生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_ミトコンドリア病の治療方法
出願番号:2000600654
年次:2011
IPC分類:A61K 31/7068,A61K 31/122,A61K 31/194,A61K 31/197,A61K 31/4188,A61K 31/42,A61K 31/426,A61K 31/4415,A61K 31/455,A61K 31/47,A61K 31/472,A61K 31/4725,A61K 31/496,A61K 31/51,A61K 31/519,A61K 31/525,A61K 31/7072,A61K 31/708,A61K 31/714,A61P 1/18,A61P 3/00,A61P 3/10,A61P 7/02,A61P 9/00,A61P 13/12,A61P 21/00,A61P 21/04,A61P 25/00,A61P 25/08,A61P 25/14,A61P 25/28,A61P 27/02,A61P 35/02,A61P 43/00,C07H 19/067


特許情報キャッシュ

ナヴィアックス、ロバート、ケイ. JP 4776780 特許公報(B2) 20110708 2000600654 20000223 ミトコンドリア病の治療方法 ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア 592130699 The Regents of The University of California 平木 祐輔 100091096 藤田 節 100118773 石井 貞次 100096183 ナヴィアックス、ロバート、ケイ. US 60/121,588 19990223 20110921 A61K 31/7068 20060101AFI20110901BHJP A61K 31/122 20060101ALI20110901BHJP A61K 31/194 20060101ALI20110901BHJP A61K 31/197 20060101ALI20110901BHJP A61K 31/4188 20060101ALI20110901BHJP A61K 31/42 20060101ALI20110901BHJP A61K 31/426 20060101ALI20110901BHJP A61K 31/4415 20060101ALI20110901BHJP A61K 31/455 20060101ALI20110901BHJP A61K 31/47 20060101ALI20110901BHJP A61K 31/472 20060101ALI20110901BHJP A61K 31/4725 20060101ALI20110901BHJP A61K 31/496 20060101ALI20110901BHJP A61K 31/51 20060101ALI20110901BHJP A61K 31/519 20060101ALI20110901BHJP A61K 31/525 20060101ALI20110901BHJP A61K 31/7072 20060101ALI20110901BHJP A61K 31/708 20060101ALI20110901BHJP A61K 31/714 20060101ALI20110901BHJP A61P 1/18 20060101ALI20110901BHJP A61P 3/00 20060101ALI20110901BHJP A61P 3/10 20060101ALI20110901BHJP A61P 7/02 20060101ALI20110901BHJP A61P 9/00 20060101ALI20110901BHJP A61P 13/12 20060101ALI20110901BHJP A61P 21/00 20060101ALI20110901BHJP A61P 21/04 20060101ALI20110901BHJP A61P 25/00 20060101ALI20110901BHJP A61P 25/08 20060101ALI20110901BHJP A61P 25/14 20060101ALI20110901BHJP A61P 25/28 20060101ALI20110901BHJP A61P 27/02 20060101ALI20110901BHJP A61P 35/02 20060101ALI20110901BHJP A61P 43/00 20060101ALI20110901BHJP C07H 19/067 20060101ALN20110901BHJP JPA61K31/7068A61K31/122A61K31/194A61K31/197A61K31/4188A61K31/42A61K31/426A61K31/4415A61K31/455A61K31/47A61K31/472A61K31/4725A61K31/496A61K31/51A61K31/519A61K31/525A61K31/7072A61K31/708A61K31/714A61P1/18A61P3/00A61P3/10A61P7/02A61P9/00A61P13/12A61P21/00A61P21/04A61P25/00A61P25/08A61P25/14A61P25/28A61P27/02A61P35/02A61P43/00 105A61P43/00 111C07H19/067 A61K 31/7068 A61K 31/122 A61K 31/194 A61K 31/197 A61K 31/4188 A61K 31/42 A61K 31/426 A61K 31/4415 A61K 31/455 A61K 31/47 A61K 31/472 A61K 31/4725 A61K 31/496 A61K 31/51 A61K 31/519 A61K 31/525 A61K 31/7072 A61K 31/708 A61K 31/714 A61P 