全血ヘモグロビン量等を公知の方法で測定し、対照動物の値と比較することにより、被験薬物に溶血抑制作用あるいは溶血性貧血予防・治療効果があるか否かを評価することができる。以下に本発明を実験例、実施例等によって説明するが、本発明はこれらの例に限られるものではない。取得例1(ヒト尿由来可溶性のTM様蛋白質の取得)特開平3−218399号公報に記載された方法に準じて調製した。すなわち、ヒトの原尿100Lをアクリル繊維で濾過して尿中のウロキナーゼを吸着除去し、通過尿を限外濾過膜を使用して脱塩濃縮した。次いで、DEAEセルロース(ワットマン社製)カラム、DIP−トロンビン−アガロースクロマトグラフィーおよびセファクリルS−300(ファルマシアファインケミカル社製)カラムを用いて順次精製し、活性画分を採取した(以下、UTMと略記する)。この画分は一晩蒸留水に対して透析した後凍結乾燥した。(実験例)実験例1(ラット溶血モデルの確立)ラットにRCA120とエンドトキシンを静脈内投与することにより溶血および溶血性貧血モデルが作製できることを確認した。すなわち、雄性Wistarラット(日本SLC、10〜11週齢)を麻酔し、大腿静脈より溶媒(0.1%ヒト血清アルブミン含有リン酸緩衝生理食塩水、pH7.0)、RCA120(ベクター ラボ(Vector Lab)社製)単独、大腸菌LPS(イー コリ(E coli)0111:B4、シグマ社製)単独、あるいはRCA120と大腸菌LPSを急速静脈内投与した。RCA120および大腸菌LPSはいずれも300μg/ml/kg投与した。投与8時間後に頚静脈より血液を採血し、5,000rpmにて10分間遠心することにより血漿を取得し、血漿ヘモグロビン測定キット(シグマ社製)を用いて血漿ヘモグロビン量を測定した。結果を第1図に示した。RCA120あるいは大腸菌LPSを単独で投与した場合、溶媒投与群に比べ、著明な血漿ヘモグロビン量の上昇は認められなかった。一方、RCA120と大腸菌LPSを同時に投与した群では、溶媒投与群に比べ、著明な血漿ヘモグロビン量の上昇が認められた。実験例2(TM様蛋白質のラット溶血モデルに及ぼす影響)実験例1のモデルを用いて、ヒト尿由来可溶性のTM様蛋白質(UTM)の作用を検討した。すなわち、雄性Wistarラット(日本SLC、10〜11週齢)をエーテルにて麻酔し、大腿静脈よりRCA120と大腸菌LPSを急速静脈内投与することにより溶血および溶血性貧血モデル(対照)を作製した。UTMは大腿静脈よりRCA120および大腸菌LPS投与直前、投与2時間後、4時間後および6時間後に15,000TMU/kgを急速静脈内投与した。RCA120および大腸菌LPS投与8時間後に頚静脈より血液を採血し、血漿ヘモグロビン量および全血マルチローター V−4(第一化学薬品製)およびアバキスEA(アバキス(Abaxis)社製)を用いて血漿ビリルビン値を測定した。血漿ヘモグロビン量の結果を正常動物に対する%で第2図に、血漿ビリルビン値の結果を第3図に示した。UTMはRCA120および大腸菌LPSの静脈内投与による血漿ヘモグロビン量の上昇および血漿ビリルビン値の上昇を抑制した。上記結果よりUTMは溶血抑制作用および溶血性貧血予防・治療効果のあることが示された。実験例3(TM様蛋白質のラット溶血モデルに及ぼす影響)UTMの投与時間および測定項目以外は実験例2と同様に行った。UTMは大腿静脈よりRCA120および大腸菌LPS投与直前、および投与4時間後に15,000TMU/kgを急速静脈内投与した。RCA120および大腸菌LPS投与8時間後に頚静脈より血液を採血し、多項目自動血球装置K−2000(シメックス社製)を用いて全血ヘモグロビン量を測定した。結果を第4図に示した。RCA120および大腸菌LPSを静脈内投与することにより、全血ヘモグロビン量の減少が観察された。UTMはRCA120および大腸菌LPS投与による全血ヘモグロビン量の低下を有意に抑制した。UTMのこの効果は、急速静脈内投与により少なくとも4時間持続した。上記結果より、UTMは持続的な溶血抑制作用および溶血性貧血予防・治療効果のあることが示された。(製剤実施例)製剤実施例1取得例1の蛋白質    10mg精製ゼラチン      50mgリン酸ナトリウム  34.8mg塩化ナトリウム   81.8mgマンニトール      25mg上記成分を注射用蒸留水に溶解し全量を10mLとし、無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、凍結乾燥して凍結乾燥組成物を調製した。