生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_抗肥満症剤
出願番号:2000079514
年次:2006
IPC分類:A61K 36/18,A61K 36/23,A61K 36/00,A23L 1/30,A61P 3/04


特許情報キャッシュ

山原 條二 JP 3794669 特許公報(B2) 20060421 2000079514 20000322 抗肥満症剤 大崎 義雄 500127793 野邨 学 391065932 水野 喜夫 100092222 山原 條二 20060705 A61K 36/18 20060101AFI20060615BHJP A61K 36/23 20060101ALI20060615BHJP A61K 36/00 20060101ALI20060615BHJP A23L 1/30 20060101ALI20060615BHJP A61P 3/04 20060101ALI20060615BHJP JPA61K35/78 CA61K35/78 NA61K35/78 WA23L1/30A61P3/04 A61K 36/18 A61K 36/23 JICSTファイル(JOIS) 特公平04−003365(JP,B2) 特開平11−029472(JP,A) Kimura Yoshiyuki et al,Effects of active compounds isolated from Angelica shikokiana on lipid metabolism in fat cell ,J.Ethnopharmacology,1989年,Vol.25,No.3,pp.269-280 北村博一監修,神秘のサラシアダイエット,株式会社史輝出版,1999年 6月30日,第1版第1刷 2 2001261569 20010926 10 20001110 鶴見 秀紀 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、肥満症の予防や治療に有効であり、かつ、安全性に優れるとともに経済性に優れた天然植物由来の抗肥満症剤に関する。更に詳しくは、本発明は、天然植物由来のセリ科植物であるヒュウガトウキ(日向当帰)及びニシキギ科植物である特定のサラシア属植物を併用したことを特徴とする抗肥満症剤に関する。【0002】【従来の技術】肥満症の予防法あるいは治療法として、従来より食事療法、運動療法、外科療法、薬物療法などが知られている。しかしながら、これらの肥満症の予防法あるいは治療法は、一長一短があり、かつ、十分に満足のいく成果が得られていないのが現状である。【0003】例えば、フェンフラミンまたはアジンドールなどの合成医薬品を食欲抑制剤として用いる肥満症の予防ないしは治療法は、口渇や習慣性という欠点がある。【0004】疫学的な調査において、肥満が引き起こす高血圧、糖尿病、循環器系疾患などは、1980年以前にはそれほど顕著な変化が見られない。しかしながら、例えば、1996〜1997のオランダでの疫学的な調査において、3才〜21才までの人工の20%が肥満となっているという報告があり、今日、肥満は極めて大きな社会問題となりつつある。【0005】【発明が解決しようとする課題】本発明は天然物由来の抗肥満症剤により、従来の肥満症の予防あるいは治療にみられる欠点を顕著に改善しようとするものである。【0006】天然物の一般的な特徴である作用の緩和性と安全性は、この種の肥満症の予防や治療が長時間(長期間)を要することに鑑みると、極めて重要な点である。【0007】 即ち、天然物由来の抗肥満症剤は、 (1).合成医薬品の副作用に配慮しなければならない薬物療法、 (2).持続させるのに根気と努力を要する食事療法や運動療法、などの従来の肥満症の予防法や治療法と比較して、優れているということができる。【0008】 本発明は、天然物由来の抗肥満症剤であって、 (a) 通常の生活をしていて過剰な内臓脂肪の沈着を防止することができること、 (b) 血清中の脂質の異常値あるいは体重をコントロールすることができること、などの特性を有し、かつ安全性と経済性に優れた天然物由来の抗肥満症剤を提供しようとするものである。【0009】【課題を解決するための手段】本発明を概説すれば、本発明は、(a) セリ科植物のヒュウガトウキ(日向当帰)の抽出物、及び、(b) ニシキギ科植物のサラシア オブロンガ(Salacia oblonga)、サラシア レティキュラータ(Salacia prinoides)、サラシア プリノイデス(Salacia prinoides)から選ばれた少なくとも一種の植物の抽出物、を有効成分とすることを特徴とする抗肥満症剤に関するものである。