1/18 A61P 3/00 A61P 3/10 A61P 7/02 A61P 9/00 A61P 13/12 A61P 21/00 A61P 21/04 A61P 25/00 A61P 25/08 A61P 25/14 A61P 25/28 A61P 27/02 A61P 35/02 A61P 43/00 C07H 19/067 CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) 特表平02−500372(JP,A) 特開平10−273469(JP,A) 特表2002−523434(JP,A) BOURGERON,T. et al,Fate and expression of the deleted mitochondrial DNA differ between human heteroplasmic skin fibroblast and Epstein-Barr virus-transformed lymphocyte cultures,Journal of Biological Chemistry,1993年,Vol.268, No.26,p.19369-76 BOURGERON,T. et al,Expression of respiratory chain deficiencies in human cultured cells,Neuromuscular disorders : NMD,1993年,Vol.3, No.5-6,p.605-8 28 US2000004663 20000223 WO2000050043 20000831 2002537340 20021105 17 20070221 瀬下 浩一 【0001】発明の分野本発明は、一般にミトコンドリア病に関し、より詳細にはピリミジンに基づくヌクレオシド(トリアセチルウリジン等)の投与によるミトコンドリア病の治療に関する。【0002】発明の背景ミトコンドリア病は、遺伝性、散発性、および後天性で現れる。遺伝性のミトコンドリア病は、死亡率および罹患率が高い。リー症候群(亜急性壊死性脳脊髄障害)等の最も重度の形態は、診断後1年で最大で50%までもの死亡率を有する。ミトコンドリア病の多因子性形態にはもっと一般的な障害、例えばハンティングトン病、パーキンソン病、アルツハイマー病、更には糖尿病の特定の形態、心臓病、偏頭痛および発作が含まれる。実際のところ、老化そのものの過程が、ミトコンドリア機能の進行性の低下に関与していた。【0003】ミトコンドリア病は、核またはミトコンドリアDNAにおける遺伝的欠陥から生じるミトコンドリア代謝の障害として定義される。これらの疾患は、母性遺伝によるもの、通常のメンデル遺伝病として遺伝するもの、または新しい体細胞突然変異として獲得されるものがある。これらの障害は、DNAおよびRNAからタンパク質に至るまでのあらゆる遺伝的レベルで認められる。これらは、ミトコンドリアDNAの複製、転写、ミトコンドリア内へのもしくはその外への高分子輸送、またはミトコンドリア内におけるその作用部位における高分子の機能に影響を及ぼし得る。歴史的に、ミトコンドリア病の病因についての議論は、ミトコンドリアの分解(酸化)機能に焦点が絞られていた。しかし、ミトコンドリア病の症状の多くは、しばしば見過ごされる細胞内小器官の重要な生合成(非分解)機能に関係している可能性がある。ミトコンドリアの1つの生合成機能として、ウリジンの合成が挙げられる。【0004】種々のミトコンドリア病に羅患している患者は、ウリジンの機能的な欠損を有する。何故なら、de novoピリミジン合成(ジヒドロオロト酸CoQ 酸化還元酵素、EC 1.3.99.11)における律速段階は、ミトコンドリアの内膜上にあり、電子伝達系に連結しているからである。ミトコンドリア機能異常のある培養細胞は、DHO-QOの活性に機能的欠損があるため、増殖および生存するためには外来性のウリジンに依存することが知られている。【0005】遺伝性のミトコンドリア病の疫学は、殆ど分かっていない。アメリカ合衆国における新生児の1000人〜4000人に1人は、10歳になる前にミトコンドリア病であると診断されると見積もられている。これは、小児癌の罹患率にほぼ匹敵する。もちろん、ミトコンドリアが何らかの役割を果たす老化の変性障害は、更にもっと一般的であり、2000〜8500万人ものアメリカ人が患っている。ミトコンドリア病の影響は広範囲であるにもかかわらず、現在でもこのような重要かつ重大な問題を解決する認容された治療方法論はない。【0006】従って、1つの分類としてのミトコンドリア病を治療する方法が当分野において必要である。【0007】発明の簡単な説明本発明者等が、ある種のピリミジンに基づくヌクレオシドがミトコンドリア病における役割を認識することにより、本発明は、それらの治療のための統一的な方法を提供する。従って、本発明に基づいて、ミトコンドリア病の治療法が提供される。本発明の方法は、このような障害を有するまたは有する危険性のある被検体に、以下の一般式Iで表される化合物を有効量投与することを含む;【化5】[式中、R1はOH、NHCOCH3またはNH2であり、R2はH、CO2Hまたは以下の一般式(II)で表される基であり、【化6】(式中、Xは、H、C1〜3アルキル、OH、NH2およびハロゲンからなる群より選択される置換基を有するC1〜C22アルキル、C1〜C22アルケニルもしくはC1〜C22アルキニルであるか、またはXはHであり)、R3、R4およびR5はそれぞれ独立して、C1〜3アルキル、OH、NH2、ハロゲンおよびHからなる群より選択される置換基で任意に置換されたC1〜C22アルキルカルボニルであり、ただし、R3、R4およびR5のうちの少なくとも1つはHではない]。【0008】一般式(I)の化合物の例としては、トリアセチルウリジンが挙げられる。したがって、本発明の他の実施形態において、ミトコンドリア病の治療法が提供される。本発明の方法は、このような障害を有するもしくは有する危険性のある被検体に、有効量の2’, 3’, 5’-トリ-O-アセチル-1-β-D-ウリジン(以下「トリアセチルウリジン」と称する)を投与することを含む。