製剤実施例2取得例1の蛋白質    20mgアルブミン       20mgリン酸ナトリウム  34.8mg塩化ナトリウム   81.8mgマンニトール      25mg上記の各成分を秤量し、製剤実施例1と同様の方法にて凍結乾燥製剤を調製した。発明の効果本発明の有効成分であるTM様蛋白質は、溶血抑制作用および溶血性貧血の予防・治療効果を有する。従って、種々の溶血の抑制剤および溶血性貧血、例えば、先天性溶血性貧血、後天性溶血性貧血の予防・治療剤として用いることができる。後天性溶血性貧血、例えば、免疫学的、物理学的、生物学的、化学的原因に起因する溶血性貧血およびPNHの予防・治療剤として用いることができる。詳しくは、免疫学的原因による溶血性貧血としてAIHA(温式AIHA、冷式AIHA等)、新生児溶血性貧血、不適合輸血に起因する溶血性貧血、薬剤(ペニシリン、メチルドパ、ヘパリン等)に対する抗体に起因する溶血性貧血、物理学的原因による溶血性貧血としては赤血球破壊症候群および熱傷による溶血性貧血の予防・治療剤として用いることができる。詳しくは、心・血管系の異常(心臓弁膜障害、大動脈狭窄、大血管の手術後、動静脈瘻、人工弁の挿入等)に起因する溶血性貧血および微小血管障害性溶血性貧血(TMA、HUS、TTP、電撃性紫斑病、免疫機序による微小血管の障害(移植拒絶、HITTS)、血管腫、産科的疾患、特に子癇・子癇前症・胎盤早期剥離・羊水塞栓症、薬剤惹起性の微小血管障害、経口避妊薬の使用に伴う微小血管障害、悪性高血圧および行軍ヘモグロビン尿症等)の予防・治療剤として用いることができる。また、生物学的原因による溶血性貧血としては大腸菌O157感染症、劇症A群レンサ球菌感染症等の細菌感染症、肝炎ウイルス感染症等のウイルス感染症、マイコプラズマ肺炎等のマイコプラズマ感染症、マラリア、トキソプラズマ症、リュウシュマニア症等の原虫感染症で生じる溶血性貧血、さらに、風疹、麻疹、水痘、コクサッキーA、インフルエンザA、アデノウイルス等の感染で生じる溶血性貧血の予防・治療剤としても用いることができる。本発明の有効成分であるTM様蛋白質は、安全性が高くかつ血中半減期が長く、生体内で安定であり、持続的な効果を示す為、急速静脈内投与により溶血抑制作用および溶血性貧血予防・治療効果が持続的に発揮されるという臨床上の有用性を有する。また、本発明の溶血および溶血性貧血動物モデルは、毒性の低い試薬を用いるため安全性が高い。また、本発明の溶血および溶血性貧血動物モデルを溶血抑制作用あるいは溶血性貧血予防・治療効果を有する薬物を評価する為に用いることにより、溶血抑制作用あるいは溶血性貧血予防・治療効果を有する薬物を評価する方法およびその溶血および溶血性貧血動物モデル系を用いて評価され得る溶血抑制作用あるいは溶血性貧血予防・治療効果を有する薬物を提供することができる。【図面の簡単な説明】第1図は本発明に用いるラット溶血および溶血性貧血モデルにおいてRCA120と大腸菌LPSを同時に投与したときのみ溶血が生じることを示すグラフである。第2図は本発明に用いるTM様蛋白質(UTM)のラット溶血および溶血性貧血モデルにおける血漿ヘモグロビン量に及ぼす影響を示すグラフである。第3図は本発明に用いるTM様蛋白質(UTM)のラット溶血および溶血性貧血モデルにおける血漿ビリルビン値に及ぼす影響を示すグラフである。第4図は本発明に用いるTM様蛋白質(UTM)のラット溶血および溶血性貧血モデルにおける全血ヘモグロビン量に及ぼす影響を示すグラフである。 トロンボモジュリン様蛋白質を有効成分として含有することを特徴とする溶血抑制剤。 トロンボモジュリン様蛋白質を有効成分として含有することを特徴とする溶血性貧血予防・治療剤。 トロンボモジュリン様蛋白質を有効成分として含有することを特徴とする溶血抑制剤及び溶血性貧血予防・治療剤。本発明は、種々の原因により生じる溶血に適用できる薬剤であり、特に好ましくは後天性溶血性貧血予防・治療剤として有効であり、生体内で安定であり、持続的な効果が認められ、かつ副作用が少なく安全性が高い医薬組成物である。


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