【0010】以下、本発明の技術的構成及び実施態様について詳しく説明する。【0011】本発明の天然物由来の抗肥満症剤は、肥満の原因が、単に脂肪の体内蓄積だけでなく、水の貯留による合併症に基づくケースが多い、ということに注目して開発されたことに大きな特徴がある。【0012】即ち、本発明者は、(a) 利尿効果によって余分な水分を排泄させる観点、及び、(b) 脂質へと変換する糖類を過剰に血中へ流入するのを阻害させる観点、の二面から新たな抗肥満症剤を開発すべく鋭意、検討を加えた。【0013】本発明者は、既に、ニシキギ科(Celastaceae)の植物、即ち、・ サラシア オブロンガ (Salacia oblonga)、・ サラシア レティキュラータ(Salacia reticulata)、・ サラシア プリノイデス (Salacia prinoides)、の抽出物を有効成分とする糖尿病治療剤(antidiabetes)について特許を取得している(特許第3,030,008号)。【0014】そして、本発明者は、前記特許において、サラシア属植物の有効成分が二糖類などの分解酸素であるα−グルコシダーゼの活性を効果的に阻害する性質を有していること、かつ、糖尿疾治療のための真の有効物質が何であることを明らかにしている。【0015】また、本発明者は、前記サラシア族植物の有効成分が、食事により摂取された各種糖質やオリゴ糖(二糖類または三糖類)の単糖類への分解と体内吸収を防止し、栄養過多による肥満を防止する能力があることをつきとめている。【0016】前記ニシキギ科(Celastaceae)のサラシア属植物は、インドやスリランカの伝承医学、即ちアーユルベーダ医学(the AYURVEDIC traditional medicine)により古くから使用されているシンハリ語(Sinhalese)でコタラヒンブリウル(Kotala himbutuwel)といわれる植物である。前記ニシキギ科(Celastaceae)サラシア属植物は、つる性の植物(a woody climbing plant)であり、インドやスリランカ等において資源的にも豊富に自生しているものである。【0017】本発明の天然物由来の抗肥満症剤は、前記したように利尿効果を有する生薬と糖類の血中への過剰な流入を阻害する効果を有する生薬(別言すればα−グルコシダーゼの活性阻害能を有する生薬)とを組合わせることにより開発されたものである。【0018】本発明の天然物由来の抗肥満症剤において、前記ニシキギ科サラシア属植物の生薬に組合わせる利尿効果を有する生薬は、セリ科植物のヒュウガトウキ(日向当帰)である。【0019】生薬には利尿生薬の区分に分類されるものが多く存在する。これら利尿効果を有する生薬は、何等かの原因で腎機能が低下して体内に水分が貯留するときに、余分な水分を排泄させるために使用されるものである。この種の利尿効果を有する生薬としては、ナンパ毛、スイカ、キササゲなどがよく知られている。また、利尿効果を有する合成医薬品としては、降圧利尿剤に分類されているチアジド系製剤があり、広く使用されている。【0020】本発明において、利尿効果を有する生薬のうち、セリ科(Umbelliferae)植物のヒュウガトウキ(日向当帰)が、前記ニシキギ科(Celastaceae)サラシア属植物との組合わせにおいて優れた効果(相乗効果)を発揮する点で特徴がある。【0021】前記セリ科植物のヒュウガトウキ(日向当帰)(Peucedanum terebinthaceumまたはPeucedanum deltoideum)は、宮崎、大分、愛媛の一部において民間伝承薬として強壮剤、婦人病、胃腸病、抗酒剤などとして活用されている。当帰の名前が付けられているように、外観は薬用の漢方生薬であるトウキに類似するが、芳香性などで少し劣るため研究が進められていないのが現状である。なお、ヒュウガトウキ(日向当帰)は、イヌトウキとも呼ばれることがあった。【0022】本発明の天然物由来の抗肥満症剤は、(1).前記セリ科植物のヒュウガトウキ(日向当帰)の抽出物、例えば根物の抽出物、及び、(2).前記ニシキギ科植物のサラシア属の抽出物、例えば地下部の抽出物、を有効成分として構成すればよい。【0023】本発明の天然物由来の抗肥満症剤は、前記した二種の特定の生薬植物の抽出物を有効成分として構成されるものであるが、その形態は所望のものであってよい。例えば抽出物の形態は、抽出液(液体)または粉体(固体)などの形態であってもよい。