【0009】本発明の更なる他の実施形態において、ミトコンドリア病に関係する1以上の症状を軽減または除去する方法が提供される。本発明の方法は、治療が必要な被検体に、一般式Iで表される化合物(R1〜R5およびXは上記に定義したとおり)を有効量投与することを含む。【0010】同様に、本発明の他の実施形態において、ミトコンドリア病に関係する1以上の症状を軽減または除去する方法であって、このような障害を有するまたは有する危険性がある被検体に、有効量のトリアセチルウリジンを投与することを含む方法が提供される。【0011】詳細な説明本発明は、トリアセチルウリジンおよび関連化合物等のピリミジンに基づくヌクレオシドがピリミジン生合成の低減が認められるミトコンドリア病の治療に効果的である、という発見に基づく。本発明の方法は、現在最も一般的に用いられているミトコンドリア病の治療法を改良したものである。これは、トリアセチルウリジン等のピリミジンに基づくヌクレオシドが、患者自身のピリミジン産生を補うと共に、全身のピリミジンレベルを上昇させるからである。これは、結果的に、in vivoの組織(特に神経組織、筋肉組織および臓器組織などの代謝負荷の高い組織)の自然な代謝および生合成過程を維持するために役立つ。【0012】1以上のピリミジンに基づくヌクレオシドの欠如は、今ではミトコンドリア病として広義に分類されることができる数多くの障害に関与が認められてきた。ピリミジンに基づくヌクレオシドの全て(オロト酸を除く)は、ウリジンを出発化合物として使用して合成することができる。従って、ウリジンの欠損は、他の全てのピリミジンに基づくヌクレオシドの欠損および多数の続発症をもたらし得る。このことより、ウリジンを補うだけで(例えばトリアセチルウリジン等の投与により)、多くの症状および病態に効果を発揮することができる。【0013】本発明は、1以上のピリミジンに基づくヌクレオシドやその前駆物質等を投与することによりミトコンドリア病を治療するための方法を提供する。【0014】本発明による治療において想定される生物には、ピリミジン生合成経路を有するあらゆる生物、例えばヒト、ウシ、ヒツジ、ウマ、ネコまたはイヌ科などの哺乳動物等が含まれるが、これらに限定されない。【0015】本明細書中で使用される「ピリミジンに基づくヌクレオシドおよびその前駆物質」には、以下の一般式(I)で表される化合物が含まれる;【化7】[式中、R1はOH、NHCOCH3またはNH2であり、R2はH、CO2H、または以下の一般式(II)で表される基であり、【化8】(式中、Xは、H、C1〜3アルキル、OH、NH2およびハロゲンからなる群より選択される置換基を有するC1〜C22アルキル、C1〜C22アルケニルもしくはC1〜C22アルキニルであるか、またはXはHであり)、R3、R4およびR5はそれぞれ独立して、C1〜3アルキル、OH、NH2、ハロゲンおよびHからなる群より選択される置換基で任意に置換されたC1〜C22アルキルカルボニルであり、ただし、R3、R4およびR5のうちの少なくとも1つはHではない]。【0016】本発明の実施で使用することが想定されるアルキルカルボニル基Rには、アミノ酸のカルボニル誘導体(即ち該アミノ置換基が該アルキルカルボニルのα炭素上にある場合)、モノカルボン酸のカルボニル誘導体、ジカルボン酸のカルボニル誘導体等が含まれる。本発明の1つの態様において、本発明の実施で使用することが想定されるジカルボン酸置換基は、約3〜22個の炭素を有する。【0017】本発明の実施において置換体として使用することが想定されるアミノ酸のカルボニル誘導体としては、グリシン、L体のアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、チロシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、セリン、スレオニン、シスチン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リジン、ヒスチジン、カルニチン、オルニチン等のカルボニル誘導体が挙げられる。【0018】一般式Iで表される化合物の例としては、トリアセチルウリジン、テトラアセチルシチジン、トリアセチルオロト酸エステル、およびこれらの類似体等が挙げられる。本発明の現在のところ好適な態様では、ピリミジンに基づくヌクレオチドはトリアセチルウリジンである。【0019】簡単に示すために、一般式Iは、天然に存在するD体の立体配置の活性化合物を示すが、本発明は、特に記載しない限り、異性体(例えばケト−エノール互変異性を示す化合物)、L体の立体配置の化合物、ならびにDおよびL体の立体配置の化合物の混合物も包含する。天然に存在するD体の立体配置がここでは好適である。【0020】本発明の化合物は、その製薬上許容しうる塩の形で存在し得る。例えば、アルカリ金属のナトリウムやカリウムなどの塩、マンガン、マグネシウムもしくはカルシウムなどのアルカリ土類金属塩、またはアンモニウムもしくはテトラアルキルアンモニウム塩、即ちNX’4+(X’はC1-4)が挙げられるが、これらに限定されない。製薬上許容しうる塩は、親化合物の所望の生物学的活性を保持し望ましくない毒性効果を付与しない塩である。【0021】本発明の他の実施形態において、ミトコンドリア病の治療法、およびミトコンドリア病に関係する症状を軽減するもしくは取り除くための方法は、1以上のビタミンおよび補因子の投与をさらに含む。本発明に使用することが想定されるビタミンとしては、チアミン(B1)、リボフラビン(B2)、ナイアシン(B3)、ピリドキシン(B6)、葉酸塩、シアノコバラミン(B12)、ビオチン、パントテン酸等が挙げられる。本発明に従って使用することが想定される補因子としては、補酵素Q、ピルビン酸カルシウム等が含まれる。【0022】本発明の方法は、全てのミトコンドリア病、特にピリミジン欠損に関連する疾患、および最も具体的にはウリジンの欠損に関連する疾患の治療における使用が考えられる。本発明に基づく治療に想定される特定のミトコンドリア病には、MELAS(乳酸血症および発作様エピソードを伴うミトコンドリア性脳性筋障害)、MERRF(ミオクローヌス、てんかん、および赤筋繊維の筋障害)、NARP/MILS(神経性筋衰弱、失調症、色素性網膜炎/母系遺伝性リー症候群)、LHON(レーバー遺伝性視神経萎縮障害)「ミトコンドリア性視覚消失」、KSS(キーンズ・セイアー症候群)、PMPS(ピアーソン骨髄-膵臓症候群)、CPEO(慢性的進行性外眼筋麻痺症)、リー症候群、アルパーズ症候群、多発性mtDNA欠失症候群、MtDNA欠乏症候群、複合体I欠損、複合体II(SDH)欠損、複合体III欠損、シトクロムcオキシダーゼ(COX、複合体IV)欠損、複合体V欠損、アデニンヌクレオチドトランスロケーター(ANT)欠損、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)欠損、乳酸血症を伴うエチルマロン酸尿症、乳酸血症を伴う3-メチルグルタコン酸尿症、感染中の衰弱を伴う難治性てんかん、感染中の衰弱を伴うアスペルガー症候群、感染中の衰弱を伴う自閉症、注意欠陥過活動性障害(ADHD)、感染中の衰弱を伴う脳性麻痺、感染中の衰弱を伴う失読症、母系遺伝性血小板減少症および白血病症候群、MNGIE(ミトコンドリア性の筋障害、末梢および自律神経障害、胃腸機能不全ならびにてんかん)、MARIAHS症候群(ミトコンドリア性の失調症、再発性感染、失語症、低尿酸血症/ミエリン形成減少症、発作、およびジカルボン酸尿症)、ND6ジストニー、感染中の衰弱を伴う周期性嘔吐症候群、乳酸血症を伴う3-ヒドロキシイソブチル酸尿症、乳酸血症を伴う真性糖尿病、家族性両側線条体壊死(FBSN)、アミノグリコシド関連難聴、拡張型心筋症、脾リンパ腫、ウォルフラム症候群、多発性ミトコンドリアDNA欠失症候群、ならびに尿細管性アシドーシス/糖尿病/運動失調症候群が含まれる。【0023】本発明の他の態様は、以下の原因(ただしこれらに限定されない)によりミトコンドリア病に罹った哺乳動物(例えばヒトなど)を治療する方法である:外傷後の頭部損傷および脳水腫、発作(本発明の方法は再灌流障害の予防または予防に有用である)、アルツハイマー性痴呆、レーヴィ小体痴呆、ハンティングトン病、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、肝腎症候群、急性肝不全、NASH(非アルコール性脂肪肝)、真性糖尿病(特にII型)、癌の抗-転移/前分化(prodifferentiation)治療、特発性うっ血性心不全、心房細動(非心臓弁膜性)、ウォルフ‐パーキンソン‐ホワイト症候群、突発性心臓ブロック、急性心筋梗塞症における再灌流障害の予防、家族性偏頭痛、過敏性腸症候群、非-Q波心筋梗塞の2次的予防、月経前緊張症候群、肝腎症候群における腎不全の予防、抗リン脂質抗体症候群、子癇/前子癇、卵休止(Oopause)不妊症、虚血性心臓病/アンギナ、ならびにシャイ‐ドレーガーおよび分類されていない自律神経障害症候群。【0024】更に他の実施形態において、薬理学的薬物に関連する副作用に伴うミトコンドリア病の治療方法が提供される。ミトコンドリア病に関連する薬理学的物質のタイプには、逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、DHODの阻害剤等が含まれる。特定の逆転写酵素阻害剤としては、アジドチミジン(AZT)、スタブジン(D4T)、ザルシタビン(ddC)、ジダノシン(DDI)、フルオロヨードアラウラシル(FIAU)等が挙げられる。特定のプロテアーゼ阻害剤としては、リトナビール(RITONAVIR、商品名)、インディナビール(INDINAVIR、商品名)、サキナビール(SAQUINAVIR、商品名)、ネルフィナビール(NELFINAVIR、商品名)等が挙げられる。ジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼ(DHOD)の特定の阻害剤としては、レフルノマイド(LEFLUNOMIDE、商品名)、ブレキナール(BREQUINAR、商品名)等が挙げられる。【0025】ミトコンドリア病のある種の症状は、1以上のピリミジン関連欠損に関係し得るため、本発明の他の実施形態において、ミトコンドリア病に関係する1以上の症状を軽減または除去するための方法が提供される。ミトコンドリア病に関係する症状としては、尿細管性アシドーシス(RTA)、視力障害、痴呆、発作、心筋症、骨格筋障害、末梢筋障害、自律神経性筋障害等が挙げられる。【0026】ミトコンドリア病は、それらが特定のミトコンドリアに特異的な生合成経路に及ぼす影響によって分類することができる。従って、本発明の他の実施形態において、ミトコンドリアの生合成経路の混乱または欠陥の結果として生じるミトコンドリア病の治療方法が提供される。ミトコンドリアの一次的生合成経路は、ピリミジン生合成のための経路である。本発明の方法は、ピリミジン、ピリミジン類似体、その前駆体の投与を含むので、本発明の方法による治療のために考えられる生合成経路は、ピリミジン(ウリジン、チミジン、シトシン等を含む)の生合成経路を含む。ピリミジン生合成経路における特定の欠損には、目的の経路の中の特定の酵素に関連する欠損が含まれる。このような欠損としては、酵素の欠如、酵素発現の低減、活性が低下したもしくは活性を持たない欠陥(例えば突然変異)酵素などが含まれる。特定の酵素としては、ジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼ(DHOD)、ウリジンモノリン酸シンテターゼ(UMPS)等が挙げられる。【0027】本発明はさらに、一般式Iで表されるピリミジンに基づくヌクレオシドやその類似体等を含む単位剤形(unit dosage form)を含む医薬組成物を提供する。