【0024】前記した特定の生薬植物から抽出液や粉末を調製するには、所望の態様を採用すればよい。例えば、サラシア属植物から抽出液を調製するには、次のように行えばよい。原料を粗切りあるいは粉砕機により30メッシュ程度に粉砕する。次いで、粉砕したもの1kgに対して、溶媒として水やアルコールまたは含水アルコールを5l(リットル)加え80℃〜90℃で3時間、冷浸の場合は室温で三日間放置後濾過し、濾液を減圧下45℃で完全に溶媒を留去し、乾燥エキス固体を調製する。そして、粉末状の製剤とするには、前記エキス固体を100〜150メッシュ程度に粉末化すればよい。【0025】本発明において、前記した特定の生薬の粉末体から抗肥満症剤を調製するに際して、粉末にバレイショデンプンや乳糖、デキストリンなどの所望の賦形剤を加えて顆粒や錠剤としてもよいものである。また、本発明の抗肥満症剤は、ティーバックの形態としてもよいし、あるいは液剤(煎じ液)の形態としてもよいものである。【0026】【実施例】以下、本発明の天然物由来の抗肥満症剤を実施例により更に詳しく説明する。なお、本発明は実施例の態様のものに限定されないことはいうまでもないことである。【0027】(実験方法)(1).遺伝子的に肥満となるZuker obase雌性ラットに対して、サラシア オブロンガ抽出エキス/ヒュウガトウキ抽出エキスを経口投与し、その体重の増加を指標として抗肥満作用を検討する。(2).ヒュウガトウキにおいて、強力な利尿作用があることを実証する。【0028】(抗肥満症剤の調製法)(1).乾燥したサラシア オブロンガの根部とヒュウガトウキの根部を、各々細刻して実験材料とした。(2).次に、これら実験材料(各生薬)に5倍量の水を加え、3時間加温抽出し、濾紙で濾過し、45℃以下で減圧濃縮し、熱水抽出液の乾燥エキスを得た。収率は、サラシア オブロンガの場合は5.0%、ヒュウガトウキの場合は15.9%であった。(3).同様の操作により、アルコール抽出物の乾燥エキスを調製した。収率は、サラシア オブロンガの場合は6.2%、ヒュウガトウキの場合は18.2%であった。【0029】(利尿効果の試験)本発明の抗肥満症剤の必須成分であるヒュウガトウキ(日向当帰)及びサラシア属植物の各成分において、利尿効果の有無を調べた。利尿効果の試験は、Wistar系雄性ラット、一群8匹として、次のように行った。(1).20時間絶食後、5ml/100gの生理食塩水を負荷して5時間の尿量を求めた。(2).被検薬物を生理食塩水負荷の30分前に経口投与した。また、対照群は、水のみを経口投与した。結果を下記の表1に示す。【0030】【表1】【0031】表1にみられるように、ヒュウガトウキ(日向当帰)には強力な利尿作用がある。また、サラシア オブロンガにも前記ヒュウガトウキ(日向当帰)ほどではないが利尿作用を示す傾向がある。【0032】(遺伝性肥満ラットに対する抗肥満作用の試験)遺伝性肥満ラットに対する抗肥満作用の試験は、13週令のZucker obse雌性ラット、一群8匹として、次のように行った。(1).被検薬物として、・ サラシア オブロンガ熱水抽出エキス(SHエキスと略記する。)、・ ヒュウガトウキ熱水抽出エキス(HHエキスと略記する。)・ サラシア オブロンガ アルコールエキス(SAエキスと略記する。)、・ ヒュガトウキ アルコールエキス(HAエキスと略記する。)、から成る被検薬物を単体または組合わせて使用した。(2).5%CMCに懸濁させた被検薬物を毎日午後5時〜6時に経口投与した。また、エサ及び水は自由に摂取させた。(3).2週間後にラットを殺し、(イ)内臓脂肪量、(ロ)血清水の脂肪量、(ハ)体重の変化、を調べた。なお、前記(イ)内臓脂肪量及び(ロ)血清中の脂質量の測定は、臨床試験用市販キット(和光純薬)を用いた。結果を下記の表2(内臓脂肪量)、表3(血清中の脂肪量)、表4(体重の変化)に示す。【0033】【表2】【0034】 前記表2(内臓脂肪量)に示されるように、サラシア オブロンガ及びヒュウガトウキの熱水抽出エキスを併用した場合(SHエキス+HHエキス)、内臓脂肪の沈着は、全ての組合わせ被検薬物(併用薬物)で抑制されている。特に、前記併用薬物の場合、ヒュウガトウキを多く配合したときに有効性が認められる。 一方、サラシア オブロンガ及びヒュウガトウキのアルコール抽出エキスを併用した場合(SAエキス+HAエキス)、効果は認められるものの前者ほど強力のものではなかった。【0035】【表3】【0036】前記表3に示される各種の血清中の脂質量の測定に使用した市販の臨床検査キットは、以下の通りである。