【0028】本明細書中で使用されるものとして記載された活性成分は、このような組成物を経口、直腸、または非経口(例えば静脈内、筋肉内、動脈内、腹膜内等)による、または吸入経路、浸透圧ポンプ、表面塗布、眼球(opthalmic)等による送達を行い易くするために選択された、製薬上適切なビヒクルを用いて製剤化することができる。【0029】軟膏とは、活性成分を脂肪基剤、蝋基剤、または合成基剤に組み込んで構成される半固形調製物である。【0030】適切なクリームの例としては、油中水および水中油型エマルジョンが挙げられるが、これらに限定されない。油中水型クリームは、セチルアルコールまたはセトステアリルアルコール等の脂肪族アルコールや乳化剤ワックスの特性(ただしこれらに限定されない)に類似の特性を有する適切な乳化剤を用いて調製することができる。水中油型クリームは、セトマクロゴール(cetomacrogol)乳化剤ワックス等の乳化剤を用いて調製することができる。適切な特性としては、エマルジョンの粘性、および広範囲のpHにわたって物理的かつ化学的な安定性を変える能力が挙げられる。水溶性もしくは水混和性のクリーム基剤は、保存剤系を含んでいても良く、また許容可能な生理的pHを維持するために緩衝化することもできる。【0031】上記表面塗布による投与方法の他に、本発明の化合物の全身投与のための様々な方法がある。このような手段の1つは、その被検体が吸入する、該活性化合物を含む呼吸に適した粒子のエアロゾル懸濁液を含む。該活性化合物は、肺を介して血流中に吸収され、薬学的に有効な量が体循環に接触する。呼吸に適した粒子は、液体または固体であっても良く、吸入した際に口および喉頭を通れるくらい十分小ささな粒子サイズを有する。一般的に約1〜10ミクロン、より好ましくは1〜5ミクロンの粒子のサイズが、呼吸に適したサイズであると考えられる。【0032】被検体に該活性化合物を全身投与する他の手段は、液体製剤の点鼻剤、または被検体が吸入する呼吸に適した粒子の鼻腔内スプレーの形での、液体/液体懸濁液の投与を含む。鼻腔内スプレーまたは点鼻剤を生産するための該活性化合物の液体医薬組成物は、当業者に公知の技法によって、活性成分を、適切なビヒクル(発熱性物質を除去した滅菌蒸留水または滅菌食塩水など)と組合せることにより、調製することができる。【0033】該活性化合物の全身投与の他の手段は、得られる製剤が本明細書中で使用されることが想定される活性成分を、鼻腔内、腸内又は非経口投与に適した有機もしくは無機担体または賦形剤との混合物として含有する、一般式Iで表される化合物を含む医薬組成物が固体、液体、エマルジョン、分散液、ミセル、リポソームなどの形での経口投与を含む。該活性成分は、例えば通常の非毒性の、製薬上もしくは生理学上許容しうる担体と混ぜ合わせて、錠剤、ペレット、カプセル、トローチ剤、菓子錠剤、水性もしくは油性懸濁液、分散可能粉末剤もしくは顆粒剤、坐剤、溶液、エマルジョン、懸濁液、硬もしくは軟カプセル剤、カプレット(caplet)もしくはシロップ、またはエリキシル剤、および使用に適するその他の剤形を調製することができる。使用することができる担体には、アラビアゴム、ゼラチン、マンニトール、デンプンのり、三ケイ酸マグネシウム、タルク、コーンスターチ、ケラチン、コロイドシリカ、じゃがいもデンプン、尿素、中鎖トリグリセリド、デキストラン、および固体、半固体もしくは液体形状の調製物の製造で使用するのに適した他の担体が含まれる。さらに補助剤として、安定化剤、増粘剤、および着色剤を使用してもよい。本明細書中で使用することが想定される活性化合物は、投与すると所望の効果を発揮するのに十分な量(すなわち治療上有効な量)で、医薬製剤の中に含まれる。【0034】粉末剤、溶液、懸濁液、または錠剤は、経口送達系の開発に従事する当業者が従来の基準を用いて選択することができる生理学的に適合性のあるビヒクルの中に、活性成分を含む。例えば、このような製剤は、医薬として優れ、かつ口に合うように、香味剤(ペパーミント、ヒメコウジやチェリーの油など)、着色剤または保存剤等から選択される1種以上の物質を含むことができる。また、活性成分を非毒性の製薬上許容しうる賦形剤との混合物中に含む錠剤も、公知の方法によって製造することができる。使用される賦形剤としては、例えば(1)炭酸カルシウム、ラクトース、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウム等の不活性希釈剤、(2)コーンスターチ、じゃがいもデンプン、アルギン酸等の顆粒化および崩壊剤、(3)トラガカントゴム、コーンスターチ、ゼラチン、アラビアゴム等の結合剤、ならびに(4)ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク等の潤滑剤がある。錠剤は、コーティングしなくても良いし、または胃腸管内における崩壊および吸収を遅らせて長時間作用を持続させるために公知の技法によりコーティングしてもよい。例えば、グリセリルモノステアレートやグリセリルジステアレート等の時間遅延化物質を使用することができる。また、錠剤は、米国特許第4,256,108号、第4,160,452号、および第4,265,874号(これらは、本明細書中に参考として組み込まれる)に記載された技法によってコーティングし、制御放出される浸透治療錠剤(osmotic therapeutic tablet)を形成することもできる。【0035】経口用の製剤が硬質ゼラチンカプセルの形状である場合、活性成分を不活性固体希釈剤(例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、カオリンなど)と混合することができる。また該製剤は、水または油性媒質(例えばピーナッツオイル、流動パラフィン、オリーブオイル等)と活性成分とが中で混合されている軟ゼラチンカプセルの形状であっても良い。【0036】被検体への活性化合物の全身投与の他の手段は、治療上有効な量の該化合物が体循環に到達するようになっている、該活性化合物の坐剤を含む。