(イ)トリグリセライド …………… トリグリセライG−テストワコー(和光純薬)(ロ)コレステロール …………… コレステロールCIIテストワコー(和光純薬)(ハ)遊離脂肪酸 …………… NEFAC−テストワコー(和光純薬)【0037】前記表3(血清中の脂肪量)に示されるように、次のことがわかる。(イ).サラシア オブロンガ熱水抽出エキス単独(SHエキス単独)の場合、有意ではないが20%程度の中性脂肪(トリグリセテイド)を低下させている。(ロ).しかしながら、サラシア オブロンガ熱水抽出エキス(SHエキス)とヒュウガトウキ熱水抽出エキス(HHエキス)を組合わせた場合、中性脂肪(トリグリセライド)の低下だけでなく、コレステロールも大幅に低下させている。(ハ).サラシア オブロンガ アルコール エキス及びヒュウガトウキ アルコールエキスの組合わせ(SAエキス+HAエキス)の場合、中性脂肪(トリグリセライド)及びコレステロールの沈着抑制効果は認められるが、前者ほど大きくはなかった。(ニ).血清中の遊離脂肪酸量についても、被検薬物の単独使用と比較して同等もしくはそれ以上の効果があった。【0038】今日、血清中の脂質量の抑制薬物、特にコレステロール値を低下させる薬物としては、数多くのものが知られている。しかしながら、中性脂肪(トリグリセライド)の高い高脂血症に有効な薬物が開発されていないのが現状である。なお、前記高脂血症は、アルコール多飲による脂肪肝などが顕著な例である。前記したことから、本発明の抗肥満症剤は、大きな意義を有するものである。【0039】【表4】【0040】前記表4(体重の変化)に示されるように、サラシア オブロンガ熱水抽出エキス(SHエキス)とヒュウガトウキ熱水抽出エキス(HHエキス)の組合わせ(SHエキス+HHエキス)の場合に、顕著な効果が得られる。なお、ラットの試験スタート時点の体重は(508.2±13.3g)であった。【0041】例えば、混合エキス(SHエキス:HHエキス=1:4)の場合、被検ラットの14日目の体重は、対照群が542.1±10.5gであるのに対し、518.5±13.3gであり、23.6gも減量したことがわかる。また、表4に示されるように、各エキスの単独使用の場合と比較して、二者を併用した場合、特に熱水抽出エキスを併用した場合に、体重の抑制効果が大きいことがわかる。【0042】前記表2〜4に示されるように、サラシア オブロンガ熱水抽出エキス(SHエキス)とヒュウガトウキ熱水抽出エキス(HHエキス)の併用系において、内臓脂肪量、血清中の脂質量、体重の抑制(減量)効果の観点から顕著な効果を示しており、本発明の抗肥満剤が優れていることがわかる。【0043】本発明の抗肥満剤の、一方の必須成分であるヒュウガトウキ(日向当帰)は、別名、日本山人参としてすでに健康食品などとして市販されているものである。ヒュウガトウキ(日向当帰)は前記したように脂質の異常値を顕著に改善する作用を有しないが、サラシア オブロンガとの併用により顕効を有するものである。この点は、サラシア属の他の植物、即ち、サラシア プリノイデス、サラシアレティキュラータを使用しても同様である。【0044】【発明の効果】本発明により、(イ) 利尿効果に優れるセリ科植物のヒュウガトウキ(日向当帰)、及び、(ロ) α−グリコシダーゼの活用阻害能に優れ、かつ糖尿病治療剤として有用なニシキギ科の特定のサラシア植物、を併用した天然物由来の抗肥満性に優れ、かつ、安全性と経済性に優れる抗肥満症剤が提供される。本発明の抗肥満症剤は、前記した特定植物の抽出物を併用する(組合わせる)ことにより、内臓脂肪量と血清中の脂質量の抑制効果、及び、体重の抑制効果に優れた相乗効果を発揮させることに大きな特徴がある。 (a) セリ科植物のヒュウガトウキ(日向当帰)の抽出物、及び、(b) ニシキギ科植物のサラシア オブロンガ(Salacia oblonga)、サラシア レティキュラータ(Salacia prinoides)、サラシア プリノイデス(Salacia prinoides)から選ばれた少なくとも一種の植物の抽出物、を有効成分とすることを特徴とする抗肥満症剤。 セリ科植物のヒュウガトウキ(日向当帰)(Peucedanum terebinthaceumまたはPeucedanum deltoideum)の根部を抽出したもの、及び、ニシキギ科のサラシア属植物の地下部を抽出して得たものである請求項1に記載の抗肥満症剤。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る