【0037】医薬組成物中に含まれる活性化合物(すなわち一般式Iで表されるピリミジンに基づくヌクレオシド)の量は、被検体においてミトコンドリア病の徴候および症状を改善するのに十分な量であり、約0.5g/m2/日〜約20g/m2/日、より好ましくは約2g/m2/日〜約10g/m2/日であり、さらに好ましい実施形態においては、約6g/m2/日である。本明細書中で使用される単位「m2」とは、表面積(SA)を表し、以下の式によって決定される:SA(m2)=(高さ(cm))0.75×(重量kg)0.425×71.84÷10,000。【0038】投与される活性化合物の特定の製剤の可溶性によって、ミトコンドリア病の徴候および症状を改善するための一日の服用量は、1〜数回の単位用量に分割することができる。(例えば)、トリアセチルウリジンの一日あたりの合計服用量は、最高で1日5回までの投薬処方とすると、被検体の年齢および状態に応じて1日当り1〜20グラムであり、或いは、急に病状の悪化を解決するためには必要に応じて投与される。【0039】本発明に従って任意で投与される補因子およびビタミンは、適当な1日あたりの投与量で与えられるものとする。本発明の方法に従って投与されると想定される1日あたりの投薬量を、表1に記載する。【表1】【0040】当業者には理解できるとおり、上記投与量は実質的に一般的なもので、個々の被検体の必要に応じて、医療の専門家の適切な処置によって、被検体の年齢、体重、サイズ、状態等を考慮して、調整することができる。【0041】一般式Iで表される化合物は、当業者に周知である方法によって、および公知の手法F.J.M.Rajabalee, Angew. Chem. Int.編, vol. 10, p.75(1971)に従って、作製することができる。幾つかの化合物は、例えばSigma Chemical Company(PO Box 14508, St. Louis, MO63178)より市販されている。【0042】以下、本発明について、以下の非限定的な実施例を参照してより詳細に記載する。【0043】実施例実施例1:トリアセチルウリジンを用いたミトコンドリア病の治療患者:ミトコンドリア性尿細管性アシドーシス(RTA)を患う4人の患者を検査した。ミトコンドリア性RTAはしばしば近位(II型)または遠位(I型)細管性疾患として単純に分類できないことがある。なぜなら、ミトコンドリア性RTAの患者はしばしばモザイク様であって両方の表現型の特徴を発現し、これは高塩素性(非アニオンギャップ)代謝アシドーシスにつながるからである。【0044】患者No.1は、リー症候群、乳酸血症、および複合体I欠損を有する2歳の女児であって、彼女は腎臓のアルカリの低下を補い、血清中の重炭酸イオンを20mEg/lを超えるレベルに維持するために200mEq/日のNaHCO3を必要とし、1+蛋白尿およびヒドロキシプロリン血症を伴う重度のアミノ酸尿症を有していた。【0045】患者No.2は、リー症候群、および複合体IV(COX)欠損を有する3歳の女児であり、彼女もまた200mEq/日のNaHCO3を必要としていた。【0046】患者No.3は、リー症候群、乳酸血症、1+蛋白尿、およびピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)欠損を有する2歳の男児であり、彼は最高で210mEq/日のNaHCO3までを必要としていた。【0047】患者No.4は、3-ヒドロキシイソブチル酸性尿症、乳酸血症および脳性筋障害を有する11歳の男児であり、彼は468mEq/日のNaHCO3を必要としていた。【0048】方法:血液および尿の電解質、クレアチニン、pH、尿検査および静脈血ガスを、治療の前後に検査した。定量できる尿中アミノ酸および有機アミノ酸も得た。経口重炭酸ナトリウムの前投与(pre-enrollment)用量を、トリアセチルウリジン治療の最初の3日間続けた後、20mEq/lを超える血清重炭酸イオンを維持するよう調節しながら毎週用量を減らした。【0049】治療:患者にトリアセチルウリジン2g/m2を経口で(PO)1日3回(TID)与えた。【0050】結果:患者No.1は、治療後24時間以内にRTAが完全に良くなり、重炭酸塩を更に経口投与しなくても、20mEq/lを越える血清重炭酸イオンを維持したままであった。また、2週間以内に彼女のヒドロキシプロリン尿症は完全に消えた。【0051】患者No.2における尿中重炭酸イオンの低下は、最初は99mEq/lであった。重炭酸イオンの排泄率(FEHCO3)は、治療前は9.3%であった。トリアセチルウリジンで治療を行った36時間後には、尿中の重炭酸イオンの低下は検出不可能となった(<5mEq/l)。治療の3週間後には、正常な血清重炭酸イオンを維持するために、この患者の重炭酸イオンの準備投与用量のたった25%しか必要としなかった。【0052】患者No.3における尿中重炭酸イオンの低下は、59mEq/lであった。FEHCO3は、治療前は10.0%であった。トリアセチルウリジンで治療を行った36時間後には、尿中の重炭酸イオンの低下は検出不可能となった(<5mEq/l)。治療の3週間後、この患者は、彼の以前の重炭酸イオン投与量のたった10%しか必要としなかった。【0053】治療の1週間後、患者No.4の経口重炭酸イオン必要量は35%減少した。治療は続いている。【0054】結論:トリアセチルウリジンで治療したミトコンドリア病患者4人のうち4人において、尿細管性アシドーシスは治癒または劇的に改善された。【0055】実施例2:MARIAHS症候群に罹患した被検体へのトリアセチルウリジンの投与による治療患者:CMZは、ミトコンドリア性失調症、再発性感染症、失語症、低尿酸血症/ミエリン形成減少症、および発作(MARIAHS症候群)を有し、1歳の時から治療を受けている子供である。症状は、ジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼ酵素(de novoピリミジン合成における律速段階)における一次的な欠損を示し、これは、外因性ウリジンへの機能的な依存につながり得る。【0056】治療:3歳のときからウリジンによる治療を始めた。4.5歳のときに、治療剤をウリジンがより簡単に吸収される形態であるトリアセチルウリジンにかえた。【0057】結果:CMZは元気になった。彼女の発作は月2回から2ヶ月に1回に減少した。運動および言語の発達はめざましく改善した。彼女はアルファベットを学び、色が分かり、2つの単語からなる文章を使い始めた。軽度の躯幹運動失調症は続いている。ウリジンに対する20ヶ月後の追跡的脳MRIでは、彼女の白質性疾患に進行は見られなかった。トリアセチルウリジンの開始後10日以内にさらに1回発作が確認されたが、生化学的、血液学的、または臨床学的毒性は見られなかった。最初のトリアセチルウリジンの用量は0.1g/kg/日であった。投薬量を0.2g/kg/日まで増やして2ヶ月以内に、表現的言語の獲得が急速に増加し、以前は広範囲で見られた失調性歩行の範囲が狭くなった。彼女は最近、0.3g/kg/日まで用量を増やし、0.75gのピルビン酸カルシウムTIDでの治療を開始した。【0058】結論:トリアセチルウリジンの投与によるMARIAHS症候群の治療は、患者の状態の劇的な改善、および総合的症状の著しい軽減をもたらす。【0059】実施例3:ミトコンドリア病の様々な症状および家族性履歴を有する被検体へのトリアセチルウリジンの投与による治療患者:KLは、発作様エピソード、失調症、および脳障害につながるミトコンドリア病を患う彼女の息子の診断後に初めて研究者の注目を集めた成人である。トリアセチルウリジンの投与前に、KLは再発性腎盂腎炎、感染随伴性好中球減少症、片麻痺性/無相性偏頭痛、大発作、QIDカテーテル法(QID catheterization)を必要とする神経原性腸および膀胱障害、胆道共同運動障害(biliary dyssynergia)、嚥下障害およびpc咳、多発性末梢および自律性神経障害、有痛性感覚消失、SVTおよび頻脈徐脈症候群を伴う心伝導障害、重度の起立性低血圧症、起座呼吸、および立ち止まらないでひと続きの階段を登ることができない機能的能力の低下、および感覚神経中枢の鈍りによるエピソードおよび数時間〜数日間続く記憶低下を伴う認識機能の低下に悩んでいた。【0060】治療:KLは、0.05g/kg/日の投薬量でトリアセチルウリジンによる治療を開始した。【0061】結果:トリアセチルウリジン投与開始以来、KLは、発作や偏頭痛を経験していない。ある程度のしびれは続いているが、彼女の有痛性感覚消失は消え去った。彼女はたいていの日は自発的に排泄することができ、1週間に1〜2回しかI&O導尿管(I&O cath)を必要としなかった。胆道共同運動障害の痛みは消えた。トリアセチルウリジンの治療から6週間後、彼女は1マイルを全部歩くことができた(この作業は、機能的な能力が不十分だったため彼女が過去2年間行うことができなかったものである)。頻脈徐脈症候群は続いている。彼女は、50bpm未満および140bpmを超える値にアラームが設定された運動用のデジタルパルスメーターを腕に装着している。頻脈アラームは、以前は単に立ち上がるだけで鳴っていたのに、今では坂および階段のときだけ鳴る。徐脈アラームは、就寝中1週間に2〜3晩、40sの割合で鳴る。彼女の感覚神経中枢ははっきりとし、彼女は、彼女の記憶が「過去5年間で最も良い」と報告している。生化学的または血液学的毒性は無かった。【0062】トリアセチルウリジン療法の最初の10週間の間、KLの月経周期は4週間毎から2週間毎へと短くなり、嚢胞性乳房疾患はやや悪化した。月経間のエストラジオール、プロゲステロン、FSHおよびLHレベルは一貫して黄体期を示した。彼女は貧血症にならなかった。彼女のHgbは13g/lで安定していた。10週間後、トリアセチルウリジンまたは他の薬物に変更を加えることなく、彼女の月経周期は正常に戻った。彼女は現在0.1g/kg/日のトリアセチルウリジンおよび0.75gのピルビン酸カルシウムTIDの投与を受けている。【0063】実施例4:多発性ミトコンドリア欠失症候群に罹患した被検体へのトリアセチルウリジンの投与による治療患者:SFは4歳の頃より難治性てんかんを患う11歳の少年である。5年生の頃、彼はリトルリーグ野球をプレーすることができた。その後彼は、多発性ミトコンドリアDNA欠失症候群と思われる病気に罹っていることが分かった。この障害は、多数の欠失を有するミトコンドリアDNAのコピーを産生し、多くの症状につながる可能性がある。SKは衰弱しはじめた。彼は、漸増性てんかんのために2 ICUに入院し、その後4ヶ月の間、鎮痙用の投薬処方に7回の変更を行った。彼は、毎晩8〜10回大発作を起こし、朝はたいてい発作後の余韻を残していた。また彼は、上唇自動性(upper lip automaticity)も発症した。【0064】治療:この患者にまず0.05g/kg/日のトリアセチルウリジンを1週間投与し、その後1週間は0.16g/kg/日を、次に0.24g/kg/日を投与した。【0065】結果:彼の発作および不随意の上唇の動きは、彼の上唇自動性が現れてから最初の3日間で完全に止まった。彼のテグレトール(tegretol)は治療的レベル以下(subtherapeutic)であることが分かったため(トリアセチルウリジン開始前後の両方とも4μg/mlであった)、治療的レベルである8〜12μg/mlを達成するために彼のテグレタール(tegretal)用量を増やし、彼のトリアセチルウリジンを0.16g/kg/日に増やした。3週間後、彼のトリアセチルウリジンの用量を0.24g/kg/日に増やして、0.5gのピルビン酸カルシウムTIDを加えた。これにより、彼の夜行性発作活動に一過性の上昇が見られたが、その後3日後にはゼロに減った。数週間の間、SFは学校に戻ってリトルリーグ野球を再びプレーすることができた。【0066】実施例5:リー症候群に罹患した被検体へのトリアセチルウリジンの投与による治療患者:CSは、リー症候群、乳酸血症、および尿細管性アシドーシスを患う2歳の少女であり、彼女は選択的経皮胃瘻造設術管(PEG)を取り替えるための全身麻酔から醒めた時に高血圧の危機および急性水腫に陥っていた。胃瘻造設術管は、彼女の日々の重炭酸イオンの必要量が非常に多かった(25mEg/kg/日)ため、彼女は重炭酸イオンを導入するために彼女の胃に管を入れないことには彼女の必要量を満たすことができないという理由のみで必要であった。彼女はPEGの合併症として肺炎を起こし、脊髄、中脳、および視床に、新しいリー症候群障害を発症した。彼女はPEGを取り替えた後3日間、昏睡状態となった。【0067】治療:CSはトリアセチルウリジンで救急治療を受けた。【0068】結果:この患者の尿細管性アシドーシスはトリアセチルウリジン開始後12時間以内に完全に回復した。彼女は更なる重炭酸イオンの補給を必要とせず、彼女のアミン酸尿症は改善し、トリアセチルウリジンの2時間以内に血漿中のアミノ酸は正常範囲に戻った。この間、連続的に非経口栄養補給を受けていた。生化学的反応が良好であったにも関わらず、彼女は昏睡状態から目覚めることはなく、4週間の末期疾患後に死亡した。【0069】本発明はある好適な実施形態を参照して詳細に記載されたが、明細書中および特許請求の範囲に記載された本発明の精神および範囲内で改変および変更が可能であることを理解されたい。 ミトコンドリア病を治療するための医薬組成物であって、式I:を有するケト互変異性体のL体もしくはD体、または式IA:を有するエノール互変異性体のL体もしくはD体を含み、上記ミトコンドリア病がMARIAHS症候群(ミトコンドリア性の失調症、再発性感染、失語症、低尿酸血症/ミエリン形成減少症、発作、およびジカルボン酸尿症)である、上記組成物。 前記ミトコンドリア病がピリミジン合成経路における欠損を含む、請求項1記載の組成物。 ピリミジン合成経路における欠損がウリジン合成経路である、請求項2記載の組成物。 前記欠損が、ピリミジン合成経路における酵素の発現および/または活性の低減を含む、請求項2記載の組成物。 前記酵素が、ジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼ(DHOD)およびウリジンモノリン酸シンセターゼ(UMPS)からなる群より選択される、請求項4記載の組成物。 前記ミトコンドリア病が正常レベル未満のウリジンレベルをもたらす、請求項1記載の組成物。 前記ミトコンドリア病が、DHODの阻害剤の事前投与または同時投与によって生じる、請求項1記載の組成物。 前記DHOD阻害剤が、レフルノマイド(LEFLUNOMIDE)またはブレキナール(BREQUINAR)である、請求項7記載の組成物。 1種以上の補因子、ビタミン、またはこれらのうちの2種以上の混合物を更に含む、請求項1記載の組成物。 前記補因子が補酵素Qまたはピルビン酸カルシウムのうちの一方または両方である、請求項9記載の組成物。 前記ビタミンが、チアミン(B1)、リボフラビン(B2)、ナイアシン(B3)、ピリドキシン(B6)、葉酸塩、シアノコバラミン(B12)、ビオチンおよびパントテン酸からなる群より選択される、請求項9記載の組成物。 前記式(I)または前記式(IA)で表される化合物を一日あたり約0.5g/m2〜20g/m2の用量で投与するためのものである、請求項1記載の組成物。 前記式(I)または前記式(IA)で表される化合物を一日あたり約2g/m2〜10g/m2の用量で投与するためのものである、請求項1記載の組成物。 前記式(I)または前記式(IA)で表される化合物を一日あたり約6.0g/m2の用量で投与するためのものである、請求項1記載の組成物。 ミトコンドリア病に関連する1種以上の症状を軽減または除去するための医薬組成物であって、式I:を有するケト互変異性体のL体もしくはD体、または式IA:を有するエノール互変異性体のL体もしくはD体を含み、上記ミトコンドリア病がMARIAHS症候群(ミトコンドリア性の失調症、再発性感染、失語症、低尿酸血症/ミエリン形成減少症、発作、およびジカルボン酸尿症)である、上記組成物。 前記ミトコンドリア病がピリミジン合成経路における欠損を含む、請求項15記載の組成物。 ピリミジン合成経路における欠損がウリジン合成経路である、請求項16記載の組成物。 前記欠損が、ピリミジン合成経路における酵素の発現および/または活性の低減を含む、請求項17記載の組成物。 前記酵素が、ジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼ(DHOD)およびウリジンモノリン酸シンセターゼ(UMPS)からなる群より選択される、請求項18記載の組成物。 前記ミトコンドリア病が正常レベル未満のウリジンレベルをもたらす、請求項15記載の組成物。 前記ミトコンドリア病が、DHODの阻害剤の事前投与または同時投与によって生じる、請求項15記載の組成物。 前記DHOD阻害剤が、レフルノマイド(LEFLUNOMIDE)またはブレキナール(BREQUINAR)である、請求項21記載の組成物。 1種以上の補因子、ビタミン、またはこれらのうちの2種以上の混合物を更に含む、請求項15記載の組成物。 前記補因子が補酵素Qまたはピルビン酸カルシウムのうちの一方または両方である、請求項23記載の組成物。 前記ビタミンが、チアミン(B1)、リボフラビン(B2)、ナイアシン(B3)、ピリドキシン(B6)、葉酸塩、シアノコバラミン(B12)、ビオチンおよびパントテン酸からなる群より選択される、請求項23記載の組成物。 前記式(I)または前記式(IA)で表される化合物を一日あたり約0.5g/m2〜20g/m2の用量で投与するためのものである、請求項15記載の組成物。 前記式(I)または前記式(IA)で表される化合物を一日あたり約2g/m2〜10g/m2の用量で投与するためのものである、請求項15記載の組成物。 前記式(I)または前記式(IA)で表される化合物を一日あたり約6.0g/m2の用量で投与するためのものである、請求項15記載の組成物。


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